(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022170821
(43)【公開日】2022-11-11
(54)【発明の名称】燃料需給マッチングシステム
(51)【国際特許分類】
G06Q 30/06 20120101AFI20221104BHJP
G06Q 50/30 20120101ALI20221104BHJP
【FI】
G06Q30/06 312
G06Q50/30
【審査請求】有
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021077045
(22)【出願日】2021-04-30
(71)【出願人】
【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001081
【氏名又は名称】弁理士法人クシブチ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】安田 大志
(72)【発明者】
【氏名】青柳 真太郎
【テーマコード(参考)】
5L049
【Fターム(参考)】
5L049BB53
5L049CC42
(57)【要約】 (修正有)
【課題】燃料を消費する稼働資産により事業を行う事業者と、燃料の供給を事業とする燃料供給者と、の間のマッチングを効果的に行う燃料需給マッチングシステムを提供する。
【解決手段】燃料需給マッチングシステムにおいて、マッチングサーバ106は、事業の種類又は稼働資産に関する情報及び稼働資産の給油拠点の位置に関する情報を含む事業者情報506と、供給者が供給する燃料の種類についての情報及び燃料の供給拠点の位置に関する情報を含む供給者情報508を記憶している記憶装置502と、記憶装置502が記憶する事業者情報506と供給者情報508に基づき、事業者毎に定められた、稼働資産と燃料の種類との適合性に関する第1条件と、給油拠点と供給拠点との地理的関係についての第2条件とから、事業者が燃料供給を受けるのに適した供給者を抽出するマッチング部512とを備える。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料を消費して稼働する稼働資産を用いて事業を行う事業者に関する事業者情報と、前記燃料の供給を事業とする供給者に関する供給者情報と、を記憶する記憶装置と、
前記事業者情報および前記供給者情報に基づき、所与のマッチング条件により、前記事業者が前記燃料の供給を受けるのに適した前記供給者を抽出して出力するマッチング部と、
を備える燃料需給マッチングシステムであって、
前記事業者情報は、前記事業者の事業の種類または当該事業に用いる前記稼働資産に関する情報と、前記稼働資産の給油拠点の位置に関する情報と、を含み、
前記供給者情報は、前記供給者が供給する前記燃料の種類についての情報と、前記燃料の供給拠点の位置に関する情報と、を含み、
前記マッチング条件は、前記事業者ごとに定められた、前記稼働資産と前記燃料の種類との適合性に関する第1条件と、前記給油拠点と前記供給拠点との地理的関係についての第2条件と、を含む、
燃料需給マッチングシステム。
【請求項2】
前記マッチング部は、
前記事業者ごとに、前記供給者のそれぞれについて、前記事業者情報に含まれる前記稼働資産の種類または前記事業の種類と、前記供給者情報に含まれる前記燃料の種類とに基づいて前記第1条件が合致するか否かを判断すると共に、前記事業者情報に含まれる前記給油拠点と、前記供給者情報に含まれる前記供給拠点とに基づいて前記第2条件が合致するか否かを判断し、
前記事業者に対し前記第1条件及び前記第2条件の両方が合致した前記供給者を、当該事業者が前記燃料の供給を受けるのに適した前記供給者であると判断する、
請求項1に記載の燃料需給マッチングシステム。
【請求項3】
前記第1条件は、前記燃料の種類ごとの、燃料消費量あたりの前記稼働資産のスループットについての条件を含む、
請求項1または2に記載の燃料需給マッチングシステム。
【請求項4】
前記供給者が供給する前記燃料の種類は、非化石燃料、又は非化石燃料と化石燃料との混合燃料を含み、
前記非化石燃料又は前記混合燃料を使用する前記事業者の評価を行う評価部を備え、
前記評価部は、前記事業者について、消費した前記非化石燃料の量に基づき、化石燃料のみを用いた場合と比較した環境負荷の低減の程度を定量化して出力する、
請求項1ないし3のいずれか一項に記載の燃料需給マッチングシステム。
【請求項5】
前記評価部の出力を前記事業者に提供する情報提供部を備え、
前記情報提供部は、前記環境負荷の低減の程度についての出力を前記事業者に提供したときは、当該出力の提供についての対価を、前記環境負荷の低減の程度についての前記出力の提供の回数、または前記評価部が当該事業者に関して出力した前記環境負荷の低減の程度に応じて決定する、
請求項4に記載の燃料需給マッチングシステム。
【請求項6】
前記供給者が供給する前記燃料の種類は、非化石燃料、又は非化石燃料と化石燃料との混合燃料を含み、
前記非化石燃料又は前記混合燃料を使用する前記事業者の評価を行う評価部を備え、
前記評価部は、前記非化石燃料及び又は前記混合燃料を使用した事業者について、化石燃料のみを用いた場合と比較した前記稼働資産の整備コストの低減の程度を定量化して出力する、
請求項1ないし5のいずれか一項に記載の燃料需給マッチングシステム。
【請求項7】
前記評価部の出力を前記事業者に提供する情報提供部を備え、
前記情報提供部は、前記整備コストの低減の程度についての出力を前記事業者に提供したときは、当該出力の提供についての対価を、前記整備コストの低減の程度についての前記出力の提供の回数、または前記評価部が当該事業者に関して出力した前記整備コストの低減の程度に応じて決定する、
請求項6に記載の燃料需給マッチングシステム。
【請求項8】
前記マッチング部を備えるマッチングサーバと、
前記マッチングサーバに、前記供給者が供給する燃料の種類に関する情報を提供する供給者サーバと、
前記マッチングサーバに、前記事業者の前記稼働資産の型式に関する情報を提供する事業者サーバと、
前記マッチングサーバに、前記稼働資産の型式に適合する燃料の種類に関する情報を提供する設備情報サーバと、
を含む、
請求項1ないし7のいずれか一項に記載の燃料需給マッチングシステム。
【請求項9】
コンピュータにより実行される燃料需給マッチング方法であって、
燃料を消費して稼働する稼働資産を用いて事業を行う事業者に関する事業者情報を記憶装置に記憶するステップと、
前記燃料の供給を事業とする供給者に関する供給者情報を記憶装置に記憶するステップと、
前記事業者情報および前記供給者情報に基づき、所与のマッチング条件により、前記事業者が前記燃料の供給を受けるのに適した前記供給者を抽出して出力するステップと、
を有し、
前記事業者情報は、前記事業者の事業の種類または当該事業に用いる前記稼働資産に関する情報と、前記稼働資産の給油拠点の位置に関する情報と、を含み、
前記供給者情報は、前記供給者が供給する前記燃料の種類についての情報と、前記燃料の供給拠点の位置に関する情報と、を含み、
前記マッチング条件は、前記事業者ごとに定められた、前記稼働資産と前記燃料の種類との適合性に関する第1条件と、前記給油拠点と前記供給拠点との地理的関係についての第2条件と、を含む、
燃料需給マッチング方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料を消費する事業者と燃料供給者との間のマッチングを行う燃料需給マッチングシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、需要設備における燃料の在庫量と需要予測と在庫予測、および燃料配送車両の車種と台数に応じた配送予定量に基づいて、燃料配送費用の削減に必要な情報を出力する配送計画システムが記載されている。
【0003】
また、特許文献2には、顧客が所有する給油が必要な重機の場所および給油可能量に関する情報と、燃料配送車の現在位置および輸送可能量の情報などに基づいて、重機のある場所へ燃料配送車が到着する予定時刻等を顧客へ通知する燃料配送管理システムが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2015-228073号公報
【特許文献2】特開2019-102080号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
地球温暖化につながる温室効果ガスの排出をゼロにする脱炭素社会の実現に向けて、近年、車両等の乗り物用燃料として、石油由来の化石燃料に比べてCO2排出量の少ない非化石燃料が注目されている。非化石燃料とは、例えば、トウモロコシ、サトウキビ、キャッサバなどの生物体から生成されるバイオマスエタノールを用いたバイオ燃料(バイオマス燃料)や、二酸化炭素と水素の合成液体燃料(いわゆるe-fuel)などの、石油由来の化石燃料を用いない燃料をいう。例えば、航空機の分野では、航空バイオ燃料(Aviation biofuel)またはSAF(Sustainable Aviation Fuel)と呼ばれる持続可能な航空燃料(または再生可能代替航空燃料)の普及への取り組みが継続的に行われている。
【0006】
このような非化石燃料は、一般に、化石燃料と混合した混合燃料の形で使用されており、化石燃料との混合比(あるいは、非化石燃料の含有比率)の異なる様々な混合燃料が存在し得る。その結果、混合燃料のCO2排出量や燃焼効率(又は、単位消費量当たりに得られるエネルギー)は、その種類に応じて異なるものとなり得る。
【0007】
このため、例えば、航空機の分野においては、航空機の機種に応じて使用可能な混合燃料が特定の種類に限定されたり、航空機を所有する航空会社によっては、より炭素排出量の少ない混合燃料を選択して使用することともなり得る。その一方で、混合燃料に様々な種類があることに起因して、一つの燃料供給者が多くの種類の混合燃料を供給することには限界があり、燃料供給者ごとに、取扱可能な混合燃料の種類は限定され得る。このため、航空会社にとっては、必要な条件に合致する混合燃料を供給し得る燃料供給者を航空機の給油サイトの近くで探すことが困難となり、このことが、非化石燃料導入の障害となり得る。
【0008】
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであり、燃料を消費する航空機等の稼働資産により事業を行う事業者と、燃料の供給を事業とする燃料供給者と、の間のマッチングを効果的に行うことである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一の態様は、燃料を消費して稼働する稼働資産を用いて事業を行う事業者に関する事業者情報と、前記燃料の供給を事業とする供給者に関する供給者情報と、を記憶する記憶装置と、前記事業者情報および前記供給者情報に基づき、所与のマッチング条件により、前記事業者が前記燃料の供給を受けるのに適した前記供給者を抽出して出力するマッチング部と、を備える燃料需給マッチングシステムであって、前記事業者情報は、前記事業者の事業の種類または当該事業に用いる前記稼働資産に関する情報と、前記稼働資産の給油拠点の位置に関する情報と、を含み、前記供給者情報は、前記供給者が供給する前記燃料の種類についての情報と、前記燃料の供給拠点の位置に関する情報と、を含み、前記マッチング条件は、前記事業者ごとに定められた、前記稼働資産と前記燃料の種類との適合性に関する第1条件と、前記給油拠点と前記供給拠点との地理的関係についての第2条件と、を含む、燃料需給マッチングシステムである。
本発明の他の態様は、コンピュータにより実行される燃料需給マッチング方法であって、燃料を消費して稼働する稼働資産を用いて事業を行う事業者に関する事業者情報を記憶装置に記憶するステップと、前記燃料の供給を事業とする供給者に関する供給者情報を記憶装置に記憶するステップと、前記事業者情報および前記供給者情報に基づき、所与のマッチング条件により、前記事業者が前記燃料の供給を受けるのに適した前記供給者を抽出して出力するステップと、を有し、前記事業者情報は、前記事業者の事業の種類または当該事業に用いる前記稼働資産に関する情報と、前記稼働資産の給油拠点の位置に関する情報と、を含み、前記供給者情報は、前記供給者が供給する前記燃料の種類についての情報と、前記燃料の供給拠点の位置に関する情報と、を含み、前記マッチング条件は、前記事業者ごとに定められた、前記稼働資産と前記燃料の種類との適合性に関する第1条件と、前記給油拠点と前記供給拠点との地理的関係についての第2条件と、を含む、燃料需給マッチング方法である。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、燃料を消費する稼働資産により事業を行う事業者と、燃料の供給を事業とする燃料供給者と、の間のマッチングを効果的に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の一実施形態に係る燃料需給マッチングシステムの構成を示す図である。
【
図2】
図1に示す燃料需給マッチングシステムを構成する事業者サーバの構成の一例を示す図である。
【
図3】
図1に示す燃料需給マッチングシステムを構成する供給者サーバの構成の一例を示す図である。
【
図4】
図1に示す燃料需給マッチングシステムを構成する設備情報サーバの構成の一例を示す図である。
【
図5】
図1に示す燃料需給マッチングシステムを構成するマッチングサーバの構成の一例を示す図である。
【
図6】マッチングサーバが記憶する事業者情報の一例を示す図である。
【
図7】
図6の事業者情報に含まれる稼働履歴としての飛行履歴の一例を示す図である。
【
図8】
図6の事業者情報に含まれる整備履歴の一例を示す図である。
【
図9】マッチングサーバが記憶する供給者情報の一例を示す図である。
【
図10】マッチングサーバの評価部が出力する環境負荷の低減の程度の、携帯端末上での表示画面の一例を示す図である。
【
図11】本発明の一実施形態に係る燃料需給マッチング方法の手順の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照して本発明の実施形態について説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係る燃料需給マッチングシステムの構成を示す図である。この燃料需給マッチングシステム100は、燃料を消費して稼働する稼働資産としての機械設備を用いて事業を行う事業者と、燃料の供給を事業とする供給者と、のマッチングを行う。本実施形態では、事業者は、稼働資産としての航空機を用いて旅客や貨物を輸送する航空会社である。また、本実施形態では、供給者が供給する燃料の種類は、バイオ燃料または合成液体燃料を含む非化石燃料、及び又は、非化石燃料と石油由来の化石燃料との混合燃料の種類を含む。なお、以下においては、上記非化石燃料と化石燃料との混合燃料を、単に「混合燃料」ともいうものとする。
【0013】
燃料需給マッチングシステム100は、事業者が運用又は利用する事業者サーバ102と、供給者が運用または利用する供給者サーバ104と、燃料の需給に関する事業者と供給者とのマッチングを行うマッチングサーバ106と、を備える。燃料需給マッチングシステム100には、さらに、設備情報サーバ108を含めても良い。
【0014】
マッチングサーバ106の運営者は、例えば、複数の事業者および供給者との契約に基づき、事業者および供給者から対価を得ることを条件に、燃料需給マッチングシステム100を構築して、マッチングサーバ106により上記マッチングを実行する。
【0015】
事業者サーバ102は、その事業者が事業に用いる稼働資産に関する情報を、マッチングサーバ106に提供する。稼働資産に関する上記情報には、例えば、稼働資産ごとの、機種、型式、給油拠点(例えば駐機場)の位置、稼働履歴、および整備履歴等の情報が含まれ得る。
【0016】
また、供給者サーバ104は、その供給者の燃料供給に関する情報を、マッチングサーバ106に提供する。燃料供給に関する上記情報には、例えば、その供給者が供給する燃料の種類、非化石燃料の比率、販売単価、供給拠点の位置、および輸送単価等の情報を含む。
【0017】
設備情報サーバ108は、上記稼働資産の仕様および性能に関する情報を、マッチングサーバ106に提供する。仕様および性能に関する上記情報には、上記稼働資産である機械設備の適合燃料、燃料消費量当たりのスループット、整備作業の推奨頻度、及び又は保守部品価格、等の情報が含まれ得る。設備情報サーバ108は、例えば、稼働資産である機械設備のメーカが運用または利用するサーバであるものとすることができる。
【0018】
図1に示す例では、燃料需給マッチングシステム100は、一つのマッチングサーバ106と、2つの事業者CA及びCBのそれぞれが運用または利用する2つの事業者サーバ102と、2つの供給者SA及びSBのそれぞれが運用または利用する2つの供給者サーバ104と、一つの設備情報サーバ108と、を含む。ただし、これは一例であって、燃料需給マッチングシステム100は、一つ以上の任意の数の事業者及び又は供給者がそれぞれ運用または利用する任意の数の事業者サーバ102及び又は供給者サーバ104、並びに任意の数の設備情報サーバ108を含み得る。この場合において、複数の設備情報サーバ108のそれぞれは、異なる機械設備メーカが運用または利用するサーバであり得る。
【0019】
事業者サーバ102、供給者サーバ104、マッチングサーバ106、および設備情報サーバ108は、通信ネットワーク110を介して互いに通信可能に接続されている。通信ネットワーク110は、インターネット等のオープンネットワーク、プライベートネットワーク、及び又はクローズドネットワークであるものとすることができる。通信ネットワーク110には、燃料需給マッチングシステム100の利用者のスマートフォン等の携帯端末600が通信可能に接続されていてもよい。上記利用者は、例えば、事業者サーバ102を運営する事業者の経営者、投資家、株主等であって燃料需給マッチングシステム100のマッチングサーバ106等に関する所定のアクセス権を有する利用者であり得る。
【0020】
図2は、事業者サーバ102の構成の一例を示す図である。事業者サーバ102は、処理装置200と記憶装置202と、を備える。記憶装置202は、例えば、揮発性及び又は不揮発性の半導体メモリ、及び又はハードディスク装置等により構成される。また、記憶装置202は、資産情報206と、稼働情報208と、保守情報210と、を記憶する。
【0021】
資産情報206は、その事業者が保有する稼働資産に関する情報であり、例えば、稼働資産のそれぞれの種類、型式、給油拠点の位置等の情報を含む。ここで、給油拠点とは、その稼働資産に給油を行うための場所をいう。本実施形態では、稼働資産は、航空機であり、資産情報には、対応する事業者が保有する航空機の機体ID、機体型式、および給油拠点の位置の情報が含まれ得る。
【0022】
また、稼働情報208は、その事業者の稼働資産の稼働履歴についての情報であり、稼働資産毎の、給油日、給油した燃料の種類、給油した燃料の消費量、当該消費量における稼働資産のスループット等、の情報を含む。ここで、スループットとは、本明細書では、所定量の燃料を消費することによって稼働資産が生み出した成果の量をいう。例えば、稼働資産が製品生産のための機械である場合は、その稼働資産のスループットは、その生産機械が生み出した製品の量、あるいは生み出した製品量に相当する利益の額であり得る。
【0023】
あるいは、例えば、稼働資産が貨物の輸送機械である場合は、その稼働資産のスループットとは、その輸送機械が輸送した距離、貨物の量、又は輸送した貨物量に対応する利益の額であり得る。本実施形態では、上記スループットは、例えば、事業者が保有する稼働資産である航空機の、所定量の燃料消費における飛行距離である。
【0024】
また、保守情報210は、その事業者の稼働資産の整備履歴に関する情報であり、例えば、稼働資産ごとの、整備を行った日付およびその整備に要した費用に関する情報を含む。ここで、整備に要した費用は、人件費、部品費、作業に要した電気料金等を含む、整備に要した総コストであり得る。
【0025】
処理装置200は、例えば、CPU(Central Processing Unit)等のプロセッサを備えるコンピュータである。処理装置200は、プログラムが書き込まれたROM(Read Only Memory)、データの一時記憶のためのRAM(Random Access Memory)等を有する構成であってもよい。そして、処理装置200は、機能要素又は機能ユニットとして、資産管理部212と、稼働管理部214と、事業情報提供部216と、事業支援部218と、を備える。
【0026】
処理装置200が備えるこれらの機能要素は、例えば、コンピュータである処理装置200がプログラムを実行することにより実現される。なお、上記コンピュータ・プログラムは、コンピュータ読み取り可能な任意の記憶媒体に記憶させておくことができる。これに代えて、処理装置200が備える上記機能要素の全部又は一部を、それぞれ一つ以上の電子回路部品を含むハードウェアにより構成することもできる。
【0027】
資産管理部212は、例えば、対応する事業者のオペレータから入力される情報に基づいて、資産情報206を生成又は更新して記憶装置202に保存する。
【0028】
同様に、稼働管理部214は、例えば、対応する事業者のオペレータから入力される情報に基づいて、稼働情報208および保守情報210を生成又は更新して記憶装置202に保存する。
【0029】
事業情報提供部216は、資産情報206、稼働情報208、および保守情報210のいずれかが更新されたときに、更新された情報をマッチングサーバ106へ送信する。これに加えて又はこれに代えて、事業情報提供部216は、マッチングサーバ106からの要求に基づき、又は定期的に、資産情報206、稼働情報208、および保守情報210をマッチングサーバへ送信してもよい。
【0030】
事業支援部218は、例えば、事業者のオペレータから入力される命令に応じて、マッチングサーバ106へマッチング要求を送信し、マッチングサーバ106から送信されるマッチング結果を受信する。このマッチング要求には、マッチングに必要な情報、例えば、給油する稼働資産の識別ID(例えば、後述する機体ID)、必要とする燃料の種類の限定、及び又は必要な燃料の量に関する情報が含まれていてもよい。
【0031】
また、事業支援部218は、事業者のオペレータから入力される命令に応じて、上記受信したマッチング結果が示す供給者に、必要な燃料の発注を行う。
【0032】
また、事業支援部218は、事業者のオペレータから入力される命令に応じて、マッチングサーバ106へ事業支援情報の要求を送信し、マッチングサーバ106から事業支援情報(後述)を受信する。事業支援部218は、オペレータからの指示により、受信した事業支援情報を表示装置等の適切な出力装置(不図示)により出力する。出力された事業支援情報は、例えば、その事業者における事業運営の方針決定等に利用される。
【0033】
また、事業支援部218は、マッチングサーバ106から、上記受信した事業支援情報についての対価の情報を受信したときは、従来技術に従い、例えばオペレータからの承認が入力されたことに応じて、当該対価をマッチングサーバ106の運営者に支払う。
【0034】
図3は、供給者サーバ104の構成の一例を示す図である。供給者サーバ104は、処理装置300と記憶装置302と、を備える。記憶装置302は、例えば、揮発性及び又は不揮発性の半導体メモリ、及び又はハードディスク装置等により構成される。また、記憶装置302は、商品情報304と、在庫情報306と、を記憶する。
【0035】
商品情報304は、対応する供給者が販売する商品である燃料についての情報である。例えば、商品情報304は、その供給者が販売する燃料の種類、非化石燃料比率、供給拠点の位置、および輸送単価についての情報を含む。上述したように、本実施形態では、上記燃料の種類には、非化石燃料、又は非化石燃料と化石燃料との混合燃料の種類が含まれ得る。
【0036】
上記非化石燃料比率は、燃料の種類ごとの非化石燃料の含有率である。非化石燃料比率は、例えば、その比率が国内規格や国際規格等の標準規格により規定されている場合には、数値に代えて、燃料の種類ごとの、対応する規格の名称及び又は分類コード等の情報で示され得る。また、上記供給拠点とは、上記燃料が発送される場所をいう。供給拠点から発送された燃料は、タンクローリー車等の車両及び又は鉄道を用いるタンク車などの任意の輸送手段により、発送先の事業者の給油拠点へ輸送される。また、上記輸送単価は、例えば、輸送距離当たりの輸送料金であり得る。
在庫情報306は、燃料の種類ごとの在庫量、及び販売単価についての情報を含む。
【0037】
処理装置300は、例えば、CPU等のプロセッサを備えるコンピュータである。処理装置300は、プログラムが書き込まれたROM、データの一時記憶のためのRAM等を有する構成であってもよい。そして、処理装置300は、機能要素又は機能ユニットとして、商品管理部310と、在庫管理部312と、燃料情報提供部314と、を備える。
【0038】
処理装置300が備えるこれらの機能要素は、例えば、コンピュータである処理装置300がプログラムを実行することにより実現される。なお、上記コンピュータ・プログラムは、コンピュータ読み取り可能な任意の記憶媒体に記憶させておくことができる。これに代えて、処理装置300が備える上記機能要素の全部又は一部を、それぞれ一つ以上の電子回路部品を含むハードウェアにより構成することもできる。
【0039】
商品管理部310は、例えば、その供給者のオペレータから入力される情報に基づいて、商品情報304を生成又は更新して記憶装置302に保存する。
【0040】
同様に、在庫管理部312は、例えば、供給者のオペレータから入力される情報に基づいて、在庫情報306を生成又は更新して記憶装置302に保存する。
【0041】
燃料情報提供部314は、商品情報304および在庫情報306のいずれかが更新されたときに、更新された情報をマッチングサーバ106へ送信する。これに代えて又はこれに加えて、燃料情報提供部314は、マッチングサーバ106からの要求に基づき、又は定期的に、商品情報304および在庫情報306をマッチングサーバへ送信してもよい。
【0042】
図4は、設備情報サーバ108の構成の一例を示す図である。上述したように、設備情報サーバ108は、例えば、事業者が保有する稼働資産である機械設備のメーカが運用または利用するサーバであり得る。
【0043】
設備情報サーバ108は、処理装置400と記憶装置402と、を備える。記憶装置402は、例えば、揮発性及び又は不揮発性の半導体メモリ、及び又はハードディスク装置等により構成される。また、記憶装置402は、設備情報404を記憶する。
【0044】
設備情報404は、事業者が保有する稼働資産である機械装置の仕様、性能、および整備等に関する情報を含む。本実施形態では、設備情報404には、稼働資産である航空機の型式ごとの、適合燃料の種類、並びに、燃料の種類ごとの燃費、および推奨される整備間隔(例えば、整備を行ってから次の整備が必要となるまでの飛行距離)の情報が含まれ得る。
【0045】
処理装置400は、例えば、CPU等のプロセッサを備えるコンピュータである。処理装置400は、プログラムが書き込まれたROM、データの一時記憶のためのRAM等を有する構成であってもよい。そして、処理装置400は、機能要素又は機能ユニットとして、設備情報管理部410と、設備情報提供部412と、を備える。
【0046】
処理装置400が備えるこれらの機能要素は、例えば、コンピュータである処理装置400がプログラムを実行することにより実現される。なお、上記コンピュータ・プログラムは、コンピュータ読み取り可能な任意の記憶媒体に記憶させておくことができる。これに代えて、処理装置400が備える上記機能要素の全部又は一部を、それぞれ一つ以上の電子回路部品を含むハードウェアにより構成することもできる。
【0047】
設備情報管理部410は、例えば、オペレータから入力される情報に基づいて、設備情報404を生成又は更新して記憶装置402に保存する。
【0048】
設備情報提供部412は、マッチングサーバ106からの要求に基づき、設備情報404のうち要求された情報をマッチングサーバ106へ送信する。
【0049】
図5は、マッチングサーバ106の構成の一例を示す図である。マッチングサーバ106は、処理装置500と記憶装置502と、を備える。記憶装置502は、例えば、揮発性及び又は不揮発性の半導体メモリ、及び又はハードディスク装置等により構成され、需給データベース504を記憶する。需給データベース504は、事業者情報506と供給者情報508とを含む。事業者情報506は、燃料を消費する稼働資産により事業を行う事業者に関する情報であり、供給者情報508は、燃料供給を事業とする供給者に関する情報である。
【0050】
事業者情報506は、事業者が事業に用いる稼働資産が何であるかの情報と、稼働資産ごとの、燃料を給油するための給油拠点の位置、適合燃料、稼働履歴、および整備履歴に関する情報と、を含む。また、供給者情報508は、供給者が供給する燃料の種類、非化石燃料比率、燃料の供給拠点の位置、販売単価、および輸送単価に関する情報を含む。上述したように、供給者が供給する燃料の種類は、非化石燃料、又は当該非化石燃料と化石燃料との混合燃料の種類を含む。これらの情報は、後述する情報収集部510が収集して記憶装置502に記憶する。
【0051】
処理装置500は、例えば、CPU等のプロセッサを備えるコンピュータである。処理装置500は、プログラムが書き込まれたROM、データの一時記憶のためのRAM等を有する構成であってもよい。そして、処理装置500は、機能要素又は機能ユニットとして、情報収集部510と、マッチング部512と、評価部514と、情報提供部516と、を備える。
【0052】
処理装置500が備えるこれらの機能要素は、例えば、コンピュータである処理装置500がプログラムを実行することにより実現される。なお、上記コンピュータ・プログラムは、コンピュータ読み取り可能な任意の記憶媒体に記憶させておくことができる。これに代えて、処理装置500が備える上記機能要素の全部又は一部を、それぞれ一つ以上の電子回路部品を含むハードウェアにより構成することもできる。
【0053】
情報収集部510は、事業者サーバ102および設備情報サーバ108から情報を収集して事業者情報506を生成し、生成した事業者情報506を、記憶装置502が記憶する需給データベース504に保存する。また、情報収集部510は、供給者サーバ104から情報を収集して供給者情報508を生成し、生成した供給者情報508を、記憶装置502が記憶する需給データベース504に保存する。
【0054】
図6は、情報収集部510が生成して記憶装置502に記憶する事業者情報506の一例を示す図である。
図6に示す事業者情報は、事業者ごとの、稼働資産である各航空機の、機体ID、機体型式、給油拠点、適合燃料、飛行履歴、および整備履歴で構成されている。適合燃料には、各航空機に適合する燃料種類と、燃料種類ごとの燃費(例えば、燃料1リットル当たりの飛行距離)と、が示されている。
【0055】
この事業者情報に含まれる機体ID、機体型式、給油拠点は、例えば、情報収集部510が事業者サーバ102から受信した資産情報206から得られる。また、適合燃料は、例えば、情報収集部510が、設備情報サーバ108から受信した設備情報404から、上記機体型式に対応する適合燃料の情報を抽出することにより得られる。
【0056】
また、飛行履歴および整備履歴は、それぞれ、情報収集部510が事業者サーバ102から受信した稼働情報208および保守情報210から取得される。
図6に示す事業者情報の飛行履歴欄および整備履歴欄には、例えば、対応する飛行履歴および整備履歴が記憶されている記憶装置502の記憶領域の開始アドレスが示されている。
【0057】
図7は、
図6に示す事業者情報に含まれる飛行履歴の一例を示す図である。
図7に示す飛行履歴は、事業者ごとの、稼働資産である各航空機の、機体ID及び飛行記録で構成されている。
図7に示す表の「飛行記録001」「飛行記録002」は、それぞれ、1回の飛行についての飛行記録に対応する。これらの飛行記録には、飛行の日付、給油燃料、燃料単価、燃料消費、および飛行距離が含まれる。「給油燃料種類」は、給油された燃料の種類、「燃料単価」は、給油された燃料の単価を示す。また、「燃料消費量」は「飛行距離」欄に記載されている飛行距離を飛んだときに消費した燃料の量である。
【0058】
図8は、
図6に示す事業者情報に含まれる整備履歴の一例を示す図である。
図8に示す整備履歴は、事業者ごとの、稼働資産である各航空機についての整備記録で構成されている。
図8に示す表の「整備記録001」「整備記録002」「整備記録003」は、それぞれ、1回の整備作業についての整備記録に対応する。各整備記録は、整備を行った「日付」と、その整備作業に要した総コストである「費用」と、で構成されている。
【0059】
図9は、情報収集部510が生成して記憶装置502に記憶する供給者情報508の一例を示す図である。
図8に示す供給者情報は、供給者ごとの、「燃料種類」、「非化石燃料比率」、「販売単価」、「供給拠点」、及び「輸送単価」で構成されている。「燃料種類」は、その供給者が販売する燃料の種類、「非化石燃料比率」は、その燃料における非化石燃料の含有率、「販売単価」は、その燃料の単価(例えば、1リットルあたりの価格)である。また、「供給拠点」は、その燃料の供給拠点の位置であり、輸送単価は、例えば、その燃料の1kmあたりの輸送料金を示す。
【0060】
なお、
図6から
図9に示す情報に記載された燃料の種類Fuel-11、-12、-13、-14、-15、-16は、全て非化石燃料を含む燃料、すなわち、非化石燃料か、又は非化石燃料と化石燃料との混合燃料であるものとする。
【0061】
図5を参照し、マッチング部512は、記憶装置502が記憶する需給データベース504に保存された事業者情報506および供給者情報508に基づき、所与のマッチング条件により、各事業者について、当該事業者が燃料供給を受けるのに適した供給者を抽出して出力する。例えば、マッチング部512は、いずれかの事業者サーバ102から、マッチング要求を受信することに応じて、上記燃料供給に適した供給者の抽出を行う。
【0062】
本実施形態では、上記マッチング条件は、事業者ごとに定められた、その事業者の稼働資産と供給者が供給する燃料の種類との適合性に関する第1条件と、それら稼働資産の給油拠点と供給者の供給拠点との地理的関係についての第2条件と、を含む。
【0063】
具体的には、第1条件は、例えば、“事業者の稼働資産に適合する種類の燃料を供給する供給者を選択すること”、あるいは、“事業者の稼働資産についての燃料単価あたりのスループットが最大となる燃料を供給する供給者を選択すること”であり得る。
【0064】
また、第2条件は、例えば、“その事業者の稼働資産への給油拠点から最も近い供給拠点を有する供給者を選択すること”、あるいは、“その事業者の稼働資産への給油に要する総コストが最小となる供給者を選択すること”等であり得る。
【0065】
マッチング部512は、事業者ごとに、供給者のそれぞれについて、事業者情報506に含まれる稼働資産の種類と、供給者情報508に含まれる燃料の種類とに基づいて第1条件が合致するか否かを判断すると共に、事業者情報506に含まれる給油拠点と、供給者情報508に含まれる供給拠点とに基づいて第2条件が合致するか否かを判断する。そして、マッチング部512は、事業者に対し第1条件及び第2条件の両方が合致した供給者を、当該事業者が燃料の供給を受けるのに適した供給者であると判断する。
【0066】
例えば、マッチング部512は、
図6に示すような事業者情報506に含まれる機体IDごとの適合燃料の各燃料種類及び又は給油拠点の情報、並びに、
図9に示すような供給者情報508が示す燃料種類、販売単価、及び又は輸送単価の情報に基づき、各事業者について、第1条件及び第2条件の両方が合致した供給者を抽出して、マッチング情報を生成する。マッチング部512が生成した上記マッチング情報は、後述する情報提供部516により、対応する事業者の事業者サーバ102へ送信される。
【0067】
これにより、燃料需給マッチングシステム100では、燃料を消費する航空機等の稼働資産により事業を行う事業者と、燃料の供給を事業とする燃料供給者と、の間のマッチングを効果的に行うことができる。したがって、例えば、本実施形態のように、燃料需給マッチングシステム100を非化石燃料及び又は混合燃料に関する需給マッチングに用いることで、脱炭素社会の実現に向けて非化石燃料の普及を促進することができる。
【0068】
図5を参照し、評価部514は、非化石燃料又は混合燃料を使用する事業者の評価を行い、各事業者について、事業支援情報を出力する。具体的には、評価部514は、各事業者について、消費した非化石燃料の量に基づき、化石燃料のみを用いた場合と比較した環境負荷の低減の程度を定量化し、定量化した環境負荷の低減程度を、事業支援情報の一つとして出力する。
【0069】
例えば、評価部514は、事業者情報506に含まれる稼働履歴、例えば
図7に示すような飛行履歴が示す各飛行記録に含まれる給油燃料種類と燃料消費量の情報と、
図9のような供給者情報508に示された非化石燃料比率の情報と、に基づき、半年ごとに、事業者が全航空機について半年間に消費した非化石燃料(混合燃料に含まれる非化石燃料を含む)の総消費量と、半年間の総飛行距離とを算出する。
【0070】
また、評価部514は、各航空機についての、半年間の上記総飛行距離と、航空機の型式から想定される化石燃料使用時の燃費とに基づき、全航空機において化石燃料のみを使用した場合に半年間に消費したはずの化石燃料の仮想消費量を算出する。
【0071】
そして、評価部514は、上記算出した非化石燃料の総消費量と化石燃料の仮想消費量とに基づき、上記仮想消費量の化石燃料を燃焼させたとしたときのCO2排出量から、上記総消費量の非化石燃料が燃焼したときに発生したはずのCO2排出量を減算して得られるCO2排出量の差分を、環境負荷の低減量として出力する。
【0072】
あるいは、評価部514は、1フライトごとに、非化石燃料の使用による環境負荷の低減の程度を、その航空機のフライト中にリアルタイムに又はフライト後に、定量化して出力するものとすることができる。具体的には、評価部514は、そのフライトにおける離陸から現在までの燃料消費量の情報と、給油されている燃料の非化石燃料比率の情報と、に基づき、離陸から現在までの非化石燃料(混合燃料に含まれる非化石燃料を含む)の消費量を算出する。
【0073】
また、評価部514は、そのフライトにおける離陸から現在までの飛行距離と、その航空機の型式から想定される化石燃料使用時の燃費とに基づき、そのフライトにおいて化石燃料のみを使用した場合の離陸から現在までの化石燃料の仮想消費量を算出する。また、評価部514は、上記算出した非化石燃料の総消費量と化石燃料の仮想消費量とに基づき、上記仮想消費量の化石燃料を燃焼させたとしたときのCO2排出量から、上記総消費量の非化石燃料が燃焼したときに発生したはずのCO2排出量を減算して、CO2排出量の差分を算出する。そして、評価部514は、上記算出したCO2排出量の差分を、そのフライトにおける離陸から現在までの環境負荷の低減量として出力する。
【0074】
これにより、事業者は、非化石燃料を用いることによる環境負荷軽減への貢献度を定量的に把握することができるので、非化石燃料使用についてのモチベーションが維持又は向上される。その結果、燃料需給マッチングシステム100では、非化石燃料の普及を更に促進することができる。
【0075】
また、評価部514は、非化石燃料及び又は非化石燃料と化石燃料(本実施形態では、化石燃料)との混合燃料を使用した事業者について、化石燃料のみを用いた場合と比較した、稼働資産の整備コストの低減の程度を定量化し、定量化した整備コストの低減程度を、事業支援情報の一つとして出力する。
【0076】
例えば、評価部514は、
図7に示すような事業者情報506の飛行履歴が示す飛行記録から、半年ごとに、全航空機の半年間の総飛行距離を算出する。また、評価部514は、算出した総飛行距離を、化石燃料のみを使用して飛行したとしたときの全航空機の整備回数に、整備の標準コストを乗じて、化石燃料のみを使用したとしたときの、半年間の総整備コストを仮想コストとして算出する。また、評価部514は、
図8に示すような事業者情報506の整備履歴が示す半年間の整備コストの総和を実績コストとして算出する。そして、評価部514は、上記算出した仮想コストから実績コストを減じたコストを、整備コストの低減量として出力する。ここで、化石燃料のみを使用して飛行したとしたときの上記整備回数の算出に必要な情報および整備の標準コストの情報は、例えば設備情報サーバ108から取得されるものとすることができる。
【0077】
これにより、事業者は、稼働資産の維持コストを左右し得る整備コストの観点から非化石燃料及び又は混合燃料の導入メリットを定量的に把握することができるので、非化石燃料使用についてのモチベーションが更に維持又は向上されることとなる。その結果、燃料需給マッチングシステム100は、非化石燃料の普及を更に促進することができる。
【0078】
評価部514が出力する事業支援情報の出力態様として、例えば、評価部514は、マッチングサーバ106が運営する所定のウェブサイトを通じて、又はこれらのサーバが提供するアプリケーションソフトウェアを実行するスマートフォン等の携帯端末(例えば、
図1に示す携帯端末600)を通じて、上記事業支援情報を表示するものとすることができる。そのような事業支援情報の表示は、従来技術に従い、所定のアクセス権を有する利用者により閲覧されるものとすることができる。
【0079】
例えば、評価部514は、CO2排出量の低減度合いを、事業者ごとにランキング形式で、上記ウェブサイトまたは携帯端末において表示可能に出力するものとすることができる。
【0080】
また、例えば、評価部514は、上述したフライト毎の環境負荷の低減の程度を、
図10に示すように、携帯端末において表示可能に出力するものとすることができる。
図10に示す例では、携帯端末600の表示スクリーン602上に、高度表示604、速度表示606、CO
2削減量表示608が表示されている。CO
2削減量表示608には、現在搭載している非化石燃料(または混合燃料)でのCO
2の推定排出量610と、化石燃料を使用した場合のCO
2の排出量である基準排出量612とが表示されており、推定排出量610と基準排出量612との差分により、CO
2削減量が示されている。
【0081】
図5を参照し、情報提供部516は、マッチング部512が出力したマッチング情報、及び評価部514が出力した事業支援情報を、対応する事業者に提供する。具体的には、情報提供部516は、上記マッチング情報および事業支援情報を、対応する事業者の事業者サーバ102へ送信する。
【0082】
また、情報提供部516は、事業支援情報として環境負荷の低減の程度についての出力を事業者に提供したときは、当該出力の提供についての対価を、上記環境負荷の低減の程度についての出力の提供の回数、または評価部514が当該事業者に関して出力した環境負荷の低減の程度に応じて決定する。上記環境負荷の低減の程度は、上述したように、例えばCO2排出量の低減量である。
【0083】
また、情報提供部516は、事業支援情報として整備コストの低減の程度についての出力を事業者に提供したときは、当該出力の提供についての対価を、上記整備コストの低減の程度についての出力の提供の回数、または評価部514が当該事業者に関して出力した整備コストの低減の程度に応じて決定する。
【0084】
これにより、燃料需給マッチングシステム100の運営者は、事業者のメリットに応じた適切なインセンティブを請求することができる。
【0085】
次に、燃料需給マッチングシステム100が実行する燃料需給マッチング方法の手順について説明する。
図11は燃料需給マッチング方法の手順を示すフロー図である。燃料需給マッチング方法は、燃料需給マッチングシステム100が備えるコンピュータ、具体的には、燃料需給マッチングシステム100を構成するマッチングサーバ106のコンピュータである処理装置500が、事業者サーバ102、供給者サーバ104、及び又は設備情報サーバ108が備えるコンピュータである処理装置200、300、及び400と協働することにより実行される。
【0086】
この燃料需給マッチング方法は、マッチングサーバ106の情報収集部510が、燃料を消費して稼働する稼働資産を用いて事業を行う事業者に関する情報を収集し、事業者情報506として記憶装置502に記憶するステップと(S100)と、燃料の供給を事業とする供給者に関する情報を収集し、供給者情報508として記憶装置502に記憶するステップと(S102)、を有する。上述したように、事業者情報506は、事業者が事業に用いる稼働資産に関する情報と、稼働資産の給油拠点の位置に関する情報と、を含む。また、供給者情報は、供給者が供給する燃料の種類についての情報と、燃料の供給拠点の位置に関する情報と、を含む。
【0087】
また、この燃料需給マッチング方法は、マッチングサーバ106のマッチング部512が、事業者情報および供給者情報に基づき、所与のマッチング条件により、事業者が前記燃料の供給を受けるのに適した前記供給者を抽出して出力するステップ(S104)を含む。上述したように、上記所与のマッチング条件には、事業者の稼働資産と供給者が供給する燃料の種類との適合性に関する第1条件と、それら稼働資産の給油拠点と供給者の供給拠点との地理的関係についての第2条件と、が含まれ得る。
【0088】
また、燃料需給マッチング方法は、マッチングサーバ106の評価部514が、事業者について、消費した非化石燃料の量に基づき、化石燃料のみを用いた場合と比較した環境負荷の低減の程度を定量化し、事業支援情報の一つとして出力するステップ(S106)を含む。
【0089】
また、燃料需給マッチング方法は、評価部514が、非化石燃料及び又は混合燃料を使用した事業者について、化石燃料のみを用いた場合と比較した稼働資産の整備コストの低減の程度を定量化し、事業支援情報の一つとして出力するステップ(S108)を含む。
【0090】
さらに、燃料需給マッチング方法は、マッチングサーバ106の情報提供部516が、ステップS104、S106、及び又はS108における出力を事業者へ提供することについての対価を決定するステップ(S110)を含む。上述したように、この対価は、上出力の回数、又は評価部514が出力した環境負荷の低減の程度もしくは整備コストの低減の程度に応じて決定され得る。
【0091】
なお、本発明は上記実施形態およびその変形例の構成に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の態様において実施することが可能である。
【0092】
例えば、上述した燃料需給マッチングシステム100では、事業者は、稼働資産としての航空機を用いて旅客や貨物を輸送する航空会社であるものとしたが、事業者は、航空会社には限られない。事業者は、燃料を消費して稼働する稼働資産を用いて事業を行う任意の事業者であり得る。例えば、事業者は、車両を稼働資産として用いて旅客や貨物を輸送するタクシー会社、レンタカー会社、バス会社、運送会社等であってもよい。あるいは、事業者は、燃料を消費する工事用車両等の建設関係の車両を稼働資産とする建設会社であり得る。
【0093】
また、上述した実施形態では、事業者情報506として、事業に用いる稼働資産に関する情報を含むものとしたが、稼働資産に関する情報に代えて、事業の種類に関する情報を含むものとしてもよい。上記事業の種類は、例えば、トラック運送、タクシー旅客輸送、等であるものとすることができる。この場合には、マッチング部512は、上記事業の種類から、その事業に用いられる稼働資産が何であるかを判断し、その稼働資産に関して適していると一般的に判断され得る非化石燃料の種類を特定して、その事業者に適した供給者を抽出するものとすることができる。
【0094】
上記実施形態は、以下の構成をサポートする。
【0095】
(構成1)燃料を消費して稼働する稼働資産を用いて事業を行う事業者に関する事業者情報と、前記燃料の供給を事業とする供給者に関する供給者情報と、を記憶する記憶装置と、前記事業者情報および前記供給者情報に基づき、所与のマッチング条件により、前記事業者が前記燃料の供給を受けるのに適した前記供給者を抽出して出力するマッチング部と、を備える燃料需給マッチングシステムであって、前記事業者情報は、前記事業者の事業の種類または当該事業に用いる前記稼働資産に関する情報と、前記稼働資産の給油拠点の位置に関する情報と、を含み、前記供給者情報は、前記供給者が供給する前記燃料の種類についての情報と、前記燃料の供給拠点の位置に関する情報と、を含み、前記マッチング条件は、前記事業者ごとに定められた、前記稼働資産と前記燃料の種類との適合性に関する第1条件と、前記給油拠点と前記供給拠点との地理的関係についての第2条件と、を含む、燃料需給マッチングシステム。
構成1の燃料需給マッチングシステムによれば、燃料を消費する航空機等の稼働資産により事業を行う事業者と、燃料の供給を事業とする燃料供給者と、の間のマッチングを効果的に行うことができる。したがって、例えば、構成1の燃料需給マッチングシステムを用いて非化石燃料に関する需給マッチングを行えば、脱炭素社会の実現に効果的な非化石燃料の普及を促進することができる。
【0096】
(構成2)前記マッチング部は、前記事業者ごとに、前記供給者のそれぞれについて、前記事業者情報に含まれる前記稼働資産の種類または前記事業の種類と、前記供給者情報に含まれる前記燃料の種類とに基づいて前記第1条件が合致するか否かを判断すると共に、前記事業者情報に含まれる前記給油拠点と、前記供給者情報に含まれる前記供給拠点とに基づいて前記第2条件が合致するか否かを判断し、前記事業者に対し前記第1条件及び前記第2条件の両方が合致した前記供給者を、当該事業者が前記燃料の供給を受けるのに適した前記供給者であると判断する、構成1に記載の燃料需給マッチングシステム。
構成2の燃料需給マッチングシステムによれば、燃料を消費する航空機等の稼働資産により事業を行う事業者と、燃料の供給を事業とする燃料供給者と、の間のマッチングを、更に適切に行うことができる。
【0097】
(構成3)前記第1条件は、前記燃料の種類ごとの、燃料消費量あたりの前記稼働資産のスループットについての条件を含む、構成1または2に記載の燃料需給マッチングシステム。
構成3の燃料需給マッチングシステムによれば、燃料を消費する航空機等の稼働資産により事業を行う事業者と、燃料の供給を事業とする燃料供給者と、の間のマッチングを、燃料の種類に依存する稼働資産のコストパフォーマンスの観点から、更に効果的に行うことができる。
【0098】
(構成4)前記供給者が供給する前記燃料の種類は、非化石燃料、又は非化石燃料と化石燃料との混合燃料を含み、前記非化石燃料又は前記混合燃料を使用する前記事業者の評価を行う評価部を備え、前記評価部は、前記事業者について、消費した前記非化石燃料の量に基づき、化石燃料のみを用いた場合と比較した環境負荷の低減の程度を定量化して出力する、構成1ないし3のいずれかに記載の燃料需給マッチングシステム。
構成4の燃料需給マッチングシステムによれば、事業者は、非化石燃料を用いることによる環境負荷軽減への貢献度を定量的に把握することができるので、非化石燃料使用についてのモチベーションが維持又は向上されることとなる。その結果、燃料需給マッチングシステムは、非化石燃料の普及を更に促進することができる。
【0099】
(構成5)前記評価部の出力を前記事業者に提供する情報提供部を備え、前記情報提供部は、前記環境負荷の低減の程度についての出力を前記事業者に提供したときは、当該出力の提供についての対価を、前記環境負荷の低減の程度についての前記出力の提供の回数、または前記評価部が当該事業者に関して出力した前記環境負荷の低減の程度に応じて決定する、構成4に記載の燃料需給マッチングシステム。
構成5の燃料需給マッチングシステムによれば、当該燃料需給マッチングシステムの運営者は、事業者のメリットに応じた適切なインセンティブを請求することができる。
【0100】
(構成6)前記供給者が供給する前記燃料の種類は、非化石燃料、又は非化石燃料と化石燃料との混合燃料を含み、前記非化石燃料又は前記混合燃料を使用する前記事業者の評価を行う評価部を備え、前記評価部は、前記非化石燃料及び又は前記混合燃料を使用した事業者について、化石燃料のみを用いた場合と比較した前記稼働資産の整備コストの低減の程度を定量化して出力する、構成1ないし5のいずれかに記載の燃料需給マッチングシステム。
構成6の燃料需給マッチングシステムによれば、事業者は、稼働資産の維持コストを左右し得る整備コストの観点から非化石燃料の導入メリットを定量的に把握することができるので、非化石燃料使用についてのモチベーションが更に維持又は向上されることとなる。その結果、燃料需給マッチングシステムは、非化石燃料の普及を更に促進することができる。
【0101】
(構成7)前記評価部の出力を前記事業者に提供する情報提供部を備え、前記情報提供部は、前記整備コストの低減の程度についての出力を前記事業者に提供したときは、当該出力の提供についての対価を、前記整備コストの低減の程度についての前記出力の提供の回数、または前記評価部が当該事業者に関して出力した前記整備コストの低減の程度に応じて決定する、構成6に記載の燃料需給マッチングシステム。
構成7の燃料需給マッチングシステムによれば、当該燃料需給マッチングシステムの運営者は、事業者のメリットに応じた適切なインセンティブを請求することができる。
【0102】
(構成8)前記マッチング部を備えるマッチングサーバと、前記マッチングサーバに、前記供給者が供給する燃料の種類に関する情報を提供する供給者サーバと、前記マッチングサーバに、前記事業者の前記稼働資産の型式に関する情報を提供する事業者サーバと、前記マッチングサーバに、前記稼働資産の型式に適合する燃料の種類に関する情報を提供する設備情報サーバと、を含む構成1ないし7のいずれかに記載の燃料需給マッチングシステム。
構成8の燃料需給マッチングシステムによれば、事業者および燃料の供給者のサーバとの連携を図るだけでなく、事業者の稼働資産の仕様情報を提供するサーバ、例えば製造メーカのサーバとも連携して、事業者と燃料供給者との間のマッチングを、効果的に行うことができる。
【0103】
(構成9)コンピュータにより実行される燃料需給マッチング方法であって、燃料を消費して稼働する稼働資産を用いて事業を行う事業者に関する事業者情報を記憶装置に記憶するステップと、前記燃料の供給を事業とする供給者に関する供給者情報を記憶装置に記憶するステップと、前記事業者情報および前記供給者情報に基づき、所与のマッチング条件により、前記事業者が前記燃料の供給を受けるのに適した前記供給者を抽出して出力するステップと、を有し、前記事業者情報は、前記事業者の事業の種類または当該事業に用いる前記稼働資産に関する情報と、前記稼働資産の給油拠点の位置に関する情報と、を含み、前記供給者情報は、前記供給者が供給する前記燃料の種類についての情報と、前記燃料の供給拠点の位置に関する情報と、を含み、前記マッチング条件は、前記事業者ごとに定められた、前記稼働資産と前記燃料の種類との適合性に関する第1条件と、前記給油拠点と前記供給拠点との地理的関係についての第2条件と、を含む、燃料需給マッチング方法。
構成9の燃料需給マッチング方法によれば、燃料を消費する航空機等の稼働資産により事業を行う事業者と、燃料の供給を事業とする燃料供給者と、の間のマッチングを効果的に行うことができる。したがって、例えば、構成7の燃料需給マッチング方法を用いて非化石燃料に関する需給マッチングを行えば、脱炭素社会の実現に効果的な非化石燃料の普及を促進することができる。
【符号の説明】
【0104】
100…燃料需給マッチングシステム、102…事業者サーバ、104…供給者サーバ、106…マッチングサーバ、108…設備情報サーバ、110…通信ネットワーク、200、300、400、500…処理装置、202、302、402、502…記憶装置、206…資産情報、208…稼働情報、210…保守情報、212…資産管理部、214…稼働管理部、216…事業情報提供部、218…事業支援部、304…商品情報、306…在庫情報、310…商品管理部、312…在庫管理部、314…燃料情報提供部、404…設備情報、410…設備情報管理部、412…設備情報提供部、504…需給データベース、506…事業者情報、508…供給者情報、510…情報収集部、512…マッチング部、514…評価部、516…情報提供部、600…携帯端末、602…表示スクリーン、604…高度表示、606…速度表示、608…CO2削減量表示、610…推定排出量、612…基準排出量。