(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022170857
(43)【公開日】2022-11-11
(54)【発明の名称】保護システム
(51)【国際特許分類】
H02M 7/12 20060101AFI20221104BHJP
H02P 9/00 20060101ALI20221104BHJP
H02P 9/30 20060101ALI20221104BHJP
H02H 7/12 20060101ALI20221104BHJP
【FI】
H02M7/12 H
H02P9/00 B
H02P9/30 A
H02H7/12 H
【審査請求】未請求
【請求項の数】18
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021077115
(22)【出願日】2021-04-30
(71)【出願人】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(71)【出願人】
【識別番号】317015294
【氏名又は名称】東芝エネルギーシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100108855
【弁理士】
【氏名又は名称】蔵田 昌俊
(74)【代理人】
【識別番号】100103034
【弁理士】
【氏名又は名称】野河 信久
(74)【代理人】
【識別番号】100075672
【弁理士】
【氏名又は名称】峰 隆司
(74)【代理人】
【識別番号】100153051
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100162570
【弁理士】
【氏名又は名称】金子 早苗
(72)【発明者】
【氏名】児山 裕史
(72)【発明者】
【氏名】金子 恭大
(72)【発明者】
【氏名】石月 照之
(72)【発明者】
【氏名】森 淳二
(72)【発明者】
【氏名】金田 大成
(72)【発明者】
【氏名】影山 隆久
【テーマコード(参考)】
5G053
5H006
5H590
【Fターム(参考)】
5G053AA01
5G053AA09
5G053BA01
5G053BA04
5G053CA04
5G053EC03
5G053FA01
5H006BB02
5H006CC08
5H006DA04
5H006DB01
5H006DC03
5H006DC05
5H006FA01
5H590AB01
5H590AB02
5H590CA11
5H590CA14
5H590CC10
5H590CD01
5H590CD03
5H590CE01
5H590DD43
5H590DD72
5H590DD80
5H590FA06
5H590FB01
5H590FC12
5H590FC15
5H590FC21
5H590GA03
5H590GA05
5H590GA09
5H590GB05
5H590HA07
5H590JA02
5H590JA09
5H590KK04
(57)【要約】 (修正有)
【課題】直流回路における直流電圧の上昇を必要に応じて変化させることを可能にする保護システムを提供する。
【解決手段】保護システムが適用される可変速揚水発電システムにおいて、二次励磁変換器1は、直流回路における直流電圧の上昇を抑制する少なくとも1つのチョッパ14と、チョッパに複数通りの抵抗を作用させる制御装置2とを備え、系統故障の発生時に、無効電力指令値または無効電流指令値に基づき、過電圧保護装置をすぐに動作させるべきか否かを適切に判定できるとともに、必要な場合には、N個のチョッパ群14のうち動作させるチョッパの数を少なくすることによって、過電圧保護装置の動作を早めてゼロミスの発生を回避する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
直流回路における直流電圧の上昇を抑制する少なくとも1つのチョッパと、
前記チョッパに複数通りの抵抗を作用させる制御装置と
を備えた、
保護システム。
【請求項2】
前記チョッパは、独立に動作する複数のチョッパで構成される、
請求項1に記載の保護システム。
【請求項3】
前記制御装置は、
運転状態に応じて、前記チョッパに作用させる抵抗を変える、
請求項1又は2に記載の保護システム。
【請求項4】
前記制御装置は、
運転状態に応じて、前記複数のチョッパのうち動作させるチョッパの数を変える、
請求項2に記載の保護システム。
【請求項5】
前記制御装置は、
運転状態に応じて、前記チョッパを動作させるタイミングを変える、
請求項1又は2に記載の保護システム。
【請求項6】
前記制御装置は、
運転状態に応じて、前記チョッパを動作させる信号をマスキングする時間を変える、
請求項1又は2に記載の保護システム。
【請求項7】
前記制御装置は、
発電システムの無効電力あるいは無効電流に応じて、前記チョッパに作用させる抵抗を変える、
請求項1又は2に記載の保護システム。
【請求項8】
前記制御装置は、
発電システムの無効電力あるいは無効電流が大きいほど、前記チョッパに作用させる抵抗を大きくする、
請求項7に記載の保護システム。
【請求項9】
前記制御装置は、
発電システムの無効電力あるいは無効電流に応じて、前記複数のチョッパのうち動作させるチョッパの数を変える、
請求項2に記載の保護システム。
【請求項10】
前記制御装置は、
発電システムの無効電力あるいは無効電流が大きいほど、前記複数のチョッパのうち動作させるチョッパの数を少なくする、
請求項9に記載の保護システム。
【請求項11】
前記制御装置は、
発電システムの無効電力あるいは無効電流に応じて、前記チョッパを動作させるタイミングを変える、
請求項1又は2に記載の保護システム。
【請求項12】
前記制御装置は、
発電システムの無効電力あるいは無効電流が大きいほど、前記チョッパを動作させるタイミングを遅くする、
請求項11に記載の保護システム。
【請求項13】
前記制御装置は、
発電システムの無効電力あるいは無効電流に応じて、前記チョッパを動作させる信号をマスキングする時間を変える、
請求項1又は2に記載の保護システム。
【請求項14】
前記制御装置は、
発電システムの無効電力あるいは無効電流が大きいほど、前記チョッパを動作させる信号をマスキングする時間を長くする、
請求項13に記載の保護システム。
【請求項15】
前記制御装置は、
系統電圧の変化から系統故障を検知し、当該故障の種類に応じて、前記チョッパに作用させる抵抗を変える、
請求項1又は2に記載の保護システム。
【請求項16】
前記制御装置は、
系統電圧の変化から系統故障を検知し、当該故障の種類に応じて、前記複数のチョッパのうち動作させるチョッパの数を変える、
請求項2に記載の保護システム。
【請求項17】
前記制御装置は、
系統電圧の変化から系統故障を検知し、当該故障の種類に応じて、前記チョッパを動作させるタイミングを変える、
請求項1又は2に記載の保護システム。
【請求項18】
前記制御装置は、
系統電圧の変化から系統故障を検知し、当該故障の種類に応じて、前記チョッパを動作させる信号をマスキングする時間を変える、
請求項1又は2に記載の保護システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、保護システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、高速な出力制御で電力系統の安定化に寄与する可変速揚水発電システムが世界的に開発・導入されている。
【0003】
図11に一般的な可変速揚水発電システムの構成の一例を示す。
【0004】
図11に示される可変速揚水発電システムは、電力系統に通じる送電線3と遮断器4を介して電気的に接続可能に構成され、また、主変圧器5、発電電動機(誘導機)6、水車7を備えるほか、インバータ11、コンバータ12、コンデンサ13、チョッパ群14、過電圧保護装置15(以下、「OVP15」)、励磁用変圧器16などを含む二次励磁変換器1を備えている。チョッパ群14の各々は、直接接続された抵抗器141およびスイッチング素子142を含む。OVP15は、短絡器を構成する複数のサイリスタ151を含む。
【0005】
このように構成される可変速揚水発電システムは、発電電動機6の二次巻線(回転子巻線)に接続される二次励磁変換器1を用いて励磁を行う二次励磁変換器方式を採用している。この可変速揚水発電システムは、電力系統に連系して運転されるシステムであり、系統故障が発生した場合の保護動作が必要となることから、その保護動作を行う保護装置として、上記したチョッパ群14およびOVP15が二次励磁変換器1に備えられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第3286049号公報
【特許文献2】特許第6640635号公報
【特許文献3】特許第6371021号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
図12に系統故障発生後の一般的な送電線電流の変化を示す。
【0008】
図12に示されるように、例えば時刻t1において送電線3で故障が発生すると、送電線3に流れる電流(送電線電流)に直流成分が重畳し、送電線電流は交流成分および直流成分を有する電流波形を示すものとなる。故障の発生に応じて時刻t2で遮断器4の接点が開極するが、上記直流成分が大きいと、電流がゼロになる(ゼロクロスする)まで接点間にアークを引いて電流が流れ続ける。故障発生から電流がゼロクロスするまでの時間(以下、「ゼロクロス時間」)が長いと遮断器4の接点が損傷してしまうため、ゼロクロス時間は短くする必要がある。故障から所定の時間内に電流がゼロクロスしない現象をゼロミスと呼ぶ。
【0009】
これを回避する一手法としてOVP15が用いられる。OVP15は、
図11に示したように発電電動機6の二次巻線とインバータ11とを接続する回路に接続される複数のサイリスタ151を有する装置であり、各サイリスタの点弧により当該回路の線間(相間)を短絡させる。例えば
図13に示されるように、時刻t4でOVP15を動作させると、主変圧器5の系統側の送電線電流に交流成分が重畳され、交流成分および直流成分うちの交流成分が大きくなる。これにより、送電線電流がより短時間で、例えば時刻t5でゼロクロスするようになり、ゼロミスの発生を回避することができる。OVP15が早く動作するほどゼロクロス時間を短くできるため、系統故障発生後は早期のOVP動作が期待される。
【0010】
このOVP15を動作させるトリガとして、予め定めた閾値電圧に対する二次励磁変換器1の直流電圧V
Dの超過を用いる手法がある。直流電圧V
Dは、二次励磁変換器1内のインバータ11とコンバータ12との間に配置される直流回路(直流リンク回路)の電圧である。例えば
図14に示されるように、時刻T
faultで系統故障が発生し、過渡直流成分が二次励磁変換器1に流入すると、直流電圧V
Dが実線L
0に示すように上昇する。
無対策では、実線L
1に示すようにすぐにチョッパ動作閾値TH_CHOPを超えて過電圧となってしまうので、直流電圧V
Dがチョッパ動作閾値TH_CHOPを超えたら、チョッパ群14をオン状態にし、チョッパ群14に直流回路のエネルギーを吸収させる。これにより直流電圧V
Dの上昇は破線L
2に示すように抑えられる。それでも直流電圧V
Dの上昇を抑制しきれず、直流電圧V
Dが閾値TH_OVPに至れば、OVP15を動作させ、インバータ11の出力端の線間を短絡させる。線間が短絡すると、それ以上、直流電流は直流回路には流入しなくなる。
【0011】
系統故障発生後、早期に直流電圧VDが上昇すれば、より早くOVP15が動作しゼロクロス時間は短くなる。しかし、チョッパ動作閾値TH_CHOPはOVP動作閾値TH_OVPよりも低いため、チョッパ群14が動作すると直流電圧VDの上昇は破線L2に示したように抑制されて緩やかになる。そのため、仮にチョッパ群14が動作しなければ、故障発生Tfaultの後、時刻T1で直流電圧VDはOVP動作閾値TH_OVPに達してOVP15が動作するが、チョッパ群14が動作するとOVP動作閾値TH_OVPに至るのは時刻T2となり、ゼロクロス時間が長くなりゼロミスしてしまう可能性がある。一方で、チョッパ群14の抵抗器141の値を大きくすると、直流電圧VDの上昇は急峻になるが、OVP15を動作させる必要のない故障が発生した場合においてもOVP15を動作させてしまうことになる。
【0012】
このような問題は、上記した可変速揚水発電システムなどの水力を用いる発電システムに限らず、例えば風力などの他のエネルギーを用いる発電システムにおいても生じうる。
【0013】
本発明が解決しようとする課題は、直流回路における直流電圧の上昇を必要に応じて変化させることを可能にする保護システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
実施形態の保護システムは、直流回路における直流電圧の上昇を抑制する少なくとも1つのチョッパと、前記チョッパに複数通りの抵抗を作用させる制御装置とを備える。
【発明の効果】
【0015】
直流回路における直流電圧の上昇を必要に応じて変化させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】第1の実施形態に係る保護システムが適用される可変速揚水発電システムの構成の一例を示す図。
【
図2】第1の実施形態に係る保護システムの機能構成の一例を示すブロック図。
【
図3】第1の実施形態に係る保護システムにより実現される直流電圧V
Dの複数通りの時間的変化の一例を示すグラフ。
【
図4】第2の実施形態に係る保護システムの機能構成の一例を示すブロック図。
【
図5】第2の実施形態に係る保護システムにより実現されるチョッパゲート信号の制御の一例を説明するためのタイムチャート。
【
図6】第2の実施形態に係る保護システムにより実現される直流電圧V
Dの複数通りの時間的変化の一例を示すグラフ。
【
図7】
図5に示されるタイムチャートの変形例を示すタイムチャート。
【
図8】
図6に示されるグラフの変形例を示すグラフ。
【
図10】第4の実施形態に係る保護システムが適用される可変速揚水発電システムに備えられる二次励磁変換器の構成の一例を示す図。
【
図11】一般的な可変速揚水発電システムの構成の一例を示す図。
【
図12】故障発生から電流がゼロクロスするまでの時間が長い場合を説明するための図。
【
図13】故障発生から電流がゼロクロスするまでの時間が短い場合を説明するための図。
【
図14】直流電圧V
Dの時間的変化を説明するためのグラフ。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、実施の形態について、図面を参照して説明する。
【0018】
[第1の実施形態]
最初に、第1の実施形態について説明する。以下では、前述した背景技術と異なる部分を中心に説明する。
【0019】
図1は、第1の実施形態に係る保護システムが適用される可変速揚水発電システムの構成の一例を示す図である。この
図1においては、
図11と共通する要素には同一の符号を付している。なお、本実施形態では、保護システムが可変速揚水発電システムに適用される場合の例を示すが、可変速揚水発電システムのような水力を用いる発電システムに限らず、例えば風力などの他のエネルギーを用いる発電システムにも適用できるものである。
【0020】
図1に示される可変速揚水発電システムは、前述した通り、電力系統に通じる送電線3と遮断器4を介して電気的に接続可能に構成され、また、主変圧器5、発電電動機(誘導機)6、水車7を備えるほか、インバータ11、コンバータ12、コンデンサ13、チョッパ群14、OVP15、励磁用変圧器16などを含む二次励磁変換器1を備えている。インバータ11およびコンバータ12は、2レベル変換器で構成される。チョッパ群14の各々は、直接接続された抵抗器141およびスイッチング素子142を含む。OVP15は、短絡器を構成する複数のサイリスタ151を含む。各サイリスタ151には直列に抵抗が接続されていてもよい。また、この可変速揚水発電システムには、二次励磁変換器1を制御する制御装置2が備えられる。
【0021】
発電電動機6は、例えば二重給電交流機として構成される可変速発電電動機である。水車7は、回転軸を通じて発電電動機6と結合され、図示しないポンプとも結合される。
【0022】
二次励磁変換器1は、例えば可変周波数の交流を発電電動機6の二次巻線に供給する周波数変換器の機能を有し、自励式の励磁装置として発電電動機6の励磁を行う。
【0023】
なお、二次励磁変換器1に備えられるチョッパは1つであってもよいが、本実施形態では、
図1に示されるように複数のチョッパ14が設けられている場合の例について説明する。また、
図1に示される個々の構成要素は、必ずしも全てが必要とされるものではなく、いくつかの構成要素(例えば主変圧器5もしくは励磁用変圧器16など)は省くことが可能である。
【0024】
図1に示される可変速揚水発電システムは、発電電動機6の二次巻線(回転子巻線)に接続される二次励磁変換器1を用いて励磁を行う二次励磁変換器方式を採用している。この可変速揚水発電システムは、電力系統に連系して運転されるシステムであり、系統故障が発生した場合の保護動作が必要となることから、その保護動作を行う保護装置として、上記したチョッパ群14およびOVP15が二次励磁変換器1に備えられている。
【0025】
二次励磁変換器1に備えられるチョッパ群14およびOVP15は、系統故障が発生した場合の保護動作を行う保護装置として機能する。チョッパ群14およびOVP15は、制御装置2による制御のもとで動作する。
【0026】
制御装置2は、二次励磁変換器1を制御するものであり、発電電動機6の二次巻線(回転子巻線)へ供給すべき交流電圧、電流、周波数、位相の制御などを行うほか、個々のチョッパ14のスイッチング素子142のゲートに供給すべきゲート信号の制御、OVP15の個々のサイリスタ151のゲートに供給すべきゲート信号の制御などを行う。この制御装置2による制御の全て又は一部は、例えばプロセッサが実行するプログラムで実現されてもよい。
【0027】
本実施形態では、チョッパ群14と制御装置2とを含む保護システムにより、系統故障が発生した場合における二次励磁変換器1の直流回路での直流電圧VDの上昇を必要に応じて変化させることを可能にする。この保護システムでは、チョッパ群14は、二次励磁変換器1の直流回路において並列接続されており、それぞれ制御装置2の制御のもとで独立に動作することができる。制御装置2は、並列接続されたチョッパ群14の動作を個別に(あるいはグループ単位で)可変制御することができる。
【0028】
特に、制御装置2は、可変速揚水発電システムの運転状態や直流電圧VDを監視し、直流電圧VDが予め定めた閾値を超える場合に、当該運転状態に応じて、チョッパ群14に複数通りの抵抗を作用させる機能を有する。この制御装置2は、例えば可変速揚水発電システムの無効電力あるいは無効電流に応じて、チョッパ群14に作用させる抵抗を変えるように構成されており、例えば、可変速揚水発電システムの無効電力あるいは無効電流が大きいほど、チョッパ群14に作用させる抵抗を大きくする。
【0029】
ここでいう複数通りの抵抗とは、例えばチョッパ群14のうち動作させるチョッパの数を変えることによって、チョッパ群14全体としての抵抗を複数通り実現させる場合のほか、チョッパ群14(あるいはその中の一部)を動作させるタイミングを変えることによって、あるいはチョッパ群14(あるいはその中の一部)を動作させる信号のチョッパ14への供給を遮る(マスキングする)時間を変えることによって、当該チョッパ群の抵抗の時間的変化を複数通り実現させる場合などをも含む、広い意味での複数の抵抗を指す。
【0030】
この第1の実施形態においては、制御装置2が、可変速揚水発電システムの運転状態に応じて、チョッパ群14のうち動作させるチョッパの数を変えることによって、チョッパ群14全体としての抵抗を複数通り実現させる場合の例を示す。
【0031】
制御装置2は、例えば可変速揚水発電システムの無効電力あるいは無効電流に応じて、チョッパ群14のうち動作させるチョッパの数を変えることによって、チョッパ群14に作用させる抵抗を変えるように構成されており、例えば、可変速揚水発電システムの無効電力あるいは無効電流が大きいほど、チョッパ群14のうち動作させるチョッパの数を少なくする。
【0032】
例えば、可変速揚水発電システムの無効電力(弱め励磁)出力が大きい時は、故障発生後の過渡直流分が大きくなってゼロミスが生じやすいので、OVP15をより早く動作させるべく、制御装置2は直流電圧VDの上昇が急峻となるように、動作させるチョッパの数を少なくする。一方、可変速揚水発電システムの無効電力(弱め励磁)出力が大きくない時は、ゼロミスが生じる可能性は低くOVP15を早く動作させる必要はないので、チョッパ群14の本来の機能を活かすべく、制御装置2は直流電圧VDの上昇が抑制されて緩やかとなるように、動作させるチョッパの数を多くする。
【0033】
図2は、第1の実施形態に係る保護システムの機能構成の一例を示すブロック図である。また、
図3は、第1の実施形態に係る保護システムにより実現される直流電圧V
Dの複数通りの時間的変化の一例を示すグラフである。なお、本実施形態では、直流電圧V
Dの時間的変化のパターンが2通りである場合の例を示すが、これに限らず、直流電圧V
Dの時間的変化のパターンを3通り以上とすることも可能である。
【0034】
ここで、チョッパ群14は、並列接続されたN個のチョッパ群からなり、通常運転中はいずれもオフ状態にあるものとする。また、制御装置2のチョッパゲート信号発生部21は、N個のチョッパ群14へそれぞれ個別にチョッパゲート信号G1,G2,…,GNを供給し、N個のチョッパ群14を個別にオン状態にしたりオフ状態にしたりすることができる。また、N個のチョッパ群14のうちオン状態にするチョッパ14の数(チョッパ動作数)をNONで表すものとする。ここで、NONの値は自然数であり、可変速揚水発電システムの運転状態に応じて例えばa,bのいずれかの値(但し、a<b,a<N,b<=N)が設定されるものとする。
【0035】
図2に示されるように、第1の実施形態においては、制御装置2に、チョッパゲート信号発生部21と運転状態判定部22とが設けられる。
【0036】
チョッパゲート信号発生部21は、チョッパゲート信号G1,G2,…,GNを個別に発生してこれらをそれぞれ対応するチョッパ群14へ向けて出力する機能を有する。
【0037】
例えば、チョッパゲート信号発生部21は、監視中の直流電圧VDがチョッパ動作閾値TH_CHOPを超えた場合には、運転状態判定部22により判定された運転状態に応じて、動作させるチョッパの数(すなわち、オフ状態からオン状態に切り換えるチョッパゲート信号の数)を決定し、決定した数のチョッパゲート信号をオフ状態からオン状態に切り換える。なお、ここで決定される、動作させるチョッパの数は、適宜調整してもよい。運転状態に応じて動作させるチョッパの数を調整することで、直流電圧VDがチョッパ動作閾値TH_CHOPからOVP動作閾値TH_OVPに至るまでの時間を調整することができる。
【0038】
運転状態判定部22は、可変速揚水発電システムの運転状態を判定するものであり、例えば上位システム等から供給される無効電力指令値Q*(あるいは、無効電流指令値)のデータを受信し、これに基づいて可変速揚水発電システムの無効電力(あるいは無効電流)の状態を判定する機能を有する。
【0039】
例えば、運転状態判定部22は、無効電力指令値Q*が予め定めた閾値を上回る場合に、可変速揚水発電システムの無効電力が大きい状態にある(すなわち、故障発生後の過渡直流分が大きくなってゼロミスが生じやすい状態にある)と判定する。一方、運転状態判定部22は、無効電力指令値Q*が予め定めた閾値を下回る場合には、可変速揚水発電システムの無効電力出力は大きくない状態にあると判定する。なお、ここでは無効電力指令値Q*を用いて判定を行う場合の例を示しているが、無効電力指令値の代わりに無効電流指令値を用いて同様の判定を行ってもよい。
【0040】
チョッパゲート信号発生部21は、運転状態判定部22により可変速揚水発電システムの無効電力が大きい状態にあると判定された場合には、OVP15をより早く動作させるべく、直流電圧VDの上昇が急峻となるように、チョッパ動作数NONを例えばaに設定し、a個のチョッパ14に対応するa個のチョッパゲート信号をオフ状態からオン状態に切り換える。
【0041】
一方、運転状態判定部22により可変速揚水発電システムの無効電力は大きくない状態にあると判定された場合には、チョッパゲート信号発生部21は、ゼロミスが生じる可能性は低くOVP15を早く動作させる必要はないので、チョッパ動作数NONを例えばbに設定し、b個のチョッパ14に対応するb個のチョッパゲート信号をオフ状態からオン状態に切り換える。
【0042】
このような構成において、
図3に示されるように、時刻T
faultで系統故障が発生し、過渡直流成分が二次励磁変換器1に流入すると、直流電圧V
Dが実線L
0に示すように上昇し、チョッパ動作閾値TH_CHOPに達すると、運転状態に応じて決定されるN
ON個のチョッパ群14がオン状態になって動作する。
【0043】
例えば、可変速揚水発電システムの無効電力が大きい状態にある場合は、チョッパ動作数NONが例えばaに設定される。この場合は、直流電圧VDは実線Laに示すようにNON=bの場合よりも急峻に上昇し、時刻TaにOVP動作閾値TH_OVPに達してOVP15が動作する。
【0044】
一方、可変速揚水発電システムの無効電力が大きくない状態にある場合は、チョッパ動作数NONが例えばbに設定される。この場合は、直流電圧VDは破線Lbに示すようにNON=aの場合よりも緩やかに上昇し、時刻Taよりも遅い時刻TbにOVP動作閾値TH_OVPに達してOVP15が動作する。
【0045】
第1の実施形態によれば、系統故障の発生時に、無効電力指令値または無効電流指令値に基づき、OVP15をすぐに動作させるべきか否かを適切に判定できるとともに、必要な場合には、N個のチョッパ群14のうち動作させるチョッパの数を少なくすることによって、OVP15の動作を早めてゼロミスの発生を回避することができる。
【0046】
なお、第1の実施形態では、並列接続されたチョッパ群14のうち何個を動作させるかでチョッパ群14全体としての抵抗を変化させる手法を示したが、これとは別の手法で等価的に当該抵抗を変化させることもできる。後述する実施形態では、こうした別の手法を紹介する。
【0047】
[第2の実施形態]
次に、第2の実施形態について説明する。以下では、第1の実施形態と重複する部分の説明を省略し、第1の実施形態と異なる部分を中心に説明する。
【0048】
第2の実施形態に係る保護システムが適用される可変速揚水発電システムの構成は、第1の実施形態の
図1に示した構成と同じとなる。
【0049】
前述した第1の実施形態では、チョッパ群14のうち動作させるチョッパの数を変えることによって、チョッパ群14全体としての抵抗を複数通り実現させる手法を示したが、この第2の実施形態では、チョッパ群14(あるいはその中の一部)を動作させるタイミングを変えることによって、あるいはチョッパ群14(あるいはその中の一部)を動作させる信号をマスキングする時間を変えることによって、当該チョッパ群の抵抗の時間的変化を複数通り実現させる手法を示す。
【0050】
この第2の実施形態においては、制御装置2が、可変速揚水発電システムの運転状態に応じて、チョッパ群14(あるいはその中の一部)を動作させるタイミングを変えることによって、あるいはチョッパ群14(あるいはその中の一部)を動作させる信号をマスキングする時間を変えることによって、チョッパ群14全体としての抵抗を複数通り実現させる場合の例を示す。
【0051】
制御装置2は、例えば可変速揚水発電システムの無効電力あるいは無効電流に応じて、チョッパ群14(あるいはその中の一部)を動作させるタイミングを遅くする、あるいは、チョッパ群14(あるいはその中の一部)を動作させる信号をマスキングする時間を長くすることによって、チョッパ群14に作用させる抵抗を変えるように構成されており、例えば、可変速揚水発電システムの無効電力あるいは無効電流が大きいほど、チョッパ群14(あるいはその中の一部)を動作させるタイミングを遅くする、あるいは、チョッパ群14(あるいはその中の一部)を動作させる信号をマスキングする時間を長くする。
【0052】
例えば、可変速揚水発電システムの無効電力(弱め励磁)出力が大きい時は、故障発生後の過渡直流分が大きくなってゼロミスが生じやすいので、OVP15をより早く動作させるべく、制御装置2はチョッパ群14を動作させるタイミングを遅くする、あるいは、チョッパ群14を動作させる信号をマスキングする時間を長くする。一方、可変速揚水発電システムの無効電力(弱め励磁)出力が大きくない時は、ゼロミスが生じる可能性は低くOVP15を早く動作させる必要はないので、チョッパ群14の本来の機能を活かすべく、制御装置2はチョッパ群14を動作させるタイミングを遅くせずに通常通りとする、あるいは、チョッパ群14を動作させる信号のマスキングを行わないようにする。
【0053】
図4は、第2の実施形態に係る保護システムの機能構成の一例を示すブロック図である。
図5は、第2の実施形態に係る保護システムにより実現されるチョッパゲート信号の制御の一例を説明するためのタイムチャートである。
図6は、第2の実施形態に係る保護システムにより実現される直流電圧V
Dの複数通りの時間的変化の一例を示すグラフである。なお、本実施形態では、直流電圧V
Dの時間的変化のパターンが2通りである場合の例を示すが、これに限らず、直流電圧V
Dの時間的変化のパターンを3通り以上とすることも可能である。
【0054】
図4に示されるように、第2の実施形態においては、
図2に示した構成に加え、さらに遅延処理部23が制御装置2に設けられる。なお、
図4では、前述した運転状態判定部22の図示を省略しているが、
図2の場合と同様に制御装置2には運転状態判定部22も配置される。
【0055】
チョッパゲート信号発生部21は、チョッパゲート信号G1,G2,…,GN(もしくは、これらを共通化したチョッパゲート信号GATE)を発生して当該信号を遅延処理部23へ供給する機能を有する。
【0056】
例えば、チョッパゲート信号発生部21は、監視中の直流電圧VDがチョッパ動作閾値TH_CHOPを超えた場合には、チョッパゲート信号G1,G2,…,GN(もしくは、これらを共通化したチョッパゲート信号GATE)をオフ状態からオン状態に切り換える。
【0057】
遅延処理部23は、チョッパゲート信号発生部21から供給されるチョッパゲート信号G1,G2,…,GNをチョッパ群14へ向けて出力するに際し、1つ又は複数のチョッパゲート信号に対してオフ状態からオン状態に切り換えるタイミングを所定時間だけ遅延させる機能を有する。
【0058】
例えば、遅延処理部23は、運転状態判定部22(図示せず)により判定された運転状態に応じて、チョッパ群14の動作を遅延させる時間幅を決定し、決定した時間幅の期間だけ、チョッパ群14に供給するチョッパゲート信号G1,G2,…,GNのオフ状態からオン状態への切り換えを遅延させる。
【0059】
ここでは、運転状態に応じて、チョッパ群14の動作を遅延させるに際し、遅延の時間幅がいずれのチョッパゲート信号も同じである場合の例を示すが、チョッパゲート信号毎に、遅延の時間幅が異なるようにしてもよい。また、運転状態に応じて、遅延が適用されるチョッパゲート信号の数を変えるようにしてもよい。チョッパゲート信号毎に遅延の時間幅を調整したり、遅延が適用されるチョッパゲート信号の数を調整したりすることで、直流電圧VDがチョッパ動作閾値TH_CHOPからOVP動作閾値TH_OVPに至るまでの時間を調整することができる。
【0060】
例えば、遅延処理部23は、運転状態判定部22により可変速揚水発電システムの無効電力が大きい状態にあると判定された場合には、OVP15をより早く動作させるべく、直流電圧V
Dの上昇が急峻となるように、チョッパゲート信号G
1,G
2,…,G
Nのオフ状態からオン状態への切り換えを遅延させる。この場合、遅延処理部23は、
図5に示されるように、例えばチョッパゲート信号発生部21から供給されるチョッパゲート信号GATEがオフ状態からオン状態になるタイミングから所定の時間幅T
dだけ遅延したタイミングで、チョッパ群14に供給するチョッパゲート信号G
1,G
2,…,G
Nをオフ状態からオン状態に切り換える。例えば、遅延処理部23は、運転状態判定部22の判定結果に示される可変速揚水発電システムの無効電力あるいは無効電流が大きいほど、チョッパゲート信号G
1,G
2,…,G
Nをオフ状態からオン状態に切り換えるタイミングを遅くする。
【0061】
一方、運転状態判定部22により可変速揚水発電システムの無効電力は大きくない状態にあると判定された場合には、遅延処理部23は、チョッパゲート信号G1,G2,…,GNのオフ状態からオン状態への切り換えを遅延させず、通常通りのタイミングで、オフ状態からオン状態への切り換えを行う。この場合、遅延処理部23は、チョッパゲート信号GATEがオフ状態からオン状態になるタイミングで、チョッパ群14に供給するチョッパゲート信号G1,G2,…,GNをオフ状態からオン状態に切り換える。
【0062】
なお、運転状態に応じて決定される時間幅Tdの値は、適宜変更してもよい。時間幅Tdを調整することにより、直流電圧VDがチョッパ動作閾値TH_CHOPからOVP動作閾値TH_OVPに至るまでの時間を調整することができる。
【0063】
このような構成において、
図6に示されるように、時刻T
faultで系統故障が発生し、過渡直流成分が二次励磁変換器1に流入すると、直流電圧V
Dが実線L
0に示すように上昇し、直流電圧V
Dがチョッパ動作閾値TH_CHOPに達すると、前述のチョッパゲート信号GATEがオフ状態からオン状態になる。
【0064】
例えば、可変速揚水発電システムの無効電力が大きい状態にある場合は、故障発生後の過渡直流分が大きくなってゼロミスが発生すること生じやすいので、ゼロミスを回避すべく、チョッパゲート信号G1,G2,…,GNのオフ状態からオン状態への切り換えが所定の時間幅Tdだけ遅延される。
【0065】
この場合、直流電圧V
Dがチョッパ動作閾値TH_CHOPに達してチョッパゲート信号GATEがオン状態になった後、所定遅延T
dが経つまでは、N個のチョッパ群14は動作せず、直流電圧V
Dは実線L
cに示すように(前述した
図14中の実線L
1と同様に)急峻に上昇する。
【0066】
時間幅Tdが経過した後は、チョッパゲート信号G1,G2,…,GNがオフ状態からオン状態になってN個のチョッパ群14が動作し、直流電圧VDは実線Ldに示すように緩やかに上昇する。このとき既に直流電圧VDがある程度上昇しているので、遅延が無い場合よりも早い時刻T3にOVP動作閾値TH_OVPに達してOVP15が動作する。
【0067】
一方、可変速揚水発電システムの無効電力が大きくない状態にある場合は、時間幅Tdの遅延は行われず、直流電圧VDがチョッパ動作閾値TH_CHOPに達してチョッパゲート信号GATEがオン状態になると同時に、N個のチョッパ群14が動作する。そして、直流電圧VDは実線L2に示すように緩やかに上昇し、時刻T3よりも遅い時刻T2にOVP動作閾値TH_OVPに達してOVP15が動作する。
【0068】
ここまでは、N個のチョッパ群14のすべての動作を遅延させる場合の例を示したが、すべてのチョッパ群14の動作を遅延させる代わりに、そのうちの一部(1つ又は複数)のチョッパ14の動作だけを遅延させるようにしてもよい。以下に、一部のチョッパ14の動作だけを遅延させる場合の例を示す。
【0069】
図7は、
図5に示されるタイムチャートの変形例を示すタイムチャートである。
図8は、
図6に示されるグラフの変形例を示すグラフである。
【0070】
ここでは、チョッパゲート信号G
1,G
2,…,G
Nのうち、一部のチョッパゲート信号として1つのチョッパゲート信号G
kのオフ状態からオン状態への切り換えを遅延させる場合の例を示すが、代わりに2つ以上のチョッパゲート信号G
k,…のオフ状態からオン状態への切り換えを遅延させるようにしても構わない。なお、
図7では、チョッパゲート信号G
k+1,…,G
Nに係るタイムチャートの図示を省略している。
【0071】
遅延処理部23は、運転状態判定部22により可変速揚水発電システムの無効電力が大きい状態にあると判定された場合には、ゼロミスを回避すべく、チョッパゲート信号G
kのみ、オフ状態からオン状態への切り換えを遅延させる。この場合、遅延処理部23は、
図7に示されるように、例えばチョッパゲート信号発生部21から供給されるチョッパゲート信号GATEがオフ状態からオン状態になるタイミングで、チョッパゲート信号G
kを除くチョッパゲート信号G
1,G
2,…,G
k-1およびG
k+1,…,G
Nをオフ状態からオン状態に切り換え、チョッパゲート信号GATEがオフ状態からオン状態になるタイミングから時間幅T
dだけ遅延したタイミングで、チョッパゲート信号G
kをオフ状態からオン状態に切り換える。例えば、遅延処理部23は、運転状態判定部22の判定結果に示される可変速揚水発電システムの無効電力あるいは無効電流が大きいほど、チョッパゲート信号G
kをオフ状態からオン状態に切り換えるタイミングを遅くする。
【0072】
一方、運転状態判定部22により可変速揚水発電システムの無効電力は大きくない状態にあると判定された場合には、遅延処理部23は、チョッパゲート信号Gkを含むすべてのチョッパゲート信号G1,G2,…,GNのオフ状態からオン状態への切り換えを遅延させず、通常通りのタイミングでチョッパゲート信号G1,G2,…,GNのオフ状態からオン状態への切り換えを行う。この場合、遅延処理部23は、チョッパゲート信号GATEがオフ状態からオン状態になるタイミングで、チョッパゲート信号G1,G2,…,GNをオフ状態からオン状態に切り換える。
【0073】
なお、運転状態に応じて決定される時間幅Tdの値は、適宜変更してもよい。時間幅Tdを調整することにより、直流電圧VDがチョッパ動作閾値TH_CHOPからOVP動作閾値TH_OVPに至るまでの時間を調整することができる。
【0074】
このような構成において、
図8に示されるように、時刻T
faultで系統故障が発生し、過渡直流成分が二次励磁変換器1に流入すると、直流電圧V
Dが実線L
0に示すように上昇し、チョッパ動作閾値TH_CHOPに達すると、前述のチョッパゲート信号GATEがオフ状態からオン状態になる。
【0075】
例えば、可変速揚水発電システムの無効電力が大きい状態にある場合は、故障発生後の過渡直流分が大きくなってゼロミスが発生すること生じやすいので、ゼロミスを回避すべく、チョッパゲート信号G1,G2,…,GNのうちのチョッパゲート信号Gkのオフ状態からオン状態への切り換えが所定の時間幅Tdだけ遅延される。
【0076】
この場合、直流電圧V
Dがチョッパ動作閾値TH_CHOPに達してチョッパゲート信号GATEがオン状態になった時、チョッパゲート信号G
kを除くチョッパゲート信号G
1,G
2,…,G
k-1およびG
k+1,…,G
Nはオン状態になって対応するN-1個のチョッパは動作するが、所定遅延T
dが経つまでは、チョッパゲート信号G
kはオン状態にならず対応する1個のチョッパ14は動作しないまま、直流電圧V
Dは実線L
eに示すように上昇する。このときの直流電圧V
Dは、実線L
eに示されるように、前述した
図6中の実線L
cよりも緩やかに(すなわち、前述した
図14中の破線L
1よりも緩やかに)上昇する。
【0077】
時間幅Tdが経過した後は、チョッパゲート信号Gkがオフ状態からオン状態になってチョッパゲート信号Gkに対応する1個のチョッパ14も動作し、直流電圧VDは実線Lfに示すように緩やかに上昇する。このとき既に直流電圧VDがある程度上昇しているので、遅延が全く無い場合よりも早い時刻T3にOVP動作閾値TH_OVPに達してOVP15が動作する。
【0078】
このようにすると、
図8に示されるように、
図6の場合とは異なる直流電圧V
Dの時間的変化のパターンを形成することができる。
【0079】
図9は、
図4に示される構成の変形例を示す図である。
【0080】
図9に示されるように、制御装置2において、遅延処理部23の代わりにマスク処理部24が配置される。
【0081】
チョッパゲート信号発生部21は、前述したように、チョッパゲート信号G1,G2,…,GN(もしくは、これらを共通化したチョッパゲート信号GATE)を発生して当該信号を遅延処理部23へ供給する機能を有する。
【0082】
例えば、チョッパゲート信号発生部21は、監視中の直流電圧VDがチョッパ動作閾値TH_CHOPを超えた場合には、チョッパゲート信号G1,G2,…,GNをオフ状態からオン状態に切り換える。
【0083】
マスク処理部24は、チョッパゲート信号発生部21から供給されるチョッパゲート信号G1,G2,…,GNをチョッパ群14へ向けて出力するに際し、1つ又は複数のチョッパゲート信号に対して所定時間だけマスキングする(当該チョッパゲート信号のチョッパ14への供給を遮る)機能を有する。
【0084】
例えば、マスク処理部24は、運転状態判定部22(図示せず)により判定された運転状態に応じて、チョッパ群14の動作を遅延させる時間幅を決定し、決定した時間幅の期間だけ、チョッパ群14(あるいは、その一部)に供給するチョッパゲート信号G1,G2,…,GN(あるいは、その一部)をマスキングする。
【0085】
ここでは、運転状態に応じて、チョッパ群14の動作を遅延させるに際し、マスキングの時間幅がいずれのチョッパゲート信号も同じである場合の例を示すが、チョッパゲート信号毎に、マスキングの時間幅が異なるようにしてもよい。また、運転状態に応じて、マスキングが適用されるチョッパゲート信号の数を変えるようにしてもよい。チョッパゲート信号毎にマスキングの時間幅を調整したり、マスキングが適用されるチョッパゲート信号の数を調整したりすることで、直流電圧VDがチョッパ動作閾値TH_CHOPからOVP動作閾値TH_OVPに至るまでの時間を調整することができる。
【0086】
例えば、マスク処理部24は、運転状態判定部22により可変速揚水発電システムの無効電力が大きい状態にあると判定された場合には、OVP15をより早く動作させるべく、直流電圧VDの上昇が急峻となるように、オン状態のチョッパゲート信号G1,G2,…,GN(あるいは、その一部)を時間幅Tdだけマスキングする。例えば、遅延処理部23は、運転状態判定部22の判定結果に示される可変速揚水発電システムの無効電力あるいは無効電流が大きいほど、チョッパゲート信号G1,G2,…,GNをマスキングする時間幅Tdを長くする。
【0087】
一方、運転状態判定部22により可変速揚水発電システムの無効電力は大きくない状態にあると判定された場合には、マスク処理部24は、オン状態のチョッパゲート信号G1,G2,…,GN(あるいは、その一部)をマスキングせず、そのまま出力する。
【0088】
このようにした場合の直流電圧V
Dの時間的変化については、
図6や
図8に示されるものと同様となるため、その説明を省略する。
【0089】
第2の実施形態によれば、系統故障の発生時に、無効電力指令値または無効電流指令値に基づき、OVP15をすぐに動作させるべきか否かを適切に判定できるとともに、必要な場合には、チョッパ群14(あるいはその中の一部)を動作させるタイミングを遅くすることによって、あるいはチョッパ群14(あるいはその中の一部)を動作させる信号をマスキングする時間を長くすることによって、OVP15の動作を早めてゼロミスの発生を回避することができる。
【0090】
[第3の実施形態]
次に、第3の実施形態について説明する。以下では、第1及び第2の実施形態と重複する部分の説明を省略し、第1及び第2の実施形態と異なる部分を中心に説明する。
【0091】
前述した第1及び第2の実施形態では、制御装置2が、可変速揚水発電システムの無効電力あるいは無効電流に応じて、チョッパ群14全体としての抵抗を複数通り実現させる場合の例を示したが、この第3の実施形態においては、制御装置2が、系統故障の種類に応じて、チョッパ群14全体としての抵抗を複数通り実現させる場合の例を示す。
【0092】
制御装置2は、系統電圧の変化を監視し、この系統電圧の変化から系統故障を検知し、系統故障の種類を識別する機能を備えている。例えば、制御装置2は、系統故障が、3相交流を構成する3回線のうち、1回線のみの故障(1相地絡など)なのか、あるいは、3回線の故障(3相地絡など)なのかを識別することができる。3回線の故障の場合は、例えば、OVP15をすぐに動作させるべきと判定し、直流電圧VDの上昇が急峻となるように制御する。1回線のみの故障の場合は、例えば、OVP15をすぐには動作させるべきではないと判定し、直流電圧VDの上昇が抑制されて緩やかになるように制御する。
【0093】
制御装置2は、例えば系統故障の種類に応じて、チョッパ群14のうち動作させるチョッパの数を変えることによって、チョッパ群14に作用させる抵抗を変えるように構成されていてもよい。
【0094】
また、制御装置2は、例えば系統故障の種類に応じて、チョッパ群14(あるいはその中の一部)を動作させるタイミングを遅くする、あるいは、チョッパ群14(あるいはその中の一部)を動作させる信号をマスキングする時間を長くすることによって、チョッパ群14に作用させる抵抗を変えるように構成されていてもよい。
【0095】
第3の実施形態によれば、系統故障の発生時に、系統故障の種類に基づき、OVP15をすぐに動作させるべきか否かを適切に判定できるとともに、必要な場合には、OVP15の動作を早めてゼロミスの発生を回避することができる。
【0096】
[第4の実施形態]
次に、第4の実施形態について説明する。以下では、第1~第3の実施形態と重複する部分の説明を省略し、第1及び第2の実施形態と異なる部分を中心に説明する。
【0097】
前述した第1~第3の実施形態では、二次励磁変換器1に2レベル変換器を適用した場合の例を示したが、この第4の実施形態では、二次励磁変換器1に中性点クランプ形変換器、すなわちNPC(Neutral-Point-Clamped)変換器を適用した場合の例を示す。
【0098】
図10は、第4の実施形態に係る保護システムが適用される可変速揚水発電システムに備えられる二次励磁変換器の構成の一例を示す図である。この
図10においては、
図1と共通する要素には同一の符号を付している。
【0099】
図10に示される可変速揚水発電システムは、図示はしないが
図1で示したしたように電力系統に通じる送電線3と遮断器4を介して電気的に接続可能に構成され、また、主変圧器5、発電電動機(誘導機)6、水車7を備えている。この可変速揚水発電システムは、インバータ11、コンバータ12、2段のコンデンサ13、2段のチョッパ群14、図示しないOVP15、図示しない励磁用変圧器16などを含む二次励磁変換器1を備えている。インバータ11およびコンバータ12は、三相NPC変換器で構成される。また、この可変速揚水発電システムには、図示しない制御装置2が備えられる。
【0100】
NPC変換器の場合、直流回路はP側とN側の2つ(電圧VDPがかかる回路部分と、電圧VDNがかかる回路部分)に分かれ、それぞれにコンデンサ13、チョッパ群14が接続される。
【0101】
図10の例では、複数のチョッパグループ14A~14Nが並列に接続されている。各チョッパグループは、P側の1つのチョッパ14とN側の1つのチョッパ14とを含み、チョッパグループ単位で独立に動作することができる。図示しない制御装置2は、チョッパ群14をチョッパグループで個別に可変制御することができる。
【0102】
この第4の実施形態においては、制御装置2は、チョッパ群14の制御をチョッパ単位で行うのではなく、チョッパグループ単位で行う。そのほかの具体的な制御の手法については、第1~第3の実施形態で説明した内容と同様となる。
【0103】
また、
図10に示される二次励磁変換器1を複数用意し、これらを並列に接続した構成を採用してもよい。この場合、例えば、複数のインバータ11の三相交流側の回路が、
図1に示した発電電動機6の二次巻線に並列に接続され、複数のコンバータ12の三相交流側の回路が、
図1に示した励磁用変圧器16または発電電動機6の固定子巻線に並列に接続されるように構成されていてもよい。また、この場合、直流回路は、複数の二次励磁変換器に別々に配置されていてもよいし、一括で1つの直流回路のみが配置されていてもよい。
【0104】
第4の実施形態によれば、二次励磁変換器に2レベル変換器ではなくNPC変換器を適用した場合においても、第2~第4の実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0105】
以上詳述したように、各実施形態によれば、直流回路における直流電圧の上昇を必要に応じて変化させることができる。
【0106】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0107】
1…二次励磁変換器、2…制御装置、3…送電線、4…遮断器、5…主変圧器、6…発電電動機、7…水車、11…インバータ、12…コンバータ、13…コンデンサ、14…チョッパ、141…抵抗器、142…スイッチング素子、15…過電圧保護装置(OVP)、151…サイリスタ、16…励磁用変圧器、21…チョッパゲート信号発生部、22…運転状態判定部、23…遅延処理部、24…マスク処理部。