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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022170836
(43)【公開日】2022-11-11
(54)【発明の名称】消火栓装置
(51)【国際特許分類】
   A62C 35/20 20060101AFI20221104BHJP
   A62C 33/00 20060101ALI20221104BHJP
   F16L 11/10 20060101ALI20221104BHJP
【FI】
A62C35/20
A62C33/00 C
F16L11/10 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021077074
(22)【出願日】2021-04-30
(71)【出願人】
【識別番号】000003403
【氏名又は名称】ホーチキ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100079359
【弁理士】
【氏名又は名称】竹内 進
(72)【発明者】
【氏名】梅原 寛
(72)【発明者】
【氏名】羽鳥 みのり
【テーマコード(参考)】
2E189
3H111
【Fターム(参考)】
2E189EB01
2E189LA01
3H111AA02
3H111BA11
3H111BA18
3H111BA24
3H111CB03
3H111CC02
3H111DB04
(57)【要約】
【課題】非通水状態でのホースの長さを短くすることでホース収納スペースを低減して薄型化小型化を図る。
【解決手段】消火栓装置10の筐体内に引き出し自在に収納される消火用ホース20は、ホース先端に装着されたノズル38側を所定長さの伸縮性ホース48とし、ノズル38とは反対側(ホース根本側)を残り所定長さの非伸縮性ホース46を、例えば、保形ホースとする。筐体内のホース収納スペースは、例えば、通水状態の長さを30mとすると、非通水状態では、例えば、半分の15mとなり、筐体内のホース収納スペースが半減することで、例えば、消火栓装置の奥行きを半分に薄型化可能とする。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
先端にノズルが装着された消火用ホースを筐体内に引き出し自在に収納する消火栓装置であって、
前記消火用ホースは、一部を伸縮性ホースとし、残り一部を非伸縮性ホースとしたことを特徴とする消火栓装置。
【請求項2】
請求項1記載の消火栓装置に於いて、
前記消火用ホースは、前記ノズル側の所定長さを前記伸縮性ホースとし、前記ノズルと反対側の残りの所定長さを前記非伸縮性ホースとしたことを特徴とする消火栓装置。
【請求項3】
請求項2記載の消火栓装置に於いて、
前記消火用ホースの非通水状態でのホース長を第1の設定長(L1)とし、
前記消火用ホースの通水状態でのホース長を前記第1の設定長(L1)より長い第2の設定長(L2)とし、
前記伸縮性ホースの伸長倍率を所定の設定倍率(K)とした場合、
前記第1及び第2の設定長(L1,L2)並びに前記設定倍率(K)に基づいて前記非伸縮性ホースのホース長(L3)及び前記伸縮性ホースの非通水状態でのホース長(L4)を求めて連結することを特徴とする消火栓装置。
【請求項4】
請求項3記載の消火栓装置に於いて、
前記非伸縮性ホースのホース長(L3)を
L3=(L2-K・L1)/(1-K)
として求め、前記伸縮性ホースの非通水状態でのホース長(L4)を
L4=L1-L3
として求めて連結することを特徴とする消火栓装置。
【請求項5】
請求項3記載の消火栓装置に於いて、
前記伸縮性ホースの非通水状態でのホース長(L4)を
L4=(L2-L1)/(K-1)
として求め、前記非伸縮性ホースのホース長(L3)を
L3=L1-L4
として求めて連結することを特徴とする消火栓装置。
【請求項6】
請求項2記載の消火栓装置に於いて、
前記消火用ホースの非通水状態でのホース長を第1の設定長(L1)とし、
前記消火用ホースの通水状態でのホース長を前記第1の設定長(L1)より長い第2の設定長(L2)とし、
前記非伸縮性ホースのホース長を第3の所定長(L3)とし、
前記伸縮性ホースの非通水状態でのホース長を前記第1の設定長(L1)から前記第3の所定長(L3)を差し引いた第4の設定長(L4)とした場合、
前記第2乃至第4の設定長に基づいて前記伸縮性ホースの伸長倍率(K)を求めることを特徴とする消火栓装置。
【請求項7】
請求項6記載の消火栓装置に於いて、
前記伸縮性ホースの伸長倍率(K)を
K=(L2-L3)/L4
として求めることを特徴とする消火栓装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、先端にノズルが装着された消火用ホースを筐体内に引き出し自在に収納する消火栓装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、高速道路や自動車専用道路などのトンネルに設置されるトンネル消火栓装置は、開放自在な消火栓扉を備えた筐体内に、先端にノズルを装着したホースとバルブ類を収納しており、火災発生した場合には、作業者が、消火栓扉を開き、ノズルを持ってホースを筐体から引き出して、消火栓弁を開いて消火を行う。
【0003】
トンネル用消火栓装置は、道路に沿ったトンネル長手方向に50m間隔で監視員通路の壁面に設置され、消火用ホースには保形ホースが使用されていることから、消火用ホースの長さを30mとして左右両側の防護範囲をカバー可能としている。これはトンネル長手方向に50m間隔で設置された消火栓装置の近くで火災が発生した場合、消火作業に直近の消火栓装置が使えない場合を想定し、隣接する消火栓装置を使用することを最悪のケースとして考え、このため消火栓装置から引き出される消火用ホースの有効長さを30m、ノズル放水射程を20mとして、全ての防護範囲をカバーできるようになっている(特許文献1,2)。
【0004】
ところで、消火栓装置に使用されるホースは、例えば30mといった長さを持つことが要求され、筐体の大きさはホース収納に必要なスペースに依存することになるため、保形ホースが使用される場合は、必然的に大きなホースの収納スペースを確保することになって消火栓装置が大きくなり、使い易さ、施工性、省資源などの観点から改善する余地が残されている。
【0005】
また特に、トンネル躯体の構造上、消火栓の箱抜きをトンネル壁面に形成できない場合は、例えば、監視員通路に消火栓装置が設置されることになるが、この場合、監視員通路の幅を確保するには、消火栓装置の奥行きを極力小さくすることが求められるので、消火栓装置の薄型化が望まれている。
【0006】
この問題を解決するため、消火栓装置に使用されるホースとして、放水していない非通水状態で所定の長さに縮んでおり、消火用水を供給した通水状態で、必要とされる長さに伸びる伸縮性ホースが提案されている(特許文献3)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2016-055073号公報
【特許文献2】特開2018-139704号公報
【特許文献3】特開2015-012881号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、通水状態で伸びるこのような伸縮性ホースが縮んだ状態で消火栓装置の筐体内に収納される場合、固定長である保形ホースを多重に内巻きしている従来と同じホース収納構造では、通水状態でホースが引き出される際に、ホースが伸長することで内巻き状態で収納されているホースが収納部内に強く押し付けられ、保形ホースに比べて大きな引き出し力が必要となり、操作性が下がる場合がある。
【0009】
また、伸縮性ホースが通水状態になると、ホースが伸長することで消火栓装置の外部にホースが押し出されてバラけた状態となる場合があり、ホースの引き出し量が少なくて済む近い場所の火災であっても必要以上にホースが押し出され、ホースの取り回しが行いづらくなる場合もある。
【0010】
本発明は、ホース収納スペースの低減とホース引き出し作業の操作性を両立可能とする消火用ホースを用いた消火栓装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
(消火栓装置)
本発明は、先端にノズルが装着された消火用ホースを筐体内に引き出し自在に収納する消火栓装置であって、
消火用ホースは、一部を伸縮性ホースとし、残り一部を非伸縮性ホースとしたことを特徴とする。
【0012】
(消火用ホース)
消火用ホースは、ノズル側の所定長さを伸縮性ホー、ノズルと反対側の残りの所定長さを非伸縮性ホースとし、通水時に標準長さ30m(第2の設定長(L2))となるホースとする。
【0013】
(非伸縮性ホースと伸縮性ホースのホース長設定)
消火用ホースの非通水状態でのホース長を第1の設定長(L1)とし、
消火用ホースの通水状態でのホース長を第1の設定長(L1)より長い第2の設定長(L2)とし、
伸縮性ホースの伸長倍率を所定の設定倍率(K)とした場合、
第1及び第2の設定長(L1,L2)並びに設定倍率(K)に基づいて非伸縮性ホースのホース長(L3)及び伸縮性ホースの非通水状態でのホース長(L4)を求めて連結する。
【0014】
(非伸縮性ホースのホース長の算出)
非伸縮性ホースのホース長(L3)を
L3=(L2-K・L1)/(1-K)
として求め、伸縮性ホースの非通水状態でのホース長(L4)を
L4=L1-L3
として求めて連結する。
【0015】
(伸縮性ホースの非通水状態でのホース長の算出)
伸縮性ホースの非通水状態でのホース長(L4)を
L4=(L2-L1)/(K-1)
として求め、非伸縮性ホースのホース長(L3)を
L3=L1-L4
として求めて連結する。
【0016】
(伸縮性ホースの伸長倍率設定)
消火用ホースの非通水状態でのホース長を第1の設定長(L1)とし、
消火用ホースの通水状態でのホース長を第1の設定長(L1)より長い第2の設定長(L2)とし、
非伸縮性ホースのホース長を第3の所定長(L3)とし、
伸縮性ホースの非通水状態でのホース長を第1の設定長(L1)から第3の所定長(L3)を差し引いた第4の設定長(L4)とした場合、
第2乃至第4の設定長(L2,L3,L4)に基づいて伸縮性ホースの伸長倍率(K)を求める。
【0017】
(伸長倍率の算出)
伸縮性ホースの伸長倍率(K)を
K=(L2-L3)/L4
として求める。
【発明の効果】
【0018】
(消火栓装置の効果)
本発明の消火栓装置によれば、消火用ホースの一部を通水により伸長する伸縮性ホースとし、残りの一部を固定長の非伸縮性ホースとしたことで、伸縮性ホースの非通水状態での長さが短くなり、その分、ホース収納スペースが低減され、消火栓装置を薄型化及び小型化することができ、使い易さ、施工性などを改善可能する。
【0019】
また、ホース先端のノズル側を伸縮性ホースとし、ノズル側とは反対のホース根本側を保形ホースなどの非伸縮性ホースとしたことで、通水状態でホース根本側の非伸縮性ホースは伸長しないことからホース収納状態が安定しており、ホースがバラけることなく滑らかに引き出されることを可能とする。また、ノズル側の伸縮性ホースが通水状態で伸びることで、ホース引き出し力がアシストされ、ホース引き出し力が低減して操作性が向上することを可能とする。
【0020】
(非伸縮性ホースと伸縮性ホースのホース長設定の効果)
また、トンネル用消火栓装置の場合、例えば、消火用ホースの非通水状態でのホース長を第1の設定長(L1)=15mとし、消火用ホースの通水状態でのホース長を第1の設定長(L1)より長い第2の設定長(L2)=30mとし、伸縮性ホースの伸長倍率を所定の設定倍率(K)、例えば2.5倍に設定した場合、非伸縮性ホースのホース長(L3)を
L3=(L2-K・L1)/(1-K)
=(30-2.5×15)/(1-2.5)
=5m
として求め、伸縮性ホースの非通水状態でのホース長(L4)を
L4=L1-L3=15-5=10m
として求めて連結することを可能とする。
【0021】
(伸縮性ホースの非通水状態でのホース長算出の効果)
また、(L1)=15m、(L2)=30m、(K)=2.5とする同様の条件で、伸縮性ホースの非通水状態でのホース長(L4)を
L4=(L2-L1)/(K-1)
=(30-15)/(2.5-1)
=10m
として求め、非伸縮性ホースのホース長(L3)を
L3=L1-L4=15-10=5m
として求めて連結することも可能となる。
【0022】
(伸縮性ホースの伸長倍率設定による効果)
また、トンネル用の消火栓装置の場合、例えば、消火用ホースの非通水状態でのホース長を第1の設定長(L1)=15mとし、消火用ホースの通水状態でのホース長を第1の設定長(L1)より長い第2の設定長(L2)=30mとし、非伸縮性ホースのホース長を第3の所定長(L3)=5mとし、伸縮性ホースの非通水状態でのホース長を第4の設定長(L4)=10mとして予め決められた場合、第2乃至第4の設定長(L2,L3,L4)に基づいて伸縮性ホースの伸長倍率(K)を
K=(L2-L3)/L4
=(30-5)/10
=2.5
として求め、長さ10mの伸縮性ホースとして伸長倍率Kが2.5倍のものを準備して5mの非伸縮性ホースと連結することを可能とする。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】トンネル用の消火栓装置を示した説明図である。
図2】消火栓装置の内部構造を、消火栓扉を開いて正面から示した説明図である。
図3】消火栓装置の内部構造を平面から示した説明図である。
図4】消火栓装置の側面から見た断面を示した説明図である。
図5】消火用ホースの実施形態を非通水状態と通水状態に分けて示した説明図である。
図6】非伸縮性ホースを5m、非通水の伸縮性ホースを10mに設定した場合の消火用ホースの具体的な実施形態を示した説明図である。
図7】非伸縮性ホースを7.5m、非通水の伸縮性ホースを7.5mに設定した場合の消火用ホースの具体的な実施形態を示した説明図である。
図8】非伸縮性ホースを10m、非通水の伸縮性ホースを5mに設定した場合の消火用ホースの具体的な実施形態を示した説明図である。
図9】伸縮性ホースを分割して非伸縮性ホースと連結した消火用ホースを用いた消火栓装置の実施形態を示した説明図である。
図10】非伸縮性ホースを分割して伸縮性ホースと連結した消火用ホースを用いた消火栓装置の実施形態を示した説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下に、本発明に係る消火栓装置の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、以下の実施形態により、本発明が限定されるものではない。
【0025】
[実施形態の基本的な概念]
まず、実施形態の基本的概念について説明する。実施形態は、概略的に、先端にノズルが装着された消火用ホースを筐体内に引き出し自在に収納する消火栓装置であって、消火用ホースは、一部を伸縮性ホースとし、残りの一部を非伸縮性ホースとするものであり、典型的には、ノズル側の所定長さを伸縮性ホースとし、ノズルと反対側の残りの所定長さを非伸縮性ホースとするものである。
【0026】
ここで、「伸縮性ホース」とは、非通水状態で所定長に縮んでおり、通水状態で長手方向に伸長するホースである。また、「非伸縮性ホース」とは、非通水状態と通水状態とで長さが変化しない伸び縮みしないホースであり、例えば、所定の内径と外形が保持される殆ど伸び縮みしない保形ホースを含む概念である。このため本実施形態の消火用ホースは、非伸縮性ホースと伸縮性ホースを連結し、通水状態で全体としてホースが伸びる複合ホースということができる。
【0027】
トンネル用の消火栓装置の場合、通水状態での消火用ホースのホース長は、例えば、30mであるが、本実施形態の非伸縮性ホースと伸縮性ホースを連結した消火用ホースにあっては、非通水状態でのホース長は、例えば、半分の15mであり、そのため、消火栓装置のホース収納スペースを、伸縮しない従来のホース長30mの消火用ホースと比較して半分程度に低減することを可能とするものである。このようにホース収納スペースが半減できると、例えば、消火栓装置の奥行方向の幅を、従来装置に比べ半分の幅とすることを可能とし、消火栓装置を薄型化することで、施工性を大きく改善可能とするものである。
【0028】
また、非伸縮性ホースと伸縮性ホースを連結した消火用ホースを用いた消火栓装置にあっては、消火用ホースの非通水状態でのホース長(L1)と通水状態で伸長するホース長(L2),及び伸縮性ホースの伸長倍率(K)が予め決まっていることから、これらに基づいて非伸縮性ホースのホース長(L3)及び伸縮性ホースの非通水状態でのホース長(L4)を求めて連結するものである。なお、「伸長倍率」とは、通水状態で伸びた伸縮性ホースのホース長を、非通水状態で縮んでいる伸縮性ホースのホース長で割った値である。
【0029】
ここで、各ホース長L1,L2,L3,L4の間には
L1=L3+L4
L2=L3+K・L4
の関係があることから、例えば、非伸縮性ホースのホース長(L3)を
L3=(L2-K・L1)/(1-K)
として求め、伸縮性ホースの非通水状態でのホース長(L4)を
L4=L1-L3
として求めて連結するものである。
【0030】
また、伸縮性ホースの非通水状態でのホース長(L4)を
L4=(L2-L1)/(K-1)
として求め、非伸縮性ホースのホース長(L3)を
L3=L1-L4
として求めて連結してもよい。
【0031】
また、各ホース長L1,L2,L3,L4が予め設定された場合、伸縮性ホースとしてどのような伸長倍率Kのものを使用するかを決める必要がある。この場合には、伸縮性ホースの伸長倍率(K)を
K=(L2-L3)/L4
として求め、この伸長倍率をもつホース長L4の伸縮性ホースをホース長L3の非伸縮性ホースと連結して本実施形態の放水用ホースとするものである。
【0032】
以下、具体的な実施形態を説明する。以下に示す具体的な実施形態では、「消火栓装置」が「トンネル用の消火栓装置」であり、「非通水状態での消火用ホースのホース長L1」が「L1=15m」であり、「通水状態で伸長した消火ホースのホース長L2」が「L2=30m」である場合について説明する。
【0033】
[実施形態の具体的内容]
消火栓装置の詳細な内容について、以下のように分けて説明する。
a.消火栓装置
b.消火栓装置の内部構造
c.伸縮性ホース
d.非伸縮性ホースと伸縮性ホースのホース長
e.消火用ホースの具体例1
f.消火用ホースの具体例2
g.消火用ホースの具体例3
h.非伸縮性ホースと伸縮性ホースの分割連結
i.本発明の変形例
【0034】
[a.消火栓装置]
消火栓装置について、より詳細に説明する。図1に示すように、消火栓装置10は、消火栓側の筐体10aと消火器側の筐体10bに分割された構造であり、筐体10a,10bの前面に化粧枠11a,11bが装着され、架台15上に設置されている。ここで、図1の説明では、X-Y-Z方向が互いに直交する方向であり、具体的には、X方向が左右方向であり、Y方向が上下方向であり、Z方向が前後方向(奥行方向)となる。X方向における+Xは右となり、-Xは左となり、Y方向における+Yは上となり、-Yは下となる。また、さらに、Z方向における+Zは後(設置状態でトンネル壁面側又は監視員通路側)となり、-Zは前(設置状態で道路側)となる。この点は、消火栓装置10の内部構造を示す図2図4においても同様となる。
【0035】
消火栓側の化粧枠11aの扉開口部は上下に分割され、下側扉開口部にヒンジ12aにより下向きに開く前傾式の消火栓扉(下扉)12が配置され、上側扉開口部にヒンジ14aにより上向きに開く保守扉(上扉)14が配置され、その内部にノズル付きのホースと消火栓弁を含むバルブ類が収納部されている。
【0036】
消火器側の化粧枠11bの扉開口部の左側には、ヒンジ18aにより左に横開きする消火器扉18が設けられ、内部に2本の消火器を収納可能としている。また、消火器扉18の下側には覗き窓19が設けられ、外部から消火器の収納状態の有無を確認可能としている。
【0037】
消火器側の化粧枠11bの扉開口部の右側には、ヒンジ22aにより右に横開きする扉構造の電装パネル22が設けられている。電装パネル22には、電装機器として、赤色表示灯24、発信機25及び応答ランプ26が設けられ、また電装パネル22の内側には電話ジャック(図示せず)が設けられている。
【0038】
赤色表示灯24は常時点灯し、消火栓装置10の設置場所が遠方から分かるようにしている。火災が発生した場合には、発信機24が押されて押し釦スイッチがオンすると、発信信号が監視室の防災受信盤に送信されて火災警報が出され、これに伴い応答信号が防災受信盤から送られて、赤色表示灯24が点滅し、応答ランプ26が点灯する。
【0039】
[b.消火栓装置の内部構造]
消火栓装置の内部構造について、より詳細に説明する。図2図4に示すように、消火栓収納部16となる筐体11aの内部は、バルブ類収納部16aとホース収納部16bに分けられている。
【0040】
バルブ類収納部16aには、外部から給水配管28が引き込まれて給水栓30に接続され、また、給水配管28は下向きに分岐され、消火栓弁32及び自動調圧弁33が設けられ、続いて消火用ホース20が接続されている。消火栓弁32は、消火栓消扉12に設けられた消火栓弁開閉レバー34により開閉操作されるものであり、消火栓弁開閉レバー34を開閉操作すると公知のワイヤーリンク機構により消火栓弁32が遠隔的に開閉される。また、消火栓弁開閉レバー34を開閉操作すると、レバー操作ボックスに設けられた消火栓弁開閉検出スイッチがオン、オフされる。また、給水栓30の右上には消防隊が使用するポンプ起動スイッチ42が設けられている。
【0041】
ホース収納部16bには、ホース収納フレーム35が設けられ、下部右側の給水配管に接続された消火用ホース20を時計回りに内巻きすることで収納しており、ホースガイド36を通して引き出された消火用ホース20の先端にノズル38が装着され、ノズルホルダー40に着脱自在に保持されている。
【0042】
消火用ホース20は、ノズル38側を所定の設定長L4の伸縮性ホースとし、ノズル38とは反対側のバルブ類収納部16bからの給水配管に接続されているホース根本側を所定の設定長L3の非伸縮性ホース、例えば、保形ホースとし、両者を連結した複合ホースとしている。本実施形態では、非伸縮性ホースと伸縮性ホースを連結した消火用ホース20の非通水状態でのホース長を第1設定長L1=15mとし、従来のホース長30mに対し半分のホース長としている。
【0043】
このため図3及び図4に示すように、本実施形態の消火用ホース20を収納するホース収納部16bの奥行方向の幅W1は、ホース長30mの消火用ホースを収納する従来の消火栓装置100におけるホース収納部の奥行方向の幅W2の略半分に低減させることができ、消火栓装置10が大きく薄型化される。ここで、消火栓装置10における筐体10bの内部(消火器扉18の内側)には、図3に示すように、2本の消火器39が収納されており、消火栓装置10の奥行方向の幅W1は、少なくとも消火器39を収納できる幅とする必要があり、これに基づきホース収納部16bの奥行方向の幅W1は15cm程度まで低減可能とするものである。
【0044】
[c.伸縮性ホース]
消火用ホース20のノズル側となる伸縮性ホースについて、より詳細に説明する。伸縮性ホースは、非通水状態で所定の設定長に縮んでおり、通水状態で長手方向に伸長するものであり、そのホース構造は任意であるが、例えば、水と直接触れる通水面に設けた水密層と、水密層の外側に設けたカバー層の2層構造としている。
【0045】
水密層は、所定の伸長倍率Kにより伸縮自在で、水を通さない素材で形成している。水密層を形成する素材は、無負荷状態の長さを1とした場合、トンネル消火栓装置を例にとると、1MPaの消火用水の通水状態で、少なくとも1.5乃至8倍に伸びる所定の伸長倍率Kを有する合成ゴム又は所定の合成樹脂を使用する。
【0046】
カバー層は、水密層の外側に貼り合わされるか又は密着して外装され、水密層の伸び率と同等又はそれ以下の伸び率により伸縮自在で、1MPaの消火用水の通水に伴う水圧に耐えられる強度を有する素材で形成している。またカバー層は、トンネル消火栓としての消火用ホース10を引き出した場合に路面と擦れることから、摩擦が少なく、擦れに耐える耐磨耗性を有する素材とする。
【0047】
カバー層を形成する素材は、通水状態で1.5乃至8倍又はそれ以下の伸長倍率Kを有する所定の繊維又は所定の合成樹脂である。カバー層に繊維を使用した場合、通水状態で1.5乃至8倍又はそれ以下の伸長倍率Kを有する経糸と横糸による編み構造とし、横糸は螺旋状とする。編み構造を持つカバー層を構成する繊維としては、例えば人工合成によるクモ糸を使用することができる。このような人工合成のクモ糸としては、スパイバー株式会社製造の商品名「スパイバー(登録商標)」を使用することができる。
【0048】
[d.非伸縮性ホースと伸縮性ホースのホース長]
本実施形態の消火用ホース20を構成する非伸縮性ホースと伸縮性ホースのホース長について、より詳細に説明する。
【0049】
図5(A)は、非通水状態の消火用ホース20が消火栓装置10のホース収納部16bから直線的に引き出された状態を示し、図5(B)は通水状態で消火用ホース20が伸長した状態を示している。
【0050】
図5(A)に示すように、非通水状態の消火用ホース20は、非伸縮性ホース46と伸縮性ホース48を連結しており、消火用ホース20の非通水状態でのホース長を第1の設定長L1とし、図5(B)に示すように、消火用ホース20の通水状態でのホース長を第2の設定長L2とし、伸縮性ホース48の伸長倍率を所定の設定倍率Kとした場合、第1及び第2の設定長L1,L2並びに設定倍率Kに基づいて非伸縮性ホース46のホース長L3及び伸縮性ホース48の非通水状態でのホース長L4を求めて連結することになる。
【0051】
ここで、ホース長(L1,l2,L3,L4)の間には
L1=L3+L4
L2=l3+K・L4
の関係があることから、ホース長L1,l2及び伸長倍率Kを定数として、非伸縮性ホース46のホース長L3を変数として解くと
L3=(L2-K・L1)/(1-K) (式1)
として求めることができ、伸縮性ホース48の非通水状態でのホース長L4は
L4=L1-L3
として求まる。
【0052】
また、伸縮性ホース48の非通水状態でのホース長L4を変数として解くと
L4=(L2-L1)/(K-1) (式2)
として求めることができ、非伸縮性ホースのホース長L3は
L3=L1-L4
として求まる。
【0053】
また、非伸縮性ホース46と伸縮性ホース48を連結した消火用ホース20の別の設定手順として、各ホースの設定長L1,L2,L3,L4を定数として予め設定し、このホース設定長を満たす伸縮性ホース48の伸長倍率Kを変数として決定し、決定した伸長倍率Kの伸縮性ホース48を選択する手順がある。この場合、伸縮性ホース48の伸長倍率Kは
K=(L2-L3)/L4 (式3)
として求めることができる。
【0054】
[e.消火用ホースの具体例1]
図6は、伸長倍率K=2.5の伸縮性ホース48を用いた消火用ホース20の具体例を示したものであり、図6(A)に非通水状態を示し、図6(B)に通水状態を示している。ここで、消火用ホース20の非通水状態の第1設定長L1は15m、通水状態での伸長した第2設定長L2は30m、伸長倍率Kは2.5の定数としている。
【0055】
この場合、非伸縮性ホース46の第3設定長L3は、前記(式1)から
L3=(L2-K・L1)/(1-K)
=(30-2.5×15)/(1-2.5)
=5m
となり、伸縮性ホース48の第4設定長L4は
L4=L1-L3=15-5=10m
となる。即ち、非通水状態で非伸縮性ホース46と伸縮性ホース48のホース長の比率は(1:2)となる。
【0056】
一方、前記(式2)から伸縮性ホース48の第4設定長L4として
L4=(L2-L1)/(K-1)
=(30-15)/(2.5-1)
=10m
を求め、非伸縮性ホース46の第3設定長L3を
L3=L1-L4=15-10=5m
として求めてもよい。
【0057】
また、各ホースの第1乃至第4設定値L1,L2,L3,L4を
L1=15m
L2=30m
L3=5m
L4=10m
の定数として予め設定している場合には、前記(式3)に基づき、変数となる伸縮性ホース48の伸長倍率Kを
K=(L2-L3)/L4
=(30-5)/10
=2.5
として求め、伸長倍率K=2.5の伸縮性ホースを選定して消火用ホース20を製造することになる。
【0058】
[f.消火用ホースの具体例2]
図7は、伸長倍率K=3.0の伸縮性ホース48を用いた消火用ホース20の他の具体例を示したものであり、図7(A)に非通水状態を示し、図7(B)に通水状態を示している。
【0059】
ここで、L1=15m、L2=30m、K=3.0の定数となることから非伸縮性ホース46の第3設定長(L3)は前記(式1)から
L3=(L2-K・L1)/(1-K)
=(30-3.0×15)/(1-3.0)
=7.5m
となり、伸縮性ホース48の第4設定長L4は
L4=L1-L3=15-7.5=7.5m
となる。即ち、非通水状態で非伸縮性ホース46と伸縮性ホース48のホース長の比率は(1:1)となる。
【0060】
一方、前記(式2)から伸縮性ホース48の第4設定長L4として
L4=(L2-L1)/(K-1)
=(30-15)/(3.0-1)
=7.5m
を求め、非伸縮性ホース46の第3設定長L3を
L3=L1-L4=15-7.5=7.5m
として求めてもよい。
【0061】
また、各ホースの第1乃至第4設定値L1,L2,L3,L4を
L1=15m
L2=30m
L3=7.5m
L4=7.5m
の定数として予め設定している場合には、前記(式3)に基づき、変数となる伸縮性ホース48の伸長倍率Kを
K=(L2-L3)/L4
=(30-7.5)/7.5
=3.0
として求め、伸長倍率K=3.0の伸縮性ホースを選定して消火用ホース20を製造することになる。
【0062】
[g.消火用ホースの具体例3]
図8は、伸長倍率K=4.0の伸縮性ホース48を用いた消火用ホース20の他の具体例を示したものであり、図8(A)に非通水状態を示し、図8(B)に通水状態を示している。
【0063】
ここで、L1=15m、L2=30m、K=4.0の定数となることから非伸縮性ホース46の第3設定長L3は前記(式1)から
L3=(L2-K・L1)/(1-K)
=(30-4.0×15)/(1-4.0)
=10m
となり、伸縮性ホース48の第4設定長L4は
L4=L1-L3=15-10=5m
となる。即ち、非通水状態で非伸縮性ホース46と伸縮性ホース48のホース長の比率は(2:1)となる。
【0064】
一方、前記(式2)から伸縮性ホース48の第4設定長L4として
L4=(L2-L1)/(K-1)
=(30-15)/(4.0-1)
=5m
を求め、非伸縮性ホース46の第3設定長L3を
L3=L1-L4=15-5=10m
として求めてもよい。
【0065】
また、各ホースの第1乃至第4設定値L1,L2,L3,L4を
L1=15m
L2=30m
L3=10m
L4=5m
の定数として予め設定している場合には、前記(式3)に基づき、変数となる伸縮性ホース48の伸長倍率Kを
K=(L2-L3)/L4
=(30-10)/5
=4.0
として求め、伸長倍率K=4.0の伸縮性ホースを選定して消火用ホース20を製造することになる。
【0066】
以上の具体例1~3は一例であり、必要に応じてホース長L1,L2及び伸長倍率Kを任意の定数として変数となるホース長L3,L4を求めるか、あるいは、ホース長L1,L2,L3,L4を定数として変数となる伸長倍率Kを求めるものである。
【0067】
[h.非伸縮性ホースと伸縮性ホースの分割連結]
非伸縮性ホース又は伸縮性ホースの何れか一方を分割して他方と連結する消火用ホースについて、より詳細に説明する。このような消火用ホースは、一部分を伸縮用ホースとし、残りの部分を非伸縮性ホースとする消火用ホースの一形態をなすものである。
【0068】
図9は、伸縮性ホースを分割して非伸縮性ホースと連結した消火用ホースを用いた消火栓装置の実施形態であり、図9(A)に非通水状態を示し、図9(B)に通水状態を示している。
【0069】
ここで、消火用ホース20の非通水状態の第1設定長L1は15m、通水状態での伸長した第2設定長L2は30m、伸縮性ホース48の伸長倍率Kは2.5の定数としている。また、非伸縮性ホース48のホース長は例えば5mであり、その両側に5mに分割した伸縮性ホース48a,48bを連結し、伸縮性ホース48aのホース端を消火栓装置10のホース収納部16bの給水配管に接続し、伸縮性ホース48bの先端にノズル38を装着している。
【0070】
このような非伸縮性ホース46の両側に伸縮性ホース48a,48bを連結した消火用ホース20に通水すると、図9(B)に示すように、伸縮性ホース48a,48bは伸長倍率K=2.5に対応してそれぞれ12.5mに伸長し、全体としてのホース長L2が30mに伸びた状態でノズル38から放水が行われる。
【0071】
伸縮性ホース48aを給水配管に接続してホース収納部16bに収納する場合、通水状態では、伸縮性ホース48aが伸長することでホース根本側がホース収納部16bの内側に強く押し付けられ、この部分の引き出し力が大きくなるおそれがあるが、伸縮性ホース48bが伸長することでノズル38側がホース収納部16bの外部に押し出され、少なくとも非伸縮性ホース46までは滑らかに引き出されることを可能とする。
【0072】
図10は、非伸縮性ホースを分割して伸縮性ホースと連結した消火用ホースを用いた消火栓装置の他の実施形態であり、図10(A)に非通水状態を示し、図10(B)に通水状態を示してする。
【0073】
ここで、消火用ホース20の非通水状態の第1設定長L1は15m、通水状態での伸長した第2設定長L2は30m、伸縮性ホース48の伸長倍率Kは4.0の定数としている。伸縮性ホース48のホース長は例えば5mであり、その両側に5mに分割した非伸縮性ホース46a,46bを連結し、非伸縮性ホース46aのホース端を消火栓装置10のホース収納部16bの給水配管に接続し、非伸縮性ホース46bの先端にノズル38を装着している。
【0074】
このような伸縮性ホース48の両側に非伸縮性ホース46a,46bを連結した消火用ホース20に通水すると、図10(B)に示すように、伸縮性ホース48は伸長倍率K=4.0に対応して20mに伸長し、全体としてのホース長L2が30mに伸びた状態でノズル38から放水が行われる。
【0075】
図9及び図10は、非伸縮性ホース又は伸縮性ホースの何れか一方を分割して他方と連結する消火用ホースの一例であり、これに限定されず、両者のホース長の比率や伸縮性ホースの伸長倍率を必要に応じて任意に定めた消火用ホースを含むものである。また、非伸縮性ホース又は伸縮性ホースの何れか一方を分割する以外に、両方を分割して交互に連結した消火用ホースを含むものである。
【0076】
[i.本発明の変形例]
本発明による車載情報表示装置の変形例について、より詳細に説明する。本発明の消火栓装置は、上記の実施形態以外に、以下の変形を含むものである。
【0077】
(消火栓装置)
上記の実施形態は、トンネル用の消火栓装置を例にとっているが、これに限定されず任意であり、例えばノズル付きホースを収納している屋内消火栓、屋外消火栓、及びホース格納箱、消防ポンプ自動車などを含むものである。
【0078】
(その他)
また、本発明は、その目的と利点を損なうことのない適宜の変形を含み、更に上記の実施形態に示した数値による限定は受けない。
【符号の説明】
【0079】
10:消火栓装置
10a,10b:筐体
11a,11b:化粧枠
12:消火栓扉
14:保守扉
15:架台
16:消火栓収納部
16a:バルブ類収納部
16b:ホース収納部
18:消火器扉
20:消火用ホース
22:電装パネル
24:赤色表示灯
25:発信機
26:応答ランプ
28:給水配管
30:給水栓
32:消火栓弁
33:自動調圧弁
34:消火栓弁開閉レバー
35:ホース収納フレーム
36:ホースガイド
38:ノズル
39:消火器
40:ノズルホルダー
42:ポンプ起動スイッチ
46,46a,46b:非伸縮性ホース
48,48a,48b:伸縮性ホース
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10