(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022170644
(43)【公開日】2022-11-10
(54)【発明の名称】液種特定装置
(51)【国際特許分類】
G01N 29/024 20060101AFI20221102BHJP
【FI】
G01N29/024
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021154313
(22)【出願日】2021-09-22
(31)【優先権主張番号】P 2021075467
(32)【優先日】2021-04-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000231512
【氏名又は名称】日本精機株式会社
(72)【発明者】
【氏名】棚橋 正貴
【テーマコード(参考)】
2G047
【Fターム(参考)】
2G047AA01
2G047BA03
2G047BC02
2G047BC14
2G047CA01
2G047CB03
2G047GA02
2G047GJ19
(57)【要約】
【課題】 商品性を向上させることが可能な液種特定装置を提供する。
【解決手段】 液体4に浸るとともに表面波Wsを伝搬する伝搬面11を有する伝搬体10と、伝搬体10に振動を与えて表面波Wsを発生させるとともに反射した表面波Wsを検出する圧電素子30と、を少なくとも有する表面波検出ユニット1と、液体4及び伝搬体10を収納する容器3とを備え、液体4の液種を特定すべく、容器3に設けられた陥凹部3cに表面波検出ユニット1を配置したものである。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体に浸るとともに表面波を伝搬する伝搬部を有する伝搬体と、
前記伝搬体に振動を与えて前記表面波を発生させるとともに反射した前記表面波を検出する圧電素子と、を少なくとも有する表面波検出ユニットと、
前記液体及び前記伝搬体を収納する収納部材とを備え、
前記液体の液種を特定すべく、前記収納部材に設けられた陥凹部に前記表面波検出ユニットを配置したことを特徴とする液種特定装置。
【請求項2】
前記収納部材は、その主要部を構成する本体部を有し、
前記陥凹部は、前記本体部の重力作用方向に膨出するように設けられることを特徴とする請求項1記載の液種特定装置。
【請求項3】
前記陥凹部は、前記本体部の底部に設けられることを特徴とする請求項2記載の液種特定装置。
【請求項4】
前記陥凹部は、前記伝搬部に対応するように設けられる対応部と、前記対応部と前記底部とを繋ぐ繋ぎ部とを有することを特徴とする請求項3記載の液種特定装置。
【請求項5】
前記液体は、第1の比重を有する第1の液体と、前記第1の比重よりも大きい第2の比重を有する第2の液体とで構成され、
前記第2の液体が前記陥凹部に沈降することを特徴とする請求項1から請求項4のうち何れか1つに記載の液種特定装置。
【請求項6】
前記陥凹部には、前記陥凹部に沈降した前記第2の液体を前記陥凹部の外部に排出可能とする排出手段が設けられていることを特徴とする請求項5記載の液種特定装置。
【請求項7】
前記表面波検出ユニットは、前記伝搬体が前記重力作用方向と直交する方向に沿った状態で、前記陥凹部に取り付けられる構成としたことを特徴とする請求項2から請求項6のうち何れか1つに記載の液種特定装置。
【請求項8】
前記収納部材は、移動体に搭載された燃料タンクであり、
前記第1の液体は、前記燃料タンクに貯蔵される液体燃料であることを特徴とする請求項5記載の液種特定装置。
【請求項9】
前記陥凹部に近づくにつれて低くなる傾斜面を前記底部に設けたことを特徴とする請求項3または請求項4記載の液種特定装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料タンク等の収納部材に収納(貯蔵)される液種を特定する液種特定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、この種の液種特定装置にあっては、例えば下記特許文献1に記載されているものが知られている。この特許文献1に記載の液種特定装置は、液体に浸るとともに表面波を伝搬する主面(伝搬面)を有する伝搬体と、伝搬体に振動を与えて表面波を発生させるとともに表面波反射部で反射した表面波を検出する圧電素子とを有する表面波検出ユニットと、液体及び伝搬体を収納する燃料タンク(収納部材)とを備え、表面波検出ユニットは伝搬体の長手方向が燃料タンクの底面と平行となるように燃料タンクに取り付けられる。そして、伝搬体に振動が与えられた後、表面波が表面波反射部で反射されて圧電素子に入力するまでの期間である表面波伝搬期間に基づいて液種を特定するようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、伝搬体が海上を走行する船舶の燃料タンク内に搭載されるような場合、荒天の状況下ではガソリンが貯蔵されている燃料タンク内に海水が混入することが考えられる。一方で、燃料タンクの底面はある程度広いので、海水の混入が少量の場合、海水混入の検知が困難になり、商品性の低下を招くことが考えられる。
【0005】
本発明は、上記実情に鑑みてなされたものであり、商品性を向上させることが可能な液種特定装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、液体に浸るとともに表面波を伝搬する伝搬部を有する伝搬体と、前記伝搬体に振動を与えて前記表面波を発生させるとともに反射した前記表面波を検出する圧電素子と、を少なくとも有する表面波検出ユニットと、前記液体及び前記伝搬体を収納する収納部材とを備え、前記液体の液種を特定すべく、前記収納部材に設けられた陥凹部に前記表面波検出ユニットを配置したことを特徴とする。
【0007】
また本発明は、前記収納部材は、その主要部を構成する本体部を有し、前記陥凹部は、前記本体部の重力作用方向に膨出するように設けられることを特徴とする。
【0008】
また本発明は、前記陥凹部は、前記本体部の底部に設けられることを特徴とする。
【0009】
また本発明は、前記陥凹部は、前記伝搬部に対応するように設けられる対応部と、前記対応部と前記底部とを繋ぐ繋ぎ部とを有することを特徴とする。
【0010】
また本発明は、前記液体は、第1の比重を有する第1の液体と、前記第1の比重よりも大きい第2の比重を有する第2の液体とで構成され、前記第2の液体が前記陥凹部に沈降することを特徴とする。
【0011】
また本発明は、前記陥凹部には、前記陥凹部に沈降した前記第2の液体を前記陥凹部の外部に排出可能とする排出手段が設けられていることを特徴とする。
【0012】
また本発明は、前記表面波検出ユニットは、前記伝搬体が前記重力作用方向と直交する方向に沿った状態で、前記陥凹部に取り付けられる構成としたことを特徴とする。
【0013】
また本発明は、前記収納部材は、移動体に搭載された燃料タンクであり、前記第1の液体は、前記燃料タンクに貯蔵される液体燃料であることを特徴とする。
【0014】
また本発明は、前記陥凹部に近づくにつれて低くなる傾斜面を前記底部に設けたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、所期の目的を達成でき、商品性を向上させることが可能な液種特定装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明の実施形態による液種特定装置の概略構成図。
【
図3】同実施形態による伝搬体、素子収容部及び圧電素子の概略断面図。
【
図4】同実施形態による伝搬体及び素子収容部の正面図。
【
図6】伝搬体に振動を与えたときに圧電素子に入力される波を示す模式図。
【
図7】同実施形態の第1変形例による液種特定装置の概略構成図。
【
図8】同実施形態の第2変形例による液種特定装置の概略構成図。
【
図9】同実施形態の第3変形例による液種特定装置の概略構成図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の一実施形態について図面を参照して説明する。
【0018】
本実施形態による液種特定装置Lは、
図1に示すように、表面波検出ユニット1と、制御部2と、を備える。液種特定装置Lは、収納部材としての容器3内に入れられた液体4の種類(以下、液種とも言う)を特定する。なお、ここでの容器3は、海上を走行する船舶等の移動体に搭載される燃料タンクとする。
【0019】
表面波検出ユニット1は、
図2~
図4に示すように液体4に浸る伝搬体10と、素子収容部20と、圧電素子30と、フランジ部40と、を有する。
【0020】
以下では、各図に示すように、伝搬体10の長手方向に延びるX軸や、後述の伝搬面11の法線方向に延びるZ軸や、X軸及びZ軸と直交するY軸を用いて、表面波検出ユニット1の構成を説明する場合がある。また、X、Y、Z軸の各軸に沿う方向をその軸方向とする。さらに、X、Y、Zの各軸の矢印が向く方向を「+」方向とし、その逆方向を「-」方向とする。つまり、X軸に沿う方向はX方向である。矢印の向きも考慮すると、X軸の矢印が向く方向が+X方向であり、その逆方向が-X方向である。Y、Z軸についても同様である。
【0021】
伝搬体10は、後述の表面波Wsを含む超音波が伝搬するものであり、例えばPPS(ポリフェニレンサルファイド)などの合成樹脂から形成される。
【0022】
伝搬体10は、X軸方向に延び、概ね四角柱状に形成されている。伝搬体10は、
図5に示すように断面形状が概ねH状をなし、伝搬部としての伝搬面11と、裏面部12と、側面部13、14と、第1リブR1と、第2リブR2と、第3リブR3と、第4リブR4と、を有する。また、伝搬体10は、
図2、
図3に示す底面部15を有する。
【0023】
伝搬面11は、伝搬体10のうち表面波Wsを伝搬する主要部分であり、
図4に示すようにX方向に延びる帯状をなす。伝搬面11の-X方向の端は、表面波Wsが反射する反射部11aとして機能する。裏面部12は、
図2、
図3、
図5に示すように、伝搬体10における伝搬面11の反対側に位置する。裏面部12もX方向に延びる帯状をなす。伝搬面11は-Z方向に向き、裏面部12は+Z方向に向く。伝搬面11と裏面部12は、XY平面と平行である。
図2、
図3に示すように、伝搬体10には、裏面部12から伝搬面11に向かって凹む溝12aが形成されている。なお、
図2では、伝搬体10及び素子収容部20を-Y方向から見た側面図で表した。また、
図3は、伝搬体10、素子収容部20及び圧電素子30をXZ平面と平行な面で切った断面図である。
【0024】
図5に示すように、側面部13は-Y方向に向き、側面部14は+Y方向に向く。側面部13と側面部14は、XZ平面と平行である。底面部15は、
図2、
図3に示すように、伝搬面11と裏面部12とを繋ぐ傾斜面である。底面部15は、伝搬面11となす角が鋭角で、裏面部12となす角が鈍角の面である。底面部15により、伝搬体10の先端部は先細りの形状をなす。底面部15の傾斜によって、伝搬面11を-X方向に伝搬する表面波Wsが、裏面部12に回り込むことを抑制することができ、伝搬体10の反射部11aで反射して再び伝搬面11を伝搬する表面波Wsを効率良く圧電素子30に向かわせることができる。
【0025】
第1リブR1と第2リブR2は、
図5に示すように、伝搬面11が向く方向(-Z方向)に突起(突出)するとともに、
図4に示すように、X方向に延びる。第1リブR1及び第2リブR2は、
図5に示すように、伝搬面11の幅方向(Y方向)において伝搬面11を挟んで互いに対向する。例えば、第1リブR1及び第2リブR2のそれぞれの主面(-Z方向に向く面)は、伝搬面11と平行である。また、第1リブR1と第2リブR2の伝搬面11からの高さ(Z方向の高さ)は等しく、表面波Wsの波長λ以上に設定されることが好ましい。
【0026】
第1リブR1の基端部には、伝搬面11と繋がる曲面S1が形成されている。具体的には、曲面S1は、第1リブR1の内面(+Y方向に向く面)であって第2リブR2と対向する第1対向面So1と、伝搬面11とを繋ぐ。第2リブR2の基端部には、伝搬面11と繋がる曲面S2が形成されている。具体的には、曲面S2は、第2リブR2の内面(-Y方向に向く面)であって第1リブR1と対向する第2対向面So2と、伝搬面11とを繋ぐ。ここで、実際には、圧電素子30の振動による表面波Wsは、伝搬面11だけでなく伝搬面11の周囲にも発生する。上記のような曲面S1、S2を設けることにより、伝搬体10に発生する表面波Wsを伝搬面11に集めることができ、伝搬面11を伝搬する表面波Wsの指向性を高めることができる。
【0027】
また、
図4に示すように、第1リブR1と第2リブR2の間隔Dは、圧電素子30の幅と略等しく設定されている。具体的に、第1リブR1と第2リブR2の間隔Dとは、第1対向面So1と第2対向面So2の間隔である。この構成により、伝搬面11以外の部分に不要な表面波Wsが発生することを抑制することができる。なお、間隔Dが圧電素子30の幅と略等しいとは、間隔Dが圧電素子30の幅と等しいことだけでなく、伝搬面11の幅が圧電素子30の幅と等しいことも含む。つまり、圧電素子30の幅は、間隔D以下であって、伝搬面11の幅以上の範囲であることが好ましい。
【0028】
第3リブR3と第4リブR4は、
図5に示すように、裏面部12が向く方向(+Z方向)に突起(突出)する。また、第3リブR3と第4リブR4は、第1リブR1及び第2リブR2と同様にX方向に延びる。第3リブR3及び第4リブR4は、
図5に示すように、裏面部12の幅方向(Y方向)において裏面部12を挟んで互いに対向する。例えば、第3リブR3及び第4リブR4のそれぞれの主面(+Z方向に向く面)は、裏面部12と平行である。例えば、第3リブR3の内面(+Y方向に向く面)であって第4リブR4と対向する第3対向面So3と、裏面部12とのなす角は、直角に設定されている。例えば、第4リブR4の内面(-Y方向に向く面)であって第3リブR3と対向する第4対向面So4と、裏面部12とのなす角も、直角に設定されている。
【0029】
第1リブR1及び第2リブR2に加えて、第3リブR3及び第4リブR4を設けることにより、伝搬体10の断面二次モーメントを向上させ、振動共振に対する耐力を向上させることができる。なお、第3リブR3及び第4リブR4の高さ(裏面部12から+Z方向への高さ)は、設計に応じて任意に設定可能である。
【0030】
素子収容部20は、
図3に示すように、伝搬体10の+X方向に位置し、圧電素子30を収容する。例えば、素子収容部20は、伝搬体10と同一材料で、一体に形成されている。素子収容部20は、円盤部21と、筒体22とを備える。
【0031】
円盤部21は、伝搬体10と連結されている。筒体22は、円盤部21の外径よりも小さい外径を有する円筒形状をなし、円盤部21から+X方向に突出する。円盤部21のうち筒体22に囲まれた部分に、圧電素子30が収容される。筒体22の外周面には、筒体22の中心に向かって凹む溝であって、
図2に断面で示すシール材5が取り付けられる取付溝22aが形成されている。
【0032】
圧電素子30は、円盤部21を介して伝搬体10に振動を与え、伝搬体10に超音波を発生させる。具体的には、圧電素子30は、超音波として、伝搬体10の伝搬面11に表面波Wsを発生させるとともに、伝搬体10の内部に内部伝搬波Wiを発生させる。また、圧電素子30は、反射部11aで反射した表面波Wsと、溝12aで反射した内部伝搬波Wiとを検出し、検出結果を示す検出信号(電圧信号)を出力する。
【0033】
圧電素子30は、公知の超音波トランスデューサから構成され、直方体状をなす。圧電素子30は、円盤部21を挟んで伝搬体10と対向するとともに、伝搬面11に表面波Wsを発生させるため、その一端部(
図3での下端部)が伝搬体10の伝搬面11を跨いで迫り出すように設けられる。例えば、表面波Wsは、液体4中ではシュルツ波である。なお、表面波Wsは、横波型弾性表面波(SH-SAW)等であってもよい。内部伝搬波Wiは、横波等であればよい。圧電素子30は、図示しない端子を介して制御部2と電気的に接続される。
【0034】
図2に示すフランジ部40は、例えば合成樹脂により形成され、-X方向に開口する円筒形状をなす筒状部41と、筒状部41の外径方向に迫り出したフランジ42と、フランジ42よりも+X方向に位置する中空状のキャップ部43と、を有する。なお、
図2では、筒状部41及びシール材5を径方向に沿う断面で示した。
【0035】
筒状部41は、素子収容部20の筒体22を取り囲む。筒状部41の先端は、X方向において、円盤部21の外周端部と対向する。筒状部41と筒体22の間は、シール材5によって密封される。シール材5は、例えば樹脂ゴムからリング状に形成され、パッキンとして機能する。
【0036】
フランジ42は、容器3に、図示しないネジなどの固定手段によって取り付けられる部分である。キャップ部43は、図示しないカプラを有する。カプラの内部には、図示しない出力端子が位置する。外部機器とカプラが連結されると、当該外部機器と出力端子が電気的に接続される。例えば、キャップ部43の内部には、圧電素子30及び出力端子の各々と電気的に接続され、後述の送信回路、受信回路などが形成された図示しないPCB(Printed Circuit Board)が収容される。
【0037】
図1に模式的に示す制御部2は、例えばマイクロコンピュータから構成され、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)等を備える。
【0038】
容器3は、前記移動体に搭載される燃料タンクを適用することができ、その内部に液体4及び伝搬体10を収納している。また、容器3は、本体部3aと、本体部3aにおける底部3bの中央部分に設けられる陥凹部3cと、を備える。
【0039】
本体部3aは、容器3の主要部を構成する。陥凹部3cは、伝搬面11に対応するように設けられる最深部分としての対応部P1と、この対応部P1と底部3bとを繋ぐ繋ぎ部P2とを有する(
図2参照)。また、陥凹部3cは、本体部3aに連なる略凹部形状となっており、本体部3aの底部3bから膨出するように設けられる。例えば、陥凹部3cは、平坦面として構成される底部3bを起点として重力が作用する重力作用方向(ーZ方向)に延出している。つまり、陥凹部3cは、本体部3aの前記重力作用方向に膨出するように設けられるとも言える。
【0040】
なお、本例の場合、液体4の液種を特定すべく、容器3に設けられた陥凹部3cに表面波検出ユニット1を配置(固定)した構成としている。具体的には、表面波検出ユニット1は、伝搬体10が底部3bと平行状態をなすように(伝搬面11が前記重力作用方向と直交する方向(X方向)に沿った状態で)、陥凹部3cに取り付けられる構成としている。なお、
図2中、右側に位置する繋ぎ部P2の孔P3を円盤部21が塞いだ状態で、表面波検出ユニット1は、陥凹部3cに取り付けられる(
図2参照)。また、この際、伝搬体10は、その全域が液体4に浸ることになる。
【0041】
液体4は、容器3に貯蔵されるガソリン(液体燃料)を適用することができる。ここで、容器3が海上を走行する船舶(移動体)に搭載される燃料タンクである場合、荒天の状況下(あるいはフィラーキャップが何らかの原因で破損しているようか状況下)ではガソリンが貯蔵される容器3内に海水が混入することが考えられる。容器3内に海水が混入した場合、容器3内にはガソリンと海水とでなる液体4が共存することになる。以下の説明では、液体4のうちガソリンを第1の液体4aとし、海水を第2の液体4bとして適宜説明する。
【0042】
ここで、ガソリンの比重は約0.74で、海水の比重は約1.03であることから、液体4は、第1の比重を有する第1の液体4aと、当該第1の比重よりも大きい第2の比重を有する第2の液体4bとで構成され、比重の大きい第2の液体4bが重力の作用で容器3に設けられた陥凹部3cに沈降する。
【0043】
そして、上述した制御部2は、圧電素子30が検出した表面波Wsの伝搬時間に基づいて液体4の液種を特定する特定部として機能する。PCBの送信回路は、制御部2の制御により、圧電素子30に駆動信号を送信して圧電素子30を駆動する。この結果、伝搬体10には、表面波Ws及び内部伝搬波Wiが発生する。PCBの受信回路は、反射した表面波Ws及び反射した内部伝搬波Wiの各々を示す検出信号を圧電素子30から受信し、制御部2に供給する。検出信号を受信した制御部2は、当該検出信号に基づき、液体4の液種を特定する処理を実行する。
【0044】
なお、送信回路及び受信回路は、制御部2に備えられていてもよい。また、制御部2の少なくとも一部の機能を、フランジ部40の内部に設けられたPCBに実装してもよい。
【0045】
ここで、液種の特定方法の一例を説明する。
図6は、振動W0を発生させたことによって伝搬体10を伝搬する内部伝搬波Wi及び表面波Wsが反射した後に圧電素子30に入力する様子を示している。
【0046】
時点t0は、圧電素子30の駆動により伝搬体10に振動W0が発生した時点である。振動W0が発生することによって、伝搬体10が表面波Ws及び内部伝搬波Wiを伝搬する。時点t1は、内部伝搬波Wiが溝12aで反射されて圧電素子30に入力した時点である。期間T1は、時点t0から時点t1までの期間である内部伝搬波伝搬期間T1である。時点t2は、表面波Wsが反射部11aで反射されて圧電素子30に入力した時点である。期間T2は、時点t0から時点t2までの期間である表面波伝搬期間T2である。
【0047】
制御部2は、表面波伝搬期間T2に基づいて液体4の液種を特定する。つまり、制御部2は、表面波伝搬期間T2と液体4の液種とが関係付けられたデータテーブルを参照することによって、液体4の液種を特定する。この場合、制御部2は、前記データテーブルを参照し、重力の作用で陥凹部3cに沈降した液体4の液種が海水(第2の液体4b)であると特定する処理を実行する。なお、制御部2は、検出した液種を図示しない文字表示などの報知部によってユーザに報知する処理を実行してもよい。以下、表面波伝搬期間T2に基づいて液体4の液種を特定することができる原理を説明する。
【0048】
表面波伝搬期間T2は表面波伝搬速度に反比例するため、表面波伝搬速度が速くなるにつれて表面波伝搬期間T2が短くなる一方で、表面波伝搬速度が遅くなるにつれて表面波伝搬期間T2が長くなる。伝搬体10が全体に渡って液体4に浸っているときの表面波伝搬速度は、液体4に固有の液中の音速vl及び密度ρl、並びに、伝搬体10固有の内部伝搬波Wiの伝搬速度vsによって定まる。すなわち、伝搬体10の材質が固定であるときには、伝搬体10が全体に渡って液体4に浸っているときの表面波伝搬速度は、液体4の液種によって変化する。そのため、実測又はシミュレーション等によって、伝搬体10が全体に渡って液体4に浸っているときの表面波伝搬速度と液体4の液種との関係を得ることができる。この関係に基づいて作成された表面波伝搬期間T2と液種とが関係付けられたデータテーブルを制御部2のROMに記憶することによって、液種特定装置Lは、表面波伝搬期間T2を用いて、液体4の液種(陥凹部3cに沈降した液種が海水であること)を特定することができる。
【0049】
なお、制御部2が、表面波伝搬期間T2に基づいて液体4の液種を特定するという表現には、制御部2が、表面波伝搬期間T2から表面波伝搬速度を算出し、算出した表面波伝搬速度に基づいて液体4の液種を特定することも含まれる。すなわち、制御部2は、表面波伝搬速度と液体4の液種とが関係付けられたデータテーブルを参照することによって、算出した表面波伝搬速度に基づいて液体4の液種を特定してもよい。この場合、制御部2は、表面波伝搬期間T2と液体4の液種とが関係付けられたデータテーブルの代わりに、表面波伝搬速度と液体4の液種とが関係付けられたデータテーブルをROMに記憶していればよい。
【0050】
以上のように、本実施形態によれば、液体4に浸るとともに表面波Wsを伝搬する伝搬面11を有する伝搬体10と、伝搬体10に振動を与えて表面波Wsを発生させるとともに反射した表面波Wsを検出する圧電素子30とを有する表面波検出ユニット1と、液体4及び伝搬体10を収納する容器3とを備え、液体4の液種を特定すべく、容器3に設けられた陥凹部3cに表面波検出ユニット1を配置したものである。
【0051】
従って、伝搬体10が海上を走行する船舶の容器3内(陥凹部3c)に搭載され、荒天の状況下などで、ガソリン(第1の液体4a)が貯蔵されている容器3内に少量の海水(第2の液体4b)が混入した場合、海水(第2の液体4b)が容器3の陥凹部3cに沈降し、陥凹部3cに配置された表面波検出ユニット1を利用して液種の特定が可能となる。これにより容器3内に混入した海水を検知することが可能となり、商品性の向上した液種特定装置を提供することができる。
【0052】
本発明は以上の実施形態及び図面によって限定されるものではない。本発明の要旨を変更しない範囲で、適宜、変更(構成要素の削除も含む)を加えることが可能である。
【0053】
例えば上述した実施形態では、底部3bが平坦面となっているが、本実施形態の第1変形例として
図7に示すように陥凹部3cに近づくにつれて低くなる傾斜面3dを底部3bに設ける構成としてもよい。このように底部3bに傾斜面3dを設けることで、容器3内に混入した海水を容器3の最下部に位置する陥凹部3cへと効率よく(積極的に)沈降させることが可能となる。
【0054】
また、上述した実施形態では、第2の液体4bが陥凹部3cに沈降するものであったが、本実施形態の第2変形例として
図8に示すように、陥凹部3cに沈降した第2の液体4bを陥凹部3cの外部に排出可能とする排出手段50が陥凹部3cに設けられた構成としてもよい。排出手段50は、例えば陥凹部3cの対応部P1に繋がっている細長い管51と、この管51の途中に設けられた手動式の開閉弁52とで構成される。
【0055】
そして、例えば人間の手によって開閉弁52が開状態となることで、陥凹部3cに沈降した第2の液体4bが陥凹部3cの外部に位置する管51の内部を通り、図示省略した混入液体収納用の容器に流入される。なお、第2の液体4bが陥凹部3cや陥凹部3cと開閉弁52との間にある管51部分に存在しない状態となったときに、手によって開閉弁52を閉状態とすればよい。
【0056】
このように第2変形例によれば、陥凹部3cには第2の液体4bを陥凹部3cの外部に排出可能とする排出手段50が設けられていることから、第2の液体4bの混入が検知された際に第2の液体4bを選択的(優先的)に容器3の外部に排出することができ、商品性を高めることができるという利点がある。
【0057】
また、上記の第2変形例では伝搬体10が前記重力作用方向と直交する方向に沿った状態で陥凹部3cに取り付けらているが、例えば本実施形態の第3変形例として
図9に示すようにフランジ部40が下側に位置するような姿勢であって、且つ、表面波検出ユニット1をやや傾けた状態で陥凹部3cに取り付けるようにしてもよい。
【0058】
ここでの陥凹部3cは、
図9において右斜め下に傾斜している最深部分P4と、この最深部分P4と底部3bとを繋ぐ傾斜壁からなる繋ぎ部P5とを備える。なお、詳細図示は省略するが、最深部分P4に上述した孔P3が設けられ、上述した実施形態と同様に孔P3を円盤部21が塞いだ状態で、傾いた表面波検出ユニット1が陥凹部3cに取り付けられる。そして、
図9中、右側に位置する繋ぎ部P5の下方には第2変形例にて採用した排出手段50が設けられている。
【0059】
従って、この第3変形例の場合であっても、陥凹部3cには第2の液体4bを陥凹部3cの外部に排出可能とする排出手段50が設けられた構成となり、このように構成することで第2の液体4bの混入が検知された際に第2の液体4bを選択的(優先的)に容器3の外部に排出することができ、商品性を高めることができるという利点がある。さらに第2、第3変形例では、排出手段50の一構成部品として手動式の開閉弁52を採用したが、手動式の開閉弁52に代えて自動開閉弁を採用してもよい。この場合、例えば陥凹部3cに第2の液体4bが所定量を超えて流入したときに、前記自動開閉弁によって自動で弁が開閉し、第2の液体4bが容器3の外部に排出されることになる。
【0060】
なお、伝搬体10の材質は、表面波Wsを良好に伝搬することができれば任意である。例えば、伝搬体10として使用される樹脂は、PPSに限られず、POM(ポリアセタール)、PBT(ポリブチレンテレフタレート)等であってもよい。
【0061】
以上の説明では、本発明の理解を容易にするために、公知の技術的事項の説明を適宜省略した。
【符号の説明】
【0062】
1 表面波検出ユニット
2 制御部
3 容器(収納部材)
3a 本体部
3b 底部
3c 陥凹部
3d 傾斜面
4 液体
4a 第1の液体
4b 第2の液体
10 伝搬体
11 伝搬面(伝搬部)
12 裏面部
12a 溝
13、14 側面部
15 底面部
20 素子収容部
30 圧電素子
40 フランジ部
50 排出手段
P1 対応部
P2 繋ぎ部
R1 第1リブ
R2 第2リブ
R3 第3リブ
R4 第4リブ
Ws 表面波
Wi 内部伝搬波