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特開2022-170834ケーブルラック、防災機器収納装置、及び防災機器
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022170834
(43)【公開日】2022-11-11
(54)【発明の名称】ケーブルラック、防災機器収納装置、及び防災機器
(51)【国際特許分類】
   H02G 3/04 20060101AFI20221104BHJP
   A62C 35/20 20060101ALI20221104BHJP
【FI】
H02G3/04 056
A62C35/20
H02G3/04 087
H02G3/04 037
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021077072
(22)【出願日】2021-04-30
(71)【出願人】
【識別番号】000003403
【氏名又は名称】ホーチキ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100079359
【弁理士】
【氏名又は名称】竹内 進
(72)【発明者】
【氏名】羽鳥 みのり
(72)【発明者】
【氏名】梅原 寛
【テーマコード(参考)】
2E189
5G357
【Fターム(参考)】
2E189EB01
5G357BA04
5G357BA10
5G357BB01
5G357BC05
5G357DA02
5G357DA05
5G357DA06
5G357DB01
5G357DC20
5G357DD02
5G357DD06
5G357DE03
(57)【要約】      (修正有)
【課題】防水性が確保した上で限られた空間を利用して通線されるケーブルを布線する場合に作業性を向上させ、更にノイズの影響等の対策に十分な離間距離を確保するケーブルラックを提供する。
【解決手段】外部から引き込まれたケーブルを消火器収納部側へ通すための通線路を形成するケーブルラック48であって、ラック本体50に上下2段に分けられた第1通線路52と第2通線路54を形成し、前面側のラック開口に扉板56を配置する。ケーブルの通線作業を行う場合は、第1ボルト60を取り外し、第2ボルト62を緩め、第2ボルト62に沿った長穴ガイド部58の移動により扉板56を下降させてラック本体50のラック開口を開放させ、内部を見ながらの作業を可能とする。
【選択図】図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の装置の筐体内に、ケーブルを通すための出入口を有する通線路を形成するケーブルラックであって、
前記筐体の外部から通線路を確認できるようにラック開口が形成され、前記ラック開口を通して確認できる通線路を形成するラック本体と、
前記ラック開口に対応して配置される扉板と、
前記扉板を前記ラック開口に開閉自在に支持する扉支持構造と、
を備えたことを特徴とするケーブルラック。
【請求項2】
請求項1記載のケーブルラックに於いて、
前記通線路は、前記ラック本体により複数に分けられて形成されたことを特徴とするケーブルラック。
【請求項3】
請求項1又は2記載のケーブルラックに於いて、
前記ラック本体の前記通線路の少なくとも何れかを形成する箇所の通線路側にシールド部材が設けられたことを特徴とするケーブルラック。
【請求項4】
請求項1乃至3何れに記載のケーブルラックに於いて、
前記扉支持構造は、前記ラック開口に沿って前記扉板が閉鎖位置と開放位置との間で摺動自在に支持されたことを特徴とするケーブルラック。
【請求項5】
請求項4記載のケーブルラックに於いて、
前記扉板の摺動方向を上下方向とし、
前記扉板は、前記閉鎖位置で上端部が前記ラック本体の前記ラック開口よりも上側の上縁部に位置し、下端部が前記ラック本体の前記ラック開口よりも下側の下縁部に位置するように開口されたガイド部を備え、
前記扉支持構造は、
前記ガイド部の前記上端部に通して前記ラック本体の上縁部に前記扉板を前記閉鎖位置で支持固定する着脱自在な第1固定部材と、
前記ガイド部の前記下端部に通して前記ラック本体の下縁部に前記扉板を前記閉鎖位置で支持固定する着脱自在な第2固定部材と、
を備え、
前記第1固定部材又は前記第2固定部材を取り外し、取り外していない一方の固定部材の固定を緩めることにより、前記開放位置に前記扉板を摺動可能とし、取り外していない一方の固定部材により前記開放位置に支持又は支持固定させることを特徴とするケーブルラック。
【請求項6】
請求項4記載のケーブルラックに於いて、
前記扉板の摺動方向を上下方向とし、
前記扉板は、前記閉鎖位置で上端部が前記ラック本体の前記ラック開口よりも上側の上縁部に位置し、下端部が前記ラック本体の前記ラック開口よりも下側の下縁部に位置するように開口され、上端部側の開口幅が下端部側の開口幅よりも狭いガイド部を備え、
前記扉支持構造は、
前記ガイド部の前記上端部に通して前記ラック本体の上縁部に前記扉板を前記閉鎖位置で支持固定する着脱自在な第1固定部材と、
前記ガイド部の前記下端部に通して前記ラック本体の下縁部に前記扉板を前記閉鎖位置で支持固定し、上端部側の開口幅には通らない着脱自在な第2固定部材と、
を備え、
前記第1固定部材及び前記第2固定部材の固定を緩めることにより、前記開放位置に前記扉板を摺動可能とし、前記第2固定部材により前記扉板を前記開放位置に支持又は支持固定させることを特徴とするケーブルラック。
【請求項7】
請求項4記載のケーブルラックに於いて、
前記ラック開口を閉鎖状態又は開放状態とするための前記扉板の摺動方向を上下方向とし、
前記扉板は、
前記閉鎖位置で前記ラック本体の前記ラック開口よりも上側の上縁部に位置し、上端が開放されたL形又は逆L形に開口された第1ガイド部と、
前記閉鎖位置で上端部が前記ラック本体の前記上縁部に位置し、側端部が前記ラック本体の前記ラック本体の前記ラック開口よりも下側の下縁部に位置するようにL形又は逆L形に開口され、前記L形又は逆L形の向き及び前記L形又は逆L形の側辺部の長さを前記第1ガイド部と同一とした第2ガイド部と、
を備え、
前記扉支持構造は、
前記第1ガイド部の側端部に通して前記ラック本体の前記上縁部に前記扉板を前記閉鎖位置で支持固定する着脱自在な第1固定部材と、
前記第2ガイド部の前記側端部に通して前記ラック開口の前記下縁部に前記扉板を前記閉鎖位置で支持固定する着脱自在な第2固定部材と、
を備え、
前記第1固定部材及び前記第2固定部材の固定を緩め、前記第1固定部材に前記第1ガイド部を沿わせた摺動による前記第1ガイド部からの前記第1固定部材の抜け出しと、第2固定部材に沿った前記第2ガイド部の移動とにより、前記開放位置に前記扉板を摺動可能とし、前記第2固定部材により前記開放位置に支持又は支持固定させることを特徴とするケーブルラック。
【請求項8】
請求項1乃至3何れに記載のケーブルラックに於いて、
前記扉支持構造は、
前記ラック開口を形成する所定の縁部を軸として前記扉板を閉鎖位置と開放位置との間で回動自在に支持する支持部材と、
前記扉板を閉鎖位置で係止させる扉係止部と、
を備えたことを特徴とするケーブルラック。
【請求項9】
請求項1乃至8何れかに記載のケーブルラックに於いて、
前記ラック開口は、前記ラック本体に形成された通線路の一部が確認できるように前記ラック本体に形成されたことを特徴とするケーブルラック。
【請求項10】
請求項1乃至9何れかに記載のケーブルラックに於いて、
前記扉板と前記ラック本体との間に前記ラック開口の位置に対応してシール部材が取り付けられたことを特徴とするケーブルラック。
【請求項11】
請求項1乃至10何れかに記載のケーブルラックに於いて、
前記ラック本体により形成された通線路の少なくとも何れかは、ケーブルを通すための切り込みを有する弾力性を持つ樹脂部材により入口と出口を封鎖されたことを特徴とするケーブルラック。
【請求項12】
請求項1乃至11の何れかに記載のケーブルラックを有することを特徴とする防災機器収納装置。
【請求項13】
請求項12記載の防災機器収納装置を備えたことを特徴とする防災機器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、装置の筐体内の電装機器に接続するために外部から引き込まれたケーブルや装置の筐体内の機器同士を接続するためのケーブル等の通線路を装置の筐体内に形成するために設置されたケーブルラック、当該ケーブルラックを有する防災機器収納装置、及び当該防災機器収納装置を備えた防災機器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、高速道路や自動車専用道路などのトンネル内には、例えば図14に示す防災機器収納装置の一種である消火栓装置が設置されている。図14(A)は消火栓装置の前面を示し、図14(B)は保守扉と消火栓扉を開き消火器扉を外した状態での消火栓装置の前面を示し、図14(C)は消火栓装置の上面から見た断面を示し、図14(D)は図14(B)の状態での右側面を一部破断して示している。尚、図14(B)に於いては、消火栓装置内部のホース、バルブ類、消火器等の図示は省略している。
【0003】
ここで、図14の説明では、X-Y-Z方向が互いに直交する方向であり、具体的には、図14(A)のように消火栓装置の前面を正面に見て、X方向が左右方向とし、Y方向が上下方向とし、Z方向が前後方向とする。また、X方向における+X側は右側、-X側は左側とし、Y方向における+Y側は上側、-Y側は下側とし、Z方向における+Z側は後側とし、-Z側は前側とする。この点は本発明の実施形態となる図1図13においても同様となる。
【0004】
図14に示すように、従来の消火栓装置10は、開閉自在な消火栓扉12と保守扉14を備えた筐体11aの消火栓収納部16に、先端にノズルを装着したホース38とバルブ類(図示省略)が収納され、また、開閉自在な消火器扉18と電装扉22を備えた筐体11bの消火器収納部20に例えば2本の消火器(図示省略)が収納される。電装扉22には、電装機器として、例えば供給される電源がAC100Vである赤色表示灯24、供給される電源がDC48Vである発信機25、応答ランプ26、電話ジャック27(電装扉の筐体内側)等が設けられ、また寒冷地においては更に供給される電源がAC200Vであるスペースヒータが設置される。
【0005】
また、これらの電装機器に供給される電源は、消火栓装置10の外部から筐体11aの消火栓収納部16側に引き込まれたケーブルが消火器収納部20に設置される端子箱28a、28bを介して接続されることで供給される。つまり、外部から引き込まれたケーブルは消火栓収納部16の何れかの空間を通し、消火器収納部20に設置される端子箱28a、28bに接続される必要がある。
【0006】
しかしながら、消火栓装置10の消火栓収納部16内には、ノズルを備えたホース38、自動調圧弁、消火栓弁や給水栓を含むバルブ類、及び消火栓弁開閉レバー等の機器が限られた空間の中に配置されており、更に消火栓装置10は、トンネル躯体に対する省スペース化の要求に対応するために消火栓装置10のサイズを小型化にする方向にあることから、電装扉22の電装機器に接続するために外部から引き込まれたケーブル等を通す筐体内の通線スペースは限られる。
【0007】
このように通線スペースに制限がある中で、従来の消火栓装置におけるケーブルの通線は、図14(B)~(D)に示すように、消火栓収納部16の上部前側となる保守扉14の筐体内側(裏側)の空きスペースを通線スペースとしてケーブルラック100を設け、外部から引き込んだケーブル等をケーブルラック100に通して消火器収納部20側へ引き出し、端子箱28a、28bに接続している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2016-055073号公報
【特許文献2】特開2018-139704号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、このようなケーブルラック100を用いた従来のケーブルの通線路にあっては、保守扉14と化粧枠(筐体11aにおける消火栓扉12と保守扉14を配置するための開口部を有する前面パネル)の間に生ずる隙間から雨水等の水が浸入してケーブルの劣化原因となり得ることから、ケーブルラック100は前面側を遮蔽して後面側の上部を開放した形状としており、ケーブルラック100にケーブルを通す場合に消火栓装置10の前面からではケーブルラック100の内部が見えないことから通線作業はケーブルラック100の開放された後面側の上部からの手探り作業になるため、通線させる上での布線作業が煩雑であり、また時間が掛かる問題がある。
【0010】
また、従来のケーブルの通線路は、同じケーブルラックに、例えば、DC48Vの弱電用ケーブルと、AC100V及び又はAC200Vの強電用ケーブルを通線させている。ここで、「強電」とは48Vを超える主にエネルギーに利用される電気の分野を意味し、「弱電」とは48V以下の通信、制御、情報などに利用される電気の分野を意味する。
【0011】
一般的に、AC100V等の強電用ケーブルとDC48V等の弱電用ケーブルが混在する場合、離間距離を確保する等によってノイズ等による影響を受けないようにすることが求められている。しかしながら、ケーブルラック100内で離間距離を確保するために弱電用ケーブルと強電用ケーブルを離して布線しようとしても、目視のできない手探り作業で行うため適切な離間距離を確保することが困難であり、ケーブル同士が適切な離間距離を確保しない状態、又は接触した状態でケーブルラック100内に布線される場合があることも問題であった。
【0012】
このような布線の作業性の問題を解決するためには、ケーブルラックの前面側が開口された構造とすることが考えられるが、防水性が確保されないことから、ケーブルの劣化に対する防止対策が不十分となる。そこで、防水性を確保するために前面側が開口されたケーブルラックを消火栓装置10の消火栓収納部16内の後側に設置するという方法もあるが、布線の作業性はケーブルラック100が消火栓収納部16の後側に行くほど悪くなることから、極力ケーブルラック100の設置位置を消火栓収納部16の前側にすることが望ましく、ケーブルの劣化に対する防止対策とケーブルの布線の作業性はトレードオフの関係にあった。
【0013】
また、トンネル用の消火栓装置で使用されるケーブルは、AA級トンネルのシリアル伝送線を除き、弱電用ケーブル及び強電用ケーブル共に遮蔽付きケーブル(シールドケーブル)は使用しておらず、ケーブルラック100に強電用ケーブルと弱電用ケーブルを混在して布線する場合には、可能な限り大きく離間距離を確保することが必要となるが、消火栓装置10の通線スペースは限られることからケーブルラックの幅(前後方向の幅)は制限され、強電用ケーブルと弱電用ケーブルとの離間距離を大きく取れないという問題もある。つまり、意図した布線作業ができ、離間距離を限界まで確保できたとしても、ケーブルラックの幅(前後方向の幅)が制限されていることから離間距離が十分ではなくケーブル間のノイズの影響等の対策が不十分となっている場合があった。
【0014】
このようなノイズの影響等の対策が不十分な問題を解決するために、ケーブルを遮蔽付きにすることが考えられるが、ケーブルの長さはトンネルのサイズに比例して長くなることから、大規模なトンネルに於いてはコストアップとなるため、トンネルのサイズに依存しない消火栓装置個別にて解決がすることが望まれる。
【0015】
本発明は、防水性を確保した上で、限られた空間を利用して通線されるケーブルを布線する場合に布線の作業性を向上させることを主な目的とし、更にノイズの影響等の対策に十分な離間距離を確保するケーブルラック、当該ケーブルラックを有する防災機器収納装置、及び当該防災機器収納装置を備えた防災機器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
(ケーブルラック)
本発明は、所定の装置の筐体内に、ケーブルを通すための出入口を有する通線路を形成するケーブルラックであって、
筐体の外部から通線路を確認できるようにラック開口が形成され、ラック開口を通して確認できる通線路を形成するラック本体と、
ラック開口に対応して配置される扉板と、
扉板をラック開口に開閉自在に支持する扉支持構造と、
を備えたことを特徴とする。
【0017】
(分けられた通線路)
通線路は、ラック本体により複数に分けられて形成される。
【0018】
(通線路に設けられたシールド部材)
ラック本体の通線路の少なくとも何れかを形成する箇所の通線路側にシールド部材が設けられる。
【0019】
(第1の扉支持構造)
第1の扉支持構造は、ラック開口に沿って扉板が閉鎖位置と開放位置との間で摺動自在に支持される。
【0020】
(第1の扉支持構造の詳細1)
扉板の摺動方向を上下方向とし、
扉板は、閉鎖位置で上端部がラック本体のラック開口よりも上側の上縁部に位置し、下端部がラック本体のラック開口よりも下側の下縁部に位置するように開口されたガイド部を備え、
扉支持構造は、
ガイド部の上端部に通してラック本体の上縁部に扉板を閉鎖位置で支持固定する着脱自在な第1固定部材と、
ガイド部の下端部に通してラック本体の下縁部に扉板を閉鎖位置で支持固定する着脱自在な第2固定部材と、
を備え、
第1固定部材又は前記第2固定部材を取り外し、取り外していない一方の固定部材の固定を緩めることにより、開放位置に扉板を摺動可能とし、取り外していない一方の固定部材により開放位置に支持又は支持固定させる。
【0021】
(第1の扉支持構造の詳細2)
扉板の摺動方向を上下方向とし、
扉板は、閉鎖位置で上端部がラック本体のラック開口よりも上側の上縁部に位置し、下端部がラック本体のラック開口よりも下側の下縁部に位置するように開口され、上端部側の開口幅が下端部側の開口幅よりも狭いガイド部を備え、
扉支持構造は、
ガイド部の上端部に通してラック本体の上縁部に扉板を閉鎖位置で支持固定する着脱自在な第1固定部材と、
ガイド部の下端部に通してラック本体の下縁部に扉板を閉鎖位置で支持固定し、上端部側の開口幅には通らない着脱自在な第2固定部材と、
を備え、
第1固定部材及び第2固定部材の固定を緩めることにより、開放位置に扉板を摺動可能とし、第2固定部材により扉板を開放位置に支持又は支持固定させる。
【0022】
(第1の扉支持構造の詳細3)
ラック開口を閉鎖状態又は開放状態とするための扉板の摺動方向を上下方向とし、
扉板は、
閉鎖位置でラック本体のラック開口よりも上側の上縁部に位置し、上端が開放されたL形又は逆L形に開口された第1ガイド部と、
閉鎖位置で上端部がラック本体の上縁部に位置し、側端部がラック本体のラック本体のラック開口よりも下側の下縁部に位置するようにL形又は逆L形に開口され、L形又は逆L形の向き及びL形又は逆L形の側辺部の長さを第1ガイド部と同一とした第2ガイド部と、
を備え、
扉支持構造は、
第1ガイド部の側端部に通してラック本体の上縁部に扉板を閉鎖位置で支持固定する着脱自在な第1固定部材と、
第2ガイド部の側端部に通してラック本体の下縁部に扉板を閉鎖位置で支持固定する着脱自在な第2固定部材と、
を備え、
第1固定部材及び第2固定部材の固定を緩め、第1固定部材に第1ガイド部を沿わせた摺動による第1ガイド部からの第1固定部材の抜け出しと、第2固定部材に沿った第2ガイド部の移動とにより、開放位置に扉板を摺動可能とし、第2固定部材により開放位置に支持又は支持固定させる。
【0023】
(第2の扉支持構造)
扉支持構造は、
ラック開口を形成する所定の縁部を軸として扉板を閉鎖位置と開放位置との間で回動自在に支持する支持部材と、
扉板を閉鎖位置で係止させる扉係止部と、
を備える。
【0024】
(ラック本体の一部を開口したラック開口)
ラック開口は、ラック本体に形成された通線路の一部が確認できるようにラック本体に形成される。
【0025】
(シール部材による封鎖)
扉板とラック本体との間にラック開口の位置に対応してシール部材が取り付けられる。
【0026】
(通線路の出入口の封鎖)
ラック本体により形成された通線路の少なくとも何れかは、ケーブルを通すための切り込みを有する弾力性を持つ樹脂部材により入口と出口を封鎖される。
【0027】
(防災機器収納装置、防災機器)
また、本発明は、前述したケーブルラックを有する防災機器収納装置、又は当該防災機器収納装置を備えた防災機器を特徴とするものである。
【発明の効果】
【0028】
(ケーブルラックの効果)
本発明のケーブルラックによれば、装置筐体の外部から通線路を確認できるように形成されたラック開口を通して確認できる通線路が形成されたことで、ラック本体に形成された通線路にケーブルを通す際の布線作業を行う場合には、扉板を開放しラック開口を開放させることで、筐体の外部からラック本体の内部の通線路を見ながら作業を行うことができ、布線の作業性を向上可能とする。
【0029】
また、ケーブルを通す作業を行わない場合にはラック開口は扉板により閉鎖されているため、防水性は確保されており、ケーブルの劣化を防止することができる。
【0030】
(分けられた通線路による効果)
通線路は、ラック本体により、例えば上下2段に分けてラック本体に形成され、上段の通線路に強電用ケーブルを通し、下段の通線路に弱電用ケーブルを通すことで、両者の離間距離を十分に大きく取ることが可能となり、信号通信などに使用する弱電用ケーブルに対する強電用ケーブルからのノイズ等による影響を低減可能とする。
【0031】
(通線路に設けられたシールド部材による効果)
また、ラック本体の通線路の少なくとも何れかを形成する箇所の通線路側にシールド部材、例えばシールドシートが設けられるため、シールドシートによりノイズ等による影響を低減させることができる。また、例えば弱電用ケーブル及び強電用ケーブルを通し、両ケーブルの離間距離を確保する必要がある場合、シールドシートによりノイズ等による影響を低減させているため、シールドシートを設けない場合に比べて離間距離を縮めることができ、結果としてケーブルラックの寸法を小さくすることができるため、ケーブルラックの設置場所が限られたスペースであっても設置することが可能となる。
【0032】
(第1の扉支持構造の効果)
また、第1扉支持構造によれば、決まった方向に摺動させるだけで扉板を閉鎖位置と開放位置に移動させることができるため、扉板の可動範囲が限られており、ケーブルラックの設置場所が装置筐体内の制限されたスペースであっても、扉板を開閉することができる。
【0033】
また、詳細1の構造では、第1締結部材又は第2締結部材の何れか一方を取り外し、取り外していない一方の締結部材を緩めることで、詳細2の構造及び詳細3の構造では、第1締結部材及び第2締結部材を緩めることで、扉板を開放することができ、扉板を取り外す必要がなく、また締結部材を全て取り外す必要もないため、扉板を開放することに手間や時間を要しないことでケーブルを通す作業の効率を悪化させない。
【0034】
(第2扉支持構造の効果)
また、第2扉支持構造によれば、ラック開口を形成する所定の縁部、例えば下縁部を軸として上下回りに回動自在に設けた扉板の係止を解除して開くことで、筐体の外部からラック本体の内部の通線路を見ることができ、扉板の可動範囲は摺動させる場合に比べて広くなるが、扉係止部による係止及び当該係止の解除だけで扉板を開閉できるため、扉板の開閉を簡単且つ容易に行うことを可能とする。
【0035】
(ラック本体の一部を開口したラック開口の効果)
また、ラック開口が複数の通線路の各々の一部が確認できるようにラック本体に形成された場合でも、布線の作業性等を向上可能とするラック開口の大きさであれば問題なく、ラック開口を小さくできるのであれば、その分だけ扉板のサイズを小さくできるため、コスト面でメリットがある。
【0036】
(シール部材による封鎖の効果)
扉板とラック本体との間にラック開口の位置に対応してシール部材として、例えばゴムパッキン等が取り付けられているため、ラック本体と扉板との密閉性を高めることができ、より高い防水性を確保することができる。
【0037】
(通線路の出入口の封鎖による効果)
通線路の出入口を、ケーブルを通すための切り込みを有する弾力性を持つ樹脂部材により封鎖することで、ケーブルを通す作業を妨げることなく、通線路のシールド性を向上させることができる。
【0038】
(防災機器収納装置、防災機器の効果)
前述したケーブルラックを有する防災機器収納装置、及び当該防災機器収納装置を備えた防災機器についても同じ効果を有するものであるから、その説明を省略する。
【図面の簡単な説明】
【0039】
図1】トンネル用の消火栓装置を示した説明図である。
図2】消火栓装置の内部構造を扉を開いて前面から示した説明図である。
図3】消火栓装置の内部構造を上面から示した説明図である。
図4】消火栓装置のケーブルラックを右側面を部分破断して示した説明図である。
図5】消火栓装置の電装機器に対するケーブル配線系統を示した説明図である。
図6】ケーブルラックを経由した端子箱に対する電装機器の接続を等価回路で示した説明図である。
図7】ケーブルラックの第1実施形態を斜視図として示した説明図である。
図8図7のケーブルラックを前面図及び右側面図として示した説明図である。
図9】ケーブルラックの筐体取付構造を示した説明図である。
図10】第1実施形態に用いる扉板の他の例を示した説明図ある。
図11】扉板のガイド部の構造を変更した第1実施形態の変形例を示した説明図ある。
図12】ケーブルラックの第2実施形態を斜視図として示した説明図である。
図13】ケーブルラックの第3実施形態を斜視図として示した説明図である。
図14】従来の消火栓装置に設けられたケーブルラックを示した説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0040】
以下に、本発明に係るケーブルラックの実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、以下の実施形態により、本発明が限定されるものではない。
【0041】
[実施形態の基本的な概念]
まず、実施形態の基本的概念について説明する。実施形態は、概略的に、所定の装置の筐体、例えば、防災機器収納装置の一種であるトンネル用消火栓装置の筐体内にケーブルを通すための出入口を有する通線路を形成するケーブルラックであって、より具体的には、筐体内の消火栓装置の消火栓収納部を通り消火器収納部側に設置された電装機器に接続される外部から引き込まれたケーブル等のための通線路を消火栓装置の消火栓収納部に形成するケーブルラックに関するものである。
【0042】
「ケーブル」とは、導電体を用いた芯線を絶縁被覆した電線であり、電源線、信号線、伝送線、通信線などの概念を含み、また、芯線が1本の単芯ケーブルや芯線が複数の多芯ケーブルを含む概念である。また、「通線路」とは、ケーブルを通すための出入口を有し、ケーブルラック内に形成された通路であり、また、「ケーブルラック」は所定の装置の筐体に通線路を形成するものであればその形状は問わず、ケーブルを通すケーブルトレイ、ケーブルダクト、電線管などを含む概念である。
【0043】
本実施形態のケーブルラックは、ラック本体、扉板及び扉支持構造で構成されるものである。ここで、「ラック本体」とは、筐体の外部から通線路を確認できるようにラック開口が形成され、ラック開口を通して確認できる通線路を形成したものである。また、「ラック開口」は、必ずしも通線路の全てが確認できる必要はなく、ケーブルを通す作業における何かしらの作業、例えば布線作業の作業性を向上可能とする程度に通線路の一部が確認できるようにラック本体に形成されても良い。また、「通線路」は、ラック開口から確認できるのであれば、その数、各通線路のサイズ、通線路同士の配置等は任意であり、ラック本体の通線路を形成する箇所の通線路側にシールド部材が設けられていても良く、ケーブルの出入口がケーブルを通すための切り込みを有する弾力性を持つ樹脂部材で封鎖されていても良い。また、シールド部材が設けられている通線路の数や、樹脂部材で出入口を封鎖されている通線路の数も任意である。
【0044】
また、「扉板」とは、ラック開口に沿って配置される板状の扉部材である。また、ケーブルラックの防水性を向上させるために、扉板とラック本体との間にラック開口の位置に対応してゴムパッキンのようなシール部材を備えるものとしても良い。
【0045】
さらに、「扉支持構造」とは、扉板をラック開口に開閉自在に支持する構造であり、その機構や構造は任意であるが、例えば、以下の第1の扉支持構造又は第2の扉支持構造とするものである。
【0046】
ここで、「第1の扉支持構造」とは、ラック本体のラック開口に沿って扉板を閉鎖位置と開放位置との間で摺動自在に支持する構造であり、その機構や構成は任意であるが、例えば、以下の「第1の扉支持構造の詳細1~3」がある。「閉鎖位置」とは、ラック開口を閉鎖している扉板の位置のことであり、「開放位置」とは、ラック開口を通して通線路が確認できるようにラック開口を開放している扉板の位置のことである。
【0047】
まず、「第1の扉支持構造の詳細1」とは、扉板を閉鎖位置と開放位置との間で所定の1方向に摺動させるものであり、扉板は、開口されたガイド部を備え、ガイド部の上端部をラック本体のラック開口よりも上側の上縁部の位置となるように第1固定部材により支持固定され、ガイド部の下端部をラック本体のラック開口よりも下側の下縁部の位置となるように第2締結部材により支持固定されることで閉鎖位置に支持固定され、第1固定部材又は第2固定部材を取り外し、取り外していない一方の固定部材の固定を緩めることにより、開放位置に摺動可能となり、取り外していない一方の固定部材により開放位置に支持又は支持固定されるものである。
【0048】
また、「固定部材により開放位置に支持される」とは、緩めた固定部材を固定状態とすることなく扉板を支持することであり、「固定部材により開放位置に支持固定される」とは、緩めた固定部材を再び固定状態として扉板を支持固定することである。併記するのは、摺動したことで固定部材が到達する上端又は下端が開放されている場合は再び固定することになり、上端又は下端が開放されていない場合は、当該端部に固定部材を当接させて支持されるため固定を特段必要としないためである。また、上端又は下端が開放されていない場合に、端部に固定部材を当接させた状態で支持固定することを妨げるものではない。
【0049】
また、摺動方向は必ずしも決まった方向ではなく、筐体内のどの位置にケーブルラックが設置されるか、筐体のどの位置からケーブルを通す作業を行うか等、様々要因を考慮して装置毎に定められるものである。そのため、本願特許請求の範囲及び課題を解決するための手段等の説明に於いては、摺動方向が上下方向と定義して記載している。
【0050】
また、扉板が備えるガイド部の数は任意であり、扉板を支持する第1固定部材及び第2固定部材の必要な数に対応して扉板に設けられる。例えば、扉板の両側部2箇所を第1固定部材及び第2固定部材で支持固定するのであれば、ガイド部は扉板の両側部2箇所に設けられる。また、「固定部材」は扉板を閉鎖位置でラック開口を閉鎖した状態でラック本体に固定でき、またその固定状態を緩めることができるものであれば任意の固定部材で良く、例えばボルトとナットのような締結部材等を含む概念である。
【0051】
続いて、「第1の扉支持構造の詳細2」とは、扉板を閉鎖位置と開放位置との間で所定の1方向に摺動させるものであり、扉板は開口されたガイド部を備え、ガイド部の上端部をラック本体のラック開口よりも上側の上縁部の位置となるように第1固定部材により支持固定され、ガイド部の下端部をラック本体のラック開口よりも下側の下縁部の位置となるように第2固定部材により支持固定されることで閉鎖位置に支持固定され、第1固定部材及び第2固定部材を緩めることにより、開放位置に摺動可能となり、第2固定部材により開放位置に支持又は支持固定されるものである。
【0052】
また、「第1の扉支持構造の詳細2」では、ガイド部が上端部側の開口幅が下端部側の開口幅よりも狭く、第2固定部材が下端部側の開口幅は通るが上端部側の開口幅は通らないものであり、つまり、大きさが下端部側の開口幅>第2固定部材>上端部側の開口幅の関係になっているため、ガイド部の開口幅が変わる位置で第2固定部材により支持されるようになっているものである。また、「第1の扉支持構造の詳細1」では何れかの固定部材を取り外す必要があったが、「第1の扉支持構造の詳細2」では固定部材を取り外す必要はないものである。
【0053】
また、「摺動方向を上下方向とすること」、「固定部材」、「扉板が備えるガイド部の数」については「第1の扉支持構造の詳細1」と同様であり、また、ガイド部の開口幅が変わる位置に第2固定部材を当接することで開放位置に支持されることになるが、第2固定部材を当接させた状態で支持固定しても良い。
【0054】
続いて、「第1の扉支持構造の詳細3」とは、扉板を閉鎖位置と開放位置との間で所定のL字方向(2方向)に摺動させるものであり、扉板は、上端が開放されたL形又は逆L形に開口された第1ガイド部、及びL形又は逆L形の向き及びL形又は逆L形の側辺部の長さを第1ガイド部と同一として開口された第2ガイド部を備え、扉板は、第1ガイド部をラック本体のラック開口よりも上側の上縁部の位置となるように第1ガイド部の側端部に第1固定部材を通して支持固定され、第2ガイド部の上端部をラック本体のラック開口よりも上側の上縁部に位置し、下端部をラック本体のラック開口よりも下側の下縁部の位置となるように第2ガイド部の側端部に第2固定部材を通して支持固定されることで閉鎖位置に支持固定され、第1固定部材又は第2固定部材を緩め、第1固定部材に第1ガイド部を沿わせた摺動による第1ガイド部からの第1固定部材の抜け出しと、第2固定部材に沿った第2ガイド部の移動とにより、第2固定部材により開放位置に支持又は支持固定されるものである。
【0055】
「第1の扉支持構造の詳細3」では、L字方向(2方向)に摺動させるものとしたため、「第1の扉支持構造の詳細2」と同様に固定部材を取り外す必要はないものである。また「第1の扉支持構造の詳細2」では、上下方向の摺動距離が、第2固定部材の最上部の位置からガイド部の開口幅が変わる位置までと制限されるが、「第1の扉支持構造の詳細3」ではその制限はなく、閉鎖位置と開放位置との間の距離をより大きく取ることができるものである。
【0056】
「第1の扉支持構造の詳細1」と同様に、摺動方向は必ずしも決まった方向ではなく、また、扉板を閉鎖位置と開放位置との間での摺動には2方向の摺動を伴うことから、ラック開口の閉鎖状態又は開放状態とするための摺動方向が上下方向であり、当該上下方向の摺動を可能とする位置に向かう又は当該位置から離れるための摺動方向が左右方向と定義している。また、「固定部材により開放位置に支持又は支持固定される」、「固定部材」、「扉板が備えるガイド部の数」については「第1の扉支持構造の詳細1」と同様であり、厳密にL形又は逆L形である必要はない。
【0057】
また、「第2の扉支持構造」とは、ラック開口を形成する所定の縁部を軸として扉板を閉鎖位置と開放位置との間で回動自在に支持する支持部材と、扉板を閉鎖位置で係止させる扉係止部とを備え、扉係止部による扉板の係止を解除して扉板を開いてラック本体の前面側のラック開口を開放させるものである。
【0058】
以下、具体的な実施形態を説明する。以下に示す具体的な実施形態では、「所定の装置」が防災機器収納装置の一種である「トンネルに設置される消火栓装置」であり、ラック本体が「通線路」として「上下2段に分けた第1通線路と第2通線路」を形成するものであり、扉板を支持固定する「固定部材」が締結部材である「ボルトとナット」であり、「ケーブル」が「AC100V電源を供給する強電用ケーブル」と「DC48V電源を供給する弱電用ケーブル」である場合について説明する。
【0059】
[実施形態の具体的内容]
消火栓装置のケーブルラックについて、より詳細に説明する。その内容については以下のように分けて説明する。
a. 消火栓装置
b. 消火栓装置の内部構造
c. 消火栓装置のケーブル配線系統
d. ケーブルラックの第1実施形態
e. ケーブルラックの第2実施形態
f. ケーブルラックの第3実施形態
g. 本発明の変形例
【0060】
[a.消火栓装置]
本実施形態のケーブルラックが設けられる防災機器収納装置の一例となるトンネル用の消火栓装置について、より詳細に説明する。図1に示すように、消火栓装置10は、消火栓収納部側の筐体11aと消火器収納部側の筐体11bに分割された構造であり、筐体11a,11bの前面に化粧枠13a,13bが装着されている。
【0061】
消火栓収納部側の化粧枠13aの扉開口部は上下に分割され、扉開口部の下側にヒンジ12aにより下向きに開く前傾式の消火栓扉12が設置され、扉開口部の上側にヒンジ14aにより上向きに開く保守扉14が設置され、その内部である消火栓収納部にノズル付きのホースと消火栓弁を含むバルブ類が収納されている。
【0062】
消火器収納部側に設けられた化粧枠13bの扉開口部の左側には、ヒンジ18aにより左向きに横開きする消火器扉18が設けられ、内部である消火器収納部に例えば2本の消火器を収納可能としている。また、消火器扉18の下側には覗き窓29が設けられ、外部から消火器の収納状態の有無を確認可能としている。
【0063】
化粧枠13bの扉開口部の右側には、ヒンジ22aにより右向きに横開きする扉構造を有する電装パネルである電装扉22が設けられる。電装扉22には、電装機器として、例えば赤色表示灯24、発信機25及び応答ランプ26が設けられ、また電装扉22の筐体内側には電話ジャックが設けられている。
【0064】
赤色表示灯24は常時点灯し、消火栓装置10の設置場所が遠方から分かるようにしている。火災が発生した場合には、発信機25を押して押し釦スイッチをオンすると、発信信号が電気室の防災受信盤に送信されて火災警報が出され、これに伴い応答信号が防災受信盤から送られて、赤色表示灯24が点滅し、応答ランプ26が点灯する。
【0065】
[b.消火栓装置の内部構造]
消火栓装置の内部構造について、より詳細に説明する。図2乃至図4に示すように、消火栓収納部16となる筐体11aの内部は、バルブ類収納部16aとホース収納部16bに分けられている。
【0066】
バルブ類収納部16aには、外部から引き込まれた給水配管31に給水栓30が接続されると共に、給水配管31は下向きに分岐され、消火栓弁32及び自動調圧弁34を介してホース38に接続されている。消火栓弁32は消火栓弁開閉レバー36により開閉操作されるものであり、消火栓弁開閉レバー36を開閉操作すると公知のワイヤーリンク機構により消火栓弁32が遠隔的に開閉される。また、消火栓弁開閉レバー36を開閉操作すると操作ボックスに設けられた消火栓弁開閉検出スイッチがオン、オフされる。また、給水栓30の右上には消防隊が使用するポンプ起動スイッチ42が設けられている。
【0067】
ホース収納部16bには、ホース収納フレーム35が設けられ、下側から引き込んだホース38を右回り又は左回りに内巻きすることで収納しており、ホースガイド37を通して引き出されたホース38の先端にノズル40が装着され、ノズルホルダー41に着脱自在に保持されている。
【0068】
筐体11bの内部(消火器扉18側)は消火器収納部20であり、図3に示すように、2本の消火器39が収納されている。消火器収納部20の後面には端子箱28a,28bが設置されている。端子箱28aには、電装扉22に設けられた赤色表示灯24がケーブルを介して接続され、端子箱28bには、電装扉22に設けられた発信機25、応答ランプ26及び電話ジャック27がケーブルを介して接続され、更に、バルブ類収納部16aに設けられたポンプ起動スイッチ42と消火栓弁開閉検出スイッチ44がケーブルを介して接続されている。
【0069】
筐体11a内の消火栓収納部16にはケーブルラック48が設置されている。ケ-ブルラック48は、前面にラック開口が形成され、ラック開口から確認できる図4に示すような上下2段に分けられた第1通線路52と第2通線路54を形成したラック本体と、扉支持構造によりラック開口に開閉自在に支持される扉板と、を備え、筐体11a内の空きスペース、例えば、筐体11a内の上部前側の空スペース、即ち、保守扉14の裏側の空スペースに設置されている。また、図2及び図3に示すように、ケーブルラック48の左右方向の配置は、バルブ類収納部16aの略中央からホース収納部16bを通り消火器収納部20との隔壁21の手前に至る範囲での配置であり、ケーブルラック48の左端に相対する隔壁21には通線開口が開口されている。
【0070】
外部からバルブ類収納部16aに引き込まれたケーブル又はポンプ起動スイッチ42と消火栓弁開閉検出スイッチ44からのケーブルは、ケーブルラック48の右端の入口から第1通線路52又は第2通線路54に挿入され、第1通線路52又は第2通線路54を通して消火器収納部20側に引き出され、端子箱28a又は端子箱28bに接続されるものである。
【0071】
[c.消火栓装置のケーブル配線系統]
消火栓装置に設けられた電装機器に対するケーブル配線系統について、より詳細に説明する。図5に示すように、消火栓装置10に設けられる電装機器として、消火器収納部20に配置された電装扉22には、赤色表示灯24、発信機25、応答ランプ26及び電話ジャック27が設けられ、赤色表示灯24は端子箱28aの端子台に接続され、発信機25、応答ランプ26及び電話ジャック27は端子箱28bの端子台に接続されている。
【0072】
また、消火栓装置10のバルブ類収納部16aには、ポンプ起動スイッチ42と消火栓弁開閉検出スイッチ44が設けられ、ケーブルラック48を通したケーブル配線により消火栓収納部20に設けられた端子箱28bの端子台に接続されている。
【0073】
消火栓装置10のバルブ類収納部16aには外部からAC100V電源を供給する強電用ケーブル55aが引き込まれ、ケーブルラック48の第1通線路52を通して消火栓収納部20側に引き出され、端子箱28aの端子台に接続されることで、赤色表示灯26に接続されている。
【0074】
また、消火栓装置10のバルブ類収納部16aには外部からDC48V電源を供給する弱電用ケーブルとして、電話ケーブル55b、応答ランプケーブル55c及び発信機ケーブル55dが多芯ケーブルにより引き込まれ、ケーブルラック48の第2通線路54を通して消火栓収納部20側に引き出され、端子箱28bの端子台に接続されることで、電話ジャック27、応答ランプ26、発信機25に接続され、また、発信機25はケーブルラック48の第2通線路54にケーブルを通して端子箱28bに接続しているバルブ類収納部16bに設けられたポンプ起動スイッチ42と消火栓弁開閉検出スイッチ44とに接続されている。
【0075】
なお、ケーブルラック48の第2通線路54に通したケーブルにより端子箱28bに接続されるバルブ類収納部16bのポンプ起動スイッチ42と消火栓弁開閉検出スイッチ44は、図6の等価回路に示すように、発信機25との接点に並列に接続される構成となっている。
【0076】
[d.ケーブルラックの第1実施形態]
ケーブルラック48の第1実施形態について、より詳細に説明する。図7はケーブルラック48の第1実施形態を斜視図で示しており、図7(A)は扉板を閉鎖位置としてラック開口を閉じた状態を示し、図7(B)は扉板を開放位置としてラック開口を開いた状態を示している。また、図8図7に示したケーブルラック48の前面及び右側面であり、図8(A)は扉板を閉鎖位置としてラック開口を閉じた状態を示し、図8(B)は扉板を開放位置としてラック開口を開いた状態を示している。
【0077】
図7(A)及び図8(A)に示すように、ケーブルラック48は、ラック本体50と扉板56で構成されている。ラック本体50は、前面にラック開口が形成された、例えば長尺の箱形部材であり、上下2段に分けることで、長手方向に第1通線路52と第2通線路54が形成されている。また、ラック本体50のラック開口の上部に上縁部50aが一体に形成され、ラック開口の下部に下縁部50bが一体に形成され、上縁部50aの左右2箇所には、筐体側に取り付けるための取付穴65が形成されている。
【0078】
扉板56は、例えばラック本体50のラック開口、上縁部50aの一部、および下縁部50bを覆う縦幅(上下方向)と横幅(左右方向)をもった板部材であり、左右両側に上下方向に延在する長穴ガイド部58が形成され、上端は閉鎖され、下端は開放されている。
【0079】
扉板56は第1ボルト60と第2ボルト62によりラック本体50のラック開口を閉じた閉鎖位置に取付け固定されている。第1ボルト60は長穴ガイド部58の上端部及びラック本体50の上縁部50aに形成されたボルト穴64に通して、扉板56の上部をラック本体50に取付け固定している。第2ボルト62は長穴ガイド部58の下端部及びラック本体50の下縁部50bに形成されたボルト穴に通して、扉板56の下部をラック本体50に取付け固定している。なお、第1ボルト60及び第2ボルト62の取付け固定は、ラック本体50の上縁部50aに形成されたボルト穴64及び下縁部50bに形成されたボルト穴の裏側に溶接で固着されたナットにねじ込まれることで実現されている。
【0080】
図9は消火栓装置10の筐体11aに対するケーブルラック48の取付構造の一例を示している。筐体11aに対するケーブルラック48の取付構造は任意であるが、例えば、保守扉14が設けられた扉ラック開口部の上部に配置された化粧枠13aの裏側の筐体11a内の天井に設けられたL形の取付部材84の取付穴とラック本体50上縁部50aの取付穴65とにボルト86を通してケーブルラック48が取付け固定されており、ラック本体50の第1通線路52と第2通線路54の左端の出口に相対する隔壁21には通線開口82が開口されている。
【0081】
ケーブルの布線作業を行うためにケーブルラック48の扉板56を開く場合には、図9に示すように、保守扉14を開いた状態で、図7(B)及び図8(B)に示すように、第1ボルト60を緩めて取外し、続いて、第2ボルト62を緩める。これにより扉板56の固定が解除され、緩めている第2ボルト62に沿った長穴ガイド部58の移動により扉板56がスライド下降し、ラック開口が開放された開放位置に移動した状態となる。
【0082】
この結果、扉板56の開放位置への移動により、ラック開口より第1通線路52及び第2通線路54を筐体11aの外部から見ることが可能となり、配線図に従いケーブルラック48の右端の入口から第1通線路52又は第2通線路54にケーブルを入れて通し、左端の出口から引き出す作業を簡単且つ容易に、しかも効率良く行うことを可能とするものである。
【0083】
また、ケーブルラック48は第1通線路52と第2通線路54の上下2段に通線路が分けられていることで、例えば、第1通線路52に強電用ケーブルを通し、第2通線路54に弱電用ケーブルを通すことで、両者の離間距離を確実にとることができ、弱電用ケーブルに対するノイズ等の影響を確実に低減可能とするものである。
【0084】
また、ラック本体50の上縁部50aの下端の横方向にシール66として、例えばゴムパッキンが配置されており、扉板56が閉鎖位置で取付け固定された状態で上縁部50aと扉板56との間の隙間を埋めて、第1通線路52及び第2通線路54に対する外部からの水の侵入を阻止し、ケーブルラック48に通しているケーブルの劣化を確実に防止可能としている。
【0085】
図10(A)は本実施形態に用いる扉板56の他の実施形態を示した説明図であり、左右両側に上下方向に延在して形成した長穴ガイド部58として、上端及び下端が閉鎖した形状としており、図7及び図8に示した扉板56の下端が開放された長穴ガイド部58と機能は同じであるが加工の点で相違する。
【0086】
図10(B)も本実施形態に用いる扉板56の他の実施形態を示した説明図であり、第1ボルト60と第2ボルト63を緩めるだけで扉板56を開放可能としたことを特徴とする。長穴ガイド部59は、異なる2つの開口幅をもつガイド部であり、上端部側の開口幅が下端部側の開口幅よりも狭い開口幅となっており、上端は開放され、下端は閉鎖されている。
【0087】
第1ボルト60は長穴ガイド部59の開口幅の狭い上端部及びラック本体50の上縁部50aに形成されたボルト穴64に通して、扉板56の上部をラック本体50に取付け固定し、第2ボルト63は長穴ガイド部59の開口幅の広い下端部及びラック本体50の下縁部50bに形成されたボルト穴に通して、扉板56の下部をラック本体50に取付け固定することになる。ここで、第2ボルト63の直径は、長穴ガイド部59の下端部側の開口幅より小さく、上端部側の開口幅より大きいサイズとしている。つまり、第2ボルト63は、開口幅の広い下端部側に通すことはできるが、開口幅の狭い上端部側に通すことはできない直径を有している。なお、第1ボルト60及び第2ボルト63の取付け固定は、同様にラック本体50の上縁部50aに形成されたボルト穴64及び下縁部50bに形成されたボルト穴の裏側に溶接で固着されたナットにねじ込まれることで実現されている。
【0088】
扉板56を開放する場合には、第1ボルト60及び第2ボルト63を緩め、緩めている第1ボルト60及び第2ボルト63に沿った長穴ガイド部59の移動により扉板56がスライド下降し、ラック開口が開放された開放位置に移動した状態となる。
【0089】
閉鎖位置で取付固定される第2ボルト63の最上部の位置から長穴ガイド部59の開口幅が変わる位置までの距離が閉鎖位置から開放位置への移動距離Lとなる。
【0090】
また、第1ボルト60の最上部の位置から長穴ガイド部59の上端の位置までの距離が当該閉鎖位置から開放位置への移動距離Lより長く設計された場合には、上端は開放されていなくても良い。
【0091】
図11は本実施形態に用いる扉板56の他の実施形態を示した説明図であり、図10(B)と同様に第1ボルト60と第2ボルト62を緩めるだけで扉板56を開放可能としたことを特徴とする。このため、例えば扉板56の左右両側には第1ボルト60に対応して第1ガイド部58aが形成され、第2ボルト62に対応して第2ガイド部58bが形成される。
【0092】
第1ガイド部58aは上端が開放されたL形のガイド開口であり、L形の側端部に第1ボルト60を通して扉板56をラック本体50の上縁部50aに取付け固定するものである。第2ガイド部58bは上下方向に長いL形のガイド開口であり、L形の側端部に第2ボルト62を通して扉板56をラック本体50の下縁部50bに取付け固定している。ここで、第1ガイド部58a及び第2ガイド部58bのL形の側辺の長さは同一長さとしている。
【0093】
扉板56を開放する場合には、第1ボルト60及び第2ボルト62を緩め、この状態で扉板56を左方向へずらすと、第1ガイド部58a及び第2ガイド部58bのL形コーナー部が第1ボルト60及び第2ボルト62に当接する位置となり、その位置から扉板56の自重による下降に伴い、第1ボルト60が第1ガイド部58aから抜け出し、第2ガイド部58bは第2ボルト62に沿って摺動しながら下降し、第2ガイド部58bの上端部が第2ボルト62に当接する位置で停止し、ラック本体50のラック開口を開いた開放位置に扉板56が移動される。
【0094】
このように図11の実施形態は、第1ボルト60及び第2ボルト62を緩めて扉板56を左方向に動かすことで簡単に開放させることができる。なお、第1ガイド部58a及び第2ガイド部58bのL形の向きは、左右を逆にした向きとしてもよい。また、第1及び第2ガイド部58a,58bの横方向での並び位置は任意であり、逆の並び位置としてもよい。
【0095】
[e.ケーブルラックの第2実施形態]
ケーブルラック48の第2実施形態について、より詳細に説明する。図12はケーブルラック48の第2実施形態を斜視図で示しており、図12(A)は扉板を閉鎖位置としてラック開口を閉じた状態を示し、図12(B)は扉板を開放位置としてラック開口を開いた状態を示している。
【0096】
図12に示すように、本実施形態のケーブルラック48は、ラック本体50の上下2段に分けて形成した第1通線路52と第2通線路54の前面の一部となる中央部分にラック開口72を形成し、ラック開口72に扉板70を設けたものである。
【0097】
本実施形態のケーブルラック48は、ラック本体50、固定扉板68、扉板70、第1ボルト60及び第2ボルト62で構成される。
【0098】
ラック本体50は、例えば長尺の箱形部材を上下2段に分けることで、長手方向に第1通線路52と第2通線路54が形成されている。固定扉板68は、ラック本体50の前面のラック開口72以外の開口部を覆って固定されることで、中央部に第1通線路52及び第2通線路54を部分的に開放させるラック開口72が形成され、上部の左右2箇所には、筐体側に取り付けるための取付穴65が形成されている。
【0099】
扉板70は、固定扉板68により形成されたラック開口72に対応したサイズの板部材であり、左右両側に上下方向に延在する長穴ガイド部58が形成され、長穴ガイド部58は上端が閉鎖され、下端が開放されている。
【0100】
扉板70は、第1ボルト60と第2ボルト62により固定扉板68のラック開口72を覆う閉鎖位置に取付け固定されている。第1ボルト60は長穴ガイド部58の上端部及び固定扉板68の上縁部に形成されたボルト穴64に通して、扉板70の上部を固定扉板68に取付け固定している。第2ボルト62は長穴ガイド部58の下端部及び固定扉板68の下縁部に形成されたボルト穴に通して、扉板70の下部を固定扉板68に固定している。なお、第1ボルト60及び第2ボルト62の取付け固定は、固定扉板68の上縁部に形成されたボルト穴64及び下縁部に形成されたボルト穴の裏側に溶接で固着されたナットにねじ込まれることで実現されている。
【0101】
ケーブルの布線作業を行うためにケーブルラック48の扉板70を開く場合には、図12(B)に示すように、第1ボルト60を緩めて取外し、続いて、第2ボルト62を緩める。これにより扉板70の固定が解除され、第2ボルト62に沿った長穴ガイド部58の移動により扉板70が下降し、ラック本体50の中央部の第1通線路52及び第2通線路54の前面側が開放された開放位置に移動した状態となる。
【0102】
この結果、扉板70の開放位置への移動によりラック開口72から第1通線路52及び第2通線路54の中央部を筐体11aの外部から見ることが可能となり、ケーブルラック48の右端の入口から第1通線路52又は第2通線路54にケーブルを入れて通し、左端の出口から引き出す作業を簡単且つ容易に、しかも効率良く行うことを可能とするものである。
【0103】
また、第1実施形態と同様に、ケーブルラック48は第1通線路52と第2通線路54の上下2段に通線路が分けられていることで、例えば、第1通線路52に強電用ケーブルを通し、第2通線路54に弱電用ケーブルを通すことで、両者の離間距離を確実とることができ、弱電用ケーブルに対するノイズ等の影響を確実に低減可能とするものである。
【0104】
また、固定扉板68に形成された扉ラック開口72の周囲にはシール66として、例えばゴムパッキンが配置されており、扉板70が閉鎖位置で取付け固定された状態で固定扉板68と扉板70との間の隙間を埋めて、第1通線路52及び第2通線路54に対する外部からの水の侵入を阻止し、ケーブルラック48に通しているケーブルの劣化を確実に防止可能としている。なお、本実施形態の扉板70の長穴ガイド部58の代わりに、図10又は図11に示したように、上端及び下端を閉鎖した長穴ガイド部58、異なる2つの開口幅をもつ長穴ガイド部59、又はL形とした第1ガイド部58aと第2ガイド部58bを採用してもよい。
【0105】
[f.ケーブルラックの第3実施形態]
ケーブルラック48の第3実施形態について、より詳細に説明する。図13はケーブルラック48の第3実施形態を斜視図で示しており、図13(A)は扉板を閉鎖位置としてラック開口を閉じた状態を示し、図13(B)は扉板を開放位置としてラック開口を開いた状態を示している。
【0106】
図13に示すように、本実施形態のケーブルラック48は、第2実施形態の摺動により開閉される扉板70に替えて、ヒンジ76により開閉される扉板74としたことを特徴とする。
【0107】
本実施形態のケーブルラック48は、ラック本体50、固定扉板68、扉板74、ヒンジ76及びパッチン錠(スナップ錠)78で構成されるものである。
【0108】
ラック本体50は、図13の第2実施形態と同じであり、前面がラック開口された、例えば長尺の箱形部材を上下2段に分けることで、長手方向に第1通線路52と第2通線路54が形成されている。固定扉板68も第2実施形態と同様であり、ラック本体50の前面のラック開口72以外の開口部を覆って固定されることで、中央部に第1通線路52及び第2通線路54を部分的に開放させるラック開口72が形成され、上部の左右2箇所には、筐体側に取り付けるための取付穴65が形成されている。
【0109】
扉板74は、固定扉板68により形成されたラック開口72に対応したサイズの板部材であり、下縁部の支持部材として機能するヒンジ76により上下回りに開閉自在に取付けられ、また、上部に扉係止部として機能するパッチン錠78が設けられている。パッチン錠78は公知のように、固定扉板68側に配置されたリング78aに扉板74に配置されたレバー78bが係止されている。
【0110】
ケーブルの布線作業を行うためにケーブルラック48の扉板74を開く場合には、パッチン錠78のレバー78bを開いてリング78aを外すと扉板74の係止が解除され、図13(B)に示すように、ヒンジ76を中心軸として扉板74は下向きに回動してラック開口72を開放し、ラック本体50の中央部の第1通線路52及び第2通線路54の前面側が開放された開放位置となる。
【0111】
この結果、扉板74の開放位置への移動によるラック開口72の開放で第1通線路52及び第2通線路54の中央部を筐体11aの外部から見ることが可能となり、ケーブルラック48の右端の入口から第1通線路52又は第2通線路54にケーブルを入れて通し、左端の出口から引き出す作業を簡単且つ容易に、しかも効率良く行うことを可能とするものである。
【0112】
また、第1実施形態と同様に、ケーブルラック48は第1通線路52と第2通線路54の上下2段に通線路が分けられていることで、例えば、第1通線路52に強電用ケーブルを通し、第2通線路54に弱電用ケーブルを通すことで、両者の離間距離を確実とることができ、弱電用ケーブルに対するノイズ等の影響を確実に低減可能とするものである。
【0113】
また、固定扉板68に形成された扉ラック開口72の周囲にはシール66として、例えばゴムパッキンが配置されており、扉板70が閉鎖位置で取付け固定された状態で固定扉板68と扉板70との間の隙間を閉鎖し、第1通線路52及び第2通線路54に対する外部からの水の侵入を阻止し、ケーブルラック48に通しているケーブルの劣化を確実に防止可能としている。
【0114】
また、第2実施形態及び第3実施形態のラック本体50は、第1実施形態のラック本体50のように上縁部50a及び下縁部50bを設けていなく、第1実施形態のラック本体50の上縁部50a及び下縁部50bを含んだサイズの固定扉板68をラック本体50の前面に固定しているが、第1実施形態のラック本体50のように上縁部50a及び下縁部50bを設けて、固定扉板68はラック開口72以外の第1通線路52又は第2通線路54の位置に対応したラック本体50の前面を覆うように固定されても良いし、固定扉板68を設けずに、上縁部50a及び下縁部50bを設け、前面をラック開口72以外は閉鎖された構造のラック本体50のみとしても良い。
[本発明の変形例]
【0115】
本発明によるケーブルラックの変形例について、より詳細に説明する。本発明のケーブルラックは、上記の実施形態以外に、以下の変形を含むものである。
【0116】
(防災機器収納装置のケーブルラック)
上記の実施形態は、防災機器収納装置の一例として消火栓装置のケーブルラックを例にとっているが、これに限定されず、電装機器を備えた防災機器収納装置のケーブルラック、装置内にケーブルを通線させる装置であれば適用できるものであり、例えば、電装機器を配置した電装パネルが設けられる消火器箱又は単独の通報装置のケーブルラックや、ビル等の屋内に設置されている電装機器を備えた防災機器の収納箱のケーブルラック等にも適用できる。
【0117】
(ケーブルラックの設置位置及び通線作業)
上記の実施形態では、筐体11a内の上部前側の空スペースに設置され、筐体11aの前面からケーブルを通す作業を行うことを前提しているが、これに限定されず、ケーブルラックが設置される装置の空きスペースに対応してケーブルラックは設置され、ケーブルを通す作業が筐体のどの面から行われるかは装置毎で異なるものである。つまり、必ずしもラック開口はラック本体の前面に形成されるものではなく、また扉板の閉鎖位置と開放位置の移動方法や移動方向は実施形態に限られるものではなく、装置のどの場所に設置されたか、ケーブルを通す作業が筐体のどの面から行われるか等を総合考慮してラック開口の位置、扉板の開閉方法、方向等が決定されるものである。
【0118】
例えば、筐体11a内の上部の空スペースに設置され、筐体11aの上面に開口があり筐体11aの上面からケーブルを通す作業を行う場合であれば、ラック開口はラック本体の上面に形成され、扉板の閉鎖位置と開放位置の移動方向は左右方向又は前後方向となる。ここで左右方向又は前後方向は実施形態を説明するために段落0003で定義された方向であり、特許請求の範囲等で定義した扉板の摺動方向又はラック開口を閉鎖状態又は開放状態とするための扉板の摺動方向である上下方向に一致するものである。
【0119】
(ケーブルラックが形成する通線路)
上記の実施形態では、通線路を上下2段に分けた第1通線路と第2通線路としていたが、これに限定されず、複数ある弱電用ケーブルを通すための通線路を更に分けて設けても良く、また、通すケーブルが例えば弱電用ケーブルのみであり第1通線路と第2通線路に分けて設ける必要がない場合には、通線路を分けずに設けても良い。
【0120】
また、ケーブルラックが形成した通線路の入口と出口を、弾力性を持つ樹脂部材により封鎖しても良い。入口と出口を樹脂部材で塞ぐことで通線路のシールド性を向上させることができ、ノイズ等による影響を低減可能とする。また樹脂部材にケーブルを通すための切り込みを入れておくことで樹脂部材を着脱させることなく、ケーブルを通す作業を行うことができる。また、複数の通線路が形成されている場合は、全ての通線路を封鎖するのではなく、任意の通線路を封鎖するようにしても良い。
【0121】
また、通線路を形成するラック本体の内側にシールド部材、例えばシールドシートを貼付けても良い。シールドシートによりシールド性を向上させることができ、ノイズ等による影響を低減可能とする。また、実施形態のように弱電用ケーブル及び強電用ケーブルを通す場合には離間距離を確保する必要があるが、シールドシートによりノイズ等による影響を低減させているため、シールドシートを設けない場合に比べて離間距離を縮めることができ、結果としてケーブルラックの寸法を小さくすることができるため、ケーブルラックの設置場所が限られたスペースであっても設置することが可能となる。また、複数の通線路が形成されている場合は、全ての通線路に対してシールドシートを設けるのではなく、任意の通線路に対してシールドシートを設けるようにしても良い。
【0122】
(扉板が備えるガイド部)
上記の実施形態では、扉板の左右両側の2箇所にガイド部を設けていたが、当該実施形態のガイド部の位置、数に限定されるものではなく、ケーブルラックのサイズを考慮して適宣に選択される。また、第1ガイド部と第2ガイド部を設ける場合に、例えば第1ガイド部を扉板の上部中央1箇所に、第2ガイド部は扉板の左右両側の2箇所に設ける等、第1ガイド部と第2ガイド部の位置、数を合わせずに設けても良い。
【0123】
(防災機器)
上記の実施形態では、防災機器収納装置の一例として消火栓装置を取り上げて説明したが、当該ケーブルラックを有する防災機器収納装置に限らず、当該防災機器収納装置を備えた防災機器にも適用できる。
【0124】
(その他)
また、本発明は、その目的と利点を損なうことのない適宜の変形を含み、更に上記の実施形態に示した数値による限定は受けない。
【符号の説明】
【0125】
10:消火栓装置
11a,11b:筐体
12:消火栓扉
13a,13b:化粧枠
14:保守扉
16:消火栓収納部
16a:バルブ類収納部
16b:ホース収納部
18:消火器扉
20:消火器収納部
21:隔壁
22:電装扉
24:赤色表示灯
25:発信機
26:応答ランプ
27:電話ジャック
28a,28b:端子箱
30:給水栓
31:給水配管
32:消火栓弁
34:自動調圧弁
35:ホース収納フレーム
36:消火栓弁開閉レバー
37:ホースガイド
38:ホース
39:消火器
40:ノズル
42:ポンプ起動スイッチ
44:消火栓弁開閉検出スイッチ
48:ケーブルラック
50:ラック本体
50a:上縁部
50b:下縁部
52:第1通線路
54:第2通線路
56,70,74:扉板
58,59:長穴ガイド部
58a:第1ガイド部
58b:第2ガイド部
60:第1ボルト
62,63:第2ボルト
64:ボルト穴
65:取付穴
66:シール
68:固定扉板
72:ラック開口
76:ヒンジ
78:パッチン錠(スナップ錠)
78a:リング
78b:レバー
82:通線開口
84:取付部材
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14