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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022170633
(43)【公開日】2022-11-10
(54)【発明の名称】乳酸球菌の増殖促進剤
(51)【国際特許分類】
   C12N 1/20 20060101AFI20221102BHJP
【FI】
C12N1/20 A
【審査請求】有
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021101500
(22)【出願日】2021-06-18
(31)【優先権主張番号】P 2021075882
(32)【優先日】2021-04-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000253503
【氏名又は名称】キリンホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107342
【弁理士】
【氏名又は名称】横田 修孝
(74)【代理人】
【識別番号】100155631
【弁理士】
【氏名又は名称】榎 保孝
(74)【代理人】
【識別番号】100137497
【弁理士】
【氏名又は名称】大森 未知子
(74)【代理人】
【識別番号】100217294
【弁理士】
【氏名又は名称】内山 尚和
(72)【発明者】
【氏名】廣瀬 友
(72)【発明者】
【氏名】村川 葉月
【テーマコード(参考)】
4B065
【Fターム(参考)】
4B065AA01X
4B065AC14
4B065BC02
4B065BD29
4B065CA42
(57)【要約】
【課題】乳酸球菌の増殖促進剤の提供。
【解決手段】本発明によれば、ジカルボン酸またはその塩を有効成分として含んでなる乳酸球菌の増殖促進剤が提供される。ジカルボン酸は、好ましくは炭素数4~6個の脂肪族ジカルボン酸である。乳酸球菌は、好ましくはラクトコッカス属細菌である。本発明によれば、ジカルボン酸を培地に含有させることで乳酸球菌の増殖を促進することができるため、より簡便に乳酸球菌を培養することができる点で有利である。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ジカルボン酸および/またはその塩を有効成分として含んでなる、乳酸球菌の増殖促進剤。
【請求項2】
ジカルボン酸が炭素数4~6の脂肪族ジカルボン酸である、請求項1に記載の増殖促進剤。
【請求項3】
ジカルボン酸および/またはその塩が、リンゴ酸、α-ケトグルタル酸およびそれらの塩からなる群から選択される1種または2種以上である、請求項1または2に記載の増殖促進剤。
【請求項4】
乳酸球菌がラクトコッカス属細菌である、請求項1~3のいずれか一項に記載の増殖促進剤。
【請求項5】
乳酸球菌がラクトコッカス・ラクティス・サブスピーシーズ・ラクティスJCM5805である、請求項1~4のいずれか一項に記載の増殖促進剤。
【請求項6】
ジカルボン酸および/またはその塩を培地において0.01~8質量%の濃度で使用する、請求項1~5のいずれか一項に記載の増殖促進剤。
【請求項7】
畜肉エキスを実質的に含まない培地に添加する、請求項1~6のいずれか一項に記載の増殖促進剤。
【請求項8】
ジカルボン酸および/またはその塩を含有する、乳酸球菌用培地。
【請求項9】
ジカルボン酸および/またはその塩を0.01~8質量%の濃度で含有する、請求項8に記載の培地。
【請求項10】
畜肉エキスを実質的に含まない、請求項8または9に記載の培地。
【請求項11】
請求項8~10のいずれか一項に記載の培地で乳酸球菌を培養する工程を含む、乳酸球菌の培養方法。
【請求項12】
乳酸球菌の培地にジカルボン酸および/またはその塩を添加する工程を含む、乳酸球菌の増殖促進方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は乳酸球菌の増殖促進剤に関する。本発明はまた、乳酸球菌用培地および乳酸球菌の培養方法ならびに乳酸球菌の増殖促進方法に関する。
【背景技術】
【0002】
乳酸球菌の培養では、一般的にLB培地やMRS培地などが使用されている。しかしながら、培地の種類によっては、乳酸球菌の増殖が十分に得られない場合があった。これまでに乳酸球菌を効率的に培養する方法としては、特許文献1や特許文献2が知られていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2020-137456号公報
【特許文献2】特開2020-22393号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、乳酸球菌の新規な増殖促進剤を提供することを目的とする。本発明はまた、新規な乳酸球菌用培地および乳酸球菌の新規な培養方法ならびに乳酸球菌の新規な増殖促進方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、乳酸球菌の培養において、培地中にジカルボン酸またはその塩を含有させることにより乳酸球菌の増殖が促進されることを見出した。本発明はこの知見に基づくものである。
【0006】
本発明によれば以下の発明が提供される。
[1]ジカルボン酸および/またはその塩を有効成分として含んでなる、乳酸球菌の増殖促進剤。
[2]ジカルボン酸が炭素数4~6の脂肪族ジカルボン酸である、上記[1]に記載の増殖促進剤。
[3]ジカルボン酸および/またはその塩が、リンゴ酸、α-ケトグルタル酸およびそれらの塩からなる群から選択される1種または2種以上である、上記[1]または[2]に記載の増殖促進剤。
[4]乳酸球菌がラクトコッカス属細菌である、上記[1]~[3]のいずれかに記載の増殖促進剤。
[5]乳酸球菌がラクトコッカス・ラクティス・サブスピーシーズ・ラクティスJCM5805である、上記[1]~[4]のいずれかに記載の増殖促進剤。
[6]ジカルボン酸および/またはその塩を培地において0.01~8質量%の濃度で使用する、上記[1]~[5]のいずれかに記載の増殖促進剤。
[7]畜肉エキスを実質的に含まない培地に添加する、上記[1]~[6]のいずれかに記載の増殖促進剤。
[8]ジカルボン酸および/またはその塩を含有する、乳酸球菌用培地。
[9]ジカルボン酸および/またはその塩を0.01~8質量%の濃度で含有する、上記[8]に記載の培地。
[10]畜肉エキスを実質的に含まない、上記[8]または[9]に記載の培地。
[11]上記[8]~[10]のいずれかに記載の培地で乳酸球菌を培養する工程を含む、乳酸球菌の培養方法。
[12]乳酸球菌の培地にジカルボン酸および/またはその塩を添加する工程を含む、乳酸球菌の増殖促進方法。
【0007】
本発明によれば、ジカルボン酸またはその塩を培地に含有させて乳酸球菌を培養することで乳酸球菌の増殖を促進することができるため、簡便かつ効率的に乳酸球菌を培養することができる点で有利である。本発明によればまた、畜肉エキスを含まない培地においても、ジカルボン酸またはその塩を含有させることで乳酸球菌の増殖を促進することができる点でも有利である。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、嫌気的培養条件下においてMRS培地にα-ケトグルタル酸もしくはその塩またはリンゴ酸を添加した場合の各濃度におけるラクトコッカス・ラクティス・サブスピーシーズ・ラクティスの菌量を示す(図1A:α-ケトグルタル酸(αKG)、図1B:α-ケトグルタル酸二ナトリウム塩(αKG2Na)、図1C:リンゴ酸)。対照はジカルボン酸無添加の場合を示す。
図2図2は、好気的培養条件下においてMRS培地にα-ケトグルタル酸またはリンゴ酸を添加した場合の各濃度におけるラクトコッカス・ラクティス・サブスピーシーズ・ラクティスの菌量を示す(図2A:α-ケトグルタル酸(αKG)、図2B:リンゴ酸)。対照はジカルボン酸無添加の場合を示す。
図3図3は、嫌気的培養条件下においてGM17培地にα-ケトグルタル酸(αKG)またはリンゴ酸を添加した場合の各濃度における乳酸球菌の菌量を示す。対照はジカルボン酸無添加の場合を示す。
図4図4は、好気的培養条件下においてGM17培地にα-ケトグルタル酸またはリンゴ酸を添加した場合の各濃度におけるラクトコッカス・ラクティス・サブスピーシーズ・ラクティスの菌量を示す(図4A:α-ケトグルタル酸(αKG)、図4B:リンゴ酸)。対照はジカルボン酸無添加の場合を示す。
図5図5は、嫌気的培養条件下においてMRS培地にα-ケトグルタル酸(αKG)を添加した場合の各濃度における各種乳酸球菌の菌量を示す。対照はジカルボン酸無添加の場合を示す。
図6図6は、嫌気的培養条件下においてMRS培地にα-ケトグルタル酸(αKG)を添加した場合の各濃度におけるラクトバチルス属の乳酸桿菌の菌量を示す。対照はジカルボン酸無添加の場合を示す。
図7図7は、嫌気的培養条件下においてMRS培地にクエン酸を添加した場合の各濃度におけるラクトコッカス・ラクティス・サブスピーシーズ・ラクティスの菌量を示す。対照はクエン酸無添加の場合を示す。
図8図8は、嫌気的培養条件下においてMRS培地にα-ケトグルタル酸(αKG)またはリンゴ酸を添加した場合の各濃度におけるペディオコッカス属の乳酸球菌の菌量を示す。対照はジカルボン酸無添加の場合を示す。
図9図9は、嫌気的培養条件下において畜肉エキスを含まないMRS培地にα-ケトグルタル酸(αKG)を添加した場合の各濃度における各種乳酸球菌の菌量を示す。対照はジカルボン酸無添加の場合を示す。
図10図10は、嫌気的培養条件下において、畜肉エキスを含まない培地(畜肉エキスなし)と畜肉エキスを含む培地(畜肉エキスあり)における各種乳酸球菌の菌量を示す。
【発明の具体的説明】
【0009】
本発明の増殖促進剤は乳酸球菌の培養に用いることができる。増殖促進の対象となる乳酸球菌は、特に限定されるものではないが、例えば、ラクトコッカス(Lactococcus)属、ロイコノストック(Leuconostoc)属、ぺディオコッカス(Pediococcus)属、ストレプトコッカス(Streptococcus)属などの乳酸球菌が挙げられる。
【0010】
ラクトコッカス属の乳酸球菌としては、例えば、ラクトコッカス・ラクティス(Lactococcus lactis)ラクトコッカス・ラクティス・サブスピーシーズ・ラクティス(Lactococcus lactis subsp. lactis)、ラクトコッカス・ガルビエアエ(Lactococcus garvieae)、ラクトコッカス・ラクティス・サブスピーシーズ・クレモリス(Lactococcus lactis subsp. cremoris)、ラクトコッカス・ラクティス・サブスピーシーズ・ホールドニアエ(Lactococcus lactis subsp. cremoris)などが挙げられ、好ましくはラクトコッカス・ラクティス・サブスピーシーズ・ラクティスである。
【0011】
ラクトコッカス属細菌の具体例としては、例えば、ラクトコッカス・ラクティス・サブスピーシーズ・ラクティスJCM5805、ラクトコッカス・ラクティス・サブスピーシーズ・ラクティスNBRC12007、ラクトコッカス・ラクティス・サブスピーシーズ・ラクティスNRIC1150、ラクトコッカス・ラクティス・サブスピーシーズ・ラクティスJCM20101、ラクトコッカス・ラクティス・サブスピーシーズ・ラクティスJCM7638、ラクトコッカス・ラクティス・サブスピーシーズ・ラクティスATCC11454、ラクトコッカス・ガルビエアエNBRC100934、ラクトコッカス・ラクティス・サブスピーシーズ・クレモリスJCM16167、ラクトコッカス・ラクティス・サブスピーシーズ・クレモリスNBRC100676、ラクトコッカス・ラクティス・サブスピーシーズ・ホールドニアエJCM1180およびラクトコッカス・ラクティス・サブスピーシーズ・ホールドニアエJCM11040などが挙げられ、好ましくはラクトコッカス・ラクティス・サブスピーシーズ・ラクティスJCM5805である。
【0012】
ロイコノストック属細菌としては、例えば、ロイコノストック・ラクティスなどが挙げられる。ロイコノストック属細菌の具体例としては、例えば、ロイコノストック・ラクティスNBRC12455などが挙げられる。
【0013】
ペディオコッカス属細菌としては、例えば、ペディオコッカス・アシディラクティシ(Pediococcus acidilactici)、ペディオコッカス・ペントサセウス(Pediococcus pentosaceus)、ペディオコッカス・セリコーラ(Pediococcus cellicola)、ペディオコッカス・クラウッセニー(Pediococcus claussenii)、ペディオコッカス・ダムノサス(Pediococcus damnosus)、ペディオコッカス・エタノーリデュランス(Pediococcus ethanolidurans)、ペディオコッカス・イノピナタス(Pediococcus inopinatus)、ペディオコッカス・パルヴルス(Pediococcus parvulus)、ペディオコッカス・スティレッシー(Pediococcus stilesii)などが挙げられる。ペディオコッカス属細菌の具体例としては、例えば、ペディオコッカス・アシディラクティシJCM8797、ペディオコッカス・ダムノサスJCM5886などが挙げられる。
【0014】
ストレプトコッカス属細菌としては、例えば、ストレプトコッカス・サーモフィラスなどが挙げられる。
【0015】
上記の乳酸球菌株のうち、JCM菌株は、理化学研究所・バイオリソースセンター・微生物材料開発室(茨城県つくば市高野台3丁目1番地の1)から、NBRC菌株は、独立行政法人製品評価技術基盤機構生物遺伝資源部門(千葉県木更津市かずさ鎌足2丁目5番8号)から、NRIC菌株は、東京農業大学・菌株保存室(東京都世田谷区桜丘1丁目1番1号)から、ATCC菌株は、American type culture collection(米国)から、それぞれ入手することができる。
【0016】
本発明の増殖促進剤の有効成分であるジカルボン酸は、カルボキシ基をその構造中に2個有する化合物であれば特に限定されるものではないが、好ましくは脂肪族ジカルボン酸を用いることができる。脂肪族ジカルボン酸を構成する炭化水素鎖は好ましくは飽和炭化水素鎖である。脂肪族ジカルボン酸はその炭化水素鎖の炭素原子上に、オキソ基(=O)および/または水酸基(-OH)をさらに有していてもよい。本発明において脂肪族ジカルボン酸は、好ましくは炭素数4~6個の脂肪族ジカルボン酸、より好ましくは炭素数4または5の脂肪族ジカルボン酸である。炭素数4~6個の脂肪族ジカルボン酸としては、例えば、ケトグルタル酸(α-ケトグルタル酸(本明細書中、「αKG」ということがある)、β-ケトグルタル酸(アセトンジカルボン酸))、リンゴ酸、アジピン酸、シュウ酸、コハク酸、マレイン酸、グルタル酸などが挙げられ、好ましくはα-ケトグルタル酸およびリンゴ酸のいずれかまたは両方である。
【0017】
本発明においてジカルボン酸は塩の形態であってもよく、例えば、金属塩、アンモニウム塩などが挙げられる。金属塩としては、ナトリウム塩、カリウム塩などのアルカリ金属塩が挙げられる。アンモニウム塩としては、アンモニウム、テトラメチルアンモニウムなどの塩が挙げられる。ジカルボン酸の塩としては、例えば、α-ケトグルタル酸ナトリウム塩、リンゴ酸ナトリウム塩などが挙げられる。なお、本発明の増殖促進剤はジカルボン酸およびその塩のいずれかまたは両方を有効成分とすることができる。
【0018】
ジカルボン酸および/またはその塩の培地中の濃度(固形分濃度)の下限値(以上または超える)は、0.01質量%、0.1質量%、0.25質量%、0.5質量%とすることができ、その上限値(以下または下回る)は、8質量%、4質量%、2質量%とすることができる。これらの下限値および上限値はそれぞれ任意に組み合わせることができる。上記ジカルボン酸および/またはその塩の培地中の濃度の範囲は、例えば、0.01~8質量%、0.1~4質量%、0.25~4質量%、0.5~4質量%、0.5~3質量%、0.5~2質量%とすることができる。本発明の増殖促進剤は、ジカルボン酸の培地中の濃度を上記のような濃度範囲となるように設定して使用することで、乳酸球菌の増殖を促進し、効率的に乳酸球菌を培養することができる。
【0019】
本発明の増殖促進剤は乳酸球菌を培養する培地に添加して使用することができる。本発明において使用できる培地は、乳酸球菌の培養に使用される培地であれば特に限定されず、例えば、MRS培地(deMan, Rogosa, & Sharpe培地)、M17培地、LB培地などが挙げられる。本発明の増殖促進剤を培地に添加する時期は、乳酸球菌の培養中であってもよく、乳酸球菌の培養前にあらかじめ添加しておいてもよい。本発明において使用できる培地は、補助栄養成分などとして、畜肉エキスを含有することができる。畜肉エキスとしては、例えば、ビーフエキス、ポークエキス、チキンエキスなどが挙げられる。一方で、本発明において使用できる培地は、環境負荷やコスト、食品安全性などの観点から、畜肉エキスを実質的に含まないものが好ましく、より好ましくは畜肉エキスを含まないものである。ここで、畜肉エキスを「実質的に含まない」とは、例えば、畜肉エキスの含有量が0.8質量%未満、0.5質量%未満、0.3質量%未満、0.1質量%未満、0.05質量%未満または0.01質量%未満である場合が挙げられる。ここで、使用する畜肉エキスの性状は、抽出液、パウダー、顆粒等が挙げられる。培地中の畜肉エキスの含有量は、畜肉エキスのエキス純分である固形分質量を培地の質量で除して、100を乗じることで算出される。畜肉エキスを含まない培地は、上記に例示した培地の原料に畜肉エキスを使用せずに適宜調製することができる。本発明の増殖促進剤は畜肉エキスを含まない培地に添加して使用することができる。
【0020】
本発明の増殖促進剤を添加した培地を用いた乳酸球菌の培養条件は特に限定されず、通常の乳酸球菌の培養条件を適用することができる。
【0021】
乳酸球菌の培養期間は、20~48時間とすることができ、増殖期の観点から好ましくは20~30時間である。
【0022】
乳酸球菌の培養温度の下限値(以上または超える)は20℃、25℃、28℃とすることができ、その上限値(以下または下回る)は40℃、35℃、30℃とすることができる。これらの下限値および上限値はそれぞれ任意に組み合わせることができ、培養温度の範囲は、例えば、20~40℃、20~35℃、25~35℃、30~35℃、最も好ましくは約30℃とすることができる。
【0023】
乳酸球菌の培養は、液体培養であっても固体培養であってもよい。液体培養は、条件制御可能な発酵槽を用いて行うことができ、例えば攪拌培養、通気培養、振とう培養、静置培養などを挙げることができる。培養は、嫌気的条件あるいは好気的条件のいずれであってもよい。攪拌速度や通気量は、微生物菌体の種類や培養条件に応じて適宜選択される。
【0024】
本発明に用いる培地のpHは、乳酸球菌の増殖に影響を及ぼすものでなければよく、例えば、6.0~6.7の範囲とすることができる。培地のpHは適宜調整することができ、例えば、水酸化ナトリウムなどの塩基やリン酸などの酸を培地に添加し調整することができる。
【0025】
本発明の増殖促進剤を添加した培地で乳酸球菌を培養することにより、乳酸球菌の培養物が得られる。得られた乳酸球菌培養物は、そのまま、あるいは、濃縮、希釈、乾燥、単離、精製などの処理後に、飲食品などに配合することができる。すなわち、本発明の増殖促進剤は飲食品への適用を目的とした乳酸球菌の増殖促進に用いることができ、この観点から本発明においては、食品として許容されるジカルボン酸および/またはその塩を有効成分として使用することができる。
【0026】
本発明の別の側面によれば、ジカルボン酸および/またはその塩を含有する乳酸球菌用培地が提供される。本発明の乳酸球菌用培地は、本発明の増殖促進剤に関する記載に従って実施することができる。本発明の乳酸球菌用培地によれば、乳酸球菌の増殖が促進されるため効率的に乳酸球菌を培養できる点で有利である。
【0027】
本発明の別の側面によればまた、本発明の培地で乳酸球菌を培養する工程を含む、乳酸球菌の培養方法が提供される。本発明の培養方法は、本発明の増殖促進剤および本発明の培地に関する記載に従って実施することができる。
【0028】
本発明の別の側面によればさらに、乳酸球菌の培地にジカルボン酸および/またはその塩を添加する工程を含む、乳酸球菌の増殖促進方法が提供される。本発明の増殖促進方法は、本発明の増殖促進剤に関する記載に従って実施することができる。
【実施例0029】
以下の例に基づき本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらの例に限定されるものではない。
【0030】
例1:ジカルボン酸による乳酸球菌に対する増殖促進効果の検討(1)
例1では、ジカルボン酸による乳酸球菌に対する増殖促進効果について検討した。
【0031】
(1)方法
ア 菌体
乳酸球菌にはラクトコッカス・ラクティス・サブスピーシーズ・ラクティス JCM5805菌株(Lactococcus lactis subsp. lactis)を用いた。
【0032】
イ 培養方法
(i)嫌気的培養
培地はMRS培地(MRS BROTH、CODE:CM0359、Oxoid社、組成は表1に示す、本明細書の例3~6において同じ)を使用した。ジカルボン酸としてα-ケトグルタル酸(富士フィルム和光純薬社)、α-ケトグルタル酸二ナトリウム(本明細書中、「αKG2Na」ということがある)(富士フィルム和光純薬社)およびリンゴ酸(東京化成工業社)を図1に示す濃度(0.01~4.0質量%)で培地にそれぞれ添加し、対照(ジカルボン酸無添加培地)と同じpHになるように水酸化ナトリウムを添加した(pH6.2±0.2)。次に、15mlコニカルチューブ(FALCON)中で、菌体の濃度が調製した培地10mlに対して0.1%(v/v)となるように植菌(播種)し、インキュベーター(東京理化器械
社)において30℃で24時間培養した(静置培養)。
【0033】
【表1】
【0034】
(ii)好気的培養
培地はMRS培地を使用した。ジカルボン酸としてα-ケトグルタル酸、α-ケトグルタル酸二ナトリウムおよびリンゴ酸を図2に示す濃度(0.5~2.0質量%)で培地にそれぞれ添加し、対照(ジカルボン酸無添加培地)と同じpHになるように水酸化ナトリウムを添加した(pH6.2±0.2)。次に、菌体の濃度が培地10mlに対して0.1%(v/v)となるように植菌(播種)し、植菌した培地を自動培養探索装置OT-201(オリエンタルインスツルメンツ社、本明細書中「バイオプロッター」ということがある)に供し、30℃で24時間培養した(攪拌強度条件:Medium)。
【0035】
ウ 菌数の測定
菌数の測定は吸光度計(Biochrom GeneQuant1300)を用いて培地のOD600(濁度)を測定することにより行った。
【0036】
エ 統計解析
測定値は平均値±標準誤差で表した。一元配置分散分析を行った後にTukey検定を行い、対照群に対してp<0.05の場合に有意差ありとした。
【0037】
(2)結果
結果は、図1および図2に示す通りであった。嫌気的培養では、対照(ジカルボン酸無添加培地)に対して、αKG(図1A)およびリンゴ酸(図1C)を添加した培地において、濃度依存的に乳酸球菌の増殖が有意に促進されることが確認された。また、対照(ジカルボン酸無添加培地)に対して、αKG2Na(図1B)を添加した培地では、0.1~4質量%の場合に濃度依存的に乳酸球菌の増殖が有意に促進されることが確認され、0.01質量%の場合も乳酸球菌の増殖が促進される傾向にあった。同様に、好気的培養においても、対照(ジカルボン酸無添加培地)に対して、αKG(図2A)およびリンゴ酸(図2B)を添加した培地において、濃度依存的に乳酸球菌の増殖が有意に促進されることが確認された。同様に、畜肉エキスを含まない培地にジカルボン酸およびその塩のいずれを添加した場合にも乳酸球菌の増殖が促進されることが確認された。
【0038】
例2:ジカルボン酸による乳酸球菌に対する増殖促進効果の検討(2)
例2では、例1で用いた培地とは異なる培地を用いてジカルボン酸による乳酸球菌に対する増殖促進効果について検討した。
【0039】
(1)方法
ア 菌体
例1(1)アに記載の乳酸球菌を用いた。
【0040】
イ 培養方法
(i)嫌気的培養
培地はM17培地(Difco M17 Broth、BD社、組成は表2に示す、本明細書において以下同じ)に20g/Lのグルコースを添加した培地(本明細書中「GM17培地」ということがある)を使用した。ジカルボン酸としてα-ケトグルタル酸およびリンゴ酸を図3に示す濃度(0.5~2質量%)で培地にそれぞれ添加し、対照(ジカルボン酸無添加培地)と同じpHになるように水酸化ナトリウムを添加した(pH6.5±0.2)。次に、15mlコニカルチューブ(FALCON)中で、菌体の濃度が調製した培地10mlに対して0.1%(v/v)となるように植菌(播種)し、インキュベーター(東京理化器械社)において30℃で24時間培養した(静置培養)。
【0041】
【表2】
【0042】
(ii)好気的培養
培地はGM17培地を使用した。ジカルボン酸としてα-ケトグルタル酸およびリンゴ酸を図4に示す濃度(0.5~2質量%)で培地にそれぞれ添加し、対照(ジカルボン酸無添加培地)と同じpHになるように水酸化ナトリウムを添加した(pH6.5±0.2)。次に、菌体の濃度が調製した培地10mlに対して0.1%(v/v)となるように植菌(播種)し、植菌した培地を自動培養探索装置OT-201(オリエンタルインスツルメンツ社、本明細書中「バイオプロッター」ということがある)に供し、30℃で24時間培養した(攪拌強度条件:Medium)。
【0043】
ウ 菌数の測定
例1(1)ウの記載と同様にして行った。
【0044】
エ 統計解析
例1(1)エの記載と同様にして行った。
【0045】
(2)結果
結果は、図3および図4に示す通りであった。嫌気的培養では、対照(ジカルボン酸無添加培地)に対して、αKG(図3A)およびリンゴ酸(図3B)を添加した培地において、乳酸球菌の増殖が有意に促進されることが確認された。同様に、好気的培養においても、対照(ジカルボン酸無添加培地)に対して、αKG(図4A)およびリンゴ酸(図4B)を添加した培地において、濃度依存的に乳酸球菌の増殖が促進されることが確認された。例1および例2の結果から、培地の種類によらずジカルボン酸により乳酸球菌の増殖が有意に促進されることが確認された。
【0046】
例3:ジカルボン酸による乳酸球菌に対する増殖促進効果の検討(3)
例3では、α-ケトグルタル酸による各種乳酸球菌に対する増殖促進効果について検討した。
【0047】
(1)方法
ア 菌体
菌体には表1に記載の乳酸球菌を用いた。
【0048】
【表3】
【0049】
イ 培養方法
ジカルボン酸としてα-ケトグルタル酸を2.0質量%の濃度で培地に添加したこと以外は例1(1)イ(i)の記載と同様にして行った(嫌気的培養)。
【0050】
ウ 菌数の測定
例1(1)ウの記載と同様にして行った。
【0051】
エ 統計解析
測定値は平均値±標準誤差で表した。Student-t検定を行い、対照群に対してp<0.05の場合に有意差ありとした。
【0052】
(2)結果
結果は、図5に示す通りであった。ラクトコッカス・ガルビエアエ、ラクトコッカス・ラクティス・サブスピーシーズ・クレモリス、ラクトコッカス・ラクティス・サブスピーシーズ・ホールドニアエ、ラクトコッカス・ラクティス・サブスピーシーズ・ラクティスおよびロイコノストック・ラクティスの乳酸球菌は、対照(ジカルボン酸無添加培地)に対して、菌株によらずジカルボン酸により増殖が有意に促進されることが確認された。
【0053】
例4:ジカルボン酸による乳酸桿菌の増殖促進効果の検討(4)
例4では、α-ケトグルタル酸によるラクトバチルス属の乳酸桿菌の増殖促進効果について検討した。
【0054】
(1)方法
ア 菌体
菌体には表2に記載のラクトバチルス属の乳酸桿菌を用いた。
【0055】
【表4】
【0056】
イ 培養方法
ジカルボン酸としてα-ケトグルタル酸を図6に示す濃度(0.5~2質量%)で培地にそれぞれ添加したこと以外は例1(1)イ(i)の記載と同様にして行った(嫌気的培養)。
【0057】
ウ 菌数の測定
例1(1)ウの記載と同様にして行った。
【0058】
エ 統計解析
例1(1)エの記載と同様にして行った。
【0059】
(2)結果
結果は、図6に示す通りであった。ラクトバチルス属の乳酸桿菌は、対照(ジカルボン酸無添加培地)に対して、ジカルボン酸による増殖促進は認められなかった。
【0060】
例5:トリカルボン酸による乳酸球菌に対する増殖促進効果の検討
例5では、トリカルボン酸による乳酸球菌に対する増殖促進効果について検討した。
【0061】
(1)方法
ア 菌体
例1(1)アに記載の乳酸球菌と同様のものを用いた。
【0062】
イ 培養方法
培地にジカルボン酸の代わりにトリカルボン酸としてクエン酸(富士フィルム和光純薬社)を図7に示す濃度(0.25~1質量%)で培地にそれぞれ添加したこと以外は例1(1)イ(i)の記載と同様にして行った(嫌気的培養)。
【0063】
ウ 菌数の測定
例1(1)ウの記載と同様にして行った。
【0064】
エ 統計解析
例1(1)エの記載と同様にして行った。
【0065】
(2)結果
結果は、図7に示す通りであった。乳酸球菌は、対照(クエン酸無添加培地)に対して、クエン酸により増殖が有意に促進することが確認されたが、増殖促進の効果の程度はジカルボン酸の方が大きかった。
【0066】
例6:ジカルボン酸による乳酸球菌に対する増殖促進効果の検討(4)
例6では、ジカルボン酸によるペディオコッカス属の乳酸球菌に対する増殖促進効果について検討した。
【0067】
(1)方法
ア 菌体
菌体には表5に記載のペディオコッカス属の乳酸球菌を用いた。
【0068】
【表5】
【0069】
イ 培養方法
ジカルボン酸としてα-ケトグルタル酸(図8A(0.1~4質量%)および図8C(1~4質量%)に示す濃度)およびリンゴ酸(図8B(0.1~2質量%)および図8D(1~2質量%)に示す濃度)で培地にそれぞれ添加したこと以外は例1(1)イ(i)の記載と同様にして行った(嫌気的培養)。
【0070】
ウ 菌数の測定
例1(1)ウの記載と同様にして行った。
【0071】
エ 統計解析
例1(1)エの記載と同様にして行った。
【0072】
(2)結果
結果は、図8に示す通りであった。ペディオコッカス属の乳酸球菌は、対照(ジカルボン酸無添加培地)に対して、αKG(図8AおよびC)およびリンゴ酸(図8BおよびD)を添加した培地において、濃度依存的に有意に増殖が促進されることが確認された。
【0073】
例7:ジカルボン酸による乳酸球菌に対する増殖促進効果の検討(5)
例7では、畜肉エキスを含まない培地において、ジカルボン酸による乳酸球菌に対する増殖促進効果について検討した。
【0074】
(1)方法
ア 菌体
菌体には表6に記載の乳酸球菌を用いた。
【0075】
【表6】
【0076】
イ 培養方法
培地は表7に示す組成にて調整したMRS培地を使用した(リン酸を添加してpH6.2に調整した)。ジカルボン酸としてα-ケトグルタル酸を2.0質量%の濃度で培地に添加し、対照(ジカルボン酸無添加培地)と同じpHになるように水酸化ナトリウムを添加した(pH6.2±0.2)。次に、15mlコニカルチューブ(FALCON)中で、菌体の濃度が調製した培地10mlに対して0.1%(v/v)となるように植菌(播種)し、インキュベーター(東京理化器械社)において30℃で24時間培養した(静置培養)。
【0077】
【表7】
【0078】
ウ 菌数の測定
例1(1)ウの記載と同様にして行った。
【0079】
エ 統計解析
例1(1)エの記載と同様にして行った。
【0080】
(2)結果
結果は、図9に示す通りであった。畜肉エキスを含まない培地においても、ジカルボン酸の添加によりラクトコッカス・ラクティス・サブスピーシーズ・ラクティス、ラクトコッカス・ガルビエアエ、ラクトコッカス・ラクティス・サブスピーシーズ・クレモリス、ラクトコッカス・ラクティス・サブスピーシーズ・ホールドニアエおよびロイコノストック・ラクティスの乳酸球菌は、対照(ジカルボン酸無添加培地)に対して、増殖が有意に促進されることが確認された。
【0081】
例8:培地中の畜肉エキスが乳酸球菌の増殖に与える影響の検討
例8では、培地中の畜肉エキスが乳酸球菌の増殖に与える影響について検討した。
【0082】
(1)方法
ア 菌体
菌体には表8に記載の乳酸球菌を用いた。
【0083】
【表8】
【0084】
イ 培養方法
畜肉エキスを含まない培地は、表7に示す組成にて調整したMRS培地を使用した(初期pHが7.0程度であったためリン酸を添加してpH6.2に調整した)。畜肉エキスを含む培地は、表9に示す組成にて調製したMRS培地を使用した(リン酸を添加してpH6.2に調整した)。次に、15mlコニカルチューブ(FALCON)中で、菌体の濃度が調製した培地10mlに対して0.1%(v/v)となるように植菌(播種)し、インキュベーター(東京理化器械社)において30℃で24時間培養した(静置培養)。
【0085】
【表9】
【0086】
ウ 菌数の測定
例1(1)ウの記載と同様にして行った。
【0087】
エ 統計解析
例1(1)エの記載と同様にして行った。
【0088】
(2)結果
結果は、図10に示す通りであった。畜肉エキスの有無のみが異なる培地を用いて乳酸球菌の増殖に与える影響を検討した結果、乳酸球菌の増殖は、畜肉エキスを含まない培地よりも畜肉エキスを含む培地の方が有意に高いことが確認された。また、例7と例8の結果から、畜肉エキスを含まない培地にジカルボン酸を添加した培地の方が、畜肉エキスを含む培地(ジカルボン酸の添加なし)よりもOD600値が高く、ジカルボン酸による乳酸球菌に対する増殖促進効果が高いことが確認された(図9および10)。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
【手続補正書】
【提出日】2022-05-19
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
炭素数4~6の脂肪族ジカルボン酸および/またはその塩を有効成分として含んでなる、乳酸球菌の増殖促進剤であって、醤油を含まない培地に添加して使用するための、増殖促進剤
【請求項2】
前記培地がMRS培地、M17培地またはLB培地である、請求項1に記載の増殖促進剤。
【請求項3】
ジカルボン酸および/またはその塩が、リンゴ酸、α-ケトグルタル酸およびそれらの塩からなる群から選択される1種または2種以上である、請求項1または2に記載の増殖促進剤。
【請求項4】
乳酸球菌がラクトコッカス属細菌、ロイコノストック属細菌、ペディオコッカス属細菌およびストレプトコッカス属細菌からなる群から選択される1種または2種以上である、請求項1~3のいずれか一項に記載の増殖促進剤。
【請求項5】
乳酸球菌がラクトコッカス・ラクティス・サブスピーシーズ・ラクティスJCM5805である、請求項1~4のいずれか一項に記載の増殖促進剤。
【請求項6】
ペディオコッカス属細菌が、ペディオコッカス・アシディラクティシ、ペディオコッカス・ペントサセウス、ペディオコッカス・セリコーラ、ペディオコッカス・クラウッセニー、ペディオコッカス・ダムノサス、ペディオコッカス・エタノーリデュランス、ペディオコッカス・イノピナタス、ペディオコッカス・パルヴルスおよびペディオコッカス・スティレッシーからなる群から選択される1種または2種以上である、請求項4に記載の増殖促進剤。
【請求項7】
ジカルボン酸および/またはその塩を培地において0.01~8質量%の濃度で使用する、請求項1~のいずれか一項に記載の増殖促進剤。
【請求項8】
畜肉エキスの含有量が0.8質量%未満である培地に添加する、請求項1~のいずれか一項に記載の増殖促進剤。
【請求項9】
炭素数4~6の脂肪族ジカルボン酸および/またはその塩を含有する、乳酸球菌用培地であって、ジカルボン酸および/またはその塩を0.01~8質量%の濃度で含有する、培地(但し、醤油を含む培地を除く)
【請求項10】
畜肉エキスの含有量が0.8質量%未満である、請求項に記載の培地。
【請求項11】
請求項9または10に記載の培地で乳酸球菌を培養する工程を含む、乳酸球菌の培養方法。
【請求項12】
乳酸球菌の培地(但し、醤油を含む培地を除く)炭素数4~6の脂肪族ジカルボン酸および/またはその塩を添加する工程を含む、乳酸球菌の増殖促進方法。
【手続補正書】
【提出日】2022-09-05
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
炭素数4~6の脂肪族ジカルボン酸および/またはその塩を有効成分として含んでなる、乳酸球菌の増殖促進剤であって、前記乳酸球菌がラクトコッカス・ラクティス、ラクトコッカス・ガルビエアエ、ペディオコッカス・アシディラクティシ、ペディオコッカス・ダムノサスおよびロイコノストック・ラクティスからなる群から選択される1種または2種以上の乳酸球菌であって、かつ、醤油または脱脂乳を含まない培地に添加して使用するための、増殖促進剤。
【請求項2】
前記培地がMRS培地、M17培地またはLB培地である、請求項1に記載の増殖促進剤。
【請求項3】
ジカルボン酸および/またはその塩が、リンゴ酸、α-ケトグルタル酸およびそれらの塩からなる群から選択される1種または2種以上である、請求項1または2に記載の増殖促進剤。
【請求項4】
ラクトコッカス・ラクティスがラクトコッカス・ラクティス・サブスピーシーズ・ラクティスJCM5805である、請求項1~のいずれか一項に記載の増殖促進剤。
【請求項5】
ジカルボン酸および/またはその塩を培地において0.01~8質量%の濃度で使用する、請求項1~のいずれか一項に記載の増殖促進剤。
【請求項6】
畜肉エキスの含有量が0.8質量%未満である培地に添加する、請求項1~のいずれか一項に記載の増殖促進剤。
【請求項7】
炭素数4~6の脂肪族ジカルボン酸および/またはその塩を含有する、乳酸球菌用培地であって、ジカルボン酸および/またはその塩を0.01~8質量%の濃度で含有し、かつ、前記ジカルボン酸がリンゴ酸である、培地(但し、醤油または脱脂乳を含む培地を除く)。
【請求項8】
畜肉エキスの含有量が0.8質量%未満である、請求項に記載の培地。
【請求項9】
請求項またはに記載の培地で乳酸球菌を培養する工程を含む、乳酸球菌の培養方法。
【請求項10】
乳酸球菌の培地(但し、醤油または脱脂乳を含む培地を除く)に炭素数4~6の脂肪族ジカルボン酸および/またはその塩を添加する工程を含み、前記乳酸球菌がラクトコッカス・ラクティス、ラクトコッカス・ガルビエアエ、ペディオコッカス・アシディラクティシ、ペディオコッカス・ダムノサスおよびロイコノストック・ラクティスからなる群から選択される1種または2種以上の乳酸球菌である、乳酸球菌の増殖促進方法。