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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022171002
(43)【公開日】2022-11-11
(54)【発明の名称】給気デミスタ
(51)【国際特許分類】
   F02M 35/10 20060101AFI20221104BHJP
   B01D 45/08 20060101ALI20221104BHJP
【FI】
F02M35/10 301W
B01D45/08 Z
F02M35/10 101E
F02M35/10 301T
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021077356
(22)【出願日】2021-04-30
(71)【出願人】
【識別番号】000006208
【氏名又は名称】三菱重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100162868
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 英輔
(74)【代理人】
【識別番号】100161702
【弁理士】
【氏名又は名称】橋本 宏之
(74)【代理人】
【識別番号】100189348
【弁理士】
【氏名又は名称】古都 智
(74)【代理人】
【識別番号】100196689
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 康一郎
(72)【発明者】
【氏名】荒川 宜彬
(72)【発明者】
【氏名】池田 孝
(72)【発明者】
【氏名】岩永 健一
(72)【発明者】
【氏名】戸松 豪
(72)【発明者】
【氏名】岩▲崎▼ 宏司
【テーマコード(参考)】
4D031
【Fターム(参考)】
4D031AB06
4D031AB28
4D031BA08
4D031EA01
(57)【要約】
【課題】さらに性能が向上した給気デミスタを提供する。
【解決手段】給気デミスタは、下方から上方に向かって給気が流通する流路を形成するダクトと、ダクトの上方に設けられたデミスタ本体と、を備え、デミスタ本体は、下方に凹むとともに傾斜して延びる受け面を有し、互いに間隔をあけて並設された複数の樋部と、樋部の上方に設けられ、上方に凹む返し面を有し、互いに間隔をあけて並設された複数の返し部と、を有し、返し部は、上下方向視で、返し面が当該返し面の延在方向にわたって隣り合う受け面に跨っている。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下方から上方に向かって給気が流通する流路を形成するダクトと、
前記ダクトの上方に設けられたデミスタ本体と、
を備え、
前記デミスタ本体は、
下方に凹むとともに傾斜して延びる受け面を有し、互いに間隔をあけて並設された複数の樋部と、
前記樋部の上方に設けられ、上方に凹む返し面を有し、互いに間隔をあけて並設された複数の返し部と、
を有し、
各前記返し部は、上下方向視で、前記返し面が該返し面の延在方向にわたって隣り合う前記受け面に跨っている給気デミスタ。
【請求項2】
前記返し面は、前記受け面と平行となるように傾斜している請求項1に記載の給気デミスタ。
【請求項3】
前記ダクトの上方に設けられ、外部に流体を導く排出口が形成されたヘッダをさらに備え、
前記複数の樋部の下方の端部は、前記排出口に接続されている請求項1又は2に記載の給気デミスタ。
【請求項4】
前記樋部の端縁から前記受け面側に向かって張り出す張り出し部をさらに有する請求項1から3のいずれか一項に記載の給気デミスタ。
【請求項5】
前記樋部のうち、少なくとも下方の端部を上方から覆うカバー部をさらに有する請求項1から4のいずれか一項に記載の給気デミスタ。
【請求項6】
上下方向に積層された複数の前記樋部、及び複数の前記返し部を備える請求項1から5のいずれか一項に記載の給気デミスタ。
【請求項7】
前記受け面、及び前記返し面に設けられた撥水性のコーティング層をさらに有する請求項1から6のいずれか一項に記載の給気デミスタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、給気デミスタに関する。
【背景技術】
【0002】
高出力のエンジンシステムでは、給気圧を確保するためにターボチャージャーが用いられる。エンジン本体とターボチャージャーとの間には、給気を冷却するためのインタークーラーが設けられている。
【0003】
このインタークーラーでは、給気の冷却に伴って凝縮水が発生する。凝縮水がエンジン本体内に侵入すると、ヒートショックによるバルブの損傷を引き起こす虞がある。そこで、例えば下記特許文献1に記載された凝縮水分離装置(給気デミスタ)と呼ばれる装置が従来使用されている。この装置では、流路上にパンチングメタルを配置することで、凝縮水の分離を行う。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第6314400号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記のようにパンチングメタルを用いた場合、分離された凝縮水が給気の流れに乗って飛散してしまう可能性がある。また、パンチングメタルが流路をふさぐため、給気に対する圧力損失の原因となることもある。その結果、給気デミスタの性能が低下してしまう。
【0006】
本開示は上記課題を解決するためになされたものであって、さらに性能が向上した給気デミスタを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本開示に係る給気デミスタは、下方から上方に向かって給気が流通する流路を形成するダクトと、前記ダクト内に設けられたデミスタ本体と、を備え、前記デミスタ本体は、下方に凹むとともに傾斜して延びる受け面を有し、互いに間隔をあけて並設された複数の樋部と、前記樋部の上方に設けられ、上方に凹む返し面を有し、互いに間隔をあけて並設された複数の返し部と、を有し、各前記返し部は、上下方向視で、前記返し面が該返し面の延在方向にわたって隣り合う前記受け面に跨っている。
【発明の効果】
【0008】
本開示によれば、さらに性能が向上した給気デミスタを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本開示の実施形態に係る給気デミスタの断面図である。
図2】本開示の実施形態に係るデミスタ本体の断面図である。
図3】本開示の実施形態に係るデミスタ本体の変形例を示す図である。
図4】本開示の実施形態に係るデミスタ本体のさらなる変形例を示す図である。
図5】本開示の実施形態に係るデミスタ本体の他の変形例を示す図である。
図6】本開示の実施形態に係るデミスタ本体の他の変形例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
(給気デミスタの構成)
以下、本開示の実施形態に係る給気デミスタ100について、図1図2を参照して説明する。この給気デミスタ100は、エンジンからの排気をターボチャージャーに供給するに当たり、一定の温度まで冷却するインタークーラーの下流側に設けられる装置である。具体的には図1に示すように、給気デミスタ100は、ダクト1と、ヘッダ3と、デミスタ本体4と、を備えている。
【0011】
ダクト1は筒状をなし、下方から上方に向かって給気Gが流通している。ダクト1の内部には、インタークーラー2が設けられている。インタークーラー2は例えばフィンアンドチューブ方式の熱交換器であり、内部を流通する冷媒と給気Gとの間で熱交換を行う。これにより、給気Gの温度が低下する。
【0012】
ヘッダ3は、ダクト1の上方に一体に設けられている。ヘッダ3の内部にはデミスタ本体4が収容されている。ダクト1から流れてきた水分を含む給気Gは、デミスタ本体4で気液分離される。このうち、水分が除去された給気Gは、ヘッダ3の上部に設けられた排気口32から外部に排出される。
【0013】
(デミスタ本体の構成)
次に、図1図2を参照してデミスタ本体4の構成について説明する。デミスタ本体4は、樋部41と、返し部42と、を有している。
【0014】
図1に示すように、樋部41、及び返し部42はともに水平方向に対して傾斜している。なお、この例とは異なり、樋部41のみを傾斜させる構成を採ることも可能である。
【0015】
さらに、図2に示すように、樋部41、及び返し部42は、L型の断面形状を有している。樋部41は、下方に向かって凹んでいる。樋部41の上方を向く面は受け面41aとされている。この受け面41aには、撥水性のコーティング層Cが設けられている。このような樋部41が、水平方向に間隔をあけて複数配列されている。
【0016】
樋部41の上方には、複数の返し部42が設けられている。それぞれの返し部42は上方に向かって凹んでいる。返し部42の下方を向く面は返し面42aとされている。この返し面42aには、受け面41aと同様に、撥水性のコーティング層Cが設けられている。これら返し部42は、樋部41と同様に、水平方向に間隔をあけて配列されている。各返し部42は、上下方向視で、返し面42aが当該返し面42aの延在方向の全域にわたって、上下方向に隣り合う下方の樋部41の受け面41aに跨っている。つまり、上下方向から見て、返し面42aと受け面41aは互いにその少なくとも一部が重なっている。さらに言い換えれば、樋部41と返し部42とは、水平方向における位置が互いにずれている。
【0017】
(作用効果)
続いて、上記の給気デミスタ100の動作について説明する。まず給気Gがダクト1内に導かれる。すると、インタークーラー2によって給気Gが冷却される。冷却された状態の給気Gは、ヘッダ3内でデミスタ本体4に接触する。このとき、図2に示すように、給気Gのうち、気相成分G1は上述の樋部41、及び返し部42の間の間隙を通じて下方から上方に向かって流通する。
【0018】
一方で、給気Gに含まれる水分Wは、返し部42の返し面42a上で凝縮する。この水分Wは、図2中の矢印で示すように、重力の作用によって返し面42aを流下した後、下方の樋部41に流れ落ちる。樋部41は上述のように水平方向に対して傾斜していることから、当該傾斜に沿って水分Wが下方に流れる。その後、樋部41に接続されたヘッダ3に排出口31(図1参照)を通じて、水分Wが外部に排出される。つまり、複数の樋部41の下方の端部は、排出口31に接続されている。
【0019】
上記構成によれば、ダクト1を流通してきた給気Gに含まれる水分Wが、返し部42の返し面42a上で凝縮して捕捉される。捕捉された水分は重力によって下方の樋部41に流れ落ちる。さらに、水分Wは、重力によって樋部41の傾斜に沿って下方に流れ、外部に取り出される。これにより、水分Wがデミスタ本体4から飛散して給気G中に戻されてしまう可能性を低減することができる。また、樋部41、及び返し部42はそれぞれ互いに間隔をあけて配列されていることから、給気Gの流れを妨げることがない。このため、給気デミスタ100における圧力損失の発生も抑制することができる。
【0020】
さらに、上記構成によれば、返し面42aが傾斜していることから、凝縮した水分Wを傾斜方向に下方に流しつつ、受け面41aに向かって滴下させることができる。これにより、さらに迅速に水分を流路上から退避させることができる。
【0021】
また、上記構成によれば、ヘッダ3に形成された排出口31を通じて、樋部41に貯まった水分Wが外部に排出される。ヘッダ内圧と大気圧の差圧によって水分を排出できることから、ポンプ等の他の機器が不要となり、装置の製造コストやメンテナンスコストを削減することができる。
【0022】
加えて、上記構成によれば、コーティング層Cによって、受け面41a、及び返し面42aにおける水分Wの滞留を回避し、速やかに流下させることができる。これにより、デミスタ本体4から水分Wが飛散してしまう可能性をさらに低減することができる。
【0023】
以上、本開示の実施形態について説明した。なお、本開示の要旨を逸脱しない限りにおいて、上記の構成に種々の変更や改修を施すことが可能である。例えば、変形例として図3に示すように、樋部41のうち、少なくとも下方の端部を上方から覆うカバー部5をさらに有する構成を採ることも可能である。この構成によれば、カバー部5が設けられていることから、一度樋部41に滴下した水分が再び上方に飛散する可能性を低減することができる。
【0024】
さらに、図4に示すように、樋部41の端縁から受け面41a側に向かって張り出す一対の張り出し部6をさらに有する構成を採ることも可能である。この構成によれば、樋部41に張り出し部6が設けられていることから、一度樋部41に滴下した水分が再び上方に飛散する可能性をさらに低減することができる。
【0025】
加えて、樋部41を、図5及び図6に示すような形状とすることも可能である。図5の例では、樋部41は、底面41bと、この底面41bの端縁から斜めに延びる受け面41aと、を有している。図6の例では、樋部41は半円筒状をなしている。その内周面は受け面41a´とされている。これらの構成によれば、上記実施形態で説明したL型の断面形状を有する構成に比べて、樋部41の容積を大きくすることができる。これにより、さらに多くの量の水分を捕捉・排出することが可能となる。
【0026】
また、詳しくは図示しないが、樋部41、及び返し部42を上下方向にそれぞれ複数ずつ積層することも可能である。また、樋部41を一層のみ設け、上方に2層以上の返し部42を設けることも可能である。いずれの構成であっても、返し部42同士は上下方向から見てその少なくとも一部が重複していることが望ましい。このような構成によれば、デミスタ本体4の処理性能(水分の捕捉量)をさらに拡大することが可能となる。
【0027】
<付記>
各実施形態に記載の給気デミスタ100は、例えば以下のように把握される。
【0028】
(1)第1の態様に係る給気デミスタ100は、下方から上方に向かって給気Gが流通する流路を形成するダクト1と、前記ダクト1の上方に設けられたデミスタ本体4と、を備え、前記デミスタ本体4は、下方に凹むとともに傾斜して延びる受け面41aを有し、互いに間隔をあけて並設された複数の樋部41と、前記樋部41の上方に設けられ、上方に凹む返し面42aを有し、互いに間隔をあけて並設された複数の返し部42と、を有し、各前記返し部42は、上下方向視で、前記返し面42aが該返し面42aの延在方向にわたって隣り合う前記受け面41aに跨っている。
【0029】
上記構成によれば、ダクト1を流通してきた給気Gに含まれる水分Wが、返し部42の返し面42a上で凝縮して捕捉される。捕捉された水分Wは重力によって下方の樋部41に流れ落ちる。さらに、水分Wは、重力によって樋部41の傾斜に沿って下方に流れ、外部に取り出される。これにより、水分Wがデミスタ本体4から飛散する可能性を低減することができる。また、樋部41、及び返し部42はそれぞれ互いに間隔をあけて配列されていることから、給気Gの流れを妨げることがない。このため、給気デミスタ100における圧力損失の発生も抑制することができる。
【0030】
(2)第2の態様に係る給気デミスタ100では、前記返し面42aは、前記受け面41aと平行となるように傾斜している。
【0031】
上記構成によれば、返し面42aが傾斜していることから、凝縮した水分を傾斜方向に下方に流しつつ、受け面41aに向かって滴下させることができる。これにより、さらに迅速に水分を流路上から退避させることができる。
【0032】
(3)第3の態様に係る給気デミスタ100は、前記ダクト1の上方に設けられ、外部に流体を導く排出口31が形成されたヘッダ3をさらに備え、前記複数の樋部41の下方の端部は、前記排出口31に接続されている。
【0033】
上記構成によれば、ヘッダ3に形成された排出口31を通じて、樋部41に貯まった水分Wが外部に排出される。ヘッダ内圧と大気圧の差圧によって水分を排出できることから、ポンプ等の他の機器が不要となり、装置の製造コストやメンテナンスコストを削減することができる。
【0034】
(4)第4の態様に係る給気デミスタ100は、前記樋部41の端縁から前記受け面41a側に向かって張り出す張り出し部6をさらに有する。
【0035】
上記構成によれば、樋部41に張り出し部6が設けられていることから、一度樋部41に滴下した水分が再び上方に飛散する可能性を低減することができる。
【0036】
(5)第5の態様に係る給気デミスタ100は、前記樋部41のうち、少なくとも下方の端部を上方から覆うカバー部5をさらに有する。
【0037】
上記構成によれば、カバー部5が設けられていることから、一度樋部41に滴下した水分が再び上方に飛散する可能性を低減することができる。
【0038】
(6)第6の態様に係る給気デミスタ100は、上下方向に積層された複数の前記樋部41、及び複数の前記返し部42を備える。
【0039】
上記構成によれば、上下方向に複数の樋部41、及び複数の返し部42が積層されていることから、より多くの水分を凝縮させて捕捉することができる。これにより、給気デミスタ100の処理性能を向上させることができる。
【0040】
(7)第7の態様に係る給気デミスタ100は、前記受け面41a、及び前記返し面42aに設けられた撥水性のコーティング層Cをさらに有する。
【0041】
上記構成によれば、コーティング層Cによって、受け面41a、及び返し面42aにおける水分の滞留を回避し、速やかに流下させることができる。これにより、デミスタ本体4から水分が飛散してしまう可能性をさらに低減することができる。
【符号の説明】
【0042】
100 給気デミスタ
1 ダクト
2 インタークーラー
3 ヘッダ
4 デミスタ本体
5 カバー部
6 張り出し部
31 排出口
32 排気口
41 樋部
41a,41a´ 受け面
41b 底面
42 返し部
42a 返し面
G 給気
W 水分
図1
図2
図3
図4
図5
図6