(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022170854
(43)【公開日】2022-11-11
(54)【発明の名称】低GI砂糖、食品または飲料および低GI砂糖の製造方法
(51)【国際特許分類】
A23L 33/105 20160101AFI20221104BHJP
C13B 50/00 20110101ALI20221104BHJP
A23L 33/125 20160101ALI20221104BHJP
A23L 2/52 20060101ALI20221104BHJP
【FI】
A23L33/105
C13B50/00
A23L33/125
A23L2/00 F
A23L2/52
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021077097
(22)【出願日】2021-04-30
(71)【出願人】
【識別番号】501447144
【氏名又は名称】大東製糖株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100112427
【弁理士】
【氏名又は名称】藤本 芳洋
(74)【代理人】
【識別番号】100174012
【弁理士】
【氏名又は名称】小前 陽一
(72)【発明者】
【氏名】有村 勉
(72)【発明者】
【氏名】木村 成克
【テーマコード(参考)】
4B018
4B117
【Fターム(参考)】
4B018MD48
4B018ME14
4B018MF01
4B018MF02
4B018MF03
4B018MF06
4B117LC04
4B117LG24
4B117LK12
4B117LP01
(57)【要約】
【課題】 日常使用される食材・調味料においてGI値の低いものを提供する。
【解決手段】 低GI砂糖として、サトウキビ抽出物と、原糖とを含む(S13)。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
サトウキビ抽出物と、原糖とを含む低GI砂糖。
【請求項2】
前記サトウキビ抽出物は、遠心分離されていないものである請求項1記載の低GI砂糖。
【請求項3】
前記サトウキビ抽出物として、サトウキビ濃縮液を用いる請求項1または2記載の低GI砂糖。
【請求項4】
前記原糖に対して、前記サトウキビ抽出物を炭水化物換算にて0.1~100重量%含む請求項1~3の何れか一項に記載の低GI砂糖。
【請求項5】
請求項1~4の何れかに記載の低GI砂糖を使用した食品または飲料。
【請求項6】
サトウキビからサトウキビ抽出物を得る工程と、
原糖と前記サトウキビとを調合する工程と、
を含む低GI砂糖の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、低GI砂糖、食品または飲料および低GI砂糖の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
生活習慣病の予防として運動療法の他、食事療法が取り入れられている。食事療法としては、カロリーなどの量(エネルギー)に着目して行う方法が主であるが、食品や食材の質に着目して行う方法も検討されている。食事や食材の質を示す指標としては、食品や食材の吸収のされやすさを示すものであり、例えば、食品や食材に含まれる糖質の吸収のされやすさを示すGI(グライセミック・インデックス)値等がある。また、他方で近年、健康志向の高まりから、食品や食材への関心が高まっており、GI値も注目されつつある。例えば、特許文献1には、大豆粉末並びにドライフルーツ及び/又は難消化性デキストリンを含むGI値低減剤やこれを含む食品の製造方法が開示されている。
【0003】
ここで、GI値は、食後における血糖値の時間変化から求められる血糖値上昇曲線下面積を、ブドウ糖などにおけるものを基準として数値化したものである。具体的には、炭水化物換算で50gのブドウ糖を摂取した後の血糖値の時間変化から求められる血糖値上昇曲線下面積を100とした場合において、炭水化物50gを含有する食品や食材を摂取した後の血糖値の時間変化から求められる血糖値上昇曲線下面積をGI値として求めている。また、一般には、GI値が55以下であるものを低GI食品、56以上かつ69以下であるものを中GI食品、70以上であるものを高GI食品と分類することが多い。
【0004】
すなわち、GI値が低い食品や食材を摂取した場合、GI値が高い食品や食材を摂取した場合と比較して、血糖値の上昇を緩やかにすることができるという効果が得られる。ここで、血糖値が速く上昇すると、インスリンが多く分泌され、糖尿病、動脈硬化等の血管疾患、体内の脂肪蓄積促進などさまざまな疾患の原因となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1では、GI値低減剤として所定の食材を用いて構成しているが、GI値低減効果をより得るためには、日常使用される食材・調味料のGI値を低減することが好ましい。例えば、精製糖である上白糖のGI値は88であるが、GI値の低い砂糖を用いることも考えられる。
本発明の目的は、日常使用される食材・調味料においてGI値の低いものを提供すること、および、これを用いた食品または飲料を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、鋭意検討の結果、所定の抽出物と原糖とを調合することにより上記目的を達成できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
すなわち、本発明によれば、
(1) サトウキビ抽出物と、原糖とを含む低GI砂糖、
(2) 前記サトウキビ抽出物は、遠心分離されていないものである(1)記載の低GI砂糖、
(3) 前記サトウキビ抽出物として、サトウキビ濃縮液を用いる(1)または(2)記載の低GI砂糖、
(4) 前記原糖に対して、前記サトウキビ抽出物を炭水化物換算にて0.1~100重量%含む(1)~(3)の何れかに記載の低GI砂糖、
(5) (1)~(4)の何れかに記載の低GI砂糖を使用した食品または飲料、
(6) サトウキビからサトウキビ抽出物を得る工程と、原糖と前記サトウキビとを混合する工程と、を含む低GI砂糖の製造方法、
が提供される。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、日常使用される食材・調味料においてGI値の低いものを提供することができる。また、これを用いた食品または飲料を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】実施の形態に係るサトウキビ抽出物の一例としてのサトウキビ濃縮液の製造手順を示すフローチャートである。
【
図2】実施の形態に係る低GI砂糖の製造手順を示すフローチャートである。
【
図3】実施例における測定結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照して実施の形態に係る低GI砂糖について説明する。本発明の低GI砂糖は、サトウキビ抽出物と、原糖とを含む。
【0012】
(サトウキビ抽出物)
本発明において、サトウキビ抽出物は、サトウキビを搾汁し、ろ過を行う工程を経たものであれば、特に限定されず用いることができる。サトウキビ抽出物としては、液体であっても固体であってもよい。液体としては、スラリー状、ペースト状などの形態であってもよい。本発明において、サトウキビ抽出物としては、濃縮した形態、即ちサトウキビ濃縮液として用いることが好ましい。また、サトウキビ抽出物としては、遠心分離されていないものを用いることが好ましい。
【0013】
図1は、サトウキビ抽出物の一例としてのサトウキビ濃縮液の製造手順を示すフローチャートである。
図1に示すようにサトウキビを圧搾することによりサトウキビ搾汁液を得て(ステップS1)、得られたサトウキビ搾汁液のろ過を行い(ステップS2)、ろ過の後、所定の濃度まで濃縮し(ステップS3)、サトウキビ濃縮液を得る(ステップS4)。
【0014】
ここで、上記のステップS1におけるサトウキビの圧搾、ステップS2におけるろ過、およびステップS3における濃縮は、特に制限なく公知の方法を用いることができる。
【0015】
ここで、サトウキビ濃縮液は、好ましくはBrix値にて10~95%、より好ましくはBrix値にて50~85%まで濃縮する。
【0016】
(原糖)
本発明において用いる原糖は、サトウキビ由来のものである。すなわち、サトウキビを公知の方法により圧搾、加熱濃縮し、遠心分離を行うと原糖と糖蜜とに分離することができる。このようにして得られた原糖を本発明において用いる。
【0017】
(低GI砂糖)
本発明においては、上記のサトウキビ抽出物と、原糖とを混合することにより低GI砂糖の調合を行う。
図2は、実施の形態に係る低GI砂糖の製造手順を示すフローチャートである。
【0018】
図2に示すように、上記により得られた原糖を加水溶解する(ステップS11)。ここで、加水溶解後の濃度は通常、Brix値にて10~85%である。
【0019】
次いで、加水溶解した原糖をろ過し(ステップS12)、サトウキビ抽出物と混合することにより、本発明の低GI砂糖の調合を行う(ステップS13)。ここで、原糖の固形分量に対して、サトウキビ抽出物を固形分にて好ましくは0.1~100質量%、より好ましくは0.5~80質量%、さらに好ましくは1~50質量%添加して調合を行う。なお、調合は公知の方法により行うことができ、例えば、撹拌機等を用いて調合を行うことができる。即ち、所定のタンクに加水溶解した原糖とサトウキビ抽出物とを入れ、撹拌翼等を用いて撹拌することが好ましい。
【0020】
調合を行った後、低GI砂糖について、殺菌機等を用いて殺菌を行い(ステップS14)、濃縮機等を用いて濃縮し(ステップS15)、起晶機により起晶する(ステップS16)。なお、ステップS14~S16の工程については、公知の方法を制限なく用いることができる。
【0021】
その後、金属探知等を行うことにより金属等の異物を篩別し(ステップS17)、製品包装機により低GI砂糖を所定量包装し(ステップS18)、製品としての低GI砂糖を得る。
【0022】
(GI値)
本発明の低GI砂糖は、GI値が好ましくは55以下であり、より好ましくは54以下、さらに好ましくは53以下である。すなわち、本発明の低GI砂糖を摂取した場合、摂取後の血糖値の上昇を緩やかにすることができる。
【0023】
(用途)
本発明の低GI砂糖は、食品や飲料等に配合することができる。食品としては、パン類、麺類、菓子類、総菜類、食肉加工品、魚介加工品、冷凍食品、ゼリー類、アイスクリーム類、乳製品、各種調味料等が挙げられる。また、一般食品の他、特定保健用食品、医薬部外品、健康食品、サプリメントにも配合させることができる。飲料としては、清涼飲料水、乳飲料、酒類、茶、紅茶飲料、コーヒー、果汁飲料、炭酸飲料、ミネラルウォーター類、果実・野菜飲料等が挙げられる。
【0024】
本発明の低GI砂糖を配合させた食品や飲料の製造の際に、本発明の効果を妨げない範囲で必要に応じて、甘味料、着色料、保存料、増粘剤、安定化剤、ゲル化剤、酸化防止剤、発色剤、漂白剤、乳化剤、膨張剤、酸味料、光沢剤、香料等の添加剤、溶剤、油を添加してもよい。これらの添加剤は一種類を単独で用いてもよいし、二種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0025】
上記食品や飲料中に配合される低GI砂糖の割合は、使用目的に応じて適宜調整することができるが、上記食品や飲料中に配合される低GI砂糖の割合は、好ましくは0.1~90質量%、より好ましくは0.1~80質量%、さらに好ましくは0.1~50質量%である。
【実施例0026】
以下に、実施例を挙げて本発明を説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0027】
(低GI砂糖の製造)
図1に示すステップS1~S4の工程を経たサトウキビ濃縮液(Brix値:60~80%)と、
図2に示すステップS11~S13を経た原糖の水溶液とを混合し、低GI砂糖の調合を行った。ここで、原糖の水溶液中の原糖の固形分量に対して、サトウキビ濃縮液を炭水化物量として1~50質量%となるように調合を行った。そして、
図2に示すステップS15~S18を行い、低GI砂糖を得た。
【0028】
(GI値の測定)
GI値の測定は、外部臨床試験機関にて試験責任医師により実施した。試験責任医師が試験の参加に問題ないと判断した健常人成人10名を被験者として、試験前日20時以降絶食の後、摂取前の空腹時血糖値を測定した。上記「低GI砂糖の製造」にて得られた低GI砂糖を炭水化物量50gとなるように準備し、被験者に摂取させ、摂取後15、30、45、60、90、120分後の血糖値を測定した。そして、各被験者について、各時間における摂取前の血糖値からの上昇値を求め、10名の平均値を求めた(実施例)。
【0029】
また、比較例として、試験前日20時以降絶食の後、被験者の摂取前の空腹時血糖値を測定した。その後、50gのブドウ糖を被験者に摂取させ、同様に摂取後15、30、45、60、90、120分後の血糖値を測定した。そして、各被験者について、各時間における摂取前の血糖値からの上昇値を求め、10名の平均値を求めた(比較例)。
【0030】
上記実施例および比較例についてグラフとしたものを
図3に示す。そして、実施例および比較例について、基線(0mg/dl)より上の面積(血糖値上昇曲線下面積)を求めた。そして、下記式
GI値=(実施例の血糖値上昇曲線下面積)/(比較例の血糖値上昇曲線下面積)×100
により、低GI砂糖のGI値を求めたところ、GI値は53.0であった。すなわち、摂取後の血糖値の上昇を緩やかにすることができるものであることが示された。