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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022017095
(43)【公開日】2022-01-25
(54)【発明の名称】ピットカバーシステム
(51)【国際特許分類】
   B60S 5/00 20060101AFI20220118BHJP
【FI】
B60S5/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020120184
(22)【出願日】2020-07-13
(71)【出願人】
【識別番号】390014395
【氏名又は名称】株式会社三協リール
(74)【代理人】
【識別番号】100106002
【弁理士】
【氏名又は名称】正林 真之
(74)【代理人】
【識別番号】100120891
【弁理士】
【氏名又は名称】林 一好
(74)【代理人】
【識別番号】100126000
【弁理士】
【氏名又は名称】岩池 満
(72)【発明者】
【氏名】渡邉 真宏
【テーマコード(参考)】
3D026
【Fターム(参考)】
3D026BA27
(57)【要約】
【課題】ピットに複数枚のピットカバーが設置された状態において、作業に必要な部分のみを容易に開閉することができるピットカバーシステムを提供すること。
【解決手段】ピットカバーシステム1は、ピットの幅方向の両側縁にそれぞれ設けられるレール10と、レール10に設置された状態でレール10の長手方向と直交する幅方向の両端部にレール10の上を移動可能な複数のガイドローラが設けられたピットカバー20と、を備え、レール10は、長手方向に沿って所定の間隔で設けられた第1係合部を備え、ピットカバー20は、ピットカバー20がレール10に設置された状態でレール10の長手方向に沿って蛇腹状に折り畳み可能に連結された複数のカバー本体と、少なくとも1つのカバー本体に設けられ、ピットカバー20が前記レールに設置された状態でレール10の第1係合部と係合可能な第2係合部と、を備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
長溝状に形成されたピットの幅方向の両側縁にそれぞれ設けられるレールと、
前記レールを跨ぐように設置され、前記レールに設置された状態で前記レールの長手方向と直交する幅方向の両端部に前記レールの上を移動可能な複数のガイドローラが設けられたピットカバーと、を備え、
前記レールは、
長手方向に沿って所定の間隔で設けられた第1係合部を備え、
前記ピットカバーは、
前記ピットカバーが前記レールに設置された状態で前記レールの長手方向に沿って蛇腹状に折り畳み可能に連結された複数のカバー本体と、
少なくとも1つの前記カバー本体に設けられ、前記ピットカバーが前記レールに設置された状態で前記レールの前記第1係合部と係合可能な第2係合部と、
を備えるピットカバーシステム。
【請求項2】
請求項1に記載のピットカバーシステムにおいて、
前記第1係合部は、前記レールに設けられた凹部であり、
前記第2係合部は、
前記凹部と係合可能な爪部と、
前記爪部を前記カバー本体の両端部から外側に向けて前進又は内側に向けて後退させる可動部と、
を備えるピットカバーシステム。
【請求項3】
請求項2に記載のピットカバーシステムにおいて、
前記可動部は、
前記爪部を前記カバー本体の両端部から外側に向けて前進させる付勢力を付与する付勢部材を備え、
前記付勢部材の付勢力により、前記爪部を前記カバー本体の両端部から外側に向けて前進させて前記レールの前記凹部と係合させる第1の状態と、前記付勢部材の付勢力に抗して、前記爪部を前記カバー本体の両端部から内側に向けて後退させて前記レールの前記凹部との係合を解除する第2の状態とに切り替え可能に構成される、
ピットカバーシステム。
【請求項4】
請求項1~3までのいずれか一項に記載のピットカバーシステムにおいて、
前記ピットカバーを蛇腹状に折り畳んだ状態で、複数の前記カバー本体が厚さ方向に積層されるピットカバーシステム。
【請求項5】
請求項1~4までのいずれか一項に記載のピットカバーシステムにおいて、
複数の前記ガイドローラの中心位置は、複数の前記カバー本体を厚さ方向に積層した状態で直線状に揃うように配置されているピットカバーシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ピットカバーシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
車両等の整備や検査に使用されるピットは、車両が搬入されていないときには縦穴が開放されたままとなる。そのため、安全性を考慮して、未使用時にピットを塞ぐ対策が取られている。例えば、グレーチング等の溝蓋をピットに複数枚設置することにより、ピットを塞ぐことが行われている。また、複数のピットカバーを電動でスライドさせるリフト装置も提案されている(特許文献1、2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001-40752号公報
【特許文献2】特開2005-138698号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
グレーチング等の溝蓋をピットカバーとして複数枚設置すると、ピットに設置した後の移動に手間と労力が必要となる。また、電動のリフト装置は、すべてのピットカバーが互いに連結されているため、ピット上において、作業に必要な部分のみを開閉することが難しい。
【0005】
本発明は、ピットに複数枚のピットカバーが設置された状態において、作業に必要な部分のみを容易に開閉することができるピットカバーシステムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、長溝状に形成されたピットの幅方向の両側縁にそれぞれ設けられるレールと、前記レールを跨ぐように設置され、前記レールに設置された状態で前記レールの長手方向と直交する幅方向の両端部に前記レールの上を移動可能な複数のガイドローラが設けられたピットカバーと、を備え、前記レールは、長手方向に沿って所定の間隔で設けられた第1係合部を備え、前記ピットカバーは、前記ピットカバーが前記レールに設置された状態で前記レールの長手方向に沿って蛇腹状に折り畳み可能に連結された複数のカバー本体と、少なくとも1つの前記カバー本体に設けられ、前記ピットカバーが前記レールに設置された状態で前記レールの前記第1係合部と係合可能な第2係合部と、を備えるピットカバーシステムに関する。
【発明の効果】
【0007】
本発明に係るピットカバーシステムによれば、ピットに複数枚のピットカバーが設置された状態において、作業に必要な部分のみを容易に開閉することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】実施形態におけるピットカバーシステム1の全体を示す斜視図である。
図2】ピットカバーシステム1をピット2に適用した形態を示す斜視図である。
図3】レール10の斜視図である。
図4図3のa-a線断面に相当する概略断面図である。
図5】ピットカバー20の斜視図である。
図6】ピットカバー20の平面図である。
図7】ピットカバー20をY1方向から見たときの側面図である。
図8】ピットカバー20をX2方向から見たときの側面図である。
図9】蛇腹状に折り畳んだピットカバー20の斜視図である。
図10】厚さ方向に積層したピットカバー20の斜視図である。
図11】ロック部30の構成を示す分解斜視図である。
図12】レール10に設置されたピットカバー20のロックを解除する動作を説明する図である。
図13】レール10に設置されたピットカバー20のロックを解除する動作を説明する図である。
図14】ロックを解除したピットカバー20をレール10上で移動する様子を示す図である。
図15】ピットカバー20をレール10上でロックする場合の動作を説明する図である。
図16】ピットカバー20をレール10上でロックする場合の動作を説明する図である。
図17】ピットカバー20をレール10上でロックする場合の動作を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施形態について説明する。なお、本明細書に添付した図面は、いずれも模式図であり、理解しやすさ等を考慮して、各部の形状、縮尺、縦横の寸法比等を、実物から変更又は誇張している。また、図面においては、部材の断面を示すハッチングを適宜に省略する。
本明細書等において、形状、幾何学的条件、これらの程度を特定する用語、例えば、「平行」、「方向」等の用語については、その用語の厳密な意味に加えて、ほぼ平行とみなせる程度の範囲、概ねその方向とみなせる範囲を含む。
【0010】
本明細書等においては、図1に示すように、ピットカバー20の幅方向をX(X1-X2)方向、奥行き方向をY(Y1-Y2)方向、厚み方向をZ(Z1-Z2)方向とする。また、後述するピット2のXYZ方向は、ピット2に設置されたピットカバー20のXYZ方向と対応する。すなわち、ピット2の幅方向をX(X1-X2)方向、奥行き方向をY(Y1-Y2)方向、高さ方向をZ(Z1-Z2)方向とする(図2参照)。なお、本明細書においては、「~方向」を適宜に「~側」ともいう。
【0011】
図1は、本実施形態におけるピットカバーシステム1の全体を示す斜視図である。図2は、ピットカバーシステム1をピット2に適用した形態を示す斜視図である。図3は、レール10の斜視図である。図4は、図3のa-a線断面に相当する概略断面図である。
【0012】
図1に示すように、本実施形態のピットカバーシステム1は、レール10と、ピットカバー20と、を備えている。
図2に示すように、レール10は、ピット2の上方の両側縁に平行に設けられる。また、ピットカバー20は、ピット2に設けられたレール10を跨ぐように設置される。ピットカバー20をレール10に設置することにより、ピット2の上方に開放された領域の一部又は全面を塞ぐことができる。図1では、レール10に1枚のピットカバー20を設置した例を示しているが、実際には、図2に示すように、ピット2の全面を塞ぐように複数枚のピットカバー20がレール10に設置される。なお、図示していないが、ピット2には、作業者が出入りするための設備(梯子、階段等)が設けられている。
【0013】
まず、レール10について説明する。
レール10は、図2に示すように、長溝状に形成されたピット2の幅方向(X方向)の両側縁にそれぞれ設けられる部材である。本実施形態において、レール10は、ピット2の両側縁の上面に設けられている。レール10がピット2の両側縁の上面から突出する高さは、例えば、50mm程度である。なお、本実施形態では、図1において、レール10をY1側からY2側に見たときに、幅方向の右側(X1側)に設けられるレールを「レール10R」、左側に設けられるレールを「レール10L」として説明するが、左右の識別が不要な場合等においては、総称して「レール10」ともいう。また、レール10R及び10Lに共通の構成については、符号の後に「R」、「L」を付さずに、例えば、「ガイドローラ走行溝12」と記載する。
【0014】
レール10R及び10Lは、ピット2の奥行方向(Y方向)に沿って平行に設けられている。レール10R及び10Lの幅方向(X方向)の間隔Wは、整備用ピットであれば、1000~1200mm程度、検査用ピットであれば、700~800mm程度である。
図3に示すように、レール10R及び10Lは、左右対称に形成されている。また、図4に示すように、レール10Rは、X-Z断面において、左側(X2側)に開口11を有する縦長の四角形に形成されている。レール10Lは、X-Z断面において、右側(X1側)に開口11を有する縦長の四角形に形成されている。
【0015】
レール10R及び10Lには、ガイドローラ走行溝12、溝枠部13が形成されている。ガイドローラ走行溝12は、ピットカバー20に設けられたガイドローラ24(後述)が回転しながら移動する領域である。ピットカバー20をレール10に設置する際、ピットカバー20のガイドローラ24は、ガイドローラ走行溝12に嵌め込まれる。ピットカバー20のガイドローラ24をガイドローラ走行溝12に嵌め込むことにより、ピットカバー20をレール10の延在する奥行方向(Y方向)に沿って移動させることができる。溝枠部13は、ガイドローラ走行溝12の外枠となる部分である。溝枠部13には、図3の部分拡大図に示すように、凹部(第1係合部)14が形成されている。凹部14は、ピットカバー20(ロック部30)の爪部311(後述)が係合する部分である。凹部14は、図3に示すように、レール10の延在する奥行(長手)方向に沿って等間隔で形成されている。なお、図3では、レール10Rの凹部14が図示されていないが、凹部14は、レール10R及び10Lの両方に設けられている。
【0016】
次に、ピットカバー20について説明する。
図5は、ピットカバー20の斜視図である。図6は、ピットカバー20の平面図である。図7は、ピットカバー20をY1方向から見たときの側面図である。図8は、ピットカバー20をX2方向から見たときの側面図である。図9は、蛇腹状に折り畳んだピットカバー20の斜視図である。図10は、厚さ方向に積層したピットカバー20の斜視図である。
【0017】
図5に示すように、本実施形態のピットカバー20は、互いに連結された4枚のカバー本体21A、21B、21C及び21D(以下、「カバー本体21」ともいう)を備えている。カバー本体21は、外枠22とパネル材23により構成されている。外枠22は、カバー本体21の外周部分に設けられる構造体である。外枠22は、例えば、断面が略凹形の鋼材を四角形の枠形に接合することにより構成される。パネル材23は、外枠22の内部に設けられる部材である。パネル材23としては、例えば、ハニカムコア材からなる樹脂製の軽量パネルや、金属製のエキスパンドメタル、パンチングメタル、鉄板、木板等を用いることができる。4枚のカバー本体21は、幅方向(X方向)及び奥行方向(Y方向)が同一寸法となるように構成されている。なお、4枚のカバー本体21のうち、最もY1側のカバー本体21Aには、ロック部30(後述)が設けられている。
【0018】
図6に示すように、4枚のカバー本体21A~21Dは、それぞれ幅方向(X方向)の両端部にガイドローラ24が設けられている。ガイドローラ24は、回動自在に構成された車輪状の部品である。カバー本体21Aと21Bの幅方向の両端部において、ガイドローラ24は、カバー本体21Aと21Bとの連結面から、それぞれ長さLの位置に設けられている。同様に、カバー本体21Cと21Dの幅方向の両端部において、ガイドローラ24は、カバー本体21Cと21Dとの連結面から、それぞれ長さLの位置に設けられている。本構成によれば、後述するように、4枚のカバー本体21A~21Dを厚さ方向に積層したときに、各ガイドローラ24の中心位置を直線状に揃えることができる。また、後述するように、長さLを適切な寸法に設定することにより、カバー本体21A~21Dを積層した状態において、ピットカバー20がレール10の上面から突出する高さを小さくすることができる。
【0019】
ガイドローラ24は、ピットカバー20をレール10に設置する際に、レール10のガイドローラ走行溝12に嵌め込まれる。ガイドローラ24がレール10のガイドローラ走行溝12に嵌め込まれた状態で、ピットカバー20をレール10の延在する奥行方向(Y方向)に沿って押したり、引いたりすると、ピットカバー20のガイドローラ24がガイドローラ走行溝12の上を回転しながら移動する。これにより、ピットカバー20を、レール10の奥行方向に沿ってY1方向又はY2方向に移動させることができる。ピットカバー20は、図6に示すように、4枚のカバー本体21A~21Dを板状に展開した状態で移動させることもできるし、後述するように、積層した状態で移動させることもできる。
【0020】
4枚のカバー本体21A~21Dは、それぞれ幅方向(X方向)の2箇所に設けられた丁番25により連結されている。具体的には、図6及び図8に示すように、カバー本体21AのY2側とカバー本体21BのY1側は、ピットカバー20のZ2側の面において、2つの丁番25により連結されている。カバー本体21BのY2側とカバー本体21CのY1側は、ピットカバー20のZ1側の面において、2つの丁番25により連結されている。カバー本体21CのY2側とカバー本体21DのY1側は、ピットカバー20のZ2側の面において、2つの丁番25により連結されている。
【0021】
4枚のカバー本体21A~21Dが連結されたピットカバー20は、図9に示すように、奥行き方向(Y方向)に沿って蛇腹状に折り畳むことができる。すなわち、ピットカバー20は、カバー本体21Aとカバー本体21Bとの間が山折り、カバー本体21Bとカバー本体21Cとの間が谷折り、カバー本体21Cとカバー本体21Dとの間が山折りとなるように折り畳むことができる。なお、「蛇腹状に折り畳む」とは、カバー本体21が4枚の場合で例示すると、4枚のカバー本体21A~21Dを、側面視において逆W字形に変形させることをいう。
【0022】
蛇腹状に折り畳んだピットカバー20を更に重ね合わせると、図10に示すように、4枚のカバー本体21A~21Dを厚さ方向(図10ではY方向)に積層することができる。図10に示すように、4枚のカバー本体21A~21Dを厚さ方向に積層したときに、各ガイドローラ24の中心位置は、仮想線bで示すように、直線状に揃った状態となる。また、4枚のカバー本体21A~21Dを厚さ方向に積層することにより、ピットカバー20は、略直方体の形状となるため、収納、保管等が容易となる。
【0023】
次に、ピットカバー20のカバー本体21Aに設けられたロック部(第2係合部)30の構成について説明する。
図11は、ロック部30の構成を示す分解斜視図である。図11は、ロック部30の構成を分かり易くするため、図1とは逆にピットカバー20をY2側からY1側に見たときの状態を示している。図11に示すように、ロック部30は、カバー本体21AのY1側の端に設けられている。ロック部30は、ハウジングカバー300、ロックラッチ310、スプリング320、ロック解除ワイヤー330等を備えている。なお、ロック部30は、ピットカバー20の幅方向(X方向)において形状が左右対称となる部材(例えば、ロックラッチ310)のほか、位置に係わらず同一形状の部材(例えば、スプリング320)を備えている。これらの部材については、左右を識別する「R」、「L」の符号を省略して説明する。
【0024】
ハウジングカバー300は、ロック部30を構成する各部が収納される部分であり、カバー本体21AのY1側に設けられる。ハウジングカバー300は、図11のY-Z断面において、Y2側に開口301を有する縦長の四角形に形成されている。ハウジングカバー300の幅方向の両側(X1-X2側)にはスリット302が設けられている。スリット302は、ロックラッチ310(後述)の爪部311が出し入れされる縦長の開口である。
【0025】
ハウジングカバー300の幅方向の両側(X1-X2側)において、スリット302よりも内側には、それぞれスペーサー303が設けられている。スペーサー303は、ロックラッチ310を移動自在に支持する板状の部材である。スペーサー303は、ハウジングカバー300のY1側の側面に取り付けられている。スペーサー303には、凸部304、ネジ穴305が設けられている。凸部304は、スプリング320の端部を支持すると共に、ロックラッチ310が幅方向の両側(X1-X2側)から外側へ移動する量を規制する部分である。ネジ穴305は、ロックラッチ310をスペーサー303へ取り付ける際に、ネジ307(後述)が締結される雌ネジ穴である。
【0026】
ハウジングカバー300の幅方向の両側(X1-X2側)において、スペーサー303よりも内側には、それぞれワイヤー穴306が形成されている。ワイヤー穴306は、ロック解除ワイヤー330(後述)の一部が貫通する開口である。ワイヤー穴306は、ハウジングカバー300のZ2側の底面に形成されている。
【0027】
ロックラッチ310は、レール10の凹部14(図3参照)と係合する爪部311を有する板状の部材である。ロックラッチ310は、ハウジングカバー300に設けられたスペーサー303のY2側の面と接するように設けられる。ロックラッチ310は、爪部311、スプリング収納部312、スライド穴315を備えている。
【0028】
爪部311は、ピットカバー20をレール10に設置した際に、レール10の凹部14と係合する部分である。図11に示すように、X2側のロックラッチ310において、爪部311は、X2側からX1側に向けて上方向(Z1方向)に傾斜する当接面311aを備えている。また、X1側のロックラッチ310において、爪部311は、X1側からX2側に向けて上方向に傾斜する当接面311aを備えている。
【0029】
スプリング収納部312は、スプリング320が収納される略四角形の開口である。スプリング収納部312は、長手方向の一端にスプリング係合片313を備えている。スプリング係合片313は、スプリング320の一方の端部が係合する部分である。また、スプリング収納部312は、長手方向の他端に短辺部314を備えている。短辺部314は、ハウジングカバー300に設けられたスペーサー303の凸部304と係合する部分である。
【0030】
スライド穴315は、ロックラッチ310の移動方向に延在する長穴である。スライド穴315は、ロックラッチ310の移動方向(X方向)と直交するZ方向に沿って2箇所設けられている。
スプリング320は、ロックラッチ310をピットカバー20(カバー本体21A)の幅方向の両端部から外側に向けて前進させる付勢力を付与する付勢部材である。本実施形態において、スプリング320は、圧縮された方向とは反対側の方向に付勢力(弾性力)を発生するコイルバネである。
【0031】
図11において、例えば、X2側に位置するロックラッチ310を、ハウジングカバー300のスペーサー303の側面と接するように配置して、2本のネジ307をそれぞれスライド穴315に挿入し、スペーサー303のネジ穴305と締結することにより、ロックラッチ310をハウジングカバー300に取り付けることができる。ネジ307は、ロックラッチ310をハウジングカバー300に取り付けたときに、ロックラッチ310とスペーサー303との間に僅かな隙間が形成されるように長さが設定されている。そのため、ロックラッチ310をハウジングカバー300に取り付けた後、ロックラッチ310を、ハウジングカバー300の幅方向(X方向)に沿って移動させることができる。X1側に位置するロックラッチ310についても同様である。
【0032】
ロックラッチ310のスプリング収納部312には、スプリング320が取り付けられる。スプリング320は、一方の端部がスプリング収納部312のスプリング係合片313と係合するように取り付けられ、他方の端部がスペーサー303の凸部304と係合するように取り付けられる。スプリング収納部312にスプリング320を収納すると、ロックラッチ310の爪部311は、図7に示すように、ハウジングカバー300の幅方向(X方向)の両側から突出した状態となる。ピットカバー20は、保管状態又はレール10に設置された状態では、ロックラッチ310の爪部311がハウジングカバー300の幅方向の両側から突出した状態となる。
【0033】
ロック解除ワイヤー330は、レール10に設置されたピットカバー20のロックを解除する際に、作業者により操作されるワイヤー状の部材である。図11に示すように、ロック解除ワイヤー330の一端は、X1側のロックラッチ310と連結されている。また、ロック解除ワイヤー330の他端は、X2側のロックラッチ310と連結されている。図7に示すように、ロック解除ワイヤー330の中央部分(略U字形部分)は、ハウジングカバー300のワイヤー穴306を貫通している。そのため、ロック解除ワイヤー330の中央部分は、ハウジングカバー300の下側(Z2側)に突出している。これにより、作業者は、ピットカバー20の外部からロック解除ワイヤー330を操作することができる。
【0034】
ピットカバー20において、作業者がロック解除ワイヤー330を操作していない状態では、ロックラッチ310がスプリング320の付勢力により、ピットカバー20の幅方向(X方向)の両側から外側に向けて前進する。そのため、ロックラッチ310の爪部311は、ハウジングカバー300の幅方向の両側から突出した状態となる。一方、後述するように、作業者がロック解除ワイヤー330を引っ張ると、ロックラッチ310がスプリング320の付勢力に抗して、ピットカバー20の幅方向の両側から内側に向けて後退する。そのため、ロックラッチ310の爪部311は、ハウジングカバー300の幅方向の両側から引っ込んだ状態となる。
【0035】
次に、上述したロック部30の動作について説明する。
図12及び図13は、レール10に設置されたピットカバー20のロックを解除する動作を説明する図である。図14は、ロックを解除したピットカバー20をレール10上で移動する様子を示す図である。
図12図14では、レール10及びピットカバー20を、図1と同じ向きから見たときの状態を示している。図12及び図13では、ロック部30の動作を分かり易くするため、ハウジングカバー300を透明化して、裏側の構造を実線で示している。図12及び図13では、ロック部30において、左側(X2側)に配置されたロックラッチ310の動作を示しているが、図示していない右側(X1側)に配置されたロックラッチ310も、動作の向きは反対となるが同様に動作する。
【0036】
レール10に設置されたピットカバー20のロックを解除する場合、作業員は、カバー本体21A(ピットカバー20)の手前側(Y1側)を支持し、図12に示すように、ロック解除ワイヤー330を下方向(矢印方向:Z2方向)に引っ張る。これにより、ロックラッチ310がスプリング320の付勢力に抗して、ハウジングカバー300の幅方向の側面から内側(矢印方向)に向けて後退する。そのため、図13に示すように、ロックラッチ310の爪部311は、ハウジングカバー300(不図示)の幅方向の側面から内側に引っ込んだ状態となる。図示していないが、ハウジングカバー300の右側(X1側)に配置されたロックラッチ310の爪部311も、同様にハウジングカバー300の幅方向の側面から内側に引っ込んだ状態となる。
【0037】
これにより、レール10の凹部14とピットカバー20のロックラッチ310との係合が外れるため、レール10に設置されたピットカバー20のロックが解除される(第2の状態)。ピットカバー20のロックを解除することにより、作業者は、ピットカバー20を蛇腹状に折り畳んで、厚さ方向に積層した状態とすることができる。ピットカバー20は、図14に示すように、厚さ方向に積層した状態で奥行方向(Y方向)に移動させることができる。
【0038】
本実施形態のピットカバー20は、4枚のカバー本体21A~21Dを厚さ方向に積層したときに、ガイドローラ24の中心位置が直線状に揃うため、レール10上において、より容易に移動させることができる。また、隣り合うカバー本体21の連結面からガイドローラ24の中心位置までの長さL(図6参照)を適切な寸法に設定することにより、図14に示すように、積層した状態のピットカバー20がレール10の上面から突出する高さHを小さくすることができる。高さHを小さくすることにより、ピット2の上に停止している車両とピットカバー20との接触を抑制することができる。
【0039】
図15図17は、ピットカバー20をレール10上でロックする場合の動作を説明する図である。ここでは、一旦ロックが解除されたピットカバー20を、所望の位置で再びロックする場合について説明する。なお、図15図17においても、ロック部30の動作を分かり易くするため、ハウジングカバー300を透明化して、裏側の構造を実線で示している。
【0040】
図15において、ピットカバー20をレール10上でロックする場合、作業員は、カバー本体21A(ピットカバー20)の手前側(Y1側)を支持した状態で、カバー本体21Aを上方向(矢印方向:Z1方向)に引き上げる。これにより、図16に示すように、ロックラッチ310の爪部311がレール10の溝枠部13と接触する。ロックラッチ310の爪部311がレール10の溝枠部13と接触した状態で、更にカバー本体21Aを上方向に引き上げると、レール10の溝枠部13が爪部311の当接面311aを上側から下側に沿って相対的に移動するため、ロックラッチ310は、X1方向に押圧される。そのため、ロックラッチ310は、スプリング320の付勢力に抗して、ピットカバー20の内側に向けて後退する。これにより、ロックラッチ310の爪部311は、ピットカバー20の幅方向の左側面から引っ込んだ状態となる。図示していないが、ハウジングカバー300の右側(X1側)に配置されたロックラッチ310の爪部311も、同様にピットカバー20の幅方向の右側面から内側に引っ込んだ状態となる。
【0041】
この後、更にカバー本体21Aを上方向に引き上げて、ロックラッチ310の爪部311がレール10の溝枠部13を超えた位置に達すると、レール10の溝枠部13がロックラッチ310をX1方向へ押圧する力が解除されるため、ロックラッチ310は、スプリング320の付勢力により、ピットカバー20の外側に向けて前進する。これにより、ロックラッチ310の爪部311は、ピットカバー20の幅方向の左側面から外側に突出した状態となる。図示していないが、ハウジングカバー300の右側(X1側)に配置されたロックラッチ310の爪部311も、同様にピットカバー20の幅方向の右側面から外側に突出した状態となる。
【0042】
次に、カバー本体21Aの手前側を下方に降ろすと、外側に突出したロックラッチ310の爪部311がレール10の溝枠部13の上に載った状態となる。この状態で、作業者がピットカバー20を前側(Y1側)又は後側(Y2側)に移動させると、図17に示すように、レール10の凹部14(溝枠部13)と、ピットカバー20の幅方向の左側面から突出したロックラッチ310の爪部311とが係合する(第1の状態)。図示していないが、右側(X1側)に配置されたレール10(10R)の凹部14(溝枠部13)と、ピットカバー20の幅方向の右側面から突出したロックラッチ310の爪部311も係合する。このように、ピットカバー20の幅方向の両側において、ロックラッチ310の爪部311がそれぞれレール10の凹部14と係合することにより、ピットカバー20の前後方向(Y方向)への移動が規制される。これにより、レール10に設置したピットカバー20を、レール10上の所望の位置にロックした状態とすることができる。
【0043】
上述した本実施形態のピットカバーシステム1によれば、例えば、以下のような効果を奏する。
本実施形態のピットカバーシステム1において、ピットカバー20を構成するカバー本体21A~21Dは、レール10の長手方向に沿って蛇腹状に折り畳み可能に連結されている。そのため、作業者は、ピットの所望の位置において、ピットカバー20の一部又は全部を蛇腹状に折り畳むことができる。したがって、本実施形態のピットカバーシステム1によれば、ピット2に複数枚のピットカバー20が設置された状態において、作業に必要な部分のみを容易に開閉することができる。また、本実施形態のピットカバー20は、蛇腹状に折り畳んだ状態から、更に厚さ方向に積層した状態にすることができる。ピットカバー20を厚さ方向に積層した状態とすることにより、ピット上をより広く開けることができるため、作業スペースを十分に確保することができる。
【0044】
本実施形態のピットカバー20において、カバー本体21A~21Dは、幅方向の両端部にそれぞれガイドローラ24を備えている。そのため、蛇腹状に折り畳んだ状態又は厚さ方向に積層した状態において、ピットカバー20全体をより小さな力で移動させることができる。また、本実施形態のピットカバー20は、カバー本体21A~21Dを厚さ方向に積層したときに、ガイドローラ24の中心位置が直線状に揃うように構成されている。そのため、厚さ方向に積層した状態のピットカバー20を、レール10上において、より容易に移動させることができる。
【0045】
本実施形態のピットカバーシステム1は、レール10に凹部14が設けられ、ピットカバー20に凹部14と係合可能なロックラッチ310を備えるロック部30が設けられている。そのため、レール10にピットカバー20を設置した状態で、レール10の凹部14とピットカバー20のロックラッチ310とを係合させることにより、ピットカバー20を、レール10上の所望の位置にロックした状態とすることができる。これによれば、例えば、作業者が誤って(意図せずに)ピットカバー20の上に載った際や、ピットカバー20の上に載っている作業者が転倒してしまった際に、ピットカバー20が横滑りしてピットが開いてしまう不具合を抑制することができる。
【0046】
本実施形態のピットカバー20によれば、レール10にピットカバー20が設置された状態において、ロック部30のロック解除ワイヤー330を下方向に引っ張ることにより、レール10の凹部14とピットカバー20のロックラッチ310との係合を外すことができる。このように、本実施形態のピットカバー20によれば、作業者は、ロック解除ワイヤー330を下方向に引っ張るという簡単な操作により、レール10に設置されたピットカバー20のロックを解除することができる。
【0047】
本実施形態のピットカバー20によれば、レール10にピットカバー20を載せた状態で、カバー本体21Aの手前側を上方向に引き上げることにより、ロックラッチ310をピットカバー20の内側に引っ込ませた後、レール10上でロックラッチ310を再びピットカバー20の外側に突出させることができる。これによれば、作業者は、ロック解除ワイヤー330を操作することなしに、カバー本体21Aの手前側を上方向に引き上げるという簡単な動作を行うだけで、ピットカバー20をレール10上にロックさせることができる。
【0048】
以上、本開示の実施形態について説明したが、本開示は、前述した実施形態に限定されるものではなく、後述する変形形態のように種々の変形や変更が可能であって、それらも本開示の技術的範囲内に含まれる。また、実施形態に記載した効果は、本開示から生じる最も好適な効果を列挙したに過ぎず、実施形態に記載したものに限定されない。なお、上述の実施形態及び後述する変形形態は、適宜に組み合わせて用いることもできるが、詳細な説明は省略する。
【0049】
(変形形態)
ピットカバー20を構成するカバー本体21は、4枚に限らず、2枚又は3枚であってもよいし、5枚以上であってもよい。また、複数のカバー本体21の奥行方向(Y方向)の長さは、実施形態のように同一とすることが好ましいが、それぞれ異なっていてもよい。
レール10は、ピット2の両側縁に埋め込まれる構成としてもよい。このような構成とすることにより、レール10をピット2の上面から突出させないようにできるため、ピット2の上に停止している車両と、厚さ方向に積層したピットカバー20との接触を、より効果的に抑制することができる。
【0050】
ロック部30において、ロックラッチ310を、幅方向の右側(X1側)又は左側(X2側)のいずれか一方に設けた構成としてもよい。その場合、レール10は、ロックラッチ310が設けられた側にのみ凹部14を設けた構成としてもよい。また、ロック部30を、カバー本体21Aだけでなく、最もY2側のカバー本体21Dに設けてもよい。更に、ロック部30において、ロックラッチ310の爪部311を矩形状としてもよい。本構成によれば、図15図17に示すようなピットカバー20をレール10上でロックする場合においても、ロック解除ワイヤー330を操作する必要があるが、ロックラッチ310の形状をより簡素化することができる。
【0051】
ロック部30は、外部からの操作によりロックラッチ310をピットカバー20の内側に引っ込んだ状態及び突出した状態に変化させることができれば、どのような構成であってもよい。例えば、ロックラッチ310を、モータ、電磁石等により動作させるようにしてもよい。また、ロック解除ワイヤー330の代わりに、レバー、ダイヤル等によりロックラッチ310を動作させる構成としてもよい。
【0052】
ピットカバー20を構成するカバー本体21A~21Dにおいて、山折りする連結部分を谷折りとし、谷折りする連結部分を山折りとしてもよい。カバー本体21が4枚の場合で例示すると、4枚のカバー本体21A~21Dは、側面視においてW字形に変形するように蛇腹状に折り畳み可能に構成されていてもよい。カバー本体21を3枚又は5枚以上とした場合も同様である。
【符号の説明】
【0053】
1:ピットカバーシステム、10(10R,10L):レール、12:ガイドローラ走行溝、13:溝枠部、14:凹部、20:ピットカバー、21(21A~21D):カバー本体、24:ガイドローラ、30:ロック部、300:ハウジングカバー、310:ロックラッチ、311:爪部、320:スプリング、330:ロック解除ワイヤー
図1
図2
図3
図4
図5
図6
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図8
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図10
図11
図12
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図14
図15
図16
図17