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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022170647
(43)【公開日】2022-11-10
(54)【発明の名称】放熱部材及び冷却装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 23/473 20060101AFI20221102BHJP
   H05K 7/20 20060101ALI20221102BHJP
【FI】
H01L23/46 Z
H05K7/20 N
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021159851
(22)【出願日】2021-09-29
(31)【優先権主張番号】63/180,890
(32)【優先日】2021-04-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】000232302
【氏名又は名称】日本電産株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100109380
【弁理士】
【氏名又は名称】小西 恵
(74)【代理人】
【識別番号】100109036
【弁理士】
【氏名又は名称】永岡 重幸
(72)【発明者】
【氏名】謝 宗廷
(72)【発明者】
【氏名】何 昆耀
【テーマコード(参考)】
5E322
5F136
【Fターム(参考)】
5E322AA01
5E322AA05
5E322AA11
5E322AB02
5E322DA04
5E322FA01
5E322FA04
5F136BA06
5F136BA14
5F136BA32
5F136CB06
5F136CB07
5F136DA27
5F136FA03
(57)【要約】      (修正有)
【課題】十分な放熱能力を有すると共に冷媒に対する流体抵抗の上昇を抑制できる放熱部材及び当該放熱部材を備える放熱部材を提供する。
【解決手段】放熱部材30は、流体が流れる第1表面32aを有する金属板32と、第1表面に設けられた複数の柱状体部35と、第1表面に設けられ、複数の柱状体の間に位置する溝と、第1表面の反対側の発熱体34a、34bに接する第2表面32bと、を備える。発熱体の熱は、金属板の第2表面側から第1表面側へ伝わる。そして、当該熱は、金属板の第1表面、柱状体及び溝を介して流体に放熱される。第1表面に設けられた柱状体と溝により、第1表面側の放熱面積が大きくなるので、放熱部材の放熱能力を増大することができる。この放熱能力の増大は、柱状体の数を増やすのではなく、溝を形成することにより達成されるので、流体抵抗の上昇を抑制することができる。
【選択図】図1B
【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体が流れる第1表面を有する金属板と、
前記第1表面に設けられた複数の第1凸部と、
前記第1表面に設けられ、前記複数の第1凸部の間に位置する凹部と、
前記第1表面の反対側の発熱体に接する第2表面と、
を備える放熱部材。
【請求項2】
前記複数の第1凸部の各々は、横断面が多角形、円形または楕円形の柱状体であることを特徴とする請求項1に記載の放熱部材。
【請求項3】
前記柱状体の横断面の形状は、前記第1表面に垂直な方向において、不変であることを特徴とする請求項2に記載の放熱部材。
【請求項4】
前記柱状体の横断面の面積は、前記第1表面に垂直な方向において、変化することを特徴とする請求項2に記載の放熱部材。
【請求項5】
前記凹部は少なくとも1つの溝を含むことを特徴とする請求項1~4のいずれか1項に記載の放熱部材。
【請求項6】
前記少なくとも1つの溝は、前記流体の流れる方向に延びる溝と、前記流体の流れる方向と交差する方向に延びる溝の、少なくとも一方を含むことを特徴とする請求項5に記載の放熱部材。
【請求項7】
前記少なくとも1つの溝は、互いに平行に延びる複数の溝を含むことを特徴とする請求項5または6に記載の放熱部材。
【請求項8】
前記少なくとも1つの溝は、互いに非平行に延びる複数の溝を含むことを特徴とする請求項5または6に記載の放熱部材。
【請求項9】
前記少なくとも1つの溝の各々は、半円形、半楕円形または多角形の断面形状を有することを特徴とする請求項5~8のいずれか1項に記載の放熱部材。
【請求項10】
前記少なくとも1つの溝の各々の断面形状は非対称であることを特徴とする請求項9に記載の放熱部材。
【請求項11】
前記溝の断面形状が多角形である場合、当該多角形の角部は滑らかな曲面であることを特徴とする請求項9または10に記載の放熱部材。
【請求項12】
前記少なくとも1つの溝は複数の溝を含み、前記複数の溝のうち、隣り合う溝の間に、第2凸部を設けたことを特徴とする請求項5~11のいずれか1項に記載の放熱部材。
【請求項13】
前記第2凸部の高さは、前記第1凸部より低いことを特徴とする請求項12に記載の放熱部材。
【請求項14】
前記複数の第1凸部が、前記流体が流れる方向に対して垂直に配置されている場合、前記凹部は前記複数の第1凸部の上流に設けられることを特徴とする請求項1~13のいずれか1項に記載の放熱部材。
【請求項15】
請求項1~14のいずれか1項に記載の放熱部材と、
少なくとも前記放熱部材の前記複数の第1凸部を収容し、前記複数の第1凸部の隙間に流体を流すハウジングと、
を備え、
前記ハウジングは、前記流体の入口と出口を有することを特徴とする冷却装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、放熱部材と、当該放熱部材を備える冷却装置とに関する。
【背景技術】
【0002】
電子部品(例えば、IGBT等の半導体モジュール)を冷却する冷却装置として、複数のピン(冷却フィン)を有する放熱部材を備える冷却装置が知られている(例えば、特許文献1及び特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2020-92250号公報
【特許文献2】特許6349161号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、高電力消費の電子部品を冷却する場合、従来のピン型冷却フィンの放熱能力では十分な冷却が行われない可能性がある。また、ピン型冷却フィンからなる放熱部材の場合、ピン型冷却フィンの数が多いと、ピン型冷却フィンの間を流れる冷媒に対して大きな流体抵抗が生じてしまう。冷媒に対する流体抵抗が大きいと、冷媒を冷却装置に供給するポンプの負担が増加する。
【0005】
上記問題点に鑑みて、本発明は、十分な放熱能力を有すると共に冷媒に対する流体抵抗の上昇を抑制できる放熱部材及び冷却装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の1つの態様にかかる放熱部材は、流体が流れる第1表面を有する金属板と、前記第1表面に設けられた複数の第1凸部と、前記第1表面に設けられ、前記複数の第1凸部の間に位置する凹部と、前記第1表面の反対側の発熱体に接する第2表面と、を備える。
発熱体の熱は、金属板の前記第2表面側から第1表面側へ伝わる。そして、当該熱は、前記金属板の第1表面、第1凸部および凹部を介して前記流体に放熱される。第1表面に設けられた第1凸部と凹部により、第1表面側の放熱面積が大きくなるので、放熱部材の放熱能力を増大することができる。この放熱能力の増大は、第1凸部の数を増やすのではなく、凹部を形成することにより達成されるので、流体抵抗の上昇を抑制することができる。また、凹部は熱源である発熱体(第2表面)に近いので、熱源と放熱部との間の距離(伝熱距離)を短くすることができる。伝熱距離が短いと、放熱部材の放熱能力(放熱効率)が増大する。
【0007】
前記複数の第1凸部の各々は、横断面が多角形、円形または楕円形の柱状体であってもよい。つまり、第1凸部が柱状体である場合、柱状体は三角柱または四角柱などでもよいし、円柱または楕円柱でもよい。柱状体により放熱部材の放熱面積が増大するので、放熱部材の放熱能力が向上する。
前記柱状体の横断面の形状は、前記第1表面に垂直な方向において、不変であってもよい。つまり、柱状体の断面は基部から先端に向けて一定であってもよい。あるいは、前記柱状体の横断面の面積は、前記第1表面に垂直な方向において、変化してもよい。つまり、柱状体の断面は基部から先端に向けて変化してもよい(例えば、テーパ状)。
前記凹部は、例えば、少なくとも1つの溝を含む。溝により、第1表面側の放熱面積が大きくなるので、放熱部材の放熱能力を増大することができる。
【0008】
前記少なくとも1つの溝は、前記流体の流れる方向に延びる溝と、前記流体の流れる方向と交差する方向に延びる溝の、少なくとも一方を含んでよい。つまり、溝の長手方向は、流体が流れる方向と同じでもよいし、交差してもよい。
前記少なくとも1つの溝は、互いに平行に延びる複数の溝を含んでよい。つまり、複数の溝は互いに平行であってよい。あるいは、前記少なくとも1つの溝は、互いに非平行に延びる複数の溝を含んでよい。つまり、複数の溝は互いに平行でなくてもよい。
前記少なくとも1つの溝の各々は、半円形、半楕円形または多角形の断面形状を有してもよい。つまり、各溝の断面は、半円形、半楕円、三角形、四角形などでよい。
前記少なくとも1つの溝の各々の断面形状は非対称であってよい。
前記溝の断面形状が多角形である場合、当該多角形の角部は滑らかな曲面であってもよい。
【0009】
前記少なくとも1つの溝は複数の溝を含み、前記複数の溝のうち、隣り合う溝の間に、第2凸部を設けてもよい。溝と溝の間に第2凸部を設けることにより、放熱面積がさらに増大し、放熱能力をさらに向上することができる。前記第2凸部の高さは、前記第1凸部より低い。第2凸部は第1凸部より低い凸部なので、第2凸部による流体抵抗の増大を抑制することができる。
前記複数の第1凸部が、前記流体が流れる方向に対して垂直に配置されている場合、前記凹部は前記複数の第1凸部の上流に設けられてもよい。凹部が第1凸部の上流に位置すると、凹部で発生する渦により、第1凸部の放熱能力が向上する。
【0010】
本発明の第2の態様にかかる冷却装置は、上記した放熱部材と、少なくとも前記放熱部材の前記複数の第1凸部を収容し、前記複数の第1凸部の隙間に流体を流すハウジングと、を備え、前記ハウジングは、前記流体の入口と出口を有する。
冷却装置は上記した放熱部材を備えるので、金属板の前記第2表面側から伝わる熱(発熱体の熱)は、前記金属板の第1表面、第1凸部および凹部を介して前記流体に放熱される。第1表面に設けられた第1凸部と凹部により、第1表面側の放熱面積が大きくなるので、放熱部材の放熱能力を増大することができる。この放熱能力の増大は、第1凸部の数を増やすのではなく、凹部を形成することにより達成されるので、流体抵抗の上昇を抑制することができる。また、凹部は熱源である発熱体(第2表面)に近いので、熱源と放熱部との間の距離(伝熱距離)を短くすることができる。伝熱距離が短いと、放熱部材の放熱能力(放熱効率)が増大し、その結果、冷却装置の冷却能力も向上する。
【発明の効果】
【0011】
本発明の放熱部材及び冷却装置によれば、十分な放熱効果を発揮できると共に冷媒に対する流体抵抗の上昇を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1A図1Aは本発明の実施形態1に係る冷却装置の概略斜視図である。
図1B図1Bは、図1Aの冷却装置の放熱部材の側面図である。
図2図2(a)は、溝を形成する前の板材の下面の一部を示す図であり、図2(b)は図2(a)の2b-2b線断面図である。
図3図3(a)は、溝を形成した後の板材の下面の一部を示す図であり、図3(b)は図3(a)の3b-3b線断面図である。
図4図4(a)は、実施形態2の放熱部材の下面の一部を示す図であり、図4(b)は図4(a)の4b-4b線断面図である。
図5図5(a)は、実施形態3の放熱部材の下面の一部を示す図であり、図5(b)は図5(a)の5b-5b線断面図である。
図6図6(a)は、実施形態4の放熱部材の下面の一部を示す図であり、図6(b)は図6(a)の6b-6b線断面図である。
図7図7(a)は、実施形態5の放熱部材の下面の一部を示す図であり、図7(b)は図7(a)の7b-7b線断面図である。は図である。
図8図8(a)は、実施形態6の放熱部材の下面の一部を示す図であり、図8(b)は図8(a)の8b-8b線断面図であり、図8(c)は小突部の下面図であり、図8(d)は小突部の斜視図である。
図9図9(a)は、実施形態7の放熱部材の底面図であり、図9(b)は図9(a)の9b-9b線断面図であり、図9(c)は図9(b)の部分拡大面図である。
図10図10(a)は、実施形態8の放熱部材の底面図であり、図10(b)は図10(a)の10b-10b線断面図であり、図10(c)は図10(b)の部分拡大面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態に係る放熱部材及び冷却装置について説明する。なお、本発明の範囲は、以下の実施形態に限定されず、本発明の技術的思想の範囲内で任意に変更可能である。また、以下の図面においては、各構成をわかりやすくするために、各構造における縮尺および数等を、実際の構造における縮尺および数等と異ならせる場合がある。
【0014】
図面においては、適宜3次元直交座標系としてXYZ座標系を示す。XYZ座標系において、Z軸方向は、鉛直方向であり、図1Aにおける冷却装置20の高さ方向である。X軸方向は、Z軸方向と直交する方向である。X軸方向は、図1Aにおいては冷却装置20の幅方向(左右方向)である。Y軸方向は、X軸方向とZ軸方向との両方と直交する方向とする。
【0015】
以下の説明においては、冷却装置20の高さ方向(Z軸方向)を上下方向とする。ある対象に対してZ軸方向の正の側(+Z側)を「上側」と呼ぶ場合があり、ある対象に対してZ軸方向の負の側(-Z側)を「下側」と称する場合がある。尚、前後方向、前側および後側とは、単に説明のために用いられる用語であって、実際の位置関係及び方向を限定しない。本実施形態では、Z軸方向の上方(+Z側)から-Z側を見た場合を、平面視で見た場合と表現する。
【0016】
実施形態1
本発明の実施形態1を図1A図3に基づいて説明する。図1Aは実施形態1に係る冷却装置20の概略斜視図である。図1Bは、冷却装置20の放熱部材30を-X軸方向で見た場合の側面図である。
図1Aに示すように、冷却装置20は、放熱部材30と、放熱部材30の一部を収容するハウジング40とを有する。冷却装置20には、矢印Aで示すように、冷却用流体(冷媒)が流入する。冷却装置20内を流れた冷却用流体は、矢印Bで示すように、冷却装置20から流出する。ハウジング40は、冷却用流体の入口(図示せず)と出口42を備える。符号33は電子部品配置領域である。冷却用流体は、例えば、水である。
【0017】
放熱部材30は、板材32と、板材32の下面32aから垂直に(-Z軸方向に)延びる複数の柱状体35とを有する。柱状体35の形状及び配置については、図2及び図3を用いて後述する。尚、柱状体35は第1凸部と称してもよい。また、下面32aは板材32の第1表面と称してもよい。
板材32は、例えば、銅板などの金属板である。柱状体35は板材32と一体であり、銅製である。放熱部材30は鍛造により作られる。
板材32の上面32bは、下面32aの反対側の面であり、中央に電子部品配置領域33を有する。上面32bは板材32の第2表面と称してもよい。電子部品配置領域33には、図1Bに示すように、例えば、IGBT34a及びダイオード34b等の電子部品が設けられる。IGBT34a及びダイオード34b等の電子部品は、例えば、半田により板材32に固定される。IGBT34a及びダイオード34b等の電子部品は使用すると発熱するので、発熱体と称してもよい。IGBTはInsulated Gate Bipolar Transistorの略である。
【0018】
尚、図1Bでは、IGBT34a及びダイオード34bが板材32の上面32bに直接取り付けられるように描かれているが、IGBT34a及びダイオード34bと上面32bとの間にサーマルシート等が設けられる場合もあるし、銅膜及びセラミック膜等が設けられる場合もある。つまり、本明細書で、上面32bの説明において、下面32aの反対側の発熱体(IGBT34a、ダイオード34b等)に上面32bが接していると表現は、発熱体に直接接触する上面32bだけでなく発熱体に間接的に接触する上面も含むとする。
図1AではIGBT34a及びダイオード34bは省略されている。また、図1Aでは放熱部材30の柱状体34はハウジング40内に収容されているので、破線で描かれている。
【0019】
本実施形態の冷却装置20は、IGBT34a及びダイオード34b等の電子部品が使用されて発熱した場合に、発熱体である電子部品を冷却する装置である。板材32の上面32bに設けられたIGBT34a及びダイオード34b等が発熱した場合、当該熱は板材32の上面32b側から下面32aに伝わり、下面32a側から冷却用流体に放熱される。熱を受け取った冷却用流体は、ハウジング40の出口42から外部へ流れる。
【0020】
図2(a)は板材32の下面32aの一部を示す図であり、図2(b)は図2(a)の2b-2b矢視断面図であり、下面32aに立設された柱状体35を示している。本実施形態では、柱状体35は円柱である。柱状体35の横断面の形状は、Z軸方向において不変である。
図2(a)に示すように、柱状体35はX軸方向及びY軸方向に所定の間隔をあけて多数設けられている。冷却用流体が流入する方向(矢印Aの方向)から見ると、まず、X1列目に並んで設けられている複数の柱状体35-1があり、X1列目の後ろ(下流側)にはX2列目に並んで設けられている複数の柱状体35-2がある。そして、X2列目の後ろ(下流側)にはX3列目に並んで設けられている複数の柱状体35-3がある。本実施形態では、柱状体35のX列はX1列からX12列まである。
矢印Aの方向から見る、隣接する柱状体35-1同士の間に、柱状体35-2が位置しており、柱状体35-3は柱状体35-1に重なっている。尚、X列に直交するY列ではY1列からYi列で柱状体35が配置されているとする(図2(a)の一番上の列がYi列)。本実施形態では、X列同士の間隔は等しく、Y列同士の間隔も等しい。
【0021】
図2(b)は、板材32と、X1列目の柱状体35-1と、X2列目の柱状体35-2と、X3列目の柱状体35-3と、を示している。
本実施形態では、図2の状態の板材32の下面32aに、図3に示した溝37を形成する。溝37は板材32に形成された凹部であり、本実施形態では直角三角形の断面形状を有している。溝37の断面形状は直角三角形であるので、非対称である。尚、直角三角形の角部は滑らかな曲線状にしてもよい。板材32の下面32aと複数の柱状体35と溝37とにより、矩形の放熱領域(放熱部)31が形成される。
溝37は本実施形態では12本形成されている。12本の溝37は互いに平行である。各溝37はY軸方向に延びている。溝37の数は柱状体35のX列の数(12)と同じであり、1本の溝37が1つのX列の柱状体35の上流側に位置している。図3(a)から分かるように、溝37は柱状体35の間に位置していると言える。
【0022】
板材32の下面32aに形成された溝37により、板材32の下面32aの表面積が増大するので、放熱部材30の放熱能力を向上することができる。また、矢印Aの方向から板材32の下面32aに流れる冷却用流体が溝37に入ると、溝37により渦流が生成される。溝37が柱状体35の列の上流に設けられているので、当該渦流により板材32の下面32aからの放熱能力(熱交換能力)と柱状体35の放熱能力が向上する。
【0023】
このように、本実施形態によれば、発熱する電子部品34a、34bを冷却する場合、従来のピン型冷却フィンの放熱能力よりも大きな放熱能力を発揮することができる。本実施形態では、放熱能力を向上するために、柱状体(ピン)35の数を増やすのではなく、板材32に溝37を形成しているので、冷却用流体(冷媒)に対して大きな流体抵抗が生ずることはない。冷却用流体に対する流体抵抗が大きくないので、冷却用流体を冷却装置20に供給するポンプの負担も増加しない。流体抵抗が大きくないので、冷却装置の入口における圧力と、出口42における圧力との差を小さくすることができる。
【0024】
尚、本発明は上記した実施形態に限定されない。例えば、以下のような構成を採用してもよい。
(1)柱状体35のX列の数は12に限定されない。
(2)柱状体35のX列同士の間隔は等しくなくてもよい。また、柱状体35のY列同士の間隔は等しくなくてもよい。
(3)柱状体35の横断面は円形に限定されず、例えば、多角形(三角形または四角形など)でもよいし、楕円形でもよい。
(4)柱状体35の横断面の面積はZ軸方向において変化してもよい。例えば、柱状体35の断面は基部(下面32a)から先端に向けて、テーパ状に変化してもよい。
(5)図3では溝37は、冷却用流体の流れる方向(X軸方向)と交差する方向(Y軸方向)に延びているが、溝37はX軸方向に延びてもよい。
(6)図3では溝37は互いに平行であるが、非平行でもよい。
(7)図3では溝37の断面が三角形であるが、断面は半円形、半楕円形、または多角形でもよい。多角形の場合、角部は滑らかな曲面でもよい。
【0025】
実施形態2
本発明の実施形態2を図4に基づいて説明する。尚、実施形態1と共通する構成については、適宜、説明を省略する。また、実施形態1と同様な構成には同じ参照番号を付ける。以下の記載では、実施形態1との相違点を主に説明する。
【0026】
図4(a)は図3(a)に対応する図であり、図4(b)は図3(b)に対応する図である。図4(a)に示すように、実施形態2では柱状体35のX列に溝37Aが形成されている。つまり、柱状体35のX列同士の間(例えば、X1列目とX2列目の間)には溝が形成されていない。
図4(a)から分かるように、例えば、X1列を見ると、Y軸方向に所定間隔で配置されている柱状体35同士の間に溝37Aが形成されている。図4(b)に示すように、本実施形態の溝37Aの断面は半円形である。
【0027】
本実施形態においても、溝37Aにより、板材32の下面32aの表面積が増大するので、放熱部材30の放熱能力を向上することができる。また、矢印Aの方向から板材32の下面32aに流れる冷却用流体が溝37Aに入ると、溝37Aにより渦流が生成され、当該渦流により板材32の下面32aからの放熱能力と柱状体35の放熱能力を向上することができる。本実施形態でも、図2(a)の状態から柱状体(ピン)35の数を増やしていないので、冷却用流体(冷媒)に対して大きな流体抵抗が生ずることはない。
【0028】
実施形態3
本発明の実施形態3を図5に基づいて説明する。尚、実施形態2と共通する構成については、適宜、説明を省略する。また、実施形態2と同様な構成には同じ参照番号を付ける。以下の記載では、実施形態2との相違点を主に説明する。
【0029】
図5(a)は図4(a)に対応する図であり、図5(b)は図4(b)に対応する図である。図5(a)に示すように、実施形態3では柱状体35のY列に溝37Bが形成されている。
図5(a)から分かるように、例えば、Yi列を見ると、X軸方向に所定間隔で配置されている柱状体35同士の間に溝37Bが形成されている。図5(b)に示すように、本実施形態の溝37Bの断面は矩形である。
【0030】
本実施形態においても、溝37Bにより、板材32の下面32aの表面積が増大するので、放熱部材30の放熱能力を向上することができる。また、矢印Aの方向から板材32の下面32aに流れる冷却用流体が溝37Bに入ると、溝37Bにより渦流が生成され、当該渦流により板材32の下面32aからの放熱能力と柱状体35の放熱能力を向上することができる。図2(a)の状態から柱状体(ピン)35の数を増やしていないので、冷却用流体(冷媒)に対して大きな流体抵抗が生ずることはない。
【0031】
実施形態4
本発明の実施形態4を図6に基づいて説明する。実施形態4は実施形態1の変形例である。尚、実施形態1と共通する構成については、適宜、説明を省略する。また、実施形態1と同様な構成には同じ参照番号を付ける。以下の記載では、実施形態1との相違点を主に説明する。
【0032】
図6(a)は図3(a)に対応する図であり、図6(b)は図3(b)に対応する図である。図6(b)を図3(b)と比較すると分かるように、実施形態4の溝37Cの断面形状は直角三角形であるが、大きさが実施形態1の溝37と異なる。より詳しくは、実施形態4の溝37CのX軸方向の大きさDが、実施形態1の溝37より大きく、且つ、溝37CのZ軸方向の大きさ(溝の深さ)も実施形態1の溝37より大きい。実施形態4の溝37Cの断面形状(直角三角形)は実施形態1の溝37の断面形状と相似形である。
図6(b)から分かるように、溝37CはX1列の柱状体35-1とX2列の柱状体35-2を繋ぐように(接触するように)形成されている。
【0033】
本実施形態においても、溝37Cにより、板材32の下面32aの表面積が増大するので、放熱部材30の放熱能力を向上することができる。また、矢印Aの方向から板材32の下面32aに流れる冷却用流体が溝37Cに入ると、溝37Cにより渦流が生成され、当該渦流により板材32の下面32aからの放熱能力と柱状体35の放熱能力を向上することができる。本実施形態の溝37Cは実施形態1の溝37より大きな溝であるので、実施形態1より大きな渦流を生成することができる。
【0034】
実施形態5
本発明の実施形態4を図7に基づいて説明する。実施形態5は実施形態4の変形例である。尚、実施形態4と共通する構成については、適宜、説明を省略する。また、実施形態4と同様な構成には同じ参照番号を付ける。以下の記載では、実施形態4との相違点を主に説明する。
【0035】
図7(a)は図6(a)に対応する図であり、図7(b)は図6(b)に対応する図である。図7(b)を図6(b)と比較すると分かるように、実施形態5の溝37Dの断面形状は矩形形である。図7(b)から分かるように、溝37DはX1列の柱状体35-1とX2列の柱状体35-2を繋ぐように(接触するように)形成されている。
【0036】
本実施形態においても、溝37Dにより、板材32の下面32aの表面積が増大するので、放熱部材30の放熱能力を向上することができる。また、矢印Aの方向から板材32の下面32aに流れる冷却用流体が溝37Dに入ると、溝37Dにより渦流が生成され、当該渦流により板材32の下面32aからの放熱能力と柱状体35の放熱能力を向上することができる。
【0037】
実施形態6
本発明の実施形態6を図8に基づいて説明する。実施形態6は実施形態4の変形例である。尚、実施形態4と共通する構成については、適宜、説明を省略する。また、実施形態4と同様な構成には同じ参照番号を付ける。以下の記載では、実施形態4との相違点を主に説明する。
【0038】
図8(a)は図6(a)に対応する図であり、図8(b)は図6(b)に対応する図である。図8(a)を図6(a)と比較すると分かるように、実施形態6では柱状体35同士の間に小さな凸部45が形成されている。図8(c)は凸部45の下面図であり、図8(d)は凸部45の斜視図である。矢印Cは冷却用流体を示している。柱状体35を第1凸部と称する場合、凸部45を第2凸部と称してよい。凸部45の高さは柱状体35より低い。凸部45は小突起と称してもよい。凸部45は全体として流線形形状を有している。
【0039】
図8(c)及び図8(d)から分かるように、凸部45は7つの面45a、45b、45c、45d、45e、45f、45gを有している。面45a及び面45bは左右対称の五角形の面であり、冷却用流体Cが最初に接する面である。面45a及び面45bは、板材32の下面32aから滑らかに-Z方向に隆起している。また面45aと面45bで規定される凸部45の先端部は、所定の大きさの角度を有することで、広角の先端部を形成している。このような先端部により、冷却用流体Cに対する流体抵抗を小さくしている。
面45cは、面45a及び面45bの後方(下流側)に位置する五角形の面であり、下面32aに向かって滑らかに延びる面である。面45d及び面45eは、面45cの左右に位置する四角形の面である。面45d及び面45eは、下面32aに対して所定の角度で傾斜している。面45f及び面45gは、左右対称の小さな三角形の面であり、面45fは面45aと面45dと下面32aとの間に形成され、面45gは面45bと面45eと下面32aとの間に形成されている。面45f及び面45gは下面32aに垂直な面である。冷却用流体Cが凸部45に当たると、渦流が生成される。
【0040】
本実施形態においては、溝37Cと凸部45により、板材32の下面32aの表面積が増大するので、放熱部材30の放熱能力を向上することができる。また、矢印Aの方向から板材32の下面32aに流れる冷却用流体Cが溝37Cに入ると、溝37Cにより渦流が生成され、当該渦流により板材32の下面32aからの放熱能力と柱状体35の放熱能力を向上することができる。さらに、凸部45により冷却用流体の渦流が生成されるので、当該渦流により板材32の下面32aからの放熱能力と柱状体35の放熱能力を向上することができる。
【0041】
実施形態7
本発明の実施形態7を図9に基づいて説明する。実施形態7の冷却装置20Aは、実施形態4(図6)で説明した溝37Cと同様な溝を有する放熱部材30Aを備える。図9(a)は放熱部材30Aの下面図であり、図9(b)は放熱部材30Aの断面図(図9(a)の9b-9b矢視断面図)であり、図9(c)は図9(b)の部分9cの拡大図である。尚、実施形態4と共通する構成については、適宜、説明を省略する。また、実施形態4と同様な構成には同じ参照番号を付ける。以下の記載では、実施形態4との相違点を主に説明する。
【0042】
図9(a)から分かるように、放熱部材30Aは、3つの放熱部31a、31b及び31cを有する。放熱部31a、31b及び31cは、X軸方向に直列で配置されている。各放熱部31a、31b、31cは、図6に示した放熱部31とほぼ同じ構成を有する。本実施形態の放熱部材30Aは、実施形態4の放熱部材30の約3倍のサイズを有し、本実施形態の柱状体35の数は、実施形態4の柱状体35の数の約3倍である。
【0043】
冷却用流体が矢印Aの方向から冷却装置20Aに流入すると、冷却用流体は、まず、最上流の放熱部31aにより冷却され、続いて、中間の放熱部31bにより冷却され、最後に、最下流の放熱部31cにより冷却され、矢印Bのように冷却装置20Aから流出する。
【0044】
本実施形態では、実施形態4に比べて、放熱部材30Aが3つの放熱部31a~31cを有する(つまり、全体として放熱領域が広い)ので、放熱部材30Aの放熱能力が大きく、より多くの発熱体を冷却することができる。尚、冷却用流体の温度は下流に行くに伴い上昇するので、板材32の上面32bに設けられる発熱体の配置は、冷却用流体の温度上昇を考慮して決めることが好ましい。
【0045】
実施形態8
本発明の実施形態8を図10に基づいて説明する。実施形態8の冷却装置20Bは、実施形態5(図7)で説明した溝37Dと同様な溝を有する放熱部材30Bを備える。図10(a)は放熱部材30Bの下面図であり、図10(b)は放熱部材30Bの断面図(図10(a)の10b-10b矢視断面図)であり、図10(c)は図10(b)の部分10cの拡大図である。尚、実施形態5と共通する構成については、適宜、説明を省略する。また、実施形態5と同様な構成には同じ参照番号を付ける。以下の記載では、実施形態5との相違点を主に説明する。
【0046】
図10(a)から分かるように、放熱部材30Bは、3つの放熱部31d、31e及び31fを有する。放熱部31d、31e及び31fは、X軸方向に直列で配置されている。各放熱部31d、31e、31fは、図7に示した放熱部31とほぼ同じ構成を有する。つまり、本実施形態の放熱部材30Bは、実施形態5の放熱部材30の約3倍のサイズを有し、本実施形態の柱状体35の数は、実施形態5の柱状体35の数の約3倍である。
【0047】
冷却用流体が矢印Aの方向から冷却装置20Bに流入すると、冷却用流体は、まず、最上流の放熱部31dにより冷却され、続いて、中間の放熱部31eにより冷却され、最後に、最下流の放熱部31fにより冷却され、矢印Bのように冷却装置20Bから流出する。
【0048】
本実施形態では、実施形態5に比べて、放熱部材30Bは3つの放熱部31d~31fを有する(つまり、全体として放熱領域が広い)ので、放熱部材30Bの放熱能力が大きく、より多くの発熱体を冷却することができる。尚、冷却用流体の温度は下流に行くに伴い上昇するので、板材32の上面32bに設けられる発熱体の配置は、冷却用流体の温度上昇を考慮して決めることが好ましい。
【0049】
尚、本発明は上記した本実施形態に限定されない。本発明は、例えば、以下のような構成を採用することもできる。
(1)冷却用流体は水以外でもよい(例えば、冷媒EGW50/50)。
(2)発熱体は電子部品以外の物体でもよい。
(3)上記した放熱部材及び冷却装置の各構成並びに各実施形態は、相互に矛盾しない範囲内において、適宜組み合わせることができる。
【符号の説明】
【0050】
20…冷却装置
30…放熱部材
31…放熱部
32…板材
32a…板材の下面(第1表面)
32b…板材の上面(第2表面)
34a…IGBT(発熱体)
34b…ダイオード(発熱体)
35…柱状体(第1凸部)
37…溝(凹部)
40…ハウジング
45…小さな凸部(第2凸部)
20A…冷却装置
30A…放熱部材
31a~31c…放熱部
20B…冷却装置
30B…放熱部材
31d~31f…放熱部
図1A
図1B
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10