(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022170807
(43)【公開日】2022-11-11
(54)【発明の名称】紫外光照射装置、紫外光照射装置の使用方法、及び紫外光の照射方法
(51)【国際特許分類】
A61L 2/10 20060101AFI20221104BHJP
A61L 9/20 20060101ALI20221104BHJP
【FI】
A61L2/10
A61L9/20
【審査請求】有
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021077022
(22)【出願日】2021-04-30
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2022-02-03
(71)【出願人】
【識別番号】000102212
【氏名又は名称】ウシオ電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000729
【氏名又は名称】特許業務法人 ユニアス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】藤名 恭典
【テーマコード(参考)】
4C058
4C180
【Fターム(参考)】
4C058AA02
4C058AA23
4C058AA28
4C058BB07
4C058DD16
4C058KK02
4C058KK12
4C058KK23
4C058KK32
4C058KK50
4C180AA07
4C180DD03
4C180HH17
4C180KK04
4C180LL04
(57)【要約】
【課題】人体に対する安全性を確保しつつ、病原体を効果的に不活化できる紫外光の照射装置、前記照射装置の使用方法、及び前記紫外光の照射方法を提供する。
【解決手段】本発明の紫外光照射装置は、190nm~240nmの紫外光を放射する光源と、前記光源を収容する筐体と、前記光源より放射された前記紫外光を前記筐体の外へ取り出す取出し部と、前記取出し部を通過する前記紫外光の配光角を拡大させる発散光学系と、を含む。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
190nm~240nmの紫外光を放射する光源と、
前記光源を収容する筐体と、
前記光源より放射された前記紫外光を前記筐体の外へ取り出す取出し部と、
前記取出し部を通過する前記紫外光の配光角を拡大させる発散光学系と、を備えることを特徴とする紫外光照射装置。
【請求項2】
前記発散光学系の入射側に、190nm~240nmの波長帯域の紫外光を透過し、240nm~280nmの波長帯域の紫外光を実質的に透過しない光学フィルタを備えることを特徴とする、請求項1に記載の紫外光照射装置。
【請求項3】
前記光学フィルタと前記発散光学系との離間距離は、0mm以上3mm以下であることを特徴とする、請求項2に記載の紫外光照射装置。
【請求項4】
前記発散光学系は、レンズアレイを含むことを特徴とする、請求項1~3のいずれか一項に記載の紫外光照射装置。
【請求項5】
前記光源は少なくとも一つのエキシマランプからなり、
前記レンズアレイを構成する小レンズの数は、前記エキシマランプの数と同じであり、
前記小レンズの長手方向が前記エキシマランプの長手方向に沿うことを特徴とする、請求項4に記載の紫外光照射装置。
【請求項6】
請求項1~3のいずれか一項に記載の紫外光照射装置を、出射される紫外光の少なくとも一部が空間に向けて照射されるように配置し、前記紫外光照射装置に前記紫外光を放射させる、紫外光照射装置の使用方法。
【請求項7】
190nm~240nmの紫外光を放射する光源と、
前記光源を収容する筐体と、
前記光源より放射された前記紫外光を前記筐体の外へ取り出す取出し部と、を備え、
前記筐体は、前記取出し部を通過する前記紫外光の配光角を拡大させる発散光学系を取り付けるための取付部を有することを特徴とする、紫外光照射装置。
【請求項8】
光源から190nm~240nmの紫外光を放射し、
発散光学系を使用して前記紫外光の配光角を拡大することを特徴とする、紫外光の照射方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、紫外光照射装置、紫外光照射装置の使用方法、及び紫外光の照射方法に関する。
【背景技術】
【0002】
細菌、真菌及びウイルス等の病原体は、波長260nm付近に最も高い吸収特性を示すことが知られている。そのため、低圧水銀ランプを使用して、波長254nm付近に高い発光スペクトルを示す紫外光を、病原体の存在する物体表面や空間に照射し、病原体を不活化させる技術が、従来から知られている。
【0003】
例えば、特許文献1には、紫外光を出射する殺菌ランプを調理場等に取り付けて、調理場の殺菌を行うことが記載されている。また、特許文献2には、室内に浮遊する細菌やウイルスに紫外光を照射して殺菌することが記載されている。
【0004】
加えて、特許文献1や特許文献2に記載の紫外光照射装置は、人体に有害な紫外光を使用している。そのため、紫外光が人体に向かわないように、出射する紫外光に指向性を持たせるなどの対策をとっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】実開昭63-187221号公報
【特許文献2】特開2017-018442号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、細菌、真菌及びウイルス等の病原体は、空間のあらゆる部分に存在する。病原体は、人の口や鼻から、呼気、唾、咳またはくしゃみとして飛散する飛沫又はエアロゾルに含まれていることが多い。病原体を含む飛沫は、人体表面(例えば、皮膚や髪の毛)、又は人が接触する物体表面(例えば、家具や事務機器)に付着する。病原体を含むエアロゾルは、空間を浮遊し拡散する。
【0007】
人体に有害な紫外光を照射することの危険性から、従来の紫外光照射装置は、人のいない方向に向けてのみ紫外光を照射していた。よって、従来の紫外光照射装置は、病原体の不活化に限界があった。
【0008】
本発明は、安全性を確保しつつ、病原体を効果的に不活化できる紫外光照射装置、当該紫外光照射装置の使用方法、及び紫外光の照射方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の紫外光照射装置は、190nm~240nmの紫外光を放射する光源と、
前記光源を収容する筐体と、
前記光源より放射された前記紫外光を前記筐体の外へ取り出す取出し部と、
前記取出し部を通過する前記紫外光の配光角を拡大させる発散光学系と、を備える。
【0010】
発散光学系で紫外光の配光角を拡大することにより、広い範囲に亘って紫外光を照射できるようになる。よって、浮遊する病原体が存在し得る空間の隅々にまで紫外光を照射できるようになる。また、微生物を不活化させたい領域を、少数の紫外光照射装置でカバーできるようになるという観点から、コスト効果に優れる。
【0011】
紫外光は全ての波長帯域において人体に対する有害性を示すわけではない。240nm以上の紫外光はヒト細胞や動物細胞に対する有害性が報告されているが、それよりも波長帯が短い紫外光は、ヒト細胞や動物細胞に対する貫通力が小さくなるため、人や動物に対する有害性が極めて低くなる。
【0012】
本発明者は、有害性の極めて低い、波長が190nm以上240nm未満の紫外光を使用して、人や動物のいる方向にも紫外光を照射できるようにした。これにより、安全性を確保しつつ、病原体を不活化できる。本明細書において、「不活化」とは、菌やウイルスを死滅させる、又は、感染力や毒性を失わせることを包括する概念を指す。
【0013】
本発明の対象製品は、人や動物の皮膚や目に紅斑や角膜炎を起こすことはなく、紫外光本来の殺菌、ウイルスの不活化能力を提供することができる。特に、本発明の対象製品は、従来の紫外光源とは異なり、有人環境で使用できるという特徴を有する。この特徴を活用し、屋内又は屋外の有人環境に本発明の対象製品を設置することで、環境全体を照射することができ、空気中又は環境内に設置された部材表面に存在する、ウイルス又は菌を抑制できる。
【0014】
このことは、国連が主導する持続可能な開発目標(SDGs)の目標3「あらゆる年齢の全ての人々が健康的な生活を確保し、福祉を促進する」に対応し、また、ターゲット3.3「2030年までに、エイズ、結核、マラリア及び顧みられない熱帯病といった伝染病を根絶すると共に、肝炎、水系感染症及びその他の感染症に対処する」に大きく貢献するものである。
【0015】
波長190nm以上240nm未満の紫外光を使用して、物体表面や空間中に存在する病原体の不活化を行う場合、対象となる物体表面や空間において、照射される紫外光の照度(光強度)や照射量(積算光量)が、不活化の効果を決める要因となる。
【0016】
ACGIH(American Conference of Governmental Industrial Hygienists:米国産業衛生専門家会議)やJIS Z 8812(有害紫外放射の測定方法)によれば、人体への1日(8時間)あたりの紫外光照射量は、波長ごとに許容限界値(TLV:Threshold Limit Value)が定められている。上述したように、波長が190nm以上240nm未満の紫外光の有害性は極めて低いものではあるが、安全な運用を行うためには、所定時間当たりに照射される紫外光の照度と照射量を制限し、上記許容限界値を超えないようにすることが、望ましい。
【0017】
本発明者の鋭意研究によれば、紫外光照射装置から出射される紫外光の照度は一様ではなく、偏った配向分布を示す(ムラがある)ことがわかった。そのため、TLVを考慮して紫外光照射装置の運用を設定する際、局所的に強い光を受ける領域に合わせて、紫外光の照射量(積算光量)の上限を設定しなければならない。そうすると、局所的に弱い光を受ける領域における紫外光の照射量は、必要以上に制限されてしまう。
【0018】
本発明は、発散光学系を使用することにより局所的に強い光線を発散させて、光強度の配向分布を均一化できる。その結果、TLVを考慮して紫外光照射装置の運用を設定する際、紫外光照射量の上限の制約を受けにくくなる。よって、発散光学系を使用することにより、より高いレベルでの安全性を確保しつつ、紫外光照射量の上限の制約を受けにくくできる。
【0019】
さらに高いレベルでの安全性を確保するために、発散光学系によって紫外光の局所的な最大照度(最も強度の高い光が照射される局所領域での照度)を抑制しても構わない。例えば、発散光学系の光放射面における紫外光の局所的な最大照度を3mW/cm2以下、さらには、1mW/cm2以下に抑制するようにしてもよい。
【0020】
発散光学系は光の減衰が小さく、出射効率を高められるという特徴がある。加えて、所望の配光角を狙った発散光学系の光学設計が可能である。
【0021】
前記発散光学系の入射側に、190nm~240nmの波長帯域の紫外光を透過し、240nm~280nmの波長帯域の紫外光を実質的に透過しない光学フィルタを備えても構わない。これにより、人体に影響を及ぼすおそれのある波長帯域の紫外光が筐体の外に漏洩することを確実に抑えて、光照射装置の人体に対する安全性をさらに向上させる。さらに、光学フィルタを使用して配光角が小さくなった場合においても、光学フィルタの出射側に発散光学系を配置すると、大きな配光角を得ることができる。
【0022】
前記光学フィルタと前記発散光学系との離間距離は、0mm以上3mm以下であっても構わない。光学フィルタの出射光を効果的に発散光学系に入射させることができ、出射効率を高めることができる。
【0023】
前記発散光学系は、レンズアレイを含んでも構わない。
【0024】
前記光源は少なくとも一つのエキシマランプからなり、
前記レンズアレイを構成する小レンズの数は、前記エキシマランプの数と同じであり、
前記小レンズの長手方向が前記エキシマランプの長手方向に沿っても構わない。これにより、レンズアレイは、エキシマランプからの出射光を効果的に発散させる。
【0025】
本発明の紫外光照射装置の使用方法は、上述の紫外光照射装置を、出射される紫外光の少なくとも一部が空間に向けて照射されるように配置し、上述の紫外光照射装置に前記紫外光を放射させる。
【0026】
本発明の紫外光照射装置は、190nm~240nmの紫外光を放射する光源と、
前記光源を収容する筐体と、
前記光源より放射された前記紫外光を前記筐体の外へ取り出す取出し部と、を備え、
前記筐体は、前記取出し部を通過する前記紫外光の配光角を拡大させる発散光学系を取り付けるための取付部を有する。これにより、紫外光照射装置に、発散光学系を後付けできる。
【0027】
本発明の紫外光照射方法は、光源から190nm~240nmの紫外光を放射し、
発散光学系を使用して前記紫外光の配光角を拡大する。
【発明の効果】
【0028】
これにより、安全性を確保しつつ、病原体を効果的に不活化できる紫外光照射装置、当該紫外光照射装置の使用方法、及び紫外光の照射方法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【
図1】紫外光照射装置の外観を模式的に示す斜視図である。
【
図2】紫外光照射装置の外観を模式的に示す斜視図である。
【
図3】紫外光照射装置から光源と電極ブロックのみを取り出して示す斜視図である。
【
図5】発散光学系よる出射光の配光角の拡大作用について説明する図である。
【
図6】発光ガスにKrClが含まれるエキシマランプの発光スペクトルの一例である。
【
図7】光学フィルタの透過スペクトルの一例を示すグラフである。
【
図8】光学フィルタに対する紫外光の入射角を説明するための模式的な図面である。
【
図9】紫外光照射装置の第一変形例を示す断面模式図である。
【
図10】紫外光照射装置の第二変形例を示す断面模式図である。
【
図11】紫外光照射装置の第二実施形態を示す断面模式図である。
【
図12】紫外光照射装置の配光角を計測するための計測設備の模式図である。
【
図13】実施例で使用した発散光学系を示す断面模式図である。
【
図14】紫外光照射装置の、相対照度の角度分布を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0030】
紫外光照射装置の一実施形態につき、図面を参照して説明する。なお、以下の各図面は模式的に図示されたものであり、図面上の寸法比は必ずしも実際の寸法比と一致しておらず、各図面間においても寸法比は必ずしも一致していない。
【0031】
以下において、各図面は、適宜、XYZ座標系を参照しながら説明される。XYZ座標系は、放射される紫外光の光軸上の光線が進行する方向を+X方向とし、X方向に直交する平面をYZ平面としている。なお、本明細書において、方向を表現する際に、正負の向きを区別する場合には、「+X方向」、「-X方向」のように、正負の符号を付して記載される。正負の向きを区別せずに方向を表現する場合には、単に「X方向」と記載される。すなわち、本明細書において、単に「X方向」と記載されている場合には、「+X方向」と「-X方向」の双方が含まれる。Y方向及びZ方向についても同様である。
【0032】
<第一実施形態>
[紫外光照射装置の概要]
図1、
図2及び
図3を参照しながら、本発明の紫外光照射装置の一実施形態を説明する。
図1及び
図2は、紫外光照射装置の外観を模式的に示す斜視図である。
図3は、紫外光照射装置から光源と電極ブロックのみを取り出して示す斜視図である。
【0033】
本実施形態の紫外光照射装置10は、紫外光を放射するエキシマランプ3(
図2又は
図3参照)と、エキシマランプ3を収容する筐体2と、エキシマランプ3より放射された紫外光を筐体2の外へ+X方向に取り出す取出し部4と、紫外光を拡散させる発散光学系5と、後述する光学フィルタと、を有する。
図1及び
図2において、矢印L1は、エキシマランプ3より出射する紫外光の光軸と、光軸上の光線の進行方向を示す。
【0034】
本実施形態において、筐体2は、中央に取出し部4として機能する開口を有する第一枠2aと、開口を有さない第二枠2bと、から構成される。第二枠2bと第一枠2aは互いに嵌め合わされて、筐体2に囲まれた内部空間を形成する。この内部空間には、エキシマランプ3と、エキシマランプ3に電力を供給する二つの電極ブロック(9a,9b)とが配置されている。筐体2を構成する枠は、3つ以上から構成されても構わない。
【0035】
二つの電極ブロック(9a,9b)は、第二枠2bの内側面に固定されている(
図2参照)。第二枠2bの外側面には、二つの接続端子(8a,8b)が設けられる(
図2参照)。二つの接続端子(8a,8b)は、それぞれ、第二枠2bを挟んで電極ブロック(9a,9b)と導通している。二つの接続端子(8a,8b)には、それぞれ、外部電源(不図示)より給電される給電線(7a,7b)が接続される。
【0036】
[光源]
図3を参照しながら、光源の一実施形態を説明する。本実施形態では、Z方向に離間して配置された3本のエキシマランプ3(3a,3b,3c)を備える。二つの電極ブロック(9a,9b)が、各エキシマランプ3(3a,3b,3c)の発光管の外表面に接触する。これによりエキシマランプ3は給電され、点灯する。
【0037】
本実施形態において、エキシマランプ3は、発光管の内部にKrClを含む発光ガスが封入されたKrClエキシマランプを使用している。そのため、エキシマランプ3は、190nm~240nmである紫外光を放射する。特に、KrClエキシマランプは、主たるピーク波長が222nm又はその近傍の紫外光を出射する。
【0038】
エキシマランプ3は、KrClエキシマランプに限らない。例えば、発光管の内部にKrBrを含む発光ガスが封入された、KrBrエキシマランプを使用しても構わない。KrBrエキシマランプは、主たるピーク波長が207nm又はその近傍の紫外光を出射する。
【0039】
本明細書において「主たる発光波長」とは、ある波長λに対して±10nmの波長域Z(λ)を発光スペクトル上で規定した場合において、発光スペクトル内における全積分強度に対して40%以上の積分強度を示す波長域Z(λi)における、波長λiを指す。例えばKrCl、KrBr、ArFを含む発光ガスが封入されているエキシマランプなどのように、半値幅が極めて狭く、且つ、特定の波長においてのみ光強度を示す光源においては、通常は、相対照度が最も高い波長(主たるピーク波長)をもって、主たる発光波長として構わない。
【0040】
エキシマランプ3の発光管の大きさは、管軸方向(Y方向)の長さが15mm以上、200mm以下であり、外径が2mm以上、16mm以下であるとよい。エキシマランプ3の数は、1本でも、2本でも、又は4本以上でも構わない。
【0041】
[発散光学系]
図4は、
図1の紫外光照射装置10のC1面(XZ平面に平行な面)における断面模式図である。本実施形態の紫外光照射装置10では、紫外光を筐体2の外へ取り出す取出し部4に、発散光学系5と光学フィルタ6とが配置されている。発散光学系5又は光学フィルタ6が取出し部4に配置された状態とは、発散光学系5又は光学フィルタ6が、取出し部4を構成する筐体2の開口に、発散光学系5又は光学フィルタ6が挿入されている状態、又は、筐体2の開口を覆う状態を含む。これにより、取出し部4を通過する紫外光は、取出し部4に配置された発散光学系5又は光学フィルタ6を通過する。発散光学系5又は光学フィルタ6は、第一枠2aの外側面に対して、X方向に微小な距離(例えば30mm以内)だけ離間した位置に配置されていても構わない。
【0042】
発散光学系5は、取出し部4を通過する紫外光の配光角を拡大する作用を有する。
図4に示された光線束F1に見られるように、発散光学系5を透過する光線束F1が発散し、出射光の配光角が拡大する。
【0043】
図5を参照しながら、出射光の配光角の拡大について説明する。
図5において、仮に発散光学系を有していない場合、紫外光照射装置10から紫外光の光線束F2が、光軸(矢印L1)を中心に配光角θ2で出射される。発散光学系5を有している場合、紫外光の光線束F1が配光角θ1で出射される。発散光学系5を有している場合の配光角θ1は、発散光学系を有していない場合の配光角θ2よりも大きくなる。配光角(θ1,θ2)は、光軸を中心に拡がる光線束(F1,F2)の、光軸から最も離れた最外側の対向する光線同士のなす角として定義される。なお、光線束(F1,F2)は、中心である光軸の回りに拡がっており、光線束の最大輝度を示す光軸L1上の光線の輝度に対して、1/2以上の輝度を有する光線の束として定義される。
【0044】
紫外光照射装置10は、発散光学系5で出射光の配向角を拡大させることにより、広い範囲に亘って紫外光を照射できる。さらに、発散光学系5により局所的に強い光線が発散し、光強度の配向分布が均一化する。
【0045】
図4に戻り、本実施形態の発散光学系5は、光学レンズからなる。発散光学系を使用した紫外光照射装置は、光の減衰が小さいため、全光束の90%以上を維持しやすい。光学レンズには、紫外光に対して透過率の高い石英ガラス又はサファイアガラスを使用すると好ましい。配光角が所望の範囲になるように光学レンズを設計することもできる。発散光学系5の他の例として、発散光学系5の全部又は一部にミラーを使用しても構わない。
【0046】
本実施形態において、発散光学系5を構成する光学レンズは、複数の小レンズ(5a,5b,5c)がZ方向に配列されたレンズアレイで構成される。各小レンズ(5a,5b,5c)は、いずれもシリンドリカル面(柱状に湾曲する面)を有する両凹レンズで構成されている。そして、各小レンズ(5a,5b,5c)の長手方向(円筒の延びる方向)は、エキシマランプ(3a,3b,3c)の長手方向に沿っている。レンズアレイを構成する小レンズ(5a,5b,5c)の数は、エキシマランプ(3a,3b,3c)の数と同じである。エキシマランプ3aと小レンズ5aは、X方向に並んで配置される。同様に、エキシマランプ(3b,3c)と小レンズ(5b,5c)は、それぞれ、X方向に並んで配置される。これにより、各小レンズ(5a,5b,5c)は、各エキシマランプ(3a,3b,3c)からの出射光を効果的に発散させる。
【0047】
レンズアレイは、Z方向とY方向それぞれに複数の小レンズが並ぶ構成のレンズでも構わない。また、発散機能を有するのであれば、例えば、平凹レンズ、凹メニスカスレンズなど、他のレンズ形状であっても構わない。レンズアレイを構成する小レンズは任意のピッチで配列される。小レンズの配列ピッチは、エキシマランプの配列ピッチに等しくなるように設定されるとより好ましい。
【0048】
[光学フィルタ]
本実施形態は、発散光学系5の入射側に光学フィルタ6が配置されている。光学フィルタ6は、特定の波長帯域の紫外光を透過し、特定の波長帯域の紫外光を実質的に透過しない、波長選択フィルタ(バンドパスフィルタ)として機能する。本実施形態の光学フィルタ6は、190nm以上240nm未満の波長帯域の紫外光を透過し、240nm以上280nm以下の波長帯域の紫外光を実質的に透過しない。
【0049】
図6に示すように、例えば、KrClエキシマランプの場合、放射される紫外光のスペクトルには、ほぼ主たるピーク波長である222nm又はその近傍に光出力が集中している一方で、人体に影響を及ぼすおそれのある、波長240nm以上かつ280nm以下の波長帯域の紫外光についても、わずかながら光出力が認められる。本実施形態では、取出し部4に光学フィルタ6を配置することで(
図4参照)、波長240nm以上280nm以下の紫外光を実質的に透過しないようにする。これにより、人体に影響を及ぼすおそれのある波長帯域の紫外光が筐体2の外に漏洩することを確実に抑えて、光照射装置の人体に対する安全性をさらに向上させる。
【0050】
なお、人や動物に対する安全性をより高める観点から、光源部から出射される紫外光は、波長範囲が190nm以上237nm以下の範囲内であることが好ましく、190nm以上235nm以下の範囲内であることがより好ましく、190nm以上230nm以下の範囲内であることが特に好ましい。
【0051】
また、波長が190nm未満の紫外光は、空気中の酸素に吸収されることでオゾンの生成に寄与する。このようなオゾンの発生をより効果的に抑制するため、190nm以上、より好ましくは200nm以上にピーク波長を有する紫外光を利用することが望ましい。例えば、光源部から出射される紫外光のピーク波長は、好ましくは200nm以上237nm以下の波長範囲内とし、より好ましくは200nm以上235nm以下の波長範囲内とし、さらに好ましくは200nm以上230nm以下の波長範囲内とする。
【0052】
本明細書において、「紫外光を実質的に透過しない」とは、主光線方向のある紫外光が、特定波長帯域におけるピーク波長の紫外光強度に対して、少なくとも5%以下の紫外光強度に抑制されることを意味する。本発明では、光学フィルタ6を用いることで240nm以上300nm以下の紫外光の強度が、ピーク波長の強度に対して5%以下に遮光される。なお、光学フィルタ6で遮光させたい波長帯域の光について、光学フィルタ6を透過した紫外光の強度が、ピーク波長の強度に対して2%以下、まで抑制されると好ましい。光学フィルタ6を透過した紫外光の強度が、ピーク波長の強度に対して1%以下、まで抑制されると、さらに好ましい。
【0053】
光学フィルタ6は、特定の波長帯域の紫外光を透過しないバンドパスフィルタとして機能する態様であればよく、配置場所や形態が限定されるものではない。
図4に示されるように光学フィルタ6が光源と離間して形成される他に、光学フィルタ6が光源に接するよう形成されていても(具体例として、エキシマランプ3のガラス封体に光学フィルタ6が積層されても)、構わない。
【0054】
光学フィルタ6は、屈折率の異なる誘電体膜を交互に積層した誘電体多層膜で構成される。誘電体多層膜として、例えば、HfO2層及びSiO2層が交互に積層されたもの、並びに、SiO2層及びAl2O3層が交互に積層されたものがある。HfO2層及びSiO2層が交互に積層された誘電体多層膜層は、SiO2層及びAl2O3層が交互に積層された誘電多層膜層よりも、同じ波長選択特性を得るための層数を少なくすることができるため、選択した紫外光の透過率を高めることができる。
【0055】
[光学フィルタへの入射角による透過率変化]
上記のとおり、光学フィルタ6は、屈折率の異なる複数の誘電体多層膜で構成されるが、誘電体多層膜で構成される光学フィルタ6は、紫外光の入射角に応じて、透過率が不可避的に変化してしまう。
【0056】
図7は、光学フィルタ6の透過スペクトルの一例を、紫外光が光学フィルタ6に対して入射するときの入射角別に示すグラフである。このグラフの例は、光学フィルタ6は、エキシマランプ3の発光ガスがKrClを含む場合、すなわち、エキシマランプ3が主たるピーク波長222nmの紫外光を発する場合を想定して設計されている。グラフ内の各曲線は、波長を異ならせながら、光学フィルタ6に対して入射した光の強度と、光学フィルタ6から出射された光の強度の比率をプロットして得られる。入射角は、
図8に示すように、光学フィルタ6の入射面に対する法線6Nと、光学フィルタ6の入射面に入射される紫外光L2との角度θ3で定義される。
【0057】
光学フィルタ6は、
図7のグラフから、入射角(角度θ3)の小さい光成分を透過しやすい一方で、入射角の大きい光成分を透過しにくいことがわかる。入射角の大きい光成分は光学フィルタ6に進入せず反射される。その結果、光学フィルタ6からの出射光は、光学フィルタ6への入射光に比べて、入射角の小さい光成分の比率が高まり、配光角が小さくなる。別の言い方をすれば、光学フィルタ6は、光の配光角を小さくする。
【0058】
このような事情から、上述した発散光学系5は、配光角を小さくする光学フィルタ6を使用する場合に、特に顕著な効果が得られる。つまり、光学フィルタ6を使用して配光角が小さくなった場合においても、発散光学系5を光学フィルタ6の出射側に配置すると、紫外光照射装置10は、大きな配光角を得ることができる。
【0059】
光学フィルタ6と発散光学系5との離間距離は、0mm以上3mm以下であるとよい。離間距離をこの範囲にすることで、光学フィルタ6の出射光を効果的に発散光学系5に入射させることができ、出射効率を高めることができる。離間距離は、光学フィルタ6と発散光学系5との最短距離で表される。
図4に示される紫外光照射装置10では、光学フィルタ6は、発散光学系5の凹面以外の部分と接するように配置されているため、離間距離は0mmである。
【0060】
[電極ブロック]
エキシマランプ3に対向する電極ブロック(9a,9b)の表面9r(
図3参照)は、紫外光の反射面として機能する。本実施形態において、表面9rは、取出し部4の表面に対して傾斜する平面で構成される。これにより、エキシマランプ3から電極ブロック(9a,9b)へ進行する光の方向を変えて、取出し部4へ進行させることができる。これにより、光の出射効率を高めることができる。
【0061】
表面9rは、曲面であっても構わない。特に、表面9rを放物面状の曲面とすることで、エキシマランプ3からの発散角をより指向させることができ、出射効率を高めることができる。
【0062】
電極ブロック(9a,9b)には、Al、Al合金、ステンレスを使用するとよい。これらの材料は導電性であり、かつ、紫外光の反射率が高い。
【0063】
本実施形態では、給電機能を有する電極ブロック(9a,9b)を構成する一部の面が反射面として機能することを説明した。しかしながら、電極ブロック(9a,9b)の表面に、電極ブロック(9a,9b)とは別の反射機能を有する材料を配置してもよい。
【0064】
[第一変形例]
図9を参照しながら、紫外光照射装置の第一変形例を説明する。紫外光照射装置20は、波長選択フィルタとして機能する光学フィルタを備えていない。光源自体が、人体に影響を及ぼすおそれのある紫外光を放射しない場合、又は、光源自体に、光学フィルタを含む場合には、第一変形例のように、紫外光照射装置20は光学フィルタを備えていなくても構わない。
【0065】
[第二変形例]
図10を参照しながら、紫外光照射装置の第二変形例を説明する。紫外光照射装置30は、発散光学系5に、複数の小レンズが配列されたレンズアレイではなく、単一のレンズから構成されている。また、この変形例では、シリンドリカル面(柱状に湾曲する面)を有する両凹レンズが示されているが、発散機能を有するのであれば、例えば、平凹レンズ、凹メニスカスレンズなど、他のレンズ形状であっても構わない。
【0066】
[使用方法]
本発明に係る紫外光照射装置の使用態様としては、出射される紫外光が有人空間に向けて照射されるように配置し、紫外光照射装置に紫外光を照射させることができる。有人空間とは、実際に人がいるか否かは問わず、人が立ち入ることのできる空間を意味する。有人空間には、例えば、住宅、事業所、学校、病院もしくは劇場などの建物内の空間、又は、例えば、自動車、バス、電車もしくは飛行機などの乗り物内の空間を含む。取出し部4が有人空間を向くように、紫外光照射装置10を、有人空間に面する天井、壁、柱又は床等に配置する。そして、紫外光照射装置10を点灯させて、有人空間に向けて紫外光を照射する。
【0067】
この使用方法は、従来のように、人体を避けて紫外光を照射する必要が無く、微生物を最も不活化させるべき肝心の場所である、人体の表面(皮膚等)、人が頻繁に接触する物体表面、又は人体近傍の空間を含む、有人空間全体にムラなく(ムラを小さく)紫外光を照射できる。そのため、微生物の不活化を効果的に行うことができる。
【0068】
上記紫外光照射装置を、蛍光灯やLED等の照明設備に内蔵させても構わない。照明設備に内蔵させる場合、紫外光照射装置で使用される発散光学系5を、照明設備で使用される可視光用の発散光学系と共用しても構わない。
【0069】
<第二実施形態>
図11を参照しながら、本発明の紫外光照射装置の第二実施形態を説明する。以下に説明する以外の事項は第一実施形態と同様に実施できる。第二実施形態の紫外光照射装置60は、190nm~240nmの紫外光を放射するエキシマランプ3(3a,3b,3c)と、エキシマランプ3を収容する筐体2と、エキシマランプ3より放射された紫外光を筐体2の外へ取り出す取出し部4と、を備える。さらに、紫外光照射装置60は、取出し部4に、190nm~240nmの波長帯域の紫外光を透過し、240nm~280nm以下の波長帯域の紫外光を実質的に透過しない光学フィルタ6と、を備える。ただし、第一実施形態の第一変形例で説明したように、紫外光照射装置60にとって、光学フィルタ6は必須の構成ではない。
【0070】
本実施形態の紫外光照射装置60は、発散光学系5を備えていない。その代わりに、発散光学系5を紫外光照射装置60に後付けできるように、筐体2は、発散光学系5を取り付けるための取付け部51を有する。本実施形態において、取付け部51はねじ孔である。発散光学系5の保持枠53を挟んだ状態で、ねじ52をねじ孔に嵌合することによりで、発散光学系5を紫外光照射装置60に取付ける。この発散光学系5の取付け部51の態様は一例であり、他に、フックや面ファスナー等の様々な態様を適用できる。このように発散光学系5を後付け仕様にすることで、所望の発散光学系に交換できる。
【0071】
以上で、紫外光照射装置及び紫外光照射装置を使用方法の実施形態を説明したが、本発明は上記した実施形態に何ら限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で、上記の実施形態に種々の変更又は改良を加えることができる。
【0072】
例えば、光源としてエキシマランプ3を使用する例を説明したが、光源としてLD又はLEDで構成される固体光源を使用しても構わない。
【0073】
例えば、光学フィルタとして、200nm~230nmの波長帯域の紫外光を透過し、200nm未満及び230nm~280nmの波長帯域を実質的に透過しない光学フィルタを使用しても構わない。実質的に透過させない紫外光に200nm未満の波長帯域を加えることで、オゾンの発生を抑制し人体に対する安全性がさらに高まる。
【実施例0074】
上記実施形態で示した紫外光照射装置の実施例について、発散光学系5を使用することによる配光角の拡大効果を確認した。
図12に、紫外光照射装置の配光角を計測するための計測設備40を示す。計測設備40は、紫外光照射装置50、紫外光照射装置10を載置するための回転ステージ35、及び照度計31を含む。なお、照度計31には、浜松ホトニクス社製 UV POWER METOR C8026を使用している。
【0075】
計測設備40は、回転ステージ35、回転ステージ35に載置された紫外光照射装置50、及び、紫外光照射装置50から距離d1:300(mm)離れた位置に配置された照度計31を含む。紫外光照射装置10の光軸L1上に照度計31が位置するように、紫外光照射装置50が照度計31に対向配置されるときの、回転ステージ35の位置を初期位置P0とする。回転ステージ35は、初期位置P0から、
図12に示す回転方向Rに回転させる。
図12では、初期位置P0の回転ステージ35及び紫外光照射装置50を点線で示し、回転方向Rに所定時間回転させた後の回転ステージ35及び紫外光照射装置50を実線で示す。
【0076】
紫外光照射装置50の光軸L1と、紫外光照射装置50から照度計31に入射する光線L3との間になす角θ4は、回転角を表す。回転角θ4が0度(deg)である初期位置P0から回転角θ4を大きくして(回転ステージ35を回転させて)、回転角θ4が80度(deg)になるまで、紫外光照射装置50から紫外光照射装置を照射しつつ照度計31で照度を測定した。
【0077】
紫外光照射装置50は、
図4に示す紫外光照射装置10と同様の構造を有する。ただし、用意した紫外光照射装置では、KrClのエキシマランプ3がZ方向に4本並んでいる。この紫外光照射装置50を3つ(S1,S2,S3)用意した。ただし、3つの紫外光照射装置(S1,S2,S3)の発散光学系5は、それぞれ、以下の条件に従う。
【0078】
紫外光照射装置S1の発散光学系5は、
図13に示すように、4つの小レンズ(シリンドリカル面を有する両凹レンズ)がZ方向に並んで構成される。そして、以下の寸法を有する。
レンズの厚みt1:8mm
レンズの深さt2:3.34mm
レンズ凹面の曲率半径R1:8mm
レンズ凹面の角度θ5:108度[deg.]
レンズのz方向幅z1:13mm
レンズのz方向ピッチz2:14mm
【0079】
紫外光照射装置S2の発散光学系5は、
図13に示すように、4つの小レンズ(シリンドリカル型の両凹レンズ)がZ方向に並んで構成される。そして、以下の寸法を有する。
レンズの厚みt1:5mm
レンズの深さt2:1.74mm
レンズ凹面の曲率半径R1:13mm
レンズ凹面の角度θ5:60度[deg.]
レンズのz方向幅z1:13mm
レンズのz方向ピッチz2:14mm
【0080】
紫外光照射装置S2の発散光学系5に使用されるレンズアレイの光学レンズは、紫外光照射装置S1の発散光学系5に使用される光学レンズよりも、大きい曲率半径を有する。すなわち、紫外光照射装置S1の光学レンズの屈折力は、紫外光照射装置S2の光学レンズの屈折力よりも大きい。
【0081】
紫外光照射装置S3は、比較例として示される、発散光学系5のない紫外光照射装置である。
【0082】
紫外光照射装置(S1、S2、S3)それぞれについて、測定した照度結果に基づいて相対照度を求めた。相対照度は、任意の回転角における照度測定値を、回転角0度(deg)における照度測定値で除して求められる。つまり、相対照度とは、光軸方向に進行する光線の照度を1としたときの、任意の角度に進行する光線の照度の相対値である。回転角の変化に対する相対照度を表すグラフを、
図14に示す。
【0083】
発散光学系5の有する紫外光照射装置(S1、S2)は、発散光学系5のない紫外光照射装置S3に比べて、幅広い角度範囲に対して高い相対照度を示している。相対照度が0.50(回転角0度(光軸上)における照度の半分の測定照度)となる回転角について、紫外光照射装置S1は約44度(deg)、紫外光照射装置S2は約42度であるのに対し、紫外光照射装置S3は約26度しかない。配光角は、相対照度が0.50となる回転角の2倍で求められることを踏まえると、紫外光照射装置S1は、発散光学系を設けることで、配光角が約36度拡大し、紫外光照射装置S2は、発散光学系を設けることで、配光角が約32度拡大したといえる。
【0084】
上記は、レンズアレイの発散光学系の有無についての実施例を説明したが、光学フィルタを備えていない紫外光照射装置、又は、単一のレンズから構成される発散光学系を備える紫外光照射装置においても、同様の傾向を示すものと推測される。
【0085】
次に、紫外光照射装置S1と、紫外光照射装置S2とを比べる。屈折力の大きな光学レンズを有する紫外光照射装置S1の場合、光軸からの角度が15度付近における光線の相対照度が、光軸上の光線の相対照度を約0.2ポイント上回る。他方、屈折力の小さな光学レンズを有する紫外光照射装置S2の場合、光線の相対照度が1.1を上回る光線がない。つまり、紫外光照射装置S2は、紫外光照射装置S1よりも配向分布が均一化されている。よって、冒頭に述べたように、配向分布のより均一化された紫外光照射装置S2は、紫外光照射装置S1より、さらに高いレベルでの安全性を確保できるとともに、紫外光照射量の上限の制約を受けにくくなる。
【0086】
光学レンズは、屈折力を一定の数値範囲にすると、紫外光照射装置を効率的に使用できる。レンズアレイ場合、上述の実験結果から、その曲率半径は10mm以上であると好ましく、13mm以上であるとより好ましい。また、十分な発散効果を得るためには、曲率半径は、光源が配列されるピッチ以下であるとより好ましい。
請求項1~3のいずれか一項に記載の紫外光照射装置を、出射される紫外光の少なくとも一部が空間に向けて照射されるように配置し、前記紫外光照射装置に前記紫外光を放射させる、紫外光照射装置の使用方法。