(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022170954
(43)【公開日】2022-11-11
(54)【発明の名称】非加熱ポテト菓子
(51)【国際特許分類】
A23G 3/00 20060101AFI20221104BHJP
【FI】
A23G3/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021077261
(22)【出願日】2021-04-30
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り ウェブサイト掲載日:令和2年9月7日 ウェブサイトのアドレス:https://www.kracie.co.jp/release/10164065_3833.html
(71)【出願人】
【識別番号】393029974
【氏名又は名称】クラシエフーズ株式会社
(72)【発明者】
【氏名】武内 潤一
(72)【発明者】
【氏名】濱崎 真一
(72)【発明者】
【氏名】寺澤 和広
【テーマコード(参考)】
4B014
【Fターム(参考)】
4B014GG05
4B014GK03
4B014GL03
4B014GL11
4B014GP01
(57)【要約】
【課題】
ほくほく感を有し、かつ連続生産が可能な非加熱ポテト菓子、さらに詳しくは、柔らかくほぐれ崩れるような食感を有しつつ、連続生産性を有する非加熱ポテト菓子を提供する。
【解決手段】
非加熱ポテト菓子全体重量中、乾燥ポテトを25~50重量%、水系原料を7.0~18.5重量%含有することを特徴とする非加熱ポテト菓子により上記課題を解決する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
非加熱ポテト菓子全体重量中、乾燥ポテトを25~50重量%、水系原料を7.0~18.5重量%含有することを特徴とする非加熱ポテト菓子。
【請求項2】
前記水系原料が、水飴、グリセリン及び水である請求項1記載の非加熱ポテト菓子。
【請求項3】
さらに、プルランを含有する請求項1又は2記載の非加熱ポテト菓子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ほくほく感を有し、かつ連続生産が可能な非加熱ポテト菓子、さらに詳しくは、柔らかくほぐれ崩れるような食感を有しつつ、連続生産性を有する非加熱ポテト菓子に関する。
【背景技術】
【0002】
ポテトフレークやポテトグラニュールのような乾燥ポテトは、じゃがいも風味を付与するために有効な原料である。さらに、生のじゃがいもをスライスして製造するスナック菓子に比べ、生じゃがいもに由来するばらつきを解消できること、1年を通じて容易にポテト原料を確保できること、同じ形の菓子の連続生産が可能であることなどの利点から、成型ポテトスナック菓子の製造に使用されている。
【0003】
成型ポテトスナック菓子としては、乾燥ポテト及びセルロース系粉末を含有する成型ポテトスナック(例えば、特許文献1参照)や、乾燥千切りポテト及び/又は乾燥スライスポテトとポテトフレーク及び/又はポテトグラニュールを含有する即席成型ポテト用素材を用いて製造する成型ポテト食品(例えば、特許文献2参照)が挙げられる。
【0004】
しかしながら、該成型ポテトスナック菓子は、生地を成型後、前者はフライによってパリッとした食感に、後者は120~240℃の加熱調理によってカリカリ、サクサクとしたクリスピー感のある食感に製造されていることから、ほくほく感を感じることはなかった。
【0005】
一方、マッシュポテトフレークなどの野菜成分を5~80重量%含有する固形野菜食品が知られている(例えば、特許文献3参照)。該固形野菜食品は、野菜成分に常温で固体の食用油脂成分を混合して固化して製造される。したがって、水分などの水系原料を含まない組成のため、原料のまとまりが悪く、連続生産に支障をきたす場合があり連続生産性に課題があった。
【0006】
他方、ポテトフレークと食物繊維の混合物にゲル化剤を添加混合してゲル化させるイミテーションポテトが知られている(例えば、特許文献4参照)。しかしながら、該イミテーションポテトは、ケーシングやカップ等の容器に充填することが必要なゼリーであることから、ほぐれ崩れるような食感のほくほく感を感じることはできなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2011-72236号公報
【特許文献2】特開平9-196号公報
【特許文献3】特開平8-214824号公報
【特許文献4】特開平7-227239号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、以上のような事情に鑑みなされたものであって、その目的とするところは、ほくほく感を有し、かつ連続生産が可能な非加熱ポテト菓子、さらに詳しくは、柔らかくほぐれ崩れるような食感を有しつつ、連続生産性を有する非加熱ポテト菓子を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、非加熱ポテト菓子全体重量中、乾燥ポテトを25~50重量%、水系原料を7.0~18.5重量%含有することを特徴とする非加熱ポテト菓子により上記目的を達成する。
【0010】
好ましくは、前記水系原料が、水飴、グリセリン及び水である。より好ましくは、さらに、プルランを含有する。
【0011】
すなわち、本発明者らは、クリスピー感のあるスナックポテト菓子とは異なる、じゃがいも風味の新たなポテト菓子を提供するために、じゃがいもを蒸(ふか)したようなほくほく感を有するポテト菓子について検討した。その結果、ポテトフレークやポテトグラニュールのような乾燥ポテトを非加熱で用いると、じゃがいも風味とともにじゃがいものほくほく感も付与できることを見出した。
【0012】
しかしながら、このほくほく感とは、ほぐれ崩れるような食感をポテト菓子に付与することでもあるため、該菓子の製造において、ポテト菓子生地がまとまり難い、該生地が製造ライン上で千切れ易くなるなど、連続生産性を低下させる、あるいは連続生産できない要因にもなり得ることが判明した。
【0013】
そこで、製造適正のある非加熱ポテト菓子について鋭意検討した結果、特定量の乾燥ポテトに特定量の水系原料を用いると、じゃがいもの風味を消すことなくじゃがいもの柔らかくほぐれ崩れるような食感を有する非加熱ポテト菓子を連続生産できることを見出し、本発明に到達した。
【発明の効果】
【0014】
本発明の非加熱ポテト菓子は、ほくほく感を有し、かつ連続生産が可能である。
【0015】
本明細書において、「ほくほく感」とは、柔らかくほぐれ崩れるような食感を意味する。すなわち、蒸(ふか)したじゃがいものように、水気が少なくもろく崩れやすい態様を指す。具体的には、空気感のある組織のため、軽く噛むと組織が細かくほぐれて崩れるような崩壊性を有する。なお、本発明の非加熱ポテト菓子は、常温(5~35℃)であってもほくほく感、すなわち崩壊性を感じることができる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明を詳しく説明する。本発明の非加熱ポテト菓子は、乾燥ポテト及び水系原料を含有することが、崩壊性及び連続生産性の点で重要である。
【0017】
非加熱ポテト菓子の非加熱とは、製造過程において、煮詰める、水分を蒸発させるなどの100℃以上の加熱工程がなく、加熱する場合でも100℃未満で処理することを意味する。
【0018】
<乾燥ポテト>
乾燥ポテトは崩壊性及び連続生産性の点で重要である。乾燥ポテトとしては、例えば、ポテトフレーク、ポテトグラニュール、文部科学省の食品成分データベースに記載されている乾燥マッシュポテトなどが挙げられ、単独でも複数組み合せて用いてもよい。これらの中でも、ポテトフレークが、じゃがいもの風味の点で好適に用いられる。
【0019】
乾燥ポテトの含有量は、非加熱ポテト菓子全体重量中25~50重量%であることが、食感及び連続生産性の点で重要である。25重量%以上であれば、空気感のある組織で崩
壊性が良好である。一方、50重量%以下であれば、原料がまとまり易く連続生産性が良好である。
【0020】
<水系原料>
水系原料は、乾燥ポテトなどの原料をまとめ、連続生産性を良好にする点で重要である。水系原料としては、例えば、含水原料、常温液体原料、水などが挙げられ、単独でも複数組み合わせて用いてもよい。
【0021】
含水原料としては、例えば、水飴、還元水飴、異性化糖などが好適に用いられ、非加熱ポテト菓子生地の物性(柔軟性、粘性、保水性など)に影響し、連続生産性を良好にする。常温液体原料としては、例えば、グリセリンなどが挙げられ、非加熱ポテト菓子生地を軟化し、また保水性を付与して、連続生産性を良好にする点で好適に用いられる。
【0022】
好ましくは、水飴、グリセリン及び水を用いることが、高い保水性や軟化作用により乾燥ポテトなどの原料がまとまり易く連続生産性が良好となり、さらにポテト菓子に適した低甘味設計及び費用対効果の点で好適である。
【0023】
水系原料の総含有量は、非加熱ポテト菓子全体重量中7.0~18.5重量%であることが食感及び連続生産性の点で重要である。7.0重量%以上であれば、原料がまとまり易く連続生産性が良好である。一方、18.5重量%以下であれば、空気感のある組織で崩壊性が良好である。
【0024】
また、乾燥ポテト及び水系原料が上述の含有量範囲のとき、好ましくは、水分含有量を非加熱ポテト菓子全体重量中4.8~9.3重量%に設計すると、保形性及び連続生産性の点で好適である。4.8重量%以上であれば、非加熱ポテト菓子生地が硬く流動性の低い物性とならず、連続生産性が良好である。一方、9.3重量%以下であれば、非加熱ポテト菓子生地が軟らかくべたつきの強い物性とならず、連続生産性が良好である。
【0025】
また、本発明の非加熱ポテト菓子には、本発明の目的を損なわない範囲で、適宜選択した副原料を用いてもよい。例えば、増粘剤、水系原料を除く糖質甘味料(単糖類(ブドウ糖、果糖、キシロース等)、二糖類以上の多糖類(砂糖(上白糖、グラニュー糖、粉糖等)、乳糖、麦芽糖、異性化乳糖、トレハロース、オリゴ糖等)、糖アルコール(キシリトール、マルチトール、還元パラチノース(パラチニット)、ソルビトール、マンニトール、エリスリトール、還元乳糖等)、高甘味度甘味料(アセスルファムカリウム、スクラロース、アスパルテーム、ネオテーム等)、油脂、乳化剤、各種風味原料(畜肉エキス、魚介エキス、野菜エキス、調味料(醤油、アミノ酸、核酸、有機酸、食塩、無機塩、香辛料等)、乳製品等)、食物繊維、着色料、香料等が挙げられる。これらは、単独でも、複数組み合せて用いてもよい。
【0026】
上記増粘剤としては、例えば、プルランが好適に用いられる。プルランはpHや塩類の影響下でも良好な結着性を示し、乾燥ポテトや糖質甘味料などの粉体原料をまとめ非加熱ポテト菓子生地に保形性を付与する点で有効である。
【0027】
次に、本発明の非加熱ポテト菓子の製造方法は、乾燥ポテト、水系原料等の原料を混合して得られた非加熱ポテト菓子生地を、非加熱ポテト菓子形状に成形する方法が挙げられる。例えば、以下のように製造することができる。
【0028】
まず、乾燥ポテト、水系原料、及び必要に応じて副原料を、ニーダー、リボンミキサー等の混錬機中で混合して非加熱ポテト菓子生地を得る。なお、混合時の加熱は100℃未満とすることが、好ましくは30~50℃の温度帯とすることが、乾燥ポテトや素材によ
る風味原料等の風味を維持できる点で重要である。また、副原料に増粘剤を用いる場合は、あらかじめ増粘剤を水で溶解させてから生地に混合してもよい。
【0029】
次に、非加熱ポテト菓子生地を成形し、本発明の非加熱ポテト菓子を得る。成形方法は、例えば、シート成形、ロープ成形、モールド成形、スタンピング成形、押出し成形、カット成形などの公知の成形方法が挙げられる。
【0030】
好ましくは、押出し成形が、特に特開2013-074874号公報に記載の押出し直後に切断する押出し成形方法が好適である。この方法は、切断直後に目的形状に成形できることから、シート成形後の型抜きで生じるような無駄な残生地が発生せず、効率良く製造できる点で好適である。また、押出す吐出口がそのまま目的の非加熱ポテト菓子の形状になることから、吐出口の形状を変更することで、自在に非加熱ポテト菓子のデザインを設計できる点でも好適である。更に、複数の異なる形状の吐出口を備えることで、同時に異なる形状を量産成形することもできる。
【0031】
上述のように製造された非加熱ポテト菓子を製品化する場合は、適宜包装体で包装すればよい。なお、包装体の材質は特に制限するものではなく、例えば、軟質プラスチック(ポリエチレン、ポリプロピレンなど)、紙、金属(アルミ、アルミ蒸着、ガラス蒸着など)等、適宜用いればよい。もしくはこれらの材質を組み合わせてラミネートしたものでもよい。また、包装体の形状も特に限定するものではなく、袋状、筒体、箱等適宜設定すればよい。
【実施例0032】
以下、本発明を実施例に基づき具体的に説明するが、本発明は下記実施例に限定されるものではない。
【0033】
<実施例1~8、比較例1~8>
≪非加熱ポテト菓子の製造≫
表1及び2に示す組成の非加熱ポテト菓子を製造した。まず、表1及び2に示す原料をニーダー中で混合して非加熱ポテト菓子生地を得た。なお、混合中の生地温度は35℃であった。また、プルランは、あらかじめ水系原料中の水に溶解させてから生地に混合した。次に、非加熱ポテト菓子生地を押出し成形し、一辺が10mmの略立方体形状の非加熱ポテト菓子(1.4g/個)を製造した。
【0034】
【0035】
【0036】
専門パネラー3名で、実施例及び比較例の崩壊性(常温(28℃)での官能評価)及び連続生産性(ニーダー混合時の生地のまとまり、押出し成形可否など)について、下記の基準で評価した。その結果と、さらに、総合評価(崩壊性及び連続生産性が共に評点3以上を○、それ以外は×とする)とを併せて表1及び2に示す。
【0037】
<崩壊性>
1:密な組織で、非常にまとまりが良く、咀嚼し続けても組織を維持している。
2:密な組織で、まとまりが良く、複数回咀嚼すると漸く組織がほぐれる。
3:やや空気感のある組織で、複数回咀嚼することで組織がほぐれて崩れる。
4:空気感のある組織で、複数回咀嚼することで組織が細かくほぐれて崩れる。
5:空気感のある組織で、軽く噛むだけで組織がほぐれて崩れる。
【0038】
<連続生産性>
1:ニーダー混合で生地がまとまらず、押出し成形ができない。
2:ニーダー混合で生地はまとまるが、安定的に押出し成形ができない。
3:安定的に押出し成形ができる。
4:極めて安定的に押出し成形ができる。
5:極めて安定的に押出し成形ができ、かつ成形速度が速い。
【0039】
評価の結果、実施例はすべて崩壊性と連続生産性の両評価が良好で、ほくほく感を有する非加熱ポテト菓子であった。特に、実施例7は両評価とも大変良好であり、軽く噛むだけで非加熱ポテト菓子が細かくほぐれ崩れるような食感を感じるにもかかわらず、製造において、混合時は非加熱ポテト菓子生地として良くまとまり、成形はスムーズに進行した
ため大変良好な連続生産性を有していた。
【0040】
一方、比較例は、崩壊性と連続生産性の両方あるいは片方の評価が不良であった。また、乾燥ポテトが多い比較例1、水系原料が少ない比較例2、乾燥ポテトの代わりにα化馬鈴薯澱粉を用いた比較例6、水系原料のない比較例7と比較例8は、混合しても生地としてまとまらず、非加熱ポテト菓子を連続生産することができなかった。