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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022170679
(43)【公開日】2022-11-10
(54)【発明の名称】車両用空調装置
(51)【国際特許分類】
   B60H 1/22 20060101AFI20221102BHJP
   B60H 1/00 20060101ALI20221102BHJP
【FI】
B60H1/22 651Z
B60H1/00 102P
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022036081
(22)【出願日】2022-03-09
(31)【優先権主張番号】P 2021075547
(32)【優先日】2021-04-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】110001472
【氏名又は名称】特許業務法人かいせい特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】西田 伸
【テーマコード(参考)】
3L211
【Fターム(参考)】
3L211BA32
3L211BA42
3L211CA06
3L211CA16
3L211EA26
3L211EA28
3L211GA04
3L211GA06
3L211GA10
(57)【要約】
【課題】車両窓ガラスの防曇性能の向上および暖房のために消費されるエネルギの低減の両立を図った車両用空調装置を提供する。
【解決手段】空調ケース31には、第1空気通路31a、第2空気通路31b、上層側空気通路31c、下層側空気通路31d、外気バイパス通路31e、内気バイパス通路31fが形成されている。暖房モード時に、第1空気通路31aに配置された第1熱交換部15aにてヒートポンプサイクル10の冷媒に吸熱された内気、および第2空気通路31bに配置された第2熱交換部15bにて冷媒に吸熱された外気を車室外側へ流出させる。そして、外気バイパス通路31eを介して上層側空気通路31cへ導いた外気を車室内の車両窓ガラス51側へ流出させる。内気バイパス通路31fを介して下層側空気通路31dへ導いた内気を車室内の乗員側へ流出させる。
【選択図】図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
空気を流通させる空気通路を形成する空気通路形成部(30)と、
車室内へ送風される前記空気の温度を調整するヒートポンプサイクル(10)と、を備え、
前記ヒートポンプサイクルは、冷媒を圧縮して吐出する圧縮機(11)、前記圧縮機から吐出された前記冷媒を熱源として前記車室内へ送風される前記空気を加熱する加熱部(12、20)、前記加熱部から流出した前記冷媒を減圧させる第1減圧部(14a)、前記第1減圧部から流出した前記冷媒と前記空気とを熱交換させる第1熱交換部(15a)、前記第1熱交換部から流出した前記冷媒を減圧させる第2減圧部(14b)、および前記第2減圧部から流出した前記冷媒と前記空気とを熱交換させる第2熱交換部(15b)を有し、
前記空気通路形成部には、前記第1熱交換部が配置された第1空気通路(31a)、前記第2熱交換部が配置された第2空気通路(31b)、前記加熱部にて加熱された前記空気を前記車室内の車両窓ガラス(51)側へ導く上層側空気通路(31c)、前記加熱部にて加熱された前記空気を前記車室内の乗員側へ導く下層側空気通路(31d)、前記第1熱交換部および前記第2熱交換部を迂回させて車室外の前記空気である外気を前記上層側空気通路の入口側へ導く外気バイパス通路(31e)、並びに、前記第1熱交換部および前記第2熱交換部を迂回させて前記車室内の前記空気である内気を前記下層側空気通路の入口側へ導く内気バイパス通路(31f)が形成されており、
前記車室内の暖房を行う暖房モード時に、
前記内気を前記第1空気通路へ流入させ、前記第1熱交換部を通過した前記内気を前記第1空気通路から前記車室外へ流出させ、前記外気を前記第2空気通路へ流入させ、前記第2熱交換部を通過した前記外気を前記第2空気通路から前記車室外へ流出させ、前記外気を前記外気バイパス通路へ流入させ、前記内気を前記内気バイパス通路へ流入させる車両用空調装置。
【請求項2】
前記空気通路形成部は、前記車室内へ前記空気を送風する室内送風部(37)を有し、
前記室内送風部は、前記外気バイパス通路を流通した前記外気を吸い込んで前記上層側空気通路の入口側へ送風する第1ファン(37a)、前記内気バイパス通路を流通した前記内気を吸い込んで前記下層側空気通路の入口側へ送風する第2ファン(37b)、および前記第1ファンと前記第2ファンとの双方を連動して駆動する駆動部(37c)を有している請求項1に記載の車両用空調装置。
【請求項3】
前記空気通路形成部は、前記第2空気通路の入口側および前記外気バイパス通路の入口側の少なくとも一方へ前記外気を送風する外気送風部(46a)、並びに、前記第1空気通路の入口側および前記内気バイパス通路の入口側の少なくとも一方へ前記内気を送風する内気送風部(46b)、を有している請求項1に記載の車両用空調装置。
【請求項4】
空気を流通させる空気通路を形成する空気通路形成部(30)と、
車室内へ送風される前記空気の温度を調整するヒートポンプサイクル(10)と、を備え、
前記ヒートポンプサイクルは、冷媒を圧縮して吐出する圧縮機(11)、前記圧縮機から吐出された前記冷媒を熱源として前記車室内へ送風される前記空気を加熱する加熱部(12、20)、前記加熱部から流出した前記冷媒を減圧させる第1減圧部(14a)、前記第1減圧部から流出した前記冷媒と前記空気とを熱交換させる第1熱交換部(15a)、前記第1熱交換部から流出した前記冷媒を減圧させる第2減圧部(14b)、および前記第2減圧部から流出した前記冷媒と前記空気とを熱交換させる第2熱交換部(15b)を有し、
前記空気通路形成部には、前記第1熱交換部が配置された第1空気通路(31a)、前記第2熱交換部が配置された第2空気通路(31b)、前記加熱部にて加熱された前記空気を前記車室内の車両窓ガラス(51)側へ導く上層側空気通路(31c)、前記加熱部にて加熱された前記空気を前記車室内の乗員側へ導く下層側空気通路(31d)、並びに、前記第1熱交換部および前記第2熱交換部を迂回させて車室外の前記空気である外気を前記上層側空気通路の入口側へ導く外気バイパス通路(31e)が形成されており、
前記車室内の暖房を行う暖房モードでは、
前記車室内の前記空気である内気を前記第1空気通路へ流入させ、前記第1熱交換部を通過した前記内気を前記車室外および前記下層側空気通路の入口側の双方へ流出させ、前記外気を前記第2空気通路へ流入させ、前記第2熱交換部を通過した前記外気を前記車室外へ流出させ、前記外気を前記外気バイパス通路へ流入させる車両用空調装置。
【請求項5】
前記空気通路形成部は、前記車室内へ前記空気を送風する室内送風部(37)を有し、
前記室内送風部は、前記外気バイパス通路を流通した前記外気を吸い込んで前記上層側空気通路の入口側へ送風する第1ファン(37a)、前記第1空気通路を流通した前記内気を吸い込んで前記下層側空気通路の入口側へ送風する第2ファン(37b)、および前記第1ファンと前記第2ファンとの双方を連動して駆動する駆動部(37c)を有している請求項4に記載の車両用空調装置。
【請求項6】
前記空気通路形成部は、前記第2空気通路の入口側および前記外気バイパス通路の入口側の少なくとも一方へ前記外気を送風する外気送風部(46a)、および少なくとも前記第1空気通路の入口側へ前記内気を送風する内気送風部(46b)、を有している請求項4に記載の車両用空調装置。
【請求項7】
前記空気通路形成部は、前記車室外へ前記空気を送風する排気送風部(45)を有し、
前記排気送風部は、前記第1空気通路から流出した前記空気および前記第2空気通路から流出した前記空気の少なくとも一方を吸い込んで前記車室外へ送風する請求項1ないし6のいずれか1つに記載の車両用空調装置。
【請求項8】
空気を流通させる空気通路を形成する空気通路形成部(30)と、
車室内へ送風される前記空気の温度を調整するヒートポンプサイクル(10)と、を備え、
前記ヒートポンプサイクルは、冷媒を圧縮して吐出する圧縮機(11)、前記圧縮機から吐出された前記冷媒を熱源として前記車室内へ送風される前記空気を加熱する加熱部(12、20)、前記加熱部から流出した前記冷媒と前記空気とを熱交換させる第1熱交換部(15a)、前記第1熱交換部から流出した前記冷媒を減圧させる第2減圧部(14b)、および前記第2減圧部から流出した前記冷媒と前記空気とを熱交換させる第2熱交換部(15b)を有し、
前記空気通路形成部には、前記第1熱交換部が配置された第1空気通路(31a)、および前記第2熱交換部が配置された第2空気通路(31b)が形成されており、
前記車室内の暖房を行う暖房モード時に、
車室外の前記空気である外気を前記第1空気通路へ流入させ、前記第1熱交換部を通過した前記外気を前記加熱部にて加熱して、少なくとも前記車室内の車両窓ガラス(51)側へ導き、前記外気および前記車室内の前記空気である内気の少なくとも一方を前記第2空気通路へ流入させ、前記第2熱交換部を通過した前記空気を前記第2空気通路から前記車室外へ流出させる車両用空調装置。
【請求項9】
前記暖房モードでは、前記車室内の前記空気の温度である内気温(Tr)の上昇に伴って、前記第2空気通路へ流入させる前記空気における前記内気の割合を増加させる請求項8に記載の車両用空調装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヒートポンプサイクルを備える車両用空調装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、特許文献1に、内外気二層式の車両用空調装置が開示されている。この種の内外気二層式の車両用空調装置では、空気通路形成部である空調ユニット内に、上層側空気通路および下層側空気通路が形成されている。そして、車室内の暖房を行う暖房モード時に、上層側空気通路へ流入させた外気を加熱して車両窓ガラス側へ向けて吹き出すとともに、下層側空気通路へ流入させた内気を加熱して乗員の足元側へ向けて吹き出している。
【0003】
これにより、内外気二層式の車両用空調装置では、車両窓ガラスの防曇性能を向上させるとともに、車室内の暖房のために消費されるエネルギを低減させようとしている。
【0004】
さらに、特許文献1の車両用空調装置では、車室内へ空気を送風する室内送風機として、上層側空気通路側へ空気を送風する送風ファンと下層側空気通路側へ空気を送風する送風ファンとを共通する電動モータで駆動する二連式の送風機を採用している。これにより、特許文献1の車両用空調装置では、上層側空気通路を流通する外気の風量と下層側空気通路を流通する内気の風量との比率である内外気比率を適切な値に維持している。
【0005】
また、特許文献2には、ヒートポンプサイクルを備える車両用空調装置が開示されている。特許文献2のヒートポンプサイクルは、暖房モード時に、冷媒を蒸発させる蒸発器として機能する第1熱交換器および第2熱交換器を有している。さらに、特許文献2の車両用空調装置の空調ケース内には、第1熱交換器が配置される第1空気通路、および第2熱交換器が配置される第2空気通路が形成されている。
【0006】
特許文献2の車両用空調装置では、暖房モード時に、第1空気通路へ内気を流入させて、第1熱交換器にて内気の有する熱を冷媒に吸熱させる。さらに、第2空気通路へ外気を流入させて、第2熱交換器にて外気の有する熱を冷媒に吸熱させる。そして、冷媒に吸熱させた熱を、車室内へ送風される空気を加熱するために利用している。すなわち、車室内の暖房のために利用している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平9-24722号公報
【特許文献2】特開2020-185961号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、特許文献1の内外気二層式の車両用空調装置のように、車室内へ外気を導入する際には、導入した外気と同量の内気を車室外へ排気する必要がある。このため、車室内へ外気を導入すると、内気よりも温度の低い外気を加熱するために消費されるエネルギ損失(いわゆる、換気ロス)が生じてしまう。
【0009】
これに対して、特許文献1の内外気二層式の車両用空調装置において、特許文献2の車両用空調装置のように、車室外へ排気される内気の有する熱を冷媒に吸熱させて、車室内の暖房のために利用する手段が考えられる。
【0010】
ところが、外気および内気から吸熱した熱を暖房に利用するためには、車室内の適切な暖房を実現できる程度に、外気および内気から冷媒に充分な熱を吸熱させる必要がある。そのため、第1熱交換器における冷媒蒸発温度、第2熱交換器における冷媒蒸発温度、第1熱交換器へ流入させる内気の風量、第2熱交換器へ流入させる外気の風量等を、運転条件に応じて適切に調整しなければならない。
【0011】
従って、仮に、特許文献2の車両用空調装置の空調ケース内に、上層側空気通路および下層側空気通路を形成して、第1熱交換器を通過した内気を下層側空気通路へ導くとともに、第2熱交換器を通過した外気を下層側空気通路へ導くことができたとしても、運転条件が変化すると、内外気比率が変化してしまう可能性がある。
【0012】
そして、内外気比率が変化して、上層側空気通路を流通する外気の風量が減少してしまうと、車両窓ガラスの防曇性能の向上効果を得にくくなってしまう。また、内外気比率が変化して、上層側空気通路を流通する外気の風量が増加してしまうと、暖房のために消費されるエネルギの低減効果を得にくくなってしまう。
【0013】
本発明は、上記点に鑑み、少なくとも内気から吸熱した熱を車室内の暖房に利用する車両用空調装置であって、車両窓ガラスの防曇性能の向上および暖房のために消費されるエネルギの低減の両立を可能とする車両用空調装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記目的を達成するため、請求項1に記載の車両用空調装置は、空気通路形成部(30)と、ヒートポンプサイクル(10)と、を備える。空気通路形成部は、空気を流通させる空気通路を形成する。ヒートポンプサイクルは、車室内へ送風される空気の温度を調整する。
【0015】
ヒートポンプサイクルは、圧縮機(11)、加熱部(12、20)、第1減圧部(14a)、第1熱交換部(15a)、第2減圧部(14b)、および第2熱交換部(15b)を有している。
【0016】
圧縮機は、冷媒を圧縮して吐出する。加熱部は、圧縮機から吐出された冷媒を熱源として車室内へ送風される空気を加熱する。第1減圧部は、加熱部から流出した冷媒を減圧させる。第1熱交換部は、第1減圧部から流出した冷媒と空気とを熱交換させる。第2減圧部は、第1熱交換部から流出した冷媒を減圧させる。第2熱交換部は、第2減圧部から流出した冷媒と空気とを熱交換させる。
【0017】
空気通路形成部には、第1空気通路(31a)、第2空気通路(31b)、上層側空気通路(31c)、下層側空気通路(31d)、外気バイパス通路(31e)、並びに、内気バイパス通路(31f)が形成されている。
【0018】
第1空気通路は、第1熱交換部が配置された空気通路である。第2空気通路は、第2熱交換部が配置された空気通路である。上層側空気通路は、加熱部にて加熱された空気を車室内の車両窓ガラス(51)側へ導く空気通路である。下層側空気通路は、加熱部にて加熱された空気を車室内の乗員側へ導く空気通路である。外気バイパス通路は、第1熱交換部および第2熱交換部を迂回させて車室外の空気である外気を上層側空気通路の入口側へ導く空気通路である。内気バイパス通路は、第1熱交換部および第2熱交換部を迂回させて車室内の空気である内気を下層側空気通路の入口側へ導く空気通路である。
【0019】
そして、車室内の暖房を行う暖房モード時に、内気を第1空気通路へ流入させて、第1熱交換部を通過した内気を第1空気通路から車室外へ流出させる。外気を第2空気通路へ流入させて、第2熱交換部を通過した外気を第2空気通路から車室外へ流出させる。外気を外気バイパス通路へ流入させ、内気を内気バイパス通路へ流入させる。
【0020】
これによれば、暖房モード時に、内気を第1空気通路(31a)へ流入させるので、第1熱交換部(15a)にて、内気の有する熱をヒートポンプサイクル(10)の冷媒に吸熱させることができる。さらに、暖房モード時に、外気を第2空気通路(31b)へ流入させるので、第2熱交換部(15b)にて、外気の有する熱を冷媒に吸熱させることができる。
【0021】
従って、加熱部(12、20)では、冷媒が内気および外気から吸熱した熱を熱源として、車室内へ送風される空気を加熱することができる。つまり、冷媒が内気および外気から吸熱した熱を車室内の暖房に利用することができる。その結果、冷媒が外気のみから吸熱した熱を車室内の暖房に利用する場合よりも、車室内の暖房のために消費されるエネルギを低減させることができる。
【0022】
また、暖房モード時に、外気を外気バイパス通路(31e)へ流入させて、上層側空気通路(31c)へ導くことができる。そして、加熱部(12、20)にて、内気よりも湿度の低い外気を加熱して、車両窓ガラス(51)側へ導くことができる。従って、車両窓ガラス(51)の防曇性能を向上させることができる。
【0023】
この際、車両窓ガラス(51)の防曇性能の向上および暖房のために消費されるエネルギの低減を両立させるように内外気比率を設定しても、第1熱交換部(15a)における冷媒の吸熱量、および第2熱交換部(15b)における冷媒の吸熱量に影響を与えにくい。すなわち、車室内の暖房に利用可能な熱量に影響を与えにくい。
【0024】
その結果、請求項1に記載の発明によれば、少なくとも内気から吸熱した熱を車室内の暖房に利用する車両用空調装置であっても、車両窓ガラス(51)の防曇性能の向上および暖房のために消費されるエネルギの低減の両立を図ることができる。
【0025】
また、請求項4に記載の車両用空調装置は、空気通路形成部(30)と、ヒートポンプサイクル(10)と、を備える。空気通路形成部は、空気を流通させる空気通路を形成する。ヒートポンプサイクルは、車室内へ送風される空気の温度を調整する。
【0026】
ヒートポンプサイクルは、圧縮機(11)、加熱部(12、20)、第1減圧部(14a)、第1熱交換部(15a)、第2減圧部(14b)、および第2熱交換部(15b)を有している。
【0027】
圧縮機は、冷媒を圧縮して吐出する。加熱部は、圧縮機から吐出された冷媒を熱源として車室内へ送風される空気を加熱する。第1減圧部は、加熱部から流出した冷媒を減圧させる。第1熱交換部は、第1減圧部から流出した冷媒と空気とを熱交換させる。第2減圧部は、第1熱交換部から流出した冷媒を減圧させる。第2熱交換部は、第2減圧部から流出した冷媒と空気とを熱交換させる。
【0028】
空気通路形成部には、第1空気通路(31a)、第2空気通路(31b)、上層側空気通路(31c)、下層側空気通路(31d)、並びに、外気バイパス通路(31e)が形成されている。
【0029】
第1空気通路は、第1熱交換部が配置された空気通路である。第2空気通路は、第2熱交換部が配置された空気通路である。上層側空気通路は、加熱部にて加熱された空気を車室内の車両窓ガラス(51)側へ導く空気通路である。下層側空気通路は、加熱部にて加熱された空気を車室内の乗員側へ導く空気通路である。外気バイパス通路は、第1熱交換部および第2熱交換部を迂回させて車室外の空気である外気を上層側空気通路の入口側へ導く空気通路である。
【0030】
そして、車室内の暖房を行う暖房モード時に、内気を第1空気通路へ流入させて、第1熱交換部を通過した内気を第1空気通路から車室外および下層側空気通路の入口側の双方へ流出させる。外気を第2空気通路へ流入させて、第2熱交換部を通過した外気を第2空気通路から車室外へ流出させる。外気を外気バイパス通路へ流入させる。
【0031】
これによれば、請求項1に記載の発明と同様に、暖房モード時に、加熱部(12、20)では、冷媒が内気および外気から吸熱した熱を利用して、車室内へ送風される空気を加熱することができる。すなわち、冷媒が内気および外気から吸熱した熱を車室内の暖房に利用することができる。その結果、冷媒が外気のみから吸熱した熱を車室内の暖房に利用する場合よりも、車室内の暖房のために消費されるエネルギを低減させることができる。
【0032】
また、暖房モード時に、外気を外気バイパス通路(31e)へ流入させて、上層側空気通路(31c)へ導くことができる。そして、加熱部(12、20)にて、内気よりも湿度の低い外気を加熱して、車両窓ガラス(51)側へ導くことができる。従って、車両窓ガラス(51)の防曇性能を向上させることができる。
【0033】
この際、車両窓ガラス(51)の防曇性能の向上および暖房のために消費されるエネルギの低減を両立させるように内外気比率を設定しても、第1熱交換部(15a)における冷媒の吸熱量、および第2熱交換部(15b)における冷媒の吸熱量に影響を与えにくい。すなわち、車室内の暖房に利用可能な熱量に影響を与えにくい。
【0034】
その結果、請求項4に記載の発明によれば、内気および外気から吸熱した熱を車室内の暖房に利用する車両用空調装置であっても、車両窓ガラス(51)の防曇性能の向上および暖房のために消費されるエネルギの低減の両立を図ることができる。
【0035】
また、請求項8に記載の車両用空調装置は、空気通路形成部(30)と、ヒートポンプサイクル(10)と、を備える。空気通路形成部は、空気を流通させる空気通路を形成する。ヒートポンプサイクルは、車室内へ送風される空気の温度を調整する。
【0036】
ヒートポンプサイクルは、圧縮機(11)、加熱部(12、20)、第1熱交換部(15a)、第2減圧部(14b)、および第2熱交換部(15b)を有している。
【0037】
圧縮機は、冷媒を圧縮して吐出する。加熱部は、圧縮機から吐出された冷媒を熱源として車室内へ送風される空気を加熱する。第1熱交換部は、加熱部から流出した冷媒と空気とを熱交換させる。第2減圧部は、第1熱交換部から流出した冷媒を減圧させる。第2熱交換部は、第2減圧部から流出した冷媒と空気とを熱交換させる。
【0038】
空気通路形成部には、第1空気通路(31a)、および第2空気通路(31b)が形成されている。
【0039】
第1空気通路は、第1熱交換部が配置された空気通路である。第2空気通路は、第2熱交換部が配置された空気通路である。
【0040】
そして、車室内の暖房を行う暖房モード時に、車室外の空気である外気を第1空気通路へ流入させ、第1熱交換部を通過した外気を加熱部にて加熱して、少なくとも車室内の車両窓ガラス(51)側へ導く。さらに、外気および内気の少なくとも一方を第2空気通路へ流入させ、第2熱交換部を通過した空気を第2空気通路から車室外へ流出させる。
【0041】
これによれば、暖房モード時に、外気および内気の少なくとも一方を第2空気通路(31b)へ流入させるので、第2熱交換部(15b)にて、外気および内気の少なくとも一方の有する熱をヒートポンプサイクル(10)の冷媒に吸熱させることができる。
【0042】
従って、加熱部(12、20)では、冷媒が外気および内気の少なくとも一方から吸熱した熱を利用して、車室内へ送風される空気を加熱することができる。つまり、冷媒が内気および外気の少なくとも一方から吸熱した熱を、車室内の暖房に利用することができる。そして、第2空気通路(31b)へ流入させる空気における内気の割合を増加させるに伴って、車室内の暖房のために消費されるエネルギを低減させることができる。
【0043】
また、暖房モード時に、外気を第1空気通路(31a)へ流入させる。そして、第1熱交換部(15a)および加熱部(12、20)にて、内気よりも湿度の低い外気を加熱して、車室内の車両窓ガラス(51)側へ導いている。従って、車両窓ガラス(51)の防曇性能を向上させることができる。
【0044】
この際、車室内の適切な暖房を行うために、第1空気通路(31a)へ流入させる外気の風量を調整しても、第2熱交換部(15b)における冷媒の吸熱量に影響を与えにくい。すなわち、車室内の暖房に利用可能な熱量に影響を与えにくい。
【0045】
その結果、請求項8に記載の発明によれば、内気および外気から吸熱した熱を車室内の暖房に利用する車両用空調装置であっても、車両窓ガラス(51)の防曇性能の向上および暖房のために消費されるエネルギの低減の両立を図ることができる。
【0046】
ここで、少なくとも車室内の車両窓ガラス(51)側へ導くとは、空気を積極的に車両窓ガラス(51)へ向って吹き出すことに限定されない。車両窓ガラス(51)の防曇効果を得られる程度に空気を車室内へ吹き出すことも含まれる。
【0047】
なお、この欄および特許請求の範囲で記載した各手段の括弧内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示すものである。
【図面の簡単な説明】
【0048】
図1】第1実施形態の車両用空調装置の模式的な全体構成図である。
図2】第1実施形態の空調ユニットの模式的な断面図である。
図3図2のIII-III断面図である。
図4】第1実施形態の内部通路切替装置の模式的な断面図である。
図5】第1実施形態の車両用空調装置の電気制御部を示すブロック図である。
図6】第1実施形態の空調ユニットの冷房モード時および除湿暖房モード時における空気の流れを示す模式的な断面図である。
図7】第1実施形態の空調ユニットの暖房モード時における空気の流れを示す模式的な断面図である。
図8】第1実施形態の空調ユニットの除霜モード時における空気の流れを示す模式的な断面図である。
図9】第2実施形態の空調ユニットの冷房モード時および除湿暖房モード時における空気の流れを示す模式的な断面図である。
図10】第2実施形態の空調ユニットの暖房モード時における空気の流れを示す模式的な断面図である。
図11】第2実施形態の空調ユニットの除霜モード時における空気の流れを示す模式的な断面図である。
図12】第3実施形態の空調ユニットの模式的な断面図である。
図13】第3実施形態の空調ユニットの冷房モード時および除湿暖房モード時における空気の流れを示す模式的な断面図である。
図14】第3実施形態の空調ユニットの暖房モード時における空気の流れを示す模式的な断面図である。
図15】第3実施形態の空調ユニットの除霜モード時における空気の流れを示す模式的な断面図である。
図16】第4実施形態の空調ユニットの冷房モード時および除湿暖房モード時における空気の流れを示す模式的な断面図である。
図17】第4実施形態の空調ユニットの暖房モード時における空気の流れを示す模式的な断面図である。
図18】第4実施形態の空調ユニットの除霜モード時における空気の流れを示す模式的な断面図である。
図19】第5実施形態の車両用空調装置の模式的な全体構成図である。
図20】第5実施形態の空調ユニットの冷房モード時および除湿暖房モード時における空気の流れを示す模式的な断面図である。
図21】第5実施形態の空調ユニットの暖房モード時における空気の流れを示す模式的な断面図である。
図22】第5実施形態の空調ユニットの除霜モード時における空気の流れを示す模式的な断面図である。
図23】第5実施形態の空調ユニットの第2熱交換器へ流入させる空気の温度の変化に対する暖房能力の変化を示すグラフである。
図24】他の実施形態の車両用空調装置の模式的な全体構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0049】
以下に、図面を参照しながら本発明を実施するための複数の実施形態を説明する。各実施形態において先行する実施形態で説明した事項に対応する部分には同一の参照符号を付して重複する説明を省略する場合がある。各実施形態において構成の一部のみを説明している場合は、構成の他の部分については先行して説明した他の実施形態を適用することができる。各実施形態で具体的に組合せが可能であることを明示している部分同士の組合せばかりではなく、特に組合せに支障が生じなければ、明示していなくとも実施形態同士を部分的に組み合せることも可能である。
【0050】
(第1実施形態)
図1図8を用いて、本発明に係る車両用空調装置の第1実施形態を説明する。本実施形態の車両用空調装置1は、電気自動車に適用されている。電気自動車は、走行用の駆動力を電動モータから得る車両である。車両用空調装置1は、乗員が搭乗する車室内の空調を行う。車両用空調装置1は、ヒートポンプサイクル10、熱媒体回路20、空調ユニット30、制御装置60等を備えている。
【0051】
まず、図1を用いて、ヒートポンプサイクル10について説明する。ヒートポンプサイクル10は、車両用空調装置1において、空調対象空間である車室内へ送風される空気の温度および熱媒体回路20を循環する熱媒体の温度を調整する。ヒートポンプサイクル10は、圧縮機11、水冷媒熱交換器12、レシーバ13、第1膨張弁14a、第2膨張弁14b、第1熱交換器15a、第2熱交換器15b等を有している。
【0052】
ヒートポンプサイクル10では、冷媒としてHFO系冷媒(具体的には、R1234yf)を採用している。ヒートポンプサイクル10は、高圧冷媒圧力が冷媒の臨界圧力を超えない蒸気圧縮式の亜臨界冷凍サイクルを構成する。冷媒には圧縮機11を潤滑するための冷凍機油(具体的には、PAGオイル)が混入されている。冷凍機油の一部は、冷媒とともにヒートポンプサイクル10を循環している。
【0053】
圧縮機11は、ヒートポンプサイクル10において、冷媒を吸入し、圧縮して吐出する。圧縮機11は、車室の前方側の駆動装置室内に配置されている。駆動装置室は、走行用の駆動力を出力するための駆動用装置(例えば、走行用の電動モータ)の少なくとも一部が配置される空間を形成している。
【0054】
圧縮機11は、吐出容量が固定された固定容量型の圧縮機構を電動モータで回転駆動する電動圧縮機である。圧縮機11は、後述する制御装置60から出力される制御信号によって、回転数(すなわち、冷媒吐出能力)が制御される。
【0055】
圧縮機11の吐出口には、水冷媒熱交換器12の冷媒通路の入口側が接続されている。水冷媒熱交換器12は、圧縮機11から吐出された高圧冷媒を流通させる冷媒通路、および後述する熱媒体回路20を循環する熱媒体を流通させる熱媒体通路を有している。水冷媒熱交換器12は、冷媒通路を流通する高圧冷媒と熱媒体通路を流通する熱媒体とを熱交換させる。水冷媒熱交換器12では、高圧冷媒の有する熱を熱媒体に放熱させて熱媒体を加熱する。
【0056】
水冷媒熱交換器12の冷媒通路の出口には、レシーバ13の入口側が接続されている。レシーバ13は、水冷媒熱交換器12の冷媒通路から流出した高圧冷媒の気液を分離して、分離された液相冷媒の一部をサイクル内の余剰冷媒として蓄える高圧側の気液分離器である。
【0057】
レシーバ13の冷媒出口には、第1膨張弁14aの入口側が接続されている。第1膨張弁14aは、水冷媒熱交換器12の冷媒通路から流出した冷媒を減圧させる第1減圧部である。さらに、第1膨張弁14aは、下流側へ流出させる冷媒の流量を調整する第1流量調整部である。
【0058】
第1膨張弁14aは、絞り開度を変化させる弁体、および弁体を変位させる電動アクチュエータ(具体的には、ステッピングモータ)を有する電気式の可変絞り機構である。第1膨張弁14aは、制御装置60から出力される制御パルスによって、その作動が制御される。第1膨張弁14aは、弁開度を全開にすることで冷媒減圧作用および流量調整作用を殆ど発揮することなく単なる冷媒通路として機能する全開機能を有している。
【0059】
第1膨張弁14aの出口には、第1熱交換器15aの冷媒入口側が接続されている。第1熱交換器15aは、後述する空調ユニット30の空調ケース31内に形成された第1空気通路31a内に配置されている。第1熱交換器15aは、第1膨張弁14aから流出した冷媒と第1空気通路31aを流通する空気とを熱交換させる第1熱交換部である。
【0060】
第1熱交換器15aの冷媒出口には、第2膨張弁14bの入口側が接続されている。第2膨張弁14bは、第1熱交換器15aの冷媒通路から流出した冷媒を減圧させる第2減圧部である。さらに、第2膨張弁14bは、下流側へ流出させる冷媒の流量を調整する第2流量調整部である。第2膨張弁14bの基本的構成は、第1膨張弁14aと同様である。
【0061】
なお、図1では、図示の明確化のため、第2膨張弁14bを第2空気通路31b内に配置しているが、実際の第2膨張弁14bは、空調ケース31の空気通路外に配置されている。
【0062】
第2膨張弁14bの出口には、第2熱交換器15bの冷媒入口側が接続されている。第2熱交換器15bは、空調ユニット30の空調ケース31内に形成された第2空気通路31b内に配置されている。第2熱交換器15bは、第2膨張弁14bから流出した冷媒と第2空気通路31bを流通する空気とを熱交換させる第2熱交換部である。第2熱交換器15bの基本的構成は、第1熱交換器15aと同様である。第2熱交換器15bの冷媒出口には、圧縮機11の吸入口側が接続されている。
【0063】
次に、熱媒体回路20について説明する。熱媒体回路20は、熱媒体を循環させる回路である。熱媒体回路20では、熱媒体としてエチレングリコール水溶液を採用している。熱媒体回路20は、熱媒体ポンプ21、ヒータコア22、熱媒体ラジエータ23、第1流量調整弁24a、第2流量調整弁24b等を有している。また、熱媒体回路20には、水冷媒熱交換器12の熱媒体通路が接続されている。
【0064】
熱媒体ポンプ21は、熱媒体回路20において、熱媒体を圧送する。熱媒体ポンプ21は、制御装置60から出力される制御電圧によって、回転数(すなわち、圧送能力)が制御される電動式の水ポンプである。
【0065】
熱媒体ポンプ21の吐出口には、ヒータコア22の熱媒体入口側が接続されている。ヒータコア22は、熱媒体ポンプ21から圧送された熱媒体と車室内へ送風される空気とを熱交換させる。ヒータコア22では、熱媒体の有する熱を空気に放熱させて空気を加熱することができる。
【0066】
ヒータコア22は、空調ユニット30の空調ケース31内に形成された上層側空気通路31cおよび下層側空気通路31dの双方に跨がって配置されている。従って、ヒータコア22は、上層側空気通路31cを流通する空気と下層側空気通路31dを流通する空気との双方を加熱することができる。
【0067】
ヒータコア22の熱媒体出口には、第1流量調整弁24aの一方の流入口が接続されている。さらに、熱媒体回路20には、熱媒体ポンプ21から圧送された熱媒体を、ヒータコア22を迂回させて、第1流量調整弁24aの他方の流入口側へ導く第1熱媒体迂回通路25aが接続されている。第1流量調整弁24aの流出口には、水冷媒熱交換器12の熱媒体通路の入口側が接続されている。
【0068】
第1流量調整弁24aは、熱媒体ポンプ21から圧送された熱媒体のうち、ヒータコア22へ流入させる熱媒体の流量と第1熱媒体迂回通路25aへ流入させる熱媒体の流量との流量比を調整する。第1流量調整弁24aは、制御装置60から出力される制御信号によって、その作動が制御される電動式の三方流量調整弁である。
【0069】
水冷媒熱交換器12の熱媒体通路の出口には、熱媒体ラジエータ23の熱媒体入口側が接続されている。熱媒体ラジエータ23は、水冷媒熱交換器12の熱媒体通路から流出した熱媒体と図示しない外気送風機によって送風された外気とを熱交換させる。熱媒体ラジエータ23では、熱媒体の有する熱を外気に放熱させて熱媒体を冷却することができる。
【0070】
熱媒体ラジエータ23は、駆動装置室内の前方側に配置されている。このため、車両走行時には、熱媒体ラジエータ23に、グリルを介して駆動装置室内へ流入した走行風を当てることができる。
【0071】
熱媒体ラジエータ23の熱媒体出口には、第2流量調整弁24bの一方の流入口が接続されている。さらに、熱媒体回路20には、水冷媒熱交換器12の熱媒体通路を流出した熱媒体を、熱媒体ラジエータ23を迂回させて、第2流量調整弁24bの他方の流入口側へ導く第2熱媒体迂回通路25bが接続されている。第2流量調整弁24bの流出口には、熱媒体ポンプ21の吸入口側が接続されている。
【0072】
第2流量調整弁24bは、水冷媒熱交換器12の熱媒体通路を流出した熱媒体のうち、熱媒体ラジエータ23へ流入させる熱媒体の流量と第2熱媒体迂回通路25bへ流入させる熱媒体の流量との流量比を調整する。第2流量調整弁24bの基本的構成は、第1流量調整弁24aと同様である。
【0073】
従って、熱媒体回路20では、水冷媒熱交換器12にて熱媒体と高圧冷媒とを熱交換させて、熱媒体を加熱することができる。さらに、ヒータコアにて熱媒体と上層側空気通路31cおよび下層側空気通路31dを流通して車室内へ送風される空気とを熱交換させて、空気を加熱することができる。つまり、水冷媒熱交換器12および熱媒体回路20は、圧縮機11から吐出された冷媒を熱源として空気を加熱する加熱部である。
【0074】
次に、図2図4を用いて、空調ユニット30について説明する。空調ユニット30は、車両用空調装置1において、適切な温度に調整された空気を車室内の適切な箇所へ向けて吹き出すために複数の構成機器を一体化させたユニットである。空調ユニット30は、内部に空気を流通させる複数の空気通路を形成する空気通路形成部である。
【0075】
より具体的には、空調ユニット30は、空調ケース31を有している。空調ケース31は、空調ユニットの外殻を形成するとともに、内部に空気通路、および空調ユニット30の構成機器の収容空間を形成する。空調ケース31は、ある程度の弾性を有し、強度的にも優れた樹脂(具体的には、ポリプロピレン)にて成形されている。
【0076】
空調ケース31の内部には、第1空気通路31a、第2空気通路31b、上層側空気通路31c、下層側空気通路31d、外気バイパス通路31e、および内気バイパス通路31fが形成されている。
【0077】
空調ケース31のうち、第1空気通路31a、第2空気通路31b、外気バイパス通路31e、および内気バイパス通路31fを形成する部位の少なくとも一部は、駆動装置室側に配置されている。また、空調ケース31のうち、上層側空気通路31cおよび下層側空気通路31dを形成する部位の少なくとも一部は、車室側に配置されている。
【0078】
車室(すなわち、車室内側)と駆動装置室(すなわち、車室外側)は、隔壁50によって仕切られている。隔壁50は、内燃機関(エンジン)から車両走行用の駆動力を得る通常のエンジン車両において、ダッシュパネルあるいはファイアウォールと呼ばれる防音防火用の隔壁部材に対応する。
【0079】
第1空気通路31aは、空調ケース31内へ車室内の空気である内気、あるいは、車室外の空気である外気を流入させる空気通路である。第1空気通路31aには、第1熱交換器15aが配置されている。第1空気通路31aは、第1熱交換器15aを通過した空気を、車室内および車室外の少なくとも一方側へ流出させる。
【0080】
空調ケース31の第1空気通路31aを形成する部位の空気流れ最上流側には、第1入口側内外気切替装置32aが配置されている。第1入口側内外気切替装置32aは、第1空気通路31aへ流入する空気における内気と外気との比率を連続的に調整可能な第1入口側内外気調整部である。
【0081】
具体的には、第1入口側内外気切替装置32aは、内気導入用の開口部と外気導入用の開口部が形成されたケース部、および双方の開口部の開口面積を変化させるドア部を有している。第1入口側内外気切替装置32aは、ドア部がいずれか一方の開口部を閉塞することによって、第1空気通路31aへ流入する空気の全風量を、内気および外気のいずれか一方とすることができる。第1入口側内外気切替装置32aは、制御装置60から出力される制御信号によって、その作動が制御される。
【0082】
また、空調ケース31の第1空気通路31aを形成する部位の空気流れ最下流側には、第1出口側内外気切替装置33aが配置されている。第1出口側内外気切替装置33aは、第1空気通路31aから流出する空気のうち、車室外側へ流出する空気と車室内側へ流出する空気との比率を連続的に調整可能な第1出口側内外気調整部である。
【0083】
具体的には、第1出口側内外気切替装置33aは、車室内流出用の開口部と車室外流出用の開口部が形成されたケース部、および双方の開口部の開口面積を変化させるドア部を有している。第1出口側内外気切替装置33aは、ドア部がいずれか一方の開口部を閉塞することによって、第1空気通路31aから流出する空気の全風量を車室内側および車室外側のいずれか一方へ流出させることができる。第1出口側内外気切替装置33aは、制御装置60から出力される制御信号によって、その作動が制御される。
【0084】
第2空気通路31bは、空調ケース31内へ内気あるいは外気を流入させる空気通路である。第2空気通路31bは、第1空気通路31aよりも鉛直方向下方側に配置されている。第2空気通路31bには、第2熱交換器15bが配置されている。第2空気通路31bは、第2熱交換器15bを通過した空気を、車室内および車室外の少なくとも一方側へ流出させる。
【0085】
空調ケース31の第2空気通路31bを形成する部位の空気流れ最上流側には、第2入口側内外気切替装置32bが配置されている。第2入口側内外気切替装置32bは、第2空気通路31bへ流入する空気における内気と外気との比率を連続的に調整可能な第2入口側内外気調整部である。
【0086】
第2入口側内外気切替装置32bの基本的構成は、第1入口側内外気切替装置32aと同様である。第2入口側内外気切替装置32bは、第2空気通路31bへ流入する空気の全風量を、内気および外気のいずれか一方とすることができる。
【0087】
また、空調ケース31の第2空気通路31bを形成する部位の空気流れ最下流側には、第2出口側内外気切替装置33bが配置されている。第2出口側内外気切替装置33bは、第2空気通路31bから流出する空気のうち、車室内側へ流出する空気と車室外側へ流出する空気との比率を連続的に調整可能な第2出口側内外気調整部である。
【0088】
第2出口側内外気切替装置33bの基本的構成は、第1出口側内外気切替装置33aと同様である。第2出口側内外気切替装置33bは、第2空気通路31bから流出する空気の全風量を車室内側および車室外側のいずれか一方へ流出させることができる。
【0089】
外気バイパス通路31eは、空調ケース31内へ外気を導入させる空気通路である。外気バイパス通路31eは、導入させた外気を、第1熱交換器15aおよび第2熱交換器15bを迂回させて車室内側へ流出させる。より具体的には、外気バイパス通路31eは、導入させた外気を、上層側空気通路31cの入口側へ流出させる。
【0090】
外気バイパス通路31eの内部には、図3に示すように、外気通路ドア34aが配置されている。外気通路ドア34aは、外気バイパス通路31eへ流入する外気の風量を連続的に調整する外気風量調整部である。外気通路ドア34aは、外気バイパス通路31eを閉塞することができる。外気通路ドア34aの駆動用アクチュエータは、制御装置60から出力される制御信号によって、その作動が制御される。
【0091】
内気バイパス通路31fは、空調ケース31内へ内気を導入させる空気通路である。内気バイパス通路31fは、導入させた内気を、第1熱交換器15aおよび第2熱交換器15bを迂回させて車室内側へ流出させる。より具体的には、内気バイパス通路31fは、導入させた内気を、下層側空気通路31dの入口側へ流出させる。
【0092】
内気バイパス通路31fの内部には、図2図3に示すように、内気通路ドア34bが配置されている。内気通路ドア34bは、内気バイパス通路31fへ流入する内気の風量を連続的に調整する内気風量調整部である。内気通路ドア34bは、内気バイパス通路31fを閉塞することができる。内気通路ドア34bの駆動用アクチュエータは、制御装置60から出力される制御信号によって、その作動が制御される。
【0093】
また、外気バイパス通路31eおよび内気バイパス通路31fは、第1空気通路31aよりも下方側であって、第2空気通路31bよりも上方側に配置されている。つまり、外気バイパス通路31eおよび内気バイパス通路31fは、上下方向から第1空気通路31aおよび第2空気通路31bに挟まれるように配置されている。さらに、外気バイパス通路31eおよび内気バイパス通路31fは、略水平方向に並んで配置されている。
【0094】
また、図3では、図示の明確化のため、外気バイパス通路31eの開口面積および内気バイパス通路31fの開口面積を略同等としているが、実際の開口面積は互いに異なっている。具体的には、後述する暖房モード時に、それぞれの空気通路を流通する空気に生じる圧力損失の合計が最小値に近づくように決定されている。
【0095】
また、上述した第1出口側内外気切替装置33aの車室内流出用の開口部、第2出口側内外気切替装置33bの車室内流出用の開口部、外気バイパス通路31eの出口部、および内気バイパス通路31fの出口部は、それぞれ通風路切替装置35の各種入口部に接続されている。
【0096】
通風路切替装置35は、空調ユニット30内に形成された空気通路の接続態様を切り替える通風路切替部、および車室内側へ空気を送風する車室内送風部を一体化させたサブユニットである。通風路切替装置35の詳細構成については、図4を用いて説明する。通風路切替装置35は、切替装置ケース36および室内送風機37を有している。
【0097】
切替装置ケース36は、空調ケース31と同一の材料で形成することができる。切替装置ケース36は、空調ケース31と一体的に形成されていてもよい。切替装置ケース36には、第1入口部36a、第2入口部36b、上層側出口部36c、下層側出口部36d、外気入口部36e、および内気入口部36fが形成されている。切替装置ケース36の内部には、それぞれの入口部に連通する通風路が形成されている。
【0098】
第1入口部36aには、第1出口側内外気切替装置33aの車室内流出用の開口部が接続される。第2入口部36bには、第2出口側内外気切替装置33bの車室内流出用の開口部が接続される。外気入口部36eには、外気バイパス通路31eの出口部が接続される。内気入口部36fには、内気バイパス通路31fの出口部が接続される。上層側出口部36cには、上層側空気通路31cの入口部が接続される。下層側出口部36dには、下層側空気通路31dの入口部が接続される。
【0099】
室内送風機37は、車室内へ空気(すなわち、内気あるいは外気)を送風する室内送風部である。室内送風機37は、第1ファン37a、第2ファン37b、および電動モータ37cを有している。第1ファン37aは、吸入した空気を上層側出口部36cから上層側空気通路31cへ送風する。第2ファン37bは、吸入した空気を下層側出口部36dから下層側空気通路31dへ送風する。
【0100】
電動モータ37cは、第1ファン37aおよび第2ファン37bの双方を連動して回転駆動する駆動部である。従って、室内送風機37は、第1ファン37aおよび第2ファン37bを共通する電動モータ37cで連動して回転駆動する、いわゆる二連式の送風機である。電動モータ37cは、制御装置60から出力される制御電圧によって、回転数(すなわち、送風能力)が制御される。
【0101】
第1ファン37aおよび第2ファン37bは、いずれも遠心多翼ファンである。第1ファン37aの寸法諸元と第2ファン37bの寸法諸元は、互いに異なっている。本実施形態では、第1ファン37aの軸方向羽根高さと第2ファン37bの軸方向羽根高さが、互いに異なっている。このため、同一回転数における第1ファン37aの風量と第2ファン37bの風量は、互いに異なっている。
【0102】
本実施形態では、暖房モード時に、内外気比率が適切な値となるように、第1ファン37aの軸方向羽根高さと第2ファン37bの軸方向羽根高さが設定されている。内外気比率は、上層側空気通路31cを流通する空気の風量と下層側空気通路31dを流通する空気の風量との比率である。
【0103】
第1ファン37aおよび第2ファン37bは、それぞれ切替装置ケース36に形成された第1スクロールケーシング37dおよび第2スクロールケーシング37eに収容されている。第1スクロールケーシング37dおよび第2スクロールケーシング37eは、第1ファン37aに吸入された空気と第2ファン37bに吸入された空気が、切替装置ケース36内で混合しないように形成されている。
【0104】
さらに、切替装置ケース36の内部には、内部に形成された通風路を切り替える切替ドア35a、35bが配置されている。
【0105】
これにより、通風路切替装置35では、第1入口部36aから内部へ流入させた空気を第1ファン37aの吸入口側および第2ファン37bの吸入口側の少なくとも一方へ導くことができる。また、通風路切替装置35では、第2入口部36bから内部へ流入させた空気を第1ファン37aの吸入口側および第2ファン37bの吸入口側の少なくとも一方へ導くことができる。
【0106】
また、通風路切替装置35では、切替ドア35a、35bの変位の影響を受けることなく、外気入口部36eから内部へ流入させた外気を第1ファン37aの吸入口側へ導くことができる。また、通風路切替装置35では、切替ドア35a、35bの変位の影響を受けることなく、内気入口部36fから内部へ流入させた内気を第2ファン37bの吸入口側へ導くことができる。
【0107】
次に、上層側空気通路31cは、第1ファン37aから送風された空気を流通させる空気通路である。下層側空気通路31dは、第2ファン37bから送風された空気を流通させる空気通路である。図2に示すように、下層側空気通路31dは、上層側空気通路31cの下方側に配置されている。上層側空気通路31cおよび下層側空気通路31dは、空調ケース31の内部に配置された仕切板39によって上下に仕切られている。
【0108】
上層側空気通路31cおよび下層側空気通路31dには、加熱部を形成するヒータコア22が配置されている。より具体的には、ヒータコア22は、仕切板39に形成された取付穴を貫通して、上層側空気通路31cおよび下層側空気通路31dの双方に跨がって配置されている。
【0109】
また、仕切板39のうち、ヒータコア22の空気流れ下流側に位置付けられる部位には、上層側空気通路31cと下層側空気通路31dとを連通させる連通口39aが形成されている。
【0110】
さらに、空調ケース31の内部には、連通口39aを開閉する連通口開閉ドア39bが配置されている。連通口開閉ドア39bは、連通口開閉ドア用の電動アクチュエータによって駆動される。連通口開閉ドア用の電動アクチュエータは、制御装置60から出力される制御信号によって、その作動が制御される。
【0111】
空調ケース31の空気流れ最下流部には、ヒータコア22を通過して温度調整された空気である空調風を車室内へ吹き出すための複数の開口穴が配置されている。
【0112】
具体的には、上層側空気通路31c側から空調風を車室内へ吹き出すための開口穴として、デフロスタ開口穴43aおよびフェイス開口穴43bが配置されている。また、下層側空気通路31d側から空気を車室内へ吹き出すための開口穴として、フット開口穴43cが配置されている。
【0113】
デフロスタ開口穴43aは、車両窓ガラス51の内側面へ向けて空調風を吹き出すための開口穴である。フェイス開口穴43bは、車室内の乗員の上半身へ向けて空調風を吹き出すための開口穴である。フット開口穴43cは、乗員の足元へ向けて空調風を吹き出すための開口穴である。
【0114】
デフロスタ開口穴43aは、図示しないダクトを介して、車室内に設けられたデフロスタ吹出口に接続されている。フェイス開口穴43bは、図示しないダクトを介して、車室内に設けられたフェイス吹出口に接続されている。フット開口穴43cは、図示しないダクトを介して、車室内に設けられたフット吹出口に接続されている。
【0115】
デフロスタ開口穴43a、フェイス開口穴43b、およびフット開口穴43cの送風空気流れ上流側には、それぞれデフロスタドア44a、フェイスドア44b、およびフットドア44cが配置されている。デフロスタドア44aは、デフロスタ開口穴43aの開口面積を調整する。フェイスドア44bは、フェイス開口穴43bの開口面積を調整する。フットドア44cは、フット開口穴43cの開口面積を調整する。
【0116】
デフロスタドア44a、フェイスドア44b、およびフットドア44cは、吹出口モードを切り替える吹出口モード切替部である。デフロスタドア44a、フェイスドア44b、およびフットドア44cは、リンク機構等を介して、吹出口モードドア用の電動アクチュエータによって連動して回転操作される。吹出口モードドア用の電動アクチュエータは、制御装置60から出力される制御信号によって、その作動が制御される。
【0117】
吹出口モード切替部によって切り替えられる吹出口モードとしては、具体的に、フェイスモード、バイレベルモード、フットモード等がある。
【0118】
フェイスモードは、フェイス開口穴43bを全開としてフェイス吹出口から空調風を吹き出す吹出口モードである。バイレベルモードは、フェイス開口穴43bおよびフット開口穴43cの両方を開口させて、フェイス吹出口から空調風を吹き出すとともに、フット吹出口から空調風を吹き出す吹出口モードである。
【0119】
フットモードは、デフロスタ開口穴43aおよびフット開口穴43cの双方を開口させて、デフロスタ吹出口から空調風を吹き出すとともに、フット吹出口から空調風を吹き出す吹出口モードである。
【0120】
さらに、乗員が操作パネル62に設けられた吹出口モード切替スイッチをマニュアル操作することによって、デフロスタモードに切り替えることもできる。デフロスタモードは、デフロスタ開口穴43aを全開としてデフロスタ吹出口から空調風を吹き出す吹出口モードである。
【0121】
また、図2に示すように、空調ケース31の最下方側には、排気送風機45が配置されている。
【0122】
排気送風機45は、空調ケース31内の空気を吸入して排気口45aから車室外へ排気する排気送風部である。排気送風機45は、スクロールケーシング内に配置された遠心多翼ファンを電動モータで回転駆動する遠心式送風機である。排気送風機45は、制御装置60から電動モータへ出力される制御電圧によって、回転数(すなわち、送風能力)が制御される。
【0123】
排気送風機45の吸入口には、排気バイパス通路31gを介して、第1出口側内外気切替装置33aの車室外流出用の開口部が接続されている。さらに、排気送風機45の吸入口には、第2出口側内外気切替装置33bの車室外流出用の開口部が接続されている。
【0124】
次に、図5を用いて、車両用空調装置1の電気制御部の概要について説明する。制御装置60は、CPU、ROMおよびRAM等を含む周知のマイクロコンピュータとその周辺回路から構成されている。
【0125】
制御装置60は、ROM内に記憶された空調制御プログラムに基づいて各種演算、処理を行い、出力側に接続された各種制御対象機器11、14a、14b、21、24a、24b、32a、32b、33a、33b、34a、34b、35、37、45等の作動を制御する。
【0126】
制御装置60の入力側には、図5に示すように、各種の制御用センサが接続されている。制御用センサには、内気温センサ61a、外気温センサ61b、日射量センサ61cが含まれる。内気温センサ61aは、車室内の温度である内気温Trを検出する内気温検出部である。外気温センサ61bは、車室外の温度である外気温Tamを検出する外気温検出部である。日射量センサ61cは、車室内へ照射される日射量Asを検出する日射量検出部である。
【0127】
また、制御用センサには、高圧冷媒温度センサ61d、第1冷媒温度センサ61e、第2冷媒温度センサ61fが含まれる。高圧冷媒温度センサ61dは、圧縮機11から吐出された高圧冷媒の高圧冷媒温度Tdを検出する高圧冷媒温度検出部である。第1冷媒温度センサ61eは、第1熱交換器15aにおける第1冷媒温度Tr1(すなわち、第1熱交換器15aの温度)を検出する第1冷媒温度検出部である。第2冷媒温度センサ61fは、第2熱交換器15bにおける第2冷媒温度Tr2(すなわち、第2熱交換器15bの温度)を検出する第2冷媒温度検出部である。
【0128】
また、制御用センサには、高圧冷媒圧力センサ61g、吸入冷媒圧力センサ61hが含まれる。高圧冷媒圧力センサ61gは、圧縮機11から吐出された高圧冷媒の高圧冷媒圧力Pdを検出する高圧冷媒圧力検出部である。吸入冷媒圧力センサ61hは、第2熱交換器15bから流出して圧縮機11へ吸入される吸入冷媒の吸入冷媒圧力Psを検出する吸入冷媒圧力検出部である。
【0129】
また、制御用センサには、熱媒体温度センサ61iが含まれる。熱媒体温度センサ61iは、ヒータコア22へ流入する熱媒体の温度である熱媒体温度Twを検出する熱媒体温度検出部である。
【0130】
また、制御用センサには、湿度センサ61jが含まれる。湿度センサ61jは、車室内の車両窓ガラス51近傍の内気湿度Rh(相対湿度)を検出する。車両窓ガラス51近傍の内気湿度Rhは、車両窓ガラス51の曇り易さに相関する物理量である。内気湿度Rhは、車両窓ガラス51の防曇が必要であるか否かを判定するために利用することができる。従って、湿度センサ61jは、窓曇り検知部である。
【0131】
さらに、制御装置60の入力側には、操作パネル62が接続されている。操作パネル62は、車室内前部の計器盤付近に配置されている。操作パネル62には、乗員によって操作される各種操作スイッチが設けられている。制御装置60には、各種操作スイッチの操作信号が入力される。各種操作スイッチとしては、具体的に、オートスイッチ、エアコンスイッチ、風量設定スイッチ、温度設定スイッチ等がある。
【0132】
オートスイッチは、乗員が車両用空調装置1の自動制御運転を設定あるいは解除する操作スイッチである。エアコンスイッチは、乗員が第1熱交換器15aあるいは第2熱交換器15bにて空気を冷却することを要求するための操作スイッチである。風量設定スイッチは、乗員が室内送風機37の風量をマニュアル設定する操作スイッチである。温度設定スイッチは、乗員が車室内の設定温度Tsetを設定する操作スイッチである。
【0133】
また、本実施形態の制御装置60は、その出力側に接続された各種制御対象機器を制御する制御部が一体に構成されたものである。従って、それぞれの制御対象機器の作動を制御する構成(すなわち、ハードウェアおよびソフトウェア)が、それぞれの制御対象機器の作動を制御する制御部を構成している。例えば、圧縮機11の冷媒吐出能力を制御する構成が圧縮機制御部60aを構成している。
【0134】
次に、上記構成の本実施形態の車両用空調装置1の作動について説明する。車両用空調装置1では、冷房モード、除湿暖房モード、暖房モード、除霜モードといった運転モードを切り替える。
【0135】
冷房モードは、冷却された空気を車室内へ吹き出す運転モードである。除湿暖房モードは、冷却されて除湿された空気を再加熱して車室内へ吹き出す運転モードである。暖房モードは、加熱された空気を車室内へ吹き出す運転モードである。除霜モードは、着霜の生じた熱交換器の霜を取り除く運転モードである。
【0136】
運転モードの切り替えは、予め制御装置60に記憶されている空調制御プログラムが実行されることによって行われる。空調制御プログラムは、操作パネル62のオートスイッチが投入(ON)されて、車室内空調の自動制御運転が設定された際に実行される。
【0137】
空調制御プログラムのメインルーチンでは、所定の周期毎に上述した各種の制御用センサの検出信号を読み込む。読み込んだ検出信号および操作信号の値に基づいて、車室内へ送風される空調風の目標温度である目標吹出温度TAOを算出する。そして、算出された目標吹出温度TAO等を用いて、運転モードを切り替える。
【0138】
目標吹出温度TAOは、以下数式F1を用いて算出される。
TAO=Kset×Tset-Kr×Tr-Kam×Tam-Ks×As+C…(F1)
なお、Tsetは、操作パネル62の温度設定スイッチによって設定された車室内の設定温度である。Trは、内気温センサ61aによって検出された内気温である。Tamは、外気温センサ61bによって検出された外気温である。Asは、日射量センサ61cによって検出された日射量である。Kset、Kr、Kam、Ksは制御ゲインであり、Cは補正用の定数である。
【0139】
そして、空調制御プログラムでは、目標吹出温度TAOが予め定めた基準冷房温度TAO1よりも低くなっており、かつ、操作パネル62のエアコンスイッチが投入されている際には、冷房モードに切り替えられる。また、目標吹出温度TAOが基準冷房温度TAO1以上になっており、かつ、エアコンスイッチが投入されている際には、除湿暖房モードに切り替えられる。また、エアコンスイッチが投入されていない場合には、暖房モードに切り替えられる。
【0140】
このため、冷房モードは、主に夏季のように比較的外気温が高い場合に実行されやすい。除湿暖房モードは、主に春季あるいは秋季に実行されやすい。暖房モードは、主に冬季の低外気温時に実行されやすい。以下に、各運転モードの詳細作動について説明する。
【0141】
(1)冷房モード
冷房モードでは、制御装置60が、ヒートポンプサイクル10の圧縮機11を作動させる。より具体的には、制御装置60は、第2冷媒温度センサ61fによって検出された第2冷媒温度Tr2が目標蒸発器温度TEOに近づくように、圧縮機11の冷媒吐出能力を制御する。
【0142】
目標蒸発器温度TEOは、目標吹出温度TAOに基づいて、予め制御装置60に記憶されている冷房モード用の制御マップを参照して決定される。冷房モード用の制御マップでは、目標吹出温度TAOの上昇に伴って、目標蒸発器温度TEOを上昇させるように決定する。また、目標蒸発器温度TEOは、第2熱交換器15bの着霜を抑制可能な値(本実施形態では、少なくとも1℃以上)に決定される。
【0143】
また、制御装置60は、第1膨張弁14aを全開状態とする。また、制御装置60は、第2膨張弁14bを冷媒減圧作用を発揮する絞り状態とする。より具体的には、制御装置60は、第2熱交換器15bの出口側の冷媒の過熱度SHが予め定めた基準加熱度KSH(本実施形態では、5℃)に近づくように第2膨張弁14bの作動を制御する。第2熱交換器15bの出口側の冷媒の過熱度SHは、第2冷媒温度Tr2および吸入冷媒圧力センサ61hによって検出された吸入冷媒圧力Psから決定することができる。
【0144】
また、制御装置60は、予め定めた基準圧送能力を発揮するように、熱媒体回路20の熱媒体ポンプ21を作動させる。
【0145】
また、制御装置60は、熱媒体ポンプ21から吐出された熱媒体の全流量が、水冷媒熱交換器12の熱媒体通路へ流入するように第1流量調整弁24aの作動を制御する。また、制御装置60は、水冷媒熱交換器12の熱媒体通路から流出した熱媒体の全流量が、熱媒体ラジエータ23へ流入するように、第2流量調整弁24bの作動を制御する。
【0146】
また、制御装置60は、空調ユニット30の第1空気通路31aへ外気を流入させるように、第1入口側内外気切替装置32aの作動を制御する。また、制御装置60は、第1熱交換器15aを通過した全流量の空気を車室外流出用の開口部から流出させるように、第1出口側内外気切替装置33aの作動を制御する。
【0147】
また、制御装置60は、第2空気通路31bへ外気を流入させるように、第2入口側内外気切替装置32bの作動を制御する。また、制御装置60は、第2熱交換器15bを通過した全流量の空気を車室内流出用の開口部から流出させるように、第2出口側内外気切替装置33bの作動を制御する。
【0148】
また、制御装置60は、外気通路ドア34aが外気バイパス通路31eを閉塞するように、外気通路ドア34aの駆動用アクチュエータへ出力される制御信号を決定する。また、制御装置60は、内気通路ドア34bが内気バイパス通路31fを閉塞するように、内気通路ドア34bの駆動用アクチュエータへ出力される制御信号を決定する。
【0149】
また、制御装置60は、第2出口側内外気切替装置33bの車室内流出用の開口部から流出した空気を、室内送風機37の第1ファン37aおよび第2ファン37bの双方へ吸入させるように、通風路切替装置35内の通風路を切り替える。
【0150】
また、制御装置60は、目標送風能力を発揮するように室内送風機37を作動させる。室内送風機37の目標送風能力は、目標吹出温度TAOに基づいて、予め制御装置60に記憶されている制御マップを参照して決定される。室内送風機37用の制御マップでは、目標吹出温度TAOの極低温域(最大冷房域)および極高温域(最大暖房域)で室内送風機37の送風能力を最大とする。
【0151】
さらに、目標吹出温度TAOが極低温域から中間温度域に向かって上昇するに伴って、目標吹出温度TAOの上昇に応じて送風能力を減少させる。また、目標吹出温度TAOが極高温域から中間温度域に向かって低下するに伴って、目標吹出温度TAOの低下に応じて送風能力を減少させる。また、目標吹出温度TAOが所定の中間温度域内に入ると、送風能力を最小とする。
【0152】
また、制御装置60は、予め定めた基準送風能力を発揮するように排気送風機45を作動させる。
【0153】
また、制御装置60は、連通口開閉ドア39bが連通口39aを全開させるように、連通口開閉ドア用の電動アクチュエータへ出力される制御信号を決定する。
【0154】
また、制御装置60は、目標吹出温度TAOに基づいて、予め制御装置60に記憶された制御マップを参照して、吹出口モードドア用の電動アクチュエータへ出力される制御信号を決定する。
【0155】
吹出口モードドア用の制御マップでは、目標吹出温度TAOが低温域から高温域へと上昇するに伴って、フェイスモード、バイレベルモード、フットモードの順に切り替える。また、目標吹出温度TAOが高温域から低温域へと下降するに伴って、フットモード、バイレベルモード、フェイスモードの順に切り替える。このため、冷房モードでは、フェイスモードが選択されやすい。
【0156】
従って、冷房モードのヒートポンプサイクル10では、圧縮機11から吐出された高圧冷媒が、水冷媒熱交換器12の冷媒通路へ流入する。水冷媒熱交換器12の冷媒通路へ流入した冷媒は、熱媒体通路を流通する熱媒体と熱交換する。水冷媒熱交換器12では、冷媒が熱媒体に放熱して凝縮する。
【0157】
水冷媒熱交換器12の冷媒通路から流出した冷媒は、レシーバ13へ流入して気液分離される。レシーバ13にて分離された液相冷媒は、全開となっている第1膨張弁14aを介して、第1熱交換器15aへ流入する。
【0158】
第1熱交換器15aへ流入した液相冷媒は、空調ユニット30の第1空気通路31aへ流入した空気(本実施形態では、外気)と熱交換する。第1熱交換器15aでは、液相冷媒が空気と熱交換して過冷却される。第1熱交換器15aから流出した冷媒は、第2膨張弁14bへ流入して減圧される。第2膨張弁14bにて減圧された低圧冷媒は、第2熱交換器15bへ流入する。
【0159】
第2熱交換器15bへ流入した冷媒は、空調ユニット30の第2空気通路31bへ流入した空気(本実施形態では、外気)と熱交換する。第2熱交換器15bでは、冷媒が空気から吸熱して蒸発する。これにより、第2空気通路31bを流通する空気が冷却される。第2熱交換器15bから流出した冷媒は、圧縮機11に吸入されて再び圧縮される。
【0160】
また、冷房モードの熱媒体回路20では、熱媒体ポンプ21から圧送された全流量の熱媒体が、第1熱媒体迂回通路25aおよび第1流量調整弁24aを介して、水冷媒熱交換器12の熱媒体通路へ流入する。水冷媒熱交換器12の熱媒体通路へ流入した熱媒体は、冷媒通路を流通する冷媒と熱交換して加熱される。
【0161】
水冷媒熱交換器12にて加熱された熱媒体は、熱媒体ラジエータ23へ流入する。熱媒体ラジエータ23へ流入した熱媒体は、外気に放熱して冷却される。熱媒体ラジエータ23から流出した熱媒体は、第2流量調整弁24bを介して、熱媒体ポンプ21に吸入されて再び圧送される。
【0162】
また、冷房モードの空調ユニット30では、図6の太線矢印で示すように、空気が各空気通路を流れる。
【0163】
具体的には、第1入口側内外気切替装置32aから第1空気通路31aへ流入した空気(本実施形態では、外気)は、第1熱交換器15aを通過する際に冷媒と熱交換して加熱される。第1熱交換器15aにて加熱された空気は、第1出口側内外気切替装置33aおよび排気バイパス通路31gを介して、排気送風機45へ吸入される。排気送風機45へ吸入された空気は、車室外へ排気される。
【0164】
第2入口側内外気切替装置32bから第2空気通路31bへ流入した空気(本実施形態では、外気)は、第2熱交換器15bを通過する際に冷媒に吸熱されて冷却される。第2熱交換器15bにて冷却された空気は、第2出口側内外気切替装置33bおよび通風路切替装置35内の通風路を介して、室内送風機37の第1ファン37aおよび第2ファン37bへ吸入される。
【0165】
第1ファン37aへ吸入された空気は、上層側空気通路31cの入口側へ送風される。上層側空気通路31cへ送風された空気は、ヒータコア22へ通過する。第2ファン37bへ吸入された空気は、下層側空気通路31dの入口側へ送風される。下層側空気通路31dへ送風された空気は、ヒータコア22を通過する。冷房モードでは、ヒータコア22へ熱媒体を流入させないので、ヒータコア22を通過する空気が加熱されることはない。
【0166】
また、冷房モードでは、連通口開閉ドア39bが連通口39aを全開としている。従って、上層側空気通路31cを流通した空気および下層側空気通路31dを流通した空気の双方が、吹出口モードに応じて開口している開口部から車室内へ吹き出される。これにより、車室内の冷房が実現される。
【0167】
さらに、冷房モードのヒートポンプサイクル10では、水冷媒熱交換器12を冷媒を凝縮させる凝縮器として機能させ、第1熱交換器15aをレシーバ13から流出した液相冷媒を過冷却する過冷却部として機能させる。従って、冷房モードのヒートポンプサイクル10では、水冷媒熱交換器12、レシーバ13および第1熱交換器15aによって、いわゆるサブクール型の凝縮器を形成することができる。
【0168】
その結果、第2熱交換器15bの出口側冷媒のエンタルピから第2熱交換器15bの入口側冷媒のエンタルピを減算したエンタルピ差を拡大させて、第2熱交換器15bにおける空気の冷却能力を向上させることができる。
【0169】
(2)除湿暖房モード
除湿暖房モードでは、制御装置60が、冷房モードと同様に、ヒートポンプサイクル10の圧縮機11を作動させる。
【0170】
また、制御装置60は、第1膨張弁14aおよび第2膨張弁14bを絞り状態とする。より具体的には、制御装置60は、第2熱交換器15bの出口側の冷媒の過熱度SHが基準加熱度KSH(本実施形態では、5℃)に近づくように第1膨張弁14aおよび第2膨張弁14bの作動を制御する。
【0171】
さらに、目標吹出温度TAOに基づいて、予め制御装置60に記憶されている制御マップを参照して、第1膨張弁14aの絞り開度と第2膨張弁14bの絞り開度との比を決定する。除湿暖房モード用の制御マップでは、目標吹出温度TAOの上昇に伴って、第1膨張弁14aの絞り開度を減少させ、第2膨張弁14bの絞り開度を増加させるように決定する。
【0172】
また、制御装置60は、冷房モードと同様に、熱媒体回路20の熱媒体ポンプ21を作動させる。
【0173】
また、制御装置60は、熱媒体ポンプ21から吐出された熱媒体の全流量が、ヒータコア22へ流入するように、第1流量調整弁24aの作動を制御する。また、制御装置60は、熱媒体温度センサ61iによって検出された熱媒体温度Twが、目標熱媒体温度TWOに近づくように、第2流量調整弁24bの作動を制御する。
【0174】
目標熱媒体温度TWOは、目標吹出温度TAOに基づいて、予め制御装置60に記憶されている除湿暖房モード用の制御マップを参照して決定される。
【0175】
また、制御装置60は、冷房モードと同様に、その他の空調ユニット30の構成機器の作動を制御する。例えば、制御装置60は、冷房モードと同様に、吹出口モードドア用の電動アクチュエータへ出力される制御信号を決定する。このため、除湿暖房モードでは、吹出口モードとして、フェイスモードまたはバイレベルモードが選択されやすい。
【0176】
従って、除湿暖房モードのヒートポンプサイクル10では、圧縮機11から吐出された高圧冷媒が、水冷媒熱交換器12の冷媒通路へ流入する。水冷媒熱交換器12の冷媒通路へ流入した冷媒は、熱媒体通路を流通する熱媒体と熱交換する。水冷媒熱交換器12では、冷媒が熱媒体に放熱して凝縮する。
【0177】
水冷媒熱交換器12の冷媒通路から流出した冷媒は、レシーバ13へ流入して気液分離される。レシーバ13にて分離された液相冷媒は、第1膨張弁14aへ流入して減圧される。第1膨張弁14aにて減圧された冷媒は、第1熱交換器15aへ流入する。
【0178】
第1熱交換器15aへ流入した冷媒は、空調ユニット30の第1空気通路31aへ流入した空気(本実施形態では、外気)と熱交換する。この際、第1熱交換器15aにおける冷媒の飽和温度が外気温Tamよりも高い場合には、第1熱交換器15aは冷媒を過冷却する過冷却用の熱交換器として機能する。また、第1熱交換器15aにおける冷媒の飽和温度が外気温Tamよりも低い場合には、第1熱交換器15aは冷媒を蒸発させる蒸発器として機能する。
【0179】
第1熱交換器15aから流出した冷媒は、第2膨張弁14bへ流入して減圧される。第2膨張弁14bにて減圧された冷媒は、第2熱交換器15bへ流入する。
【0180】
第2熱交換器15bへ流入した冷媒は、空調ユニット30の第2空気通路31bへ流入した空気(本実施形態では、外気)と熱交換する。第2熱交換器15bでは、冷媒が空気から吸熱して蒸発する。これにより、第2空気通路31bを流通する空気が冷却されて除湿される。第2熱交換器15bから流出した冷媒は、圧縮機11に吸入されて再び圧縮される。
【0181】
また、除湿暖房モードの熱媒体回路20では、熱媒体ポンプ21から圧送された全流量の熱媒体が、ヒータコア22へ流入する。ヒータコア22へ流入した熱媒体は、上層側空気通路31cを流通する空気および下層側空気通路31dを流通する空気と熱交換して、空気へ放熱する。これにより、上層側空気通路31cを流通する空気および下層側空気通路31dを流通する空気が加熱される。
【0182】
ヒータコア22から流出した熱媒体は、水冷媒熱交換器12の熱媒体通路へ流入する。水冷媒熱交換器12の熱媒体通路へ流入した熱媒体は、高圧冷媒と熱交換して加熱される。水冷媒熱交換器12の熱媒体通路から熱媒体ラジエータ23へ流入した熱媒体は、外気に放熱して冷却される。
【0183】
熱媒体ラジエータ23から流出した熱媒体は、第2流量調整弁24bの一方の流入口へ流入する。また、水冷媒熱交換器12の熱媒体通路から第2熱媒体迂回通路25b側へ流出した熱媒体は、第2流量調整弁24bの他方の流入口へ流入する。
【0184】
この際、第2流量調整弁24bは、熱媒体温度Twが目標熱媒体温度TWOに近づくように、熱媒体ラジエータ23へ流入させる熱媒体の流量と第2熱媒体迂回通路25bへ流入させる熱媒体の流量との流量比を調整する。第2流量調整弁24bから流出した熱媒体は、熱媒体ポンプ21に吸入されて再びヒータコア22側へ圧送される。
【0185】
また、除湿暖房モードの空調ユニット30では、図6の太線矢印で示すように、冷房モードと同様に空気が各空気通路を流れる。除湿暖房モードでは、第2熱交換器15bにて冷却されて除湿された空気が、第2出口側内外気切替装置33bおよび通風路切替装置35内の通風路を介して、室内送風機37の第1ファン37aおよび第2ファン37bへ吸入される。
【0186】
第1ファン37aへ吸入された空気は、上層側空気通路31cの入口側へ送風される。上層側空気通路31cへ送風された空気は、ヒータコア22を通過する際に熱媒体と熱交換して再加熱される。第2ファン37bへ吸入された空気は、下層側空気通路31dの入口側へ送風される。下層側空気通路31dへ送風された空気は、ヒータコア22を通過する際に熱媒体と熱交換して再加熱される。
【0187】
また、除湿暖房モードでは、連通口開閉ドア39bが連通口39aを全開としている。従って、上層側空気通路31cを流通して再加熱された空気および下層側空気通路31dを流通して再加熱された空気の双方が、吹出口モードに応じて開口している開口部から車室内へ吹き出される。これにより、車室内の除湿暖房が実現される。
【0188】
さらに、直列除湿暖房モードのヒートポンプサイクル10では、目標吹出温度TAOの上昇に伴って、第1膨張弁14aの絞り開度を減少させ、第2膨張弁14bの絞り開度を増加させている。これによれば、目標吹出温度TAOの上昇に伴って、ヒータコア22における送風空気の加熱能力を向上させることができる。
【0189】
より詳細には、第1熱交換器15aにおける冷媒の飽和温度が外気温Tamよりも高くなっている際には、目標吹出温度TAOの上昇に伴って、第1熱交換器15aにおける冷媒の飽和温度から外気温Tamを減算した温度差を縮小させることができる。従って、目標吹出温度TAOの上昇に伴って、第1熱交換器15aにおける冷媒から外気への放熱量を減少させて、水冷媒熱交換器12における冷媒から熱媒体への放熱量を増加させることができる。
【0190】
また、第1熱交換器15aにおける冷媒の飽和温度が外気温Tamよりも低くなっている際には、目標吹出温度TAOの上昇に伴って、外気温Tamから第1熱交換器15aにおける冷媒の飽和温度を減算した温度差を拡大させることができる。目標吹出温度TAOの上昇に伴って、第1熱交換器15aにて冷媒が外気から吸熱する吸熱量を増加させて、水冷媒熱交換器12における冷媒から熱媒体への放熱量を増加させることができる。
【0191】
その結果、除湿暖房モードでは、目標吹出温度TAOの上昇に伴って、ヒータコア22における送風空気の加熱能力を向上させることができる。
【0192】
(3)暖房モード
暖房モードでは、制御装置60が、ヒートポンプサイクル10の圧縮機11を作動させる。より具体的には、制御装置60は、高圧冷媒圧力センサ61gによって検出された高圧冷媒圧力Pdが、目標高圧PDOに近づくように、圧縮機11の冷媒吐出能力を制御する。
【0193】
目標高圧PDOは、目標吹出温度TAOに基づいて、予め制御装置60に記憶されている暖房モード用の制御マップを参照して決定される。暖房モード用の制御マップでは、目標吹出温度TAOの上昇に伴って、目標高圧PDOを上昇させるように決定する。
【0194】
また、制御装置60は、第1膨張弁14aを絞り状態とする。より具体的には、制御装置60は、第1冷媒温度センサ61eによって検出された第1冷媒温度Tr1が目標第1冷媒温度KTr1に近づくように、第1膨張弁14aの作動を制御する。
【0195】
目標第1冷媒温度KTr1は、内気温Trに基づいて、予め制御装置60に記憶されている暖房モード用の制御マップを参照して決定される。暖房モード用の制御マップでは、内気温Trよりも低い値で、第1熱交換器15aの着霜を抑制可能な値(本実施形態では、少なくとも1℃以上)に、目標第1冷媒温度KTr1を決定する。
【0196】
また、制御装置60は、第2膨張弁14bを絞り状態とする。より具体的には、制御装置60は、第2熱交換器15bの出口側の冷媒の過熱度SHが基準加熱度KSHに近づくように第2膨張弁14bの作動を制御する。暖房モードでは、第2熱交換器15bにおける冷媒蒸発温度が外気温Tamよりも低くなる。
【0197】
また、制御装置60は、冷房モードと同様に、熱媒体回路20の熱媒体ポンプ21を作動させる。また、制御装置60は、除湿暖房モードと同様に、第1流量調整弁24aおよび第2流量調整弁24bの作動を制御する。
【0198】
また、制御装置60は、空調ユニット30の第1空気通路31aへ内気を流入させるように、第1入口側内外気切替装置32aの作動を制御する。また、制御装置60は、第1熱交換器15aを通過した全流量の空気を車室外流出用の開口部から流出させるように、第1出口側内外気切替装置33aの作動を制御する。
【0199】
また、制御装置60は、第2空気通路31bへ外気を流入させるように、第2入口側内外気切替装置32bの作動を制御する。また、制御装置60は、第2熱交換器15bを通過した全流量の空気を車室外流出用の開口部から流出させるように、第2出口側内外気切替装置33bの作動を制御する。
【0200】
また、制御装置60は、外気通路ドア34aが外気バイパス通路31eを全開させるように、外気通路ドア34aの駆動用アクチュエータへ出力される制御信号を決定する。また、制御装置60は、内気通路ドア34bが内気バイパス通路31fを全開させるように、内気通路ドア34bの駆動用アクチュエータへ出力される制御信号を決定する。
【0201】
また、制御装置60は、外気バイパス通路31eから流出した空気を、室内送風機37の第1ファン37aへ吸入させるように、通風路切替装置35内の通風路を切り替える。さらに、内気バイパス通路31fから流出した空気を、室内送風機37の第2ファン37bへ吸入させるように、通風路切替装置35内の通風路を切り替える。
【0202】
また、制御装置60は、連通口開閉ドア39bが連通口39aを閉塞させるように、連通口開閉ドア用の電動アクチュエータへ出力される制御信号を決定する。また、制御装置60は、吹出口モードがフットモードとなるように、吹出口モードドア用の電動アクチュエータへ出力される制御信号を決定する。
【0203】
また、制御装置60は、冷房モードと同様に、その他の空調ユニット30の構成機器の作動を制御する。
【0204】
従って、暖房モードのヒートポンプサイクル10では、圧縮機11から吐出された高圧冷媒が、水冷媒熱交換器12の冷媒通路へ流入する。水冷媒熱交換器12の冷媒通路へ流入した冷媒は、熱媒体通路を流通する熱媒体と熱交換する。水冷媒熱交換器12では、冷媒が熱媒体に放熱して凝縮する。
【0205】
水冷媒熱交換器12の冷媒通路から流出した冷媒は、レシーバ13へ流入して気液分離される。レシーバ13にて分離された液相冷媒は、第1膨張弁14aへ流入して減圧される。第1膨張弁14aにて減圧された冷媒は、第1熱交換器15aへ流入する。
【0206】
第1熱交換器15aへ流入した冷媒は、空調ユニット30の第1空気通路31aへ流入した空気(本実施形態では、内気)と熱交換する。第1熱交換器15aでは、冷媒が空気から吸熱して蒸発する。第1熱交換器15aから流出した冷媒は、第2膨張弁14bへ流入して減圧される。第2膨張弁14bにて減圧された冷媒は、第2熱交換器15bへ流入する。
【0207】
第2熱交換器15bへ流入した冷媒は、空調ユニット30の第2空気通路31bへ流入した空気(本実施形態では、外気)と熱交換する。第2熱交換器15bでは、冷媒が空気から吸熱してさらに蒸発する。第2熱交換器15bから流出した冷媒は、圧縮機11に吸入されて再び圧縮される。
【0208】
また、暖房モードの熱媒体回路20では、除湿暖房モードと同様に、目標熱媒体温度TWOに近づくように温度調整された熱媒体が、ヒータコア22へ流入する。
【0209】
また、暖房モードの空調ユニット30では、図7の太線矢印で示すように、空気が各空気通路を流れる。
【0210】
第1入口側内外気切替装置32aから第1空気通路31aへ流入した空気(本実施形態では、内気)は、第1熱交換器15aを通過する際に冷媒と熱交換して吸熱される。第1熱交換器15aにて冷却された空気は、第1出口側内外気切替装置33aおよび排気バイパス通路31gを介して、排気送風機45へ吸入される。排気送風機45へ吸入された空気は、車室外側へ排気される。
【0211】
第2入口側内外気切替装置32bから第2空気通路31bへ流入した空気(本実施形態では、外気)は、第2熱交換器15bを通過する際に冷媒と熱交換して吸熱される。第2熱交換器15bにて冷却された空気は、第2出口側内外気切替装置33bを介して、排気送風機45へ吸入される。排気送風機45へ吸入された空気は、車室外側へ排気される。
【0212】
外気バイパス通路31eへ流入した外気は、通風路切替装置35内の通風路を介して、第1ファン37aへ吸入される。第1ファン37aへ吸入された外気は、上層側空気通路31cの入口側へ送風される。上層側空気通路31cへ送風された外気は、ヒータコア22へ流入する。ヒータコア22へ流入した外気は熱媒体回路20を循環する熱媒体と熱交換して加熱される。
【0213】
内気バイパス通路31fへ流入した内気は、通風路切替装置35内の通風路を介して、第2ファン37bへ吸入される。第2ファン37bへ吸入された外気は、下層側空気通路31dの入口側へ送風される。下層側空気通路31dへ送風された外気は、ヒータコア22へ流入する。ヒータコア22へ流入した外気は熱媒体回路20を循環する熱媒体と熱交換して加熱される。
【0214】
暖房モードでは、連通口開閉ドア39bが連通口39aを閉じており、吹出口モードがフットモードとなっている。
【0215】
従って、上層側空気通路31cのヒータコア22にて加熱された外気は、デフロスタ開口穴43aを介して、車両窓ガラス51の内側面へ向けて吹き出される。また、下層側空気通路31dのヒータコア22にて加熱された内気は、フット開口穴43cを介して、乗員側(より詳細には、乗員の足下側)へ向けて吹き出される。これにより、車室内の暖房が実現される。
【0216】
この際、暖房モードでは、内気よりも湿度の低い外気を加熱して車両窓ガラス51の内側面へ向けて吹き出しているので、車両窓ガラスの防曇性能を向上させることができる。また、外気よりも温度の高い内気を加熱して乗員の足元へ向けて吹き出しているので、低温の外気を加熱する場合よりも、暖房のために消費されるエネルギを低減させることができる。さらに、頭寒足熱型の快適な暖房を実現することができる。
【0217】
(4)除霜モード
除霜モードは、暖房モードの実行中に、第2熱交換器15bに着霜が生じたと判定された際に実行される運転モードである。
【0218】
空調制御プログラムでは、予め定めた着霜条件が成立した際に、第2熱交換器15bに着霜が生じたと判定している。具体的には、暖房モードの開始後、第2冷媒温度Tr2が基準着霜温度(本実施形態では、-5℃)以下となっている時間が、基準着霜時間(本実施形態では、5分)以上となった際に、着霜条件が成立したと判定している。
【0219】
また、除霜モードの運転は、予め定めた除霜時間(本実施形態では、1分~2分程度)が経過するまで継続される。
【0220】
除霜モードでは、制御装置60が、ヒートポンプサイクル10の圧縮機11を停止させる。また、制御装置60は、冷房モードと同様に、熱媒体回路20の熱媒体ポンプ21を作動させる。また、制御装置60は、除湿暖房モードと同様に、第1流量調整弁24aおよび第2流量調整弁24bの作動を制御する。
【0221】
また、制御装置60は、空調ユニット30の第1空気通路31aへ外気を流入させるように、第1入口側内外気切替装置32aの作動を制御する。また、制御装置60は、第1熱交換器15aを通過した全流量の空気を車室内流出用の開口部から流出させるように、第1出口側内外気切替装置33aの作動を制御する。
【0222】
また、制御装置60は、第2空気通路31bへ内気を流入させるように、第2入口側内外気切替装置32bの作動を制御する。また、制御装置60は、第2熱交換器15bを通過した全流量の空気を車室外流出用の開口部から流出させるように、第2出口側内外気切替装置33bの作動を制御する。
【0223】
また、制御装置60は、外気通路ドア34aが外気バイパス通路31eを全開させるように、外気通路ドア34aの駆動用アクチュエータへ出力される制御信号を決定する。また、制御装置60は、内気通路ドア34bが内気バイパス通路31fを全開させるように、内気通路ドア34bの駆動用アクチュエータへ出力される制御信号を決定する。
【0224】
また、制御装置60は、第1出口側内外気切替装置33aの車室内流出用の開口部から流出した空気を、室内送風機37の第1ファン37aおよび第2ファン37bの双方へ吸入させるように、通風路切替装置35内の通風路を切り替える。
【0225】
また、制御装置60は、暖房モードと同様に、その他の空調ユニット30の構成機器の作動を制御する。
【0226】
従って、除霜モードのヒートポンプサイクル10では、圧縮機11が停止しているので、冷媒は循環しない。
【0227】
また、除霜モードの熱媒体回路20では、暖房モードと同様に、熱媒体が循環する。ところが、除霜モードでは、ヒートポンプサイクル10の圧縮機11を停止させているので、水冷媒熱交換器12にて、熱媒体が加熱されることはない。
【0228】
また、除霜モードの空調ユニット30では、図8の太線矢印で示すように、空気が各空気通路を流れる。
【0229】
第1入口側内外気切替装置32aから第1空気通路31aへ流入した空気(本実施形態では、外気)は、第1熱交換器15aを通過する。第1熱交換器15aを通過した空気は、第1出口側内外気切替装置33aおよび通風路切替装置35内の通風路を介して、室内送風機37の第1ファン37aおよび第2ファン37bへ吸入される。
【0230】
外気バイパス通路31eへ流入した外気は、通風路切替装置35内の通風路を介して、第1ファン37aへ吸入される。内気バイパス通路31fへ流入した内気は、通風路切替装置35内の通風路を介して、第2ファン37bへ吸入される。
【0231】
第1ファン37aへ吸入された空気は、上層側空気通路31cへ送風される。上層側空気通路31cへ送風された空気は、ヒータコア22へ流入する。第2ファン37bへ吸入された空気は、下層側空気通路31dへ送風される。下層側空気通路31dへ送風された空気は、ヒータコア22へ流入する。
【0232】
除霜モードでは、ヒートポンプサイクル10の圧縮機11を停止させているものの、比較的熱容量の大きい熱媒体に蓄えられた熱によって、ヒータコア22へ流入した空気が加熱される。
【0233】
そして、上層側空気通路31cのヒータコア22にて加熱された外気は、主にデフロスタ開口穴43aを介して、車両窓ガラス51の内側面へ向けて吹き出される。また、下層側空気通路31dのヒータコア22にて加熱された内気は、主にフット開口穴43cを介して、乗員の足下へ向けて吹き出される。これにより、車室内の暖房が継続される。
【0234】
第2入口側内外気切替装置32bから第2空気通路31bへ流入した内気は、第2熱交換器15bに放熱する。これにより、第2熱交換器15bに生じた霜が融解されて、第2熱交換器15bの除霜が実現される。第2熱交換器15bに放熱した空気は、第2出口側内外気切替装置33bを介して、排気送風機45へ吸入される。排気送風機45へ吸入された空気は、車室外側へ排気される。
【0235】
除霜モードでは、内気を熱源として第2熱交換器15bの除霜を行っているので、ヒートポンプサイクル10の圧縮機11を作動させて除霜のための熱を創出する構成に対して、除霜のために消費されるエネルギを低減することができる。
【0236】
以上の如く、本実施形態の車両用空調装置1によれば、運転モードを切り替えることによって、車室内の快適な空調を実現することができる。さらに、第2熱交換器15bに着霜が生じた際には、これを取り除くこともできる。
【0237】
これに加えて、本実施形態の車両用空調装置1によれば、暖房モード時に、第1入口側内外気切替装置32aが、内気を第1空気通路31aへ流入させる。第1出口側内外気切替装置33aが、第1熱交換器15aを通過した内気を車室外側へ流出させる。従って、第1熱交換器15aにて、内気の有する熱を冷媒に吸熱させることができる。
【0238】
さらに、暖房モード時に、第2入口側内外気切替装置32bが、外気を第2空気通路31bへ流入させる。第2出口側内外気切替装置33bが、第2熱交換器15bを通過した外気を車室外側へ流出させる。従って、第2熱交換器15bにて、外気の有する熱を冷媒に吸熱させることができる。
【0239】
従って、水冷媒熱交換器12では、冷媒が内気および外気から吸熱した熱を熱源として、熱媒体を加熱することができる。さらに、加熱部を形成するヒータコア22では、加熱された熱媒体と車室内へ送風される空気とを熱交換させて、車室内へ送風される空気を加熱することができる。
【0240】
つまり、冷媒が内気および外気から吸熱した熱を、車室内の暖房に利用することができる。その結果、冷媒が外気のみから吸熱した熱を車室内の暖房に利用する場合よりも、車室内の暖房のために消費されるエネルギを低減させることができる。
【0241】
ここで、本実施形態の車両用空調装置1のように、外気および内気から吸熱した熱を暖房に利用するためには、車室内の適切な暖房を実現できるように、外気および内気から冷媒に充分な熱を吸熱させる必要がある。
【0242】
そのため、ヒートポンプサイクル10では、第1熱交換器15aにおける冷媒蒸発温度、および第2熱交換器15bにおける冷媒蒸発温度を、運転条件に応じて適切に調整している。さらに、空調ユニット30では、充分な風量の内気を第1熱交換器15aへ流入させるとともに、充分な風量の外気を第2熱交換器15bへ流入させるように、排気送風機45の作動を制御している。
【0243】
また、本実施形態の車両用空調装置1では、暖房モード時に、外気通路ドア34aが外気バイパス通路31eを開くので、外気を第1熱交換器15aおよび第2熱交換器15bを迂回させて上層側空気通路31cへ導くことができる。そして、上層側空気通路31cのヒータコア22にて、内気よりも湿度の低い外気を加熱して、車両窓ガラス51の内側面へ向けて吹き出すことができる。従って、車両窓ガラス51の防曇性能を向上させることができる。
【0244】
さらに、内気通路ドア34bが内気バイパス通路31fを開くので、内気を第1熱交換器15aおよび第2熱交換器15bを迂回させて下層側空気通路31dへ導くことができる。そして、下層側空気通路31dのヒータコア22にて、外気よりも温度の高い内気を加熱して、乗員の足下へ向けて吹き出すことができる。従って、頭寒足熱型の快適な暖房を行うことができる。
【0245】
この際、車両窓ガラス51の防曇性能の向上および暖房のために消費されるエネルギの低減を両立させるように内外気比率が調整されていても、第1熱交換器15aにおける冷媒の吸熱量、および第2熱交換器15bにおける冷媒の吸熱量に影響を与えにくい。すなわち、車室内の暖房に利用可能な熱量に影響を与えにくい。
【0246】
その結果、本実施形態の車両用空調装置1では、内気および外気から吸熱した熱を車室内の暖房に利用する車両用空調装置であっても、車両窓ガラス51の防曇性能の向上および暖房のために消費されるエネルギの低減の両立を図ることができる。
【0247】
また、本実施形態の車両用空調装置1では、空調ユニット30の室内送風機37として、二連式の電動送風機を採用している。これによれば、予め第1ファン37aおよび第2ファン37bの寸法諸元を調整しておくことによって、内外気比率を適切な値に設定しやすい。
【0248】
また、本実施形態の車両用空調装置1では、空調ユニット30の排気送風機45が、第1空気通路31aおよび第2空気通路31bの空気流れ下流側に配置されている。すなわち、排気送風機45は、第1空気通路31aから流出した空気および第2空気通路31bから流出した空気の少なくとも一方を吸い込んで車室外へ送風する。これによれば、第1空気通路31aから車室外側へ排気される空気および第2空気通路31bから車室外側へ排気させる空気を共通する送風機で排気することができる。
【0249】
また、本実施形態の車両用空調装置1では、除霜モード時に、外気通路ドア34aが外気バイパス通路31eを開き、内気通路ドア34bが内気バイパス通路31fを開く。これによれば、比較的湿度の高い空気や臭気を含む空気が車室内へ送風されてしまうことを抑制することができる。
【0250】
より詳細には、本実施形態の車両用空調装置1では、暖房モード時に、ヒートポンプサイクル10の第1熱交換器15aを蒸発器として機能させる。このため、除霜モードの開始時には、第1熱交換器15aに凝縮水が付着している可能性がある。従って、除霜モード時に、第1空気通路31aへ空気を流入させると、凝縮水が蒸発して、比較的湿度の高い空気や臭気を含む空気が車室内へ送風されてしまう可能性がある。
【0251】
これに対して、本実施形態の車両用空調装置1では、外気通路ドア34aが外気バイパス通路31eを開くので、比較的湿度が低く臭気を含んでいない外気を上層側空気通路31cへ導くことができる。さらに、内気通路ドア34bが内気バイパス通路31fを開くので、臭気を含んでいない内気を下層側空気通路31dへ導くことができる。
【0252】
従って、除霜モード時に、第1熱交換部15aを通過した空気が湿度や臭気を含んでしまっても、比較的湿度が低く臭気を含んでいない外気および内気によって希釈することができる。その結果、車両窓ガラスの曇りの原因となる湿度の高い空気や、臭気を含む空気が車室内へ送風されてしまうことを抑制することができる。
【0253】
(第2実施形態)
本実施形態では、第1実施形態の車両用空調装置1に対して、図9図11に示すように、空調ユニット30の室内送風機37および排気送風機45等を廃止して、外気送風機46a、内気送風機46b、および上流側通風路切替装置47を追加した例を説明する。
【0254】
より具体的には、外気送風機46aは、外気を吸入して上流側通風路切替装置47の外気入口へ送風する外気送風部である。内気送風機46bは、内気を吸入して上流側通風路切替装置47の内気入口へ送風する内気送風部である。外気送風機46aおよび内気送風機46bの基本的構成は、排気送風機45と同様である。
【0255】
上流側通風路切替装置47は、外気送風機46aの吹出口と空調ユニット30内に形成された空気通路の接続態様を切り替えるとともに、内気送風機46b吹出口と空調ユニット30内に形成された空気通路の接続態様を切り替える上流側通風路切替部である。上流側通風路切替装置47の基本的構成は、第1実施形態で説明した通風路切替装置35の通風路切替部と同様である。
【0256】
なお、本実施形態では、説明の明確化のため、通風路切替装置35を下流側通風路切替装置35と記載する。
【0257】
より具体的には、上流側通風路切替装置47は、外気送風機46aから送風された外気を、第1空気通路31aの入口側、第2空気通路31bの入口側、および外気バイパス通路31eの入口側の少なくとも1つへ導くことができる。また、内気送風機46bから送風された内気を、第1空気通路31aの入口側、第2空気通路31bの入口側、および内気バイパス通路31fの入口側の少なくとも1つへ導くことができる。
【0258】
従って、本実施形態の空調ユニット30では、第1実施形態で説明した第1入口側内外気切替装置32aおよび第2入口側内外気切替装置32bが上流側通風路切替装置47の構成機器として一体化されている。換言すると、上流側通風路切替装置47では、第1入口側内外気切替装置32aおよび第2入口側内外気切替装置32bが、上流側通風路切替装置47の内部に形成された通風路を切り替える切替ドアに対応する構成となっている。
【0259】
また、本実施形態では、室内送風機37が廃止されているので、下流側通風路切替装置35は、第1入口部36aから内部へ流入させた空気を上層側空気通路31cの入口側および下層側空気通路31dの入口側の少なくとも一方へ導く。また、下流側通風路切替装置35は、第2入口部36bから内部へ流入させた空気を上層側空気通路31cの入口側および下層側空気通路31dの入口側の少なくとも一方へ導く。
【0260】
その他の空調ユニット30の構成および車両用空調装置1の構成は、第1実施形態と同様である。
【0261】
次に、上記構成における本実施形態の車両用空調装置1の作動を説明する。本実施形態の車両用空調装置1においても、第1実施形態と同様に、運転モードが切り替えられる。以下に、各運転モードの詳細作動について説明する。
【0262】
(1)冷房モード
冷房モードでは、制御装置60が、第1実施形態の冷房モードと同様に、ヒートポンプサイクル10の各構成機器、および熱媒体回路20の各構成機器の作動を制御する。
【0263】
また、制御装置60は、目標送風能力を発揮するように外気送風機46aを作動させる。冷房モード時の外気送風機46aの目標送風能力は、第1実施形態と同様に、目標吹出温度TAOに基づいて、予め制御装置60に記憶されている制御マップを参照して、車室内へ送風される空気の風量が第1実施形態と同等となるように決定される。
【0264】
また、制御装置60は、外気送風機46aから送風された外気を、第1空気通路31aおよび第2空気通路31bの双方へ流入させるように、上流側通風路切替装置47内の通風路を切り替える。また、制御装置60は、第1実施形態の冷房モードと同様に、その他の空調ユニット30の各構成機器の作動を制御する。
【0265】
従って、冷房モードのヒートポンプサイクル10および熱媒体回路20は、第1実施形態の冷房モードと同様に作動する。また、冷房モードの空調ユニット30では、図9の太線矢印で示すように、第1空気通路31aおよび第2空気通路31bへ流入した空気が、第1実施形態の冷房モードと同様に各空気通路を流れる。従って、第1実施形態と同様に、車室内の冷房が実現される。
【0266】
(2)除湿暖房モード
除湿暖房モードでは、制御装置60が、第1実施形態の除湿暖房モードと同様に、ヒートポンプサイクル10の各構成機器、および熱媒体回路20の各構成機器の作動を制御する。また、制御装置60は、冷房モードと同様に、その他の空調ユニット30の構成機器の作動を制御する。
【0267】
従って、除湿暖房モードのヒートポンプサイクル10および熱媒体回路20は、第1実施形態の除湿暖房モードと同様に作動する。また、除湿暖房モードの空調ユニット30では、図9の太線矢印で示すように、第1空気通路31aおよび第2空気通路31bへ流入した空気が、第1実施形態の除湿暖房モードと同様に各空気通路を流れる。従って、第1実施形態と同様に、車室内の除湿暖房が実現される。
【0268】
(3)暖房モード
暖房モードでは、制御装置60が、第1実施形態の暖房モードと同様に、ヒートポンプサイクル10の各構成機器、および熱媒体回路20の各構成機器の作動を制御する。
【0269】
また、制御装置60は、目標送風能力を発揮するように外気送風機46aおよび内気送風機46bを作動させる。暖房モード時の外気送風機46aおよび内気送風機46bの目標送風能力は、それぞれ目標吹出温度TAOに基づいて、予め制御装置60に記憶されている制御マップを参照して決定される。
【0270】
暖房モードの制御マップでは、車室内へ送風される空気の風量が第1実施形態と同等となるように、外気送風機46aおよび内気送風機46bの目標送風能力が決定される。
【0271】
また、制御装置60は、目標吹出温度TAOに基づいて、予め制御装置60に記憶されている制御マップを参照して、外気通路ドア34aおよび内気通路ドア34bの開度を決定する。暖房モードの制御マップでは、車両窓ガラスの防曇性能の向上効果および消費エネルギの低減効果の双方を得られる適切な内外気比率となるように、外気通路ドア34aおよび内気通路ドア34bの開度が決定される。
【0272】
また、制御装置60は、外気送風機46aから送風された外気を、第2空気通路31bおよび外気バイパス通路31eの双方へ流入させるように、上流側通風路切替装置47内の通風路を切り替える。また、制御装置60は、内気送風機46bから送風された内気を、第1空気通路31aおよび内気バイパス通路31fの双方へ流入させるように、上流側通風路切替装置47内の通風路を切り替える。
【0273】
また、制御装置60は、第1実施形態の暖房モードと同様に、その他の空調ユニット30の各構成機器の作動を制御する。
【0274】
従って、暖房モードのヒートポンプサイクル10および熱媒体回路20は、第1実施形態の暖房モードと同様に作動する。
【0275】
また、暖房モードの空調ユニット30では、図10の太線矢印で示すように、第1空気通路31a、第2空気通路31b、外気バイパス通路31eおよび内気バイパス通路31fへ流入した空気が、第1実施形態の暖房モードと同様に各空気通路を流れる。従って、第1実施形態の暖房モードと同様に、車室内の暖房が実現される。
【0276】
(4)除霜モード
除霜モードでは、制御装置60が、第1実施形態の除霜モードと同様に、ヒートポンプサイクル10の圧縮機11を停止させる。また、制御装置60は、第1実施形態の除霜モードと同様に、熱媒体回路20の各構成機器の作動を制御する。
【0277】
また、制御装置60は、暖房モードと同様に、外気送風機46aの送風能力および内気送風機46bの送風能力を決定する。
【0278】
また、制御装置60は、外気送風機46aから送風された外気を、第1空気通路31aおよび外気バイパス通路31eの双方の入口側へ流入させるように、上流側通風路切替装置47内の通風路を切り替える。また、制御装置60は、内気送風機46bから送風された内気を、第2空気通路31bおよび内気バイパス通路31fの双方の入口側へ流入させるように、上流側通風路切替装置47内の通風路を切り替える。
【0279】
また、制御装置60は、第1実施形態の除霜モードと同様に、その他の空調ユニット30の各構成機器の作動を制御する。
【0280】
従って、除霜モードのヒートポンプサイクル10では、冷媒は循環しない。また、除霜モードの熱媒体回路20では、第1実施形態の除霜モードと同様に作動する。
【0281】
また、除霜モードの空調ユニット30では、図11の太線矢印で示すように、第1空気通路31a、第2空気通路31b、外気バイパス通路31eおよび内気バイパス通路31fへ流入した外気が、第1実施形態の除霜モードと同様に各空気通路を流れる。従って、第1実施形態の除霜モードと同様に、第2熱交換器15bの除霜がなされるとともに、車室内の暖房が継続される。
【0282】
以上の如く、本実施形態の車両用空調装置1によれば、運転モードを切り替えることによって、車室内の快適な空調を実現することができる。さらに、第2熱交換器15bに着霜が生じた際には、これを取り除くこともできる。
【0283】
これに加えて、本実施形態の車両用空調装置1では、暖房モード時に、第1実施形態と同様に、冷媒が内気および外気から吸熱した熱を利用して、車室内の暖房を行うことができる。従って、冷媒が外気のみから吸熱した熱を車室内の暖房に利用する場合よりも、車室内の暖房のために消費されるエネルギを低減させることができる。
【0284】
また、暖房モード時に、外気通路ドア34aが外気バイパス通路31eを開くので、外気を第1熱交換器15aおよび第2熱交換器15bを迂回させて上層側空気通路31cへ導くことができる。従って、第1実施形態と同様に、車両窓ガラス51の防曇性能を向上させることができる。
【0285】
さらに、内気通路ドア34bが内気バイパス通路31fを開くので、内気を第1熱交換器15aおよび第2熱交換器15bを迂回させて下層側空気通路31dへ導くことができる。従って、第1実施形態と同様に、頭寒足熱型の快適な暖房を実現することができる。
【0286】
この際、車両窓ガラス51の防曇性能の向上および暖房のために消費されるエネルギの低減を両立させるように内外気比率が設定されていても、第1熱交換器15aにおける冷媒の吸熱量、および第2熱交換器15bにおける冷媒の吸熱量に影響を与えにくい。すなわち、車室内の暖房に利用可能な熱量に影響を与えにくい。
【0287】
その結果、本実施形態の車両用空調装置1では、第1実施形態と同様の効果を得ることができる。すなわち、内気および外気から吸熱した熱を車室内の暖房に利用する車両用空調装置であっても、車両窓ガラス51の防曇性能の向上および暖房のために消費されるエネルギの低減の両立を図ることができる。また、除霜モード時には、湿度や臭気を含む空気が車室内へ送風されてしまうことを抑制することができる。
【0288】
また、本実施形態の車両用空調装置1では、外気通路ドア34a、内気通路ドア34b、および上流側通風路切替装置47を備えている。このため、外気送風機46aは、第2空気通路31bの入口側および外気バイパス通路31eの入口側の少なくとも一方へ外気を送風可能となっている。また、内気送風機46bは、第1空気通路31aの入口側および内気バイパス通路31fの入口側の少なくとも一方へ内気を送風可能となっている。これによれば、内外気比率を容易に適切な値に調整することができる。
【0289】
(第3実施形態)
本実施形態では、第1実施形態の車両用空調装置1に対して、図12に示すように、空調ユニット30の内気バイパス通路31fおよび内気通路ドア34bを廃止した例を説明する。なお、図12は、第1実施形態で説明した図3に対応する図面である。その他の空調ユニット30の構成および車両用空調装置1の構成は、第1実施形態と同様である。
【0290】
次に、上記構成における本実施形態の車両用空調装置1の作動を説明する。本実施形態の車両用空調装置1においても、第1実施形態と同様に、運転モードが切り替えられる。以下に、各運転モードの詳細作動について説明する。
【0291】
(1)冷房モードおよび(2)除湿暖房モード
冷房モードおよび除湿暖房モードでは、制御装置60が、第1実施形態の冷房モードおよび除湿暖房モードと同様に、ヒートポンプサイクル10、熱媒体回路20、および空調ユニット30の各構成機器の作動を制御する。このため、制御装置60は、外気通路ドア34aが外気バイパス通路31eを閉塞するように、外気通路ドア34aの駆動用アクチュエータへ出力される制御信号を決定する。
【0292】
従って、冷房モードおよび除湿暖房モードのヒートポンプサイクル10および熱媒体回路20は、第1実施形態と同様に作動する。また、冷房モードおよび除湿暖房モードの空調ユニット30では、図13の太線矢印で示すように、第1空気通路31aおよび第2空気通路31bへ流入した空気が各空気通路を流れる。従って、第1実施形態と同様に、車室内の冷房および除湿暖房が実現される。
【0293】
(3)暖房モード
暖房モードでは、制御装置60が、第1実施形態の暖房モードと同様に、ヒートポンプサイクル10の各構成機器、および熱媒体回路20の各構成機器の作動を制御する。
【0294】
また、制御装置60は、第1熱交換器15aを通過した空気を車室外流出用の開口部および車室内流出用の開口部の双方から流出させるように、空調ユニット30の第1出口側内外気切替装置33aの作動を制御する。
【0295】
また、制御装置60は、外気バイパス通路31eから流出した空気を、室内送風機37の第1ファン37aへ吸入させるように通風路切替装置35内の通風路を切り替える。さらに、第1出口側内外気切替装置33aの車室内流出用の開口部から流出した空気を第2ファン37bへ吸入させるように、通風路切替装置35内の通風路を切り替える。
【0296】
また、制御装置60は、第1実施形態の暖房モードと同様に、その他の空調ユニット30の構成機器の作動を制御する。
【0297】
従って、暖房モードのヒートポンプサイクル10および熱媒体回路20は、第1実施形態の暖房モードと同様に作動する。
【0298】
また、暖房モードの空調ユニット30では、図14の太線矢印で示すように、第1空気通路31a、第2空気通路31b、および外気バイパス通路31eへ流入した空気が各空気通路を流れる。
【0299】
第1入口側内外気切替装置32aから第1空気通路31aへ流入した空気(本実施形態では、内気)は、第1熱交換器15aを通過する際に冷媒と熱交換して吸熱される。
【0300】
第1熱交換器15aにて冷却された一部の空気は、第1出口側内外気切替装置33aおよび排気バイパス通路31gを介して、排気送風機45へ吸入される。第1熱交換器15aにて冷却された残余の空気は、通風路切替装置35内の通風路を介して、第2ファン37bへ吸入される。
【0301】
第2入口側内外気切替装置32bから第2空気通路31bへ流入した空気(本実施形態では、外気)は、第1実施形態の暖房モードと同様に、第2熱交換器15bを通過する際に冷媒と熱交換して吸熱される。第2熱交換器15bにて冷却された空気は、排気送風機45へ吸入されて、車室外側へ排気される。
【0302】
外気バイパス通路31eへ流入した外気は、通風路切替装置35内の通風路を介して、第1ファン37aへ吸入される。
【0303】
第1ファン37aから送風された外気は、第1実施形態の暖房モードと同様に、上層側空気通路31cを介して、車両窓ガラス51の内側面へ向けて吹き出される。また、第2ファン37bから送風された内気は、第1実施形態の暖房モードと同様に、下層側空気通路31dおよびフット開口穴43cを介して、乗員の足下へ向けて吹き出される。これにより、車室内の暖房が実現される。
【0304】
(4)除霜モード
除霜モードでは、制御装置60が、第1実施形態の除霜モードと同様に、ヒートポンプサイクル10の圧縮機11を停止させる。また、制御装置60は、第1実施形態の除霜モードと同様に、熱媒体回路20および空調ユニット30の各構成機器の作動を制御する。
【0305】
従って、除霜モードのヒートポンプサイクル10では、冷媒は循環しない。また、除霜モードの熱媒体回路20では、第1実施形態の除霜モードと同様に作動する。
【0306】
また、除霜モードの空調ユニット30では、図15の太線矢印で示すように、第1空気通路31a、第2空気通路31b、および外気バイパス通路31eへ流入した空気が各空気通路を流れる。
【0307】
第1入口側内外気切替装置32aから第1空気通路31aへ流入した空気(本実施形態では、外気)は、第1実施形態の除霜モードと同様に、室内送風機37の第1ファン37aおよび第2ファン37bへ吸入される。外気バイパス通路31eへ流入した外気は、第1実施形態の除霜モードと同様に、第1ファン37aへ吸入される。
【0308】
第1ファン37aから上層側空気通路31cへ送風された空気および第2ファン37bから下層側空気通路31dへ送風された空気は、第1実施形態の除霜モードと同様に、ヒータコア22にて、熱媒体に蓄えらえた熱によって加熱されて、車室内へ吹き出される。これにより、車室内の暖房が継続される。
【0309】
第2入口側内外気切替装置32bから第2空気通路31bへ流入した内気は、第1実施形態の除霜モードと同様に、第2空気通路31bを流れる。従って、第1実施形態と同様に、車室内の冷房および除湿暖房が実現される。従って、第1実施形態の除霜モードと同様に、第2熱交換器15bの除霜がなされる。
【0310】
以上の如く、本実施形態の車両用空調装置1によれば、運転モードを切り替えることによって、車室内の快適な空調を実現することができる。さらに、第2熱交換器15bに着霜が生じた際には、これを取り除くこともできる。
【0311】
これに加えて、本実施形態の車両用空調装置1では、暖房モード時に、第1実施形態と同様に、冷媒が内気および外気から吸熱した熱を利用して、車室内の暖房を行うことができる。従って、冷媒が外気のみから吸熱した熱を車室内の暖房に利用する場合よりも、車室内の暖房のために消費されるエネルギを低減させることができる。
【0312】
また、暖房モード時に、外気通路ドア34aが外気バイパス通路31eを開くので、外気を第1熱交換器15aおよび第2熱交換器15bを迂回させて上層側空気通路31cへ導くことができる。従って、第1実施形態と同様に、車両窓ガラス51の防曇性能を向上させることができる。
【0313】
さらに、第1熱交換器15aを通過した内気の一部を下層側空気通路31dへ導くことができる。従って、第1実施形態と同様に、頭寒足熱型の快適な暖房を実現することができる。
【0314】
この際、車両窓ガラス51の防曇性能の向上、および暖房のために消費されるエネルギの低減を両立させるように内外気比率が設定あるいは調整されていても、外気バイパス通路31eへ流入する外気の風量を調整することで、第1熱交換器15aにおける冷媒の吸熱量、および第2熱交換器15bにおける冷媒の吸熱量に影響を与えにくい。すなわち、車室内の暖房に利用可能な熱量に影響を与えにくい。
【0315】
その結果、本実施形態の車両用空調装置1では、内気および外気から吸熱した熱を車室内の暖房に利用する車両用空調装置であっても、車両窓ガラス51の防曇性能の向上および暖房のために消費されるエネルギの低減の両立を図りやすい。また、除霜モード時には、湿度や臭気を含む空気が車室内へ送風されてしまうことを抑制することができる。
【0316】
(第4実施形態)
本実施形態では、第3実施形態の車両用空調装置1に対して、図16図18に示すように、第2実施形態と同様に、空調ユニット30の室内送風機37および排気送風機45等を廃止している。そして、外気送風機46a、内気送風機46b、および上流側通風路切替装置47を追加した例を説明する。その他の空調ユニット30の構成および車両用空調装置1の構成は、第1実施形態と同様である。
【0317】
次に、上記構成における本実施形態の車両用空調装置1の作動を説明する。本実施形態の車両用空調装置1においても、第1実施形態と同様に、運転モードが切り替えられる。以下に、各運転モードの詳細作動について説明する。
【0318】
(1)冷房モードおよび(2)除湿暖房モード
冷房モードおよび除湿暖房モードでは、制御装置60が、第3実施形態の冷房モードおよび除湿暖房モードと同様に、ヒートポンプサイクル10の各構成機器、および熱媒体回路20の各構成機器の作動を制御する。
【0319】
また、制御装置60は、外気送風機46aから送風された外気を、第1空気通路31aおよび第2空気通路31bの双方へ流入させるように、上流側通風路切替装置47内の通風路を切り替える。また、制御装置60は、第3実施形態の冷房モードおよび除湿暖房モードと同様に、その他の空調ユニット30の各構成機器の作動を制御する。
【0320】
従って、冷房モードおよび除湿暖房モードのヒートポンプサイクル10および熱媒体回路20は、第3実施形態と同様に作動する。また、冷房モードおよび除湿暖房モードの空調ユニット30では、図16の太線矢印で示すように、第1空気通路31aおよび第2空気通路31bへ流入した空気が各空気通路を流れる。従って、第3実施形態と同様に、車室内の冷房および除湿暖房が実現される。
【0321】
(3)暖房モード
暖房モードでは、制御装置60が、第3実施形態の暖房モードと同様に、ヒートポンプサイクル10の各構成機器、および熱媒体回路20の各構成機器の作動を制御する。
【0322】
また、制御装置60は、外気送風機46aから送風された外気を、第2空気通路31bおよび外気バイパス通路31eの双方へ流入させるように、上流側通風路切替装置47内の通風路を切り替える。また、制御装置60は、内気送風機46bから送風された内気を、第1空気通路31aへ流入させるように、上流側通風路切替装置47内の通風路を切り替える。
【0323】
また、制御装置60は、第3実施形態の暖房モードと同様に、その他の空調ユニット30の各構成機器の作動を制御する。
【0324】
従って、暖房モードのヒートポンプサイクル10および熱媒体回路20は、第3実施形態と同様に作動する。また、暖房モードの空調ユニット30では、図17の太線矢印で示すように、第1空気通路31a、第2空気通路31b、および外気バイパス通路31eへ流入した空気が各空気通路を流れる。従って、第3実施形態と同様に、車室内の暖房が実現される。
【0325】
(4)除霜モード
除霜モードでは、制御装置60が、第3実施形態の暖房モードと同様に、ヒートポンプサイクル10の各構成機器、および熱媒体回路20の各構成機器の作動を制御する。
【0326】
また、制御装置60は、外気送風機46aから送風された外気を、第1空気通路31aおよび外気バイパス通路31eの双方へ流入させるように、上流側通風路切替装置47内の通風路を切り替える。また、制御装置60は、内気送風機46bから送風された内気を、第2空気通路31bへ流入させるように、上流側通風路切替装置47内の通風路を切り替える。
【0327】
また、制御装置60は、第3実施形態の暖房モードと同様に、その他の空調ユニット30の各構成機器の作動を制御する。
【0328】
従って、冷房モードおよび除湿暖房モードのヒートポンプサイクル10および熱媒体回路20は、第3実施形態と同様に作動する。また、冷房モードおよび除湿暖房モードの空調ユニット30では、図17の太線矢印で示すように、第1空気通路31a、第2空気通路31b、および外気バイパス通路31eへ流入した空気が各空気通路を流れる。従って、第3実施形態と同様に、車室内の暖房が実現される。
【0329】
従って、除霜モードのヒートポンプサイクル10では、冷媒は循環しない。また、除霜モードの熱媒体回路20では、第3実施形態の除霜モードと同様に作動する。
【0330】
また、除霜モードの空調ユニット30では、図18の太線矢印で示すように、第1空気通路31a、第2空気通路31b、および外気バイパス通路31eへ流入した空気が各空気通路を流れる。従って、第3実施形態と同様に、第2熱交換器15bの除霜がなされるとともに、車室内の暖房が継続される。
【0331】
以上の如く、本実施形態の車両用空調装置1によれば、運転モードを切り替えることによって、車室内の快適な空調を実現することができる。さらに、第2熱交換器15bに着霜が生じた際には、これを取り除くこともできる。
【0332】
さらに、本実施形態の車両用空調装置1では、第3実施形態と同様の効果を得ることができる。すなわち、暖房モード時には、車両窓ガラス51の防曇性能の向上および暖房のために消費されるエネルギの低減の両立を図りやすい。また、除霜モード時には、湿度や臭気を含む空気が車室内へ送風されてしまうことを抑制することができる。
【0333】
(第5実施形態)
本実施形態では、第1実施形態の車両用空調装置1に対して、図19図22に示すように、空調ユニット30の外気バイパス通路31e、内気バイパス通路31f、外気通路ドア34a、内気通路ドア34b、および仕切板39を廃止した例を説明する。なお、図19図20図22は、それぞれ第1実施形態で説明した図1図6図8に対応する図面である。
【0334】
本実施形態の空調ユニット30では、仕切板39が廃止されているので、第1実施形態で説明した上層側空気通路31cおよび下層側空気通路31dが、1つの室内側空気通路31hとなっている。その他の空調ユニット30の構成および車両用空調装置1の構成は、第1実施形態と同様である。
【0335】
次に、上記構成における本実施形態の車両用空調装置1の作動を説明する。本実施形態の車両用空調装置1においても、第1実施形態と同様に、運転モードが切り替えられる。以下に、各運転モードの詳細作動について説明する。
【0336】
(1)冷房モードおよび(2)除湿暖房モード
冷房モードおよび除湿暖房モードでは、制御装置60が、第1実施形態の冷房モードおよび除湿暖房モードと同様に、ヒートポンプサイクル10の各構成機器、熱媒体回路20、および空調ユニット30の各構成機器の作動を制御する。
【0337】
ここで、本実施形態の空調ユニット30では、外気バイパス通路31eおよび内気バイパス通路31fが廃止されている。このため、本実施形態の空調ユニット30では、第1実施形態の空調ユニット30において、外気通路ドア34aが外気バイパス通路31eを閉塞させ、内気通路ドア34bが内気バイパス通路31fを閉塞させた状態と同様に空気が流れる。
【0338】
従って、冷房モードおよび除湿暖房モードのヒートポンプサイクル10および熱媒体回路20は、第1実施形態と同様に作動する。また、冷房モードおよび除湿暖房モードの空調ユニット30では、図20の太線矢印で示すように、第1空気通路31aおよび第2空気通路31bへ流入した空気が各空気通路を流れる。従って、第1実施形態と同様に、車室内の冷房および除湿暖房が実現される。
【0339】
(3)暖房モード
暖房モードでは、制御装置60が、ヒートポンプサイクル10の第1膨張弁14aを全開状態とする。
【0340】
また、制御装置60は、空調ユニット30の第1空気通路31aへ内気を流入させるように、第1入口側内外気切替装置32aの作動を制御する。また、制御装置60は、第1熱交換器15aを通過した全流量の空気を車室内流出用の開口部から流出させるように、第1出口側内外気切替装置33aの作動を制御する。
【0341】
また、制御装置60は、第2空気通路31bへ外気および内気の少なくとも一方を流入させるように、第2入口側内外気切替装置32bの作動を制御する。より詳細には、本実施形態の制御装置60は、内気温Trの上昇に伴って、第2空気通路31bへ流入させる内気の割合を増加させる。
【0342】
また、制御装置60は、第2熱交換器15bを通過した全流量の空気を車室外流出用の開口部から流出させるように、第2出口側内外気切替装置33bの作動を制御する。また、制御装置60は、第1実施形態の暖房モードと同様に、その他のヒートポンプサイクル10、熱媒体回路20、および空調ユニット30の各構成機器の作動を制御する。
【0343】
従って、暖房モードのヒートポンプサイクル10では、圧縮機11から吐出された高圧冷媒が、水冷媒熱交換器12の冷媒通路へ流入する。水冷媒熱交換器12の冷媒通路へ流入した冷媒は、熱媒体通路を流通する熱媒体と熱交換する。水冷媒熱交換器12では、冷媒が熱媒体に放熱して凝縮する。
【0344】
水冷媒熱交換器12の冷媒通路から流出した冷媒は、レシーバ13へ流入して気液分離される。レシーバ13にて分離された液相冷媒は、全開となっている第1膨張弁14aを介して、第1熱交換器15aへ流入する。
【0345】
第1熱交換器15aへ流入した液相冷媒は、空調ユニット30の第1空気通路31aへ流入した空気(本実施形態では、外気)と熱交換する。第1熱交換器15aでは、液相冷媒が空気と熱交換して過冷却される。第1熱交換器15aから流出した冷媒は、第2膨張弁14bへ流入して減圧される。第2膨張弁14bにて減圧された低圧冷媒は、第2熱交換器15bへ流入する。
【0346】
第2熱交換器15bへ流入した冷媒は、空調ユニット30の第2空気通路31bへ流入した空気(本実施形態では、外気および内気の少なくとも一方)と熱交換する。第2熱交換器15bでは、冷媒が空気から吸熱して蒸発する。これにより、第2空気通路31bを流通する空気が冷却される。第2熱交換器15bから流出した冷媒は、圧縮機11に吸入されて再び圧縮される。
【0347】
また、暖房モードの熱媒体回路20では、第1実施形態と同様に、目標熱媒体温度TWOに近づくように温度調整された熱媒体が、ヒータコア22へ流入する。
【0348】
また、暖房モードの室内空調ユニット30では、図21の太線矢印で示すように、空気が各空気通路を流れる。
【0349】
具体的には、第1入口側内外気切替装置32aから第1空気通路31aへ流入した空気(本実施形態では、外気)は、第1熱交換器15aを通過する際に冷媒と熱交換して加熱される。第1熱交換器15aにて加熱された空気は、第1出口側内外気切替装置33aおよび通風路切替装置35内の通風路を介して、室内送風機37の第1ファン37aおよび第2ファン37bへ吸入される。
【0350】
第1ファン37aおよび第2ファン37bへ吸入された空気は、室内側空気通路31hへ送風される。室内側空気通路31hへ送風された空気は、ヒータコア22へ流入する。ヒータコア22へ流入した空気は熱媒体回路20を循環する熱媒体と熱交換して、さらに加熱される。
【0351】
ヒータコア22にて加熱された空気の一部は、デフロスタ開口穴43aを介して、車両窓ガラス51の内側面へ向けて吹き出される。さらに、ヒータコア22にて加熱された残余の空気は、フット開口穴43cを介して、乗員の足下へ向けて吹き出される。これにより、車室内の暖房が実現される。
【0352】
第2入口側内外気切替装置32bから第2空気通路31bへ流入した空気(本実施形態では、外気または内気の少なくとも一方)は、第2熱交換器15bを通過する際に冷媒と熱交換して吸熱される。第2熱交換器15bにて冷却された空気は、第2出口側内外気切替装置33bを介して、排気送風機45へ吸入される。排気送風機45へ吸入された空気は、車室外側へ排気される。
【0353】
(4)除霜モード
除霜モードでは、制御装置60が、第1実施形態の除霜モードと同様に、ヒートポンプサイクル10の圧縮機11を停止させる。また、制御装置60は、第2空気通路31bへ内気を流入させるように、第2入口側内外気切替装置32bの作動を制御する。また、制御装置60は、暖房モードと同様に、熱媒体回路20および空調ユニット30の各構成機器の作動を制御する。
【0354】
従って、除霜モードのヒートポンプサイクル10では、冷媒は循環しない。また、除霜モードの熱媒体回路20では、第1実施形態の除霜モードと同様に作動する。
【0355】
また、除霜モードの空調ユニット30では、図22の太線矢印で示すように、第1空気通路31a、および第2空気通路31bへ流入した空気が各空気通路を流れる。
【0356】
第1入口側内外気切替装置32aから第1空気通路31aへ流入した空気(本実施形態では、外気)は、暖房モードと同様に、室内側空気通路31hへ送風される。室内側空気通路31hへ送風された空気は、ヒータコア22にて、熱媒体に蓄えらえた熱によって加熱されて、車室内へ吹き出される。これにより、車室内の暖房が継続される。
【0357】
第2入口側内外気切替装置32bから第2空気通路31bへ流入した内気は、第1実施形態の除霜モードと同様に、第2空気通路31bを流れる。従って、第1実施形態と同様に、車室内の冷房および除湿暖房が実現される。従って、第1実施形態の除霜モードと同様に、第2熱交換器15bの除霜がなされる。
【0358】
ここで、本実施形態の暖房モードでは、内気温Trの上昇に伴って、第2熱交換器15bへ流入させる内気の割合を増加させる。このため、内気温Trがある程度上昇してしまうと、第2熱交換器15bに着霜が生じる可能性は低い。従って、本実施形態の除霜モードは、暖房モードの開始直後のような、内気温Trの上昇過程で、第2熱交換器15bに着霜が生じた場合に実行される。
【0359】
以上の如く、本実施形態の車両用空調装置1によれば、運転モードを切り替えることによって、車室内の快適な空調を実現することができる。さらに、第2熱交換器15bに着霜が生じた際には、これを取り除くこともできる。
【0360】
これに加えて、本実施形態の車両用空調装置1によれば、暖房モード時に、第2入口側内外気切替装置32bが、外気および内気の少なくとも一方を第2空気通路31bへ流入させる。第2出口側内外気切替装置33bが、第2熱交換器15bを通過した外気および内気の少なくとも一方を車室外へ流出させる。
【0361】
従って、第2熱交換器15bにて、外気および内気の少なくとも一方が有する熱を冷媒に吸熱させることができる。そして、第1実施形態と同様に、冷媒が外気および内気の少なくとも一方から吸熱した熱を、車室内の暖房に利用することができる。そして、第2空気通路31bへ流入させる内気の割合を増加させるに伴って、車室内の暖房のために消費されるエネルギを低減させることができる。
【0362】
また、暖房モード時に、外気を第1空気通路31aへ流入させて、室内側空気通路31hを介して、車室内側へ導いている。これによれば、第1熱交換器15aおよびヒータコア20の双方にて、内気よりも湿度の低い外気を加熱して、車室内へ吹き出すことができる。従って、車両窓ガラス51の防曇性能を向上させることができる。
【0363】
この際、車室内の適切な暖房を行うために、第1空気通路31aへ流入させる外気の風量を調整しても、第2熱交換器15bにおける冷媒の吸熱量に影響を与えにくい。すなわち、車室内の暖房に利用可能な熱量に影響を与えにくい。
【0364】
その結果、本実施形態の車両用空調装置1では、内気および外気から吸熱した熱を車室内の暖房に利用する車両用空調装置であっても、車両窓ガラス51の防曇性能の向上および暖房のために消費されるエネルギの低減の両立を図ることができる。
【0365】
また、本実施形態の車両用空調装置1では、第1熱交換器15aにて外気を加熱し、第1熱交換器15aにて加熱された外気をヒータコア20にてさらに加熱して、車室内へ吹き出している。換言すると、本実施形態の車両用空調装置1では、車室内へ送風される送風空気を第1熱交換器15aおよびヒータコア20にて、段階的に加熱することができる。従って、車室内へ送風される送風空気を効率的に加熱することができる。
【0366】
また、本実施形態の暖房モードでは、内気温Trの上昇に伴って、第2空気通路31bへ流入させる内気の割合を増加させる。これによれば、暖房開始時のように、内気温Trが外気温Tamに近くなっている際には、内気が過度に第2空気通路31bへ流入してしまうことを抑制することができる。従って、内気温Trの上昇を妨げてしまうことを抑制して、即効性の高い暖房を実現することができる。
【0367】
さらに、内気温Trが上昇した際には、第2空気通路31bへ流入させる内気の割合を増加させることによって、第2熱交換器15bにおける冷媒の吸熱量を増加させることができる。その結果、図23に示すように、車室内の暖房のために消費されるエネルギを低減させるとともに、暖房能力を向上させることができる。図23は、第2熱交換器15bへ流入する空気の温度である吸熱用空気温度に対する暖房能力の変化を示している。
【0368】
(他の実施形態)
本発明は上述の実施形態に限定されることなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で、以下のように種々変形可能である。
【0369】
(1)上述の実施形態では、種々の運転モードを実行可能な車両用空調装置について説明したが、これに限定されない。少なくとも暖房モードを実施することができれば、車両窓ガラスの防曇性能の向上および暖房のために消費されるエネルギの低減の両立を図ることができる。さらに、その他の運転モードを追加してもよい。
【0370】
また、上述の実施形態では、冷房モード時および除湿暖房モード時に、第2空気通路31bへ外気を流入させる例を説明したが、これに限定されない。例えば、目標吹出温度TAOが極適温域になっており、高い冷房性能や除湿暖房性能を得たい場合等には、第2空気通路31bへ内気を流入させてもよい。この場合、第2実施形態および第4実施形態の車両用空調装置1では、内気送風機46bを作動させればよい。
【0371】
また、上述の実施形態では、除霜モード時に、第1空気通路31aへ外気を流入させる例を説明したが、これに限定されない。除霜モード時に、第1空気通路31aへ内気を流入させてもよい。また、除霜モードでは、フット開口穴43cを開口させて、デフロスタ開口穴43aを閉塞させてもよい。
【0372】
また、上述の実施形態では、除霜モード時に、外気バイパス通路31eおよび内気バイパス通路31fを全開とした例を説明したが、これに限定されない。比較的湿度の高い空気や臭気を含む空気が車室内へ送風されてしまうことがなければ、外気バイパス通路31eおよび内気バイパス通路31fを全閉としてもよい。さらに、車室内へ送風されてしまう比較的湿度の高い空気や臭気を含む空気の風量に応じて、外気バイパス通路31eおよび内気バイパス通路31fの少なくとも一方を調整するようにしてもよい。
【0373】
また、着霜条件は、上述の実施形態に開示された条件に限定されない。例えば、暖房モード時に、外気温Tamが連続して基準着霜外気温(本実施形態では、-5℃)以下となっている時間が、基準着霜時間(本実施形態では、5分)以上となった際に、着霜条件が成立したと判定してもよい。
【0374】
また、第4実施形態では、暖房モード時に、制御装置60が、湿度センサ61jの検出値が車両窓ガラス51に窓曇りが発生しない範囲の値となるように、第1出口側内外気切替装置33aおよび外気通路ドア34aの駆動用アクチュエータの少なくとも一方の作動を制御してもよい。
【0375】
(2)ヒートポンプサイクル10の構成は、上述の実施形態に開示されたものに限定されない。
【0376】
例えば、第1~第4実施形態では、レシーバ13を採用した例を説明したが、レシーバ13に代えて、アキュムレータを採用してもよい。アキュムレータは、15bから流出した低圧冷媒の気液を分離して、分離された液相冷媒をサイクル内の余剰冷媒として蓄え、分離された気相冷媒を圧縮機11へ吸入させる高圧側の気液分離器である。
【0377】
この場合は、各運転モード時に、ヒートポンプサイクル10の成績係数(すなわち、COP)が極大値に近づくように、第1膨張弁14aおよび第2膨張弁14bの作動を制御すればよい。
【0378】
また、上述の実施形態では、冷媒としてR1234yfを採用した例を説明したが、冷媒はこれに限定されない。例えば、R134a、R600a、R410A、R404A、R32、R407C等を採用してもよい。または、これらのうち複数の冷媒を混合させた混合冷媒等を採用してもよい。
【0379】
(3)熱媒体回路20は、上述の実施形態に開示されたものに限定されない。
【0380】
例えば、熱媒体ポンプ21を第1流量調整弁24aから水冷媒熱交換器12の熱媒体通路へ至る流路に配置してもよい。また、第1流量調整弁24aに代えて、電気式の三方弁を採用してもよい。
【0381】
また、熱媒体回路20に、熱媒体を加熱する補助加熱部を配置してもよい。補助加熱部として、制御装置60から電力を供給されることによって発熱する電気ヒータを採用することができる。そして、制御装置60は、水冷媒熱交換器12にて熱媒体を充分に加熱することができない場合に、熱媒体温度Twが、目標熱媒体温度TWOに近づくように、電気ヒータを作動させればよい。
【0382】
また、上述の実施形態では、熱媒体としてエチレングリコール水溶液を採用した例を説明したが、熱媒体はこれに限定されない。例えば、ジメチルポリシロキサン、あるいはナノ流体等を含む溶液、不凍液、アルコール等を含む水系の液冷媒、オイル等を含む液媒体等を採用することができる。
【0383】
(4)空調ユニット30は、上述の実施形態に開示されたものに限定されない。
【0384】
例えば、空調ユニット30の上層側空気通路31c内および下層側空気通路31d内のそれぞれに、ヒータコア22を迂回させて空気を流す空気バイパス通路を設けてもよい。さらに、それぞれの空気通路にヒータコア22を流通する風量と空気バイパス通路を流通する風量割合を調整するエアミックスドアを配置してもよい。これによれば、エアミックスドアの風量割合調整によって、車室内へ吹き出す空気の温度を調整することもできる。
【0385】
また、各送風機の構成は、上述の実施形態に開示されたものに限定されない。例えば、排気送風機45、外気送風機46a、内気送風機46bとして、遠心送風機を採用した例を説明したが、軸流送風機等を採用してもよい。
【0386】
また、第5実施形態の空調ユニット30では、室内送風機37として、二連式の送風機を採用した例を説明したが、これに限定されない。1つのファンを有する通常の送風機を採用してもよい。さらに、図20図22の太線矢印に示すように空気を流すことができれば、通風路切替装置35の通路構成を簡素化してもよい。
【0387】
また、第5実施形態の空調ユニット30では、仕切板39を廃止しているが、これに限定されない。部品の共通化等のために第1実施形態と同様の仕切板39を有する空調ユニット30を採用してもよい。この場合は、各運転モード時に、制御装置60が、連通口開閉ドア39bが連通口39aを全開させるように、連通口開閉ドア用の電動アクチュエータの作動を制御すればよい。
【0388】
(5)上述の実施形態では、ヒートポンプサイクル10の水冷媒熱交換器12および熱媒体回路20の各構成機器によって加熱部を形成した例を説明したが、これに限定されない。例えば、ヒートポンプサイクル10の圧縮機11から吐出された高圧冷媒と車室内へ送風される空気とを熱交換させて、高圧冷媒を凝縮させる室内凝縮器を加熱部としてもよい。室内凝縮器を加熱部とする場合は、空調ユニット30に、空気バイパス通路およびエアミックスドアを採用すればよい。
【0389】
(6)上述の第5実施形態では、暖房モード時に、内気温Trの上昇に伴って、第2空気通路31bへ流入させる内気の割合を増加させた例を説明したが、これに限定されない。例えば、内気温Trから外気温Tamを現在した内外気温度差ΔT1の拡大に伴って、第2空気通路31bへ流入させる内気の割合を増加させてもよい。また、例えば、目標吹出温度TAOから内気温Trを減算した目標温度差ΔT2の縮小に伴って、第2空気通路31bへ流入させる内気の割合を増加させてもよい。
【0390】
また、上述の第5実施形態では、第2空気通路31bへ流入させる内気および外気の具体的な流入割合について言及していないが、暖房開始時に、第2空気通路31bへ外気のみを流入させるようにしてもよい。また、暖房開始直後から、内気および外気の双方を流入させ、内気温Trの上昇に伴って、第2空気通路31bへ流入させる内気の割合を増加させるようにしてもよい。そして、内気温Trが予め定めた基準内気温以上となった際に、第2空気通路31bへ内気のみを流入させるようにしてもよい。
【0391】
つまり、暖房モード時に、外気を第1空気通路へ流入させ、第1熱交換部を通過した外気を加熱部を介して車室内側へ導き、少なくとも内気を第2空気通路へ流入させ、第2熱交換部を通過した空気を第2空気通路から車室外へ流出させてもよい。
【0392】
(7)上述の各実施形態に開示された手段は、実施可能な範囲で適宜組み合わせてもよい。
【0393】
例えば、図24に示すように、第5実施形態の車両用空調装置1に対して、第2実施形態と同様に、空調ユニット30の室内送風機37および排気送風機45等を廃止して、外気送風機46a、内気送風機46b、および上流側通風路切替装置47を追加してもよい。この場合は、外気送風機46a、内気送風機46b、上流側通風路切替装置47、および下流側通風路切替装置35の作動を制御して、第5実施形態と同様に、空調ユニット30内に外気および内気を流通させるようにすればよい。
【符号の説明】
【0394】
10 ヒートポンプサイクル
12、20 水冷媒熱交換器(加熱部)、熱媒体回路(加熱部)
14a、14b 第1膨張弁(第1減圧部)、第2膨張弁(第2減圧部)
15a、15b 第1熱交換器(第1熱交換部)、第2熱交換器(第2熱交換部)
30 空調ユニット(空気通路形成部)
31a、31b 第1空気通路、第2空気通路
31c、31d 上層側空気通路、下層側空気通路
31e、31f 外気バイパス通路、内気バイパス通路
34a、34b 外気通路ドア(外気風量調整部)、内気通路ドア(内気風量調整部)
37 室内送風機(室内送風部)
図1
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図3
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