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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022170782
(43)【公開日】2022-11-11
(54)【発明の名称】モータスピンドル
(51)【国際特許分類】
   B23B 47/00 20060101AFI20221104BHJP
   B23Q 11/10 20060101ALI20221104BHJP
   B23B 51/06 20060101ALI20221104BHJP
【FI】
B23B47/00 B
B23Q11/10 E
B23B51/06 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021076974
(22)【出願日】2021-04-30
(71)【出願人】
【識別番号】000150327
【氏名又は名称】株式会社ナカニシ
(72)【発明者】
【氏名】山口 光明
(72)【発明者】
【氏名】大塚 健太
【テーマコード(参考)】
3C011
3C036
3C037
【Fターム(参考)】
3C011EE03
3C036LL05
3C037DD06
(57)【要約】
【課題】ベアリングに作用する負荷を低減したモータスピンドルを提供すること。
【解決手段】課題を解決するには、クーラント供給部を備えたモータスピンドルにおいて、モータスピンドルは、ケースと、ベアリングにより支持されたスピンドルと、スピンドルを回転させるモータと、ドリルと、ドリルをスピンドルに対して固定するコレットチャックとチャックナットを備え、スピンドルには、クーラントが流れるクーラント室が形成され、チャックナットには、クーラントを導入するクーラント導入口が形成され、ドリルには、加工対象物を切削する刃を備え、クーラントが流れる内部流路が形成され、内部流路にクーラントを供給することで刃の部分にクーラントを供給可能であり、クーラント導入口とクーラント室と内部流路は連通しており、クーラント供給部は、クーラント導入口にクーラントを供給するように構成すれば良い。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
クーラント供給部を備えたモータスピンドルにおいて、
前記モータスピンドルは、外郭を構成するケースと、ベアリングにより回転可能に支持されたスピンドルと、前記スピンドルを回転させるモータと、加工対象を切削するドリルと、前記ドリルを前記スピンドルに対して固定するコレットチャックとチャックナットを備え、
前記スピンドルには、外部から供給されたクーラントが流れるクーラント室が形成されており、
前記チャックナットには、内部へとクーラントを導入するクーラント導入口が形成されており、
前記ドリルは、先端に加工対象物を切削する刃を備え、クーラントが流れる内部流路が形成されており、前記内部流路にクーラントを供給することで前記刃の部分にクーラントを供給可能であり、
前記クーラント導入口と前記クーラント室と前記内部流路は連通しており、
前記クーラント供給部は、前記クーラント導入口にクーラントを供給することを特徴とするモータスピンドル。
【請求項2】
前記クーラント供給部はホルダを備え、前記ホルダに対して前記モータスピンドルが固定されることで、前記クーラント供給部と前記モータスピンドルが固定されることを特徴とする請求項1に記載のモータスピンドル。
【請求項3】
前記クーラント供給部は、前記クーラント供給部から流れてくるクーラントを、前記スピンドルと共に回転する前記チャックの前記クーラント導入口に導くクーラントガイドを備えたことを特徴とする請求項1に記載のモータスピンドル。
【請求項4】
前記クーラントガイドは、前記スピンドルと共に回転する前記チャックナットの周囲を囲むクーラント供給室を備えたことを特徴とする請求項3に記載のモータスピンドル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ドリル内部を経由して、切削位置に対して切削油等のクーラントを供給するモータスピンドルに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、ドリル内部を経由して、切削位置に対してクーラントを供給するクーラント供給構造を備えたモータスピンドル(又は、スピンドルモータとも言う)がある。例えば、特許文献1には、ドリルユニットとして、モータスピンドルが開示されている(特許文献1)。
【0003】
この様なモータスピンドルは、スピンドルにドリルを装着した状態において、回転継手を介してスピンドル後端から内部に形成された油穴に切削油を取り込み、スピンドルの油穴からドリルの油穴へと切削油を流し、ドリルの先端から吐出することで、切削位置に切削油を供給するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001-239436号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載のモータスピンドルは、回転継手(ロータリージョイント)を介してスピンドル後端からスラスト方向に内部に形成された油穴に切削油を取り込む構造なので、切削油をスピンドル内に流し込む際のスラスト方向の圧力がスピンドルに作用する。
これにより、スピンドルを回転自在に支持するベアリングに、スラスト方向の荷重が作用するという課題がある。
特に、ベアリングの外径が小さいものほど、このスラスト方向の荷重の影響を受けやすく、より小さなモータスピンドルほど、特許文献1に記載の切削油の供給構造を採用することが困難になる。
【0006】
本発明は、上記の課題を解決するためのものであり、ドリル内部を通り先端から切削油を切削位置に供給するモータスピンドルにおいて、切削油をスピンドル内部に取り込む際のスピンドルに作用するスラスト方向の荷重を低減したスピンドルモータを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
課題を解決するためには、クーラント供給部を備えたモータスピンドルにおいて、モータスピンドルは、外郭を構成するケースと、ベアリングにより回転可能に支持されたスピンドルと、スピンドルを回転させるモータと、加工対象を切削するドリルと、ドリルをスピンドルに対して固定するコレットチャックとチャックナットを備え、スピンドルには、外部から供給されたクーラントが流れるクーラント室が形成されており、チャックナットには、内部へとクーラントを導入するクーラント導入口が形成されており、ドリルは、先端に加工対象物を切削する刃を備え、クーラントが流れる内部流路が形成されており、内部流路にクーラントを供給することで刃の部分にクーラントを供給可能であり、クーラント導入口とクーラント室と内部流路は連通しており、クーラント供給部は、クーラント導入口にクーラントを供給するように構成すれば良い。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、ドリルの内部を通り先端から切削油を切削位置に供給するモータスピンドルにおいて、切削油をスピンドル内部に取り込む際のスピンドルに作用するスラスト方向の荷重を低減することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】クーラント供給部を備えたモータスピンドルの斜視図
図2】(a)クーラント供給部を備えたモータスピンドルの正面図 (b)クーラント供給部を備えたモータスピンドルの左側面図
図3】(a)図2(b)に示すクーラント供給部を備えたモータスピンドルの分解図 (b)(a)の断面図(断面図はモータスピンドルの左右中心で切断し左方向から見た状態を示す)
図4】モータスピンドルの分解斜視図
図5図2(a)に示すA-A断面図
図6図5のコレットチャックの位置の部分拡大図
図7図2(b)に示すB-B断面図
図8】(a)コレットチャックの左側面図 (b)コレットチャックの斜視図 (c)(b)に示すC-C断面図(C-C断面図はコレットチャックの左右中心を通る位置で切断し左側から見た図)
図9】(a)チャックナットの左側面図 (b)チャックナットの斜視図 (c)(b)に示すD-D断面図(D-D断面図はチャックナットの左右中心を通る位置で切断し左側から見た図)
図10】(a)クーラントガイドの左側面図 (b)クーラントガイドの斜視図 (c)(b)に示すE-E断面図(E-E断面図はクーラントガイドの左右中心を通る位置で切断し左側から見た図)
【発明を実施するための形態】
【0010】
(実施の形態)
以下、図1図10を用いて実施の形態を説明する。尚、本実施の形態において、モータスピンドル100において、スピンドル120の回転軸を基準に軸方向及び径方向を定めている。つまり、軸方向とは、スピンドル120の回転軸と平行な方向である。径方向とは、回転軸と直行する方向である。また、モータスピンドル100において、ドリル150が位置する側を前、モータ140が位置する側を後としている。更に、上下方向及び左右方向は、モータスピンドル100を後方から見た状態を規準とする。参考までに、図1及び図2に上下左右の向きを記載する。
【0011】
図1図3を参照すると、モータスピンドル100は、工作機械に取り付けて動作させることで、被加工物に対して穴あけ等の切削加工を行うものであり、このモータスピンドル100にクーラントを供給するクーラント供給部200を備えている。尚、モータスピンドル100とクーラント供給部200を総称して切削工具Sとする。
図4図6を参照すると、モータスピンドル100は、ケース110とスピンドル120とベアリング130とモータ140とドリル150とコレットチャック160とチャックナット170を備える。
【0012】
ケース110は、モータスピンドル100の外殻を成すものであり、ステンレスなどの金属で構成された円筒形状の部材である。また、ケース110の外周面には、径方向に突出する突出部111が形成されている。
モータ140は、スピンドル120を回転させる駆動源であり、ケース110の内部に位置し、ロータ141とステータ142を備える。
【0013】
スピンドル120は、回転軸方向に長い軸状の部材である。スピンドル120は、前方を向く開口121をケース110の外部に向けた状態で、ケース110の内部にベアリング130により回転自在に支持される。
スピンドル120は、チャック保持部122を備える。チャック保持部122は、開口121からコレットチャック160を受入れて保持する部位である。チャック保持部122は、開口121に近い位置ほど広く、後端に近いほど狭まるテーパ形状の部位である。つまり、チャック保持部122は、前方に向けて広がるテーパ形状の部位である。
【0014】
スピンドル120の内部であってチャック保持部122の後ろ側には、モータスピンドル100の外部から供給されるクーラント(切削油)が流れるクーラント室123を備える。クーラント室123は、チャック保持部122の後ろ側から、モータ140の手前の位置に至るスピンドル120内部の空間である。
クーラント室123とチャック保持部122は、前後に隣接している。つまり、チャック保持部122に囲まれた空間とクーラント室123は、前後に繋がっている。また、クーラント室123の径方向には、ベアリング130(フロントベアリング131)が位置する。
【0015】
次に、スピンドル120の外周面には、開口側121から雄螺子124が形成されている。この雄螺子124は、チャックナット170の雌螺子172をねじ込むことで、チャックナット170をスピンドル120にねじ止めするためのものである。
さらに、クーラント室123より後ろ側の位置でスピンドル120の外周には、ロータ141が設けられている。そして、ロータ141の径方向外側であってケース110の内側には、ステータ142が位置している。ロータ141とステータ142は空隙を空けて向かい合い、モータ140を構成する。
【0016】
ベアリング130は、スピンドル120をケース110の前側で保持するフロントベアリング131と、スピンドル120をケース110の後側で保持するリアベアリング132である。フロントベアリング131は、スピンドル120のクーラント室123の径方向に位置する。リアベアリング132は、モータ140より後ろ側に位置する。
【0017】
ドリル150は、モータスピンドル100に取り付けられ回転することで加工対象物の切削を行うものである。ドリル150は、後端から先端にかけて連通するクーラントが流れる内部流路151を備える。内部流路151は、後端側はクーラント室123に向けて開口し、前端側は前方向に向けて開口する。ドリル150の先端は、加工対象物を切削する刃152が位置する。ドリル150の後端から内部流路151にクーラントを供給することで、切削位置となる刃152の部分にクーラントを供給することができる。
【0018】
コレットチャック160はドリル150を挟み込むことで、ドリル150をモータスピンドル100に対して固定するものである。図8を参照すると、コレットチャック160は、筒状の胴部161を備える。胴部161は、内部を軸方向に貫く保持開口162と、外周面163から保持開口162まで連通し軸方向に延びるすり割り164と、胴部161の前面に形成されたナット受面165と、胴部161の後端に近づくにつれて外径が小さく形成されたテーパ形状となる被保持部166を備える。
【0019】
保持開口162は、ドリル150を内部に通して、径方向から挟み込み保持する部位である。
すり割り164は、チャックナット170がスピンドル120に締めこまれた際に、コレットチャック160がチャックナット170に押圧されて、ドリル150を保持する方向に変形しやすくする為の隙間である。すり割り164は、複数形成されており、すり割り164の隙間は、コレットチャック160の外周面163から後端に連通している。
ナット受面165は、チャックナット170がスピンドル120に締めこまれた際に、チャックナット170と軸方向に接する面である。特に、ナット受面165は、前方に向けて窄む傾斜した面にすることで、チャックナット170から受けた軸方向の力を、径方向の内側に向くように構成されている。
【0020】
被保持部166は、コレットチャック160がスピンドル120に取り付けられた時に、チャック保持部122に保持される部位である。
被保持部166は、胴部161の後端に近づくにつれて外径が小さくなるように形成されたテーパ形状である。被保持部166は、開口121に近い位置ほど広く後端に近いほど狭まるチャック保持部122に、前側から挿入されることで保持される。
【0021】
チャックナット170は、スピンドル120にねじ締めする過程で、コレットチャック160を押圧して、ドリル150をスピンドル120に対して固定するものである。
図9を参照すると、チャックナット170は、回転中心となる位置に軸方向に貫通するドリル開口171を備えた筒形状の部材である。チャックナット170の内壁には、後端側から雌螺子172が形成されている。
【0022】
また、チャックナット170の内部のドリル開口171の開口縁には、ドリル開口171を囲むようにナット側テーパ部173が形成されている。ナット側テーパ部173は、後ろ側ほど径方向外側に広がる形状である。つまり、ナット側テーパ部173は後方に向けて広がる形状である。
ナット側テーパ部173は、チャックナット170をスピンドル120にねじ締めした際に、コレットチャック160のナット受面165に軸方向から接する部位である。
【0023】
更に、チャックナット170には、径方向外側から内側に貫通するクーラント導入口174が形成されている。このクーラント導入口174は、チャックナット170の外部から内部へとクーラントを導入する開口である。 クーラント導入口174は複数個形成されており、これらはスピンドル120の回転軸を囲むようにスピンドル120の回転方向に並んでいる。尚、本実施の形態においては、クーラント導入口174は2つ設けられている。
【0024】
このように構成されたモータスピンドル100は、次にようにドリル150を固定する。
図4図6を参照すると、チャック保持部122にコレットチャック160の被保持部166が保持された状態において、保持開口162にドリル150が挿入される。
コレットチャック160とチャックナット170が、ドリル開口171にドリル150を通した状態で組み合わされる。そして、チャックナット170の雌螺子172をスピンドル120の雄螺子124に螺子締めすることで、チャックナット170がスピンドル120に螺子締め固定される。
【0025】
このチャックナット170がスピンドル120に螺子固定される過程で、チャックナット170のナット側テーパ部173が、コレットチャック160のナット受面165に軸方向から接触して押圧する。
このとき、ナット受面165が前方に窄む傾斜した面なので、ナット側テーパ部173から受けた軸方向の力が径方向の内側に向きを変え、コレットチャック160がドリル150を保持するように変形する。この作用により、コレットチャック160がドリル150を径方向から掴み固定する。
【0026】
そして、スピンドル120にドリル150が固定された状態において、クーラント導入口174とすり割り164の隙間とクーラント室123は連通している。つまり、クーラント導入口174からチャックナット170の内部へとクーラントが入り、クーラントがすり割り164の隙間を通ってコレットチャック160を通り抜け、クーラント室123の内部へと流れ込むことが可能な状態となる。
【0027】
次に、図1図3図5を参照して、クーラント供給部200について説明する。
クーラント供給部200は、モータスピンドル100に対してクーラントを供給する部位である。クーラント供給部200は、ホルダ210と接続パイプ220とクーラントガイド230を備える。
ホルダ210は、クーラントガイド230や接続パイプ220等のクーラント供給部200の各部を固定するものである。そして、ホルダ210がモータスピンドル100と接続する部位となる。
ホルダ210は、概ね直方体形状をなし、モータスピンドル100やクーラントガイド230が設けられる接続部211と、接続パイプ220と接続してクーラントをスピンドル120方向へと導くクーラント流路215を備える。
【0028】
接続部211は、ホルダ210を前後方向に貫き前後方向に開口する内部空間である。この接続部211の前側には前開口217が開口し、後ろ側には後開口218が開口する。本実施の形態の接続部211は、概ね円柱形状である。接続部211内には、クーラント流路215が開口しており、接続部211の内部空間とクーラント流路215が連通している。
【0029】
接続部211の内部には、内側に突出するように段212が形成されている。更に、接続部211の内部からホルダ210の外へと連通する余剰クーラント排出路213が形成されている。
余剰クーラント排出路213は、スピンドル120に向けて供給されたクーラントのうち、スピンドル120の内部へ流れずにあまったクーラントの一部をホルダ210の外部へと排出する為のクーラントの流路である。従って、余剰クーラント排出路213は、一端は接続部211の内部に向けて開口し、他端はホルダ210の外部に向けて開口している。
接続パイプ220は、一端はクーラント流路215に接続し、他端はクーラントの供給元へと繋がるホース等のクーラント外部流路300と接続している。
【0030】
次に、図5図7図10を参照してクーラントガイド230を説明する。
クーラントガイド230は、ホルダ210の内部から流れてくるクーラントを、スピンドル120と共に回転するチャックナット170のクーラント導入口174に導く部位である。
クーラントガイド230は、前後方向に開口する筒状の筒体231に各部が構成される。筒体231の外周部235には、外周面を一周するように外凹溝232が形成されている。この外凹溝232の開口は、径方向の外側を向いて開口している。つまり、外凹溝232の開口は、スピンドル120の回転中心とは反対方向を向いている。
【0031】
筒体231の内周部分には、内周面を一周するように内凹溝233が形成されている。この内凹溝233の開口は、径方向の内側を向いて開口している。つまり、内凹溝233の開口は、スピンドル120の回転中心方向を向いている。
また、筒体231には、内凹溝233の内部空間と外凹溝232の内部空間を繋ぐ連通開口234が形成されている。この連通開口234は、筒体231の円周方向に適度な間隔を空けて複数個形成されている。本実施の形態の場合、連通開口234は4個形成されている。これら暖簾通開口は、互いに等しい距離を開けて設けられている。
【0032】
このように構成されたクーラントガイド230は、筒体231の2つの開口がそれぞれ前方向と後ろ方向を向くように、ホルダ210の接続部211の前開口217を塞ぐように、ホルダ210に取り付けられる。つまり、クーラントガイド230は、接続部211の前開口側217に取り付けられて固定される。
尚、クーラントガイド230がホルダ210に取り付けられた状態では、外凹溝232の開口方向にクーラント流路215が位置する。
【0033】
そして、ホルダ210にクーラントガイド230が取り付けられることで、外凹溝232と接続部211の内壁に囲まれた空間が形成される。この空間は、クーラント配分室240である。クーラント配分室240は、外凹溝234の開口方向にクーラント流路215が位置することから、クーラント流路215と連通している。
つまり、クーラント配分室240は、クーラント流路215を流れてきたクーラントが、スピンドル120へと向かう過程で流れ込む空間となる。また、クーラント配分室240は、内凹溝233の外側を囲むように位置するリング状の空間である。
【0034】
次に、内凹溝233の内部空間は、スピンドル120にクーラントを流し込む手前の空間であるクーラント供給室250となる。また、内凹溝233の内部空間と外凹溝234の内部空間を繋ぐ連通開口234が形成されているので、内凹溝233の内部空間であるクーラント供給室250と外凹溝234の内部空間であるクーラント配分室240は、外周部235で仕切られる共に、連通開口234により繋がった空間となる。
従って、クーラント流路215を流れてきたクーラントは、クーラント供給室250に流れ込んだ後、連通開口234を通ってクーラント配分室240に流れ込むように構成されている。
【0035】
以上のクーラント供給部200とモータスピンドル100は、次のように接続する。
図3図5図7を参照すると、モータスピンドル100は、ドリル150側からホルダ210の後開口218に挿入されて、接続部211の内部へと至る。
モータスピンドル100の突出部111が、ホルダ210の段212に後方から突き当たることで、クーラント供給部200に対するモータスピンドル100の位置がきまる。この状態で、後開口218の内側に形成された螺子に後方より固定螺子260を螺子固定する。固定螺子260はリング形状であり、リングの外周部分に螺子溝が形成されている。
固定螺子260が後開口218に螺子固定された状態において、リングの内部開口にモータスピンドル100を通した状態で、固定螺子260と段212の間に突出部111が挟み込まれることで、ホルダ210に対してモータスピンドル100が固定される。つまり、クーラント供給部200にモータスピンドル100が固定される。
【0036】
クーラント供給部200とモータスピンドル100が接続した状態において、チャックナット170は、クーラントガイド230の開口を前後方向に貫いて位置する。この状態において、チャックナット170とクーラントガイド230の間は、スピンドル120と共に回転するチャックナット170の回転を妨げない程度の隙間が形成されている。
【0037】
また、チャックナット170の径方向には、クーラントガイド230の内凹溝233の開口が位置する。つまり、チャックナット170の径方向には、チャックナット170の周囲を取り囲むようにクーラント供給室250が位置する。
従って、クーラント供給室250とクーラント導入口174が径方向に向かい合った位置関係となる。つまり、クーラント供給室250とクーラント導入口174が連通した状態となっている。
【0038】
また、チャックナット170の前端部175は、前開口217からホルダ210の外部へと突出した状態となる。前端部175は、レンチ等の締め付け工具がかかるように構成されている。このように、前端部175がホルダ210から外側に突出しているので、チャックナット170をスピンドル120に螺子締め固定する際に、チャックナット170に締め付け工具をかけることができる。
また、コレットチャック160に保持されたドリル150も、刃152の部分を含め前側の部分がホルダ210の前方に突出した状態となる。
【0039】
尚、ドリル150が保持された状態のモータスピンドル100をクーラント供給部200に取り付ける形態で説明したが、モータスピンドル100とクーラント供給部200が接続した状態で、チャックナット170をスピンドル120から緩めることができる。従って、モータスピンドル100とクーラント供給部200が接続した状態で、ドリル150のみを着脱することができる。
【0040】
以上のように、クーラント供給部200とモータスピンドル100が接続しているので、切削対象物を切削する際に次のように動作する。尚、各図面において、供給されるクーラントの流れFを点線の矢印線で示している。
モータスピンドル100は、取り付けられた工作機械から供給された電力でモータ140が回転駆動する。これにより、スピンドル120が回転し、ドリル150が切削対象物を切削可能な状態となる。尚、クーラント供給部200は、ケース110に対して固定されているので、スピンドル120が回転することにより、ケース110に対して動くことは無い。
【0041】
また、モータ140が回転駆動した状態において、取り付けられた工作機械等の供給源からクーラント供給部200にクーラントが供給される。クーラントは、スピンドル120の内部へ流れ込むように、圧力を高めて供給される。
クーラントの供給圧力について、ある仕様のモータスピンドルの例を挙げると、直径が30~50mmで動作時の回転数が毎分20000~30000回転の場合、クーラントの供給圧力は15~30Mpa程度である。
尚、この数値はモータスピンドルの仕様やクーラントの性質、使用状況等により変わるが、モータスピンドルの直径が小さくなるほど、また、回転数を高めて使用する程、高い圧力でクーラントを供給する必要がある。
【0042】
図5図7を参照すると、供給されるクーラントは、供給源と接続するクーラント外部流路300から接続パイプ220に流れ込み、クーラント流路215を経てクーラント配分室240に至る。クーラント配分室240に流れ込んだクーラントは、リング状のクーラント配分室240の内部を満たす。
クーラント配分室240は、クーラント供給室250の内部に流れるクーラントの圧力や量を、全体的に均等となるように分けるクーラントの流路である。
【0043】
次に、クーラント配分室240のクーラントは、連通開口234を通りクーラント供給室250へと流れる。ここで、クーラント供給室250はリング状であり、リング状のクーラント配分室240に周囲を囲まれている。また、クーラント供給室250とクーラント配分室240は、適度な間隔で配置された複数の連通開口234で接続されている。
従って、クーラント配分室240の内部のクーラントは、複数の連通開口234のいずれかを通り、クーラント供給室250の内部へと流れ込む。
【0044】
次に、クーラント供給室250はリング状であることから、スピンドル120と共に回転するチャックナット170の周囲を囲んでいる。つまり、チャックナット170に設けられた複数のクーラント導入口174は、クーラント供給室250を向いて開口している。
そして、クーラント供給室250の内部のクーラントは、クーラント導入口174から回転するチャックナット170の内側に入り込む。チャックナット170内側に入り込んだクーラントは、コレットチャック160のすり割り164の内部に入り込み、クーラント室123へと流れる。このように、クーラント供給室250の内部のクーラントは、スピンドル120の内部へと流れる。
【0045】
そして、クーラント室123の内部のクーラントは、コレットチャックに保持されたドリル150の後端からドリル150の内部の内部流路151に流れ込み、前方に向けて流れて刃152の近傍に設けられた内部流路151の前開口からドリル150の外部へと吹き出る。
尚、クーラント導入口174に入りきれずあふれたクーラントは、クーラントガイド230とチャックナット170の隙間からクーラント供給室250の外部に流れ、排出路213を通ってクーラント供給部200の外部に排出されるか、クーラント供給部200の前方側に排出される。
【0046】
以上のように、クーラント供給部200を備えたモータスピンドル100において、チャックナット170にクーラント導入口174を設け、このクーラント導入口174からコレットチャック160のすり割り164を通り、スピンドルの内部のクーラント室123と至るクーラントの取り込み流路が形成されている。クーラント供給部200は、クーラント導入口174にクーラントを供給する。
【0047】
これにより、クーラントを径方向からスピンドル120の内部に供給することができるので、クーラント供給時の軸方向の圧力を低減することができる。これにより、ベアリング130に作用する軸方向の負荷を低減することができる。
特に、この効果により、スピンドル120に対して、より高い圧力でクーラントを供給することが可能なので、より小さなモータスピンドル100に効率よくクーラントを供給することが可能となる。また、より高い圧力でクーラントを供給することが可能なので、クーラントの供給量を増やすことができ、より高回転でモータスピンドル100を回転駆動して用いることが可能となる。
【0048】
また、モータスピンドル側のクーラントの入口であるチャックナット170のクーラント導入口174の周囲を、リング状のクーラント供給室250で囲み、チャックナット170の周囲にクーラントを満たしてクーラントの圧力を高めて、クーラント導入口174の内部へとクーラントを流し込む構成である。
これにより、スピンドル120に設けられて共に回転するチャックナット170の周囲に、クーラントが満たされた状態となり、回転するチャックナット170をクーラントが径方向から支持する流体軸受の効果を得ることができる。
【0049】
特に、クーラント供給室250は、連通開口234でクーラント配分室240と連通しつつも、それぞれ外周部235で仕切られることで、独立した領域に構成されている。
つまり、クーラント供給室250が独立した領域なので、回転するチャックナット170を径方向から保持することができるクーラントの圧力を高めることができ、より効果的に流体軸受の効果を生じさせることができる。
また、流体軸受効果が生じる位置は、チャックナット170の周囲であり、動作時において切削物に近い位置となる。これにより、切削物を切削する際の負荷に対して、スピンドルの回転軸のブレを抑える効果がある。
【0050】
また、クーラント供給部200とモータスピンドル100は、螺子止めにより固定されて接続しているので、高い圧力で供給するクーラントをクーラント供給部200に流しても、クーラント供給部200はモータスピンドル100に対して動くこと無く安定した状態に維持することができる。
また、ベアリング130の径方向の内側に、スピンドル120内のクーラント室123が位置しているので、ベアリング130で発生する熱をクーラントが冷却することができる。
【符号の説明】
【0051】
100 モータスピンドル
110 ケース
111 突出部
120 スピンドル
121 開口
122 チャック保持部
123 クーラント室
124 雄螺子
130 ベアリング
131 フロントベアリング
132 リアベアリング
140 モータ
141 ロータ
142 ステータ
150 ドリル
151 内部流路
152 刃
160 コレットチャック
161 胴部
162 保持開口
163 外周面
164 すり割り
165 ナット受面
166 被保持部
170 チャックナット
171 ドリル開口
172 雌螺子
173 ナット側テーパ部
174 クーラント導入口
175 前端部
200 クーラント供給部
210 ホルダ
211 接続部
212 段
213 クーラント排出路
215 クーラント流路
217 前開口
218 後開口
220 接続パイプ
230 クーラントガイド
231 筒体
232 外凹溝
233 内凹溝
234 連通開口
235 外周部
240 クーラント配分室
250 クーラント供給室
260 固定螺子
300 クーラント外部流路
F クーラントの流れ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10