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特開2022-171024炭酸アルコール飲料及びその製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022171024
(43)【公開日】2022-11-11
(54)【発明の名称】炭酸アルコール飲料及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   C12G 3/04 20190101AFI20221104BHJP
【FI】
C12G3/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021077388
(22)【出願日】2021-04-30
(71)【出願人】
【識別番号】311007202
【氏名又は名称】アサヒビール株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100119013
【弁理士】
【氏名又は名称】山崎 一夫
(74)【代理人】
【識別番号】100111796
【弁理士】
【氏名又は名称】服部 博信
(74)【代理人】
【識別番号】100193493
【弁理士】
【氏名又は名称】藤原 健史
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 繭
【テーマコード(参考)】
4B115
【Fターム(参考)】
4B115LG02
4B115LH03
4B115LH12
(57)【要約】
【課題】ボルネオールを含有する炭酸アルコール飲料において、ボルネオ―ルに由来する不快臭味を低減することのできる技術を提供する。
【解決手段】ボルネオール、及びメチルヘプテノンを含有する炭酸アルコール飲料。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ボルネオール及びメチルヘプテノンを含有する炭酸アルコール飲料。
【請求項2】
メチルヘプテノンの含有量が、1~500ppbである請求項1に記載の炭酸アルコール飲料。
【請求項3】
アルコール含量が0.5v/v%以上、9v/v%以下である、請求項1又は2に記載の炭酸アルコール飲料。
【請求項4】
クエン酸に換算した酸度が0.10mg/100ml以上である、請求項1から3のいずれかに記載の炭酸アルコール飲料。
【請求項5】
甘味度が1.0以上、10.0以下である、請求項1から4のいずれかに記載の炭酸アルコール飲料。
【請求項6】
炭酸ガス圧が1.5~3.5ガスボリュームである、請求項1から5のいずれかに記載の炭酸アルコール飲料。
【請求項7】
ボルネオールの含有量(A)に対するメチルヘプテノンの含有量(B)の比率(B)/(A)が0.001以上0.5以下である、請求項1から6のいずれかに記載の炭酸アルコール飲料。
【請求項8】
柑橘風味を有する、請求項1から7のいずれかに記載の炭酸アルコール飲料。
【請求項9】
果汁を含有する、請求項1から8のいずれかに記載の炭酸アルコール飲料。
【請求項10】
容器詰め飲料である、請求項1から9のいずれかに記載の炭酸アルコール飲料。
【請求項11】
炭酸アルコール飲料に、ボルネオール及びメチルヘプテノンを含有させる工程を含む、炭酸アルコール飲料の製造方法。
【請求項12】
炭酸アルコール飲料に、ボルネオール及びメチルヘプテノンを含有させる工程を含む、炭酸アルコール飲料の香味改善方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、炭酸アルコール飲料及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
酎ハイ及びカクテルテイスト飲料等に代表される炭酸アルコール飲料が知られている。炭酸アルコール飲料では、多くの場合、アルコールを含有する飲用液に、甘味料、酸味料、及び果汁等が加えられ、これによって香味が調えられている。
【0003】
炭酸アルコール飲料における香味の改善は、一般的な課題である。香味の改善に関連して、特許文献1(特開2019-135990号公報)には、果汁の含有量が果汁率換算で10%以下である低果汁含有飲料であって、ボルネオールの含有量が0.25~1.60ppmであり、デカナールの含有量が0.12~1.10ppmである低果汁含有飲料が開示されている。特許文献1の記載によれば、ボルネオールとデカナールを所定量含有させることにより、果汁の含有量が低くても、果汁の味の厚み、及び、果汁のフレッシュ感に優れる低果汁含有飲料が得られるとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2019-135990号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
炭酸アルコール飲料の魅力として、刺激感や爽快感(以下、すっきり感という場合もある)が挙げられる。本発明者は、この刺激感や爽快感を更に改善しようと検討したところ、ボルネオールを用いることにより、特有の刺激感及び爽快感が得られることを見出した。
その一方で、ボルネオールの添加量を増やすと、刺激感は増すものの、墨汁臭、土臭さと言った好ましくない香味(以下、不快臭味ということがある)が目立ちやすくなるという問題があることも判明した。
【0006】
そこで、本発明の課題は、ボルネオールを含有する炭酸アルコール飲料において、ボルネオ―ルに由来する不快臭味を低減することのできる技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、メチルヘプテノンにボルネオール由来の不快臭味を軽減する効果があることを見出し、本発明に至った。すなわち、本発明は、以下の事項により実現される。
[1]ボルネオール、及びメチルヘプテノンを含有する炭酸アルコール飲料。
[2]メチルヘプテノンの含有量が、1~500ppbである[1]に記載の炭酸アルコール飲料。
[3]アルコール含量が0.5v/v%以上、9v/v%以下である、[1]又は[2]に記載の炭酸アルコール飲料。
[4]クエン酸に換算した酸度が0.10mg/100ml以上である、[1]から[3]のいずれかに記載の炭酸アルコール飲料。
[5]甘味度が1.0以上、10.0以下である、[1]から[4]のいずれかに記載の炭酸アルコール飲料。
[6]炭酸ガス圧が1.5~3.5ガスボリュームである、[1]から[5]のいずれかに記載の炭酸アルコール飲料。
[7]ボルネオールの含有量(A)に対するメチルヘプテノンの含有量(B)の比率(B)/(A)が0.001以上0.5以下である、[1]から[6]のいずれかに記載の炭酸アルコール飲料。
[8]柑橘風味を有する、[1]から[7]のいずれかに記載の炭酸アルコール飲料。
[9]果汁を含有する、[1]から[8]のいずれかに記載の炭酸アルコール飲料。
[10]容器詰め飲料である、[1]から[9]のいずれかに記載の炭酸アルコール飲料。
[11]炭酸アルコール飲料に、ボルネオール、及びメチルヘプテノンを含有させる工程を含む、炭酸アルコール飲料の製造方法。
[12]炭酸アルコール飲料に、ボルネオール、及びメチルヘプテノンを含有させる工程を含む、炭酸アルコール飲料の香味改善方法。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、ボルネオールを含有する炭酸アルコール飲料において、ボルネオールに由来する不快臭味を低減することのできる技術が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施態様について詳細に説明する。
本実施形態に係る炭酸アルコール飲料は、ボルネオール及びメチルヘプテノンを含有する。
【0010】
(ボルネオ―ル)
ボルネオール(borneol)は、竜脳及びボルネオショウノウとも呼ばれる二環式モノテルペンである。ボルネオールは、樟脳の香りに類似した、お香や墨のような香りを呈する成分として知られている。
このボルネオールを炭酸アルコール飲料に含有させることにより、爽快な刺激感が増加し、後味がすっきりとしたものとなる。一方で、ボルネオールの量を増やすと、土臭さや墨汁臭といった不快臭味が目立つようになる。しかしながら、本実施形態によれば、メチルヘプテノンによって、ボルネオール由来の不快臭味がマスキングされる。従って、不快な香味なく、ボルネオール由来の爽快な刺激感を炭酸アルコール飲料に付与することが可能になる。
【0011】
ボルネオールの含有量は、例えば25ppb(μg/L)以上、好ましくは50ppb以上、より好ましくは100ppb以上、更に好ましくは500ppb以上であり、例えば50000ppb以下、好ましくは30000ppb以下、より好ましくは7500ppb以下、更に好ましくは3000ppb以下である。
飲料中のボルネオール濃度は、例えば、液液抽出-GC/MS分析法等により測定することができる。具体的には、下記の方法により、測定することができる。
(ボルネオ―ルの分析方法)
容器に試料を30g採取し、硫酸ナトリウム6gを加え、常温の内部標準液(N-ヘキシル-1,1-D2アルコール)75ppmを100μL添加する。続いて、ジクロロメタン5mLを添加し、3回ガス抜きした後、20分間200回/分の速さで振とう後、5分間3000rpmで冷却遠心し、下層のジクロロメタンを採取する。得られた溶液に無水硫酸ナトリウムを1g加えて脱水し、窒素パージにより約200μLまで濃縮後、GC-MSへ供与する。GC-MSの条件は以下のとおりである。
<装置> Agilent社製GC-MS(7890B/5977B)
<GC条件>
・カラム:DB-WAX UI(60m×0.25mmI.D×0.25μmF.T)
・オーブン温度:50℃(5min)-5℃/5min-230℃(10min)
・カラム流量:1.0mL/min
<注入口条件>
・注入方法:スプリットレス
・セプタムパージ流量:3mL/min
・温度:250℃
<トランスファーライン温度>
・230℃
<イオン抽出条件>
・RT:30.93、定量イオン:110、確認イオン:95
【0012】
(メチルヘプテノン)
メチルヘプテノンは、上述の通り、ボルネオール由来の不快臭味をマスキングするために使用されている。
【0013】
メチルヘプテノンの含有量は、好ましくは、ボルネオ―ルの含有量に応じて設定される。ボルネオールの含有量を(A)ppbとし、メチルヘプテノンの含有量を(B)ppb(μg/L)とした場合、比率(B)/(A)は、例えば0.001以上である。比率(B)/(A)が0.001以上であれば、爽快感が増す。比率(B)/(A)は、ボルネオール由来の不快臭味をマスキングする観点から、好ましくは0.005以上、より好ましくは0.01以上である。
また、比率(B)/(A)は、良好な刺激感及び爽快感を得る観点から、例えば0.5以下、好ましくは0.3以下、より好ましくは0.2以下である。
【0014】
また、メチルヘプテノンの含有量は、例えば1.0ppb以上である。メチルヘプテノンの含有量が1.0ppb以上であれば、爽快感が増す。メチルヘプテノンの含有量は、ボルネオール由来の不快臭味をマスキングする観点から、好ましくは2.5ppb以上、より好ましくは5.0ppb以上である。
また、良好な刺激感及び爽快感を得る観点から、メチルヘプテノンの含有量は、例えば500ppb以下、好ましくは300ppb以下、より好ましくは200ppb以下である。
【0015】
メチルヘプテノンの含有量は、例えば、ジクロロメタン液々抽出を用いたGC/MS分析により測定することができる。具体的には、下記の方法により、測定することができる。
(メチルヘプテノンの分析方法)
まず、容器に試料を30g採取し、硫酸アンモニウム6gを加え、次に当該容器にジクロロメタン5mlを加えて内部標準物質として1000ppmのリナロール-d5を50μL添加した後、20分間振とう抽出する。この際に、当該容器内にガスがある場合にはガス抜きを行うことが好ましい。その後、3500rpmで5分の遠心分離処理を行い、溶媒層を回収し、この回収した溶媒層に無水硫酸ナトリウムを加えて脱水した後、窒素パージにて100μLまで濃縮してGC/MS分析に供する。
(GC測定条件)
GC条件は、DB-WAX(60m×0.25mm ID;0.25μmF.T)(J&W社製)を用いて、スプリットレス法1μLで注入し、38℃で10分保持した後、10℃/分で245℃まで昇温し19.3分保持する。
(定量方法)
分析用試料中のメチルへプテノンの量は内部標準リナロール-d5との面積比から計算する。ここでは、メチルへプテノンのターゲットイオンm/z108を用いて、リナロール-d5のターゲットイオンm/z74を用いたピークとの面積比から計算する。
【0016】
(アルコール)
本実施形態に係る炭酸アルコール飲料のアルコール度数(エタノール濃度)は、例えば0.5v/v%以上、9v/v%以下、好ましくは3.0~7.5v/v%である。
アルコール源は、特に限定されるものではない。好ましくは、本実施形態に係る飲料は、アルコール源として蒸留酒を含む。炭酸アルコール飲料に含まれる全アルコールのうち、例えば50vol%以上、好ましくは70vol%以上、より好ましくは90vol%以上が蒸留酒由来である。蒸留酒としては、例えば、連続蒸溜式焼酎、原料用アルコール、醸造用アルコール、及びスピリッツなどが好ましく用いられる。
【0017】
(炭酸ガス圧)
本実施形態に係る炭酸アルコール飲料の炭酸ガス圧は、例えば1.5~3.5ガスボリューム、好ましくは1.7~3.0ガスボリュームである。
尚、「ガスボリューム」とは、標準状態における容器詰炭酸アルコール飲料中に溶解している炭酸ガスの容積と飲料の容積比をいう(単位として、GVを使用する)。実際には、標準状態(1気圧、25℃)において、1lの液体に1lの炭酸ガスが溶存している場合に1GVガスボリュームという。「ガスボリューム」は、炭酸アルコール飲料試料を標準状態(1気圧、25℃)として安定させた後、ガス内圧力計を取り付け、一度活栓を開いてガス抜き(スニフト)操作を行い、直ちに活栓を閉じてから激しく振とうし、圧力が一定になった時の値として得ることができる。
【0018】
(甘味料)
好ましくは、炭酸アルコール飲料は、甘味料を含有する。甘味料としては、例えば、糖類及び高甘味度甘味料が挙げられる。糖類とは、単糖類及び二糖類を意味する。単糖類としては、ぶどう糖、果糖、及び果糖ぶどう糖液糖などが挙げられる。二糖類としては、蔗糖、麦芽糖、乳糖、及び異性化乳糖などが挙げられる。高甘味度甘味料としては、例えば、スクラロース、アセスルファムカリウム、アスパルテーム、及びステビア甘味料などが挙げられる。
【0019】
甘味料は、炭酸アルコール飲料の甘味度が1.0以上、10.0以下となるような量で使用されていることが好ましい。炭酸アルコール飲料の甘味度は、より好ましくは、3.0~7.0である。
なお、「炭酸アルコール飲料の甘味度」とは、ショ糖の甘味を基準として甘さの度合いを示すパラメータであり、対象となる飲料と同等の甘さを有するショ糖水溶液のショ糖濃度(質量%)を表す。例えば、甘味度が「2」であることは、対象となる飲料が2質量%ショ糖水溶液と同等の甘さを有することを意味する。
飲料の甘味度は、飲料に含まれる甘味料の種類と含有量とに基づいて計算することができる。飲料中にショ糖以外の甘味料が含まれる場合には、使用した甘味料の濃度に、その甘味料の甘味度を乗じることにより、飲料の甘味度を計算することができる。甘味度の値としては、例えば、「甘味料の総覧、精糖工業会、1990年5月発行、p17~18」、及び、「飲料用語事典、株式会社ビバリッジジャパン社、平成11年6月25日発行、資11、4-2、甘味料の分類、甘味度による分類 欄」等に記載された「甘味度」の値を用いることができる。同一の甘味料についての値が複数の文献に記載されている場合には、「甘味料の総覧」に記載の値が優先して採用される。これら文献記載の甘味度が数値範囲を有する場合には、中央値が、甘味度として採用される。
代表的な甘味料の甘味度は、以下の通りである。
果糖:1.35
ブドウ糖:0.65
55%果糖ブドウ糖液糖:1
アセスルファムカリウム:200
スクラロース:600
【0020】
(酸味料)
好ましくは、炭酸アルコール飲料は、酸味料を含有する。酸味料としては、例えば、クエン酸、クエン酸三ナトリウム、アジピン酸、グルコノデルタラクトン、グルコン酸、グルコン酸カリウム、グルコン酸ナトリウム、コハク酸、コハク酸一ナトリウム、コハク酸二ナトリウム、酢酸ナトリウム、DL-酒石酸、L-酒石酸、DL-酒石酸ナトリウム、L-酒石酸ナトリウム、二酸化炭素、乳酸、乳酸ナトリウム、氷酢酸、フマル酸、フマル酸一ナトリウム、DL-リンゴ酸、DL-リンゴ酸ナトリウム及びリン酸からなる群から選ばれる少なくとも一種が挙げられる。
【0021】
好ましくは、炭酸アルコール飲料におけるクエン酸に換算した酸度は、0.10mg/100ml以上である。クエン酸に換算した酸度は、より好ましくは0.10~0.50mg/100ml、更に好ましくは0.15~0.40mg/100mlである。
尚、クエン酸に換算した酸度は、例えば、国税庁所定分析法(平19国税庁訓令第6号)の8頁、総酸(遊離酸)にて定められた酸度の測定方法に基づいて算出される。詳細には、酸度は、以下の方法により測定できる。
試料1~50mlを正確に量りとり、水で適宜希釈する。これを、0.1mol/L水酸化ナトリウム溶液で滴定し、pHメーターで8.2を終点とし、下記の式により算出する。
(数式1):酸度(%)=A×f×100/W×0.0064
A:0.1mol/L水酸化ナトリウム溶液による滴定量(ml)
f:0.1mol/L水酸化ナトリウム溶液の力価
W:試料重量(g)
なお、数式1中、「0.0064」は、「0.1mol/L水酸化ナトリウム溶液1mlに相当する無水クエン酸の重量(g)」である。
【0022】
(柑橘)
好ましくは、炭酸アルコール飲料は、柑橘風味を有する。柑橘風味は、例えば柑橘系の果汁及び香料等を使用することにより、付与することができる。
【0023】
好ましくは、炭酸アルコール飲料は、果汁を含有する。果汁としては、柑橘系の果汁が好ましく用いられる。柑橘系の果汁に使用される柑橘としては、例えば、オレンジ、うんしゅうみかん、グレープフルーツ、レモン、ライム、柚子、いよかん、なつみかん、はっさく、ポンカン、シークワーサー、及びかぼす等を挙げることができ、好ましくはレモン、ライム、柚子、シークワーサー、かぼす等の香酸柑橘果汁である。
【0024】
果汁の含有量は、ストレート換算で、例えば0.01~10質量%、好ましくは0.03~5質量%、より好ましくは0.05~3質量%である。
【0025】
(その他)
炭酸アルコール飲料には、必要に応じて、上記以外の成分を含んでいてもよい。そのような成分として、例えば、劣化臭生成抑制剤、劣化臭消臭剤、着色剤、pH調整剤、酸化防止剤、保存料、安定化剤、及び乳化剤等を挙げることができる。
【0026】
炭酸アルコール飲料は、好ましくは、容器詰め飲料である。容器としては特に限定されるものではなく、例えば、金属性の缶、ガラス製のビン、及びプラスチックボトルなどが挙げられる。
【0027】
本実施形態に係る炭酸アルコール飲料の製造方法は、特に限定されるものではない。例えば、ボルネオールと、メチルヘプテノンと、アルコール源となる蒸留酒等と、必要に応じてその他の成分とを混合し、必要に応じて加水する。更に、カーボネーションを行う。その後、混合液を容器に充填・密封することにより、所望の炭酸アルコール飲料を得ることができる。
なお、ボルネオール及びメチルヘプテノンは、それぞれ単一成分として混合されてもよいし、香料、及び天然物のエキス等の混合物の形態で混合されてもよい。
【実施例0028】
以下に、本発明をより具体的に説明するため、本発明者らによって行われた実施例について説明する。但し、本発明は以下の実施例に限定されて解釈されるべきものではない。
【0029】
(試験1)ボルネオ―ルを添加した炭酸アルコール飲料の官能評価
表1に示す処方にて、醸造用アルコール、55%果糖ブドウ糖液糖、クエン酸(無水)、及びクエン酸三ナトリウムを混合し、炭酸ガスを封入して、炭酸アルコール飲料のベース液を調製した。ベース液のアルコール濃度は5.1v/v%であり、クエン酸換算の酸度は0.25mg/100mlであり、甘味度は5.0であり、炭酸ガス圧は2.3ガスボリュームであった。
【0030】
調製したベース液に、表2に示されるように異なる量のボルネオールを添加し、サンプル1-1~1-7に係る飲料を得た。尚、サンプル1-1は、ボルネオール非添加であり、即ちベース液そのものである。
【0031】
続いて、各サンプルについて、3名の訓練されたパネリストにより官能評価を行った。評価項目は、(1)ボルネオール由来の刺激感、(2)ボルネオール由来の不快臭味、(3)後味のすっきり感、及び(4)香味の総合評価とした。
各項目ともに、サンプル1-1を対照(評点0)とした。
(1)刺激感、(2)不快臭味、及び(3)後味のすっきり感については、下記の基準で評価した。
+3:対照よりかなり強い
+2:対照より強い
+1:対照よりやや強い
0:対照と同程度
-1:対照よりやや弱い
-2点:対照より弱い
-3点:対照よりかなり弱い
【0032】
(4)香味の総合評価については、以下の基準で評価した。
+3点:対照よりかなり良い
+2点:対照より良い
+1点:対照よりやや良い
0点対照と同程度
-1点:対照よりやや悪い
-2点:対照より悪い
-3点:対照よりかなり悪い
【0033】
表2に、官能評価の結果をコメントと併せて示す。尚、結果は、3名のパネリストの平均値である。
【0034】
表2に示されるように、ボルネオール濃度が50ppb以上であるサンプル1-2~1-7では、ボルネオールを欠くサンプル1-1よりも、刺激感が強く、後味のすっきり感も増していた。一方で、ボルネオール濃度が増えるにつれ、不快臭味も感じられやすくなり、ボルネオール濃度が1000ppb以上であるサンプル1-5~1-7では、香味の総合評価が低下した。
【0035】
(試験2)ボルネオール含有炭酸アルコール飲料にメチルヘプテノンを添加した時の官能評価
試験1において、ボルネオ―ルの添加により香味の総合評価が悪くなったサンプル1-5(ボルネオール濃度1000ppb)を対照サンプル2-1として準備した。表3に示されるように、サンプル2-1に異なる量でメチルヘプテノンを添加し、サンプル2-2~2-8を調製した。更に、サンプル2-1を対照として、試験1と同様に、官能評価を行った。結果を表3に示す。
【0036】
表3に示されるように、サンプル2-2は、サンプル2-1よりも後味のすっきり感が増加し、総合評価が高まった。このことから、ボルネオール濃度(A)に対するメチルヘプテノン濃度(B)の比率(B)/(A)を0.001以上にすることにより、爽快感が増すことが理解できる。
また、サンプル2-3~サンプル2-8は、サンプル2-1よりも不快臭味が低減していた。このことから、メチルヘプテノンに、ボルネオール由来の不快臭味をマスキングする作用があることが確認された。
また、ボルネオール濃度(A)に対するメチルヘプテノン濃度(B)の比率(B)/(A)が0.5以下であるサンプル2-2~2-7においては、刺激感及び後味のすっきり感が損なわれることもなかった。
【0037】
(試験3)レモン風味炭酸飲料の処方例
表4に示す処方で、ボルネオ―ルを2000ppb、メチルヘプテノンを100ppb添加したレモン風味の炭酸アルコール飲料を作成した。尚、炭酸アルコール飲料中のレモン果汁由来のボルネオール濃度は2ppbであった。レモン果汁由来のメチルヘプテノン濃度は0ppbであった。
得られた炭酸アルコール飲料の香味を確認したところ、ボルネオール由来の刺激感、爽快感を有しながらも、不快臭味が抑えられており、好ましい香味のレモン風味炭酸アルコール飲料であった。
【0038】
【表1】
【表2】
【表3】
【表4】