(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022170846
(43)【公開日】2022-11-11
(54)【発明の名称】読取装置
(51)【国際特許分類】
H04N 1/191 20060101AFI20221104BHJP
H04N 1/407 20060101ALI20221104BHJP
【FI】
H04N1/191
H04N1/407
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021077088
(22)【出願日】2021-04-30
(71)【出願人】
【識別番号】000005267
【氏名又は名称】ブラザー工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100129643
【弁理士】
【氏名又は名称】皆川 祐一
(72)【発明者】
【氏名】砂子 修一
【テーマコード(参考)】
5C072
5C077
【Fターム(参考)】
5C072AA01
5C072BA20
5C072CA05
5C072CA07
5C072DA03
5C072DA16
5C072DA17
5C072DA25
5C072EA07
5C072FB12
5C072FB13
5C072FB25
5C072LA02
5C072MA01
5C072MB01
5C072NA01
5C072NA04
5C072QA11
5C072RA16
5C072UA02
5C072UA05
5C072UA06
5C072UA11
5C072UA13
5C072UA17
5C072XA01
5C077LL04
5C077LL13
5C077LL19
5C077MM05
5C077MM21
5C077PP06
5C077PP07
5C077PP46
(57)【要約】
【課題】イメージセンサの異常が判定されても、読取画質を維持しつつ、原稿の読み取りを行うことができる、読取装置を提供する。
【解決手段】原稿の読み取りの前に、センサICチップの黒レベルの正常を確認する黒レベル確認(S11)と、センサICチップの各受光素子の光電変換のリニアリティの正常を確認するリニアリティ確認とが行われる(S13.S19)。すべてのセンサICチップの黒レベルは正常であるが、少なくとも1つのセンサICチップのリニアリティが異常である場合(S14:NO)、原稿の読み取りにより得られる画素値に対してリニアリティ補正が行われる(S16)。少なくとも1つのセンサICチップの黒レベルが異常であり、かつ、すべてのセンサICチップのリニアリティが正常である場合には(S20:YES)、黒レベル補正が行われた後、原稿の読み取りが行われる(S21)。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
原稿を支持する支持面を有する原稿台と、
前記原稿台に対して前記支持面側と反対側に設けられ、光源および複数の受光素子が主走査方向に配列されてなる一群の受光素子列を前記主走査方向に複数並べて構成されるイメージセンサを有し、前記原稿の読み取り時に、前記光源から前記支持面上の前記原稿に光を照射し、前記原稿からの反射光を前記イメージセンサで受光して、前記イメージセンサから個々の前記受光素子での受光量に応じた画素値を出力する読取デバイスと、
制御部と、を備え、
前記制御部は、
前記読取デバイスに読み取りを実施させ、前記イメージセンサが出力する電気信号から前記イメージセンサが正常であるか異常であるかを判定し、
前記イメージセンサが異常であると判定した場合に、複数の補正方法の中から異常の要因に応じた補正方法を選択して、前記読取デバイスに前記原稿の読み取りを実施させ、前記イメージセンサから出力される画素値をその選択した補正方法で補正する、読取装置。
【請求項2】
請求項1に記載の読取装置であって、
前記制御部は、前記イメージセンサが異常であると判定した場合に、前記イメージセンサが出力する画素値を異常の要因に応じた補正方法により適正範囲内に補正可能であるか否かを判断し、補正可能であると判断した場合に、前記読取デバイスに前記原稿の読み取りを実施させ、前記イメージセンサから出力される画素値をその選択した補正方法で補正する、読取装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の読取装置であって、
前記制御部は、前記イメージセンサが正常であるか異常であるかの判定において、前記イメージセンサが出力する画素値が黒適正範囲内であるか否かの黒レベル判定と、前記受光素子による光電変換のリニアリティがリニアリティ適正範囲内であるか否かのリニアリティ判定とを行い、前記黒レベル判定および前記リニアリティ判定の少なくとも一方の判定結果が否であった場合に、前記イメージセンサが異常であると判定する、読取装置。
【請求項4】
請求項3に記載の読取装置であって、
前記制御部は、前記黒レベル判定において、前記一群の受光素子列ごとに、前記イメージセンサが出力する画素値の平均値が前記黒適正範囲内であるか否かを判定する、読取装置。
【請求項5】
請求項3または4に記載の読取装置であって、
前記制御部は、前記黒レベル判定の判定結果が否であった場合に、前記イメージセンサが出力する画素値の最小値を所定値に補正する黒レベル補正により、前記イメージセンサが出力する画素値の最小値と最大値との差分を所定値以上確保可能か否かを判断し、確保可能と判断した場合に、前記読取デバイスに前記原稿の読み取りを実施させ、前記黒レベル補正を行う、読取装置。
【請求項6】
請求項5に記載の読取装置であって、
前記制御部は、前記差分を前記所定値以上確保できないと判断した場合は、前記リニアリティ判定を行うことなく、報知の指示を出力する、読取装置。
【請求項7】
請求項3~6のいずれか一項に記載の読取装置であって、
前記制御部は、前記黒レベル判定の後に、前記リニアリティ判定を行う、読取装置。
【請求項8】
請求項3~7のいずれか一項に記載の読取装置であって、
前記制御部は、前記リニアリティ判定において、前記光源を発光させながら白領域を読み取った画素値を時系列で取得し、時間変化に対する前記画素値の変化の割合を前記リニアリティとして取得し、前記リニアリティが前記リニアリティ適正範囲内であるか否かを判定する、読取装置。
【請求項9】
請求項8に記載の読取装置であって、
前記制御部は、前記リニアリティ判定において、前記リニアリティを複数回取得し、前記リニアリティのそれぞれが前記リニアリティ適正範囲内であるか否かを判定する、読取装置。
【請求項10】
請求項8または9に記載の読取装置であって、
前記制御部は、前記リニアリティ判定の判定結果が否であった場合に、前記読取デバイスに前記原稿の読み取りを実施させ、前記一群の受光素子列ごとに、1を前記リニアリティ判定で取得した前記リニアリティで除算した値を前記イメージセンサから出力される画素値に乗算するリニアリティ補正を行う、読取装置。
【請求項11】
請求項10に記載の読取装置であって、
前記制御部は、前記リニアリティ補正を行った場合、報知を指示する、読取装置。
【請求項12】
請求項11に記載の読取装置であって、
前記制御部は、前記リニアリティ補正を行わない場合、報知を指示しない、読取装置。
【請求項13】
請求項1~12のいずれか一項に記載の読取装置であって、
前記制御部は、前記読取デバイスに所定枚数の前記原稿を連続して読み取らせる一連のジョブを所定回数行うごとに、前記イメージセンサが正常であるか異常であるかを判定する、読取装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、読取装置に関する。
【背景技術】
【0002】
原稿を読み取る読取装置では、等倍光学系のCIS(Contact Image Sensor)が読取デバイスに広く用いられている。CISは、主走査方向に配列される複数のセンサICチップを備え、各センサICチップは、主走査方向に配列される多数の光電変換素子を備えている。1ラインは、主走査方向の一端の画素から他端の画素までの各画素で構成される画素群である。CISは、1ラインの読み取りにおいて、各画素について、光電変換素子が受光した受光量に応じた画素データ(画素値)を順に出力する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
センサICチップなどの電子部品は、微細な電気が流れるだけで回路に異常をきたす。そのため、人体が読取装置と接触したときに、ESD(Electro-Static Discharge:静電気放電)が発生し、ESDによる高電圧パルスが読取装置内に侵入して、センサICチップの誤作動や破壊を引き起こす場合がある。
【0005】
従来の読取装置では、複数のセンサICチップのうちの1つでも、誤作動や破壊が生じたために、センサICチップから出力される画素値が規格値を外れると、エラー処理により、それ以降は原稿の読み取りを行えなくなる。
【0006】
本発明の目的は、イメージセンサの異常が判定されても、読取画質を維持しつつ、原稿の読み取りを行うことができる、読取装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記の目的を達成するため、本発明に係る読取装置は、原稿を支持する支持面を有する原稿台と、原稿台に対して支持面側と反対側に設けられ、光源および複数の受光素子が主走査方向に配列されてなる一群の受光素子列を主走査方向に複数並べて構成されるイメージセンサを有し、原稿の読み取り時に、光源から支持面上の原稿に光を照射し、原稿からの反射光をイメージセンサで受光して、イメージセンサから個々の受光素子での受光量に応じた画素値を出力する読取デバイスと、制御部とを備え、制御部は、読取デバイスに読み取りを実施させ、イメージセンサが出力する画素値からイメージセンサが正常であるか異常であるかを判定し、イメージセンサが異常であると判定した場合に、複数の補正方法の中から異常の要因に応じた補正方法を選択して、読取デバイスに原稿の読み取りを実施させ、イメージセンサから出力される画素値をその選択した補正方法で補正する。
【0008】
この構成によれば、読取デバイスにより原稿が読み取られる際、その読み取りの前に、読取デバイスによる読み取りが行われて、制御部により、イメージセンサが出力する画素値からイメージセンサが正常であるか異常であるかが判定される。そして、イメージセンサが異常であると判定された場合には、複数の補正方法の中から異常の要因に応じた補正方法が選択されて、原稿の読み取りによりイメージセンサから出力される画素値がその選択された補正方法で補正される。そのため、イメージセンサの異常が判定されても、読取画質を維持しつつ、原稿の読み取りを行うことができる。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、イメージセンサの異常が判定されても、読取画質を維持しつつ、原稿の読み取りを行うことができる
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の一実施形態に係る読取装置の構成を図解的に示す断面図である。
【
図2】読取装置の筐体の天面板を下側から見た図である。
【
図4】読取装置の電気的構成を示すブロック図である。
【
図5】読取処理の流れを示すフローチャートである。
【
図6】リニアリティ確認処理の流れを示すフローチャートである。
【
図7】ライン周期Taで取得された画素値の一例を示す図である。
【
図8】ライン周期2Taで取得された画素値の一例を示す図である。
【
図9】リニアリティ補正およびシェーディング補正が行われる順序を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下では、本発明の実施の形態について、添付図面を参照しつつ詳細に説明する。
【0012】
<読取装置の構成>
図1に示される読取装置1は、原稿を読み取るための装置であり、筐体2および原稿カバー3を備えている。読取装置1では、FB方式およびADF方式の両方式による原稿の読み取りが可能に構成されている。読取装置1は、原稿カバー3には、ADF(Auto Document Feeder:自動原稿搬送装置)4が設けられている。
【0013】
なお、以下の説明で使用するため、読取装置1をその正面側から見た状態を基準に読取装置1の前後左右を規定する。また、上下については、読取装置1が水平面上に設置された状態で規定する。
図1には、読取装置1を左右方向に延びる切断面線に沿って切断した断面が示されている。
【0014】
筐体2は、略直方体形状をなしている。筐体2の天面板11には、
図2に示されるように、第1開口12および第2開口13が設けられている。
【0015】
第1開口12は、前後方向および左右方向に延びる端縁を有し、前後よりも左右に長い矩形状に形成されている。第1開口12を下側から塞ぐように、原稿載置板14が設けられている。原稿載置板14は、透明な材料を用いて平板状に形成されている。
【0016】
第2開口13は、第1開口12の左側において、前後方向および左右方向に延びる端縁を有し、前後方向に細長く延びる矩形状に形成されている。第2開口13を下側から塞ぐように、原稿通過板15が設けられている。原稿通過板15は、透明な材料を用いて平板状に形成されている。
【0017】
筐体2内には、
図1に示されるように、CIS(Contact Image Sensor)ユニット21が原稿載置板14(原稿台の一例)および原稿通過板15の下方で、左右方向である副走査方向に移動可能に設けられている。CISユニット21(読取デバイスの一例)は、光源22、ライトガイド23、ロッドレンズアレイ24およびイメージセンサ25を備えている。
【0018】
光源22は、赤色、緑色および青色の3色のLED(Light Emitting Diode)を含む。光源22は、パルス幅変調により点灯が制御される。
【0019】
ライトガイド23は、光源22の光を伝搬する部材であり、透明材料からなる。ライトガイド23は、光源22の前側に配置されて、副走査方向と直交する前後方向である主走査方向に延びている。
【0020】
ロッドレンズアレイ24は、ライトガイド23と左右方向に位置をずらして、たとえば、ライトガイド23の左側に配置されている。ロッドレンズアレイ24は、
図3に示されるように、主走査方向に整列して並ぶ多数のロッドレンズ26を備えている。ロッドレンズ26は、成立等倍の屈折率分布型レンズである。
【0021】
イメージセンサ25は、所定個(たとえば、12個)のセンサICチップ27を備えている。センサICチップ27は、主走査方向に一列に並べて配置されている。各センサICチップ27は、受光素子列28を備えている。受光素子列28は、複数の受光素子29を主走査方向に等ピッチで一列に配置して構成されている。各受光素子29は、受光量に応じた電荷を1画素の電気信号として出力する。
【0022】
また、イメージセンサ25には、ゲイン調整回路およびA/D変換回路などが備えられている。各受光素子29から出力される電圧は、ゲイン調整回路による増幅後、A/D変換回路によりデジタル値である画素値(画素データ)に変換される。A/D変換回路は、たとえば、8ビット(0~255)の分解能を有しており、ゲイン調整回路による増幅後の電圧をその大小に応じた「0」~「255」の画素値に変換する。
【0023】
光源22からの光がライトガイド23を通して読取対象物に照射されて、読取対象物での反射光がロッドレンズアレイ24を通過してイメージセンサ25に入射する。1個のロッドレンズ26は、たとえば、約3.5個の受光素子29の受光面上に成立当倍像を結像させる。各受光素子29で光電変換が行われ、各受光素子29から電気信号が出力されて、その電気信号が画素データに変換されることにより、CISユニット21による主走査方向の1ライン分の読み取りが達成される。
【0024】
ADF4は、
図1に示されるように、供給トレイ31および排出トレイ32を備えている。供給トレイ31および排出トレイ32は、上下に間隔を空けて重なった状態に設けられている。ADF4内には、搬送経路33が形成されている、搬送経路33は、その一端が供給トレイ31における副走査方向の一方側の端部上で開放され、U字状に湾曲しつつ折り返されて、原稿通過面17上を経由し、他端が供給トレイ31と排出トレイ32との間で開放されている。また、ADF4内には、搬送経路33に沿って、供給ローラ34、分離ローラ35、搬送ローラ36、反転ローラ37および排出ローラ38が供給トレイ31側からこの順に設けられている。
【0025】
原稿カバー3は、開位置と閉位置とに開閉可能に設けられている。原稿カバー3が閉位置に位置する状態では、原稿カバー3により、筐体2の上面の全域が被覆される。原稿カバー3は、閉位置から手前側が持ち上げられることにより、開位置に変位される。原稿カバー3が開位置に位置する状態では、筐体2の上面の全域が露出する。
【0026】
FB方式による原稿の読み取りの際には、原稿カバー3が開位置に開かれて、原稿が原稿載置板14の上面(支持面の一例)に載置される。このとき、原稿は、左側の端縁が第1開口12の左側の端縁に右側から当接し、かつ、後側の端縁が第1開口12の後側の端縁に前側から当接した状態に配置される。その後、原稿カバー3が閉位置に閉じられて、原稿が原稿カバー3によって上側から覆われた状態にされる。そして、スキャンの実行の指令に応じて、CISユニット21が読取範囲の先頭の読取開始位置に対応する位置に移動され、その位置から副走査方向に移動されながら、CISユニット21が原稿載置板14上の原稿を1ラインずつ副走査方向に順に読み取ることにより、原稿の読み取りが達成される。
【0027】
一方、ADF方式による原稿の読み取りの際には、ADF4の供給トレイ31上に原稿が載置される。また、CISユニット21が原稿通過板15に下方から対向する位置で停止される。その後、スキャンの実行の指令に応じて、供給ローラ34による原稿の搬送が開始される。原稿は、分離ローラ35により1枚ずつに分離されて、搬送ローラ36および反転ローラ37により搬送経路33を搬送される。原稿が原稿通過板15上を通過しつつ、CISユニット21が原稿を1ラインずつ順に読み取ることにより、原稿の読み取りが達成される。
【0028】
原稿通過板15の左側には、
図2に示されるように、白黒基準部41が設けられている。白黒基準部41は、矩形状のテープとして形成され、原稿通過板15の左側で主走査方向と一致する前後方向に延びるように、筐体2の天面板11の裏面(下側を向いた面)に貼着されている。白黒基準部41では、前右側および後右側の各角部の矩形状の領域が黒領域42とされ、残余の領域が白領域43とされている。これにより、白黒基準部41の右側の端縁に沿った領域では、白領域43が2個の黒領域42に挟まれて、各黒領域42と白領域43とが連続し、前側の端縁に沿った領域および後側の端縁に沿った領域では、黒領域42の左側に白領域43が隣接して、黒領域42と白領域43とが連続している。
【0029】
また、読取装置1は、
図4に示されるように、CPU(Central Processing Unit)51と、フラッシュメモリやE2PROMなどのデータの書き換えが可能な不揮発性メモリ52と、SDRAMなどの揮発性メモリ53とを備えている。CPU51、不揮発性メモリ52および揮発性メモリ53は、データ通信のためのバス54に接続されている。
【0030】
CPU51(制御部の一例)は、各種の処理のためのプログラムを実行することにより、ADF4、CISユニット21およびCISユニット21を副走査方向に移動させるCISユニット移動機構55など、読取装置1の各部を制御する。不揮発性メモリ52には、CPU51によって実行されるプログラムおよび各種のデータなどが記憶されている。揮発性メモリ53は、CPU51がプログラムを実行する際のワークエリアとして使用される。
【0031】
CISユニット移動機構55は、CISユニット21を担持するキャリッジ、正逆回転可能なステッピングモータ、ステッピングモータにより回転駆動される駆動プーリ、駆動プーリと対をなす従動プーリおよび駆動プーリと従動プーリとに巻き掛けられたベルトを備えている。駆動プーリと従動プーリとは、左右方向に互いの間に間隔を空けて、それぞれ回転軸線が前後方向に延びるように配置されている。ベルトの途中部は、キャリッジに固定されている。駆動プーリの回転により、ベルトが走行し、ベルトの走行に伴って、CISユニット21を担持したキャリッジが左右方向と一致する副走査方向に移動する。
【0032】
また、読取装置1には、操作パネル56が備えられている。操作パネル56には、各種の設定のために操作される操作部と、情報の表示のための表示部とが含まれる。操作部と表示部とは、別々に設けられていてもよいし、液晶ディスプレイなどの表示部上に感圧式または静電容量式の透明フィルムスイッチなどの操作部を重ねて構成されるタッチパネルの形態であってもよい。
【0033】
<読取処理>
読取装置1に原稿の読取指示が入力されると、CPU51は、
図5に示される読取処理を開始する。原稿の読取指示は、たとえば、ユーザが操作パネル56を操作することにより、操作パネルから入力される。
【0034】
読取処理では、CPU51は、CISユニット21を制御して、光源22を点灯させずに、イメージセンサ25に読み取りを行わせる。そして、CPU51は、イメージセンサ25のセンサICチップ27(受光素子列28)ごとに、受光素子29から出力される電圧に対応する画素値である黒レベルの平均値を求めて、その黒レベルの平均値と予め定める基準値との比較により、黒レベルが正常であるか異常であるかを確認する(S11:黒レベル確認)。原稿の読取時には、受光素子29から出力される電圧が画素値に変換されるときに、下限側の基準電圧未満の電圧については一律に「0」に変換され、上限側の基準電圧を超える電圧については一律に「255」に変換され、下限値から上限値の範囲の電圧についてはその電圧の大小に応じた画素データに変換される。基準値は、たとえば、下限側の基準電圧(たとえば、0.3V)に対応する画素値に設定される。
【0035】
CPU51は、黒レベルの平均値が基準値未満の黒レベル適正範囲内である場合、センサICチップ27の黒レベルが正常であると判定する。すべてのセンサICチップ27の黒レベルが正常である場合(S12:YES)、CPU51は、受光素子29の光電変換のリニアリティを確認するリニアリティ確認処理を行う(S13)。
【0036】
リニアリティ確認処理の流れは、
図6に示されている。リニアリティ確認処理では、CPU51は、CISユニット21およびCISユニット移動機構55を制御して、CISユニット21に白黒基準部41の白領域43を読み取らせる。このとき、CPU51は、
図7に示されるように、光源22の点灯から一定のライン周期Taが経過した時点において、センサICチップ27ごとに、受光素子29から出力される電圧に対応する画素値である白レベルの平均値を演算により取得する(S131)。また、CPU51は、
図8に示されるように、光源22の点灯からライン周期Taの2倍のライン周期2Taが経過した時点において、センサICチップ27ごとに、受光素子29から出力される電圧に対応する画素値である白レベルの平均値を演算により取得する(S131)。そして、CPU51は、センサICチップ27ごとに、ライン周期2Taが経過した時点で取得した白レベルの平均値からライン周期Taが経過した時点で取得した白レベルの平均値を減算し、その減算により得られた値をライン周期2Taからライン周期Taを減じた値(つまり、ライン周期Ta)で除算することにより、リニアリティを算出する(S132)。すなわち、リニアリティは、時間変化に対する画素値の変化の割合であり、単位時間あたりの画素値の変化量である。
【0037】
CPU51は、センサICチップ27ごとに、リニアリティが予め定めるリニアリティ適正範囲内であるか否かを判断する(S133)。CPU51は、リニアリティがリニアリティ適正範囲内であると判断した場合(S133:YES)、リニアリティが正常であると判定し(S134)、リニアリティ確認処理を終了する。一方、CPU51は、リニアリティがリニアリティ適正範囲内ではないと判断した場合(S133:NO)、リニアリティが異常であると判定し(S135)、1をリニアリティで除算することにより補正係数を算出して(S136)、リニアリティ確認処理を終了する。たとえば、
図8に示される例では、センサICチップ27の「chip1」は、「chip2」などの他のセンサICチップ27と比較して、ライン周期Taからライン周期2Taまでの期間における画素値の上がり方が小さく、リニアリティが異常であると判定される。
【0038】
すべてのセンサICチップ27のリニアリティが正常である場合(S14:YES)、CPU51は、CISユニット21およびCISユニット移動機構55を制御して、CISユニット21に原稿を読み取らせる(S15:通常読取)。
【0039】
すべてのセンサICチップ27の黒レベルは正常であるが(S12:YES)、少なくともいずれか1つのセンサICチップ27のリニアリティが異常であると判定した場合(S14:NO)、CPU51は、リニアリティ補正読取を行う。リニアリティ補正読取では、CPU51は、CISユニット21およびCISユニット移動機構55を制御して、光源22の光量を一定に保持しつつ、CISユニット21に原稿を読み取らせる。そして、CPU51は、その原稿の読み取りにより得られた画素値のうち、リニアリティが異常であると判定したセンサICチップ27から出力される各画素値に対して補正係数を乗じることにより、リニアリティ補正を行う。リニアリティ補正を行った場合、CPU51は、所定のメッセージAを操作パネル56に表示させる指示を出力して(S17)、読取処理を終了する。この場合、操作パネル56には、メッセージA、たとえば、「読取画質が低下している可能性があります。」といったメッセージが表示される。
【0040】
一方、CPU51は、黒レベルの平均値が基準値以上の黒レベル適正範囲外である場合、センサICチップ27の黒レベルが異常であると判定する。CPU51は、少なくともいずれか1つのセンサICチップ27の黒レベルが異常であると判定した場合(S12:NO)、その黒レベルの異常なセンサICチップ27について、所定のダイナミックレンジが確保可能であるか否かを判断する(S18)。すなわち、CPU51は、CISユニット21およびCISユニット移動機構55を制御して、CISユニット21に白黒基準部41の白領域43を読み取らせる。そして、CPU51は、黒レベルの異常なセンサICチップ27の出力から得られる画素値(白レベル)の平均値を求めて、その白レベルの平均値とステップS11の黒レベル確認で求めた黒レベルの平均値との差分と所定の閾値とを比較する。そして、差分が閾値以上である場合、CPU51は、ダイナミックレンジが確保可能であると判断する(S18:YES)。差分が閾値未満である場合、CPU51は、ダイナミックレンジが確保できないと判断する(S18:NO)。
【0041】
CPU51は、ダイナミックレンジを確保可能であると判断した場合(S18:YES)、リニアリティ確認処理を行う(S19)。リニアリティ確認処理の内容については、前述したとおりである。
【0042】
CPU51は、リニアリティ確認処理ですべてのセンサICチップ27のリニアリティが正常であることを確認した場合(S20:YES)、黒レベル補正読取を行う(S21)。黒レベル補正読取では、CPU51は、ステップS11の黒レベル確認で求めた黒レベルの平均値がダイナミックレンジの下限値にオフセットされるように、受光素子29から出力される電圧を画素値に変換するときに用いる下限側の基準電圧を変更する(黒レベル補正)。そして、CPU51は、CISユニット21およびCISユニット移動機構55を制御して、CISユニット21に原稿を読み取らせて、読取処理を終了する。この場合、操作パネル56に、黒レベルの異常を報知するメッセージは表示されない。
【0043】
CPU51は、ダイナミックレンジを確保可能であるが、少なくともいずれか1つのセンサICチップ27のリニアリティが異常であると判定した場合(S20:NO)、CPU51は、黒レベル補正&リニアリティ補正読取を行う(S22)。すなわち、CPU51は、ステップS11の黒レベル確認で求めた黒レベルの平均値がダイナミックレンジの下限値にオフセットされるように、受光素子29から出力される電圧を画素値に変換するときに用いる下限側の基準電圧を変更する。そして、CPU51は、CISユニット21およびCISユニット移動機構55を制御して、CISユニット21に原稿を読み取らせる。CPU51は、その原稿の読み取りにより得られた画素値のうち、リニアリティが異常であると判定したセンサICチップ27から出力される各画素値に対して補正係数を乗じることにより、リニアリティ補正を行う。黒レベル補正&リニアリティ補正読取を行った場合、CPU51は、所定のメッセージAを操作パネル56に表示させる指示を出力して(S23)、読取処理を終了する。
【0044】
一方、CPU51は、ダイナミックレンジを確保できないと判断した場合(S18:NO)、原稿の読み取りは行わず、所定のメッセージBを操作パネル56に表示させる指示を出力して(S24)、読取処理を終了する。この場合、操作パネル56には、メッセージB、たとえば、「読取装置の故障のため、原稿を読み取ることができません。」といったメッセージが表示される。
【0045】
なお、CPU51は、リニアリティ確認処理において、CISユニット21に白黒基準部41の白領域43を読み取らせたときに、その読み取りにより得られる1ライン分の画素値から白レベルの不均一性を補正する白レベル補正値を求め、その白レベル補正値をシェーディング補正値として揮発性メモリ53に記憶させる。そして、通常読取、リニアリティ補正読取、黒レベル補正読取および黒レベル補正&リニアリティ補正読取のいずれの読み取りにおいても、原稿の読み取りにより得られる画素値に対してシェーディング補正値を用いたシェーディング補正を行う。CPU51は、リニアリティ補正を行う場合、つまりリニアリティ補正読取および黒レベル補正&リニアリティ補正読取では、
図9に示されるように、原稿の読み取りにより得られる画素値に対してリニアリティ補正を行った後に、シェーディング補正を行う。これにより、シェーディング補正により、白レベルの不均一性を良好に補正することができる。
【0046】
<作用効果>
以上のように、CISユニット21により原稿が読み取られる際、その読み取りの前に、CISユニット21による読み取りが行われて、CPU51により、イメージセンサ25の各センサICチップ27が出力する画素値から各センサICチップ27が正常であるか異常であるかが判定される。そして、センサICチップ27が異常であると判定された場合には、その異常の要因に応じた補正方法が選択されて、原稿の読み取りによりセンサICチップ27から出力される画素値がその選択された補正方法で補正される。
【0047】
具体的には、センサICチップ27の黒レベルが正常であるか異常であるかを確認する黒レベル確認と、センサICチップ27の各受光素子29の光電変換のリニアリティが正常であるか異常であるかを確認するリニアリティ確認とが行われる。
【0048】
すべてのセンサICチップ27の黒レベルは正常であるが、少なくとも1つのセンサICチップ27のリニアリティが異常である場合、リニアリティ補正読取が行われて、原稿の読み取りにより得られる画素値に対してリニアリティ補正が行われる。
【0049】
少なくとも1つのセンサICチップ27の黒レベルが異常である場合、ダイナミックレンジを確保可能であるか否かが判断される。そして、ダイナミックレンジが確保可能であって、すべてのセンサICチップ27のリニアリティが正常である場合には、黒レベル補正読取が行われて、黒レベル補正が行われた後、CISユニット21による原稿の読み取りが行われる。また、ダイナミックレンジが確保可能であって、少なくとも1つのセンサICチップ27のリニアリティが異常である場合、黒レベル補正&リニアリティ補正読取が行われて、黒レベル補正が行われた後、CISユニット21による原稿の読み取りが行われ、その読み取りにより得られる画素値に対してリニアリティ補正が行われる。
【0050】
よって、センサICチップ27の異常が判定されても、読取画質を維持しつつ、原稿の読み取りを行うことができる。
【0051】
少なくとも1つのセンサICチップ27の黒レベルが異常である場合、ダイナミックレンジを確保できない場合には、原稿の読み取りが行われず、操作パネル56にメッセージBが表示される。これにより、読取画質が維持できない状態で、原稿の読み取りが行われることを抑制できる。また、操作パネル56にメッセージBが表示されることにより、読取装置に故障が発生していることをユーザに認知させることができる。
【0052】
また、リニアリティ補正が行われた場合、操作パネル56にメッセージAが表示される。これにより、読取画質が低下している可能性があることをユーザに認知させることができる。
【0053】
<変形例>
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は、他の形態で実施することもできる。
【0054】
たとえば、リニアリティ確認処理では、各センサICチップ27について、リニアリティが複数回取得されて、そのリニアリティのそれぞれがリニアリティ適正範囲内である場合に、センサICチップ27のリニアリティが正常であると判定されてもよい。
【0055】
また、前述の実施形態では、リニアリティ確認処理において、センサICチップ27ごとに、ライン周期2Taが経過した時点で取得した白レベルの平均値からライン周期Taが経過した時点で取得した白レベルの平均値が減算され、その減算により得られた値がライン周期2Taからライン周期Taを減じた値で除算されることによりリニアリティが算出され、1がリニアリティで除算されることにより補正係数が算出される。そして、リニアリティ補正読取では、リニアリティが異常であると判定したセンサICチップ27から出力される各画素値に対して補正係数が乗算されることにより、リニアリティ補正が行われるとした。これに限らず、センサICチップ27の受光素子ごとに、ライン周期2Taが経過した時点で取得した白レベルからライン周期Taが経過した時点で取得した白レベルが減算され、その減算により得られた値がライン周期2Taからライン周期Taを減じた値で除算されることによりリニアリティが算出され、リニアリティが適正範囲内ではない場合に、受光素子のリニアリティが異常であると判定されて、1がリニアリティで除算されることにより補正係数が算出されてもよい。この場合、リニアリティ補正読取では、リニアリティが異常であると判定したセンサICチップ27の受光素子から出力される各画素値に対して補正係数が乗算されることにより、リニアリティ補正が行われるとよい。
【0056】
また、前述の実施形態では、原稿の読取指示が入力される度に、黒レベル確認およびリニアリティ確認が行われるが、CISユニット21に所定枚数の前記原稿を連続して読み取らせる一連のジョブが所定回数行われるごとに、黒レベル確認およびリニアリティ確認が行われてもよい。
【0057】
また、CPU51が各処理を実行するとしたが、読取装置1に複数のCPUが設けられて、複数のCPUが協働して各処理を実行してもよい。
【0058】
その他、前述の構成には、特許請求の範囲に記載された事項の範囲で種々の設計変更を施すことが可能である。
【符号の説明】
【0059】
1:読取装置
14:原稿載置板
21:CISユニット
22:光源
25:イメージセンサ
27:センサICチップ
28:受光素子列
29:受光素子
43:白領域
51:CPU