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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022170811
(43)【公開日】2022-11-11
(54)【発明の名称】カテーテル装置および薬液注入装置
(51)【国際特許分類】
   A61M 25/092 20060101AFI20221104BHJP
   A61M 5/14 20060101ALI20221104BHJP
【FI】
A61M25/092 510
A61M25/092 500
A61M5/14 540
【審査請求】未請求
【請求項の数】16
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021077029
(22)【出願日】2021-04-30
(71)【出願人】
【識別番号】390030731
【氏名又は名称】朝日インテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001911
【氏名又は名称】特許業務法人アルファ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】久保 佑太
(72)【発明者】
【氏名】河村 健太
【テーマコード(参考)】
4C066
4C267
【Fターム(参考)】
4C066BB01
4C066CC01
4C066FF01
4C066FF04
4C066HH04
4C066HH14
4C066JJ06
4C267AA02
4C267AA05
4C267BB02
4C267BB04
4C267BB10
4C267BB11
4C267BB40
4C267BB52
4C267BB53
4C267BB63
4C267CC08
4C267CC20
4C267CC21
4C267CC22
4C267CC23
4C267CC24
4C267CC25
4C267CC26
4C267EE01
4C267EE03
4C267GG24
4C267GG42
4C267HH08
(57)【要約】
【課題】カテーテル装置の操作性を向上させる。
【解決手段】カテーテル装置は、第1のカテーテルを備える。第1のカテーテルは、第1のカテーテルシャフトと、第1のカテーテルシャフトの基端部に取り付けられ、第1のカテーテルシャフトを操作するための操作部とを有する。操作部は、第1のカテーテルシャフトを第1のカテーテルシャフトの中心軸廻りに回転させる回転操作部と、第1のカテーテルシャフトの先端部を屈曲させる屈曲操作部とを有する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
カテーテル装置であって、
第1のカテーテルシャフトと、前記第1のカテーテルシャフトの基端部に取り付けられ、前記第1のカテーテルシャフトを操作するための操作部と、を有する第1のカテーテルを備え、
前記操作部は、
前記第1のカテーテルシャフトを前記第1のカテーテルシャフトの中心軸廻りに回転させる回転操作部と、
前記第1のカテーテルシャフトの先端部を屈曲させる屈曲操作部と、
を有する、
カテーテル装置。
【請求項2】
請求項1に記載のカテーテル装置であって、
前記回転操作部は、
手技者による操作に伴い前記中心軸廻りに回転することにより、前記第1のカテーテルシャフトを前記中心軸周りに回転させるとともに、前記第1のカテーテルシャフトに対して前記中心軸方向に相対変位可能である第1の操作入力部と、
前記第1の操作入力部に対して、前記第1の操作入力部の回転に伴い回転するように取り付けられると共に、前記第1のカテーテルシャフトの基端部に取り付けられた回転シャフトと、
を有する、
カテーテル装置。
【請求項3】
請求項2に記載のカテーテル装置であって、
前記屈曲操作部は、
前記回転シャフトに対して、前記中心軸方向に摺動可能に取り付けられた摺動部材と、
前記摺動部材と前記第1のカテーテルシャフトの先端部とを連結する操作ワイヤと、
手技者による操作に伴い回転する第2の操作入力部と、
前記第2の操作入力部の回転力を、前記摺動部材を摺動させる力に変換して、前記摺動部材に伝える伝達機構と、
を有する、
カテーテル装置。
【請求項4】
請求項3に記載のカテーテル装置であって、
前記摺動部材は、前記回転シャフトが前記中心軸廻りに回転しても、前記伝達機構からの前記摺動部材を摺動させる力を受ける状態を維持するように構成されている、
カテーテル装置。
【請求項5】
請求項4に記載のカテーテル装置であって、
前記摺動部材は、
前記回転シャフトに対して、前記回転シャフトの前記中心軸廻りの回転に伴い回転するように取り付けられたコア部材と、
前記コア部材に対して、前記中心軸廻りに相対回転可能に、かつ、前記中心軸方向の前記コア部材の摺動に伴い摺動するように取り付けられ、前記伝達機構の複数の歯と噛み合う複数の歯が形成されたラック部材と、
を有する、
カテーテル装置。
【請求項6】
請求項4に記載のカテーテル装置であって、
前記摺動部材は、外周面に前記伝達機構の複数の歯と噛み合う複数の歯が形成された略円筒形のラック部材であり、前記回転シャフトに対して、前記回転シャフトの前記中心軸廻りの回転に伴い回転するように取り付けられている、
カテーテル装置。
【請求項7】
請求項1から請求項6までのいずれか一項に記載のカテーテル装置と、
前記操作部を介して前記第1のカテーテルシャフト内に摺動可能に挿入され、薬液を収容する薬液収容ルーメンが形成された第2のカテーテルシャフトを有する第2のカテーテルと、
を備える、
薬液注入装置。
【請求項8】
請求項7に記載の薬液注入装置であって、
前記回転操作部は、
手技者による操作に伴い前記中心軸廻りに回転することにより、前記第1のカテーテルシャフトを前記中心軸周りに回転させるとともに、前記第1のカテーテルシャフトに対して前記中心軸方向に相対変位可能である第1の操作入力部と、
前記第1の操作入力部に対して、前記第1の操作入力部の回転に伴い回転するように取り付けられると共に、前記第1のカテーテルシャフトの基端部に取り付けられた回転シャフトと、
を有し、
前記第1の操作入力部は、直接または他の部材を介して前記第2のカテーテルに固定されており、
前記第2のカテーテルは、前記第1の操作入力部が第1の位置にあるときに、先端が前記第1のカテーテルシャフト内に収容され、前記第1の操作入力部が前記第1の位置より先端側の第2の位置にあるときに、前記先端が前記第1のカテーテルシャフトの先端から突出するように構成されている、
薬液注入装置。
【請求項9】
請求項8に記載の薬液注入装置であって、
前記第2のカテーテルシャフトの先端には、針部が設けられており、
前記回転操作部の前記第1の操作入力部は、前記回転シャフトに対して、前記中心軸廻りの前記回転シャフトの回転に伴い回転するように、かつ、前記中心軸方向に相対変位可能に取り付けられ、
前記第2のカテーテルは、前記第1の操作入力部が前記第1の位置にあるときに、前記針部が前記第1のカテーテルシャフト内に収容され、前記第1の操作入力部が前記第2の位置にあるときに、前記針部が前記第1のカテーテルシャフトの先端から突出するように構成されている、
薬液注入装置。
【請求項10】
請求項7から請求項9までのいずれか一項に記載の薬液注入装置であって、さらに、
前記第2のカテーテルシャフトの前記薬液収容ルーメン内に摺動可能に挿入されたワイヤと、
前記第1のカテーテルとは別体のプランジャと、
を備え、
前記プランジャは、
前記ワイヤを収納するワイヤ収納部と、
前記ワイヤを前記ワイヤ収納部から送り出す、または、前記ワイヤ収納部へ引き戻すことによって、前記薬液収容ルーメン内において前記ワイヤを進退させるワイヤ操作部と、
を有する、
薬液注入装置。
【請求項11】
請求項10に記載の薬液注入装置であって、
前記ワイヤ操作部は、
複数の歯が形成され、所定の長さの直進運動を行うワイヤ用ラック部材と、
前記ワイヤを挟持し、回転することによって前記ワイヤを進退させるローラ対と、
前記ワイヤ用ラック部材の前記複数の歯に噛み合う複数の歯が形成された従動ギアを含む複数のギアを有し、前記ワイヤ用ラック部材の前記直進運動を前記ローラ対の回転運動に変換しつつ前記ローラ対に伝達するワイヤ用伝達機構と、
を有する、
薬液注入装置。
【請求項12】
請求項11に記載の薬液注入装置であって、
前記プランジャは、さらに、前記ワイヤ用ラック部材を、前記従動ギアから離間するように付勢する第1の付勢部材を有する、
薬液注入装置。
【請求項13】
請求項12に記載の薬液注入装置であって、
前記プランジャは、さらに、前記ワイヤ用ラック部材が前記直進運動の始点および終点にあるときに、前記ワイヤ用ラック部材の、前記従動ギアに近付く方向、および、前記従動ギアから離間する方向への移動を許容し、前記ワイヤ用ラック部材がそれ以外の位置にあるときに、前記ワイヤ用ラック部材の、前記従動ギアに近付く方向、または、前記従動ギアから離間する方向への移動を規制する移動規制部を有する、
薬液注入装置。
【請求項14】
請求項12または請求項13に記載の薬液注入装置であって、
前記プランジャは、さらに、前記ワイヤ用ラック部材を、前記直進運動の始点に向けて付勢する第2の付勢部材を有する、
薬液注入装置。
【請求項15】
請求項11から請求項14までのいずれか一項に記載の薬液注入装置であって、
前記プランジャは、さらに、
回転することによって、前記ワイヤ用ラック部材の前記直進運動の実施回数を表示するカウンタ部と、
前記ワイヤ用ラック部材の前記複数の歯に噛み合う複数の歯が形成された従動ギアを含む複数のギアを有し、前記ワイヤ用ラック部材の前記直進運動を前記カウンタ部の回転運動に変換しつつ前記カウンタ部に伝達するカウンタ用伝達機構と、
を有する、
薬液注入装置。
【請求項16】
請求項15に記載の薬液注入装置であって、
前記ワイヤ用伝達機構と前記カウンタ用伝達機構とは、前記従動ギアを共有する、
薬液注入装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書に開示される技術は、カテーテル装置および薬液注入装置に関する。
【背景技術】
【0002】
生体管腔内に挿入可能なカテーテルを利用して、患者の体内に薬液を注入する薬液注入装置が知られている。薬液注入装置には、薬液を患者の体内の所望の位置に正確に注入するため、カテーテルの操作性を向上させることが求められる。
【0003】
従来、操作部を操作することにより、カテーテルの先端部に固定された操作ワイヤを牽引し、これによりカテーテルの先端部を屈曲させることができる装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。また、薬液を保持するバレルを前後移動するプランジャを備える薬液注入装置が知られている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第6221300号公報
【特許文献2】特表2012-525869号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来の薬液注入装置では、操作性に関し向上の余地がある。なお、このような課題は、薬液注入装置に限らず、カテーテル装置一般に共通する課題である。
【0006】
本明細書では、上述した課題を解決することが可能な技術を開示する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本明細書に開示される技術は、例えば、以下の形態として実現することが可能である。
【0008】
(1)本明細書に開示されるカテーテル装置は、第1のカテーテルを備える。第1のカテーテルは、第1のカテーテルシャフトと、前記第1のカテーテルシャフトの基端部に取り付けられ、前記第1のカテーテルシャフトを操作するための操作部とを有する。前記操作部は、前記第1のカテーテルシャフトを前記第1のカテーテルシャフトの中心軸廻りに回転させる回転操作部と、前記第1のカテーテルシャフトの先端部を屈曲させる屈曲操作部とを有する。
【0009】
このように、本カテーテル装置では、操作部が、第1のカテーテルシャフトを回転させる回転操作部と、第1のカテーテルシャフトの先端部を屈曲させる屈曲操作部とを有するため、第1のカテーテルシャフトの先端部の位置および向きを自由に変更することができる。従って、本カテーテル装置によれば、カテーテル装置の操作性を向上させることができる。
【0010】
(2)上記カテーテル装置において、前記回転操作部は、手技者による操作に伴い前記中心軸廻りに回転することにより、前記第1のカテーテルシャフトを前記中心軸周りに回転させるとともに、前記第1のカテーテルシャフトに対して前記中心軸方向に相対変位可能である第1の操作入力部と、前記第1の操作入力部に対して、前記第1の操作入力部の回転に伴い回転するように取り付けられると共に、前記第1のカテーテルシャフトの基端部に取り付けられた回転シャフトと、を有する構成としてもよい。本カテーテル装置によれば、手技者の直感的かつシンプルな操作による第1のカテーテルシャフトの回転を実現することができ、カテーテル装置の操作性を向上させることができる。
【0011】
(3)上記カテーテル装置において、前記屈曲操作部は、前記回転シャフトに対して、前記中心軸方向に摺動可能に取り付けられた摺動部材と、前記摺動部材と前記第1のカテーテルシャフトの先端部とを連結する操作ワイヤと、手技者による操作に伴い回転する第2の操作入力部と、前記第2の操作入力部の回転力を、前記摺動部材を摺動させる力に変換して、前記摺動部材に伝える伝達機構と、を有する構成としてもよい。本カテーテル装置によれば、手技者のシンプルな操作による第1のカテーテルシャフトの先端部の屈曲を実現することができ、カテーテル装置の操作性を向上させることができる。
【0012】
(4)上記カテーテル装置において、前記摺動部材は、前記回転シャフトが前記中心軸廻りに回転しても、前記伝達機構からの前記摺動部材を摺動させる力を受ける状態を維持するように構成されている構成としてもよい。本カテーテル装置によれば、第1のカテーテルシャフトの回転角度がどのような角度であっても第1のカテーテルシャフトの先端部の屈曲操作を行うことができ、カテーテル装置の操作性を効果的に向上させることができる。
【0013】
(5)上記カテーテル装置において、前記摺動部材は、前記回転シャフトに対して、前記回転シャフトの前記中心軸廻りの回転に伴い回転するように取り付けられたコア部材と、前記コア部材に対して、前記中心軸廻りに相対回転可能に、かつ、前記中心軸方向の前記コア部材の摺動に伴い摺動するように取り付けられ、前記伝達機構の複数の歯と噛み合う複数の歯が形成されたラック部材と、を有する構成としてもよい。本カテーテル装置によれば、ラック部材における歯を形成する箇所を少なくすることができ、加工の容易化・効率化を実現することができる。
【0014】
(6)上記カテーテル装置において、前記摺動部材は、外周面に前記伝達機構の複数の歯と噛み合う複数の歯が形成された略円筒形のラック部材であり、前記回転シャフトに対して、前記回転シャフトの前記中心軸廻りの回転に伴い回転するように取り付けられている構成としてもよい。本カテーテル装置によれば、操作部の部品点数を低減することができ、製造の容易化・効率化を実現することができる。
【0015】
(7)本明細書に開示される薬液注入装置は、上記カテーテル装置と、前記操作部を介して前記第1のカテーテルシャフト内に摺動可能に挿入され、薬液を収容する薬液収容ルーメンが形成された第2のカテーテルシャフトを有する第2のカテーテルと、を備える。本薬液注入装置では、操作部の回転操作部によって、第2のカテーテルシャフトが収容された第1のカテーテルシャフトを回転させることができ、かつ、操作部の屈曲操作部によって、第2のカテーテルシャフトが収容された第1のカテーテルシャフトの先端部を屈曲させることができるため、薬液を収容する薬液収容ルーメンが形成された第2のカテーテルシャフトの先端部の位置および向きを自由に変更することができる。従って、本薬液注入装置によれば、薬液注入装置の操作性を向上させることができ、ひいては、薬液注入位置の精度を向上させることができる。
【0016】
(8)上記薬液注入装置において、前記回転操作部は、手技者による操作に伴い前記中心軸廻りに回転することにより、前記第1のカテーテルシャフトを前記中心軸周りに回転させるとともに、前記第1のカテーテルシャフトに対して前記中心軸方向に相対変位可能である第1の操作入力部と、前記第1の操作入力部に対して、前記第1の操作入力部の回転に伴い回転するように取り付けられると共に、前記第1のカテーテルシャフトの基端部に取り付けられた回転シャフトと、を有し、前記第1の操作入力部は、直接または他の部材を介して前記第2のカテーテルに固定されており、前記第2のカテーテルは、前記第1の操作入力部が第1の位置にあるときに、先端が前記第1のカテーテルシャフト内に収容され、前記第1の操作入力部が前記第1の位置より先端側の第2の位置にあるときに、前記先端が前記第1のカテーテルシャフトの先端から突出するように構成されているとしてもよい。本薬液注入装置によれば、第2のカテーテルシャフトの先端が第1のカテーテルシャフト内に収容された状態で、第1のカテーテルシャフトおよび第2のカテーテルシャフトを薬液注入位置まで移動させることができ、第2のカテーテルシャフトの先端によって患者の体内を傷つけることを防止することができる。また、本薬液注入装置によれば、薬液注入位置において、直感的かつシンプルな操作によって、第2のカテーテルシャフトの先端を第1のカテーテルシャフトの先端から突出させることができ、薬液注入装置の操作性を向上させることができる。
【0017】
(9)上記薬液注入装置において、前記第2のカテーテルシャフトの先端には、針部が設けられており、前記回転操作部の前記第1の操作入力部は、前記回転シャフトに対して、前記中心軸廻りの前記回転シャフトの回転に伴い回転するように、かつ、前記中心軸方向に相対変位可能に取り付けられ、前記第2のカテーテルは、前記第1の操作入力部が前記第1の位置にあるときに、前記針部が前記第1のカテーテルシャフト内に収容され、前記第1の操作入力部が前記第2の位置にあるときに、前記針部が前記第1のカテーテルシャフトの先端から突出するように構成されている構成としてもよい。本薬液注入装置によれば、第2のカテーテルシャフトの針部が第1のカテーテルシャフト内に収容された状態で、第1のカテーテルシャフトおよび第2のカテーテルシャフトを穿刺位置まで移動させることができ、針部によって患者の体内を傷つけることを防止することができる。また、本薬液注入装置によれば、穿刺位置において、直感的かつシンプルな操作によって針部を第1のカテーテルシャフトの先端から突出させることができ、薬液注入装置の操作性を向上させることができる。
【0018】
(10)上記薬液注入装置において、さらに、前記第2のカテーテルシャフトの前記薬液収容ルーメン内に摺動可能に挿入されたワイヤと、前記第1のカテーテルとは別体のプランジャと、を備え、前記プランジャは、前記ワイヤを収納するワイヤ収納部と、前記ワイヤを前記ワイヤ収納部から送り出す、または、前記ワイヤ収納部へ引き戻すことによって、前記薬液収容ルーメン内において前記ワイヤを進退させるワイヤ操作部と、を有する構成としてもよい。本薬液注入装置によれば、第2のカテーテルの操作部による第1のカテーテルシャフトの操作と、プランジャによる薬液吐出操作とを、互いに異なる手技者により実行することができ、その結果、両操作の正確性を向上させることができる。
【0019】
(11)上記薬液注入装置において、前記ワイヤ操作部は、複数の歯が形成され、所定の長さの直進運動を行うワイヤ用ラック部材と、前記ワイヤを挟持し、回転することによって前記ワイヤを進退させるローラ対と、前記ワイヤ用ラック部材の前記複数の歯に噛み合う複数の歯が形成された従動ギアを含む複数のギアを有し、前記ワイヤ用ラック部材の前記直進運動を前記ローラ対の回転運動に変換しつつ前記ローラ対に伝達するワイヤ用伝達機構と、を有する構成としてもよい。本薬液注入装置によれば、ワイヤ用ラック部材に所定の長さの直進運動を行わせるような操作を行うことにより、薬液収容ルーメン内においてワイヤを一定の量だけ前進させることができ、その結果、第2のカテーテルシャフトの先端から一定の量の薬液を吐出させることができるため、薬液の吐出量を精度良くコントロールすることができる。
【0020】
(12)上記薬液注入装置において、前記プランジャは、さらに、前記ワイヤ用ラック部材を、前記従動ギアから離間するように付勢する第1の付勢部材を有する構成としてもよい。本薬液注入装置によれば、意図せずにワイヤ用ラック部材を直進運動させた場合には、従動ギアが回転しないため、誤操作による薬液の吐出を防止することができる。
【0021】
(13)上記薬液注入装置において、前記プランジャは、さらに、前記ワイヤ用ラック部材が前記直進運動の始点および終点にあるときに、前記ワイヤ用ラック部材の、前記従動ギアに近付く方向、および、前記従動ギアから離間する方向への移動を許容し、前記ワイヤ用ラック部材がそれ以外の位置にあるときに、前記ワイヤ用ラック部材の、前記従動ギアに近付く方向、または、前記従動ギアから離間する方向への移動を規制する移動規制部を有する構成としてもよい。本薬液注入装置によれば、ワイヤ用ラック部材を従動ギアに係合させて直進運動をさせている途中で、意図せずにワイヤ用ラック部材が従動ギアから離間し、ワイヤ用ラック部材の1回の直進運動に伴う薬液の吐出量が所定量に満たなくなることを防止することができると共に、従動ギアに係合していないワイヤ用ラック部材が直進運動の始点および終点以外の位置にあるときに、意図せずにワイヤ用ラック部材が従動ギアに係合し、意図しない薬液の吐出が行われることを防止することができ、薬液の吐出量の精度を効果的に向上させることができる。
【0022】
(14)上記薬液注入装置において、前記プランジャは、さらに、前記ワイヤ用ラック部材を、前記直進運動の始点に向けて付勢する第2の付勢部材を有する構成としてもよい。本薬液注入装置によれば、手技者がワイヤ用ラック部材を直進運動の始点の位置に移動させる操作を行う必要がないため、薬液注入装置の操作性を効果的に向上させることができる。
【0023】
(15)上記薬液注入装置において、前記プランジャは、さらに、回転することによって、前記ワイヤ用ラック部材の前記直進運動の実施回数を表示するカウンタ部と、前記ワイヤ用ラック部材の前記複数の歯に噛み合う複数の歯が形成された従動ギアを含む複数のギアを有し、前記ワイヤ用ラック部材の前記直進運動を前記カウンタ部の回転運動に変換しつつ前記カウンタ部に伝達するカウンタ用伝達機構と、を有する構成としてもよい。本薬液注入装置によれば、ワイヤ用ラック部材の直進運動が実行されることに伴い、カウンタ部が回転して直進運動の実施回数の表示が更新されるため、ワイヤ用ラック部材の直進運動の回数、すなわち、既に投与した薬液の量を正確に把握することができる。
【0024】
(16)上記薬液注入装置において、前記ワイヤ用伝達機構と前記カウンタ用伝達機構とは、前記従動ギアを共有する構成としてもよい。本薬液注入装置によれば、プランジャの構成の簡素化を実現しつつ、ワイヤ用ラック部材の直進運動に伴う薬液の吐出と回数表示の更新とを実現することができる。
【0025】
なお、本明細書に開示される技術は、種々の形態で実現することが可能であり、例えば、薬液注入装置、薬液注入のためのカテーテル、薬液注入のためのプランジャ、薬液注入装置を備えるシステム、これらの装置またはシステムを製造する方法等の形態で実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】第1実施形態における薬液注入装置10の構成を概略的に示す説明図
図2】針カテーテル40の構成を示す説明図
図3】操作カテーテル20の詳細構成を示す説明図
図4】操作カテーテル20の詳細構成を示す説明図
図5】操作カテーテル20の詳細構成を示す説明図
図6】操作カテーテル20の動作を示す説明図
図7】操作カテーテル20の動作を示す説明図
図8】操作カテーテル20の動作を示す説明図
図9】操作カテーテル20の動作を示す説明図
図10】プランジャ50の詳細構成を示す説明図
図11】プランジャ50の詳細構成を示す説明図
図12】プランジャ50の詳細構成を示す説明図
図13】プランジャ50の詳細構成を示す説明図
図14】プランジャ50の詳細構成を示す説明図
図15】プランジャ50の動作を示す説明図
図16】第2実施形態における操作カテーテル20aの構成を概略的に示す説明図
【発明を実施するための形態】
【0027】
A.第1実施形態:
A-1.薬液注入装置10の構成:
図1は、第1実施形態における薬液注入装置10の構成を概略的に示す説明図である。図1には、薬液注入装置10の側面の構成が示されている。なお、図1では、薬液注入装置10の一部の図示を省略している。図1には、相互に直交するXYZ軸が図示されている。X軸は、薬液注入装置10の長さ方向に対応し、Y軸は、薬液注入装置10の高さ方向に対応し、Z軸は、薬液注入装置10の幅方向に対応する。図1において、X軸負方向側が、体内に挿入される先端側(遠位側)であり、X軸正方向側が、医師等の手技者によって操作される基端側(近位側)である。これらの点は、他の図においても同様である。以下では、薬液注入装置10およびその構成部材について、先端側の端を「先端」といい、先端およびその近傍を「先端部」といい、基端側の端を「基端」といい、基端およびその近傍を「基端部」という。また、以下では、説明の便宜上、Y軸正方向側を「上側」といい、Y軸負方向側を「下側」という。
【0028】
薬液注入装置10は、生体管腔内に挿入可能なカテーテルを利用して、患者の体内に薬液を注入するために用いられる医療用デバイスである。ここで、生体管腔とは、血管系、リンパ腺系、胆道系、尿路系、気道系、消化器官系、分泌腺および生殖器官といった種々の管腔を含む。
【0029】
薬液注入装置10は、操作カテーテル20と、中継カテーテル30と、針カテーテル40と、プランジャ50と、ワイヤ502(図10,15等参照)とを備える。薬液注入装置10では、中継カテーテル30の先端部は操作カテーテル20を構成する操作部23の基端部に設けられた第1の操作入力部240に固定され、中継カテーテル30の基端部は針カテーテル40のコネクタ45に固定されている。すなわち、針カテーテル40は、中継カテーテル30を介して操作カテーテル20に連結されている。操作カテーテル20は、特許請求の範囲における第1のカテーテルの一例であり、針カテーテル40は、特許請求の範囲における第2のカテーテルの一例である。
【0030】
なお、図1には、操作カテーテル20(より具体的には、後述する操作カテーテル20のシース21)の中心軸AXが示されている。図1に示す薬液注入装置10の姿勢において、中心軸AXはX軸に平行である。また、中継カテーテル30および針カテーテル40の中心軸は、操作カテーテル20の中心軸AXに略一致している。
【0031】
A-2.針カテーテル40の構成:
図2は、針カテーテル40の構成を示す説明図である。図2の上部には、針カテーテル40の側面構成が示されており、図2の下部には、針カテーテル40の先端部の断面構成が示されている。
【0032】
針カテーテル40は、患者の生体管腔内に挿入され、患者の体内の所望の位置まで薬液を運搬し、該位置に薬液を注入するために使用される装置である。針カテーテル40は、カテーテルシャフト43と、コネクタ45とを備える。カテーテルシャフト43は、特許請求の範囲における第2のカテーテルシャフトの一例である。
【0033】
カテーテルシャフト43は、中心軸AXに沿って延びる長尺状部材である。より詳細には、カテーテルシャフト43は、先端と基端とのそれぞれに開口が形成され、内側に両開口を連通する内腔が形成された略円筒状部材である。カテーテルシャフト43の内腔は、薬液を収容する薬液収容ルーメン40Lとして機能する。薬液収容ルーメン40Lの横断面形状は、例えば、略一定の内径φ1を有する略円形である。
【0034】
カテーテルシャフト43は、シャフト本体部41と、針部42とを有する。針部42の基端部は、シャフト本体部41の先端部に、例えば接着により接合されている。針部42の先端部には、鋭利な針先が形成されている。
【0035】
シャフト本体部41は、抗血栓性、可撓性、生体適合性を有することが好ましく、樹脂材料や金属材料により形成することができる。シャフト本体部41を形成するための樹脂材料としては、例えば、ポリアミド樹脂、ポリオレフィン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、シリコン樹脂、フッ素樹脂等を採用することができる。また、シャフト本体部41を形成するための金属材料としては、例えば、SUS304等のステンレス鋼、NiTi合金、コバルトクロム合金等を採用することができる。なお、シャフト本体部41の肉厚部には、柔軟性、トルク伝達性、押し込み性、耐キンク性、血管追従性、病変通過性、および、操作性のうちの少なくとも一部を向上させるために、コイル体や編組体が埋設されていてもよい。また、シャフト本体部41は、同一または異なる材料により形成された複数の層から構成されていてもよい。また、針部42は、抗血栓性および生体適合性を有することが好ましく、例えば、SUS304等のステンレス鋼、NiTi合金、コバルトクロム合金等の金属材料により形成することができる。
【0036】
コネクタ45は、カテーテルシャフト43の基端部に接続されており、針カテーテル40とプランジャ50(図1)とを接続すると共に、針カテーテル40の薬液収容ルーメン40Lを密閉する弁として機能する。コネクタ45は、樹脂材料、例えば、ポリウレタン、ポリプロピレン、硬質ポリ塩化ビニル等により形成することができる。
【0037】
なお、コネクタ45には、中継カテーテル30(図1)の基端部が固定されている。中継カテーテル30は、針カテーテル40を保護するための部材であり、先端と基端とのそれぞれに開口が形成され、内側に両開口を連通する内腔が形成された略円筒状部材である。中継カテーテル30の内腔には、針カテーテル40が収容されている。中継カテーテル30は、樹脂材料、例えば、PTFE等により形成することができる。
【0038】
A-3.操作カテーテル20の構成:
図3から図5は、操作カテーテル20の詳細構成を示す説明図である。図3から図5では、操作カテーテル20の一部の図示を省略しつつ、操作カテーテル20の内部構成を示している。図3には、操作カテーテル20の側面視(Z軸方向視)の構成が示されており、操作カテーテル20のうち、筐体210の一部(図面上、手前側の部分)および第1のダイアル248の一部(図面上、下方手前側の部分)の図示が省略されている。図4には、操作カテーテル20の側面視(Z軸方向視)の構成が示されており、操作カテーテル20のうち、図3で省略された部分に加えて、摺動部材230の一部(図面上、手前側の部分)、接続部材243の一部(図面上、手前側の部分)および第2の操作入力部260の図示が省略されている。図5には、操作カテーテル20の斜視構成が示されており、操作カテーテル20のうち、図4で省略された部分と同じ部分の図示が省略されている。
【0039】
操作カテーテル20は、針カテーテル40の回転および屈曲操作を行う装置である。操作カテーテル20は、シース21と、操作部23とを備える。なお、図5では、シース21の図示を省略している。シース21は、特許請求の範囲における第1のカテーテルシャフトの一例である。
【0040】
シース21は、中心軸AXに沿って延びる長尺状部材である。より詳細には、シース21は、先端と基端とのそれぞれに開口が形成され、内側に両開口を連通する内腔22が形成された略円筒状部材である。シース21の内腔22の横断面形状は、例えば、針カテーテル40のカテーテルシャフト43の外径より大きい内径を有する略円形である。シース21の内腔22には、操作部23を介して、針カテーテル40のカテーテルシャフト43が摺動可能に挿入されている。また、シース21の先端部は、他の部分より、柔軟性が高くなっている。
【0041】
シース21は、抗血栓性、可撓性、生体適合性を有することが好ましく、樹脂材料や金属材料により形成することができる。シース21を形成するための材料としては、上述した針カテーテル40のシャフト本体部41を形成するための材料と同様の材料を採用することができる。また、シャフト本体部41と同様に、シース21の肉厚部にコイル体や編組体が埋設されていてもよい。また、シャフト本体部41と同様に、シース21は同一または異なる材料により形成された複数の層から構成されていてもよい。
【0042】
操作部23は、シース21を操作するための装置であり、シース21の基端部に取り付けられている。図3から図5に示すように、操作部23は、筐体210と、回転シャフト220と、摺動部材230と、第1の操作入力部240と、第2の操作入力部260と、伝達機構270とを備える。操作部23の各部は、例えば、樹脂材料や金属材料により形成することができる。
【0043】
筐体210は、操作部23を構成する各部材を内部に収容するケースである。なお、図3から図5では、筐体210の一部の図示を省略している。筐体210の形状は、先端側ほど外径の小さい略円錐状である。筐体210の先端には、シース21の外径よりわずかに大きい内径を有する筒状の先端側ガイド部211が形成されている。また、筐体210の基端には、後述する接続本体部241の外径よりわずかに大きい内径を有する筒状の基端側ガイド部212が形成されている。
【0044】
回転シャフト220は、中心軸AXに沿って延びる長尺状部材である。より詳細には、回転シャフト220は、先端と基端とのそれぞれに開口が形成され、内側に両開口を連通する内腔223(図5参照)が形成された筒状部材である。回転シャフト220の内腔223の横断面形状は、例えば、針カテーテル40のカテーテルシャフト43の外径より大きい内径を有する略円形である。回転シャフト220の内腔223は、シース21の内腔22に連通しており、それらの内腔223,22には針カテーテル40が摺動可能に挿入されている。
【0045】
回転シャフト220は、中心軸AX廻りに回転可能に筐体210に支持されている。回転シャフト220の先端部221における内腔223にシース21の基端部が挿入された状態で、シース21の基端部と回転シャフト220の先端部221とが固定されている。そのため、回転シャフト220が中心軸AX廻りに回転すると、シース21も同期して中心軸AX廻りに回転する。また、中心軸AX方向において、筐体210に対する回転シャフト220の相対位置は固定されている。なお、回転シャフト220の先端部221の横断面の外形は、略円形であり、回転シャフト220の基端部222の横断面の外形は、略矩形である。
【0046】
摺動部材230は、略筒状の部材であり、横断面の外形は略矩形である。摺動部材230は、回転シャフト220に対して、中心軸AX方向に摺動可能に取り付けられている。より詳細には、摺動部材230は、コア部材232と、ラック部材231とから構成されている(図4および図5参照。なお、図4および図5では、ラック部材231の一部の図示を省略している)。コア部材232には、回転シャフト220の基端部222の外形と略同形状の内腔が形成されており、コア部材232の内腔に回転シャフト220の基端部222が収容された状態で、コア部材232が回転シャフト220に固定されている。そのため、回転シャフト220が中心軸AX廻りに回転すると、コア部材232も同期して中心軸AX廻りに回転する。また、コア部材232は、先端部235と、基端部237と、先端部235と基端部237とに挟まれた中間部236とから構成されている。これら各部の横断面の外形は、略円形であるが、中間部236の外径は、先端部235および基端部237の外径より大きい。
【0047】
ラック部材231には、コア部材232の外形と略同形状の内腔が形成されており、ラック部材231の内腔にコア部材232が収容された状態で、コア部材232がラック部材231に固定されている。ラック部材231は、コア部材232に対して中心軸AX廻りに相対回転可能である。一方、中心軸AX方向については、コア部材232の外周面とラック部材231の内周面とが係合することにより、ラック部材231は、コア部材232の中心軸AX方向の摺動に伴い摺動する。すなわち、ラック部材231は、コア部材232に対して、中心軸AX廻りに相対回転可能に、かつ、中心軸AX方向のコア部材232の摺動に伴い摺動するように取り付けられている。ラック部材231の一部の外周面(具体的には、下面、すなわち、後述する伝達機構270に対向する面)には、複数の歯234が形成されている。
【0048】
また、摺動部材230の基端部には、操作ワイヤ226の基端部が固定されている。操作ワイヤ226は、摺動部材230のうちの操作ワイヤ226が固定された部分から、回転シャフト220の内腔223およびシース21の内腔22を通って、シース21の柔軟な先端部まで至り、該位置でシース21に固定されている。すなわち、操作ワイヤ226は、摺動部材230とシース21の先端部とを連結している。なお、操作ワイヤ226の設置本数は、1本でもよいし、複数本でもよい。
【0049】
第1の操作入力部240は、医師等の手技者(ユーザ)による操作を受け付ける部分であり、操作部23の基端部に設けられている。第1の操作入力部240は、接続部材243と、第1のダイアル248とを有する。
【0050】
接続部材243は、接続本体部241と、円環部材242とを含む。接続本体部241は、内腔244が形成された略円筒状の部材である。接続本体部241の先端部は、筐体210内に収容されており、接続本体部241の残りの部分は、筐体210の外に突出している。接続本体部241の先端部における内腔244の形状は、回転シャフト220の基端部222の外形と略同一であり、該内腔244内に回転シャフト220の基端部222が嵌合している。そのため、接続本体部241が中心軸AX廻りに回転すると、回転シャフト220も同期して中心軸AX廻りに回転する。また、接続本体部241は、回転シャフト220に対して、中心軸AX方向に摺動可能となっている。
【0051】
接続本体部241の内腔244は、外形の大きい拡径部245を有しており、この拡径部245に円環部材242が収容されている。円環部材242の外径は、拡径部245の内径より大きく、かつ、内腔244のうちの拡径部245以外の部分の内径より大きい。そのため、円環部材242は、接続本体部241に対して中心軸AX廻りに相対回転可能である一方、接続本体部241の中心軸AX方向の摺動に伴い摺動する。また、円環部材242には、中継カテーテル30の先端部が固定されている。
【0052】
第1のダイアル248は、手技者による回転操作により中心軸AX廻りに回転する部材である。第1のダイアル248は、接続本体部241における筐体210の外に突出した部分に対して、相対回転不能に、かつ、摺動不能に取り付けられている。そのため、第1のダイアル248が中心軸AX廻りに回転すると、接続本体部241も同期して中心軸AX廻りに回転し、第1のダイアル248が中心軸AX方向に摺動すると、接続本体部241も同期して中心軸AX方向に摺動する。
【0053】
第2の操作入力部260は、手技者による操作を受け付ける部分であり、操作部23の基端部に設けられている。第2の操作入力部260は、第2のダイアル268と、ストッパー269とを有する。
【0054】
第2のダイアル268は、手技者による回転操作により中心軸AXに直交する方向の軸(Z軸)廻りに回転する部材である。また、ストッパー269は、第2のダイアル268に対してスライドすることにより、第2のダイアル268の回転を許容する状態と、第2のダイアル268の回転を阻止する状態との間を切り替わる。
【0055】
伝達機構270は、手技者が第2の操作入力部260の第2のダイアル268を回転させる力を、摺動部材230を摺動させる力に変換して摺動部材230に伝える機構である。換言すると、伝達機構270は、第2のダイアル268のZ軸廻りの回転運動を、摺動部材230の中心軸AX方向の直線運動に変換する機構である。伝達機構270は、互いに噛み合う複数の(3つの)歯車271,272,273から構成されている。伝達機構270の第1の歯車271は、第2のダイアル268の回転に伴い回転する。また、第3の歯車273の複数の歯は、摺動部材230のラック部材231の複数の歯234と噛み合っている。そのため、第3の歯車273が回転すると、摺動部材230は、回転シャフト220に支持された状態で中心軸AX方向に摺動する。なお、本実施形態では、伝達機構270による減速比は、第2の操作入力部260の操作負荷を軽減できるように、例えば、1:2~1:4程度に設定されている。すなわち、摺動部材230の移動距離/第1の歯車271の歯の回転距離=1/2~1/4程度となるように設定されている。
【0056】
A-4.操作カテーテル20の動作:
図6から図9は、操作カテーテル20の動作を示す説明図である。図6に示す初期状態では、操作部23の第1の操作入力部240を構成する第1のダイアル248が、筐体210から基端側に離間している。この状態では、操作カテーテル20および中継カテーテル30の内腔内に収容された針カテーテル40の針部42は、シース21の先端付近、ただし、シース21から突出しない位置に配置されている。図6に示す初期状態における操作部23の第1の操作入力部240の位置は、特許請求の範囲における第1の位置の一例である。
【0057】
初期状態において、手技者が第1の操作入力部240を構成する第1のダイアル248を把持して先端側に押し込む操作を行うと、図7に示すように、シース21の先端から針カテーテル40の針部42が突出する。すなわち、上述したように、シース21は、操作部23の回転シャフト220(図3等参照)に固定されており、また、中心軸AX方向において、筐体210に対する回転シャフト220の位置は固定されているため、筐体210に対するシース21の位置も固定されている。一方、第1の操作入力部240は、回転シャフト220に対して中心軸AX方向に摺動可能であるため、筐体210に対しても中心軸AX方向に摺動可能である。また、第1の操作入力部240の円環部材242には、中継カテーテル30の先端部が固定されており、中継カテーテル30の基端部は、針カテーテル40のコネクタ45に固定されている。そのため、第1の操作入力部240が筐体210に対して先端側に相対移動すると、針カテーテル40も筐体210に対して同じ量だけ先端側に相対移動する。その結果、針カテーテル40がシース21に対して先端側に相対移動し、針カテーテル40の針部42がシース21の先端から突出する。図7に示す状態における操作部23の第1の操作入力部240の位置は、特許請求の範囲における第2の位置の一例である。
【0058】
また、手技者が第2の操作入力部260を構成する第2のダイアル268を把持して回転操作を行うと、図8に示すように、シース21の先端部が屈曲し、これに伴い、シース21に収容された針カテーテル40の先端部も屈曲する。すなわち、上述したように、第2の操作入力部260の第2のダイアル268が回転すると、第2のダイアル268に加えられた回転力は、伝達機構270(図3等参照)によって摺動部材230を摺動させる力に変換されて摺動部材230に伝達される。そのため、摺動部材230が基端側に移動するような回転方向に第2のダイアル268を回転すると、摺動部材230が基端側に移動し、摺動部材230とシース21の先端部とに張り渡された操作ワイヤ226の張力が増加し、その結果、シース21の柔軟な先端部が屈曲する。反対に、摺動部材230が先端側に移動するような回転方向に第2のダイアル268を回転すると、摺動部材230が先端側に移動し、操作ワイヤ226の張力が減少し、その結果、シース21の先端部が直線状に戻る。なお、第2の操作入力部260のストッパー269を第2のダイアル268に対してスライドすることにより、第2のダイアル268の回転を阻止する状態とすることができ、これにより、シース21の先端部の屈曲状態を保持することができる。また、シース21の屈曲動作は、シース21の先端から針部42が突出していない状態であっても、シース21の先端から針部42が突出している状態であっても、同様に実行可能である。操作部23の第2の操作入力部260、伝達機構270、摺動部材230および操作ワイヤ226は、特許請求の範囲における屈曲操作部の一例である。
【0059】
また、手技者が第1の操作入力部240を構成する第1のダイアル248を把持して回転操作を行うと、図9に示すように、シース21が中心軸AX廻りに回転し、これに伴い、シース21に収容された針カテーテル40も中心軸AX廻りに回転する。すなわち、上述したように、第1の操作入力部240の第1のダイアル248が中心軸AX廻りに回転すると、接続本体部241(図3等参照)も同期して中心軸AX廻りに回転し、これに伴い、回転シャフト220も同期して中心軸AX廻りに回転し、回転シャフト220に固定されたシース21も同期して中心軸AX廻りに回転する。なお、シース21の回転方法は、第1のダイアル248の回転方向に応じて、時計回りまたは反時計回りの一方となる。また、シース21の回転動作は、シース21の先端から針部42が突出していない状態であっても、シース21の先端から針部42が突出している状態であっても、同様に実行可能である。また、上述したように、回転シャフト220が中心軸AX廻りに回転すると、摺動部材230のコア部材232も同期して中心軸AX廻りに回転するが、摺動部材230のラック部材231は、コア部材232に対して中心軸AX廻りに相対回転可能であるため、回転シャフト220が回転しても、ラック部材231は、伝達機構270からの摺動部材230を摺動させる力を受ける状態を維持する。そのため、第1のダイアル248と第2のダイアル268とを同時に操作することにより、シース21の回転動作とシース21の屈曲動作とを並行して実行することができる。操作部23の第1の操作入力部240および回転シャフト220は、特許請求の範囲における回転操作部の一例である。
【0060】
A-5.プランジャ50の構成:
図10から図14は、プランジャ50の詳細構成を示す説明図である。図10から図14では、プランジャ50の一部の図示を省略しつつ、プランジャ50の内部構成を示している。図10には、プランジャ50の側面視(Z軸方向視)の構成が示されており、プランジャ50のうち、筐体510の一部(図面上、手前側の部分)の図示が省略されている。図11には、プランジャ50の側面視(Z軸方向視)の構成が示されており、プランジャ50のうち、図10で省略された部分に加えて、ラックケース530の一部(図面上、手前側の部分)の図示が省略されている。図12には、プランジャ50の側面視(Z軸方向視)の構成が示されており、プランジャ50のうち、図11で省略された部分に加えて、ワイヤ用ラック部材520の図示が省略されている(ただし、ワイヤ用ラック部材520の位置が破線で示されている)。図13には、プランジャ50の斜視構成が示されており、プランジャ50のうち、図10で省略された部分と同じ部分の図示が省略されている。図14には、プランジャ50の斜視構成が示されており、プランジャ50のうち、図11で省略された部分と同じ部分の図示が省略されている。
【0061】
プランジャ50は、ワイヤ502を針カテーテル40の薬液収容ルーメン40L(図2参照)内で前進させることにより、薬液収容ルーメン40Lに収容された薬液を針部42の先端から吐出させる装置である。プランジャ50は、操作カテーテル20とは別体の装置である。
【0062】
なお、ワイヤ502は、先端から基端にかけて略一定の外径を有する長尺状の部材である。ワイヤ502の横断面形状は、略円形である。ワイヤ502の外径は、針カテーテル40のカテーテルシャフト43に形成された薬液収容ルーメン40Lの内径φ1(図2参照)と略同一(クリアランス:100μm以下)である。ワイヤ502は、抗血栓性、可撓性、生体適合性を有することが好ましく、例えば、SUS304等のステンレス鋼、NiTi合金等の金属材料により形成することができる。ワイヤ502は、樹脂等により被覆されていてもよい。なお、図13および図14では、ワイヤ502の図示を省略している。
【0063】
プランジャ50は、筐体510と、ボビン554と、ワイヤ用ラック部材520と、ラックケース530と、ローラ対542と、ワイヤ用伝達機構540と、カウンタ部552と、カウンタ用伝達機構550とを備える。プランジャ50の各部は、例えば、樹脂材料や金属材料により形成することができる。
【0064】
筐体510は、プランジャ50を構成する各部材を内部に収容するケースである。図10から図14では、筐体510の一部の図示を省略している。筐体510の形状は、例えば、X軸方向に若干長尺であり、親指をワイヤ用ラック部材520の上面に置いた状態で把持しやすい形状とされている。筐体510の先端部の内部には、ワイヤ502を案内するために、筐体510の先端面511に開口する孔に連通したガイド溝512が形成されている。
【0065】
ボビン554は、筐体510内の基端部付近に、所定の方向(本実施形態ではZ軸方向)の回転軸廻りに回転可能に取り付けられた略円筒状の部材である。ボビン554の外周面には、ワイヤ502が巻き回しされており、これによりボビン554はワイヤ502の基端側の一部を収納している。なお、ワイヤ502は、ボビン554の位置から先端側に延伸し、ローラ対542およびガイド溝512を通って筐体510の先端面511に形成された孔から突出し、針カテーテル40のコネクタ45(図1参照)を介して、針カテーテル40の薬液収容ルーメン40L(図2参照)内に摺動可能に挿入されている。ボビン554は、特許請求の範囲におけるワイヤ収納部の一例である。
【0066】
ワイヤ用ラック部材520は、所定の方向(本実施形態ではX軸方向)に長尺な略直方体状の基部522と、基部522から上方に突出した凸部521とを有する。凸部521の上面は、筐体510の外部に露出しており、手技者による操作を受け付ける。基部522の下面には、X軸方向に並ぶ複数の歯523が形成されている。また、基部522の両側面には、側方(Z軸正方向およびZ軸負方向)に突出する羽部524が形成されている。本実施形態では、基部522の両側面に、それぞれX軸方向に並ぶ3つの羽部524が形成されている。各羽部524は、上下方向(Y軸方向)に略直交する略平板形状である。本実施形態では、基部522の各側面に形成された3つの羽部524の幅(X軸方向の大きさ)は、互いに異なっている。
【0067】
ラックケース530は、ワイヤ用ラック部材520を収容する箱体である。ラックケース530は、所定の方向(本実施形態ではX軸方向)に摺動可能に、筐体510内に収容されている。筐体510内においてラックケース530が摺動可能な範囲は、該摺動の方向の一方側においてラックケース530と筐体510とが当接する位置から、該摺動の方向の他方側においてラックケース530と筐体510とが当接する位置までの範囲として設定されている。そのため、ラックケース530(およびラックケース530に収容されたワイヤ用ラック部材520)は、筐体510に対して所定の方向に所定の距離の直進運動を行うことが可能になっている。また、ラックケース530の基端部と筐体510との間には、バネ等の第2の付勢部材518(図10参照)が配置されており、ラックケース530は、第2の付勢部材518によって該直進運動の始点に向けて(すなわち、本実施形態では基端側に)付勢されている。
【0068】
また、ラックケース530とワイヤ用ラック部材520との間には、バネ等の第1の付勢部材519(図14参照)が配置されており、ワイヤ用ラック部材520は、第1の付勢部材519によって、ラックケース530に対して上方に(すなわち、後述する従動ギア570から離間する方向に)付勢されている。ワイヤ用ラック部材520に対する操作がなされていない状態では、第1の付勢部材519の付勢力により、ワイヤ用ラック部材520の凸部521の略全体が、筐体510に設けられた開口から筐体510の外部に突出している。なお、本実施形態では、ワイヤ用ラック部材520の先端部および基端部のそれぞれの位置に、1つの第1の付勢部材519が配置されている。
【0069】
また、筐体510には、上下方向(Y軸方向)においてワイヤ用ラック部材520の羽部524と対向する位置に、X軸方向に延びる隔壁516(図12参照)が形成されている。隔壁516は、上下方向に略直交する略平板形状である。ワイヤ用ラック部材520が第1の付勢部材519に付勢されて上方に位置する状態では、ワイヤ用ラック部材520の羽部524は、隔壁516より上方に位置している。また、隔壁516には、複数の切り欠き517が形成されている。複数の切り欠き517の位置および大きさは、X軸方向におけるワイヤ用ラック部材520の位置が上述した直進運動の始点および終点にあるときに、ワイヤ用ラック部材520の各羽部524が隔壁516の各切り欠き517をすり抜けて上下方向に移動できるように、かつ、ワイヤ用ラック部材520の位置がそれ以外の位置にあるときに、ワイヤ用ラック部材520の各羽部524が隔壁516に干渉して上下方向に移動できないように、設定されている。隔壁516は、特許請求の範囲における移動規制部の一例である。なお、ラックケース530には、ワイヤ用ラック部材520の上下方向の移動を阻害しないように、ワイヤ用ラック部材520の各羽部524が通り抜けられる開口533が形成されている。また、ラックケース530の側面にはX軸方向に延びる溝535が形成されており、隔壁516は溝535内に収まっているため、隔壁516の存在によってラックケース530のX軸方向に沿った移動が制限されることはない。換言すると、ラックケース530は、隔壁516に沿って所定の方向(X軸方向)に摺動することができる。
【0070】
ローラ対542は、所定の方向(本実施形態ではZ軸方向)の回転軸廻りに回転する2つのローラから構成されており、筐体510におけるボビン554より先端側の位置において、ガイド溝512を挟むように配置されている。ローラ対542は、ボビン554の位置から延伸してガイド溝512に挿通されたワイヤ502を挟持している。ローラ対542は、ワイヤ502を挟持した状態で回転することにより、ワイヤ502を進退させる。
【0071】
ワイヤ用伝達機構540は、所定の方向(本実施形態ではZ軸方向)の回転軸廻りに回転する従動ギア570を有する。従動ギア570は、筐体510内において、ワイヤ用ラック部材520が下方に移動したときにワイヤ用ラック部材520の歯523に噛み合う位置に設置されている。従動ギア570とワイヤ用ラック部材520の歯523とが噛み合った状態において、ワイヤ用ラック部材520が上述した直進運動をすると、従動ギア570が回転する。また、ワイヤ用伝達機構540は、互いに噛み合った複数の(本実施形態では5個の)ギアを有しており、ワイヤ用ラック部材520の直進運動に伴う従動ギア570の回転力を、ローラ対542を回転させる力に変換しつつローラ対542に伝達する。そのため、ワイヤ用ラック部材520が従動ギア570に噛み合った状態で直進運動すると、ローラ対542が回転し、その結果、ローラ対542に挟持されたワイヤ502が進退する。なお、本実施形態では、ワイヤ用伝達機構540による減速比は、ワイヤ用ラック部材520の1回の直進運動の移動量に対して、ワイヤ502の移動量が数倍になるような値(例えば、8:1~16:1程度)に設定されている。すなわち、ワイヤ用ラック部材520の1回の直進運動の移動量/ワイヤ502の移動量/=1/8~1/16程度に設定されている。
【0072】
カウンタ部552は、略円板状の部材であり、筐体510内に、所定の方向(本実施形態ではZ軸方向)の回転軸廻りに回転可能に収容されている。カウンタ部552の側面には、1から9までの数字が記載されている。図1に示すように、筐体510におけるカウンタ部552に対応する位置には、窓514が形成されており、窓514を介してカウンタ部552の側面に形成された数字の1つが露出するようになっている。
【0073】
カウンタ用伝達機構550は、互いに噛み合った複数の(本実施形態では5個の)ギアを有しており、ワイヤ用ラック部材520の直進運動に伴う従動ギア570の回転力を、カウンタ部552を回転させる力に変換しつつカウンタ部552に伝達する。そのため、ワイヤ用ラック部材520が従動ギア570に噛み合った状態で直進運動すると、カウンタ部552が回転する。カウンタ用伝達機構550による減速比は、ワイヤ用ラック部材520の1回の直進運動に対して、筐体510の窓514から露出したカウンタ部552の数字が1つ増加するような値(例えば、1:6~1:14程度)に設定されている。そのため、カウンタ部552により、ワイヤ用ラック部材520の直進運動の実行回数を表示することができる。なお、本実施形態では、ワイヤ用伝達機構540とカウンタ用伝達機構550とで、1つの従動ギア570が共有されている。
【0074】
A-6.プランジャ50の動作:
図15は、プランジャ50の動作を示す説明図である。上述したように、ワイヤ用ラック部材520は、第1の付勢部材519によって、ラックケース530に対して上方に(すなわち、従動ギア570から離間する方向に)付勢されている。また、ワイヤ用ラック部材520を収容するラックケース530は、第2の付勢部材518によって、ラックケース530およびワイヤ用ラック部材520の直進運動の始点に向けて(すなわち、基端側に)付勢されている。そのため、手技者によるワイヤ用ラック部材520への操作がなされていない初期状態においては、ワイヤ用ラック部材520は、従動ギア570から上方に離間しており、かつ、直進運動の始点に位置している。この状態で、手技者がワイヤ用ラック部材520の凸部521の上面に乗せた親指を先端側に移動させることによってワイヤ用ラック部材520を先端側にスライド移動させても、ワイヤ用ラック部材520の歯523が従動ギア570と噛み合っていないために従動ギア570は回転せず、そのため、ローラ対542の回転によるワイヤ502の送り出しは実行されず、カウンタ部552の回転によるワイヤ用ラック部材520の直進運動の回数表示の更新も実行されない。
【0075】
上述したように、筐体510の隔壁516に形成された複数の切り欠き517の位置および大きさは、ワイヤ用ラック部材520の位置が直進運動の始点および終点にあるときに、ワイヤ用ラック部材520の各羽部524が隔壁516の各切り欠き517をすり抜けて上下方向に移動できるように設定されている。そのため、初期状態において、手技者がワイヤ用ラック部材520の凸部521の上面に親指を乗せてワイヤ用ラック部材520を下方に押し込むと、図15に示すように、ワイヤ用ラック部材520の各羽部524が隔壁516の各切り欠き517をすり抜け、ワイヤ用ラック部材520の歯523が従動ギア570に噛み合う位置までワイヤ用ラック部材520が下方に移動する。このようにワイヤ用ラック部材520が下方に押された状態を維持しつつ、手技者がワイヤ用ラック部材520の凸部521の上面に乗せた親指を先端側に移動させることによってワイヤ用ラック部材520を先端側にスライド移動させると、ワイヤ用ラック部材520の直進運動に伴い従動ギア570が回転する。従動ギア570が回転すると、該回転は、ワイヤ用伝達機構540によってローラ対542を回転させる力に変換されてローラ対542に伝達される。そのため、ローラ対542が回転し、ローラ対542に挟持されたワイヤ502が前方へ送り出される。ワイヤ502は、針カテーテル40の薬液収容ルーメン40L内に挿入されているため、ワイヤ502が前進すると、図15の下段に示すように、薬液収容ルーメン40Lに充填された薬液DSがワイヤ502により押し出され、前進したワイヤ502の体積分の薬液DSが針部42の先端から吐出される。なお、ワイヤ用ラック部材520の1回の直進運動に伴うワイヤ502の前進距離は、ワイヤ用伝達機構540の減速比により予め定まっているため、ワイヤ用ラック部材520の1回の直進運動に伴う薬液DSの突出量も予め定まっている。ワイヤ用ラック部材520、従動ギア570、ワイヤ用伝達機構540およびローラ対542は、特許請求の範囲におけるワイヤ操作部の一例である。
【0076】
なお、上述したように、筐体510の隔壁516に形成された複数の切り欠き517の位置および大きさは、ワイヤ用ラック部材520の位置が直進運動の始点および終点以外の位置にあるときに、ワイヤ用ラック部材520の各羽部524が隔壁516に干渉して上下方向に移動できないように、設定されている。そのため、ワイヤ用ラック部材520が直進運動の終点に至るまでは、ワイヤ用ラック部材520の歯523が従動ギア570と噛み合った状態が維持される。また、ワイヤ用ラック部材520が直進運動の終点に至り、手技者がワイヤ用ラック部材520に対する操作を止めると、第1の付勢部材519の付勢力によってワイヤ用ラック部材520が上方に移動し、ワイヤ用ラック部材520の歯523と従動ギア570との噛み合いが解除される。また、第2の付勢部材518の付勢力によって、ワイヤ用ラック部材520が直進運動の始点まで戻る。
【0077】
また、ワイヤ用ラック部材520が従動ギア570に噛み合った状態で、始点から終点までの直進運動を行うと、従動ギア570が回転し、該回転は、カウンタ用伝達機構550によってカウンタ部552を回転させる力に変換されてカウンタ部552に伝達される。そのため、カウンタ部552が回転し、ワイヤ用ラック部材520の直進運動の回数表示が1つ増加した値に更新される。
【0078】
A-7.薬液注入装置10の使用方法:
薬液注入装置10の使用方法は、例えば、以下の通りである。以下では、2人の手技者による薬液注入装置10の使用方法を説明する。まず、第1の手技者が、針カテーテル40が収容されたシース21を内視鏡に挿入し、シース21の先端を患者の体内の目的位置(薬液を投与しようとする位置)の付近まで移動させる。なお、この移動は、針カテーテル40の針部42がシース21の先端から突出せず、シース21内に収容された状態において行われる。その後、第2の手技者が、針カテーテル40のコネクタ45を介して薬液収容ルーメン40L内に薬液を供給する。
【0079】
次に、第1の手技者が、操作カテーテル20の操作部23を操作することにより、患者の体内の目的位置において針部42による穿刺を行う。より詳細には、第1の手技者は、第1の操作入力部240を構成する第1のダイアル248を先端側に押し込む操作を行うことにより、シース21の先端から針カテーテル40の針部42を突出させる(図7参照)。次に、第1の手技者は、第2の操作入力部260を構成する第2のダイアル268の回転操作を行うことにより、シース21の先端部およびシース21に収容された針カテーテル40の先端部を屈曲させたり(図8参照)、第1の操作入力部240を構成する第1のダイアル248の回転操作を行うことにより、シース21およびシース21に収容された針カテーテル40を回転させたりすることにより、針部42の位置および向きを所望の穿刺位置に対応する位置および向きに精度良く設定する。その後、第1の手技者は、操作部23の全体を先端側に押し込む操作を行うことにより、針部42による穿刺を行う。
【0080】
その後、第2の手技者は、プランジャ50のワイヤ用ラック部材520を操作して直進運動をさせることにより、針カテーテル40の薬液収容ルーメン40L内でワイヤ502を前進させ、薬液DSを針部42の先端から吐出させる(図15参照)。上述したように、ワイヤ用ラック部材520の1回の直進運動に伴う薬液DSの吐出量は予め定まっているため、第2の手技者は、現在の穿刺位置に投与すべき薬液DSの量が吐出されるまで、ワイヤ用ラック部材520を直進運動させる操作を繰り返し実行する。このとき、ワイヤ用ラック部材520を直進運動させるたびに、筐体510の窓514から露出するカウンタ部552の数字が1つずつ増加するため、第2の手技者は、ワイヤ用ラック部材520の直進運動の回数、すなわち、既に投与した薬液DSの量を正確に把握することができる。
【0081】
該穿刺位置への所定の量の薬液DSの投与が完了すると、第1の手技者は、操作部23の全体を基端側に引き戻す操作を行うことにより、穿刺された位置から針部42を引き抜く。その後、同様にして、第1の手技者が、針部42の位置および向きを、他の穿刺位置に合うように設定し、針部42を該位置に穿刺し、第2の手技者が薬液DSの投与を行う。
【0082】
このような操作を繰り返し、すべての穿刺位置への所定量の薬液DSの投与が完了すると、第1の手技者が、第1の操作入力部240を構成する第1のダイアル248を基端側に引き戻す操作を行うことにより、針カテーテル40の針部42をシース21内に収容する。この状態で、第1の手技者は、操作部23を基端側に引くことにより、シース21および針カテーテル40を患者の体内から引き抜く。
【0083】
A-8.第1実施形態の効果:
以上説明したように、本実施形態の薬液注入装置10は、操作カテーテル20を備える。操作カテーテル20は、シース21と、シース21の基端部に取り付けられ、シース21を操作するための操作部23とを有する。操作部23は、シース21をシース21の中心軸廻りに回転させる回転操作部(第1の操作入力部240および回転シャフト220)と、シース21の先端部を屈曲させる屈曲操作部(第2の操作入力部260、伝達機構270、摺動部材230および操作ワイヤ226)とを有する。
【0084】
このように、本実施形態の薬液注入装置10では、操作部23が、シース21を回転させる回転操作部と、シース21の先端部を屈曲させる屈曲操作部とを有するため、シース21の先端部の位置および向きを自由に変更することができる。従って、本実施形態の薬液注入装置10によれば、薬液注入装置10の操作性を向上させることができる。
【0085】
また、本実施形態の薬液注入装置10では、シース21を回転させる回転操作部は、第1の操作入力部240と、回転シャフト220とを有する。第1の操作入力部240は、手技者による操作に伴い中心軸AX廻りに回転することにより、シース21を中心軸AX周りに回転させるとともに、シース21に対して中心軸AX方向に相対変位可能である。回転シャフト220は、第1の操作入力部240に対して、第1の操作入力部240の回転に伴い回転するように取り付けられると共に、シース21の基端部に取り付けられている。そのため、本実施形態の薬液注入装置10によれば、手技者の直感的かつシンプルな操作によるシース21(および、シース21に収容された針カテーテル40のカテーテルシャフト43、以下同様)の回転を実現することができ、薬液注入装置10の操作性を向上させることができる。
【0086】
また、本実施形態の薬液注入装置10では、シース21の先端部を屈曲させる屈曲操作部は、回転シャフト220に対して中心軸AX方向に摺動可能に取り付けられた摺動部材230と、摺動部材230とシース21の先端部とを連結する操作ワイヤ226と、手技者による操作に伴い回転する第2の操作入力部260と、第2の操作入力部260に加えられた回転力を、摺動部材230を摺動させる力に変換して摺動部材230に伝える伝達機構270とを有する。そのため、本実施形態の薬液注入装置10によれば、手技者のシンプルな操作によるシース21の先端部の屈曲を実現することができ、薬液注入装置10の操作性を向上させることができる。
【0087】
また、本実施形態の薬液注入装置10では、摺動部材230は、回転シャフト220が中心軸AX廻りに回転しても、伝達機構270からの摺動部材230を摺動させる力を受ける状態を維持するように構成されている。そのため、本実施形態の薬液注入装置10によれば、シース21の回転角度がどのような角度であってもシース21の先端部の屈曲操作を行うことができ、薬液注入装置10の操作性を効果的に向上させることができる。
【0088】
また、本実施形態の薬液注入装置10では、摺動部材230は、回転シャフト220に対して、回転シャフト220の中心軸AX廻りの回転に伴い回転するように取り付けられたコア部材232と、コア部材232に対して、中心軸AX廻りに相対回転可能に、かつ、中心軸AX方向のコア部材232の摺動に伴い摺動するように取り付けられ、伝達機構270の複数の歯と噛み合う複数の歯234が形成されたラック部材231とを有する。そのため、本実施形態の薬液注入装置10によれば、ラック部材231における歯234を形成する箇所を少なくすることができ、加工の容易化・効率化を実現することができる。
【0089】
また、本実施形態の薬液注入装置10は、さらに、針カテーテル40を備える。針カテーテル40は、操作部23を介してシース21内に摺動可能に挿入され、薬液を収容する薬液収容ルーメン40Lが形成されたカテーテルシャフト43を有する。このように、本実施形態の薬液注入装置10では、操作部23の回転操作部によって、針カテーテル40のカテーテルシャフト43が収容されたシース21を回転させることができ、かつ、操作部23の屈曲操作部によって、針カテーテル40のカテーテルシャフト43が収容されたシース21の先端部を屈曲させることができるため、薬液を収容する薬液収容ルーメン40Lが形成された針カテーテル40のカテーテルシャフト43の先端部の位置および向きを自由に変更することができる。従って、本実施形態の薬液注入装置10によれば、薬液注入装置10の操作性を向上させることができ、ひいては、薬液注入位置の精度を向上させることができる。
【0090】
また、本実施形態の薬液注入装置10では、シース21を回転させる回転操作部は、第1の操作入力部240と、回転シャフト220とを有する。第1の操作入力部240は、手技者による操作に伴い中心軸AX廻りに回転することにより、シース21を中心軸AX周りに回転させるとともに、シース21に対して中心軸AX方向に相対変位可能である。回転シャフト220は、第1の操作入力部240に対して、第1の操作入力部240の回転に伴い回転するように取り付けられると共に、シース21の基端部に取り付けられている。第1の操作入力部240は、中継カテーテル30を介して針カテーテル40に固定されている。また、針カテーテル40は、第1の操作入力部240が第1の位置にあるときに、先端がシース21内に収容され、第1の操作入力部240が第1の位置より先端側の第2の位置にあるときに、先端がシース21の先端から突出するように構成されている。本実施形態の薬液注入装置10によれば、針カテーテル40のカテーテルシャフト43の先端がシース21内に収容された状態で、シース21およびカテーテルシャフト43を薬液注入位置まで移動させることができ、カテーテルシャフト43の先端によって患者の体内を傷つけることを防止することができる。また、本実施形態の薬液注入装置10によれば、薬液注入位置において、直感的かつシンプルな操作によって、カテーテルシャフト43の先端をシース21の先端から突出させることができ、薬液注入装置10の操作性を向上させることができる。
【0091】
また、本実施形態の薬液注入装置10では、針カテーテル40のカテーテルシャフト43の先端には、針部42が設けられている。操作部23の第1の操作入力部240は、回転シャフト220に対して、中心軸AX廻りの回転シャフト220の回転に伴い回転するように、かつ、中心軸AX方向に相対変位可能に取り付けられている。針カテーテル40は、第1の操作入力部240が第1の位置にあるときに、針部42がシース21内に収容され、第1の操作入力部240が第1の位置より先端側の第2の位置にあるときに、針部42がシース21の先端から突出するように構成されている。そのため、本実施形態の薬液注入装置10によれば、針カテーテル40の針部42がシース21内に収容された状態で、シース21およびシース21に収容された針カテーテル40を穿刺位置まで移動させることができ、針部42によって患者の体内を傷つけることを防止することができる。また、本実施形態の薬液注入装置10によれば、穿刺位置において、直感的かつシンプルな操作によって針部42をシース21の先端から突出させることができ、薬液注入装置10の操作性を向上させることができる。
【0092】
また、本実施形態の薬液注入装置10は、さらに、針カテーテル40のカテーテルシャフト43の薬液収容ルーメン40L内に摺動可能に挿入されたワイヤ502と、操作カテーテル20とは別体のプランジャ50とを備える。プランジャ50は、ワイヤ502を収納するボビン554と、ワイヤ502をボビン554から送り出す、または、ボビン554へ引き戻すことによって、薬液収容ルーメン40L内においてワイヤ502を進退させるワイヤ操作部(ワイヤ用ラック部材520、従動ギア570、ワイヤ用伝達機構540およびローラ対542)とを有する。そのため、本実施形態の薬液注入装置10によれば、操作カテーテル20の操作部23によるシース21(およびシース21に収容された針カテーテル40)の操作と、プランジャ50による薬液吐出操作とを、互いに異なる手技者により実行することができ、その結果、両操作の正確性を向上させることができる。
【0093】
また、本実施形態の薬液注入装置10では、ワイヤ操作部は、複数の歯523が形成され、所定の長さの直進運動を行うワイヤ用ラック部材520と、ワイヤ502を挟持し、回転することによってワイヤ502を進退させるローラ対542と、ワイヤ用ラック部材520の複数の歯523に噛み合う複数の歯が形成された従動ギア570を含む複数のギアを有し、ワイヤ用ラック部材520の直進運動をローラ対542の回転運動に変換しつつローラ対542に伝達するワイヤ用伝達機構540とを有する。そのため、本実施形態の薬液注入装置10によれば、ワイヤ用ラック部材520に所定の長さの直進運動を行わせるような操作を行うことにより、薬液収容ルーメン40L内においてワイヤ502を一定の量だけ前進させることができ、その結果、針カテーテル40の先端から一定の量の薬液を吐出させることができるため、薬液の吐出量を精度良くコントロールすることができる。
【0094】
また、本実施形態の薬液注入装置10では、プランジャ50は、さらに、ワイヤ用ラック部材520を従動ギア570から離間するように付勢する第1の付勢部材519を有する。そのため、本実施形態の薬液注入装置10によれば、意図せずにワイヤ用ラック部材520を直進運動させた場合には、従動ギア570が回転しないため、誤操作による薬液の吐出を防止することができる。
【0095】
また、本実施形態の薬液注入装置10では、プランジャ50は、さらに、ワイヤ用ラック部材520が直進運動の始点および終点にあるときに、ワイヤ用ラック部材520の、従動ギア570に近付く方向、および、従動ギア570から離間する方向への移動を許容し、ワイヤ用ラック部材520がそれ以外の位置にあるときに、ワイヤ用ラック部材520の、従動ギア570に近付く方向、または、従動ギア570から離間する方向への移動を規制する隔壁516を有する。そのため、本実施形態の薬液注入装置10によれば、ワイヤ用ラック部材520を従動ギア570に係合させて直進運動をさせている途中で、意図せずにワイヤ用ラック部材520が従動ギア570から離間し、ワイヤ用ラック部材520の1回の直進運動に伴う薬液の吐出量が所定量に満たなくなることを防止することができると共に、従動ギア570に係合していないワイヤ用ラック部材520が直進運動の始点および終点以外の位置にあるときに、意図せずにワイヤ用ラック部材520が従動ギア570に係合し、意図しない薬液の吐出が行われることを防止することができ、薬液の吐出量の精度を効果的に向上させることができる。
【0096】
また、本実施形態の薬液注入装置10では、プランジャ50は、さらに、ワイヤ用ラック部材520を、直進運動の始点に向けて付勢する第2の付勢部材518を有する。そのため、本実施形態の薬液注入装置10によれば、手技者がワイヤ用ラック部材520を直進運動の始点の位置に移動させる操作を行う必要がないため、薬液注入装置10の操作性を効果的に向上させることができる。
【0097】
また、本実施形態の薬液注入装置10では、プランジャ50は、さらに、回転することによって、ワイヤ用ラック部材520の直進運動の実施回数を表示するカウンタ部552と、ワイヤ用ラック部材520の複数の歯523に噛み合う複数の歯が形成された従動ギア570を含む複数のギアを有し、ワイヤ用ラック部材520の直進運動をカウンタ部552の回転運動に変換しつつカウンタ部552に伝達するカウンタ用伝達機構550とを有する。そのため、本実施形態の薬液注入装置10によれば、ワイヤ用ラック部材520の直進運動が実行されることに伴い、カウンタ部552が回転して直進運動の実施回数の表示が更新されるため、ワイヤ用ラック部材520の直進運動の回数、すなわち、既に投与した薬液の量を正確に把握することができる。
【0098】
また、本実施形態の薬液注入装置10では、ワイヤ用伝達機構540とカウンタ用伝達機構550とは、従動ギア570を共有する。そのため、本実施形態の薬液注入装置10によれば、プランジャ50の構成の簡素化を実現しつつ、ワイヤ用ラック部材520の直進運動に伴う薬液の吐出と回数表示の更新とを実現することができる。
【0099】
B.第2実施形態:
図16は、第2実施形態における操作カテーテル20aの構成を概略的に示す説明図である。以下では、第2実施形態の操作カテーテル20aの構成のうち、上述した第1実施形態の操作カテーテル20と同一の構成については、同一の符号を付すことによってその説明を適宜省略する。
【0100】
第2実施形態の操作カテーテル20aでは、操作部23aの摺動部材230aが、単一のラック部材から構成されている。すなわち、摺動部材230aは、外周面に伝達機構270の複数の歯と噛み合う複数の歯234aが形成された略円筒形のラック部材である。摺動部材230aは、回転シャフト220に対して、回転シャフト220の中心軸AX廻りの回転に伴い回転するように取り付けられている。このように、第2実施形態では、摺動部材230aが略円筒形のラック部材であるため、摺動部材230aは、回転シャフト220が中心軸AX廻りに回転しても、伝達機構270からの摺動部材230aを摺動させる力を受ける状態を維持する。
【0101】
このように、第2実施形態では、第1実施形態と同様に、操作カテーテル20aの操作部23aの摺動部材230aが、回転シャフト220が中心軸AX廻りに回転しても、伝達機構270からの摺動部材230aを摺動させる力を受ける状態を維持するように構成されているため、シース21の回転角度がどのような角度であってもシース21の先端部の屈曲操作を行うことができ、薬液注入装置10の操作性を効果的に向上させることができる。
【0102】
また、第2実施形態では、摺動部材230aは、外周面に伝達機構270の複数の歯と噛み合う複数の歯234aが形成された略円筒形のラック部材であり、回転シャフト220に対して、回転シャフト220の中心軸AX廻りの回転に伴い回転するように取り付けられている。そのため、第2実施形態によれば、操作部23aの部品点数を低減することができ、製造の容易化・効率化を実現することができる。
【0103】
C.変形例:
本明細書で開示される技術は、上述の実施形態に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の形態に変形することができ、例えば次のような変形も可能である。
【0104】
上記実施形態における薬液注入装置10の構成は、あくまで一例であり、種々変形可能である。例えば、上記実施形態では、薬液注入装置10が、操作カテーテル20と、中継カテーテル30と、針カテーテル40と、プランジャ50と、ワイヤ502とを備えているが、これらのうちの少なくとも1つは、省略または他の構成に変更可能である。より詳細には、例えば、中継カテーテル30を省略してもよいし、薬液の吐出操作を行うプランジャ50およびワイヤ502の代わりに、他の構成によって薬液吐出を実現するようにしてもよい。また、プランジャ50およびワイヤ502は、操作カテーテル20や中継カテーテル30と組み合わせて使われる必要はなく、針カテーテル40とプランジャ50とワイヤ502とによって薬液注入装置が構成されてもよい。
【0105】
上記実施形態において、操作カテーテル20の操作部23におけるシース21を回転させるための構成や、シース21の先端部を屈曲させるための構成、針カテーテル40の針部42をシース21の先端から突出させるための構成は、あくまで一例であり、他の構成を採用可能である。
【0106】
上記実施形態において、プランジャ50におけるワイヤ502を進退させるための構成や、ワイヤ用ラック部材520の直進運動の回数を表示するための構成は、あくまで一例であり、他の構成を採用可能である。また、プランジャ50において、第1の付勢部材519および/または第2の付勢部材518を省略してもよい。また、プランジャ50において、ワイヤ用ラック部材520の直進運動の回数を表示するための構成を省略してもよい。また、プランジャ50において、ワイヤ用伝達機構540とカウンタ用伝達機構550とが、従動ギア570を個別に有していてもよい。
【0107】
上記実施形態における薬液注入装置10の使用方法は、あくまで一例であり、他の方法により薬液注入装置10が使用されてもよい。
【0108】
上記実施形態では、操作カテーテル20と針カテーテル40とを備える薬液注入装置10について説明したが、本明細書に開示される技術は、そのような薬液注入装置10に限らず、カテーテル装置一般に適用可能である。例えば、本明細書に開示される技術は、操作カテーテル20を備える一方、針カテーテル40を備えないカテーテル装置として実現することができる。このようなカテーテル装置においても、操作カテーテル20が、シース21と、シース21の基端部に取り付けられ、シース21を操作するための操作部23とを有し、操作部23が、シース21をシース21の中心軸廻りに回転させる回転操作部と、シース21の先端部を屈曲させる屈曲操作部とを有する構成を採用すれば、回転操作部と屈曲操作部とによってシース21の先端部の位置および向きを自由に変更することができ、カテーテル装置の操作性を向上させることができる。
【符号の説明】
【0109】
10:薬液注入装置 20:操作カテーテル 21:シース 22:内腔 23:操作部 30:中継カテーテル 40:針カテーテル 40L:薬液収容ルーメン 41:シャフト本体部 42:針部 43:カテーテルシャフト 45:コネクタ 50:プランジャ 210:筐体 211:先端側ガイド部 212:基端側ガイド部 220:回転シャフト 221:先端部 222:基端部 223:内腔 226:操作ワイヤ 230:摺動部材 231:ラック部材 232:コア部材 234:歯 235:先端部 236:中間部 237:基端部 240:第1の操作入力部 241:接続本体部 242:円環部材 243:接続部材 244:内腔 245:拡径部 248:第1のダイアル 260:第2の操作入力部 268:第2のダイアル 269:ストッパー 270:伝達機構 271,272,273:歯車 502:ワイヤ 510:筐体 511:先端面 512:ガイド溝 514:窓 516:隔壁 517:切り欠き 518:第2の付勢部材 519:第1の付勢部材 520:ワイヤ用ラック部材 521:凸部 522:基部 523:歯 524:羽部 530:ラックケース 533:開口 535:溝 540:ワイヤ用伝達機構 542:ローラ対 550:カウンタ用伝達機構 552:カウンタ部 554:ボビン 570:従動ギア AX:中心軸 DS:薬液
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