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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022170892
(43)【公開日】2022-11-11
(54)【発明の名称】ガス検知装置及びガス検知方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 1/02 20060101AFI20221104BHJP
   G01N 33/497 20060101ALI20221104BHJP
【FI】
G01N1/02 W
G01N33/497 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021077172
(22)【出願日】2021-04-30
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り (1)令和2年11月30日に http://www.siej.org/2020_taikai/proceeding2020.pdfにて発表。 (2)令和2年12月4日に2020年室内環境学会学術大会にて発表。 (3)令和3年3月9日に第68回化学センサ研究発表会の学会予稿集,Chemical Sensors,Vol.37,Supplement A (2021),第52頁~54頁にて発表。 (4)令和3年3月22日に第68回化学センサ研究発表会にて発表。 (5)令和3年3月9日に第68回化学センサ研究発表会の学会予稿集,Chemical Sensors,Vol.37,Supplement A (2021),第55頁~57頁にて発表。 (6)令和3年3月22日に第68回化学センサ研究発表会にて発表。
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)令和元年度、国立研究開発法人科学技術振興機構、研究成果展開事業「ナノ多孔体を用いた呼気アセトン分析チップの研究開発」委託研究、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
(71)【出願人】
【識別番号】597124316
【氏名又は名称】学校法人東北工業大学
(74)【代理人】
【識別番号】100094525
【弁理士】
【氏名又は名称】土井 健二
(74)【代理人】
【識別番号】100094514
【弁理士】
【氏名又は名称】林 恒徳
(74)【代理人】
【識別番号】100106356
【弁理士】
【氏名又は名称】松枝 浩一郎
(72)【発明者】
【氏名】丸尾 容子
(72)【発明者】
【氏名】浅沼 光吾
【テーマコード(参考)】
2G045
2G052
【Fターム(参考)】
2G045AA25
2G045CB22
2G045DA28
2G045FA13
2G052AA34
2G052AD02
2G052AD22
2G052AD42
2G052GA11
2G052HC08
2G052HC29
2G052JA09
(57)【要約】      (修正有)
【課題】気体中の特定ガス成分をガス検知素子を用いて簡便な方法で感度良く測定できるガス検知装置を提供する。
【解決手段】ガス検知装置1は、捕集した気体を収容する容器2と、一端が容器と連通する管3と、管の他端と接続しその容器内の気体を管を通じて吸引するポンプ4と、気体が流れる管内の流路に配置されて気体中に含まれる特定ガスを検知するガス検知素子5とを備えることを特徴とする。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
捕集した気体を収容する容器と、
一端が前記容器と連通する管と、
前記管の他端と接続し、前記容器内の気体を前記管を通じて吸引するポンプと、
気体が流れる前記管内の流路に配置され、気体中に含まれる特定ガスを検知するガス検知素子とを備えることを特徴とするガス検知装置。
【請求項2】
前記ガス検知素子の吸光度を測定するために、前記ガス検知素子に光を照射する光源と、前記ガス検知素子からの透過光を検出する光検出器とをさらに備えることを特徴とする請求項1に記載のガス検知装置。
【請求項3】
前記ガス検知素子の色情報を取得するために、前記ガス検知素子を撮像する撮像装置をさらに備えることを特徴とする請求項1に記載のガス検知装置。
【請求項4】
前記ポンプは、気体の流速が拡散律速となるように気体を吸引することを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載のガス検知装置。
【請求項5】
前記ガス検知素子は、前記特定ガスと反応するガス検知剤が担持された多孔質構造よりなることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載のガス検知装置。
【請求項6】
捕集した気体を容器に収容する収容工程と、
前記容器を管の一端に連通させ、前記管の他端に接続されたポンプにより前記容器内の気体が前記管を流れるように気体を吸引する吸引工程と、
前記吸引工程により気体が流れる前記管内の流路に配置されたガス検知素子に気体を曝露させ、前記ガス検知素子の特性変化に基づいて、気体中に含まれる特定ガスを検知する検知工程とを備えることを特徴とするガス検知方法。
【請求項7】
前記ポンプは、気体の流速が拡散律速となるように気体を吸引することを特徴とする請求項6に記載のガス検知方法。
【請求項8】
気体に曝露する前にあらかじめ測定された前記ガス検知素子の特性値と、気体に曝露された状態で測定された前記ガス検知素子の特性値との比較に基づいて、気体中に含まれる特定ガスを検知することを特徴とする請求項6または7に記載のガス検知方法。
【請求項9】
前記ガス検知素子の特性値は前記ガス検知素子の吸光度であり、光源から前記ガス検知素子に光を照射し、前記ガス検知素子からの透過光を光検出器により検出することにより前記ガス検知素子の吸光度を測定することを特徴とする請求項8に記載のガス検知方法。
【請求項10】
前記ガス検知素子の特性値は前記ガス検知素子の色情報であり、前記ガス検知素子を撮像装置で撮像し、当該撮像された画像データのRGB値を測定することを特徴とする請求項8に記載のガス検知方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば呼気などの生体ガスである気体中に含まれる特定ガスを検知するためのガス検知装置及びガス検知方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、生体ガス分析特に呼気分析が非侵襲の分析方法のため健康管理方法として注目を集め呼気分析装置が開発されている。例えば特許文献1では呼気分析装置が報告されているが検知のための半導体センサは気体の流路とは別のキャビティを設け流速を細かく制御している。また、特許文献2では気体の捕集のためのパッシブサンプラーが報告されているがそこでは風速の影響をなくすために多孔体の拡散板やフィルタを設けて気体への曝露を行っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2020-204533号公報
【特許文献2】特開2020-139740号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
生体ガスとして放出されたヒトの呼気などの気体を捕集してその気体中の検知対象となる特定ガス成分を精密に分析しようとする際、ガスの検知素子として半導体センサなどを用いた場合、ガス検知を精度よく行うためセンサに接する気体量を正確に把握するため流速を正確に制御する必要があり、そのためには精密な捕集装置の設計や流路以外に特別な構造を必要とした。またパッシブサンプラー場合精密な加工を必要とする拡散板、それに加え複数の拡散制御方法の設置が必要であった。
【0005】
本発明は上記のような課題を解決するためになされたものであり、気体中の検知対象となる特定ガスを簡便な方法で感度良く検知するガス検知装置及びガス検知方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するための本発明のガス検知装置は、捕集した気体を収容する容器と、一端が前記容器と連通する管と、前記管の他端と接続し前記容器内の気体を前記管を通じて吸引するポンプと、気体が流れる前記管内の流路に配置されて気体中に含まれる特定ガスを検知するガス検知素子とを備えることを特徴とする。
【0007】
また、本発明のガス検知方法は、捕集した気体を容器に収容する収容工程と、前記容器を管の一端に連通させ、前記管の他端に接続されたポンプにより前記容器内の気体が前記管を流れるように気体を吸引する吸引工程と、前記吸引工程により気体が流れる前記管内の流路に配置されたガス検知素子に気体を曝露させ、前記ガス検知素子の特性変化に基づいて、気体中に含まれる特定ガスを検知する検知工程とを備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明のガス検知装置及びガス検知方法によれば、一端を気体を収容する容器に接続し、他端をポンプに接続し気体が通過する管の内部にガス検知素子を配置し、ポンプ等で気体を吸引する構成にしたことで、検知対象の気体の拡散律速により検知を行うことができるため精密に気体の流速を制御する必要がなく簡便に精度をあげることができるという優れた効果がある。また、管を透明にすることで気体の流通と同時にガス検知素子を管から取り出すことなく測定を行うことができ、精度よく測定ができるという優れた効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の実施の形態におけるガス検知装置の第1の構成例を示す図である。
図2】本発明の実施の形態におけるガス検知装置の第2の構成例を示す図である。
図3】本発明の実施の形態におけるガス検知装置の第3の構成例を示す図である。
図4】本発明の実施の形態におけるガス検知方法を示すフローチャートである。
図5】ポンプの吸引速度に対応するガス検知素子の吸光度の変化量の測定結果を示す図である。
図6】ポンプの吸引速度に対応するとガス検知素子のRGB値の変化量の測定結果を示す図である。
図7】ポンプの吸引速度に対応する複数のガス検知素子の吸光度の変化量の測定結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照して本発明の最良の形態について説明する。しかしながら、かかる実施例が本発明の技術的範囲を限定するものではない。
【0011】
図1は、本発明の実施の形態におけるガス検知装置の第1の構成例を示す図である。ガス検知装置1は、サンプリングした気体を収容する容器2と、一端(気体入口側)が容器2と連通する管3と、当該管3の他端(気体出口側)と接続し且つ容器2内の気体を管3を通じて吸引するポンプ4と、容器2内の気体が流れる管3内の流路に配置されるガス検知素子5とを有して構成される。なお、図1(a)は、管3内に一つのガス検知素子5が配置される構成を示し、図1(b)は、管3内に2つ(複数)のガス検知素子5が配置される構成を示す。
【0012】
容器2は、好ましくは、気体、特に呼気などの生体ガスを捕集して収容する気体捕集バッグ(サンプリングバッグ)である。気体捕集バッグ2の材質としては、気体に含まれる検知対象となる特定ガスを吸着しない材質のものであればよく、例えばテフロン(登録商標)コーティングのバッグが用いられる。
【0013】
気体が通過する管3は、例えば円筒形または角筒形であり、円筒形の場合、その断面形状は円形または楕円形であり、角筒形の場合、その断面形は正方形、長方形を含む多角形など各種形状の管を採用することができる。管3の一端には、捕集された気体を含んだ気体捕集バッグ2が管3内に気体流入可能に連通して取り付けられる。容器2に対して管3の流路を開閉するバルブ9が設けられてもよい。
【0014】
管3は、例えば透明なガラス管を用いることができる。透明ガラス管の場合、後述するように、管3内に設置したガス検知素子5の光の吸収量や反射量の変化を、管外に光源、例えばLED光源と光検出器、例えばフォトダイオードを設置することで、ガス検知素子5の状態をリアルタイムに、また曝露後に外気にさらすことなく測定することができ、迅速に結果を得ることができるとともに外気による汚染を避けることで高精度に測定することができる。また、透明ガラス管を通してガス検知素子5の画像を取得することにより、画像処理によりガス検知素子5の色情報を特定ガスのガス濃度に変換することができ、より簡便に測定が可能になる。
【0015】
管3の材質としては、特定ガスを吸着しない材質のものであればよく、例えばガラス管、石英管、テフロン管などを用いることができる。
【0016】
また、気体が通過する管3の直径は、ガス検知素子5が挿入できるサイズであればよく、例えば10mm~20mmとすることができる。
【0017】
ポンプ4は、管3の他端側に取り付けられ、一端側に取り付けられた容器2内の気体を管3内を吸引し、ポンプ4の吸引により、容器2内の気体は、管3の一端側から他端側に流通する。
【0018】
ポンプ4は、例えば気体を0.05L/min~2.0L/minの流量(吸引量)で吸引できるものであればよい。管の断面積を定数として流量は流速に比例する。流量が少なすぎると気体の検知が拡散律速にならず供給律速になるためガス検知素子5の出力が流速に依存するものになる。なお、流速が大きすぎると多くの気体を捕集する必要があり、誤差が大きくなる、さらに捕集が困難になるおそれがある。このため、本発明のポンプ4は、管3を流れる気体の流速が拡散律速となるように気体を吸引する。
【0019】
ポンプ4としては例えば検知管を用いて環境測定に用いられる小型ポンプなど流速を制御できるものであればよく、また手動のポンプであってもよい。
【0020】
ガス検知素子5は、検知対象となる特定ガス成分と反応するガス検知剤が担持された多孔質構造よりなるガス検知素子である。特定ガスは、例えばアセトン等のケトン類やホルムアルデヒド等のアルデヒド類や窒素酸化物等である。多孔質構造を有するガス検知素子5において、その多孔体の孔径は例えば4nmであり、また4nm~100nmの範囲内であればよく、多孔体の孔径は気体の検知において気体の拡散律速において検知できるような小さな孔径であればよい。
【0021】
ガス検知素子5は、その検知面が管3の長手方向に例えば平行になるように、管3内の流路に配置される。すなわち、管3内の気体はガス検知素子5の検知面上を一端側から他端側に横切るように流れる。平行に配置すれば検知面が上下面である場合、上面及び下面で気体の拡散が起こる。また例えば長手方向に例えば垂直になるように、管3内の流路に配置される。この場合、検知素子のコンダクタンスは非常に小さいため、管3内の気体はガス検知素子5の検知面上に衝突し、その後上下左右に検知素子の表面を横切るように流れる。ここで検知素子と気体の接触面から検知素子内に気体の拡散が起こる。
【0022】
また、図1(b)に示されるように、それぞれ異なる特定ガス成分に反応する複数のガス検知素子5が、管3内に並列に配置されてもよい。同時に複数種類の特定ガスを検知することができる。
【0023】
図2は、本発明の実施の形態におけるガス検知装置の第2の構成例を示す図である。第2の構成例は、第1の構成例と比較して、光源6及び光検出器7をさらに備える。また、管3は透明管もしくは検出する光をある程度透過可能な管である。光源6及び光検出器7は、管3内に配置されたガス検知素子5を挟んで配置され、光源(例えば紫外光発光ダイオード)6による発光される光は、管3内に配置されたガス検知素子5に光を照射する。光検出器7は、例えばフォトダイオードや分光光度計の検出部であり、ガス検知素子5を透過した光を検出する。これにより、ガス検知素子5を管3内に配置した状態でガス検知素子5の吸光度を測定することができる。
【0024】
なお、管3内に気体を流して、管3内に配置されたガス検知素子5に気体を曝露させた後に、ガス検知素子5を管3から取り出して、取り出したガス検知素子5を所定の位置に配置して、光源6及び光検出器7により、ガス検知素子5の吸光度を測定してもよい。
【0025】
図3は、本発明の実施の形態におけるガス検知装置の第3の構成例を示す図である。第3の構成例は、第1の構成例と比較して、撮像装置(カメラまたはスキャナ)8をさらに備える。また、管3は透明管もしくは検出画像をある程度取得可能な管である。撮像装置8は、透明な管3を介してガス検知素子5の検知面を撮像可能に配置され、撮像装置8によりガス検知素子5の検知面を撮像することで、その画像データからガス検知素子5の色情報(例えばRGB値)を測定することができる。
【0026】
なお、管3内に気体を流して、管3内に配置されたガス検知素子5に気体を曝露させた後に、ガス検知素子5を管3から取り出して、取り出したガス検知素子5を所定の位置に配置して、撮像装置8により、ガス検知素子5を撮像し、その画像データから色情報を取得してもよい。
【0027】
図4は、本発明のガス検知装置によるガス検知方法のフローチャートである。ガス検知方法では、まず、呼気などの生体ガスである気体を捕集して容器2に収容する(S100)。そして、容器2を管3の一端に連通可能に取り付けて、管3の他端に接続されたポンプ4により容器2内の気体が管を流れるように気体を吸引する(S102)、すなわち、ポンプ4による吸引により気体を強制的に管3に流す。吸引動作により所定の流速で気体が流れる管3内に配置されたガス検知素子5に気体を曝露させ(S104)、その気体に曝露させたガス検知素子5の特性変化に基づいて、気体中に含まれる特定ガスを検知する(S106)。
【0028】
吸引工程(S102)では、気体の流速が拡散律速となるよう気体が一定以上の流速で管3内を流れるようにポンプ4の吸引動作が制御される。
【0029】
また気体が呼気ガスの場合、気体を捕集することなくヒトが直接呼気を吐き出すことでポンプは必要なく、ヒトが呼気を吐き出す量を調節することで上記工程を行う場合もある。
【0030】
ガス検知素子5の特性変化は、例えばガス検知素子5の光の吸収度合い(吸光度)の変化であって、図2の第2の構成例に基づいて、ガス検知素子5の吸光度は、管3に透明管を用いて、管3に光源6と光検出器7を付属させてその場で測定する方法を用いてもよく、また、上記第1の構成例により、ガス検知素子5を管3内で気体に曝露させた後、ガス検知素子5を管3から取り出して光源6及び光検出器7を用いて吸光度を測定してもよい。ガス検知素子5の吸光度に対応して特定ガスの濃度を求めることができる。
【0031】
例えば、ガス検知素子5としてアセトンを検知するアセトン検知素子を用いたガス検知装置としては、図2で示すように、光源6としての例えば発光光の中心波長が385nmの紫外光発光ダイオードと、光検出器7としてのフォトディテクタとの間にガス検知素子5を配置し、ガス検知素子5を透過した光をフォトディテクタで検出可能とし、フォトディテクタからの出力信号を処理してガス検知素子の吸光度の変化を出力する構成とすればよい。このような簡便な装置構成で、上述した極微量なアセトンの測定が容易に行える。
【0032】
また、ガス検知素子5の特性変化は、例えば、ガス検知素子5の色変化であって、図3の第3の構成例に基づいて、ガス検知素子5の色情報は、撮像装置8によりガス検知素子5を撮像し、その画像データのRGB値を測定することで取得される。ガス検知素子5の画像は透明な管3を用いて管3を通してその場で取得する方法を用いてもよい。また、上記第1の構成例により、ガス検知素子5を管3内で気体に曝露させた後、ガス検知素子5を管3から取り出して撮像装置8を用いてガス検知素子5を撮像し、その画像データから色情報(RGB値)を取得してもよい。ガス検知素子5の色情報に対応して特定ガスの濃度を求めることができる。
【実施例0033】
以下、本発明について実施例に基づいて具体的に説明する。なおここでは発明の理解を容易にするために具体的な条件を示して説明するが、本発明の実施は、下記の実施の組み合わせや数値範囲に限定されるものではない。
【0034】
ガス検知素子はアセトン検知素子を用いた。アセトン検知素子の作製方法は、例えば下記文献1に開示された方法による。
文献1:Microchemical Journal, 159, (2020)105428
【0035】
基板としては細孔径4nmの多孔質ガラスを用いた。あらかじめ分光光度計(光検出器)にて300nm~2000nmの吸光スペクトル(吸光度)を測定したガス検知素子を内径12mmのガラス管の中にガラス管に平行に置いた。市販の2Lのサンプリングバッグに湿度約50%、アセトン濃度5ppmの空気を調整した。サンプリングバッグのコックをシリコンゴム栓とテフロンチューブを用いてガラス管に接続した。透明なガラス管のもう一端をシリコンゴム栓とテフロンチューブを用いてポンプに接続した。ポンプは大気測定用の吸引ポンプを用いた。ポンプを稼働させ流速0.05L/minで5分間通気させた。その後ガス検知素子を取り出し分光光度計にて300nm~2000nmの吸光スペクトルを測定し、390nmの吸光度の差分を算出した。
【0036】
次に同様な系を組みポンプを稼働させ流速0.1L/minで5分間通気させた。その後ガス検知素子を取り出し分光光度計にて300nm~2000nmの吸光スペクトルを測定し、390nmの吸光度の変化量を算出した。
【0037】
次に同様な系を組みポンプを稼働させ流速0.2L/minで5分間通気させた。その後ガス検知素子を取り出し分光光度計にて300nm~2000nmの吸光スペクトルを測定し、390nmの吸光度の変化量を算出した。
【0038】
次に同様な系を組みポンプを稼働させ流速0.3L/minで5分間通気させた。その後ガス検知素子を取り出し分光光度計にて300nm~2000nmの吸光スペクトルを測定し、390nmの吸光度の変化量を算出した。
【0039】
気体の流速に対応するガス検知素子の吸光度の変化量の測定結果を図5に示す。いずれの流速においても吸光度の差分は一定で、検知素子でのアセトンの検知に対しては拡散律速となっており、流速が0.05L/min以上であれば細かい制御は必要ないことが明らかになった。またこのようなガス検知素子と管を用いるだけの簡単な系で簡便に、小体積の気体を用いて測定が可能であることが示された。
【実施例0040】
ガス検知素子はアセトン検知素子を用いた。アセトン検知素子の作製方法は、例えば上記文献1に開示された方法による。基板としては細孔径4nmの多孔質ガラスを用いた。あらかじめデジタルカメラにて画像を取得したガス検知素子を内径12mmのガラス管の中にガラス管に平行に置いた。市販の2Lのサンプリングバッグに湿度約50%、アセトン濃度5ppmの空気を調整した。サンプリングバッグのコックをシリコンゴム栓とテフロンチューブを用いてガラス管に接続した。ガラス管のもう一端をシリコンゴム栓とテフロンチューブを用いてポンプに接続した。ポンプは大気測定用の吸引ポンプを用いた。ポンプを稼働させ流速0.05L/minで5分間通気させた。その後ガス検知素子を取り出しデジタルカメラ(撮像装置)にて画像を取得した。曝露前後の画像をRGB解析し、B/G値の変化量を算出した。
【0041】
次に同様な系を組みポンプを稼働させ流速0.1L/minで5分間通気させた。その後ガス検知素子を取り出し画像を取得した。曝露前後の画像をRGB解析し、B/G値の変化量を算出した。
【0042】
次に同様な系を組みポンプを稼働させ流速0.2L/minで5分間通気させた。その後ガス検知素子を取り出し画像を取得した。曝露前後の画像をRGB解析し、B/G値の変化量を算出した。
【0043】
次に同様な系を組みポンプを稼働させ流速0.3L/minで5分間通気させた。その後ガス検知素子を取り出し画像を取得した。曝露前後の画像をRGB解析し、B/G値の変化量を算出した。
【0044】
気体の流速に対応するとガス検知素子の色情報(B/G値)の変化量の測定結果を図6に示す。いずれの流速においてもB/G値の変化量はほぼ一定で、検知素子でのアセトンの検知に対しては拡散律速となっており、流速が0.05L/min以上であれば細かい制御は必要ないことが明らかになった。またこのようなガス検知素子と管を用いるだけの簡単な系で簡便に、小体積の気体を用いて測定が可能であることが示された。
【実施例0045】
ガス検知素子はアセトン検知素子及び二酸化窒素検知素子を用いた。アセトン検知素子の作製方法は、例えば上記文献1に開示された方法による。二酸化窒素検知素子の作製方法は、例えば下記文献2に開示された方法による。
文献2:Sensors and Actuators B 173, 191-196(2012)
【0046】
基板としては細孔径4nmの多孔質ガラスを用いた。あらかじめ分光光度計にて300nm~2000nmの吸光スペクトルを測定した各々のガス検知素子を内径12mmのガラス管の中にガラス管に1cm離して平行に置いた。市販の2Lのサンプリングバッグに湿度約50%、アセトン濃度5ppm、二酸化窒素濃度100ppbの混合空気を調整した。サンプリングバッグのコックをシリコンゴム栓とテフロンチューブを用いてガラス管に接続した。ガラス管のもう一端をシリコンゴム栓とテフロンチューブを用いてポンプに接続した。ポンプは大気測定用の吸引ポンプを用いた。ポンプを稼働させ流速0.05L/minで5分間通気させた。その後各々のガス検知素子を取り出し分光光度計にて300nm~2000nmの吸光スペクトルを測定し、アセトン検知素子については390nmの吸光度の変化量を、二酸化窒素検知素子については525nmの吸光度の変化量を算出した。
【0047】
次に同様な系を組みポンプを稼働させ流速0.1L/minで5分間通気させた。その後各々のガス検知素子を取り出し分光光度計にて300nm~2000nmの吸光スペクトルを測定し、アセトン検知素子については390nmの吸光度の変化量を、二酸化窒素検知素子については525nmの吸光度の変化量を算出した。
【0048】
次に同様な系を組みポンプを稼働させ流速0.2L/minで5分間通気させた。その後各々のガス検知素子を取り出し分光光度計にて300nm~2000nmの吸光スペクトルを測定し、アセトン検知素子については390nmの吸光度の変化量を、二酸化窒素検知素子については525nmの吸光度の変化量を算出した。
【0049】
次に同様な系を組みポンプを稼働させ流速0.3L/minで5分間通気させた。その後各々のガス検知素子を取り出し分光光度計にて300nm~2000nmの吸光スペクトルを測定し、アセトン検知素子については390nmの吸光度の変化量を、二酸化窒素検知素子については525nmの吸光度の変化量を算出した。
【0050】
気体の流速に対応する各ガス検知素子の吸光度の変化量の測定結果を図7に示す。いずれの流速においても各々の吸光度の差分は一定で、検知素子でのアセトンの検知及び二酸化窒素の検知に対しては拡散律速となっており、流速が0.05L/min以上であれば細かい制御は必要ないことが明らかになった。またこのような複数のガス検知素子と管を用いるだけの簡単な系で簡便に、小体積の気体を用いて混合気体中の各々の物質が精度よく測定が可能であることが示された。
【0051】
本発明は、上記実施の形態に限定されるものではなく、本発明の分野における通常の知識を有する者であれば想到し得る各種変形、修正を含む要旨を逸脱しない範囲の設計変更があっても、本発明に含まれることは勿論である。
【符号の説明】
【0052】
1:ガス検知装置、2:容器、3:管、4:ポンプ、5:ガス検知素子、6:光源、7:光検出器、8:撮像装置、9:バルブ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7