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▶ 蔭山 次郎の特許一覧

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  • 特開-温水洗浄便座用トイレットペーパー 図1
  • 特開-温水洗浄便座用トイレットペーパー 図2
  • 特開-温水洗浄便座用トイレットペーパー 図3
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022170802
(43)【公開日】2022-11-11
(54)【発明の名称】温水洗浄便座用トイレットペーパー
(51)【国際特許分類】
   A47K 10/16 20060101AFI20221104BHJP
【FI】
A47K10/16 B
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021077011
(22)【出願日】2021-04-30
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2022-01-18
(71)【出願人】
【識別番号】714007540
【氏名又は名称】蔭山 次郎
(72)【発明者】
【氏名】蔭山 次郎
【テーマコード(参考)】
2D135
【Fターム(参考)】
2D135AA03
2D135AA16
2D135AB02
2D135AB13
2D135AC03
2D135AC06
2D135AC07
2D135AC11
2D135AD27
2D135BA02
2D135BA03
2D135DA06
2D135DA19
(57)【要約】      (修正有)
【課題】温水洗浄便座使用後に肛門部や外陰部の洗浄水を拭き取る際に、トイレットペーパーの繊維組織が容易に崩壊して残滓が皮膚や下着の内側に付着する。
【解決手段】パルプ紙または再生紙の繊維配向や密度、架橋剤の添加度合、積層構造など繊維組織構造を吟味して全体の厚みが3mmを超えない厚手に生成することによって、肌に優しい柔らかさと吸水性を維持しながらも肛門部や外陰部の洗浄水を拭き取る際に表面素材の繊維組織が崩壊せず、且つ用後は日本産業規格の定める水解品質基準の100秒を考慮して90秒以内に便器内・排水管内水流にて水解するようにする。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
パルプ紙または再生紙を原料とした衛生紙であって、水分を吸収しても容易に繊維組織が崩壊しない表面素材と、パルプ紙または再生紙を原料として容易に水解する本体素材を、表面素材が上になるように上下に貼り合わせ、一回分の使用量ごとに表面素材側からミシン目をプレスして、その面が表側、すなわち外側になるように巻き取ったロール状のトイレットペーパー。
【請求項2】
前記表面素材は、厚みが0.4~0.8mmの範囲で任意の厚みを選択し、本体素材は0.6~2.2mmの範囲で任意の厚みを選択して上下に貼り合わせた二層構造と、その二層構造をさらに上下二段にした四層構造の二種類を選択肢として備え、且ついずれの場合も全体の厚みが3mmを超えない請求項1記載のトイレットペーパー。
【請求項3】
前記二層構造または四層構造は、繊維の配向や密度、架橋剤の添加度合いなど繊維組織の構造を考慮することによって、使用後に便器内および排水管内水流にて90秒以内に水解することが可能な請求項1記載のトイレットペーパー。
【請求項4】
商品のバリエーションを増やす目的で、前記表面素材の表側、すなわち肌に接する面に小さな凹凸または縮緬状の皺を設けて肌触りを変えた請求項1記載のトイレットペーパー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
トイレットペーパー製造に関する技術
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、肌触りの感触を改善するために厚手の素材を採用し、且つ古紙パルプを原料とすることによって環境に配慮したトイレットペーパーであるが、温水洗浄便座使用後に肛門部や外陰部の洗浄水を拭き取る際には繊維組織が容易に崩壊して残滓が皮膚や下着の内側に付着する虞がある。
【0003】
特許文献2は、肌触りの触感を改善する目的で採用する厚手の素材が便器への投棄後に水解性が悪化する問題を改善するために、表裏両面に非貫通孔を多数設けたトイレットペーパーであるが、温水洗浄便座使用後に肛門部や外陰部の洗浄水を拭き取る際には繊維組織が容易に崩壊して残滓が皮膚や下着の内側に付着する虞がある。
【0004】
特許文献3は、便器掃除専用の水解性シートで、使用後は便器内に投入廃棄が可能であり、JIS P4501に基づいた水解時間の試験結果では45~60秒で繊維組織が崩壊して一般的なトイレットペーパーとほぼ同じ水解性(約45秒)を有する。しかしながら本製品は便器の清掃を目的とした水解性シートであって、トイレットペーパーとしての用途には適していない。
【0005】
本発明では、パルプ紙または再生紙の繊維配向や密度、架橋剤の添加度合、積層構造など繊維組織構造を吟味して全体の厚みが3mmを超えない厚手に生成することによって、良好な吸水性を維持しながら肛門部や外陰部の洗浄水を拭き取る際には表面素材の繊維組織が崩壊せず、洗浄水を吸収して軟化した表面素材が柔らかな肌触りで拭き取りを快適にして、且つ用後は日本産業規格の定める品質基準の100秒を考慮して90秒以内に便器内・排水管内水流にて水解するようにした。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2009-219562 衛生紙及びその製造方法
【特許文献2】特開2012-229742 トイレットペーパー
【特許文献3】特開2021-055215 水解性シート
【非特許文献1】該当なし
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
温水洗浄便座使用後に肛門部や外陰部の洗浄水を拭き取る際に、トイレットペーパーの繊維組織が容易に崩壊して残滓が皮膚や下着の内側に付着する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
パルプ紙または再生紙の繊維配向や密度、架橋剤の添加度合、積層構造など繊維組織構造を吟味して全体の厚みが3mmを超えない厚手に生成することによって、肌に優しい柔らかさと吸水性を維持しながらも肛門部や外陰部の洗浄水を拭き取る際に表面素材の繊維組織が崩壊せず、且つ用後は日本産業規格の定める水解品質基準の100秒を考慮して90秒以内に便器内・排水管内水流にて水解するようにする。
【発明の効果】
【0009】
繊維配向や密度、架橋剤の添加度合、積層構造など繊維組織の構造を吟味して全体の厚みが3mmを超えない厚手に生成することにより、肌に優しい柔らかさと吸水性に優れる性質を維持すると共に、拭き取りの際に吸引した洗浄水による繊維組織崩壊を抑え、且つその水分によってウェットテイッシュのように機能して肛門部や外陰部を優しく清潔に拭き取れるために快適な使用感が期待できる。本発明では、従来品のように折り畳む手間が不要で、ミシン目の間隔を8~11cmの必要最低限にして、一回分の用量を節約して手早く切り取れる利点がある。さらに便器内・排水管内水流によって90秒以内に水解するので便器や排水パイプの詰まりの虞がない。
【0010】
本発明の製品は、表面素材が水解しにくい性質を利用して、トイレットペーパーとしての用途に限らず、便器の清掃や簡単な拭き掃除に雑巾代わりとして使用することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】全体図
図2】顕微鏡写真と水解性試験
図3】断面図、用量、第二の実施形態
【発明を実施するための形態】
【0012】
図1-1に全体図を示す。Dはロールの直径で最大値は約120mm、Wはロールの幅で最大値は約120mm、Lは80~110mmの一回分の用量で、手のひらを覆う程度の大きさが望ましい。01はロール本体。02はミシン目である。
【0013】
図1-2は断面図である。Tは厚みで、全体の厚みが3mmを超えない範囲で薄手タイプや厚手タイプなどの商品を揃えるとよい。
【0014】
図2-1はA社製のトイレットペーパーの約100倍の顕微鏡写真で水解時間を短くするために繊維組織の密度が粗く構成されている。図2-2はB社の便器清掃用水解性シートの約100倍の顕微鏡写真で、便器清掃時に繊維組織が崩壊しないように図2-1よりは繊維組織の構成が密であるが、45秒以内に水解させるために架橋剤などの添加度合いが吟味されている。
【0015】
図2-3にJIS P4501に基づく水解時間の測定状況を示す。試験方法と品質基準は「毎分600 回転で攪拌している水中に114mm 角の試験片を投入し、試験片の抵抗により回転数が一時的に約500回転に下降する。試験片がほぐれるとともに回転数が上昇し、試験片の投入から540回転までに回復する時間を計測する。ほぐれやすさの品質基準は100秒以内である」と日本産業規格によって定められている。
(出典:日本文化用品安全試験所)
【0016】
図3-1は断面の詳細図である。図のように断面は二層構造になっていて、厚さ0.4~0.8mmの表面素材は図2-2の製品のように繊維組織の崩壊に強い構造で、0.6~2.2mmの本体素材は図2-1の製品のように水解性に優れた繊維組織構造である。これにより、拭き取りの際に洗浄水を吸引しても表面組織は容易に崩壊せず、その水分によって軟化した表面素材が肛門部や外陰部を肌に優しい使用感で清潔に拭き取ることができる。
【0017】
図3-1は二層構造を示しているが、これを上下二段にして四層構造としても構わない。二層構造を薄手タイプ、四層構造を厚手タイプとして消費者の嗜好によって選択できるようにするとよいが、この二種類に限るものではない。
【0018】
表面素材の水解時間は長く、本体素材の水解時間は短いが、二層構造は当然ながら、四層構造であっても日本産業規格の定める水解品質基準の100秒を考慮して、全体が便器内・排水管内水流によって90秒以内に水解するように繊維配向や密度、架橋剤の添加度合など試行錯誤を繰り返して繊維組織の構造を決定するとよい。
【0019】
図3-2に一回分の用量を手に取った様子を示す。商品のバリエーションは薄手でソフトタイプの標準型と幅広のワイド型、厚手でハードタイプの標準型と幅広のワイド型など数種類が考えられるが、この限りではない。
【0020】
図3-3は第二の実施形態で、表面素材の表面に小さな凹凸や縮緬状の皺を設け、皮膚との接触面積を減らして肌触りの感触を変えて商品のバリエーションを広げることができる。
【実施例0021】
「発明を実施するための形態」で述べたように、温水洗浄原座専用のトイレットペーパーとして実施される。
【産業上の利用可能性】
【0022】
本発明の製品は、従来のトイレットペーパーのように温水洗浄便座使用後の肛門部や外陰部の洗浄水の拭き取りの際に繊維組織が崩壊して残滓が肌や下着の内側に付着することがなく、吸引した洗浄水の水分にて表面素材がウエットテイシュのように軟化して肌に優しい快適な使用感で肛門部や外陰部を清潔に拭き取ることができる新しいタイプのトイレットペーパーとして消費者と産業の発展に貢献できる。
【符号の説明】
【0023】
図面の下段に符号説明あり
図1
図2
図3
【手続補正書】
【提出日】2021-09-18
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
パルプ紙または再生紙を原料とした衛生紙であって、水分を吸収しても容易に繊維組織が崩壊しない表面素材と、パルプ紙または再生紙を原料として容易に水解する本体素材を、表面素材が上になるように上下に貼り合わせ、表面素材は厚みが0.4~0.8mmの範囲で任意の厚みを選択し、本体素材は0.6~2.2mmの範囲で任意の厚みを選択した二層構造と、その二層構造をさらに上下二段にした四層構造の二種類を選択肢として備え、且ついずれの場合も全体の厚みが3mmを超えず、幅を115±5mmとして表面素材が外側になるように巻き取ったロール状のトイレットペーパー。

【手続補正書】
【提出日】2021-10-26
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
パルプ紙または再生紙を原料とした衛生紙であって、水分を吸収しても容易に繊維組織が崩壊しない表面素材と、パルプ紙または再生紙を原料として容易に水解する本体素材を、表面素材が上になるように上下に貼り合わせ、表面素材は厚みが0.4~0.8mmの範囲で任意の厚みを選択し、本体素材は0.6~2.2mmの範囲で任意の厚みを選択した二層構造と、その二層構造をさらに上下二段にした四層構造の二種類を選択肢として備え、且ついずれの場合も全体の厚みが3mmを超えず、表面素材が外側になるように巻き取ったロール状のトイレットペーパー。