IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社ナベルの特許一覧

<>
  • 特開-孵化途中卵観測用のプローブ 図1
  • 特開-孵化途中卵観測用のプローブ 図2
  • 特開-孵化途中卵観測用のプローブ 図3
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022170745
(43)【公開日】2022-11-11
(54)【発明の名称】孵化途中卵観測用のプローブ
(51)【国際特許分類】
   G01N 33/08 20060101AFI20221104BHJP
   A01K 43/00 20060101ALI20221104BHJP
   G01N 21/49 20060101ALI20221104BHJP
【FI】
G01N33/08
A01K43/00
G01N21/49 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2019190280
(22)【出願日】2019-10-17
(71)【出願人】
【識別番号】597017812
【氏名又は名称】株式会社ナベル
(72)【発明者】
【氏名】南部 邦男
【テーマコード(参考)】
2G059
【Fターム(参考)】
2G059AA05
2G059BB08
2G059BB11
2G059DD13
2G059DD15
2G059EE02
2G059FF04
2G059GG02
2G059KK01
2G059MM01
(57)【要約】
【課題】孵卵機内という特殊な環境であっても孵化途中卵の内部状態を観測できる孵化途中卵観測用のプローブを提供する。
【解決手段】様々な形状、サイズを有する孵化途中卵Eの内部を通過してきた光の変化を所定時間観測して該孵化途中卵Eの内部の状態を観察する孵化途中卵観測装置10にあって、受光素子3と、遮光キャップ4とを備える。受光素子3は、孵卵機内のトレイT上に置かれた孵化途中卵Eの上方に配置される。遮光キャップ4は、受光素子3への外乱光の入射を抑制する。遮光キャップ4の下端41は、観測中に孵化途中卵Eのガス交換を妨げない位置に接触し続けるように外力を受ける。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
様々な形状、サイズを有する孵化途中卵の内部を通過してきた光の変化を所定時間観測して該孵化途中卵の内部の状態を観察する孵化途中卵観測装置にあって、
孵卵機内のトレイ上に置かれた孵化途中卵の上方に配置される受光素子と、
前記受光素子への外乱光の入射を抑制する遮光キャップとを備え、
前記遮光キャップの下端は、観測中に前記孵化途中卵のガス交換を妨げない位置に接触し続けるように外力を受けることを特徴とする孵化途中卵観測用のプローブ。
【請求項2】
前記孵化途中卵と前記トレイとを接続して前記孵化途中卵が前記トレイ内で動かないようにする固定部をさらに備える、請求項1記載の孵化途中卵観測用のプローブ。
【請求項3】
前記孵化途中卵の大きさに応じて前記孵化途中卵の高さ位置を調整する調整部をさらに備える、請求項1または2記載の孵化途中卵観測用のプローブ。
【請求項4】
前記外力は、部材の重力、引張力または圧縮力のうち少なくとも1つを利用する、請求項1、2または3記載の孵化途中卵観測用のプローブ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、孵化途中卵の内部状態を観測する孵化途中卵観測装置に用いられるプローブに関するものである。
【背景技術】
【0002】
孵化途中卵の内部状態を観測する装置が知られている(例えば、特許文献1を参照)。この装置は、被観測卵に遮光キャップで覆われた受光素子を接触させ、外乱光の影響を排除しつつ内部を通過してくる光の変化を観測する。従来のこのような観測は、主には次工程へ移載する際にその胚の生死を判定する用途で製品化されたものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特表2005-532046号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明者は、胚の状態を成長段階の複数の時点で図るニーズに着目し、孵卵機内でこのような観測をできるよう試行錯誤を重ねた。その中で、特許文献1のような装置をそのまま孵卵機内では使用できないことがわかった。
【0005】
本発明は、孵卵機内という特殊な環境であっても孵化途中卵の内部状態を観測できる孵化途中卵観測用のプローブを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の孵化途中卵観測用のプローブは、様々な形状、サイズを有する孵化途中卵の内部を通過してきた光の変化を所定時間観測して該孵化途中卵の内部の状態を観察する孵化途中卵観測装置にあって、受光素子と、遮光キャップとを備える。受光素子は、孵卵機内のトレイ上に置かれた孵化途中卵の上方に配置される。遮光キャップは、受光素子への外乱光の入射を抑制する。遮光キャップの下端は、観測中に孵化途中卵のガス交換を妨げない位置に接触し続けるように外力を受ける。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、孵卵機内という特殊な環境であっても孵化途中卵の内部状態を観測できる孵化途中卵観測用のプローブを提供できる。
【0008】
この発明の上記および他の目的、特徴、局面および利点は、添付の図面と関連して理解されるこの発明に関する次の詳細な説明から明らかとなるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の一実施形態にかかる孵化途中卵観測用のプローブの使用態様を示す概略正面図である。
図2】本発明の変形例にかかる孵化途中卵観測用のプローブの使用態様を示す概略正面図である。
図3】本発明の他の変形例にかかる孵化途中卵観測用のプローブの使用態様を示す概略正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の一実施形態について、図1を用いて説明する。
【0011】
本実施形態の孵化途中卵観測装置10は、孵卵機(図示しない)内のトレイT上に置かれた孵化途中卵Eに関するデータを取得するためのもので、プローブ1と、制御部2とを備える。孵化途中卵観測装置10は、少なくともプローブ1が孵卵機内に配置され、孵卵期間中の複数日にわたって所定時間観測を行う。本実施形態の孵化途中卵観測装置10は、様々な形状、サイズを有する孵化途中卵Eの内部を通過してきた光の変化を所定時間観測して、孵化途中卵Eの内部の状態を観察する。
【0012】
トレイTは、例えば、セッタートレイTと呼ばれるもので、孵化途中卵Eを1個ずつ収容するための仕切り(卵座T1)が設けられている。孵化途中卵Eは、鋭端が下になるようにトレイTの卵座T1に収容される。卵の鈍端には気室E1があり、孵卵中の胚は、気室E1を通じてガス交換を行っている。なお、孵化途中卵Eはガス交換により卵殻から水分が蒸発し、時間経過とともに気室E1が徐々に拡大していく。
【0013】
プローブ1は、少なくとも受光素子3と、遮光キャップ4とを備える。本実施形態のプローブ1は、さらに、孵化途中卵Eに向けて照射するLED5を備える。LED5以外の照明であってもよいし、配置場所も図示したものに限られないし、外乱光を増加させないように遮光キャップを設けてもよい。
【0014】
受光素子3は、孵卵機内のトレイT上に置かれた孵化途中卵Eの上方に配置される。受光素子3は、トレイTの上方に配置されたフレーム6(基材部)に取り付けられる。フレーム6は、孵卵機の転卵動作(トレイTが傾けられる)に伴って動き、孵化途中卵Eの観測中、受光素子3と孵化途中卵Eとの距離は一定に保たれる。
【0015】
遮光キャップ4は、受光素子3への外乱光の入射を抑制する。遮光キャップ4は、上下方向に伸縮可能な蛇腹状のものであり、待機位置において重力により伸び、観測位置において孵化途中卵Eに押されて縮む。遮光キャップ4は、下端41に金属製のリング(図示しない)を備えており、少なくとも孵化途中卵Eに当接する部分は軟質材で作られている。遮光キャップ4の下端41は、観測中に孵化途中卵Eのガス交換を妨げない位置に接触し続けるように外力を受ける。外力は、遮光キャップ4の重力や遮光キャップ4の圧縮力を利用する。遮光キャップ4は、下端41の外径が孵化途中卵Eの気室E1の径よりも小さく設定されている。遮光キャップ4の下端41は、孵化途中卵Eの卵殻表面を覆う面積が706平方ミリメートル以下、または、直径30ミリメートル以下であることが好ましい。すなわち、遮光キャップ4は、孵化途中卵Eの気室E1の一部のみを覆うように配置される。
【0016】
制御部2は、CPU、内部メモリ、入出力インターフェース、AD変換部等の専用ないし汎用のコンピュータにより構成されている。制御部2は、受光素子3の受け取った光が電気信号に変換されて送られてくる。制御部2は、この電気信号を解析することによって胚が生存しているか否か等の胚の状態を観測する。なお、本実施形態では、孵卵機に孵化途中卵Eが入れられた孵卵開始日から発生までの約20日間の全期間にわたって連続した観測、または、それらの期間中の任意のタイミングにおいて観測が可能である。
【0017】
以上説明したように、本実施形態にかかる孵化途中卵観測用のプローブ1は、様々な形状、サイズを有する孵化途中卵Eの内部を通過してきた光の変化を所定時間観測して該孵化途中卵Eの内部の状態を観察する孵化途中卵観測装置10の一部である。プローブ1は、受光素子3と、遮光キャップ4とを備える。受光素子3は、孵卵機内のトレイT上に置かれた孵化途中卵Eの上方に配置される。遮光キャップ4は、受光素子3への外乱光の入射を抑制する。遮光キャップ4の下端41は、観測中に孵化途中卵Eのガス交換を妨げない位置に接触し続けるように外力を受ける。特に、本実施形態のプローブ1は、遮光キャップ4を従来のものよりも小型化し、気室E1の大半を解放して外気と接触できるようにしたことで、孵卵機内での連続測定時の胚の成長への阻害要因を排除することができる。
【0018】
外力は、少なくとも遮光キャップ4の重力や圧縮力を利用するものであるため、孵化途中卵Eに過度な負荷をかけることなく、遮光キャップ4の卵殻に対する位置ずれも抑制できる。
【0019】
次に、本発明の変形例について、図2を用いて説明する。ここでは、上述した実施形態と同一(またはこれに準ずる)の部分は同じ符号を付し、必要である場合を除きその説明を繰り返さないこととする。
【0020】
本実施形態のプローブ1は、調整部7をさらに備える。調整部7は、孵化途中卵Eの大きさに応じて孵化途中卵Eの高さ位置を調整する。調整部7は、トレイTの底部に敷く台座である。調整部7は、孵化途中卵Eに対して遮光キャップ4とは反対側に配置されており、調整部7と遮光キャップ4とで孵化途中卵Eを挟み込んでいる。調整部7は、孵化途中卵Eの大きさに応じて複数種類設けられた、樹脂製の成形部材71であってもよいし、孵化途中卵Eの大きさに応じて圧縮量が変化する弾性部材72(例えば、バネ)であってもよい。
【0021】
このような調整部7を備えるものであれば、様々な形状、サイズを有する孵化途中卵Eの上端位置を揃えることができる。そのため、孵化途中卵Eの大きさにかかわらず、遮光キャップ4の下端41を孵化途中卵Eに接触し続けられるような外力を与えることができる。すなわち、孵化途中卵Eの大きさにかかわらず、遮光キャップ4の密着度合いをほぼ一定にできる。また、受光素子3と卵殻表面との距離をほぼ一定にでき、共通のフレーム6に複数の遮光キャップ4を設けるなどして、孵卵機の上下方向に並んだトレイT間の狭い隙間に配置しやすいプローブ1の構造にすることができる。なお、外力として、遮光キャップ4の重力や遮光キャップ4の圧縮力、調整部7の圧縮力を利用している。
【0022】
次に、本発明の他の変形例について、図3を用いて説明する。ここでも、上述した実施形態と同一(またはこれに準ずる)の部分は同じ符号を付し、必要である場合を除きその説明を繰り返さないこととする。
【0023】
本実施形態のプローブ1は、固定部8をさらに備える。固定部8は、孵化途中卵EがトレイT内で動かないようにする。固定部8は、孵化途中卵EとトレイTとを接続する。固定部8は、例えばゴムベルトなどの伸縮部8を備える。図3に示す具体的な一例としては、固定部8の下端41がトレイTに取り付けられており、固定部8の上端が受光素子3を備えるフレーム6に取り付けられている。言い換えれば、プローブ1は、フレーム6と孵化途中卵Eが載ったトレイTとを接続して、受光素子3と孵化途中卵Eの位置関係の強化または固定化を図った状態で観察する。
【0024】
このような固定部8を備えるものであれば、孵化途中卵Eの観測が孵卵機の転卵などにより発生するトレイTの揺れの影響を受けにくくなる。また、本変形例の固定部8のように、遮光キャップ4とトレイTとが近付く方向(上下方向)に力を加えるものであれば、孵化途中卵Eの大きさにかかわらず、遮光キャップ4の下端41を孵化途中卵Eに接触し続けられるような外力を与えることができる。なお、外力として、遮光キャップ4の重力や遮光キャップ4の圧縮力、固定部8の引張力を利用している。
【0025】
なお、本発明は上述した実施形態に限られない。
【0026】
遮光キャップ4は、図示したものに限られない。また、調整部7、固定部8は、それぞれ図示したものに限られない。プローブ1は、調整部7と固定部8とを組み合わせて用いてもよい。固定部8は、受光素子3を備えるフレーム6を介して孵化途中卵EとトレイTとを接合してもよいし、受光素子3の配置とは無関係に別部材にて孵化途中卵EとトレイTとを接合してもよい。
【0027】
今回開示された実施の形態は例示であってこれに制限されるものではない。本発明は上記で説明した範囲ではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲でのすべての変更が含まれることが意図される。
【産業上の利用可能性】
【0028】
本発明は、孵化途中卵観測装置に利用することができる。
【符号の説明】
【0029】
10…孵化途中卵観測装置
1…プローブ
3…受光素子
4…遮光キャップ
41…(遮光キャップ4の)下端
7…調整部
8…固定部
E…孵化途中卵
T…トレイ
図1
図2
図3