IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社ミツバの特許一覧

<>
  • 特開-埋め込み磁石同期モータ 図1
  • 特開-埋め込み磁石同期モータ 図1A
  • 特開-埋め込み磁石同期モータ 図2
  • 特開-埋め込み磁石同期モータ 図2A
  • 特開-埋め込み磁石同期モータ 図3
  • 特開-埋め込み磁石同期モータ 図3A
  • 特開-埋め込み磁石同期モータ 図4
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022171070
(43)【公開日】2022-11-11
(54)【発明の名称】埋め込み磁石同期モータ
(51)【国際特許分類】
   H02K 1/27 20220101AFI20221104BHJP
【FI】
H02K1/27 501D
H02K1/27 501A
H02K1/27 501K
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021077458
(22)【出願日】2021-04-30
(71)【出願人】
【識別番号】000144027
【氏名又は名称】株式会社ミツバ
(74)【代理人】
【識別番号】110002871
【氏名又は名称】弁理士法人坂本国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】荒尾 匠
(72)【発明者】
【氏名】金子 庸人
(72)【発明者】
【氏名】田中 裕人
【テーマコード(参考)】
5H622
【Fターム(参考)】
5H622AA03
5H622CA02
5H622CA07
5H622CA10
5H622CB05
5H622PP20
(57)【要約】
【課題】トルクの上限値を上昇させることができるとともに、コストダウンを図ることができる埋め込み磁石同期モータを提供する。
【解決手段】磁石が埋め込まれたロータを有する埋め込み磁石同期モータであって、ロータは、軸方向に延設された回転軸と、回転軸の外周側において周方向に配列された複数の磁石と、複数の磁石を保持するロータコアと、を備え、ロータコアは、回転軸に取り付けられたインナーコアと、インナーコアの外周側において、インナーコアから径方向に離れて設けられたアウターコアと、インナーコアとアウターコアとを連結する樹脂部と、を備え、インナーコアの軸方向の寸法は、アウターコアの軸方向の寸法よりも小さく、樹脂部は、軸方向に沿った一方向におけるインナーコアの端面からの軸方向の厚みが、一方向におけるアウターコアの端面からの軸方向の厚みよりも大きくされている。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
磁石が埋め込まれたロータを有する埋め込み磁石同期モータであって、
前記ロータは、
軸方向に延設された回転軸と、
前記回転軸の外周側において周方向に配列された複数の磁石と、
前記複数の磁石を保持するロータコアと、
を備え、
前記ロータコアは、
前記回転軸に取り付けられたインナーコアと、
前記インナーコアの外周側に設けられたアウターコアと、
前記インナーコアと前記アウターコアとを連結する樹脂部と、
を備え、
前記インナーコアの前記軸方向の寸法は、前記アウターコアの前記軸方向の寸法よりも小さく、
前記樹脂部は、前記軸方向に沿った一方向における前記インナーコアの端面からの前記軸方向の厚みが、前記一方向における前記アウターコアの端面からの前記軸方向の厚みよりも大きくされている、埋め込み磁石同期モータ。
【請求項2】
前記樹脂部は、軸方向から視て、前記磁石が配置された領域に設けられたゲートを有する、請求項1に記載の埋め込み磁石同期モータ。
【請求項3】
前記インナーコアおよび前記アウターコアは、互いに異なる素材により構成された、請求項1または請求項2に記載の埋め込み磁石同期モータ。
【請求項4】
前記アウターコアは、前記複数の磁石と交互に前記周方向に配列された複数の分割コアとして構成された、請求項1~請求項3のいずれか1項に記載の埋め込み磁石同期モータ。
【請求項5】
前記インナーコアおよび前記アウターコアは、それぞれ複数の板状部材を前記軸方向に積層して構成された、請求項1~請求項4のいずれか1項に記載の埋め込み磁石同期モータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、埋め込み磁石同期モータに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、磁石を有するロータを備える埋め込み磁石同期モータが開示されている。ロータは複数のコアピース部と、コアピース部を励磁する複数の永久磁石と、を備え、これらの部材は、互いにモールド樹脂部により固定されている。このモータでは、モールド樹脂部によりコアピース部からの磁束漏れが抑制されるという利点がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2018-033307号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載されたモータでは、ロータがモールド樹脂部を介して回転軸に結合されている。このため、モールド樹脂部の強度や、モールド樹脂部と回転軸との間の接着強度に起因して、トルクの上限値が抑制されてしまう。
【0005】
本発明は、トルクの上限値を上昇させることができるとともに、コストダウンを図ることができる埋め込み磁石同期モータを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記問題を解決するために、本発明の一態様は、
磁石が埋め込まれたロータを有する埋め込み磁石同期モータであって、
前記ロータは、
軸方向に延設された回転軸と、
前記回転軸の外周側において周方向に配列された複数の磁石と、
前記複数の磁石を保持するロータコアと、
を備え、
前記ロータコアは、
前記回転軸に取り付けられたインナーコアと、
前記インナーコアの外周側に設けられたアウターコアと、
前記インナーコアと前記アウターコアとを連結する樹脂部と、
を備え、
前記インナーコアの前記軸方向の寸法は、前記アウターコアの前記軸方向の寸法よりも小さく、
前記樹脂部は、前記軸方向に沿った一方向における前記インナーコアの端面からの前記軸方向の厚みが、前記一方向における前記アウターコアの端面からの前記軸方向の厚みよりも大きくされている、埋め込み磁石同期モータを提供する。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、トルクの上限値を上昇させることができるとともに、コストダウンを図ることができる埋め込み磁石同期モータが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本実施例の埋め込み磁石同期モータのロータを軸方向から視た図である。
図1A】ロータを示す斜視図である。
図2】インナーコアおよびアウターコアを軸方向から視た図である。
図2A】回転軸、インナーコアおよびアウターコアを示す斜視図である。
図3】回転軸の軸心を通る平面におけるロータの断面を示す断面図である。
図3A】インナーコアの軸方向の寸法を図3の例よりも小さくした例を示す断面図である。
図4】樹脂モールド部の樹脂を充填するゲートの配置を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、添付図面を参照しながら実施例について詳細に説明する。
【0010】
図1は、本実施例の埋め込み磁石同期モータのロータを軸方向から視た図、図1Aは、ロータを示す斜視図、図2は、インナーコアおよびアウターコアを軸方向から視た図、図2Aは、回転軸、インナーコアおよびアウターコアを示す斜視図である。なお、以下の記載において、軸方向、径方向、周方向、内周側、外周側は、ロータの回転軸の軸心を基準として定義されている。
【0011】
図1に示すように、ロータ10は、金属材料からなる回転軸11と、回転軸11の外周側において周方向に配列された複数(本実施例では10個)の磁石40と、これら複数の磁石40を保持するロータコアRCと、を備える。
【0012】
ロータコアRCは、回転軸11に取り付けられた環状のインナーコア20と、インナーコア20の外周側において、インナーコア20から径方向に離れて設けられたアウターコア3と、インナーコア20とアウターコア3とを連結する樹脂モールド部50(樹脂部の一例)と、を備える。
【0013】
アウターコア3は、インナーコア20の外周側において、周方向に配列され、磁極にそれぞれ対応する複数(本実施例では10個)の分割コア30により構成される。複数の磁石40のそれぞれは、互いに隣接する分割コア30の間に配置され、分割コア30は、複数の磁石40と交互に周方向に配列される。磁石40は、回転軸11の周りに、均等の角度で(36°ずつずれて)配置される。分割コア30は、互いに隣接する磁石40に挟まれた位置において、回転軸11の周りに均等の角度で(36°ずつずれて)配置される。複数の分割コア30は、インナーコア20とともに互いに樹脂モールド部50によって連結される。このため、アウターコア3を介する磁束漏れを効果的に抑制できる。
【0014】
分割コア30は、磁石40の磁束を固定子(不図示)の側へ導入する磁性材として機能する。このように、ロータ10は、磁石40が周方向に配列されるスポーク型のロータとして構成される。
【0015】
磁石40は、軸方向に延びる直方体形状とされ、図1に示すように、互いに隣接する磁石40のN極どうし、またはS極どうしが対向する方向に配置される。これにより、分割コア30のそれぞれは、周方向にN極およびS極を交互に繰り返す磁極として機能する。
【0016】
インナーコア20と分割コア30は、インナーコア20と分割コア30との間に介在する樹脂モールド部50により位置的、磁気的に分離して設けられている。また、樹脂モールド部50は、インナーコア20の外周側において、ロータコアRCの全周にわたり形成されている。このため、分割コア30からインナーコア20への磁束漏れ、および分割コア30から回転軸11への磁束漏れを効果的に抑制することができる。
【0017】
ロータコアRCは、インナーコア20を回転軸11に圧入することにより回転軸11に取り付けられる。すなわち、ロータコアRCは、インナーコア20の内周端が回転軸11の外周端に接触する状態で、インナーコア20が回転軸11に対して取り付けられる。このため、ロータコアRCが回転軸11に対して強固に固定され、強いトルクに対する耐性を確保することができる。
【0018】
なお、本実施例では、磁極の数が10の場合を示しているが、極数は任意である。
【0019】
インナーコア20は、例えば、それぞれ図2に示す形状の所定枚数の板状部材20Aを、軸方向に積層することで構成される。インナーコア20は、基本的には、磁性材として機能せず、ロータコアRCを回転軸11に固定するための部材として使用される。このため、回転軸11に圧入されることにより充分な強度で回転軸11に固定されるような任意の金属材料を用いて構成することができる。例えば、安価な冷間圧延鋼板(SPCC)などを板状部材20Aとして使用できる。また、板状部材20Aの厚み(軸方向における厚み)も任意であり、例えば、コストなどを考慮して板厚の大きな板状部材20Aを選択することができる。
【0020】
一方、分割コア30は、例えば、それぞれ図2に示す形状の所定枚数の板状部材30Aを、軸方向に積層することで構成される。分割コア30は、磁石40により磁化される磁性材として機能する。このため、板状部材30Aとして、分割コア30に要求される磁気特性を満たすような磁性材が、適宜、使用される。例えば、板状部材30Aとして、電磁鋼板が用いられる。
【0021】
このように、インナーコア20と分割コア30は、同一の材料を用いて構成する必要はない。また、板圧を統一する必要もない。このため、分割コア30には所望の磁気特性を満足する磁性材料(金属材料、例えば、電磁鋼板)を用いつつ、インナーコア20には、より安価な別の材料(金属材料、例えば、安価な鉄板)を使用することにより、モータのコストダウンを図ることができる。
【0022】
図2に示すように、インナーコア20を構成する板状部材20Aには、回転軸11の周りに、均等の角度で(72°ずつずれて)係合部21が形成されている。係合部21は、凹状または凸状に形成され、互いに積層された板状部材20Aが係合部21において係合することで、板状部材20Aの周方向および径方向の位置決めに寄与する。
【0023】
また、板状部材20Aには、回転軸11の周りに、それぞれ均等の角度で(72°ずつずれて)配置された凸部22が、周方向に交互に設けられている。凸部22および凸部23は、それぞれ磁石40に対向する位置で外周側に突出することで、インナーコア20と分割コア30との間における樹脂モールド部50の厚みを均一化するとともに、インナーコア20の回り止めとしても機能する。また、凸部22および凸部23が、磁石40に対して周方向に均等に設けられることにより、周方向におけるロータ10の磁気特性を均等化することができる。
【0024】
図2に示すように、分割コア30を構成する板状部材30Aには、それぞれ3つの係合部31が形成されている。係合部31は、凹状または凸状に形成され、互いに積層された板状部材30Aどうしが係合部31において係合することで、板状部材30Aの周方向および径方向の位置決めに寄与する。
【0025】
また、板状部材30Aには、貫通孔32が形成されている。貫通孔32は積層された板状部材30Aを軸方向に貫く円柱形状の貫通孔を形成する。この円柱形状の貫通孔は、樹脂モールド部50の柱部50Cに対応している。なお、本実施例では、分割コア30を軸方向に貫通する樹脂モールド部50の柱部50Cを設けることにより、樹脂の肉厚を増すことなくゲートから反ゲートまでの樹脂の流路を確保することができ、樹脂の充填不足を補うことができる。また、樹脂モールド部50が柱部50Cを有することにより、硬化時において樹脂が収縮する際に、分割コア30の全体を変位させることができるため、分割コア30の傾きや位置ずれを抑制できるなどの効果がある。
【0026】
板状部材30Aの外周部には、周方向に突出する2つの突出部33が形成されている。図1図2に示すように、突出部33は、隣接する板状部材30Aの突出部33と対向して形成されており、磁石40の外周端よりも外周側から樹脂モールド部50に接合される。なお、突出部33(分割コア30)と、磁石40との間の距離を確保することにより、磁石40の減磁耐力を向上させている。
【0027】
インナーコア20(板状部材20A)と対向する板状部材30Aの内周面には、外周側に窪んだ凹部35が形成されている。互いに積層される板状部材30Aの凹部35は、軸方向に連通して、分割コア30の溝部Dを形成する。図2に示すように、溝部Dは、分割コア30の内周面において内周側に向けて開口し、軸方向に延設される。図2に点線で示す樹脂の流路41において、溝部Dを設けることにより、互いに隣接する分割コア30の間から、インナーコア20の外周面と分割コア30の内周面の間まで、流路41の厚みを均一化することができ、樹脂の偏肉が抑制されるなどの効果がある。また、図1に示すように、樹脂モールド部50には、軸方向に貫通する孔である8つの肉盗み67および2つの肉盗み68が、周方向に配列している。
【0028】
肉盗み68は樹脂の均一性を良くする機能に加えて、インナーコア20の位置を決める機能を有する。樹脂成形によりすべての部品が配置または固定される中で、アウターコア3とインナーコア20の凸部22の回転方向の位置関係を決めるため、成形時に金型のコマ形状により、インナーコア20の肉盗み68で回転を抑制して、位置を決めている。
【0029】
アウターコア3とインナーコア20の凸部22の位置関係は、磁気回路としての漏れ磁束低減のために最適な位置となっていて、磁石40の側面にインナーコア20の凸部22を配置する。言い換えるとアウターコア3の間に可能な限り均等な距離で凸部22を配置することで、磁石40から出る磁束のインナーコア20側への漏れを最小限にする効果を有する。 図3は、回転軸の軸心を通る平面におけるロータの断面を示す断面図である。
【0030】
図3に示すように、本実施例では、インナーコア20の軸方向の寸法D1は、アウターコア3の軸方向の寸法D2よりも小さく設定されている。また、樹脂モールド部50は、軸方向に沿った一方向(図3における上方向)におけるインナーコア20の端面からの軸方向の厚みD3が、上記一方向におけるアウターコア3の端面からの軸方向の厚みD4よりも大きく設定されている。
【0031】
樹脂モールド部50は、樹脂を金型内に充填し、硬化させる工程により形成される。このとき、金型内のうち、最後に樹脂が充填される部位にウェルドが発生しやすい。ウェルドが生じた部分では、樹脂モールド部50が脆弱となり、ロータ10の強度低下を招く。しかし、本実施例では、ウェルドが発生しやすい部位50a(図3)の近傍において、樹脂モールド部50の軸方向の厚みD3を充分に確保している。このため、ウェルドによるロータ10の強度低下を補うことができる。
【0032】
また、インナーコア20の軸方向の寸法を抑えることにより、例えば、板状部材20Aの枚数を減らすことが可能となり、モータのコストダウンを図ることができる。
【0033】
図3Aは、インナーコアの軸方向の寸法を図3の例よりも小さくした例を示す断面図である。図3Aも、図3と同様、回転軸の軸心を通る平面における断面を示している。
【0034】
図3Aに示す例では、インナーコア120の軸方向の寸法D1´は、アウターコア3の軸方向の寸法D2よりも小さく設定されている。また、樹脂モールド部150において、軸方向に沿った一方向(図3における上方向)におけるインナーコア120の端面からの軸方向の厚みD3が、上記一方向におけるアウターコア3の端面からの軸方向の厚みD4よりも大きく設定されている。
【0035】
図4は、樹脂モールド部の樹脂を充填するゲートの配置を示す図である。図4に示すゲートGは、軸方向から視て、分割コア30から外れた領域、すなわち、磁石40が配置された領域(図1)に設けられたピンポイントゲートである。ゲートGは、径方向における磁石40の中心よりもやや内側に配置されている。ゲートGをこの位置に配置することにより、ロータコアRCにおける樹脂モールド部50の全体に均等に樹脂を充填することができる。この場合、図4に示すように、ゲートGの数を、磁極の1/2の数とすることができる。また、ゲートGの位置を、周方向において均等の角度(72°ずつ)に配分することで、均一性がよく精度の高い成形品を得ることができる。なお、ゲートGの数を分割コア30の数(10個)とした場合には、歩留まりが悪くなり易いという問題がある。ゲートGの数を減少させることにより、歩留まりを向上させることができる。ゲートGの数は、ロータの極数に応じて、適宜、選択される。
【0036】
本実施例では、ロータコアRCが製造された後、ロータコアRCを回転軸11に対して圧入により取り付けている。このため、1つの回転軸11に対して1つのロータコアRCだけでなく、順次、複数のロータコアRCを取り付けることができる。複数のロータコアRCを多段に設けることにより、モータのトルクを増大させることができる。また、複数のロータコアRCを、互いに周方向に異なる角度で取り付けることにより、コギングトルクを低減することができる。
【0037】
以上説明したように、本実施例によれば、圧入によって、回転軸11とロータコアRC(インナーコア20(120))とを接続できるので、1つのロータコアRC当たりのトルク上限値を上昇させることができる。また、複数のロータコアRCを同軸に設けることができるので、モータのトルクを高めることが可能となるとともに、コギングトルクを低減することができる。
【0038】
また、インナーコア20(120)の軸方向の寸法は、アウターコア3の軸方向の寸法よりも小さく設定されているとともに、樹脂モールド部50において、軸方向に沿った一方向におけるインナーコア20(120)の端面からの軸方向の厚みが、上記一方向におけるアウターコア3の端面からの軸方向の厚みよりも大きく設定されている。このため、ウェルドの発生に起因するロータ10の強度低下を、樹脂モールド部50(150)の肉厚を確保することにより補うことができる。したがって、ロータコアRCおよびロータ10の強度を向上させることができる。さらに、インナーコア20(120)の軸方向の寸法を小さくすることにより、モータのコストダウンを図ることができる。
【0039】
以上、実施例について詳述したが、特定の実施例に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された範囲内において、種々の変形および変更が可能である。また、前述した実施例の構成要素を全部または複数を組み合わせることも可能である。
【0040】
なお、以上の実施例に関し、さらに以下の付記を開示する。
【0041】
[付記1]
磁石(40)が埋め込まれたロータ(10)を有する埋め込み磁石同期モータであって、
前記ロータは、
軸方向に延設された回転軸(11)と、
前記回転軸の外周側において周方向に配列された複数の磁石と、
前記複数の磁石を保持するロータコア(RC)と、
を備え、
前記ロータコアは、
前記回転軸に取り付けられたインナーコア(20、120)と、
前記インナーコアの外周側に設けられたアウターコア(3)と、
前記インナーコアと前記アウターコアとを連結する樹脂部(50、150)と、
を備え、
前記インナーコアの前記軸方向の寸法は、前記アウターコアの前記軸方向の寸法よりも小さく、
前記樹脂部は、前記軸方向に沿った一方向における前記インナーコアの端面からの前記軸方向の厚みが、前記一方向における前記アウターコアの端面からの前記軸方向の厚みよりも大きくされている、埋め込み磁石同期モータ。
【0042】
付記1の構成によれば、圧入によって、回転軸とロータコアとを接続できるので、トルク上限値を上昇させることができる。また、ウェルドの発生に起因するロータの強度低下を、樹脂モールド部の肉厚を確保することにより補うことができる。
【0043】
[付記2]
前記樹脂モールド部は、軸方向から視て、前記磁石が配置された領域に設けられたゲート(G)を有する、付記1に記載の埋め込み磁石同期モータ。
【0044】
付記2の構成によれば、ロータコアにおける樹脂モールド部の全体に均等に樹脂を充填することができる。
【0045】
[付記3]
前記インナーコアおよび前記アウターコアは、互いに異なる素材により構成された、付記1または付記2に記載の埋め込み磁石同期モータ。
【0046】
付記3の構成によれば、インナーコアおよびアウターコアを、それぞれ最適な素材で構成することができるので、必要な性能をモータに与えつつ、コストダウンを図ることができる。
【0047】
[付記4]
前記アウターコアは、前記複数の磁石と交互に前記周方向に配列された複数の分割コア(30)として構成された、付記1~付記3のいずれか1項に記載の埋め込み磁石同期モータ。
【0048】
付記4の構成によれば、分割コアが樹脂部を介して結合されるため、アウターコアを介する磁束漏れを効果的に抑制できる。
【0049】
[付記5]
前記インナーコアおよび前記アウターコアは、それぞれ複数の板状部材(20A、30A)を前記軸方向に積層して構成された、付記1~付記4のいずれか1項に記載の埋め込み磁石同期モータ。
【0050】
付記5の構成によれば、インナーコアおよびアウターコアを、それぞれ適切な素材の板状部材により構成することができ、板状部材の使用枚数もそれぞれ独立して選択できる。
【符号の説明】
【0051】
3 アウターコア
10 ロータ
11 回転軸
20、120 インナーコア
30 分割コア
20A 板状部材
30A 板状部材
40 磁石
50、150 樹脂モールド部
G ゲート
RC ロータコア
図1
図1A
図2
図2A
図3
図3A
図4