(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022170725
(43)【公開日】2022-11-10
(54)【発明の名称】アスファルト改質剤
(51)【国際特許分類】
C08G 63/193 20060101AFI20221102BHJP
C08L 67/02 20060101ALI20221102BHJP
C08L 95/00 20060101ALI20221102BHJP
【FI】
C08G63/193
C08L67/02
C08L95/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022072956
(22)【出願日】2022-04-27
(31)【優先権主張番号】17/242,414
(32)【優先日】2021-04-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】000000918
【氏名又は名称】花王株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002620
【氏名又は名称】弁理士法人大谷特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】家 真知子
(72)【発明者】
【氏名】ヒューズ アンドリュー ダイク
【テーマコード(参考)】
4J002
4J029
【Fターム(参考)】
4J002AG00W
4J002CF09X
4J002CF10X
4J002FD20X
4J002GL00
4J029AA03
4J029AB01
4J029AC01
4J029AD01
4J029AE18
4J029BA01
4J029BA02
4J029BA05
4J029BF12
4J029BF20
4J029BF24
4J029CA02
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4J029CA04
4J029CA05
4J029CA06
4J029CB04A
4J029CB05A
4J029CB06A
4J029CC05A
4J029FB02
4J029FC35
4J029FC36
4J029GA12
4J029GA13
4J029GA14
4J029GA15
4J029GA17
4J029GA74
4J029HA01
4J029HB01
4J029JE182
(57)【要約】
【課題】高温で長時間保管された後でも、ポリエステルがアスファルト中に均一に分散する、貯蔵安定性に優れたアスファルト組成物を得るためのアスファルト改質剤の提供。
【解決手段】炭素数4以上12以下の脂肪族ジオール(A)を50モル%以上99モル%以下及びビスフェノールAのアルキレンオキシド付加物(B)を1モル%以上50モル%以下含むアルコール成分由来の構成単位と、カルボン酸成分由来の構成単位とを含むポリエステルからなる、アスファルト改質剤。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
炭素数4以上12以下の脂肪族ジオール(A)を50モル%以上99モル%以下及びビスフェノールAのアルキレンオキシド付加物(B)を1モル%以上50モル%以下含むアルコール成分由来の構成単位と、カルボン酸成分由来の構成単位とを含むポリエステルからなる、アスファルト改質剤。
【請求項2】
ポリエステルの数平均分子量が1,500以上8,000以下である、請求項1に記載のアスファルト改質剤。
【請求項3】
アルコール成分が、アルコール成分の合計100モル%に対して、0.1モル%以上20モル%以下の炭素数12以上22以下の脂肪族モノアルコール(C)を含む、請求項1又は2に記載のアスファルト改質剤。
【請求項4】
カルボン酸成分が、カルボン酸成分の合計100モル%に対して、0.1モル%以上20モル%以下の炭素数12以上22以下の脂肪族モノカルボン酸(D)を含む、請求項1又は2に記載のアスファルト改質剤。
【請求項5】
脂肪族モノカルボン酸(D)の炭素数が16以上20以下である、請求項4に記載のアスファルト改質剤。
【請求項6】
ポリエステルの多分散度Mw/Mnが2.9以上8.0以下である、請求項1または2に記載のアスファルト改質剤。
【請求項7】
脂肪族ジオール(A)とビスフェノールAのアルキレンオキシド付加物(B)のモル比率〔(A)/(B)〕が、1.2以上9以下である、請求項1または2に記載のアスファルト改質剤。
【請求項8】
アスファルト及び請求項1または2のいずれかに記載のアスファルト改質剤を含有するアスファルト組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アスファルト改質剤及びアスファルト組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車道や駐車場、貨物ヤード、歩道等の舗装には、敷設が比較的容易であり、舗装作業開始から交通開始までの時間が短くてすむことから、アスファルト混合物を用いるアスファルト舗装が行われている。このアスファルト舗装は、骨材をアスファルトで結合したアスファルト混合物によって路面が形成されているので、舗装道路は良好な硬度や耐久性を有している。
【0003】
特許文献1には、乾燥強度、水浸漬強度、及び曲げ強度に優れる道路舗装用アスファルト組成物として、アスファルト、所定量のポリエステル樹脂、及び骨材を含有し、ポリエステル樹脂が、ビスフェノールAのアルキレンオキシド付加物を所定量含むアルコール成分由来の構成単位と、フマル酸、マレイン酸、テレフタル酸及びイソフタル酸から選ばれる1種以上を所定量含むカルボン酸成分由来の構成単位とを有し、かつ、所定の軟化点、ガラス転移点、数平均分子量及び酸価を有する、道路舗装用アスファルト組成物が開示されている。
特許文献2には、高温での保管安定性に優れる、アスファルト組成物として、アスファルトと、ポリエステル樹脂と、分散剤とを含有するアスファルト組成物が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】米国特許第10,662,110号明細書
【特許文献2】米国特許出願公開第2019-0233647号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載の道路舗装用アスファルト組成物において、ポリエステルをアスファルトに混合した際に、アスファルトとポリエステルの比重の違いによって、均一な状態を保てずポリエステルの沈殿物が発生し、結果としてアスファルト舗装の強度にばらつきが生じる場合がある。
特許文献2に記載のアスファルト組成物において、アスファルト組成物に分散剤を添加することによってポリエステルの分散径を小さくし、アスファルト中でのポリエステルの沈殿物の形成を抑制することで、強度ムラのない舗装を可能にする。しかし、アスファルト組成物が高温で数時間以上保管されると、分散剤のポリエステルへの吸着能が低下し、アスファルト舗装の強度の均一性が失われる場合がある。
施工会社のプラントでアスファルト混合物が製造されてから、舗装の現場まで運ばれ道路に施工されるまでに、数時間以上要することが少なくない。そのため、更なる貯蔵安定性の改善が求められる。
本発明は、高温で長時間保管された後でも、ポリエステルがアスファルト中に均一に分散する、貯蔵安定性に優れたアスファルト組成物を得るためのアスファルト改質剤及びアスファルト組成物に関する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、アスファルト及びポリエステルを含有するアスファルト組成物において、特定のポリエステルを配合することで、上記課題を解決できることを見出した。
すなわち、本発明は、次の[1]~[2]を包含する。
[1] 炭素数4以上12以下の脂肪族ジオール(A)を50モル%以上99モル%以下及びビスフェノールAのアルキレンオキシド付加物(B)を1モル%以上50モル%以下含むアルコール成分由来の構成単位と、カルボン酸成分由来の構成単位とを含むポリエステルからなる、アスファルト改質剤。
[2] 上記[1]に記載のアスファルト改質剤を含有する、アスファルト組成物。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、高温で長時間保管された後でも、ポリエステルがアスファルト中に均一に分散する、貯蔵安定性に優れたアスファルト組成物を得るためのアスファルト改質剤、及びアスファルト組成物を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
[アスファルト改質剤]
本発明のアスファルト改質剤は、炭素数4以上12以下の脂肪族ジオール(A)を50モル%以上99モル%以下及びビスフェノールAのアルキレンオキシド付加物(B)を1モル%以上50モル%以下含むアルコール成分由来の構成単位と、カルボン酸成分由来の構成単位とを含むポリエステルからなる。
【0009】
本発明の効果が得られる理由は定かではないが、以下のように考えられる。
本発明のアスファルト改質剤を構成するポリエステルの脂肪族ジオール由来の構成単位は、アスファルト中の脂肪族アルキル構造を持つ低分子量成分と相互作用し複合体を形成すると考えられる。そして、この複合体がアスファルトとポリエステルとの界面の安定性を保ち、またポリエステルとアスファルトとの比重の差も小さいため、ポリエステルの沈殿物が生じにくいと考えられる。
また、ポリエステルが直接アスファルトの構成成分と複合体を形成するため、高温下で長時間保管後も、安定な状態を保てると考えられる。
【0010】
本明細書における各種用語の定義等を以下に示す。
ポリエステル中、「アルコール成分由来の構成単位」とは、アルコール成分のヒドロキシ基から水素原子を除いた構造を意味し、「カルボン酸成分由来の構成単位」とは、カルボン酸成分のカルボキシ基からヒドロキシ基を除いた構造を意味する。
「カルボン酸成分」とは、そのカルボン酸のみならず、反応中に分解して酸を生成する無水物、及びカルボン酸のアルキルエステル(例えば、アルキル基の炭素数1以上3以下)も含む概念である。カルボン酸成分がカルボン酸のアルキルエステルである場合、エステルのアルコール残基であるアルキル基の炭素数を、カルボン酸の炭素数に算入しない。
【0011】
<ポリエステル>
本発明のアスファルト改質剤を構成するポリエステルについて説明する。ポリエステルは、単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
ポリエステルは、貯蔵安定性の観点から、炭素数4以上12以下の脂肪族ジオール(A)を50モル%以上99モル%以下及びビスフェノールAのアルキレンオキシド付加物(B)を1モル%以上50モル%以下含むアルコール成分由来の構成単位と、カルボン酸成分由来の構成単位とを含む。
以下、アルコール成分、カルボン酸成分及びポリエステルの物性等について説明する。
【0012】
(アルコール成分)
炭素数4以上12以下の脂肪族ジオール(A)(以下、「脂肪族ジオール(A)」)の炭素数は、貯蔵安定性の観点から、好ましくは5以上、より好ましくは6以上であり、そして、好ましくは10以下、より好ましくは8以下である。
脂肪族ジオール(A)としては、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,4-ブテンジオール、1,3-ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,10-デカンジオール、1,12-ドデカンジオール等が挙げられ、好ましくは1,6-ヘキサンジオールである。脂肪族ジオール(A)は、単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
アルコール成分中の脂肪族ジオール(A)の含有量は、貯蔵安定性の観点から、アルコール成分100モル%に対して、50モル%以上であり、好ましくは50モル%超、より好ましくは52モル%以上、更に好ましくは55モル%以上であり、そして、99モル%以下であり、好ましくは95モル%以下、より好ましくは85モル%以下、更に好ましくは70モル%以下である。
【0013】
ビスフェノールAのアルキレンオキシド付加物(B)としては、下記式(I)で表されるビスフェノールAのアルキレンオキシド付加物が挙げられる。
【0014】
【0015】
〔式中、OR1及びR1Oはアルキレンオキシドであり、R1は炭素数2又は3のアルキレン基、x及びyはアルキレンオキシドの平均付加モル数を示す正の数を示し、xとyの和は好ましくは1以上、より好ましくは1.5以上であり、そして、好ましくは16以下、より好ましくは8以下、更に好ましくは4以下である。〕
式(I)で表されるビスフェノールAのアルキレンオキシド付加物としては、例えば、ビスフェノールA〔2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン〕のプロピレンオキシド付加物、ビスフェノールAのエチレンオキシド付加物が挙げられる。ビスフェノールAのアルキレンオキシド付加物(B)は、単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
アルコール成分中のビスフェノールAのアルキレンオキシド付加物(B)の含有量は、アスファルト舗装の耐久性の観点から、アルコール成分100モル%に対して、1モル%以上であり、好ましくは5モル%以上、より好ましくは15モル%以上、更に好ましくは30モル%以上であり、そして、50モル%以下であり、好ましくは50モル%未満、より好ましくは48モル%以下、更に好ましくは45モル%以下である。
【0016】
アルコール成分における脂肪族ジオール(A)とビスフェノールAのアルキレンオキシド付加物(B)とのモル比率〔(A)/(B)〕は、貯蔵安定性の観点から、好ましくは1.2以上、より好ましくは1.3以上、更に好ましくは1.4以上であり、そして、好ましくは9以下、より好ましくは5以下、更に好ましくは3以下である。
【0017】
アルコール成分は、脂肪族ジオール(A)及びビスフェノールAのアルキレンオキシド付加物(B)以外のアルコール成分を含むことができる。具体的には、脂肪族ジオール(A)以外の脂肪族ジオール、ビスフェノールAのアルキレンオキシド付加物(B)以外の芳香族ジオール、3価以上8価以下の多価アルコール等が挙げられる。これらのアルコール成分は、単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
3価以上8価以下の多価アルコールとしては、グリセリン等の3価アルコールが挙げられる。
【0018】
アルコール成分は、貯蔵安定性の観点から、脂肪族モノアルコール(C)を含むことができる。
脂肪族モノアルコール(C)の炭素数は、好ましくは12以上、より好ましくは14以上、更に好ましくは16以上であり、そして、好ましくは22以下、より好ましくは21以下、更に好ましくは20以下である。
脂肪族モノアルコール(C)としては、ラウリルアルコール、ミリスチルアルコール、パルミチルアルコール、ステアリルアルコール、アラキジルアルコール、ドコサノール等が挙げられ、好ましくはステアリルアルコールである。
脂肪族モノアルコール(C)を含む場合、その含有量は、アルコール成分の合計100モル%に対して、好ましくは0.1モル%以上、より好ましくは1モル%以上、更に好ましくは5モル%以上であり、そして、好ましくは20モル%以下、より好ましくは15モル%以下、更に好ましくは10モル%以下である。
【0019】
本発明のポリエステルの好ましい態様として、アルコール成分が実質的に脂肪族ジオール(A)及びビスフェノールAのアルキレンオキシド付加物(B)のみからなる態様が挙げられる。
【0020】
(カルボン酸成分)
カルボン酸成分としては、脂肪族ジカルボン酸、芳香族ジカルボン酸、3価以上6価以下の多価カルボン酸等が挙げられる。これらのカルボン酸成分は、単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
脂肪族ジカルボン酸の主鎖の炭素数は、貯蔵安定性の観点から、好ましくは3以上、より好ましくは4以上であり、そして、好ましくは10以下、より好ましくは6以下である。なお、脂肪族ジカルボン酸の主鎖の炭素数は、カルボキシ基を形成する炭素を含む。
脂肪族ジカルボン酸としては、飽和脂肪族ジカルボン酸、不飽和脂肪族ジカルボン酸のいずれも用いることができ、好ましくは不飽和脂肪族ジカルボン酸である。なお、飽和脂肪族ジカルボン酸は主鎖に不飽和結合を有さない脂肪族ジカルボン酸であり、不飽和脂肪族酸はジカルボン主鎖に不飽和結合を有する脂肪族ジカルボン酸である。
飽和脂肪族ジカルボン酸の具体例としては、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカン二酸等が挙げられる。不飽和脂肪族ジカルボン酸の具体例としては、フマル酸、マレイン酸、シトラコン酸、イタコン酸、グルタコン酸等が挙げられる。また、脂肪族ジカルボン酸には、ドデシルコハク酸、ドデセニルコハク酸、オクテニルコハク酸等の炭素数1以上20以下のアルキル基又は炭素数2以上20以下のアルケニル基で置換されたコハク酸も含まれる。
芳香族ジカルボン酸としては、テレフタル酸、フタル酸、イソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸等が挙げられる。中でも、好ましくはテレフタル酸及びイソフタル酸から選択される1種以上、より好ましくはテレフタル酸である。
3価以上6価以下の多価カルボン酸としては、例えば、トリメリット酸、2,5,7-ナフタレントリカルボン酸、ピロメリット酸等の3価カルボン酸が挙げられる。
【0021】
カルボン酸成分は、貯蔵安定性の観点から、好ましくはフマル酸及びマレイン酸から選ばれる1種以上、より好ましくはフマル酸を含む。
カルボン酸成分中のフマル酸及びマレイン酸から選ばれる少なくとも1種以上の合計含有量は、カルボン酸成分100モル%中、好ましくは10モル%以上、より好ましくは40モル%以上、更に好ましくは80モル%以上であり、そして、100モル%以下であり、好ましくは95%以下である。
【0022】
カルボン酸成分は、貯蔵安定性の観点から、脂肪族モノカルボン酸(D)を含むことができる。
脂肪族モノカルボン酸(D)の炭素数は、好ましくは12以上、より好ましくは14以上、更に好ましくは16以上であり、そして、好ましくは22以下、より好ましくは21以下、更に好ましくは20以下である。
脂肪族モノカルボン酸(D)としては、飽和脂肪族モノカルボン酸及び不飽和モノカルボン酸が挙げられ、好ましくは飽和脂肪族モノカルボン酸である。飽和脂肪族モノカルボン酸としてはラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、アラキジン酸、ベヘン酸等が挙げられ、好ましくはステアリン酸である。不飽和脂肪族モノカルボン酸としては、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸が挙げられる。
カルボン酸成分が脂肪族モノカルボン酸(D)を含む場合、その含有量は、カルボン酸成分の合計100モル%に対して、好ましくは0.1モル%以上、より好ましくは1モル%以上、更に好ましくは5モル%以上であり、そして、好ましくは20モル%以下、より好ましくは15モル%以下、更に好ましくは10モル%以下である。
【0023】
アルコール成分及びカルボン酸成分は、前述の脂肪族モノアルコール(C)及び前述の脂肪族モノカルボン酸(D)から選ばれる1種以上を含むことができる。この場合、好ましくは脂肪族モノアルコール(C)又は脂肪族モノカルボン酸(D)のいずれか、より好ましくは脂肪族モノカルボン酸(D)を含む。
【0024】
本発明のポリエステルの好ましい態様として、カルボン酸成分が実質的に脂肪族ジカルボン酸のみからなる態様、並びに、カルボン酸成分が実質的に脂肪族ジカルボン酸及び脂肪族モノカルボン酸のみからなる態様が挙げられる。
【0025】
(アルコール成分に対するカルボン酸成分のモル比)
アルコール成分のヒドロキシ基に対するカルボン酸成分のカルボキシ基の当量比(COOH基/OH基)は、アスファルト舗装の耐久性の観点から、好ましくは0.6以上、より好ましくは0.7以上、更に好ましくは0.8以上であり、そして、好ましくは1.3以下、より好ましくは1.2以下、更に好ましくは1.1以下である。
【0026】
本発明のポリエステルは、実質的にその特性を損なわない程度に変性されたポリエステルであってもよい。変性されたポリエステルは、具体的には、特開平11-133668号公報、特開平10-239903号公報、特開平8-20636号公報等に記載の方法によりフェノール、ウレタン、エポキシ等によりグラフト化やブロック化したポリエステルが挙げられる。好ましい変性されたポリエステルは、ポリエステルをポリイソシアネート化合物でウレタン伸長したウレタン変性ポリエステルが挙げられる。
【0027】
(ポリエステルの物性)
ポリエステルの酸価は、貯蔵安定性の観点から、好ましくは3mgKOH/g以上、より好ましくは8mgKOH/g以上、更に好ましくは10mgKOH/g以上であり、そして、好ましくは60mgKOH/g以下、より好ましくは40mgKOH/g以下、更に好ましくは30mgKOH/g以下である。
ポリエステルの水酸基価は、同様の観点から、好ましくは10mgKOH/g以上、より好ましくは12mgKOH/g以上、更に好ましくは15mgKOH/g以上であり、そして、好ましくは50mgKOH/g以下、より好ましくは40mgKOH/g以下、更に好ましくは30mgKOH/g以下である。
ポリエステルの数平均分子量は、同様の観点から、好ましくは1,500以上、より好ましくは2,000以上、更に好ましくは2,300以上であり、そして、好ましくは8,000以下、より好ましくは3,000以下、更に好ましくは3,000未満、更に好ましくは2,900以下である。
ポリエステルの重量平均分子量は、同様の観点から、好ましくは5,000以上、より好ましくは6,000以上、更に好ましくは7,000以上であり、そして、好ましくは60,000以下、より好ましくは10,000以下、更に好ましくは9,000以下である。
ポリエステルのピークトップ分子量は、同様の観点から、好ましくは4,000以上、より好ましくは4,500以上、更に好ましくは5,000以上であり、そして、好ましくは25,000以下、より好ましくは9,000以下、更に好ましくは8,000以下である。
ポリエステルの多分散度(Mw/Mn)は、同様の観点から、好ましくは2.5以上、より好ましくは2.9以上であり、そして、好ましくは8.5以下、より好ましくは8.0以下、更に好ましくは4.0以下である。
【0028】
酸価、水酸基価、数平均分子量、重量平均分子量、ピークトップ分子量及び多分散度は、実施例に記載の方法により測定することができる。なお、酸価、水酸基価、数平均分子量、重量平均分子量、ピークトップ分子量及び多分散度は、原料モノマー組成、触媒量又は反応条件等により調整することができる。
【0029】
(ポリエステルの製造方法)
ポリエステルの製造方法は、特に限定されるものではない。例えば、上述したアルコール成分及びカルボン酸成分を重縮合することにより製造することができる。
アルコール成分とカルボン酸の夫々の配合量は、アルコール成分由来の構成単位に対するカルボン酸成分由来の構成単位のモル比〔カルボン酸成分/アルコール成分〕が上述した数値範囲内になるような配合量である。
重縮合反応の温度は、特に限定されるものではないが、反応性の観点から、好ましくは160℃以上、より好ましくは190℃以上、更に好ましくは200℃以上であり、そして、好ましくは260℃以下、より好ましくは250℃以下、更に好ましくは240℃以下である。なお、重縮合は、不活性ガス雰囲気中にて行ってもよい。
【0030】
重縮合反応には、反応速度の観点から、ジ(2-エチルヘキサン酸)錫(II)等のSn-C結合を有していない錫(II)化合物をエステル化触媒として使用することができる。エステル化触媒の使用量は、アルコール成分とカルボン酸成分との総量100質量部に対して、好ましくは0.01質量部以上、より好ましくは0.1質量部以上、更に好ましくは0.2質量部以上であり、そして、好ましくは1.5質量部以下、より好ましくは1.0質量部以下、更に好ましくは0.6質量部以下である。
重縮合反応には、エステル化触媒に加えて、反応速度の観点から、没食子酸等のピロガロール化合物を助触媒として使用することができる。助触媒の使用量は、アルコール成分とカルボン酸成分との総量100質量部に対して、好ましくは0.001質量部以上、より好ましくは0.005質量部以上、更に好ましくは0.01質量部以上であり、そして、好ましくは0.15質量部以下、より好ましくは0.10質量部以下、更に好ましくは0.08質量部以下である。
重縮合反応には、触媒に加えて、4-tert-ブチルカテコール等の重合禁止剤を使用することができる。重合禁止剤の使用量は、アルコール成分とカルボン酸成分の総量100質量部に対して、好ましくは0.001質量部以上、より好ましくは0.01質量部以上であり、そして、好ましくは0.10質量部以下、より好ましくは0.05質量部以下である。
【0031】
(アスファルト改質剤中のポリエステルの含有量)
アスファルト改質剤中のポリエステルの含有量は、アスファルト改質剤の総質量中、好ましくは50質量%以上、より好ましくは70質量%以上、更に好ましくは85質量%以上である。
【0032】
本発明のアスファルト改質剤は、例えばアスファルトと混合し、アスファルト組成物を得るために使用することができる。得られたアスファルト組成物に、加熱した骨材を添加して、アスファルト混合物とした後に、舗装に使用することができる。本発明のアスファルト改質剤は、骨材を含むアスファルト混合物に配合するためのアスファルト改質剤として好適に使用することができる。
【0033】
[アスファルト組成物]
本発明のアスファルト組成物は、アスファルト及び上記アスファルト改質剤を構成するポリエステルを含有する。
【0034】
<アスファルト>
本発明のアスファルト組成物は、アスファルトを含有する。
アスファルトとしては、種々のアスファルトが使用できる。例えば、舗装用石油アスファルトであるストレートアスファルトの他、改質アスファルトが挙げられる。
ストレートアスファルトとは、原油を常圧蒸留装置、減圧蒸留装置等にかけて得られる残留瀝青物質のことである。
改質アスファルトとしては、ブローンアスファルト;熱可塑性エラストマー、熱可塑性樹脂等の高分子材料で改質したポリマー改質アスファルト(以下、「ポリマー改質アスファルト」ともいう)等が挙げられる。ブローンアスファルトとは、ストレートアスファルトと重質油との混合物を加熱し、その後空気を吹き込んで酸化させることによって得られるアスファルトを意味する。
アスファルトは、ストレートアスファルト及びポリマー改質アスファルトから選択されることが好ましく、アスファルト舗装の耐久性の観点からはポリマー改質アスファルトがより好ましく、汎用性の観点からはストレートアスファルトがより好ましい。
【0035】
(熱可塑性エラストマー)
ポリマー改質アスファルトにおける熱可塑性エラストマーとしては、例えば、スチレン/ブタジエンブロック共重合体(以下、「SB」ともいう)、スチレン/ブタジエン/スチレンブロック共重合体(以下、「SBS」ともいう)、スチレン/ブタジエンランダム共重合体(以下、「SBR」ともいう)、スチレン/イソプレンブロック共重合体(以下、「SI」ともいう)、スチレン/イソプレン/スチレンブロック共重合体(以下、「SIS」ともいう)、スチレン/イソプレンランダム共重合体(以下、「SIR」ともいう)、エチレン/酢酸ビニル共重合体、エチレン/アクリル酸エステル共重合体、スチレン/エチレン/ブチレン/スチレン共重合体、スチレン/エチレン/プロピレン/スチレン共重合体、ポリウレタン系熱可塑性エラストマー、ポリオレフィン系熱可塑性エラストマー、イソブチレン/イソプレン共重合体、ポリイソプレン、ポリクロロプレン、上記以外の合成ゴム、及び天然ゴムから選ばれる少なくとも1種が挙げられる。
【0036】
これらの中でも、熱可塑性エラストマーとしては、アスファルト舗装の耐久性の観点から、好ましくはSB、SBS、SBR、SI、SIS、SIR、及びエチレン/アクリル酸エステル共重合体から選ばれる少なくとも1種、より好ましくはSB、SBS、SBR、SI、SIS、及びSIRから選ばれる少なくとも1種、更に好ましくはSBR及びSBSから選ばれる少なくとも1種である。
ポリマー改質アスファルト中の熱可塑性エラストマーの含有量は、アスファルト舗装の耐久性の観点から、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは0.5質量%以上、更に好ましくは1質量%以上であり、そして、好ましくは30質量%以下、より好ましくは15質量%以下、更に好ましく5質量%以下である。
【0037】
アスファルト中のアスファルテンの含有量は、アスファルト舗装の耐久性の観点から、好ましくは13質量%以上、より好ましくは15質量%以上、更に好ましくは17質量%以上であり、そして、好ましくは35質量%以下、より好ましくは27質量%以下、更に好ましくは24質量%以下ある。
なお、アスファルト中のアスファルテンの含有量は、石油学会規格JPI-5S-22-83「アスファルテンのカラムクロマトグラフィーによる組成分析法」により測定した値である。
【0038】
アスファルト組成物中におけるストレートアスファルト及びポリマー改質アスファルトの合計含有量は、アスファルト性能を発揮する観点から、好ましくは60質量%以上、より好ましくは65質量%以上、更に好ましくは70質量%以上であり、貯蔵安定性の観点から、好ましくは99.5質量%以下、より好ましくは99質量%以下、更に好ましくは98質量%以下である。
【0039】
<ポリエステルの含有量>
アスファルト組成物中のポリエステルの含有量は、アスファルト舗装の耐久性と貯蔵安定性の観点から、アスファルト100質量部に対して、好ましくは0.5質量部以上、より好ましくは1質量部以上、更に好ましくは2質量部以上、更に好ましくは4質量部以上であり、そして、好ましくは15質量部以下、より好ましくは12質量部以下、更に好ましくは10質量部以下、更に好ましくは8質量部以下である。
【0040】
<分散剤>
アスファルト組成物は、更に分散剤を含むことができる。
分散剤としては、ポリアミドアミンとその塩、ポリカルボン酸とその塩、高分子量不飽和酸エステル、変性ポリウレタン、変性ポリエステル、変性ポリ(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル系共重合体、ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物等の高分子分散剤が挙げられる。なお、本発明における「高分子分散剤」とは、重量平均分子量が1,000以上の分散剤を意味する。
ただし、分散剤の含有量は、貯蔵安定性の観点から、ポリエステル100質量部に対し、好ましくは1質量部未満、より好ましくは0.5質量部未満であり、更に好ましくは実質的に含まなくてよい。
【0041】
[アスファルト組成物の製造方法]
本発明のアスファルト組成物は、アスファルトと、上記ポリエステルとを混合することで製造することができる。具体的には、アスファルトを加熱溶融し、ポリエステルを添加し、通常用いられている混合機にて、アスファルト中にポリエステルが均一に分散するまで撹拌混合することにより、アスファルト組成物が得られる。
通常用いられている混合機としては、ホモミキサー、ディゾルバー、パドルミキサー、リボンミキサー、スクリューミキサー、プラネタリーミキサー、真空逆流ミキサー、ロールミル、二軸押出機等が挙げられる。
【0042】
アスファルトとポリエステルとの混合温度は、アスファルト中にポリエステルを均一に分散させる観点から、好ましくは140℃以上、より好ましくは150℃以上、更に好ましくは160℃以上であり、そして、好ましくは230℃以下、より好ましくは210℃以下、更に好ましくは200℃以下である。
また、アスファルトとポリエステルとの混合時間は、アスファルト中にポリエステルを均一に分散させる観点から、好ましくは15分間以上、より好ましくは30分間以上、更に好ましくは1時間以上であり、そして、好ましくは10時間以下、より好ましくは5時間以下、更に好ましくは3時間以下である。
本発明のアスファルト組成物は、バインダー組成物であり、例えば、該アスファルト組成物に、骨材を添加して、アスファルト混合物とした後に、舗装に使用できる。すなわち、本発明のアスファルト組成物は、舗装用として好適であり、特に道路舗装用として好適である。
【0043】
[アスファルト混合物]
アスファルト組成物の好適な使用例であるアスファルト混合物について説明する。
アスファルト混合物は、骨材と上記アスファルト組成物を含む。つまり、アスファルト混合物は、少なくとも骨材、アスファルト及び上記ポリエステルを含む
【0044】
<骨材>
骨材としては、例えば、砕石、玉石、砂利、砂、再生骨材、セラミックス等を任意に選択して用いることができる。また、骨材としては、粒径2.36mm以上の粗骨材、粒径2.36mm未満の細骨材のいずれも使用することができ、好ましくは粗骨材と細骨材との組合せである。
アスファルト混合物中の骨材の含有量は、アスファルト舗装の耐久性の観点から、好ましくは85質量%以上、より好ましくは90質量%以上、より好ましくは92質量%以上であり、そして、好ましくは98質量%以下、より好ましくは97質量%以下、更に好ましくは96質量%以下である。
【0045】
<添加剤>
アスファルト混合物には、上記の骨材、アスファルト及びポリエステルに加え、必要に応じて、従来、アスファルト混合物に慣用されている各種添加剤、例えば、造膜剤、増粘安定剤、乳化剤等を添加してもよい。
これらの添加剤の合計含有量は、アスファルト混合物中、好ましくは50質量%以下、より好ましくは25質量%以下、更に好ましくは5質量%以下である。
【0046】
[アスファルト混合物の製造方法]
アスファルト混合物の製造方法については、特に制限はなく、いかなる製造方法で製造してもよい。通常、骨材とアスファルトを含むアスファルト混合物の製造方法に準じて行うことができる。具体的には、加熱した骨材に上述のアスファルト組成物を添加及び混合する方法が挙げられる。
【0047】
加熱した骨材の温度は、アスファルト舗装の耐久性の観点から、好ましくは130℃以上、より好ましくは150℃以上、更に好ましくは170℃以上であり、アスファルトの熱劣化を防止する観点から、好ましくは230℃以下、より好ましくは210℃以下、更に好ましくは200℃以下である。
【0048】
骨材とアスファルト組成物との混合温度は、アスファルト舗装の耐久性の観点から、好ましくは130℃以上、より好ましくは150℃以上、更に好ましくは170℃以上であり、アスファルトの熱劣化を防止する観点から、好ましくは230℃以下、より好ましくは210℃以下、更に好ましくは200℃以下である。
骨材とアスファルト組成物との混合時間は、特に限定されず、好ましくは30秒間以上、より好ましくは1分間以上、更に好ましくは2分間以上であり、そして、好ましくは2時間以下、より好ましくは1時間以下、更に好ましくは30分間以下である。
【0049】
アスファルト混合物の製造方法は、アスファルト舗装の耐久性の観点から、骨材とアスファルト組成物を混合した後、得られたアスファルト混合物を上記の混合温度又は該混合温度以上の温度で保持する工程を有することが好ましい。
アスファルト混合物を保持する工程においては、混合物を更に混合してもよい。
保持時間は、好ましくは0.5時間以上、より好ましくは1時間以上、更に好ましくは1.5時間以上であり、そして、時間の上限は、特に限定されないが、例えば48時間程度である。
【0050】
[道路舗装方法]
アスファルト混合物は、道路舗装用として好適であり、上述したように、アスファルト組成物に骨材を添加したアスファルト混合物が、道路舗装に使用される。
道路舗装方法は、前述のアスファルト混合物を道路に施工し、アスファルト舗装材層を形成する工程を有する。具体的には、道路舗装方法は、前述のアスファルト組成物と、加熱した骨材とを混合しアスファルト混合物を得る工程(工程1)、及び前記工程1で得られたアスファルト混合物を道路に施工してアスファルト舗装材層を形成する工程(工程2)を含む。アスファルト舗装材層は、好ましくは基層又は表層である。
【0051】
アスファルト混合物は、公知の施工機械編成で、同様の方法によって締固め施工すればよい。加熱アスファルト混合物として使用する場合の締固め温度は、アスファルト舗装の耐久性の観点から、好ましくは100℃以上、より好ましくは120℃以上、更に好ましくは130℃以上であり、そして、好ましくは200℃以下、より好ましくは180℃以下である。
【実施例0052】
以下の製造例、実施例及び比較例において、「部」及び「%」は特記しない限り「質量部」及び「質量%」である。
【0053】
ポリエステルの各物性値については次の方法により測定、評価した。
(1)ポリエステルの酸価
ポリエステルの酸価は、JIS K0070:1992の方法に基づき測定した。ただし、測定溶媒のみJIS K0070:1992に規定のエタノールとエーテルとの混合溶媒から、アセトンとトルエンとの混合溶媒(アセトン:トルエン=1:1(容量比))に変更した。
【0054】
(2)ポリエステルの水酸基価
ポリエステルの水酸基価は、JIS K0070:1992の方法に基づき測定した。ただし、測定溶媒のみJIS K0070:1992に規定のエタノールとエーテルとの混合溶媒から、テトラヒドロフランに変更した。
【0055】
(3)ポリエステルの数平均分子量、重量平均分子量、ピークトップ分子量及び多分散度
以下の方法により、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法により分子量分布を測定し、数平均分子量Mn、重量平均分子量Mw、ピークトップ分子量Mp及び多分散度Mw/Mnを求めた。
(i)試料溶液の調製
濃度が0.5g/100mLになるように、試料を、テトラヒドロフランに60℃で溶解させた。その後室温下で、この溶液を孔径0.2μmのPTFEタイプメンブレンフィルター(東洋濾紙株式会社製、「DISMIC-25JP」)を用いて濾過して不溶解分を除き、試料溶液とした。
(ii)分子量測定
下記の測定装置と分析カラムを用い、溶離液としてテトラヒドロフランを、毎分1mLの流速で流し、40℃の恒温槽中でカラムを安定させた。そこに上記(i)で得た試料溶液100μLを注入して測定を行った。試料の分子量は、あらかじめ作成した検量線に基づき算出した。このときの検量線には、数種類の単分散ポリスチレン「A-500」(5.0×102)、「A-1000」(1.01×103)、「A-2500」(2.63×103)、「A-5000」(5.97×103)、「F-1」(1.02×103)、「F-2」(1.81×104)、「F-4」(3.97×104)、「F-10」(9.64×104)、「F-20」(1.90×105)、「F-40」(4.27×105)、「F-80」(7.06×105)、「F-128」(1.09×106)(以上、東ソー株式会社製)を標準試料として作成したものを用いた。括弧内は分子量を示す。
測定装置:「HLC-8320GPC」(東ソー株式会社製)
分析カラム:「GMHXL」+「G3000HXL」(東ソー株式会社製)
【0056】
製造例1~4(ポリエステル(E-1)~(E-4)の製造)
表1に示すアルコール成分、カルボン酸成分及び重合禁止剤を、温度計、ステンレス製撹拌棒、脱水管、窒素導入管及び熱電対を装備した10L容の四つ口フラスコに入れ、130℃まで昇温した後、窒素雰囲気下にてジ(2-エチルヘキサン酸)錫(II)及び没食子酸を添加し、140℃まで昇温した。その後、7時間かけて210℃まで昇温を行い、210℃にて8kPaで1時間反応させて、ポリエステル(E-1)~(E-4)を得た。結果を表1に示す。
【0057】
製造例5(ポリエステル(C-1)の製造)
表1に示すアルコール成分、カルボン酸成分及び重合禁止剤を、温度計、ステンレス製撹拌棒、脱水管、窒素導入管及び熱電対を装備した10L容の四つ口フラスコに入れ、130℃まで昇温した後、窒素雰囲気下にてジ(2-エチルヘキサン酸)錫(II)及び没食子酸を添加し、170℃まで昇温した。その後、3時間かけて190℃まで昇温を行い、190℃にて2時間反応させ、その後190℃にて8kPaで3時間反応させて、ポリエステル(C-1)を得た。結果を表1に示す。
【0058】
製造例6(ポリエステル(C-2)の製造)
表1に示すアルコール成分及びカルボン酸成分を、温度計、ステンレス製撹拌棒、脱水管、窒素導入管及び熱電対を装備した10L容の四つ口フラスコに入れ、130℃まで昇温した後、窒素雰囲気下にてジ(2-エチルヘキサン酸)錫(II)及び没食子酸を添加し、180℃まで昇温した。その後、3時間かけて210℃まで昇温を行い、210℃で3時間反応させ、その後210℃にて8kPaで1時間半反応させて、ポリエステル(C-2)を得た。結果を表1に示す。
【0059】
製造例7(ポリエステル(C-3)の製造)
表1に示すアルコール成分、カルボン酸成分及び重合禁止剤を、温度計、ステンレス製撹拌棒、脱水管、窒素導入管及び熱電対を装備した10L容の四つ口フラスコに入れ、130℃まで昇温した後、窒素雰囲気下にてジ(2-エチルヘキサン酸)錫(II)及び没食子酸を添加し、140℃まで昇温した。その後、7時間かけて210℃まで昇温を行い、210℃にて8kPaで1時間反応させて、ポリエステル(C-3)を得た。結果を表1に示す。
【0060】
【0061】
実施例1(アスファルト組成物)
あらかじめ180℃に加熱したストレートアスファルト(Associated Asphalt社製、パフォーマンスグレード(PG)64-22、アスファルト中のアスファルテン含有量:20.9質量%)200gを300mLステンレスビーカーに計量し、これに製造例1で得たポリエステル(E-1)10g(アスファルト100質量部に対して5質量部)を加え、180℃、撹拌速度400rpmで2時間撹拌して、アスファルト組成物(AS-1)を調製した。
【0062】
実施例2~4、比較例1~3
表2に示す配合に変更したこと以外、実施例1と同様にして、アスファルト組成物AS-2~AS-4及びAS-C1~AS-C3を調製した。
【0063】
比較例4
添加剤として分散剤(ルーブリゾール社製、「Solplus K240」)0.25gをポリエステル(C-1)と共に加えること以外、比較例1と同様にして、アスファルト組成物AS-C4を調製した。
【0064】
[評価]
〔貯蔵安定性試験(シガーチューブ試験)〕
ASTM D7173に従い、アスファルト組成物におけるポリエステルが分離する傾向を評価した。具体的には、得られたアスファルト組成物50gを、垂直に立てた25mm径のアルミニウムチューブ(GENEQ Inc.社製、「Aluminum Tube」)に注いだ。アスファルト組成物を注ぎ入れたアルミニウムチューブに封をして、垂直に立てた状態で163℃にて48時間静置した。その後、アルミニウムチューブを垂直に立てた状態を保持して、-10℃にて4時間固化させた。
固化した試料をアルミニウムチューブごと、電動カッターを用いて3つの部分に等分に切断した。中央部の試料は廃棄した。
上部の試料及び下部の試料を別々に163℃に加熱して液化させ、ASTM D36に従い軟化点試験器(PAC LP社製、「Ring and Ball Herzog HRB 754」)を用いてそれぞれの軟化点を測定した。下部の試料の軟化点と上部の試料の軟化点の差が小さいほど、アスファルト組成物が貯蔵安定性に優れることを示す。結果を表2に示す。
【0065】
【0066】
以上、実施例と比較例を対比すると、実施例の特定のポリエステルを用いたアスファルト組成物は、比較例のアスファルト組成物と比較して、優れた高温での貯蔵安定性を示すことが理解できる。
本発明のアスファルト組成物をアスファルト舗装に用いることで、高温で長時間保管した後でも、強度ムラのない舗装体が得られると期待される。