(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022170840
(43)【公開日】2022-11-11
(54)【発明の名称】作業車両
(51)【国際特許分類】
E02F 3/43 20060101AFI20221104BHJP
E02F 9/20 20060101ALI20221104BHJP
E02F 9/26 20060101ALI20221104BHJP
G05B 13/02 20060101ALI20221104BHJP
【FI】
E02F3/43 P
E02F3/43 F
E02F9/20 Q
E02F9/26 B
G05B13/02 L
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021077080
(22)【出願日】2021-04-30
(71)【出願人】
【識別番号】000005522
【氏名又は名称】日立建機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002572
【氏名又は名称】弁理士法人平木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】パンディ ジョツナ
(72)【発明者】
【氏名】一野瀬 昌則
(72)【発明者】
【氏名】塚田 庸子
(72)【発明者】
【氏名】堤 芳明
(72)【発明者】
【氏名】井村 進也
【テーマコード(参考)】
2D003
2D015
5H004
【Fターム(参考)】
2D003AA01
2D003AB03
2D003AB04
2D003BA02
2D003BA03
2D003CA02
2D003DA03
2D003DA04
2D003DB01
2D003DB02
2D003DB03
2D003DB04
2D003DB05
2D003DC02
2D003DC07
2D003FA02
2D015CA01
2D015HA03
2D015HB01
2D015HB02
2D015HB03
2D015HB04
2D015HB05
5H004GA14
5H004KC35
5H004KC50
5H004KC56
5H004KD32
(57)【要約】
【課題】掘削物の類型を正確に判定して掘削動作の効率を向上させることが可能な作業車両を提供する。
【解決手段】制御装置150は、掘削反力に基づいて掘削対象の複数の類型に対する信頼度を算出し、算出した信頼度とあらかじめ設定された補正値に基づいて掘削対象の類型を判定し、判定した類型に基づいてリフトアームとバケットを制御して掘削動作を実行する。また、制御装置150は、バケット内の掘削対象の荷重に基づいて掘削動作における掘削対象の掘削量を算出し、その掘削量に基づいて掘削対象の掘削評価値を算出し、その掘削評価値に基づいて各々の類型に対する信頼度の補正値を更新する。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体と、
前記車体に支持されて駆動力を発生するエンジンと、
前記エンジンによって駆動される油圧ポンプと、
前記車体に回動可能に一端側が取り付けられたリフトアームと、
前記リフトアームの他端側に回動可能に取り付けられたバケットと、
前記油圧ポンプの供給する作動油によって伸縮し、前記リフトアームを回動させるリフトシリンダと、
前記油圧ポンプの供給する作動油によって伸縮し、前記バケットを回動させるバケットシリンダと、
前記油圧ポンプから前記リフトシリンダに供給される作動油の流量を制御するリフト制御弁と、
前記油圧ポンプから前記バケットシリンダに供給される作動油の流量を制御するバケット制御弁と、
掘削対象から前記リフトアームに作用する掘削反力を検出するための掘削反力検出装置と、前記バケットおよび前記リフトアームを制御する制御装置と、
を備えた作業車両であって、
前記制御装置は、
前記掘削反力検出装置により検出された掘削反力に基づいて地質区分を表す複数の類型のそれぞれに対して、掘削対象の類型と合致する度合いを表す信頼度を算出し、
算出された複数の信頼度と前記複数の信頼度にそれぞれ対応する複数の補正値とに基づいて前記掘削対象の類型を判定し、
判定された類型に基づいて前記リフト制御弁と前記バケット制御弁とに指令を出力して、掘削動作を実行し、
前記掘削動作によって得られた前記バケット内の掘削対象の荷重に基づいて前記掘削動作における掘削量を算出し、
算出された前記掘削量に基づいて前記掘削対象の掘削評価値を算出し、
算出された前記掘削評価値に基づいて前記複数の補正値を更新することを特徴とする作業車両。
【請求項2】
前記制御装置は、
前記掘削反力検出装置により検出された掘削反力の特徴を信号として抽出する特徴抽出部と、
前記特徴抽出部により抽出された信号に基づいて前記掘削対象の複数の類型に対する信頼度を算出する機械学習部と、を備え、
前記機械学習部は、前記特徴抽出部により抽出された信号をニューラルネットワークモデルに入力して前記複数の信頼度を算出することを特徴とする請求項1に記載の作業車両。
【請求項3】
前記エンジンの運転状態を検出する運転状態検出装置をさらに備え、
前記運転状態検出装置は、前記エンジンの回転数と前記エンジンの出力トルクとを検出し、
前記特徴抽出部は、さらに、前記運転状態検出装置により検出された前記エンジンの回転数と前記エンジンの出力トルクの特徴を信号として抽出し、前記機械学習部に出力することを特徴とする請求項2に記載の作業車両。
【請求項4】
前記作業車両の走行状態を検出する走行状態検出装置をさらに備え、
前記走行状態検出装置は、前記作業車両の速度と前記作業車両の加速度を検出し、
前記特徴抽出部は、さらに、前記走行状態検出装置により検出された前記作業車両の速度と前記作業車両の加速度のそれぞれの特徴を信号として抽出し、前記機械学習部に出力することを特徴とする請求項3に記載の作業車両。
【請求項5】
前記リフトアームのリフト角と前記バケットのチルト角を検出する角度検出装置をさらに備え、
前記特徴抽出部は、さらに、前記角度検出装置により検出された前記リフトアームのリフト角と前記バケットのチルト角のそれぞれの特徴を信号として抽出し、前記機械学習部に出力することを特徴とする請求項4に記載の作業車両。
【請求項6】
前記エンジンの燃料の残量を時系列で検出する燃料量検出装置をさらに備え、
前記掘削反力検出装置は、時系列で前記掘削反力を検出し、
前記制御装置は、
前記燃料の残量に基づいて燃費を算出し、
前記掘削反力検出装置に基づいて前記掘削動作に要した掘削時間を算出し、
前記掘削量と前記掘削時間と前記燃費とにそれぞれ対応する所定の重み係数を乗じ、積算して前記掘削評価値を算出することを特徴とする請求項3に記載の作業車両。
【請求項7】
前記制御装置は、
前記掘削評価値が第1しきい値以上の場合に、判定された前記類型の信頼度に対して増加させる補正値を算出し、他方の複数の類型の信頼度に対して減少させる補正値を算出し、
前記掘削評価値が前記第1しきい値よりも小さい場合に、判定された前記類型の信頼度に対して減少させる補正値を算出し、他方の複数の類型の信頼度に対して増加させる補正値を算出し、
前記複数の類型のうち、信頼度と対応する補正値との和が最も大きい類型を掘削対象の類型と判定することを特徴とする請求項1に記載の作業車両。
【請求項8】
前記作業車両の走行状態を検出する走行状態検出装置と、
前記リフトアームのリフト角と前記バケットのチルト角を検出する角度検出装置と、
をさらに備え、
前記走行状態検出装置は、
前記作業車両の速度と前記作業車両の加速度を検出し、
前記制御装置は、
前記走行状態検出装置により検出された作業車両の加速度が第2しきい値より小さく、前記掘削反力検出装置により検出された掘削反力が第3しきい値より大きい場合に、前記バケットが前記掘削対象へ突入している状態であると判定し、
前記掘削反力検出装置により検出された掘削反力が第4しきい値より大きく、前記角度検出装置により検出されたリフト角が第5しきい値より大きく、前記角度検出装置により検出されたチルト角が第6しきい値より大きい場合に、前記掘削動作が完了した状態であると判定することを特徴とする請求項1に記載の作業車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、作業車両に関する。
【背景技術】
【0002】
従来からホイールローダに関する発明が知られている(下記特許文献1)。特許文献1に記載されたホイールローダは、作業機と、取得部と、制御部とを備える(同要約、請求項1、第0012段落等)。作業機は、バケットを含む。取得部は、掘削対象物の土質に関する土質情報を取得する。制御部は、取得部で取得した土質情報に基づき作業機のバケットによる掘削対象物に対する掘削動作を制御する。
【0003】
特許文献1に記載のホイールローダによれば、制御部は、掘削対象物の土質情報に基づき掘削動作を制御するため、掘削対象物に応じた掘削姿勢による効率的な掘削動作が可能である(同第0013段落)。
【0004】
また、土工作業におけるロボット機械の制御パラメータを修正する学習アルゴリズムに関する発明が知られている(下記特許文献2)。特許文献2に記載された学習アルゴリズムは、機械の環境に関する知覚情報を提供する1つ以上のセンサ・システムを含む(同第0010段落、
図1)。
【0005】
このセンサ・システムによって提供される情報は、知覚システムによって処理される。この知覚システムは、積載容器の認識ならびにその位置および向きの判断、掘削する所定の区域の判断、掘削物を荷降ろしする所定の区域の判断、および、障害物の検出といった機能を実行する(同第0010段落、
図1)。
【0006】
特許文献2に記載された学習アルゴリズムは、知覚システムで処理された情報とともに過去の動作結果を用いてスクリプト・パラメータを計算する。それらのパラメータは、スクリプトにおいて使用される。スクリプトは、要求された作業を遂行するために機械の可動構成要素を位置決めするための命令をコントローラに発する(同第0010段落、
図1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2017-043885号公報
【特許文献2】特開平11-315556号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1に記載されたホイールローダは、取得部がカメラから取得した画像データの解析結果に基づいて土質情報を取得する(同第0081段落-第0084段落、
図5等)。そのため、たとえば天候などによって画像データの精度が低下すると、土質が誤判定され、土質に対応した適切な掘削動作が行われず、掘削動作の効率が低下するおそれがある。
【0009】
特許文献2に記載された学習アルゴリズムは、センサ・システムが掘削物の類型を判定するための情報を取得しているか否か不明である。そのため、掘削物の類型が変化すると、学習アルゴリズムによる学習効果が発揮されず、機械による掘削効率が低下するおそれがある。
【0010】
本開示は、掘削対象物の類型を正確に判定して掘削動作の効率を向上させることが可能な作業車両を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本開示の一態様は、車体と、前記車体に支持されて駆動力を発生するエンジンと、前記エンジンによって駆動される油圧ポンプと、前記車体に回動可能に一端側が取り付けられたリフトアームと、前記リフトアームの他端側に回動可能に取り付けられたバケットと、前記油圧ポンプの供給する作動油によって伸縮し、前記リフトアームを回動させるリフトシリンダと、前記油圧ポンプの供給する作動油によって伸縮し、前記バケットを回動させるバケットシリンダと、前記油圧ポンプから前記リフトシリンダに供給される作動油の流量を制御するリフト制御弁と、前記油圧ポンプから前記バケットシリンダに供給される作動油の流量を制御するバケット制御弁と、掘削対象から前記リフトアームに作用する掘削反力を検出するための掘削反力検出装置と、前記バケットおよび前記リフトアームを制御する制御装置と、を備えた作業車両であって、前記制御装置は、前記掘削反力検出装置により検出された掘削反力に基づいて地質区分を表す複数の類型のそれぞれに対して、掘削対象の類型と合致する度合いを表す信頼度を算出し、算出された複数の信頼度と前記複数の信頼度にそれぞれ対応する複数の補正値とに基づいて前記掘削対象の類型を判定し、判定された類型に基づいて前記リフト制御弁と前記バケット制御弁とに指令を出力して、掘削動作を実行し、前記掘削動作によって得られた前記バケット内の掘削対象の荷重に基づいて前記掘削動作における掘削量を算出し、算出された前記掘削量に基づいて前記掘削対象の掘削評価値を算出し、算出された前記掘削評価値に基づいて前記複数の補正値を更新することを特徴とする作業車両である。
【発明の効果】
【0012】
本開示の上記一態様によれば、掘削対象物の類型を正確に判定して掘削動作の効率を向上させることが可能な作業車両を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本開示に係る作業車両の一実施形態を示す側面図。
【
図2】
図1に示す作業車両に搭載された油圧装置の一部の概略的な回路図。
【
図3】
図1に示す作業車両に搭載された制御装置の機能ブロック図。
【
図4】
図3の制御装置による処理の流れの一例を示すフロー図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照して本開示に係る作業機械の実施形態を説明する。
【0015】
図1は、本開示に係る作業車両の一実施形態を示す側面図である。
図2は、
図1に示す作業車両100に搭載された油圧装置130の一部の概略的な回路図である。
図3は、
図1に示す作業車両100に搭載された制御装置150の機能ブロック図である。なお、
図2では、流体の経路を実線、パイロット圧の経路を破線、電気信号の経路を点線で表示している。
【0016】
本実施形態の作業車両100は、たとえば、地表に堆積した砕石、土砂、鉱石などの掘削対象物Odを掘削して、ダンプトラックなどの運搬車両の荷台に積み込むためのホイールローダである。作業車両100は、たとえば、互いにピン結合された前フレームと後フレームとを有した車体111と、作業機120と、油圧装置130と、検出装置140と、制御装置150と、を備えている。なお、作業車両100は、ホイールローダに限定されず、たとえば、ブルドーザやローディングショベルなど、他の作業車両や作業機械であってもよい。
【0017】
後フレームには、たとえば、車輪112と、キャビン113とを備えている。後フレームの建屋カバーの内部には、油圧装置130および制御装置150の他、図示を省略するエンジン、トランスミッション、および燃料タンクなどが搭載されている。車輪112は、たとえば、エンジンにトランスミッションを介して連結され、エンジンの回転によりトランスミッションを介して駆動されて作業車両100を走行させる。
【0018】
キャビン113は、車体111の前部の作業機120の後方に設けられた車室である。図示を省略するが、キャビン113の内部には、たとえば、オペレータが搭乗するための座席の他、操作レバー、ブレーキペダル、アクセルペダル、スピーカー、スイッチ、表示ランプ、計器類などが配置されている。本実施形態の作業車両100は、たとえば、キャビン113の内部に、制御装置150による掘削制御を実行するための自動掘削スイッチ160を備えている。
【0019】
作業機120は、たとえば、車体111の前部に取り付けられたリフトアーム121と、そのリフトアーム121の車体111に取り付けられた基端部と反対側の先端部に取り付けられたバケット122とを備え、掘削対象物Odを掘削して持ち上げる。また、作業機120は、バケット122を駆動するためのベルクランク123と、バケットリンク124と、を備えている。なお、図示を省略するが、作業機120は、車体111の幅方向に間隔をあけて配置された左右一対のリフトアーム121を備えている。
【0020】
油圧装置130は、たとえば、車体111の内部に搭載されている。油圧装置130は、
図2に示すように、たとえば、リフトシリンダ131と、バケットシリンダ132と、ポンプ133と、制御弁134と、パイロットバルブ135と、リザーバ136と、パイロットポンプ137と、を備えている。
【0021】
リフトシリンダ131およびバケットシリンダ132は、たとえば、油圧シリンダである。ポンプ133およびパイロットポンプ137は、たとえば、エンジンによって駆動される油圧ポンプである。制御弁134は、たとえば、リフト制御弁134aと、バケット制御弁134bとを含む。パイロットバルブ135は、たとえば、リフトパイロットバルブ135aと、バケットパイロットバルブ135bとを含む。リザーバ136は、たとえば、作動油などの流体を貯留する。
【0022】
リフトシリンダ131は、たとえば、
図1に示すように、ピストンロッドの先端部がリフトアーム121の中間部の下端に連結され、ピストンロッドと反対側のシリンダチューブの基端部が車体111の前部に連結されている。なお、図示を省略するが、作業車両100は、たとえば、車体111の幅方向の両側に、左右一対のリフトシリンダ131を備えている。
【0023】
リフトシリンダ131は、その伸長時に、リフトアーム121を、車体111に取り付けられた回転軸を中心に上方に回転させる。これにより、リフトアーム121のリフト量が増加して、リフトアーム121の先端部のバケット122を持ち上げることができる。また、リフトシリンダ131は、その収縮時に、リフトアーム121を、車体111に取り付けられた回転軸を中心に下方に回転させる。これにより、リフトアーム121のリフト量が減少して、リフトアーム121の先端部に取り付けられたバケット122を下降させることができる。
【0024】
バケットシリンダ132は、
図1に示すように、たとえば、一対のリフトアーム121の間に配置されている。バケットシリンダ132は、たとえば、ピストンロッドの先端部がベルクランク123およびバケットリンク124を介してバケット122に連結され、ピストンロッドと反対側のシリンダチューブの基端部が車体111に連結されている。ベルクランク123は、たとえば、左右一対のリフトアーム121の中央部を連結する連結部に支持されている。
【0025】
バケットシリンダ132は、その伸長時に、ベルクランク123およびバケットリンク124を介して、バケット122を、リフトアーム121の先端部に取り付けられた回転軸を中心に上方に回転させる。これにより、バケット122のチルト量が増加して、バケット122の開口が上方を向き、バケット122によって掘削対象物Odをすくい取ることができる。
【0026】
また、バケットシリンダ132は、その収縮時に、ベルクランク123およびバケットリンク124を介して、バケット122を、リフトアーム121に取り付けられた回転軸を中心に下方に回転させる。これにより、バケット122のチルト量が減少して、バケットの開口が下方を向き、バケット122によってすくい取った掘削対象物Odを、バケット122の外側へダンプすることができる。
【0027】
ポンプ133は、
図2に示すように、リフトシリンダ131およびバケットシリンダ132を伸長および収縮させるための流体を送出する。ポンプ133は、たとえば、リザーバ136に貯留された作動油などの流体を、制御弁134を介してリフトシリンダ131およびバケットシリンダ132のシリンダチューブのボトム側に送出して、ピストンロッドを伸長させる。また、ポンプ133は、制御弁134を介して流体をリフトシリンダ131およびバケットシリンダ132のシリンダチューブのロッド側に送出して、ピストンロッドを収縮させる。
【0028】
制御弁134は、パイロットバルブ135によって生成されたリフトパイロット圧lppおよびバケットパイロット圧bppに応じて、リフトシリンダ131およびバケットシリンダ132へ供給される流体の流量を制御する。より具体的には、リフト制御弁134aは、リフトパイロットバルブ135aによって生成されたリフトパイロット圧lppに応じて、リフトシリンダ131のシリンダチューブのボトム側またはロッド側へ供給される流体の流量を制御する。また、バケット制御弁134bは、バケットパイロットバルブ135bによって生成されたバケットパイロット圧bppに応じて、バケットシリンダ132のシリンダチューブのボトム側またはロッド側へ供給される流体の流量を制御する。
【0029】
パイロットバルブ135は、制御弁134に接続され、制御装置150の制御に応じたリフトパイロット圧lppおよびバケットパイロット圧bppを生成する。より具体的には、リフトパイロットバルブ135aは、リフト制御弁134aに接続され、制御装置150から入力される制御信号lcsに応じたリフトパイロット圧lppを生成する。また、バケットパイロットバルブ135bは、バケット制御弁134bに接続され、制御装置150から入力される制御信号bcsに応じたバケットパイロット圧bppを生成する。
【0030】
より詳細には、リフトパイロットバルブ135aは、リフトシリンダ131のシリンダチューブのロッド側とボトム側のそれぞれにポンプ133から流体を供給するために、リフト制御弁134aの右側と左側のそれぞれのリフトパイロット圧lppを生成する。また、バケットパイロットバルブ135bは、バケットシリンダ132のシリンダチューブのロッド側とボトム側のそれぞれに、ポンプ133から流体を供給するために、バケット制御弁134bの右側と左側のそれぞれのバケットパイロット圧bppを生成する。なお、
図2には、リフト制御弁134aおよびバケット制御弁134bの左側へのパイロット圧を生成するパイロットバルブ135のみ記載している。省略しているが、右側へのパイロット圧を生成するパイロットバルブ135も存在する。
【0031】
パイロットポンプ137は、リザーバ136からパイロットバルブ135へ流体を送出し、パイロットバルブ135を介して制御弁134に入力されるリフトパイロット圧lppおよびバケットパイロット圧bppを生成する。より具体的には、パイロットポンプ137は、リフトパイロットバルブ135aとバケットパイロットバルブ135bのそれぞれに流体を送出して、リフト制御弁134aとバケット制御弁134bにそれぞれ入力されるリフトパイロット圧lppとバケットパイロット圧bppとを生成する。
【0032】
検出装置140は、たとえば、角度検出装置と、走行状態検出装置と、掘削反力検出装置と、運転状態検出装置と、燃料量検出装置と、を含む。また、検出装置140は、たとえば、全球測位衛星システム(GNSS)など、車体111の位置を検出する位置センサを含んでもよい。また、検出装置140は、たとえば、ストローク検出装置を含んでもよい。
【0033】
角度検出装置は、たとえば、角度センサ141を含む。角度センサ141は、たとえば、リフトアーム121と車体111との連結部、およびリフトアーム121とベルクランク123との連結部にそれぞれ設けられている。角度センサ141は、たとえば、リフト角、すなわち、車体111に対するリフトアーム121の回転角度を検出し、その検出結果を制御装置150へ出力する。また、角度センサ141は、たとえば、リフトアーム121に対するベルクランク123の回転角度を検出し、その検出結果を制御装置150へ出力する。このリフトアーム121に対するベルクランク123の回転角度に基づいて、チルト角、すなわちリフトアーム121に対するバケット122の回転角度を算出することができる。
【0034】
走行状態検出装置は、たとえば、速度センサ142aと加速度センサ142bとを含む。速度センサ142aは、たとえば、車体111に搭載され、作業車両100の速度Vを検出して、検出結果を制御装置150へ出力する。速度センサ142aは、たとえば、車輪112の角速度を測定して作業車両100の速度Vを算出して、検出結果を制御装置150へ出力する。加速度センサ142bは、たとえば、車体111に搭載され、作業車両100の加速度αを検出して、検出結果を制御装置150へ送信する。また、速度センサ142aは、たとえば、加速度センサ142bによって検出された作業車両100の加速度αを積分することによって、作業車両100の速度Vを算出してもよい。
【0035】
掘削反力検出装置は、たとえば、圧力センサ143を含む。圧力センサ143は、リフトシリンダ131とバケットシリンダ132のそれぞれに設けられ、リフトシリンダ131とバケットシリンダ132のそれぞれのシリンダチューブのボトム側の流体の圧力p1、p2を検出する油圧センサである。圧力センサ143は、リフトシリンダ131の内部の流体の圧力p1を検出して制御装置150へ出力する。なお、掘削反力検出装置143は、たとえば、圧力センサ143に代えて、掘削対象物Odからリフトアーム121に作用する掘削反力Fを検出するための力センサを備えてもよい。
【0036】
運転状態検出装置は、たとえば、回転数センサ144aとトルクセンサ144bとを含む。回転数センサ144aは、たとえば、作業車両100のエンジンに取り付けられ、エンジンの回転数を検出して、検出結果を制御装置150へ送信する。トルクセンサ144bは、たとえば、作業車両100のエンジンに取り付けられ、エンジンのトルクを検出して、検出結果を制御装置150へ送信する。
【0037】
燃料量検出装置は、たとえば、燃料量センサ145を含む。燃料量センサ145は、たとえば、エンジンに燃料を供給する燃料タンクに取り付けられ、燃料タンクに貯留された燃料の残量を検出する。燃料量検出装置145は、検出した燃料の残量を制御装置150へ出力する。
【0038】
ストローク検出装置は、たとえば、ストロークセンサ146を含む。ストロークセンサ146は、たとえば、リフトシリンダ131とバケットシリンダ132にそれぞれ設けられ、リフトシリンダ131とバケットシリンダ132のそれぞれのピストンロッドのストロークS1、S2を検出し、その検出結果を制御装置150へ送信する。
【0039】
制御装置150は、車体111に搭載されたファームウェアやマイクロコントローラなどのコンピュータシステムであり、バケット122およびリフトアーム121を駆動させて掘削対象物Odを掘削する制御(
図4参照)を実行する。制御装置150は、たとえば、図示を省略する中央処理装置(CPU)などの演算装置、RAMおよびROMなどの記憶装置、その記憶装置に記憶されたプログラム、タイマー、および入出力装置などを備えている。
【0040】
制御装置150は、たとえば、
図3に示すように、類型信頼度算出部152と、掘削制御部154と、掘削評価部156と、を備える。また、
図3に示す例において、制御装置150は、入力部151と、状態検知部153と、出力部155と、を備えている。これら制御装置150の各部は、たとえば、制御装置150の記憶装置に記憶されたプログラムを制御装置150の演算装置によって実行することで実現される制御装置150の機能を表す機能ブロックである。
【0041】
検出装置140から出力された信号、たとえば、角度検出装置141、走行状態検出装置142、掘削反力検出装置143、運転状態検出装置144、燃料量検出装置145、ストローク検出装置146等から出力された信号は、時系列で制御装置150の入力部151に入力される。入力部151は、入力された信号を必要に応じて類型信頼度算出部152、状態検知部153、掘削評価部156等へ出力する。
【0042】
類型信頼度算出部152は、たとえば、掘削反力検出装置143から出力されて入力部151を介して入力された掘削反力に基づいて、掘削対象物Odの複数の類型に対する信頼度を算出する。より具体的には、掘削反力検出装置143は、掘削反力として、リフトシリンダ131とバケットシリンダ132のそれぞれの流体の圧力p1、p2を掘削反力として制御装置150へ出力する。類型信頼度算出部152は、たとえば、入力された圧力p1、p2に基づいて、掘削対象物Odの複数の類型に対する信頼度を算出する。
【0043】
掘削対象物Odの複数の類型は、たとえば、礫、砂、シルト、粘土など、地質区分名称による複数の類型を含むことができる。本実施形態において、掘削対象物Odの複数の類型は、類型A、類型B、および類型Cの三つの類型を含む。なお、掘削対象物Odの類型の数は三つに限定されず、二つまたは四つ以上でもよい。類型信頼度算出部152は、たとえば、掘削対象物Odの類型A、類型B、および類型Cのそれぞれに対する信頼度を算出する。
【0044】
ここで、信頼度とは、掘削対象物Odの類型と合致する度合いを表す。信頼度は、たとえば、0から1までの数値で表すことができる。類型の信頼度の数値が大きいほど、掘削対象物Odがその類型である確率が高くなる。信頼度は、たとえば、次のように算出される。前提として、掘削対象物Odが粒径の大きい礫である場合には、掘削対象物Odが粒径の小さい砂である場合に比べて、バケット122の爪先が掘削対象物Odに突入するときの時系列の平均掘削反力は大きくなる傾向(特徴)がある。このような地質区分に応じた掘削反力の特徴から、後述する機械学習部152cにおいて、掘削反力を含む信号をニューラルネットワークモデルに入力し、ニューラルネットワークモデルの出力結果として、類型ごとに信頼度が算出される。時系列の平均掘削反力が比較的大きい場合、礫に相当する類型の信頼度は、たとえば0.7として算出され、一方で、砂に相当する類型の信頼度は、礫に相当する類型の信頼度よりも小さく、たとえば0.3として、算出される。また、類型信頼度算出部152は、上記掘削反力に加えて、たとえば、運転状態検出装置144から出力されて入力部151を介して入力されたエンジンの運転状態に基づいて、掘削対象物Odの複数の類型A、B、Cに対する信頼度を算出してもよい。ここで、エンジンの運転状態は、たとえば、エンジンの回転数と、エンジンのトルクとを含む。
【0045】
また、類型信頼度算出部152は、上記掘削反力とエンジンの運転状態に加えて、状態検知部153の出力である作業車両100の状態に基づいて、掘削対象物Odの複数の類型A、B、Cに対する信頼度を算出してもよい。ここで、作業車両100の状態は、たとえば、作業車両100を掘削対象物Odに向けて加速させる走行状態と、バケット122の爪先を掘削対象物Odへ突入させる突入状態と、バケット122の爪先が掘削対象物Odに突入した後のリフティング・チルティング状態とを含む。
【0046】
また、類型信頼度算出部152は、上記掘削反力とエンジンの運転状態に加えて、角度検出装置141の出力であるリフトアーム121とベルクランク123の回転角度に基づいて、掘削対象物Odの複数の類型A、B、Cに対する信頼度を算出してもよい。
【0047】
また、類型信頼度算出部152は、上記掘削反力とエンジンの運転状態に加えて、燃料量検出装置145の出力である燃料の残量に基づいて、掘削対象物Odの複数の類型A、B、Cに対する信頼度を算出してもよい。より具体的には、類型信頼度算出部152は、燃料量検出装置145の出力である燃料の残量の時間的な変化に基づいて作業車両100の燃費を算出し、その算出した燃費に基づいて掘削対象物Odの複数の類型A、B、Cに対する信頼度を算出してもよい。
【0048】
また、類型信頼度算出部152は、上記掘削反力と運転状態に加えて、ストローク検出装置146の出力であるリフトシリンダ131とバケットシリンダ132のストロークS1、S2に基づいて、掘削対象物Odの複数の類型A、B、Cに対する信頼度を算出してもよい。
【0049】
類型信頼度算出部152は、たとえば、データ処理部152aと、特徴抽出部152bと、機械学習部152cと、を備えている。データ処理部152aは、検出装置140から出力された信号が入力部151を介して入力される。データ処理部152aは、たとえば、入力された信号のノイズ除去を含むデータクリーニングを行う。また、データ処理部152aは、たとえば、入力された信号のダウンサンプリングを行うなど、入力された複数の信号の時系列データ間の時間のずれを補正する。
【0050】
特徴抽出部152bは、たとえば、データ処理部152aによって処理された複数の信号の正規化を行って、バケット122の爪先が掘削対象物Odに突入するときの時系列の平均掘削反力の増加傾向を含む地質区分に応じた信号の特徴を抽出する。機械学習部152cは、たとえば、教師あり学習のニューラルネットワークモデルを備えている。機械学習部152cは、特徴抽出部152bによる特徴抽出処理を経た少なくとも掘削反力を含む信号をニューラルネットワークモデルに入力して、掘削対象物Odの複数の類型A、B、Cに対する信頼度を算出する。類型信頼度算出部152は、算出した掘削対象物Odの複数の類型A、B、Cに対する信頼度を掘削制御部154へ出力する。
【0051】
状態検知部153は、たとえば、角度検出装置141、走行状態検出装置142、掘削反力検出装置143、およびストローク検出装置146のいずれか一以上の出力に基づいて、作業車両100の状態を検知する。状態検知部153は、たとえば、角度検出装置141またはストローク検出装置146の出力に基づいて、リフト角およびチルト角を含むリフトアーム121およびバケット122の姿勢を算出する。
【0052】
状態検知部153は、たとえば、算出したリフトアーム121およびバケット122の姿勢が、あらかじめ設定された掘削対象物Odへの突入姿勢を満たしているか否かを判定する。リフトアーム121およびバケット122の姿勢が突入姿勢を満たす場合、状態検知部153は、作業車両100の走行状態が、あらかじめ設定された所定の走行条件を満たすか否かを判定する。ここで、所定の走行条件は、少なくとも作業車両100の加速度条件を含み、作業車両100の速度条件を含んでもよい。
【0053】
状態検知部153は、たとえば、作業車両100の減速度が所定のしきい値を超え、掘削反力検出装置143から入力された掘削反力が、あらかじめ設定されたしきい値を超える場合に、バケット122が掘削対象物Odへ突入した突入状態であることを検知する。すなわち、制御装置150は、走行状態検出装置により検出された作業車両100の加速度が第2しきい値より小さく、掘削反力検出装置により検出された掘削反力が第3しきい値より大きい場合に、バケット122が掘削対象物Odへ突入している状態であると判定する。また、状態検知部153は、たとえば、掘削反力検出装置143から入力された掘削反力が、あらかじめ設定されたしきい値を超え、リフトアーム121のリフト角が所定のしきい値を超える場合に作業車両100がリフティング状態であることを検知する。
【0054】
また、状態検知部153は、たとえば、掘削反力検出装置143から入力された掘削反力が、あらかじめ設定されたしきい値を超え、バケット122のチルト角が所定のしきい値を超える場合に作業車両100がチルティング状態であることを検知する。また、状態検知部153は、掘削反力に加えて、角度検出装置141またはストローク検出装置146の出力に基づいて、作業車両100がリフティング・チルティング状態であることを検知してもよい。すなわち、制御装置150は、掘削反力検出装置143により検出された掘削反力が第4しきい値より大きく、角度検出装置により検出されたリフト角が第5しきい値より大きく、角度検出装置により検出されたチルト角が第6しきい値より大きい場合に、掘削動作が完了した状態であると判定する。状態検知部153は、検知した作業車両100の状態を類型信頼度算出部152および掘削制御部154へ出力する。
【0055】
掘削制御部154は、たとえば、類型信頼度算出部152から入力された掘削対象物Odの複数の類型のそれぞれに対する信頼度に基づいて、掘削対象物Odの類型を判定する。より具体的には、たとえば、掘削対象物Odの複数の類型A、B、Cに対する信頼度が、それぞれ0.7,0.2,0.1であった場合、掘削制御部154は、掘削対象物Odの類型を、信頼度がより高い類型Aと判定する。掘削制御部154は、判定した掘削対象物Odの類型Aに対応して規定された自動掘削アルゴリズム154aを選択する。
【0056】
掘削制御部154は、選択した自動掘削アルゴリズム154aにより、出力部155を介して、リフトパイロットバルブ135aおよびバケットパイロットバルブ135bへ、制御信号lcsおよび制御信号bcsを出力する。これにより、リフトパイロットバルブ135aおよびバケットパイロットバルブ135bから、リフト制御弁134aおよびバケット制御弁134bへ、それぞれ、リフトパイロット圧lppおよびバケットパイロット圧bppが入力される。その結果、掘削制御部154が判定した掘削対象物Odの類型Aに対応して規定された自動掘削アルゴリズム154aに従ってリフトアーム121およびバケット122が制御され、掘削対象物Odの掘削動作が実行される。
【0057】
掘削動作は、たとえば、次のような動作である。バケット122が掘削対象物Odへ突入した突入状態において、リフトアーム121のリフト量を増加させるようにリフトシリンダ131を所定長さ伸長させて、バケット122のチルト量を増加させるようにバケットシリンダ132を所定長さ伸長させる。この動作を作業機120が所定の姿勢になるまで繰り返す。各シリンダを伸長させる動作を繰り返すことで、徐々に、バケット122が上昇し、チルトするとともに、バケット122の内部に掘削対象物Odが堆積する。
【0058】
掘削対象物Odをより多く掘削するために、リフトシリンダ131およびバケットシリンダ132の一回当たりの伸長量は、掘削対象物Odの類型によって異なる。具体的には、掘削対象物Odが粒径の大きい礫に相当する類型と判定された場合、すなわち掘削反力が大きい場合には、掘削対象物Odが粒径の小さい砂に相当する類型と判定された場合、すなわち掘削反力が小さい場合に比べて、一回当たりの各シリンダ伸長量を小さくする。
【0059】
また、類型信頼度算出部152は、掘削評価部156の出力である掘削評価値Vdに基づいて、掘削対象物Odの複数の類型のそれぞれに対する信頼度を補正する。より具体的には、前述のように、機械学習部152cにより算出された掘削対象物Odの複数の類型A、B、Cに対する信頼度が、それぞれ0.7,0.2,0.1であり、これらの信頼度が掘削制御部154に入力され、掘削制御部154が掘削対象物Odの類型を類型Aと判定したとする。その後、類型Aに対応する自動掘削アルゴリズム154aに従った掘削動作が実行され、掘削評価部156から類型信頼度算出部152に入力された掘削評価値Vdが、所定のしきい値xより小であったとする。ここで、しきい値xは、例えば掘削評価値Vdの平均値に基づいて設定される。なお、類型信頼度算出部152は、掘削の都度、掘削評価値Vdの平均値を更新するとともに、しきい値xを再設定してもよい。
【0060】
このような場合、類型信頼度算出部152は、類型Aの信頼度に対して、たとえば-0.4の負バイアスを算出する。また、類型信頼度算出部152は、類型B、Cの信頼度に対して、たとえば、それぞれ+0.2、+0.2の正バイアスを算出する。ここで、各類型の信頼度に対して補正値として加算されるバイアスは、たとえば、しきい値xに対する掘削評価値Vdの達成割合に基づいて設定される。
【0061】
その後、同一の掘削対象物Odに対して掘削を行った場合、機械学習部152cにより算出された掘削対象物Odの複数の類型A、B、Cに対する信頼度へ、各バイアスが加算されることにより、掘削対象物Odの類型A、B、Cに対する信頼度は、それぞれ、当初の0.7,0.2,0.1から、0.3,0.4,0.3へ補正される。掘削制御部154は、掘削対象物Odの各々の類型の補正された信頼度に基づいて、掘削対象物Odを信頼度がより高い類型Bと判定する。掘削制御部154は、判定した掘削対象物Odの類型Bに対応して規定された自動掘削アルゴリズム154bを選択する。これにより、掘削制御部154は、自動掘削アルゴリズム154bに従い、出力部155を介してリフトパイロットバルブ135aおよびバケットパイロットバルブ135bへ、それぞれ制御信号lcsおよび制御信号bcsを出力する。
【0062】
リフトパイロットバルブ135aとバケットパイロットバルブ135bは、入力された制御信号lcs、bcsに基づいて、リフト制御弁134aとバケット制御弁134bへリフトパイロット圧lppとバケットパイロット圧bppを出力する。これにより、ポンプ133からリフトシリンダ131とバケットシリンダ132への作動油の供給が制御され、リフトシリンダ131とバケットシリンダ132の伸縮が制御され、自動掘削アルゴリズム154a、154b、または154cに従った掘削動作が行われる。
【0063】
掘削評価部156は、自動掘削アルゴリズム154a、154b、または154cに従って実行された掘削動作における掘削対象物Odの掘削評価値Vdを算出する。より詳細には、掘削評価部156は、掘削反力検出装置143によって得られるバケット内の掘削対象物Odの荷重に基づいて掘削動作における掘削対象物Odの掘削量Adを算出し、その掘削量Adに基づいて掘削対象物Odの掘削評価値Vdを算出する。
【0064】
掘削評価部156は、たとえば、一回の掘削動作における掘削対象物Odの掘削量Adに加えて、その一回の掘削動作に要した掘削時間Tdとその一回の掘削動作における作業車両100の燃費Fdに基づいて、掘削対象物Odの掘削評価値Vdを算出してもよい。ここで、一回の掘削動作は、たとえば、作業車両100のバケット122を掘削対象物Odへ突入させる突入段階と、バケット122によって掘削対象物Odをすくい上げてリフトアーム121によって持ち上げるリフティング段階と、バケット122内の掘削対象物Odをダンプするチルティング段階とを含む。
【0065】
掘削評価部156は、たとえば、以下の式(1)に基づいて、掘削対象物Odの掘削評価値Vdを算出することができる。なお、式(1)において、Vdは掘削評価値、Adは掘削量、Tdは掘削時間、Fdは燃費、w1、w2、およびw3は重み係数である。特に限定はされないが、w1、w2、w3は、それぞれ、60%、20%、20%のように、任意に設定することができる。なお、重み係数とは、複数の変数から合成変数を求める際に、各変数に乗じる係数である。重み係数の大小および正負によって、重み係数が乗じられた変数の重要度が理解される。
【0066】
Vd=w1×Ad+w2×Td+w3×Fd ・・・(1)
【0067】
なお、掘削量Adは、たとえば、角度検出装置141またはストローク検出装置146の出力に基づいて算出したリフトアーム121の姿勢と、掘削反力検出装置143の出力であるリフトシリンダ131の作動油の圧力とに基づいて算出することが可能である。また、掘削時間Tdも、たとえば、掘削量Adと同様に、リフトアーム121の姿勢の時系列データと、リフトシリンダ131の作動油の圧力の時系列データとに基づいて算出することが可能である。また、燃費Fdは、燃料量検出装置145から出力された燃料量の時系列データに基づいて算出することが可能である。
【0068】
図1に示す自動掘削スイッチ160は、たとえば、作業車両100のキャビン113内に設置され、オペレータが押下することによってオンとオフが切り替えられる。自動掘削スイッチ160は、たとえば、制御装置150へオンまたはオフの状態を出力する。自動掘削スイッチ160のオンまたはオフの状態は、たとえば、入力部151を介して類型信頼度算出部152、状態検知部153、および掘削評価部156へ入力される。
【0069】
以下、本実施形態の作業車両100の動作の一例を説明する。
【0070】
作業車両100による掘削対象物Odの自動掘削を行う場合、作業車両100のオペレータは、たとえば、キャビン113内の自動掘削スイッチ160を押下する。これにより、状態検知部153は、作業車両100の状態検知を開始する。次に、オペレータは、たとえば、キャビン113内の操作レバーを操作することで、リフトアーム121を下げ、バケット122の爪先を掘削対象物Odに向け、作業車両100に突入姿勢を取らせる。
【0071】
次に、オペレータは、たとえば、キャビン113内のアクセルペダルを操作して、作業車両100を掘削対象物Odへ向けて加速する。すると、状態検知部153は、たとえば、角度検出装置141またはストローク検出装置146から出力されたリフトアーム121およびバケット122の姿勢と、走行状態検出装置142から出力された走行状態とにより、作業車両100が掘削対象物Odへ向けて走行していることを検知する。状態検知部153は、検知した作業車両100の状態を、類型信頼度算出部152および掘削制御部154へ出力する。
【0072】
その後、バケット122の爪先が掘削対象物Odに突入すると、リフトアーム121およびバケット122に掘削対象物Odから反力が作用し、作業車両100が減速してリフトシリンダ131およびバケットシリンダ132の流体の圧力p1、p2が上昇する。すると、状態検知部153は、たとえば、走行状態検出装置142から出力された走行状態と、掘削反力検出装置143から出力された掘削反力により、作業車両100が突入状態にあることを検知する。状態検知部153は、検知した作業車両100の状態を、類型信頼度算出部152および掘削制御部154へ出力する。
【0073】
図4は、作業車両100のバケット122を掘削対象物Odへ突入させた後の制御装置150の処理の流れの一例を示すフロー図である。制御装置150は、たとえば、状態検知部153から類型信頼度算出部152へ突入状態であることが入力されると、掘削対象物Odの推定処理P1を実行する。この掘削対象物Odの推定処理P1において、制御装置150は、少なくとも掘削反力検出装置143から出力された掘削反力に基づいて、類型信頼度算出部152により掘削対象物Odの複数の類型A、B、Cに対する信頼度を算出する。
【0074】
類型信頼度算出部152は、たとえば前述のように、検出装置140から入力されたデータをデータ処理部152aによって処理し、特徴抽出部152bによって特徴を抽出する。さらに、類型信頼度算出部152は、たとえば、特徴抽出部152bが抽出した特徴に基づいて、機械学習部152cにより掘削対象物Odの複数の類型A、B、Cのそれぞれの信頼度を算出する。そして、類型信頼度算出部152は、機械学習部152cにより算出されたそれぞれの信頼度に対して、後述する第1のバイアス処理P6または第2のバイアス処理P8によって、それぞれの信頼度の補正値としてあらかじめ掘削評価部156から入力されたバイアスを加算して、掘削対象物Odに対する複数の類型A、B、Cのそれぞれの信頼度を補正する。さらに、類型信頼度算出部152は、たとえば、掘削対象物Odの類型を、最も信頼度が高い類型A、類型B、または類型Cと推定する。類型信頼度算出部152は、推定した掘削対象物Odの類型A、類型B、または類型Cを掘削制御部154へ出力する。
【0075】
次に、制御装置150は、たとえば、掘削制御処理P2を実行する。この掘削制御処理P2において、制御装置150は、たとえば、類型信頼度算出部152により推定された掘削対象物Odの類型A、B、またはCに対応する自動掘削アルゴリズム154a、154bまたは154cを、掘削制御部154により選択して実行する。これにより、掘削制御部154から出力部155を介してリフトパイロットバルブ135aおよびバケットパイロットバルブ135bへ制御信号lcsおよび制御信号bcsが出力され、自動掘削アルゴリズム154a、154bまたは154cに従って掘削動作が実行される。
【0076】
次に、制御装置150は、たとえば、掘削評価値Vdの算出処理P3を実行する。より具体的には、制御装置150は、たとえば前述のように、少なくとも掘削反力を含む検出装置140の出力に基づいて、掘削評価部156によって掘削評価値Vdを算出する。ここで、掘削評価部156は、たとえば、前記式(1)を用いて掘削評価値Vdを算出する。
【0077】
次に、制御装置150は、たとえば、掘削対象物Odの推定処理P1で推定された掘削対象物Odの類型が、類型Aであるか否かの判定処理P4を実行する。より具体的には、掘削対象物Odの推定処理P1で類型Aが推定された場合、掘削評価部156は、判定処理P4において類型Aである(YES)と判定し、掘削評価値Vdの判定処理P5を実行する。
【0078】
この掘削評価値Vdの判定処理P5において、掘削評価部156は、算出した掘削評価値Vdが、類型A用のしきい値xより大か否かを判定する。この判定処理P5において、掘削評価部156は、掘削評価値Vdがしきい値xより大である(YES)と判定すると、推定処理P1で掘削対象物Odの類型と推定された類型Aの信頼度に対する正バイアスと推定処理P1で掘削対象物Odの類型と推定されなかった類型B、Cの信頼度に対する負バイアスとを算出し、更新して、類型信頼度算出部152へ更新された各バイアスを出力する第1のバイアス処理P6を実行する。以上により、制御装置150は、
図4に示す処理を終了する。
【0079】
一方、前述の掘削評価値Vdの判定処理P5において、掘削評価部156は、掘削評価値Vdがしきい値x以下である(NO)と判定すると、推定処理P1で掘削対象物Odの類型と、推定された類型Aの信頼度に対する負バイアスと推定処理P1で掘削対象物Odの類型と推定されなかった類型B、Cの信頼度に対する正バイアスとを算出し、更新して、類型信頼度算出部152へ更新された各バイアスを出力する第2のバイアス処理P8を実行する。以上により、制御装置150は、
図4に示す処理を終了する。
【0080】
また、掘削評価部156は、前述の類型Aであるか否かの判定処理P4において、類型Aではない(NO)と判定すると、前述の掘削対象物Odの推定処理P1で推定された類型が類型Bであるか否かの判定処理P9を実行する。前述の掘削対象物Odの推定処理P1で類型Bが推定された場合、掘削評価部156は、判定処理P9において類型Bである(YES)と判定し、掘削評価値Vdの判定処理P10を実行する。
【0081】
この掘削評価値Vdの判定処理P10において、掘削評価部156は、算出した掘削評価値Vdが、類型B用のしきい値yより大か否かを判定する。この判定処理P10において、掘削評価部156は、掘削評価値Vdがしきい値yより大である(YES)と判定すると、推定処理P1で掘削対象物Odの類型と推定された類型Bの信頼度に対する正バイアスと、推定処理P1で掘削対象物Odの類型と推定されなかった類型A、Cの信頼度に対する負バイアスとを算出し、更新して、類型信頼度算出部152へ更新された各バイアスを出力する第1のバイアス処理P6を実行する。以上により、制御装置150は、
図4に示す処理を終了する。
【0082】
一方、前述の掘削評価値Vdの判定処理P10において、掘削評価部156は、掘削評価値Vdがしきい値y以下である(NO)と判定すると、推定処理P1で掘削対象物Odの類型と推定された類型Bの信頼度に対する負バイアスと、推定処理P1で掘削対象物Odの類型と推定されなかった類型A、Cの信頼度に対する正バイアスとを算出し、更新して、類型信頼度算出部152へ更新された各バイアスを出力する第2のバイアス処理P8を実行する。以上により、制御装置150は、
図4に示す処理を終了する。
【0083】
また、掘削評価部156は、前述の類型Bであるか否かの判定処理P9において、類型Bではない(NO)と判定すると、前述の掘削対象物Odの推定処理P1で推定された類型が類型Cであるか否かの判定処理P11を実行する。前述の掘削対象物Odの推定処理P1で類型Cが推定された場合、掘削評価部156は、判定処理P11において類型Cである(YES)と判定し、掘削評価値Vdの判定処理P12を実行する。
【0084】
この掘削評価値Vdの判定処理P12において、掘削評価部156は、算出した掘削評価値Vdが、類型C用のしきい値zより大か否かを判定する。この判定処理P12において、掘削評価部156は、掘削評価値Vdがしきい値zより大である(YES)と判定すると、推定処理P1で掘削対象物Odの類型と推定された類型Cの信頼度に対する正バイアスと、推定処理P1で掘削対象物Odの類型と推定されなかった類型A、Bの信頼度に対する負バイアスとを算出し、更新して、類型信頼度算出部152へ更新された各バイアスを出力する第1のバイアス処理P6を実行する。以上により、制御装置150は、
図4に示す処理を終了する。
【0085】
一方、前述の掘削評価値Vdの判定処理P12において、掘削評価部156は、掘削評価値Vdがしきい値z以下である(NO)と判定すると、推定処理P1で掘削対象物Odの類型と推定された類型Cの信頼度に対する負バイアスと、推定処理P1で掘削対象物Odの類型と推定されなかった類型A、Bの信頼度に対する正バイアスとを算出し、更新して、類型信頼度算出部152へ更新された各バイアスを出力する第2のバイアス処理P8を実行する。以上により、制御装置150は、
図4に示す処理を終了する。
【0086】
以上のように、本実施形態の作業車両100は、車体111と、その車体111に回動可能に一端側が取り付けられたリフトアーム121と、そのリフトアーム121の他端側に回動可能に取り付けられたバケット122と、を備えている。また、作業車両100は、掘削対象物Odからリフトアーム121に作用する掘削反力を検出するための掘削反力検出装置143と、バケット122およびリフトアーム121を制御する制御装置150と、を備えている。そして、制御装置150は、掘削反力に基づいて掘削対象物Odの複数の類型A、B、Cに対する信頼度を算出し、算出した信頼度とあらかじめ設定された補正値とに基づいて掘削対象物Odの類型A、B、Cを判定し、判定した類型A、B、Cに基づいてリフトアーム121とバケット122を制御して掘削動作を実行する。さらに、制御装置150は、バケット内の掘削対象物の荷重に基づいて掘削動作における掘削対象物Odの掘削量Adを算出し、その掘削量Adに基づいて掘削対象物Odの掘削評価値Vdを算出し、その掘削評価値Vdに基づいて各々の類型A、B、Cに対する信頼度の補正値を更新する。
【0087】
このような構成により、本実施形態の作業車両100は、掘削対象物Odの類型A、B、Cを正確に判定して掘削動作の効率を向上させることができる。具体的には、制御装置150は、少なくとも掘削反力に基づいて、たとえば、礫、砂、シルトなど、掘削対象物Odの複数の類型A、B、Cの信頼度を算出することで、類型A、B、Cを正確に判定することができる。これにより、熟練したオペレータと同様に、掘削対象物Odの複数の類型A、B、Cに応じて、より多くの量を掘削するリフトアーム121およびバケット122の制御に変更することができ、掘削動作の効率を向上させることができる。さらに、制御装置150は、少なくとも掘削動作における掘削対象物Odの掘削量Adに基づいて、掘削評価値Vdを算出して類型A、B、Cに対する信頼度の補正値を更新する。すなわち、制御装置150は、実際に掘削対象物Odの掘削動作を実行した結果に基づいて、掘削対象物Odの類型A、B、Cのそれぞれの信頼度を補正することで、類型A、B、Cの推定精度を向上させることができる。
【0088】
また、本実施形態の作業車両100において、制御装置150は、掘削反力をニューラルネットワークモデルに入力して、掘削対象物Odの類型A、B、Cのそれぞれに対する信頼度を算出する。この構成により、機械学習によって掘削対象物Odの類型A、B、Cの信頼度をより正確に算出することが可能になり、掘削対象物Odの類型A、B、Cの推定精度を向上させることができる。
【0089】
また、本実施形態の作業車両100は、車体111に支持されて駆動力を発生するエンジンと、そのエンジンの運転状態を検出する運転状態検出装置144と、をさらに備えている。そして、制御装置150は、運転状態と掘削反力に基づいて、掘削対象物Odの類型A、B、Cのそれぞれに対する信頼度を算出する。この構成により、掘削反力のみに基づいて掘削対象物Odの類型A、B、Cのそれぞれに対する信頼度を算出する場合と比較して、類型A、B、Cの信頼度をより正確に算出することができる。
【0090】
また、本実施形態の作業車両100は、作業車両100の走行状態を検出する走行状態検出装置142をさらに備えている。そして、制御装置150は、作業車両100の走行状態とエンジンの運転状態と掘削反力に基づいて、掘削対象物Odの類型A、B、Cのそれぞれに対する信頼度を算出する。この構成により、掘削反力のみ、または、運転状態と掘削反力のみに基づいて、掘削対象物Odの類型A、B、Cのそれぞれに対する信頼度を算出する場合と比較して、類型A、B、Cの信頼度をより正確に算出することができる。
【0091】
また、本実施形態の作業車両100は、リフトアーム121のリフト角とバケット122のチルト角を検出するための角度検出装置141をさらに備えている。そして、制御装置150は、リフト角とチルト角と走行状態と運転状態と掘削反力に基づいて、掘削対象物Odの類型A、B、Cのそれぞれに対する信頼度を算出する。この構成により、掘削反力のみ、運転状態と掘削反力のみ、または走行状態と運転状態と掘削反力のみに基づいて、掘削対象物Odの類型A、B、Cのそれぞれに対する信頼度を算出する場合と比較して、類型A、B、Cの信頼度をより正確に算出することができる。
【0092】
また、本実施形態の作業車両100は、エンジンの燃料の残量を検出する燃料量検出装置145をさらに備えている。そして、制御装置150は、燃料の残量に基づいて燃費Fdを算出し、掘削量Adと、掘削動作に要した掘削時間Tdと、燃費Fdとに基づいて掘削評価値Vdを算出する。この構成により、掘削量Adのみに基づいて掘削評価値Vdを算出する場合と比較して、掘削評価値Vdの信頼性を向上させることができる。
【0093】
以上説明したように、本実施形態によれば、掘削対象物Odの類型A、B、Cを正確に判定して掘削動作の効率を向上させることが可能な作業車両100を提供することができる。
【0094】
以上、図面を用いて本開示に係る作業車両100の実施形態を詳述してきたが、具体的な構成はこの実施形態に限定されるものではなく、本開示の要旨を逸脱しない範囲における設計変更等があっても、それらは本開示に含まれるものである。
【符号の説明】
【0095】
100 作業車両
111 車体
121 リフトアーム
122 バケット
141 角度センサ(角度検出装置)
142a 速度センサ(走行状態検出装置)
142b 加速度センサ(走行状態検出装置)
143 圧力センサ(掘削反力検出装置)
144a 回転数センサ(運転状態検出装置)
144b トルクセンサ(運転状態検出装置)
145 燃料量センサ(燃料量検出装置)
146 ストロークセンサ(ストローク検出装置)
150 制御装置
A 類型
Ad 掘削量
B 類型
C 類型
Fd 燃費
Od 掘削対象物
Td 掘削時間
Vd 掘削評価値