(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022171059
(43)【公開日】2022-11-11
(54)【発明の名称】消火用積層体及び消火用積層体の製造方法
(51)【国際特許分類】
A62D 1/02 20060101AFI20221104BHJP
B32B 27/18 20060101ALI20221104BHJP
B32B 27/12 20060101ALI20221104BHJP
B32B 7/027 20190101ALI20221104BHJP
B32B 5/10 20060101ALI20221104BHJP
B05D 7/00 20060101ALI20221104BHJP
B05D 5/00 20060101ALI20221104BHJP
B05D 1/38 20060101ALI20221104BHJP
B05D 7/24 20060101ALI20221104BHJP
【FI】
A62D1/02
B32B27/18 Z
B32B27/12
B32B7/027
B32B5/10
B05D7/00 B
B05D5/00 E
B05D1/38
B05D7/24 303Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021077445
(22)【出願日】2021-04-30
(71)【出願人】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】凸版印刷株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000114905
【氏名又は名称】ヤマトプロテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100169063
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 洋平
(72)【発明者】
【氏名】正田 亮
(72)【発明者】
【氏名】戸出 良平
(72)【発明者】
【氏名】西山 碩芳
(72)【発明者】
【氏名】黒川 真登
(72)【発明者】
【氏名】富山 昇吾
(72)【発明者】
【氏名】堤 明正
【テーマコード(参考)】
2E191
4D075
4F100
【Fターム(参考)】
2E191AB01
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4D075BB24Z
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(57)【要約】
【課題】火災時の爆発等による衝撃への耐性を有する消火用積層体を提供すること。
【解決手段】高強度耐熱性を有する有機繊維又は無機繊維を含む繊維層と、樹脂層と、を備え、繊維層及び樹脂層の少なくともいずれかが、燃焼によってエアロゾルを発生する消火剤成分を含む、消火用積層体。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
高強度耐熱性を有する有機繊維又は無機繊維を含む繊維層と、樹脂層と、を備え、
前記繊維層及び前記樹脂層の少なくともいずれかが、燃焼によってエアロゾルを発生する消火剤成分を含む、消火用積層体。
【請求項2】
前記繊維層が、カーボン繊維、ガラス繊維、金属繊維及びセラミック繊維からなる群より選択される少なくとも一種を含む、請求項1に記載の消火用積層体。
【請求項3】
前記繊維層の厚さが0.02~2.0mmである、請求項1又は2に記載の消火用積層体。
【請求項4】
前記樹脂層が、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、塩化ビニル樹脂、ポリオレフィン樹脂、及びポリエステル樹脂からなる群より選択される少なくとも一種を含む、請求項1~3のいずれか一項に記載の消火用積層体。
【請求項5】
液状成分、及び燃焼によってエアロゾルを発生する消火剤成分を含む第一液状組成物を、高強度耐熱性を有する有機繊維又は無機繊維を含む繊維層に含浸させる工程と、
含浸させた前記第一液状組成物を乾燥させる工程と、
液状成分、及び樹脂を含む第二液状組成物を、前記繊維層上に塗布する工程と、
塗布した前記第二液状組成物を乾燥させる工程と、
を備える、
液状成分、燃焼によってエアロゾルを発生する消火剤成分、及び樹脂を含む第三液状組成物を、高強度耐熱性を有する有機繊維又は無機繊維を含む繊維層上に塗布する工程と、
塗布した前記第三液状組成物を乾燥させる工程と、
を備える、又は、
液状成分、及び燃焼によってエアロゾルを発生する消火剤成分を含む第一液状組成物を、高強度耐熱性を有する有機繊維又は無機繊維を含む繊維層に含浸させる工程と、
含浸させた前記第一液状組成物を乾燥させる工程と、
液状成分、燃焼によってエアロゾルを発生する消火剤成分、及び樹脂を含む第三液状組成物を、前記繊維層上に塗布する工程と、
塗布した前記第三液状組成物を乾燥させる工程と、
を備える、消火用積層体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、消火用積層体及び消火用積層体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
合成樹脂製フィルムにより形成されたバッグと、該バッグ内に封入される消火剤を有する自動消火装置が知られている(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、引用文献1に記載された装置は、火災時に爆発等が生じた場合に、それによる衝撃に対して充分な耐性を有していない。
【0005】
本開示は、上記事情に鑑みてなされたものであり、火災時の爆発等による衝撃への耐性を有する消火用積層体を提供することを目的とする。また、本開示は、当該消火用積層体の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一側面に係る消火用積層体は、高強度耐熱性を有する有機繊維又は無機繊維を含む繊維層と、樹脂層と、を備え、繊維層及び樹脂層の少なくともいずれかが、燃焼によってエアロゾルを発生する消火剤成分を含む。
【0007】
上記消火用積層体を発火の危険性がある部分に設置しておくことで、発火又は発火までに発生する熱によりエアロゾル消火剤を周囲に即充満させることができる。また、発火に伴い爆発等の衝撃が発生した場合でも、上記消火用積層体であれば消火機能が損なわれ難い。これにより短時間で火災を止めることができ、周囲への延焼を回避することができる。さらに、火災時に人の手を直接介することなく初期消火が行えるため、上記消火用積層体は安全面においても優れている。
【0008】
一態様において、繊維層は、カーボン繊維、ガラス繊維、金属繊維及びセラミック繊維からなる群より選択される少なくとも一種を含んでよい。
【0009】
一態様において、繊維層の厚さは0.02~2.0mmであってよい。
【0010】
一態様において、樹脂層は、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、塩化ビニル樹脂、ポリオレフィン樹脂、及びポリエステル樹脂からなる群より選択される少なくとも一種を含んでよい。
【0011】
本開示の一側面に係る、消火用積層体の製造方法は、以下のいずれかである。
液状成分、及び燃焼によってエアロゾルを発生する消火剤成分を含む第一液状組成物を、高強度耐熱性を有する有機繊維又は無機繊維を含む繊維層に含浸させる工程と、含浸させた第一液状組成物を乾燥させる工程と、液状成分、及び樹脂を含む第二液状組成物を、繊維層上に塗布する工程と、塗布した第二液状組成物を乾燥させる工程と、を備える、製造方法。
液状成分、燃焼によってエアロゾルを発生する消火剤成分、及び樹脂を含む第三液状組成物を、高強度耐熱性を有する有機繊維又は無機繊維を含む繊維層上に塗布する工程と、塗布した第三液状組成物を乾燥させる工程と、を備える、製造方法。
液状成分、及び燃焼によってエアロゾルを発生する消火剤成分を含む第一液状組成物を、高強度耐熱性を有する有機繊維又は無機繊維を含む繊維層に含浸させる工程と、含浸させた第一液状組成物を乾燥させる工程と、液状成分、燃焼によってエアロゾルを発生する消火剤成分、及び樹脂を含む第三液状組成物を、繊維層上に塗布する工程と、塗布した第三液状組成物を乾燥させる工程と、を備える、製造方法。
【発明の効果】
【0012】
本開示によれば、火災時の爆発等による衝撃への耐性を有する消火用積層体を提供することができる。また、本開示によれば、当該消火用積層体の製造方法を提供することができる。
【0013】
本開示によれば、火災時の爆発等による衝撃に対しても形状を維持することができ、発火の懸念がある部位に容易に設置が可能であり、且つ発火時の初期消火に優れた効果を発揮する消火用積層体が提供される。そのような消火用積層体は、建装材、自動車部材、航空機部材、エレクトロニクス部材等の産業資材として好適に用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】
図1は、一実施形態に係る消火用積層体の模式断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本開示の実施形態について詳細に説明する。ただし、本開示は以下の実施形態に限定されるものではない。
【0016】
<消火用積層体>
消火用積層体は、繊維層と、樹脂層と、を備える。繊維層及び樹脂層の少なくともいずれかが、燃焼によってエアロゾルを発生する消火剤成分を含む。
図1は、一実施形態に係る消火用積層体の模式断面図である。消火用積層体10は、繊維層1、及び樹脂層2をこの順に備える。
【0017】
消火用積層体の厚さは、その層構成により変動するため必ずしも限定されないが、消火性能及び耐衝撃性を維持しつつ、設置スペースを問われないよう薄型化できる観点から、例えば0.1~20mmとすることができる。
【0018】
消火用積層体の主面(消火用積層体を鉛直方向上部から見たときの面)の面積は、消火性能、耐衝撃性及び取り扱い性の観点から、例えば1~1500cm2とすることができる。
【0019】
(繊維層)
繊維層は、高強度耐熱性を有する有機繊維又は無機繊維を含み、具体的には有機繊維及び無機繊維の少なくともいずれかを含む。有機繊維としては、カーボン繊維等が挙げられる。無機繊維としては、ガラス繊維、金属繊維(例えば、ステンレス繊維、アルミニウム繊維)、セラミック繊維等が挙げられる。これらの繊維は高強度耐熱性を有する。繊維層は、一方向に引き揃えられた繊維を樹脂で固定した繊維シートであってよく、繊維の織物、繊維の編物等であってもよい。繊維で形成された層(特に織物又は編物)であることにより、充分量の消火剤成分を担持し易く、軽量かつ発火時の熱や衝撃で変質し難く強度を保ち易い。これによりさらに安全を担保することができる。繊維層は異なる繊維を含む層を複数層含んでいてよい。
【0020】
繊維層は、火災による熱や衝撃に耐え得る、高い強度及び耐熱性を有する基材である。したがって、繊維層を、高強度耐熱基材と言うことができる。高強度耐熱性基材は、少なくとも以下に示される引張強さ及び耐熱温度を有する。
【0021】
JIS-R-3420に準拠して測定される繊維層の引張強さは5×103N/25mm以上とすることができ、50×103N/25mm以上であってもよい。引張強さの上限は特に制限されないが、1×106N/25mm以下とすることができる。引張強さは、繊維層に流れ方向MD及び垂直方向TDがある場合、両者の平均とすることができる。
【0022】
JIS-R-3414に準拠して測定される繊維層の弾性率は3GPa以上とすることができ、10GPa以上であってもよく、50GPa以上であってもよい。弾性率の上限は特に制限されないが、300GPa以下とすることができる。弾性率は、繊維層に流れ方向MD及び垂直方向TDがある場合、両者の平均とすることができる。
【0023】
ISO15025に準拠して測定される繊維層の耐熱温度は300℃以上とすることができ、700℃以上であってもよく、1300℃以上であってもよい。耐熱温度の上限は特に制限されないが、1400℃以下とすることができる。
【0024】
繊維層の厚さは、引張強さ、屈曲性、設置スペース、コスト等の観点から、0.02~2.0mmとすることができ、0.4~1.0mmであってもよい。
【0025】
繊維層が、燃焼によってエアロゾルを発生する消火剤成分を含む場合、消火能力と消火剤保持の観点から、繊維層の全量に対し、消火剤成分の量は10~80質量%とすることができ、20~70質量%であってよい。
【0026】
(樹脂層)
樹脂層は、消火用積層体に種々の機能を付与する層であり、機能層ということができる。機能層としては、耐擦傷層(ハードコート層)、防汚層、撥水層、加飾層、紫外線吸収層、熱転写性層等が挙げられる。消火用積層体にどのような機能を付与するかは、用いる樹脂により調整することができる。樹脂層は、これらの構成を複数含んでいてよい。
【0027】
樹脂層を構成する樹脂としては、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、塩化ビニル樹脂、ポリオレフィン樹脂(ポリエチレンやポリプロピレン)、ポリエステル樹脂等が挙げられる。これらの樹脂は、平常時には安定して機能層内に定着しながら所定の機能を発揮し、かつ火災発生の異常時には消火剤成分に積極的に熱エネルギーを供給し易い。樹脂層が、燃焼によってエアロゾルを発生する消火剤成分を含む場合、これらの樹脂(特にエポキシ樹脂)は消火剤成分との相溶性が良く、消火剤成分のバインダーとしても機能することができる。
【0028】
樹脂層の厚さは、消火機能、屈曲性、設置スペース、コスト等の観点から、0.050~1mmとすることができ、0.1~0.3mmであってもよい。
【0029】
樹脂層が、燃焼によってエアロゾルを発生する消火剤成分を含む場合、消火能力と塗工性の観点から、樹脂層の全量に対し、消火剤成分の量は60~97質量%とすることができ、70~93質量%であってよい。
【0030】
樹脂層は、その他の成分として、分散剤、着色剤、酸化防止剤、難燃剤、無機充填材、粘着剤等を含んでいてもよい。樹脂層におけるその他の成分の含有量は、樹脂層の全量100質量部に対し、20質量部以下とすることができる。
【0031】
(消火剤成分)
消火剤成分は、燃焼によってエアロゾルを発生するものである。消火剤成分は、例えば、無機酸化剤と、ラジカル発生剤とを少なくとも含む。ラジカル発生剤は燃焼ラジカルを安定化して燃焼の連鎖反応を抑制する作用(負触媒作用)を有する。
【0032】
無機酸化剤(以下、場合により、「(A)成分」という。)は、燃焼して熱エネルギーを発生する成分である。無機酸化剤として、塩素酸カリウム、塩素酸ナトリウム、塩素酸ストロンチウム、塩素酸アンモニウム、塩素酸マグネシウム、及び過塩素酸カリウムが挙げられる。これらのうち、一種を単独で使用してもよいし、二種以上を併用してもよい。
【0033】
ラジカル発生剤(以下、場合により、「(B)成分」という。)は、無機酸化剤の燃焼により生じた熱エネルギーによりエアロゾル(ラジカル)を発生させるための成分である。ラジカル発生剤として、分解開始温度が90~260℃の範囲のものを使用することが好ましい。ラジカル発生剤として、カリウム塩及びナトリウム塩が挙げられる。カリウム塩として、酢酸カリウム、プロピオン酸カリウム、クエン酸一カリウム、クエン酸二カリウム、クエン酸三カリウム、エチレンジアミン四酢酸三水素一カリウム、エチレンジアミン四酢酸二水素二カリウム、エチレンジアミン四酢酸一水素三カリウム、エチレンジアミン四酢酸四カリウム、フタル酸水素カリウム、フタル酸二カリウム、シュウ酸水素カリウム、シュウ酸二カリウム及び重炭酸カリウムが挙げられる。ナトリウム塩として、酢酸ナトリウム、クエン酸ナトリウム及び重炭酸ナトリウムが挙げられる。これらのうち、一種を単独で使用してもよいし、二種以上を併用してもよい。
【0034】
(A)成分の含有量は、(A)成分及び(B)成分の合計量100質量部に対し、例えば、10~60質量部であり、好ましくは20~50質量部であり、より好ましくは35~45質量部である。(B)成分の含有量は、(A)成分及び(B)成分の合計量100質量部に対し、例えば、40~90質量部であり、好ましくは50~80質量部であり、より好ましくは55~65質量部である。
【0035】
消火剤成分として、市販品を使用してもよい。市販の消火剤成分として、K-1(商品名、ヤマトプロテック株式会社製)、STAT-X(商品名、日本工機株式会社製)が挙げられる。
【0036】
消火剤成分は、バインダー樹脂と共に用いることができる。バインダー樹脂として、熱可塑性樹脂及び熱硬化性樹脂を使用できる。熱可塑性樹脂として、ポリプロピレン系樹脂、ポリエチレン系樹脂、ポリ(1-)ブテン系樹脂、ポリペンテン系樹脂等のポリオレフィン系樹脂、ポリスチレン系樹脂、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン系樹脂、メチルメタクリレート-ブタジエン-スチレン樹脂、エチレン-酢酸ビニル樹脂、エチレン-プロピレン樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリフェニレンエーテル系樹脂、アクリル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂等が挙げられる。熱硬化性樹脂として、天然ゴム(NR)、イソプレンゴム(IR)、ブタジエンゴム(BR)、1,2-ポリブタジエンゴム(1,2-BR)、スチレン-ブタジエンゴム(SBR)、クロロプレンゴム(CR)、ニトリルゴム(NBR)、ブチルゴム(IIR)、エチレン-プロピレンゴム(EPR、EPDM)、クロロスルホン化ポリエチレン(CSM)、アクリルゴム(ACM、ANM)、エピクロルヒドリンゴム(CO、ECO)、多加硫ゴム(T)、シリコーンゴム(Q)、フッ素ゴム(FKM、FZ)、ウレタンゴム(U)等のゴム類、ポリウレタン樹脂、ポリイソシアネート樹脂、ポリイソシアヌレート樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂等が挙げられる。バインダー樹脂には硬化剤成分が含まれていてよい。
【0037】
エポキシ樹脂は、消火剤成分との相溶性に優れるとともに、後述のアルコール溶媒に可溶であり且つ安定性が高い点で、バインダー樹脂に適している。エポキシ樹脂は、カリウム塩及びナトリウム塩(ラジカル発生剤)と相溶性に優れるため、厚さが均一の消火剤含有層が得られやすい。これに加え、エポキシ樹脂は湿熱による加水分解及び脆化が生じないため、エポキシ樹脂をバインダー樹脂として含む消火剤含有層は優れた安定性を有する。また、消火剤含有層の燃焼時には約260~350℃で熱分解が始まり、消火性能を損なうことなく、エアロゾルを発生することができる。
【0038】
バインダー樹脂の量は、消火剤成分の固定化や優れた消火性能発現の観点から、消火剤成分の全量100質量部に対し、5~40質量部とすることができ、10~30質量部であってよい。
【0039】
(接着層)
消火用積層体は、繊維層及び樹脂層間にさらに接着層を備えていてよい。接着層は、例えば、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、ウレタン樹脂等の接着剤を用いて形成することができる。接着層の厚さは、例えば1~10μmとすることができ、2~5μmであってよい。
【0040】
<消火用積層体の製造方法>
消火用積層体は、例えば以下の(1)~(3)の製造方法により製造することができる。
(1)液状成分、及び燃焼によってエアロゾルを発生する消火剤成分を含む第一液状組成物を、高強度耐熱性を有する有機繊維又は無機繊維を含む繊維層に含浸させる工程と、含浸させた第一液状組成物を乾燥させる工程と、液状成分、及び樹脂を含む第二液状組成物を、繊維層上に塗布する工程と、塗布した第二液状組成物を乾燥させる工程と、を備える、製造方法。
(2)液状成分、燃焼によってエアロゾルを発生する消火剤成分、及び樹脂を含む第三液状組成物を、高強度耐熱性を有する有機繊維又は無機繊維を含む繊維層上に塗布する工程と、塗布した第三液状組成物を乾燥させる工程と、を備える、製造方法。
(3)液状成分、及び燃焼によってエアロゾルを発生する消火剤成分を含む第一液状組成物を、高強度耐熱性を有する有機繊維又は無機繊維を含む繊維層に含浸させる工程と、含浸させた第一液状組成物を乾燥させる工程と、液状成分、燃焼によってエアロゾルを発生する消火剤成分、及び樹脂を含む第三液状組成物を、繊維層上に塗布する工程と、塗布した第三液状組成物を乾燥させる工程と、を備える、消火用積層体の製造方法。
【0041】
上記(1)により、消火剤成分を含む繊維層と、樹脂層と、を備える消火用積層体を得ることができる。(2)により、繊維層と、消火剤成分を含む樹脂層と、を備える消火用積層体を得ることができる。(3)により、消火剤成分を含む繊維層と、消火剤成分を含む樹脂層と、を備える消火用積層体を得ることができる。これらの方法により、消火用積層体を低価格で大量に製造することが可能となる。
【0042】
各液状組成物の調製に使用する液状成分としては、アルコール溶媒(例えば、エタノール、IPA)が挙げられる。アルコール溶媒は消火剤成分の分散性に優れるとともに低揮発性であるため、液状組成物を調製するための溶媒として適している。消火剤成分及び樹脂(バインダー樹脂)の量に対する液状成分の量比は、所望の液状組成物粘度が得られるよう適宜調整すればよい。
【0043】
液状組成物は、上記のとおり含浸用、あるいは塗布用に用いることができる。塗布は、任意の適切な方法により行うことができる。塗布は、例えばグラビアコーター、ディップコーター、リバースコーター、ワイヤーバーコーター、ダイコーター等のウェット成膜法により行うことができる。
【0044】
液状組成物の乾燥は、液状成分を充分に除去しつつ、かつ消火剤成分の反応を抑制する観点から、例えば50~100℃で液状組成物を加熱することで実施できる。
【0045】
その他の製造方法としては、例えば消火剤成分を含む繊維層と樹脂層とを、繊維層と消火剤成分を含む樹脂層とを、又は消火剤成分を含む繊維層と消火剤成分を含む樹脂層とを、それぞれ準備し、両者を接着層を介して積層する方法が挙げられる。
【実施例0046】
本開示を以下の実施例によりさらに詳細に説明するが、本開示はこれらの例に限定されるものではない。
【0047】
繊維層として表1に示す材料を準備した。
【0048】
【0049】
表1中、各層の引張強さはJIS-R-3420に準拠して測定し、弾性率はJIS-R-3414に準拠して測定し、耐熱温度はISO15025に準拠して測定した。
【0050】
<消火用積層体の作製>
表2に示す消火用積層体を作製した。各例の詳細を以下に示す。
【0051】
(実施例1)
ヤマトプロテック株式会社製のエアロゾル消火剤K-1エタノールスラリーとバインダー樹脂(東洋インキ株式会社製、エポキシ樹脂、K468HP92墨)とを、固形分の質量比でバインダー樹脂:消火剤=10:90として混合して液状組成物を調製した。これを、表1に示す繊維層に塗布して塗膜を形成した。これを90℃で4分乾燥させ、繊維層上に厚さ200μmの樹脂層(加飾層)を形成した。これにより消火用積層体を得た。
【0052】
(実施例2~4)
繊維層を表1のとおりとしたこと以外は、実施例1と同様にして消火用積層体を得た。
【0053】
(実施例5)
ヤマトプロテック株式会社製のエアロゾル消火剤K-1エタノールスラリーとバインダー樹脂(東洋インキ株式会社製、エポキシ樹脂、K468HP92墨)とを、固形分の質量比でバインダー樹脂:消火剤=30:70として混合して液状組成物を調製した。これに、表1に示す繊維層を含浸させた。これを90℃で4分乾燥させ、消火剤成分を担持した繊維層を得た。繊維層の全量に対し、消火剤成分の量は50質量%とした。
【0054】
次に、エタノールにバインダー樹脂(東洋インキ株式会社製、エポキシ樹脂、K468HP92墨)を加えて液状組成物を調製した。これを、消火剤成分を担持した上記繊維層に塗布して塗膜を形成した。これを90℃で4分乾燥させ、繊維層上に厚さ200μmの機能層(加飾層)を形成した。これにより消火用積層体を得た。
【0055】
(実施例6~8)
繊維層、バインダー樹脂、及び繊維層の全量に対する消火剤成分の量を表1及び表2のとおりとしたこと以外は、実施例5と同様にして消火用積層体を得た。
【0056】
(実施例9)
実施例5と同様にして、消火剤成分を担持した繊維層を得た。この繊維層上に、実施例1と同様にして厚さ200μmの樹脂層(加飾層)を形成した。これにより消火用積層体を得た。
【0057】
(実施例10~12)
繊維層、バインダー樹脂、及び繊維層の全量に対する消火剤成分の量を表1及び表2のとおりとしたこと以外は、実施例9と同様にして消火用積層体を得た。
【0058】
(比較例1)
エタノールにバインダー樹脂(東洋インキ株式会社製、エポキシ樹脂、K468HP92墨)を加えて液状組成物を調製した。これを、表1に示す基材に塗布して塗膜を形成した。これを90℃で4分乾燥させ、基材上に厚さ200μmの機能層(加飾層)を形成した。これにより積層体を得た。
【0059】
【0060】
<燃焼落球消火試験>
各例で得られた消火用積層体を70mm×120mm角に切り出し、試験用サンプルとした。
JIS B 2238-1996 呼び圧力5K、SOP型フランジの、呼び径A32、B11/4、2個の間に、上記サンプルを、サンプル中心とフランジ中心が一致するようにして、ボルト及びナットでフランジに固定した。
外形φ32mm、内径φ28、長さ1mのステンレス製サポート管を、サンプル面上部に対し垂直になるよう設置した。
ろうそく又は固形燃料1gを着火し、炎の先端をフランジ開口部のサンプル下面にあてた後3~5秒以内に、直径20mm、重さ33gの鉄球をサポート管の中を通してサンプル上面に落下させた。落球の持つエネルギーは0.32N・mと試算した。
このようにして、サンプルの消火性及び耐衝撃性を評価した。評価基準は以下のとおりとした。結果を表3に示す。
消火性:炎に接触させた後、5秒以内に消火できた場合をA評価、炎に接触させた後、5秒超で消火できた場合をB評価、消火できなかった場合をC評価、とした。
耐衝撃性:形状が維持された場合をA評価、形状が維持されなかった場合をB評価とした。
【0061】