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特開2022-170642断線検出を行なうアナログ信号入力装置および制御システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022170642
(43)【公開日】2022-11-10
(54)【発明の名称】断線検出を行なうアナログ信号入力装置および制御システム
(51)【国際特許分類】
   G01R 31/54 20200101AFI20221102BHJP
【FI】
G01R31/54
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021147410
(22)【出願日】2021-09-10
(31)【優先権主張番号】P 2021075985
(32)【優先日】2021-04-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】501428545
【氏名又は名称】株式会社デンソーウェーブ
(74)【代理人】
【識別番号】110000028
【氏名又は名称】弁理士法人明成国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】遠藤 広志
(72)【発明者】
【氏名】内沢 里保
【テーマコード(参考)】
2G014
【Fターム(参考)】
2G014AA02
2G014AB25
2G014AB28
2G014AB34
2G014AB38
2G014AC18
(57)【要約】
【課題】アナログ信号入力装置へのセンサの接続の断線を検出する。
【解決手段】センサが接続される一組の入力端子からのアナログ信号を第1入力ラインを介した差動入力として、第1入力ライン間に第1抵抗器が介装された第1入力部により受け付ける。アナログ信号入力装置は、この第1入力部と同様の構成を備えた第2入力部とをそれぞれ介して読み取ったアナログ信号を、複数ビットのデジタル信号の形態に変換して出力する。所定の指示を受けたとき、一組の第1入力ラインの一方から、電源ラインに電流を供給し、この電流供給を受けて、第1入力部の出力が上昇した際の第2入力部の出力が、予め定めた閾値以上である場合は断線と判断する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アナログ信号入力装置であって、
センサが接続される一組の入力端子と、
前記入力端子からのアナログ信号を一組の第1入力ラインを介した差動入力として受け付ける第1入力部であって、前記第1入力ライン間に第1抵抗器が介装された第1入力部と、
前記入力端子からのアナログ信号を一組の第2入力ラインを介した差動入力として受け付ける第2入力部であって、前記第2入力ライン間に第2抵抗器が介装された第2入力部と、
前記第1入力部および前記第2入力部を介して前記アナログ信号を個別に読み取って、前記アナログ信号を、複数ビットのデジタル信号の形態に変換して出力する信号出力部と、
所定の指示を受けて動作し、前記一組の第1入力ラインの一方から、電源ラインに電流を供給する電流供給部と、
前記電流供給部からの電流供給を受けて、前記第1入力部の出力が上昇した際の前記第2入力部の出力が、予め定めた閾値以上であるか否かを判断し、判断結果を出力する判断部と、
を備えたアナログ信号入力装置。
【請求項2】
前記第1抵抗器および前記第2抵抗器は、それぞれ、前記センサからの前記アナログ信号の電圧の大きさを調整する分圧回路を構成する抵抗器として設けられた、請求項1記載のアナログ信号入力装置。
【請求項3】
前記第1入力ラインと前記電源ラインとの間には、前記第1入力ラインに寄生する浮遊容量以上の容量のコンデンサが介装された、請求項1または請求項2に記載のアナログ信号入力装置。
【請求項4】
前記閾値は、前記電流供給部から供給された電流により前記第1抵抗器の両端に生じる電圧によって、前記センサが前記入力端子に接続されていない場合に前記第2入力ラインに流れ込む電流により、前記第2抵抗器に生じる電圧に対応して定められた、請求項1から請求項3のいずれか一項に記載のアナログ信号入力装置。
【請求項5】
請求項1から請求項4のいずれか一項に記載のアナログ信号入力装置であって、
制御装置との間で前記デジタル信号を含む信号をやり取りする通信部を備え、
前記通信部は、前記やり取りされる信号に含まれる前記デジタル信号の大きさが、前記センサと前記入力端子との接続が断線している場合に生じ得る範囲に入っていると判断した前記制御装置が出力する指示信号を受け取った場合、断線検出のために前記所定の指示を前記電流供給部に対して行なう、
アナログ信号入力装置。
【請求項6】
前記判断部は、前記判断結果を、当該アナログ信号入力装置が接続された制御システムを管理する管理装置、および前記判断結果を使用者に提示する提示装置のうちの少なくとも一方に出力する、請求項1から請求項5のいずれか一項に記載のアナログ信号入力装置。
【請求項7】
信号出力部は、前記第1入力部を介して受け取る前記アナログ信号を前記デジタル信号に変換する第1アナログ・デジタル変換器と、前記第2入力部を介して受け取る前記アナログ信号を前記デジタル信号に変換する第2アナログ・デジタル変換器と、を備える、請求項1から請求項6のいずれか一項に記載のアナログ信号入力装置。
【請求項8】
前記信号出力部は、前記第1入力部および前記第2入力部を介して受け取る前記アナログ信号を、時分割により選択的にデジタル信号を変換するアナログ・デジタル変換器を備える、請求項1から請求項6のいずれか一項に記載のアナログ信号入力装置。
【請求項9】
請求項1から請求項8のいずれか一項に記載のアナログ信号入力装置であって、
前記判断部は、
前記電流供給部からの電流供給を受けた前記第2入力部の出力が、予め定めた閾値以上であると判断した第1の場合には、前記センサへの接続が断線しているとして前記判断結果を出力し、
前記電流供給部からの電流供給を受けた前記第2入力部の出力が、予め定めた閾値未満であると判断した第2の場合には、前記センサへの接続が断線しているとの前記判断結果を出力しない、
アナログ信号入力装置。
【請求項10】
前記判断部は、
前記第1の場合、前記電流供給を停止した後の前記第2入力部の出力について判別し、
前記電流供給を停止した後に前記第2入力部の出力が前記電流供給を受ける前の水準まで低下した場合には、前記センサへの接続が断線しているとの前記判断結果を出力し、
前記電流供給を停止した後に前記第2入力部の出力が前記電流供給を受ける前の水準まで低下しない場合には、前記センサへの接続が断線しているとの前記判断結果を出力しない、
請求項9に記載のアナログ信号入力装置。
【請求項11】
センサからのアナログ信号を入力しデジタル信号に変換して出力するアナログ信号入力装置と、前記アナログ信号入力装置と接続されてシステムの制御行なう制御装置と、を備えた制御システムであって、
アナログ信号入力装置は、
前記センサが接続される一組の入力端子と、
前記入力端子からのアナログ信号を一組の第1入力ラインを介した差動入力として受け付ける第1入力部であって、前記第1入力ライン間に第1抵抗器が介装された第1入力部と、
前記入力端子からのアナログ信号を一組の第2入力ラインを介した差動入力として受け付ける第2入力部であって、前記第2入力ライン間に第2抵抗器が介装された第2入力部と、
前記第1入力部および前記第2入力部を介して前記アナログ信号を個別に読み取って、前記アナログ信号を、複数ビットのデジタル信号の形態に変換して、前記制御装置に出力する信号出力部と、
前記制御装置からの所定の指示を受けて動作し、前記一組の第1入力ラインの一方から、電源ラインに電流を供給する電流供給部と、
前記電流供給部からの電流供給を受けて、前記第1入力部の出力が上昇した際の前記第2入力部の出力が、予め定めた閾値以上であるか否かを判断する判断部と、
前記判断の結果を、前記制御装置に出力する判断結果報知部と、
を備え、
前記制御装置は、
前記アナログ信号入力装置から受け取った前記センサの検出値に対応した前記デジタル信号の大きさが、前記センサが前記アナログ信号入力装置の前記入力端子に接続されていない場合と区別できない状態であることを条件の1つとして、前記所定の指示を、前記アナログ信号入力装置に出力する指示出力部と、
前記アナログ信号入力装置から受け取った前記判断結果が、前記センサと前記アナログ信号入力装置の前記入力端子との接続が断線していないと判断できない非正常状態である場合には、外部に制御信号を出力する制御信号出力部と、
を備える、
制御システム。
【請求項12】
請求項11に記載の制御システムであって、
更に、前記制御装置に接続される出力装置を備え、
前記出力装置は、
前記アナログ信号入力装置が接続された前記センサによって挙動が検出されている物理量の制御に関わるアクチュエータを駆動可能に接続されており、
前記制御装置から前記制御信号を受け取った時、前記アクチュエータを前記物理量の挙動が、当該制御システムにとって安全性が高まる側となる状態に向けて駆動する、
制御システム。
【請求項13】
前記制御システムは、前記制御システムを構成する各装置間が通信回線により、相互に接続されており、
少なくとも前記制御装置は、前記デジタル信号、前記所定の指示、前記判断結果および前記制御信号を、前記通信回線を介した通信により他の装置とやり取りする、請求項11または請求項12に記載の制御システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、断線検出を行なうアナログ信号入力装置およびこれを用いた制御システムに関する。
【背景技術】
【0002】
制御対象の状態を記録するデータロガーや、制御対象を所定のシーケンスで制御するPLCといった制御装置では、制御対象の状態を検出する入力装置が接続される。入力装置は、制御対象の状態を検出するためのセンサに接続され、センサからの信号を増幅したり信号を整形したりして、最終的にはデジタル信号に変換する。センサとしては、単に電圧値や電流値といった電気信号を検出するものもあれば、温度を検出する熱電対やサーミスタ、流量を検出する流量計、重さや歪みを検出するストレインゲージ、磁束量を検出するホール素子などの磁気センサ、電波強度や周波数などを検出するアンテナプローブなど、様々な状態量を検出し、これを電気信号にして出力するものが知られている。
【0003】
各種センサからのアナログ信号は、入力装置に備えられたアナログ・デジタルコンバータ(以下、ADCとも呼ぶ)により、制御装置が扱いやすい複数ビットのデジタル信号に変換される。センサと入力装置とを接続が何らかの不具合により断線した状態(オープンワイヤともいう)になると、制御装置は、制御対象の状態を正確に把握することができなくなるから、オープンワイヤの発生を検出する必要がある。このため、従来から、種々の断線検出の手法が提案されている。例えば特許文献1には、検出装置側からセンサに微少電流を流し、検出装置とセンサとの間のワイヤの断線を検出する構成が開示されている。また、非特許文献1に示すように、ADC自体に断線検出のための機能を備えたものも提案されている。こうしたADCでは、定電流源を用意し、センサが接続された入力端子間の電圧がオープンワイヤ時の電圧と区別できない状態になると、入力端子間に定電流源からの電流を流し、入力端子間の電圧上昇の挙動から断線の有無を検出する断線検出処理を行なう。一般に、センサなどの出力インピーダンスは低く、センサが接続される入力装置の入力インピーダンスは高いので、センサとの接続が正常になされているか断線しているかによって、定電流源による入力端子間の電圧上昇には違いが生じる。この違いを判別して、センサと入力装置との間の断線検出を行なう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2012-8014号公報
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】アナログ・デバイセズ株式会社製 アナログ・デジタル変換器 AD7124-4 データシート
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、こうした断線検出の手法では、断線検出のためにセンサを用いた測定の精度が低下したり、断線検出を行なう際にセンサ出力を読み取れなくなったりするという問題があった。例えば特許文献1の技術では、センサに微少電流を流すので、この電流値の変動によって検出精度が影響を受けてしまう。また、非特許文献1の技術では、断線検出をしている間、入力端子間には定電流源が接続されるので、断線が生じているか否かによらず、入力端子間の電圧は上昇し、断線検出が終わるまで、センサの出力値を読み取ることができない。更に、非特許文献1のADCに備えられている定電流源の供給電流は、0,5~4μA程度なので、入力端子間の電圧が断線か否かの判断が可能となる値に上昇するまでの時間が長く、センサの出力を計測できない期間が数秒に及ぶことがあり得る。生産設備では、センサの出力が秒単位で読み取れないという状態が生じることは、許されない場合が多い。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示は、以下の形態又は適用例として実現することが可能である。
【0008】
(1)本開示の第1の態様は、アナログ信号入力装置としての態様である。このアナログ信号入力装置は、センサが接続される一組の入力端子と、前記入力端子からのアナログ信号を一組の第1入力ラインを介した差動入力として受け付ける第1入力部であって、前記第1入力ライン間に第1抵抗器が介装された第1入力部と、前記入力端子からのアナログ信号を一組の第2入力ラインを介した差動入力として受け付ける第2入力部であって、前記第2入力ライン間に第2抵抗器が介装された第2入力部と、前記第1入力部および前記第2入力部を介して前記アナログ信号を個別に読み取って、前記アナログ信号を、複数ビットのデジタル信号の形態に変換して出力する信号出力部と、所定の指示を受けて動作し、前記一組の第1入力ラインの一方から、電源ラインに電流を供給する電流供給部と、前記電流供給部からの電流供給を受けて、前記第1入力部の出力が上昇した際の前記第2入力部の出力が、予め定めた閾値以上であるか否かを判断し、判断結果を出力する判断部と、を備える。
【0009】
このアナログ信号入力装置による断線検出の原理は、所定の指示を受けて、電流供給部が差動入力の第1入力ラインの一方から電源ライン(例えば接地側ライン)に電流を供給すると、この電流は第1入力ライン間に介装された第1抵抗器を流れ、第1入力部の出力が上昇し、この結果、入力端子において第1入力部の第1入力ラインと接続された第2入力部の第2入力ラインには、入力端子とセンサとの接続に断線が生じているか否かにより、異なる電圧が現われるというものである。第1入力ライン間には第1抵抗器が介装されており、電流供給部からの供給により、第1入力ライン間の電圧は上昇する。この電圧により第2入力ラインに電流が流れるが、この電流により第2入力ライン間に生じる電圧は、入力端子にセンサの内部抵抗が接続されているか否かにより異なる。
【0010】
このように、アナログ信号をデジタル信号に変換して出力するアナログ信号入力装置において、アナログ信号を差動入力として受け付ける第1入力部と第2入力部とを備える構成を用いて、容易に断線検出を行なうことができる。アナログ信号を差動入力として受け付ける2つの入力部を有することで、アナログ信号を入力する構成の冗長性を高めた上で、これを利用して断線検出を行なうので、回路構成上の無駄を排することができる。
【0011】
(2)本開示の第2の態様は、センサからのアナログ信号を入力しデジタル信号に変換して出力するアナログ信号入力装置と、前記アナログ信号入力装置と接続されてシステムの制御行なう制御装置と、を備えた制御システムとしての構成である。この制御システムでは、アナログ信号入力装置は、前記センサが接続される一組の入力端子と、前記入力端子からのアナログ信号を一組の第1入力ラインを介した差動入力として受け付ける第1入力部であって、前記第1入力ライン間に第1抵抗器が介装された第1入力部と、前記入力端子からのアナログ信号を一組の第2入力ラインを介した差動入力として受け付ける第2入力部であって、前記第2入力ライン間に第2抵抗器が介装された第2入力部と、前記第1入力部および前記第2入力部を介して前記アナログ信号を個別に読み取って、前記アナログ信号を、複数ビットのデジタル信号の形態に変換して、前記制御装置に出力する信号出力部と、前記制御装置からの所定の指示を受けて動作し、前記一組の第1入力ラインの一方から、電源ラインに電流を供給する電流供給部と、前記電流供給部からの電流供給を受けて、前記第1入力部の出力が上昇した際の前記第2入力部の出力が、予め定めた閾値以上であるか否かを判断する判断部と、前記判断結果を、前記制御装置に出力する判断結果報知部と、を備え、前記制御装置は、前記アナログ信号入力装置から受け取った前記センサの検出値に対応した前記デジタル信号の大きさが、前記センサが前記アナログ信号入力装置の前記入力端子に接続されていない場合と区別できない状態であることを条件の1つとして、前記所定の指示を、前記アナログ信号入力装置に出力する指示出力部と、前記アナログ信号入力装置から受け取った前記判断結果が、前記センサと前記アナログ信号入力装置の前記入力端子との接続が断線していないと判断できない非正常状態である場合には、外部に制御信号を出力する制御信号出力部と、を備えるものとしてよい。
【0012】
この制御システムでは、制御システムを構成する1つの装置であるアナログ信号入力装置での断線検出を、冗長性の高い構成において容易に行なうことができる。したがって、回路構成上の無駄を排することができる。また、制御システムを構成するアナログ信号入力装置とシステムの制御を行なう制御装置とが、協働して断線検出ができ、制御システムとしての信頼性を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】第1実施形態のアナログ信号入力装置を含む制御システムを示す概略構成図。
図2】入力部の具体的な構成を示す回路図。
図3】装置間のデータのやり取りを行なう通信パケットの形式を示す説明図。
図4】装置間でやり取りされるパケットの一例を示す説明図。
図5】流量計測処理ルーチンを示すフローチャート。
図6】断線検出時の電流の流れるルートを示す説明図。
図7】断線検出の様子を示すタイミングチャート。
図8】入力信号確認処理ルーチンを示すフローチャート。
図9】第2実施形態のアナログ信号入力装置を含む制御システムを示す概略構成図。
図10】第2実施形態の流量計測処理ルーチンを示すフローチャート。
図11】第3実施形態の流量計測処理ルーチンを示すフローチャート。
図12】第3実施形態で追加した第3電圧取得判断処理の内容を示すフローチャート。
図13】第3実施形態における断線検出の様子を示すタイミングチャート。
【発明を実施するための形態】
【0014】
A.第1実施形態:
(A1)ハードウェア構成:
第1実施形態のアナログ信号入力装置40を含む制御システム20の構成を、図1に示す。この制御システム20は、システム全体の処理を司る制御装置30、アナログ信号の入力を受け付けるアナログ信号入力装置40、アクチュエータなどを駆動する出力装置80を、通信回線90を介して接続した構成を備える。図1では、1つの制御装置30に対して、1つのアナログ信号入力装置40および1つの出力装置80のみを示したが、実際には、デジタル信号の入力を受け付ける入力装置を含めて、複数の入力装置や、複数の出力装置が、制御システム20に含まれてよい。制御装置30は、PLC(プログラマブルロジックコントローラ)とも言う。
【0015】
第1実施形態では、センサの一例として流量計11を、アナログ信号入力装置40に接続している。この例では、システム内の配管13内を流れる流体の流量を計測する流量計11からのアナログ信号を、アナログ信号入力装置40を用いて受け付けて、配管13内の流体の流量を計測する。アナログ信号入力装置40は、計測した流量に対応する信号を制御装置30に通信回線90を介して出力する。制御装置30は、流量に応じて、流量制御弁17の制御量を算出し、これを出力装置80に出力し、出力装置80によりアクチュエータ15を制御する。
【0016】
流量計11とアナログ信号入力装置40の入力端子50とは、ノイズの影響を受けにくいツイステッドペアケーブル19により接続している。これは、アクチュエータ15の接続でも同様である。もとより、平行ケーブルなど、他の形式の電線で接続してもよい。
【0017】
制御装置30は、周知のCPU31、メモリ32、通信部35、表示部37を備える。制御装置30は、通信部35により、通信回線90を介して、アナログ信号入力装置40や出力装置80とやり取りし、配管13を流れる流体の流量を初めとする各種の物量を制御する。
【0018】
アナログ信号入力装置40は、流量計11を接続する一組の入力端子50と、これに接続された第1入力部51および第2入力部52とを備える。また、アナログ信号入力装置40は、第1入力部51および第2入力部52から入力したアナログ信号をデジタル信号に変換して出力する信号出力部55、第1入力部51に定電流を供給する電流供給部57、アナログ信号入力装置40全体の制御を司るメモリ内蔵のCPU41、CPU41が実行するプログラムにより実現される断線検出の判断部43、通信回線90を介して他の装置とのやり取りを行なう通信部45、アナログ信号入力装置40全体に電力を供給する電源部47を備える。図1および他の図において、電源部47が出力する電力の電源ラインは、正電圧ラインVcc側を○印に横バーで示し、接地ラインGND側を下向き▽印により示す。
【0019】
CPU41は、信号出力部55や通信部45と接続されており、信号出力部55の出力するデジタル信号を読み取ることで、流量計11が計測した配管13内の流体の流量を読み取ることができる。また、その結果を、通信部45を介して制御装置30のCPU31に伝えたり、CPU31からの指示を受けて断線検出を行なって、その結果をCPU31に報知したりすることができる。アナログ信号入力装置40は、1つの入力端子50に入力するアナログ信号を、第1,第2入力部51,52とアナログ・デジタル変換器ADC1,ADC2を介して、つまり同じアナログ信号を2系統のハードウェアで扱うことができる。このような1つのアナログ信号を2系統で扱えるようにしているのは、ハードウェアを二重化して、その冗長性を高め、1つの入力系統に故障などが生じても、他方の入力系統により流量計測を継続できる状態を確保し、システムの安全性を高めるためである。第1入力部51や第2入力部52、信号出力部55の構成は、後で詳述する。こうした二重化は、入力される全てのアナログ信号に対して行なっているが、もとよりシステムにおけるアナログ信号の重要性を格付けして、システムの安全性の確保のために、ランクの高いアナログ信号を二重化し、安全性に関わらない、あるいは関わる程度の低いアナログ信号については、二重化しないといった対応も可能である。更に、安全性を高めるために、三重化以上の多重化を行なってもよい。
【0020】
出力装置80は、装置全体の制御を司るCPU81、制御に必要なプログラムやデータを保存するメモリ82、外部の機器に対する駆動信号を出力する出力部85、通信回線90を介した通信を行なう通信部87を備える。CPU81は、メモリ82に記憶したプログラマブルを実行することで、出力部85を介した外部機器、例えば流量制御弁17に結合されたアクチュエータ15を駆動する。アクチュエータ15としては、モータやソレノイドなど、種々のデバイスが採用可能である。また、CPU81は、通信部87を介して、制御装置30とやり取り可能であり、制御装置30からの指示を受けたり、制御装置30に出力装置80の現在のステータスを伝えたりできる。
【0021】
つぎに、図2を用いて、アナログ信号入力装置40の回路構成について詳しく説明する。アナログ信号入力装置40は複数のアナログ信号を入力可能なモジュールであるが、図では、1つのアナログ信号を処理する構成のみを示した。アナログ信号入力装置40には、複数の入力用端子が設けられている。そのうちの1つの一組の入力端子50には、図1に示した流量計11からのツイステッドペアケーブル19が接続されている。アナログ信号入力装置40の内部では、この入力端子50には、2組の信号線61,62が接続されている。以下、これを第1入力ライン61,第2入力ライン62と呼ぶ。
【0022】
第1入力ライン61には、第1入力部51が接続され、第2入力ライン62には、第2入力部52が接続されている。第1入力部51と第2入力部52は、この実施形態では、全く同一の内部構成を備える。図において、符号Rを付して示されているボックスは抵抗器を示し、符号Cを付して示されているものはコンデンサを示す。
【0023】
一組の第1入力ライン61の一方には、入力側から抵抗器R11、分圧回路65の第1分圧抵抗器RD1、ノイズ除去用の抵抗器R13,R14、オペアンプOP1が接続され、オペアンプOP1の出力は、ノイズ除去用の抵抗器R15を介してアナログ・デジタル変換器ADC1のプラス側入力端子I0+に接続されている。第1入力ライン61の他方には、入力側から抵抗器R21、ノイズ除去用の抵抗器R23,R24、オペアンプOP2が接続され、オペアンプOP2の出力は、ノイズ除去用の抵抗器R25を介してアナログ・デジタル変換器ADC1のマイナス側入力端子I0-に接続されている。分圧回路65の第2分圧抵抗器RD2は、第1分圧抵抗器RD1および抵抗器R13の接続点と第1入力ライン61の他方との間に介装されている。分圧回路65は、入力端子50に入力した電圧を、2つの抵抗器、つまり第1分圧抵抗器RD1と第2分圧抵抗器RD2とにより、RD1/(RD1+RD2)に分圧する。ここで、各符号RD1,RD2は、各抵抗器RD1,RD2の抵抗値である。分圧回路65は、センサ、ここでは流量計11の出力インピーダンスに対して十分に高い抵抗値、例えば100kΩ程度の抵抗器を用いて構成している。分圧回路65の分圧比は、特に限定はなく、1対100~100対1程度の範囲内であってもよい。分圧比は、入力端子50に入力される電圧と信号出力部55が受付可能な電圧とから定めればよい。
【0024】
図示するように、入力端子50に入力される流量計11からの一組の信号線は、第1入力部51の一組の第1入力ライン61に接続されている。この第1入力ライン61には、上述した分圧回路65が介装されているから、流量計11からの信号の電圧が、第1入力部51が入力可能な電圧範囲を超えている場合、流量計11からの信号の電圧を、分圧回路65により、第1入力部51が入力可能な電圧範囲に低下させる。流量計11からの信号の電圧範囲が、第1入力部51が入力可能な電圧範囲に入っていれば、分圧回路65は必要ないので、第1分圧抵抗器RD1は除去されて抵抗器R11と抵抗器R13とは短絡され、第2分圧抵抗器RD2はそのまま第1入力ライン61間に接続される。第1入力ライン61は、第1入力部51に対しては差動入力となっている。したがって、流量計11からの入力信号は、電源ラインに対するノイズ(ディファレンシャルノイズ)の影響を受けにくくなっている。差動入力を構成する第1入力ライン61の他方は、抵抗器R21と抵抗器R23との接続点から、接地抵抗器RGおよびアナログ・デジタル変換器ADC1を介して接地ラインGNDに接続されている。
【0025】
ノイズ除去用の抵抗器R13,R14およびR23,R24の接続点には、コンデンサC1,C2が、接地ラインGNDとの間に介装されている。ノイズ除去用の抵抗器R14、R15のオペアンプOP1,OP2の入力側には、コンデンサC3が介装されている。また、ノイズ除去用の抵抗器R15、R25のアナログ・デジタル変換器ADC1の側には、コンデンサC4、C5が接地ラインGNDとの間に、コンデンサC6が入力端子I0+,I0-間に、それぞれ介装されている。
【0026】
オペアンプOP1,OP2は、いずれも入力インピーダンスを高くするためのボルテージフォロワとして構成されている。オペアンプOP1の入力端子+には、電流供給部57の電流ソース57Sが接続され、電流ソース57Sから流れ込んだ電流のシンク57Dは、接地抵抗器RGとアナログ・デジタル変換器ADC1の接地ラインGNDとの接続点に接続されている。オペアンプOP1の入力インピーダンスは高いので、電流ソース57Sからの電流は、オペアンプOP1に接続された抵抗器R14側の回路を介して流れる。電流供給部57からの電流の流れについては、後で説明する。
【0027】
第2入力部52は、上記の電流供給部57が接続されていない、という点を除いて、上述した第1入力部51と同一の内部構成を備えるので、詳しい説明は省略する。第2入力部52は、一組の第2入力ライン62を介して一組の入力端子50に接続されており、第2入力部52の出力は、アナログ・デジタル変換器ADC2のプラス側入力端子I0+およびマイナス側入力端子I0-に、それぞれ接続されている。
【0028】
アナログ・デジタル変換器ADC1の出力と、アナログ・デジタル変換器ADC2の出力とは、CPU41に接続されている。本実施形態では、アナログ・デジタル変換器ADC1,ADC2とCPU41は、シリアル通信により接続されているが、所定ビット数のパラレル接続であっても差し支えない。第1入力部51,第2入力部52に接続された信号出力部55は、所定のインターバルで、入力端子50に接続された流量計11からのアナログ信号をデジタル信号に変換し、これをCPU41に出力する。CPU41はこれを読み取り、通信部45を介して、制御装置30に出力する。
【0029】
アナログ信号入力装置40が制御装置30にデータを送信する場合を含め、各装置間のデータのやり取りは、通信回線90を介した通信により行なわれる。この通信の際に用いられるバケットの一例を、図3に示した。パケットの構成は、各装置間の取り決めなので、いかようにすることも可能である。なお、通信回線90をインターネットに準拠したいわゆるイントラネット(登録商標)とした場合には、トランスポート層とネットワーク層にTCP/IPのプロトコルを用い、アプリケーション層を各装置間で取り決めればよい。
【0030】
図3は、本実施形態で用いたパケットPTの一例を示す説明図である。バケットPTには、ヘッダ部HDとデータ部DTとが含まれており、ヘッダ部HDの先頭にはパケットの宛先DSが、ヘッダ部HDの末尾には、パケットPTに含まれるデータの数と種類を示す複数のビットDPが含まれている。データ部DTにおけるデータの数とは、所定ビット数のデータDDが何個含まれるかという情報である。またデータ種類とは、1つ1つのデータDDがテキストTX(8ビット)、数値Ns(8ビット)、数値Nw(16ビット)、浮動小数点数値Nf(32ビット)のいずれであるかを示す。
【0031】
各パケットPTに含まれるデータ部DTは、先頭にデータの番号DNが置かれ、これに、3ビットのステータス・コマンドSCが続き、その後に、8ビット、16ビット、32ビットのいずれかのデータDDが配置される。データ部DTに含まれるデータの数や種類はパケットPT毎に異なるので、各パケットPTは可変長である。データ番号DNは、アナログ信号入力装置40であれば、扱っているアナログ信号の番号に対応している。例えば、アナログ信号入力装置40が4つのアナログ信号を入力可能であれば、データ番号DN1は、第1の入力端子50に接続されたアナログ信号を指し示している。
【0032】
図4は、こうしたパケットPTとして、アナログ信号入力装置40から制御装置30に送信されるパケットPTAC、制御装置30からアナログ信号入力装置40に送信されるパケットPTCA、制御装置30から出力装置80に送信されるパケットPTCOの3種類を例示した。これらのパケットでは、3ビットのステータス・コマンドSCが含まれており、パケットの種類毎に、その内容が異なる。アナログ信号入力装置40から制御装置30に送信されるパケットPTACでは、このステータス・コマンドSCをフラグFとして表わす。フラグF=0の場合、データは正常に計測が行なわれていることを示し、データDDには計測された計測値がセットされる。フラグF=1の場合、センサの断線が検出されたことを示し、データDDは無効である。フラグF=2の場合は、入力端子50間が短絡していることが検出されたことを示し、この場合もデータDDは無効である。フラグF=3の場合は、計測結果が最大値を超えるオーバフロー(OF)が生じていることを示し、データは$FFがセットされる。
【0033】
制御装置30からアナログ信号入力装置40に送信されるパケットPTCAでは、ステータス・コマンドSCをフラグGとして表わす。このパケットPTCAでは、データDDは基本的に無効である。フラグG=0は、アナログ信号入力装置40に対して、計測をそのまま継続する指示を示す。フラグG=1は、アナログ信号入力装置40に対して断線検出を行なう指示である。フラグG=2は、アナログ信号入力装置40に対して短絡検出を行なう指示である。フラグG=3は、アナログ信号入力装置40の停止の指示である。
【0034】
制御装置30から出力装置80に送信されるパケットPTCOでは、ステータス・コマンドSCをフラグHとして表わす。このパケットPTCOでは、フラグH=0の場合、アクチュエータ15を目標値に制御する指示であることを示し、データDDは目標値である。フラグH=1の場合、アクチュエータ15を最小値に制御する指示であることを示し、データDDは制御対象の最小値である。フラグH=2の場合、アクチュエータ15を最大値に制御する指示であることを示し、データDDは制御対象の最大値である。フラグH=3の場合、アクチュエータ15に対する出力を直ちにオフにすることを示し、データDDは$00である。
【0035】
(A2)流量計測処理:
以上の回路構成および各装置間のやり取りの方法を踏まえて、アナログ信号入力装置40が制御装置30と共に行なう流量計測処理について説明する。図5は、アナログ信号入力装置40が実行する流量計測処理ルーチンを示すフローチャートである。
【0036】
まず、アナログ信号入力装置40が行なう流量計測処理について説明する。図5に示す処理は、通信回線90を介したパケットの受け取りが可能な所定のインターバルで繰り返し実行される。処理が開始されると、まず通信回線90からのバケットの読み取りを行ない、パケットの宛先を見て、制御装置30からアナログ信号入力装置40に宛てたパケットであると判断すると、これを読み取る処理を行なう(ステップS100)。本実施形態のアナログ信号入力装置40が制御装置30から受け取るパケットの内容は、図4にパケットPTCAとして示した通りである。
【0037】
そこで、アナログ信号入力装置40は受け取ったパケットPTCAのデータ部DTに含まれる最初のデータ番号DN1から順に各データを見ていくが、特にステータス・コマンドSCであるフラグGをチェックする(ステップS110)。このフラグGは、既に説明したとおり、フラグGが値1であれば、断線検出の実施を制御装置30が指示したことを示す。そこで、フラグGが値1でなければ、断線検出は行なわず、アナログ信号入力装置40は、第1入力部51を介して入力した流量計11からの電圧信号をアナログ・デジタル変換器ADC1によりデジタル信号に変換して読み込む(ステップS120)。更に、これに続けて、アナログ信号入力装置40は、第2入力部52を介して入力した流量計11からの電圧信号をアナログ・デジタル変換器ADC2によりデジタル信号に変換して読み込む(ステップS122)。本実施形態では、1つのアナログ信号の入力に対して、これをデジタル信号にして読み取る入力系統を二重化しているので、同じ流量計11からの信号を2系統で読み込む。第1入力部51からアナログ・デジタル変換器ADC1を介して読み取る電圧を、第1電圧V1と呼び、第2入力部52からアナログ・デジタル変換器ADC2を介して読み取る電圧を、第2電圧V2と呼ぶ。CPU41は、第1電圧V1および第2電圧V2を、個別に読み取り(ステップS120,S122)、その後、第1電圧V1,第2電圧V2を送信する際のステータス・コマンドSCとして、フラグFに値0を設定する(ステップS155)。
【0038】
他方、ステップS110の判断において、フラグGが値1であれば(ステップS110:「YES」)、断線検出の処理を行なうとして、ステップS125以下の処理を行なう。制御装置30がアナログ信号入力装置40に対して、フラグGを用いて断線検出を指示する処理については、後で詳しく説明するが、断線検出の指示は、アナログ信号入力装置40が検出している流量計11の出力が、断線が生じている場合の電圧と区別が付かない状況で出力される。したがって、断線検出を開始する際に第1の入力端子50に入力している信号の電圧はほぼ値0となっている。この状態で、アナログ信号入力装置40は、ステップS125以下の断線検出処理を開始すると、まず電流供給部57を動作させて、電流ソース57Sから定電流をシンク57Dに流す処理を行なう(ステップS125)。このときの電流の流れるルートRT1を、図6に示した。電流は、電流ソース57Sから、抵抗器R14,R13、第2分圧抵抗器RD2、接地抵抗器RGを介して、シンク57Dに流れ込む。シンク57Dは、装置全体の接地ラインGNDと接続されている。
【0039】
電流供給部57は、数mA以上の電流を供給可能なので、コンデンサC1~C3や第1入力ライン61の浮遊容量などが存在するものの、第2分圧抵抗器RD2の両端の第1電圧V1は短時間のうちに上昇し、電流供給部57が供給する定電流Icにより、
Vop=RD2・Ic
となる。この様子を、図7に示した。図では、断線がない場合と、断線があって流量計11が第1の入力端子50に接続されていない場合(オープンワイヤ)とを並べて描いたが、いずれの場合でも、第1入力部51を介してアナログ・デジタル変換器ADC1の検出結果は、断線検出の期間が開始されると速やかに電圧Vopとなる。そこで、第1入力部51を介した第1電圧V1を読み取り(図7に示したタイミングt1)、この第1電圧V1が、断線検出時の電圧Vopとなれば、第2入力部52側の電圧を読取可能なタイミングになったと判断し(ステップS131:「YES」)、この状態の第2入力部52側の電圧を、図7に示したタイミングt2で、アナログ・デジタル変換器ADC2を介して取得する(ステップS132)。この電圧は、断線検出をしていなければ、上述した第2電圧V2に相当するが、断線検出を行なう際に入力端子50に入力している信号の電圧はほぼ値0であり、断線が生じている場合でも、第1電圧V1のようには上昇しない。このためこれを第2微小電圧V2dと呼ぶ。
【0040】
第2微小電圧V2dは、以下の回路構成により生じる。図6に示したように、断線検出を行なうとして、電流供給部57から定電流が供給されると、ルートRT1に示す経路で電流が流れ、第2分圧抵抗器RD2の両端には、Vopの電圧が生じる。第2入力部52の第2入力ライン62は、第1入力部51の第1入力ライン61にパラレルに接続されているので、第2入力部52の第2入力ライン62には、第2分圧抵抗器RD2の両端の電圧が加わることになる。この場合、電流は図6に示したルートRT2に沿って流れることになる。図6において、第2入力部52の各抵抗器のうち、ルートRT2に関与する抵抗器を、第1入力部51の抵抗器に合わせて、小文字rを用いて、抵抗器r11、抵抗器r21、第1分圧抵抗器rd1、第2分圧抵抗器rd2、として示した。これらの符号を用いて示せば、ルートRT2とは、具体的には、第1分圧抵抗器RD1→抵抗器R11→抵抗器r11→第1分圧抵抗器rd1→第2分圧抵抗器rd2→抵抗器r21→抵抗器R21という経路である。
【0041】
仮に第1の入力端子50に流量計11が正しく接続されており、流量計11の接続において断線が生じていない場合には、第2入力ライン62のライン間には、流量計11の内部抵抗RSが接続されていることになる。流量計11の内部抵抗RSが比較的小さいことから、ルートRT2を介して流れる電流は極めて小さいものとなる。ルートRT1を流れる定電流と比べると、ルートRT2を流れる電流は小さいので、断線が生じていない場合には、第2入力部52を介して検出する第2微小電圧V2dは、ほぼ値0となる。もとより、断線検出の間に流量計11が流量を計測した有意の信号を出力していれば、第2微小電圧V2dは、この信号に対応した電圧となる。この場合を、図7の左欄に示した。
【0042】
他方、流量計11と第1の入力端子50との接続が何らかの理由で失われ、断線が生じている場合には、第1分圧抵抗器RD1から抵抗器R21までが、第2分圧抵抗器RD2に対して並列に接続されるという回路は形成されないので、断線が生じていない場合と比べて、第2分圧抵抗器rd2を介して流れる電流量は増加し、その分だけ第2入力部52を介して検出する第2微小電圧V2dは上昇する。この様子を、図7の右欄に例示した。
【0043】
そこで、ステップS132で読み取った第2微小電圧V2dが、閾値Vref より大きいかを判断し(ステップS140)、超えていれば、断線が生じているとして、フラグFに値1を設定し(ステップS150)、超えていなければ、ステップS155に移行して、フラグFに値0を設定する。電流ソース57Sからシンク57Dに至るルートRT1の抵抗値が130kΩ程度の場合、流量計11と入力端子50との接続に断線が生じている場合には、第2微小電圧V2dの実測値は、25mVを超えていた。したがって、本実施形態では、閾値Vref として、約20mV程度の値を設定している。
【0044】
以上の処理を行なった後、通信用のパケットを準備する(ステップS160)。具体的には、入力端子50に接続された入力信号のデータを送るためのデータ番号DN、ステータス・コマンドSCとしてのフラグFの値、送信するデータDDとしての第1電圧V1および第2電圧V2を、図4に示したパケットPTACの形式で準備する。ステップS140の判断が「NO」となって、ステップS155の処理を経て通信用のパケットを準備する場合(ステップS160)では、第1電圧V1,第2電圧V2は、値0とされる。その後、このパケットPTACを通信部45を介して送信し(ステップS170)、上述した流量計測処理ルーチンを一旦終了する。なお、このパケットPTACでは、図4に示したように、フラグFが値1または2の場合には、データは無効としたので、断線や短絡を検出した場合には、データは含ませていない。
【0045】
こうして送信されたパケットは、通信回線90を介して送信され、通信回線90に接続された各装置により受け取られる。制御装置30は、通信回線90からパケットを常時取得しており、取得したパケットがアナログ信号入力装置40から制御装置30に宛てたパケットPTCAである場合、図8に示す入力信号確認処理ルーチンを実行する。この処理を開始すると、まずアナログ信号入力装置40からのパケットPTACの内容を読み取る処理を行なう(ステップS200)。次に、このパケットPTACに含まれているステータス・コマンドSCのフラグFの値について判別する(ステップS210)。
【0046】
フラグFが値0、つまりアナログ信号入力装置40において流量計11を用いた計測が正常に行なわれた場合には、パケットPTACに含まれている第1電圧V1,第2電圧V2を読み出して、両者が一致しているかを判断する(ステップS220)。ステップS210の判別において、フラグFが値1である場合には、断線が検出されており、ステップS220で、第1電圧V1と第2電圧V2とが不一致であれば、第1入力部51または第2入力部52に何らか異常が生じていると判断できる。なお、V1=V2とは、所定の許容範囲を含んだ判断である。何らかの異常が生じていると判断すると、異常が検出されたことを表示部37に表示する(ステップS225)。その上で、出力装置80への指示を前提として、フラグHに値1を設定し(ステップS230)、出力装置80に対するパケットPTCOを形成し、このパケットPTCOを出力装置80に向けて出力する。
【0047】
図4に示したように、パケットPTCOにおいて、ステータス・コマンドSCのフラグHが値1であるとは、アクチュエータ15を最小値に制御するというコマンドを表わしている。また、このパケットのデータDDは、その場合の最小値を示している。特に処理についてはフローチャートを示さないが、このパケットPTCOを受け取った出力装置80は、フラグH=1であることから、データDDが示す最小値まで、最速でアクチュエータ15を制御する。アクチュエータ15を最小値に制御するとは、この実施形態では、流量を最小、例えば0にするということである。こうした制御は、システムを安全サイドに制御することを目的として行なわれる。
【0048】
例えば、配管13を流れる流体が反応を促進する流体である場合には、流体の流量を最小にすることにより、反応の促進を抑制して、システムの安全を確保する。逆に、例えば流体か冷媒などであり、対象物を冷却している場合には、アクチュエータ15を最大値に最速で制御して、過熱を防いで、システム安全を確保することもあり得る。なお、フラグHが値0の場合には、目標値までアクチュエータ15を制御する通常の制御が行なわれる。H=1の場合の最小値制御やH=2の場合の最大値制御も、最小値または最大値までアクチュエータ15を制御するという点では通常の制御と同様だが、最小値制御や最大値制御では、他のアクチュエータなどを時分割で制御するといったことを行なわず、指定されたアクチュエータを最小値または最大値まで最速で制御するという点で異なる。このように、何らかの異常が生じていると判断した場合には、フラグHの設定とパケットPTCOの出力を行なった後、アナログ信号入力装置40に出力するパケットPTCAに含ませるステータス・コマンドSCのフラグGを値3に設定する(ステップS240)。
【0049】
他方、ステップS220での判断が「YES」、つまり第1電圧V1と第2電圧V2とが一致していれば、アナログ信号入力装置40での計測は適正に行なわれたと判断でき、次に、第1電圧V1が予め設定した閾値V0以下か否かの判断を行なう(ステップS250)。この閾値V0は、断線が生じた場合との区別が付けにくい程度の低電圧、実際には、数十mVに設定されている。第1電圧V1が閾値V0以下であると判断された場合には、この判定が、当日の初回の判定であるかを判断し(ステップS260)、当日初回であれば、断線検出の指示を行なう準備として、フラグGに値1を設定する(ステップS270)。このフラグGの値は、既述したアナログ信号入力装置40における流量計測処理ルーチン(図5、ステップS110)で参照されるフラグである。断線は、頻繁に生じものではないので、制御システム20の稼働日一日に一度チェックすれば足りる。もとより、第1電圧V1が閾値V0以下になる度に、断線検出の指示を行なうものとしてもよいし、数回に一度の割合で断線検出の指示を行なうものとしてもよい。
【0050】
第1電圧V1が閾値V0以下でない場合(ステップS250:「NO」)や、当日2回目以降の判断である場合(ステップS260:「NO」)の場合には、フラグGに値0を設定する(ステップS280)。以上説明したフラグGの設定(ステップS240,S270,S280)を行なった後、アナログ信号入力装置40向けのパケットPTCAを準備し、これをアナログ信号入力装置40に向けて送信する(ステップS285)。以上で、入力信号確認処理ルーチンを終了する。
【0051】
以上説明した第1実施形態のアナログ信号入力装置40、およびこの装置40や制御装置30,出力装置80を備えた制御システム20によれば、アナログ信号をデジタル信号に変換して出力できるアナログ信号入力装置40において、入力端子50への流量計11の接続の断線検出を容易に行なうことができる。アナログ信号を差動入力として受け付ける2つの入力部51,52を有することで、アナログ信号を入力する構成の冗長性を高めた上で、これを利用して断線検出を行なうので、回路構成上の無駄を排することができる。
【0052】
しかも、断線検出を行なう際に用いる電流供給部57から回路抵抗に対して十分な大きさの電流を流すので、断線検出に要する時間を短縮できる。2つの入力部51,52毎にアナログ・デジタル変換器ADC1,ADC2を設けているので、2つの入力部51,52の電圧をほぼ同時に計測することができ、この点でも断線検出を短時間のうちに完了できる。しかも、断線が生じていない場合には、第2入力部52側で計測している第2微小電圧V2dは、第2入力部52が通常検出する第2電圧V2と変わらないので、断線検出中であっても、流量計11からのアナログ信号の大きさを計測できる。こうした特徴は、制御システム20が、産業用のPCL装置である場合には、特に好ましい。制御システム20が製造ラインを制御している場合、対象の状態の把握に遅れが生じることがなく、センサの状態を常時把握できるので、製品の品質を十分に確保でき、アナログ信号の入力の遅れなどによる不良品の発生などを招くことがない。
【0053】
更に、本実施形態では、制御装置30が、断線検出の指示をアナログ信号入力装置40に対して行なっており、アナログ信号入力装置40が行なう断線検出の頻度やタイミングを制御システム20全体の動作状況を見て適切に決定することができる。本実施形態では、制御システム20が稼働している一日の内で、第1入力部51が検出した流量計11からのアナログ信号の電圧が閾値V0(数十mV)以下となった最初のタイミングでのみ断線検出を行なうので、その後の流量計測を、断線の発生を確認した上で行なうことができる。しかも、流量計11からのアナログ信号が、断線が生じた場合に取り得る値となっていなければ、断線検出自体を行なわないので、断線検出に無駄な時間を使うこともない。
【0054】
更に、この制御システム20では、断線を検出した場合には、出力装置80を用いて、断線が生じたセンサ(ここでは流量計11)が計測している物理量を制御するアクチュエータ15を駆動して、制御対象であるシステムの安全性を高める側に制御を行なう。したがって、システムの安全性の低下を抑制できる。
【0055】
B.第2実施形態:
次に第2実施形態のアナログ信号入力装置40Aおよびこの装置を用いた制御システムについて説明する。図9は第2実施形態のアナログ信号入力装置40Aの概略構成図である。制御システム全体は、図1に示した第1実施形態と同様の構成を備える。第2実施形態のアナログ信号入力装置40Aは、第1実施形態のアナログ信号入力装置40とほぼ同様の構成を有するが、第1入力部51や第2入力部52毎に、アナログ・デジタル変換器ADC1,ADC2を備えるのではなく、単一のアナログ・デジタル変換器ADCを、マルチプレックサ(MPX)71を介して、接続している点で、第1実施形態と異なる。マルチプレックサ71は、第1入力部51の出力と第2入力部52の出力とをCPU41からの指示により、あるいは所定のインターバルで切り替えて出力する。マルチプレックサ71の出力は、アンプ(AMP)73を介して、アナログ・デジタル変換器ADCに入力され、複数ビットのデジタル信号に変換されて、CPU41に読み込まれる。アナログ・デジタル変換器ADCは第1実施例のアナログ・デジタル変換器ADC1,ADC2と同様の機能を有する。また、アンプ73は、ゲイン可変アンプであり、その増幅度は、外部からの信号により切り替えられる。本実施形態では、CPU41によりゲインを切り替える。
【0056】
上記構成を備えるアナログ信号入力装置40AのCPU41は、図10に示した流量計測処理ルーチンを実行する。この処理ルーチンは、図5に示した第1実施形態の処理ルーチンと基本的な処理において同一であり、相違点は、次の2点である。1つは、ステップS120とステップS122との間に、マルチプレックサ71を切り替える処理が設けられていることである。もう一つは、第1実施形態におけるステップS131が、マルチプレックサ71の切替処理を行なうステップS131aと、アンプ73のゲイン設定を行なうステップS131bと、時間T1の経過を判断するステップS131cとからなる読取可能判断処理131Aに置き換えられていることである。
【0057】
上述した通り、第2実施形態では、第1入力部51と第2入力部52とに対して単一のアナログ・デジタル変換器ADCが設けられており、第1電圧V1を読み取った処理(ステップS120)のあと、マルチプレックサ71を切り替えて、アナログ・デジタル変換器ADCの入力を、第1入力部51の出力から第2入力部52の出力に切り替える処理(ステップS121)を行なう。マルチプレックサ71よる切り替え処理(ステップS121)のあと、第2電圧V2を取得する(ステップS122)。
【0058】
また読取可能判断処理131Aでは、断線検出の際に、第1入力部51からの信号、つまり第1電圧V1を取得した後、第2微小電圧V2dの取得に備えて、マルチプレックサ71を第2入力部52からの信号に切り替え(ステップS131a)、更に、アンプ73のゲインを高くするためのゲインの設定を行なう(ステップS131b)。断線検出の際に第2入力部52が検出する電圧は、数十mV程度の低い電圧であるため、ゲインを高くすることにより、その電圧の検出を容易とし、また検出精度を高めている。その後、第2実施形態では、時間T1の経過を待って(ステップS131c)、第2微小電圧V2dを取得する処理(ステップS132)を行なう。第2実施形態では、マルチプレックサ71を切り替えているので、第1電圧V1が十分に高くなったかを確認しない。電流供給部57により定電流を供給した際、第1電圧V1が十分に高くなるまでの時間は予め取得できるので、この時間T1を設定しておき、時間T1の経過を待って、第2微小電圧V2dを取得するのである。
【0059】
以上説明した第2実施形態によれば、第1実施形態と同様の効果を奏する上、アナログ・デジタル変換器ADCを第1入力部51や第2入力部52毎に設ける必要がなく、回路構成を簡略化できる。また、アンプ73のゲインを高めて第2微小電圧V2dを読み取っているので、断線検出の精度を高められるという効果も奏する。
【0060】
C.第3実施形態:
次に、第3実施形態について説明する。第3実施形態では、第1実施形態のアナログ信号入力装置40を含む制御システム20と同一のハードウェア構成を用い、アナログ信号入力装置40が実行する流量計測処理として、図5に示した処理ルーチンに代えて、図11に示した流量計測処理ルーチンを実行する。この処理ルーチンは、図5に示した第1実施形態の処理ルーチンと基本的な処理において同一であり、以下の二つの点で、相違する。一つは、ステップS110の後にステップS120またはS125に分岐する初期電圧Vi取得判断処理(ステップS115)を備える点、もう一つは、ステップS140の後にステップS150またはS155に分岐する第3電圧V3d取得判断処理(ステップS145)を有する点である。以下、これらのステップS115とS145を中心に、第3実施形態の処理について説明する。
【0061】
第1実施形態と同様に、まずフラグGの値について判断し(ステップS110)、フラグGが値0、つまり断線検出の指示を受けたと判断した場合、第3実施形態では、初期電圧Vi取得判断処理(ステップS115)を実行する。この処理では、まず第1入力部51を用いて第1の入力端子50間の電圧を、初期電圧Viとして取得する(ステップS115a)。続いて、初期電圧Viが0ボルトとほぼ等しいかを判断する(ステップS115b)。「ほぼ等しい」とは、本明細書では、比較しようとする値の±10%の範囲に入っていることをいう。もとより、その範囲は予め設定すればよく、例えば±5%の範囲としてもよい。なお、ここでは初期電圧Viを第1入力部51を用いて取得したが、第2入力部52を用いて取得するようにしてもよい。
【0062】
フラグGが値1に設定されて断線検出を行なうのは、システムの起動時など、流量計11がまだ動作していないタイミングであることが多い。従って、通常、流量計11からの出力はなく、初期電圧Viは0ボルトにほぼ等しい筈である。これに反して、初期電圧Viが0ボルトが逸脱し、両者がほぼ等しくとは言えない場合(ステップS115b、「NO」)は、流量計11は動作していると考えられるので、断線検出は行なわず、ステップS120に移行して、第1電圧V1,第2電圧V2の取得処理やフラグFを値0に設定する処理などを行なう。これらの処理については、第1実施形態で既に説明したので、説明を省略する。
【0063】
他方、初期電圧Viが0ボルトにほぼ等しいと判断した場合(ステップS115b、「YES」)は、第1実施形態で説明したように、電流供給部57を動作させて、定電流を供給する処理、具体的には、電流ソース57Sから定電流をシンク57Dに流す処理(ステップS125)を行ない、第1電圧V1の取得や第2微小電圧V2dを取得し(ステップS130~S132)、第2微小電圧V2dが閾値Vref より大きいかを判断する(ステップS140)。
【0064】
その上で、第3実施形態では、ステップS145の処理を実行する。このステップS145は、図12に示すように、定電流の供給を停止し、一定時間の経過を待つ処理(ステップS145a)と、第2入力部52を用いて第3電圧V3dを取得する処理(ステップS145b)と、第3電圧V3dが第1電圧V1とほぼ同一であるかを判断する処理(ステップS145c)と、を含む。ステップS145aでは、電流供給部57に定電流の供給を停止させ、所定の時間の経過を待つ。所定時間の経過を待つのは、回路には浮遊容量やコンデンサC3などの容量成分が存在し、定電流の供給を停止ししても、すぐには第2分圧抵抗器rd2を流れる電流が0ボルトにはならず、第3電圧V3dが有意の値を取り得るからである。
【0065】
電流供給部57による定電流の供給のタイミングを、図13の上段に、示した。既に説明した様に、フラグGが値1と判断された場合、直後に初期電圧Viを取得する処理が行なわれる。このタイミングをt0として、図に示した。初期電圧Viが0ボルトにほぼ等しい場合(ステップS115b、「YES」)、この判断に続いて、タイミングTionで定電流の供給が開始される。これは、図11のステップS125での処理に対応したタイミングである。定電流の供給が開始されると、電流ソース57Sからシンク57Dに流れる電流に伴って第2分圧抵抗器RD2の両端の電圧は上昇する。この電圧の変化を、図13の中段に、実線J1として示した。この変化は、第1実施形態において図7で示した第1電圧と同じである。定電流の供給が開始されたタイミングTionの後のタイミングt1で、第1入力部51により第1電圧V1を取得する(ステップS130)。この電圧Vopは、第1実施形態で詳しく説明したように、
Vop=RD2・Ic
となる。
【0066】
他方、定電流の供給がなされた場合の第2入力部52の検出電圧は、断線の有無により異なった挙動を示す。断線の有無により生じる電圧の違いは、図7に対比して示した。第1電圧V1を取得してから所定の時間が経過して、第2微小電圧V2dを読取可能なタイミングt2となったとき、第2入力部52により、第2入力部52の第2分圧抵抗器rd2の両端の電圧を、第2微小電圧V2dとして取得する(ステップS132)。
【0067】
この後、定電流の供給をタイミングTioff で停止し、一定時間の経過を待ち(ステップS145a)、タイミングt3で、第2入力部52により第3電圧V3dを取得する(ステップS145b)。電流供給部57からの定電流の供給が停止されたので、計測される第3電圧V3dは、通常、定電流の供給がなされる前の電圧、つまり略0となる。この様子を、図13に実線J2として示した。他方、流量計11から第1の入力端子50への配線に断線がなく、断線検出を行なっているタイミングで、たまたま流量計11からの信号が入力した場合の、第2入力部52が検出する電圧信号を、破線B2として示した。図において、○印は、所定のタイミングt0~t3で取得される電圧が、実線J1,J2、破線B2のいずれの電圧に対応しているかを示している。
【0068】
こうして第3電圧V3dを取得すると(図12、ステップS145b)、第3電圧V3dが初期電圧Viとほぼ同じか否かの判断を行なう(ステップS145c)。両者がほぼ等しければ(ステップS145c、「YES」)、断線が生じているとして、ステップS150(図11)に移行する。ステップS150では、断線検出の有無を示すフラグFに値1を設定し、パケットの準備と送信を行なう(ステップS160,S170)。他方、両者がほぼ同じと判断できなければ(図12、ステップS145c、「NO」)、第2微小電圧V2dが閾値Vref を上回ったのは(ステップS140、「YES」)、断線が生じたからではなく、流量計11から送られた信号が、閾値Vref より高い電圧(第2微小電圧V2d)であったためと判断し、フラグFに値0を設定し(図11、ステップS155)、パケットの準備と送信を行なう(ステップS160,S170)。なお、ステップS145cの判断が「NO」となって、ステップS155の処理を経て通信用のパケットを準備する場合(ステップS160)では、第1電圧V1としてはステップS130で取得した電圧が、第2電圧V2としてはステップS145bで取得した電圧(第3電圧V3d)が、それぞれ設定される。
【0069】
第3電圧V3dが初期電圧Viとほぼ同じと判断できなかった場合を、図13を用いて説明すると、断線している場合には、断線検出のために供給した定電流の供給を停止したタイミングTioff の直後から、第2入力部52が検出する電圧は低下する。なぜなら、断線した状態で電流供給部57が供給する定電流がなくなれば、第2分圧抵抗器rd2の両端には電位差が生じないので、タイミングt3で第2入力部52が検出する第3電圧V3dは、タイミングt0で第1入力部51が取得した初期電圧Vi(略0ボルト)程度になるからである。これに対して、タイミングt3で第2入力部52が取得した第3電圧V3dが、初期電圧Viと同程度でない場合、第3電圧V3dが閾値Vref より低いとしても、断線では生じ得ない電圧なので、流量計11からの信号を検出しているものと判断するのである。
【0070】
以上説明した第3実施形態によれば、断線検出の指示(G=1)を受けて、電流供給部57により定電流の供給を開始した際に、流量計11から、断線検出時に閾値Vref を超える電圧信号が入力した場合、これを誤って断線として検出してしまうことがない。本実施形態では、定電流を供給する前(タイミングt0)と供給を停止した後(タイミングt3)とで初期電圧Vi,第3電圧V3dを取得し、これを比較することで、定電流を供給している際(タイミングt2)に取得した第2微小電圧V2dが、いずれの理由で生じたかを判別できるからである。タイミングt3で、V3d≒Viとなっていると判断すれば、流量計11から第1の入力端子50への配線が断線しているか否かを検出することができる。つまり、第3実施形態では、流量計11から信号が入力している場合に、断線が生じていると誤検出することがない。他の作用効果は第1実施形態と同様である。
【0071】
第3実施形態では、第1実施形態と同様のハードウェア構成を前提としたが、第2実施形態と同様のハードウェア構成を用いても同様の処理を行なうことができる。また、理解の便を図って、図13のタイミングt2において、断線が生じてい場合に第2入力部52が検出する電圧と、断線が生じておらず流量計11からの信号が入力している場合に第2入力部52が検出する電圧とを、同じ高さとしたが、流量計11からの信号は、定電流の供給により生じる第2微小電圧V2dと一致するとは限らない。両者は異なっていても、差し支えない。
【0072】
上述した各実施形態において、フラグFは値1(断線が生じている)か値0(断線が生じているとは判断できない)の二値のいずれかを取るものとしたが、ステップS115bでの判断が「NO」となった場合や、ステップS145cでの判断が「NO」となった場合に、フラグFを値0,1以外の値としてもよい。また、取得した各電圧Vi、V1、V2、V2d、V3dを、そのままデータとして、制御装置30に送信し、制御装置30側で断線の有無を判断するようにしてもよい。
【0073】
上述した幾つかの実施形態では、フラグGが値1であって、断線検出処理を開始した後、例えば、ステップS140での判断が「NO」の場合のように、断線検出の条件が整っていないと判断すると、フラグFに値0をセットして(ステップS155)、パケットの準備(ステップS160)に移行している。断線検出の条件が整っていないと判断した場合には、フラグGが値1でない場合と同様に、ステップS120,S122を実行して、第1電圧V1,第2電圧V2を計測してから、ステップS155以下の処理を実行するようにしてもよい。あるいは、フラグFに、値0や1以外の値、つまり断線検出を試みたが、断線検出の条件が整っていなかったことを示す値を設定し、電圧に関するデータを伴わないようなパケットを準備するものとしてもよい。
【0074】
D.他の態様:
(1)こうしたアナログ信号入力装置40は、以下の構成で実施することも可能である。例えば、アナログ信号入力装置は、センサが接続される一組の入力端子と、入力端子からのアナログ信号を一組の第1入力ラインを介した差動入力として受け付ける第1入力部であって、第1入力ライン間に第1抵抗器が介装された第1入力部と、入力端子からのアナログ信号を一組の第2入力ラインを介した差動入力として受け付ける第2入力部であって、第2入力ライン間に第2抵抗器が介装された第2入力部と、第1入力部および第2入力部を介してアナログ信号を個別に読み取って、アナログ信号を、複数ビットのデジタル信号の形態に変換して出力する信号出力部と、所定の指示を受けて動作し、一組の第1入力ラインの一方から、電源ラインに電流を供給する電流供給部と、電流供給部からの電流供給を受けて、第1入力部の出力が上昇した際の第2入力部の出力が、予め定めた閾値以上であるか否かを判断し、判断結果を出力する判断部を備えるものとしてよい。こうすれば、アナログ信号をデジタル信号に変換して出力できるアナログ信号入力装置において、アナログ信号を差動入力として受け付ける第1入力部と第2入力部とを備える構成を用いて、容易に断線検出を行なうことができる。アナログ信号を差動入力として受け付ける2つの入力部を有することで、アナログ信号を入力する構成の冗長性を高めた上で、これを利用して断線検出を行なうので、回路構成上の無駄を排することができる。
【0075】
断線検出の原理は、電流供給部から差動入力の第1入力ラインの一方から電源ライン(例えば接地側ライン)に供給される電流により第1入力部の出力が上昇するが、入力端子において第1入力部の第1入力ラインと接続された第2入力部の第2入力ラインには、入力端子とセンサとの接続に断線が生じているか否かにより、異なる電圧が現われるというものである。第1入力ライン間には、通常、ノイズ除去のためや分圧のために抵抗器やコンデンサが介装されており、電流供給部からの供給により、第1入力ライン間の電圧は上昇する。この電圧により第2入力ラインに電流が流れるが、この電流により第2入力ライン間に生じる電圧は、入力端子にセンサの内部抵抗が接続されているか否かにより異なるからである。電流供給部から供給される電流は、電圧上昇の大きさを管理可能にするために定電流であることが望ましいが、定電流でなくても差し支えない。また、電流の大きさは、第1入力部の回路抵抗に対して、十分に大きくすれば、断線検出に要する時間を短くでき、好適である。断線検出の時間を短くできることは、産業用の用途では、特に好ましい。製造ライン等では、対象の状態の把握が遅れたり、有意の時間に亘って把握できなかったりすると、製品の品質が十分に確保できず、不良品などを生じる場合がありえる。迅速な断線検出が可能になれば、こうした事態を回避することができる。もとより、断線検出に時間を掛けられる条件、例えば起動時の初期化の処理の際に断線検出を行なうといった対応をとれば、電流値を第1入力部の回路抵抗に対して十分に大きくするまでなく、小さな電流で断線検出を行なうことも可能である。電流供給部が電流の供給を開始する所定の指示は、外部から断線検出動作の指示として与えられてもよいし、所定のインターバルで与えられる単なる指示であってもよい。また、こうした指示は、アナログ信号入力装置が正常に動作していることを把握するための一連のダイアグノーシス動作の開始の指示として与えられてもよい。この場合、一連の動作確認のうちの1つとして、断線検出を行なえばよい。
【0076】
断線検出の対象となるセンサとしては、単に電圧値や電流値といった電気信号を検出するものであってもよく、あるいは温度を検出する熱電対やサーミスタ、流量を検出する流量計、重さや歪みを検出するストレインゲージ、磁束量を検出するホール素子などの磁気センサ、電波強度や周波数などを検出するアンテナプローブなど、様々な状態量を検出するセンサであってよい。センサは、何らかの物量を検出するものであればよく、また有線によりアナログ信号入力装置の入力端子と接続されるものであれば、どのようなものであってもよい。
【0077】
センサとアナログ信号入力装置とは、少なくともアナログ信号入力装置側との接続箇所が有線接続されていればよく、センサ側の一部が無線接続になっていても差し支えない。有線接続部分については、ツイステッドペアケーブルなど、耐ノイズ性の高いケーブルで接続することが好ましい。耐ノイズ性能が問題にならないような場合には、一般的な平行線ケーブルなどで接続してもよい。また、耐ノイズ性を高めるためにシールドされたケーブルを用いることも差し支えない。
【0078】
(2)こうした構成において、前記第1抵抗器および前記第2抵抗器は、それぞれ、前記センサからの前記アナログ信号の電圧の大きさを調整する分圧回路を構成する抵抗器として設けられたものとしてよい。こうすれば、分圧回路の抵抗器を、電流供給部からの電流により電圧上昇が生じる抵抗器として利用でき、回路構成を簡略化できる。もとより、分圧回路の抵抗器とは別に、あるいは分圧回路の抵抗器に代えて、電流供給部からの電流により第1入力部の第1入力ライン間に電圧上昇を生じさせる抵抗器を設けてもよい。
【0079】
(3)こうした構成において、前記第1入力ラインと前記電源ラインとの間には、前記第1入力ラインに寄生する浮遊容量以上の容量のコンデンサが介装されたものとしてよい。こうすれば、差動入力である第1入力ライン上のノイズ除去を図ることができる。こうしたコンデンサを設けると、電流供給部から供給される電流の一部は、コンデンサの充電に用いられるので、第1ライン間の電圧の上昇は、その分遅れる。したがってこうしたコンデンサを設けた場合には、コンデンサの容量、延いては電圧上昇時間の遅れを考慮して、電流供給部が供給する電流量を決めればよい。
【0080】
(4)こうした構成において、前記閾値は、前記電流供給部から供給された電流により前記第1抵抗器の両端に生じる電圧によって、前記センサが前記入力端子に接続されていない場合に前記第2入力ラインに流れ込む電流により、前記第2抵抗器に生じる電圧に対応して定めればよい。こうすれば、第2抵抗器に生じる電圧と閾値とを比較するだけで、断線の有無を検出できる。
【0081】
(5)こうした構成において、制御装置との間で前記デジタル信号を含む信号をやり取りする通信部を備え、前記通信部は、前記やり取りされる信号に含まれる前記デジタル信号の大きさが、前記センサと前記入力端子との接続が断線している場合に生じ得る範囲に入っていると判断した前記制御装置が出力する指示信号を受け取った場合、断線検出動作のために前記所定の指示を前記電流供給部に対して行なうものとしてよい。こうすれば、制御装置の指示の下、断線が生じている可能性があるときに、断線検出を行なうことができ、無駄な断線検出を行なうことがない。なお、やり取りされる信号に含まれる前記デジタル信号の大きさが、前記センサと前記入力端子との接続が断線している場合に生じ得る範囲に入っている場合でも、毎回断線検出を行なう必要は必ずしもない。数回に一度だけ断線検出を行なうよう構成してもよい。その場合、判断は制御装置で行なってもよいし、制御装置からの指示を受けたアナログ信号入力装置側で行なってもよい。条件が成立しても、毎回断線検出を行なうのではなく、一日に一度、例えば最初に条件が成立したときに行なうといったものであってもよい。
【0082】
(6)こうした構成において、前記判断部は、前記判断結果を、当該アナログ信号入力装置が接続された制御システムを管理する管理装置、および前記判断結果を使用者に提示する提示装置のうちの少なくとも一方に出力するものとしてよい。判断結果を管理装置に出力すれば、管理装置による制御システムの管理に用いることができる。他方、判断結果を提示装置により使用者に提示すれば、断線の有無を示す判断結果の提示を受けて、使用者は適切な対応を取ることが容易になる。もとより、両方を行なってもよい。管理装置は、制御システムにおいて制御対象を制御する制御装置であってもよいし、管理専用の装置、例えばダイアグノーシスコンピュータであってもよい。断線の有無に関する判断結果をどのように利用するかは、システム設計において定めればよい。提示装置による判断結果の提示は、ディスプレイなどに表示するものでもよいし、音声による報知でもよい。もとより、断線の発生ということだけを提示してもよいし、どの機器のどのセンサが断線したかや、いつ断線したかなどの情報と共に提示してもよい。単に断線の有無を記録しておくものとしてもよい。
【0083】
(7)こうした構成において、信号出力部は、前記第1入力部を介して受け取る前記アナログ信号を前記デジタル信号に変換する第1アナログ・デジタル変換器と、前記第2入力部を介して受け取る前記アナログ信号を前記デジタル信号に変換する第2アナログ・デジタル変換器と、を備えるものとしてよい。こうすれば、第1入力部に入力したアナログ信号と第2入力部に入力したアナログ信号とを、独立にデジタル信号として出力でき、2つの信号をほぼ同時に出力できる。したがって、多重化しているにもかかわらず、デジタル信号を短時間のうちに出力できる。
【0084】
(8)こうした構成において、前記信号出力部は、前記第1入力部および前記第2入力部を介して受け取る前記アナログ信号を、時分割により選択的にデジタル信号を変換するアナログ・デジタル変換器を備えるものとしてよい。こうすれば、アナログ・デジタル変換器の数を減らすことができ、構成を簡略化できる。時分割により選択的にデジタル信号に変換するには、マルチプレックサを設けて、第1入力部の出力と第2入力部の出力とを切り替えればよい。もとより、単独のスイッチ、たとえばリレー、SSR、アナログスイッチなどを個別に設け、これを排他的にオン・オフしてもよい。第1入力部、第2入力部の出力段に、トライステートバッファなど、出力をハイインピーダンスにできる構成を備えれば、出力をワイヤード結合してもよい。この場合は、第1入力部,第2入力部のうち、データを計測する側の出力段を、計測時に、ハイインピーダンス状態から通常の出力状態に切り替える。
【0085】
(9)こうした構成において、前記判断部は、前記電流供給部からの電流供給を受けた前記第2入力部の出力が、予め定めた閾値以上であると判断した第1の場合には、前記センサへの接続が断線しているとして前記判断結果を出力し、前記電流供給部からの電流供給を受けた前記第2入力部の出力が、予め定めた閾値未満であると判断した第2の場合には、前記センサへの接続が断線しているとの前記判断結果を出力しないものとしてよい。こうすれば、アナログ信号入力装置が断線の有無を判断した判断結果を出力するので、この判断結果を受けて、外部の機器が必要な対応を取ることが容易になる。
【0086】
(10)こうした構成において、前記判断部は、前記第1の場合、前記電流供給を停止した後の前記第2入力部の出力について判別し、前記電流供給を停止した後に前記第2入力部の出力が前記電流供給を受ける前の水準まで低下した場合には、前記センサへの接続が断線しているとの前記判断結果を出力し、前記電流供給を停止した後に前記第2入力部の出力が前記電流供給を受ける前の水準まで低下しない場合には、前記センサへの接続が断線しているとの前記判断結果を出力しないものとしてよい。こうすれば、アナログ信号入力装置が断線の有無を判断した判断結果を出力するので、この判断結果を受けて、外部の機器が必要な対応を取ることが容易になる上、断線検出の処理を行なうに際してセンサから第2入力部に閾値を超える出力を受けた場合に、誤って断線であると誤検出することを回避しやすくなる。
【0087】
(11)上記以外の態様として、制御システムとしての実施も可能である。この制御システムは、センサからのアナログ信号を入力しデジタル信号に変換して出力するアナログ信号入力装置と、前記アナログ信号入力装置と接続されてシステムの制御行なう制御装置と、を備える。この制御システムでは、アナログ信号入力装置は、前記センサが接続される一組の入力端子と、前記入力端子からのアナログ信号を一組の第1入力ラインを介した差動入力として受け付ける第1入力部であって、前記第1入力ライン間に第1抵抗器が介装された第1入力部と、前記入力端子からのアナログ信号を一組の第2入力ラインを介した差動入力として受け付ける第2入力部であって、前記第2入力ライン間に第2抵抗器が介装された第2入力部と、前記第1入力部および前記第2入力部を介して前記アナログ信号を個別に読み取って、前記アナログ信号を、複数ビットのデジタル信号の形態に変換して、前記制御装置に出力する信号出力部と、前記制御装置からの所定の指示を受けて動作し、前記一組の第1入力ラインの一方から、電源ラインに電流を供給する電流供給部と、前記電流供給部からの電流供給を受けて、前記第1入力部の出力が上昇した際の前記第2入力部の出力が、予め定めた閾値以上であるか否かを判断する判断部と、前記判断結果を、前記制御装置に出力する判断結果報知部と、を備え、前記制御装置は、前記アナログ信号入力装置から受け取った前記センサの検出値に対応した前記デジタル信号の大きさが、前記センサが前記アナログ信号入力装置の前記入力端子に接続されていない場合と区別できない状態であることを条件の1つとして、前記所定の指示を、前記アナログ信号入力装置に出力する指示出力部と、前記アナログ信号入力装置から受け取った前記判断結果が、前記センサと前記アナログ信号入力装置の前記入力端子との接続が断線していないと判断できない非正常状態である場合には、外部に制御信号を出力する制御信号出力部と、を備えるものとしてよい。こうすれば、制御システムとして、アナログ信号入力装置での断線検出を、冗長性の高い構成において容易に行なうことができる。したがって、回路構成上の無駄を排することができる。また、制御システムを構成するアナログ信号入力装置とシステムの制御を行なう制御装置とが、協働して断線検出ができ、制御システムとしての信頼性を高めることができる。この制御システムを構成するアナログ信号入力装置では、アナログ信号を入力する2つの入力部を組み合わせて断線検出を行ない、かつ電流供給部が供給する電流を大きくできるので、アナログ信号の入力ができない時間を短くでき、断線が生じていなければ、断線検出動作の間もアナログ信号の読み取りが可能に構成し得る。制御システムが、産業用のPCL装置である場合には、断線検出の時間を短く、もしくは0にできることは、特に好ましい。産業用PLCが制御する製造ライン等では、対象の状態の把握が遅れたり、有意の時間に亘って把握できなかったりすると、製品の品質が十分に確保できず、不良品などを生じる場合がありえる。迅速な断線検出が可能であれば、あるいは断線検出の間もアナログ信号の入力が可能になれば、こうした事態を回避することができる。
【0088】
(12)こうした構成において、更に、前記制御装置に接続される出力装置を備え、前記出力装置は、前記アナログ信号入力装置が接続された前記センサによって挙動が検出されている物理量の制御に関わるアクチュエータを駆動可能に接続されており、前記制御装置から前記制御信号を受け取った時、前記アクチュエータを前記物理量の挙動が、当該制御システムにとって安全性が高まる側となる状態に向けて駆動するものとしてよい。こうすれば、センサとの接続に断線が生じた場合のシステムの安全性を高めることができる。
【0089】
(13)こうした構成において、前記制御システムは、前記制御システムを構成する各装置間が通信回線により、相互に接続されており、少なくとも前記制御装置は、前記デジタル信号、前記所定の指示、前記判断結果および前記制御信号を、前記通信回線を介した通信により他の装置とやり取りするものとしてよい。こうすれば、各装置を通信により連携させることが容易となり、この通信を利用して断線検出のための所定の指示やその結果の共有を容易に実現できる。
【0090】
(14)上記各実施形態において、ハードウェアによって実現されていた構成の一部をソフトウェアに置き換えるようにしてもよい。ソフトウェアによって実現されていた構成の少なくとも一部は、ディスクリートな回路構成により実現することも可能である。また、本開示の機能の一部または全部がソフトウェアで実現される場合には、そのソフトウェア(コンピュータプログラム)は、コンピュータ読み取り可能な記録媒体に格納された形で提供することができる。「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、フレキシブルディスクやCD-ROMのような携帯型の記録媒体に限らず、各種のRAMやROM等のコンピュータ内の内部記憶装置や、ハードディスク等のコンピュータに固定されている外部記憶装置も含んでいる。すなわち、「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、データパケットを一時的ではなく固定可能な任意の記録媒体を含む広い意味を有している。
【0091】
本開示は、上述の実施形態に限られるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲において種々の構成で実現することができる。例えば、発明の概要の欄に記載した各形態中の技術的特徴に対応する実施形態中の技術的特徴は、上述の課題の一部又は全部を解決するために、あるいは、上述の効果の一部又は全部を達成するために、適宜、差し替えや、組み合わせを行うことが可能である。また、その技術的特徴が本明細書中に必須なものとして説明されていなければ、適宜、削除することが可能である。
【符号の説明】
【0092】
ADC,ADC1,ADC2…アナログ・デジタル変換器、OP1,OP2…オペアンプ、PTAC,PTCA,PTCO…パケット、RD1…第1分圧抵抗器、RD2…第2分圧抵抗器、11…流量計、13…配管、15…アクチュエータ、17…流量制御弁、19…ツイステッドペアケーブル、20…制御システム、30…制御装置、31…CPU、32…メモリ、35…通信部、37…表示部、40,40A…アナログ信号入力装置、41…CPU、43…判断部、45…通信部、47…電源部、50…入力端子、51…第1入力部、52…第2入力部、55…信号出力部、57…電流供給部、57D…シンク、57S…電流ソース、61…第1入力ライン、62…第2入力ライン、65…分圧回路、71…マルチプレックサ、73…アンプ、80…出力装置、81…CPU、82…メモリ、85…出力部、87…通信部、90…通信回線
図1
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図13