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特開2022-170875水中音場計測システム及び水中音場計測方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022170875
(43)【公開日】2022-11-11
(54)【発明の名称】水中音場計測システム及び水中音場計測方法
(51)【国際特許分類】
   G01H 3/00 20060101AFI20221104BHJP
【FI】
G01H3/00 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021077146
(22)【出願日】2021-04-30
(71)【出願人】
【識別番号】000006208
【氏名又は名称】三菱重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100112737
【弁理士】
【氏名又は名称】藤田 考晴
(74)【代理人】
【識別番号】100140914
【弁理士】
【氏名又は名称】三苫 貴織
(74)【代理人】
【識別番号】100136168
【弁理士】
【氏名又は名称】川上 美紀
(74)【代理人】
【識別番号】100172524
【弁理士】
【氏名又は名称】長田 大輔
(72)【発明者】
【氏名】大塚 雄樹
(72)【発明者】
【氏名】田崎 智
(72)【発明者】
【氏名】森本 紘之
(72)【発明者】
【氏名】石井 佑樹
【テーマコード(参考)】
2G064
【Fターム(参考)】
2G064AB18
2G064BA02
2G064BD02
2G064CC41
2G064DD02
(57)【要約】
【課題】水中音場の評価精度を向上することのできる水中音場計測システム及び水中音場計測方法を提供することを目的とする。
【解決手段】水中音場計測システム1は、例えば船舶を計測対象2として、海中の各所定位置に配置され、音圧計(ハイドロホン)を有する複数の水中航走体3と、各水中航走体3における計測結果に基づいて、船舶である計測対象2が海中に発生させる水中音場として、音圧コンタマップを生成する処理装置とを備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
計測対象に対して各所定位置に配置され、音圧計を有する複数の水中航走体と、
各前記水中航走体の計測結果に基づいて、前記計測対象が発生させる水中音場を推定する処理部と、
を備える水中音場計測システム。
【請求項2】
各前記水中航走体は、前記計測対象から所定距離離れた水平面上の各前記所定位置に配置されており、
前記処理部は、前記水平面上の音場状態を推定する請求項1に記載の水中音場計測システム。
【請求項3】
前記水中航走体は、格子状に配置されている請求項2に記載の水中音場計測システム。
【請求項4】
各前記水中航走体は、所定の信号に基づいて時刻同期する請求項1から3のいずれか1項に記載の水中音場計測システム。
【請求項5】
前記処理部は、前記計測対象に対して許容距離以内の位置にある前記水中航走体の計測結果に基づいて水中音場を推定し、
前記許容距離は、水中の背景雑音レベルに基づいて設定される請求項1から4のいずれか1項に記載の水中音場計測システム。
【請求項6】
前記許容距離は、水深に基づいて設定される請求項5に記載の水中音場計測システム。
【請求項7】
前記処理部は、前記所定位置と、対応する前記水中航走体の配置位置とが所定値以上離れている場合に、前記水中航走体の音圧計測位置を前記配置位置として、水中音場を推定する請求項1から6のいずれか1項に記載の水中音場計測システム。
【請求項8】
基準位置に対応する前記水中航走体の配置位置である基準配置位置と、対する前記水中航走体の配置位置とが所定値以上離れている場合に、前記水中航走体を前記基準配置位置へ移動させる調整部を備える請求項1から7のいずれか1項に記載の水中音場計測システム。
【請求項9】
前記処理部は、計測された音圧レベルから水中の背景雑音レベルを引いた値が3dBよりも大きい前記水中航走体の計測結果に基づいて水中音場を推定する請求項1から8のいずれか1項に記載の水中音場計測システム。
【請求項10】
計測対象に対する各所定位置のそれぞれに、音圧計を有する水中航走体を配置する工程と、
各前記水中航走体の計測結果に基づいて、前記計測対象が発生させる水中音場を推定する工程と、
を有する水中音場計測方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、水中音場計測システム及び水中音場計測方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
船舶等は、水中に音を発生させており、水中騒音となっている。水中騒音は、例えば、水中にハイドロホンを配置して計測が行われる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平10-81297号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
水中騒音の海洋生物への影響から、水中騒音規制導入の機運が国際的に高まっている。水中騒音を評価する上で、水中の音場状態(例えば音圧コンタ)が重要である。従来手法では音圧コンタを精度よく作成することが困難であった。
【0005】
例えば特許文献1では、海中のデータを取得するための水中航走体と、近くの洋上に配置された中継ブイが開示されているものの、単独の水中航走体による観測では音場を評価することは困難である。
【0006】
本開示は、このような事情に鑑みてなされたものであって、水中音場の評価精度を向上することのできる水中音場計測システム及び水中音場計測方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の第1態様は、計測対象に対して各所定位置に配置され、音圧計を有する複数の水中航走体と、各前記水中航走体の計測結果に基づいて、前記計測対象が発生させる水中音場を推定する処理部と、を備える水中音場計測システムである。
【0008】
本開示の第2態様は、計測対象に対する各所定位置のそれぞれに、音圧計を有する水中航走体を配置する工程と、各前記水中航走体の計測結果に基づいて、前記計測対象が発生させる水中音場を推定する工程と、を有する水中音場計測方法である。
【発明の効果】
【0009】
本開示によれば、水中音場の評価精度を向上することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本開示の一実施形態に係る水中音場計測システムの概略構成を示す図である。
図2】本開示の一実施形態に係る処理装置のハードウェア構成の一例を示した図である。
図3】本開示の一実施形態に係る音圧コンタマップの一例を示す図である。
図4】本開示の一実施形態に係る音圧コンタマップの一例を示す図である。
図5】本開示の一実施形態に係る音圧コンタマップ生成処理の手順の一例を示すフローチャートである。
図6】本開示の一実施形態に係る水中音場計測システムの構成例を示す図である。
図7】本開示の一実施形態に係る水中音場計測システムの構成例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に、本開示に係る水中音場計測システム及び水中音場計測方法の一実施形態について、図面を参照して説明する。
【0012】
図1は、本開示の一実施形態に係る水中音場計測システム1の概略構成を示す図である。本実施形態では、洋上の船舶を計測対象2とする。なお、計測対象2としては、船舶に限定されない。そして、図1に示すように、複数の水中航走体3が、海中に配置されている。水中航走体3は、例えばUUV(Unmanned Underwater Vehicle:無人水中航走体)である。なお、水中航走体3であればUUVに限定されない。図1では、水中航走体3を12機設ける構成を示しているが、複数の水中航走体3が設けられれば図1に限定されない。
【0013】
水中航走体3は、音圧計を有している。具体的には、音圧計は、水中で音圧を計測可能なハイドロホンである。ハイドロホンは、搭載された水中航走体3の周囲の音圧を計測する。すなわち、ハイドロホンは、計測対象2が水中に発生させる音場において、水中航走体3の位置における音圧を計測する。
【0014】
水中航走体3は、計測対象2に対して各所定位置に配置される。すなわち、水中航走体3は、海中における所定位置に配置される。所定位置については、海中に対して予め設定されている。本実施形態では、所定位置は、図1に示すように、計測対象2(すなわち海面)から所定距離離れた水平面上に設定される。水平面とは、重力方向と直交する面(海面と平行な面)である。例えば、水平面は、海面から海底方向へ100m離れた位置に設定される。
【0015】
所定位置は、水平面上において複数設定される。具体的には、所定位置は水平面上において格子状に配置される。このため、図1に示すように、水中航走体3は、格子状に配置される。これによって、所定位置における音圧計測が可能となる。これにより、後述するように、水平面上における音場状態を評価することができる。格子の間隔(すなわち所定位置の間隔)については、計測対象2の大きさや推定する音場の分解能により設定される。なお、水中航走体3の配置については、水平面に限定されるものではない。個々の配置についても、格子状に限定されない。
【0016】
水中航走体3の具体的構成例としては、例えば、計測システムと、位置計測部と、慣性航法装置と、音響通信装置とを備えている。計測システムは、音圧を計測するシステムであり、前述の音圧計をセンサとして含む。また、計測システムは、アンプやデータ記録部を備えることとしてもよい。
【0017】
位置計測部は、GPSである。すなわち、位置計測部では、地球上の現在の位置を測定することができる。慣性航法装置は、例えば、加速度計で加速度を検出して、加速度を積分することで速度を求め、また、速度を積分することで距離を求める。また、ジャイロで方向を検知する。そして、移動距離と方向とに基づいて、起点からの移動距離を算出する。すなわち、水中航走体3は、洋上にいる場合に位置計測部により自分の位置を計測し、海中へ潜る際に位置計測部で計測した現在位置を起点とする。そして、海中では、該起点から水中航法によって海中での自分の位置を把握する。これによって、各水中航走体3は、対応するそれぞれの所定位置へ移動する。
【0018】
音響通信装置は、音響通信により、他の装置と通信可能とされている。例えば、各水中航走体3は、設定された親機と通信可能とされている。音響通信距離に制限がある場合には、中継器を用いて通信中継することとしてもよい。音響通信機能を用いて、時刻同期することとしてもよい。この場合には、例えば親機から各水中航走体3へ所定の信号(タイムスタンプ)を送信し、時刻同期を行う。時刻同期ができれば、音響通信機能を用いた方法に限定されない。
【0019】
次に処理装置(処理部)5について説明をする。
【0020】
図2は、本実施形態に係る処理装置5のハードウェア構成の一例を示した図である。
図2に示すように、処理装置5は、コンピュータシステム(計算機システム)であり、例えば、CPU11と、CPU11が実行するプログラム等を記憶するためのROM(Read Only Memory)12と、各プログラム実行時のワーク領域として機能するRAM(Random Access Memory)13と、大容量記憶装置としてのハードディスクドライブ(HDD)14と、ネットワーク等に接続するための通信部15とを備えている。なお、大容量記憶装置としては、ソリッドステートドライブ(SSD)を用いることとしてもよい。これら各部は、バス18を介して接続されている。
【0021】
また、処理装置5は、キーボードやマウス等からなる入力部や、データを表示する液晶表示装置等からなる表示部などを備えていてもよい。
【0022】
なお、CPU11が実行するプログラム等を記憶するための記憶媒体は、ROM12に限られない。例えば、磁気ディスク、光磁気ディスク、半導体メモリ等の他の補助記憶装置であってもよい。
【0023】
後述の各種機能を実現するための一連の処理の過程は、プログラムの形式でハードディスクドライブ14等に記録されており、このプログラムをCPU11がRAM13等に読み出して、情報の加工・演算処理を実行することにより、後述の各種機能が実現される。なお、プログラムは、ROM12やその他の記憶媒体に予めインストールしておく形態や、コンピュータ読み取り可能な記憶媒体に記憶された状態で提供される形態、有線又は無線による通信手段を介して配信される形態等が適用されてもよい。コンピュータ読み取り可能な記憶媒体とは、磁気ディスク、光磁気ディスク、CD-ROM、DVD-ROM、半導体メモリ等である。
【0024】
処理装置(処理部)5は、各水中航走体3の計測結果に基づいて、計測対象2が発生させる水中音場を推定する。すなわち、処理装置5は、水平面上の音場状態を推定する。音場状態は、例えば、音圧コンタによって表される。このため、処理装置5は、音圧コンタマップを演算する。
【0025】
具体的には、処理装置5は、各水中航走体3で計測したデータを取得する。データとは、音圧の時系列波形データである。取得は、自動取得としてもよいし、手動で入力されることとしてもよい。そして、取得したデータに対して、狭帯域分析や1/nオクターブバンド分析等の処理を行う。各データに対して分析すると、水平面上の所定位置(水中航走体3の配置位置)の座標と音圧データとを対応付けて、該水平面上の音圧コンタマップとして音場状態を処理する。図3は、音圧コンタマップの一例を示している。図3では、矢印Pの方向ほど音圧が高い状態を示している。
【0026】
音圧コンタマップについては、時間毎または周波数毎に表示可能としてもよい。さらに、時間もしくは周波数毎に連続的に描画することで水平面の音圧コンタマップの動画が作成可能となる。
【0027】
処理装置5については、例えば計測対象2の船舶や、計測対象2とは異なる船舶(例えば無人航走体)に設けられ、オンラインで各水中航走体3からデータを収集して音場推定を行うこととしてもよい。また、処理装置5は、各水中航走体3による計測が終了した後に、作業員等によってデータが処理装置5へ入力されることとしてもよい。また、処理装置5は、各水中航走体から位置情報についても取得する。
【0028】
次に、計測データの選別について説明する。
海中では、背景雑音が存在する。このため、計測対象2が発生する音圧が背景雑音に埋もれてしまう場合には、計測対象2が発生する音圧が計測できたことにはならない。このため、音場評価に用いる計測データは、選別することが適切である。
【0029】
具体的には、処理装置5は、計測対象2に対して許容距離以内の位置にある水中航走体3の計測結果に基づいて水中音場を推定する。すなわち、音圧コンタマップは、計測対象2に対して許容距離以内にある水中航走体3の計測結果を用いて生成される。
【0030】
許容距離は、海域の背景雑音レベルに基づいて設定される。具体的には、許容距離は、式(1)のように球面拡散音場における距離減衰式にて求められる距離Rである。なお、式(1)は、海域の深水(海面から海底までの距離)が深い場合であり、具体的には、計測対象2から水中航走体3までの距離が海域の深水以下の場合である。例えば、計測対象2から、最も離れていると想定される水中航走体3までの距離が、距離が海域の深水以下である場合(すなわち海底が深い)には、式(1)が適用される。
【0031】
【数1】
【0032】
式(1)において、Rは許容距離[m]であり、Lnは背景雑音レベル[dB]であり、Lsは計測対象2から1m離れた位置における音圧レベル[dB]である。
【0033】
一方で、海底が浅い場合、具体的には、計測対象2から水中航走体3までの距離が海域の水深より大きい場合には、式(2)が適用可能である。例えば、計測対象2と、最も離れていると想定される水中航走体3までの距離が、距離が海域の深水より大きい場合(すなわち海底が浅い)には、式(2)が適用される。
【0034】
【数2】
【0035】
式(2)において、hは海域の深水[m]である。
【0036】
計測対象2に対して、水中の背景雑音レベルに基づいて設定される許容距離以内の位置にある水中航走体3の計測結果を用いることで、背景雑音の影響を抑制することができる。さらに、許容距離は、水深に基づいて設定されることで、より正確に音場評価ができる。
【0037】
なお、計測データの選別については、上記に限定せず適用することが可能である。例えば、各音圧計測結果毎に選別の判定をしてもよい、具体的には、処理装置5は、計測された音圧レベルから水中の背景雑音レベルを引いた値が3dBよりも大きい水中航走体3の計測結果に基づいて水中音場を推定する。すなわち、音圧レベルLp-背景雑音レベルLn>3dBの条件を満たす音圧の計測結果(音圧レベルLp)を用いて、音圧コンタマップが作成される。この条件を満たさない計測点については、対応するマップ上の位置を点線等で示し、条件を満たす計測点と区別することとしてもよい。図4の左側は、条件適用前の音圧コンタマップを示しており、図4の右側は、条件適用後の音圧コンタマップ(点線L含む)を示している。このように、音圧の計測結果が背景雑音に埋もれてしまっている可能性がある場合には、マップ上に区別して表示することができる。
【0038】
次に、上述の音圧コンタマップ生成処理の一例について図5を参照して説明する。図5は、本実施形態に係る音圧コンタマップ生成処理の手順の一例を示すフローチャートである。図5に示すフローは、例えば、作成指示があった場合に実行される。
【0039】
まず、各水中航走体3から、計測データを取得する(S101)。
【0040】
次に、データ分析を行う(S102)。データ分析は、例えば、狭帯域分析や1/nオクターブバンド分析である。
【0041】
水平面上の所定位置(水中航走体3の配置位置)の座標と音圧データとを対応付けて、音圧コンタマップを生成する(S103)。
【0042】
なお、水中航走体3によって計測したデータを用いて水中音場の推定が可能であれば、上記処理に限定されない。
【0043】
次に、水中航走体3の配置ずれに対する調整について説明する。
【0044】
前述のように、水中航走体3は、所定位置に対して配置される。そして、所定位置は、コンタマップを作成したい領域に対応して設定されている。しかしながら、設定された所定位置と、実際に配置された水中航走体3の配置位置とのずれが生じていると、所定位置とはずれた位置での音圧計測となる可能性がある。このような場合には、ずれ補正を行うこととしてもよい。
【0045】
具体的には、処理装置5は、所定位置と、対応する水中航走体3の配置位置とが所定値以上離れている場合に、水中航走体3の音圧計測位置を配置位置として、水中音場を推定する。ずれ量の判断基準である所定値は、例えば、所定位置と対応する水中航走体3の配置位置との直線距離である。この所定値は、例えば、許容値以上音圧が変化すると想定される距離に基づいて設定される。そして、所定値以上のずれが生じている場合には、計測された音圧を、所定位置での計測結果としてでなく、実際の配置位置での計測結果として、音圧コンタマップを作成する。これにより、音圧の計測結果と実際の計測地点とを対応付けて音圧コンタマップを生成することができる。
【0046】
ずれに対する調整は、上記に限定されない。例えば、水中航走体3を移動させることとしてもよい。例えば図6のように、洋上に親機4を設け、親機4の位置を基準位置とする。親機4は洋上に設けられることで、GPSで現在位置を把握できる。また、親機4は水中通信機能を有しており水中の各水中航走体3と通信可能とされる。そして、基準位置(親機位置)と、各所定位置とを対応づける。具体的には、基準位置が予め設定した位置にある場合(理想状態)に、基準位置に対する各所定位置を基準配置位置とする。すなわち、基準位置が予め設定した位置にある場合(理想状態)には、各所定位置と、各基準位置とは一致する。しかしながら、洋上の親機4が波に流されると、洋上の親機4の位置が元の理想の位置からずれる。すると、移動後の親機4の位置を基準位置とするため、相対的に各基準配置位置も各所定位置からずれる。各水中航走体3は、所定位置に配置されるように制御されるため、基準配置位置と、対する水中航走体3の配置位置とにずれが生じる。このため、基準配置位置と水中航走体3の配置位置(すなわち所定位置)とが所定値以上離れた場合には、水中航走体3を基準配置位置へ移動させる。これによって、基準位置と各水中航走体3の配置位置との位置関係を維持することができる。ずれが生じたか否かは、親機の位置である基準位置が、理想位置から所定値以上ずれたか否かで判定することが可能である。移動調整機能は、調整部(調整装置)として水中音場計測システム1が備えることとしてもよい。親機4の機能は、図6のように計測対象2と異なる船舶(例えば無人航走体)が備えることとしてもよいし、図7のように計測対象2の船舶が備えることとしてもよい。
【0047】
なお、ずれ調整については、各水中航走体3の現在地情報が取得可能な場合には、該現在地情報に基づいてずれ調整することとしてもよい。
【0048】
以上説明したように、本実施形態に係る水中音場計測システム及び水中音場計測方法によれば、水中航走体3を用いて複数の所定位置における音圧計測をして、計測対象2が発生させる水中音場を推定するため、水中音場の評価精度を向上させることができる。水中航走体3を用いて複数の所定位置における音圧計測をして、計測対象2が発生させる水中音場を推定するため、水中音場の評価精度を向上させることができる。
【0049】
例えば、ブイからハイドロホンを吊り下げて音圧計測を行う場合では、ハイドロホンの頭上にはブイがあるため、観測対象の真下での音圧計測が難しい。また、アンカー等を用いて海底からハイドロホンを立ち上げる場合では、海底のケーブル敷設など設備の新設及び維持にコストがかかる。これらの方法と比較して、本実施形態による方法では、計測対象2の真下の音圧も計測することができるため、音場評価精度を向上させることができる。また、SN比のよいデータを取得することができる。ケーブルを用いるとノイズが発生することがあるが、このノイズも抑制することができる。海底のケーブル敷設が不要となり、大規模な工事が抑制される。
【0050】
水中航走体3を用いて複数の所定位置における音圧計測をして、計測対象2が発生させる水中音場を推定するため、水中音場の評価精度を向上させることができる。水中航走体3を用いて複数の所定位置における音圧計測をして、計測対象2が発生させる水中音場を推定するため、水中音場の評価精度を向上させることができる。
【0051】
本開示は、上述の実施形態のみに限定されるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲において、種々変形実施が可能である。なお、各実施形態を組み合わせることも可能である。
【0052】
以上説明した各実施形態に記載の水中音場計測システム及び水中音場計測方法は例えば以下のように把握される。
本開示に係る水中音場計測システム(1)は、計測対象(2)に対して各所定位置に配置され、音圧計を有する複数の水中航走体(3)と、各前記水中航走体の計測結果に基づいて、前記計測対象が発生させる水中音場を推定する処理部(5)と、を備える。
【0053】
本開示に係る水中音場計測システムによれば、水中航走体を用いて複数の所定位置における音圧計測をして、計測対象が発生させる水中音場を推定するため、水中音場の評価精度を向上させることができる。また、計測対象の真下での音圧計測が可能となる。例えば、ブイからハイドロホンを吊るして計測を行う場合と比較して、SN比のよいデータ取得が可能となる。
【0054】
本開示に係る水中音場計測システムは、各前記水中航走体は、前記計測対象から所定距離離れた水平面上の各前記所定位置に配置されており、前記処理部は、前記水平面上の音場状態を推定することとしてもよい。
【0055】
本開示に係る水中音場計測システムによれば、計測対象から所定距離離れた水平面上の各所定位置に水中航走体が配置されることで、該水平面における音場を評価することができる。
【0056】
本開示に係る水中音場計測システムは、前記水中航走体は、格子状に配置されていることとしてもよい。
【0057】
本開示に係る水中音場計測システムによれば、水中航走体が格子状に配置されることで、水中音場を効果的に評価することができる。
【0058】
本開示に係る水中音場計測システムは、各前記水中航走体は、所定の信号に基づいて時刻同期することとしてもよい。
【0059】
本開示に係る水中音場計測システムによれば、各水中航走体が時刻同期されることで、各計測結果を用いてより正確に水中音場を評価できる。
【0060】
本開示に係る水中音場計測システムは、前記処理部は、前記計測対象に対して許容距離以内の位置にある前記水中航走体の計測結果に基づいて水中音場を推定し、前記許容距離は、水中の背景雑音レベルに基づいて設定されることとしてもよい。
【0061】
本開示に係る水中音場計測システムによれば、計測対象に対して、水中の背景雑音レベルに基づいて設定される許容距離以内の位置にある水中航走体の計測結果を用いることで、背景雑音の影響を抑制することができる。
【0062】
本開示に係る水中音場計測システムは、前記許容距離は、水深に基づいて設定されることとしてもよい。
【0063】
本開示に係る水中音場計測システムによれば、水深によって音場の減衰が変化するため、水深により用いる計測結果を選ぶことで、より正確に音場評価ができる。
【0064】
本開示に係る水中音場計測システムは、前記処理部は、前記所定位置と、対応する前記水中航走体の配置位置とが所定値以上離れている場合に、前記水中航走体の音圧計測位置を前記配置位置として、水中音場を推定することとしてもよい。
【0065】
本開示に係る水中音場計測システムによれば、設定した所定位置と、実際の水中航走体の配置位置にずれが生じている場合には、水中航走体の音圧計測位置を所定位置とするのではなく、水中航走体の音圧計測位置を実際の配置位置とすることで、音場をより正確に評価することができる。
【0066】
本開示に係る水中音場計測システムは、基準位置に対応する前記水中航走体の配置位置である基準配置位置と、対する前記水中航走体の配置位置とが所定値以上離れている場合に、前記水中航走体を前記基準配置位置へ移動させる調整部を備えることとしてもよい。
【0067】
本開示に係る水中音場計測システムによれば、基準位置(例えば親機(4))に対して水中航走体の配置位置がずれている場合には、水中航走体を基準配置位置へ移動させることで、音場をより正確に評価することができる。
【0068】
本開示に係る水中音場計測システムは、前記処理部は、計測された音圧レベルから水中の背景雑音レベルを引いた値が3dBよりも大きい前記水中航走体の計測結果に基づいて水中音場を推定することとしてもよい。
【0069】
本開示に係る水中音場計測システムによれば、音圧の計測結果において、計測の対象ではない背景雑音レベルの影響が大きいものは音場推定から除外されるため、音場をより正確に評価することができる。
【0070】
本開示に係る水中音場計測方法は、計測対象に対する各所定位置のそれぞれに、音圧計を有する水中航走体を配置する工程と、各前記水中航走体の計測結果に基づいて、前記計測対象が発生させる水中音場を推定する工程と、を有する。
【符号の説明】
【0071】
1 :水中音場計測システム
2 :計測対象
3 :水中航走体
4 :親機
11 :CPU
12 :ROM
13 :RAM
14 :ハードディスクドライブ
15 :通信部
18 :バス
L :点線
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7