(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022017077
(43)【公開日】2022-01-25
(54)【発明の名称】温度検出装置
(51)【国際特許分類】
H02M 1/00 20070101AFI20220118BHJP
H02M 7/48 20070101ALI20220118BHJP
【FI】
H02M1/00 R
H02M7/48 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020120154
(22)【出願日】2020-07-13
(71)【出願人】
【識別番号】000000011
【氏名又は名称】株式会社アイシン
(74)【代理人】
【識別番号】110002871
【氏名又は名称】特許業務法人坂本国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】中村 恭士
【テーマコード(参考)】
5H740
5H770
【Fターム(参考)】
5H740BA11
5H740MM08
5H740PP02
5H770AA21
5H770DA03
5H770HA06X
5H770LA04X
5H770QA40
(57)【要約】
【課題】N個の半導体素子あたりの端子数を比較的少なくしつつ、N個の半導体素子の温度を個別に検出する。
【解決手段】電力変換器に含まれる複数の半導体素子(Q1)に関する温度を検出する温度検出装置(50)であって、k、Nを2以上の整数としたとき、N個の半導体素子に対して設けられ、Nの2倍よりも少ないk個の端子(20A、20K、20L、20M)に電気的に接続される電気回路(51、51A~51H)と、N個の半導体素子のそれぞれに対応付けて設けられるN組の1つ以上の温度検出素子(31~36)とを備え、k個の端子により形成される一の対の端子の間に、N組のうちの2つの組の1つ以上の温度検出素子が、互いに対して逆向きにかつ並列に電気的に接続される、温度検出装置が開示される。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電力変換器に含まれる複数の半導体素子に関する温度を検出する温度検出装置であって、
k、Nを2以上の整数としたとき、N個の前記半導体素子に対して設けられ、Nの2倍よりも少ないk個の端子に電気的に接続される電気回路と、
N個の前記半導体素子のそれぞれに対応付けて設けられるN組の1つ以上の温度検出素子とを備え、
k個の前記端子により形成される一の対の端子の間に、N組のうちの2つの組の1つ以上の温度検出素子が、互いに対して逆向きにかつ並列に電気的に接続される、温度検出装置。
【請求項2】
kは、k≧N/2+1を満たす最小の整数である、請求項1に記載の温度検出装置。
【請求項3】
前記電気回路は、切替信号に応答して、N組のそれぞれの組ごとに、一の組の1つ以上の温度検出素子に対して順方向となる電流を、切り替えて生成する、請求項1又は2に記載の温度検出装置。
【請求項4】
前記電気回路は、k個の前記端子に電気的に接続されるスイッチ回路部を含み、
前記スイッチ回路部は、前記切替信号に応答して、N組のそれぞれの組ごとに、前記順方向となる電流を切り替えて生成する、請求項3に記載の温度検出装置。
【請求項5】
前記スイッチ回路部は、N+2個のスイッチを備える、請求項4に記載の温度検出装置。
【請求項6】
k、Nがともに3であり、3個の前記端子は、1対だけ、前記一の対の端子を形成し、
3個の前記端子のうちの、前記一の対の端子を形成する一の端子と、前記一の対の端子を形成しない一の端子との間に、前記2つの組とは異なる残りの1つの組の1つ以上の温度検出素子が電気的に接続される、請求項1から5のうちのいずれか1項に記載の温度検出装置。
【請求項7】
k、Nがともに3であり、3個の前記端子は、前記一の対の端子を、3対、形成する態様で、3つの組の1つ以上の温度検出素子をデルタ結線する、請求項1から5のうちのいずれか1項に記載の温度検出装置。
【請求項8】
Nが4以上であり、前記2つの組は、互いに1つ以上の温度検出素子を共有しない態様で、N/2の整数部分の数だけ形成され、
k個の前記端子は、N/2の整数部分の数の前記一の対の端子を形成し、各対は、k個の前記端子のうちの共通の一の端子を含む、請求項1から5のうちのいずれか1項に記載の温度検出装置。
【請求項9】
前記切替信号は、電圧値が第1の値と、前記第1の値よりも低い第2の値の間で切り替わる信号を含み、
前記電気回路は、
前記一の対の端子のうちの一方の端子に電気的に接続され、単電源で動作し、前記切替信号に応答して、前記一の対の端子のうちの前記一方の端子から他方の端子に向かう第1方向の電流を生成する状態と、前記一の対の端子のうちの前記他方の端子から前記一方の端子に向かう第2方向の電流を生成する状態との間で、切り替わる定電流生成回路部と、
前記他方の端子に電気的に接続され、前記他方の端子の電位を、前記第1の値と前記第2の値との間の第3の値に維持するように動作する中間電位生成部とを含む、請求項3に記載の温度検出装置。
【請求項10】
前記電気回路は、電圧情報生成部を更に含み、
前記電圧情報生成部は、N組のそれぞれの組ごとに、順方向の電流が生成されるときに現れる1つ以上の温度検出素子の両端電圧を表す電圧情報を生成する、請求項1から9のうちのいずれか1項に記載の温度検出装置。
【請求項11】
前記電圧情報生成部は、
基準波生成部と、
前記基準波生成部により生成される基準波と、前記両端電圧との関係に基づいて、前記電圧情報を生成する比較処理部とを含む、請求項10に記載の温度検出装置。
【請求項12】
前記電力変換器は、インバータであり、
前記半導体素子は、半導体チップの形態であり、
N個の前記半導体素子は、互いに対して並列に接続され、前記インバータの各相に係る高電位側アームと低電位側アームのうちの、一のアームを形成する、請求項1から11のうちのいずれか1項に記載の温度検出装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、温度検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電力変換器の各アームが、並列に電気的に接続される2つの半導体素子により形成される構成において、当該2つの半導体素子のそれぞれに対応付けて温度検出ダイオードが、対の端子の間に、同一の向きにかつ並列に電気的に接続される技術が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開第WO2017/169693号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記のような従来技術では、2つの半導体素子のそれぞれに対応付けて温度検出ダイオードが設けられるものの、対の端子の間に2つの温度検出ダイオードを同じ向きにかつ直列に電気的に接続するので、当該2つの半導体素子の温度を個別に検出できない。すなわち、対の端子を介して各温度検出ダイオードに対して順方向の電流を同時に流すことで現れる対の端子の間の電圧は、2つの半導体素子の個別の温度を表すものではなく、両者の平均的な温度を表す。なお、1対の端子に代えて、2対の端子を用いれば、各温度検出ダイオードに対して個別に電流を流すことができるので、2つの半導体素子の温度を個別に検出できるものの、端子数が比較的多くなる。
【0005】
そこで、1つの側面では、本開示は、N個の半導体素子あたりの端子数を比較的少なくしつつ、N個の半導体素子の温度を個別に検出することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
1つの側面では、電力変換器に含まれる複数の半導体素子に関する温度を検出する温度検出装置であって、
k、Nを2以上の整数としたとき、N個の前記半導体素子に対して設けられ、Nの2倍よりも少ないk個の端子に電気的に接続される電気回路と、
N個の前記半導体素子のそれぞれに対応付けて設けられるN組の1つ以上の温度検出素子とを備え、
k個の前記端子により形成される一の対の端子の間に、N組のうちの2つの組の1つ以上の温度検出素子が、互いに対して逆向きにかつ並列に電気的に接続される、温度検出装置が提供される。
【発明の効果】
【0007】
1つの側面では、本開示によれば、N個の半導体素子あたりの端子数を比較的少なくしつつ、N個の半導体素子の温度を個別に検出することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】電動車両用モータ駆動システムの全体構成の一例を示す図である。
【
図2】温度検出装置が接続される半導体チップの端子の説明図である。
【
図4】温度検出装置50の構成を概略的に示す図である。
【
図5】温度検出装置の電気回路の一例を示す概略図である。
【
図6】
図5に示す電気回路の構成の実現例を示す図である。
【
図7A】
図6に示す実現例における切替信号等の各波形を示す図である。
【
図7B】
図6に示す実現例におけるダイオード電流の波形を示す図である。
【
図7C】
図6に示す実現例における電圧情報に係る電圧及び三角波の各波形を示す図である。
【
図7D】
図6に示す実現例における比較処理部の出力の波形を示す図である。
【
図8】
図6に示す比較処理部からの出力に基づく温度の算出値の導出方法の説明図である。
【
図9】
図5に示す電気回路の構成の他の実現例を示す図である。
【
図10A】
図9に示す実現例における切替信号等の各波形を示す図である。
【
図10B】
図9に示す実現例におけるダイオード電流の波形を示す図である。
【
図10C】
図9に示す実現例における電圧情報に係る電圧及び三角波の各波形を示す図である。
【
図10D】
図9に示す実現例における比較処理部の出力の波形を示す図である。
【
図11】
図9に示す比較処理部からの出力に基づく温度の算出値の導出方法の説明図である。
【
図12】変形例による電気回路を示す概略図である。
【
図13】スイッチ回路部を利用した電気回路を示す概略図である。
【
図14】
図13に示すスイッチ回路部を制御するための論理回路に係る動作論理表の図である。
【
図15】3並列接続の構成に係るスイッチ回路部の説明図である。
【
図16】
図15に示すスイッチ回路部を制御するための論理回路に係る動作論理表の図である。
【
図17】3並列接続の構成に係るスイッチ回路部の説明図である。
【
図18】
図17に示すスイッチ回路部を制御するための論理回路に係る動作論理表の図である。
【
図19】4並列接続の構成に係るスイッチ回路部の説明図である。
【
図20】
図19に示すスイッチ回路部を制御するための論理回路に係る動作論理表の図である。
【
図21】5並列接続の構成に係るスイッチ回路部の説明図である。
【
図22】
図21に示すスイッチ回路部を制御するための論理回路に係る動作論理表の図である。
【
図23】6並列接続の構成に係るスイッチ回路部の説明図である。
【
図24】
図23に示すスイッチ回路部を制御するための論理回路に係る動作論理表の図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、添付図面を参照しながら各実施例について詳細に説明する。
【0010】
ここでは、まず、本実施例による温度検出装置の説明に先立って、本実施例による温度検出装置が適用されるのが好適な電動車両用モータ駆動システム1について説明する。なお、電動車両用モータ駆動システム1に関する
図1及び
図2以降の各図の説明において、特に言及しない限り、各種の要素間の“接続”という用語は、“電気的な接続”を意味する。
【0011】
図1は、電動車両用モータ駆動システム1の全体構成の一例を示す図である。モータ駆動システム1は、高圧バッテリ2の電力を用いて走行用モータ5(主機)を駆動することにより車両を駆動させるシステムである。なお、電動車両は、電力を用いて走行用モータ5を駆動して走行するものであれば、その方式や構成の詳細は任意である。電動車両は、典型的には、動力源がエンジンと走行用モータ5であるハイブリッド自動車や、動力源が走行用モータ5のみである電気自動車を含む。以下、車両とは、特に言及しない限り、モータ駆動システム1が搭載される車両を指す。
【0012】
モータ駆動システム1は、
図1に示すように、高圧バッテリ2、平滑コンデンサ3と、インバータ4(電力変換器の一例)、走行用モータ5、及びインバータ制御装置6を備える。
【0013】
高圧バッテリ2は、電力を蓄積して直流電圧を出力する任意の蓄電装置であり、ニッケル水素バッテリ、リチウムイオンバッテリや電気2重層キャパシタ等の容量性素子を含んでよい。高圧バッテリ2は、典型的には、定格電圧が100Vを超えるバッテリであり、定格電圧が例えば288Vである。
【0014】
インバータ4は、正極ラインと負極ラインとの間に互いに並列に配置されるU相、V相、W相の各アームを含む。U相アームはスイッチング素子(本例ではIGBT:Insulated Gate Bipolar Transistor)Q1、Q2の直列接続を含み、V相アームはスイッチング素子(本例ではIGBT)Q3、Q4の直列接続を含み、W相アームはスイッチング素子(本例ではIGBT)Q5、Q6の直列接続を含む。また、各スイッチング素子Q1~Q6のコレクタ-エミッタ間には、それぞれ、エミッタ側からコレクタ側に電流を流すようにダイオードD11~D16が配置される。なお、スイッチング素子Q1~Q6は、MOSFET(metal oxide semiconductor field-effect transistor)のような、IGBT以外の他のスイッチング素子であってもよい。
【0015】
本実施例では、
図1に示すように、U相アームにおいて、上アーム(高電位側アーム)は、2組のスイッチング素子Q1及びダイオードD11が並列に接続され、下アーム(低電位側アーム)は、2組のスイッチング素子Q2及びダイオードD12が並列に接続される。V相アーム及びW相アームについても同様である。すなわち、インバータ4は、U、V、W相の相ごとに、3組のスイッチング素子Q1~Q6及びダイオードD11~D16を含む。なお、他の実施例では、2組に代えて3組以上のスイッチング素子Q1(スイッチング素子Q2~Q6も同様)とダイオードD11とが並列に接続されてもよい。以下では、このように、各相における高電位側アーム及び低電位側アームのそれぞれにおいて、N組(Nは2以上の整数)のスイッチング素子とダイオードとが並列に接続される構成を、「N並列接続の構成」とも称する。
【0016】
なお、本実施例では、一例として、スイッチング素子Q1(スイッチング素子Q2~Q6についても同様)はダイオードD11を内蔵したチップの形態で実現され、「半導体チップ11」とも称する。
【0017】
走行用モータ5は、例えば3相の交流モータであり、U、V、W相の3つのコイルの一端が中性点で共通接続される。U相コイルの他端は、スイッチング素子Q1、Q2の中点M1に接続され、V相コイルの他端は、スイッチング素子Q3、Q4の中点M2に接続され、W相コイルの他端は、スイッチング素子Q5、Q6の中点M3に接続される。スイッチング素子Q1のコレクタと負極ラインとの間には、平滑コンデンサ3が接続される。
【0018】
インバータ制御装置6には、走行用モータ5を流れる電流を検出する電流センサ(図示せず)等の各種センサが接続される。インバータ制御装置6は、各種センサからのセンサ情報に基づいて、インバータ4を制御する。インバータ制御装置6は、例えばCPU、ROM、メインメモリ(全て図示せず)などを含み、インバータ制御装置6の各種機能は、ROM等に記録された制御プログラムがメインメモリに読み出されてCPUにより実行されることによって実現される。インバータ4の制御方法は、任意であるが、基本的には、U相に係る2つのスイッチング素子Q1、Q2が互いに逆相でオン/オフし、V相に係る2つのスイッチング素子Q3、Q4が互いに逆相でオン/オフし、W相に係る2つのスイッチング素子Q5、Q6が互いに逆相でオン/オフする。
【0019】
なお、
図1に示す例では、モータ駆動システム1は、単一の走行用モータ5を備えているが、追加のモータ(発電機を含む)を備えてもよい。この場合、追加のモータ(複数も可)は、対応するインバータと共に、走行用モータ5及びインバータ4と並列な関係で、高圧バッテリ2に接続されてもよい。また、
図1に示す例では、モータ駆動システム1は、DC/DCコンバータを備えていないが、高圧バッテリ2とインバータ4の間にDC/DCコンバータを備えてもよい。
【0020】
高圧バッテリ2と平滑コンデンサ3との間には、
図1に示すように、高圧バッテリ2から電力供給を遮断するための遮断用スイッチ9が設けられる。遮断用スイッチ9は、半導体スイッチやリレー等で構成されてもよい。遮断用スイッチ9は、常態でオン状態であり、例えば車両の衝突検出時等にオフとされる。なお、遮断用スイッチ9のオン/オフの切換はインバータ制御装置6により実現されてもよいし、他の制御装置により実現されてもよい。
【0021】
本実施例では、インバータ制御装置6は、インバータ4の各半導体チップ11の温度を検出する温度検出装置50を含む。なお、変形例では、以下で説明する温度検出装置50の機能の一部又は全部は、インバータ制御装置6とは異なる処理装置により実現されてもよい。
【0022】
図2は、温度検出装置50が接続される半導体チップ11の端子の説明図であり、U相の高電位側アームの2つの半導体チップ11の構成を概略的に示す図である。
図3は、比較例による同構成を概略的に示す図である。なお、
図2及び
図3では、U相の高電位側アームの構成を代表して説明するが、他のアームについても同様である。
【0023】
U相の高電位側アームは、2並列接続の構成に対応して、2つの半導体チップ11を有し、2つの半導体チップ11のそれぞれに対応付けて温度センシング部110-1、110-2が設けられる。2つの半導体チップ11のそれぞれは、温度センシング部110-1、110-2を内蔵する。以下では、このようなN並列接続の構成に対応してN組で設けられる半導体チップ11のそれぞれを区別する場合、参照符号の後に「-1」・・・「-N」を付する場合がある。また、以下では、半導体チップ11は、特に言及しない限り、半導体チップ11-1から11-Nのうちの任意の一方を表す。
【0024】
温度センシング部110-1、110-2は、共通の2つの端子20A、20Kの間に接続される。なお、
図2では、半導体チップ11のセンスエミッタ端子20Sや、ゲートに接続される端子20G、エミッタに接続される端子20E等のような他の端子が示されている。以下では、端子数kとは、温度センシング部に関する端子(
図2では、端子20A、20K)の数を表す。従って、端子数kは、センスエミッタ端子20S等の他の端子の数は含まない。
【0025】
温度センシング部110-1は、1つ以上の第1温度検出ダイオード31を有し、温度センシング部110-2は、1つ以上の第2温度検出ダイオード32を有する。
図2に示す例では、第1温度検出ダイオード31及び第2温度検出ダイオード32は、それぞれ、3つずつ設けられるが、数は任意である。以下では、特に言及しない限り、第1温度検出ダイオード31とは、3つの第1温度検出ダイオード31の全体を指し、第2温度検出ダイオード32も同様である。従って、例えば、第1温度検出ダイオード31の両端電圧とは、3つの第1温度検出ダイオード31全体としての両端電圧(すなわち2つの端子20A、20Kの間の電圧)を意味する。
【0026】
第1温度検出ダイオード31及び第2温度検出ダイオード32は、例えばそれぞれSiダイオードであってよい。本実施例では、
図2に示すように、第1温度検出ダイオード31及び第2温度検出ダイオード32は、2つの端子20A、20Kの間に、互いに対して逆向きにかつ並列に接続される。
図2に示す例では、第1温度検出ダイオード31は、アノード側が端子20A側になるように、2つの端子20A、20Kの間に接続され、第2温度検出ダイオード32は、アノード側が端子20K側になるように、2つの端子20A、20Kの間に接続される。
【0027】
なお、
図3に示す比較例では、第1温度検出ダイオード31’は、2つの端子20A-1、20K-1の間に接続され、第2温度検出ダイオード32’は、別の2つの端子20A-2、20K-2の間に接続されている。この場合、端子数k=4(=N×2、N=2)となり、
図2に示す本実施例のk=2に比べて端子数kが多くなる点で不利となる。換言すると、本実施例によれば、
図3に示すような比較例に比べて、端子数kを低減でき、低コスト化やインバータ制御装置6の小型化を図ることができる。
【0028】
図4は、温度検出装置50の構成を概略的に示す図である。
【0029】
本実施例による温度検出装置50は、電気回路51と、マイコン(マイクロコンピュータの略)52と、上述した温度センシング部110-1、110-2とを含む。
【0030】
電気回路51は、2つの端子20A、20Kに接続される。電気回路51は、端子20Aから端子20Kに向かう第1方向の電流と、端子20Kから端子20Aに向かう第2方向の電流とを、切り替えて生成可能である。
【0031】
第1方向の電流は、第1温度検出ダイオード31に対する順方向の電流である。第1方向の電流は、好ましくは、定電流である。すなわち、電気回路51は、好ましくは、定電流源を含む。第1方向の電流が生成されると、第1温度検出ダイオード31の両端電圧(温度センシング信号)は、第1温度検出ダイオード31の近傍の温度(≒半導体チップ11の温度)に応じた値となる。
【0032】
電気回路51は、第1方向の電流を生成した状態で得られる電圧情報(第1温度検出ダイオード31の両端電圧の情報)をマイコン52に与える。以下、この電圧情報を区別のための「第1電圧情報」と称する。第1電圧情報は、両端電圧(温度センシング信号)のA/D(アナログデジタル)変換値の形態であってもよいし、後述するようなDuty値の形態であってもよい。
【0033】
第2方向の電流は、第2温度検出ダイオード32に対する順方向の電流である。第2方向の電流は、好ましくは、定電流である。すなわち、電気回路51は、好ましくは、定電流源を含む。第2方向の電流が生成されると、第2温度検出ダイオード32の両端電圧(温度センシング信号)は、第2温度検出ダイオード32の近傍の温度(≒半導体チップ11の温度)に応じた値となる。
【0034】
電気回路51は、第2方向の電流を生成した状態で得られる電圧情報(第2温度検出ダイオード32の両端電圧の情報)をマイコン52に与える。以下、この電圧情報を区別のための「第2電圧情報」と称する。第2電圧情報は、両端電圧(温度センシング信号)のA/D変換値の形態であってもよいし、後述するようなDuty値の形態であってもよい。
【0035】
マイコン52は、第1電圧情報に基づいて、半導体チップ11-1に関する温度情報を得る。また、マイコン52は、第2電圧情報に基づいて、半導体チップ11-2に関する温度情報を得る。
【0036】
このようにして、本実施例によれば、温度検出装置50が第1方向の電流と第2方向の電流を生成できる電気回路51を備えるので、第1温度検出ダイオード31の両端電圧に基づいて半導体チップ11-1に関する温度情報を、第2温度検出ダイオード32の両端電圧に基づいて半導体チップ11-2に関する温度情報を、それぞれ個別に得ることができる。
【0037】
また、本実施例によれば、2つの端子20A、20Kの間に、第1温度検出ダイオード31及び第2温度検出ダイオード32が逆向きかつ並列に接続されるので、比較的少ない端子数k(例えば
図3に示す比較例に比べて少ない端子数k)で、2つの半導体チップ11-1、11-2に関する温度情報を個別に得ることができる。
【0038】
図4に示す例では、マイコン52は、電流切替部520と、温度算出処理部521と、制限要求生成部522とを含む。なお、電流切替部520、温度算出処理部521、及び制限要求生成部522は、マイコン52のCPU(図示せず)がメモリ(図示せず)内のプログラムを実行することで実現できる。
【0039】
電流切替部520は、第1方向の電流と第2方向の電流とを切り替えるための切替信号を電気回路51に与える(
図4の矢印S1参照)。電気回路51は、かかる切替信号を受けると、切替信号に応答して、第1方向の電流を生成する状態と、第2方向の電流を生成する状態との間で状態遷移する。
【0040】
温度算出処理部521は、電気回路51から得られる電圧情報(第1電圧情報及び第2電圧情報)(
図4の矢印S2参照)に基づいて、半導体チップ11に関する温度の算出値を導出する。
【0041】
図4に示す例では、温度算出処理部521は、第1温度算出処理部5211と、第2温度算出処理部5212とを含む。
【0042】
第1温度算出処理部5211は、電気回路51から得られる第1電圧情報に基づいて、半導体チップ11-1に関する温度の算出値を算出する。なお、第1温度検出ダイオード31の両端電圧と周辺温度との関係はあらかじめ既知であるので、当該関係に基づいて当該温度の算出値を得ることができる。
【0043】
第2温度算出処理部5212は、電気回路51から得られる第2電圧情報に基づいて、半導体チップ11-2に関する温度の算出値を算出する。
【0044】
制限要求生成部522は、第1温度算出処理部5211により算出される半導体チップ11-1に関する温度の算出値と、第2温度算出処理部5212により算出される半導体チップ11-2に関する温度の算出値のうちの、大きい方の算出値が所定閾値以上であるか否かを判定する。そして、制限要求生成部522は、大きい方の算出値が所定閾値Tth以上であると判定した場合に、インバータ4の動作に対する制限を要求する制限要求を出力する。制限要求が生成されると、インバータ制御装置6は、当該制限要求に応答して、例えば要求トルクの上限値を低減する処理や、インバータ4の各スイッチング素子Q1~Q6の駆動デューティを低減する処理等のような、半導体チップ11の温度を低減するための処理を実行する。
【0045】
このようにして、
図4に示す例によれば、各半導体チップ11の温度を個別に表す電圧情報に基づいて、制限要求が生成されるので、例えば2つ以上の半導体チップ11の平均温度に基づいて同様の制限要求が生成されるような比較例(図示せず)に比べて、制限要求を生成する頻度を低減することが可能である。
【0046】
具体的には、本実施例では、半導体チップ11-1、11-2のうちの高い方の温度の算出値が所定閾値Tth以上である場合に制限要求が生成されるのに対して、比較例では、2つ以上の半導体チップ11の平均温度が所定閾値Tth’以上である場合に制限要求が生成される。ここで、2つ以上の半導体チップ11の平均温度が例えば温度T1であるとき、各半導体チップ11の個別の温度は、平均温度T1に対して異なりうる。例えば、各半導体チップ11の温度は、平均温度T1に対して最大でα℃(>0℃)だけ異なりうる。この場合、比較例において、本実施例と同様にいずれかの半導体チップ11に関する温度が所定閾値Tthに対応する温度以上である場合に確実に制限要求が生成されるようにするためには、比較例の所定閾値Tth’は、所定閾値Tthよりもα以上小さくする必要性がある。従って、比較例では、2つ以上の半導体チップ11のそれぞれの温度が、所定閾値Tth’に対応する温度である場合であって、所定閾値Tthに対応する温度よりも有意に低い場合でも、制限要求が生成されることになる。これに対して、本実施例によれば、各半導体チップ11の温度を個別に評価できるので、かかるマージンαをなくして、制限要求が生成される可能性(又は頻度)を低減できる。換言すると、本実施例によれば、所定閾値Tthを比較的高く設定でき、インバータ4の出力上限を高めることができる。
【0047】
なお、本実施例では、温度算出処理部521は、上述したように、第1温度算出処理部5211及び第2温度算出処理部5212を備えるが、第1温度算出処理部5211により算出される半導体チップ11-1に関する温度の算出値と、第2温度算出処理部5212により算出される半導体チップ11-2に関する温度の算出値との平均値が別途算出されてもよい。
【0048】
次に、
図5以降を参照して、温度検出装置50の電気回路51の具体的な構成例について説明する。
【0049】
図5は、温度検出装置50の電気回路51の一例を示す概略図である。
図5には、電気回路51以外の関連構成(第1温度検出ダイオード31や、第2温度検出ダイオード32、マイコン52)も併せて示されている。なお、電気回路51は、例えば高圧バッテリ2からの高圧電位を扱う電子部品が配置される高圧領域に配置されるので、低圧領域に配置されるマイコン52との間には、絶縁トランシーバ60が設けられる。
【0050】
電気回路51は、定電流生成回路部510と、中間電位生成部512と、電圧情報生成部513とを含む。
【0051】
定電流生成回路部510は、マイコン52からの切替信号(矢印S1)に応答して、第1方向の定電流を生成する状態と、第2方向の定電流を生成する状態との間で、切り替わる。
【0052】
定電流生成回路部510は、好ましくは、単電源(
図5の“Vcc”参照)に基づいて動作する。これにより、負電源を追加的に用いる場合(後出の
図12参照)に比べて、回路規模やコストの低減を図ることができる。なお、単電源は、車載の低圧バッテリ(図示せず)に基づいて生成されてよい。
【0053】
中間電位生成部512は、端子20Kに接続される。中間電位生成部512は、単電源の電源電圧Vccと0Vとの間の中間電位(
図5の“Vcc/2”参照)を生成する。具体的には、中間電位生成部512は、端子20Kの電位が中間電位に維持されるように動作する。なお、中間電位生成部512は、定電流生成回路部510と同様、単電源(図示せず)に係る電源電圧に基づいて動作してよい。
【0054】
電圧情報生成部513は、端子20Aに接続され、端子20Aに生じる電圧を表す電圧情報を生成する。なお、端子20Aに生じる電圧は、定電流生成回路部510により第1方向の定電流が生成されている状態では、第1温度検出ダイオード31の両端電圧に応じた電圧値となり、定電流生成回路部510により第2方向の定電流が生成されている状態では、第2温度検出ダイオード32の両端電圧に応じた電圧値となる。従って、端子20Aに生じる電圧を表す電圧情報は、実質的に、第1温度検出ダイオード31の両端電圧を表す第1電圧情報と、第2温度検出ダイオード32の両端電圧を表す第2電圧情報とを含む。
【0055】
図5に示す例では、電圧情報生成部513は、基準波生成部5131と、比較処理部5132とを含む。
【0056】
基準波生成部5131は、基準波を生成する。基準波は、周期的に振幅が変化する波形を有する。本実施例では、一例として、基準波は、三角波である。なお、変形例では、三角波に代えて、鋸波等が利用されてもよい。
【0057】
比較処理部5132は、基準波生成部5131により生成される三角波と、端子20Aに生じる電圧波形との関係を表す情報を、電圧情報として生成する。例えば、比較処理部5132は、コンパレータを含み、基準波生成部5131により生成される三角波と、端子20Aに生じる電圧波形との比較結果を表す情報を、電圧情報として生成してよい。
【0058】
このような
図5に示す電気回路51によれば、定電流生成回路部510と中間電位生成部512を備えるので、双方向の定電流(第1方向及び第2方向の定電流)を選択的に生成できる。また、定電流生成回路部510が単電源で動作するので、比較的回路規模の小さい構成を実現できる。
【0059】
図6は、
図5に示す電気回路51の構成の実現例を示す図である。
図7Aから
図7Dは、
図6に示す実現例の説明図であり、各種の波形を示す図である。具体的には、
図7Aは、横軸に時間をとり、縦軸に電圧をとり、切替信号Viの波形と中間電位Vmの波形を示す図である。
図7Bは、横軸に時間をとり、縦軸に電流をとり、第1温度検出ダイオード31又は第2温度検出ダイオード32を流れる電流(以下、「ダイオード電流If」とも称する)の波形を示す図である。
図7Cは、横軸に時間をとり、縦軸に電圧をとり、三角波VTの波形と、端子20Aに生じる電圧Vfの波形とを示す図である。
図7Dは、横軸に時間をとり、縦軸に電圧をとり、電圧情報生成部513からの比較結果の出力(電圧情報)cmpの波形を示す図である。なお、
図7Aから
図7Dの縦軸に示す数値はあくまで一例であり、適宜変更されてよい。
【0060】
図6に示す例では、定電流生成回路部510は、ハウランド式の定電流源(Howland Current Pump)を含む。定電流生成回路部510には、中間電位Vmと、切替信号Viとが入力される。定電流生成回路部510は、オペアンプ5101と、各種の抵抗R1からR5及びコンデンサC3とを含む。
【0061】
オペアンプ5101の反転入力端子には、オペアンプ5101の出力電圧V0と中間電位Vmの差が、抵抗R2と抵抗R5とで分圧されて入力される。具体的には、オペアンプ5101の反転入力端子には、以下の電圧Vnが入力される。
Vn=(R2×V0+R5×Vm)/(R2+R5) 式(1)
また、オペアンプ5101の非反転入力端子には、以下の関係式を満たす電圧Vpが入力される。
Vp=V0-R4×{If+(Vp-Vi)/R1}-R3×(Vp-Vi)/R1 式(2)
式(2)から電圧Vpは、以下の通りとなる。
Vp=R1/(R1+R3+R4)×V0+(R3+R4)/(R1+R3+R4)×Vi-R1×R4/(R1+R3+R4)×If 式(3)
この場合、オペアンプ5101のバーチャルショート(Vp=Vn)を考慮しつつ、抵抗R1からR5について、R1=R2、かつ、R5=R3+R4の条件下では、ダイオード電流Ifは、以下の通りとなる。
If=(R4+R3)×(Vi-Vm)/R1/R4 式(4)
なお、切替信号Viは、
図7Aに示すように、中間電位Vmの2倍の5V(第1の値の一例)と、0V(第2の値の一例)との間で電圧値が切り替わる信号である。なお、5V等の具体的な数値は、上述したように、あくまで一例であり、適宜変更されてよい。式(4)からわかるように、Vi=5Vのときは、ダイオード電流Ifは正の電流(すなわち第1方向の電流)となり、Vi=0Vのときは、ダイオード電流Ifは負の電流(すなわち第2方向の電流)となる(
図7A及び
図7B参照)。
【0062】
また、
図6に示す例では、中間電位生成部512は、オペアンプ5121と、各種の抵抗R6からR8及びコンデンサC1、C2とを含む。オペアンプ5121の非反転入力端子には、抵抗R6、R7で分圧される電源電圧Vccが入力される。オペアンプ5121の反転入力端子には、オペアンプ5121の出力端子が、抵抗R8及びコンデンサC2の並列回路を介して接続(帰還)される。中間電位生成部512は、上述したように5Vの半分の2.5V(第3の値の一例)の中間電位Vmを維持するように動作する。
【0063】
また、
図6に示す例では、電圧情報生成部513は、三角波生成回路である基準波生成部5131と、コンパレータである比較処理部5132とを含む。
【0064】
基準波生成部5131は、切替信号Viの切り替え周期よりも有意に短い周期で三角波VTを発生する。三角波VTの振幅は、電圧Vfの取りうる範囲をカバーするように設定され、
図7Cでは5Vである。比較処理部5132には、
図7Cに示すように、三角波VTと、電圧Vfとが入力される。なお、電圧Vfは、ダイオード電流Ifと、第1温度検出ダイオード31又は第2温度検出ダイオード32の近傍の温度とに依存した値となる。ダイオード電流Ifは、定電流であるので、電圧Vfは、実質的に、第1温度検出ダイオード31又は第2温度検出ダイオード32の近傍の温度のみに依存した値となる。なお、電圧Vfは、
図7Cに示すように、Vi=5Vのときと、Vi=0Vのときで、中間電位Vmに対応する2.5Vを中心として反転する。
【0065】
このような
図6に示す例によれば、例えば
図7Aに示すように切替信号Viが5Vと0Vとの間で切り替わると、それに応じて、
図7Bに示すように、ダイオード電流Ifは正の電流(すなわち第1方向の電流)と負の電流(すなわち第2方向の電流)とで切り替わる。その結果、
図7Cに示すように、中間電位Vmに対応する2.5Vを中心として反転する電圧Vfが生成され、
図7Dに示すように、切替信号Viが5Vであるときの出力(第1電圧情報)cmpと、切替信号Viが0Vであるときの出力(第2電圧情報)cmpとを得ることができる。
【0066】
図8は、
図6に示す比較処理部5132からの出力に基づく温度の算出値の導出方法の説明図である。
図8は、横軸に温度を取り、縦軸に出力Duty比をとったときの、出力Duty比と温度との関係を表す特性図である。
図8には、切替信号Viが5Vであるときの出力(第1電圧情報)cmpに基づく特性801と、切替信号Viが0Vであるときの出力(第2電圧情報)cmpに基づく特性802と、がそれぞれ示される。
【0067】
出力Duty比は、比較処理部5132からの出力Dutyの波形(
図7D)から導出されるパラメータであり、出力Dutyにおけるオン時間のデューティ比(所定時間あたりのオン時間の時間的な割合)を表す。オン時間は、電圧Vが三角波VTを超えている時間に対応する。
【0068】
例えば、切替信号Viが5Vであるときの出力Duty比の値は、電圧Vfが大きいほど(第1温度検出ダイオード31での電圧降下が大きいほど)大きくなる。電圧Vfは、上述したように、実質的に、第1温度検出ダイオード31の近傍の温度のみに依存した値を持つので、出力Duty比の値は、
図8に示すように、温度と対応付けることができる。具体的には、切替信号Viが5Vである場合、
図8に特性801で示すように、出力Duty比の値が小さくなるほど、温度が高くなる線形的な関係となる。従って、このような線形的な特性801を利用して、第1電圧情報に基づき温度の算出値を導出できる。例えば、切替信号Viが5Vであるときの出力Duty比の値が約65%であるとき、温度の算出値140℃を得ることができる。
【0069】
また、切替信号Viが0Vであるときの出力Duty比の値は、電圧Vfが小さいほど(第2温度検出ダイオード32での電圧降下が大きいほど)小さくなる。電圧Vfは、上述したように、実質的に、第2温度検出ダイオード32の近傍の温度のみに依存した値を持つので、出力Duty比の値は、
図8に示すように、温度と対応付けることができる。具体的には、切替信号Viが0Vである場合、
図8に特性802で示すように、出力Duty比の値が大きくなるほど、温度が高くなる線形的な関係となる。従って、このような特性802を利用して、第2電圧情報に基づき温度の算出値を導出できる。例えば、切替信号Viが0Vであるときの出力Duty比の値が約35%であるとき、温度の算出値140℃を得ることができる。
【0070】
なお、
図8に示すような特性801、802は、第1温度検出ダイオード31及び第2温度検出ダイオード32を形成する素子の仕様書に基づく特性であってもよいし、実測値に基づく特性であってもよい。上述した温度算出処理部521は、
図8に示すような特性801、802に基づいて、温度の算出値を導出できる。
【0071】
なお、
図7Dからわかるように、切替信号Viが0Vと5Vとの間で切り替わる際は、出力Duty比の値の精度が一時的に悪くなる。従って、温度算出処理部521は、切替信号Viが0Vと5Vとの間で切り替わってから所定時間経過の出力Duty比の値に基づいて、温度の算出値を導出してよい。
【0072】
図9は、
図5に示す電気回路51の構成の他の実現例として、電気回路51Aを示す図である。
図10Aから
図10Dは、
図9に示す実現例の説明図であり、前出の
図7Aから
図7Dと同様の各種の波形を示す図である。ただし、
図10Cは、三角波VTに代えて、オフセットが付与された三角波VT
Oの波形を示す。
【0073】
図9に示す電気回路51Aは、
図6に示した電気回路51に対して、電圧情報生成部513が電圧情報生成部513Aで置換された点が異なる。
図9に示す電気回路51Aにおいて他の構成要素は、
図6と同様であってよく、同一の参照符号を付して説明を省略する場合がある。
【0074】
電圧情報生成部513Aは、
図6に示した電圧情報生成部513に対して、オフセット生成部5133が追加された点が主に異なる。すなわち、電圧情報生成部513Aは、基準波生成部5131及び比較処理部5132に加えて、オフセット生成部5133を備える。
【0075】
オフセット生成部5133は、切替信号に応答して、三角波のオフセットを変化させる。この結果、
図10Cに示すように、オフセットが変化する三角波VT
Oが生成される。
【0076】
具体的には、オフセット生成部5133は、
図9に示すように、基準波生成部5131と比較処理部5132との間に接続される。オフセット生成部5133は、抵抗R10、R11を備え、抵抗R10、R11の間に、比較処理部5132を形成するコンパレータの反転入力端子が接続される。すなわち、抵抗R10は、一端が、比較処理部5132を形成するコンパレータの反転入力端子が接続され、他端が基準波生成部5131に接続される。また、抵抗R11は、一端に切替信号Viが入力され、他端が、比較処理部5132を形成するコンパレータの反転入力端子が接続される。なお、抵抗R10、R11は抵抗値が同じであるとする。この場合、比較処理部5132を形成するコンパレータの反転入力端子には、抵抗R10、R11で分圧される差分電圧(三角波VTと切替信号Viとの間の差分電圧)に応じて、以下のような電圧VT
Oが入力される。
VT
O=(VT+Vi)/2 式(5)
この場合、オフセット生成部5133は、
図10Cに示すように、切替信号Viが5Vであるときは、2.5Vのオフセットを有する三角波VT
Oを生成し、切替信号Viが0Vであるときは、0Vのオフセットを有する三角波VT
O(すなわちオフセットなしの三角波VT
O)を生成する。
【0077】
このような
図9に示す例によっても、上述した
図6に示す例と同様、例えば
図10Aに示すように切替信号Viが5Vと0Vとの間で切り替わると、それに応じて、
図10Bに示すように、ダイオード電流Ifは正の電流(すなわち第1方向の電流)と負の電流(すなわち第2方向の電流)とで切り替わる。その結果、
図10Cに示すように、中間電位Vmに対応する2.5Vを中心として反転する電圧Vfが生成され、
図10Dに示すように、切替信号Viが5Vであるときの出力(第1電圧情報)cmpと、切替信号Viが0Vであるときの出力(第2電圧情報)cmpとを得ることができる。
【0078】
特に、
図9に示す例によれば、上述したように、三角波VT
Oは、切替信号Viに応答してオフセットが0Vと2.5Vとの間で切り替わるので、より精度の高い温度の算出値を得ることができる。
【0079】
具体的には、
図9に示す例では、
図10Cに示すように2.5Vを中心として反転する電圧Vfに対して、当該反転方向に合わせてオフセットが変化する三角波VT
Oを、比較処理部5132に入力できる。すなわち、切替信号Vi=5Vのときは、電圧Vfは、中間電位2.5Vよりも高い電圧値となる。このため、0Vと5Vとの間で振動する三角波VTよりも、2.5Vと5Vの間で振動する三角波VT
Oの方が、単位時間あたりの三角波VT
Oの電圧変化が小さくなるので、精度の良い比較結果を得ることができる。また、同様に、切替信号Vi=0Vのときは、電圧Vfは、中間電位2.5Vよりも低い電圧値となる。このため、0Vと5Vとの間で振動する三角波VTよりも、0Vと2.5Vの間で振動する三角波VT
Oの方が、単位時間あたりの三角波VT
Oの電圧変化が小さくなるので、精度の良い比較結果を得ることができる。なお、この効果については、以下で
図11を参照して説明する特性1101、1102からも理解できる。
【0080】
図11は、
図9に示す比較処理部5132からの出力に基づく温度の算出値の導出方法の説明図である。
図11は、横軸に温度を取り、縦軸に出力Duty比をとったときの、出力Duty比と温度との関係を表す特性図である。
図11には、切替信号Viが5Vであるときの出力(第1電圧情報)cmpに基づく特性1101と、切替信号Viが0Vであるときの出力(第2電圧情報)cmpに基づく特性1102と、がそれぞれ示される。
【0081】
図11に示すように、特性1101及び特性1102は、それぞれ、
図8に示した特性801及び特性802と同様の傾向を示すが、
図8に示した特性801及び特性802よりも傾きが大きくなる。これは、上述したように、切替信号Vi=0Vのときは、0Vと5Vとの間で振動する三角波VTよりも、0Vと2.5Vの間で振動する三角波VT
Oの方が、単位時間あたりの三角波VT
Oの電圧変化が小さくなるためである。換言すると、5Vの振幅で特定の温度範囲をカバーするよりも、2.5Vの振幅で同じ特定の温度範囲をカバーする方が、単位電圧変化あたりの温度変化量を大きくする(2倍にする)ことができる。この結果、
図8に示した特性801及び特性802よりも、精度の高い温度の算出値を得ることができる。
【0082】
図12は、負電源を利用した変形例による電気回路51Bを概略的に示す図である。
【0083】
変形例による電気回路51Bは、
図5等に示した電気回路51に対して、定電流生成回路部510が定電流生成回路部510Bで置換され、かつ、中間電位生成部512が省略された点が異なる。
【0084】
定電流生成回路部510Bは、上述した定電流生成回路部510に対して、負電源(Vee参照)を更に利用する点が異なる。すなわち、定電流生成回路部510Bは、正負の両電源に基づいて動作する。
【0085】
このような変形例によっても、負電源を用いることで回路規模が比較的大きくなるものの、上述した実施例と同様の効果を得ることができる。
【0086】
次に、
図13以降を参照して、スイッチ回路部を利用した電気回路について説明する。
【0087】
図13は、スイッチ回路部511Cを利用した電気回路51Cを概略的に示す図である。
図14は、
図13に示すスイッチ回路部511Cを制御するための論理回路に係る動作論理表の図である。
【0088】
電気回路51Cは、
図5等に示した電気回路51に対して、定電流生成回路部510が定電流生成回路部510Cで置換され、かつ、中間電位生成部512が省略された点が異なる。
【0089】
定電流生成回路部510Cは、単方向定電流源517に接続されるスイッチ回路部511Cにより形成される。
【0090】
スイッチ回路部511Cは、互いに直列に接続された対のスイッチSW1、SW3と、互いに直列に接続された対のスイッチSW2、SW4とを含む。対のスイッチSW1、SW3と、対のスイッチSW2、SW4とは、互いに対して並列に、比較処理部5132(コンパレータの非反転入力端子)とグランドの間に接続される。そして、対のスイッチSW1、SW3の間は、端子20Aに接続され、対のスイッチSW2、SW4の間は、端子20Kに接続される。なお、各スイッチSW1~SW4は、半導体素子(トランジスタ等)により実現されてもよいし、リレー等により実現されてもよい。
【0091】
また、電気回路51Cは、切替信号に基づいて、スイッチ回路部511Cを制御するスイッチ制御部516Cを有する。スイッチ制御部516Cは、論理回路により形成され、例えば
図14に示すような動作論理表に基づいて動作する。この場合、マイコン52からの切替信号は、bit0(最下位ビット)の電圧レベル(High又はLow)をスイッチ制御部516Cに与える。
【0092】
スイッチ制御部516Cに与えられる電圧レベルがLowの状態は、第1方向の電流(第1温度検出ダイオード31に対して順方向の電流)を生成する状態に対応する。この場合、スイッチ制御部516Cは、スイッチSW1及びスイッチSW4をオンとし、スイッチSW2及びスイッチSW3をオフとするように機能する。スイッチSW1及びスイッチSW4がオンし、かつ、スイッチSW2及びスイッチSW3がオフすると、単方向定電流源517からスイッチSW1、第1温度検出ダイオード31、及びスイッチSW4を通ってグランドに流れる電流(第1温度検出ダイオード31に対する順方向の電流)が生成され、第1電圧情報が生成される。
【0093】
スイッチ制御部516Cに与えられる電圧レベルがHighの状態は、第2方向の電流(第2温度検出ダイオード32に対して順方向の電流)を生成する状態に対応する。この場合、スイッチ制御部516Cは、スイッチSW1及びスイッチSW4をオフとし、スイッチSW2及びスイッチSW3をオンとするように機能する。スイッチSW1及びスイッチSW4がオフし、かつ、スイッチSW2及びスイッチSW3がオンすると、単方向定電流源517からスイッチSW2、第2温度検出ダイオード32、及びスイッチSW3を通ってグランドに流れる電流(第2温度検出ダイオード32に対する順方向の電流)が生成され、第2電圧情報が生成される。
【0094】
なお、
図13に示す例では、スイッチSW1及びスイッチSW4がオンし、かつ、スイッチSW2及びスイッチSW3がオフした状態では、
図13に示すように、比較処理部5132(コンパレータの非反転入力端子)には、端子20Aに生じる電圧が入力される。また、スイッチSW1及びスイッチSW4がオフし、かつ、スイッチSW2及びスイッチSW3がオンした状態では、比較処理部5132(コンパレータの非反転入力端子)には、端子20Kに生じる電圧が入力される。この場合、温度算出処理部521は、
図8に示した特性801に基づいて、温度の算出値を導出できる。
【0095】
このような
図13に示す電気回路51Cによっても、上述した電気回路51と同様の効果を得ることができる。
【0096】
次に、
図15以降を参照して、2並列接続の構成以外の場合のスイッチ回路部について説明する。
【0097】
図15は、3並列接続の構成に係るスイッチ回路部511Dの説明図であり、当該スイッチ回路部511Dを利用した電気回路51Dを概略的に示す図である。
図16は、
図15に示すスイッチ回路部511Dを制御するための論理回路に係る動作論理表の図である。
【0098】
3並列構成では、電気回路51Dには、
図15に示すように、第1温度検出ダイオード31及び第2温度検出ダイオード32に加えて、第3温度検出ダイオード33(温度センシング部110-3)が接続される。第3温度検出ダイオード33は、第1温度検出ダイオード31が半導体チップ11-1に内蔵されるのと同様、半導体チップ11-3(図示せず)に内蔵される。
【0099】
第1温度検出ダイオード31及び第2温度検出ダイオード32は、上述した2並列接続の構成と同様、2つの端子20A、20Kの間に、互いに対して逆向きにかつ並列に接続される。
【0100】
第3温度検出ダイオード33は、アノード側が端子20K側になるように、2つの端子20K、20L間に接続される。
図15に示す例では、第3温度検出ダイオード33は、3つずつ設けられるが、数は任意である。以下では、特に言及しない限り、第3温度検出ダイオード33とは、3つの第3温度検出ダイオード33の全体を指す。従って、例えば、第3温度検出ダイオード33の両端電圧とは、3つの第3温度検出ダイオード33全体としての両端電圧(すなわち2つの端子20K、20Lの間の電圧)を意味する。
【0101】
このように、
図15では、3つの端子20A、20K、20Lは、端子20A、20Kが対となり、端子20A、20Kの間に第1温度検出ダイオード31及び第2温度検出ダイオード32が、互いに対して逆向きにかつ並列に接続され、かつ、第3温度検出ダイオード33が接続される。そして、3つの端子20A、20K、20Lのうちの、対の端子を形成する一の端子20Kと、対の端子を形成しない一の端子20Lとの間に、第3温度検出ダイオード33が接続される。これにより、3つの半導体チップ11-1から11-3(図示せず)に関する温度情報を個別に得るための端子数kを効率的に低減できる。ただし、変形例では、端子20Kは、2つの端子K1、K2(図示せず)で代替されてもよい。例えば、端子20Kに代えて、2つの端子K1、K2を利用する場合、端子K1には、第1温度検出ダイオード31及び第2温度検出ダイオード32が接続され、端子K2には、第3温度検出ダイオード33が接続されてよい。このような場合でも、端子数k=4となり、k=3から1だけ増加するだけに留まり、第1温度検出ダイオード31から第3温度検出ダイオード33のそれぞれに対して2つずつ端子を設ける場合の端子数k=6に比べて、端子数kを有意に低減できる。
【0102】
電気回路51Dは、
図5等に示した電気回路51に対して、定電流生成回路部510が定電流生成回路部510Dで置換され、かつ、中間電位生成部512が省略された点が異なる。
【0103】
定電流生成回路部510Dは、単方向定電流源517に接続されるスイッチ回路部511Dにより形成される。
【0104】
スイッチ回路部511Dは、互いに直列に接続された対のスイッチSW1、SW3と、互いに直列に接続された対のスイッチSW2、SW4とを含む。対のスイッチSW1、SW3と、対のスイッチSW2、SW4とは、互いに対して並列に、比較処理部5132(コンパレータの非反転入力端子)とグランドの間に接続される。そして、対のスイッチSW1、SW3の間は、端子20Aに接続され、対のスイッチSW2、SW4の間は、端子20Kに接続される。
【0105】
スイッチ回路部511Dは、更にスイッチSW5を含む。スイッチSW5は、一端が端子20Lに接続され、他端がグランドに接続される。なお、スイッチSW5は、半導体素子(トランジスタ等)により実現されてもよいし、リレー等により実現されてもよい。
【0106】
また、電気回路51Dは、切替信号に基づいて、スイッチ回路部511Dを制御するスイッチ制御部516Dを有する。スイッチ制御部516Dは、論理回路により形成され、例えば
図16に示すような動作論理表に基づいて動作する。この場合、マイコン52からの切替信号は、bit0及びbit1のそれぞれの電圧レベル(High又はLow)の組み合わせをスイッチ制御部516Dに与える。切替信号は、第1温度検出ダイオード31に対して順方向の電流を生成する状態と、第2温度検出ダイオード32に対して順方向の電流を生成する状態と、第3温度検出ダイオード33に対して順方向の電流を生成する状態との間で、電気回路51Dを状態遷移させる。
【0107】
具体的には、スイッチ制御部516Dに与えられるbit0及びbit1の双方の電圧レベルがLowの状態は、第1温度検出ダイオード31に対する順方向の電流を生成する状態に対応する。この場合、スイッチ制御部516Dは、スイッチSW1及びスイッチSW4をオンとし、スイッチSW2、スイッチSW3及びスイッチSW5をオフとするように機能する。スイッチSW1及びスイッチSW4がオンし、かつ、スイッチSW2、スイッチSW3及びスイッチSW5がオフすると、単方向定電流源517からスイッチSW1、第1温度検出ダイオード31、及びスイッチSW4を通ってグランドに流れる電流(第1温度検出ダイオード31に対する順方向の電流)が生成され、第1電圧情報が電圧情報生成部513により生成される。
【0108】
スイッチ制御部516Dに与えられるbit0及びbit1の電圧レベルがそれぞれHigh及びLowの状態は、第2温度検出ダイオード32に対する順方向の電流を生成する状態に対応する。この場合、スイッチ制御部516Dは、スイッチSW1、スイッチSW4及びスイッチSW5をオフとし、スイッチSW2及びスイッチSW3をオンとするように機能する。スイッチSW1、スイッチSW4及びスイッチSW5がオフし、かつ、スイッチSW2及びスイッチSW3がオンすると、単方向定電流源517からスイッチSW2、第2温度検出ダイオード32、及びスイッチSW3を通ってグランドに流れる電流(第2温度検出ダイオード32に対する順方向の電流)が生成され、第2電圧情報が電圧情報生成部513により生成される。
【0109】
スイッチ制御部516Dに与えられるbit0及びbit1の電圧レベルがそれぞれLow及びHighの状態は、第3温度検出ダイオード33に対する順方向の電流を生成する状態に対応する。この場合、スイッチ制御部516Dは、スイッチSW1、スイッチSW3及びスイッチSW4をオフとし、スイッチSW2及びスイッチSW5をオンとするように機能する。スイッチSW1、スイッチSW3及びスイッチSW4がオフし、かつ、スイッチSW2及びスイッチSW5がオンすると、単方向定電流源517からスイッチSW2、第3温度検出ダイオード33、及びスイッチSW5を通ってグランドに流れる電流(第3温度検出ダイオード33に対する順方向の電流)が生成され、第3温度検出ダイオード33の両端電圧の情報(第3電圧情報)が電圧情報生成部513により生成される。
【0110】
なお、
図15に示す例では、スイッチSW1及びスイッチSW4がオンし、かつ、スイッチSW2、スイッチSW3及びスイッチSW5がオフした状態では、
図15に示すように、比較処理部5132(コンパレータの非反転入力端子)には、端子20Aに生じる電圧が入力される。また、スイッチSW1、スイッチSW4及びスイッチSW5がオフし、かつ、スイッチSW2及びスイッチSW3がオンした状態では、比較処理部5132(コンパレータの非反転入力端子)には、端子20Kに生じる電圧が入力される。また、スイッチSW1、スイッチSW3及びスイッチSW4がオフし、スイッチSW2及びスイッチSW5がオンした状態では、比較処理部5132(コンパレータの非反転入力端子)には、端子20Kに生じる電圧が入力される。この場合、温度算出処理部521は、
図8に示した特性801に基づいて、温度の算出値を導出できる。
【0111】
このような
図15に示す電気回路51Dによれば、3並列接続の構成においても、上述した電気回路51と同様の効果を得ることができる。なお、端子数kについても、端子20A、20Kに加えて端子20Lが追加されるだけであるので、k=3で留まる。従って、比較的少ない端子数kで、3つの半導体チップ11-1、11-2、11-3(図示せず)に関する温度情報を個別に得ることができる。
【0112】
図17は、3並列接続の構成に係るスイッチ回路部511Eの説明図であり、当該スイッチ回路部511Eを利用した電気回路51Eを概略的に示す図である。
図18は、
図17に示すスイッチ回路部511Eを制御するための論理回路に係る動作論理表の図である。
【0113】
3並列構成では、電気回路51Eには、
図17に示すように、第1温度検出ダイオード31及び第2温度検出ダイオード32に加えて、第3温度検出ダイオード33(温度センシング部110-3)が接続される。第3温度検出ダイオード33は、第1温度検出ダイオード31が半導体チップ11-1に内蔵されるのと同様、半導体チップ11-3(図示せず)に内蔵される。
【0114】
第1温度検出ダイオード31は、アノード側が端子20A側になるように、2つの端子20A、20Kの間に接続される。第2温度検出ダイオード32は、アノード側が端子20K側になるように、2つの端子20K、20L間に接続される。第3温度検出ダイオード33は、アノード側が端子20L側になるように、2つの端子20L、20A間に接続される。
【0115】
このように、
図17では、3つの端子20A、20K、20Lがデルタ結線により3対の端子(端子20A、20Kの第1対、端子20K、20Lの第2対、端子20L、20Aの第3対)を形成する。そして、第1対の端子20A、20Kの間に第1温度検出ダイオード31及び第2温度検出ダイオード32が、互いに対して逆向きにかつ並列に接続され、かつ、第3温度検出ダイオード33が接続される。また、第2対の端子20K、20Lの間に第2温度検出ダイオード32及び第3温度検出ダイオード33が、互いに対して逆向きにかつ並列に接続され、かつ、第1温度検出ダイオード31が接続される。また、第3対の端子20L、20Aの間に第3温度検出ダイオード33及び第1温度検出ダイオード31が、互いに対して逆向きにかつ並列に接続され、かつ、第2温度検出ダイオード32が接続される。この場合、3つの端子20A、20K、20Lは、第1温度検出ダイオード31、第2温度検出ダイオード32及び第3温度検出ダイオード33の間に接続される。具体的には、端子20Aは、第1温度検出ダイオード31及び第3温度検出ダイオード33の間に接続され、端子20Kは、第1温度検出ダイオード31及び第2温度検出ダイオード32の間に接続され、端子20Lは、第2温度検出ダイオード32及び第3温度検出ダイオード33の間に接続される。
【0116】
電気回路51Eは、
図5等に示した電気回路51に対して、定電流生成回路部510が定電流生成回路部510Eで置換され、かつ、中間電位生成部512が省略された点が異なる。
【0117】
定電流生成回路部510Eは、単方向定電流源517に接続されるスイッチ回路部511Eにより形成される。
【0118】
スイッチ回路部511Eは、互いに直列に接続された対のスイッチSW1、SW4と、互いに直列に接続された対のスイッチSW2、SW5と、互いに直列に接続された対のスイッチSW3、SW6と、を含む。対のスイッチSW1、SW4と、対のスイッチSW2、SW5と、対のスイッチSW3、SW6とは、互いに対して並列に、比較処理部5132(コンパレータの非反転入力端子)とグランドの間に接続される。そして、対のスイッチSW1、SW4の間は、端子20Aに接続され、対のスイッチSW2、SW5の間は、端子20Kに接続され、対のスイッチSW3、SW6の間は、端子20Lに接続される。なお、スイッチSW6は、半導体素子(トランジスタ等)により実現されてもよいし、リレー等により実現されてもよい。なお、
図17に示す電気回路51Eでは、スイッチSW6が1つ増加する分だけ
図15に示した電気回路51Dよりも回路規模が大きくなる。
【0119】
また、電気回路51Eは、切替信号に基づいて、スイッチ回路部511Eを制御するスイッチ制御部516Eを有する。スイッチ制御部516Eは、論理回路により形成され、例えば
図18に示すような動作論理表に基づいて動作する。この場合、マイコン52からの切替信号は、bit0及びbit1のそれぞれの電圧レベル(High又はLow)の組み合わせをスイッチ制御部516Eに与える。切替信号は、第1温度検出ダイオード31に対して順方向の電流を生成する状態と、第2温度検出ダイオード32に対して順方向の電流を生成する状態と、第3温度検出ダイオード33に対して順方向の電流を生成する状態との間で、電気回路51Eを状態遷移させる。
【0120】
具体的には、スイッチ制御部516Eに与えられるbit0及びbit1の双方の電圧レベルがLowの状態は、第1温度検出ダイオード31に対する順方向の電流を生成する状態に対応する。この場合、スイッチ制御部516Eは、スイッチSW1からスイッチSW6のうちの、スイッチSW1及びスイッチSW5だけをオンとし、他をオフとするように機能する。スイッチSW1及びスイッチSW5だけがオンすると、単方向定電流源517からスイッチSW1、第1温度検出ダイオード31、及びスイッチSW5を通ってグランドに流れる電流(第1温度検出ダイオード31に対する順方向の電流)が生成され、第1電圧情報が電圧情報生成部513により生成される。
【0121】
スイッチ制御部516Eに与えられるbit0及びbit1の電圧レベルがそれぞれHigh及びLowの状態は、第2温度検出ダイオード32に対する順方向の電流を生成する状態に対応する。この場合、スイッチ制御部516Eは、スイッチSW1からスイッチSW6のうちの、スイッチSW2及びスイッチSW6だけをオンとし、他をオフとするように機能する。スイッチSW2及びスイッチSW6だけがオンすると、単方向定電流源517からスイッチSW2、第2温度検出ダイオード32、及びスイッチSW6を通ってグランドに流れる電流(第2温度検出ダイオード32に対する順方向の電流)が生成され、第2電圧情報が電圧情報生成部513により生成される。
【0122】
スイッチ制御部516Eに与えられるbit0及びbit1の電圧レベルがそれぞれLow及びHighの状態は、第3温度検出ダイオード33に対する順方向の電流を生成する状態に対応する。この場合、スイッチ制御部516Eは、スイッチSW1からスイッチSW6のうちの、スイッチSW3及びスイッチSW4だけをオンとし、他をオフとするように機能する。スイッチSW3及びスイッチSW4だけがオンすると、単方向定電流源517からスイッチSW3、第3温度検出ダイオード33、及びスイッチSW4を通ってグランドに流れる電流(第3温度検出ダイオード33に対する順方向の電流)が生成され、第3温度検出ダイオード33の両端電圧の情報(第3電圧情報)が電圧情報生成部513により生成される。
【0123】
なお、
図17に示す例では、スイッチSW1及びスイッチSW5だけがオンした状態では、
図17に示すように、比較処理部5132(コンパレータの非反転入力端子)には、端子20Aに生じる電圧が入力される。また、スイッチSW2及びスイッチSW6だけがオンした状態では、比較処理部5132(コンパレータの非反転入力端子)には、端子20Kに生じる電圧が入力される。また、スイッチSW3及びスイッチSW4だけがオンした状態では、比較処理部5132(コンパレータの非反転入力端子)には、端子20Lに生じる電圧が入力される。この場合、温度算出処理部521は、
図8に示した特性801に基づいて、温度の算出値を導出できる。
【0124】
このような
図17に示す電気回路51Eによれば、3並列接続の構成においても、上述した電気回路51と同様の効果を得ることができる。なお、端子数kについても、端子20A、20Kに加えて端子20Lが追加されるだけであるので、k=3で留まる。従って、比較的少ない端子数kで、3つの半導体チップ11-1、11-2、11-3(図示せず)に関する温度情報を個別に得ることができる。
【0125】
図19は、4並列接続の構成に係るスイッチ回路部511Fの説明図であり、当該スイッチ回路部511Fを利用した電気回路51Fを概略的に示す図である。
図20は、
図19に示すスイッチ回路部511Fを制御するための論理回路に係る動作論理表の図である。
【0126】
4並列構成では、電気回路51Fには、
図19に示すように、第1温度検出ダイオード31、第2温度検出ダイオード32、及び第3温度検出ダイオード33に加えて、第4温度検出ダイオード34(温度センシング部110-4)が接続される。第4温度検出ダイオード34は、第1温度検出ダイオード31が半導体チップ11-1に内蔵されるのと同様、半導体チップ11-4(図示せず)に内蔵される。
【0127】
第1温度検出ダイオード31及び第2温度検出ダイオード32は、上述した2並列接続の構成と同様、2つの端子20A、20Kの間に、互いに対して逆向きにかつ並列に接続される。
【0128】
第3温度検出ダイオード33及び第4温度検出ダイオード34は、2つの端子20K、20Lの間に、互いに対して逆向きにかつ並列に接続される。具体的には、第3温度検出ダイオード33は、アノード側が端子20K側になるように、2つの端子20K、20L間に接続される。第4温度検出ダイオード34は、アノード側が端子20L側になるように、2つの端子20K、20L間に接続される。
図19に示す例では、第4温度検出ダイオード34は、3つずつ設けられるが、数は任意である。以下では、特に言及しない限り、第4温度検出ダイオード34とは、3つの第4温度検出ダイオード34の全体を指す。
【0129】
このように
図19に示す例では、3つの端子20A、20K、20Lは、2対の2つの端子(端子20A、20Kの第1対と、端子20K、20Lの第2対)を形成し、2対のうちの一の対と他の一の対とは、共通の一の端子20Kを含む。これにより、4つの半導体チップ11-1から11-4(図示せず)に関する温度情報を個別に得るための端子数kを効率的に低減できる。ただし、変形例では、端子20Kは、2つの端子K1、K2(図示せず)で代替されてもよい。例えば、端子20Kに代えて、2つの端子K1、K2を利用する場合、端子K1には、第1温度検出ダイオード31及び第2温度検出ダイオード32が接続され、端子K2には、第3温度検出ダイオード33及び第4温度検出ダイオード34が接続されてよい。このような場合でも、端子数k=4となり、k=3から1だけ増加するだけに留まり、第1温度検出ダイオード31から第4温度検出ダイオード34のそれぞれに対して2つずつ端子を設ける場合の端子数k=8に比べて、端子数kを有意に低減できる。
【0130】
電気回路51Fは、
図5等に示した電気回路51に対して、定電流生成回路部510が定電流生成回路部510Fで置換され、かつ、中間電位生成部512が省略された点が異なる。
【0131】
定電流生成回路部510Fは、単方向定電流源517に接続されるスイッチ回路部511Fにより形成される。
【0132】
スイッチ回路部511Fは、互いに直列に接続された対のスイッチSW1、SW4と、互いに直列に接続された対のスイッチSW2、SW5と、互いに直列に接続された対のスイッチSW3、SW6と、を含む。対のスイッチSW1、SW4と、対のスイッチSW2、SW5と、対のスイッチSW3、SW6とは、互いに対して並列に、比較処理部5132(コンパレータの非反転入力端子)とグランドの間に接続される。そして、対のスイッチSW1、SW4の間は、端子20Aに接続され、対のスイッチSW2、SW5の間は、端子20Kに接続され、対のスイッチSW3、SW6の間は、端子20Lに接続される。
【0133】
また、電気回路51Fは、切替信号に基づいて、スイッチ回路部511Fを制御するスイッチ制御部516Fを有する。スイッチ制御部516Fは、論理回路により形成され、例えば
図20に示すような動作論理表に基づいて動作する。この場合、マイコン52からの切替信号は、bit0及びbit1のそれぞれの電圧レベル(High又はLow)の組み合わせをスイッチ制御部516Fに与える。切替信号は、第1温度検出ダイオード31に対して順方向の電流を生成する状態と、第2温度検出ダイオード32に対して順方向の電流を生成する状態と、第3温度検出ダイオード33に対して順方向の電流を生成する状態と、第4温度検出ダイオード34に対して順方向の電流を生成する状態との間で、電気回路51Fを状態遷移させる。
【0134】
具体的には、スイッチ制御部516Fに与えられるbit0及びbit1の双方の電圧レベルがLowの状態は、第1温度検出ダイオード31に対する順方向の電流を生成する状態に対応する。この場合、スイッチ制御部516Fは、スイッチSW1からスイッチSW6のうちの、スイッチSW1及びスイッチSW5だけをオンとし、他をオフとするように機能する。スイッチSW1及びスイッチSW5だけがオンすると、単方向定電流源517からスイッチSW1、第1温度検出ダイオード31、及びスイッチSW5を通ってグランドに流れる電流(第1温度検出ダイオード31に対する順方向の電流)が生成され、第1電圧情報が電圧情報生成部513により生成される。
【0135】
スイッチ制御部516Fに与えられるbit0及びbit1の電圧レベルがそれぞれHigh及びLowの状態は、第2温度検出ダイオード32に対する順方向の電流を生成する状態に対応する。この場合、スイッチ制御部516Fは、スイッチSW1からスイッチSW6のうちの、スイッチSW2及びスイッチSW4だけをオンとし、他をオフとするように機能する。スイッチSW2及びスイッチSW4だけがオンすると、単方向定電流源517からスイッチSW2、第2温度検出ダイオード32、及びスイッチSW4を通ってグランドに流れる電流(第2温度検出ダイオード32に対する順方向の電流)が生成され、第2電圧情報が電圧情報生成部513により生成される。
【0136】
スイッチ制御部516Fに与えられるbit0及びbit1の電圧レベルがそれぞれLow及びHighの状態は、第3温度検出ダイオード33に対する順方向の電流を生成する状態に対応する。この場合、スイッチ制御部516Fは、スイッチSW1からスイッチSW6のうちの、スイッチSW2及びスイッチSW6だけをオンとし、他をオフとするように機能する。スイッチSW2及びスイッチSW6だけがオンすると、単方向定電流源517からスイッチSW2、第3温度検出ダイオード33、及びスイッチSW6を通ってグランドに流れる電流(第3温度検出ダイオード33に対する順方向の電流)が生成され、第3温度検出ダイオード33の両端電圧の情報(第3電圧情報)が電圧情報生成部513により生成される。
【0137】
スイッチ制御部516Fに与えられるbit0及びbit1の双方の電圧レベルがHighの状態は、第4温度検出ダイオード34に対する順方向の電流を生成する状態に対応する。この場合、スイッチ制御部516Fは、スイッチSW1からスイッチSW6のうちの、スイッチSW3及びスイッチSW5だけをオンとし、他をオフとするように機能する。スイッチSW3及びスイッチSW5だけがオンすると、単方向定電流源517からスイッチSW3、第4温度検出ダイオード34、及びスイッチSW5を通ってグランドに流れる電流(第4温度検出ダイオード34に対する順方向の電流)が生成され、第4温度検出ダイオード34の両端電圧の情報(第4電圧情報)が電圧情報生成部513により生成される。
【0138】
なお、
図19に示す例では、スイッチSW1及びスイッチSW5だけがオンした状態では、
図19に示すように、比較処理部5132(コンパレータの非反転入力端子)には、端子20Aに生じる電圧が入力される。また、スイッチSW2及びスイッチSW4だけがオンした状態では、比較処理部5132(コンパレータの非反転入力端子)には、端子20Kに生じる電圧が入力される。また、スイッチSW2及びスイッチSW6だけがオンした状態では、比較処理部5132(コンパレータの非反転入力端子)には、端子20Kに生じる電圧が入力される。また、スイッチSW3及びスイッチSW5だけがオンした状態では、比較処理部5132(コンパレータの非反転入力端子)には、端子20Lに生じる電圧が入力される。この場合、温度算出処理部521は、
図8に示した特性801に基づいて、温度の算出値を導出できる。
【0139】
このような
図19に示す電気回路51Fによれば、4並列接続の構成においても、上述した電気回路51と同様の効果を得ることができる。なお、端子数kについても、端子20A、20Kに加えて端子20Lが追加されるだけであるので、k=3で留まる。従って、比較的少ない端子数kで、4つの半導体チップ11-1、11-2、11-3、11-4(図示せず)に関する温度情報を個別に得ることができる。
【0140】
図21は、5並列接続の構成に係るスイッチ回路部511Gの説明図であり、当該スイッチ回路部511Gを利用した電気回路51Gを概略的に示す図である。
図22は、
図21に示すスイッチ回路部511Gを制御するための論理回路に係る動作論理表の図である。
【0141】
5並列構成では、電気回路51Gには、
図21に示すように、第1温度検出ダイオード31、第2温度検出ダイオード32、第3温度検出ダイオード33及び第4温度検出ダイオード34に加えて、第5温度検出ダイオード35(温度センシング部110-5)が接続される。第5温度検出ダイオード35は、第1温度検出ダイオード31が半導体チップ11-1に内蔵されるのと同様、半導体チップ11-5(図示せず)に内蔵される。
【0142】
第1温度検出ダイオード31及び第2温度検出ダイオード32は、上述した2並列接続の構成と同様、2つの端子20A、20Kの間に、互いに対して逆向きにかつ並列に接続される。
【0143】
第3温度検出ダイオード33及び第4温度検出ダイオード34は、上述した4並列接続の構成(
図19)と同様、2つの端子20K、20Lの間に、互いに対して逆向きにかつ並列に接続される。
【0144】
第5温度検出ダイオード35は、アノード側が端子20K側になるように、2つの端子20K、20Mの間に接続される。
図21に示す例では、第5温度検出ダイオード35は、3つずつ設けられるが、数は任意である。以下では、特に言及しない限り、第5温度検出ダイオード35とは、3つの第5温度検出ダイオード35の全体を指す。
【0145】
このように
図21に示す例では、3つの端子20A、20K、20Lは、2対の2つの端子(端子20A、20Kの第1対と、端子20K、20Lの第2対)を形成し、2対は、共通の一の端子20Kを含む。端子20Kには、第2温度検出ダイオード32、第3温度検出ダイオード33及び第5温度検出ダイオード35のアノード側が接続されるとともに、第1温度検出ダイオード31及び第4温度検出ダイオード34のカソード側が接続される。これにより、5つの半導体チップ11-1から11-5(図示せず)に関する温度情報を個別に得るための端子数kを効率的に低減できる。ただし、変形例では、端子20Kは、3つの端子K1から端子K3(図示せず)や、2つの端子K1、K2(図示せず)で代替されてもよい。例えば、端子20Kに代えて、3つの端子K1から端子K3を利用する場合、端子K1には、第1温度検出ダイオード31及び第2温度検出ダイオード32が接続され、端子K2には、第3温度検出ダイオード33及び第4温度検出ダイオード34が接続され、端子K3には、第5温度検出ダイオード35が接続されてよい。このような場合でも、端子数k=6となり、k=4から2だけ増加するだけに留まり、第1温度検出ダイオード31から第5温度検出ダイオード35のそれぞれに対して2つずつ端子を設ける場合の端子数k=10に比べて、端子数kを有意に低減できる。
【0146】
電気回路51Gは、
図5等に示した電気回路51に対して、定電流生成回路部510が定電流生成回路部510Gで置換され、かつ、中間電位生成部512が省略された点が異なる。
【0147】
定電流生成回路部510Gは、単方向定電流源517に接続されるスイッチ回路部511Gにより形成される。
【0148】
スイッチ回路部511Gは、互いに直列に接続された対のスイッチSW1、SW4と、互いに直列に接続された対のスイッチSW2、SW5と、互いに直列に接続された対のスイッチSW3、SW6と、を含む。対のスイッチSW1、SW4と、対のスイッチSW2、SW5と、対のスイッチSW3、SW6とは、互いに対して並列に、比較処理部5132(コンパレータの非反転入力端子)とグランドの間に接続される。そして、対のスイッチSW1、SW4の間は、端子20Aに接続され、対のスイッチSW2、SW5の間は、端子20Kに接続され、対のスイッチSW3、SW6の間は、端子20Lに接続される。
【0149】
また、スイッチ回路部511Gは、更にスイッチSW7を含む。スイッチSW7は、一端が端子20Mに接続され、他端がグランドに接続される。なお、スイッチSW7は、半導体素子(トランジスタ等)により実現されてもよいし、リレー等により実現されてもよい。
【0150】
また、電気回路51Gは、切替信号に基づいて、スイッチ回路部511Gを制御するスイッチ制御部516Gを有する。スイッチ制御部516Gは、論理回路により形成され、例えば
図22に示すような動作論理表に基づいて動作する。この場合、マイコン52からの切替信号は、bit0、bit1及びbit2のそれぞれの電圧レベル(High又はLow)の組み合わせをスイッチ制御部516Gに与える。切替信号は、第1温度検出ダイオード31に対して順方向の電流を生成する状態と、第2温度検出ダイオード32に対して順方向の電流を生成する状態と、第3温度検出ダイオード33に対して順方向の電流を生成する状態と、第4温度検出ダイオード34に対して順方向の電流を生成する状態と、第5温度検出ダイオード35に対して順方向の電流を生成する状態との間で、電気回路51Gを状態遷移させる。
【0151】
具体的には、スイッチ制御部516Gに与えられるbit0からbit2の各電圧レベルがLowの状態は、第1温度検出ダイオード31に対する順方向の電流を生成する状態に対応する。この場合、スイッチ制御部516Gは、スイッチSW1からスイッチSW7のうちの、スイッチSW1及びスイッチSW5だけをオンとし、他をオフとするように機能する。スイッチSW1及びスイッチSW5だけがオンすると、単方向定電流源517からスイッチSW1、第1温度検出ダイオード31、及びスイッチSW5を通ってグランドに流れる電流(第1温度検出ダイオード31に対する順方向の電流)が生成され、第1電圧情報が電圧情報生成部513により生成される。
【0152】
スイッチ制御部516Gに与えられるbit0、bit1及びbit2の電圧レベルがそれぞれHigh、Low及びLowの状態は、第2温度検出ダイオード32に対する順方向の電流を生成する状態に対応する。この場合、スイッチ制御部516Gは、スイッチSW1からスイッチSW7のうちの、スイッチSW2及びスイッチSW4だけをオンとし、他をオフとするように機能する。スイッチSW2及びスイッチSW4だけがオンすると、単方向定電流源517からスイッチSW2、第2温度検出ダイオード32、及びスイッチSW4を通ってグランドに流れる電流(第2温度検出ダイオード32に対する順方向の電流)が生成され、第2電圧情報が電圧情報生成部513により生成される。
【0153】
スイッチ制御部516Gに与えられるbit0、bit1及びbit2の電圧レベルがそれぞれLow、High及びLowの状態は、第3温度検出ダイオード33に対する順方向の電流を生成する状態に対応する。この場合、スイッチ制御部516Gは、スイッチSW1からスイッチSW7のうちの、スイッチSW2及びスイッチSW6だけをオンとし、他をオフとするように機能する。スイッチSW2及びスイッチSW6だけがオンすると、単方向定電流源517からスイッチSW2、第3温度検出ダイオード33、及びスイッチSW6を通ってグランドに流れる電流(第3温度検出ダイオード33に対する順方向の電流)が生成され、第3温度検出ダイオード33の両端電圧の情報(第3電圧情報)が電圧情報生成部513により生成される。
【0154】
スイッチ制御部516Gに与えられるbit0、bit1及びbit2の電圧レベルがそれぞれHigh、High及びLowの状態は、第4温度検出ダイオード34に対する順方向の電流を生成する状態に対応する。この場合、スイッチ制御部516Gは、スイッチSW1からスイッチSW7のうちの、スイッチSW3及びスイッチSW5だけをオンとし、他をオフとするように機能する。スイッチSW3及びスイッチSW5だけがオンすると、単方向定電流源517からスイッチSW3、第4温度検出ダイオード34、及びスイッチSW5を通ってグランドに流れる電流(第4温度検出ダイオード34に対する順方向の電流)が生成され、第4温度検出ダイオード34の両端電圧の情報(第4電圧情報)が電圧情報生成部513により生成される。
【0155】
スイッチ制御部516Gに与えられるbit0、bit1及びbit2の電圧レベルがそれぞれLow、Low及びHighの状態は、第5温度検出ダイオード35に対する順方向の電流を生成する状態に対応する。この場合、スイッチ制御部516Gは、スイッチSW1からスイッチSW7のうちの、スイッチSW2及びスイッチSW7だけをオンとし、他をオフとするように機能する。スイッチSW2及びスイッチSW7だけがオンすると、単方向定電流源517からスイッチSW2、第5温度検出ダイオード35、及びスイッチSW7を通ってグランドに流れる電流(第5温度検出ダイオード35に対する順方向の電流)が生成され、第5温度検出ダイオード35の両端電圧の情報(第5電圧情報)が電圧情報生成部513により生成される。
【0156】
なお、
図21に示す例では、スイッチSW1及びスイッチSW5だけがオンした状態では、
図21に示すように、比較処理部5132(コンパレータの非反転入力端子)には、端子20Aに生じる電圧が入力される。また、スイッチSW2及びスイッチSW4だけがオンした状態では、比較処理部5132(コンパレータの非反転入力端子)には、端子20Kに生じる電圧が入力される。また、スイッチSW2及びスイッチSW6だけがオンした状態では、比較処理部5132(コンパレータの非反転入力端子)には、端子20Kに生じる電圧が入力される。また、スイッチSW3及びスイッチSW5だけがオンした状態では、比較処理部5132(コンパレータの非反転入力端子)には、端子20Lに生じる電圧が入力される。また、スイッチSW2及びスイッチSW7だけがオンした状態では、比較処理部5132(コンパレータの非反転入力端子)には、端子20Kに生じる電圧が入力される。この場合、温度算出処理部521は、
図8に示した特性801に基づいて、温度の算出値を導出できる。
【0157】
このような
図21に示す電気回路51Gによれば、5並列接続の構成においても、上述した電気回路51と同様の効果を得ることができる。なお、端子数kについても、端子20A、20Kに加えて端子20L及び端子20Mが追加されるだけであるので、k=4で留まる。従って、比較的少ない端子数kで、5つの半導体チップ11-1、11-2、11-3、11-4、11-5(図示せず)に関する温度情報を個別に得ることができる。
【0158】
図23は、6並列接続の構成に係るスイッチ回路部511Hの説明図であり、当該スイッチ回路部511Hを利用した電気回路51Hを概略的に示す図である。
図24は、
図23に示すスイッチ回路部511Hを制御するための論理回路に係る動作論理表の図である。
【0159】
6並列構成では、電気回路51Hには、
図23に示すように、第1温度検出ダイオード31、第2温度検出ダイオード32、第3温度検出ダイオード33、第4温度検出ダイオード34及び第5温度検出ダイオード35に加えて、第6温度検出ダイオード36(温度センシング部110-6)が接続される。第6温度検出ダイオード36は、第1温度検出ダイオード31が半導体チップ11-1に内蔵されるのと同様、半導体チップ11-6(図示せず)に内蔵される。
【0160】
第1温度検出ダイオード31及び第2温度検出ダイオード32は、上述した2並列接続の構成と同様、2つの端子20A、20Kの間に、互いに対して逆向きにかつ並列に接続される。
【0161】
第3温度検出ダイオード33及び第4温度検出ダイオード34は、上述した4並列接続の構成(
図19)と同様、2つの端子20K、20Lの間に、互いに対して逆向きにかつ並列に接続される。
【0162】
第5温度検出ダイオード35及び第6温度検出ダイオード36は、2つの端子20K、20Mの間に、互いに対して逆向きにかつ並列に接続される。
図23に示す例では、第6温度検出ダイオード36は、3つずつ設けられるが、数は任意である。以下では、特に言及しない限り、第6温度検出ダイオード36とは、3つの第6温度検出ダイオード36の全体を指す。
【0163】
このように
図23に示す例では、3つの端子20A、20K、20Lは、3対の2つの端子(端子20A、20Kの第1対と、端子20K、20Lの第2対、端子20K、20M)を形成し、3対は、共通の一の端子20Kを含む。すなわち、端子20Kには、第2温度検出ダイオード32、第3温度検出ダイオード33及び第5温度検出ダイオード35のアノード側が接続されるとともに、第1温度検出ダイオード31、第4温度検出ダイオード34及び第6温度検出ダイオード36のカソード側が接続される。これにより、6つの半導体チップ11-1から11-6(図示せず)に関する温度情報を個別に得るための端子数kを効率的に低減できる。ただし、変形例では、端子20Kは、3つの端子K1から端子K3(図示せず)や、2つの端子K1、K2(図示せず)で代替されてもよい。例えば、端子20Kに代えて、3つの端子K1から端子K3を利用する場合、端子K1には、第1温度検出ダイオード31及び第2温度検出ダイオード32が接続され、端子K2には、第3温度検出ダイオード33及び第4温度検出ダイオード34が接続され、端子K3には、第5温度検出ダイオード35及び第6温度検出ダイオード36が接続されてよい。このような場合でも、端子数k=6となり、k=4から2だけ増加するだけに留まり、第1温度検出ダイオード31から第6温度検出ダイオード36のそれぞれに対して2つずつ端子を設ける場合の端子数k=12に比べて、端子数kを有意に低減できる。
【0164】
電気回路51Hは、
図5等に示した電気回路51に対して、定電流生成回路部510が定電流生成回路部510Hで置換され、かつ、中間電位生成部512が省略された点が異なる。
【0165】
定電流生成回路部510Hは、単方向定電流源517に接続されるスイッチ回路部511Hにより形成される。
【0166】
スイッチ回路部511Hは、互いに直列に接続された対のスイッチSW1、SW5と、互いに直列に接続された対のスイッチSW2、SW6と、互いに直列に接続された対のスイッチSW3、SW7と、互いに直列に接続された対のスイッチSW4、SW8と、を含む。各対は、互いに対して並列に、比較処理部5132(コンパレータの非反転入力端子)とグランドの間に接続される。そして、対のスイッチSW1、SW5の間は、端子20Aに接続され、対のスイッチSW2、SW6の間は、端子20Kに接続され、対のスイッチSW3、SW7の間は、端子20Lに接続され、対のスイッチSW4、SW8の間は、端子20Mに接続される。なお、スイッチSW8は、半導体素子(トランジスタ等)により実現されてもよいし、リレー等により実現されてもよい。
【0167】
また、電気回路51Hは、切替信号に基づいて、スイッチ回路部511Hを制御するスイッチ制御部516Hを有する。スイッチ制御部516Hは、論理回路により形成され、例えば
図24に示すような動作論理表に基づいて動作する。この場合、マイコン52からの切替信号は、bit0、bit1及びbit2のそれぞれの電圧レベル(High又はLow)の組み合わせをスイッチ制御部516Hに与える。切替信号は、第1温度検出ダイオード31に対して順方向の電流を生成する状態と、第2温度検出ダイオード32に対して順方向の電流を生成する状態と、第3温度検出ダイオード33に対して順方向の電流を生成する状態と、第4温度検出ダイオード34に対して順方向の電流を生成する状態と、第5温度検出ダイオード35に対して順方向の電流を生成する状態と、第6温度検出ダイオード36に対して順方向の電流を生成する状態との間で、電気回路51Hを状態遷移させる。
【0168】
具体的には、スイッチ制御部516Hに与えられるbit0からbit2の各電圧レベルがLowの状態は、第1温度検出ダイオード31に対する順方向の電流を生成する状態に対応する。この場合、スイッチ制御部516Hは、スイッチSW1からスイッチSW8のうちの、スイッチSW1及びスイッチSW6だけをオンとし、他をオフとするように機能する。スイッチSW1及びスイッチSW6だけがオンすると、単方向定電流源517からスイッチSW1、第1温度検出ダイオード31、及びスイッチSW6を通ってグランドに流れる電流(第1温度検出ダイオード31に対する順方向の電流)が生成され、第1電圧情報が電圧情報生成部513により生成される。
【0169】
スイッチ制御部516Hに与えられるbit0、bit1及びbit2の電圧レベルがそれぞれHigh、Low及びLowの状態は、第2温度検出ダイオード32に対する順方向の電流を生成する状態に対応する。この場合、スイッチ制御部516Hは、スイッチSW1からスイッチSW8のうちの、スイッチSW2及びスイッチSW5だけをオンとし、他をオフとするように機能する。スイッチSW2及びスイッチSW5だけがオンすると、単方向定電流源517からスイッチSW2、第2温度検出ダイオード32、及びスイッチSW5を通ってグランドに流れる電流(第2温度検出ダイオード32に対する順方向の電流)が生成され、第2電圧情報が電圧情報生成部513により生成される。
【0170】
スイッチ制御部516Hに与えられるbit0、bit1及びbit2の電圧レベルがそれぞれLow、High及びLowの状態は、第3温度検出ダイオード33に対する順方向の電流を生成する状態に対応する。この場合、スイッチ制御部516Hは、スイッチSW1からスイッチSW8のうちの、スイッチSW2及びスイッチSW7だけをオンとし、他をオフとするように機能する。スイッチSW2及びスイッチSW7だけがオンすると、単方向定電流源517からスイッチSW2、第3温度検出ダイオード33、及びスイッチSW7を通ってグランドに流れる電流(第3温度検出ダイオード33に対する順方向の電流)が生成され、第3温度検出ダイオード33の両端電圧の情報(第3電圧情報)が電圧情報生成部513により生成される。
【0171】
スイッチ制御部516Hに与えられるbit0、bit1及びbit2の電圧レベルがそれぞれHigh、High及びLowの状態は、第4温度検出ダイオード34に対する順方向の電流を生成する状態に対応する。この場合、スイッチ制御部516Hは、スイッチSW1からスイッチSW8のうちの、スイッチSW3及びスイッチSW6だけをオンとし、他をオフとするように機能する。スイッチSW3及びスイッチSW6だけがオンすると、単方向定電流源517からスイッチSW3、第4温度検出ダイオード34、及びスイッチSW6を通ってグランドに流れる電流(第4温度検出ダイオード34に対する順方向の電流)が生成され、第4温度検出ダイオード34の両端電圧の情報(第4電圧情報)が電圧情報生成部513により生成される。
【0172】
スイッチ制御部516Hに与えられるbit0、bit1及びbit2の電圧レベルがそれぞれLow、Low及びHighの状態は、第5温度検出ダイオード35に対する順方向の電流を生成する状態に対応する。この場合、スイッチ制御部516Hは、スイッチSW1からスイッチSW8のうちの、スイッチSW2及びスイッチSW8だけをオンとし、他をオフとするように機能する。スイッチSW2及びスイッチSW8だけがオンすると、単方向定電流源517からスイッチSW2、第5温度検出ダイオード35、及びスイッチSW8を通ってグランドに流れる電流(第5温度検出ダイオード35に対する順方向の電流)が生成され、第5温度検出ダイオード35の両端電圧の情報(第5電圧情報)が電圧情報生成部513により生成される。
【0173】
スイッチ制御部516Hに与えられるbit0、bit1及びbit2の電圧レベルがそれぞれHigh、Low及びHighの状態は、第6温度検出ダイオード36に対する順方向の電流を生成する状態に対応する。この場合、スイッチ制御部516Hは、スイッチSW1からスイッチSW8のうちの、スイッチSW4及びスイッチSW6だけをオンとし、他をオフとするように機能する。スイッチSW2及びスイッチSW6だけがオンすると、単方向定電流源517からスイッチSW4、第6温度検出ダイオード36、及びスイッチSW6を通ってグランドに流れる電流(第6温度検出ダイオード36に対する順方向の電流)が生成され、第6温度検出ダイオード36の両端電圧の情報(第6電圧情報)が電圧情報生成部513により生成される。
【0174】
なお、
図23に示す例では、スイッチSW1及びスイッチSW6だけがオンした状態では、
図23に示すように、比較処理部5132(コンパレータの非反転入力端子)には、端子20Aに生じる電圧が入力される。また、スイッチSW2及びスイッチSW5だけがオンした状態では、比較処理部5132(コンパレータの非反転入力端子)には、端子20Kに生じる電圧が入力される。また、スイッチSW2及びスイッチSW7だけがオンした状態では、比較処理部5132(コンパレータの非反転入力端子)には、端子20Kに生じる電圧が入力される。また、スイッチSW3及びスイッチSW6だけがオンした状態では、比較処理部5132(コンパレータの非反転入力端子)には、端子20Lに生じる電圧が入力される。また、スイッチSW2及びスイッチSW8だけがオンした状態では、比較処理部5132(コンパレータの非反転入力端子)には、端子20Kに生じる電圧が入力される。また、スイッチSW4及びスイッチSW6だけがオンした状態では、比較処理部5132(コンパレータの非反転入力端子)には、端子20Mに生じる電圧が入力される。この場合、温度算出処理部521は、
図8に示した特性801に基づいて、温度の算出値を導出できる。
【0175】
このような
図23に示す電気回路51Hによれば、6並列接続の構成においても、上述した電気回路51と同様の効果を得ることができる。なお、端子数kについても、端子20A、20Kに加えて端子20L及び端子20Mが追加されるだけであるので、k=4で留まる。従って、比較的少ない端子数kで、6つの半導体チップ11-1、11-2、11-3、11-4、11-5、11-6(図示せず)に関する温度情報を個別に得ることができる。
【0176】
このようにしてN並列接続の構成においては、各種のスイッチ回路部511Cから511Hを利用して、比較的少ない端子数kで、N個の半導体チップ11-1から11-N(図示せず)に関する温度情報を個別に得ることができる。この場合、端子数kは、k≧N/2+1を満たす最小の整数とすることができる。なお、この場合、上記に不等式の右辺の“1”は、上記のスイッチ回路部(例えば、スイッチ回路部511C、511D、511Fから511H)においては、端子20Kに対応し、右辺の“N/2”の整数部分は、端子20Kと、当該端子20Kと対をなす各端子との間に、N組(Nが偶数)又はN-1組(Nが奇数)の温度検出ダイオードが、2組ごとに(余った場合は1組だけ)、逆向きかつ並列に接続された状態に対応する。また、スイッチ回路部におけるスイッチ数mは、m=N+2のときに最小となる。この場合、最小限の数のスイッチ数mのスイッチ回路部511C、511D、511Fから511Hを利用して、複数の半導体チップに関する温度情報を個別に得ることができる。
【0177】
また、N並列接続の構成においても、電圧情報生成部513は、N個の半導体チップ11のそれぞれごとに設けられるのではなく、N個の半導体チップ11に共通に設けられる。これにより、基板(図示せず)の面積を効率的に利用して、当該基板に電圧情報生成部513やスイッチ回路部等の各種電子部品を実装できる。
【0178】
以上、各実施例について詳述したが、特定の実施例に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された範囲内において、種々の変形及び変更が可能である。また、前述した実施例の構成要素を全部又は複数を組み合わせることも可能である。
【0179】
例えば、上述した各実施例では、N個の半導体チップ11-1から11-Nは、6つのアーム(3相のそれぞれにおける高電位側アームと低電位側アーム)のうちの、一のアームにおける互いに並列に接続される半導体チップであるが、これに限られない。例えば、6つのアーム(3相のそれぞれにおける高電位側アームと低電位側アーム)に、それぞれ1つずつ半導体チップ11が設けられる構成において、
図23に示す電気回路51Hが実現されてもよい。あるいは、6つのアーム(3相のそれぞれにおける高電位側アームと低電位側アーム)に、それぞれ1つずつ半導体チップ11が設けられる構成において、
図15又は
図17に示す電気回路51D又は電気回路51Eがそれぞれ2組設けられてもよいし、
図13に示す電気回路51Cが3組設けられてもよい。
【0180】
また、上述した実施例では、温度検出素子としてSiダイオードのようなダイオードが用いられるが、温度検出素子としては、PNPトランジスタのような他の素子が用いられてもよい。
【0181】
また、上述した実施例では、温度検出装置50による温度検出対象は、主機用のインバータ4の半導体チップ11であるが、他の電力変換器の半導体チップにも適用可能である。例えば、補機用のインバータやDC/DCコンバータのような電力変換器の半導体チップにも適用可能である。
【0182】
<付記>
以上の実施例に関し、更に以下を開示する。なお、以下で記載する効果のうちの、一の形態に対する追加的な各形態に係る効果は、当該追加的な各形態に起因した付加的な効果である。
【0183】
(1)一の形態は、電力変換器に含まれる複数の半導体素子(Q1)に関する温度を検出する温度検出装置(50)であって、
k、Nを2以上の整数としたとき、N個の前記半導体素子に対して設けられ、Nの2倍よりも少ないk個の端子(20A、20K、20L、20M)に電気的に接続される電気回路(51、51A~51H)と、
N個の前記半導体素子のそれぞれに対応付けて設けられるN組の1つ以上の温度検出素子(31~36)とを備え、
k個の前記端子により形成される一の対の端子の間に、N組のうちの2つの組の1つ以上の温度検出素子が、互いに対して逆向きにかつ並列に電気的に接続される、温度検出装置である。
【0184】
本形態によれば、各組の1つ以上の温度検出素子に対して対の端子を設ける場合に比べて、N個の半導体素子あたりの端子数を比較的少なくしつつ、N個の半導体素子の温度を個別に検出することが可能となる。
【0185】
(2)また、本形態においては、好ましくは、kは、k≧N/2+1を満たす最小の整数である。
【0186】
この場合、N個の半導体素子あたりの端子数の最小化を図りつつ、N個の半導体素子の温度を個別に検出することが可能となる。
【0187】
(3)また、本形態においては、好ましくは、前記電気回路は、切替信号に応答して、N組のそれぞれの組ごとに、一の組の1つ以上の温度検出素子に対して順方向となる電流を、切り替えて生成する。
【0188】
この場合、切替信号により順次、N個の半導体素子の温度を個別に検出することが可能となる。
【0189】
(4)また、本形態においては、好ましくは、前記電気回路は、k個の前記端子に電気的に接続されるスイッチ回路部(511C~511H)を含み、
前記スイッチ回路部は、前記切替信号に応答して、N組のそれぞれの組ごとに、前記順方向となる電流を切り替えて生成する。
【0190】
この場合、スイッチ回路部を利用して、N個の半導体素子あたりの端子数を比較的少なくしつつ、N個の半導体素子の温度を個別に検出することが可能となる。
【0191】
(5)また、本形態においては、好ましくは、前記スイッチ回路部は、N+2個のスイッチ(SW1~SW8)を備える。
【0192】
この場合、スイッチ回路部の回路規模の最小化を図りつつ、N組のそれぞれの組ごとに、一の組の1つ以上の温度検出素子に対して順方向となる電流を、切り替えて生成できる。
【0193】
(6)また、本形態においては、好ましくは、k、Nがともに3であり、3個の前記端子は、1対だけ、前記一の対の端子(20A、20K)を形成し、
3個の前記端子のうちの、前記一の対の端子を形成する一の端子と、前記一の対の端子を形成しない一の端子(20L)との間に、前記2つの組とは異なる残りの1つの組の1つ以上の温度検出素子(33)が電気的に接続される。
【0194】
この場合、3並列接続の構成において、N個の半導体素子あたりの端子数の最小化とともにスイッチ回路部の回路規模の最小化を図りつつ、N組のそれぞれの組ごとに、一の組の1つ以上の温度検出素子に対して順方向となる電流を、切り替えて生成できる。
【0195】
(7)また、本形態においては、好ましくは、k、Nがともに3であり、3個の前記端子は、前記一の対の端子を、3対、形成する態様で、3つの組の1つ以上の温度検出素子をデルタ結線する。
【0196】
この場合、3並列接続の構成において、N個の半導体素子あたりの端子数の最小化を図りつつ、N組のそれぞれの組ごとに、一の組の1つ以上の温度検出素子に対して順方向となる電流を、切り替えて生成できる。
【0197】
(8)また、本形態においては、好ましくは、Nが4以上であり、前記2つの組は、互いに1つ以上の温度検出素子を共有しない態様で、N/2の整数部分の数だけ形成され、
k個の前記端子は、N/2の整数部分の数の前記一の対の端子を形成し、各対は、k個の前記端子のうちの共通の一の端子を含む。
【0198】
この場合、4並列接続以上の構成において、N個の半導体素子あたりの端子数の最小化とともにスイッチ回路部の回路規模の最小化を図りつつ、N組のそれぞれの組ごとに、一の組の1つ以上の温度検出素子に対して順方向となる電流を、切り替えて生成できる。
【0199】
(9)また、本形態においては、好ましくは、前記切替信号は、電圧値が第1の値と、前記第1の値よりも低い第2の値の間で切り替わる信号を含み、
前記電気回路は、
前記一の対の端子のうちの一方の端子に電気的に接続され、単電源(Vcc)で動作し、前記切替信号に応答して、前記一の対の端子のうちの前記一方の端子から他方の端子に向かう第1方向の電流を生成する状態と、前記一の対の端子のうちの前記他方の端子から前記一方の端子に向かう第2方向の電流を生成する状態との間で、切り替わる定電流生成回路部(510、510A)と、
前記他方の端子に電気的に接続され、前記他方の端子の電位を、前記第1の値と前記第2の値との間の第3の値に維持するように動作する中間電位生成部(512)とを含む。
【0200】
この場合、定電流生成回路部により双方向(第1方向及び第2方向)の定電流を生成できるので、精度の高い温度情報を得ることができる。また、負電源を追加的に利用する場合に比べて、回路規模を小さくできる。また、中間電位生成部を利用することで、例えばスイッチ回路部を利用する場合に比べて、回路規模を小さくできる。
【0201】
(10)また、本形態においては、好ましくは、前記電気回路は、電圧情報生成部(513)を更に含み、
前記電圧情報生成部は、N組のそれぞれの組ごとに、順方向の電流が生成されるときに現れる1つ以上の温度検出素子の両端電圧を表す電圧情報を生成する。
【0202】
この場合、N個の半導体素子の温度を個別に表す電圧情報を生成できる。
【0203】
(11)また、本形態においては、好ましくは、前記電圧情報生成部は、
基準波生成部(5131)と、
前記基準波生成部により生成される基準波と、前記両端電圧との関係に基づいて、前記電圧情報を生成する比較処理部(5132)とを含む。
【0204】
この場合、基準波を利用して、N個の半導体素子の温度を個別に表す電圧情報を生成できる。
【0205】
(12)また、本形態においては、好ましくは、前記電力変換器は、インバータ(4)であり、
前記半導体素子は、半導体チップ(11)の形態であり、
N個の前記半導体素子は、互いに対して並列に接続され、前記インバータの各相に係る高電位側アームと低電位側アームのうちの、一のアームを形成する。
【0206】
この場合、インバータの各アームが、N個の半導体素子の並列接続を含む場合に、例えばアームごとに、N個の半導体素子あたりの端子数を比較的少なくしつつ、N個の半導体素子の温度を個別に検出することが可能となる。
【符号の説明】
【0207】
1 電動車両用モータ駆動システム
2 高圧バッテリ
3 平滑コンデンサ
4 インバータ
5 走行用モータ
6 インバータ制御装置
9 遮断用スイッチ
11(11-1~11-N) 半導体チップ
20A 端子
20K 端子
20L 端子
20M 端子
31 第1温度検出ダイオード
32 第2温度検出ダイオード
33 第3温度検出ダイオード
34 第4温度検出ダイオード
35 第5温度検出ダイオード
36 第6温度検出ダイオード
50 温度検出装置
51、51A~51H 電気回路
52 マイコン(マイクロコンピュータの略)
60 絶縁トランシーバ
110-1~110-6 温度センシング部
140 算出値
510、510B~510H 定電流生成回路部
511C~511H スイッチ回路部
512 中間電位生成部
513 電圧情報生成部
513A 電圧情報生成部
516C~516H スイッチ制御部
517 単方向定電流源
520 電流切替部
521 温度算出処理部
522 制限要求生成部
5101 オペアンプ
5121 オペアンプ
5131 基準波生成部
5132 比較処理部
5133 オフセット生成部
5211 第1温度算出処理部
5212 第2温度算出処理部
SW1~SW8 スイッチ