(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022170794
(43)【公開日】2022-11-11
(54)【発明の名称】感知器用保護カバーおよびアドレス設定方法
(51)【国際特許分類】
G08B 17/00 20060101AFI20221104BHJP
G08B 17/10 20060101ALI20221104BHJP
【FI】
G08B17/00 G
G08B17/10 H
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021076998
(22)【出願日】2021-04-30
(71)【出願人】
【識別番号】000111074
【氏名又は名称】ニッタン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100090033
【弁理士】
【氏名又は名称】荒船 博司
(74)【代理人】
【識別番号】100093045
【弁理士】
【氏名又は名称】荒船 良男
(72)【発明者】
【氏名】森田 淳
【テーマコード(参考)】
5C085
5G405
【Fターム(参考)】
5C085AA01
5C085AA03
5C085CA18
5C085CA21
5C085FA11
5C085FA12
5G405AA01
5G405AA06
5G405AB01
5G405AB02
5G405AB03
5G405AD05
5G405BA01
5G405BA07
5G405CA30
5G405CA46
5G405CA53
5G405DA07
5G405FA06
5G405FA11
5G405FA30
(57)【要約】 (修正有)
【課題】設置済みの感知器への通信アドレスの設定及び変更を容易に行うことができる感知器用保護カバーを提供する。
【解決手段】近距離無線通信部16及び所定の通信アドレスを用いて受信機と有線で通信する機能を有する感知器10の表面に被着可能な感知器用保護カバー20であって、近距離無線通信部による通信が可能な距離よりも通信距離が長く公衆無線通信システムを用いた通信機能を有する無線通信端末30の通信機能による通信が可能な距離よりも通信距離が短い中距離無線通信部25と、近距離無線通信部16へ無線通信で情報を送信可能なカバー側近距離無線通信部24と、電源電圧を供給する電源部27とを備え、中距離無線通信部により受信した情報を、カバー側近距離無線通信部24へ伝達し、カバー側近距離無線通信部24により感知器の近距離無線通信部16へ通信アドレス情報を送信する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
近距離無線通信手段および所定の通信アドレスを用いて受信機と有線で通信する有線通信手段を有する感知器の表面に被着可能な感知器用保護カバーであって、
前記近距離無線通信手段による通信が可能な距離よりも通信距離が長く、無線通信システムを用いた通信機能を有する携帯通信端末の前記通信機能による通信が可能な距離よりも通信距離が短い中距離無線通信手段と、
前記近距離無線通信手段へ無線通信で情報を送信可能なカバー側近距離無線通信手段と、
前記中距離無線通信手段および前記カバー側近距離無線通信手段へ電源電圧を供給する電源手段と、
を備え、前記中距離無線通信手段により受信した情報を前記カバー側近距離無線通信手段へ伝達し、前記カバー側近距離無線通信手段により感知器の前記近距離無線通信手段へ通信アドレス情報を送信可能に構成されていることを特徴とする感知器用保護カバー。
【請求項2】
前記中距離無線通信手段により受信した情報に基づいて自身が通信相手として選択されていることを判定する機能と、前記中距離無線通信手段により受信した通信アドレス情報を前記カバー側近距離無線通信手段によって前記感知器へ送信させる機能と、を有する情報処理手段と、
表示灯と、を備え、前記情報処理手段は、自身が通信相手として選択されていると判定した場合に前記表示灯を点滅または点灯させることを特徴とする請求項1に記載の感知器用保護カバー。
【請求項3】
前記中距離無線通信手段と前記カバー側近距離無線通信手段と前記電源手段とがケースに内蔵されてなる通信ユニットと、感知器の外側に当該感知器の筐体の少なくとも一部を覆うように被着されるカバー本体と、を備え、
前記通信ユニットが前記カバー本体に着脱可能に結合されていることを特徴とする請求項1または2に記載の感知器用保護カバー。
【請求項4】
通信アドレスを書込み可能な記憶手段を備え火災検知システムが構築される所定エリアに分散設置されかつ請求項1~3のいずれかに記載の感知器用保護カバーが被着されている複数の感知器に、前記中距離無線通信手段と通信可能な無線通信手段を備えた携帯通信端末を用いて通信アドレスをそれぞれ設定するアドレス設定方法であって、
前記所定エリアに設置されている複数の感知器の配置を示す設備図面を参照して通信アドレスを設定する感知器を選択する第1ステップと、
選択した前記感知器に被着されている保護カバーへ送信する通信アドレスの情報を前記携帯通信端末に入力または当該携帯通信端末の表示画面より選択する第2ステップと、
前記入力または選択された通信アドレスの情報を前記携帯通信端末により送信する第3ステップと、
含むことを特徴とするアドレス設定方法。
【請求項5】
前記第3ステップの後に、
前記所定エリアに設置されている複数の感知器への通信アドレスの設定後に感知器に被着されている保護カバーを回収して1か所に集める第4ステップと、
1か所に集められた全ての感知器と前記携帯通信端末により通信を行い、被着済み保護カバーの一覧を示すリストと照合して未回収の保護カバーを判定する第5ステップと、
含むことを特徴とする請求項4に記載のアドレス設定方法。
【請求項6】
前記第3ステップの後であって前記第4ステップの前に、
前記複数の感知器が接続されている通信回線に接続された受信機によって、前記通信回線を介して前記複数の感知器に設定されている前記通信アドレスを含む情報を取得して、正しい通信アドレスが設定されているか判定するステップと、をさらに含むことを特徴とする請求項5に記載のアドレス設定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、火災感知器などの感知器を保護する感知器用保護カバーおよびこの保護カバーを利用して設置後の感知器に通信アドレス(以下、単にアドレスと記す)を設定するアドレス設定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、火災検知システムにおける火災感知器などの感知器には、受信機等からのアドレスに基づく呼出し信号に呼応して、自器に設定されているアドレスとの一致を検出し、一致していたならば呼び出し側の受信機等との間で情報交換を行うように構成されているものがある。かかる感知器に設定されるアドレスは、以前はロータリスイッチ等を設けて機械的に設定していたが、近年はEEPROM等のアドレス情報を記憶する不揮発性メモリを設けて電気的に設定するものが多い。電気的にアドレスを設定する方式の感知器を使用する場合には、感知器に接続してアドレス設定を行うアドレス設定器が必要であり、アドレス設定器に関する発明としては、例えば特許文献1に記載されているものがある。
【0003】
しかしながら、火災検知システムが設けられる施設の規模が大きくなると、そこに設置される火災感知器の数も膨大となり、アドレス設定器を用いて各感知器1つ1つに間違いなくアドレスを設定するのは大変な作業となる。この設定作業は、予め各感知器の設置場所とアドレスとが表示されているリストや設備図面などを準備し、それらを参照しながら、アドレス設定器を用いて施工現場で設定することにより行われる。もしくは現場に行く前に予めアドレスを設定して、現場にて設備図面を参照しながらアドレスが設定された感知器を設置していくことにより行われる。
具体的には、リストや設備図面などを参照して、その設置場所に設置する感知器と同じ種別の感知器を選別してアドレス設定器に接続し、リストや設備図面などに指定されたアドレスを作業者が操作部のテンキーを使用して入力し設定していた。そのため、作業者への負荷が大きくアドレス設定に時間がかかるとともに、人為的な入力ミスが発生するおそれがあるという課題があった。
【0004】
一方、ビル等の施設に火災検知システムを構築する場合、施設内の各エリアの所定位置に火災感知器を設置するとともに、各火災感知器と防災センタ等に配備されている火災受信機との間を電気的に接続する配線の敷設作業を実施することが行われているが、施工作業が完了するまでの間、感知器に保護カバーを被せて汚れや傷がつかないように感知器を保護することが行われている。火災感知器に保護カバーに関する発明としては、例えば特許文献2に記載されているものがある。
また、感知器に保護カバーを被せるようにした場合、作業完了後に外す必要があるが、カバーの外し忘れが生じるおそれがある。特許文献2には、カバーの外し忘れを防止するため、保護カバーの下部に発光部(LED)を設けた実施例も記載されている。また、特許文献3には、感知器の防塵カバーとその着脱器に関する発明が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2010-44598号公報
【特許文献2】特開2016-148983号公報
【特許文献3】特開2019-21009号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載されているアドレス設定器によれば、感知器に設定したアドレスや種別をチェックする手段を備えるため、人為的な入力ミスによる誤設定をなくすことができるという利点があるものの、アドレスの設定はアドレス設定器に感知器を接続して行う方式であるため、感知器を天井面等の所定位置に設置した後にアドレスを変更したい場合には、感知器を一旦取り外すための高所作業が必要であり、作業が面倒である。また、感知器に保護カバーを被着した場合、カバーの外し忘れが発生するおそれがあるという課題がある。
【0007】
一方、特許文献2に記載されている発明のように、保護カバーの下部に発光部(LED)を設けるようにした場合には、カバーの外し忘れを発見することができるという利点があるものの、目視で発光部の発光状態の有無を確認する必要があるため、感知器が設置されている全てのエリアを巡回して確認しなければならず、確認作業者の負担が大きいとともに、本来巡回すべきエリアを見逃すおそれがあり、その場合カバーの外し忘れを発見できないという課題が残ることとなる。
【0008】
本発明は、上記のような課題に着目してなされたもので、設置済みの感知器へのアドレスの設定および変更を容易に行うことができる感知器用保護カバーを提供することを目的とする。
本発明の他の目的は、アドレス設定後における外し忘れを容易かつ確実に発見することができる感知器用保護カバーを提供することにある。
本発明のさらに他の目的は、感知器用保護カバーを利用して設置済みの感知器へアドレスを設定することができるアドレス設定方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するため、この発明は、
近距離無線通信手段および所定の通信アドレスを用いて受信機と有線で通信する有線通信手段を有する感知器の表面に被着可能な感知器用保護カバーにおいて、
前記近距離無線通信手段による通信が可能な距離よりも通信距離が長く、無線通信システムを用いた通信機能を有する携帯通信端末の前記通信機能による通信が可能な距離よりも通信距離が短い中距離無線通信手段と、
前記近距離無線通信手段へ無線通信で情報を送信可能なカバー側近距離無線通信手段と、
前記中距離無線通信手段および前記カバー側近距離無線通信手段へ電源電圧を供給する電源手段と、
を備え、前記中距離無線通信手段により受信した情報を前記カバー側近距離無線通信手段へ伝達し、前記カバー側近距離無線通信手段により感知器の前記近距離無線通信手段へ通信アドレス情報を送信可能に構成したものである。
【0010】
上記のような構成によれば、感知器に被着される保護カバーに近距離無線通信手段と中距離無線通信手段とが設けられ、中距離無線通信手段により受信したアドレス情報を近距離無線通信手段に伝達して感知器へアドレス情報を送信可能に構成されているため、携帯通信端末を用いて感知器に被着されている保護カバーへアドレスを送信することで、感知器を取り外す高所作業を行わずに、設置済みの感知器へのアドレスの設定および変更を行うことができ、作業者への負担を軽減するとともに安全性を高めることができる。その上、感知器を設置した後でのアドレス設定が可能に構成されているため、予めアドレスを設定した感知器を別の場所に間違って取り付けてしまうという人為的ミスを抑制することができる。
また、感知器へのアドレスの設定が終了した後に、保護カバーを外して回収し再利用することができ、それによって保護カバーのコストアップを抑制することができる。さらに、保護カバーに近距離無線通信手段と中距離無線通信手段とを設けることで、感知器には簡易な近距離無線通信手段を設けるだけでよいため、感知器の機能付加に伴うコストアップも抑制することができる。
【0011】
ここで、望ましくは、前記中距離無線通信手段により受信した情報に基づいて自身が通信相手として選択されていることを判定する機能と、前記中距離無線通信手段により受信した通信アドレス情報を前記カバー側近距離無線通信手段によって前記感知器へ送信させる機能と、を有する情報処理手段と、
表示灯と、を備え、前記情報処理手段は、自身が通信相手として選択されていると判定した場合に前記表示灯を点滅または点灯させるようにする。
【0012】
上記のような構成によれば、アドレス情報を設定したい感知器に被着されている保護カバーの表示灯が点滅するため、複数の感知器を視認できる離れた位置から携帯通信端末を操作して選択した保護カバーへアドレスを送信して設定することができ、アドレス設定作業中にフロアもしくはエリア内で動き回る必要がなくなり、作業効率が向上する。また、アドレス設定作業の終了する後に、各フロアもしくはエリアで携帯通信端末へ通信を行えば、外し忘れの保護カバーがあれば表示灯が点滅するため、保護カバーの外し忘れを発見することができる。
【0013】
さらに、望ましくは、前記中距離無線通信手段と前記カバー側近距離無線通信手段と前記電源手段とがケースに内蔵されてなる通信ユニットと、感知器の外側に当該感知器の筐体の少なくとも一部を覆うように被着されるカバー本体と、を備え、
前記通信ユニットが前記カバー本体に着脱可能に結合されるように構成する。
【0014】
上記のような構成によれば、通信ユニットがカバー本体に対して着脱可能に構成されているため、アドレスの設定が必要な感知器とアドレスの設定が不要な感知器とでカバー本体を共用することができる。また、火災感知器を出荷する際には、カバー本体のみを感知器に被着した状態で出荷することができるため、コストダウンを図ることができる。さらに、カバー本体と通信ユニットのいずれか一方が破損または故障したような場合に、一方の部品のみの交換で対応することが可能になる。
【0015】
本出願に係る他の発明は、
通信アドレスを書込み可能な記憶手段を備え火災検知システムが構築される所定エリアに分散設置されかつ上記のような構成を有する感知器用保護カバーが被着されている複数の感知器に、前記中距離無線通信手段と通信可能な無線通信手段を備えた携帯通信端末を用いて通信アドレスをそれぞれ設定するアドレス設定方法であって、
前記所定エリアに設置されている複数の感知器の配置を示す設備図面を参照して通信アドレスを設定する感知器を選択する第1ステップと、
選択した前記感知器に被着されている保護カバーへ送信する通信アドレスの情報を前記携帯通信端末に入力または当該携帯通信端末の表示画面より選択する第2ステップと、
前記入力または選択された通信アドレスの情報を前記携帯通信端末により送信する第3ステップと、含むようにしたものである。
【0016】
上記方法によれば、建造物の天井面等に設置され保護カバーが被着されている感知器に携帯通信端末を用いてアドレス情報を送信することにより各感知器に離れた位置からアドレスを設定することができるため、感知器を取り外す高所作業を行わずに、設置済みの感知器へのアドレスの設定および変更を行うことができ、作業者への負担を軽減するとともに安全性を高めることができる。また、設備図面を携帯通信端末の表示画面に表示させるようすることによって、作業者は紙ベースの設備図面を持ち歩く必要がなくなる。
【0017】
また、望ましくは、前記第3ステップの後に、
前記所定エリアに設置されている複数の感知器への通信アドレスの設定後に感知器に被着されている保護カバーを回収して1か所に集める第4ステップと、
1か所に集められた全ての感知器と前記携帯通信端末により通信を行い、被着済み保護カバーの一覧を示すリストと照合して未回収の保護カバーを判定する第5ステップと、
を含むようにする。
かかる方法によれば、アドレスの設定後に感知器に被着されている保護カバーを回収して1か所に集め、携帯通信端末により通信を行いリストと照合することで未回収の保護カバーの有無等を判定することができるため、保護カバーの外し忘れや外し忘れた感知器の位置を容易かつ確実に発見することができる。
【0018】
さらに、望ましくは、前記第3ステップの後であって前記第4ステップの前に、
前記複数の感知器が接続されている通信回線に接続された受信機によって、前記通信回線を介して前記複数の感知器に設定されている前記通信アドレスを含む情報を取得して、正しい通信アドレスが設定されているか判定するステップと、を含むようにする。
かかる方法によれば、アドレス未設定の感知器を容易に発見することができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明に係る感知器用保護カバーによれば、設置済みの感知器へのアドレスの設定および変更を容易に行うことができる。また、アドレス設定後における外し忘れを容易かつ確実に発見することができる。さらに、本発明のアドレス設定方法によれば、感知器用保護カバーを利用して設置済みの感知器へアドレスを設定することができるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】(A)は本発明に係る感知器用保護カバーの概略構成を示す構成説明図、(B)はその底面図、(C)は保護カバーと無線通信ユニットとの結合構造を示す図である。
【
図2】本発明に係る感知器用保護カバーおよびアドレス設定される火災感知器の機能構成の一実施形態を示すブロック図である。
【
図3】アドレス設定器によりアドレスの設定を行う火災感知器等の感知器が設置されているフロアのレイアウトを示す設備図面(フロア図)の一例を示す図である。
【
図4】実施形態の保護カバーを用いた感知器へのアドレスの設定手順の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、図面を参照しながら、本発明に係る感知器用保護カバーおよびそれを用いたアドレス設定方法の実施形態について説明する。
図1には本発明に係る感知器用保護カバーの概略構成図が、また
図2には感知器および感知器用保護カバーの機能構成図が示されている。なお、
図1(A)は本発明に係る感知器用保護カバーの概略構成を示す構成説明図、
図1(B)はその底面図、
図1(C)は保護カバーと無線通信ユニットとの結合構造を示す図である。
【0022】
本実施形態の感知器用保護カバー20は、
図1(A)に示すように、建造物の天井C等に設置された火災感知器10の表面(図では下面)を覆うように被着されて使用されるもので、椀状をなすカバー本体21と、該カバー本体21の底面に装着されたアドレス設定のための情報伝達用の通信ユニット22と、通信ユニット22の表面(図では下面)側に設けられたLEDなどからなる表示灯23を備えている。カバー本体21は、磁力線や電磁波を通すことが可能な合成樹脂等の材料で形成されている。
【0023】
また、カバー本体21のすり鉢状部の内周面には、火災感知器10の筐体の凹部に係合可能な凸部21cが設けられ、カバー本体21の凸部21cを火災感知器12の凹部に係合させることで、火災感知器10の表面に被着される。なお、このような構造は、例えば特許文献3にも記載されており、容易に実現することができるので、詳しい説明は省略する。さらに、特許文献3に記載されているような操作ロッドを有する着脱器を用いて、保護カバー20を感知器10に着脱できるように構成しても良い。
【0024】
保護カバー20のカバー本体21と通信ユニット22は、火災感知器10の外形に対応して、
図1(B)に示すように、下面視で円形をなすように形成されている。また、
図1(C)に示すように、通信ユニット22は円板状のケース22Aを備え、ケース22Aは、上面に一対の鉤状の係止片22a,22bが形成され、カバー本体21には係止片22a,22bが係合可能な一対の係合凹部21a,21bが設けられており、通信ユニット22はカバー本体21に対して着脱可能に構成されている。
【0025】
なお、係止片22a,22bを係合凹部21a,21bに係合させた後、カバー本体21を若干回転させることによってケース22Aが抜け落ちない位置に移動するような構造にすると良い。このような構造は、感知器を感知器ベースに固定する構造と同じである。係止片22a,22bと係合凹部21a,21bとの関係は逆、すなわち係止片22a,22bがカバー本体21に設けられ、係合凹部21a,21bがケース22Aの上面に設けられていても良い。
【0026】
上記のように、通信ユニット22をカバー本体21に対して着脱可能に構成することで、アドレスの設定が必要な感知器とアドレスの設定が不要な感知器とでカバー本体21を共用することができる。また、火災感知器を出荷する際には、カバー本体21のみを感知器に被着した状態で出荷することができる。さらに、カバー本体21と通信ユニット22のいずれか一方が破損または故障したような場合に、一方の部品のみの交換で対応することが可能になる。そのため、コストダウンを図ることができる。
【0027】
図2には、感知器用保護カバー20の通信ユニット22およびアドレス設定される火災感知器10の機能構成の一実施形態が示されている。
図2に示すように、火災感知器10は、天井裏等に敷設され端部が火災受信機に接続される火災検知システムの回線を構成する配線L1,L2に接続され、L1を介して図示しない火災受信機から電源の供給を受けるとともに火災受信機との間で有線による通信を行う機能を有する電源入力&有線通信部11と、熱や煙等を検知する検知部12、作動状態等を報知するための表示灯13、検知部12からの信号に基づいて火災を判定するとともに火災受信機との間の通信を行う制御部(CPU)14、火災受信機との間の通信に使用するアドレスを記憶するEEPROMのような不揮発性メモリ15、近距離無線通信部16を備える。このうち、近距離無線通信部16は、本発明の保護カバーを介してアドレス設定を可能にするために新たに設けられた機能で、近距離無線通信部16以外は従来の火災感知器が備える機能である。
【0028】
感知器用保護カバー20の通信ユニット22は、保護カバー20を感知器に被着した状態で見える位置に配置された前記表示灯23と、火災感知器10の近距離無線通信部16との間で通信を行う近距離無線通信部24、作業者が帯同するスマートフォン等の携帯通信端末30との間の通信を行う中距離無線通信部25、通信部24および25を制御して情報の伝達処理を実行する情報処理装置(CPU)などからなる制御部26、表示灯23や中距離無線通信部25、制御部26等に対して電力を供給する電源部(電池)27を備える。表示灯23は、電源が投入され通信ユニット22が有効であることを示すために、電池が装填されると点灯または点滅されるように構成しても良い。
【0029】
なお、本明細書においては、10cm以下の距離での無線通信を近距離無線通信、数m~数10mの距離での無線通信を中距離無線通信、100m以上の距離での無線通信を遠距離無線通信と称する。携帯通信端末30が通信ネットワークとしての公衆無線通信システムと接続するため基地局との間で行う無線通信(LTE,WiFi等)は遠距離通信である。なお、電源部27の電池には、ボタン型電池のような薄型電池を使用するのが望ましく、かつ電池を交換可能にする構造を通信ユニット22のケース22Aに設けておくのが望ましい。
【0030】
通信ユニット22の近距離無線通信部24と火災感知器10の近距離無線通信部16との間の無線通信には、例えばICカードやICタグで使用されている誘導コイルを使用した非接触通信あるいは赤外線通信や可視光通信等を使用することができる。また、感知器用保護カバー20の中距離無線通信部25と携帯通信端末30との間の無線通信には、スマートフォンが一般に備えているBluetooth(登録商標)通信等を使用することができる。
感知器用保護カバー20と火災感知器10との間の近距離無線通信に赤外線通信を使用する場合、火災感知器10は一般に表示灯13を覆うガラスやレンズからなる窓部を有しているので、その窓部を利用して赤外線の送受信を行うように構成すると良い。
【0031】
携帯通信端末30を使用して対象の火災感知器10にアドレスを設定するには、既に天井に設置してある火災感知器10に近づき、画面上で設定したいアドレスを選択して、携帯通信端末30から火災感知器10に被着されている保護カバー20の通信ユニット22へ選択したアドレス情報を送信する。すると、中距離無線通信部25を介してアドレス情報を受信した制御部26が、近距離無線通信部24を駆動してアドレス情報を送信し、火災感知器10の近距離無線通信部16がそれを受信して、制御部14が受信したアドレス情報をメモリ15へ書き込むことによって、アドレスの設定が行われる。これにより、作業員は感知器から離れた位置からアドレスの設定を行うことができる。
【0032】
ここで、設置してある火災感知器10に設定するアドレスの選択は、作業員が、火災感知器10A,10B,10C……が設置されているフロアのレイアウトを示す
図3のような設備図面(フロア図)を参照して、設定対象の感知器が存在する場所の感知器を表わす記号に付記されているアドレスを、携帯通信端末30のテンキー等の入力手段を使用して入力してから送信ボタンを押すまたは送信ボタンの画像にタッチすることで行うことができるように構成されている。
【0033】
また、
図3のような設備図面のデータを作業員の携帯通信端末30へ送信して、携帯通信端末30のタッチパネル式の画面上に表示させ、作業員が画面に表示された設備図面上の対応する感知器の記号にタッチすると、その記号に対応する設置済みの感知器へ設定すべきアドレスを自動的に送信するような機能を有するアプリを作成して携帯通信端末30にインストールしておくことで、アドレスの設定を行えるようにしても良い。
なお、
図3において、感知器を示す各ブロック10A,10B,10C……内に記されている「D」は感知器の種別(火災感知器)を表す符号、「24h」,「25h」,「26h」……は各火災感知器に付与された通信アドレス、♯01,♯02,♯03……は感知器の通し番号である。
【0034】
ところで、
図3に示すように、1つのフロアに保護カバー10を被着した複数の感知器が設置されている場合、フロアへ移動した作業員の保有する携帯通信端末30が複数の感知器に被着されている複数の通信ユニット22と同時に通信が可能な状態になることが考えられる。なお、通信の際に、通信ユニット22からは機器ID(識別コード)等の固有情報が送信されて来るので、携帯通信端末30は各通信ユニット22を区別して認識することができる。
その場合、携帯通信端末30が通信を開始して応答があった全ての感知器10(もしくは通信ユニット22)を画面上に表示させ、作業員がいずれか一つの感知器の記号にタッチして選択すると、その感知器の通信ユニット22に選択されたことを示す情報が送信され、それを受信した通信ユニット22が、自分が選択されたことを判断して自ユニットに設けられている表示灯23を点滅させるように構成されている。
【0035】
また、作業員が表示灯23の点滅を見て対応する感知器10の位置を把握し、設備図面上の対応する感知器の記号に付記されているアドレスを携帯通信端末30に入力して送信あるいは携帯通信端末30の画面に表示されている設備図面上の対応する感知器の記号にタッチするとアドレスが自動送信されるように構成されている。これにより、設置済みの感知器の通信ユニット22に対してそれぞれ正しいアドレスを送信して感知器のメモリに書き込んで設定させることができる。
さらに、携帯通信端末30は、感知器へのアドレス設定後に通信ユニット22を介して感知器10よりメモリ15に記憶されている設定アドレスや感知器の種別、履歴等の情報を読み出して画面上に表示することができる。従って、感知器の設定アドレスが更新されれば、更新されたアドレスが携帯通信端末30に表示される。携帯通信端末30による感知器の設定アドレスの確認のための通信は定期的に行うようにしても良い。
【0036】
次に、本実施形態の保護カバー20を用いた火災感知器へのアドレスの設定手順を、
図4のフローチャートを用いて説明する。なお、
図4のフローチャートに従ったアドレスの設定は、対象施設の火災検知システムを構成する全ての感知器の設置が終了した後に実施される。
アドレスの設定に際しては、先ず携帯通信端末30を帯同した作業者が、火災感知器10が設置されているフロアまたはエリアへ移動する(ステップS1)。続いて、火災感知器10が視認できる位置にて、携帯通信端末30を用いて感知器に被着されている保護カバー20の通信ユニット22との通信を開始する(ステップS2)。すると、応答があった全ての通信ユニット22または対応する感知器20が携帯通信端末30の画面上に表示される(ステップS3)。
【0037】
次に、作業者は、携帯通信端末30の画面上に複数の通信ユニットまたは感知器が表示されているか否か判断する(ステップS4)。そして、複数表示されている(Yes)と判断すると、ステップS5へ進み、画面上の設備図面またはリストを見て複数の通信ユニット22または感知器20のうちいずれか1つを選択し(ステップS5)、当該機器のIDを含む情報を送信する(ステップS6)。この情報を受信した通信ユニット22は自身に付随する表示灯23を点滅させる(ステップS7)。ステップS4で、複数表示されていない(No)すなわち一つの通信ユニットまたは感知器のみが表示されているときは、ステップS5,S6をスキップする。
【0038】
続いて、作業者は、表示灯23が点滅しているまたは画面に1つだけ表示されている感知器10を視覚で確認し、設備図面を参照して携帯通信端末30で設定するアドレスを入力または選択して通信ユニット22へアドレス情報を送信する(ステップS8)。すると、アドレス情報を受信した通信ユニット22は、受信したアドレス情報を対向している感知器10へ送信し(ステップS9)、感知器10は制御部14が近距離無線通信部16を介してアドレス情報を受信し、受信したアドレス情報をメモリ15へ書き込む(ステップS10)。
【0039】
その後、作業者は、フロアまたはエリア内の全ての感知器へのアドレスの設定が完了したか否か判断し(ステップS11)、完了していないときはステップS1へ戻って次のフロアまたはエリアへ移動して上記処理S2~S10繰り返し、全ての感知器へのアドレスの設定が完了した(ステップS11:Yes)と判断すると、ステップS12へ移行して火災受信機により回線に接続されている全て感知器との通信試験を行なって全感知器へのアドレス設定を確認して作業を終了する。
なお、火災受信機による感知器の通信試験は、ポーリング方式で各感知器からアドレスや種別情報を含む設定情報を取得することで行うことができる。また、携帯通信端末30を使用して、設置されている感知器一つ一つと通信を行なって、設定アドレスを確認するようにしても良い。
【0040】
以上説明したように、本実施形態の保護カバーおよびアドレスの設定方法によれば、感知器へのアドレスの設定を感知器設置後に行うため、火災検知システムを構成する感知器を設置する施工時には、アドレスの設定を全く意識せずに設置作業を行なえる。また、作業員は感知器から離れた位置からアドレスの設定を行うことができるため、作業効率が大幅に向上するという利点がある。さらに、施工対象の火災検知システムを構成する全ての火災感知器10の設置およびアドレスの設定が終了すると、全ての火災感知器10から保護カバー20および通信ユニット22を外して回収する。そのため、保護カバー20および通信ユニット22の再利用が可能である。
【0041】
さらに、本実施形態の保護カバーによれば、回収した通信ユニット22を一か所に集めて携帯通信端末30により通信を行うことで、外し忘れの通信ユニット22を容易に発見するとともに、設備図面(紙)と照らし合わせるあるいは携帯通信端末30画面上の設備図面をチェックすることで、外し忘れた通信ユニット22が装着されている感知器の場所を容易に見つけることができる。さらに、アドレスの設定後に火災受信機が各火災感知器と通信をすることによってアドレスの重複の場合や設備図面上と設定したアドレスとが異なる場合といったアドレスの設定ミスが見つかった場合にも、ミスのあった火災感知器のアドレスを、携帯通信端末30を使用して保護カバーを介して容易に変更することができる。
【0042】
また、火災感知器10のメモリ15に種別を示すデータが記憶されている場合、火災感知器10から保護カバー20および通信ユニット22を外す前に、通信ユニット22を介して火災感知器10のメモリ15に種別を示すデータを読み出して携帯通信端末30の画面上に表示させることで、設置済みの感知器の種別を確認することができ、種別を間違えた感知器を正しいものに取り換えてアドレスを設定することによって、誤った感知器が設置された火災検知システムが構築されてしまうのを回避することができる。
【0043】
なお、上記実施形態では、携帯通信端末30を用いて設置されている感知器10に対してアドレスを設定するようにしているが、特許文献3に記載されているような操作ロッドを有する着脱器の操作ロッドの先端部に保護カバー20の中距離無線通信装置25と通信可能な中距離無線通信器を設けかつ操作ロッド内にケーブルを這わせて下端でアドレス設定器を接続し、アドレス設定器によってアドレスを設定できるように構成しても良い。
これにより、離れた位置からアドレス設定器と感知器とを1:1で対応させてアドレスの設定を行うことにより、選択ミスを伴うことなくアドレスの設定を行うことができる。また、このような構成の場合、通信ユニット22は制御部26が不要であり、中距離無線通信部25から近距離無線通信部24へ伝送情報を直接伝達あるいは信号変換手段を設けて伝達するように構成しても良い。また、表示灯23も省略できる。
【0044】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、種々の変形や変更が可能である。例えば、上記実施形態においては、カバー本体21の底面に通信ユニット22を着脱可能に取り付けているが、カバー本体21と通信ユニット22は一体に構成しても良い。また、通信ユニット22を動作状態にするためのオン/オフ・スイッチをユニットのカバー本体21に設けても良い。
さらに、上記実施形態においては、感知器10の制御部14が本体カバー20より受信したアドレスをメモリ15に書き込んでいるが、近距離無線通信部16が直接メモリ15へ受信したアドレスを書き込むように構成することも可能である。なお、この場合、通信ユニット22の制御部26がアドレス情報とともにメモリの書き込み番地を送信することとなる。
【0045】
また、上記実施形態においては、保護カバー20の電源として電池を使用すると説明したが、非接触ICカードのシステムと同様な仕組みで、感知器回線としての配線L1を介して受けた電力の一部を近距離無線通信手段(コイル)16を介して保護カバー20側へ送る回路を感知器10に設け、保護カバー20の電源部27は近距離無線通信部24により受けた交流電力を直流電圧に変換し電源電圧として制御部26等へ供給するように構成されたものであっても良い。なお、感知器の上記機能の回路は、施工中のみ動作し、受信機からの制御等により火災検知を行う通常動作時にはオフにされるようにする。あるいは、感知器に保護カバーが被着されたことに応じて回路がオンになるように構成しても良い。
【0046】
さらに、上記実施形態では、感知器の例として火災感知器を挙げているが、アドレスを設定する感知器は、火災感知器に限定されず、ガス感知器、人感センサのような検知器であっても良いし、火災感知器は煙感知器、熱感知器等、検知方式の異なるものを異なる種別の感知器として扱っても良い。
また、本発明は、火災検知システムに限定されず、監視システムその他、高所に設置されアドレスによる通信を行う感知器を備えたシステムに広く適用することができる。
【符号の説明】
【0047】
10 感知器(火災感知器)
11 電源入力&有線通信部
12 検知部
13 表示灯
14 制御部
15 不揮発性メモリ(記憶手段)
16 近距離無線通信部(近距離無線通信手段)
20 保護カバー
21 カバー本体
22 通信ユニット
23 表示灯
24 近距離無線通信部(近距離無線通信手段)
25 中距離無線通信部(中距離無線通信手段)
26 制御部(情報処理手段)
27 電源部
30 携帯通信端末