(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022170724
(43)【公開日】2022-11-10
(54)【発明の名称】浮動するモータ・カプラを備えるスクロール・ポンプ
(51)【国際特許分類】
F04C 18/02 20060101AFI20221102BHJP
F04C 2/02 20060101ALI20221102BHJP
【FI】
F04C18/02 311M
F04C2/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】18
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022072930
(22)【出願日】2022-04-27
(31)【優先権主張番号】63/181,039
(32)【優先日】2021-04-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】522165924
【氏名又は名称】ダビル サーフェシズ 、インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】弁理士法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】アナトリー ニトサ
(72)【発明者】
【氏名】テリー チュン
(72)【発明者】
【氏名】デイヴィッド エイ.ジョバ
【テーマコード(参考)】
3H039
【Fターム(参考)】
3H039AA02
3H039AA12
3H039BB04
3H039BB07
3H039BB08
3H039CC02
3H039CC04
3H039CC09
3H039CC10
3H039CC13
3H039CC23
(57)【要約】
【課題】浮動するモータ・カプラを備えるスクロール・ポンプを提供すること。
【解決手段】スクロール・ポンプが、軌道旋回経路内で第1のスクロール部材に対して第2のスクロール部材を運動させるのを可能にするように構成された複数のアイドラ組立体により一体に接続された第1及び第2のスクロール部材を有する。回転軸受が軌道旋回スクロール部材の端部プレートに接続される。モータ及びモータ・カプラが回転軸受に結合され、軸受が、第2のスクロール部材がそれに沿って動く軌道旋回経路に対応する軌道旋回経路内で、運動するようになる。回転軸受がカプラ内で自由に回動することができる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
スクロール・ポンプであって:
ポンプ・ハウジングと;
前記ポンプ・ハウジングに固定的に接続された固定スクロール部材と;
前記ポンプ・ハウジング内に浮動可能に収容されて前記固定スクロール部材に軌道旋回可能に係合した軌道旋回スクロール部材と;
前記軌道旋回スクロール部材に回転可能に接続された回転軸受であって、前記回転軸受が、半径及び直径、並びに回転軸を有する、回転軸受と;
前記ハウジングに固定的に接続されたモータであって、前記モータがモータ・シャフトを備え、前記モータ・シャフトが、前記回転軸受の前記回転軸に平行であって前記回転軸受の前記回転軸から径方向にオフセットされた回転軸を有する、モータと;
前記モータ・シャフトに固定的に接続されて前記回転軸受に動作可能に係合したカプラと
を備え、
前記カプラが内側表面を有する側壁を備え、前記カプラの前記内側表面が前記回転軸受の対応する軸受面に係合し;
前記回転軸受が、前記モータ・シャフトの前記回転軸に対して垂直な少なくとも1つの方向において前記カプラによって拘束されず、
前記カプラの回転が、前記固定スクロール部材に対して前記回転軸受及び前記軌道旋回スクロール部材を軌道旋回させる、
スクロール・ポンプ。
【請求項2】
前記カプラの前記内側表面が、第1の軸受面、及び前記第1の軸受面から離間された第2の軸受面を有する、請求項1に記載のスクロール・ポンプ。
【請求項3】
前記カプラの前記内側表面が、前記第1の軸受面から前記第2の軸受面までの方向に延在する第3の軸受面を有する、請求項1に記載のスクロール・ポンプ。
【請求項4】
前記カプラの前記内側表面が、前記第1の軸受面と前記第2の軸受面との間を延在して前記第1の軸受面を前記第2の軸受面に接続する第3の軸受面をさらに備える、請求項3に記載のスクロール・ポンプ。
【請求項5】
前記第1の軸受面、前記第2の軸受面、及び前記第3の軸受面が、少なくとも1つの曲線の接続面により一体に接続される、請求項4に記載のスクロール・ポンプ。
【請求項6】
前記少なくとも1つの曲線の接続面が、前記回転軸受の前記直径に公称上等しい半径を有する、請求項4に記載のスクロール・ポンプ。
【請求項7】
前記第1の軸受面が前記回転軸受の接平面に平行であり、前記第2の軸受面が前記第1の軸受面に平行である、請求項4に記載のスクロール・ポンプ。
【請求項8】
前記第3の軸受面が、前記第1の軸受面及び前記第2の軸受面のうちの少なくとも1つに対して垂直である、請求項7に記載のスクロール・ポンプ。
【請求項9】
前記第3の軸受面が前記第1の軸受面及び前記第2の軸受面に対して垂直である、請求項7に記載のスクロール・ポンプ。
【請求項10】
前記第3の軸受面が前記第1の軸受面に対して90度超の第1の夾角で方向付けられ、前記第2の軸受面が前記第1の軸受面に対して90度未満の第2の夾角で方向付けられる、請求項7に記載のスクロール・ポンプ。
【請求項11】
前記カプラの前記第1の軸受面と前記カプラの前記第2の軸受面との間の垂直方向の距離が、前記回転軸受の前記直径より公称上大きく、その結果、前記回転軸受が、前記第1の軸受面及び前記第2の軸受面上で自由に回動することができる、請求項7に記載のスクロール・ポンプ。
【請求項12】
前記カプラが、前記スクロール・ポンプの動作中に前記軌道旋回スクロールにより前記カプラに加えられる不平衡の遠心力を相殺するような重量を有する、請求項1に記載のスクロール・ポンプ。
【請求項13】
スクロール・ポンプを組み立てる方法であって:
第1の端部プレート及び第1のインボリュートから延在する第1のインボリュートを有する第1のスクロール部材を用意するステップと;
第2の端部プレート及び第2のインボリュートから延在する第2のインボリュートを有する第2のスクロール部材を用意するステップと;
第1のシャフト部分及び第2のシャフト部分を各々有する複数のアイドラ・カムシャフトを用意するステップと;
前記アイドラ・カムシャフトの前記第1のシャフト部分を前記第1のスクロール部材に装着するステップと;
前記アイドラ・カムシャフトの前記第1のシャフト部分を前記第1のスクロール部材に軸方向に固定するステップと;
前記第1の端部プレートと前記第2のインボリュートとの間の所定のクリアランスに対応する厚さを有するシムを用意するステップと;
前記第1の端部プレートを前記第2のインボリュートに隣接させてさらに前記第2の端部プレートを前記第1のインボリュートに隣接させる状態で、前記第2のスクロール部材を前記第1のスクロール部材に装着するステップと;
前記第1の端部プレートと前記第2のインボリュートとの間の前記所定のクリアランスを設定するように前記第1のスクロール部材と前記第2のスクロール部材との間に前記シムを装着するステップと;
前記アイドラ・カムシャフトの前記第2のシャフト部分を前記第2のスクロール部材に装着するステップと;
前記第2のスクロール部材に接続されて軸方向において固定された軸受に接触するところにおいて前記アイドラ・カムシャフトの端部を拡大することにより、前記アイドラ・カムシャフトの前記第2のシャフト部分を前記第2のスクロール部材に軸方向に固定するステップと
を含む、方法。
【請求項14】
前記シムを取り外すステップをさらに含む、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記アイドラ組立体を前記第2のスクロール部材に軸方向に固定するステップが、前記アイドラ組立体を前記第2のスクロール部材に取り外し可能に軸方向に固定するステップを含む、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記アイドラ組立体を前記第2のスクロール部材に軸方向に固定するステップが、前記アイドラ組立体を前記第2のスクロール部材に軸方向に永久的に固定するステップを含む、請求項14に記載の方法。
【請求項17】
スクロール・ポンプを組み立てる方法であって:
第1の端部プレート及び第1のインボリュートから延在する第1のインボリュートを有する第1のスクロール部材を用意するステップと;
第2の端部プレート及び第2のインボリュートから延在する第2のインボリュートを有する第2のスクロール部材を用意するステップと;
第1のシャフト部分及び第2のシャフト部分を各々有する複数のアイドラ・カムシャフトを用意するステップと;
前記アイドラ・カムシャフトの前記第1のシャフト部分を前記第1のスクロール部材に装着するステップと;
前記アイドラ・カムシャフトの前記第1のシャフト部分を前記第1のスクロール部材に軸方向に固定するステップと;
前記第1の端部プレートと前記第2のインボリュートとの間に所定のクリアランスを有する状態で、前記第1の端部プレートを前記第2のインボリュートに隣接させてさらに前記第2の端部プレートを前記第1のインボリュートに隣接させる状態で、前記第2のスクロール部材を前記第1のスクロール部材に装着するステップと;
前記アイドラ・カムシャフトの前記第2のシャフト部分を前記第2のスクロール部材に装着するステップと;
前記第2のスクロール部材に接続されて軸方向において固定された軸受に接触するところにおいて前記アイドラ・カムシャフトの端部を拡大することにより、前記アイドラ・カムシャフトの前記第2のシャフト部分を前記第2のスクロール部材に軸方向に固定するステップと
を含む、方法。
【請求項18】
前記第1の端部プレートと前記第2のインボリュートとの間に前記所定のクリアランスを有する状態で前記第1のスクロール部材及び前記第2のスクロール部材を保持するように構成された固定装置を用意するステップと;
前記第1のスクロール部材を前記固定装置内に装着するステップと;
前記第1の端部プレートと前記第2のインボリュートとの間に前記所定のクリアランスを有する状態で前記第2のスクロール部材を前記固定装置内に装着するステップと
をさらに含む、請求項17に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、米国特許法第119条の下、参照によりその全体が本明細書に組み込まれている、2021年4月28日に出願した米国仮特許出願63/181,039号の利益を主張するものである。
【背景技術】
【0002】
既知のスクロール・ポンプは、固定インボリュートを有する固定スクロール部材、及び軌道旋回(orbiting)インボリュートを有する軌道旋回スクロール部材を有する。軌道旋回インボリュートが、3つのアイドラ組立体により、固定スクロール部材に接続される。アイドラ組立体が、軌道経路内を、固定スクロールに対して、軌道旋回スクロール部材が移動するのを可能にするように構成される。各アイドラ組立体が、第1のシャフト部分及び第1のシャフトに平行であって第1のシャフト部分から径方向にオフセットされた第2のシャフト部分を有するカムシャフトを有する。第1のシャフト部分が、固定スクロール部材の周縁エリアの近傍でつまり固定インボリュートの外側で、固定スクロール部材によって画定された対応する孔の中で回転可能に受けられ、第2のシャフト部分が、軌道旋回スクロール部材の周縁エリアの近傍でつまり軌道旋回インボリュートの外側で、軌道旋回スクロール部材によって画定された対応する孔の中で回転可能に受けられる。第1のシャフト部分が固定スクロール部材の対応する孔の中で回転するとき、第2のシャフト部分が軌道旋回スクロール部材の対応する孔の中で回転する。結果として、アイドラ・クランクの第2のシャフトが、固定スクロールに対して軌道旋回スクロール部材が移動するときに通る軌道旋回経路に対応する経路内で、アイドラ・クランクの第1のシャフトを中心として軌道旋回する。
【0003】
スクロール・ポンプが、介在するカプラを介してモータのモータ・シャフトに結合される。モータが、固定スクロール部材に対して固定される。カプラが、モータ・シャフトに平行であってモータ・シャフトから径方向にオフセットされた出力シャフトを有する。出力シャフトが、軌道旋回スクロール部材の中心の近傍で、軌道旋回スクロール部材によって画定された対応する孔の中で回転可能に受けられる。モータ・シャフトがモータに対して回転するとき、カプラの出力シャフトが、軌道旋回スクロール部材によって画定された対応する孔の中で回転し、カプラの出力シャフトが、固定スクロールに対して軌道旋回スクロール部材が移動するときに通る軌道旋回経路に対応する経路内で、モータ・シャフトを中心として軌道旋回する。出力シャフトのこのモーションが、上で考察したように、固定スクロール部材に対して軌道旋回スクロール部材を軌道旋回させる。
【0004】
アイドラ組立体及びカプラの上記の配置構成が、軌道旋回スクロール部材を固定スクロール部材に対して及びモータに対して4つのロケーションにおいて拘束することを当業者であれば認識するであろう。より具体的には、軌道旋回スクロール部材が、3つのアイドラ組立体により、固定スクロール部材に対して拘束され、軌道旋回スクロール部材が、カプラにより、モータに対して拘束される。この高い程度の拘束は、構成要素の早期の摩耗及びスクロール・ポンプ組立体の過度の固着を回避するために上記の構成要素の製造及び組み立てにおいて最大限の寸法制御及び厳格な公差が順守されることを必要とする。
【0005】
さらに、高い信頼性で及び効率的にスクロール・ポンプが動作するようにするために、固定スクロール部材及び軌道旋回スクロール部材が互いに接触することなく(介在するシールを介する場合を除く)互いに非常に接近した状態を維持しなければならない。通常、この目標は、適切な厚さのシムをアイドラ組立体のカムシャフトの上に設置することによって達成される。適切なシムの選択には、有意なトライアル・アンド・エラーが伴われ得る。例えば、適切なシムを選択する一般的な手法は、第1の適切なシム厚さを試算すること、対応する厚さの第1のシムを使用して可動スクロールに対して軌道旋回スクロールを試験装着すること、第1のシムが厚すぎたり又は薄すぎたりしないかどうかを判断すること、及び、所望の装着が達成されるまでより厚い又はより薄い別のシムを使用して固定スクロールに対して軌道旋回スクロールを繰り返し試験装着すること、を伴う。このプロセスは時間を要するものとなり得、繰り返しの組み立て及び分解によりスクロール・ポンプにダメージを与え得る。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示は、固定スクロール部材と軌道旋回スクロール部材との間の拘束の程度が低減されるようなスクロール・ポンプを対象とする。本開示はさらに、上記の組み立てプロセスを単純化するためのプロセスを対象とする。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】本開示による、固定スクロール部材と、軌道旋回スクロール部材と、ポンプ・ハウジングと、モータと、を有する例示のスクロール・ポンプを示す斜視図である。
【
図2】カプラによるスクロール・ポンプの軌道旋回スクロール部材に対してのスクロール・ポンプのモータの結合を示すためにポンプ・ハウジングが取り外された状態の、
図1のスクロール・ポンプを示す斜視図である。
【
図3】固定スクロール部材及び軌道旋回スクロール部材が取り外された状態である、
図1のスクロール・ポンプを示す斜視図である。
【
図4】軌道旋回スクロール部材を示す斜視図である。
【
図5】
図1のスクロール・ポンプを示す分解斜視図である。
【
図6】
図1のスクロール・ポンプを示す側断面図である。
【
図7A】本開示による例示のカプラを示す端面図である。
【
図8A】本開示による別の例示のカプラを示す端面図である。
【
図9】
図1のスクロール・ポンプの一部分を示す断面図である。
【
図10A】
図1のスクロール・ポンプのアイドラ組立体の構成要素を示す斜視図である。
【
図10B】
図1のスクロール・ポンプのアイドラ組立体の構成要素を示す斜視図である。
【
図10C】
図1のスクロール・ポンプのアイドラ組立体の構成要素を示す斜視図である。
【
図11】
図1のスクロール・ポンプの軌道旋回スクロール部材を示す上面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
図面は、本開示によるスクロール・ポンプ100の例示の実施例を示している。
【0009】
スクロール・ポンプ100が、ポンプ・ハウジング102と、ポンプ・ハウジング102に固定的に取り付けられた第1のすなわち固定スクロール部材104と、固定スクロール部材104に軌道旋回可能に係合した第2のすなわち軌道旋回スクロール部材106と、ポンプ・ハウジング102に固定的に接続されて、軌道旋回スクロール部材106に動作可能に係合したモータ108と、を有する。所望の半径及び直径を有する回転軸受110が、軌道旋回スクロール部材106の中心部分の近傍において、軌道旋回スクロール部材106に回転可能に接続される。カプラ112が、後でさらに考察するように、モータ108のモータ・シャフト109に固定的に接続され、回転軸受110に動作可能に係合している。
【0010】
ポンプ・ハウジング102が、側壁114と、側壁114の第1の端部を覆う端壁116とを有する。側壁114が、軸方向において端壁116から離れる方向に延在する複数の位置合わせタブ(registration tab)115を画定する。端壁116が、そこを通してカプラ112を受ける開口部118を画定する。モータ108がハウジング102の第1の端部に固定的に接続され、固定スクロール部材104がハウジングの第1の端部の反対側でハウジング102の第2の端部に固定的に接続される。示されるように、モータ108が、側壁114の反対側で端壁116の第1の側に固定的に接続され、固定スクロール部材104が側壁114の第1の端部の反対側で側壁114の第2の端部に固定的に接続される。別法として、モータ108及び固定スクロール部材104が、違うかたちでハウジング102のそれぞれに端部に固定的に接続され得る。
【0011】
固定スクロール部材104が、第1のすなわち固定端部プレート122の中心部分から軸方向に延在する第1のすなわち固定スクロール又はインボリュート120を有する。第1のすなわち固定シール120Sが、固定端部プレート122の反対側で固定インボリュート120の自由端のところに配設される。固定インボリュート120の自由端が、固定シール120Sを受けるように構成された溝を画定することができる。固定端部プレート122が、後でさらに考察するように、対応するアイドラ組立体132の対応する回転軸受136を受けるように構成された3つの開口部124を画定する。
【0012】
軌道旋回スクロール部材106が、第2のすなわち軌道旋回端部プレート128の中心部分から軸方向に延在する第2のすなわち軌道旋回スクロール又はインボリュート126を有する。第2のすなわち軌道旋回シール126Sが、軌道旋回端部プレート128の反対側で軌道旋回インボリュート126の自由端のところに配設される。軌道旋回インボリュート126の自由端が、軌道旋回シール126Sを受けるように構成された溝を画定することができる。軌道旋回インボリュート126が、交互的に配置されて軌道旋回可能に係合するかたちで、固定インボリュート120を受けるように構成される。軌道旋回端部プレート128が、後でさらに考察するように、対応するアイドラ組立体132の対応する回転軸受138を受けるように構成された3つの開口部130を画定する。軌道旋回端部プレート128がさらに、軸方向において摺動可能に係合するかたちで位置合わせタブ115を受けるように構成された複数の位置合わせスロット133を画定する。
【0013】
上で提案したように、固定スクロール部材104が、3つのアイドラ組立体132により、軌道旋回スクロール部材106に動作可能に接続される。アイドラ組立体132の各々が、アイドラ・カムシャフト134、第1の回転軸受組立体136、及び第2の回転軸受組立体138を有する。
【0014】
アイドラ・カムシャフト134の各々が、第1のシャフト部分140、及び第1のシャフト部分140に平行であって第1のシャフト部分140から径方向において離間された第2のシャフト部分142を有する。第1のシャフト部分140が、第1の回転軸受組立体136によって画定された対応する開口部の中で受けられ、第1のシャフト部分140が第1の回転軸受組立体136に軸方向に固定される。第2のシャフト部分142が、第2の回転軸受組立体138によって画定された開口部の中で受けられる。第2のシャフト部分142が、適切な固定具146により第2の回転軸受組立体に軸方向に捕捉され、固定具146が、例えば、限定しないが、ねじ固定具であってよい。
【0015】
第1の回転軸受組立体136が、第1の回転軸受136A及び第2の回転軸受136Bを有する。第1の回転軸受136A及び第2の回転軸受136Bの各々が、固定スクロール部材104内の対応する開口部124の中で圧入式に係合するかたちで受けられる環状外側軸受レースを有する。第2の軸受136Bの環状外側軸受レースが、そのボディから径方向外向きに延在するフランジ137をさらに有する。フランジ137が、対応する開口部124の中へ第2の軸受の環状外側軸受レースを挿入するときに可能となる程度を制限する。
【0016】
同様に、第2の回転軸受組立体138が第1の回転軸受136A及び第2の回転軸受136Bを有する。第1の回転軸受138A及び第2の回転軸受138Bの各々が、軌道旋回スクロール部材106内の対応する開口部130の中で圧入式に係合するかたちで受けられる環状外側軸受レースを有する。第2の軸受138Bの環状外側軸受レースが、そのボディから径方向外向きに延在するフランジ139をさらに有する。フランジ139が、対応する開口部130の中へ第2の軸受の環状外側軸受レースを挿入するときに可能となる程度を制限する。
【0017】
アイドラ・カムシャフト134の第1のシャフト部分140が、第1の回転軸を中心として、固定スクロール部材104の回転軸受の中で回転するように構成される。アイドラ・カムシャフトの第2のシャフト部分142が、第1の回転軸と平行であって第1の回転軸から径方向にオフセットされた第2の回転軸を中心として軌道旋回スクロール部材106の回転軸受の中で回転するように構成される。アイドラ・カムシャフト134の第2のシャフト部分142がアイドラ・カムシャフト130の第1のシャフト部分140に対して径方向にオフセットされることにより、アイドラ・カムシャフトの回転時、軌道旋回スクロール部材106が、軌道旋回経路内で、固定スクロール部材104に対して移動することになる。
【0018】
上で言及したように、回転軸受110が、軌道旋回スクロール部材106の中心部分の近傍で軌道旋回スクロール部材106に回転可能に接続される。より具体的には、回転軸受110が、軌道旋回スクロール126の反対側で、軌道旋回スクロール部材106のプレート128の中心部分から垂直に延在するアクスル146に回転可能に接続される。回転軸受110が、軌道旋回スクロール120の圧縮面に平行であり且つ固定スクロール部材104のプレート122に対して垂直である回転軸を有する。上で言及したように、回転軸受110がカプラ112に係合する。
【0019】
図7A~
図8Bに最良に示されるように、カプラ112が、基部148、及び基部148の第1の側から延在する側壁150を有する。示されるように、側壁150がU形である。他の実施例では、側壁150が、例えば、曲線形状又は長方形形状などの、他の形状を有することができる。カプラ112の基部148が、モータ108のモータ・シャフト109を受けるように構成された開口部152を画定する。カプラ112の基部148が、モータ・シャフト109と共に回転するためにモータ・シャフト109にキー留めされるか又は他のかたちで固定される。
【0020】
側壁150が開端部154及び内部表面156を画定する。実施例では、開端部154が閉端部であってもよい。内部表面156が、第1の軸受面156A、及び第1の軸受面156Aから離間され且つ第1の軸受面156Aの反対側にある第2の軸受面156Bを有する。示されるように、第1の軸受面156Aが平坦である。示されるように、第2の軸受面156Bが平坦であり、第1の軸受面156Aに平行であり、第1の軸受面156Aから離間される。示されるように、第1の軸受面156A及び第2の軸受面156Bの各々が、回転軸受110の外側表面に対しての接平面に平行である。内部表面156が、第1の軸受面156A及び第2の軸受面156Bを接続する第3の軸受面156Cをさらに有する。示されるように、第3の軸受面156Cが平坦である。
【0021】
図7A及び
図7Bに示されるように、第3の軸受面156Cが、第1の軸受面156A及び第2の軸受面156Bに対して垂直であってよい。別法として、
図8A及び
図8Bに示されるように、第1の軸受面156Aと第3の軸受面156Cとの間の第1の夾角αが90度以上又は90度以下であってよい。同様に、第2の軸受面156Bと第3の表面領域156Cとの間の第2の夾角βが90度以下又は90度以上であってよい。第1の角度α及び第2の角度βが、回転軸受110の周りをカプラ112が回るときに回転軸受110に対して垂直な方向において、第1の軸受面156A、第2の軸受面156B、及び第3の軸受面156Cにより回転軸受110に対して与えられる力をより良好に誘導するように選択され得る。
【0022】
第1の軸受面156A、第2の軸受面156B、及び第3の軸受面156Cが平坦なものとして示されるが、これらのいずれか又はすべてが曲線であってもよい。さらに、第1の軸受面156A、第2の軸受面156B、及び第3の軸受面156Cのいずれか又はすべてが、示されるように曲線の接続面により、又は平坦な接続面により、第1の軸受面156A、第2の軸受面156B、及び第3の軸受面156Cのうちの隣接する軸受面に接続され得る。第1の軸受面156A、第2の軸受面156B、及び第3の軸受面156Cを接続する曲線の接続面が、第1の軸受面156A、第2の軸受面156B、及び第3の軸受面156Cに対して且つ第1の軸受面156A、第2の軸受面156B、及び第3の軸受面156Cの間で回転軸受が自由に回動するのを可能にするために、並びに/或いは軸受によりカプラに与えられる又はその逆である衝撃荷重を回避又は軽減するために、回転軸受110の半径に公称上等しい曲率半径を有することができる。上で提案したように、第1の軸受面156A、第2の軸受面156B、及び第3の軸受面156Cの形状及び相対的な向きが、回転軸受110の周りでカプラ112が回るときに回転軸受110に対して垂直な方向において、第1の軸受面156A、第2の軸受面156B、及び第3の軸受面156Cにより回転軸受110に対して与えられる力をより良好に誘導するように選択され得る。
【0023】
いずれの場合も、モータ・シャフト109と共にカプラ112が回転するときに軸受面156A、156B、156C上で回転軸受110が自由に回動するのを可能にするために、及び、回転軸受110と軸受面156A、156B、156Cとの間の固着を軽減又は排除するために、第1の軸受面156A及び第2の軸受面156Bが、回転軸受110の外径より十分に大きい距離で互いから分離される。
【0024】
上で言及したように、基部148が、モータ・シャフト109を受けるように構成された開口部152を画定する。開口部152が側壁150の開端部154の近傍にあり、側壁150の第3の軸受面156Cから離れたところにある。開口部152が側壁150の開端部154の近傍にあり、側壁150の第3の軸受面156Cから離れたところにあることを理由として、カプラ112がモータ・シャフト109から偏心的にオフセットされる。この構成により、カプラ112が、軌道旋回スクロール部材106の運動から発生する反力を相殺することが可能となる。実施例(図示せず)では、モータ108の反対側の端部のところに追加の相殺部材(図示せず)が設けられてもよいが、このような追加の相殺部材は、これ以外の場合で可能性として必要となるよりも実質的に小さくてよく、それにより、これ以外の場合で可能となるよりも、スクロール・ポンプ100をより小さく軽量にすることが可能となる。
【0025】
動作中、モータ108がモータ・シャフト109を回転させるように励磁される。次いで、モータ・シャフト109がカプラ112を回転させる。カプラ112の軸受面156A、156B、156Cが回転軸受110の外側表面に係合し、カプラ112の回転時、回転軸受110が軸受面156A、156B、156C上で回動して軸受面156A、156B、156Cに沿って動く(follow)。この相互作用により、回転軸受110が軌道旋回経路内で固定スクロール部材104に対して移動するようになり、それにより、軌道旋回スクロール部材106が軌道旋回経路内で固定スクロール部材104に対して移動するようになる。
【0026】
第1の軸受面156A、第2の軸受面156B、及び第3の軸受面156Cの形状及び相対的な向きが、上で考察したように、回転軸受110の周りでカプラ112が第1の回転方向又は第2の回転方向に回るときに回転軸受110に対して垂直な方向において、第1の軸受面156A、第2の軸受面156B、及び第3の軸受面156Cにより回転軸受110に対して与えられる力をより良好に誘導するように選択され得る。
【0027】
図9~
図11が、スクロール・ポンプ100の組み立て、及び固定スクロール部材104と軌道旋回スクロール部材106との間のクリアランスの設定を支援することができるスクロール・ポンプ100の実施例の特定の特徴を最良に示す。より具体的には、
図9は、固定スクロール部材104の一部分と、軌道旋回スクロール部材106と、アイドラ・カムシャフト134、第1の軸受組立体136、及び第2の軸受組立体138を有する、アイドラ組立体132のうちの1つのアイドラ組立体とを示す。第1の軸受組立体136が、固定スクロール部材104の対応する開口部124の中で受けられ、アイドラ・カムシャフト134の第1のシャフト部分140が第1の軸受組立体136の中で受けられる。同様に、第2の軸受組立体138が、軌道旋回スクロール部材106の対応する開口部130の中で受けられ、アイドラ・カムシャフト134の第2のシャフト部分142が第2の軸受組立体138の中で受けられる。
【0028】
第1の軸受組立体136のフランジ137が、開口部124を通って軌道旋回スクロール部材106の方に第1の軸受組立体136が引かれるのを防止する。
【0029】
アイドラ・カムシャフト134の第1の端部140に固着された固定部(及び、任意選択のワッシャ)158が、第1の軸受組立体136を通ってアイドラ・カムシャフト134が引かれるのを防止する。示されるように、固定具158が、アイドラ・カムシャフト134の第1の端部140の中の相補的なねじ孔160に係合するねじ固定具である。
【0030】
同様に、第2の軸受組立体138のフランジ139が、開口部130を通って固定スクロール部材104の方に第2の軸受組立体138が引かれるのを防止する。
【0031】
図9及び
図10A~
図10Cに最良に示されるように、アイドラ・カムシャフト134の第2のシャフト部分142が孔162を画定する。第2のシャフト部分142の自由端の反対側の孔162の一部分がねじ切りされている。第2のシャフト部分142が、第2のシャフト部分142の自由端から第1のシャフト部分140の方に延在する一対の径方向反対側にあるスリット164を画定する。スリット164が、第2のシャフト部分142の自由端の近傍において、第2のシャフト部分142を軸方向において分割し、第1のセクション142A及び第2のセクション142Bにする。実施例で、より多くの又はより少ないスリット164が提供されてもよく、それにより、第2のシャフト部分142のより多くの又はより少ないセクション142xが画定される。
【0032】
例えば円錐形として先細である、先細である外側ラジアル面168を有するロック・ウェッジ166が、第2のシャフト部分142によって画定された孔162の中にその先細の端部を挿入するように構成される。肩部172を有するねじ固定具170が、ロック・ウェッジ166を通って軸方向に延在するアパーチャ174を通して挿入されるように構成され、その結果、固定具170の肩部172が支承されて係合するかたちで端面176に当接され得る。この場合、ねじ固定具170が孔162のねじ切りされた部分の中に緩めにねじ込まれ得る。
【0033】
図11を参照すると、軌道旋回スクロール部材106が固定スクロール部材104に組み付けられ得、取り外し可能なシムSが、固定スクロール部材104と軌道旋回スクロール部材106との間に所望のクリアランスを設定する。例えば、適切な厚さの3つ以上のシムSが、例えば、固定端部プレート122と軌道旋回シール126Sに隣接する軌道旋回スクロール126の自由端との間といったように、固定スクロール部材104及び軌道旋回スクロール部材106の隣接する表面の間に、配設され得る。固定スクロール部材104及び軌道旋回スクロール部材106並びにシムSがこのように組み立てられた状態において、ねじ固定具170が孔162の中へさらにねじ込まれ得、その結果、固定具170の肩部162がロック・ウェッジ166を孔162の中へ動かし、それにより、第2のシャフト部分142の第1のセクション142A及び第2のセクション142Bを径方向に拡大し、第2の軸受組立体138の軸受138A、138Bの一方又は両方の内側レースに対して径方向外側においてロック係合させる。ロック・ウェッジ166がこのように第2の軸受組立体138に係合した状態において、固定スクロール部材104及び軌道旋回スクロール部材106がそれらの間の所望のクリアランスのところで固定される。この場合、例えば、固定スクロール部材104と軌道旋回スクロール部材106との間からシムSを引き抜くことにより、組み立てられた固定スクロール部材104及び軌道旋回スクロール部材106からシムSが取り外され得る。
【0034】
別法として、当業者には理解されるような、組立体固定デバイスを使用することにより、固定スクロール部材104と軌道旋回スクロール部材106との間の所望のクリアランスが設定され得、ねじ固定具170が孔162の中にねじ込まれ得、上で考察したように、ロック・ウェッジ166を孔162の中へ動かす。
【0035】
第2のシャフト部分142の第1のセクション142及び第2のセクション142Bを上記のように径方向外側に拡大して、第2の軸受組立体138の軸受138A、138Bの一方又は両方の内側レースにロック係合させることは、永久的なものであってよい。つまり、上記のように拡大することは塑性的な拡大であってよく、それにより、孔162からねじ固定具170が取り外されても、第2のシャフト部分142の第1のセクション142A及び第2のセクション142Bが第2の軸受組立体138にロック係合した状態を維持するようになる。このような実施例では、一体に組み立てられた固定スクロール部材104及び軌道旋回スクロール部材106は、容易には分解され得ない。
【0036】
別法として、上記のように拡大することは、孔からねじ固定具170を取り外した場合には第2のシャフト部分142の第1のセクション142A及び第2のセクション142Bを第2の軸受組立体138にロック係合させた状態で維持しないような、塑性的な拡大であってもよい。このような実施例では、一体に組み立てられた固定スクロール部材104及び軌道旋回スクロール部材106は、より容易に分解され得る。
【0037】
上記の説明及び対応する図面は、本開示によるスクロール・ポンプの1つ又は複数の例示の実施例を参照する。これらの実施例は例示であり、限定的ではない。開示した実施例が、添付の特許請求の範囲によって定義される本発明の範囲から逸脱することなく多数の手法で修正され得ることを当業者であれば認識するであろう。
【外国語明細書】