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特開2022-170638多置換化されたジインデノ(1,2,3,4-defg:1’,2’,3’,4’-mnop)クリセン誘導体
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022170638
(43)【公開日】2022-11-10
(54)【発明の名称】多置換化されたジインデノ(1,2,3,4-defg:1’,2’,3’,4’-mnop)クリセン誘導体
(51)【国際特許分類】
   C07C 43/21 20060101AFI20221102BHJP
   C07C 43/23 20060101ALI20221102BHJP
   C07C 39/17 20060101ALI20221102BHJP
   C07C 43/225 20060101ALI20221102BHJP
   C07C 41/24 20060101ALI20221102BHJP
   C07D 209/96 20060101ALI20221102BHJP
   C07B 61/00 20060101ALN20221102BHJP
【FI】
C07C43/21 CSP
C07C43/23 D
C07C39/17
C07C43/225 C
C07C41/24
C07D209/96
C07B61/00 300
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021125819
(22)【出願日】2021-07-30
(31)【優先権主張番号】P 2021076315
(32)【優先日】2021-04-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】597065329
【氏名又は名称】学校法人 龍谷大学
(74)【代理人】
【識別番号】110000914
【氏名又は名称】弁理士法人WisePlus
(72)【発明者】
【氏名】岩澤 哲郎
(72)【発明者】
【氏名】吉田 尚樹
(72)【発明者】
【氏名】赤阪 龍平
【テーマコード(参考)】
4H006
4H039
【Fターム(参考)】
4H006AA01
4H006AA02
4H006AC28
4H006BA25
4H006BA48
4H006BB11
4H006FC54
4H006FE11
4H006FE13
4H006GP03
4H006GP21
4H039CA41
4H039CG90
(57)【要約】
【課題】有機溶媒に溶けやすくする4つ以上の置換基と、幅広い官能基を導入しやすくする4つ以上の酸素原子含有官能基を有するジインデノ(1,2,3,4-defg:1’,2’,3’,4’-mnop)クリセン誘導体を提供する。
【解決手段】分岐構造を有するアルキル基、アルケニル基、および、アルキニル基からなる群から選択される置換基を4個以上と、酸素原子含有官能基を4個以上とを有するジインデノ(1,2,3,4-defg:1’,2’,3’,4’-mnop)クリセン誘導体に関する。
【選択図】 なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
分岐構造を有するアルキル基、アルケニル基、および、アルキニル基からなる群から選択される置換基を4個以上と、酸素原子含有官能基を4個以上とを有するジインデノ(1,2,3,4-defg:1’,2’,3’,4’-mnop)クリセン誘導体。
【請求項2】
前記酸素原子含有官能基が、水酸基、アルコキシ基、アルケニルオキシ基、または、アルキニルオキシ基である請求項1に記載のジインデノ(1,2,3,4-defg:1’,2’,3’,4’-mnop)クリセン誘導体。
【請求項3】
下記式
【化1】

【化2】

【化3】

【化4】

【化5】

【化6】
、または、
【化7】
である請求項1または2に記載のジインデノ(1,2,3,4-defg:1’,2’,3’,4’-mnop)クリセン誘導体。
【請求項4】
アルコキシ基、アルケニルオキシ基、または、アルキニルオキシ基4個以上と、酸素原子含有官能基4個以上と、4,5,12,13位にハロゲノ基4個以下とを有するジベンゾ[g,p]クリセン誘導体を、脱ハロゲノ化または脱水素化して、二つの五員環を分子内で構築する分子内環化の工程を含む請求項1~3のいずれか1項に記載のジインデノ(1,2,3,4-defg:1’,2’,3’,4’-mnop)クリセン誘導体の製造方法。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ジインデノ(1,2,3,4-defg:1’,2’,3’,4’-mnop)クリセン誘導体に関する。
【背景技術】
【0002】
ジインデノ(1,2,3,4-defg:1’,2’,3’,4’-mnop)クリセン(DIC)はバックミンスターフラーレンC60の一部分を構成する。外観は、お椀型湾曲構造をしており、典型的な非平面性のπ共役系構造を有している。多環式芳香族炭化水素(PAHs)に分類され、組成式C2612の比較的小さな有機分子である。C60の部分構造であることから、C60と似たような有機エレクトロニクス材料・有機半導体材料として期待されている。より具体的には、高い電子受容体としての性質をもとにしたn型半導体としての機能が期待され、電子をキャリアとする小分子型有機エレクトロニクス材料として有望視されている。光量子物性(量子収率・励起寿命)、電子的特性、耐熱性においても潜在的価値が高く、高分子材料や有機太陽電池等有機電子デバイスへ組み込むことが試みられている。
【0003】
これまでに、合成の報告は3例にとどまっている。非特許文献1には、ジブロモビフルオレニリデンの1000℃下におけるFVP(瞬間真空熱分解)処理による調製方法が開示されている。非特許文献2には、三塩化アンスラセンの分子内クロスカップリングによる調製方法が開示されている。非特許文献3には、フッ素化ジベンゾ[g,p]クリセンの酸化アルミニウムを用いた180℃下における分子内環化反応による調製方法が開示されている。
【0004】
しかしながら、目的物であるジインデノクリセンだけでなく合成中間体も含めて、有機溶媒に対する溶解性に劣り、各工程の収率が低く、得られる目的物の絶対量も少なかった。また、目的物であるジインデノクリセンはほとんど官能基化されておらず、官能基化するための手法も提示されていない。そのため、事実上、材料としての展開を行うことが困難であった。さらに、分子内環化の効率が悪く、現実的な生産に向いていなかった。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】H.E.Bronstein,N.Choi,L.T.Scott, J.Am.Chem.Soc.2002,124,8870-8875.
【非特許文献2】H.-I.Chang,H.-T.Huang,C.-H.Huang, M.-Y.Kuo,Y.-T.Wu,Chem.Commun.2010,46,7241-7243.
【非特許文献3】V.Akhmetov,M.Feofanov,S.Troyanov, K.Amsharov,Chem.Eur.J.2019,25,7607-7612.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、有機溶媒に溶けやすくする4つ以上の置換基と、幅広い官能基を導入しやすくする4つ以上の酸素原子含有官能基を有するジインデノ(1,2,3,4-defg:1’,2’,3’,4’-mnop)クリセン誘導体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
すなわち、本発明は、分岐構造を有するアルキル基、アルケニル基、および、アルキニル基からなる群から選択される置換基を4個以上と、酸素原子含有官能基を4個以上とを有するジインデノ(1,2,3,4-defg:1’,2’,3’,4’-mnop)クリセン誘導体に関する。
【0008】
前記酸素原子含有官能基が、水酸基、アルコキシ基、アルケニルオキシ基、または、アルキニルオキシ基であることが好ましい。
【0009】
ジインデノ(1,2,3,4-defg:1’,2’,3’,4’-mnop)クリセン誘導体は、
下記式
【化1】

【化2】

【化3】

【化4】

【化5】

【化6】
、または、
【化7】

であることが好ましい。
【0010】
また、本発明は、アルコキシ基、アルケニルオキシ基、または、アルキニルオキシ基4個以上と、酸素原子含有官能基4個以上と、4,5,12,13位にハロゲノ基4個以下とを有するジベンゾ[g,p]クリセン誘導体を、脱ハロゲノ化または脱水素化して、二つの五員環を分子内で構築する分子内環化の工程を含む前記ジインデノ(1,2,3,4-defg:1’,2’,3’,4’-mnop)クリセン誘導体の製造方法に関する。
【発明の効果】
【0011】
本発明のジインデノ(1,2,3,4-defg:1’,2’,3’,4’-mnop)クリセン誘導体は、4個以上の嵩高い分岐構造を有するアルキル基等を有するので、有機溶媒に対する溶解性が非常に高く、4個以上の水酸基などの酸素原子含有官能基を有するので、高分子材料への組み込みや高分子材料や有機電子材料やオプトエレクトロニクス材料としての展開が可能となる。目的物や合成中間体すべてを液相合成条件下で行うことができるため、スケールアップが可能で収率も高く、目的物等の高生産的な製造が可能である。よって、製品としての展開を見据えた場合に、重要な技術的要素となる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明のジインデノ(1,2,3,4-defg:1’,2’,3’,4’-mnop)クリセン誘導体は、分岐構造を有するアルキル基、アルケニル基、および、アルキニル基からなる群から選択される置換基を4個以上と、酸素原子含有官能基を4個以上とを有することを特徴とする。ここで、誘導体とは、ジインデノ(1,2,3,4-defg:1’,2’,3’,4’-mnop)クリセン骨格をそのまま有する化合物だけを意味するものではなく、中心部の6:6-炭素-炭素二重結合への付加反応等を行って得られた化合物も含まれる。
【0013】
ジインデノ(1,2,3,4-defg:1’,2’,3’,4’-mnop)クリセンは、下記構造式
【化8】
で表される化合物である。バックミンスターフラーレンC60の一部分を構成し、お椀型湾曲構造の非平面性π共役系構造を有している。DICについて、各炭素の置換位置を記した模式図を示す。
【0014】
分岐構造を有するアルキル基、アルケニル基、および、アルキニル基からなる群から選択される置換基の個数は4個以上であり、8個以下が好ましい。
【0015】
アルキル基、アルケニル基、および、アルキニル基からなる群から選択される置換基の置換位置は特に限定されないが、DICの辺縁部の2、5、8、11位の位置に置換されていることが好ましい。
【0016】
分枝構造を有するアルキル基の炭素数は3~12が好ましく、3~8がより好ましい。例えば、iso-プロピル、iso-ブチル、t-ブチル、2,2-ジメチルプロピル、iso-ヘキシル、iso-ヘプチル、iso-オクチル、iso-ノニル、iso-デシル、iso-ウンデシル、iso-ドデシル等が挙げられる。なかでも、iso-プロピル、iso-ブチル、t-ブチルが好ましい。アルケニル基は、前記アルキル基の内部または末端に二重結合を有する基であり、アルキニル基は、前記アルキル基の内部または末端に三重結合を有する基である。
【0017】
アルキル基、アルケニル基、および、アルキニル基の中でも、幅広い種類の有機溶媒に対する溶解性の点で、アルキル基が好ましい。
【0018】
酸素原子含有官能基の数は4個以上であり、8個以下が好ましい。
【0019】
酸素原子含有官能基の置換位置は特に限定されないが、それぞれDICの辺縁部の3、4、9、10位の位置に置換されていることが好ましい。
【0020】
酸素原子含有官能基としては、水酸基、アルコキシ基、アルケニルオキシ基、アルキニルオキシ基、ポリオキシアルキレン基などが挙げられる。なかでも、合成の簡便さやコストパフォーマンスの高さの点で、アルコキシ基および水酸基が好ましい。
【0021】
アルコキシ基の炭素数は1~12が好ましく、1~8がより好ましい。例えば、メチルエーテル基、エチルエーテル基、ノルマルプロピルエーテル基、iso-プロピルエーテル基、ノルマルブチルエーテル基、t-ブチルエーテル基、2,2-ジメチルプロピルエーテル基、ペンチルエーテル基、ヘキシルエーテル基、へプチルエーテル基、オクチルエーテル基、ノニルエーテル基、デシルエーテル基、ウンデシルエーテル基、ドデシルエーテル基等が挙げられる。なかでも、メチルエーテル基、エチルエーテル基、ノルマルプロピルエーテル基、iso-プロピルエーテル基、ノルマルブチルエーテル基、t-ブチルエーテル基、が好ましい。アルケニル基は、前記アルキル基の内部または末端に二重結合を有する基であり、アルキニル基は、前記アルキル基の内部または末端に三重結合を有する基である。アルコキシ基は、2つのアルコキシ基が連結して、環を形成していても良い。また、アルコキシ基は、水酸基を有していても良い。
【0022】
ポリオキシアルキレン基としては、置換基を有していてもよい直鎖状又は分岐状のアルキルエーテル基が挙げられる。アルキルエーテル基の炭素数は1~12が好ましく、1~8がより好ましい。例えば、メチルエーテル基、エチルエーテル基、ノルマルプロピルエーテル基、イソプロピルエーテル基、n-ブチルエーテル基、2―メチルプロピルエーテル基、n-ペンチルエーテル基、2,2-ジメチルプロピルエーテル基、n-ヘキシルエーテル基、n-ヘプチルエーテル基、n-オクチルエーテル基、n-ノニルエーテル基、n-デシルエーテル基、n-ウンデシルエーテル基、n-ドデシルエーテル基等が挙げられ、メトキシ基、エトキシ基、プロピルエーテル基、n-ブチルエーテル基、2―メチルプロピルエーテル基、n-ペンチルエーテル基、2,2-ジメチルプロピルエーテル基、n-ヘキシルエーテル基が好ましい。アルケニルエーテル基は、前記アルキルエーテル基の内部または末端に二重結合を有する基であり、アルキニルエーテル基は、前記アルキルエーテル基の内部または末端に三重結合を有する基である。
【0023】
2つのアルコキシ基が連結して環を形成する置換基としては、メチレンジオキシ、エチレンジオキシ、プロピレンジオキシなどが挙げられる。水酸基を有するアルコキシ基としては、ヒドロキシメチルエーテル基、ヒドロキシエチルエーテル基、ヒドロキシプロピルエーテル基、ヒドロキシブチルエーテル基、ヒドロキシペンチルエーテル基、ヒドロキシヘキシルエーテル基、ヒドロキシヘプチルエーテル基、ヒドロキシオクチルエーテル基、ヒドロキシノニルエーテル基、ヒドロキシデシルエーテル基などが挙げられる。
【0024】
ポリオキシアルキレン基は、アルキレンジオールの単独重合体または共重合体の末端の水素を取った置換基である。このような置換基を導入することで、水または水溶性有機溶媒に溶解しやすくなる。ポリオキシアルキレンとしては、ポリオキシエチレン、ポリオキシプロピレン、ポリオキシブチレン等が挙げられる。重合度は、ポリエチレングリコールの場合には4~450が好ましく、ポリエチレンオキシドの場合には450~10000が好ましい。
【0025】
前記ジインデノ(1,2,3,4-defg:1’,2’,3’,4’-mnop)クリセン誘導体の中でも、下記式
【化9】
(化合物1)、
【化10】
(化合物2)、
【化11】
(化合物3)、
【化12】
(化合物4)、
【化13】
(化合物5)、
【化14】
(化合物6)、または、
【化15】
(化合物7)
で表される化合物が好ましい。
【0026】
また、本発明の前記ジインデノ(1,2,3,4-defg:1’,2’,3’,4’-mnop)クリセン誘導体の製造方法は、アルコキシ基、アルケニルオキシ基、または、アルキニルオキシ基4個以上と、酸素原子含有官能基4個以上と、4,5,12,13位にハロゲノ基4個以下とを有するジベンゾ[g,p]クリセン誘導体を、脱ハロゲノ化または脱水素化して二つの五員環を分子内で構築する分子内環化の工程を含むことを特徴とする。
【0027】
脱ハロゲノ化は、出発物質であるハロゲノ化化合物を、ビス(トリ-tert-ブチルホスフィン)パラジウム、テトラキストリフェニルホスフィンパラジウム、トリスジベンジリデンアセトンビスパラジウム、ビスジベンジリデンアセトンパラジウム、などのパラジウム錯体に加えて、トリスターシャリーブチルホスフィンやトリシクロヘキシルホスフィンやトリフェニルホスフィンなどの外部配位子の添加によって、合成することができる。
【0028】
脱水素化は、ハロゲノ基を4個有するハロゲノ化化合物の一部のハロゲノ基が水素に置換された出発物質を、2、3-ジクロロ-5、6-ジシアノ-パラ-ベンゾキノンや、超原子価ヨウ素や、三臭化ホウ素や、硫黄やセレンなどによって脱水素化することによって、合成することができる。
【0029】
出発物質であって、アルコキシ基、アルケニルオキシ基、または、アルキニルオキシ基4個以上と、酸素原子含有官能基4個以上と、4,5,12,13位にハロゲノ基4個以下とを有するジベンゾ[g,p]クリセン誘導体は、
(a)アルコキシ基、アルケニルオキシ基、または、アルキニルオキシ基を4個以上有するジベンゾ[g,p]クリセン誘導体と、分岐構造を有するアルキルハライド、アルケニルハライド、または、アルキニルハライドをルイス酸の存在下で反応させる工程、および、
(b)得られた化合物をハロゲン化させる工程
を経て合成することができる。
【0030】
ハロゲン化させる工程の前に、(c)アルコキシ基、アルケニルオキシ基、アルキニルオキシ基を、三臭化ホウ素や三塩化アルミニウムなどのルイス酸、または、アルカンチオラートなどの塩基性試薬などを用いて、脱アルキル化することで、水酸基に変換した後に、ハロゲン化することもできる。
【0031】
工程(a)(フリーデルクラフツ反応)で使用するルイス酸としては、アルミニウム試薬やホウ素試薬等などが挙げられる。なかでも、三塩化アルミニウム、二塩化エチルアルミニウム、一塩化ジエチルアルミニウム、三ヨウ化ホウ素、三臭化ホウ素、三塩化ホウ素、三フッ化ホウ素が好ましい。反応温度は特に限定されず、マイナス78~25℃が好ましい。
【0032】
該フリーデルクラフツ反応を行うと、分岐構造を有するアルキル基を、ジベンゾ[g,p]クリセン誘導体の2、3、6、7、10、11、14、15位の位置に選択的に導入することができる。
【0033】
工程(c)(脱アルキル化反応)で使用する試薬としては、三臭化ホウ素や三塩化アルミニウムなどのルイス酸、または、アルカンチオラートなどの塩基性の求核試薬などが挙げられる。この方法により、分岐構造を有するアルキル基等の置換基を4個以上と、酸素原子含有官能基として水酸基を4個以上とを有するジベンゾ[g,p]クリセン誘導体を合成することができる。
【0034】
工程(b)(ハロゲン化反応)で使用する試薬としては、臭素、ヨウ素、塩素、一塩化ヨウ素、一臭化ヨウ素、一塩化臭素、N-ブロモスクシンイミド、Nーヨードスクシンイミド、ジメチルジブロモヒダントインなどのハロゲン化剤が挙げられる。この方法により、分岐構造を有するアルキル基等の置換基を4個以上と、酸素原子含有官能基として水酸基を4個以上と、ハロゲノ基を4個以下とを有するジベンゾ[g,p]クリセン誘導体を合成することができる。
【0035】
前述の方法で得られた化合物において、水酸基を、ヨウ化メチル、ヨウ化エチルなどのハロゲン化アルキルにより、アルキル化することで、アルコキシ基に変換することができる。この方法により、分岐構造を有するアルキル基等の置換基を4個以上と、酸素原子含有官能基としてアルコキシ基を4個以上と、ハロゲノ基を4個以下有するジベンゾ[g,p]クリセン誘導体を合成することができる。
【0036】
本発明の製造方法により、直接、化合物1や2などのエーテル化合物を合成することができる。化合物3は、化合物1や2などのエーテル化合物を、三塩化アルミニウム、二塩化エチルアルミニウム、一塩化ジエチルアルミニウム、三ヨウ化ホウ素、三臭化ホウ素、三塩化ホウ素、三フッ化ホウ素などのルイス酸試薬により、脱エーテル化することによって、合成することができる。化合物4などのヒドロキシエーテル化合物は、化合物3などのアルコール化合物に、2-クロロエタノール、2ーブロモエタノール、炭酸エチルなどのヒドロキシエチル化剤を反応させることによって合成することができる。化合物5などの環状エーテル化合物は、化合物3などのアルコール化合物に、ブロモクロロエタン、ブロモヨードエタン、ヨードクロロエタンなどのジハロメタンを反応させることによって合成することができる。
【0037】
化合物6、化合物7などの誘導体の中心の6:6-炭素-炭素二重結合に、付加反応して得られたジインデノ(1,2,3,4-defg:1’,2’,3’,4’-mnop)クリセン誘導体は、N-メチルグリシンとホルムアルデヒドからトルエン溶媒の反応系中にて発生させたアゾメチンイリドを反応させて合成したり、ブロモホルムとベンジルトリエチルアンモニウムクロリドと50%水酸化ナトリウム水溶液をベンゼン溶媒の反応系中にて発生させたジブロモカルベン種を反応させて合成したりすることによって合成することができる。
【0038】
本発明のジベンゾ[g,p]クリセン誘導体、および、スピロケトン誘導体は、高分子材料、光機能性材料、電子材料の分野に適用される。具体的には、リソグラフィー用材料、有機EL用材料、接着剤等の樹脂用材料、スーパーエンジニアリングプラスチック用材料等が挙げられる。特に、薄膜トランジスターの正孔輸送物質や有機発光ダイオードの発光素子や、その前駆体の化合物として応用可能である。また、屈折率が高く、プラスチックレンズなどの光学材料として応用可能である。
【実施例0039】
以下、本発明の実施例について説明するが、本発明は、以下の実施例に限定されない。
【0040】
実施例において、禁水反応はアルゴンまたは窒素雰囲気下で行なっており、特に断りのない限り実験は禁水条件で実施した。購入した無水溶媒・試薬は、改めて精製して純度を向上させることなく使用した。薄層クロマトグラフィーとしてMerck silica60F254を使用し、カラムクロマトグラフィーとしてシリカゲル60(関東化学(株)製)を用いた。高分解能質量測定(HRMS)として飛行時間型質量分析法(MALDI-TOFまたはLCMS-IT-TOF)または直接質量分析法(DART-MS)のいずれかを用いた。
【0041】
H-NMR、13C-NMRスペクトルについては、5mmのQNPプローブを用い、それぞれ400MHz、100MHzで測定した。化学シフト値はδ(ppm)で示しており、それぞれの溶媒中での基準値はH-NMR:CHCl(7.26),CHCl(5.32)、DMSO(2.50);13C-NMR:CDCl(77.0)、DMSO(39.5)としている。分裂のパターンは、s:単一線、d:二重線、t:三重線、q:四重線、m:多重線、br:幅広線で示す。
【0042】
【化16】
【0043】
合成例1(3,6,11,14-テトラメトキシ-2,7,10,15-テトライソプロピル-4,5,12,13-テトラブロモ-ジベンゾ[g,p]クリセンの合成)
アルゴン雰囲気下、3,6,11,14-テトラメトキシジベンゾ[g,p]クリセン(4.49g,10mmol)の無水塩化メチレン(50mL)溶液に、室温で塩化アルミニウム(6.40g,48mmol)、2-クロロプロパン(14.6mL,160mmol)を加えた。室温で89時間撹拌後、0℃下で1M塩酸水溶液(200mL)を用いて反応を停止した。水層に対して塩化メチレンで抽出操作(50mL×3)を行い、合わせた有機層を飽和食塩水で洗浄し(50mL)、芒硝乾燥、真空乾燥後、7.51gの粗生成物を得た。シリカゲルを用いた濾過カラム精製操作(展開溶媒はヘキサン/塩化メチレン、4:1)を行い、5.07g(82%)の3,6,11,14-テトラメトキシ-2,7,10,15-テトライソプロピル-ジベンゾ[g,p]クリセン(化合物a)を黄色固体として得た。
【0044】
化合物aのデータ:
HNMR(400MHz,CDCl)8.42(s,4H),8.19(s,4H),3.96(s,12H),3.53(sept,J=6.9Hz,4H),1.45(d,J=6.9Hz,24H)ppm;
13CNMR(100MHz,CDCl)155.7,137.4,128.2,127.7,125.0,121.0,108.5,55.9,28.0,23.2ppm;
MS(DART-TOF)m/z:617[MH]
IR(neat):2956,2865,1619,1491,1459,1412,1244,1045,877cm―1
HRMS(DART-TOF)calcd for C4249:617.3631[MH],found:617.3626;
Anal.Calcd for C4248:C,82.05;H,7.54.Found:C,82.03;H,7.56.
【0045】
アルゴン雰囲気下、化合物a(6.8g,11mmol)の無水塩化メチレン(55mL)溶液に、0℃下で1M三臭化ホウ素(66mL,66mmol,塩化メチレン溶液)を5分かけて滴下した。0℃下2時間撹拌後、水(125mL)を用いて反応を停止した。水層に対して酢酸エチル(50mL×3)で抽出操作を行い、合わせた有機層を飽和食塩水で洗浄(50mL)、芒硝乾燥、真空乾燥後、5.63gの粗生成物を得た。シリカゲルを用いた濾過カラム精製操作(展開溶媒はトルエン/酢酸エチル、9:1)を行い、4.37g(74%)の3,6,11,14-テトラヒドロキシ-2,7,10,15-テトライソプロピル-ジベンゾ[g,p]クリセン(化合物b)を緑色固体として得た。
【0046】
化合物bのデータ:
HNMR(400MHz,CDCl)8.37(s,4H),8.02(s,4H),5.01(s,4H),3.43(sept,J=6.8Hz,4H),1.48(d,J=6.8 Hz,24H)ppm;
13CNMR(100MHz,CDCl)151.7,135.2,128.2,126.8,125.5,121.3,113.1,28.3,23.0ppm;
MS(DART-TOF)m/z:561[MH]
IR(neat):3386,2956,2865,1623,1499,1423,1236,1152,989,877cm-1
HRMS(DART-TOF) calcd for C3841:561.3005[MH],found:561.2988.
【0047】
アルゴン雰囲気下、化合物b(5.89g,10.5mmol)の無水塩化メチレン(105mL)溶液に、-20℃下で臭素(50.5mL,50.5mmol,1M塩化メチレン溶液)を5分かけて滴下した。室温まで自然昇温後、2時間撹拌、0℃下で1Mチオ硫酸ナトリウム水溶液(130mL)と1M塩酸水溶液(130mL)を加えて反応を停止した。有機層を分離し、水層に対して酢酸エチル(50mL×3)で抽出操作を行い、合わせた有機層を飽和食塩水で洗浄(50mL)、芒硝乾燥、真空乾燥後、11.2gの粗生成物を得た。シリカゲルを用いた濾過カラム精製操作(展開溶媒はトルエンのみ)を行い、7.39g(80%)の3,6,11,14-テトラヒドロキシ-2,7,10,15-テトライソプロピル-4,5,12,13-テトラブロモジベンゾ[g,p]クリセン(化合物c)を黄色固体として得た。
【0048】
化合物cのデータ:
HNMR(400MHz,CDCl)8.39(s,4H),6.17(s,4H),3.55(qq,J=6.9,6.9Hz,4H),1.53(d,J=6.9Hz,12H),1.42(d,J=6.9Hz,12H)ppm;
13CNMR(100MHz,CDCl)149.1,135.8,133.4,127.9,124.5,120.9,110.7,29.5,23.0,22.8ppm;
MS(DART-TOF)m/z:877[MH]
IR(neat):3438,2959,2865,1144,752,582cm-1
HRMS(DART-TOF)calcd for C3837Br:876.9384[MH],found:876.9352.
【0049】
アルゴン雰囲気下、化合物c(11.0g,12.6mmol)をアセトン(200mL)に懸濁させ、ヨウ化メチル(31.4mL,504mmol)、ジアザビシクロウンデセン(37.5mL,252mmol)を加えた。室温で12時間撹拌後、3M塩酸水溶液(300mL)を用いて反応を停止した。有機層を分離し、水層に対してトルエン(70mL×3)で抽出操作を行い、合わせた有機層を飽和食塩水で洗浄(100mL)、芒硝乾燥、真空乾燥後、10.8gの粗生成物を得た。シリカゲルを用いたカラム精製操作(展開溶媒はヘキサン/酢酸エチル、19:1)を行い、8.63g(74%)の3,6,11,14-テトラメトキシ-2,7,10,15-テトライソプロピル-4,5,12,13-テトラブロモジベンゾ[g,p]クリセン(化合物d)を黄色固体として得た。
【0050】
化合物dのデータ:
HNMR(400MHz,CDCl)8.43(s,4H),4.00(s,12H),3.55(qq,J=6.9,6.9Hz,4H),1.55(d,J=6.9Hz,12H),1.39(d,J=6.9Hz,12H)ppm;
13CNMR(100MHz,CDCl)154.7,141.9,134.4,130.1,127.1,121.3,118.3,61.8,28.6,24.24,24.16ppm;
MS(DART-TOF)m/z:933[MH]
IR(neat):2955,2928,1456,1389,1330,1254,1040,784cm-1
HRMS(DART-TOF)calcd for C4245Br:933.0010[MH],found:932.9991;
Anal.Calcd for C4244Br:C,54.10;H,4.76.Found:C,54.39;H,4.98.
【0051】
実施例1(3,4,9,10-テトラメトキシ-2,5,8,11-テトライソプロピル-ジインデノ(1,2,3,4-defg:1’,2’,3’,4’-mnop)クリセン(化合物1)の合成)
アルゴン雰囲気下、化合物d(140mg,0.15mmol)のDMF(3mL)溶液にN,N-ジイソプロピルエチルアミン(0.2mL,1.2mmol)、ビス(トリ-tert-ブチルホスフィン)パラジウム(0)(77mg,0.15mmol)とトリ-tert-ブチルホスフィン(0.87mL,0.3mmol,10w%ヘキサン溶液)を加えた。室温下のオイルバスに浸し、125℃まで徐々に昇温した。その後23時間攪拌し、室温まで自然降温後、セライトを詰めたグラスフィルターで濾過操作(展開溶媒はトルエン)を行なった。200mLの分液漏斗に移し、飽和食塩水で洗浄(10mL)、芒硝乾燥、真空乾燥を行い、茶黄色の粗生成物を得た。シリカゲルを用いたカラム精製(展開溶媒はヘキサン/トルエン、2:1)を行い、63mg(68%)を黄色固体として得た。
【0052】
化合物1のデータ:
HNMR(400MHz,CDCl)8.22(s,4H),4.09(s,12H),3.67(sept,J=6.8Hz,4H),1.44(d,J=6.8Hz,24H)ppm;
13CNMR(100MHz,CDCl)155.5,145.1,138.2,135.7,130.1,129.4,123.7,64.9,28.7,25.2ppm;
MS(DART-TOF)m/z:613[MH]
IR(neat)2955,2865,1456,1405,1309,1049,1029,989,867cm-1
HRMS(DART-TOF)calcd for C4245:613.3318[MH],found;613.3314;
Anal.Calcd for C4244;C,82.32;H,7.24.Found:,82.32;H,7.15.
【0053】
【化17】

【0054】
合成例2(3,6,11,14-テトラメトキシ-2,7,10,15-tert-ブチル-4,5,12,13-テトラブロモ-ジベンゾ[g,p]クリセンの合成)
アルゴン雰囲気下、200mLの一口フラスコに3,6,11,14-テトラメトキシジベンゾ[g,p]クリセン(3.59g,8.0mmol)と塩化tert-ブチル(40mL,360mmol)を加えた。室温で10分間撹拌後、二塩化エチルアルミニウム(2mL,2.0mmol,1Mヘキサン溶液)を1分かけて加えた。50℃まで昇温し、12時間撹拌後、0℃下で水(70mL)を用いて反応を停止した。水層に対してトルエンで抽出操作(30mL×3)を行い、合わせた有機層を飽和食塩水で洗浄(100mL)、芒硝乾燥、真空乾燥後、5.80gの粗生成物を得た。シリカゲルを用いた濾過カラム精製操作(展開溶媒はヘキサン/トルエン、9:1)を行い、4.95g(92%)の3,6,11,14-テトラメトキシ-2,7,10,15-テトラ-tert-ブチル-ジベンゾ[g,p]クリセン(化合物e)を黄白色固体として得た。
【0055】
化合物eのデータ:
HNMR(400MHz,CDCl)8.53(s,4H),8.21(s,4H),3.98(s,12H),1.58(s,36H)ppm;
13CNMR(100MHz,CDCl)157.2,138.5,128.4,127.4,124.8,121.6,109.5,55.6,35.7,30.2ppm;
MS(DART-TOF)m/z:673[MH]
IR(neat)2949,1610,1491,1451,1404,1228,1085,882,838cm-1
HRMS(DART-TOF)calcd for C4657:673.4257[MH],found;673.4261;
Anal.Calcd for C4656;C,82.10;H,8.39.Found:C,82.10;H,8.43.
【0056】
アルゴン雰囲気下、1000mLの一径フラスコにジメチルホルムアミド(180mL)と1-デカンチオール(31mL,150mmol)を加えた。0℃下カリウムtert-ブトキシド(12.6g,112mmol)を加え、15分間撹拌後、室温まで自然昇温し、化合物e(6.30g,9.36mmol)を加えた。145℃まで昇温し、17時間撹拌後、1M塩酸水溶液(120mL)で反応を停止した。水層に対して酢酸エチルで抽出操作(50mL×3)を行い、合わせた有機層を飽和食塩水で洗浄(100mL)、芒硝乾燥、真空乾燥後、30.1gの粗生成物を得た。シリカゲルを用いた濾過カラム精製操作(展開溶媒はトルエン/塩化メチレン、4:1)を行い、4.91g(85%)の3,6,11,14-テトラヒドロキシ-2,7,10,15-テトラ-tert-ブチル-ジベンゾ[g,p]クリセン(化合物f)を緑黄色固体として得た。
【0057】
化合物fのデータ:
HNMR(400MHz,CDCl)8.50(s,4H),7.96(s,4H),5.09(s,4H),1.61(s,36H)ppm;
13CNMR(100MHz,CDCl)152.7,136.6,128.1,126.1,125.0,121.7,114.0,35.3,29.8ppm;
MS(DART-TOF)m/z:616[M]
IR(neat)3598,3538,3379,2952,2909,2865,1619,1415,1165,882cm-1
HRMS(DART-TOF)calcd for C4248:616.3553[M],Found;616.3533.
【0058】
アルゴン雰囲気下、化合物f(6.17g,10mmol)の無水塩化メチレン(104mL)溶液に、-78℃下で臭素(48mL,48mmol,1M塩化メチレン溶液)を15分かけて滴下し、30分間撹拌した。0℃まで昇温し、1時間撹拌後、3Mチオ硫酸ナトリウム水溶液(100mL)と1M塩酸水溶液(130mL)を加えて反応を停止した。有機層を分離し、水層に対して酢酸エチル(50mL×3)で抽出操作を行い、合わせた有機層を飽和食塩水で洗浄(100mL)、芒硝乾燥、真空乾燥後、8.32gの粗生成物を得た。シリカゲルを用いた濾過カラム精製操作(展開溶媒はヘキサン/トルエン、4:1)を行い、4.31g(46%)の3,6,11,14-テトラヒドロキシ-2,7,10,15-テトラ-tert-ブチル-4,5,12,13-テトラブロモジベンゾ[g,p]クリセン(化合物g)を黄色固体として得た。
【0059】
化合物gのデータ:
HNMR(400MHz,CDCl3)8.52(s,4H),6.38(s,4H),1.61(s,36H)ppm;
13CNMR(100MHz,CDCl)149.6,137.0,133.1,127.9,123.8,121.2,112.2,36.1,29.7ppm;
MS(DART-TOF)m/z:932[M]
IR(neat)3458,2952,2908,2865,1405,1385,1175,1025,875,728cm-1
HRMS(DART-TOF)calcd for C4244Br:931.9932[M],found;931.9931.
【0060】
アルゴン雰囲気下、化合物g(11.1g,12mmol)をアセトン(150mL)に懸濁させ、ヨードメタン(30mL,480mmol)とジアザビシクロウンデセン(36mL,240mmol)を12分かけて加えた。室温で下1時間撹拌後、1M塩酸水溶液(100mL)で反応を停止した。水層に対して塩化メチレンで抽出操作(100mL×3)を行い、合わせた有機層を飽和食塩水で洗浄(100mL)、芒硝乾燥、真空乾燥後、12.5gの粗生成物を得た。シリカゲルを用いた濾過カラム精製操作(展開溶媒はヘキサン/トルエン、2:1)を行い、10.3g(87%)の3,6,11,14-テトラメトキシ-2,7,10,15-テトラ-tert-ブチル-4,5,12,13-テトラブロモジベンゾ[g,p]クリセン(化合物h)を白黄色固体として得た。
【0061】
化合物hのデータ:
HNMR(400MHz,CDCl)8.53(s,4H),4.15(s,12H),1.59(s,36H)ppm;
13CNMR(100MHz,CDCl)157.1,142.9,134.1,130.5,126.4,122.1,118.6,61.8,36.1,31.0ppm;
MS(DART-TOF)m/z:989[MH]
IR(neat)2955,2920,2853,1373,1358,1230,1207,1045,827cm-1
HRMS(DART-TOF)calcd for C4653Br:989.0636[MH],found;989.0609;
Anal.Calcd for C4652Br;C,55.89;H,5.30.Found:C,55.88;H,5.42.
【0062】
実施例2(3,4,9,10-テトラメトキシ-2,5,8,11-テトラ-tert-ブチル-ジインデノ(1,2,3,4-defg:1’,2’,3’,4’-mnop)クリセン(化合物2)の合成)
アルゴン雰囲気下、化合物h(148mg,0.15mmol)のN,N-ジイソプロピルエチルアミン(3mL)溶液にビス(トリ-tert-ブチルホスフィン)パラジウム(0)(77mg,0.15mmol)とトリ-tert-ブチルホスフィン(0.3mL,0.3mmol,1Mヘキサン溶液)を加えた。室温下のオイルバスに浸し125℃まで徐々に昇温した。その後2時間攪拌し、室温まで自然降温後、セライトを詰めたグラスフィルターで濾過操作(展開溶媒はトルエン)を行なった。200mLの分液漏斗に移し、飽和食塩水で洗浄(20mL)、芒硝乾燥、真空乾燥を行い、茶黄色の粗生成物を得た。シリカゲルを用いたカラム精製(展開溶媒はヘキサン/トルエン、2:1)を行い、25mg(25%)を黄色固体として得た。
【0063】
化合物2のデータ:
HNMR(400MHz,CDCl)8.30(s,4H),4.04(s,12H),1.62(s,36H)ppm;
13CNMR(100MHz,CDCl)157.6,145.9,138.3,135.0,130.1,127.9,123.6,63.6,37.0,31.6ppm;
MS(DART-TOF)m/z:669[MH]
IR(neat)2952,1395,1292,1244,1221,993cm-1
HRMS(DART-TOF)calcd for C4653:669.3944[MH] found;669.3934;
Anal. Calcd for C4652;C,82.60;H,7.84.Found:C,82.60;H,7.84.
【0064】
【化18】
【0065】
実施例3(3,4,9,10-テトラヒドロキシ-2,5,8,11-テトライソプロピル-ジインデノ(1,2,3,4-defg:1’,2’,3’,4’-mnop)クリセン(化合物3)の合成)
アルゴン雰囲気下、3,4,9,10-テトラメトキシ-2,5,8,11-テトライソプロピル-ジインデノ(1,2,3,4-defg:1’,2’,3’,4’-mnop)クリセン化合物1(612mg、1.0mmol)のCHCl(10mL)溶液に1M三臭化ホウ素(4.8mL、4.8mmol)を0℃下で4分かけて滴下し、15分撹拌した。その後、室温に自然昇温して4時間反応させ、0℃下で水(20mL)を用いて反応を停止した。反応溶液を酢酸エチルに溶解させ、水層に対して酢酸エチルで抽出操作(20mL×3)を行った。合わせた有機層を飽和食塩水洗浄(20mL)、芒硝乾燥、真空乾燥を行い、粗生成物を得た。シリカゲルを用いたカラム精製(展開溶媒はトルエン/酢酸エチル、19:1)を行い419mg(74%)の化合物3を黄緑色固体として得た。
【0066】
化合物3のデータ
HNMR(400MHz,CDCl)8.05(s,4H),7.04(s,4H),3.39(sept,J=6.8Hz,4H),1.45(d,J=6.8Hz,24H)ppm;
13CNMR(100MHz,DMSO-d)148.2,139.0,137.0,136.3,127.7,124.7,123.0,27.5,23.6ppm;
MS(DART-TOF)m/z:557[MH]
IR(neat)3391,2955,2928,1433,1286,1190,1160,1049,863,634,582cm-1
HRMS(DART-TOF)calcd for C3837:557.2692[MH],found;557.2692.
【0067】
実施例4 2,2’,2’’,2’’’-(2,5,8,11,テトライソプロピルジインデノ(1,2,3,4-defg:1’,2’,3’,4’-mnop)クリセン-1,6,7,12-テトライル)テトラキス(オキシ))テトラキス(エタン-1-オール)(化合物4)の合成)
アルゴン雰囲気下、化合物3(111mg,0.2mmol)のMeOH(12mL)溶液に炭酸カリウム(332mg,2.4mmol)と2-クロロエタノール(0.6mL,7.2mmol)を加えた。50℃下で46時間攪拌し、0℃下で1M塩酸(10mL)を用いて反応を停止した。反応溶液を酢酸エチルに溶解させ、水層に対して酢酸エチルで抽出操作(10mL×3)を行った。合わせた有機層を飽和食塩水洗浄(10mL×3)、芒硝乾燥、真空乾燥を行い、粗生成物を得た。シリカゲルを用いたカラム精製(展開溶媒は酢酸エチル/ヘキサン、2:1)を行い88mg(61%)の化合物4を黄色固体として得た。
【0068】
化合物4のデータ
HNMR(400MHz,CDCl)8.26(s,4H),4.28(t,J=4.0Hz,8H),4.01(t,J=4.0Hz,8H),3.86(brs,4H),3.64(sept,J=6.8Hz,4H),1.45(d,J=6.8Hz,24H)ppm;
13CNMR(100MHz,CDCl)152.2,144.6,137.6,135.0,130.2,129.0,124.0,78.8,62.0,28.0,24.7ppm;
MS(DART-TOF)m/z:733[MH]
IR(neat)3347,2956,2921,1425,1284,1180,1053,870cm-1
HRMS(DART-TOF)calcd for C4652:733.3740[MH],found;733.3724.
【0069】
【化19】
【0070】
実施例5(10,16,21,27-テトラキス(イソプロピル)-12,14,23,25-テトラオキサデカシクロ(17.13.0.02,30.03,7.04,18.05,15.06,11.08,29.022,32.028,31)ドトリアコンタ-1(32),2,4,6,8,10,15,17,19,21,26,28,30-トリデカエン(化合物5)の合成)
アルゴン雰囲気下、化合物3(168mg,0.3mmol)のDMSO(3.0mL)とトルエン(0.75mL)溶液に炭酸カリウム(166mg,1.2mmol)とブロモクロロエタン(1.5mL,6.0mmol)を加えた。55℃で2時間攪拌し、0℃下で水(3mL)を用いて反応を停止した。反応溶液を塩化メチレンに溶解させ、水層に対して塩化メチレンで抽出操作(10mL×3)を行った。合わせた有機層を飽和食塩水で洗浄(10mL×3)、芒硝乾燥、真空乾燥を行い、粗生成物を得た。シリカゲルを用いた濾過カラム精製(展開溶媒はヘキサン/酢酸エチル、9:1)を行い、148mg(85%)の化合物5を黄色固体として得た。
【0071】
化合物5のデータ
HNMR(400MHz,CDCl)7.82(s,4H),6.68(d,J=7.3Hz,2H),6.18(d,J=7.3Hz,2H),3.42(qq,J=6.9,6.9 Hz,4H),1.44(d,J=6.9Hz,12H),1.22(d,J=6.9Hz,12H) ppm;
13CNMR(100MHz,CDCl)156.4,141.8,141.4,137.8,132.0,126.7,122.4,96.6,28.9,24.2,23.7ppm;
MS(DART-TOF)m/z:581[MH]
IR(neat)2955,1460,1420,1298,1223,938cm-1
HRMS(DART-TOF)calcd for C4037:581.2692[MH],found;581.2662;
Anal.Calcd for C4036;C,82.73;H,6.25.Found: C,82.72;H,6.41.
【0072】
【化20】
【0073】
実施例6(3,4,9,10-テトラメトキシ-2,5,8,11-テトライソプロピル-14-メチル-3a2, 3b2-(メタノイミノメタノ)ジインデノ(1,2,3,4-defg:1’,2’,3’,4’-mnop)クリセン(化合物6)の合成)
アルゴン雰囲気下、テトラメトキシジインデノクリセン化合物1(61mg,0.1 mmol)のトルエン(30mL)溶液にN-メチルグリシン(18mg,0.2mmol)とパラホルムアルデヒド(15mg,0.5mmol)を加えた。反応系中で形成される水はディーン・スターク装置を取り付けて除去した。125℃で15分撹拌した後、N-メチルグリシン(18mg,0.2mmol)とパラホルムアルデヒド(15mg,0.5mmol)を15分間隔で添加し、合計23回加えた。その後、24時間攪拌し、室温まで冷却後、反応溶液をトルエンに溶解させ、有機層を水洗浄(10mL×3)、飽和食塩水で洗浄(10mL)、芒硝乾燥、真空乾燥を行い、粗生成物を得た。シリカゲルを用いたカラム精製(展開溶媒はヘキサン/酢酸エチル、19:1)を行い19mg(29%)の化合物6を黄色固体として得た。
【0074】
化合物6のデータ:
1HNMR(400MHz,CDCl)7.15(s,4H),3.82(s,12H),3.35(qq,J=6.9,6.9Hz,4H),3.26(s,4H),2.30(s,3H),1.26(d,J=6.9Hz,12H),1.23(d,J=6.9Hz,12H)ppm;
13CNMR(100MHz,CDCl)155.5,153.9,143.2,131.6,126.2,119.9,77.1,64.2,56.7,42.1,27.7,25.2,24.4ppm;
MS(DART-TOF)m/z:670[MH]
IR(neat)2956,2925,1451,1404,1268,1228,1073,1013,985cm-1
HRMS(DART-TOF)calcd for C4552NO:670.3896[MH],found;670.3864.
【0075】
【化21】
【0076】
実施例7(13,13-ジブロモ-3,4,9,10-テトラメトキシ-2,5,8,11-テトライソプロピル-3a2, 3b2-メタノジインデノ(1,2,3,4-defg:1’,2’,3’,4’-mnop)クリセン(化合物7)の合成)
大気圧下、テトラメトキシジインデノクリセン化合物1(183mg,0.3mmol)のベンゼン(30mL)溶液に50v/v%水酸化ナトリウム水溶液(15mL,287mmol)とベンジルトリエチルアンモニウムクロライド(34mg,0.15mmol)とブロモホルム(0.8mL,9mmol)を加えた。室温で4時間攪拌し、0℃で飽和塩化アンモニウム水溶液(30mL)を用いて反応を停止した。反応溶液を酢酸エチルに溶解させ、水層に対して酢酸エチルで抽出操作(30mL×3)を行った。合わせた有機層を飽和食塩水洗浄(30mL×3)、芒硝乾燥、真空乾燥を行い、粗生成物を得た。シリカゲルを用いた濾過カラム精製(展開溶媒はヘキサン/塩化メチレン、2:1)を行い115mg(49%)の化合物7を茶黄色固体として得た。
【0077】
化合物7のデータ:
HNMR(400MHz,CDCl)7.44(s,4H),3.90(s,12H),3.43(qq,J=6.9,6.9Hz,4H),1.33(d,J=6.9Hz,12H),1.25(d,J=6.9Hz,12H)ppm;
13CNMR(100MHz,CDCl)154.3,144.6,140.9,132.9,128.9,121.0,64.1,55.4,29.9,27.9,24.6,23.7ppm;
MS(DART-TOF)m/z:785[MH]
IR(neat)2960,1455,1225,1206,1077,1001,982,868cm-1
HRMS(DART-TOF)calcd for C4345Br:785.1664[MH],found;785.1681.
【産業上の利用可能性】
【0078】
本発明のジインデノ(1,2,3,4-defg:1‘,2’,3‘,4’-mnop)クリセン誘導体は、高い電子受容体としての性質をもとにしたn型半導体としての機能が期待され、電子をキャリアとする小分子型有機エレクトロニクス材料やオプトエレクトロニクス材料や高分子材料として適用可能であると期待される。本発明の最も重要な要素は、該誘導体骨格に対して位置特異的に四つの嵩高いアルキル基と、位置特異的に四つの酸素原子含有官能基の導入を初めて可能としたことである。その主たる効果は、以下の通りである。
(1)嵩高いアルキル置換基や酸素官能基を持つため、さまざまな有機溶媒に溶ける。
(2)酸素原子含有官能基を持つため、更なる官能基化や高分子材料への取り付けなどを実施できる。
(3)画期的な機能性材料の開発につながる可能性を有する。