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特開2022-171078ダイカスト用装置およびダイカスト法
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  • 特開-ダイカスト用装置およびダイカスト法 図1
  • 特開-ダイカスト用装置およびダイカスト法 図2
  • 特開-ダイカスト用装置およびダイカスト法 図3
  • 特開-ダイカスト用装置およびダイカスト法 図4
  • 特開-ダイカスト用装置およびダイカスト法 図5
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022171078
(43)【公開日】2022-11-11
(54)【発明の名称】ダイカスト用装置およびダイカスト法
(51)【国際特許分類】
   B22D 17/22 20060101AFI20221104BHJP
【FI】
B22D17/22 E
B22D17/22 T
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021077471
(22)【出願日】2021-04-30
(71)【出願人】
【識別番号】000006943
【氏名又は名称】リョービ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100128749
【弁理士】
【氏名又は名称】海田 浩明
(72)【発明者】
【氏名】水草 康行
(57)【要約】
【課題】ランナー内で凝固したダイカスト品から加圧ロッドが抜けなくなることを防止する。
【解決手段】ダイカスト用装置1は、キャビティ53と該キャビティ53に連通するランナー50を画成するダイカスト金型10と、キャビティ53内に向けて溶湯を充填する第1加圧手段24,25と、ランナー50内の溶湯を加圧する第2加圧手段40,41,43と、を備え、第2加圧手段40,41,43が、ダイカスト金型10の型開き方向に対して略直交する方向に向けて進退する円筒軸状の第2加圧ロッド43を含み、ランナー50内の溶湯を加圧する第2加圧手段40,41,43を補助する第3加圧手段63を備える。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
キャビティと該キャビティに連通するランナーを画成するダイカスト金型と、
前記キャビティ内に向けて溶湯を充填する第1加圧手段と、
前記ランナー内の溶湯を加圧する第2加圧手段と、
を備え、
前記第2加圧手段が、前記ダイカスト金型の型開き方向に対して略直交する方向に向けて進退する円筒軸状の第2加圧ロッドを含むダイカスト用装置であって、
前記ランナー内の溶湯を加圧する前記第2加圧手段を補助する第3加圧手段を備えることを特徴とするダイカスト用装置。
【請求項2】
請求項1に記載のダイカスト用装置において、
前記第3加圧手段は、前記ランナー内の溶湯を加圧する円筒軸状の第3加圧ロッドを含み、
前記第2加圧ロッドと前記第3加圧ロッドは、前記ランナー内の溶湯を加圧したときに、互いに干渉しないように配置されていることを特徴とするダイカスト用装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のダイカスト用装置において、
前記第3加圧ロッドによって加圧される前記ランナーの溶湯加圧位置には、前記第3加圧ロッドの方向に膨出するボス形状が形成されていることを特徴とするダイカスト用装置。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか1項に記載のダイカスト用装置において、
前記ランナー内の溶湯を加圧する前記第2加圧ロッドの加圧ストロークは、前記第2加圧ロッドの軸径の略1.5倍の距離であり、
前記ランナー内の溶湯を加圧する前記第3加圧ロッドの加圧ストロークは、前記第2加圧ロッドの距離の略半分の距離であることを特徴とするダイカスト用装置。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか1項に記載のダイカスト用装置において、
前記第3加圧手段は、前記ダイカスト金型を構成する可動型側に設置されていることを特徴とするダイカスト用装置。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか1項に記載のダイカスト用装置において、
前記第2加圧手段と前記第3加圧手段は、それぞれが個別の制御手段により動作制御され、
前記第2加圧手段の前記第2加圧ロッドが前記ランナー内の溶湯に対する加圧動作を開始した後に、前記第3加圧手段の前記第3加圧ロッドが前記ランナー内の溶湯に対する加圧動作を遅れて開始することを特徴とするダイカスト用装置。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか1項に記載のダイカスト用装置によりダイカストを行うことを特徴とするダイカスト法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ダイカスト用装置およびダイカスト法に係り、特に、ダイカスト金型のランナーを加圧する為の加圧手段を備えたダイカスト用装置および当該ダイカスト用装置を用いて行うダイカスト法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、キャビティと該キャビティに連通するランナーを画成するダイカスト金型と、該キャビティ内に向けて溶湯を充填する第1加圧手段と、該ランナーの溶湯を加圧する第2加圧手段とを備え、該第2加圧手段が該ダイカスト金型の型開き方向に略直交する方向に向けて進退する第2加圧ロッドを備えたダイカスト用装置が公知である(例えば、下記特許文献1参照)。かかるダイカスト用装置によれば、ランナー内の溶湯を第2加圧手段の第2加圧ロッドによって加圧することで、キャビティ内で成形されるダイカスト品の品質を向上させることが可能となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2011-224650号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上掲した特許文献1に開示されたダイカスト用装置では、ランナー内の溶湯を加圧した第2加圧手段の第2加圧ロッドが、ランナー内で凝固したダイカスト品から抜けなくなる虞があり、改善の余地があった。
【0005】
本発明は、上述した従来技術に存在する課題に鑑みて成されたものであって、その目的は、キャビティ内で成形されるダイカスト品の品質を維持しながらも、ランナー内で凝固したダイカスト品から第2加圧手段の第2加圧ロッドが抜けなくなるといった不具合が発生することの無いダイカスト用装置と、当該ダイカスト用装置を用いて行うダイカスト法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
以下、本発明について説明する。なお、本発明の理解を容易にするために添付図面の参照番号を括弧書きにて付記するが、それにより本発明が図示の形態に限定されるものではない。
【0007】
本発明に係るダイカスト用装置(1,2)は、キャビティ(53)と該キャビティ(53)に連通するランナー(50)を画成するダイカスト金型(10)と、前記キャビティ(53)内に向けて溶湯を充填する第1加圧手段(24,25)と、前記ランナー(50)内の溶湯を加圧する第2加圧手段(40,41,43)と、を備え、前記第2加圧手段(40,41,43)が、前記ダイカスト金型(10)の型開き方向に対して略直交する方向に向けて進退する円筒軸状の第2加圧ロッド(43)を含むダイカスト用装置(1,2)であって、前記ランナー(50)内の溶湯を加圧する前記第2加圧手段(40,41,43)を補助する第3加圧手段(63)を備えることを特徴とするものである。
【0008】
また、本発明に係るダイカスト用装置(1,2)において、前記第3加圧手段(63)は、前記ランナー(50)内の溶湯を加圧する円筒軸状の第3加圧ロッド(63)を含み、前記第2加圧ロッド(43)と前記第3加圧ロッド(63)は、前記ランナー(50)内の溶湯を加圧したときに、互いに干渉しないように配置することができる。
【0009】
さらに、本発明に係るダイカスト用装置(1)において、前記第3加圧ロッド(63)によって加圧される前記ランナー(50)の溶湯加圧位置には、前記第3加圧ロッド(63)の方向に膨出するボス形状(50C)を形成することができる。
【0010】
またさらに、本発明に係るダイカスト用装置(1,2)において、前記ランナー(50)内の溶湯を加圧する前記第2加圧ロッド(43)の加圧ストロークは、前記第2加圧ロッド(43)の軸径の略1.5倍の距離であり、前記ランナー(50)内の溶湯を加圧する前記第3加圧ロッド(63)の加圧ストロークは、前記第2加圧ロッド(43)の距離の略半分の距離であることが好適である。
【0011】
さらにまた、本発明に係るダイカスト用装置(1,2)において、前記第3加圧手段(63)は、前記ダイカスト金型(10)を構成する可動型(30)側に設置することができる。
【0012】
また、本発明に係るダイカスト用装置(1,2)において、前記第2加圧手段(40,41,43)と前記第3加圧手段(63)は、それぞれが個別の制御手段により動作制御され、前記第2加圧手段(40,41,43)の前記第2加圧ロッド(43)が前記ランナー(50)内の溶湯に対する加圧動作を開始した後に、前記第3加圧手段(63)の前記第3加圧ロッド(63)が前記ランナー(50)内の溶湯に対する加圧動作を遅れて開始することができる。
【0013】
本発明に係るダイカスト法は、上記したいずれかのダイカスト用装置(1,2)によりダイカストを行うことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、キャビティ内で成形されるダイカスト品の品質を維持しながらも、ランナー内で凝固したダイカスト品から第2加圧手段の第2加圧ロッドが抜けなくなるといった不具合が発生することの無いダイカスト用装置と、当該ダイカスト用装置を用いて行うダイカスト法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本実施形態に係るダイカスト用装置において、主加圧ロッドが後退位置にある状態を示す断面図である。
図2】本実施形態に係るダイカスト用装置において、主加圧ロッドが前進位置にある状態を示す断面図である。
図3】本実施形態に係るダイカスト用装置の特徴的な構成を説明するための図であり、特に、主加圧ロッドの周辺を示す断面図である。
図4図3で示した本実施形態に係るダイカスト用装置の動作説明を行うための断面図である。
図5】本発明が取り得る多様な変形形態の一例を示す図であり、図中の分図(a)が変形形態に係るダイカスト用装置の断面図であり、分図(b)が分図(a)におけるB-B線断面を示す横断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明を実施するための好適な実施形態について、図面を用いて説明する。なお、以下の実施形態は、各請求項に係る発明を限定するものではなく、また、実施形態の中で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明の解決手段に必須であるとは限らない。
【0017】
本発明の一実施形態に係るダイカスト用装置1の基本形態について、図1および図2を用いて説明する。ここで、図1は、本実施形態に係るダイカスト用装置において、主加圧ロッドが後退位置にある状態を示す断面図である。また、図2は、本実施形態に係るダイカスト用装置において、主加圧ロッドが前進位置にある状態を示す断面図である。
【0018】
図1に示されるように、ダイカスト金型10は、固定型20と可動型30とを備えている。固定型20は固定ホルダー21および固定ダイス22からなり、固定ホルダー21には射出スリーブ23(スリーブ)が配設されている。射出スリーブ23内にはプランジャロッド24の先端に連結されたプランジャチップ25が配設されている。図示せぬ射出シリンダを作動させて該プランジャチップ25を射出スリーブ23内で摺動させることで射出スリーブ23の図示せぬ給湯孔から供給されたアルミニウム合金等の溶湯を、後述のキャビティ53内に充填可能である。プランジャチップ25、プランジャロッド24、および図示せぬ射出シリンダが、本発明に係る第1加圧手段を構成する。また、プランジャロッド24が、本発明に係る第1加圧ロッドを構成する。
【0019】
可動型30は、可動ホルダー31、可動ダイス32、および分流子33からなり、矢印A←→A’で示される可動型30の移動方向(ダイカスト金型10の型開き方向)に移動可能である。図1および図2に示す型締め状態においては、ダイカスト金型10の内部にはランナー50、ゲート52、およびキャビティ53が画成され、射出スリーブ23内の空間はランナー50およびゲート52を介してキャビティ53と連通する。ランナー50は、射出スリーブ23の軸線方向(ダイカスト金型10の型開き方向)に対して僅かな傾き角度を持った方向に延びる第1ランナー50Aと、射出スリーブ23の軸線方向に略直交する方向に延びる第2ランナー50Bとを備えている。第1ランナー50Aは、固定型20に配設された射出スリーブ23と可動型30の分流子33とにより画成されている。第2ランナー50Bは、射出スリーブ23と分流子33とにより画成される部分と、固定ダイス22と可動ダイス32とにより画成される部分とを有している。本実施形態では、第2ランナー50Bにおける射出スリーブ23と分流子33とにより画成される部分が円筒形の内部空間を有する円筒形ランナーとして形成されており、第2ランナー50Bにおける固定ダイス22と可動ダイス32とにより画成される部分が台形の内部空間を有する台形ランナーとして形成されている。また、ゲート52およびキャビティ53は、固定ダイス22と可動ダイス32とにより画成されている。
【0020】
分流子33には、図示せぬブラケットを介して油圧シリンダ40が固定されている。油圧シリンダ40のピストンロッド41には、カップリング42を介して主加圧ロッド43が連結されている。主加圧ロッド43は、分流子33に形成された貫通孔34に挿入され、主加圧ロッド43の先端部43Aが貫通孔34の上側開口34Aを塞いでいる。主加圧ロッド43は、油圧シリンダ40の作動によりダイカスト金型10の型開き方向に略直交する方向に向けて進退可能とされ、油圧シリンダ40を作動させた場合には、図1に示す後退位置から第2ランナー50B内に進入し、図2に示す前進位置まで進出可能である。したがって、本実施形態に係るダイカスト用装置1では、主加圧ロッド43を第2ランナー50B内に進出させることにより、第2ランナー50B内の溶湯を介してキャビティ53内の溶湯を加圧することが可能である。油圧シリンダ40、ピストンロッド41、および主加圧ロッド43は、本発明に係る第2加圧手段を構成する。また、主加圧ロッド43は、本発明に係る第2加圧ロッドを構成する。
【0021】
なお、主加圧ロッド43の先端部43Aは、円筒軸状をした形状とされている。そして、第2ランナー50Bは主加圧ロッド43の先端部43Aの横断面形状と対応するように円形状に形成された対応形状部51を備え、この対応形状部51を画成する面51Aと主加圧ロッド43の先端部43Aとの周方向の隙間が、例えば、0.5~3.0mmの範囲に設定されている。隙間が0.5mm未満の場合には、隙間で凝固した薄肉部分がダイカスト品の取り出し時に切断されてしまう。また、隙間が3.0mmを超える場合には、主加圧ロッド43で第2ランナー50B内の溶湯を加圧した際に溶湯が隙間から逆流することを充分に防ぐことができず、キャビティ53内の溶湯に充分な押湯効果を与えることができない。第2ランナー50B内の溶湯の流動性が良い場合には、隙間から逆流が生じやすいので、キャビティ53内への溶湯の充填完了前に主加圧ロッド43で第2ランナー50B内の溶湯を加圧する場合には、第2ランナー50Bの対応形状部51を画成する面51Aと主加圧ロッド43の先端部43Aとの隙間を3.0mm以下とすることが好適である。
【0022】
以上、本実施形態に係るダイカスト用装置1の基本構成を説明した。次に、図3および図4を用いて、本実施形態に係るダイカスト用装置1が有する特徴的な構成を説明する。ここで、図3は、本実施形態に係るダイカスト用装置の特徴的な構成を説明するための図であり、特に、主加圧ロッドの周辺を示す断面図である。また、図4は、図3で示した本実施形態に係るダイカスト用装置の動作説明を行うための断面図である。
【0023】
本実施形態に係るダイカスト用装置1は、ランナー50内の溶湯を加圧する主加圧ロッド43を補助するための補助加圧ロッド63を含む第3加圧手段を備えている。本実施形態の第3加圧手段は、油圧シリンダ(不図示)、ピストンロッド(不図示)、ならびに補助加圧ロッド63を備えて構成されている。なお、補助加圧ロッド63は、本発明に係る第3加圧ロッドを構成する部材である。
【0024】
本実施形態において、図3で示す補助加圧ロッド63は、円筒軸状の部材であり、ランナー50内の溶湯を加圧することができるようになっている。また、本実施形態に係る補助加圧ロッド63は、ダイカスト金型10を構成する可動型30側の可動ダイス32に設置されている。そして、ランナー50内の溶湯を加圧する主加圧ロッド43と補助加圧ロッド63については、ランナー50内の溶湯を加圧したときに、互いに干渉しないように配置されている。
【0025】
ここで、本実施形態に係るダイカスト用装置1では、補助加圧ロッド63によって加圧されるランナー50の溶湯加圧位置には、補助加圧ロッド63の方向に膨出するボス形状50Cが形成されている。より具体的には、ボス形状50Cは、射出スリーブ23の軸線方向に略直交する方向に延びる第2ランナー50B内に形成されており、第2ランナー50Bの一部を形成する可動ダイス32に凹部を形成することで、当該凹部に流れ込んだ溶湯がボス形状50Cを形成することとなる。そして、補助加圧ロッド63は、第2ランナー50Bに形成されたボス形状50Cの箇所から溶湯を加圧することで、主加圧ロッド43による溶湯への加圧力を補助する補助加圧力を溶湯に対して加えることができるようになっている。このように、補助加圧ロッド63による溶湯の加圧箇所にボス形状50Cを設けることで、第2ランナー50B内に存在する溶湯への加圧効果をより高めることができる。
【0026】
さらに、図4に示される本実施形態に係るダイカスト用装置1の状態は、補助加圧ロッド63が溶湯に対する加圧動作を開始する直前の状態が示されている。すなわち、本実施形態に係るダイカスト用装置1では、主加圧ロッド43がランナー50内の溶湯の加圧を開始して、主加圧ロッド43の先端部が第2ランナー50Bの下方の入口を塞ぐタイミングで、補助加圧ロッド63の加圧動作を開始する。
【0027】
また、本実施形態に係るダイカスト用装置1では、ランナー50内の溶湯を加圧する主加圧ロッド43の加圧ストロークが、主加圧ロッド43の軸径の略1.5倍の距離となり、ランナー50内の溶湯を加圧する補助加圧ロッド63の加圧ストロークが、主加圧ロッド43の距離の略半分の距離となるように動作制御が実行される。すなわち、補助加圧ロッド63が存在しない従来のダイカスト用装置では、ダイカスト品の品質を維持するためには、ランナー50内の溶湯を加圧する主加圧ロッド43の加圧ストロークが、主加圧ロッド43の軸径の略3.0倍の距離が必要であった。しかし、このように主加圧ロッド43の加圧ストロークが長い距離の場合には、ダイカスト品から主加圧ロッド43が抜けなくなるという不具合が生じる場合が存在していた。そこで、本実施形態のように、主加圧ロッド43の加圧力を補助する補助加圧ロッド63を設置することで、主加圧ロッド43の加圧ストロークを短くすることができ、ダイカスト品から主加圧ロッド43が抜けなくなるという不具合の発生を防止することが可能となった。また、主加圧ロッド43の加圧ストロークを短くしたとしても、補助加圧ロッド63による加圧が加わることで、ダイカスト品を形成する溶湯に対する加圧量のボリュームは従来技術の場合と同様に確保することができるので、本実施形態に係るダイカスト用装置1によれば、ダイカスト品の品質を維持しながらも、生産性を阻害する不具合発生を確実に防止することが可能となっている。
【0028】
なお、図4を用いて説明した主加圧ロッド43と補助加圧ロッド63による2系統での動作制御は、単一の制御手段では実現が困難であるため、本実施形態に係るダイカスト用装置1において、第2加圧手段と第3加圧手段は、それぞれが個別の制御手段により動作制御される構成が採用されている。すなわち、本実施形態では、第2加圧手段の主加圧ロッド43がランナー50内の溶湯に対する加圧動作を開始した後に、第3加圧手段の補助加圧ロッド63がランナー50内の溶湯に対する加圧動作を遅れて開始するように、動作制御が実行されている。この様な動作制御を2系統の制御手段で実行させることで、制御の容易化と制御手段の簡略化を図ることが可能となる。
【0029】
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施形態に記載の範囲には限定されない。上記実施形態には、多様な変更又は改良を加えることが可能である。
【0030】
例えば、上述した実施形態では、補助加圧ロッド63による溶湯の加圧箇所にボス形状50Cを設ける場合の形態例を示したが、ボス形状50Cについては省略することができる。そこで、上述した実施形態のボス形状50Cを省略した場合の形態例を、図5に示す。ここで、図5は、本発明が取り得る多様な変形形態の一例を示す図であり、図中の分図(a)が変形形態に係るダイカスト用装置の断面図であり、分図(b)が分図(a)におけるB-B線断面を示す横断面図である。
【0031】
図5(a)で示す変形形態例の場合、ダイカスト用装置2が有する第2ランナー50Bについては、B-B線の下方が円筒形をしたランナー形状となっており、B-B線の上方が台形をしたランナー形状となっている。そして、ボス形状50Cを省略したランナー形状の場合には、符号Cで示す円筒形をしたランナー形状の長さが約10mm以上あることが好ましい。この円筒形ランナーの長さ条件は、シール効果を得るために必要な条件となっている。また、それ以外の条件については、図3および図4で示した条件を適用することが好ましい。すなわち、本発明のダイカスト装置については、ボス形状50Cの有無に関わらず、補助加圧ロッド63である第3加圧ロッドを設けることで、従来技術に比べてダイカスト品の品質を維持しながらも、生産性を阻害する不具合発生を確実に防止することが可能なダイカスト用装置を実現することが可能となっている。
【0032】
その様な変更又は改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。
【符号の説明】
【0033】
1,2 ダイカスト用装置、10 ダイカスト金型、20 固定型、21 固定ホルダー、22 固定ダイス、23 射出スリーブ(スリーブ)、24 プランジャロッド(第1加圧手段、第1加圧ロッド)、25 プランジャチップ(第1加圧手段)、30 可動型、31 可動ホルダー、32 可動ダイス、33 分流子、34 貫通孔、34A 上側開口、40 油圧シリンダ(第2加圧手段)、41 ピストンロッド(第2加圧手段)、42 カップリング、43 主加圧ロッド(第2加圧手段、第2加圧ロッド)、43A 先端部、50 ランナー、50A 第1ランナー、50B 第2ランナー(ランナー)、50C ボス形状、51 対応形状部、51A 面、52 ゲート、53 キャビティ、63 補助加圧ロッド(第3加圧手段、第3加圧ロッド)。
図1
図2
図3
図4
図5