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特開2022-170693クウォンタムドット・カーボン及びその製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022170693
(43)【公開日】2022-11-10
(54)【発明の名称】クウォンタムドット・カーボン及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   C01B 32/00 20170101AFI20221102BHJP
   B82Y 40/00 20110101ALI20221102BHJP
   B82Y 30/00 20110101ALI20221102BHJP
【FI】
C01B32/00
B82Y40/00
B82Y30/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022059710
(22)【出願日】2022-03-31
(31)【優先権主張番号】P 2021099038
(32)【優先日】2021-04-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】301034072
【氏名又は名称】メモリアルネットワーク有限会社
(71)【出願人】
【識別番号】519310171
【氏名又は名称】ケミテラス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100081673
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100141483
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 生吾
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 邦道
【テーマコード(参考)】
4G146
【Fターム(参考)】
4G146AA01
4G146AB02
4G146AB08
4G146AC02B
4G146AC28
4G146AD02
4G146BA32
4G146BC02
4G146BC23
4G146BC32A
4G146DA03
4G146DA12
4G146DA23
4G146DA26
4G146DA35
4G146DA40
4G146DA43
4G146DA45
4G146DA46
(57)【要約】
【課題】 フラーレンやナノチューブよりもはるかに優れたイオン吸着能力を有し、また賦活性が高いクウォンタムドット・カーボン及びその製造方法を提供する。
【解決手段】 このクウォンタムドット・カーボンは、非晶質の極超微細ナノ粒子から成る原子状の炭素を基とし、この極超微細ナノ粒子が自壊作用を発揮してエネルギー体となるものであり、互いに不規則に集合した塊状、または粒径が0.5nm以下の極超微細粒子体である。このクウォンタムドット・カーボンは、有機物、中でも植物からなる原料を不活性雰囲気において所定の温度で順次、温度を上げて加熱し、前記雰囲気中及び有機物中の炭素以外の所期成分を、450℃以下の温度において分解温度の低いものから順次熱分解させて炭素との結合を個別的に遊離させて製造する。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
炭素原子1個、或いは炭素原子が2乃至3個の鎖状に結合した状態の極微粒子が原子間引力により互いに不規則に集合してなる非晶質の極超微細ナノ粒子の複合体から構成され、この極超微細ナノ粒子が自壊作用を発揮してエネルギー体となる非合金のクウォンタムドット・カーボン。
【請求項2】
炭素単体を含まない共有結合している有機物からなる原材料を不活性雰囲気において所定の温度で順次、温度を上げて加熱し、前記雰囲気中及び有機物中の炭素以外の所期成分を、450℃以下の温度において分解温度の低いものから順次熱分解させて炭素との結合を個別的に遊離させるとともにその都度不活性雰囲気を保ったままの状態で雰囲気外に排除し、更に得られた塊状のクウォンタムドット・カーボンを不活性雰囲気に保ったままの状態で所定の容器に密封することを特徴とするクウォンタムドット・カーボンの製造方法。
【請求項3】
請求項2に記載のクウォンタムドット・カーボンの製造方法において、容器の密封状態で収容する前の工程で450℃以下の不活性雰囲気において極微細粒径に粉砕することを特徴とするクウォンタムドット・カーボンの製造方法。
【請求項4】
前記原材料が穀類である請求項2記載のクウォンタムドット・カーボンの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、各種分野において有用で、しかも高機能性を発揮する炭素素材であるクウォンタムドット・カーボン及びその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
炭素は、全ての有機物、生命活動の重要な構成要素の一つであり、非金属でありながら、熱や電気の伝導率が高く、熱による膨張率が小さいばかりか薬品などにも強く安定している等、多くの利点を有しており、数多くの分野で用いられている。
【0003】
そして、炭素原子は価電子が4個あり結合しない3つ又は4つの手(ダングリングボンド)を有している。
【0004】
また、従来、知られている炭素材料は分子状のものであり、グラファイト(黒鉛)、ダイヤモンド、フラーレン、炭素ナノチューブの四つの結晶質構造を示す同素体が知られている。
【0005】
殊に、フラーレン、炭素ナノチューブは微細でイオン吸着力が大きいなど従来のグラファイトが有していない性質を有していることからナノカーボンの分野において新規の炭素材料として注目され、各種の分野で研究され、実用化もされている。
【0006】
ところが、フラーレン、炭素ナノチューブ等の炭素材料は、例えばプラズマやレーザーなどによりコークスや高分子化合物を加熱、蒸発し、結晶化させて製造されている。従って、フラーレン、炭素ナノチューブも炭素原子6個からなる共有結合を有する巨大な炭素同素体としてグラファイト化している。
【0007】
そのため、フラーレン、炭素ナノチューブに含まれる一つの炭素は1つのイオン吸着能力をそれぞれ有するだけであって、60の炭素原子で構成されるフラーレンではイオン吸着能力は60、1000個の炭素原子で構成されるナノチューブではイオン吸着能力は1000が限度である。
【0008】
また、コークスを800℃以上で熱処理すると酸化化合物が蒸発して、炭素の同素体を得ることができるが、グラファイト化が進み硬化してしまう。
【0009】
更に、有機物を熱すると弱い結合の手から順に切れて、水素や酸素が取れて炭素だけからなる物質に次第に変化(炭化)することは知られており、日本では古くから植物を炭化して「木炭」が作られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特許第5095997号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
従来の方法により植物を原料として比較的低温で炭化された「木炭」は、一般的に電気伝導率の低い非結晶質(アモルファス)の炭素材料として知られている。従来の炭化方法では、植物原料を炭化する温度を高温にしないと水素や酸素の減少が困難であり、純粋な炭素材料を得ることができない。
【0012】
また、植物原料の炭化温度を高温にして得られる炭化物(木炭)は、炭素原子6個が共有結合した状態のものが前後左右方向に並んでお互いに積層し結晶化(グラファイト化)したものもある。このような炭素材は、電気伝導度が高く、きわめて安定したものとなり、他の物質と化合させることが困難であり、専ら物理的に優れた性質を利用するに留まっている。
【0013】
本件の発明者は、すでに、フラーレンやナノチューブ等の結晶化された炭素材料よりも遙かに優れたイオン吸着能力(他の物質との化合力)を有するきわめて有用な炭素材料として原子状炭素材料及びその製造方法を提案した(日本特許第5095997号)。
【0014】
本発明は、上記原子状炭素材料を量子ドット化してさらに微粒子化を推し進めた。そして、本発明の目的は、特に約0.5nm(ナノメートル)以下の直径を有する極超微細ナノ粒子から構成され、さらに、有機物性をより増大させた原子状の炭素材料をクウォンタムドット・カーボンとして提案し、また、当該クウォンタムドット・カーボンの製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明は、上記課題を解決するために、炭素原子1個の極超微細ナノ粒子、或いは炭素原子が2乃至3個までの複合体から成る極超微細ナノ粒子から構成された原子状の炭素(「クウォンタムドット・カーボン」と定義する。)を提供する。本発明のクウォンタムドット・カーボンは、上述したように、炭素原子が1個、或いは炭素原子が2乃至3個までの複合体であり、微細粒子化が極限まで推進されている。
【0016】
更に、本発明に係る製造方法は原料として、炭素単体を含まない共有結合している有機物(中でも植物)を用い、この有機物を不活性雰囲気(例えば窒素雰囲気)において所定の温度で順次、温度を上げて加熱し、前記雰囲気中及び有機物中の炭素以外の所期成分(例えば、酸素、水蒸気などの気体成分)を、450℃以下の温度において分解温度の低い成分から順次熱分解させて炭素との結合を個別的に遊離させるとともにその都度不活性雰囲気を保ったままの状態で上記分解された成分を雰囲気外に排除し、更に、得られた塊状のクウォンタムドット・カーボンを不活性雰囲気において450℃よりも低い温度、通常は20℃~60℃に冷却して粒径が炭素原子と同じ程度、或いは炭素原子が2乃至3個までの複合体から成る極微細粒子の粒径に粉砕することを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
本発明のクウォンタムドット・カーボンは、60個の炭素原子で構成されるフラーレンのイオン吸着能力60の4倍、すなわち、240のイオン吸着能力を有する。また、本発明のクウォンタムドット・カーボンは、1000個の炭素原子で構成されるカーボンナノチューブのイオン吸着能力1000の4倍、すなわち、4000のイオン吸着能力を有する。また、本発明のクウォンタムドット・カーボンは、分子構造が原子単体に近いことから、賦活性が高く、きわめて活性で、各種の用途に利用することができる。
【0018】
さらに、本発明のクウォンタムドット・カーボンは、グラファイト化している従来の炭素と異なり粒子性、或いは極微細粒子性を有しており、さらに細かいばかりか各種の物質と化合物を作ることが可能である。また炭素であることから、人体に対しても毒性を有しないため、薬品、抗ウィルス材料、或いは健康促進材料、美容剤など各種の優れた用途が期待される。
【0019】
本発明の上記目的及び利点は添付図面を参照して説明される、以下の実施例によってより一層明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明に係るクウォンタムドット・カーボンの製造方法における好ましい基本装置の形態を概略的に示す断面図である。
図2】前記実施の形態に係るクウォンタムドット・カーボン製造装置による製造工程を表す工程図である。
図3】本発明に係るクウォンタムドット・カーボンの倍率200万倍の超高分解能走査透過型電子顕微鏡写真である。
図4】本発明に係るクウォンタムドット・カーボンの倍率200万倍の超高分解能透過型電子顕微鏡写真である。
図5図4の撮影対象を倍率400万倍に拡大して示す超高分解能透過型電子顕微鏡写真である。
図6】本発明に係るクウォンタムドット・カーボンを元素記号で模式的に表した図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
次に、本発明を実施するための最良の形態について添付の図面を参照して説明する。図1は本発明に係るクウォンタムドット・カーボンの製造方法を実施するための製造装置の一例を示す断面図である。図1において、クウォンタムドット・カーボン製造装置は、空気の入らない気密室1と、気密室1に着脱可能に取り付けられたクウォンタムドット・カーボン取り出し用のカートリッジ5と、気密室1の内部に設置された台6とから構成されている。
【0022】
気密室1はクウォンタムドット・カーボンの製造中には内部が窒素雰囲気に保持される。カートリッジ5は、内部が気密室1と同じ雰囲気(窒素雰囲気)に保持される。台6にはクウォンタムドット・カーボンの原料となる有機物が載置される。気密室1はガス注入開閉弁2を持ったガス注入管路9と、熱分解されたガス排出用のガス排出開閉弁3を持った熱分解ガス排出管路10とを備えている。また、気密室1には、内部に所定の温度まで上昇させるためのヒーター4が組み込まれている。ヒーター4としては、気密室1の内部周壁に設置され、適宜の手段により気密室1の外部から通電可能な遠赤外線炭素セラミックヒータや炭素フィラメント等が用いられる。さらに、ヒーター4は、気密室1の内部周壁の他に、底部にも装備されていてもよい。
【0023】
なお、図1において、7は気密室1の出入り口に設けられたシャッターであり、閉鎖されたときは気密室1を気密或いは窒素雰囲気に保つ。8はカートリッジ5に設けられた蓋或いは開閉扉であり、閉鎖されたときはカートリッジ5を気密或いは窒素雰囲気に保つ。また、図1中、符号11はローラーを表し、出来上がったクウォンタムドット・カーボンを気密室1からカートリッジ5に搬送したり、原料をカートリッジ5から気密室1へ搬送したりする作業に使われる。ローラー11はカートリッジ5の底部にも設置されている。
【0024】
次に、前記図1に示したクウォンタムドット・カーボン製造装置によるクウォンタムドット・カーボンの製造方法の好ましい例について説明する。
【0025】
図1に示したクウォンタムドット・カーボン製造装置による製造工程は、気密に開閉可能なシャッター7を有する気密室1内の台6に有機物からなる原料Mを気密状態の下で装填するともに、気密室1内の空気を不活性ガスに置換して無酸素雰囲気にする第1工程と、気密室1内に装填された原料Mを比較的低温の温度で加熱して水分を蒸発させて気密室1から排出させる第2工程と、気密室1内の原料Mを第2工程の温度よりも高い所定の温度で加熱して有機物中の炭素以外の初期成分を、分解温度の低いものから順次熱分解させて個別的に遊離させて気密室1から排出させる第3工程と、原料Mの加熱を止めて気密室1内に残存するクウォンタムドット・カーボンを回収する第4工程とによりクウォンタムドット・カーボンが製造される。原料Mとしては、炭素単体を含まない共有結合している有機物(中でも植物)を用いる。
【0026】
第1工程で用いられるクウォンタムドット・カーボンの原料Mとしては、例えば高分子物質や生物等の普通に存在する有機物を用いることができるが、高分子物質のような炭素単体を含むものは、炭素単体が結晶化して分子状を呈していることと、製造した炭素に分子状の炭素が混入するので原料Mとしては好ましくない。クウォンタムドット・カーボンの原料Mとしてより好ましいのは、炭素単体を含まない共有結合している有機物(中でも植物)であり、生物系材料、農業分野で扱われる材料が相当する。好ましい原料Mとして具体的な例を挙げれば木片、竹片、穀類(小豆、大豆等)その他の植物などである。
【0027】
図2は、クウォンタムドット・カーボン製造装置による製造工程を表す工程図である。この工程図に基き、上記した処理工程についてさらに詳しく説明する。
【0028】
まず、第1工程では、シャッター7を開放した状態で、気密室1内の台6上に有機物である小豆からなる原料Mを装填してシャッター7を閉じ、熱分解ガス排出管路10を開放した状態で気密室1を初期加熱する。この原料Mの投入と加熱動作の初期段階までで約30分間の動作でありこの間での熱分解室内の温度上昇は100℃以下である。次に、気密室1内にガス注入管路9から、例えば不活性ガスである窒素ガス12やアルゴンガス13(他の不活性ガスを用いてもよい。ここでは窒素ガスで代表させる。)を送入する一方で、それまで気密室1内に存在していた空気14(酸素や二酸化炭素等)を排出し、窒素ガス12で完全に置換して無酸素状態にし、ガス注入管路9のガス注入開閉弁2と熱分解ガス排出管路10のガス排出開閉弁3を一旦閉じる。このガス置換処理は約50分間の動作であり、この処理動作により熱分解室内の気体はほぼ100%不活性ガスに置換される。
【0029】
次に、第2工程として、ヒーター4に通電して最初に気密室1及びその内部に装填した原料Mを水分が蒸発する程度の温度である100℃~150℃に加熱し、原料Mの表面に付着している水分(H2O)或いは原料Mの組織体内から浸出してきた水分および窒素雰囲気中の水分を充分に蒸発させ、その後ガス注入管路9のガスの注入開閉弁2と熱分解ガス排出管路10のガス排出開閉弁3を開き、ガス注入管路9から窒素を導入させた状態で熱分解ガス排出管路10から水蒸気15、酸素、窒素を含む気体を気密室1の外部へと排出する。この水分の蒸発動作は、約120分間位の時間をかけて行われても良いが、より完全に水分を蒸発させるためには約300分間或いはそれ以上と、十分に長い時間をかけて行われるのが良い。この水分の蒸発動作は、本発明にとってはクウォンタムドット・カーボンを製造するために重要な動作である。これにより、気密室1から酸素がほぼ完全に除去される。その間、温度は100~150℃に保持される。原料Mの水分の蒸発は、原料Mの水分が重量パーセントで、約15%(10~25%位)或いはそれ以下になるまで水分を蒸発させることが好ましい。水蒸気15及び酸素が十分に排出された後、気密室1内および原料Mを完全に無酸素状態かつ乾燥状態に保持し、ガス注入管路9のガス注入開閉弁2と熱分解ガス排出管路10のガス排出開閉弁3を閉じる。
【0030】
次いで、第3工程の前半として、気密室1内を窒素雰囲気に保持したままで、再びヒーター4に通電して原料Mを200℃~350℃に加熱し、原料M中の塩素化合物を遊離させて前記水分等を排出した場合と同様にして原料M内の塩素化合物を気密室1から排出する。この加熱・抽出動作は約100分~120分位の時間をかけて行われる。
【0031】
さらに、第3工程の後半として、気密室1内を窒素雰囲気に保持したままで、ヒーター4にさらに通電して原料Mを350℃~450℃に保ち、前記塩素化合物を排出した場合と同様にして原料M中の残りの高分子成分を遊離させて気密室1から排出し、第3工程を終了する。以上の第3工程を終了した時点で気密室1内には450℃では気化しない炭素すなわち、クウォンタムドット・カーボンが残存する。この加熱・抽出動作は約50分~100分位の時間をかけて行われる。なお、上記350℃~450℃は本実施の形態における加熱処理では最高温度帯であるが、ゆっくりと、より一層多くの時間をかけて加熱するならば、550℃まで加熱温度を上げてもよい。
【0032】
次いで、第4工程として、ヒーター4の通電を停止して、ガス注入管路9から低温の窒素を導入するとともに、熱分解ガス排出管路10から高温の窒素を排出させて気密室1内の温度を20~50℃程度まで冷却して第4工程を終了する。この冷却動作は約120分位の時間をかけて行われ、気密室1内の温度がほぼ常温になるまで行われる。その後、付加的工程として、シャッター7を開放して気密室1内に残存するクウォンタムドット・カーボンをカートリッジ5へ移送し、クウォンタムドット・カーボンを取り出す。これにより、本発明におけるクウォンタムドット・カーボンの塊が、原料Mの形状を部分的に残したものとして生成される。
【0033】
図3は本発明に係るクウォンタムドット・カーボンを超高分解能走査透過型電子顕微鏡により200万倍で撮影した写真である。この図ではクウォンタムドット・カーボンの周りに無数の有機物由来の金属イオンが取り囲んで、直径が約20nmの円環状又は球状構造体を形成している状態が捉えられている。上記「有機物由来の金属イオン」とは、有機物(植物)が本来有しており、有機物の中に存在している微量の金属(Ca、Zn、Mg,Mn等)のイオンのことをいう。図3に表されているクウォンタムドット・カーボンは、上述したように、炭素原子1個の非晶質の極超微細ナノ粒子で構成されるか、又は炭素原子が2乃至3個までの鎖状に結合した状態の極超微細ナノ粒子が原子間引力により互いに不規則に集合してなる非晶質の極超微細ナノ粒子の複合体から構成された、原子状の炭素である。そして、炭素が原子1個程度の極超微細ナノ粒子になると、当該炭素自体が自壊作用を発揮してさらに小さくなるように変化する。このようになると、炭素は、非晶質の極超微細ナノ粒子を基としたエネルギー体として存在する物質である。本発明のクウォンタムドット・カーボンはこのエネルギー体によって構成され、非合金である。そして、非合金のエネルギー体のエネルギーにより上記金属(Ca、Zn、Mg,Mn等)のイオンが引き寄せられ、円環状又は球状構造体を形成しているのが図3の状態である。したがって、本発明のクウォンタムドット・カーボンは、エネルギー体によって構成されていることにより、生体に対し或いは物質に対して様々な物理的、化学的、或いは生物学的な作用を及ぼすことができる。
【0034】
図4は本発明に係るクウォンタムドット・カーボンを超高分解能透過型電子顕微鏡により200万倍で撮影した写真である。図5図4の撮影対象を倍率400万倍に拡大して示す電子顕微鏡写真である。この図5中の四角枠で囲んだ部分は一辺が10nm以下、厚さが0.2~2Å(オングストローム)の試料の観察映像である。本発明のクウォンタムドット・カーボンは10nmの中に無数の非晶質性物質から構成されており、10nmの中に約1Åから大きくても2nm程度の炭素が集合しており、平均の大きさは1.66Åとなっている。炭素の径から考えて1Åは炭素Cが1つのものである。棒状に見える2nmの物体は炭素Cが2~3個鎖状に結合しているものであり、グラファイト炭素6面体を構成しない有機物状態であることがわかる。図5の映像は発明者が研究してきた範囲では世界最微小の炭素の撮影像と考えられる。
【0035】
図6図3の写真をもとに本発明に係るクウォンタムドット・カーボンを炭素のSP軌道をもとに、元素記号で模式的に表したものである。元々物理的に炭素は電子(エレクトロン)を4つ持ち、生命活動、物質の構成に必要な組み合わせが無数にできるものであることは知られており、エレクトロンの活動が様々なエネルギーを生み出すものであるが、エレクトロンは物質が結晶化することにより失われるか、数が減少し、多様な他の物質に結合することができなくなるものである。
【0036】
本発明のクウォンタムドット・カーボンはCが1であれば、エレクトロンが4個、Cが2個であればエレクトロンが6個活動することができ、イオン吸着能力が通常のグラファイト炭素の3倍から24倍に達するものである。また、本発明のクウォンタムドット・カーボンはCが1で存在していた場合、粒子の大きさが0.5nm以下(理論的には1.66Å)の原子に近い状態であり、図6に示すように炭素原子1個あたり4個のイオンを吸着する能力を有する。そのため本発明のクウォンタムドット・カーボンは、60個の炭素原子で構成されるフラーレンのイオン吸着能力60の4倍、すなわち、240のイオン吸着能力を有する。
【0037】
また、本発明のクウォンタムドット・カーボンは、1000個の炭素原子で構成されるカーボンナノチューブのイオン吸着能力1000の4倍、すなわち、4000のイオン吸着能力を有することになり、きわめて活性で、各種の用途に利用することができる。さらに、本発明のクウォンタムドット・カーボンは、グラファイト化している従来の炭素と異なり粒子性、或いは極微細粒子性を有しており、さらに細かいばかりか各種の物質と化合物を作ることが可能である。また炭素であることから、人体に対しても毒性を有しないため、薬品、抗ウィルス材料、或いは健康促進材料、美容剤など各種の優れた用途が期待される。
【0038】
更に、本発明に係る塊状のクウォンタムドット・カーボンの電気伝導度を調べたところ電流値は0であり、完全な絶縁体であることもわかった。
【0039】
本発明は、図面に示す好ましい実施例に基づいて説明されてきたが、当業者であれば、この発明を容易に変更及び改変し得る事は明らかであり、そのような変更部分も発明の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0040】
1 気密室
2 ガス注入開閉弁
3 ガス排出開閉弁
4 ヒーター
5 カートリッジ
6 台
7 シャッター
8 蓋
9 ガス注入管路
10 熱分解ガス排出管路
図1
図2
図3
図4
図5
図6