(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022170977
(43)【公開日】2022-11-11
(54)【発明の名称】振動増幅器
(51)【国際特許分類】
G10D 3/02 20060101AFI20221104BHJP
G10D 1/08 20060101ALI20221104BHJP
【FI】
G10D3/02
G10D1/08
【審査請求】有
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021077291
(22)【出願日】2021-04-30
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2021-11-05
(71)【出願人】
【識別番号】521197391
【氏名又は名称】株式会社フルハウス
(74)【代理人】
【識別番号】100185270
【弁理士】
【氏名又は名称】原田 貴史
(72)【発明者】
【氏名】南 武司
(72)【発明者】
【氏名】岩▲崎▼ 将史
【テーマコード(参考)】
5D002
【Fターム(参考)】
5D002AA04
5D002CC09
(57)【要約】
【課題】ユーザがギターを入手した後に、ギターの共鳴箱の振動を増幅させることの可能な振動増幅器を提供する。
【解決手段】ギターの共鳴箱の表板に取り付けられ、かつ、裏板に向けて突出されるボルト35と、ボルト35に取り付けられ、かつ、表板に対してボルトが突出される中心線A1に沿った方向に間隔をおいて配置される複数の支持腕42,47,51と、複数の支持腕42,47,51にそれぞれ取り付けられる複数の振動片26,27,28,29,30,31と、を有し、複数の振動片26,27,28,29,30,31は、固有振動数がそれぞれ異なる振動増幅器を構成した。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ギターの共鳴箱の表板に取り付けられ、かつ、裏板に向けて突出される支持軸と、
前記支持軸に取り付けられ、かつ、前記表板に対する前記支持軸の突出方向に間隔をおいて配置される複数の支持腕と、
複数の前記支持腕にそれぞれ取り付けられる複数の振動片と、
を有し、
前記複数の振動片は、固有振動数がそれぞれ異なる、振動増幅器。
【請求項2】
請求項1記載の振動増幅器において、
複数の前記振動片は、前記突出方向で前記表板からの距離が相対的に長いほど、前記固有振動数が相対的に大きい、振動増幅器。
【請求項3】
請求項1または2記載の振動増幅器において、
複数の前記支持腕は、
前記突出方向に対して交差する方向に沿って延ばされた接続部と、
前記支持軸を隔てて前記接続部の両端にそれぞれ設けられた複数の取り付け部と、
をそれぞれ有し、
前記振動片は、複数の前記取り付け部にそれぞれ取り付けられている、振動増幅器。
【請求項4】
請求項3記載の振動増幅器において、
前記取り付け部に取り付けられた複数の前記振動片は、前記突出方向に対して交差する平面内における形状がそれぞれ円弧形状である、振動増幅器。
【請求項5】
請求項4記載の振動増幅器において、
1つの前記取り付け部に取り付けられている2つの前記振動片は、前記突出方向に対して交差する平面内における形状が円形になるように配置されている、振動増幅器。
【請求項6】
請求項5記載の振動増幅器において、
前記突出方向に対して交差する平面内で、前記2つの前記振動片の間に隙間が設けられている、振動増幅器。
【請求項7】
請求項4乃至6の何れか1項記載の振動増幅器において、
前記固有振動数が相対的に小さい前記振動片の半径は、前記固有振動数が相対的に大きい前記振動片の半径よりも大きい、振動増幅器。
【請求項8】
請求項1乃至7の何れか1項記載の振動増幅器において、
前記支持軸は、ボルトであり、
前記ボルトがねじ込まれるナットと、
前記ナットを保持し、かつ、前記表板に取り付けられる固定部材と、
が更に設けられている、振動増幅器。
【請求項9】
請求項8記載の振動増幅器において、
前記ボルトの締め付けが完了する前の状態で、前記ボルトを中心とする円周方向における複数の前記支持腕同士の位置を変更可能である、振動増幅器。
【請求項10】
請求項9記載の振動増幅器において、
前記ボルトの締め付けが完了した状態で、前記ボルトを中心とする円周方向における複数の前記支持腕同士の位置が固定される、振動増幅器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ギターの共鳴箱の振動を増幅させることの可能な振動増幅器に関する。
【背景技術】
【0002】
ギターの共鳴箱の振動を増幅可能なギターの一例が、下記の特許文献1に記載されている。特許文献1に記載されたギターは、内部を空洞とし、かつ、弦の振動を共鳴して拡大放射する共鳴箱(ボディ)と、共鳴箱に接続された棹、棹の表面に接合されたフレットを有するフィンガーボードを有するネック部と、ネック部の先端に設けられたヘッド部と、を有する。共鳴箱は、表板、裏板及び側板を有する。表板にサドルを有するブリッジが設けられており、振動板がブリッジに固定されている。振動板は、共鳴箱の内部に設けられている。振動板の厚さは、弦の太さ及び振動板の材質等から適宜決定される。
【0003】
そして、特許文献1に記載されたギターによれば、高音用の弦によって振動板を振動させ、低音用の弦によって表板を振動させることで、高音用の弦のもつ特有の音質及び音色と、低音用の弦のもつ特有の音質及び音色とを、共に最大限に活かすことができるとともに、音量も増大させることができる、とされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本願発明者は、特許文献1に記載されている技術では、ギターの弦を弾いたときに共鳴箱の振動を増幅させるには、振動板が予め固定されているギターを、予め入手しておかなければならない、という課題を認識した。
【0006】
本発明の目的は、ユーザがギターを入手した後に、ギターの共鳴箱の振動を増幅させることの可能な振動増幅器を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の振動増幅器は、ギターの共鳴箱の表板に取り付けられ、かつ、裏板に向けて突出される支持軸と、前記支持軸に取り付けられ、かつ、前記表板に対する前記支持軸の突出方向に間隔をおいて配置される複数の支持腕と、複数の前記支持腕にそれぞれ取り付けられる複数の振動片と、を有し、前記複数の振動片は、固有振動数がそれぞれ異なる。
【発明の効果】
【0008】
本発明の振動増幅器をギターの表板に取り付けると、弦を弾いたときにギターの共鳴箱の振動を増幅させることが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の振動増幅器が取り付けられるギターの平面図である。
【
図2】
図1のII-II線における縦断面図である。
【
図3】振動増幅器がギターに取り付けられる前の状態を示す斜視図である。
【
図4】(A)は、第1振動片の平面図、(B)は、第2振動片の平面図、(C)は、第3振動片の平面図、(D)は、第4振動片の平面図、(E)は、第5振動片の平面図、(F)は、第6振動片の平面図である。
【
図5】(A)は、第1支持腕の平面図、(B)は、第2支持腕の平面図、(C)は、第3支持腕の平面図である。
【
図6】(A)は、3個のスペーサを示す斜視図、(B)は、1個のリベットを示す斜視図、(C)は、固定部材の斜視図、(D)は、固定部材及びナットの斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の振動増幅器は、ギターの共鳴箱(ボディ)の振動を増幅するために、ギターの共鳴箱の内部に取り付けられる。ここでいうギターとは、ガット(ナイロン)弦などが貼られたいわゆるクラシックギターを指し、スチール弦の貼られたいわゆるフォークギターやエレキギターを対象とするものではない。
【0011】
現在、製作されているギターは、主に電気による増幅装置で音をスピーカーから発する通称エレキギターと、電気を使用しないで共鳴箱から出る音で成り立つアコーステックギターとに分かれている。エレキギターは、ボリュウムを上げれば大きな音量が出るが、アコーステックギターは、エレキギターに比べ音量に限界がある。特に、ピックを使用して強いタッチで演奏するピックギター、フォークギター等と比べ、人の指だけで演奏するクラシックギターは音圧が小さく、よほど反響の良い小ホール以外では聞き取りにくいという大きなハンディがある。
【0012】
ギターは、木工製品であるが、バイオリン等に比べ音量が小さい。これは、バイオリンが、弓で連続して音の発生を継続できるのに対して、ギターは、一度弾かれた弦は振動を始めるが、弦の振幅が直ぐに縮小するめ振動が継続できず、音が消えるためである。さらに、同じ弦楽器と言われていても表板の正音と逆音がサウンドホールから出たとき打ち消し合い音を殺すことも弱点である。
【0013】
これを回避するため、ギターの共鳴箱の表板の内側に、響板(力木)と称する細い木が取り付けてある。力木は、音の伝達を助ける役目もあり、低音部には長いものが使用されたりする。また、力木の材質と構造を色々変えて、音量及びよりよい音質を求め続けた歴史がある。
【0014】
厳選された材料で製作された楽器は数百万するが、バイオリンのように200年以上音が進化することは無いと思われる。バイオリンは、激しく練習に使用すると接着が緩むが、解体して接着し直すと元に戻す。ピアノも解体修理している。ギターの解体修理は聞いたことがない。無理すればできるが、再塗装するとかなり音が変わるため通常行われていない。いずれにしても、各種制限のなか、よりよい結果を求めて工夫してきた製作者は木工加工技術と木材の特性を生かした方法で研究してきた。
【0015】
本実施形態は、材質に拘らず、よりよく振動する材料を、よりいい形に成型してできた振動増幅器をギターに取り付けることで、目的とする大きな音量、深みのある響き、長く振動を続け、豊かな表現を可能することである。
【0016】
次に、振動増幅器の取り付け対象であるギターの構造を簡単に説明する。
図1に示すように、ギター10は、共鳴箱(ボディ)11、共鳴箱11に取り付けられたネック12、ネック12の端部に設けられたヘッド13を有する。
図2に示すように、共鳴箱11は、互いに平行に配置される表板14及び裏板15と、表板14と裏板15とを接続する側板16と、を有する。ネック12は、共鳴箱11から突出して設けられた棒材であり、フィンガーボード17、フレット18及びナット19が、ネック12に設けられている。ヘッド13は、ネック12のうち、共鳴箱11に接続された個所とは反対の箇所に設けられている。複数のペグ20がヘッド13に設けられている。
【0017】
表板14の外面14Bにブリッジ21が固定され、ブリッジ21にサドル22が設けられている。複数本、具体的には6本の弦23がブリッジ21に取り付けられ、かつ、サドル22及びナット19により支持され、かつ、ぺグ20に巻かれることにより、6本の弦23が、サドル22とナット19との間に所定の張力で張られている。表板14を厚さ方向に貫通するサウンドホール24が設けられている。サウンドホール24は、共鳴箱11の内部54と外部55とをつなぐ。サウンドホール24は、ブリッジ21とネック12との間に配置されている。
【0018】
表板14には、例えば、松、スプルース、杉、シダー等の木材が用いられる。裏板15及び側板16には、ローズウッド、ハラカンダ、メイプル等の木材がそれぞれ用いられる。ネック12には、ホンジュラスマホガニー、セドロ、メイプル等が用いられる。表板14、裏板15及び側板16は、それぞれ、単板製または合板製の何れでもよい。
【0019】
本開示の振動増幅器25は、共鳴箱11の内部54に設けられ、かつ、表板14の内面14Bに取り付けられる。なお、表板14の内面14Aには、力木及び響板(響体)が設けられているが、
図2では省略されている。振動増幅器25は、例えば、ユーザがギター10を入手した後に、振動増幅器25を提供する店舗に持ち込む。その店舗の職人は、ギター10を分解し、振動増幅器25を表板14の内面14Aに取り付け、ギター10を組み立ててユーザへ渡す。
【0020】
以下、振動増幅器25の実施形態を、
図2、
図3、
図4、
図5及び
図6を参照して説明する。振動増幅器25は、第1振動片26、第2振動片27、第3振動片28、第4振動片29、第5振動片30、第6振動片31、第1支持腕32、第2支持腕33、第3支持腕34、ボルト35、第1スペーサ36、第2スペーサ37、第3スペーサ38、固定部材39を有する。第1振動片26乃至第6振動片31は、弦23が弾かれた場合の振動によって弾性変形(撓み)が可能な材料(材質)、例えば、リン青銅製であり、かつ、プレート形状を有する。
【0021】
図4は、第1振動片26乃至第6振動片31の平面形状を示している。この平面形状は、振動増幅器25が、
図2のように組み立てられている状態で、ボルト35の中心線A1に対して垂直な平面内における形状である。
【0022】
図4(A)に示すように、第1振動片26は、点P1を中心とする円弧形状であり、
図4(B)に示すように、第2振動片27は、点P2を中心とする円弧形状であり、
図4(C)に示すように、第3振動片28は、点P3を中心とする円弧形状である。
図4(D)に示すように、第4振動片29は、点P4を中心とする円弧形状であり、
図4(E)に示すように、第5振動片30は、点P5を中心とする円弧形状であり、
図4(F)に示すように、第6振動片31は、点P6を中心とする円弧形状である。
【0023】
また、第1振動片26の半径(内径)R1は、第2振動片27の半径R2より大きく、第2振動片27の半径R2は、第3振動片28の半径R3より大きい。第4振動片29の半径R4は、第5振動片30の半径R5より大きく、第5振動片30の半径R5は、第6振動片31の半径R6より大きい。半径R1乃至半径R6は、何れも内径である。
【0024】
さらに、第1振動片26は、点P1を中心とする径方向の幅L1を有する。第2振動片27は、点P2を中心とする径方向の幅L2を有する。第3振動片28は、点P3を中心とする径方向の幅L3を有する。第4振動片29は、点P4を中心とする径方向の幅L4を有する。第5振動片30は、点P5を中心とする径方向の幅L5を有する。第6振動片31は、点P6を中心とする径方向の幅L6を有する。第1振動片26は、円周方向の略中央に取付穴26Aを有する。
【0025】
第1振動片26は、円周方向の略中央に取付穴26Aを有する。第2振動片27は、円周方向の略中央に取付穴27Aを有する。第3振動片28は、円周方向の略中央に取付穴28Aを有する。第4振動片29は、円周方向の略中央に取付穴29Aを有する第5振動片30は、円周方向の略中央に取付穴30Aを有する。第6振動片31は、円周方向の略中央に取付穴31Aを有する。
【0026】
さらに、第1振動片26は、点P1を中心とする円周方向で180度未満の範囲内に位置する。第2振動片27は、点P2を中心とする円周方向で180度未満の範囲内に位置する。第3振動片28は、点P3を中心とする円周方向で180度未満の範囲内に位置する。第4振動片29は、点P4を中心とする円周方向で180度未満の範囲内に位置する。第5振動片30は、点P5を中心とする円周方向で180度未満の範囲内に位置する。第6振動片31は、点P6を中心とする円周方向で180度未満の範囲内に位置する。
【0027】
第1振動片26乃至第6振動片31は、固有振動数がそれぞれ異なる。第2振動片27の固有振動数は、第1振動片26の固有振動数より大きい。第3振動片28の固有振動数は、第2振動片27の固有振動数より大きい。第4振動片29の固有振動数は、第3振動片28の固有振動数より大きい。第5振動片30の固有振動数は、第4振動片29の固有振動数より大きい。第6振動片31の固有振動数は、第5振動片30の固有振動数より大きい。
【0028】
固有振動数は、質量及びばね剛性という2つの要因によって定まる。第1振動片26乃至第6振動片31は、その厚さが、例えば、それぞれ1mmに設定されている。第2振動片27の質量は、第1振動片26の質量より小さい。第3振動片28の質量は、第2振動片27の質量より小さい。第4振動片29の質量は、第3振動片28の質量より小さい。第5振動片30の質量は、第4振動片29の質量より小さい。第6振動片31の質量は、第5振動片30の質量より小さい。
【0029】
第2振動片27のばね剛性は、第1振動片26のばね剛性より大きい。第3振動片28のばね剛性は、第2振動片27のばね剛性より大きい。第4振動片29のばね剛性は、第3振動片28のばね剛性より大きい。第5振動片30のばね剛性は、第4振動片29のばね剛性より大きい。第6振動片31のばね剛性は、第5振動片30のばね剛性より大きい。
【0030】
図3に示すように、第1振動片26は、2枚設けられ、第2振動片27は、2枚設けられ、第3振動片28は、2枚設けられ、第4振動片29は、2枚設けられ、第5振動片30は、2枚設けられ、第6振動片31は、2枚設けられている。2枚の第1振動片26及び2枚の第2振動片27は、第1支持腕32により支持され、2枚の第3振動片28及び2枚の第4振動片29は、第2支持腕33により支持され、2枚の第5振動片30及び2枚の第6振動片31は、第3支持腕34により支持されている。
【0031】
第1支持腕32乃至第3支持腕34は、弦23が弾かれた場合の振動によって弾性変形が可能な材料(材質)、例えば、リン青銅製であり、かつ、
図5すようにプレート形状を有する。
図5(A)のように、第1支持腕32は、第1取り付け部40及び第2取り付け部41と、第1取り付け部40と第2取り付け部41とを接続する接続部42と、を有する。第1取り付け部40の長さL7は、第2取り付け部41の長さL8を超えている。接続部42の長さ方向の両端は、第1取り付け部40の長さ方向の略中央箇所、第2取り付け部41の長さ方向の略中央箇所にそれぞれ接続されている。接続部42を厚さ方向に貫通する軸孔43が設けられ、軸孔43の中心から第1取り付け部40までの長さL9は、軸孔43の中心から第2取り付け部41までの長さL10未満である。
【0032】
第1取り付け部40の第1端部に2つの取付穴40Aが設けられ、第1取り付け部40の第2端部に2つの取付穴40Bが設けられている。第2取り付け部41の第1端部に2つの取付穴41Aが設けられ、第2取り付け部41の第2端部に2つの取付穴41Bが設けられている。
【0033】
図5(B)のように、第2支持腕33は、第1取り付け部45及び第2取り付け部46と、第1取り付け部45と第2取り付け部46とを接続する接続部47と、を有する。第1取り付け部45の長さL11は、第2取り付け部46の長さL12を超えている。接続部47の長さ方向の両端は、第1取り付け部45の長さ方向の略中央箇所、第2取り付け部46の長さ方向の略中央箇所にそれぞれ接続されている。接続部47を厚さ方向に貫通する軸孔48が設けられ、軸孔48の中心から第1取り付け部45までの長さL14は、軸孔48の中心から第2取り付け部46までの長さL13を超えているである。第2支持腕33の全長L15は、第1支持腕32の全長L16未満である。
【0034】
第1取り付け部45の第1端部に取付穴45Aが設けられ、第1取り付け部45の第2端部に取付穴45Bが設けられている。第2取り付け部46の第1端部に取付穴46Aが設けられ、第2取り付け部46の第2端部に取付穴46Bが設けられている。
【0035】
図5(C)のように、第3支持腕34は、第1取り付け部49及び第2取り付け部50と、第1取り付け部49と第2取り付け部50とを接続する接続部51と、を有する。第1取り付け部49の長さL17は、第2取り付け部50の長さL18を超えている。接続部51の長さ方向の両端は、第1取り付け部49の長さ方向の略中央箇所、第2取り付け部50の長さ方向の略中央箇所にそれぞれ接続されている。接続部51を厚さ方向に貫通する軸孔52が設けられ、軸孔52の中心から第1取り付け部49までの長さL19は、軸孔52の中心から第2取り付け部50までの長さL20を超えている。第3支持腕34の全長L21は、第2支持腕33の全長L15未満である。
【0036】
第1取り付け部49の第1端部に取付穴49Aが設けられ、第1取り付け部49の第2端部に取付穴49Bが設けられている。第2取り付け部50の第1端部に取付穴50Aが設けられ、第2取り付け部50の第2端部に取付穴50Bが設けられている。
【0037】
第1支持腕32乃至第3支持腕34は、固有振動数がそれぞれ異なる。第2支持部材3の固有振動数は、第1支持腕32の固有振動数より大きい。第3支持腕34の固有振動数は、第2支持腕33の固有振動数より大きい。固有振動数は、質量及びばね剛性という2つの要因によって定まる。第1支持腕32の厚さは、例えば、0.8mmに設定されている。第2支持腕33及び第3支持腕34の厚さは、例えば、0.5mmに設定されている。
【0038】
第2支持腕33の質量は、第1支持腕32の質量より小さい。第3支持腕34の質量は、第2支持腕33の質量より小さい。第2支持腕33のばね剛性は、第1支持腕32のばね剛性より大きい。第3支持腕34のばね剛性は、第2支持腕33のばね剛性より大きい。
【0039】
本開示の振動増幅器25は、6本の弦23、及び3オクターブの音域に反応して振動するように、第1振動片26乃至第6振動片31のそれぞれの固有振動数、第1支持腕32乃至第3支持腕34のそれぞれの固有振動数を設定することが可能である。
【0040】
第1振動片26乃至第6振動片31は、
図6(B)に示すリベット44によりそれぞれ単独で固定されている。1枚の第1振動片26の取付穴26A及び取付穴40Aにリベット44が挿入され、かつ、リベット44がカシメ加工されて1枚の第1振動片26が第1取り付け部40に固定されている。1枚の第1振動片26の取付穴26A及び取付穴40Bにリベット44が挿入され、かつ、リベット44がカシメ加工されて1枚の第1振動片26が第1取り付け部40に固定されている。2枚の第1振動片26が、略円形になるように、第1取り付け部40に取り付けられている。
図3のように、2枚の第1振動片26の円周方向の端部同士の間に隙間B1がある。
【0041】
1枚の第2振動片27の取付穴27A及び取付穴41Aにリベット44が挿入され、かつ、リベット44がカシメ加工されて1枚の第2振動片27が第1取り付け部40に固定される。1枚の第2振動片27の取付穴27A及び取付穴41Bにリベット44が挿入され、かつ、リベット44がカシメ加工されて1枚の第2振動片27が第2取り付け部41に固定される。2枚の第2振動片27が、略円形になるように、第2取り付け部41に取り付けられている。
図3のように、2枚の第2振動片27の円周方向の端部同士の間に隙間B2がある。
【0042】
さらに、1枚の第3振動片28の取付穴28A及び取付穴45Aにリベット44が挿入され、かつ、リベット44がカシメ加工されて1枚の第3振動片28が第1取り付け部45に固定される。リベット44は、例えば、アルミニウム製である。1枚の第3振動片28の取付穴28A及び取付穴45Bにリベット44が挿入され、かつ、リベット44がカシメ加工されて1枚の第3振動片28が第1取り付け部45に固定されている。2枚の第3振動片28が、略円形になるように、第1取り付け部45に取り付けられている。
図3のように、2枚の第3振動片28の円周方向の端部同士の間に隙間B3がある。
【0043】
1枚の第4振動片29の取付穴29A及び取付穴46Aにリベット44が挿入され、かつ、リベット44がカシメ加工されて1枚の第4振動片29が第2取り付け部46に固定される。1枚の第4振動片29の取付穴29A及び取付穴46Bにリベット44が挿入され、かつ、リベット44がカシメ加工されて1枚の第4振動片29が第2取り付け部46に固定される。2枚の第4振動片29が、略円形になるように、第2取り付け部46に取り付けられている。
図3のように、2枚の第4振動片29の円周方向の端部同士の間に隙間B4がある。
【0044】
1枚の第5振動片30の取付穴30A及び取付穴49Aにリベット44が挿入され、かつ、リベット44がカシメ加工されて1枚の第5振動片30が第1取り付け部49に固定される。1枚の第5振動片30の取付穴30A及び取付穴49Bにリベット44が挿入され、かつ、リベット44がカシメ加工されて1枚の第5振動片30が第1取り付け部49に固定される。2枚の第5振動片30が、略円形になるように、第1取り付け部49に取り付けられている。2枚の第5振動片30の円周方向の端部同士の間に隙間B5がある。
【0045】
1枚の第6振動片31の取付穴31A及び取付穴50Aにリベット44が挿入され、かつ、リベット44がカシメ加工されて1枚の第6振動片31が第2取り付け部50に固定される。1枚の第6振動片31の取付穴31A及び取付穴50Bにリベット44が挿入され、かつ、リベット44がカシメ加工されて1枚の第6振動片31が第2取り付け部50に固定される。2枚の第6振動片31が、略円形になるように、第2取り付け部50に取り付けられている。
図3のように、2枚の第6振動片31の円周方向の端部同士の間に隙間B6がある。
【0046】
さらに、ボルト35は、例えば、ステンレス製のボルトである。
図6(A)のように、第1スペーサ36乃至第3スペーサ38は、それぞれ円筒であり、かつ、真鍮製である。また、第2支持腕33は、第1支持腕32と第3支持腕34との間に配置される。さらに、固定部材39は、例えば、メープル材製である。
図6(C)、
図6(D)に示すように、固定部材39は、軸孔39A及びナット保持孔39Bを有する。軸孔39Aは略円形であり、ナット保持孔39Bは、略六角形である。軸孔39Aとナット保持孔39Bとはつながっており、かつ、同心状に設けられている。ナット保持孔39Bにナット53が配置される。ナット53は、例えば、ステンレス製であり、かつ、ナット53と固定部材39とが接着剤により固定されている。
【0047】
ボルト35の軸部35Aは雄ねじであり、軸部35Aは、軸孔52、スペーサ38、軸孔48、スペーサ37、軸孔43、スペーサ36、軸孔39Aの順序で挿入され、かつ、軸部35Aがナット53に挿入され、かつ、ボルト35が締め付けられる。ボルト35の締め付けが完了していると、第1支持腕32、第2支持腕33及び第3支持腕34は、ボルト35によって互いに固定される。上記のようにして、振動増幅器25が組み立てられている。
【0048】
なお、ボルト35の締め付けが完了する前の状態で、第1支持腕32、第2支持腕33、第3支持腕34は、ボルト35の中心線A1を中心とする円周方向における位置を、相互に変更可能である。このため、振動増幅器25を表板14の内面14Aに取り付ける場合に、
図1のようなギター10の平面視で、表板14に沿って配置される第1支持腕32、第2支持腕33及び第3支持腕34が延ばされる方向を、それぞれ単独で調整可能である。さらに、ボルト35の締め付けが完了した状態で、第1支持腕32、第2支持腕33及び第3支持腕34は、ボルト35の中心線A1を中心とする円周方向における位置が、それぞれ定まる。
【0049】
そして、表板14と側板16とが分解されている状態で、固定部材39が表板14の内面14Bに固定、例えば、接着剤により固定され、振動増幅器25がギター10に取り付けられる。
図2に示すギター10の平面視で、固定部材39は、ブリッジ21の取り付け領域内に位置する。また、ギター10の幅方向で、共鳴箱11の略中央に固定部材39が取り付けられる。
図1において、ギター10の幅方向は、ギター10のネック12に対して略直角な方向である。
【0050】
振動増幅器25が表板14に取り付けられた状態で、ボルト35の中心線A1は、表板14及び裏板15に対して略垂直である。つまり、ボルト35は、中心線A1に沿った方向で表板14から突出されている。ボルト35は、表板14と裏板15との間に配置され、ボルト35は裏板15に接触していない。中心線A1は、ボルト35の中心に位置し、かつ、ボルト35の長手方向に沿った仮想線である。表板14が側板16に固定されて、
図2のように、ギター10が組み立てられ、かつ、弦23が弾かれていない状態で、表板14と、第1振動片26及び第2振動片27との間に隙間がある。また、第1支持腕32と、第3振動片28、第4振動片29及び第2支持腕33との間に隙間がある。さらに、第2支持腕33と、第5振動片30、第6振動片31及び第3支持腕34との間に隙間がある。さらに、第3支持腕34と裏板との間に隙間がある。これらの隙間は、全て中心線A1に沿った方向の隙間量(距離)を有する。
【0051】
振動増幅器25が表板14に取り付けられ、かつ、中心線A1に沿った方向で、表板14の内面14Aから、第3振動片28及び第4振動片29までの距離は、表板14の内面14Aから、第1振動片26及び第2振動片27までの距離より相対的に長い。また、表板14の内面14Aから、第5振動片30及び第6振動片31までの距離は、表板14の内面14Aから、第3振動片28及び第4振動片29までの距離より相対的に長い。
【0052】
振動増幅器25が表板14に取り付けられた状態で、第1取り付け部40と第2取り付け部41とが、ボルト35を隔てて配置される。また、第1取り付け部45と第2取り付け部46とが、ボルト35を隔てて配置される。さらに、第1取り付け部49と第2取り付け部50とが、ボルト35を隔てて配置される。
【0053】
本開示の振動増幅器25が表板14に取り付けられたギター10を演奏した場合の作用を説明する。弦23を指(爪)で弾いてエネルギを加えると、そのエネルギで弦23がサドル22とナット19との間で振動する。弦23の振動は、ブリッジ21を経由して表板14に伝達されて表板14が振動(共振)し、表板14の振動が音波に変換される。その音波は、内部54及び外部55へそれぞれ放射される。外部55へ放射された音波は、音として聴くことができる。内部54へ放射された音波は、共鳴箱11の内部54で反射を繰り返し、音量が増幅される。表板の振動の一部は、側板を経由して裏板にも伝達される。内部54で増幅された音波は、サウンドホール24及び表板14を介して外部55へ放射され、音として聴くことができる。弦23に付加されたエネルギは、音に変換されることで次第に減少するため、音量も減衰していく。
【0054】
以下、振動増幅器25による振動増幅作用を具体的に説明する。表板14の振動の一部は、固定部材39及びボルト35を経由して第1支持腕32乃至第3支持腕34に伝達され、かつ、第1振動片26乃至第6振動片31に伝達される。また、共鳴箱11の内部54に放射される音波の一部も、第1支持腕32乃至第3支持腕34に伝達され、かつ、第1振動片26乃至第6振動片31に伝達される。
【0055】
第1支持腕32乃至第3支持腕34は、それぞれボルト35を支点として振動する。接続部42,47,51、第1取り付け部40,45,49、第2取り付け部41,46,50は、ボルト35を支点とする片持ち梁の状態で振動する。さらに、第1振動片26乃至第6振動片31は、リベット44を支点としてそれぞれ振動する。このようにして、第1支持腕32乃至第3支持腕34がそれぞれ振動され、かつ、第1振動片26乃至第6振動片31が振動される。
【0056】
そして、第1支持腕32乃至第3支持腕34は、固有振動数がそれぞれ異なる。第1振動片26乃至第6振動片31は、固有振動数がそれぞれ異なる。第1支持腕32乃至第3支持腕34の固有振動数と、第1振動片26乃至第6振動片31の固有振動数とが、それぞれ異なる。また、第1支持腕32乃至第3支持腕34の固有振動数、第1振動片26乃至第6振動片31の固有振動数は、表板14及び裏板15の固有振動数とも異なる。
【0057】
したがって、振動増幅器25がギター10の表板14に取り付けられていると、全音域でサスティーンが伸びる。つまり、弦23が弾かれて音が発生してから、音が途切れるまでの経過時間(減衰時間・余韻)をなるべく延長(継続)させることができる。これは、共鳴箱11の内部54に設けられた振動増幅器25の第1支持腕32乃至第3支持腕34、及び第1振動片26乃至第6振動片31が弦23の音に共鳴して振動し、振動が効率よく増幅するためである。また、第1振動片26の固有振動数が最も小さく、低音が豊かに鳴ることに寄与する。
【0058】
本実施形態で説明した振動増幅器25は、図面を用いて説明したものに限定されない。例えば、第1振動片26乃至第6振動片31、第1支持腕32乃至第3支持腕34等の材料として、ステンレス、真鍮、銀等のうちから、それぞれ任意に選択することも可能である。また、振動片を支持腕に取り付ける手段は、リベットに代えて、ねじ固定、溶接、半田付けの何れかであってもよい。
【0059】
本実施形態で開示されている事項の技術的意味の一例は、次の通りである。振動増幅器25は、振動増幅器の一例である。ボルト35は、支持軸の一例である。中心線A1に沿った方向は、支持軸の突出方向の一例である。第1支持腕32乃至第3支持腕34は、複数の支持腕の一例である。第1振動片26乃至第6振動片31は、複数の振動片の一例である。接続部42,47,51は、接続部の一例である。「中心線A1に対して垂直な平面方向」は、「突出方向に対して交差する方向」の一例である。第1取り付け部40,45,49、第2取り付け部41,46,50は、複数の取り付け部の一例である。隙間B1,B2,B3は、隙間の一例である。ナット53は、ナットの一例である。半径R1,R2,R3,R4,R5,R6は、振動片の半径の一例である。固定部材39は、固定部材の一例である。
【産業上の利用可能性】
【0060】
本開示の振動増幅器は、ギターの表板に取り付けることにより、ギターの共鳴箱の振動を増幅することに利用可能である。
【符号の説明】
【0061】
25…振動増幅器、26…第1振動片、27…第2振動片、28…第3振動片、29…第4振動片、30…第5振動片、31…第6振動片、32…第1支持腕、33…第2支持腕、34…第3支持腕、35…ボルト、39…固定部材、40,45,49…第1取り付け部、41,46,50…第2取り付け部、42,47,51…接続部、53…ナット、B1,B2,B3…隙間、R1,R2,R3,R4,R5,R6…半径