(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022017091
(43)【公開日】2022-01-25
(54)【発明の名称】分離方法、分離装置
(51)【国際特許分類】
C12Q 1/04 20060101AFI20220118BHJP
C12M 1/26 20060101ALI20220118BHJP
【FI】
C12Q1/04
C12M1/26
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020120176
(22)【出願日】2020-07-13
(71)【出願人】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】凸版印刷株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100139686
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 史朗
(74)【代理人】
【識別番号】100169764
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 雄一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100147267
【弁理士】
【氏名又は名称】大槻 真紀子
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 展雄
【テーマコード(参考)】
4B029
4B063
【Fターム(参考)】
4B029AA09
4B029BB11
4B029CC01
4B029FA04
4B029FA05
4B029GA08
4B029GB02
4B029GB05
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4B063QA01
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4B063QQ03
4B063QQ08
4B063QR72
4B063QR77
4B063QS07
4B063QS12
4B063QS39
4B063QX01
(57)【要約】
【課題】DLDの原理に基づいて分離を行うデバイスに送液したときのデバイス内の残留空気を減少または無くすことができ、デバイスによる分離精度を向上できる分離方法、分離装置の提供。
【解決手段】サンプル用シリンジ20、バッファー用シリンジ30、プライミング用シリンジ40、分離デバイス50、第1の送液配管61、第2の送液配管62、送液機70、を有し、さらに回収容器81、排液容器82、分離デバイス50の対象回収口と回収容器81との間を接続する第1の排液配管63、分離デバイス50の非対象回収口と排液容器82との間を接続する第2の排液配管64を有する分離装置10、それを用いた分離方法を提供する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
分離対象物を含む液状のサンプルから前記分離対象物を分離するための分離装置を用いて前記分離対象物を分離する方法であって、
前記分離装置は、
前記サンプルを蓄えるためのサンプル貯留タンクと、
バッファーを蓄えるためのバッファー貯留タンクと、
前記分離対象物をサイズに基づいて分離する分離領域と、前記サンプルを導入するためのサンプル導入口と、前記バッファーを導入するためのバッファー導入口と、分離された前記分離対象物を回収する対象回収口と、前記サンプル中の分離されなかった成分を回収する非対象回収口と、を有する分離デバイスと、
前記サンプル貯留タンクと前記サンプル導入口とを接続する第1の流路と、
前記バッファー貯留タンクと前記バッファー導入口とを接続する第2の流路と、
前記サンプル貯留タンク内の前記サンプルを加圧し、前記第1の流路を経由して前記サンプル導入口まで送液する第1の加圧装置と、
前記バッファー貯留タンク内の前記バッファーを加圧し、前記第2の流路を経由して前記バッファー導入口まで送液する第2の加圧装置と、を有し、
前記バッファーを前記バッファー導入口に導入するとともに前記サンプル導入口にも前記第1の流路を介して導入して、前記分離領域を通過させた前記バッファーを前記対象回収口および前記非対象回収口から排出させながら、前記分離デバイス内を前記バッファーで満たすプライミング工程と、
前記プライミング工程の後に、前記サンプルを前記サンプル導入口に導入し、前記バッファーを前記バッファー導入口に導入することで、前記分離領域に前記サンプルを通過させ、前記分離対象物を前記サンプルから分離して前記対象回収口から回収し、前記サンプル中の分離されなかった成分を前記非対象回収口から回収する対象分離工程と、を有する分離方法。
【請求項2】
前記プライミング工程は予め前記サンプル貯留タンクおよび前記バッファー貯留タンク内に貯留された前記バッファーを前記第1の加圧装置および前記第2の加圧装置が加圧することによって行われ、
前記プライミング工程と前記対象分離工程との間に、前記サンプル貯留タンク内に前記サンプルを加えて前記サンプル貯留タンク内に前記サンプルを貯留させる、サンプル貯留工程を有し、
前記対象分離工程は、前記サンプル貯留タンク内の前記サンプルを前記第1の加圧装置によって加圧し、前記バッファー貯留タンク内の前記バッファーを前記第2の加圧装置が加圧することによって行われる、請求項1に記載の分離方法。
【請求項3】
前記分離装置は、前記プライミング工程にて前記分離デバイスの前記サンプル導入口に導入される前記バッファーである前記プライミング用バッファーを貯留するためのプライミング用バッファー貯留タンクと、前記プライミング用バッファー貯留タンクと前記第1の流路の途中部とを接続する第3の流路と、前記プライミング用バッファー貯留タンク内の前記プライミング用バッファーを加圧し前記第3の流路および前記第1の流路を経由して前記サンプル導入口まで送液する第3の加圧装置と、をさらに有し、
前記プライミング工程において、前記プライミング用バッファーは予め前記プライミング用バッファー貯留タンクおよび前記バッファー貯留タンク内に貯留されており、前記プライミング工程が前記第3の加圧装置および前記第2の加圧装置が加圧を行うことによって行われ、
前記対象分離工程が、前記第1の加圧装置および前記第2の加圧装置が加圧を行うことによって行われる、請求項1に記載の分離方法。
【請求項4】
前記第3の加圧装置が送液する液量を徐々に減らすとともに前記第1の加圧装置が送液する液量を徐々に増やすことにより、前記プライミング工程と前記対象分離工程とが連続的に行われる、請求項3に記載の分離方法。
【請求項5】
前記第1の加圧装置が送液する液量と前記第3の加圧装置が送液する液量との合計の液量が、前記プライミング工程から前記対象分離工程に切り替わる段階において一定である、請求項4に記載の分離方法。
【請求項6】
前記サンプル貯留タンク、前記バッファー貯留タンク、および前記プライミング用バッファー貯留タンクはそれぞれシリンジの外筒部材であり、
前記第1の加圧装置、前記第2の加圧装置、および前記第3の加圧装置が前記シリンジの前記外筒部材に挿入された押し子を押圧可能なシリンジポンプである、請求項3から5のいずれか一項に記載の分離方法。
【請求項7】
分離対象物を含む液状のサンプルを蓄えるためのサンプル貯留タンクと、
バッファーを蓄えるためのバッファー貯留タンクと、
プライミング用バッファーを蓄えるためのプライミング用バッファー貯留タンクと、
前記分離対象物をサイズに基づいて分離する分離領域と、前記サンプルおよび前記プライミング用バッファーを導入するためのサンプル導入口と、前記バッファーを導入するためのバッファー導入口と、分離された前記分離対象物を回収する対象回収口と、前記サンプル中の分離されなかった成分を回収する非対象回収口と、を有する分離デバイスと、
前記サンプル貯留タンクと前記サンプル導入口とを接続する第1の流路と、
前記バッファー貯留タンクと前記バッファー導入口とを接続する第2の流路と、
前記プライミング用バッファー貯留タンクと前記第1の流路の途中部とを接続する第3の流路と、
前記サンプル貯留タンク内の前記サンプルを加圧し、前記第1の流路を経由して前記サンプル導入口まで送液する第1の加圧装置と、
前記バッファー貯留タンク内の前記バッファーを加圧し、前記第2の流路を経由して前記バッファー導入口まで送液する第2の加圧装置と、
前記プライミング用バッファー貯留タンク内の前記プライミング用バッファーを加圧し、前記第3の流路および前記第1の流路を経由して前記サンプル導入口まで送液する第3の加圧装置と、を有する分離装置。
【請求項8】
前記第1の加圧装置、前記第2の加圧装置、および前記第3の加圧装置がそれぞれ、前記サンプル貯留タンク、前記バッファー貯留タンク、および前記プライミング用バッファー貯留タンク内の液体に加えられる圧力を検出するための圧力センサを有し、
前記圧力センサが検出した圧力を基に演算を行い、前記第1の加圧装置、前記第2の加圧装置、および前記第3の加圧装置の加圧の大きさを制御する加圧装置制御手段を有する、請求項7に記載の分離装置。
【請求項9】
前記サンプル貯留タンク、前記バッファー貯留タンク、および前記プライミング用バッファー貯留タンクから選択される1以上がシリンジの外筒部材であり、前記外筒部材内の前記液体に加えられる圧力を検出することが、前記シリンジの前記外筒部材に先端部が挿入された押し子の後端に前記外筒部材に押し込む方向に加えられる圧力を検出することである、請求項8に記載の分離装置。
【請求項10】
前記分離領域が、決定論的横置換法の理論に基づく複数のピラーを有するマイクロ流路構造である、請求項7から9のいずれか一項に記載の分離装置。
【請求項11】
前記分離デバイスは前記分離装置から脱着可能である、請求項7から10のいずれか一項に記載の分離装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体のサンプルからサンプルに含まれる分離対象物を分離する分離方法、分離装置に関する。
【背景技術】
【0002】
低侵襲に疾患を診断する方法として、リキッドバイオプシーという手法が知られており、その手法の中に、血液等の体液中の細胞を検出する手法が存在する。
これまでに、採取した体液からCTC(血中循環腫瘍細胞)を分離する手法として、特許文献1のように、細胞と担体とを結合させて、決定論的横置換法(以下「DLD」とも言う。DLD:Deterministic Lateral Displacement)の原理に基づき、サイズの違い応じて目的細胞と目的外細胞とを分離する手法が知られている。また、非特許文献1のように、DLDの原理に基づいて分離を行うデバイスにおいて、デバイスの上流からポンプの圧力によって送液を行う技術も知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】Trung S. H. Tran et al., Lab. Chip. 2017, 17, 3592-3600.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、DLDのような複雑な形状を有するマイクロ流路に送液を行おうとした場合、デバイス内や流路内に空気が残留してしいまい、送液される液体の流れを乱してしまうことがあることを、発明者らは発見した。また、発明者らは、デバイス内における液体の流れの乱れが、DLDの原理に基づく分離対象物の分離精度低下の原因になることを把握した。
【0006】
本発明の幾つかの実施形態が解決しようとする課題は、DLDの原理に基づいて分離を行うデバイスに送液したときのデバイス内の残留空気を減少または無くすことができ、デバイスによる分離精度を向上できる分離方法、分離装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明では以下の態様を提供する。
[1]分離対象物を含む液状のサンプルから前記分離対象物を分離するための分離装置を用いて前記分離対象物を分離する方法であって、前記分離装置は、前記サンプルを蓄えるためのサンプル貯留タンクと、バッファーを蓄えるためのバッファー貯留タンクと、前記分離対象物をサイズに基づいて分離する分離領域と、前記サンプルを導入するためのサンプル導入口と、前記バッファーを導入するためのバッファー導入口と、分離された前記分離対象物を回収する対象回収口と、前記サンプル中の分離されなかった成分を回収する非対象回収口と、を有する分離デバイスと、前記サンプル貯留タンクと前記サンプル導入口とを接続する第1の流路と、前記バッファー貯留タンクと前記バッファー導入口とを接続する第2の流路と、前記サンプル貯留タンク内の前記サンプルを加圧し、前記第1の流路を経由して前記サンプル導入口まで送液する第1の加圧装置と、前記バッファー貯留タンク内の前記バッファーを加圧し、前記第2の流路を経由して前記バッファー導入口まで送液する第2の加圧装置と、を有し、前記バッファーを前記バッファー導入口に導入するとともに前記サンプル導入口にも前記第1の流路を介して導入して、前記分離領域を通過させた前記バッファーを前記対象回収口および前記非対象回収口から排出させながら前記分離デバイス内を前記バッファーで満たすプライミング工程と、前記プライミング工程の後に、前記サンプルを前記サンプル導入口に導入し、前記バッファーを前記バッファー導入口に導入することで、前記分離領域に前記サンプルを通過させ、前記分離対象物を前記サンプルから分離して前記対象回収口から回収し、前記サンプル中の分離されなかった成分を前記非対象回収口から回収する対象分離工程と、を有する分離方法。
[2]前記プライミング工程は予め前記サンプル貯留タンクおよび前記バッファー貯留タンク内に貯留された前記バッファーを前記第1の加圧装置および前記第2の加圧装置が加圧することによって行われ、前記プライミング工程と前記対象分離工程との間に、前記サンプル貯留タンク内に前記サンプルを加えて前記サンプル貯留タンク内に前記サンプルを貯留させる、サンプル貯留工程を有し、前記対象分離工程は、前記サンプル貯留タンク内の前記サンプルを前記第1の加圧装置によって加圧し、前記バッファー貯留タンク内の前記バッファーを前記第2の加圧装置が加圧することによって行われる、[1]に記載の分離方法。
[3]前記分離装置は、前記プライミング工程にて前記分離デバイスの前記サンプル導入口に導入される前記バッファーである前記プライミング用バッファーを貯留するためのプライミング用バッファー貯留タンクと、前記プライミング用バッファー貯留タンクと前記第1の流路の途中部とを接続する第3の流路と、前記プライミング用バッファー貯留タンク内の前記プライミング用バッファーを加圧し前記第3の流路および前記第1の流路を経由して前記サンプル導入口まで送液する第3の加圧装置と、をさらに有し、前記プライミング工程において、前記プライミング用バッファーは予め前記プライミング用バッファー貯留タンクおよび前記バッファー貯留タンク内に貯留されており、前記プライミング工程が前記第3の加圧装置および前記第2の加圧装置が加圧を行うことによって行われ、前記対象分離工程が、前記第1の加圧装置および前記第2の加圧装置が加圧を行うことによって行われる、[1]に記載の分離方法。
[4]前記第3の加圧装置が送液する液量を徐々に減らすとともに前記第1の加圧装置が送液する液量を徐々に増やすことにより、前記プライミング工程と前記対象分離工程とが連続的に行われる、[3]に記載の分離方法。
[5]前記第1の加圧装置が送液する液量と前記第3の加圧装置が送液する液量との合計の液量が、前記プライミング工程から前記対象分離工程に切り替わる段階において一定である、[4]に記載の分離方法。
[6]前記サンプル貯留タンク、前記バッファー貯留タンク、および前記プライミング用バッファー貯留タンクはそれぞれシリンジの外筒部材であり、前記第1の加圧装置、前記第2の加圧装置、および前記第3の加圧装置が前記シリンジの前記外筒部材に挿入された押し子を押圧可能なシリンジポンプである、[3]から[5]のいずれか一つに記載の分離方法。
[7]分離対象物を含む液状のサンプルを蓄えるためのサンプル貯留タンクと、バッファーを蓄えるためのバッファー貯留タンクと、プライミング用バッファーを蓄えるためのプライミング用バッファー貯留タンクと、前記分離対象物をサイズに基づいて分離する分離領域と、前記サンプルおよび前記プライミング用バッファーを導入するためのサンプル導入口と、前記バッファーを導入するためのバッファー導入口と、分離された前記分離対象物を回収する対象回収口と、前記サンプル中の分離されなかった成分を回収する非対象回収口と、を有する分離デバイスと、前記サンプル貯留タンクと前記サンプル導入口とを接続する第1の流路と、前記バッファー貯留タンクと前記バッファー導入口とを接続する第2の流路と、前記プライミング用バッファー貯留タンクと前記第1の流路の途中部とを接続する第3の流路と、前記サンプル貯留タンク内の前記サンプルを加圧し、前記第1の流路を経由して前記サンプル導入口まで送液する第1の加圧装置と、 前記バッファー貯留タンク内の前記バッファーを加圧し、前記第2の流路を経由して前記バッファー導入口まで送液する第2の加圧装置と、前記プライミング用バッファー貯留タンク内の前記プライミング用バッファーを加圧し、前記第3の流路および前記第1の流路を経由して前記サンプル導入口まで送液する第3の加圧装置と、を有する分離装置。
[8]前記第1の加圧装置、前記第2の加圧装置、および前記第3の加圧装置がそれぞれ、前記サンプル貯留タンク、前記バッファー貯留タンク、および前記プライミング用バッファー貯留タンク内の液体に加えられる圧力を検出するための圧力センサを有し、前記圧力センサが検出した圧力を基に演算を行い、前記第1の加圧装置、前記第2の加圧装置、および前記第3の加圧装置の加圧の大きさを制御する加圧装置制御手段を有する、[7]に記載の分離装置。
[9]前記サンプル貯留タンク、前記バッファー貯留タンク、および前記プライミング用バッファー貯留タンクから選択される1以上がシリンジの外筒部材であり、前記外筒部材内の前記液体に加えられる圧力を検出することが、前記シリンジの前記外筒部材に先端部が挿入された押し子の後端に前記外筒部材に押し込む方向に加えられる圧力を検出することである、[8]に記載の分離装置。
[10]前記分離領域が、決定論的横置換法(Deterministic Lateral Displacement、DLD)の理論に基づく複数のピラーを有するマイクロ流路構造である、[7]から[9]のいずれか一つに記載の分離装置。
[11]前記分離デバイスは前記分離装置から脱着可能である、[7]から[10]のいずれか一つに記載の分離装置。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、DLDの原理に基づいて分離を行うデバイスに送液したときのデバイス内の残留空気を減少または無くすことができる。その結果、デバイス内の液体の流れが安定することで、液体中の分離対象物がDLD原理に従いやすくなり、デバイスによる分離精度を向上できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図2】
図1の分離装置のサンプル用シリンジ付近を拡大して示した拡大正面図である。
【
図3】
図1の分離装置の送液機主機体の台部の上面付近及び台部の上面に載置された分離デバイスを示す断面図である。
【
図4】
図3のA-A線矢視断面図であり、分離デバイスの蓋板部材の内部流路付近の構造を示す。
【
図5】分離デバイスのサンプル出口付近の部分平断面図である。
【
図6】分離デバイスの分離領域の拡大平面図である。
【
図8】血中循環がん細胞分離装置を用いた分離方法を説明するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、場合により図面を参照しつつ、本発明の実施形態について説明する。
なお、図面中、同一又は相当部分には同一符号を付し、重複する説明は省略する。なお、各図における寸法比は、説明のため誇張している部分があり、必ずしも実際の寸法比とは一致しない。また、本発明は以下の実施の形態に限定されるものではなく、その要旨の範囲内であれば種々に変更して実施することができる。
【0011】
本発明に係る1実施形態の分離方法は、分離対象物を含む液体サンプルから前記分離対象物を分離するための分離装置を用いて前記分離対象物を分離する方法であって、前記分離装置は、前記液体サンプルを蓄えるためのサンプル貯留タンクと、バッファーを蓄えるためのバッファー貯留タンクと、前記分離対象物をサイズに基づいて分離する分離領域と、前記液体サンプルを導入するためのサンプル導入口と、前記バッファーを導入するためのバッファー導入口と、分離された前記分離対象物を回収する対象回収口と、前記液体サンプル中の分離されなかった成分を回収する非対象回収口と、を有する分離デバイスと、前記サンプル貯留タンクと前記サンプル導入口とを接続する第1の流路と、前記バッファー貯留タンクと前記バッファー導入口とを接続する第2の流路と、前記サンプル貯留タンク内の前記液体サンプルを加圧し、前記第1の流路を経由して前記サンプル導入口まで送液する第1の加圧装置と、前記バッファー貯留タンク内の前記バッファーを加圧し、前記第2の流路を経由して前記バッファー導入口まで送液する第2の加圧装置と、を有し、前記バッファーを前記バッファー導入口に導入するとともに前記サンプル導入口にも前記第1の流路を介して導入して、前記分離領域を通過させた前記バッファーを前記対象回収口および前記非対象回収口から排出させながら前記分離デバイス内を前記バッファーで満たすプライミング工程と、前記プライミング工程の後に、前記液体サンプルを前記サンプル導入口に導入し、前記バッファーを前記バッファー導入口に導入することで、前記分離領域に前記液体サンプルを通過させ、前記分離対象物を前記液体サンプルから分離して前記対象回収口から回収し、前記液体サンプル中の分離されなかった成分を前記非対象回収口から回収する対象分離工程と、を有する。
【0012】
本発明に係る1実施形態の分離装置は、分離対象物を含む液体サンプルを蓄えるためのサンプル貯留タンクと、バッファーを蓄えるためのバッファー貯留タンクと、プライミング用バッファーを蓄えるためのプライミング用バッファー貯留タンクと、前記分離対象物をサイズに基づいて分離する分離領域と、前記液体サンプルおよび前記プライミング用バッファーを導入するためのサンプル導入口と、前記バッファーを導入するためのバッファー導入口と、分離された前記分離対象物を回収する対象回収口と、前記液体サンプル中の分離されなかった成分を回収する非対象回収口と、を有する分離デバイスと、前記サンプル貯留タンクと前記サンプル導入口とを接続する第1の流路と、前記バッファー貯留タンクと前記バッファー導入口とを接続する第2の流路と、前記プライミング用バッファー貯留タンクと前記第1の流路の途中部とを接続する第3の流路と、前記サンプル貯留タンク内の前記液体サンプルを加圧し、前記第1の流路を経由して前記サンプル導入口まで送液する第1の加圧装置と、 前記バッファー貯留タンク内の前記バッファーを加圧し、前記第2の流路を経由して前記バッファー導入口まで送液する第2の加圧装置と、前記プライミング用バッファー貯留タンク内の前記プライミング用バッファーを加圧し、前記第3の流路および前記第1の流路を経由して前記サンプル導入口まで送液する第3の加圧装置と、を有する。
【0013】
液体サンプルは、細胞を含む液性の流体(細胞含有流体試料)を好適に用いることができる。液体サンプルは、例えば、血液、リンパ液、唾液、尿、涙等の体液、細胞が培養液あるいはバッファー(ph緩衝溶液。以下、泳動用緩衝溶液、とも言う)等の液体に混入されたもの、などを用いることができる。また、液体サンプルは、例えば、血液、リンパ液、唾液、尿、涙等の体液、細胞が培養液あるいはバッファー(ph緩衝溶液)等の液体に混入されたものを、培養液あるいはバッファー(ph緩衝溶液)等の液体で希釈したものであってもよい。
なお、本明細書において液体サンプルを単に「サンプル」とも言う。
【0014】
サンプルに含まれる分離対象物は、例えば、細胞あるいはエクソソームをビーズに結合させた分離対象物結合ビーズ、細胞自体、あるいは細胞の集合体といった粒状物である。
ビーズの材質は特に限定されず、シリカ、ポリスチレン、ラテックス、金属等が挙げられる。ビーズは磁性体(強磁性体)の金属粒子であってもよい。
ビーズは、その表面に、標的タンパク質等を特異的に認識する特異的結合物質を結合したものであってもよい。特異的結合物質としては、抗体、抗体断片、アプタマー等が挙げられる。
【0015】
分離対象物結合ビーズは、例えば、ビーズをサンプルに混合することにより、サンプル中の細胞やエクソソーム等をビーズに結合させて得ることができる。
ビーズは、特異的結合物質として、特定の細胞やエクソソーム等の粒子の表面に存在するタンパク質を特異的に認識する抗体等を結合したものを用いることにより、サンプル中の細胞やエクソソーム等を結合させることができる。
ビーズに結合させるサンプル中の細胞としては、特に限定されず、特異的なマーカータンパク質を細胞表面に発現したあらゆる細胞が挙げられるが、例えば血液中の循環腫瘍細胞(CTC)や循環胎児細胞、白血球であってもよい。
【0016】
本発明に係る実施形態の分離方法及び分離装置では、サンプル中の分離対象物結合ビーズを分離デバイスを用いて回収することにより、サンプル中の細胞やエクソソーム等をビーズとともに回収できる。
分離デバイスは分離対象物をサイズに基づいて分離する分離領域を有する。
【0017】
分離デバイスとしてはマイクロ流路構造のものを好適に用いることができる。マイクロ流路構造の分離デバイスには、標的とする分離対象物を大きさに基づいて分離することができる分離領域を有する構造のものが含まれる。分離領域の構造例としては、DLD法(決定論的横置換法)の原理に基づいた分離デバイス(以下、DLDデバイス、とも言う)が挙げられる。DLDデバイスとしては例えば、WO2016/136273で開示されるものを用いることができる。
【0018】
分離デバイスはサンプル及びバッファーが流される内部流路を内部に有し、内部流路の途中部に分離領域を有する構造のものが挙げられる。
この分離デバイスは、分離領域よりも上流側で内部流路と連通するサンプル導入口及びバッファー導入口と、分離領域よりも下流側で内部流路に連通する対象回収口及び非対象回収口とを有する。分離領域は、内部流路における、上流側のサンプル導入口及びバッファー導入口と下流側の対象回収口及び非対象回収口との間に位置する。
DLDデバイスの分離領域は、DLD法(決定論的横置換法)の原理に基づいてサンプル中の分離対象物を選択的に分離するためのピラー等のアレイが互いに間隔を開けて多数配置された領域である。
【0019】
分離デバイスの分離領域には、サンプル導入口から導入されたサンプル及びバッファー導入口から導入されたバッファーが、分離領域よりも下流側に向かって流される。分離デバイスの分離領域は、その上流側から下流側に向かってサンプル及びバッファーが流されることで、サンプル中の分離対象物をサイズに基づいて分離し対象回収口に導く。サンプル中の分離対象物以外の粒子(細胞等)はバッファーとともに非対象回収口に導かれる。その結果、サンプル中の粒子のうち分離対象物を選択的に対象回収口から回収できる。
【0020】
例えば、目的細胞と目的外細胞の大きさが近似している場合、分離デバイスを使用して両者を分離することが困難であることがある。このような場合、ビーズを目的細胞のみに特異的に結合させて、目的細胞を見かけ上大きな粒子(分離対象物結合ビーズ)にすることにより、目的外細胞との大きさの差を大きくし、分離デバイスで分離しやすくすることができる。
【0021】
本発明に係る実施形態の分離方法では、分離デバイスのバッファー導入口及びサンプル導入口から内部流路にバッファーを導入して内部流路をバッファーで満たすプライミング工程を行なってから、分離デバイスのサンプル導入口からサンプルを導入しバッファー導入口からバッファーを導入してサンプルから分離した分離対象物を対象回収口から回収する対象分離工程を行なう。
この分離方法では、対象分離工程の前にプライミング工程を行なうことで、分離デバイスの内部流路中の空気の残留を減らすか、もしくは無くすことができる。その結果、液体(サンプル及びバッファー)の流れの繊細なコントロールが必要なDLDデバイスであっても、分離領域を流れる液体中の粒子の挙動がDLD原理に従いやすくなり、分離精度を向上させることが可能になる。
【0022】
プライミング工程は、より具体的には、分離デバイスのバッファー導入口及びサンプル導入口から内部流路にバッファーを導入し、分離領域を通過させたバッファーを対象回収口および非対象回収口から排出させながら分離デバイス内を前記バッファーで満たす工程である。
対象分離工程は、より具体的には、分離デバイスのサンプル導入口からサンプルを導入しバッファー導入口からバッファーを導入し、分離領域にサンプル及びバッファーを通過させ、分離対象物をサンプルから分離して対象回収口から回収し、サンプル中の分離されなかった成分を非対象回収口から回収する工程である。
【0023】
本発明に係る実施形態の分離方法は、サンプル貯留タンクと、バッファー貯留タンクと、分離デバイスと、サンプル貯留タンクと分離デバイスのサンプル導入口とを接続する第1の流路と、バッファー貯留タンクと分離デバイスのバッファー導入口とを接続する第2の流路と、サンプル貯留タンク内のサンプルを加圧してサンプル導入口まで送液する第1の加圧装置と、バッファー貯留タンク内のバッファーを加圧してバッファー導入口まで送液する第2の加圧装置とを有する分離装置を用いて実現できる。
【0024】
分離装置は、プライミング用バッファー貯留タンクと、プライミング用バッファー貯留タンクと第1の流路の途中部とを接続する第3の流路と、プライミング用バッファー貯留タンク内のプライミング用バッファーを加圧して第3の流路および前記第1の流路を経由してサンプル導入口まで送液する第3の加圧装置と、をさらに有する構成も採用可能である。
この分離装置を用いて実現する分離方法は、例えば、プライミング工程が、プライミング用バッファータンクおよびバッファー貯留タンクのそれぞれに予め貯留されたプライミング用バッファーを第3の加圧装置および第2の加圧装置によって加圧することによって行われ、対象分離工程が、第1の加圧装置および第2の加圧装置が加圧を行うことによって行われる、構成を採用できる。
【0025】
サンプル貯留タンクと、バッファー貯留タンク、プライミング用バッファータンクといったタンク内の液体を分離デバイスへ送液するための送液手段は、タンク内の液体を加圧するタイプのもの(加圧装置)を採用することが好ましい。
送液手段に加圧装置を採用することによって、分離デバイスに送液する液体をタンクから分離デバイスの内部流路の出口(対象回収口及び非対象回収口)まで満遍なく送液することができ、分離デバイスの内部流路内に空気を滞留させにくくなる。
【0026】
また、DLDの原理では、分離領域における各々の層流の流速が分離精度に与える影響が大きい。タンク内の液体を加圧するタイプの送液手段(加圧装置)は、例えば分離デバイスの内部流路の出口(対象回収口及び非対象回収口)側に接続して内部流路に陰圧を与えるポンプ等に比べて送液流量の安定性に優れるため、分離精度の安定維持、分離精度の向上の点で好適に採用できる。
タンク内の液体の送液手段に加圧装置を用いる場合、分離デバイスの内部流路内の空気を抜くために、例えば分離デバイスの内部流路に陰圧を与えるポンプを内部流路の出口(対象回収口及び非対象回収口)側に設けることは、分離精度の安定や向上に寄与せず、部品点数を無暗に増やすことになるため、望ましくない。
【0027】
加圧装置は、タンク内の液体を加圧して一定流量で送液できるものであれば、特に限定されない。加圧装置は、例えば、シリンジの外筒部材に押し子を押し込むことで外筒部材(タンク)内の液体を外筒部材から押し出すシリンジポンプ、を挙げることができる。加圧装置は、その他、例えばダイヤフラムポンプ、プランジャーポンプ、ピストンポンプ、チャンバーおよび可動部を備えてタンク内の液体を押圧する空気圧を発生させる空気圧発生装置等が挙げられる。
【0028】
以下、本発明に係る実施形態をより具体的に説明する。
まず、第1実施形態を説明する。
図1は分離装置10の一例(第1実施形態の分離装置)を示す全体斜視図である。
図1に示す分離装置10は、サンプル用シリンジ20、バッファー用シリンジ30、プライミング用シリンジ40、分離デバイス50、第1の送液配管61、第2の送液配管62、送液機70、を有している。
図1に示す分離装置10は、回収容器81、排液容器82、分離デバイス50の対象回収口56に接続された第1の排液配管63、分離デバイス50の非対象回収口57に接続された第2の排液配管64、も有している。
【0029】
図1に示すように、分離装置10は、送液機70の制御回路に図示しない信号線を介して接続された操作端末4も有している。
分離装置10のユーザーは、操作端末4を操作して、送液機70の制御回路への設定値や動作指令等を入力することができる。
操作端末4は表示モニタ4aを有し、送液機70から受信した情報に基づいて送液機70の動作情報、アラーム情報等を表示モニタ4aに表示させることができる。
なお、操作端末4は、無線で、送液機70の制御回路と信号送受信可能に接続されていても良い。
【0030】
図1に示す分離装置10について、
図1において上側を上、下側を下として説明する。なお、
図2、
図3においても、上側が上、下側が下である。
【0031】
図1に示す送液機70は、筐体71と、シリンジ(サンプル用シリンジ20、バッファー用シリンジ30、プライミング用シリンジ40)の外筒部材を支持する複数のタンク支持具72(第1~第3のタンク支持具72A~72C)と、各タンク支持具72に支持されたシリンジ(サンプル用シリンジ20、バッファー用シリンジ30、プライミング用シリンジ40)の押し子を押圧してシリンジの外筒部材に押し込む複数の加圧装置73(第1~第3の加圧装置73A~73C)とを有する。
第1~第3のタンク支持具72A~72Cは、サンプル用シリンジ20、バッファー用シリンジ30、プライミング用シリンジ40の外筒部材であるタンクを支持する。
【0032】
加圧装置73(第1~第3の加圧装置73A~73C)は複数のタンク支持具72のそれぞれに対応して複数設けられている。複数の加圧装置73は、それぞれタンク支持具72に外筒部材が支持されたシリンジの個々に対応して位置する。各加圧装置73が押圧するシリンジの押し子は、それぞれの加圧装置73に対応するタンク支持具72に外筒部材が支持されたシリンジの押し子のみである。
【0033】
図1に示す送液機70について、筐体71及び筐体71の内側に位置する部分を、以下、主機体(または送液機70主機体)、とも言う。
図1に示す分離装置10の送液機70主機体は、台部74と、台部74上に立設された上部構造部75とを有する。
筐体71は、送液機70主機体の外装カバーである。
【0034】
台部74は筐体71の一部が形成する上面74a(以下、台部上面、とも言う)を有する。
送液機70主機体の上部構造部75は台部74の上面74aから上方に突出するように台部74上に立設されている。
分離装置10は、台部74の上面74aとは逆側の底部を載置面上に載置する等により、台部74の上面74aが水平になる向きで使用される。
【0035】
図1は、送液機70主機体の台部上面74aが水平に延在する向きになっている状態を示す。
分離装置10の上下方向は、送液機70主機体の台部上面74aが水平に延在する向きになっている状態において台部上面74aに垂直の方向を指す。
【0036】
図1に示すように、送液機70主機体の台部上面74aは、台部74において、その後端部から立設された上部構造部75から台部74の前端面74bまで延在している。
本明細書において、分離装置10の送液機70について、主機体の台部74の前端面74b側を前、逆側を後、として説明する。
【0037】
第1~第3の加圧装置73A~73Cは、送液機70の筐体71内に設けられた駆動部73aと、駆動部73aによって上下方向に移動される押し子押圧体73bとを有する。第1~第3の加圧装置73A~73Cの駆動部73aは、送液機70の筐体71内に設けられた支持フレーム等の支持材に支持されている。
送液機70の筐体71は支持材に脱着可能に取り付けられている。
【0038】
図1において、第1~第3の加圧装置73A~73Cの押し子押圧体73bは、駆動部73aの駆動によって移動されることでサンプル用シリンジ20、バッファー用シリンジ30、プライミング用シリンジ40の押し子22、32、42を押圧する。
【0039】
各加圧装置73のそれぞれの押し子押圧体73bは、筐体71内部から筐体71上部に開口形成された窓孔71aを介して筐体71外側に突出する部材基片部73cと、部材基片部73cの先端側に形成された押圧片部73dとを有する。
また、
図2に示すように、各加圧装置73の押し子押圧体73bは、押圧片部73dに設けられた圧力センサ73g(加圧力計測センサ)及び後端フランジ保持片73h(後述)も有している。
【0040】
押し子押圧体73bは、部材基片部73cと押圧片部73dとによって構成された剛体である押圧部材73nを有する。
また、押し子押圧体73bは、押圧部材73nの押圧片部73dに圧力センサ73gと後端フランジ保持片73hとが設けられた概略構成の押圧ヘッド部73Hを有している。
なお、圧力センサ73g及び後端フランジ保持片73hは、
図2のみに図示し、他図での図示を省略している。
【0041】
図1に示すように、押し子押圧体73bの部材基片部73cは、筐体71内にて駆動部73aに支持されて送液機70前後方向に延在している。加圧装置73の駆動部73aは、部材基片部73cを送液機70主機体の前後方向に延在する向きを保ったまま押し子押圧体73bを上下方向に移動させる。押し子押圧体73bは、加圧装置73の駆動部73aによって部材基片部73cが上下方向に移動されることで全体が一体的に上下方向に移動される。
【0042】
図2に示す押し子押圧体73bの押圧片部73dは、部材基片部73cの先端側に形成され送液機70上下方向に垂直の方向に延在する押圧主片73eと、押圧主片73eにおける送液機70主機体前面側から見て左右両側の端部からそれぞれ下方へ突出された側壁部73fとを有する。
押圧片部73dの左右両側の側壁部73fは、送液機70主機体の左右方向に垂直の板状に形成されている。
【0043】
図1に示すように押し子押圧体73bの部材基片部73cが挿通された筐体71の窓孔71aを、以下、押圧体用窓孔、とも言う。
筐体71の押圧体用窓孔71aは、筐体71上部における上下方向に垂直の横方向の互いに異なる3箇所に形成されている。
【0044】
図1に示す送液機70の筐体71の押圧体用窓孔71aは、具体的には、送液機70主機体の上部構造部75の前面を形成する部分(上部前面形成部)の上部の横方向の位置が互いに異なる3箇所に形成されている。第1~第3の加圧装置73A~73Cの押し子押圧体73bの部材基片部73cは、筐体71の押圧体用窓孔71aから上部構造部75前側へ突出されている。
【0045】
3つの加圧装置73(第1~第3の加圧装置73A~73C)のそれぞれの押し子押圧体73bは互いに異なる押圧体用窓孔71aに挿入されている。
第1~第3の加圧装置73A~73Cの部材基片部73cは、それぞれ加圧装置73の駆動部73aの駆動によって、筐体71の押圧体用窓孔71aに挿入された状態を維持したまま上下動される。
【0046】
第1~第3のタンク支持具72A~72Cは、それぞれ送液機70の筐体71の押圧体用窓孔71a下側にて送液機70主機体に取り付けられて筐体71外側に設けられている。
図1に示す送液機70の第1~第3のタンク支持具72A~72Cは、具体的には、送液機70主機体の上部構造部75に取り付けられて上部構造部75の前面側に設けられている。
【0047】
図1に示すように、サンプル用シリンジ20、バッファー用シリンジ30、プライミング用シリンジ40は、それぞれ、外筒部材21、31、41と、外筒部材にその軸線方向に移動可能に挿入された押し子22、32、42とを有する。これらシリンジ(サンプル用シリンジ20、バッファー用シリンジ30、プライミング用シリンジ40)の外筒部材21、31、41は、主筒部と、主筒部の先端側に形成され主筒部に比べて内径及び外径が径小の先端筒部とを有する。
【0048】
なお、本明細書において、各シリンジについて主筒部先端側を先端側、逆の側を後端側、として扱う。
外筒部材及び押し子についても、シリンジ先端側を先端側、後端側を後端側、として扱う。
【0049】
各シリンジ(サンプル用シリンジ20、バッファー用シリンジ30、プライミング用シリンジ40)の押し子22、32、42は、外筒部材の主筒部に対してその内周面に摺動しながら主筒部軸線方向に移動可能な棒状に形成されている。
押し子22、32、42の軸線方向寸法は、外筒部材21、31、41の主筒部の軸線方向寸法に比べて大きく確保されている。押し子22、32、42の先端は、外筒部材21、31、41の主筒部内に配置されている。シリンジ20、30、40において、押し子22、32、42は、先端とは逆の後端の側が外筒部材21、31、41後端(主筒部の後端)から突出された部分である突出部(後側突出部)を有する。
【0050】
図1に示すように、送液機70の各タンク支持具72は、シリンジ20、30、40の外筒部材21、31、41をその先端が下端、後端が上端となる向きで支持する。
タンク支持具72に外筒部材が支持されたシリンジ20、30、40は、押し子22、32、42の後側突出部が外筒部材21、31、41から上方へ突出する状態となる。外筒部材に液体を収容したシリンジの押し子は外筒部材内の液体の上側に位置する。
【0051】
図2に示すように、各加圧装置73の押し子押圧体73bの圧力センサ73gは、押し子押圧体73bの押圧主片73eの下面に取り付けられている。
図2に示す圧力センサ73gは、押圧主片73eの下面に沿って延在するパッド状に形成されている。
図2に示す圧力センサ73gの下面は、押圧主片73eの下面に沿って延在しシリンジの押し子にその後側から当接される当接面を形成する。本明細書において、シリンジの押し子にその後側から圧力センサ73gを当接させることは、具体的には、圧力センサ73gの当接面をシリンジの押し子にその後側から当接させることを意味する。圧力センサ73gは、当接面がシリンジの押し子を押圧する押圧力を計測できる。
【0052】
加圧装置73は、駆動部73aの駆動によって押し子押圧体73bを下降させることで押圧部材73nの押圧片部73dの左右の側壁部73f間の押し子収容領域73sにシリンジの押し子の後端部を収容し、押し子にその後側から当接させた圧力センサ73g(具体的には圧力センサ73gの当接面)によってシリンジの押し子を押圧することができる。
押し子押圧体73bがシリンジの押し子を押圧する押圧力はシリンジにシリンジ内の液体を加圧する加圧力として作用する。
圧力センサ73gは、押し子押圧体73bがシリンジ内の液体を加圧する加圧力を計測する加圧力計測センサの役割を果たす。
図1、
図2に示す分離装置10は、加圧装置73がシリンジの押し子に加える圧力を検出することで加圧装置73によってシリンジ内の液体に加えられる圧力を検出する。すなわち、分離装置10において、加圧装置73によってシリンジ内の液体に加えられる圧力を検出することは、加圧装置73がシリンジの押し子に加える圧力を検出することであっても良い。
【0053】
図2に示すシリンジ20の押し子22は、先端部が外筒部材21に挿入された棒状部分である押し子本体22aの後端の外周全周に後端フランジ22bが突出形成された構造になっている。後端フランジ22bは、押し子本体22aの軸線方向に垂直に延在するリング板状に形成されている。
【0054】
図2に示すように、押し子押圧体73bの押圧ヘッド部73Hの後端フランジ保持片73hは、押圧部材73nの押圧片部73dの左右の側壁部73fにそれぞれ設けられている。押圧ヘッド部73Hの左右の後端フランジ保持片73hは、それぞれ押圧片部73dの側壁部73fに支持されて、押圧片部73dの左右の側壁部73fの互いに対面する内面側(押し子収容領域73s側)へ突出状態に設けられている。
押圧ヘッド部73Hは、圧力センサ73gに当接された押し子22の後端フランジ22bを押圧部材73nの押圧主片73e及び圧力センサ73gと後端フランジ保持片73hとの間に保持できる。
【0055】
図2に示すように、後端フランジ保持片73hは、送液機70上下方向において、圧力センサ73gよりも、シリンジの押し子22の後端フランジ22bの厚み相当の距離だけ下方にずれた位置に設けられている。
後端フランジ保持片73hにおける押し子押圧体73bの押圧主片73e側の上面は押圧主片73eに沿って延在している。
【0056】
後端フランジ保持片73hは、圧力センサ73gに当接された押し子22の後端フランジ22bを押圧主片73e及び圧力センサ73gの側に押さえ込むことで押し子22が送液機70上下方向に対して大きく傾くことを防ぎ、圧力センサ73gによる押し子22の押圧の安定的な進行に有効に寄与する。
【0057】
図2に示すように、後端フランジ保持片73hは、押圧片部73dの側壁部73fの厚みを貫通する保持片挿入孔73iにその軸線方向に移動可能に挿入されている。後端フランジ保持片73hは、側壁部73fに左右方向に移動可能に支持されている。
押圧片部73dは、側壁部73fの内面側とは逆の外面側に突出形成されて保持片挿入孔73iの側壁部73f外面側の延長上に張り出された外側受け片73jを含む。また、外側受け片73jと後端フランジ保持片73hとの間には、後端フランジ保持片73hを押し子収容領域73s側へ弾性付勢するスプリング73mが介挿されている。
【0058】
後端フランジ保持片73hには、押圧片部73dの側壁部73fあるいは外側受け片73jに押圧部材73nの押し子収容領域73sとは逆の外側から当接されることで後端フランジ保持片73hの押し子収容領域73s側への前進を規制する前進規制当接片が設けられている。前進規制当接片は後端フランジ保持片73hの押し子収容領域73s側への前進限界位置を定める。
前進規制当接片は後端フランジ保持片73hと一体の部材、後端フランジ保持片73hに取り付けられた後端フランジ保持片73hとは別体の部材、のどちらでも良い。
【0059】
外側受け片73jに当接される前進規制当接片は、後端フランジ保持片73hから押し子収容領域73sとは逆側へ延出された延出片部と、延出片部の先端部から突出されて外側受け片73jの押し子収容領域73sとは逆の外側に配置された当接片部とを有するものである。この前進規制当接片は、当接片部が外側受け片73jに押し子収容領域73sとは逆の外側から当接されることで後端フランジ保持片73hの押し子収容領域73s側への前進を規制する。
外側受け片73jに当接される前進規制当接片は、後端フランジ保持片73hから外側受け片73jの外周の周囲領域に延出された延出片部の先端部に当接片部を有する構成や、外側受け片73jに貫通形成された貫通孔に挿通された延出片部の先端部に当接片部を有する構成を採用できる。
【0060】
押圧ヘッド部73Hは、後端フランジ保持片73h、保持片挿入孔73i、外側受け片73j、前進規制当接片を含む。
後端フランジ保持片73h、保持片挿入孔73i、外側受け片73jは、
図2のみに図示し、他図での図示を省略している。
【0061】
図2において、後端フランジ保持片73hに外側受け片73jへ押圧する外力が作用していないとき、後端フランジ保持片73hの前進規制当接片はスプリング73mの弾性付勢力によって押圧部材73nの押圧片部73dの側壁部73fあるいは外側受け片73jに押し子収容領域73sとは逆の外側から当接される。
後端フランジ保持片73hは、外側受け片73jへ押圧する外力が作用していないとき、スプリング73mの弾性付勢力によって前進限界位置に配置されている。
図2は、後端フランジ保持片73hが前進限界位置に配置されている状態を示す。
【0062】
図2に示すように、前進限界位置の後端フランジ保持片73hにおける押圧部材73nの押圧片部73dの側壁部73fから押し子収容領域73sへ突出された部分を、以下、突出先端部、とも言う。
図2に示すように、後端フランジ保持片73hの突出先端部は、押し子収容領域73s側への突出先端から突出先端とは逆の基端側へ行くにしたがって後端フランジ保持片73h上面から下方への離間距離が増大するテーパ状に形成されている。突出先端部の後端フランジ保持片73h上面とは逆の下側の面は、突出先端部先端から基端側へ行くにしたがって下側に位置するように後端フランジ保持片73h上面に対して傾斜する傾斜面73kとなっている。
【0063】
図2に示す後端フランジ保持片73hの傾斜面73kは、加圧装置73の駆動部73aの駆動によって押し子押圧体73bを下降させることでシリンジ20の押し子22の後端フランジ22bの外周に当接される。後端フランジ保持片73hは、傾斜面73kが押し子22の後端フランジ22b外周に当接された後の押し子押圧体73bの下降継続によって後端フランジ22bに押圧されることで押圧片部73dの側壁部73f外面側へ押し込まれる。後端フランジ保持片73hは、押し子押圧体73bの下降継続によって押圧片部73dの側壁部73f外面側への押し込みを伴いながら傾斜面73kを押し子22の後端フランジ22b外周に摺動させつつ下降する。
【0064】
後端フランジ保持片73hは、押圧部材73nの押圧片部73dの側壁部73f外面側への押し込みによって押圧ヘッド部73Hのスプリング73mを弾性変形させる。
後端フランジ保持片73hは、押し子押圧体73bの下降継続によって、押し子収容領域73s側の先端がシリンジ20の押し子22の後端フランジ22bの下側へ到達した所で、スプリング73mの弾性付勢力によって押圧片部73dの側壁部73fに対して押し子収容領域73sへの突出寸法を増大するように移動される。後端フランジ保持片73hの押し子収容領域73s側の先端は、押圧ヘッド部73Hの圧力センサ73gがシリンジ20の押し子22後端に当接されるとき(当接と同時あるいは当接直前)にシリンジ20の押し子22の後端フランジ22bの下側へ到達する。
【0065】
後端フランジ保持片73hは、押し子収容領域73s側の先端がシリンジ20の押し子22の後端フランジ22bの下側へ到達し、スプリング73mの弾性付勢力によって押圧片部73dの側壁部73fに対して押し子収容領域73sへの突出寸法を増大するように移動されることで、押圧片部73dの押圧主片73e及び圧力センサ73gとの間にシリンジ20の押し子22の後端フランジ22bを保持した状態となる。
【0066】
タンク支持具72に支持されたシリンジ20の外筒部材21は、タンク支持具72による支持を解除することで、送液機70から送液機70前面側へ取り出せる。
押圧片部73dの押圧主片73e及び圧力センサ73gと後端フランジ保持片73hとの間に後端フランジ22bが保持された押し子22の後端部は、ユーザーが手指で引っ張り操作することで押圧ヘッド部73Hから送液機70前面側へ抜き出せる。
【0067】
外筒部材21がタンク支持具72に支持された状態で押し子22後端に押し子押圧体73bの圧力センサ73gが当接されたシリンジ20は、タンク支持具72による外筒部材21の支持を解除して外筒部材21を送液機70から送液機70前面側へ取り出すとともに、押し子22後端部を押圧ヘッド部73Hから送液機70前面側へ抜き出すことで、送液機70から取り外すことができる。
【0068】
なお、
図1に示す分離装置10の各加圧装置及び各シリンジの構成、加圧装置とシリンジの押し子との関係は
図2と同様である。
【0069】
加圧装置73は、駆動部73aの駆動によって下降させた押し子押圧体73bの押圧ヘッド部73Hの圧力センサ73gによって、タンク支持具72を利用して送液機70前面側に取り付けられたシリンジの押し子の後端をその上方から押圧して押し子をシリンジの外筒部材に押し込む。
押し子押圧体73bの押圧片部73dは、送液機70前面側に取り付けられたシリンジの押し子の上方から下降させることで、左右の側壁部73f間にシリンジの押し子の後端部を収容して押圧ヘッド部73Hの圧力センサ73gを押し子後端に当接させ、圧力センサ73gによって押し子を下方へ押圧してシリンジの外筒部材に押し込む。
【0070】
加圧装置73は、シリンジの押し子を押し子押圧体73bによって押圧して外筒部材に押し込むことで外筒部材内の液体を外筒部材先端の先端筒部から外筒部材外へ押し出すことができる。
第1~第3の加圧装置73A~73Cは、それぞれ、タンク支持具に支持されたシリンジの押し子をその後側から押圧して押し子をシリンジの外筒部材に押し込むシリンジポンプの役割を果たす。
【0071】
図1に示す送液機70の第1~第3の加圧装置73A~73Cの駆動部73aは、押し子押圧体73bを送液機70主機体に対して上下方向に移動可能、かつ押し子押圧体73bの送液機70主機体に対する下降方向の移動速度を制御可能なものを好適に採用できる。
第1~第3の加圧装置73A~73Cの駆動部73aは、例えば、ボールねじ機構を利用したもの、ラックピニオン機構を利用したもの等、種々構成を採用できる。
【0072】
図1に示す分離装置10において、サンプル用シリンジ20の外筒部材21はサンプルを蓄えるためのサンプル貯留タンク、バッファー用シリンジ30の外筒部材31はバッファーを蓄えるためのバッファー貯留タンク、プライミング用シリンジ40の外筒部材41はプライミング用バッファーを蓄えるためのプライミング用バッファー貯留タンク、の役割を果たす。
以下、サンプル用シリンジ20の外筒部材21をサンプル貯留タンク、バッファー用シリンジ30の外筒部材31をバッファー貯留タンク、プライミング用シリンジ40の外筒部材41をプライミング用バッファー貯留タンク、とも言う。
【0073】
なお、プライミング用バッファーは、プライミング工程にて分離デバイス50のサンプル導入口54(
図3参照)から内部流路53に導入するバッファーを指す。
プライミング用バッファーは、対象分離工程では分離デバイス50の内部流路53に導入しない。
プライミング用バッファーは、サンプル中の細胞やタンパク質等に鑑みてバッファーとして使用可能な公知のものを採用可能であり、例えばバッファー貯留タンク31に貯留されるバッファーと同じ物であっても良い。
【0074】
図1に示すように、第1のタンク支持具72Aはサンプル貯留タンク21を脱着可能に保持する。
第2のタンク支持具72Bはバッファー貯留タンク31を脱着可能に保持する。
第2のタンク支持具72Cはプライミング用バッファー貯留タンク41を脱着可能に保持する。
【0075】
図2は、分離装置10のサンプル用シリンジ20付近を拡大して示した拡大正面図である。
図2に示すサンプル用シリンジ20のサンプル貯留タンク21は、円筒状の主筒部21aと、主筒部21aの先端部の内周全周に突出形成されたリング板状の先端壁部21bと、先端壁部21bの内周から主筒部21a先端側へ突出する筒状の先端筒部21cと、主筒部21aの先端とは逆の後端部の外周から主筒部21a軸線に垂直に突出する板状のフランジ部21dとを有する。
先端筒部21cは主筒部21aに比べて内径及び外径が径小の筒状(円筒状)に形成されている。
【0076】
なお、
図1、
図2に例示したサンプル貯留タンク21のフランジ部21dは、主筒部21a後端部の外周全周に周設されたリング板状に形成されている。
但し、サンプル貯留タンク21のフランジ部21dはリング板状のものに限定されず、サンプル貯留タンク21の主筒部21a後端部のその内側領域を介して両側の部分のみから主筒部21a軸線に垂直に突出する舌片状の板状片であっても良い。
【0077】
図2に例示した第1のタンク支持具72Aは、サンプル貯留タンク21の後端部のフランジ部21dが挿入されるフランジ挿入溝72bが形成された一対の支持部材72aによって構成されている。
各支持部材72aのフランジ挿入溝72bは、送液機70横方向における一対の支持部材72aの互いに対向する面に送液機70前後方向に延在形成されている。各フランジ挿入溝72bの延在方向片端は支持部材72aの送液機70前側の面(前面)に開口されている。
【0078】
フランジ挿入溝72bの溝幅は、サンプル貯留タンク21の板状のフランジ部21dの厚みに揃えられている。支持部材72aはフランジ挿入溝72bに挿入されたサンプル貯留タンク21のフランジ部21dを保持できる。
一対の支持部材72aのフランジ挿入溝72bの送液機70上下方向における位置は互いに同じに揃えられている。
【0079】
図2に示すように、第1のタンク支持具72Aを構成する一対の支持部材72a間には、サンプル貯留タンク21の主筒部21aが挿入される。サンプル貯留タンク21の主筒部21aは、第1のタンク支持具72Aを構成する一対の支持部材72a間に送液機70前側から挿脱可能である。
第1のタンク支持具72Aを構成する一対の支持部材72a間の離間距離は、サンプル貯留タンク21の主筒部21a外径と同じか主筒部21a外径に比べて僅かに大きく確保される。
【0080】
図2に示すように、サンプル貯留タンク21は、送液機70前側から、フランジ部21dを一対の支持部材72aのそれぞれのフランジ挿入溝72bに挿入し、主筒部21aを第1のタンク支持具72Aの一対の支持部材72a間に挿入することで、一対の支持部材72aによって支持される。
サンプル貯留タンク21は、一対の支持部材72aによって、主筒部21a軸線が上下方向に延在する向きで支持される。
【0081】
また、サンプル貯留タンク21は、第1のタンク支持具72Aによって、先端筒部21c先端が下端、先端とは逆の後端が上端の向きで支持させる。
サンプル貯留タンク21は、フランジ部21dを第1のタンク支持具72Aの一対の支持部材72aのフランジ挿入溝72bに挿入することで、第1のタンク支持具72Aによって送液機70に対して上下方向の所定位置に支持される。
【0082】
サンプル貯留タンク21のフランジ部21dは、第1のタンク支持具72Aの一対の支持部材72aのフランジ挿入溝72bに対して送液機70前側から挿脱可能である。
サンプル用シリンジ20は、サンプル貯留タンク21を第1のタンク支持具72Aに対して脱着することで送液機70に対して脱着できる。
【0083】
第1のタンク支持具72Aは、
図2に例示した構成に限定されない。
第1のタンク支持具72Aは、サンプル貯留タンク21をその先端が下端、後端が上端となり、主筒部21aの軸線が上下方向に延在する向きで、送液機70主機体に対する上下方向の所定位置に脱着可能に保持(支持)できる種々構成のものを採用できる。
【0084】
バッファー用シリンジ30及びプライミング用シリンジ40は、サンプル用シリンジ20と同様の構造となっている。
第2のタンク支持具72B及び第3のタンク支持具72Cは、第1のタンク支持具72Aとして使用可能な構造のものを採用できる。
【0085】
図1に示すように、サンプル貯留タンク21とプライミング用バッファー貯留タンク41とは第1の送液配管61を介して分離デバイス50のサンプル導入口54と接続されている。
バッファー貯留タンク31は第2の送液配管62を介して分離デバイス50のバッファー導入口55と接続されている。
【0086】
図1に示す分離装置10の送液配管(第1の送液配管61及び第2の送液配管62)は合成樹脂製の柔軟なチューブである。
第1の送液配管61及び第2の送液配管62を形成する合成樹脂としては、例えば、ポリ塩化ビニル、ポリブタジエン、ポリエチレン、ポリウレタン、シリコーン、ナイロン等を採用できる。
【0087】
第1の送液配管61は、サンプル貯留タンク21と分離デバイス50のサンプル導入口54とを接続する主配管61aと、主配管61aの途中部から分岐されてプライミング用バッファー貯留タンク41と主配管61aの途中部とを接続する分岐配管61bとを有する。
第1の送液配管61は主配管61aの両端、分岐配管61bの先端、の3つのポートを有する。
【0088】
主配管61aはサンプル貯留タンク21のサンプル(分離対象物を含む液体)を分離デバイス50のサンプル導入口54へ導く第1の流路を形成している。
分岐配管61bはプライミング用バッファー貯留タンク41内の液体(プライミング用バッファー)を主配管61aの内側領域である第1の流路に導く流路(第3の流路)を形成している。分岐配管61bの内側領域である第3の流路は、主配管61aの途中部において主配管61a内側の第1の流路と連通されている。
【0089】
第1の送液配管61の分岐配管61bと主配管61aとの境界部(以下、配管分岐部、とも言う)付近において、分岐配管61bは、主配管61aにおける配管分岐部61cから上流側(サンプル貯留タンク21側)の部分に対して鋭角の傾斜角度で傾斜して延在している。これにより、例えば、サンプル貯留タンク21のサンプルとプライミング用バッファー貯留タンク41内のプライミング用バッファーとを第1の送液配管61に同時に流したときに、サンプルとプライミング用バッファーとが第1の送液配管61の配管分岐部61cにてそれぞれ乱れることなく円滑に合流できる。
【0090】
図1に示すように、分離装置10の分離デバイス50は板状に形成され、その片面を送液機70主機体の台部上面74aに当接させて台部上面74a上に載置されている。分離装置10の各シリンジのタンク(サンプル貯留タンク21、バッファー貯留タンク31、プライミング用バッファー貯留タンク41)は、それぞれ、タンク支持具72によって送液機70主機体の台部74からその上方に離間した所に支持されている。
【0091】
第1の送液配管61の主配管61aは、サンプル貯留タンク21側の上流端から分離デバイス50側の下流端へ行くにしたがって下方に位置するように延在配置されている。第1の送液配管61の分岐配管61bは、プライミング用バッファー貯留タンク41側の上流端から第1の送液配管61の配管分岐部61c側の下流端へ行くにしたがって下方に位置するように延在配置されている。
【0092】
第2の送液配管62の内側領域は、バッファー貯留タンク31内のバッファー(液体)を分離デバイス50のバッファー導入口55に導く流路(第2の流路)を形成する。
第2の送液配管62は、バッファー貯留タンク31側の上流端から分離デバイス50側の下流端へ行くにしたがって下方に位置するように延在配置されている。
【0093】
図1に例示した分離装置10の3つのタンク支持具72は、送液機70主機体の上部構造部75の前面側の横方向に互いに離間した3箇所に配置されている。
サンプル用シリンジ20、バッファー用シリンジ30、プライミング用シリンジ40は、それぞれタンク支持具72に支持されて、送液機70主機体の上部構造部75の前面側に、バッファー用シリンジ30とサンプル用シリンジ20との間にプライミング用シリンジ40が位置するように横並びに配置されている。
【0094】
なお、送液機70主機体の上部構造部75の前面側におけるサンプル用シリンジ20、バッファー用シリンジ30、プライミング用シリンジ40の配置は適宜変更可能である。
例えば、
図1に示す送液機70主機体の上部構造部75の前面側におけるサンプル用シリンジ20とプライミング用シリンジ40の位置を逆にして、バッファー用シリンジ30とプライミング用シリンジ40との間にサンプル用シリンジ20が位置するように横並びに配置しても良い。
また、サンプル用シリンジ20、バッファー用シリンジ30、プライミング用シリンジ40は、横方向及び上下方向の両方で互いに位置をずらして配置しても良い。
【0095】
図3は、送液機70主機体の台部74の上面74a付近及び台部上面74aに載置された分離デバイス50を示す断面図である。
図3に示すように、分離デバイス50は2つの板状部材(ベース板部材51及び蓋板部材52)が互いに重ね合わせるようにして接合固定された概略構造となっている。
【0096】
図4は、
図3の分離デバイス50の蓋板部材52の内部流路付近の構造をベース板部材51を透視して示す図である。
なお、
図3、
図4は分離デバイス50の構造の一例を示すものであり、分離デバイス50の具体的構造は
図3、
図4に例示されたものに限定されない。
【0097】
図3、
図4に示すように、分離デバイス50は内部流路53を有する。
図4に示すように、分離デバイス50の内部流路53は板状の分離デバイス50の内部に分離デバイス50の面方向に沿う細長に延在形成されている。
分離デバイス50はそれぞれ細長板状のベース板部材51及び蓋板部材52が重ね合わせ状態で接合一体化されて細長板状に形成されている。ベース板部材51及び蓋板部材52は互いの長手方向を揃えて接合されている。分離デバイス50の長手方向はベース板部材51及び蓋板部材52の長手方向と一致する。
図4に例示した分離デバイス50の内部流路53は細長板状の分離デバイス50の長手方向に沿って延在形成されている。
【0098】
分離デバイス50の蓋板部材52は、その片面である接合側主面を平板状のベース板部材51の片面(接合側主面)に接合してベース板部材51に固定一体化されている。 蓋板部材52は、接着剤を用いた接着固定等の公知の手法によってベース板部材51に接合固定されている。
分離デバイス50の内部流路53は蓋板部材52の片面に形成された溝(内部流路形成溝)によって確保されている。
【0099】
図3、
図4に示すように、内部流路53を形成する内部流路形成溝はその全体が蓋板部材52側面から蓋板部材52の面方向中央部側に離間した所に位置する。
内部流路形成溝は蓋板部材52にその接合側主面から窪んで形成されている。蓋板部材52の接合側主面は内部流路形成溝の外周全周にわたって存在し内部流路形成溝を囲繞している。
【0100】
蓋板部材52の形成材料としては、ガラス、ポリジメチルシロキサン等のシリコーン、プラスチック等を用いることができる。
ベース板部材51の形成材料としては、平坦な接合側主面の確保及び強度確保の点で、ガラス、プラスチック等を使用することが好ましい。
【0101】
分離デバイス50のサンプルと接触する部分及びバッファーと接触する部分は分離対象物を吸着しない材料で形成されていることが好ましい。
分離デバイス50は、サンプルと接触する部分及びバッファーと接触する部分が、生体物質の付着を防ぐMPC(2-メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン)等によりコーティングされている構成も好適に採用できる。
【0102】
分離デバイス50には、内部流路53の上流部と連通するサンプル導入口54及びバッファー導入口55と、内部流路53の下流部と連通する対象回収口56及び非対象回収口57とが形成されている。
図3に示すように、サンプル導入口54、バッファー導入口55、対象回収口56、非対象回収口57は、蓋板部材52の接合側主面とは逆側の外側主面から蓋板部材52を貫通して蓋板部材52の内部流路形成溝の溝底に開口する孔(貫通孔)である。
【0103】
図3、
図4に示すように、分離デバイス50は、内部流路53上流部内にサンプル導入口54の内部流路53側の開口部を取り囲むように形成された囲み壁58と、内部流路53の上流部と下流部との間に確保された分離領域59とを有する。
【0104】
図3、
図4に例示した分離デバイス50の囲み壁58は、蓋板部材52の内部流路形成溝の内部流路53上流部に対応する部分の溝底におけるサンプル導入口54の開口部の周囲からベース板部材51に向かって突出形成されている。
囲み壁58の突端は囲み壁58のその内周に沿う全周にわたってベース板部材51に当接されている。
【0105】
囲み壁58には、サンプル導入口54の内部流路53側の開口部から内部流路53側に離間した所に開口するサンプル出口58aが確保されている。
囲み壁58内側の領域を、以下、サンプル導入領域58bとも言う。
囲み壁58はその全体が内部流路53の上流部内に位置する。
サンプル導入領域58bはサンプル出口58aを介して囲み壁58外側の内部流路53と連通されている。
【0106】
図3に示すように、囲み壁58内側のサンプル導入領域58bには、分離デバイス50のサンプル導入口54に接続された第1の送液配管61の主配管61aからサンプルを導入できる。
囲み壁58内側のサンプル導入領域58bに導入されたサンプルは囲み壁58のサンプル出口58aから内部流路53に内部流路53下流側へ向かって流出する。
【0107】
分離領域59は、決定論的横置換法のDLD理論に基づく複数のピラー59a(
図5、
図6参照)を有するマイクロ流路構造となっている。
図3、
図4に例示した分離デバイス50のピラー59aは、内部流路53の上流部と下流部との間において、蓋板部材52の内部流路形成溝の溝底からベース板部材51に向かって突出形成されている。
【0108】
図3、
図4に例示した分離デバイス50の蓋板部材52は囲み壁58及びピラー59aを含む。
なお、分離デバイス50は、例えば、囲み壁58及びピラー59aがベース板部材51に突出形成された突部である構成も採用可能である。
【0109】
図4に示すように、分離デバイス50の内部流路53は、上流部と、上流部から延在する流路(中流部)である分離領域59とで構成される主流路を有する。
内部流路53の延在方向は、細長板状の分離デバイス50の長手方向に沿って延在する主流路の長手方向を指す。
【0110】
図4に示すように、分離デバイス50の内部流路53の下流部は、分離領域59の下流端から延在する二つの回収流路(第1の回収流路53a及び第2の回収流路53b)によって構成されている。
対象回収口56は第1の回収流路53aに連通して形成されている。非対象回収口57は第2の回収流路53bに連通させて形成されている。
【0111】
図3、
図4に示すように、分離デバイス50のバッファー導入口55は囲み壁58よりも内部流路53上流側に位置する。
内部流路53には、バッファー導入口55に接続された第2の送液配管62からバッファーを導入できる。
【0112】
分離デバイス50について、ベース板部材51面方向において内部流路53延在方向に垂直の方向を、以下、デバイス幅方向、とも言う。
囲み壁58は、内部流路53のデバイス幅方向両側の内壁面から離間させて設けられている。内部流路53のデバイス幅方向両側の内壁面と囲み壁58との間は、バッファー導入口55から内部流路53に導入されたバッファーが円滑に流動可能な流路断面積が確保された流路53c(以下、囲み壁外側流路、とも言う)の役割を果たす。
バッファー導入口55から内部流路53に導入されたバッファーは、囲み壁58を介してデバイス幅方向両側の囲み壁外側流路53cを通って内部流路53をその下流部へ向かって流れる。
【0113】
図5は、囲み壁58のサンプル出口58a付近の部分平断面図である。
図5に示すように、サンプル出口58aから排出されたサンプル1と囲み壁外側流路53cを通過したバッファー2とはサンプル出口58aから内部流路53下流側にて合流して分離領域59へ流入する。但し、サンプル1及びバッファー2は、それぞれ層流を形成したまま分離領域59を下流側へ流れる。サンプル出口58aから排出されたサンプル1は、デバイス幅方向両側のバッファー2の層流に挟み込まれた状態で分離領域59を流れる。
【0114】
図6は、分離デバイス10の分離領域59を示す部分平面図である。
図5、
図6に例示するように、分離領域59は、サンプル1中の粒子を大きさによって分離するピラー59aが多数分散配置された構造となっている。分離領域59へ流入したサンプル中の粒子のうち、一定の大きさ以上の粒子3A(分離対象物。以下、分離対象粒子、とも言う)は、ピラー59aとの衝突によって分離領域59を流れる液体の流れ方向に対して直進せずに斜めに移動する。一定の大きさより小さい粒子3B(以下、非分離対象粒子、とも言う)は、分離領域59を流れる液体の流れ方向に沿って直進する。
【0115】
図7は、DLD法(Deterministic Lateral Displacement)を説明する模式図である。
図7に示すように、分離領域59を流れる液体の流れ方向に対してピラー59aとの衝突によって斜めに移動する粒子の臨界直径(上述した一定の大きさ)をDc、流体の流れ方向と垂直方向のピラー間隔をg、ピラー59aのずれ角度をθ、ε=tanθと定義すると、
Dc=1.4gε0.48
となることが知られている。
ここで、上述の一定の大きさとは、臨界直径Dcに相当する。
ただし、0.06<ε<0.1であることが好ましい。
【0116】
臨界直径Dcが所望の大きさとなるように、ピラー間隔g、ピラー59aのずれ角度θでピラー59aを配置した分離領域59を用いることにより、直径が臨界直径より大きい分離対象粒子3Aと、直径が臨界直径より小さい非分離対象粒子3Bとを分離することができる。
【0117】
図4に示す内部流路53において、サンプル1及びバッファー2が分離領域59を流れることで、サンプル1中の臨界直径Dcより大きい粒子(分離対象粒子)は分離領域59を流れる液体の流れ方向に対して斜めの方向に移動して、液体とともに第1の回収流路53a(
図1参照)へ流入する。臨界直径Dcより小さい粒子(非分離対象粒子)は分離領域59を流れる液体の流れ方向に沿って直進して、液体とともに第2の回収流路53b(
図1参照)へ流入する。
【0118】
図1に示すように、分離装置10の送液機70は、主機体の台部74から前側に突出された容器載置台76と、容器載置台76上に載置された回収容器81及び排液容器82を覆う容器カバー77とを有する。
【0119】
排液容器82には、対象分離工程にて分離デバイス50の非対象回収口57から排出される液体の貯留に使用する主排液容器82aと、対象分離工程の開始よりも前に分離デバイス50の対象回収口56及び非対象回収口57の両方から排出される液体の貯留に使用する副排液容器82bとがある。
図1に例示した送液機1の容器載置台76には、主排液容器82a及び副排液容器82bの両方が載置されている。
【0120】
図1に示すように、分離装置10の組み立てが完了した時点で、分離デバイス50の対象回収口56に接続された第1の排液配管63の分離デバイス50とは逆側の下流端、及び分離デバイス50の非対象回収口57に接続された第2の排液配管64の分離デバイス50とは逆側の下流端は両方とも副排液容器82bに挿入されている。
プライミング工程の後、対象分離工程を行なう前に、第1の排液配管63の下流端は回収容器81に挿し替え、第2の排液配管64の下流端は主排液容器82aに挿し替える。
【0121】
図4に示す分離デバイス50の第1の回収流路53a内の分離対象粒子は、送液機70の駆動による分離デバイス50の内部流路53へのサンプル1及びバッファー2の導入(供給)が継続されることで、第1の回収流路53a内の液体とともに第1の回収流路53aから対象回収口56に接続されている第1の排液配管63(
図1参照)へ押し出され、第1の排液配管63を介して回収容器81に流入する。分離対象粒子は回収容器81に回収される。第2の回収流路53b内の非分離対象粒子は、第2の回収流路53b内の液体とともに第2の回収流路53bから非対象回収口57に接続されている第2の排液配管64(
図1参照)へ押し出されて排液容器82に流入する。非分離対象粒子は排液容器82に回収される。
【0122】
回収容器81及び排液容器82は、容器載置台76に設置された圧力センサ上に載置される。圧力センサは回収容器81及び排液容器82の重量を計測する。
操作端末4(
図1参照)には、圧力センサが計測した回収容器81及び排液容器82の重量データが伝送される。操作端末4は、圧力センサから受信した重量データの演算処理にて回収容器81及び排液容器82のそれぞれの貯留液量を割り出して表示モニタ4aに画面表示できる。また、操作端末4は、圧力センサによって計測された重量データの変化に対応する回収容器81及び排液容器82のそれぞれの貯留液量の推移を表示モニタ4aにグラフ等の形で画面表示できる。
操作端末4は、容器載置台76の圧力センサによる計測データから割り出した回収容器81及び排液容器82の貯留液量のデータを記憶部に取り出し可能に格納でき、表示指令の入力によってグラフ等の種々形態で表示モニタ4aに表示させることができる。
【0123】
図1に示す操作端末4は、対象分離工程における回収容器81及び主排液容器82aのそれぞれの貯留液量の合計を算出して表示モニタ4aに表示できる。
対象分離工程では、第1の加圧装置73A及び第2の加圧装置73Bの駆動によってサンプル貯留タンク21内のサンプル及びバッファー貯留タンク31内のバッファーが分離デバイス50の内部流路53に送液される。操作端末4は、送液機70から受信する第1、第2の加圧装置73A、73Bの動作データと、サンプル貯留タンク21及びバッファー貯留タンク31の寸法(内寸)データから、対象分離工程におけるサンプル貯留タンク21及びバッファー貯留タンク31のそれぞれからの送液量の合計を算出して表示モニタ4aに表示できる。
【0124】
対象分離工程では、第1の加圧装置73Aの押し子押圧体73bがサンプル用シリンジ20の押し子を押圧しながら移動(下降)してサンプル貯留タンク21内のサンプルを分離デバイス50の内部流路53へ送液するとともに、第2の加圧装置73Bの押し子押圧体73bがバッファー用シリンジ30の押し子を押圧しながら移動(下降)してバッファー貯留タンク31内のバッファーを分離デバイス50の内部流路53へ送液する。
【0125】
操作端末4は送液機70から送液機70の各加圧装置73の動作データを受信する。
操作端末4が送液機70から受信する各加圧装置73の動作データには、加圧装置73の駆動による押し子押圧体73bの移動距離、あるいは各押し子押圧体73bの移動距離の算出を可能とするデータが含まれている。
【0126】
送液機70は、加圧装置73の押し子押圧体73bに設けられた圧力センサ73g(
図2参照)によって加圧装置73がシリンジの押し子を押圧する押圧力を計測する。
送液機70は、加圧装置73の圧力センサ73gに計測される押圧力が予め設定した検知基準値以上になることで、加圧装置73の押し子押圧体73bによるシリンジの押し子の押圧開始を検知できる。
検知基準値を、以下、押圧開始検知基準値、とも言う。
【0127】
図1のように組み立てた分離装置10において、送液機70は、例えば加圧装置73がシリンジから上方に離間した所から下降させた押し子押圧体73bによるシリンジの押し子の押圧開始時に、押し子押圧体73bの圧力センサ73gに計測される押圧力が押圧開始検知基準値以上になることで、加圧装置73によるシリンジの押し子の押圧開始を検知できる。
【0128】
図1のように送液機70に取り付けたシリンジは、振動等の外力が与えられておらず、押し子がタンクへ押し込まれなければ内部の液体の先端筒部からの押し出しが生じない。
図1のように組み立てられた分離装置10のシリンジについて、タンク(具体的には後述の貯液部)内の液体のタンクからの押し出しに要する押し子のタンクに対する押圧力を、以下、要求押圧力、とも言う。
送液機10の複数の加圧装置73は、それぞれ押圧対象のシリンジの要求押圧力に比べて格段に大きい押圧力(シリンジの押し子を押圧する押圧力)を発生することができる。
【0129】
シリンジの要求押圧力に与える影響が大きいファクターとしては、タンク内周面と押し子との間の摩擦、タンク主筒部と先端筒部との内径差、タンク内の液体を押し子で押圧して押し出す際のタンクの先端筒部内の流路抵抗(流体抵抗)、シリンジ内(タンク内)に貯留する液体の粘度を挙げることができる。
シリンジの要求押圧力は、より詳細には、シリンジのタンク内側における押し子先端からタンク先端側の全体に液体が充填され、かつシリンジのタンクの先端筒部に送液配管が接続されておらず、先端筒部の先端が開放された状態での、タンクからの液体の押し出しに要する押し子のタンクに対する押圧力、を指す。
【0130】
送液機70に取り付けるシリンジは、加圧装置73毎に要求押圧力が一定の範囲内にあるものを採用する。
【0131】
押圧開始検知基準値は、送液機10の加圧装置73毎に送液機70(具体的にはその制御回路)に設定する。押圧開始検知基準値は、加圧装置73毎に対応するシリンジの要求押圧力の範囲よりも小さい値に設定する。
加圧装置73によるシリンジの押し子の押圧開始時には、シリンジの押し子は、加圧装置73の押し子押圧体73bによってシリンジの要求押圧力相当の押圧力で押圧される。したがって送液機70は、押圧開始検知基準値を加圧装置73毎に対応するシリンジの要求押圧力の範囲よりも小さい値に設定することで、加圧装置73によるシリンジの押し子の押圧開始を加圧装置73毎に確実に検知できる。
【0132】
図1の分離装置10は、第1の送液配管61にプライミング用バッファーが充填され、第2の送液配管62にバッファーが充填された状態に組み立てる。
なお、分離装置10の各排液容器82は排液配管からの液体流入に伴い内部の空気が容器外へ押し出されていく構成であり、排液配管の下流端からの液体排出を抑制しない。
加圧装置73は、タンクに接続されている送液配管の流路抵抗に鑑みて、加圧装置73がシリンジの押し子をシリンジの要求押圧力に相当する押圧力よりも若干大きい押圧力で押圧してシリンジ内の液体を送液する。したがって、送液機70は、加圧装置73によるシリンジの押し子の押圧開始(タンクからの送液開始)を加圧装置73毎に確実に検知できる。
【0133】
図1に示す送液機70は、より具体的には、加圧装置73の押し子押圧体73bの圧力センサ73gにて押し子押圧体73bがシリンジの押し子を押圧する押圧力が計測されていない状態から押圧開始検知基準値以上の押圧力を計測した状態に遷移することで、加圧装置73によるシリンジの押し子の押圧開始を検知し、送液開始検知信号を操作端末4へ伝送する。
【0134】
図1に示す操作端末4は、送液機70から受信した加圧装置73の動作データ及び送液開始検知信号の両方、あるいは動作データ及び送液開始検知信号のうち動作データのみを利用して、シリンジのタンクからの送液開始検知後の加圧装置73の押し子押圧体73bの移動距離(下降方向の移動距離。以下、送液開始後移動距離、とも言う)を算出する。
【0135】
送液機70に取り付けるシリンジの押し子後端の送液機70上下方向における位置を、以下、押し子後端位置、とも言う。
動作データ及び送液開始検知信号のうち加圧装置73の動作データのみを利用して送液開始後移動距離を算出する構成では、操作端末4に押し子後端位置を予め設定しておく。操作端末4は、シリンジ上方から下降させた押し子押圧体73bの圧力センサ73g(具体的には圧力センサ73g下端の当接面)が操作端末4に予め設定された押し子後端位置に到達することで、シリンジのタンクからの送液開始を検知する。
また、操作端末4は、押し子押圧体73bの下降による圧力センサ73g下端(具体的には圧力センサ73gの当接面)の操作端末4に設定された押し子後端位置から下方への移動距離(送液開始後移動距離)を送液機70から受信した加圧装置73の動作データを利用して算出する。
【0136】
操作端末4への押し子後端位置の設定は、例えば、押し子後端位置自体、あるいは押し子後端位置を割り出し可能なデータ(例えば、シリンジサイズ及び貯留液量)の操作端末4への入力によって行なう。送液機70に取り付けるシリンジのサイズ、貯留液量に応じた押し子後端位置が1または複数に限定されている場合は、押し子後端位置は、操作端末4に予め設定された1または複数の固定値であっても良い。操作端末4は、ユーザーの操作によって、予め設定された複数の押し子後端位置の固定値から1つを選択できる構成も採用可能である。
【0137】
図1に示す分離装置10の各シリンジのタンクの主筒部はそれぞれ断面寸法(内径)一定で延在する円筒状である。
操作端末4は、加圧装置73の押し子押圧体73bの送液開始後移動距離と、タンクの主筒部の内径とから、シリンジのタンクからの液体の送液量を算出する。
なお、シリンジのタンクの主筒部の内径は、ユーザー等が予め操作端末4の操作によって操作端末4に入力したデータを用いる。
【0138】
操作端末4は、第1、第2の加圧装置73A、73Bの押し子押圧体73bの送液開始後移動距離と、サンプル貯留タンク21及びバッファー貯留タンク31の主筒部の内径とから、対象分離工程におけるサンプル貯留タンク21及びバッファー貯留タンク31のそれぞれからの送液量の合計を算出し表示モニタ4aに表示する。
【0139】
分離装置10のユーザーは、表示モニタ4aに表示されるデータから、対象分離工程における回収容器81及び主排液容器82aのそれぞれの貯留液量の合計が、対象分離工程におけるサンプル貯留タンク21及びバッファー貯留タンク31のそれぞれからの送液量の合計と一致しているかどうかを把握できる。
【0140】
操作端末4は、対象分離工程における回収容器81及び主排液容器82aのそれぞれの貯留液量の合計と、対象分離工程におけるサンプル貯留タンク21及びバッファー貯留タンク31のそれぞれからの送液量の合計との差が予め設定した許容範囲を超えたときに、エラー(送液異常)の発生を検知する。送液異常の発生を検知した操作端末4は、送液異常の発生をユーザーに報知するために、表示モニタ4aへのアラーム表示、ブザーの鳴動等を行なう構成も採用可能である。
なお、操作端末4は、送液異常の発生検知、及び、送液異常の発生検知時の表示モニタ4aへのアラーム表示、ブザーの鳴動等を行なわない構成も採用可能である。
【0141】
図1に示す送液機70の容器カバー77は、送液機70主機体の台部74の前端面74b(以下、台部前端面、とも言う)に対して開閉可能である。容器カバー77は、送液機70主機体の台部74の前端面74bに閉じ合わせることで、容器載置台76上に載置された回収容器81及び排液容器82を覆うことができる。
分離装置10は、容器カバー77を送液機70主機体の台部前端面74bに対して開くことで、容器載置台76に対する回収容器81及び排液容器82の載置、取り出しが可能となる。
【0142】
送液機70は送液機70主機体の台部前端面74bに対する容器カバー77の開閉を検知する開閉センサを有する。
分離装置10は、開閉センサが台部前端面74bに対する容器カバー77の開放を検知したときに、操作端末4の表示モニタ4aへのアラーム表示、ブザーの鳴動等によって容器カバー77の開放をユーザーに報知することができる。
【0143】
図1では、送液機70主機体の台部74の横方向端部にヒンジを介して回転可能に取り付けられた容器カバー77がヒンジを中心とする回転によって台部前端面74bに対して開閉する構成を例示している。
但し、容器カバー77は、例えば、送液機70主機体の台部74に対する脱着によって台部前端面74bに対して開閉する構成、台部74に対する横方向のスライド移動によって台部前端面74bに対して開閉する構成、等も採用可能である。
【0144】
図3に示すように、送液機70主機体の筐体71における台部上面74aを形成する部分(台部上板71b)には窓孔(観察用窓孔71c)が形成されている。
筐体71の台部上板71bには観察用窓孔71bを塞ぐ透明板74cが取り付けられている。送液機70主機体は透明板74cを含む。
台部74内には、透明板74c上に載置された分離デバイス50の内部流路53内の状態を分離デバイス50外側から観察するためのマイクロスコープ78が組み込まれている。
【0145】
図3において、送液機70主機体の台部上面74aは筐体71の一部と透明板74cとによって形成されている。
透明板74cの形成材料は、例えば、ガラス、アクリル樹脂等の透明なプラスチックなどを採用できる。
【0146】
マイクロスコープ78によって分離デバイス50の内部流路53内の状態観察を行なう場合、分離デバイス50は、例えば、ガラス、アクリル樹脂等の透明なプラスチックなどによって形成された透明のベース板部材51を採用し、ベース板部材51を送液機70主機体の台部74の透明板74c上に重ね合わせるように載置する。
これにより、送液機70のマイクロスコープ78によって、送液機70主機体の台部74の透明板74c及び分離デバイス50のベース板部材51を介して分離デバイス50の内部流路53内の状態観察を行なうことができる。
【0147】
分離装置10は、マイクロスコープ78が有する撮像素子の撮像画像を操作端末4(
図1参照)の表示モニタ4aに表示させることができる。ユーザーは、操作端末4の表示モニタ4a上にて分離デバイス50の内部流路53内の状態を観察できる。マイクロスコープ78の撮像画像は、動画、静止画のいずれであっても良い。また、マイクロスコープ78の撮像画像は、操作端末4(
図1参照)の表示モニタ4aに分離工程の途中で表示させても良く、分離工程の終了後に表示させても良い。
【0148】
例えば、サンプルが血液の場合は、何等かの血液成分の凝集または凝固によって内部流路53内に塊状物を形成する可能性がある。内部流路53内に形成された塊状物のサイズによっては、分離対象物の分離精度に影響を与える可能性がある。血液の凝集または凝固による内部流路53内の塊状物の形成は、内部流路53内壁面の形成材料の選択、分離デバイス50の内部流路53に流す液体の流量調整等によって発生を抑制することができる。
【0149】
分離装置10は、マイクロスコープ78の撮像画像を利用して、血液の凝集または凝固による内部流路53内の塊状物の形成をユーザーが目視監視できる。塊状物の形成が把握された場合はエラーとして扱う。
また、分離装置10の操作端末4は、送液機70から受信したマイクロスコープ78の撮像画像を解析して血液の凝集または凝固による塊状物の分離デバイス50の内部流路53内における存在有無を監視する塊状物監視機能、及び塊状物監視機能にて分離デバイス50の内部流路53内に血液の凝集または凝固による塊状物の存在が検知された場合に表示モニタ4aへのアラーム表示、ブザーの鳴動等のアラート出力を自動で行なうアラート出力機能を有する。
なお、分離装置10の操作端末4は、上述の塊状物監視機能及びアラート出力機能を有していないものも採用可能である。
【0150】
操作端末4は、ユーザーによるエラー発生判定を容易にするため、表示モニタ4aへのエラー画像の例を表示する構成や、表示モニタ4aへの質問画面の表示を含むウィザードのアプリケーションプログラムを動作可能に格納した構成、も採用可能である。また、操作端末4は、ユーザーがエラー発生を判定した画像の記憶部への格納も可能である。
【0151】
分離装置10は、マイクロスコープ78を利用して分離デバイス50の内部流路53内の状態観察を行なうことで、分離対象物の分離精度の低下原因となる障害発生を把握することができる。
なお、送液機70主機体の台部74は、透明板74c上に載置した分離デバイス50をマイクロスコープ78による観察に適した位置に位置決めするための位置決め部材を備えていることが好ましい。
送液機70は、台部74内にマイクロスコープ78を有する構成に限定されず、例えば主機体の上部構造部75によってマイクロスコープ78を台部74から上方に離間した所に支持した構成も採用可能である。
【0152】
送液機70は、マイクロスコープ78を有していない構成も採用可能である。
マイクロスコープ78を有していない送液機70は、台部74の透明板74cを省略し、台部上面74a全体を形成する台部上板71bを有する筐体71を採用した構成を採り得る。
【0153】
送液機70は、電源オンにて起動した後、各加圧装置73の押し子押圧体73bが予め設定した待機位置に配置された初期状態となる。
図1は初期状態の送液機70を示す。
図1の送液機70の加圧装置73の押し子押圧体73bの待機位置は、加圧装置73の駆動部73aの駆動による押し子押圧体73bの上下方向の可動範囲の上部に設定されている。
図1のように、加圧装置73の駆動部73aの駆動による上下方向の可動範囲は、押し子押圧体73bが、筐体71におけるその上部に開口形成された押圧体用窓孔71aの上下に位置する部分に当接しないように設定される。
【0154】
送液機70は、起動時に待機位置以外の所に位置する押し子押圧体73bが存在する場合、自動で加圧装置を駆動して押し子押圧体73bを移動させ、全ての加圧装置73の押し子押圧体73bが待機位置に配置された初期状態となる。
【0155】
但し、送液機70は、操作端末4からの指令(初期状態復帰指令)入力によって加圧装置を駆動して押し子押圧体73bを移動させ、全ての加圧装置73の押し子押圧体73bが待機位置に配置させる機能(初期状態復帰機能)も有している。このため、送液機70は、起動後に自動で全ての加圧装置73の押し子押圧体73bを待機位置に配置させる機能(起動後初期設定機能)を有していない構成も採用可能である。
なお、送液機70は、起動後初期設定機能を有し、且つ初期状態復帰機能を有していない構成も採用可能である。
【0156】
図1のように組み立てられた分離装置10において、シリンジは、待機位置の押し子押圧体73bの押圧ヘッド部73Hから下方に離間した所に配置される。
送液機70は、操作端末4(
図1参照)からの指令(動作指令)の入力によって、加圧装置73に押し子押圧体73bを下降させ、押し子押圧体73bによるシリンジの押し子の押圧開始検知後も押し子押圧体73bの下降を継続する加圧送液動作を実行させることができる。
図1の分離装置10は、送液機70の加圧装置73の加圧送液動作によって、シリンジ内(タンク内)の液体をタンクから送液配管(第1の送液配管61、第2の送液配管62)へ押し出し、送液配管を介して分離デバイス50の内部流路53へ送液することができる。
【0157】
加圧装置73の加圧送液動作は、送液機70の制御回路に設定された動作プログラムに基づいて実行される。
加圧装置73の加圧送液動作は、加圧装置73の押し子押圧体73bの送液開始後移動距離が予め設定した距離に達したとき、送液異常が検知されたとき、動作中において容器カバー77の開放が検知されたとき、圧力センサ73gにて計測される押圧力が予め設定された上限値(許容上限値。後述)を超えたときに、操作端末4に動作停止指令が入力されたとき、に自動的に停止される。
【0158】
送液機70の制御回路は、加圧装置73の動作を制御する動作プログラムを呼び出し可能に格納したプラグラム格納部を有する。プラグラム格納部には、操作端末4から入力される種々の指令(動作指令)毎に紐付けられた複数の動作プログラムが格納されている。
操作端末4は入力された動作指令を送液機70へ伝送する。送液機70の制御回路は、操作端末4から受信した動作指令に対応する(紐付けられた)動作プログラムをプラグラム格納部から呼び出し、呼び出した動作プラグラムに基づいて加圧装置73の動作を制御する。
【0159】
なお、動作プログラムは、例えば、特定の1つの加圧装置73の押し子押圧体73bを一定速度で特定の一方向(下降または上昇)のみに移動させる構成のものである。
動作プログラムは、その他、例えば、複数の加圧装置73の押し子押圧体73bを同時あるいは順次下降させる構成、下降させる押し子押圧体73bの移動速度を段階的あるいは連続的に変化させる構成、特定の加圧装置73の押し子押圧体73bの下降停止後に他の加圧装置73の押し子押圧体73bの下降を開始させる構成、等も採用可能である。
【0160】
プラグラム格納部に格納される動作プログラムは押し子押圧体73bの移動速度及び移動方向の設定を含む。
加圧装置73は、操作端末4から入力された指令に対応する動作プログラムに設定されている移動速度及び移動方向で押し子押圧体73bを移動させる。
【0161】
動作プログラムは、操作端末4から入力されたシリンジのタンク主筒部の内径、シリンジ内の液体のシリンジからの送液流量(以下、単に、流量、とも言う)、及び送液継続時間に基づいて設定される、押し子押圧体73bの下降速度(下方への移動速度)及び送液開始後移動距離を含む構成であっても良い。ここで、押し子押圧体73bの下降速度は、押し子押圧体73bの圧力センサ73が計測する押圧力に基づく送液検知後の押し子押圧体73bの下降速度を指す。送液流量は、送液検知後の押し子押圧体73bの下降速度とシリンジのタンク主筒部の内径とによって決まる。送液継続時間は、送液検知後の押し子押圧体73bの下降速度と送液開始後移動距離とによって決まる。シリンジからの送液流量は、送液検知後の押し子押圧体73bの下降速度の変化によって段階的あるいは連続的に変化する設定も採用可能である。
動作プログラムは、例えば、操作端末4からの動作指令の入力によって、加圧装置73を駆動させてシリンジ内の液体のシリンジからの送液を予め設定された流量及び予め設定された長さの送液継続時間で実現できる、構成を好適に採用できる。
【0162】
送液機70は、加圧装置73の押し子押圧体73bの圧力センサ73gにて計測される押圧力が予め設定された上限値(許容上限値)を超えたときに加圧装置73の駆動を停止させる。
例えば、
図2において、加圧装置70によって押圧されたシリンジ20の押し子22はシリンジ20のタンク21先端部の先端壁部21bに到達すると先端壁部21bを押圧する。その結果、圧力センサ73gにて計測される押圧力が上昇する。送液機70は、圧力センサ73gにて計測される押圧力が許容上限値を超えると、加圧装置73の駆動を停止させる。
【0163】
なお、
図2に例示したサンプル用シリンジ20以外のシリンジ30、40もサンプル用シリンジ20と同様の構造である。このため、サンプル用シリンジ20以外のシリンジ30、40についても、加圧装置73によってシリンジのタンクに押し込まれた押し子がタンク先端部の先端壁部を押圧することで、シリンジを押圧する加圧装置73の圧力センサ73gにて計測される押圧力が上昇する。
許容上限値は、加圧装置73毎に、加圧装置73の押圧対象のシリンジの機械的強度に鑑みてシリンジの破壊を回避可能な大きさに設定される。
【0164】
加圧装置73の圧力センサ73gにて計測される押圧力の許容上限値は、
図1のように組み立てられた分離装置10において、シリンジ内の液体のシリンジから排液配管(第1の排液配管63、第2の排液配管64)の下流端までの送液に要する加圧装置73によるシリンジの押し子の押圧力よりも大きい値に設定する。
なお、動作プログラムは、例えば、特定の1つの加圧装置73の押し子押圧体73bを一定速度で特定の一方向(下降または上昇)のみに移動させ、加圧装置73の圧力センサ73gにて押圧開始検知基準値以上の押圧力が計測された後、圧力センサ73gにて計測される押圧力が許容上限値に達したときに、押し子押圧体73bの下降を自動停止させる構成も採用可能である。
【0165】
操作端末4(
図1参照)に入力される動作指令のうち、加圧装置73に加圧送液動作(押し子押圧体73bの下降)を最初に実行させるものを、以下、加圧送液動作指令、とも言う。
送液機70は、操作端末4への加圧送液動作指令の入力により、入力された加圧送液動作指令に対応する動作プログラムに基づいて、1または複数の加圧装置73に加圧送液動作を実行させる。
【0166】
[分離方法]
次に、
図1のように組み立てた分離装置10を用いてサンプル貯留タンク21内の液体サンプルから分離対象物を分離する分離方法の1実施形態(第1実施形態の分離方法)を説明する。
【0167】
図1の分離装置10の送液機70に取り付けられたサンプル用シリンジ20はサンプル貯留タンク21に液体サンプルを収容したもの、バッファー用シリンジ30はバッファー貯留タンク31にバッファーを収容したもの、プライミング用シリンジ40はプライミング用バッファー貯留タンク41にプライミング用バッファーを収容したものである。
ここで説明する分離方法は、まず、分離デバイス50の内部流路53内をバッファー用シリンジ30から導入したバッファー及びプライミング用シリンジ40から導入したプライミング用バッファーで満たすプライミング工程を行ない、次いで、サンプル用シリンジ20から分離デバイス50の内部流路53内にサンプルを導入して対象分離工程を行なうものである。
【0168】
なお、プライミング工程は、第1、第2の排液配管63、64の両方の下流端を副排液容器82bに挿入した状態で行なう。
ここで説明する分離方法は、プライミング工程の実施後、対象分離工程の開始前に、第1の排液配管63の下流端を回収容器81に挿し替え、第2の排液配管64の下流端を主排液容器82aに挿し替える。
【0169】
<プライミング工程>
プライミング工程では、操作端末4への動作指令(加圧送液動作指令)の入力によって送液機70の第2、第3の加圧装置73B、73Cを駆動させて、バッファー貯留タンク31のバッファー及びプライミング用バッファー貯留タンク41のプライミング用バッファーを加圧して分離デバイス50の内部流路53(
図3、
図4参照)に導入(送液)する。そして、バッファー貯留タンク31及びプライミング用バッファー貯留タンク41からの送液継続により、分離デバイス50の分離領域59(
図3、
図4参照)を通過させたバッファー及びプライミング用バッファーを分離デバイス50(
図3、
図4参照)の対象回収口56および非対象回収口57から排出させながら分離デバイス50の内部流路53内をバッファー及びプライミング用バッファーで満たす。
【0170】
バッファー貯留タンク31のバッファーは第2の送液配管62を介して分離デバイス50のバッファー導入口55から分離デバス50の内部流路53に導入される。
プライミング用バッファー貯留タンク41のプライミング用バッファーは、第1の送液配管61の分岐配管61aと、第1の送液配管61の主配管61aにおける配管分岐部61cから下流側部分である下流側配管部とを介して分離デバイス50のサンプル導入口54から分離デバイス50の内部流路53に導入される。
【0171】
プライミング工程では、第2の送液配管62の内部をバッファー貯留タンク31から導入したバッファーによって満たし、第1の送液配管61の分岐配管61a及び主配管61aの下流側配管部のそれぞれの内部をプライミング用バッファー貯留タンク41から導入したプライミング用バッファーによって満たす。
【0172】
第2の送液配管62、第1の送液配管61の分岐配管61a及び主配管61aの下流側配管部、のそれぞれの内部は、バッファー貯留タンク31及びプライミング用バッファー貯留タンク41からの液体の送液継続によって内部の空気を押し出して排気する。その結果、第2の送液配管62、第1の送液配管61の分岐配管61a及び主配管61aの下流側配管部、のそれぞれの内部は、バッファーあるいはプライミング用バッファーによって満たされた状態となる。
【0173】
図3、
図4に示すように、分離デバイス50の内部流路53は、バッファー貯留タンク31及びプライミング用バッファー貯留タンク41からのバッファー及びプライミング用バッファーの送液継続によって内部の空気を排気する。その結果、バッファー及びプライミング用バッファーによって分離デバイス50の内部流路53全体が満たされた状態となる。
分離デバイス50の内部流路53を通過したバッファー及びプライミング用バッファーは、分離デバイス50の対象回収口56および非対象回収口57から排液配管を介して排液容器82に排出される。排液容器82は、排液配管から排出された液体を貯留する。
【0174】
第2、第3の加圧装置73B、73Cの駆動によるバッファー貯留タンク31及びプライミング用バッファー貯留タンク41から分離デバイス50の内部流路53へのバッファー及びプライミング用バッファーの送液は、例えば、第2、第3の加圧装置73B、73Cのそれぞれに、予め送液機70(具体的にはその制御回路)に設定した流量及び送液継続時間(予め設定された長さの送液継続時間)での加圧送液動作を実行させることで行なう。
【0175】
第2、第3の加圧装置73B、73Cの駆動によるバッファー貯留タンク31及びプライミング用バッファー貯留タンク41からのバッファー及びプライミング用バッファーの送液は、例えばプライミング工程において流量一定で行なうことが可能である。
但し、プライミング工程でのバッファー貯留タンク31及びプライミング用バッファー貯留タンク41からのバッファー及びプライミング用バッファーの送液は、操作端末4からの指令入力によって、第2、第3の加圧装置73B、73Cの押し子押圧体73bの下降速度を段階的に変化させて、バッファー及びプライミング用バッファーの両方の流量を段階的に変化させるものであっても良い。
【0176】
第2、第3の加圧装置73B、73Cの駆動によるバッファー貯留タンク31及びプライミング用バッファー貯留タンク41からのバッファー及びプライミング用バッファーの送液は、例えば、バッファー及びプライミング用バッファーを送液開始から予め設定した流量で送液する第1の送液段階と、バッファー及びプライミング用バッファーの両方を第1の送液段階に比べて大きい流量で送液する第2の送液段階と、バッファー及びプライミング用バッファーの両方を第2の送液段階に比べて小さい流量で送液する第3の送液段階とをこの順で実行しても良い。
以下、この送液方法を3段階送液方法とも言う。
【0177】
第1~第3の送液段階は、それぞれ、操作端末4への指令入力によって第2、第3の加圧装置73B、73Cが指令に対応する下降速度で押し子押圧体73bの下降を指令に対応する時間長あるいは送液量に達するまで継続することで実現される。
第2、第3の加圧装置73B、73Cは、操作端末4に入力された指令に対応する動作(押し子押圧体73bの下降)を完了した所で駆動を停止する。
【0178】
第1の送液段階では、バッファー貯留タンク31及びプライミング用バッファー貯留タンク41から分離デバイス50の内部流路53へのバッファー及びプライミング用バッファーの送液を予め設定した時間長だけ継続して、分離デバイス50の内部流路53内の空気を分離デバイス50(
図3、
図4参照)の対象回収口56、非対象回収口57から排気させる。
第2の送液段階では、バッファー及びプライミング用バッファーの両方について第1の送液段階に比べて大きい流量での送液を予め設定した時間長だけ継続して、分離デバイス50の内部流路53内の空気を完全に排気する。
第3の送液段階では、バッファー及びプライミング用バッファーの両方について第2の送液段階に比べて小さい流量での送液を継続して、第2の送液段階の終了後に分離デバイス50の内部流路53内への空気の侵入を防止する。
【0179】
図1に示す分離装置10について、第2の送液配管62、第1の送液配管61の分岐配管61a及び主配管61aの下流側配管部、分離デバイス50の内部流路53のそれぞれの内部の空気が排気され、それぞれの内部がバッファー及びプライミング用バッファーの一方または両方によって満たされた状態を、以下、プライミング完了段階、とも言う。
上述した3段階送液方法では、分離装置10は、第2の送液段階の完了あるいは途中でプライミング完了段階に至る。
【0180】
図1に示す分離装置10のユーザーは、例えば、操作端末4の表示モニタ4aに表示されるバッファー貯留タンク31からのバッファー送液量、及びプライミング用バッファー貯留タンク41からのプライミング用バッファー送液量を見て、分離装置10がプライミング完了段階に至ったかどうかを把握できる。
なお、
図1に示す分離装置10は、プライミング工程の開始後、例えば、操作端末4にて算出されるバッファー貯留タンク31からのバッファー送液量、及びプライミング用バッファー貯留タンク41からのプライミング用バッファー送液量がそれぞれ予め設定した値に達したときに、プライミング完了段階になったことをユーザーに報知する表示を表示モニタ4aに表示したり、チャイム音の出力等を行うようにしても良い。
【0181】
上述した3段階送液方法では、第2の送液段階の完了によって分離装置10がプライミング完了段階になったことを把握できる。
なお、第3の送液段階は後述する排液配管の下流端の挿し替え作業の前に開始する。
【0182】
分離装置10がプライミング完了段階になったとき、ユーザーは、操作端末4の表示モニタ4aに表示させたマイクロスコープ78の撮像画像によって分離デバイス50の内部流路53内の状態を観察して、内部流路53内の残留空気の有無を確認できる。
これにより、プライミング工程による分離デバイス50の内部流路53内の残留空気の有無をより確認に把握できる。
【0183】
分離デバイス50の内部流路53内の残留空気の存在が把握された場合は分離デバイス50を廃棄し、残留空気の存在が把握されなかった場合のみ、分離デバイス50を次工程に使用する。これにより、分離デバイス50の内部流路53内の残留空気が対象分離工程での分離精度に影響を与えることを回避でき、分離精度の安定維持、分離精度の向上が可能となる。
【0184】
ここで説明する実施形態の分離方法では、分離装置10がプライミング完了段階になった後も、バッファー貯留タンク31及びプライミング用バッファー貯留タンク41から分離デバイス50の内部流路53へのバッファー及びプライミング用バッファーの送液を対象分離工程の開始(後述するサンプル貯留タンク21からのサンプルの送液開始)まで継続する。つまり、プライミング工程を対象分離工程まで継続する。
【0185】
<排液配管の下流端の挿し替え>
すでに述べた通り、プライミング工程は第1、第2の排液配管63、64の両方の下流端を副排液容器82bに挿入した状態で行なう。
ここで説明する分離方法では、
図1に示す分離装置10がプライミング完了段階になった後、対象分離工程の開始前に、送液機70の容器カバー77を送液機70主機体の台部前端面74bに対して開き、第1の排液配管63の下流端を副排液容器82bから回収容器81に挿し替え、第2の排液配管64の下流端を副排液容器82bから主排液容器82aに挿し替える。
【0186】
この実施形態の分離方法では、副排液容器82bから回収容器81及び主排液容器82aへの排液配管下流端の挿し替え作業を、分離デバイス50の内部流路53へのバッファー及びプライミング用バッファーの両方の送液を継続したまま行なう。これにより、排液配管下流端の挿し替え作業中に分離デバイス50の内部流路53内への空気の入り込みが生じることを防ぐ。
回収容器81及び主排液容器82aへの排液配管下流端の挿し替えが完了したら、送液機70の容器カバー77を送液機70主機体の台部前端面74bに対して閉じる。
【0187】
<対象分離工程>
副排液容器82bから回収容器81及び主排液容器82aへの排液配管下流端の挿し替えが完了したら、対象分離工程を行なう。
対象分離工程では、
図1に示す操作端末4への指令入力により、第3の加圧装置73Cの駆動を停止させ、それと同時に第1の加圧装置73Aを駆動して加圧送液動作を実行させ、押し子押圧体73bの下降によりサンプル貯留タンク21内の液体サンプルを加圧して分離デバイス50の内部流路53へ送液する。
【0188】
第1の加圧装置73Aの駆動によるサンプル貯留タンク21内の液体サンプルの分離デバイス50の内部流路53への送液は、バッファー貯留タンク31から分離デバイス50の内部流路53へのバッファーの送液を継続したまま、操作端末4に入力された指令に対応する時間長あるいは送液量に達するまで継続する。
第1の加圧装置73Aの駆動は、駆動継続時間が操作端末4に入力された指令に対応する時間長に達するか、あるいはサンプル貯留タンク21からのサンプルの送液量が操作端末4に入力された指令に対応する送液量に達することで、操作端末4に入力された指令に対応する動作が完了して自動停止する。
第1の加圧装置73Aの駆動は、サンプル貯留タンク21からのサンプルの送液量が目標量に達した所で、操作端末4への指令入力によって停止させても良い。
【0189】
図5に示すように、サンプル1は、サンプル貯留タンク21からの送液継続により、分離デバイス50の内部流路53内をサンプル導入領域58bから内部流路53下流側へ流れる層流を形成する。サンプル1は、分離デバイス50の内部流路53内をサンプル導入領域58bから内部流路53下流側へ流れることで、分離領域59を通過する際にDLD原理によって分離対象物の分離が実現される。
【0190】
図5に示すように、分離デバイス50の内部流路53をサンプル導入領域58bから内部流路53下流側へ流出したサンプル1は、デバイス幅方向両側のバッファー2の層流に挟み込まれた状態のまま層流を維持して分離領域59を流れる。
そして、サンプル1から分離された分離対象物を含む液体を分離デバイス50の対象回収口56(
図1等参照)から第1の排液配管63を介して回収容器81に回収し、サンプル1中の分離されなかった成分を分離デバイス50の非対象回収口57から第2の排液配管64を介して主排液容器82aに回収する。
【0191】
対象分離工程では、操作端末4に入力された指令に対応する動作の完了、あるいはサンプル貯留タンク21からのサンプルの送液量が目標量に達した所での操作端末4への指令入力によって第1の加圧装置73Aの駆動を停止した後、直ちに、操作端末4からの指令入力によって第3の加圧装置73Cを駆動させてプライミング用バッファー貯留タンク41内のプライミング用バッファーを分離デバイス50の内部流路53へ送液し、分離デバイス50内のサンプルを全て分離デバイス50から排出させる。
【0192】
プライミング用バッファー貯留タンク41内のプライミング用バッファーの分離デバイス50の内部流路53への送液は、バッファー貯留タンク31から分離デバイス50の内部流路53へのバッファーの送液を継続したまま行う。
したがって、分離デバイス50内のサンプルの分離デバイス50からの排出は、分離デバイス50の内部流路53へのバッファー及びプライミング用バッファーの送液によって行われる。
【0193】
なお、分離工程は、操作端末4に入力された指令に対応する動作の完了、あるいはサンプル貯留タンク21からのサンプルの送液量が目標量に達した所での操作端末4への指令入力によって第1の加圧装置73Aの駆動を停止した後、第3の加圧装置73Cの駆動によるプライミング用バッファー貯留タンク41からのプライミング用バッファーの送液を行なわず、分離デバイス50内のサンプルの分離デバイス50からの排出をバッファー貯留タンク31から分離デバイス50の内部流路53へのバッファーの送液のみによって行う構成も採用可能である。
【0194】
分離デバイス50内のサンプルの分離デバイス50からの排出を終えたら、操作端末4からの指令入力によって、第2、第3の加圧装置73B、73Cの駆動を停止する。
これにより、対象分離工程が完了する。
【0195】
なお、この実施形態の分離方法では、対象分離工程の完了後、ユーザーは、操作端末4の表示モニタ4aに表示させたマイクロスコープ78の撮像画像によって分離デバイス50の内部流路53内の状態を観察して、血液の凝集または凝固によって形成された塊状物の有無を確認できる。
【0196】
対象分離工程では、第3の加圧装置73Cの駆動を停止し、それと同時に第1の加圧装置73Aを駆動してサンプル貯留タンク21内の液体サンプルの分離デバイス50の内部流路53への送液を開始することで、プライミング工程から対象分離工程に連続的に切り替わる。
その結果、分離デバイス50のサンプル導入口54(
図3等参照)から内部流路53へ導入する液体のプライミング用バッファーからサンプルへの切り換え時における、分離デバイス50内のサンプルやバッファーの層流の流量変化を抑制でき、層流を安定化させることができる。つまり、分離デバイス50のサンプル導入口54から内部流路53への液体導入の途絶が無く、分離デバイス50の内部流路53へのサンプル導入初期からサンプルの層流を形成できる。これにより、対象分離工程の初期から精度良く分離対象物の分離を行なうことができる。
【0197】
プライミング工程と対象分離工程との切り換えは、第3の加圧装置73Cが送液する液量を徐々に減らすとともに第1の加圧装置73Aが送液する液量を徐々に増やすことにより、プライミング工程と対象分離工程とが連続的に行われることがより好ましい。第3の加圧装置73Cが送液する液量を徐々に減らすとともに第1の加圧装置73Aが送液する液量を徐々に増やすことによるプライミング工程から対象分離工程への切り換えを、以下、サンプル漸増型工程切り換え、とも言う。サンプル漸増型工程切り換えは、第1の加圧装置73Aの駆動によるサンプルの送液開始にて開始され、送液量を徐々に減らした第3の加圧装置73Cの駆動を停止することで終了する。
【0198】
サンプル漸増型工程切り換えでは、分離デバイス50のサンプル導入口54(
図3等参照)から内部流路53へ導入する液体のプライミング用バッファーからサンプルへの切り換え時における、分離デバイス50内のサンプルやバッファーの層流の流量変化をより効果的に抑制できる。サンプル漸増型工程切り換えでは、第3の加圧装置73Cが送液する液量を徐々に減らすとともに第1の加圧装置73Aが送液する液量を徐々に増やすことにより、分離デバイス50のサンプル導入口54から内部流路53への液体導入の途絶を確実に無くすことができ、分離デバイス50の内部流路53へのサンプル導入初期からサンプル導入口54から内部流路53へ導入した液体の層流を安定に形成できる。その結果、分離デバイス50内(内部流路53内)の各液の層流をより安定化させることができ、対象分離工程での分離対象物の分離をより精度良く行なうことができる。
【0199】
サンプル漸増型工程切り換えは、第1の加圧装置73Aがサンプル貯留タンク21から送液する液量(流量)と第3の加圧装置73Cがプライミング用バッファー貯留タンク41から送液する液量(流量)との合計の液量の一定を保ちつつ、第3の加圧装置73Cが送液する液量を徐々に減らすとともに第1の加圧装置73Aが送液する液量を徐々に増やすことがより好ましい。
これにより、プライミング工程と対象分離工程との切り換えにおいて、サンプル導入口54から内部流路53へ導入した液体及びバッファーのそれぞれの層流の流量を安定維持できるため、分離デバイス50の内部流路53へのサンプル導入初期から分離対象物の分離をより精度良く安定に行なうことができる。
【0200】
対象分離工程の開始(サンプル貯留タンク21内の液体サンプルの送液開始)直前において、第1の送液配管61の主配管61aには、その配管分岐部61cから上流側部分(以下、上流側配管部、とも言う)を含む全体にプライミング用バッファーが充填されている。
【0201】
図1の分離装置10の組み立ては、例えば、サンプル導入口54に第1の送液配管61の主配管61a、バッファー導入口55に第2の送液配管62、対象回収口56に第1の排液配管63、非対象回収口57に第2の排液配管64、が接続された状態の分離デバイス50(配管付き分離デバイス)を用意し、第1の送液配管61の主配管61aの上流端がサンプル貯留タンク21に接続されたサンプル用シリンジ20と、第1の送液配管61の分岐配管61bの上流端がプライミング用バッファー貯留タンク41に接続されたプライミング用シリンジ40と、第2の送液配管62の上流端がバッファー貯留タンク31に接続されたバッファー用シリンジ30とが送液機70に取り付けられた状態とする。各シリンジはそれぞれタンク支持具72に支持させて送液機70に取り付ける。
【0202】
配管付き分離デバイスは、第1の送液配管61にプライミング用バッファーが充填され、第2の送液配管62にバッファーが充填されたものを用意する。
配管付き分離デバイスの各排液配管(第1の排液配管63、第2の排液配管64)は、下流端を副排液容器82bに挿入した状態にする。
【0203】
第1の送液配管61は、まず、分岐配管61bの上流端をプライミング用バッファー貯留タンク41の先端筒部に接続する。そして、第1の送液配管61の分岐配管61bがプライミング用バッファー貯留タンク41に接続されたプライミング用シリンジ40が送液機70に取り付けられた状態とする。プライミング用シリンジ40はプライミング用バッファー貯留タンク41に分岐配管61bを接続してから送液機70に取り付けるか、あるいは、送液機70に取り付けた状態でプライミング用バッファー貯留タンク41に分岐配管61bを接続する。
【0204】
次いで、第1の送液配管61の主配管61aの上流端をどこにも接続していない開放端とした状態のまま第3の加圧装置73Cを駆動させてプライミング用バッファー貯留タンク41内のプライミング用バッファーを分岐配管61bへ送液する。そして、分岐配管61bへのプライミング用バッファーの送液の継続により、第1の送液配管61の主配管61a内のプライミング用バッファーを主配管61aの上流端及び下流端から押し出しつつ第1の送液配管61内部全体を排気し、主配管61a全体にプライミング用バッファーが充填された状態とする。
【0205】
次いで、第1の送液配管61の主配管61aの上流端を、プライミング用バッファーが充填された状態を維持したまま空気を入り込ませないようにしてサンプル貯留タンク21先端に接続する。
サンプル用シリンジ20はサンプル貯留タンク21に第1の送液配管61の主配管61aを接続してから送液機70に取り付けるか、あるいは、送液機70に取り付けた状態でサンプル貯留タンク21に第1の送液配管61の主配管61aを接続する。
【0206】
すでに述べたように、プライミング工程では、第3の加圧装置73Cによってプライミング用バッファー貯留タンク41内のプライミング用バッファーを加圧して分岐配管61bから第1の送液配管61へ送液する。このため、プライミング工程では、第1の送液配管61の主配管61aの上流側配管部内にプライミング用バッファーが充填された状態が維持される。
【0207】
その結果、第1の送液配管61の主配管61aの全体にプライミング用バッファーが充填された状態は、対象分離工程の開始直前まで維持される。
したがって、対象分離工程にてサンプル貯留タンク21内の液体サンプルの分離デバイス50の内部流路53への送液を開始する際には、第1の送液配管61の主配管61aへのサンプルの送液によって、分離デバイス50のサンプル導入口54にはプライミング用バッファーに引き続いて連続してサンプルが導入される。
【0208】
プライミング工程では、例えば、第1の送液配管61の主配管61aの上流側配管部の配管分岐部61c付近を液止めクランプ等を用いて液止めしておき、送液のために第3の加圧装置73Cによってプライミング用バッファーに与えられる圧力が、分岐配管61bから主配管61aの上流側配管部内の液体に分散することを防いでも良い。
また、対象分離工程では、サンプル貯留タンク21内の液体サンプルの送液を開始する際に、予め第1の送液配管61の分岐配管61bの配管分岐部61c付近を液止めクランプ等を用いて液止めしておき、分岐配管61b内のプライミング用バッファーへのサンプルの拡散等を防いでも良い。
【0209】
上述の実施形態の分離方法は、対象分離工程の前に分離デバイス50の内部流路53内の空気を排気するプライミング工程を行なうことで、分離デバイス50の内部流路53内の空気の残留を減らすか、もしくは無くすことができる。その結果、液体(サンプル及びバッファー)の流れの繊細なコントロールが必要なDLDデバイスであっても、分離領域を流れる液体中の粒子の挙動がDLD原理に従いやすくなり、分離精度を向上させることが可能になる。
【0210】
また、加圧するタイプの送液手段(加圧装置)の採用は、分離デバイス50に送液する液体を貯留するタンクから分離デバイス50の出口まで満遍なく送液することができる。このため、加圧するタイプの送液手段(加圧装置)の採用は、タンクから分離デバイス50の出口まで空気を滞留させにくくする点、及びタンクから分離デバイス50の出口までの流路への新たな空気の侵入防止の点、で望ましい。
DLDの原理では、分離デバイス50の分離領域59における各々の層流の流速が分離精度に与える影響が大きい。加圧するタイプの送液手段(加圧装置)は、分離デバイス50に送液する液体を貯留するタンクから分離デバイス50の出口まで満遍なく送液することができることから、分離デバイス50の分離領域59における各々の層流の流速の安定維持にも有利であり、分離精度の安定維持の点で好適である。
【0211】
上述の実施形態の分離方法は、プライミング工程及び対象分離工程での加圧装置の駆動開始を全て操作端末4からの指令入力によって行う構成を例示した。
本発明に係る実施形態の分離方法は、送液機70のプログラム運転によって各加圧装置73の動作を制御することで全て自動で行うことも可能である。
例えば、プライミング工程では、第2、第3の加圧装置73B、73Cの加圧送液動作を動作プログラムに基づいて制御することで、押し子押圧体73bの下降速度を段階的あるいは連続的に変化させて、バッファー及びプライミング用バッファーの一方または両方の流量を変化させることも可能である。例えば、プライミング工程の3段階送液方法も送液機70のプログラム運転によって自動で行なうことができる。
【0212】
また、対象分離工程における、第3の加圧装置73Cの駆動停止、及びそれと同時の第1の加圧装置73Aの駆動は、例えば、排液配管下流端の挿し替え作業のために送液機70主機体の台部前端面74bに対して開いた容器カバー77が台部前端面74bに閉じられたことを送液機70の開閉センサが検知することで、これをトリガーとして容器カバー77が閉じられたことの検知と同時、あるいは予め設定した待機時間の経過後に自動で実行されるようにしても良い。
【0213】
送液機70の制御回路は、押し子押圧体73bの圧力センサ73gが計測した押圧力(圧力)を基にして液体の送液量が一定になるように加圧装置の駆動を制御する構成も採用可能である。これにより、分離デバイスに送液される流量が極力一定となり、層流の揺らぎを低減することができる。
また、液体の送液量が一定になるように加圧装置の駆動を制御する構成であれば、例えば、タンク内の液体の加圧時の加圧装置自体の部品の歪みや、何等かの原因でシリンジの押し子とシリンジ内の液体との間に入り込んだ僅かな空気の送液時の加圧圧縮、が生じても、タンク内の液体に作用する圧力を安定化させることができ、分離デバイスに送液される流量を安定化することができる。
【0214】
分離方法の別実施形態(分離方法の第2実施形態)としては、例えば、第1実施形態の分離装置10について、プライミング用バッファー貯留タンク41を省略した概略構成の分離装置を用いて、まず、プライミング工程を行い、プライミング工程の後に対象分離工程を行なう構成も採用可能である。分離装置のサンプル貯留タンク21と分離デバイス50のサンプル導入口54との間は、延在方向両端のみに開口部を有する配管(送液配管。以下、第3の送液配管、とも言う)を介して接続される。第3の送液配管の内側領域はサンプル貯留タンク21内の液体を分離デバイス50のサンプル導入口54へ送液するための第1流路の役割を果たす。
第2、第3の送液配管は、例えば合成樹脂製の柔軟なチューブである。第3の送液配管の形成材料は第2の送液配管の形成に使用可能なものを用いることができる。
【0215】
分離装置は、例えば、第2、第3の送液配管が合成樹脂製の剛体である構成も採用可能である。
また、分離装置は、第1実施形態の分離装置10のサンプル貯留タンク21の先端筒部以外がサンプル貯留タンクで先端筒部が第3の送液配管、バッファー貯留タンク31の先端筒部以外がバッファー貯留タンクで先端筒部が第2の送液配管、であり、第2、第3の送液配管が分離デバイスのサンプル導入口、バッファー導入口に直接接続された構成も採用可能である。
【0216】
この実施形態の分離方法のプライミング工程は、サンプル貯留タンク21およびバッファー貯留タンク31の両方にバッファーを予め貯留しておき、サンプル貯留タンク21およびバッファー貯留タンク31のそれぞれに貯留されたバッファーを第1の加圧装置73Aおよび第2の加圧装置73Bが加圧して分離デバイス50の内部流路53へ送液することによって行う。
また、この実施形態の分離方法は、プライミング工程と対象分離工程との間に、前記サンプル貯留タンク内にサンプルを加えてサンプル貯留タンク内にサンプルを貯留させる、サンプル貯留工程を有する。
第2実施形態の分離方法の対象分離工程は、サンプル貯留工程の後、サンプル貯留タンク内のサンプルを第1の加圧装置によって加圧し、バッファー貯留タンク内のバッファーを第2の加圧装置が加圧することによって行われる。
【0217】
第2実施形態の分離方法では、サンプル貯留タンクをプライミング工程にてプライミング用バッファーの貯留及びサンプル導入口へのプライミング用バッファーの送液に使用した後、サンプル貯留工程にてサンプル貯留タンクにサンプルを入れてサンプルを貯留し、次いで対象分離工程へ移行する。この分離方法は、サンプル貯留タンクをプライミング用バッファーの貯留及び送液、サンプルの貯留、送液に使用するので、プライミング用バッファー貯留タンクを使用する分離装置に比べてタンク数が少なく構成が単純な分離装置を用いて実現できる。
【0218】
図1に示すように、第1実施形態の分離装置10は、分離デバイス50のサンプル導入口54に対して、プライミング用バッファーとサンプルとを異なる貯留タンクから送液する構造となっている。
第1実施形態の分離装置10を用いた分離方法では、分離デバイス50のサンプル導入口54に対して、プライミング用バッファーの導入はプライミング用バッファー貯留タンク41からのみ、サンプルの導入はサンプル貯留タンク21からのみ、にそれぞれ限定されている。このため、例えば、上述の第2実施形態のように、サンプル貯留タンク21にプライミング用バッファーを貯留してサンプル貯留タンク21を分離デバイス50のサンプル導入口54へのプライミング用バッファーの送液に使用した後、サンプル貯留タンク21内にサンプルを入れてサンプル貯留タンク21内にサンプルを貯留させるサンプル貯留工程を行い、サンプル貯留タンク21をサンプルの貯留、分離デバイス50への送液に使用する場合に比べて、サンプルのコンタミネーションの可能性を低減することができる。
【実施例0219】
以下、分離方法、分離装置、の1実施例を説明する。
ここで説明する実施例は、サンプルからの血中循環がん細胞の分離に用いる分離装置(血中循環がん細胞分離装置)、及び、この分離装置を用いて行った分離方法の例である。
血中循環がん細胞分離装置は
図1を参照して説明する。
図8~
図10は、血中循環がん細胞分離装置を用いた分離方法を説明するフローチャートである。
【0220】
図8~
図10に示すように、この分離方法に係る一連の動作は、分離デバイス50の内部流路53に緩衝溶液を充填する前処理工程(プライミング工程)と、血中循環がん細胞を分離する分離工程とから構成される。分離工程は前処理工程に引き続いて実施される。
なお、この分離方法に係る一連の動作は、分離装置10の組み立て(分離装置組立工程)完了後に実施されるものである。
【0221】
まず、分離装置組立工程を実施した。
バッファー用シリンジ30に、泳動用緩衝溶液(バッファー)100mLを注入し(ステップS1)、第2の送液配管62を接続し(ステップS2)、送液機70に第2の加圧装置73Bに対応させてセットした(ステップS3)。
プライミング用シリンジ40に、泳動用緩衝溶液(プライミング用バッファー)10mLを注入し(ステップS4)、第1の送液配管61の分岐配管61bを接続し(ステップS5)送液機70に第3の加圧装置73Cに対応させてセットした(ステップS6)。
【0222】
なお、第1の送液配管61及び第2の送液配管62は、予め泳動用緩衝溶液が充填されているものを用いた。第1の送液配管61はプライミング用バッファーが充填されたもの、第2の送液配管62はバッファーが充填されたものを用いた。
【0223】
次に第3の加圧装置73Cを駆動してプライミング用シリンジ40からプライミング用バッファーを約2分間送液し(ステップS7)、第1の送液配管61の内部を排気し、第1の送液配管61の全体に泳動用緩衝溶液(プライミング用バッファー)を充填した。第1の送液配管61の主配管61aの上流側配管部の先端(上流端)から溢れた泳動用緩衝溶液を不織布ワイパーで拭い、第3の加圧装置73Cを停止した(ステップS8)。
【0224】
サンプル用シリンジ20に、抗体修飾ビーズを混合した血液試料1mLを注入し(ステップS9)、第1の送液配管61の主配管61aの上流側配管部を接続(ステップS10)し、送液機70に第1の加圧装置73Aに対応させてセットし(ステップS11)、分離装置組立工程を完了した。
次いでプライミング工程に移行した。
【0225】
第2の加圧装置73B及び第3の加圧装置73Cをそれぞれシリンジからの流量500μL/min(ステップS12)で3分間駆動して(ステップS13)、第2の送液配管62、第1の送液配管61の分岐配管61b、第1の送液配管61の主配管61aの下流側配管部、分離デバイス50を排気し、泳動用緩衝溶液を充填した。第2の加圧装置73B及び第3の加圧装置73Cの駆動をそれぞれシリンジからの流量を1000μL/min(ステップS14)に上げて更に3分間駆動し(ステップS15)、分離デバイス50内を完全に排気した。
【0226】
第2の加圧装置73Bの駆動をバッファー用シリンジ30からの流量500μL/min(ステップS16)に、第3の加圧装置73Cの駆動をプライミング用シリンジ40からの流量50μL/min(ステップS17)に下げ、それぞれ送液動作を継続させ(ステップS18、S19)、端末の画面を見て、分離デバイス50内に空気が残留していないことを確認した(ステップS20)。残留していた場合、サンプル用シリンジ20を取り外し、分離デバイス50及びバッファー用シリンジ30及びプライミング用シリンジ40を廃棄した。残留していなかった場合、次の工程へ進んだ。
【0227】
回収部のカバーを開き(ステップS21)、第1の排出配管63を副排液容器82bから回収容器81に(ステップS22)、第2の排出配管64を副排液容器82bから主排液容器82aに素早く入れ替え(ステップS23)、回収部のカバーを閉じた(ステップS24)。
第2の加圧装置73Bはバッファー用シリンジ30からの流量500μL/min、第3の加圧装置73Cはプライミング用シリンジ40からの流量50μL/minのまま送液を継続した(ステップS25)。
【0228】
次に、第1の加圧装置73Aを駆動させ、第1の加圧装置73Aがサンプル用シリンジ20から送液する液量(流量)と第3の加圧装置73Cがプライミング用シリンジ40から送液する液量(流量)との合計の液量の一定を保ちつつ、第3の加圧装置73Cが送液する液量を徐々に減らすとともに第1の加圧装置73Aが送液する液量を徐々に増やし、第3の加圧装置73Cを停止させた(ステップS26、S27)。第1の加圧装置73Aはサンプル用シリンジ20からの流量を50μL/minまで徐々に上げるように駆動した(ステップS27)。第1の加圧装置73Aの駆動開始以降、サンプル用シリンジ20から血液試料1mLを分離デバイス50に送液した(ステップS28)。
この結果、サンプル漸増型工程切り換えにてプライミング工程から対象分離工程への切り換えを実現した。
【0229】
第1の加圧装置73Aを停止(ステップS29)すると同時に、第3の加圧装置73Cを流量50μL/minで駆動し(ステップS30)、数秒間送液(ステップS31)にて、分離デバイス50内の血液試料を泳動用緩衝溶液で流し切った。
【0230】
この間、第2の加圧装置73Bは流量500μL/minのまま送液を継続した(ステップS32、S33)。
【0231】
第2の加圧装置73B及び第3の加圧装置73Cを停止し、端末の画面で画像ログを再生し(ステップS34)、エラー画像の例と比較して、血液試料由来のエラーが無いことを確認した(ステップS35)。エラーが発生していた場合、その旨を端末で入力する。エラーが発生していなかった場合、容器カバー77を開いて(ステップS36)回収容器81を取り出し(ステップS37)た後容器カバー77を閉じ(ステップS38)、血中循環がん細胞の分離を完了した。
【0232】
以上、本発明を最良の形態に基づいて説明してきたが、本発明は上述の最良の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の改変が可能である。
液体サンプル1、バッファー2、分離対象粒子3A、非分離対象粒子3B、操作端末4、表示モニタ4a、分離装置10、サンプル用シリンジ20、サンプル貯留タンク21(外筒部材)、主筒部21a、先端壁部21b、先端筒部21c、フランジ部21d、押し子22、押し子本体22a、後端フランジ22b、バッファー用シリンジ30、バッファー貯留タンク31(外筒部材)、押し子32、プライミング用シリンジ40、プライミング用バッファー貯留タンク41(外筒部材)、押し子42、分離デバイス50、ベース板部材51、蓋板部材52、内部流路53、第1の回収流路53a、第2の回収流路53b、囲み壁外側流路53c,サンプル導入口54、バッファー導入口55、対象回収口56、非対象回収口57、囲み壁58、サンプル出口58a、サンプル導入領域58b、分離領域59、ピラー59a、第1の送液配管61、主配管61a、(下流側配管部)、(上流側配管部)、分岐配管61b、配管分岐部61c、第2の送液配管62、第1の排液配管63、第2の排液配管64、送液機70、筐体71、押圧体用窓孔71a、(上部前面形成部)、(主機体)、台部上板71b、観察用窓孔71c、第1~第3のタンク支持具72、72A~72C、把持部材72a、フランジ挿入溝72b、第1~第3の加圧装置73、73A~73C、押圧ヘッド部73H、駆動部73a、押し子押圧体73b、部材基片部73c、押圧片部73d、押圧主片73e、側壁部73f、圧力センサ73g(押圧力計測センサ)、後端フランジ保持片73h、保持片挿入孔73i、外側受け片73j、傾斜面73k、押圧部材73n、スプリング73m、押し子収容領域73s、台部74、上面74a、前端面74b、透明板74c、上部構造部75、容器載置台76、容器カバー77、マイクロスコープ78、回収容器81、排液容器82、主排液容器82a、副排液容器82b。