(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022170812
(43)【公開日】2022-11-11
(54)【発明の名称】基礎点検口およびその設置方法
(51)【国際特許分類】
E02D 27/01 20060101AFI20221104BHJP
【FI】
E02D27/01 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021077031
(22)【出願日】2021-04-30
(71)【出願人】
【識別番号】390004145
【氏名又は名称】城東テクノ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001841
【氏名又は名称】弁理士法人ATEN
(72)【発明者】
【氏名】米田 寛
【テーマコード(参考)】
2D046
【Fターム(参考)】
2D046BA00
(57)【要約】
【課題】埋込タイプの基礎点検口において、養生テープを用いなくてもノロや離型剤による汚れを軽減できて設置後の見栄えを向上させる。
【解決手段】基礎点検口は、開口部12aを有する枠体11と、開口部に嵌合可能な蓋体とを含む。枠体11の後面12bには、開口部12aの周囲に沿って延在する発泡樹脂製の凸条部14が設けられている。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンクリートを打設して基礎を形成する際に当該基礎と一体となるように設置される基礎点検口であって、
開口部を有する枠体と、
前記開口部に嵌合可能な蓋体と、を備え、
前記枠体の表面及び裏面の少なくとも一方には、前記開口部の周囲に沿って延在する軟質樹脂製の凸条部が設けられていることを特徴とする基礎点検口。
【請求項2】
前記枠体は、発泡樹脂製であり、
前記凸条部は前記枠体と一体化されていることを特徴とする請求項1に記載の基礎点検口。
【請求項3】
前記凸条部は、断面視半円形状もしくは三角形状であることを特徴とする請求項1又は2に記載の基礎点検口。
【請求項4】
開口部を有する枠体と前記開口部に嵌合可能な蓋体とを備えた基礎点検口であって、前記枠体の表面及び裏面の少なくとも一方に、前記開口部の周囲に沿って延在する軟質樹脂製の凸条部を設けた前記基礎点検口を、型枠内において、前記凸条部を前記型枠の内面に押圧して配置する配置工程と、
前記型枠内にコンクリートを打設する打設工程と、を有することを特徴とする基礎点検口の設置方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建物の基礎点検口(すなわち、人が通ることが可能な人通口)、特に、コンクリートを打設して基礎を形成する際に当該基礎と一体となるように設置される基礎点検口及びその設置方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、床下、特に浴室下を点検するための人通口又は点検口を基礎に設けることが義務化されてきている。この種の基礎点検口としては、基礎点検口を配置した型枠内にコンクリートを打設して、基礎点検口を基礎と一体化して設置する埋込みタイプのものと、基礎に形成された切欠き部に基礎点検口を設置する後付けタイプのものとがある。
【0003】
本出願人は、先に、枠体と、断熱性を有し枠体に嵌合可能な蓋体とを含み、蓋体を枠体に押止するロック機構を有し、枠体に蓋体を押止した状態の前面を養生テープで覆ったことを特徴とする、特に埋込タイプの基礎点検口として有効なものを提案している(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献1に記載の基礎点検口においては、前面を養生テープで覆っているため、基礎の形成後に養生テープを剥がすことにより、型枠の離型剤やコンクリートのノロが付着して蓋体及び枠体が汚れるのを防止することができる。しかしながら、基礎点検口の前面を養生テープで覆っている分、設置後の見栄えの低下、養生テープを剥がす作業や剥がした養生テープを処分する作業の手間が生じる。
【0006】
そこで、本発明の目的は、埋込タイプの基礎点検口において、養生テープを用いなくてもノロや離型剤による汚れを軽減できて設置後の見栄えを向上させることが可能な基礎点検口を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の基礎点検口は、コンクリートを打設して基礎を形成する際に当該基礎と一体となるように設置される基礎点検口であって、開口部を有する枠体と、前記開口部に嵌合可能な蓋体と、を備え、前記枠体の表面及び裏面の少なくとも一方には、前記開口部の周囲に沿って延在する軟質樹脂製の凸条部が設けられている。
【0008】
これによると、コンクリートを打設するための型枠内に基礎点検口を設置したときに、凸条部が型枠の内面により押圧されて変形可能となる。このため、枠体と型枠の内面との間に、枠体の周囲から凸条部の内側へとコンクリートのノロが浸入する隙間が生じにくくなる。したがって、枠体の凸条部の内側に当該ノロが付着し汚れるのを軽減することが可能となる。また、型枠の内面に付着した離型剤が枠体の凸条部の内側に付着し汚れるのを軽減することも可能となる。このように、養生テープなどで基礎点検口を覆わなくても、基礎点検口の凸条部の内側に離型剤やコンクリートのノロが付着して汚れるのを軽減することが可能となる。この結果、養生テープを用いなくてもよい分、養生テープを剥がす作業の手間がなくなり、さらには剥がした養生テープを処分する必要のない、設置後の見栄えが向上した基礎点検口を得ることができる。また、コンクリートのノロが開口部内に浸入しにくくなるため、枠体に対して蓋体を取り付け、取り外ししにくくなるのを防ぐことが可能となる。
また、本発明において、凸条部は、枠体の表面及び/又は裏面の外周縁部に沿って設けられるのが好ましい。外周縁部に沿って凸条部を設けることで、型枠内に凸条部を効果的に圧し潰した状態で型枠の内面との間に隙間が発生するのを効果的に防止することができ、より綺麗な仕上がりとできる。
【0009】
本発明において、前記枠体は、発泡樹脂製であり、前記凸条部は前記枠体と一体化されていることが好ましい。これにより、凸条部が枠体から脱落しにくくなる。また、凸条部と枠体とを別工程で生産する必要がなくなり、製造コストを減少させることが可能となる。また、凸条部が発泡樹脂からなるため、型枠の内面で圧し潰しやすくなる。このため、基礎の側面と面一にするために、凸条部を取り除く必要がなくなる。
【0010】
また、本発明において、前記凸条部は、断面視半円形状もしくは三角形状であることが好ましい。つまり、型枠の内面に凸条部の先端が線状に当接して押圧されるようにするのが好ましい。これにより、凸条部を型枠の内面で容易に圧し潰しやすくできる。このため、枠体と型枠の内面との間に、枠体の周囲から凸条部の内側へとコンクリートのノロが浸入する隙間がより一層生じにくくなる。また、型枠を外したときに、凸条部が枠体の表面に効果的に吸収されてより綺麗な仕上がりとできる。
【0011】
本発明の基礎点検口の設置方法は、開口部を有する枠体と前記開口部に嵌合可能な蓋体とを備えた基礎点検口であって、前記枠体の表面及び裏面の少なくとも一方に、前記開口部の周囲に沿って延在する軟質樹脂製の凸条部を設けた前記基礎点検口を、型枠内において、前記凸条部を前記型枠の内面に押圧して配置する配置工程と、前記型枠内にコンクリートを打設する打設工程と、を有する。
【0012】
これによると、配置工程において、凸条部が型枠の内面により押圧されて変形する。このため、枠体と型枠の内面との間に、枠体の周囲から凸条部の内側へとコンクリートのノロが浸入する隙間が生じにくくなる。したがって、打設工程により、型枠内にコンクリートが打設されても、枠体の凸条部の内側に当該ノロが付着し汚れるのを軽減することが可能となる。また、型枠の内面に付着した離型剤が枠体の凸条部の内側に付着し汚れるのを軽減することも可能となる。このように、養生テープなどで基礎点検口を覆わなくても、基礎点検口の凸条部の内側に離型剤やコンクリートのノロが付着して汚れるのを軽減することが可能となる。この結果、養生テープを用いなくてもよい分、養生テープを剥がす作業の手間がなくなり、さらには剥がした養生テープを処分する必要のない、設置後の見栄えが向上した基礎点検口を得ることができる。また、コンクリートのノロが開口部内に浸入しにくくなるため、枠体に対して蓋体を取り付け、取り外ししにくくなるのを防ぐことが可能となる。
【発明の効果】
【0013】
本発明の基礎点検口によると、コンクリートを打設するための型枠内に基礎点検口を設置したときに、凸条部が型枠の内面により押圧されて変形可能となる。このため、枠体と型枠の内面との間に、枠体の周囲から凸条部の内側へとコンクリートのノロが浸入する隙間が生じにくくなる。したがって、枠体の凸条部の内側に当該ノロが付着し汚れるのを軽減することが可能となる。また、型枠の内面に付着した離型剤が枠体の凸条部の内側に付着し汚れるのを軽減することも可能となる。このように、養生テープなどで基礎点検口を覆わなくても、基礎点検口の凸条部の内側に離型剤やコンクリートのノロが付着して汚れるのを軽減することが可能となる。この結果、養生テープを用いなくてもよい分、養生テープを剥がす作業の手間がなくなり、さらには剥がした養生テープを処分する必要のない、設置後の見栄えが向上した基礎点検口を得ることができる。また、コンクリートのノロが開口部内に浸入しにくくなるため、枠体に対して蓋体を取り付け、取り外ししにくくなるのを防ぐことが可能となる。
本発明の基礎点検口の設置方法によると、配置工程において、凸条部が型枠の内面により押圧されて変形する。このため、枠体と型枠の内面との間に、枠体の周囲から凸条部の内側へとコンクリートのノロが浸入する隙間が生じにくくなる。したがって、打設工程により、型枠内にコンクリートが打設されても、枠体の凸条部の内側に当該ノロが付着し汚れるのを軽減することが可能となる。また、型枠の内面に付着した離型剤が枠体の凸条部の内側に付着し汚れるのを軽減することも可能となる。このように、養生テープなどで基礎点検口を覆わなくても、基礎点検口の凸条部の内側に離型剤やコンクリートのノロが付着して汚れるのを軽減することが可能となる。この結果、養生テープを用いなくてもよい分、養生テープを剥がす作業の手間がなくなり、さらには剥がした養生テープを処分する必要のない、設置後の見栄えが向上した基礎点検口を得ることができる。また、コンクリートのノロが開口部内に浸入しにくくなるため、枠体に対して蓋体を取り付け、取り外ししにくくなるのを防ぐことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の第1実施形態に係る基礎点検口を斜め前方から見たときの斜視図である。
【
図2】(a)は
図1に示す枠体を斜め前方から見たときの斜視図であり、(b)は枠体を斜め後方から見たときの斜視図である。
【
図3】(a)は
図1に示す蓋体を斜め前方から見たときの斜視図であり、(b)は蓋体を斜め後方から見たときの斜視図である。
【
図4】(a)は
図1に示す基礎点検口を型枠内に配置するときの説明図であり、(b)は型枠内に基礎点検口が設置された状態でコンクリートを打設するときの説明図である。
【
図5】
図1に示す基礎点検口と基礎が一体化された基礎構造を示す部分斜視図である。
【
図6】本発明の第2実施形態に係る基礎点検口を斜め前方から見たときの斜視図である。
【
図7】(a)は
図6に示す枠体を斜め前方から見たときの斜視図であり、(b)は枠体を斜め後方から見たときの斜視図である。
【
図8】(a)は
図6に示す基礎点検口を型枠内に配置するときの説明図であり、(b)は型枠内に基礎点検口が設置された状態でコンクリートを打設するときの説明図である。
【
図9】
図6に示す基礎点検口と基礎が一体化された基礎構造を示す部分斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の第1実施形態に係る基礎点検口1について、
図1~
図3を参照しつつ以下に説明する。本実施形態における基礎点検口1は、基礎を形成する際に基礎と一体となるように設置される埋め込みタイプの基礎点検口である。
【0016】
本実施形態における基礎点検口1は、
図1に示すように、枠体11と、蓋体21とを有する。なお、
図1には、基礎点検口1を正面から見たときの、前後方向A、左右方向B、及び、上下方向Cを示し、これら方向を他の図にも反映して、以下説明する。
【0017】
枠体11は、
図2(a)に示すように、後方に配置された枠部12と、前方に配置され蓋体21を支持する支持部13とを有する。枠部12は、四角筒形状を有し、前後方向Aに開口する開口部12aを画定している。
図2(b)に示すように、枠部12には、後面(裏面)12bから後方に突出し、開口部12aの周囲に沿って延在する2つの凸条部14が設けられている。これら凸条部14は、枠部12と一体的に形成されている。また、2つの凸条部14は、左右方向Bにおいて、開口部12aを挟む位置に配置されている。より詳細には、後面12bの左右方向Bの両端縁部に配置されている。また、凸条部14は、後面12bの上下方向Cの全長に亘って形成されている。本実施形態における凸条部14は、水平断面形状が半円形状の突出高さ7mmとなっている。本実施形態において、凸条部14の突出高さは、型枠内に設置したときに、枠体11の後面12bとほぼ一面となる程度に型枠の内面で押し潰され得る突出高さとするのが好ましく、例えば2~10mm程度とされるのが好ましい。
【0018】
支持部13は、枠部12と一体的に形成された支持部本体13aと、2つの被係止部材13bとを有する。枠体11を構成する枠部12及び支持部本体13aは一体成型からなる。また、枠部12及び支持部本体13aは、軟質樹脂製である。本実施形態においては、発泡樹脂製(例えば、EPS:ビーズ法ポリスチレンフォーム)であり、断熱性を有している。なお、枠部12及び支持部本体13aは、断熱性を有する他の軟質樹脂(例えば、ポリウレタンフォーム、ポリエチレンフォーム、フェノールフォーム等の断熱材として用いられる発泡樹脂類、及び、ブタジエンゴム等のゴム類を含む)から構成されていてもよい。また、凸条部14も枠部12と同様の材質(発泡樹脂製:軟質樹脂)からなる。
【0019】
支持部本体13aは、
図2(a)に示すように、枠部12の前面に一体的に形成されており、逆U字形状を有している。つまり、支持部本体13aは、枠部12の上部に形成された左右方向Bに延在する水平部13a1と、枠部12の左右両端部に形成された上下方向Cに延在する一対の垂直部13a2とを有する。各垂直部13a2には、被係止部材13bとで画定する2つの凹部13cが形成されている。凹部13cは、左右方向Bにおいて内側に向かって開口している。また、各垂直部13a2の2つの凹部13cの間には、被係止部材13bとで画定された2つの溝部13dが形成されている。溝部13dも、左右方向Bにおいて内側に向かって開口している。なお、支持部本体13aは、筒状に形成されていてもよい。
【0020】
被係止部材13bは、
図2に示すように、上下方向Cに延在する板状部13b1と、板状部13b1の左右方向Bの外側端と繋がった挟持部13b2とを有している。挟持部13b2は、垂直部13a2の上下方向Cの中央部を前後方向Aから挟持可能に構成されている。板状部13b1は、垂直部13a2とで、上述の2つの凹部13c及び2つの溝部13dを画定可能に、垂直部13a2の前方に配置されている。なお、本実施形態においては、被係止部材13bは合成樹脂から構成されているが、金属から構成されていてもよい。
【0021】
このような枠体11は、左右方向Bの中心を通る上下方向Cの中心線に対して線対称に形成されている。
【0022】
蓋体21は、
図3に示すように、蓋部22と、被係止部材13bと係止可能な合成樹脂からなる係止部材23とを有している。蓋部22は、前方から見て、左右方向Bに長尺な長方形平面形状を有する板状部材から構成されている。本実施形態における蓋部22も、枠部12及び支持部本体13aと同様な発泡樹脂製であり、断熱性を有している。なお、蓋部22は、断熱性を有する他の合成樹脂から構成されていてもよい。蓋部22の前面22aには、2つの凹部22a1,22a2が形成されている。凹部22a2は、蓋部22の左右方向Bの中央からやや左側よりに配置されており、上下方向Cに長尺な長穴形状となっている。
【0023】
凹部22a1は、
図3(a)に示すように、蓋部22の左側端部に配置されている。また、凹部22a1は、蓋部22の前面22aから左側面22cを経由して後面22bにかけて形成されており、係止部材23を取り付けるための部分である。
【0024】
蓋部22の右側面22dには、
図3(a)に示すように、右側に突出する2つの突起27が形成されている。これら突起27は、上下方向Cに互いに離隔して配置されている。2つの突起27は、蓋体21を枠体11の開口部12aに嵌合したときに、左右方向Bの一方の2つの凹部13cにちょうど挿入可能な大きさに形成されている。
【0025】
蓋部22の後面22bには、
図3(b)に示すように、凹部22b1が形成されている。これにより、蓋部22を軽量化可能となる。また、蓋部22の後方部分には、段差部30が周縁部全体に形成されている。この段差部30によって形成された垂直な段差面31は、蓋体21が枠体11の開口部12aに嵌合して取り付けられたときに、枠部12の前面において支持部13の内側にある環状面12cと当接する面である。つまり、蓋体21が枠体11に取り付けられることで、段差面31と環状面12cとが当接し、枠体11の開口部12が蓋体21によって封止される。
【0026】
係止部材23は、
図3に示すように、蓋部22の端部を挟持する挟持部41と、挟持部41に一体的に形成された操作部42とを有する。挟持部41は、略コの字形状を構成する板状部材からなる。操作部42は、前方から見て略半円形状の第1部分43と、挟持部41を上下方向Cに挟む位置に配置され第1部分43と挟持部41の後方部分とを接続する一対の第2部分44とを有している。第1部分43は、前後方向Aに貫通する長孔43aが形成された板状部材からなる。第2部分44は、第1部分43の左側端部から左方に延在してから後方に折れ曲がって段差部30の形状に沿って屈曲する板状部材からなる。また、一対の第2部分44には、
図3(b)に示すように、係止突起46が形成されている。係止突起46は、前方に向かうに連れて第2部分44から離れるように傾斜する傾斜面46aを有している。
【0027】
このような係止部材23は、
図3に示すように、挟持部41によって、蓋部22の左側端部を前後方向Aに挟持するようにして取り付けられる。操作部42は、前方部分がスリット45を介して挟持部41から離隔している。これにより、蓋部22に取り付けられた係止部材23の操作部42の第1部分43は、第2部分44の弾性変形によって左右方向Bに移動可能となる。このため、ユーザが第1部分43の長孔43a及び凹部22a2に指を入れて、第1部分43を凹部22a2に近づく方向に移動させると、第2部分44が弾性変形して第1部分43が凹部22a2に近付く。つまり、第1部分43が右方に移動する。このとき、第2部分44の前方部分も右方に移動するため、溝部13d内に挿入され被係止部材13bと係止する係止突起46が溝部13dから脱して、その係止が解除される。こうして、係止突起46と被係止部材13bとの係止が解除されているときに、蓋体21を枠体11から前方に取り外すことが可能となる。一方、枠体11の開口部12aに蓋体21を嵌合して取り付ける際は、2つの突起27を左右いずれか一方にある2つの凹部13cに挿入する。そして、蓋体21を開口部12a内に押し込むと、係止突起46の傾斜面46aと他方にある被係止部材13bとが係合して操作部42が左右方向Bに移動し、係止突起46が溝部13d内に挿入され被係止部材13と係止される。こうして、蓋体21が枠体11にロックされた状態で取り付けられる。このとき、蓋体21が枠体11の支持部13によって支持される。
【0028】
このような係止部材23が蓋体21に設けられていることで、蓋部22を開口部12aに嵌合させるだけで、蓋体21を枠体11に容易に係止、すなわちロックすることが可能となる。
【0029】
なお、本実施形態における枠体11は、左右方向Bの中心を通る上下方向Cに平行な中心線に対して線対称に形成されている。このため、蓋体21は、係止部材23が左右のどちらにあるように配置されても、枠体11に取り付けることができる。
【0030】
続いて、基礎点検口1の設置方法について、
図4及び
図5を参照しつつ以下に説明する。
【0031】
基礎点検口1を基礎に一体的に設置するには、まず、
図4(a)に示すように、基礎を形成するための一方の型枠81を設置する。なお、型枠81及び後述の型枠82の内面81a,82aには、離型剤が塗布されている。この後、所望位置(本実施形態においては、ユニットバスを用いた浴室の下方空間を画定する基礎の一部の位置)において、基礎点検口1の前面を当該型枠81の内面81aに当接させた状態で配置する。そして、基礎点検口1を一方の型枠81とで前後方向Aに挟むように、他方の型枠82を設置する。このとき、型枠82を型枠81に近づくように、両型枠81,82を図示しない挟持金具で挟持する。これにより、基礎点検口1が、型枠81,82内において、凸条部14が型枠82の内面82aに押圧して配置される(配置工程)。このため、
図4(b)に示すように、基礎点検口1の凸条部14が型枠82の内面82aにより押圧されて圧し潰された状態となる。このように凸条部14が内面82aにより圧し潰されることで、枠体11の周囲から凸条部14の内側へとコンクリート83のノロが浸入する隙間が生じにくくなる。なお、凸条部14が後面12bの下端部に形成されていないが、コンクリート83のノロが当該下端部側から開口部12aへと浸入することはほとんどない。
【0032】
次に、
図4(b)に示すように、型枠81,82内にコンクリート83を打設する(打設工程)。本実施形態においては、基礎点検口1の上面と基礎の上面とが面一となっているため、基礎点検口1の上面上にコンクリート83が打設されない。
【0033】
コンクリート83を打設後、所定時間経過すると、
図5に示すように、コンクリート83が硬化して基礎101が形成される。その後、型枠81,82を取り外す脱型作業が行われる。これにより、基礎点検口1の設置方法が終了し、基礎101に基礎点検口1が一体化された基礎構造100が構成される。
【0034】
以上に述べたように、本実施形態における基礎点検口1によると、コンクリート83を打設するための型枠81,82内に基礎点検口1を設置したときに、凸条部14が型枠82の内面82aにより押圧されて変形可能となる。このため、枠体11と型枠82の内面82aとの間に、枠体11の周囲から凸条部14の内側へとコンクリート83のノロが浸入する隙間が生じにくくなる。したがって、枠体11の凸条部14の内側に当該ノロが付着し汚れるのを軽減することが可能となる。また、型枠82の内面82aに付着した離型剤が枠体11の凸条部14の内側に付着し汚れるのを軽減することも可能となる。このように、養生テープなどで基礎点検口1を覆わなくても、基礎点検口1の凸条部14の内側に離型剤やコンクリート83のノロが付着して汚れるのを軽減することが可能となる。この結果、養生テープを用いなくてもよい分、養生テープを剥がす作業の手間がなくなり、さらには剥がした養生テープを処分する必要のない、設置後の見栄えが向上した基礎点検口1を得ることができる。また、コンクリート83のノロが開口部12a内に浸入しにくくなるため、枠体11に対して蓋体21を取り付け、取り外ししにくくなるのを防ぐことが可能となる。
【0035】
また、枠体11の枠部12が発泡樹脂製であり、凸条部14と枠部とが一体化されている。これにより、凸条部14が枠体11から脱落しにくくなる。また、凸条部14と枠体11(枠部12)とを別工程で生産する必要がなくなり、製造コストを減少させることが可能となる。また、凸条部14が発泡樹脂からなるため、型枠82の内面82aで圧し潰しやすくなる。このため、基礎101の側面(後面)と面一にするために、凸条部14を取り除く必要がなくなる。
【0036】
また、凸条部14は、断面視半円形状であるため、凸条部14を型枠82の内面82aで容易に圧し潰しやすくできる。したがって、枠体11と型枠82の内面82aとの間に、枠体11の周囲から凸条部14の内側へとコンクリート83のノロが浸入する隙間がより一層生じにくくなる。変形例として、凸条部14の断面形状(水平断面形状)が枠体11から離れるに連れて先細りとなる三角形状であってもよい。これにおいても、上述と同様の効果を得ることができる。
【0037】
また、基礎点検口1の設置方法によると、配置工程において、凸条部14が型枠82の内面82aにより押圧されて変形する。このため、枠体11と型枠82の内面82aとの間に、枠体11の周囲から凸条部14の内側へとコンクリート83のノロが浸入する隙間が生じにくくなる。したがって、打設工程により、型枠81,82内にコンクリートが打設されても、枠体11の凸条部14の内側に当該ノロが付着し汚れるのを軽減することが可能となる。また、型枠82の内面82aに付着した離型剤が枠体11の凸条部14の内側に付着し汚れるのを軽減することも可能となる。このように、養生テープなどで基礎点検口1を覆わなくても、基礎点検口1の凸条部14の内側に離型剤やコンクリート83のノロが付着して汚れるのを軽減することが可能となる。この結果、養生テープを用いなくてもよい分、養生テープを剥がす作業の手間がなくなり、さらには剥がした養生テープを処分する必要のない、設置後の見栄えが向上した基礎点検口1を得ることができる。また、コンクリート83のノロが開口部12a内に浸入しにくくなるため、枠体11に対して蓋体21を取り付け、取り外ししにくくなるのを防ぐことが可能となる。
【0038】
続いて、本発明の第2実施形態に係る基礎点検口201について、
図6及び
図7を参照しつつ以下に説明する。本実施形態における基礎点検口201は、基礎を形成する際に基礎と一体となるように設置される埋め込みタイプの基礎点検口である。
【0039】
本実施形態における基礎点検口201は、
図6に示すように、枠体211と、第1実施形態と同じ蓋体21とを有する。第2実施形態に係る基礎点検口201は、第1実施形態の枠体11と異なる枠体211を有しているだけで、これ以外は同様の構成を有する。このため、上述の第1実施形態と同様な構成については同じ符号で示し、説明を省略する。なお、
図6にも、基礎点検口201を正面から見たときの、前後方向A、左右方向B、及び、上下方向Cを示し、これら方向を他の図にも反映して、以下説明する。
【0040】
枠体211は、
図7(a)に示すように、枠部212と、蓋体21を支持する支持部213とを有する。枠部212は、四角筒形状を有し、前後方向Aに開口する開口部212aを画定している。
図7(b)に示すように、枠部212には、後面(裏面)212bから後方に突出し、開口部212aの周囲に沿って延在する凸条部214が設けられている。凸条部214は、枠部212と一体的に形成されている。また、凸条部214は、逆U字形状を有している。つまり、凸条部214は、枠部212の上端部に形成された左右方向Bに延在する水平部214aと、枠部12の左右両端部に形成された上下方向Cに延在する一対の垂直部214bとを有する。水平部214aは、後面212bの上端部において、左右方向Bの全長に亘って形成されている。一対の垂直部214bは、後面212bの左右両端部において、上下方向Cの全長に亘って形成されている。本実施形態における凸条部214も、断面形状が半円形状となっているが、枠体211から離れるに連れて先細りとなる三角形状であってもよい。
【0041】
支持部213は、枠部212と一体的に形成された支持部本体213aと、上述の第1実施形態と同様な2つの被係止部材13bとを有する。枠体211を構成する枠部212及び支持部本体213aは一体成型からなる。また、枠部212及び支持部本体213aは、軟質樹脂製である。本実施形態においては、第1実施形態と同様な発泡樹脂製であり、断熱性を有している。なお、凸条部214も同様の材質(発泡樹脂製:軟質樹脂)からなる。また、枠部212、支持部本体213a及び凸条部214も、第1実施形態と同様に他の軟質樹脂から構成されていてもよい。
【0042】
支持部本体213aは、
図7(a)に示すように、枠部212の前面に一体的に形成されており、四角筒形状を有している。つまり、支持部本体13aは、枠部212の上下両端部に形成された左右方向Bに延在する一対の水平部213a1,213a2と、枠部212の左右両端部に形成された上下方向Cに延在する一対の垂直部213a3とを有する。上方にある水平部213a1は、下方にある水平部213a2よりも上下方向Cの幅が太い。各垂直部213a3には、上述の第1実施形態の垂直部13a2と同様に、2つの凹部13cと2つの溝部13dが形成されている。また、支持部本体213aは、蓋体21を枠体211の開口部212aに嵌合させて取り付けたときに、段差面31と当接する環状面212eが枠部212の前面において支持部本体213aの内側に形成されるように、配置されている。
【0043】
このような枠体211も、左右方向Bの中心を通る上下方向Cの中心線に対して線対称に形成されている。
【0044】
また、枠体211の枠部212の後端部には、開口部12a1の後方を塞ぐように、打ち抜き板212cが肉薄部212dを介して一体的に形成されている。この打ち抜き板212cは、基礎形成後には、肉薄部212dにおいてユーザにより切り離す(打ち抜く)ことができる。打ち抜き板212cが形成されていることで、枠体211の形状が維持されるため、基礎形成時に流し込まれるコンクリートによって枠体211の特に後方部分にひずみが生じることを防止することができる。さらに、打ち抜き板212cは、開口部212a1の後方部分を塞いでいるため、基礎形成時のコンクリートが枠体211内に流れ込むのを防止することができる。また、打ち抜き板212cは、肉薄部212dを介して枠体211と繋がっているため、基礎完成後に容易に打ち抜くことができる。
【0045】
続いて、基礎点検口201の設置方法について、
図8及び
図9を参照しつつ以下に説明する。
【0046】
基礎点検口201を基礎に一体的に設置するには、まず、
図8(a)に示すように、基礎を形成するための一方の型枠281を設置する。なお、型枠281及び後述の型枠282の内面281a,282aには、離型剤が塗布されている。この後、所望位置(本実施形態においては、ユニットバスを用いた浴室の下方空間を画定する基礎の一部の位置)において、基礎点検口201の前面を当該型枠281の内面281aに当接させた状態で配置する。そして、基礎点検口201を一方の型枠281とで前後方向Aに挟むように、他方の型枠282を設置する。このとき、型枠282を型枠281に近づくように、両型枠281,282を図示しない挟持金具で挟持する。これにより、基礎点検口201が、型枠281,282内において、凸条部214が型枠282の内面282aに押圧して配置される(配置工程)。このため、
図8(b)に示すように、基礎点検口201の凸条部214が型枠282の内面282aにより押圧されて圧し潰された状態となる。このように凸条部214が内面282aにより圧し潰されることで、枠体211の周囲から凸条部214の内側へとコンクリート283のノロが浸入する隙間が生じにくくなる。なお、凸条部214が後面212bの下端部に形成されていないが、コンクリート283のノロが当該下端部側から開口部212aへと浸入することはほとんどない。
【0047】
次に、
図8(b)に示すように、型枠281,282内にコンクリート283を打設する(打設工程)。本実施形態においては、基礎点検口201が基礎内に埋まった状態とするため、基礎点検口201の上面が基礎の上面よりも低い位置となるため、基礎点検口1の上面上にもコンクリート283が打設される。
【0048】
コンクリート283を打設後、所定時間経過すると、
図9に示すように、コンクリート283が硬化して基礎202が形成される。その後、型枠281,282を取り外す脱型作業が行われる。これにより、基礎点検口201の設置方法が終了し、基礎202に基礎点検口201が一体化された基礎構造200が構成される。
【0049】
以上に述べたように、本実施形態における基礎点検口201及びその設置方法によると、第1実施形態と同様に、凸条部214が型枠282の内面282aにより押圧されて変形可能となる。このため、枠体211と型枠282の内面282aとの間に、枠体211の周囲から凸条部214の内側へとコンクリート283のノロが浸入する隙間が生じにくくなる。したがって、打設工程により、型枠281,282内にコンクリート283が打設されても、枠体211の凸条部214の内側に当該ノロが付着し汚れるのを軽減することが可能となる。また、型枠282の内面282aに付着した離型剤が枠体211の凸条部214の内側に付着し汚れるのを軽減することも可能となる。このように、養生テープなどで基礎点検口201を覆わなくても、基礎点検口201の凸条部214の内側に離型剤やコンクリート283のノロが付着して汚れるのを軽減することが可能となる。この結果、養生テープを用いなくてもよい分、養生テープを剥がす作業の手間がなくなり、さらには剥がした養生テープを処分する必要のない、設置後の見栄えが向上した基礎点検口201を得ることができる。また、コンクリート283のノロが開口部212a内に浸入しにくくなるため、枠体211に対して蓋体21を取り付け、取り外ししにくくなるのを防ぐことが可能となる。なお、第1実施形態と同様な構成においては、同じ効果を得ることができる。
【0050】
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は上述の実施形態に限られるものではなく、特許請求の範囲に記載した限りにおいて様々な変更が可能なものである。例えば、上述の各実施形態における凸条部14,214は、枠体11,211の後面(裏面)12b,212bにだけ形成されていたが、枠体11,211の前面(表面)において、開口部12a,212aの周囲に沿って延在する凸条部が形成されていてもよい。なお、凸条部は、枠体の前面及び後面の少なくとも一方に形成されておればよい。こうすることで、基礎点検口1,201の凸条部14,214の内側に離型剤やコンクリート83,283のノロが付着して汚れるのを軽減することが可能となり、上述と同様の効果を得ることができる。
【0051】
また、第1実施形態における凸条部14は、枠体11の後面12bに開口部12aを挟んで左右に2つの形成されていたが、1又は3以上形成されていてもよい。また、後面12bには、その上端部及び下端部の少なくとも一方に、左右方向Bに沿って延在する凸条部が形成されていてもよい。また、第2実施形態における凸条部214が、水平部214a及び一対の垂直部214bのいずれが1つ又は2つだけを有していてもよい。また、凸条部214が、枠部212の下端部に形成された左右方向Bに延在する水平部をさらに有していてもよい。
【0052】
各実施形態における凸条部14,214は、枠体11,211と別体から形成されていてもよい。つまり、枠体11,211とは別に凸条部14,214を生産し、当該凸条部14,214を枠体11,211に設ければよい。これにおいても、上述と同様の効果を得ることができる。
【0053】
また、例えば、枠体11及び蓋体21を発泡性樹脂で形成し、蓋体21を枠体11の開口部12aに嵌合させて保持するようにすれば、被係止部材13b及び係止部材23を設けなくてもよい。
【符号の説明】
【0054】
1,201 基礎点検口
11,211 枠体
12a,212a 開口部
12b,212b 後面(裏面)
14,214 凸条部
21 蓋体
81,82,281,282 型枠
81a,82a,281a,282a 内面
83,283 コンクリート
101 基礎