(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022171054
(43)【公開日】2022-11-11
(54)【発明の名称】弾性波共振器、フィルタ、およびマルチプレクサ
(51)【国際特許分類】
H03H 9/145 20060101AFI20221104BHJP
H03H 9/64 20060101ALI20221104BHJP
H03H 9/72 20060101ALI20221104BHJP
【FI】
H03H9/145 C
H03H9/64 Z
H03H9/72
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021077435
(22)【出願日】2021-04-30
(71)【出願人】
【識別番号】000204284
【氏名又は名称】太陽誘電株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100087480
【弁理士】
【氏名又は名称】片山 修平
(72)【発明者】
【氏名】原井 奨大
【テーマコード(参考)】
5J097
【Fターム(参考)】
5J097AA34
5J097BB11
5J097BB14
5J097BB15
5J097DD04
5J097DD10
5J097DD29
5J097EE10
5J097FF04
5J097FF05
5J097GG03
5J097GG04
5J097KK03
5J097KK09
(57)【要約】
【課題】ピストンモードの励振を容易に実現すること。
【解決手段】弾性波共振器100は、圧電基板10と、圧電基板10上に設けられ、複数の電極指23と複数の電極指23が接続するバスバー24とを各々含み、互いの複数の電極指23の先端とバスバー24とが向かい合い、複数の電極指23の先端とバスバー24の間に位置する領域であるギャップ領域33を伝搬する弾性波の音速が互いの複数の電極指23が交差する領域である交差領域30のうち複数の電極指23の延伸方向におけるエッジに位置する領域であるエッジ領域32を伝搬する弾性波の音速の0.98倍以上1.02倍以下である一対の櫛型電極22と、エッジ領域32からギャップ領域33にかけて圧電基板10上に設けられ、交差領域30のうちエッジ領域32より内側に位置する領域である中央領域31には設けられていない付加膜42とを備える。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧電基板と、
前記圧電基板上に設けられ、複数の電極指と前記複数の電極指が接続するバスバーとを各々含み、互いの前記複数の電極指の先端と前記バスバーとが向かい合い、前記複数の電極指の先端と前記バスバーの間に位置する領域であるギャップ領域を伝搬する弾性波の音速が互いの前記複数の電極指が交差する領域である交差領域のうち前記複数の電極指の延伸方向におけるエッジに位置する領域であるエッジ領域を伝搬する弾性波の音速の0.98倍以上1.02倍以下である一対の櫛型電極と、
前記エッジ領域から前記ギャップ領域にかけて前記圧電基板上に設けられ、前記交差領域のうち前記エッジ領域より内側に位置する領域である中央領域には設けられていない付加膜と、を備える弾性波共振器。
【請求項2】
前記複数の電極指の先端と前記バスバーとの間で前記圧電基板上に設けられる別の付加膜を備える、請求項1に記載の弾性波共振器。
【請求項3】
圧電基板と、
前記圧電基板上に設けられ、複数の電極指と複数のダミー電極指と前記複数の電極指および前記複数のダミー電極指が接続するバスバーとを各々含み、互いの前記複数の電極指の先端と前記複数のダミー電極指の先端とが向かい合い、前記複数の電極指の先端と前記複数のダミー電極指の先端との間に位置する領域であるギャップ領域を伝搬する弾性波の音速が互いの前記複数の電極指が交差する領域である交差領域のうち前記複数の電極指の延伸方向におけるエッジに位置する領域であるエッジ領域を伝搬する弾性波の音速の0.98倍以上1.02倍以下である一対の櫛型電極と、
前記エッジ領域から前記ギャップ領域にかけて前記圧電基板上に設けられ、前記交差領域のうち前記エッジ領域より内側に位置する領域である中央領域には設けられていない付加膜と、を備える弾性波共振器。
【請求項4】
前記複数の電極指の先端と前記複数のダミー電極指の先端との間で前記圧電基板上に設けられる別の付加膜を備える、請求項3に記載の弾性波共振器。
【請求項5】
前記複数の電極指は、前記ギャップ領域における幅が前記交差領域における幅よりも広い、請求項1から4のいずれか一項に記載の弾性波共振器。
【請求項6】
前記一対の櫛型電極は、前記エッジ領域および前記ギャップ領域を伝搬する弾性波の音速が前記中央領域を伝搬する弾性波の音速より遅く、前記バスバーが位置する領域であるバスバー領域を伝搬する弾性波の音速が前記中央領域を伝搬する弾性波の音速より速い、請求項1から5のいずれか一項に記載の弾性波共振器。
【請求項7】
前記ギャップ領域を伝搬する弾性波の音速は、前記エッジ領域を伝搬する弾性波の音速の0.98倍以上1.00倍以下である、請求項1から6のいずれか一項に記載の弾性波共振器。
【請求項8】
圧電基板と、
前記圧電基板上に設けられ、複数の電極指と前記複数の電極指が接続するバスバーとを各々含み、互いの前記複数の電極指の先端と前記バスバーとが向かい合う一対の櫛型電極と、
前記複数の電極指の先端と前記バスバーとの間で前記圧電基板上に設けられ、酸化シリコン、酸化タンタル、酸化ニオブ、アルミニウム、またはチタンを主成分とする第1付加膜と、
前記一対の櫛型電極それぞれの前記複数の電極指が交差する領域である交差領域のうち前記複数の電極指の延伸方向におけるエッジに位置する領域であるエッジ領域から前記複数の電極指の先端と前記バスバーとの間に位置する領域であるギャップ領域にかけて前記圧電基板上に設けられ、前記交差領域のうち前記エッジ領域より内側に位置する領域である中央領域には設けられていない第2付加膜と、を備える弾性波共振器。
【請求項9】
圧電基板と、
前記圧電基板上に設けられ、複数の電極指と複数のダミー電極指と前記複数の電極指および前記複数のダミー電極指が接続するバスバーとを各々含み、互いの前記複数の電極指の先端と前記複数のダミー電極指の先端とが向かい合う一対の櫛型電極と、
前記複数の電極指の先端と前記ダミー電極指の先端との間で前記圧電基板上に設けられ、酸化シリコン、酸化タンタル、酸化ニオブ、アルミニウム、またはチタンを主成分とする第1付加膜と、
前記一対の櫛型電極それぞれの前記複数の電極指が交差する領域である交差領域のうち前記複数の電極指の延伸方向におけるエッジに位置する領域であるエッジ領域から前記複数の電極指の先端と前記複数のダミー電極指の先端との間に位置する領域であるギャップ領域にかけて前記圧電基板上に設けられ、前記交差領域のうち前記エッジ領域より内側に位置する領域である中央領域には設けられていない第2付加膜と、を備える弾性波共振器。
【請求項10】
前記一対の櫛型電極はアルミニウムを主成分とし、
前記第1付加膜は酸化シリコンを主成分とし、
前記複数の電極指の厚さをH、前記複数の電極指の幅をW、前記第1付加膜の前記複数の電極指の配列方向に平行な断面における断面積をSとした場合に、1.14×H×W≦S≦1.31×H×Wを満たす、請求項8または9に記載の弾性波共振器。
【請求項11】
前記複数の電極指の延伸方向における前記ギャップ領域の長さは、前記一対の櫛型電極の前記複数の電極指の平均ピッチの2倍以下である、請求項1から10のいずれか一項に記載の弾性波共振器。
【請求項12】
前記圧電基板は、タンタル酸リチウム基板またはニオブ酸リチウム基板である、請求項1から11のいずれか一項に記載の弾性波共振器。
【請求項13】
請求項1から12のいずれか一項に記載の弾性波共振器を含むフィルタ。
【請求項14】
請求項13に記載のフィルタを含むマルチプレクサ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、弾性波共振器、フィルタ、およびマルチプレクサに関する。
【背景技術】
【0002】
携帯電話を代表とする高周波通信用システムにおいて、通信に使用する周波数帯以外の不要な信号を除去するために、高周波フィルタが用いられる。高周波フィルタには、弾性表面波共振器等の弾性波共振器が用いられる。Q値を損なうことなくスプリアスを減少させる方法として、ピストンモードを利用した弾性波共振器が知られている(例えば、特許文献1、2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2020-80519号公報
【特許文献2】特開2020-88459号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ピストンモードでは、複数の電極指が交差する交差領域のうちエッジ領域における弾性波の音速をエッジ領域より内側に位置する中央領域より遅い低音速領域とし、エッジ領域より外側のギャップ領域を中央領域より弾性波の音速が速い高音速領域とする場合がある。この場合、ピストンモードの励振を成立させるための調整が複雑になる。
【0005】
本発明は、上記課題に鑑みなされたものであり、ピストンモードの励振を容易に実現することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、圧電基板と、前記圧電基板上に設けられ、複数の電極指と前記複数の電極指が接続するバスバーとを各々含み、互いの前記複数の電極指の先端と前記バスバーとが向かい合い、前記複数の電極指の先端と前記バスバーの間に位置する領域であるギャップ領域を伝搬する弾性波の音速が互いの前記複数の電極指が交差する領域である交差領域のうち前記複数の電極指の延伸方向におけるエッジに位置する領域であるエッジ領域を伝搬する弾性波の音速の0.98倍以上1.02倍以下である一対の櫛型電極と、前記エッジ領域から前記ギャップ領域にかけて前記圧電基板上に設けられ、前記交差領域のうち前記エッジ領域より内側に位置する領域である中央領域には設けられていない付加膜と、を備える弾性波共振器である。
【0007】
上記構成において、前記複数の電極指の先端と前記バスバーとの間で前記圧電基板上に設けられる別の付加膜を備える構成とすることができる。
【0008】
本発明は、圧電基板と、前記圧電基板上に設けられ、複数の電極指と複数のダミー電極指と前記複数の電極指および前記複数のダミー電極指が接続するバスバーとを各々含み、互いの前記複数の電極指の先端と前記複数のダミー電極指の先端とが向かい合い、前記複数の電極指の先端と前記複数のダミー電極指の先端との間に位置する領域であるギャップ領域を伝搬する弾性波の音速が互いの前記複数の電極指が交差する領域である交差領域のうち前記複数の電極指の延伸方向におけるエッジに位置する領域であるエッジ領域を伝搬する弾性波の音速の0.98倍以上1.02倍以下である一対の櫛型電極と、前記エッジ領域から前記ギャップ領域にかけて前記圧電基板上に設けられ、前記交差領域のうち前記エッジ領域より内側に位置する領域である中央領域には設けられていない付加膜と、を備える弾性波共振器である。
【0009】
上記構成において、前記複数の電極指の先端と前記複数のダミー電極指の先端との間で前記圧電基板上に設けられる別の付加膜を備える構成とすることができる。
【0010】
上記構成において、前記複数の電極指は、前記ギャップ領域における幅が前記交差領域における幅よりも広い構成とすることができる。
【0011】
上記構成において、前記一対の櫛型電極は、前記エッジ領域および前記ギャップ領域を伝搬する弾性波の音速が前記中央領域を伝搬する弾性波の音速より遅く、前記バスバーが位置する領域であるバスバー領域を伝搬する弾性波の音速が前記中央領域を伝搬する弾性波の音速より速い構成とすることができる。
【0012】
上記構成において、前記ギャップ領域を伝搬する弾性波の音速は、前記エッジ領域を伝搬する弾性波の音速の0.98倍以上1.00倍以下である構成とすることができる。
【0013】
本発明は、圧電基板と、前記圧電基板上に設けられ、複数の電極指と前記複数の電極指が接続するバスバーとを各々含み、互いの前記複数の電極指の先端と前記バスバーとが向かい合う一対の櫛型電極と、前記複数の電極指の先端と前記バスバーとの間で前記圧電基板上に設けられ、酸化シリコン、酸化タンタル、酸化ニオブ、アルミニウム、またはチタンを主成分とする第1付加膜と、前記一対の櫛型電極それぞれの前記複数の電極指が交差する領域である交差領域のうち前記複数の電極指の延伸方向におけるエッジに位置する領域であるエッジ領域から前記複数の電極指の先端と前記バスバーとの間に位置する領域であるギャップ領域にかけて前記圧電基板上に設けられ、前記交差領域のうち前記エッジ領域より内側に位置する領域である中央領域には設けられていない第2付加膜と、を備える弾性波共振器である。
【0014】
本発明は、圧電基板と、前記圧電基板上に設けられ、複数の電極指と複数のダミー電極指と前記複数の電極指および前記複数のダミー電極指が接続するバスバーとを各々含み、互いの前記複数の電極指の先端と前記複数のダミー電極指の先端とが向かい合う一対の櫛型電極と、前記複数の電極指の先端と前記ダミー電極指の先端との間で前記圧電基板上に設けられ、酸化シリコン、酸化タンタル、酸化ニオブ、アルミニウム、またはチタンを主成分とする第1付加膜と、前記一対の櫛型電極それぞれの前記複数の電極指が交差する領域である交差領域のうち前記複数の電極指の延伸方向におけるエッジに位置する領域であるエッジ領域から前記複数の電極指の先端と前記複数のダミー電極指の先端との間に位置する領域であるギャップ領域にかけて前記圧電基板上に設けられ、前記交差領域のうち前記エッジ領域より内側に位置する領域である中央領域には設けられていない第2付加膜と、を備える弾性波共振器である。
【0015】
上記構成において、前記一対の櫛型電極はアルミニウムを主成分とし、前記第1付加膜は酸化シリコンを主成分とし、前記複数の電極指の厚さをH、前記複数の電極指の幅をW、前記第1付加膜の前記複数の電極指の配列方向に平行な断面における断面積をSとした場合に、1.14×H×W≦S≦1.31×H×Wを満たす構成とすることができる。
【0016】
上記構成において、前記複数の電極指の延伸方向における前記ギャップ領域の長さは、前記一対の櫛型電極の前記複数の電極指の平均ピッチの2倍以下である構成とすることができる。
【0017】
上記構成において、前記圧電基板は、タンタル酸リチウム基板またはニオブ酸リチウム基板である構成とすることができる。
【0018】
本発明は、上記に記載の弾性波共振器を含むフィルタである。
【0019】
本発明は、上記に記載のフィルタを含むマルチプレクサである。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、ピストンモードの励振を容易に実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】
図1(a)は、実施例1に係る弾性波共振器の平面図、
図1(b)は、
図1(a)のA-A断面図である。
【
図2】
図2(a)および
図2(b)は、実施例1におけるIDT(Interdigital Transducer)内の弾性表面波の音速を示す図である。
【
図3】
図3(a)から
図3(c)は、実施例1に係る弾性波共振器の製造方法を示す断面図である。
【
図4】
図4は、比較例1におけるIDT内の弾性波の音速を示す図である。
【
図5】
図5は、比較例2におけるIDT内の弾性波の音速を示す図である。
【
図6】
図6は、比較例3におけるIDT内の弾性波の音速を示す図である。
【
図8】
図8(a)は、実施例1の変形例1に係る弾性波共振器の平面図、
図8(b)は、
図8(a)のA-A断面図である。
【
図9】
図9(a)および
図9(b)は、実施例1の変形例1におけるIDT内の弾性波の音速を示す図である。
【
図10】
図10(a)は、実施例1の変形例2に係る弾性波共振器の平面図、
図10(b)は、
図10(a)のA-A断面図である。
【
図13】
図13(a)および
図13(b)は、実施例2におけるIDT内の弾性波の音速を示す図である。
【
図14】
図14は、実施例2に係る弾性波共振器の周波数に対するアドミッタンス|Y|のシミュレーション結果である。
【
図16】
図16は、実施例4に係るデュプレクサのブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、図面を参照し、本発明の実施例について説明する。
【実施例0023】
図1(a)は、実施例1に係る弾性波共振器100の平面図、
図1(b)は、
図1(a)のA-A断面図である。電極指の配列方向をX方向、電極指の延伸方向をY方向、圧電基板の厚さ方向をZ方向とする。X方向、Y方向、およびZ方向は、圧電基板の結晶方位のX軸方向およびY軸方向とは必ずしも対応しない。圧電基板が回転YカットX伝搬の圧電基板の場合、X方向は結晶方位のX軸方向となる。
【0024】
図1(a)および
図1(b)に示すように、弾性波共振器100は、圧電基板10上にIDT(Interdigital Transducer)20および反射器21が設けられている。反射器21は、X方向においてIDT20を挟むように設けられている。IDT20および反射器21は、圧電基板10上の金属膜26により形成される。
【0025】
IDT20は、一対の櫛型電極22を備える。櫛型電極22は、複数の電極指23と、複数の電極指23が接続されたバスバー24と、を備える。一方の櫛型電極22の電極指23の先端と他方の櫛型電極22のバスバー24とは対向している。一対の櫛型電極22の電極指23が交差する領域が交差領域30である。交差領域30のY方向の長さが開口長である。一対の櫛型電極22は、交差領域30の少なくとも一部において電極指23がほぼ互い違いとなるように、対向している。交差領域30において電極指23が励振する主モードの弾性波(弾性表面波)は、主にX方向に伝搬する。一方の櫛型電極22の電極指23のピッチがほぼ弾性波の波長λとなる。複数の電極指23のピッチDは、一方の櫛型電極22の電極指23のピッチの倍となる。反射器21は、IDT20の電極指23が励振した弾性波(弾性表面波)を反射する。これにより、弾性波はIDT20の交差領域30内に閉じ込められる。
【0026】
交差領域30は、Y方向においてエッジに位置する領域(電極指23の先端部が位置する領域)であるエッジ領域32と、Y方向においてエッジ領域32より内側に位置する領域である中央領域31と、を有する。一方の櫛型電極22の電極指23の先端と他方の櫛型電極22のバスバー24との間に位置する領域がギャップ領域33である。バスバー24が位置する領域がバスバー領域34である。
【0027】
一方の櫛型電極22の電極指23の先端と他方の櫛型電極22のバスバー24との間で圧電基板10上に付加膜40が設けられている。付加膜40は、X方向で隣接する電極指23上および電極指23下には設けられていない。付加膜40の上面は電極指23の上面と同一面であってもよいし、段差を有していてもよい。付加膜40は、電極指23より厚くてもよいし、薄くてもよい。X方向における付加膜40の幅は、電極指23と同じであってもよいし、大きくてもよいし、小さくてもよい。詳しくは後述するが、付加膜40は、ギャップ領域33における弾性表面波の音速を調整するために設けられている。
【0028】
エッジ領域32からギャップ領域33にかけて電極指23および付加膜40を覆うように圧電基板10上に付加膜42が設けられている。付加膜42は、中央領域31には設けられていない。付加膜42は、電極指23上および付加膜40上に設けられていれば、電極指23の間には設けられていない場合でもよい。電極指23上における付加膜42の厚さと付加膜40上における付加膜42の厚さとは略同じである。ここで言う略同じとは、製造誤差程度の差を許容するものである。詳しくは後述するが、付加膜42はエッジ領域32およびギャップ領域33における弾性表面波の音速を調整するために設けられている。
【0029】
圧電基板10は、例えば単結晶タンタル酸リチウム(LiTaO3)基板または単結晶ニオブ酸リチウム(LiNbO3)基板であり、例えば回転YカットX伝搬タンタル酸リチウム基板または回転YカットX伝搬ニオブ酸リチウム基板である。圧電基板10は、例えば36°~48°YカットX伝搬タンタル酸リチウム基板である。
【0030】
金属膜26は、例えばアルミニウム(Al)、銅(Cu)、またはモリブデン(Mo)を主成分とする膜である。電極指23およびバスバー24と圧電基板10との間にチタン(Ti)膜またはクロム(Cr)膜等の密着膜が設けられていてもよい。密着膜は電極指23およびバスバー24よりも薄い。電極指23を覆うように絶縁膜が設けられていてもよい。この場合、付加膜40および付加膜42は絶縁膜上に設けられていてもよい。絶縁膜は保護膜として機能してもよい。
【0031】
付加膜40は、例えば酸化シリコン(SiO2)、酸化タンタル(Ta2O5)、酸化ニオブ(Nb2O5)、アルミニウム(Al)、またはチタン(Ti)を主成分とする膜であるが、ギャップ領域33を伝搬する弾性波の音速の調整が可能であれば、その他の材料を主成分とする膜でもよい。なお、付加膜40がアルミニウムまたはチタン等の金属膜である場合は、付加膜40と電極指23およびバスバー24との間に絶縁膜が設けられるが、この点については後述する。
【0032】
付加膜42は、例えば酸化シリコン(SiO2)、酸化タンタル(Ta2O5)、酸化ニオブ(Nb2O5)、アルミニウム(Al)、またはチタン(Ti)を主成分とする膜であるが、エッジ領域32およびギャップ領域33を伝搬する弾性波の音速の調整が可能であれば、その他の材料を主成分とする膜でもよい。付加膜42は、付加膜40と同じ材料を主成分とする膜でもよいし、異なる材料を主成分とする膜でもよい。なお、付加膜42がアルミニウムまたはチタン等の金属膜である場合は、付加膜42と電極指23およびバスバー24との間に絶縁膜が設けられるが、この点については後述する。
【0033】
図2(a)および
図2(b)は、実施例1におけるIDT20内の弾性波の音速を示す図である。
図2(a)は、付加膜42を設ける前の状態を示し、
図2(b)は、付加膜42を設けた後の状態を示している。
図2(a)に示すように、電極指23の先端とバスバー24との間で圧電基板10上に付加膜40が設けられることで、中央領域31、エッジ領域32、およびギャップ領域33を伝搬する弾性表面波の音速が略同じになっている。言い換えると、ギャップ領域33を伝搬する弾性表面波の音速が、中央領域31およびエッジ領域32を伝搬する弾性表面波の音速と略同じになるように、材料、厚さ、および/または幅が調整された付加膜40が設けられている。
【0034】
図2(b)に示すように、エッジ領域32からギャップ領域33にかけて付加膜42が設けられることで、エッジ領域32およびギャップ領域33を伝搬する弾性表面波の音速が中央領域31を伝搬する弾性表面波の音速より遅くなっている。すなわち、エッジ領域32およびギャップ領域33を伝搬する弾性表面波の音速が中央領域31を伝搬する弾性表面波の音速に対して適切に遅くなるように、材料、厚さ、および/または幅が調整された付加膜42が設けられている。中央領域31を伝搬する弾性表面波の音速は、例えばエッジ領域32を伝搬する弾性表面波の音速の1.02倍より大きく1.035倍より小さい。
【0035】
付加膜40によってギャップ領域33を伝搬する弾性表面波の音速とエッジ領域32を伝搬する弾性表面波の音速とが略同じになっているため、付加膜42が設けられた後においても、ギャップ領域33を伝搬する弾性表面波の音速とエッジ領域32を伝搬する弾性表面波の音速とは略同じになっている。略同じとは、例えばギャップ領域33を伝搬する弾性表面波の音速がエッジ領域32を伝搬する弾性表面波の音速の0.98倍以上1.02倍以下の場合である。
【0036】
[製造方法]
図3(a)から
図3(c)は、実施例1に係る弾性波共振器100の製造方法を示す断面図である。
図3(a)に示すように、圧電基板10上に金属膜26を成膜した後、金属膜26を所望の形状にパターニングする。これにより、圧電基板10上に、複数の電極指23とバスバー24を含む一対の櫛型電極22を備えたIDT20および反射器21が形成される。電極指23の先端とバスバー24との間には空隙44が形成される。金属膜26の成膜は、例えばスパッタリング法、真空蒸着法、またはCVD(Chemical Vapor Deposition)法等を用いる。金属膜26のパターニングは、例えばフォトリソグラフィ技術およびエッチング技術を用いる。
【0037】
図3(b)に示すように、電極指23の先端とバスバー24との間の空隙44に付加膜40を形成する。付加膜40は、例えば圧電基板10上に空隙44に対応した開口を有するマスク層を形成した後、マスク層をマスクに付加膜40を成膜し、その後、マスク層を除去することにより形成される。マスク層は、例えばフォトレジストを用いる。付加膜40の成膜は、例えばスパッタリング法、真空蒸着法、またはCVD法を用いる。
【0038】
図3(c)に示すように、エッジ領域32からギャップ領域33にかけて電極指23および付加膜40を覆うように付加膜42を形成する。付加膜42は、例えば圧電基板10上にエッジ領域32およびギャップ領域33に対応した開口を有するマスク層を形成した後、マスク層をマスクに付加膜42を成膜し、その後、マスク層を除去することにより形成される。マスク層は、例えばフォトレジストを用いる。付加膜42の成膜は、例えばスパッタリング法、真空蒸着法、またはCVD法を用いる。これにより、実施例1に係る弾性波共振器100が形成される。
【0039】
[比較例]
図4は、比較例1におけるIDT20内の弾性波の音速を示す図である。
図4の上図に示すように、比較例1では、電極指23の先端とバスバー24との間に付加膜が設けられてなく、空隙44が形成されている。付加膜42は、エッジ領域32のみに設けられ、ギャップ領域33には設けられていない。
【0040】
電極指23の先端とバスバー24との間に付加膜が設けられてなく、付加膜42がエッジ領域32にのみ設けられているため、
図4の下図に示すように、エッジ領域32を伝搬する弾性表面波の音速は中央領域31を伝搬する弾性表面波の音速より遅く、ギャップ領域33を伝搬する弾性表面波の音速は中央領域31を伝搬する弾性表面波の音速より速くなっている。
【0041】
図5は、比較例2におけるIDT20内の弾性波の音速を示す図である。
図5の上図および下図に示すように、比較例2では、電極指23の先端とバスバー24との間隔が狭くなっている。つまり、ギャップ領域33のY方向の長さが短くなっている。ギャップ領域33のY方向の長さは例えば1λ以下である。その他の構成は比較例1と同じである。
【0042】
比較例1では、ギャップ領域33のY方向の長さが長い。この場合、ピストンモードとしては、エッジ領域32が低音速領域として機能し、ギャップ領域33が高音速領域として機能する。比較例2では、弾性波共振器の小型化および/または回折損の抑制のために、ギャップ領域33のY方向の長さが小さい。この場合、ピストンモードとしては、エッジ領域32が低音速領域として機能し、バスバー領域34が高音速領域として機能する場合がある。
【0043】
このように、ギャップ領域33のY方向の長さによっては、ギャップ領域33が高音速領域として機能したり、バスバー領域34が高音速領域として機能したりすることがある。したがって、ピストンモードの励振を成立させるために、ギャップ領域33のY方向の長さに応じて、ギャップ領域33を伝搬する弾性表面波の音速および/またはバスバー領域34を伝搬する弾性表面波の音速を調整することになる。よって、ピストンモードの励振を成立させるための調整が複雑になってしまう。
【0044】
図6は、比較例3におけるIDT20内の弾性波の音速を示す図である。
図6の上図に示すように、比較例3では、付加膜42がエッジ領域32からギャップ領域33にかけて設けられている。その他の構成は比較例1と同じである。
図6の下図に示すように、付加膜42がエッジ領域32からギャップ領域33にかけて設けられているため、ギャップ領域33を伝搬する弾性表面波の音速は、比較例1に比べて遅くなる。
【0045】
図6の下図では、ギャップ領域33を伝搬する弾性表面波の音速が中央領域31を伝搬する弾性表面波の音速よりも遅い場合を例に示しているが、付加膜42による質量負荷効果(圧電基板10への質量負荷による音速低下効果)の程度によっては、ギャップ領域33を伝搬する弾性表面波の音速が中央領域31を伝搬する弾性表面波の音速よりも速くなる場合がある。ギャップ領域33を伝搬する弾性表面波の音速が中央領域31を伝搬する弾性表面波の音速よりも遅い場合、バスバー領域34が高音速領域として機能する。ギャップ領域33を伝搬する弾性表面波の音速が中央領域31を伝搬する弾性表面波の音速よりも速い場合、ギャップ領域33が高音速領域として機能する。このように、ピストンモードの励振を成立させるためには、付加膜42の質量負荷効果に応じて、ギャップ領域33を伝搬する弾性表面波の音速および/またはバスバー領域34を伝搬する弾性表面波の音速を調整することになることから、ピストンモードの励振を成立させるための調整が複雑になってしまう。
【0046】
一方、実施例1によれば、
図2(b)に示したように、ギャップ領域33を伝搬する弾性波の音速がエッジ領域32を伝搬する弾性波の音速の0.98倍以上1.02倍以下となっている。そして、付加膜42はエッジ領域32からギャップ領域33にかけて設けられ、中央領域31には設けられていない。これにより、ギャップ領域33のY方向の長さおよび付加膜42による質量負荷効果の程度によらず、エッジ領域32およびギャップ領域33が低音速領域として機能し、バスバー領域34が高音速領域として機能する。よって、ピストンモードの励振を成立させるための調整の複雑化が抑えられ、ピストンモードの励振を容易に実現することができる。例えば、ピストンモードの励振を成立させるための要件として、低音速領域のY方向の長さと低音速領域を伝搬する弾性波の音速があるが、これらは付加膜42のY方向の長さと付加膜42の厚さで調整することができる。ギャップ領域33を伝搬する弾性波の音速は、エッジ領域32を伝搬する弾性波の音速の0.985倍以上1.015倍以下が好ましく、0.99倍以上1.01倍以下がより好ましく、0.995倍以上1.005倍以下が更に好ましい。
【0047】
ピストンモードを実現するために、中央領域31のY方向の長さとエッジ領域32のY方向の長さとは、ある一定の関係を満たすことが好ましい。例えば、中央領域31のY方向の長さは、エッジ領域32のY方向の合計の長さより長い場合が好ましい。エッジ領域32のY方向の長さの合計は、5λ以下(例えば開口長の1/4以下)が好ましく、2λ以下(例えば開口長の1/10以下)がより好ましい。エッジ領域32の各々のY方向の長さは、0.1λ以上(例えば開口長の1/200以上)が好ましく、0.5λ以上(例えば開口長の1/40以上)がより好ましい。エッジ領域32は中央領域31の片側にのみ設けられていてもよい。ギャップ領域33のY方向の長さの合計は、5λ以下(例えば開口長の1/4以下)が好ましく、2λ以下(例えば開口長の1/10以下)が好ましい。ギャップ領域33の各々のY方向の長さは0.1λ以上(例えば開口長の1/200以上)が好ましく、0.5λ以上(例えば開口長の1/40以上)が好ましい。
【0048】
また、実施例1では、
図1(a)および
図1(b)に示したように、電極指23の先端とバスバー24との間で圧電基板10上に付加膜40が設けられている。これにより、ギャップ領域33を伝搬する弾性波の音速を遅くして、ギャップ領域33を伝搬する弾性波の音速がエッジ領域32を伝搬する弾性波の音速と略同じになるようにすることができる。
【0049】
また、実施例1では、付加膜40は、酸化シリコン、酸化タンタル、酸化ニオブ、アルミニウム、またはチタンを主成分とする膜である。このような付加膜40を電極指23の先端とバスバー24との間で圧電基板10上に設けることで、ギャップ領域33を伝搬する弾性波の音速がエッジ領域32を伝搬する弾性波の音速と略同じになるようにすることができる。主成分とするとは、付加膜40が酸化シリコン、酸化タンタル、または酸化ニオブのような化合物である場合は、付加膜40に含まれる元素の合計に対する当該化合物を構成する元素の割合の合計が50at%(原子%)以上であり、80at%以上でもよい。当該化合物を構成する元素それぞれの割合は10at%以上であり、20at%以上でもよい。付加膜40がアルミニウムまたはチタンのような単体である場合は、付加膜40に含まれる元素の合計に対する当該単体の元素の割合が50at%以上であり、80at%以上でもよい。
【0050】
実施例1において、ギャップ領域33を伝搬する弾性波の音速は、エッジ領域32を伝搬する弾性波の音速の0.98倍以上1.00倍以下の場合が好ましい。これにより、ギャップ領域33およびエッジ領域32をより確実に低音速領域として機能させることができる。ギャップ領域33を伝搬する弾性波の音速は、エッジ領域32を伝搬する弾性波の音速の0.985倍以上1.00倍以下の場合が好ましく、0.99倍以上1.00倍以下の場合がより好ましく、0.995倍以上1.00倍以下の場合が更に好ましい。
【0051】
図7は、
図1(a)のB-B断面図である。なお、
図7では、図の明瞭化のために、付加膜42の図示を省略している。
図7に示すように、電極指23のX方向の幅をWとし、電極指23の厚さをHとする。付加膜40のX方向に平行な断面の断面積をSとする。櫛型電極22がアルミニウムを主成分として形成され、付加膜40が酸化シリコンを主成分として形成される場合、断面積Sは、1.14×H×W≦S≦1.31×H×Wを満たす場合が好ましい。この理由を以下に説明する。
【0052】
圧電体への質量負荷によって弾性波の音速を低下させる質量負荷効果は、酸化シリコン膜はアルミニウム膜に対して87.5%程度である。したがって、酸化シリコン膜とアルミニウム膜の幅が同じである場合、質量負荷効果が同じになるために必要な膜厚は、酸化シリコン膜はアルミニウム膜に対して1.14倍程度となる。例えば、酸化シリコン膜とアルミニウム膜の幅が同じである場合、膜厚0.1λのアルミニウム膜と同じ質量負荷効果を得るには、酸化シリコン膜の膜厚は0.1λ×1.14=0.114λとなる。よって、アルミニウムを主成分とする電極指23の幅がW、厚さがH、酸化シリコンを主成分とする付加膜40の断面積がSである場合、S=1.14×H×Wを満たすことで、電極指23と付加膜40の質量負荷効果が同じになる。よって、ギャップ領域33を伝搬する弾性波の音速を、エッジ領域32を伝搬する弾性波の音速と同じ大きさにすることができる。
【0053】
また、質量負荷効果によって弾性波の音速を2%低下させるには、元の膜厚に対して1.15倍程度厚くする必要がある。例えば、酸化シリコン膜とアルミニウム膜の幅が同じで、膜厚0.1λのアルミニウム膜と同じ質量負荷効果を得るために酸化シリコン膜の膜厚を0.114λとしている場合を想定する。この場合、酸化シリコン膜の質量負荷膜を増大させて弾性波の音速を2%下げるためには、酸化シリコンの膜厚は0.114λ×1.15=0.131λとする必要がある。このことから、アルミニウムを主成分とする電極指23の幅がW、厚さがH、酸化シリコンを主成分とする付加膜40の断面積がSである場合、S=1.31×H×Wを満たすことで、付加膜40が設けられたギャップ領域33を伝搬する弾性波の音速は電極指23が交差する交差領域30を伝搬する弾性波の音速よりも2%遅くなる。
【0054】
このようなことから、1.14×H×W≦S≦1.31×H×Wを満たすことで、ギャップ領域33を伝搬する弾性波の音速を、エッジ領域32を伝搬する弾性波の音速の0.98倍以上1.00倍以下にすることができる。
【0055】
実施例1において、Y方向におけるギャップ領域33の長さは、複数の電極指23の平均ピッチDの2倍(1λ)以下であってもよい。この場合、比較例2と同様に、弾性波共振器の小型化および/または回折損の抑制ができる。比較例2では、Y方向におけるギャップ領域33の長さが1λ以下になると、高音速領域がギャップ領域33になったり、バスバー領域34になったりすることがあるが、実施例1では、低音速領域はエッジ領域32とギャップ領域33となり、高音速領域はバスバー領域34となる。弾性波共振器の小型化および/または回折損の抑制の点から、Y方向におけるギャップ領域33の長さは、複数の電極指23の平均ピッチDの1.5倍(0.75λ)以下であってもよいし、1倍(0.5λ)以下であってもよい。複数の電極指23の平均ピッチDは、IDT20のX方向の幅を電極指23の本数で除することで算出できる。
【0056】
[変形例]
図8(a)は、実施例1の変形例1に係る弾性波共振器110の平面図、
図8(b)は、
図8(a)のA-A断面図である。
図8(a)および
図8(b)に示すように、弾性波共振器110では、電極指23の先端とバスバー24との間に付加膜40は設けられてなく、エッジ領域32からギャップ領域33にかけて設けられた付加膜42が電極指23の先端とバスバー24との間に設けられている。電極指23の先端とバスバー24との間における付加膜42の厚さと電極指23上の付加膜42の厚さとは略同じである。ここで言う略同じとは、製造誤差程度の差を許容するものである。電極指23は、ギャップ領域33における幅(X方向の長さ)が交差領域30における幅(X方向の長さ)より大きくなっている。すなわち、電極指23は、交差領域30における幅よりも広い幅広部27をギャップ領域33に有する。例えば、ギャップ領域33における電極指23の幅(幅広部27の幅)は、交差領域30における電極指23の幅の1.2倍以上2.0倍以下でもよいし、1.3倍以上1.8倍以下でもよいし、1.4倍以上1.6倍以下でもよい。その他の構成は実施例1と同じであるため説明を省略する。
【0057】
図9(a)および
図9(b)は、実施例1の変形例1におけるIDT20内の弾性波の音速を示す図である。
図9(a)は、付加膜42を設ける前の状態を示し、
図9(b)は、付加膜42を設けた後の状態を示している。
図9(a)に示すように、電極指23の幅がギャップ領域33では交差領域30よりも広くなっていることで、中央領域31、エッジ領域32、およびギャップ領域33を伝搬する弾性表面波の音速が略同じ大きさになっている。言い換えると、ギャップ領域33を伝搬する弾性表面波の音速が、中央領域31およびエッジ領域32を伝搬する弾性表面波の音速と略同じ大きさになるように、ギャップ領域33における電極指23の幅が調整されている。
【0058】
図9(b)に示すように、エッジ領域32からギャップ領域33にかけて付加膜42が設けられることで、エッジ領域32およびギャップ領域33を伝搬する弾性表面波の音速が中央領域31を伝搬する弾性表面波の音速よりも遅くなっている。すなわち、エッジ領域32およびギャップ領域33を伝搬する弾性表面波の音速が中央領域31を伝搬する弾性表面波の音速に対して適切に遅くなるように、材料、厚さ、および/または幅が調整された付加膜42が設けられている。
【0059】
ギャップ領域33における電極指23の幅が大きいことでギャップ領域33を伝搬する弾性表面波の音速とエッジ領域32を伝搬する弾性表面波の音速が略同じになっているため、付加膜42が設けられた後においても、ギャップ領域33を伝搬する弾性表面波の音速とエッジ領域32を伝搬する弾性表面波の音速が略同じになっている。略同じとは、上述したように、例えばギャップ領域33を伝搬する弾性表面波の音速がエッジ領域32を伝搬する弾性表面波の音速の0.98倍以上1.02倍以下の場合である。
【0060】
実施例1では、電極指23の先端とバスバー24との間に付加膜40が設けられることで、ギャップ領域33を伝搬する弾性波の音速がエッジ領域32を伝搬する弾性波の音速と略同じになるようにしたが、この場合に限られない。実施例1の変形例1のように、ギャップ領域33における電極指23の幅を広げることで、ギャップ領域33を伝搬する弾性波の音速がエッジ領域32を伝搬する弾性波の音速と略同じになるようにしてもよい。また、これら以外の方法によって、ギャップ領域33を伝搬する弾性波の音速がエッジ領域32を伝搬する弾性波の音速と略同じになるようしてもよい。また、付加膜40を設けることと、ギャップ領域33における電極指23の幅を広げること、との両方によって、ギャップ領域33を伝搬する弾性波の音速がエッジ領域32を伝搬する弾性波の音速と略同じになるようにしてもよい。
【0061】
図10(a)は、実施例1の変形例2に係る弾性波共振器120の平面図、
図10(b)は、
図10(a)のA-A断面図である。
図11(a)は、
図10(a)のB-B断面図、
図11(b)は、
図10(a)のC-C断面図である。
図10(a)では、図の明瞭化のために、絶縁膜46の図示を一部省略している。
図10(a)、
図10(b)、
図11(a)、および
図11(b)に示すように、弾性波共振器120では、電極指23およびバスバー24の表面に絶縁膜46が設けられ、付加膜40および付加膜42は絶縁膜46上に設けられている。したがって、Y方向において付加膜40と電極指23およびバスバー24との間に絶縁膜46が設けられ、付加膜40と電極指23およびバスバー24とは直接接していない。付加膜42と電極指23およびバスバー24との間に絶縁膜46が設けられ、付加膜42と電極指23およびバスバー24とは直接接していない。その他の構成は実施例1と同じであるため説明を省略する。
【0062】
付加膜40にアルミニウムまたはチタン等の金属膜を用いる場合がある。この場合、付加膜40と電極指23およびバスバー24との間に絶縁膜46が設けられることで、付加膜40と電極指23およびバスバー24とを電気的に絶縁させることができる。同様に、付加膜42にアルミニウムまたはチタン等の金属膜を用いる場合がある。この場合、付加膜42と電極指23およびバスバー24との間に絶縁膜46が設けられることで、付加膜42と電極指23およびバスバー24とを電気的に絶縁させることができる。
【0063】
なお、絶縁膜46の膜厚は薄いことから(例えば0.1λ以下)、絶縁膜46を設けたとしても、ピストンモードの励振条件に与える影響は無視できるほど小さい。
【0064】
なお、実施例1の変形例1においても、実施例1の変形例2と同様に、付加膜42と電極指23およびバスバー24との間に絶縁膜46を設けてもよい。
付加膜40によってギャップ領域33を伝搬する弾性表面波の音速とエッジ領域32を伝搬する弾性表面波の音速が略同じになっているため、付加膜42が設けられた後においても、ギャップ領域33を伝搬する弾性表面波の音速とエッジ領域32を伝搬する弾性表面波の音速が略同じになっている。略同じとは、例えばギャップ領域33を伝搬する弾性表面波の音速がエッジ領域32を伝搬する弾性表面波の音速の0.98倍以上1.02倍以下の場合である。
また、実施例2においても、実施例1と同じく、付加膜40は、酸化シリコン、酸化タンタル、酸化ニオブ、アルミニウム、またはチタンを主成分とする膜である。このような付加膜40を電極指23の先端とダミー電極指25の先端との間に設けることで、ギャップ領域33を伝搬する弾性波の音速がエッジ領域32を伝搬する弾性波の音速と略同じになるようにすることができる。
実施例2において、バスバー領域34を伝搬する弾性波の音速は中央領域31を伝搬する弾性波の音速よりも遅い場合でもよい。この場合、ダミー領域35を伝搬する弾性波の音速を、中央領域31を伝搬する弾性波の音速より速くすることで、ピストンモードで励振させることができる。
実施例1および実施例2において、圧電基板10は支持基板上に接合されている場合でもよい。この場合、圧電基板10と支持基板の間に酸化シリコン、酸化アルミニウム、および/または窒化アルミニウム等の絶縁層が設けられていてもよい。