(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022171010
(43)【公開日】2022-11-11
(54)【発明の名称】一酸化炭素製造装置及び一酸化炭素製造システム
(51)【国際特許分類】
C01B 32/40 20170101AFI20221104BHJP
【FI】
C01B32/40
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021077368
(22)【出願日】2021-04-30
(71)【出願人】
【識別番号】000005108
【氏名又は名称】株式会社日立製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110002572
【氏名又は名称】弁理士法人平木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】吉川 晃平
(72)【発明者】
【氏名】宇根本 篤
(72)【発明者】
【氏名】小野寺 大剛
(72)【発明者】
【氏名】小田 陽之
(72)【発明者】
【氏名】杉政 昌俊
【テーマコード(参考)】
4G146
【Fターム(参考)】
4G146JA01
4G146JB04
4G146JB10
4G146JC02
4G146JC18
4G146JC21
4G146JC22
4G146JC23
4G146JC24
4G146JC26
4G146JC35
4G146JC39
(57)【要約】
【課題】エネルギー消費を低減できる一酸化炭素製造装置を提供することを主目的とする。
【解決手段】本発明の一酸化炭素製造装置は、逆シフト反応により一酸化炭素を製造する一酸化炭素製造装置であって、逆シフト反応用触媒と、水を吸着する吸着材とを有し、二酸化炭素及び水素を含有する原料ガスから逆シフト反応により一酸化炭素及び水蒸気を含有する一酸化炭素含有ガスを生成する反応容器と、上記原料ガスを加熱するガス加熱機構と、上記反応容器を減圧する減圧装置と、上記原料ガスを上記反応容器に供給することにより、上記原料ガスから逆シフト反応により上記一酸化炭素含有ガスを生成する生成処理と、上記反応容器を上記減圧装置で減圧することにより、上記吸着材に吸着される水を脱離する脱離処理とを切り替えるガス流通機構と、を備えることを特徴とする。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
逆シフト反応により一酸化炭素を製造する一酸化炭素製造装置であって、
逆シフト反応用触媒と、水を吸着する吸着材とを有し、二酸化炭素及び水素を含有する原料ガスから逆シフト反応により一酸化炭素及び水蒸気を含有する一酸化炭素含有ガスを生成する反応容器と、
前記原料ガスを加熱するガス加熱機構と、
前記反応容器を減圧する減圧装置と、
前記原料ガスを前記反応容器に供給することにより、前記原料ガスから逆シフト反応により前記一酸化炭素含有ガスを生成する生成処理と、前記反応容器を前記減圧装置で減圧することにより、前記吸着材に吸着される水を脱離する脱離処理とを切り替えるガス流通機構と、を備えることを特徴とする一酸化炭素製造装置。
【請求項2】
請求項1に記載の一酸化炭素製造装置であって、
前記ガス加熱機構は、外部熱源との熱交換を行う熱交換器であることを特徴とする一酸化炭素製造装置。
【請求項3】
請求項2に記載の一酸化炭素製造装置であって、
前記外部熱源は、燃焼装置の排熱、化学プラントの排熱、製鉄所の排熱、及びセメント工場の排熱から選択される少なくとも一種であることを特徴とする一酸化炭素製造装置。
【請求項4】
請求項1に記載の一酸化炭素製造装置であって、
前記ガス加熱機構は、前記一酸化炭素含有ガスとの熱交換を行う熱交換器であることを特徴とする一酸化炭素製造装置。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか1項に記載の一酸化炭素製造装置であって、
前記二酸化炭素は、水蒸気改質装置から回収された二酸化炭素、大気から回収された二酸化炭素、パイプラインから輸送された二酸化炭素、並びに燃焼装置から回収された二酸化炭素、化学プラントから回収された二酸化炭素、製鉄所から回収された二酸化炭素、及びセメント工場から回収された二酸化炭素から選択される少なくとも一種であることを特徴とする一酸化炭素製造装置。
【請求項6】
請求項1~4のいずれか1項に記載の一酸化炭素製造装置であって、
前記二酸化炭素は、液化二酸化炭素が気化されたものであることを特徴とする一酸化炭素製造装置。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか1項に記載の一酸化炭素製造装置であって、
前記水素は、炭化水素の水蒸気改質で生成された水素、水の電気分解で生成された水素、及び製鉄所の排ガスから回収された水素から選択される少なくとも一種であることを特徴とする一酸化炭素製造装置。
【請求項8】
請求項1~7のいずれか1項に記載の一酸化炭素製造装置であって、
前記減圧装置は、圧縮機若しくは冷却凝縮器、又は圧縮機及び冷却凝縮器を併用する装置であることを特徴とする一酸化炭素製造装置。
【請求項9】
請求項8に記載の一酸化炭素製造装置であって、
前記減圧装置は、前記冷却凝縮器であり、
前記冷却凝縮器は、冷熱源との熱交換を行う熱交換器であり、
前記冷熱源は、冷却水、液化二酸化炭素、及び液化炭化水素から選択される少なくとも一種であることを特徴とする一酸化炭素製造装置。
【請求項10】
請求項1~9のいずれか1項に記載の一酸化炭素製造装置であって、
駆動電力が再生可能エネルギー由来の電力であることを特徴とする一酸化炭素製造装置。
【請求項11】
請求項1~10のいずれか1項に記載の一酸化炭素製造装置を備え、
前記一酸化炭素製造装置により製造される一酸化炭素及び水素を含有する混合ガスを、メタノール合成、炭化水素の合成、鉄の還元、浸炭、及び燃焼設備から選択される少なくとも一種に用いることを特徴とする一酸化炭素製造システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一酸化炭素製造装置及び一酸化炭素製造システムに関する。
【背景技術】
【0002】
脱炭素エネルギーシステムの構築が社会課題となっており、二酸化炭素を回収・資源化して活用する検討が進んでいる。特に二酸化炭素から一酸化炭素への変換は、一酸化炭素が燃料・合成原料として使用されるため有用である。
【0003】
二酸化炭素から一酸化炭素への変換反応として、二酸化炭素及び水素から一酸化炭素を生成する逆シフト反応が知られている。逆シフト反応は、以下の反応式(1)で示され、二酸化炭素(CO2)及び水素(H2)を含有する原料ガスから一酸化炭素(CO)及び水(H2O)を生成する吸熱反応である。逆シフト反応により生成される一酸化炭素は、例えば、フィッシャー・トロプシュ法による炭化水素の合成、メタノールの合成、製鉄、ガス燃料等として使用される。
【0004】
[化1]
CO2+H2→CO+H2O (1)
【0005】
逆シフト反応により一酸化炭素を製造する技術として、従来から種々の技術が知られている。例えば、特許文献1には、Ca、Sr、及びBaからなる群より選ばれる少なくとも1種類のアルカリ土類金属の炭酸塩、並びにTi、Al、Zr、Fe、W、及びMoからなる群より選ばれる少なくとも1種類の成分を含む複合酸化物を活性成分とする逆シフト反応用触媒を使用し、逆シフト反応により、700℃以上の温度で一酸化炭素を製造する製造方法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
逆シフト反応は、吸熱反応であり、化学平衡上の律速から高温になるほど一酸化炭素の生成が有利となるため、例えば、700℃以上の高温を必要とする。よって、多量の熱を供給する必要がある。これに対し、省エネルギー化の要請から、逆シフト反応により一酸化炭素を製造するプロセスでは、エネルギー消費を低減することが益々求められている。
【0008】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、エネルギー消費を低減できる一酸化炭素製造装置及び一酸化炭素製造システムを提供することを主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本発明の一酸化炭素製造装置は、逆シフト反応により一酸化炭素を製造する一酸化炭素製造装置であって、逆シフト反応用触媒と、水を吸着する吸着材とを有し、二酸化炭素及び水素を含有する原料ガスから逆シフト反応により一酸化炭素及び水蒸気を含有する一酸化炭素含有ガスを生成する反応容器と、上記原料ガスを加熱するガス加熱機構と、上記反応容器を減圧する減圧装置と、上記原料ガスを上記反応容器に供給することにより、上記原料ガスから逆シフト反応により上記一酸化炭素含有ガスを生成する生成処理と、上記反応容器を上記減圧装置で減圧することにより、上記吸着材に吸着される水を脱離する脱離処理とを切り替えるガス流通機構と、を備えることを特徴とする。
【0010】
本発明の一酸化炭素製造装置によれば、エネルギー消費を低減できる。
【0011】
また、本発明の一酸化炭素製造システムは、上記一酸化炭素製造装置を備え、上記一酸化炭素製造装置により製造される一酸化炭素及び水素を含有する混合ガスを、メタノール合成、炭化水素の合成、鉄の還元、浸炭、及び燃焼設備から選択される少なくとも一種に用いることを特徴とする。
【0012】
本発明の一酸化炭素製造システムによれば、エネルギー消費を低減できる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、エネルギー消費を低減できる。
【0014】
以上に説明した内容以外の本発明の課題、構成、及び効果は、以下の発明を実施するための形態の説明により明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】第1実施形態に係る一酸化炭素製造装置の概略を示す図である。
【
図2】第1実施形態に係る一酸化炭素製造装置における複合塔(反応容器)の概略を示す図である。
【
図3】第2実施形態に係る一酸化炭素製造システムの概略を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面等を用いて、本発明に係る実施形態について説明する。以下の説明は本発明の内容の具体例を示すものであり、本発明は、これらの説明に限定されるものではなく、本明細書で開示されている技術的思想の範囲内において当業者による様々な変更及び修正が可能である。また、本発明を説明するための全図において、同一の機能を有するものは、同一の符号を付け、その繰り返しの説明は省略する場合がある。
【0017】
本明細書に記載される「~」は、その前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む意味で使用する。本明細書に段階的に記載されている数値範囲において、一つの数値範囲で記載された上限値又は下限値は、他の段階的に記載されている上限値又は下限値に置き換えてもよい。本明細書に記載される数値範囲の上限値又は下限値は、実施例中に示されている値に置き換えてもよい。
【0018】
以下で例示している材料群から材料を選択する場合、本明細書で開示されている内容と矛盾しない範囲で、材料を単独で選択してもよく、複数組み合わせて選択してもよい、また、本明細書で開示されている内容と矛盾しない範囲で、以下で例示している材料群以外の材料を選択してもよい。
【0019】
(第1実施形態)
最初に、実施形態に係る一酸化炭素製造装置の概略について、第1実施形態に係る一酸化炭素製造装置を例示して説明する。
図1は、第1実施形態に係る一酸化炭素製造装置の概略を示す図である。
図2は、第1実施形態に係る一酸化炭素製造装置における複合塔(反応容器)の概略を示す図である。
【0020】
図1に示すように、第1実施形態に係る一酸化炭素製造装置100は、逆シフト反応により一酸化炭素を製造する一酸化炭素製造装置であって、複合塔(反応容器)10と、水素供給源12と、二酸化炭素供給源14と、流量制御装置16,18と、熱交換器(ガス加熱機構)20と、冷却凝縮器(減圧装置)22と、ガス流通機構24と、配管5とを備えている。
【0021】
水素供給源12は、水素ガスを配管5に流通させることで熱交換器20経由で複合塔10に供給する。二酸化炭素供給源14は、二酸化炭素ガスを配管5に流通させることで熱交換器20経由で複合塔10に供給する。水素ガス及び二酸化炭素ガスは、混合され、二酸化炭素及び水素を含有する原料ガスとして熱交換器20経由で複合塔10に供給される。流量制御装置16,18は、熱交換器20経由での複合塔10への水素ガスの供給流量及び二酸化炭素ガスの供給流量をそれぞれ制御する。
【0022】
熱交換器20は、原料ガス及び熱源である加熱用ガスを別々の管に流通させることで原料ガスを加熱用ガスとの熱交換により加熱する。
【0023】
複合塔10は、
図2に示すように、逆シフト反応用触媒4と、水を吸着する吸着材6とを内部に有し、原料ガスから逆シフト反応により一酸化炭素ガス及び水蒸気を含有する一酸化炭素含有ガスを生成する。圧縮機22は、複合塔10の内部を減圧する。一酸化炭素製造装置100では、複合塔10で生成される一酸化炭素含有ガスに含有される水蒸気を吸着材6に吸着させた上で、一酸化炭素含有ガスを冷却して回収する。また、減圧装置22により複合塔10の内部を減圧させることで吸着材6に吸着される水を脱離する。
【0024】
ガス流通機構24は、複合塔10と、流量制御装置16,18と、熱交換器20と、圧縮機22と、配管5とを含む。ガス流通機構24は、原料ガスを複合塔10に供給することにより、原料ガスから逆シフト反応により一酸化炭素含有ガスを生成する生成処理と、複合塔10の内部を圧縮機22で減圧することにより、吸着材6に吸着される水を脱離する脱離処理とを切り替える。
【0025】
ここで、第1実施形態に係る一酸化炭素製造装置100を使用することで一酸化炭素を製造する方法の一例を説明する。
【0026】
この例の一酸化炭素の製造方法では、まず、吸着材の前処理として、減圧装置22により複合塔10の内部を減圧させることで吸着材6に吸着される水を脱離する(減圧工程)。この際には、複合塔10の内部を0.5気圧以下に減圧する。
【0027】
次に、減圧装置22に減圧を停止させた上で、流量制御装置16,18により水素ガス及び二酸化炭素ガスの熱交換器20経由での複合塔10への供給を開始させる(第1切替工程)。これにより、脱離処理を生成処理に切り替える。
【0028】
次に、供給される水素ガス及び二酸化炭素ガスを混合することで原料ガスとした後に、熱交換器20により原料ガスを加熱させる(混合工程及び加熱工程)。この際には、原料ガスを300℃に加熱させる。次に、加熱された原料ガスを複合塔10に継続して供給させることで、複合塔10の内圧(原料ガスの全圧)が1.0気圧となるまでは、弁などにより複合塔10からガスの排出を抑止させる(昇圧工程)。なお、混合工程、加熱工程、及び昇圧工程は、順序を入れ替えてもよい。
【0029】
次に、流量制御装置16,18等により、加熱された原料ガスを複合塔10に継続して供給させながら、複合塔10の内圧(原料ガスの全圧)が1.0気圧に維持されるようにすることで、原料ガスから逆シフト反応により一酸化炭素ガス及び水蒸気を含有する一酸化炭素含有ガスを生成する(反応工程)。この際には、水蒸気を吸着材6に吸着させる。そして、原料ガス中の水素及び二酸化炭素のモル比をCO2:H2=1:4とする場合には、水蒸気を吸着材6に吸着除去させることにより、原料ガス中の二酸化炭素の100%を一酸化炭素に変換できる。
【0030】
次に、複合塔10の内部に設置された温度計測器により、吸着材6の所定位置における水蒸気の吸着飽和を検知した場合に、流量制御装置16,18により水素ガス及び二酸化炭素ガスの複合塔10への供給を停止させた上で、再度、上記減圧工程を行う(第2切替工程)。これにより、生成処理を脱離処理に切り替える。この例の製造方法によれば、継続的に高純度の一酸化炭素を製造できる。
【0031】
(第2実施形態)
続いて、第2実施形態に係る一酸化炭素製造システムについて説明する。
図3は、第2実施形態に係る一酸化炭素製造システムの概略を示す図である。
【0032】
図3に示すように、第2実施形態に係る一酸化炭素製造システム200は、第2実施形態に係る一酸化炭素製造装置100を備えている。一酸化炭素製造システム200は、一酸化炭素製造装置100に加え、化学プラント26、製鉄所28、セメント工場30、燃焼装置32、水蒸気改質装置36、パイプライン38と、二酸化炭素回収装置40と、電気分解装置42と、配管5とをさらに備えている。一酸化炭素製造装置100は、逆シフト反応により一酸化炭素を製造する一酸化炭素製造装置であって、第1実施形態に係る一酸化炭素製造装置100と同様に、複合塔(反応容器)10と、水素供給源12と、二酸化炭素供給源14と、流量制御装置16,18と、熱交換器(ガス加熱機構)20と、圧縮機(減圧装置)22と、ガス流通機構24と、配管5とを備えている。一酸化炭素製造装置100は、これらに加え、冷却凝縮器(減圧装置)50をさらに備えている。
【0033】
熱交換器20は、外部熱源25との熱交換を行う熱交換器であり、外部熱源25は、化学プラント26の排熱、製鉄所28の排熱、セメント工場30の排熱、及び燃焼装置32の排熱から選択される少なくとも一種である。一酸化炭素製造装置100では、これらの排熱を熱交換器20の外部熱源25として利用できるのでエネルギー消費を効果的に低減できる。
【0034】
二酸化炭素供給源14が供給する二酸化炭素ガスは、水蒸気改質装置36から回収された二酸化炭素、大気から回収された二酸化炭素、パイプライン38から輸送された二酸化炭素、並びに化学プラント26から回収された二酸化炭素、製鉄所28から回収された二酸化炭素、セメント工場30から回収された二酸化炭素、及び燃焼装置32から回収された二酸化炭素から選択される少なくとも一種である。二酸化炭素回収装置40では、これらの装置から二酸化炭素ガスを回収し、保持、運搬等のために一旦液化する。二酸化炭素供給源14が供給する二酸化炭素ガスは、液化二酸化炭素が気化されたものである。なお、液化二酸化炭素が気化される際の冷熱は、冷却凝縮器50の冷熱源として利用できる。一酸化炭素製造装置100では、これらの装置から回収された二酸化炭素を資源化し原料ガスとして再利用できる。
【0035】
水素供給源12が供給する水素ガスは、水蒸気改質装置36での炭化水素の水蒸気改質で生成された水素、電気分解装置42での水の電気分解で生成された水素、及び製鉄所28の排ガスから回収された水素から選択される少なくとも一種である。一酸化炭素製造装置100では、これらの水素を資源化し原料ガスとして再利用できる。
【0036】
一酸化炭素製造装置100では、減圧装置として圧縮機22及び冷却凝縮器50を併用している。このため、水の脱離のための圧縮機22の圧縮機動力を低減できる。冷却凝縮器50は、水蒸気の冷却凝縮のために、冷熱源との熱交換を行う熱交換器である。冷熱源は、冷却水、液化二酸化炭素、及び液化炭化水素から選択される少なくとも一種である。冷却水、並びに液化二酸化炭素及び液化炭化水素が気化される際の冷熱を、冷却凝縮器50の冷熱源として利用できる。
【0037】
一酸化炭素製造装置100を構成する各部の駆動電力は、再生可能エネルギー由来の電力である。このため、エネルギー消費を効果的に低減できる。さらに、一酸化炭素製造システム200は、一酸化炭素製造装置100により製造される一酸化炭素ガス及び水素を含有する混合ガスを、メタノール合成、メタン合成(炭化水素の合成)、鉄還元、浸炭、及び燃焼設備から選択される少なくとも一種に用いる。
【0038】
実施形態によれば、吸熱反応である逆シフト反応に熱を供給できる上に、逆シフト反応で生成される水を除去することで逆シフト反応の水による進行の抑制を回避できる。このため、高い変換効率で一酸化炭素を製造できる。さらに、一酸化炭素含有ガスを生成する処理と、吸着材に吸着される水を脱離し吸着材を再生する処理を切り替えることができるので、継続的に高い変換効率で一酸化炭素を製造できる。よって、エネルギー消費を低減できる。
【0039】
続いて、実施形態に係る一酸化炭素製造装置及び一酸化炭素製造システムの詳細について説明する。
【0040】
1.反応容器
反応容器は、逆シフト反応用触媒と、水を吸着する吸着材とを有し、二酸化炭素及び水素を含有する原料ガスから逆シフト反応により一酸化炭素及び水蒸気を含有する一酸化炭素含有ガスを生成する。
【0041】
反応容器は、例えば、粒状の吸着材と粒状の逆シフト反応用触媒とを混合して容器の内部に充填されたものである。反応容器では、一の開口から二酸化炭素ガス及び水素ガスが供給され、逆シフト反応で生成される水が吸着材により吸着除去されるため、一酸化炭素の生成を促進できる。反応容器では、逆シフト反応で生成される水が吸着剤により捕捉されるため、逆シフト反応で生成される一酸化炭素を他の開口から外部に回収できる。
【0042】
(1)吸着材
吸着材としては、特に限定されないが、Si及びAlから選択される少なくとも一種の元素を含有する酸化物を含むものが好ましく、中でもSi及びAlを含有するゼオライトを含むもの好ましい。
【0043】
ゼオライトは、Si及びAlの他に、Li、K、Na、Ca及びMgから選択される少なくとも一種の元素を含有してもよい。ゼオライトの細孔径は、特に限定されないが、例えば、10オングストローム以下であり、3オングストローム以上4オングストローム以下が好ましい。水が細孔に入りやすく、かつ一酸化炭素が細孔内に入りにくいからである。
【0044】
ゼオライトの結晶形は、特に限定されず種々考えうるが、水の吸着選択性を高める観点から、例えば、A型、X型、LSX型等が好ましく、中でもA型が好ましい。A型のゼオライトとしては、特にK、Na、及びCaから選択される少なくとも一種の元素を含有するものが好ましい。さらに、ゼオライトとしては、細孔径の制御の観点から、特にKを含むものが好ましい。ゼオライトのSi/Al比は、特に限定されず様々であるが、例えば、元素比で100以下が好ましく、中でも元素比で10以下が好ましい。なお、1オングストロームは0.1nmである。
【0045】
(2)逆シフト反応用触媒
逆シフト反応用触媒は、逆シフト反応を促進するものであり、一酸化炭素を選択的に製造でき、逆シフト反応を効率的に進行させる。
【0046】
逆シフト反応用触媒としては、特に限定されないが、例えば、Cu、Co、及びMnから選択される少なくとも一種の元素を活性成分として含むものが好ましい。活性成分が存在する形態は、一般的には、酸化物又は金属単体である。
【0047】
逆シフト反応用触媒の種類により逆シフト反応の最適な反応条件は異なる。このため、逆シフト反応の反応温度、反応圧力等の反応条件は、使用する逆シフト反応用触媒の種類により適宜決定できる。例えば、Cu、Co、及びMnから選択される少なくとも一種の元素を活性成分として含む触媒は、例えば、550℃以下、好ましくは500℃以下で触媒活性を示す。従って、反応温度は、例えば、200℃以上550℃以下、好ましくは300℃以上500℃以下である。さらに、反応圧力は、例えば、800hPa以上1200hPa以下、好ましくは900hPa以上1100hPa以下である。原料ガスを反応温度に加熱する加熱手段は、特に限定されず適宜選択可能であるが、例えば、バーナ等の加熱装置により、一酸化炭素製造装置や一酸化炭素製造システム等のガス流路を流れる原料ガスを反応温度になるように外部から加熱する手段などが挙げられる。
【0048】
酸化物の触媒の製造方法としては、例えば、触媒活性成分の前駆体として各元素の硝酸塩、酢酸塩、塩化物、水酸化物等を選択して混合し、含浸法、共沈法、混練法、メカニカルアロイング法、蒸着法等で利用可能な形態として焼成する方法などが挙げられる。金属状態の触媒は、例えば、触媒反応容器に前駆体や金属酸化物等を充填し、水素ガス等を流通させることで還元する方法により製造できる。
【0049】
逆シフト反応用触媒の活性成分は、担体成分に担持されることで性能が向上する。従って、逆シフト反応用触媒としては、活性成分に加えて、Si、Al、Zr、及びCeから選択される少なくとも一種の元素を含有する酸化物を担体成分として含むものが好ましい。これらの酸化物の中でもCeを含有する酸化物は酸化還元を促進する。従って、担体成分としては、活性成分の酸化及び還元を促進することで触媒性能を向上する観点から、特にCeを含有する酸化物を含むものが好ましい。
【0050】
逆シフト反応用触媒としては、担体成分として、Ceを含有する酸化物に加えて、さらにZr、Y、La、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、及びLu等から選択される少なくとも一種の希土類元素を含有する酸化物を含むものが好ましい。Ceを含む酸化物と希土類元素を含む酸化物との組み合わせにより、酸化還元反応を更に促進できる。
【0051】
逆シフト反応用触媒における活性成分と担体成分との組成比としては、特に限定されないが、例えば、担体成分に対する活性成分の質量比が0.1質量%以上30質量%以下の組成比が好ましく、中でも担体成分に対する活性成分の質量比が1質量%以上10重量%以下の組成比が好ましい。
【0052】
2.ガス加熱機構
ガス加熱機構は、原料ガスを加熱する。ガス加熱機構としては、特に限定されず適宜選択可能であるが、例えば、外部熱源との熱交換を行う熱交換器が好ましい。外部熱源としては、例えば、燃焼装置の排熱、化学プラントの排熱、製鉄所の排熱、及びセメント工場の排熱から選択される少なくとも一種が挙げられる。なお、これらの排熱の供給源は、いずれも二酸化炭素を生成するので、後述する二酸化炭素供給源を兼ねることができる。
【0053】
ガス加熱機構としては、一酸化炭素含有ガスとの熱交換を行う熱交換器でもよい。一酸化炭素含有ガスと原料ガスとの熱交換により、反応容器で生成された一酸化炭素含有ガスを冷却して回収するとともに原料ガスを加熱できるので、エネルギー消費を効果的に低減できる。
【0054】
3.減圧装置
減圧装置は、反応容器を減圧する。減圧装置としては、反応容器を減圧可能であれば特に限定されず適宜選択可能であるが、例えば、圧縮機、冷却凝縮器、圧縮機及び冷却凝縮器を併用する装置等が挙げられる。冷却凝縮器では、反応容器の水蒸気を冷却凝縮することで反応容器を減圧できる。水蒸気は、分離膜等で分離され、圧縮、冷却等で凝縮することで液体の水にできる。冷却凝縮器は、水蒸気の冷却凝縮のために、冷熱源との熱交換を行う熱交換器でもよい。冷熱源としては、例えば、冷却水、液化二酸化炭素、及び液化炭化水素から選択される少なくとも一種が挙げられる。
【0055】
減圧装置による減圧処理は、例えば、メタンやプロパン等の炭化水素ガスの水蒸気改質処理と組み合わせてよい。具体的には、例えば、液化メタンや液化プロパン等の液化炭化水素を含む液化天然ガスを冷熱源として、吸着材の再生時に脱離される水蒸気を冷却するとともに、水蒸気改質により生成される水素及び二酸化炭素から逆シフト反応により一酸化炭素を製造してもよい。なお、余剰の水素は分離することで別途活用できる。
【0056】
減圧時の反応容器の圧力は、例えば、0.1hPa以上100hPa以下、好ましくは1hPa以上10hPa以下である。
【0057】
4.ガス流通機構
ガス流通機構は、原料ガスを反応容器に供給することにより、原料ガスから逆シフト反応により一酸化炭素含有ガスを生成する生成処理と、反応容器を減圧装置で減圧することにより、吸着材に吸着される水を脱離する脱離処理とを切り替える機能を有する。ガス流通機構では、反応容器の吸着材で水の吸着飽和が起こる以前に吸着材に吸着された水を脱離することで吸着材を再生することにより、吸着飽和による一酸化炭素生成速度の鈍化を回避する。吸着材を再生させる際は、吸着材から水を脱離させる脱離処理を行う。
【0058】
一酸化炭素製造装置では、ガス流通機構によって、逆シフト反応により一酸化炭素含有ガスを生成する生成処理と、吸着剤に吸着された水を適宜脱離するために、逆シフト反応を停止し、水を脱離することで吸着剤を再生する脱離処理を切り替えるサイクル的な運転を行う。その結果、通常の化学平衡による制限を超えた一酸化炭素への変換効率を達成できるとともに、そのような変換効率での一酸化炭素の生成処理を継続的に行うことができる。なお、吸着材に吸着された水は、反応容器を減圧することで脱離可能であり、脱離された水蒸気は、冷却することで液体の水として除去可能である。
【0059】
5.ガス供給源
実施形態に係る一酸化炭素製造装置は、通常、水素供給源及び二酸化炭素供給源を備える。水素供給源は、水素ガスをガス加熱機構経由で反応容器に供給する。二酸化炭素供給源は、二酸化炭素をガス加熱機構経由で反応容器に供給する。
【0060】
二酸化炭素供給源が供給する二酸化炭素としては、特に限定されず制限なく使用可能であるが、例えば、火力発電所から回収された二酸化炭素、水蒸気改質装置から回収された二酸化炭素、大気から回収された二酸化炭素、パイプラインから輸送された二酸化炭素、並びに燃焼装置から回収された二酸化炭素、化学プラントから回収された二酸化炭素、製鉄所から回収された二酸化炭素、及びセメント工場から回収された二酸化炭素から選択される少なくとも一種が挙げられる。二酸化炭素は、単一の装置から回収されたものでもよいし、複数の装置から回収されたものでもよい。二酸化炭素としては、液化二酸化炭素が気化されたものでもよい。二酸化炭素は、保持、運搬等のために一旦液化してもよい。
【0061】
水素供給源が供給する水素としては、特に限定されず制限なく使用可能であるが、例えば、炭化水素の水蒸気改質で生成された水素、水の電気分解で生成された水素、及び製鉄所の排ガスから回収された水素から選択される少なくとも一種が挙げられる。なお、水の電気分解には再生可能エネルギーを使用することが好ましい。水素としては、例えば、炭化水素の水蒸気改質で生成される水素を使用し、フィッシャー・トロプシュ法で炭化水素の合成を行う際に、余剰となる水素でもよい。
【0062】
6.一酸化炭素製造装置及び一酸化炭素製造システム
実施形態に係る一酸化炭素製造装置は、逆シフト反応により一酸化炭素を製造する一酸化炭素製造装置であって、反応容器と、ガス加熱機構と、減圧装置と、ガス流通機構と、を備えるものである。一酸化炭素製造装置としては、特に限定されないが、駆動電力が再生可能エネルギー由来の電力であるものが好ましい。エネルギー消費をより効果的に低減できるからである。
【0063】
一酸化炭素製造システムは、一酸化炭素を製造するシステムであって、一酸化炭素製造装置を備え、一酸化炭素製造装置が、他のシステムと組み合わされたシステムである。他のシステムとしては、例えば、化学プラント等の各種のプラントなどの装置や設備を含むシステムなどが挙げられる。一酸化炭素製造システムは、例えば、逆シフト反応により一酸化炭素を製造する従来の装置が他のシステムと組み合わされたシステムにおいて、従来の装置を実施形態に係る一酸化炭素製造装置と置き換えたものでよい。
【0064】
一酸化炭素製造システムにおいて、一酸化炭素製造装置の被処理ガスである二酸化炭素及び水素は、適宜、他のシステムより供給される。他のシステムにおける二酸化炭素の発生量の多い装置や設備としては、例えば、火力発電所、ボイラ等の燃焼装置、天然ガス改質炉等の水蒸気改質装置などが挙げられる。二酸化炭素の供給源としては、再生可能資源であるバイオガスを用いることもできる。水素の供給源としては、天然ガス改質炉等の水蒸気改質装置、水の電気分解を行う電気分解装置等が挙げられる。
【0065】
一酸化炭素製造システムでは、一酸化炭素製造装置を他のシステムと組み合わせることで、一酸化炭素製造装置から回収される資源を他のシステムに供給し、他のシステムで原料等として使用できる。一酸化炭素製造システムとしては、一酸化炭素製造装置により製造される一酸化炭素及び水素を含有する混合ガスを、他のシステムに供給し、メタノール合成、炭化水素の合成、鉄の還元、浸炭、及び燃焼設備から選択される少なくとも一種に用いるものが好ましい。具体的には、一酸化炭素製造装置から回収される一酸化炭素含有ガスは、例えば、熱交換器での原料ガス等との熱交換により降温させた後、メタノール合成等の化成品の合成、フィッシャー・トロプシュ法等によるメタン合成等の炭化水素の合成、燃料化、鉄還元等の一酸化炭素還元工程などで原料等として使用できる。また、一酸化炭素製造装置で生成される一酸化炭素含有ガスは、水素を混合することで合成ガスとした上で、各種の反応に使用してもよい。この際には、それぞれの用途に応じて水素の混合量を調整できる。一酸化炭素製造システムでは、一酸化炭素製造装置を、製鉄プロセス設備等、二酸化炭素及び水素を利用する設備と組み合わせることもできる。一酸化炭素製造システムでは、一酸化炭素製造装置により、一酸化炭素含有ガスや合成ガス中の水残渣を低減可能できるので、メタノール合成等の化成品の合成、フィッシャー・トロプシュ法等によるメタン合成等の炭化水素の合成などの、一酸化炭素製造装置の後段のプロセスの効率を向上できる。
【0066】
ここで、一酸化炭素製造システムの具体例として、一酸化炭素製造装置が具体的な化学プラントと組み合わされた例を説明する。
【0067】
一酸化炭素製造装置がメタノール合成プラントと組み合わされた一酸化炭素製造システムでは、メタノール合成プロセスで回収される二酸化炭素ガスと、水の電気分解で生成される水素ガスとから、一酸化炭素製造装置を使用することで一酸化炭素及び水素を含有する合成ガスを得て、メタノール合成に再利用可能である。さらに、メタノール合成の余剰熱を利用可能である。一酸化炭素製造装置による水の除去により、合成ガスの純度を高くすることでメタノール合成の効率が向上できる。
【0068】
一酸化炭素製造装置が天然ガスプラントと組み合わされた一酸化炭素製造システムでは、一酸化炭素製造装置を逆シフト反応装置として好適に使用できる。特に液化炭化水素を含む液化天然ガスの冷熱を一酸化炭素製造装置で利用する場合には、水の脱離のための圧縮機動力を低減できる。この際には、液化天然ガスの冷熱を利用することで吸着材から水を凝縮除去するとともに、改質炉の未使用熱を一酸化炭素製造装置の逆シフト反応に利用できる。
【0069】
一酸化炭素製造装置が製鉄プロセス設備と組み合わされた一酸化炭素製造システムでは、製鉄所等の製鉄プロセス設備における鉄還元では、二酸化炭素ガスの発生量が多い上に還元に水素を使用しているため、余剰の水素ガスが発生する。従って、一酸化炭素製造装置を使用し、これらから一酸化炭素を製造可能であり、製造された一酸化炭素を鉄還元に再利用可能である。また、製鉄プロセス設備の各種の炉で発生する熱を回収し、一酸化炭素製造装置の熱源に利用できる。
【0070】
本発明は、実施形態に限定されるものではなく、本発明の特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本発明の技術的範囲に包含され、様々な変形例が含む。例えば、実施形態は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、ある実施形態の構成の一部を他の実施形態の構成に置き換えることが可能であり、また、ある実施形態の構成に他の実施形態の構成を加えることも可能である。また、各実施形態の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をすることが可能である。
【符号の説明】
【0071】
100 一酸化炭素製造装置
5 配管
10 複合塔(反応容器)
12 水素供給源
14 二酸化炭素供給源
16,18 流量制御装置
20 熱交換器(ガス加熱機構)
22 圧縮機(減圧装置)
24 ガス流通機構
25 外部熱源
50 冷却凝縮器(減圧装置)
200 一酸化炭素製造システム