(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022170990
(43)【公開日】2022-11-11
(54)【発明の名称】地図提供システム、地図提供方法、及びプログラム
(51)【国際特許分類】
G05D 1/02 20200101AFI20221104BHJP
【FI】
G05D1/02 H
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021077332
(22)【出願日】2021-04-30
(71)【出願人】
【識別番号】000002299
【氏名又は名称】清水建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100161506
【弁理士】
【氏名又は名称】川渕 健一
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【弁理士】
【氏名又は名称】西澤 和純
(72)【発明者】
【氏名】木村 駿介
(72)【発明者】
【氏名】松本 隆史
【テーマコード(参考)】
5H301
【Fターム(参考)】
5H301BB10
5H301CC03
5H301CC06
5H301CC10
5H301GG08
5H301LL01
(57)【要約】
【課題】自律移動装置が自律移動に利用する地図が効率良く得られるようにする。
【解決手段】障害物までの距離を測定するセンサを備え、移動空間の床を移動可能な自律移動装置に対して、前記センサの測定結果に基づいて前記移動空間における前記障害物の位置に関する情報を含む自己位置を推定するための自己位置推定用地図を提供する地図提供システムとして、前記移動空間における前記障害物の3次元形状に関する情報を含む3次元地図を記憶する記憶部と、前記自律移動装置における前記床からの鉛直方向における前記センサの高さに関するセンサ高情報を取得する取得部と、前記センサ高情報に基づき、前記3次元地図から前記自己位置推定用地図として2次元地図を生成する地図生成部とを備えて構成する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
障害物までの距離を測定するセンサを備え、移動空間の床を移動可能な自律移動装置に対して、前記センサの測定結果に基づいて前記移動空間における前記障害物の位置に関する情報を含む自己位置を推定するための自己位置推定用地図を提供する地図提供システムであって、
前記移動空間における前記障害物の3次元形状に関する情報を含む3次元地図を記憶する記憶部と、
前記自律移動装置における前記床からの鉛直方向における前記センサの高さに関するセンサ高情報を取得する取得部と、
前記センサ高情報に基づき、前記3次元地図から前記自己位置推定用地図として2次元地図を生成する地図生成部と
を備える地図提供システム。
【請求項2】
前記センサは、走査を行って障害物までの距離を2次元で測定する
請求項1に記載の地図提供システム。
【請求項3】
障害物までの距離を測定するセンサを備え、移動空間の床を移動可能な自律移動装置に対して、前記センサの測定結果に基づいて前記移動空間における前記障害物の位置に関する情報を含む自己位置を推定するための自己位置推定用地図を提供する地図提供方法であって、
前記自律移動装置における前記床からの鉛直方向における前記センサの高さに関するセンサ高情報を取得する取得ステップと、
前記センサ高情報に基づき、前記移動空間における前記障害物の3次元形状に関する情報を含む3次元地図から前記自己位置推定用地図として2次元地図を生成する地図生成ステップと
を備える地図提供方法。
【請求項4】
障害物までの距離を測定するセンサを備え、移動空間の床を移動可能な自律移動装置に対して、前記センサの測定結果に基づいて前記移動空間における前記障害物の位置に関する情報を含む自己位置を推定するための自己位置推定用地図を提供するコンピュータを、
前記センサが設けられた自律移動装置における前記床からの鉛直方向における前記センサの高さに関するセンサ高情報を取得する取得部、
前記センサ高情報に基づき、前記移動空間における前記障害物の3次元形状に関する情報を含む3次元地図から前記自己位置推定用地図として2次元地図を生成する地図生成部
として機能させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、地図提供システム、地図提供方法、及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
走行体が移動空間を移動しながら自己位置推定を行うことで環境地図を作成し、作成された環境地図を利用して最終到達点までの経路を生成することで、走行体の自律的な移動(自律移動)が可能なようにされた技術が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のように、自律移動可能な走行体(自律移動装置)が自律移動するには、自律移動装置自体が移動空間を移動しながら自己位置の推定を行い、当該移動空間の地図を作成する。このため、移動空間の地図を作成するためには、自律移動装置を移動空間で十分に移動させる必要があり、時間を要していた。
【0005】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、自律移動装置が自律移動に利用する地図が効率良く得られるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決するための本発明の一態様は、障害物までの距離を測定するセンサを備え、移動空間の床を移動可能な自律移動装置に対して、前記センサの測定結果に基づいて前記移動空間における前記障害物の位置に関する情報を含む自己位置を推定するための自己位置推定用地図を提供する地図提供システムであって、前記移動空間における前記障害物の3次元形状に関する情報を含む3次元地図を記憶する記憶部と、前記自律移動装置における前記床からの鉛直方向における前記センサの高さに関するセンサ高情報を取得する取得部と、前記センサ高情報に基づき、前記3次元地図から前記自己位置推定用地図として2次元地図を生成する地図生成部とを備える地図提供システムである。
【0007】
本発明の一態様は、障害物までの距離を測定するセンサを備え、移動空間の床を移動可能な自律移動装置に対して、前記センサの測定結果に基づいて前記移動空間における前記障害物の位置に関する情報を含む自己位置を推定するための自己位置推定用地図を提供する地図提供方法であって、前記自律移動装置における前記床からの鉛直方向における前記センサの高さに関するセンサ高情報を取得する取得ステップと、前記センサ高情報に基づき、前記移動空間における前記障害物の3次元形状に関する情報を含む3次元地図から前記自己位置推定用地図として2次元地図を生成する地図生成ステップとを備える地図提供方法である。
【0008】
本発明の一態様は、障害物までの距離を測定するセンサを備え、移動空間の床を移動可能な自律移動装置に対して、前記センサの測定結果に基づいて前記移動空間における前記障害物の位置に関する情報を含む自己位置を推定するための自己位置推定用地図を提供するコンピュータを、前記センサが設けられた自律移動装置における前記床からの鉛直方向における前記センサの高さに関するセンサ高情報を取得する取得部、前記センサ高情報に基づき、前記移動空間における前記障害物の3次元形状に関する情報を含む3次元地図から前記自己位置推定用地図として2次元地図を生成する地図生成部として機能させるためのプログラムである。
【発明の効果】
【0009】
以上説明したように、本発明によれば、自律移動装置が自律移動に利用する地図が効率良く得られるようになるという効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本実施形態における地図提供システムの構成例を示す図である。
【
図2】本実施形態における自律移動用地図の生成手法について説明する図である。
【
図3】本実施形態における自律移動装置の機能構成例を示す図である。
【
図4】本実施形態における地図提供サーバの機能構成例を示す図である。
【
図5】本実施形態における自律移動装置と地図提供サーバが、自律移動装置の自律移動に対応して実行する処理手順例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
図1は、本実施形態における地図提供システムの構成例を示している。本実施形態の地図提供システムは、自律移動装置100と地図提供サーバ200とを備える。
自律移動装置100は、建物BL(移動空間の一例)において所定の用途に従って移動する装置である。自律移動装置100の用途については特に限定されない。例えば、自律移動装置100は、建物BLにて荷物を運搬するものであってよい。あるいは、自律移動装置100は、建物BLにて監視のために移動する監視ロボットのようなものであってよい。
自律移動装置100は、ネットワーク経由で地図提供サーバ200と通信可能に接続される。なお、自律移動装置100と地図提供サーバ200との通信は、例えば建物BLに設けられたゲートウェイの通信中継装置を経由して行われてよい。
【0012】
本実施形態の自律移動装置100は、建物BLにて設定される目的地まで移動するにあたり、外部からのコントロール等によらず、自律的に自己位置推定と経路計画とを行って自律的に移動するようにされる。
上記のような自律的な移動のため、自律移動装置100は、自己位置推定と経路計画とに用いる地図(自律移動用地図)を利用する。
地図提供サーバ200は、自律移動装置100に自律移動用地図を提供するサーバである。地図提供サーバ200は、自律移動装置100が移動する空間である建物BLに対応する自律移動用地図として、自己位置推定用地図と経路計画用地図とを生成する。なお本明細書における自律移動用地図、すなわち自己位置推定用地図と経路計画用地図とは、単に地図と記載するものの、地図情報である。地図提供サーバ200は、生成した自己位置推定用地図と経路計画用地図とによる自律移動用地図を、自律移動装置100に送信する。
【0013】
なお、同図では、建物BLにおける自律移動装置100と地図提供サーバ200とが通信可能に接続された態様を示している。しかしながら、地図提供サーバ200と通信可能に接続される自律移動装置100の数は特に限定されるものでなく、複数であってよい。また、地図提供サーバ200と通信可能に接続される複数の自律移動装置100は、同じ建物BLに配備されてもよいし、異なる複数の建物BLに分散して配置されてもよい。
【0014】
図2を参照して、自律移動装置100が取得する自律移動用地図(自己位置推定用地図、経路計画用地図)について説明する。
図2(A)は、自律移動装置100が配備された建物BL内の空間を鉛直方向と交差する方向から見て模式的に示している。
【0015】
図2(A)においては、建物BL内に障害物300がある例を示している。以下の例では障害物300としてテーブルが建物BL内に配置された例について説明するものの、これに限らず、障害物300は他の家具等の什器の他、建物BLの壁面から突出した出っ張りであってもよい。本実施例における障害物300としてのテーブルは、天板301と、床(水平面)に載置されるベースプレート303と、を支柱302により接合した構造を有する。
天板301とベースプレート303は、それぞれ鉛直上方から見たとき、円形の外形を有する。一方、床(水平面)と平行で、且つ支柱302と交差する平面を鉛直上方から見たとき、支柱302は円形の断面形状を有する。本実施例では、さらに鉛直上方から見て、天板301の外形形状と、ベースプレート303の外形形状と、支柱302の断面形状と、は同心の円形形状とされている。なお、鉛直上方から見たとき、天板301とベースプレート303の大きさを比較した場合、天板301の直径のほうが、ベースプレート303の直径よりも大きい。つまり、鉛直上方から障害物300であるテーブルを見た場合には、天板301にベースプレート303が覆われ、ベースプレート303が天板301に隠れる構成とされている。
【0016】
図2(A)に示すように、自律移動装置100は測域センサ102を備える。測域センサ102は、自律移動装置100が自己位置を推定するのに用いられる。
本実施形態の測域センサ102は、レーザ光(電波、超音波等であってもよい)により2次元での走査(スキャン)を行うことで、鉛直方向と直交する方向(2次元)における障害物の距離を測定するようにされた2次元センサ(2次元測域センサ)である。本実施例では、測域センサ102として2次元のレーザースキャナを用いた。
【0017】
地図提供サーバ200は、建物BL内の3次元地図を記憶している。建物BL内の3次元地図は、例えば事前に作成されたものであり、単に地図と記載しているものの地図情報である。3次元地図は、室内の広さの他、出入口の場所や室内における障害物の位置などの2次元地図が有する床(水平面)における位置・寸法情報に加え、障害物の高さの他、鉛直下方に床との接触部を有さない障害物の形状・配置など、鉛直方向における位置・寸法情報を含んでいる。つまり、建物BL内の3次元地図は、建物BL内の障害物300の3次元形状に関する情報も含んでいる。
【0018】
図2(B)は、自律移動用地図として、建物BLに対応して地図提供サーバ200が生成する自己位置推定用地
図MP-1を示している。
地図提供サーバ200は、
図2(A)に示すように、自律移動装置100が備える測域センサ102の床(水平面)からの鉛直方向への高さh1に関するセンサ高情報に基づき、高さh1に対応する平面(2次元空間)の地図を、建物BLの3次元地図から抽出する(取り出す)。このように抽出された2次元空間の地図が自己位置推定用地
図MP-1である。従って、自己位置推定用地
図MP-1は2次元地図となる。
【0019】
上記のように、自己位置推定用地
図MP-1は、建物BL内の3次元地図から測域センサ102の高さh1に対応する2次元空間を抽出したものである。このため、自己位置推定用地
図MP-1は、
図2(B)に示すように、建物BLに対応する平面において、障害物300を構成する部位のうち、高さh1に対応する支柱302が示された2次元地図となる。
【0020】
自律移動装置100は、測域センサ102を用いて、建物BLにおいて存在する壁や障害物300等の障害物との距離を測定し、測定された障害物との距離と自己位置推定用地
図MP-1とを照合することで、建物BLにおける自己位置を推定する。
図2(A)においては、図示する位置にて自律移動装置100が支柱302との距離Dを測定している状態が示されている。
【0021】
図2(C)は、自律移動用地図として、地図提供サーバ200が建物BLに対応して生成する経路計画用地
図MP-2を示している。
地図提供サーバ200は、経路計画用地
図MP-2の生成にあたり、まず初めに建物BL内の移動空間における3次元地図と、鉛直方向における自律移動装置100の高さh2に関する情報と、に基づいて、鉛直方向における床CTから高さh2までの範囲における、障害物300の最大外形に関する情報を抽出する。なお、自律移動装置100の高さh2は、自律移動装置100が移動可能な床を基準とした、鉛直方向における自律移動装置100の背の高さである。
具体的には地図提供サーバ200は、
図2(A)に示すように、建物BLの移動空間を示す3次元地図に基づき、自律移動装置100の鉛直方向における高さh2に関する情報を用いて、鉛直方向において、自律移動装置100が移動可能な移動空間の床(水平面)CTから自律移動装置100の高さh2までの移動空間の一部に対応する3次元空間(部分3次元空間)にかかる部分3次元地図を抽出する。
地図提供サーバ200は、抽出した部分3次元地図に基づき、移動空間のうち、鉛直方向における床CTから自律移動装置100の高さh2までの範囲の3次元空間を占める障害物300の一部または全部における、垂直方向と直交する方向における障害物300の最大外形に関する情報を抽出する。
そして地図提供サーバ200は、障害物300の最大外形に関する情報と、障害物300の位置情報と、を含む2次元地図である経路計画用地
図MP-2を生成する。経路計画用地
図MP-2は、障害物300の位置情報とともに、床CTから自律移動装置100の高さh2まで範囲で移動空間から切り出した空間において、いわば障害物300へ鉛直方向から光を照射し、水平面に投影したときに形成される影の形状を障害物300の外形情報として含む。つまり経路計画用地
図MP-2での障害物300の外形は、自律移動装置100が移動に際して衝突を回避すべき、床CTから鉛直方向への高さh2までの範囲にあたる移動空間の一部における、垂直方向と直交する方向への障害物300の最大寸法である。
【0022】
本実施例では、
図2(A)に示すように、鉛直方向における床CTから自律移動装置100の高さh2までの範囲においては、障害物300が含まれる。障害物300の鉛直方向に延びる支柱302を基準とすると、障害物300を構成する部位としては、天板301とベースプレート303とが鉛直方向と直交する方向へ突出している。
また、天板301とベースプレート303とを比較した場合には、天板301の方がベースプレート303よりも鉛直方向と直交する方向へ突出している。従って、地図提供サーバ200は、障害物300の外形として天板301の外形を部分3次元地図から抽出する。
従って、
図2(A)に対応して生成される経路計画用地
図MP-2は、
図2(C)に示すように、建物BLの移動空間における、障害物300の天板301の外形が障害物300の外形として示された2次元地図となる。このように経路計画用地
図MP-2は、障害物300の位置情報に加え、鉛直方向における床CTから自律移動装置100の高さh2までの範囲にあたる移動空間の一部において、障害物300の外形として、鉛直方向と交差する方向における障害物300の最大寸法に関する情報を有する2次元地図である。
【0023】
自律移動装置100は、
図2(C)の経路計画用地
図MP-2を利用して、例えば所定の出発位置から目的地DNに自己が到達するまでの経路についての計画(経路計画)を行う。つまり、自律移動装置100は、経路計画用地
図MP-2において示される建物BLの壁や障害物に衝突しないように経路を計算する。
具体例として、
図2(C)においては、自律移動装置100が移動開始位置STから移動を開始し、障害物300の天板301との衝突を回避するため、進行方向から見て天板301の右側にて安全距離Daを隔てた状態で通過し、その後、左折して進行することで目的地DNに到達するようにして経路が求められた例が示される。安全距離Daは、自律移動装置100と建物BLに存在する障害物との間で最低限確保されるべき距離である。
【0024】
図3は、自律移動装置100の機能構成例を示している。同図の自律移動装置100としての機能は、自律移動装置100が備えるCPU(Central Processing Unit)がプログラムを実行することで実現される。同図の自律移動装置100は、通信部101、測域センサ102、移動機構部103、制御部104、及び記憶部105を備える。
通信部101は、ネットワーク経由で地図提供サーバ200と通信を行う。
測域センサ102は、前述のようにレーザ光等により2次元による走査を行うことで、障害物までの距離を計測するセンサである。
移動機構部103は、自律移動装置100が移動するための駆動機構部である。移動機構部103は、例えば車輪、車輪を駆動するモータ、移動方向を変更する方向変更機構等を備える。
【0025】
制御部104は、自律移動装置100における各種制御を実行する。制御部104は、地図取得部141、及び自律移動制御部142を備える。
地図取得部141は、地図提供サーバ200から自律移動用地図(自己位置推定用地図及び経路計画用地図)を取得する。地図取得部141は、取得した自律移動用地図を、地図記憶部152に記憶させる。
自律移動制御部142は、地図記憶部152が記憶する自律移動用地図を利用して、自律移動装置100が自律移動を行うように制御する。
【0026】
記憶部105は、自律移動装置100に対応する各種の情報を記憶する。記憶部105は、寸法情報記憶部151と地図記憶部152とを備える。
【0027】
寸法情報記憶部151は、寸法情報を記憶する。寸法情報は、自律移動装置100の寸法に関する情報である。本実施形態において、寸法情報は、測域センサ102が設けられた床(水平面)からの高さh1と、自律移動装置100自体の床(水平面)からの高さh2と、自律移動装置100の外形の水平面(鉛直方向と直交する方向)における寸法(平面サイズ)と、を有している。この他、寸法情報記憶部151は、自律移動装置100の位置を鉛直方向から見た水平面における点として便宜的に示すための基準位置に関する情報を有していてもよい。基準位置はどのように定められてもよいが、例えば鉛直方向から見た水平面における自律移動装置100の重心に対応する位置の他、測域センサ102に対応する位置などであってよい。
【0028】
地図記憶部152は、地図取得部141が取得した自律移動用地図としての自己位置推定用地図及び経路計画用地図を記憶する。
【0029】
図4は、地図提供サーバ200の機能構成例を示している。同図の地図提供サーバ200としての機能は、地図提供サーバ200が備えるCPUがプログラムを実行することで実現される。地図提供サーバ200は、通信部201、制御部202、及び記憶部203を備える。
通信部201は、ネットワーク経由で自律移動装置100と通信を行う。
【0030】
制御部202は、地図提供サーバ200における制御を実行する。制御部202は、入力部221と地図生成部222とを備える。
入力部221は、自律移動用地図の生成に用いる情報(地図生成利用情報)を入力する。入力部221は、自律移動装置100から送信される地図生成利用情報を入力する。自律移動用地図として、自己位置推定用地図の生成に用いる地図生成利用情報は、自律移動装置100が備える測域センサ102の高さh1(センサ高さ)である。自律移動用地図として、経路計画用地図の生成に用いる地図生成利用情報は、自律移動装置100の高さh2(装置高さ)である。
【0031】
記憶部203は、地図提供サーバ200に対応する各種の情報を記憶する。記憶部203は、3次元地図記憶部231と装置登録情報記憶部232とを備える。
3次元地図記憶部231は、自律移動用地図(自己位置推定用地図及び経路計画用地図)の生成元となる3次元地図を記憶する。本実施形態の場合、3次元地図記憶部231は、少なくとも建物BL内の所定空間に配置された障害物300の位置・寸法等の情報を含む、所定空間の3次元地図を記憶している。
装置登録情報記憶部232は、装置登録情報を記憶する。装置登録情報は、建物BL等の所定の空間に配備された自律移動装置100についての登録情報である。装置登録情報は、例えば自律移動装置100の識別子(装置識別子)ごとに、対応の自律移動装置100が配備される建物BL等の空間を示す3次元地図の識別子(地図識別子)を対応付けた構造であってよい。
【0032】
図5のフローチャートを参照して自律移動装置100と地図提供サーバ200が、自律移動装置100の自律移動に対応して実行する処理手順例について説明する。
まず、自律移動装置100の処理手順について説明する。
ステップS101:自律移動装置100において、地図取得部141は、現在において自己が配備された建物BLにおいて自律移動を開始させるにあたり、地図提供サーバ200に地図要求を送信する。
地図要求は、自律移動装置100が自律移動に利用する自律移動用地図を要求するコマンドである。地図要求は、自律移動装置100の装置識別子と地図生成利用情報とを含む。地図生成利用情報は、センサ高さh1と装置高さh2を含む。自律移動装置100は、地図生成利用情報としてのセンサ高さh1と装置高さh2を、寸法情報記憶部151が記憶する寸法情報から取得してよい。
【0033】
ステップS102:ステップS101により地図要求が送信されたことに応じて、地図提供サーバ200は、自律移動用地図(自己位置推定用地図及び経路計画用地図)を生成し、生成した自律移動用地図を自律移動装置100に送信する。地図提供サーバ200が送信する自律移動用地図は、自律移動装置100が配備された建物BLにおける移動空間の3次元地図を利用して生成されたものである。
自律移動装置100において、地図取得部141は、地図提供サーバ200から送信された自律移動用地図を通信部101経由で受信する。地図取得部141は、受信した自律移動用地図を3次元地図記憶部231に記憶させる。このようにして地図取得部141は、自律移動用地図としての自己位置推定用地図及び経路計画用地図を取得する。
【0034】
ステップS103:自律移動装置100における自律移動制御部142は、ステップS102により取得された自己位置推定用地図を利用して現在の自己位置を推定する。当該ステップS103により推定される現在の自己位置は、自律移動装置100が建物BL内を移動するにあたっての移動開始位置となる。
当該ステップS103において、自律移動制御部142は、現在位置において、測域センサ102により建物BLにおける周囲の障害物までの距離を測定させる。本実施形態では、測域センサ102として2次元センサを用いたため、建物BLにおいて測域センサ102の高さh1に沿った周囲の障害物までの距離が2次元的に測定される。
自律移動制御部142は、測定された距離によって特定される自律移動装置100の周囲の障害物と自己との位置関係を推定し、推定された位置関係を自己位置推定用地図と照合することで、建物BLの移動空間における現在の自己位置を推定する。
【0035】
ステップS104:次に、自律移動制御部142は、ステップS102により取得された経路計画用地図を利用して、
図2(C)の例のように、建物BLにおける現在位置(移動開始位置)から目的地DNまでの経路を算出する。
この際、自律移動装置100は、寸法情報記憶部151が記憶する寸法情報に含まれる平面サイズ、基準位置等の情報を利用して、自己と建物BL内の障害物との間に安全距離Da以上が確保されるように経路を算出する。
【0036】
ステップS105:自律移動制御部142は、ステップS104により算出した経路に沿って自律移動装置100を移動させるように移動機構部103を制御する。
ステップS106:自律移動制御部142は、ステップS105により自律移動装置100を所定量移動させると、移動後における自律移動装置100の自己位置推定を行う。この際、自律移動制御部142は、ステップS103と同様に、測域センサ102による周囲の障害物までの距離の測定結果と、自己位置推定用地図と利用して自己の現在位置を推定するようにされてよい。
【0037】
ステップS107:自律移動制御部142は、ステップS106による自己位置推定により推定された自己の現在位置が目的地DNであるか否かを判定する。つまり、自律移動装置100は、自律移動装置100が目的地DNに到達したか否かを判定する。
ステップS107にて目的地DNに到達していないことが判定された場合には、ステップS105に処理が戻される。これにより、自律移動装置100は、移動しながら自己位置推定を行うことで、ステップS104により算出された経路に沿って移動していくようにされる。この際、ステップS106により推定された自己位置が経路から逸脱している場合には、次のステップS105にて軌道修正が行われ、自律移動装置100を経路に戻すようにされる。
【0038】
ステップS108:ステップS107にて目的地DNに到達したことが判定されると、自律移動制御部142は、自律移動装置100が停止されるように移動機構部103を制御する。
【0039】
次に、地図提供サーバ200が実行する処理手順について説明する。
ステップS201:地図提供サーバ200において、入力部221は、ステップS101により自律移動装置100から送信された地図要求を通信部201経由で受信する。
【0040】
ステップS202:地図生成部222は、3次元地図記憶部231が記憶する3次元地図のうちから、ステップS201により受信された地図要求の送信元の自律移動装置100が配備された移動空間(建物BL)に対応する3次元地図を特定する。このため、地図生成部222は、ステップS201により受信された地図要求から装置識別子を取得する。地図生成部222は、取得した装置識別子と対応付けられた地図識別子を装置登録情報記憶部232から取得する。地図記憶部152に記憶される3次元地図にはそれぞれ地図識別子が付与されている。従って、地図生成部222は、上記のように地図識別子を取得したことにより、対応の3次元地図を特定したことになる。
【0041】
ステップS203:地図生成部222は、ステップS201にて受信された地図要求からセンサ高さh1を取得する。
ステップS204:地図生成部222は、ステップS203により取得されたセンサ高さh1を利用して自己位置推定用地図を生成する。つまり、地図生成部222は、ステップS202により特定された3次元地図を3次元地図記憶部231から取得する。地図生成部222は、取得した3次元地図から、ステップS203により取得されたセンサ高さh1に対応する2次元地図を抽出する。このように抽出された2次元地図が自己位置推定用地図となる。
【0042】
ステップS205:また、地図生成部222は、ステップS201にて受信された地図要求から装置高さh2を取得する。
ステップS206:地図生成部222は、ステップS205により取得された装置高さh2を利用して自己位置推定用地図を生成する。地図生成部222は、前述のように、3次元地図記憶部231から取得した3次元地図から、ステップS205により取得された鉛直方向における床CTから装置高さh2までの移動空間の3次元空間に対応する3次元地図(部分3次元地図)を抽出する。地図生成部222は、抽出した部分3次元地図に基づき、移動空間のうち、鉛直方向における床CTから自律移動装置100の高さh2までの範囲の3次元空間を占める障害物300の一部または全部における、垂直方向と直交する方向における障害物300の最大外形に関する情報を抽出する。そして、地図生成部222は、障害物300の最大外形に関する情報と、障害物300の位置情報と、を含む2次元地図である経路計画用地
図MP-2を生成する。
【0043】
ステップS207:地図生成部222は、ステップS204により生成した自己位置推定用地図と、ステップS106により生成した経路計画用地図とを、自律移動用地図として自律移動装置100に送信する。
【0044】
なお、同図の処理手順の変形例として、地図提供サーバ200は、先に経路計画用地図を生成し、この後に自己位置推定用地図を生成してもよい。
【0045】
以上説明したように、本実施形態の自律移動装置100は、地図提供サーバ200から提供される自律移動用地図(自律移動用地図、及び経路計画用地図)を利用して自律移動することが可能とされている。
これにより、自律移動装置100は、例えば自己が建物BL内を移動しながら障害物との距離を測定する手順を経なくとも、自律移動用地図を得ることができる。この際、自律移動装置100は、地図提供サーバ200に対して、センサ高さh1と装置高さh2の情報を送信すればよい。
【0046】
また、自律移動装置100が上記のようにして建物BL内を移動しながら障害物との距離を測定して得る自律移動用地図としては3次元地図である必要があった。このため、自律移動装置100が建物BL内を移動しながら障害物との距離を測定して自律移動用地図を生成する場合には、障害物の距離を測定する3次元測域センサを要していた。
これに対して、本実施形態の場合であれば、自律移動装置100が自己位置を推定するのに利用する自己位置推定用地図は、測域センサ102の高さに対応する2次元地図である。このため、本実施形態の自律移動装置100が備える測域センサは、2次元的に障害物との距離を測定できるものであればよい。したがって、高価な3次元測域センサを用いることなく、安価な2次元に対応する測域センサで自律移動装置100の自己位置を推定可能とすることができる。
【0047】
また、本実施形態の自律移動用地図である自己位置推定用地図と経路計画用地図は、いずれも2次元地図である。これにより、自律移動装置100が自律移動に関して扱う地図のデータとしては、3次元地図である場合よりも、記憶容量を節減でき、処理負荷が軽減されることにもなる。
【0048】
また、自律移動用地図の生成に利用される3次元地図は、自律移動用地図の生成に対応して作成されたものでなくともよい。例えば、3次元地図は、建物BLについてのものであれば、建物BLの管理者等が、建物BLの管理等を目的として作成したものであってよい。つまり、地図提供サーバ200は、建物BLの管理等を目的として作成された建物BL内の3次元地図を、自律移動用地図の生成に流用することになる。
このように、本実施形態において、自律移動用地図の生成に利用される3次元地図は、他の目的で作成された既存のものが流用されてもよい。この場合、自律移動用地図の生成に特化した3次元地図を改めて構築しなくともよいことから、地図提供システムを効率良く構築することができる。
【0049】
なお、上記各実施形態においては、地図提供サーバ200が自律移動装置100から送信された寸法情報に基づいて3次元地図から自律移動用地図(自己位置推定用地図、経路計画用地図)を生成するようにされていた。
しかしながら、本実施形態においては、自律移動装置100が、地図提供サーバ200から自己の位置に対応の空間の3次元地図を取得し、取得した3次元地図と寸法情報記憶部151に記憶された寸法情報とを利用して、自律移動用地図を生成するようにされてよい。
【0050】
なお、例えば地図提供サーバ200は、上記実施形態のようにして自律移動用地図(自己位置推定用地図、経路計画用地図)を生成したうえで、自律移動装置100を自律移動させる制御も実行可能なようにされてよい。つまり、地図提供サーバ200が自律移動制御部としての機能を有するようにされてよい。
この場合には、地図提供サーバ200が経路計画用地図を利用して経路を算出してよい。自律移動装置100は、測域センサ102により測定した周囲の障害物との距離の情報を地図提供サーバ200に送信する。地図提供サーバ200は、送信された距離の情報に基づいて移動空間における自律移動装置100の位置を推定し、推定した位置から目的地に到達するように自律移動装置100の移動に関する指示(例えば移動・停止指示、移動時の移動方向の指示等)を行う。自律移動装置100は、指示に応じた移動を行うようにされる。
【0051】
なお、地図提供サーバ200としての機能は、複数のサーバに分散されるようにして構成されてよい。
【0052】
なお、上述の自律移動装置100、地図提供サーバ200等としての機能を実現するためのプログラムをコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録して、この記録媒体に記録されたプログラムをコンピュータシステムに読み込ませ、実行することにより上述の自律移動装置100、地図提供サーバ200等としての処理を行ってもよい。ここで、「記録媒体に記録されたプログラムをコンピュータシステムに読み込ませ、実行する」とは、コンピュータシステムにプログラムをインストールすることを含む。ここでいう「コンピュータシステム」とは、OSや周辺機器等のハードウェアを含むものとする。また、「コンピュータシステム」は、通信回線を含むネットワークを介して接続された複数のコンピュータ装置を含んでもよい。記録媒体には、当該プログラムを配信するために配信サーバからアクセス可能な内部または外部に設けられた記録媒体も含まれる。
【符号の説明】
【0053】
100 自律移動装置、101 通信部、102 測域センサ、103 移動機構部、104 制御部、105 記憶部、141 地図取得部、142 自律移動制御部、151 寸法情報記憶部、152 地図記憶部、200 地図提供サーバ、201 通信部、202 制御部、203 記憶部、221 入力部、222 地図生成部、231 次元地図記憶部、232 装置登録情報記憶部、300 障害物