(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022170783
(43)【公開日】2022-11-11
(54)【発明の名称】無線電力伝送システム
(51)【国際特許分類】
H02J 50/50 20160101AFI20221104BHJP
H02J 50/20 20160101ALI20221104BHJP
H01Q 3/02 20060101ALI20221104BHJP
H01Q 3/16 20060101ALI20221104BHJP
H01Q 3/14 20060101ALI20221104BHJP
H01Q 3/30 20060101ALI20221104BHJP
【FI】
H02J50/50
H02J50/20
H01Q3/02
H01Q3/16
H01Q3/14
H01Q3/30
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021076977
(22)【出願日】2021-04-30
(71)【出願人】
【識別番号】000005108
【氏名又は名称】株式会社日立製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110000350
【氏名又は名称】ポレール弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】皆川 俊介
(72)【発明者】
【氏名】中山 靖章
【テーマコード(参考)】
5J021
【Fターム(参考)】
5J021AA02
5J021AB05
5J021AB06
5J021AB07
5J021BA01
5J021BA03
5J021CA06
5J021DA02
5J021DA03
5J021DB03
5J021GA02
(57)【要約】
【課題】電磁波の伝送方向の変更が容易にできる無線電力伝送システムを提供する。
【解決手段】本発明による無線電力伝送システムは、送電装置100と中継装置300と受電装置200を備える。中継装置300は、送電装置100の送電アンテナ102から放射された電磁波を受信する第1の中継アンテナ301と、第1の中継アンテナ301に接続され、電磁波を伝送する伝送方向調整経路部302と、伝送方向調整経路部302に接続され、電磁波を放射する第2の中継アンテナ303と、伝送方向調整経路部302を駆動する方向調整機構306を備える。伝送方向調整経路部302は、第1の中継アンテナ301に接続された受電部302aと、第2の中継アンテナ303に接続された送電部302bを備え、送電部302bが方向調整機構306に駆動されて受電部302aに対して移動可能である。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
送電装置と、中継装置と、受電装置とを備え、
前記送電装置は、電磁波を放射する送電アンテナを備え、
前記中継装置は、
前記送電アンテナから放射された前記電磁波を受信する第1の中継アンテナと、
前記第1の中継アンテナに接続され、前記電磁波を伝送する伝送方向調整経路部と、
前記伝送方向調整経路部に接続され、前記電磁波を放射する第2の中継アンテナと、
前記伝送方向調整経路部を駆動する方向調整機構と、
を備え、
前記受電装置は、前記第2の中継アンテナが放射した前記電磁波を受信する受電アンテナを備え、
前記伝送方向調整経路部は、
前記第1の中継アンテナに接続された受電部と、
前記第2の中継アンテナに接続された送電部と、
を備え、
前記送電部が前記方向調整機構に駆動されて前記受電部に対して移動可能である、
ことを特徴とする無線電力伝送システム。
【請求項2】
前記伝送方向調整経路部は、
剛体で構成された導波路と、
移動可能なレンズと移動可能な反射鏡との少なくとも一方と、
を備える、
請求項1に記載の無線電力伝送システム。
【請求項3】
前記導波路は、2つの金属導波管であり、
前記伝送方向調整経路部は、2つの前記金属導波管の間に位置する空洞部を備え、
前記レンズと前記反射鏡との少なくとも一方を、前記空洞部に備える、
請求項2に記載の無線電力伝送システム。
【請求項4】
前記伝送方向調整経路部は、可撓性部材で構成された導波路を備える、
請求項1に記載の無線電力伝送システム。
【請求項5】
前記送電装置は、
複数の前記送電アンテナで構成された第1のフェーズドアレーアンテナと、
複数の前記送電アンテナが放射する前記電磁波の位相を制御する移相器と、
を備え、
前記中継装置は、
複数の前記第2の中継アンテナで構成された第2のフェーズドアレーアンテナと、
複数の前記第2の中継アンテナが放射する前記電磁波の位相を制御する移相器と、
を備える、
請求項1に記載の無線電力伝送システム。
【請求項6】
前記中継装置は、前記送電アンテナに対する前記第1の中継アンテナの位置を調整するアライメント調整器と、前記受電アンテナに対する前記第2の中継アンテナの位置を調整するアライメント調整器との少なくとも一方を備える、
請求項1に記載の無線電力伝送システム。
【請求項7】
前記中継装置は、前記第1のフェーズドアレーアンテナに対する前記第1の中継アンテナの位置を調整するアライメント調整器と、前記受電アンテナに対する前記第2のフェーズドアレーアンテナの位置を調整するアライメント調整器との少なくとも一方を備える、
請求項5に記載の無線電力伝送システム。
【請求項8】
前記アライメント調整器は、レーザ装置を備える、
請求項6または7に記載の無線電力伝送システム。
【請求項9】
前記アライメント調整器は、カメラを備える、
請求項6または7に記載の無線電力伝送システム。
【請求項10】
前記導波路は、同軸ケーブルである、
請求項4に記載の無線電力伝送システム。
【請求項11】
前記導波路は、誘電体導波管である、
請求項4に記載の無線電力伝送システム。
【請求項12】
前記伝送方向調整経路部は、
前記レンズと前記反射鏡を備え、
前記電磁波の伝送方向を変える角度に応じて前記レンズと前記反射鏡の一方を用いて、前記電磁波の伝送方向を変える、
請求項2に記載の無線電力伝送システム。
【請求項13】
前記伝送方向調整経路部は、
前記レンズと前記反射鏡を備え、
前記伝送方向調整経路部を伝搬する前記電磁波のビーム径に応じて前記レンズと前記反射鏡の一方を用いて、前記電磁波の伝送方向を変える、
請求項2に記載の無線電力伝送システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無線で電力を伝送する無線電力伝送システムに関する。
【背景技術】
【0002】
無線電力伝送システムは、無線により電磁波(例えば、マイクロ波)で電力を伝送するためのシステムである。無線電力伝送システムの一種であるマイクロ波電力伝送システムは、送電アンテナと発振器を備える送電部と、受電アンテナと整流器を備える受電部で構成される。送受電アンテナ間は、マイクロ波で電力が伝送される。マイクロ波は、伝送距離の2乗に比例して電力密度が低下する特徴がある。この特徴から、送受電アンテナ間の伝送効率の低下を防ぐためには、アンテナ径を大きくするか、伝送距離を短くする必要がある。アンテナ径を大きくして伝送効率の低下を防ぐ方法には、コストとアンテナの重量の面で制約がある。このため、伝送距離を短くし、拡散するマイクロ波を受信して再放射する中継装置を用いることで、伝送効率の低下を防ぐ方法が注目されている。
【0003】
無線電力伝送での中継に関する従来技術の例は、特許文献1から3に記載されている。特許文献1には、地上又は宇宙の中継通信設備を含む通信機能を提供するパッチアンテナ(柔軟性材料の上に印刷されたマイクロ波パッチアンテナ)が開示されている。特許文献2には、送電機と受電機の間に中継器を加え、電力を中継させて伝送するマルチホップリレーを用いる無線電力伝送システムが開示されている。特許文献3には、マイクロ波ビームを方向付ける第一のビームディレクタを含むマイクロ送信機と、マイクロ送信機からのマイクロ波ビームを受信するためのリディレクタ衛星とを備え、リディレクタ衛星は、受信マイクロ波ビームを複数の出射マイクロ波ビームに変換する送信機と、出射ビームを所定の方向に向ける第二のビームディレクタとを有する、配電システムが開示されている。
【0004】
また、非特許文献1には、マイクロ波の伝送方向をレンズにより調整する技術が記載されている。非特許文献2には、フェーズドアレーアンテナにおいて移相器で調整する、複数の送電アンテナのマイクロ波の位相の調整量について記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2020-191781号公報
【特許文献2】特開2020-162235号公報
【特許文献3】特表2008-507948号公報
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】Carlos A. Fernandes、Eduardo B. Lima、Jorge R. Costa、“Dielectric Lens Antennas”、Handbook of Antenna Technologies、pp 1001-1064
【非特許文献2】篠原真毅、小紫公也、“ワイヤレス給電技術”、設計技術シリーズ、科学情報出版、pp77-80、2013
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述したように、無線電力伝送システムでは、中継装置を用いることで、電力を伝送する電磁波の伝送効率の低下を防ぐことができる。従来の技術では、電力の伝送方向を変更する場合には、複数の中継装置を用いて伝送方向を変更する必要があり、コストが増加する可能性がある。中継装置が伝送方向を変更することができる機能を持つと、必要な中継装置の数を減らすことができる。しかし、従来の無線電力伝送システムの中継装置では、例えば、障害物を回避するために伝送方向を任意の角度で変更したり、伝送方向の微調整をしたりするのが困難である。このため、従来の無線電力伝送システムでは、中継装置の数を減らすことが困難であり、電磁波の伝搬損失を十分に抑制できないという課題がある。
【0008】
本発明の目的は、電磁波の伝送方向の変更が容易にできる無線電力伝送システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明による無線電力伝送システムは、送電装置と中継装置と受電装置とを備える。前記送電装置は、電磁波を放射する送電アンテナを備える。前記中継装置は、前記送電アンテナから放射された前記電磁波を受信する第1の中継アンテナと、前記第1の中継アンテナに接続され、前記電磁波を伝送する伝送方向調整経路部と、前記伝送方向調整経路部に接続され、前記電磁波を放射する第2の中継アンテナと、前記伝送方向調整経路部を駆動する方向調整機構とを備える。前記受電装置は、前記第2の中継アンテナが放射した前記電磁波を受信する受電アンテナを備える。前記伝送方向調整経路部は、前記第1の中継アンテナに接続された受電部と、前記第2の中継アンテナに接続された送電部とを備え、前記送電部が前記方向調整機構に駆動されて前記受電部に対して移動可能である。
【発明の効果】
【0010】
本発明によると、電磁波の伝送方向の変更が容易にできる無線電力伝送システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の実施例1による無線電力伝送システムの構成図である。
【
図2】本発明の実施例2による無線電力伝送システムの構成図である。
【
図3】本発明の実施例3による無線電力伝送システムの構成図である。
【
図4】本発明の実施例4による無線電力伝送システムの構成図である。
【
図5】本発明の実施例5における伝送方向調整経路部の構成を示す上面図である。
【
図6】実施例5における伝送方向調整経路部の別の構成を示す上面図である。
【
図7】実施例5における伝送方向調整経路部の別の構成を示す上面図である。
【
図8】実施例5における伝送方向調整経路部の別の構成を示す上面図である。
【
図9】実施例5において、レンズを用いてマイクロ波の伝送方向を変える場合の好ましい条件を説明するための図である。
【
図10】実施例5において、反射鏡を用いてマイクロ波の伝送方向を変える場合の好ましい条件を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明による無線電力伝送システムは、電力(例えば、マイクロ波、ミリ波、及び光などの電磁波の電力)を無線で伝送する方向を容易に変えることができ、広範囲に電力を伝送することができる。このため、本発明による無線電力伝送システムを用いると、電力の伝送方向に障害物があってもこの障害物を回避して電力を伝送することができ、電力を伝送する範囲を拡大することができる。
【0013】
以下、本発明の実施例による無線電力伝送システムを、図面を用いて説明する。本発明による無線電力伝送システムは、例えばマイクロ波、ミリ波、及び光などの電磁波で電力を伝送する。以下の実施例では、一例としてマイクロ波で電力を伝送する無線電力伝送システムについて説明する。なお、本明細書で用いる図面において、同一のまたは対応する構成要素には同一の符号を付け、これらの構成要素については繰り返しの説明を省略する場合がある。
【実施例0014】
図1を参照して、本発明の実施例1による無線電力伝送システムについて説明する。
図1は、本発明の実施例1による無線電力伝送システムの構成図である。
【0015】
本実施例による無線電力伝送システムは、送電装置100、受電装置200、及び中継装置300を備える。
【0016】
送電装置100は、発振器101、送電アンテナ102、通信機103、及び位置情報取得部103aを備え、外部電源1から電力が供給される。
【0017】
発振器101は、外部電源1から供給された電力を用いて、マイクロ波を発振する。発振器101には、GaAsやGaN等が材料のガン・ダイオードを使ったガン発振器、YIG発振器、誘電体発振器、水晶発振器、及び電圧制御発振器を用いることができる。また、発振器101には、クライストロン、進行波管、後退波管、マグネトロン、及びジャイロトロンなどの発振用真空管を用いることもできる。発振器101は、マイクロ波ではなく、ミリ波や光などの電磁波を発振してもよい。
【0018】
送電アンテナ102は、発振器101に導波路で接続されており、送電装置100の外部空間にマイクロ波を放射する。この導波路は、導波管または同軸ケーブルで構成することができる。送電アンテナ102から放射されるマイクロ波は、指向性を持つ。
【0019】
通信機103と位置情報取得部103aについては後述する。
【0020】
受電装置200は、受電アンテナ201、整流器202、通信機203、及び位置情報取得部203aを備える。
【0021】
受電アンテナ201は、受電装置200の外部から入射したマイクロ波を受信し、受信したマイクロ波を導波路(導波管または同軸ケーブル)を通じて整流器202に入射させる。
【0022】
整流器202は、マイクロ波を直流電力に変換する。この電力は、外部負荷2で消費される。
【0023】
通信機203と位置情報取得部203aについては後述する。
【0024】
中継装置300は、中継受電アンテナ301、伝送方向調整経路部302、中継送電アンテナ303、方向調整機構306、通信機304、位置情報取得部311、及び制御部305を備える。
【0025】
中継受電アンテナ301は、送電装置100の送電アンテナ102から放射されたマイクロ波を受信し、受信したマイクロ波を伝送方向調整経路部302に入射させる。中継受電アンテナ301と伝送方向調整経路部302との間は、導波路(導波管または同軸ケーブル)で接続されている。
【0026】
伝送方向調整経路部302は、送電装置100から受電装置200までのマイクロ波の伝送方向を調整するための伝送路である。伝送方向調整経路部302は、マイクロ波を伝送方向を変えて伝送することができ、伝送したマイクロ波を中継送電アンテナ303に入射させる。伝送方向調整経路部302と中継送電アンテナ303との間は、導波路(導波管または同軸ケーブル)で接続されている。
【0027】
中継送電アンテナ303は、マイクロ波を中継装置300の外部に放射する。中継送電アンテナ303から放射されたマイクロ波は、受電装置200の受電アンテナ201に受信される。
【0028】
方向調整機構306は、制御部305からの指令値に従い、任意の動力によって伝送方向調整経路部302を駆動する。伝送方向調整経路部302は、方向調整機構306に駆動されて、伝送するマイクロ波の伝送方向を変える。方向調整機構306が伝送方向調整経路部302を駆動する動力には、例えば、油圧や電動モータなどの機械的駆動部の動力や、人力を用いることができる。
【0029】
通信機304と位置情報取得部311と制御部305については後述する。
【0030】
送電アンテナ102、受電アンテナ201、中継受電アンテナ301、及び中継送電アンテナ303は、ホーンアンテナ、リフレクタアンテナ、レンズアンテナ、スロットアンテナ、パッチアンテナ、パラボラアンテナ、及びカセグレアンテナで構成することができる。送電アンテナ102、受電アンテナ201、中継受電アンテナ301、及び中継送電アンテナ303は、レンズアンテナで構成されるのが好ましい。パラボラアンテナやカセグレアンテナでは、マイクロ波のビーム径を大きくすると、反射鏡が陰になってブロッキング損失が発生する。レンズアンテナでは、マイクロ波のビーム径を大きくしても、このブロッキング損失を抑制することができる。
【0031】
送電アンテナ102、受電アンテナ201、中継受電アンテナ301、及び中継送電アンテナ303は、誘電体レンズ、メタルレンズ、及びパスレングレンズで構成してもよい。メタルレンズとパスレングレンズでは、レンズが金属平板で構成される。このため、メタルレンズまたはパスレングレンズで構成された送電アンテナ102、受電アンテナ201、中継受電アンテナ301、及び中継送電アンテナ303は、アンテナに当たる風や水の荷重を軽減することができる。
【0032】
通信機103、203、304は、有線通信または無線通信により通信が可能な装置であり、通信機103、203、304の間で通信することができる。有線通信には、例えばLANケーブル、光ケーブル、及びUSBケーブルなどの任意の通信線を用いることができる。無線通信には、例えばWi-Fi(登録商標)、Bluetooth(登録商標)、音波、電磁波、及び光などの任意の規格や媒体を用いることができる。
【0033】
位置情報取得部103a、203a、311は、GPSで構成することができる。GPSは、軌道衛星または基地局から自らの位置情報を取得する。位置情報取得部103aは、送電装置100の位置情報を取得し、取得した送電装置100の位置情報を通信機103から通信機304に送信する。位置情報取得部203aは、受電装置200の位置情報を取得し、取得した受電装置200の位置情報を通信機203から通信機304に送信する。位置情報取得部311は、中継装置300の位置情報を取得し、取得した中継装置300の位置情報を通信機304に送信する。
【0034】
制御部305は、送電装置100、受電装置200、及び中継装置300の位置情報(それぞれの装置の絶対位置または相対位置についての情報)を、通信機304から取得する。制御部305は、取得した位置情報を基に調整する位置の指令値を作成し、この指令値を方向調整機構306に送信する。調整する位置の指令値とは、伝送方向調整経路部302が、伝送するマイクロ波の伝送方向を変える(調整する)ための指令値である。
【0035】
制御部305は、調整する位置の指令値を、例えば以下のようにして作成することができる。制御部305は、受電アンテナ201と中継送電アンテナ303とのアライメントが合うように、すなわち受電アンテナ201のアンテナ開口面の中心の位置と中継送電アンテナ303のアンテナ開口面の中心の位置が一致するように、マイクロ波の伝送方向を決定し、中継送電アンテナ303の状態から得られた現在のマイクロ波の伝送方向と決定したマイクロ波の伝送方向とから、調整する位置の指令値を作成する。調整する位置の指令値は、例えば、中継送電アンテナ303の移動距離(回転角度)と移動方向(回転方向)を含むことができる。
【0036】
伝送方向調整経路部302は、中継受電アンテナ301に接続された部分と、中継送電アンテナ303に接続された部分を備え、中継受電アンテナ301に接続された部分と、中継送電アンテナ303に接続された部分が、それぞれ方向調整機構306に駆動されて互いに独立に移動可能である。従って、中継送電アンテナ303に接続された部分は、中継受電アンテナ301に接続された部分に対して相対的に移動可能である。伝送方向調整経路部302は、方向調整機構306に駆動されて、中継送電アンテナ303に接続された部分が、中継受電アンテナ301に接続された部分に対して相対的に移動することで、伝送するマイクロ波の伝送方向を変えることができる。また、中継受電アンテナ301に接続された部分と、中継送電アンテナ303に接続された部分が、互いに独立に移動することで、中継受電アンテナ301と中継送電アンテナ303の位置を個別に調整することができる。
【0037】
伝送方向調整経路部302は、剛体または可撓性部材(曲げることが可能な部材)で構成された導波路を備える。剛体で構成された導波路は、例えば、金属で構成された金属導波管である。可撓性部材で構成された導波路は、例えば、誘電体で構成された誘電体導波管や同軸ケーブルであり、柔軟で自由に曲げることができる。以下では、一例として、剛体で構成された導波路が金属導波管であるとして説明する。
【0038】
伝送方向調整経路部302が剛体で構成された導波路(金属導波管)を備える構成の場合には、伝送方向調整経路部302は、2つの金属導波管と、これらの金属導波管の間に位置する空洞部(空間部)を備える。伝送方向調整経路部302に入射したマイクロ波は、一方の金属導波管を通って空洞部に放射された後、他方の金属導波管を通って中継送電アンテナ303に入射する。伝送方向調整経路部302は、中継送電アンテナ303に接続された部分が中継受電アンテナ301に接続された部分に対して移動すると、この移動に伴い2つの金属導波管の向かい合う角度が変わり、伝送するマイクロ波の伝送方向を変えることができる。
【0039】
伝送方向調整経路部302が可撓性部材で構成された導波路(例えば、誘電体導波管または同軸ケーブル)を備える構成の場合には、中継受電アンテナ301から伝送方向調整経路部302に入射したマイクロ波は、伝送方向調整経路部302が備える可撓性の導波路を伝送し、中継送電アンテナ303に入射する。伝送方向調整経路部302は、中継送電アンテナ303に接続された部分が中継受電アンテナ301に接続された部分に対して移動すると、この移動に伴い可撓性の導波路が曲がり、伝送するマイクロ波の伝送方向を変えることができる。なお、伝送方向調整経路部302は、可撓性部材で構成された導波路を備える場合には、後述する剛体で構成された導波路を備える場合と異なり、レンズと反射鏡を備えなくてもよい。
【0040】
アンテナ間のマイクロ波の伝送効率は、互いのアライメントが合っていないと、すなわちアンテナ同士のアンテナ開口面の中心の位置が合っていないと、著しく低下する。このため、受電アンテナ201と中継送電アンテナ303とのアライメントを合わせるともに、送電アンテナ102と中継受電アンテナ301とのアライメントを合わせる必要がある。
【0041】
制御部305は、取得した送電装置100、受電装置200、及び中継装置300の位置情報を用いて、送電アンテナ102と中継受電アンテナ301とのアライメントが合い、受電アンテナ201と中継送電アンテナ303とのアライメントが合うように、中継受電アンテナ301と中継送電アンテナ303の水平方向と垂直方向の位置を調整することができる。制御部305は、例えば、伝送方向調整経路部302が方向調整機構306に駆動されてマイクロ波の伝送方向を変えた後で、中継受電アンテナ301と中継送電アンテナ303の位置を調整し、アンテナ同士のアライメントを合わせることができる。
【0042】
制御部305は、送電装置100、受電装置200、及び中継装置300の位置情報を取得し、送電アンテナ102と中継受電アンテナ301とのアライメントのズレ(アンテナ開口面の中心の位置の差異)と、受電アンテナ201と中継送電アンテナ303とのアライメントのズレを求め、このズレが小さくなるような指令値を作成し、この指令値を方向調整機構306に送信する。方向調整機構306は、伝送方向調整経路部302を駆動して、中継受電アンテナ301と中継送電アンテナ303の位置を調整する。
【0043】
本実施例による無線電力伝送システムは、送電装置100から受電装置200へのマイクロ波の伝送経路上に、複数の中継装置300を備えることができる。複数の中継装置300を備えると、送電装置100から受電装置200までの距離が長くても、伝送するマイクロ波の拡散を抑制することができる。
【0044】
本実施例による無線電力伝送システムは、中継装置300が伝送方向調整経路部302を備え、伝送方向調整経路部302が送電装置100から受電装置200までのマイクロ波の伝送方向を容易に変更することができ、マイクロ波の伝送方向を調整することができる。
実施例1で説明したように、アンテナ間のマイクロ波の伝送効率は、互いのアライメントが合っていないと(すなわち、アンテナ同士のアンテナ開口面の中心の位置が合っていないと)、著しく低下する。このため、送電アンテナ102と中継受電アンテナ301とのアライメントを合わせるともに、受電アンテナ201と中継送電アンテナ303とのアライメントを合わせる必要がある。実施例1のように、GPSで構成された位置情報取得部103a、203a、311が取得した、送電装置100と受電装置200と中継装置300の位置情報を用いてアライメントを合わせると、誤差が大きくなることがある。
アライメント調整器312がレーザ装置を備える場合には、アライメント調整器312は、水平方向と垂直方向の2種類のシートレーザを送電アンテナ102(または受電アンテナ201)に照射し、シートレーザの交点が送電アンテナ102(または受電アンテナ201)のアンテナ開口面の中心の位置に来るようにする。そして、アライメント調整器312は、中継受電アンテナ301(または中継送電アンテナ303)のアンテナ開口面の中心が2種類のシートレーザの交点に来るように、中継受電アンテナ301(または中継送電アンテナ303)の水平方向と垂直方向の位置を調整する。
アライメント調整器312がカメラを備える場合には、アライメント調整器312は、撮影した画像の中心が送電アンテナ102(または受電アンテナ201)のアンテナ開口面の中心の位置に来るように、カメラで送電アンテナ102(または受電アンテナ201)を撮影する。そして、アライメント調整器312は、中継受電アンテナ301(または中継送電アンテナ303)のアンテナ開口面の中心が撮影した画像の中心に来るように、中継受電アンテナ301(または中継送電アンテナ303)の水平方向と垂直方向の位置を調整する。
本実施例による無線電力伝送システムは、アライメント調整器312を用いてアンテナ間のアライメントを合わせることで、アンテナ間のマイクロ波の伝送効率の低下を抑制できる。