IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 東芝エネルギーシステムズ株式会社の特許一覧 ▶ 株式会社JERAの特許一覧

<>
  • 特開-電力制御装置 図1
  • 特開-電力制御装置 図2A
  • 特開-電力制御装置 図2B
  • 特開-電力制御装置 図3
  • 特開-電力制御装置 図4
  • 特開-電力制御装置 図5
  • 特開-電力制御装置 図6A
  • 特開-電力制御装置 図6B
  • 特開-電力制御装置 図6C
  • 特開-電力制御装置 図7
  • 特開-電力制御装置 図8
  • 特開-電力制御装置 図9
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022171080
(43)【公開日】2022-11-11
(54)【発明の名称】電力制御装置
(51)【国際特許分類】
   H02J 3/32 20060101AFI20221104BHJP
   H02J 3/38 20060101ALI20221104BHJP
   H02J 3/46 20060101ALI20221104BHJP
   H02J 7/00 20060101ALI20221104BHJP
【FI】
H02J3/32
H02J3/38 110
H02J3/46
H02J7/00 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021077475
(22)【出願日】2021-04-30
(71)【出願人】
【識別番号】317015294
【氏名又は名称】東芝エネルギーシステムズ株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】515177088
【氏名又は名称】株式会社JERA
(74)【代理人】
【識別番号】110001092
【氏名又は名称】弁理士法人サクラ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】松崎 篤
(72)【発明者】
【氏名】古澤 康充
(72)【発明者】
【氏名】松田 孝宏
(72)【発明者】
【氏名】栢沼 伸至
(72)【発明者】
【氏名】若林 明弘
(72)【発明者】
【氏名】小口 治男
(72)【発明者】
【氏名】小林 武則
(72)【発明者】
【氏名】加瀬 高弘
(72)【発明者】
【氏名】岩渕 一徳
(72)【発明者】
【氏名】久保田 雅之
(72)【発明者】
【氏名】清水 佳子
【テーマコード(参考)】
5G066
5G503
【Fターム(参考)】
5G066HA15
5G066HB02
5G066HB09
5G066JA01
5G066JB03
5G503AA01
5G503AA07
5G503BA01
5G503BB01
5G503CA08
5G503DA07
5G503EA05
(57)【要約】
【課題】効率的な電力供給を容易に実現可能な電力制御装置を提供する。
【解決手段】実施形態の電力制御装置は、発電システムが電力系統へ電力を出力するためのトータル設定値を算出するトータル設定値算出部を含む。トータル設定値算出部は、電力系統の電力需要量と発電手段の発電出力量と蓄電手段の充電電力量と蓄電手段の蓄電出力量とに応じて、トータル設定値を算出する。トータル設定値が発電手段に入力されることによって、発電手段の動作が制御される。トータル設定値と発電出力量との差分値が蓄電設定値として蓄電手段に入力されることによって、蓄電手段の動作が制御される。
【選択図】図2A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電力を発電するように構成された発電手段と、前記発電手段で発電された電力を充電または放電するように構成された蓄電手段とを備える発電システムから電力系統へ出力する電力を制御する電力制御装置であって、
前記発電システムが前記電力系統へ電力を出力するためのトータル設定値を算出するトータル設定値算出部
を含み、
前記トータル設定値算出部は、前記電力系統の電力需要量と前記発電手段の発電出力量と前記蓄電手段の充電電力量と前記蓄電手段の蓄電出力量とに応じて、前記トータル設定値を算出し、
前記トータル設定値が前記発電手段に入力されることによって、前記発電手段の動作が制御され、
前記トータル設定値と前記発電出力量との差分値が蓄電設定値として前記蓄電手段に入力されることによって、前記蓄電手段の動作が制御されるように構成されている、
電力制御装置。
【請求項2】
前記トータル設定値算出部は、
前記発電システムが前記電力系統へ電力量を増加させて電力を出力するときの変化率である増加側トータル出力変化率、および、前記発電システムが前記電力系統へ電力量を減少させて電力を出力するときの変化率である減少側トータル出力変化率を計算するトータル出力変化率計算部と、
前記電力需要量、前記増加側トータル出力変化率、および、前記減少側トータル出力変化率に基づいて、前記トータル設定値を出力する変化率制限器と
を有し、
前記トータル出力変化率計算部は、前記電力需要量、前記発電出力量、前記蓄電出力量、前記充電電力量、前記発電手段が電力量を増加させて電力を出力するときの変化率である増加側発電出力変化率、前記発電手段が電力量を減少させて電力を出力するときの変化率である減少側発電出力変化率、前記蓄電手段が電力を出力するときの電力量の上限値である充電電力量上限値、および、前記蓄電手段が電力を出力するときの電力量の下限値である充電電力量下限値に基づいて、前記増加側トータル出力変化率および前記減少側トータル出力変化率を算出する、
請求項1に記載の電力制御装置。
【請求項3】
電力を発電するように構成された発電手段と、前記発電手段で発電された電力を充電または放電するように構成された蓄電手段とを備える発電システムから電力系統へ出力する電力を制御する電力制御装置であって、
前記蓄電手段の充電率が充電率目標値になるように前記蓄電手段が電力を充電または放電するための追加充放電指令値を計算する追加充放電指令値計算部
を含み、
前記追加充放電指令値計算部は、前記充電率目標値、前記蓄電手段の充電電力量、および、前記電力系統の電力需要量に基づいて、前記追加充放電指令値を算出し、
前記追加充放電指令値と前記電力需要量との加算値が発電設定値として前記発電手段に入力されることによって、前記発電手段の動作が制御され、
前記電力需要量と前記発電手段の発電出力量との差分値が、蓄電設定値として前記蓄電手段に入力されることによって、前記蓄電手段の動作が制御されるように構成されている、
電力制御装置。
【請求項4】
前記追加充放電指令値計算部は、
PI補正を実行することによって前記追加充放電指令値を算出するPI補正器
を含み、
前記PI補正器は、前記充電率目標値、前記充電電力量から算出された充電率、前記発電手段の発電出力量の上限値である発電出力上限値と前記電力需要量との差分値、および、前記発電手段の発電出力量の下限値である発電出力下限値と前記電力需要量との差分値が入力されるように構成されている、
請求項3に記載の電力制御装置。
【請求項5】
電力を発電するように構成された発電手段と、前記発電手段で発電された電力を充電または放電するように構成された蓄電手段とを備える発電システムから電力系統へ出力する電力を制御する電力制御装置であって、
前記発電システムが前記電力系統へ電力を出力するためのトータル設定値を算出するトータル設定値算出部と、
前記蓄電手段の充電率が充電率目標値になるように前記蓄電手段が電力を充電または放電するための追加充放電指令値を計算する追加充放電指令値計算部と
を含み、
前記トータル設定値算出部は、前記電力系統の電力需要量と前記発電手段の発電出力量と前記蓄電手段の充電電力量と前記蓄電手段の蓄電出力量とに応じて、前記トータル設定値を算出し、
前記追加充放電指令値計算部は、前記充電率目標値、前記充電電力量、および、前記トータル設定値に基づいて、前記追加充放電指令値を算出し、
前記追加充放電指令値と前記トータル設定値との加算値が発電設定値として前記発電手段に入力されることによって、前記発電手段の動作が制御され、
前記トータル設定値と前記発電出力量との差分値が蓄電設定値として前記蓄電手段に入力されることによって、前記蓄電手段の動作が制御されるように構成されている、
電力制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、電力制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
発電手段と蓄電手段とを備える発電システムの電力を制御する電力制御装置が提案されている。ここでは、発電手段および蓄電手段から出力する電力が電力系統の電力需要量に追従するように、蓄電手段の出力を制御することが提案されている(たとえば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許6517618号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記技術では、蓄電手段のみを制御するため、効率的に電力の供給を行うことが困難な場合がある。
【0005】
したがって、本発明が解決しようとする課題は、効率的な電力供給を容易に実現可能な電力制御装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
実施形態の電力制御装置は、電力を発電するように構成された発電手段と、発電手段で発電された電力を充電または放電するように構成された蓄電手段とを備える発電システムから電力系統へ出力する電力を制御するように構成されている。電力制御装置は、発電システムが電力系統へ電力を出力するためのトータル設定値を算出するトータル設定値算出部を含む。トータル設定値算出部は、電力系統の電力需要量と発電手段の発電出力量と蓄電手段の充電電力量と蓄電手段の蓄電出力量とに応じて、トータル設定値を算出する。トータル設定値が発電手段に入力されることによって、発電手段の動作が制御される。トータル設定値と発電出力量との差分値が蓄電設定値として蓄電手段に入力されることによって、蓄電手段の動作が制御される。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1図1は、第1実施形態に係る発電システム1を模式的に示す図である。
図2A図2Aは、第1実施形態に係る発電システム1において、電力制御装置50の要部を示す図である。
図2B図2Bは、第1実施形態に係る発電システム1の電力制御装置50において、トータル設定値算出部61の要部を示す図である。
図3図3は、関連技術において、電力需要量Dtと発電出力量Pcと蓄電出力量Pbとの関係の一例を示す図である。
図4図4は、第1実施形態において、トータル設定値算出部61が増加側トータル出力変化率Rtpの算出で用いる式(A2)を説明するための図である。
図5図5は、第1実施形態に係る発電システム1において、電力制御装置50が制御を行った場合の応用例を示す図である。
図6A図6Aは、第2実施形態に係る電力制御装置50の要部を示す図である。
図6B図6Bは、第2実施形態に係る電力制御装置50において、追加充放電指令値計算部71の要部を示す図である。
図6C図6Cは、第2実施形態に係る電力制御装置50の追加充放電指令値計算部71において、PI補正器710の要部を示す図である。
図7図7は、第2施形態において、電力制御装置50が制御を行った場合の応用例を示す図である。
図8図8は、第3実施形態に係る電力制御装置50の要部を示す図である。
図9図9は、第3施形態において、電力制御装置50が制御を行った場合の応用例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
<第1実施形態>
[A]全体構成
図1は、第1実施形態に係る発電システム1を模式的に示す図である。
【0009】
図1に示すように、発電システム1は、発電手段10と蓄電手段20と電力制御装置50とを備えている。
【0010】
[A-1]発電手段10
発電手段10は、たとえば、タービン(図示省略)と、発電機(図示省略)とを備えており、タービンによって発電機が駆動することで発電を行うように構成されている。
【0011】
[A-2]蓄電手段20
蓄電手段20は、たとえば、蓄電池(図示省略)を備えており、充電または放電を行うように構成されている。
【0012】
[A-3]電力制御装置50
電力制御装置50は、演算器(図示省略)とメモリ装置(図示省略)とを含み、メモリ装置が記憶しているプログラムを用いて演算器が演算処理を行うことによって、各部の制御を行うように構成されている。ここでは、電力制御装置50は、操作指令や検出データなどが入力信号として入力される。そして、電力制御装置50は、その入力された入力信号に基づいて演算処理を行い、制御信号を出力信号として各部に出力することで、各部の動作を制御する。
【0013】
詳細については後述するが、電力制御装置50は、発電システム1から電力系統40へ供給する電力(トータル出力量Pt)を制御するために設けられている。つまり、電力制御装置50は、発電手段10が電力(発電出力量Pc)を出力する発電動作、および、蓄電手段20が電力(蓄電出力量Pb)を出力する放電動作を制御することによって、電力系統40への電力(トータル出力量Pt)の供給動作を制御するように構成されている。また、電力制御装置50は、発電手段10が出力する電力を蓄電手段20が蓄える充電動作を制御するように構成されている。電力制御装置50は、発電システム1において発電手段10および蓄電手段20が協調して動作するように制御を行う。
【0014】
[B]電力制御装置50
図2Aは、第1実施形態に係る発電システム1において、電力制御装置50の要部を示す図である。
【0015】
電力制御装置50は、図2Aに示すように、トータル設定値算出部61と減算部62(減算器)とを有する。
【0016】
[B-1]トータル設定値算出部61
トータル設定値算出部61は、発電システム1が電力系統40へ電力を出力するためのトータル設定値Stを算出する。トータル設定値Stは、発電手段10が出力する電力と蓄電手段20が出力する電力とを合計した電力の設定値である。
【0017】
ここでは、トータル設定値算出部61は、図2Aに示すように、電力系統40の電力需要量Dtが入力信号として入力される。電力需要量Dtは、外部から入力されるデータである。また、発電手段10が実際に電力を出力した電力量である発電出力量Pcと、蓄電手段20が実際に電力を出力した電力量である蓄電出力量Pbと、蓄電手段20が充電している電力量である充電電力量Cbとがトータル設定値算出部61に入力信号として入力される。発電出力量Pc、蓄電出力量Pb、および、充電電力量Cbは、たとえば、センサの検出によって得た検出データである。
【0018】
そして、トータル設定値算出部61は、各入力信号(電力需要量Dt、発電出力量Pc、充電電力量Cb、蓄電出力量Pb)に応じて、トータル設定値Stを算出する。
【0019】
トータル設定値算出部61が算出したトータル設定値Stは、発電手段10に入力されることによって、発電手段10の動作が制御される。これにより、発電出力量Pcの電力が発電手段10から電力系統40へ出力される。
【0020】
[B-2]減算部62
また、トータル設定値算出部61が算出したトータル設定値Stは、減算部62に入力信号として入力される。これと共に、減算部62には、発電出力量Pcが入力信号として入力される。減算部62では、トータル設定値Stと発電出力量Pcとの間を減算する減算処理を実施する。減算処理は、トータル設定値Stから発電出力量Pcを差し引くことで実施される。そして、減算部62で求めた差分値が、蓄電設定値Sbとして、蓄電手段20に入力されることによって、蓄電手段20の動作が制御される。これにより、蓄電出力量Pbの電力が蓄電手段20から電力系統40へ出力される。
【0021】
[C]トータル設定値算出部61の詳細
図2Bは、第1実施形態に係る発電システム1の電力制御装置50において、トータル設定値算出部61の要部を示す図である。
【0022】
トータル設定値算出部61は、図2Bに示すように、トータル出力変化率計算部611と変化率制限器612とを有する。
【0023】
[C-1]トータル出力変化率計算部611
トータル出力変化率計算部611は、図2Bに示すように、増加側トータル出力変化率Rtpおよび減少側トータル出力変化率Rtmを計算するために設けられている。増加側トータル出力変化率Rtpは、発電システム1が電力系統40へ電力量を増加させて電力を出力するときの変化率である。減少側トータル出力変化率Rtmは、発電システム1が電力系統40へ電力量を減少させて電力を出力するときの変化率である。
【0024】
トータル出力変化率計算部611は、図2Bに示すように、電力需要量Dt、発電出力量Pc、蓄電出力量Pb、充電電力量Cb、増加側発電出力変化率Rcp、減少側発電出力変化率Rcm、充電電力量上限値Cbhl、および、充電電力量下限値Cbllが入力信号として入力される。
【0025】
増加側発電出力変化率Rcpは、発電手段10が電力量を増加させて電力を出力するときの変化率である。減少側発電出力変化率Rcmは、発電手段10が電力量を減少させて電力を出力するときの変化率である。充電電力量上限値Cbhlは、蓄電手段20が電力を出力するときの電力量の上限値である。充電電力量下限値Cbllは、蓄電手段20が電力を出力するときの電力量の下限値である。
【0026】
ここでは、増加側発電出力変化率Rcp、および、減少側発電出力変化率Rcmは、たとえば、予め設定された値である。同様に、充電電力量上限値Cbhl、および、充電電力量下限値Cbllは、たとえば、予め設定された値である。
【0027】
トータル出力変化率計算部611は、上記のように入力された入力信号に基づいて、増加側トータル出力変化率Rtpおよび減少側トータル出力変化率Rtmを算出し、変化率制限器612へ出力する。
【0028】
[C-1-1]増加側トータル出力変化率Rtpの算出方法
具体的には、トータル出力変化率計算部611において、増加側トータル出力変化率Rtpは、下記の式(A1)および式(A2)に基づいて算出される。
【0029】
【数1】
【0030】
【数2】
【0031】
[C-1-2]減少側トータル出力変化率Rtmの算出方法
トータル出力変化率計算部611において、減少側トータル出力変化率Rtmは、下記の式(B1)および式(B2)に基づいて算出される。
【0032】
【数3】
【0033】
【数4】
【0034】
なお、上記の式において、Rcp(t)、Rcm(t)、Dt(t)、Pc(t)、Pb(t)、および、Cb(t)のそれぞれは、トータル出力変化率計算部611に入力された時点tにおける、増加側発電出力変化率Rcp、減少側発電出力変化率Rcm、電力需要量Dt、発電出力量Pc、蓄電出力量Pb、および、充電電力量Cbのそれぞれの入力信号である。Rtp(t)およびRtm(t)のそれぞれは、上記の入力信号が入力された各時点tにおいて、トータル出力変化率計算部611が、逐次、算出して出力する、増加側トータル出力変化率Rtpおよび減少側トータル出力変化率Rtmである。
【0035】
[C-2]変化率制限器612
変化率制限器612は、電力需要量Dt、増加側トータル出力変化率Rtp、および、減少側トータル出力変化率Rtmに基づいて、トータル設定値Stを出力するために設けられている。
【0036】
具体的には、変化率制限器612では、電力需要量Dtが増加側に変化したときの変化率が増加側トータル出力変化率Rtpを超える場合には、トータル設定値Stの増加側変化率として増加側トータル出力変化率Rtpが採用される。電力需要量Dtが増加側に変化したときの変化率が増加側トータル出力変化率Rtp以下である場合には、トータル設定値Stの増加側変化率として、電力需要量Dtが増加側に変化したときの変化率が採用される。
【0037】
これに対して、電力需要量Dtが減少側に変化したときの変化率が減少側トータル出力変化率Rtmより小さくなる場合には、トータル設定値Stの減少側変化率として減少側トータル出力変化率Rtmが採用される。電力需要量Dtが減少側に変化したときの変化率が減少側トータル出力変化率Rtm以上である場合には、トータル設定値Stの減少側変化率として、電力需要量Dtが減少側に変化したときの変化率が採用される。
【0038】
なお、電力制御装置50の演算を示す図2Aおよび図2Bにおいて、左側から右側への矢印に従って行われる演算には、遅延は、ないものとする。また、右側から左側への矢印に従って行われる演算には、1回の遅延が含まれるものとする。従って、各図の演算において、代数ループは生じない。また、電力制御装置50内の演算は、1回の遅延による演算精度の低下は無視できる程度に十分に早い周期で実行されるものとする(以降の図も同様)。
【0039】
[D]式(A2)の導出について
以下より、トータル設定値算出部61が増加側トータル出力変化率Rtpの算出で用いる式(A2)の導出に関して説明する。
【0040】
式(A2)の導出を説明する前に、関連技術の一例において制御された様子について、図3を用いて説明する。
【0041】
図3は、関連技術において、電力需要量Dtと発電出力量Pcと蓄電出力量Pbとの関係の一例を示す図である。
【0042】
図3では、関連技術において、電力需要量Dtに応じて、発電手段10が発電出力量Pcで電力を電力系統40へ出力する共に、蓄電手段20が蓄電出力量Pbで電力を電力系統40へ出力したときの様子を示している。ここでは、発電出力量Pcと蓄電出力量Pbとの合計であるトータル出力量Ptを示している。また、蓄電手段20が充電している電力量である充電電力量Cbを併記している。
【0043】
図3に示すように、発電手段10は、電力需要量Dtの増加に応じて、一定の増加側発電出力変化率Rcpで発電出力量Pcが増加するように電力を電力系統40へ出力する。蓄電手段20は、電力需要量Dtの増加に応じて、一定の増加側蓄電出力変化率Rbpで蓄電出力量Pbが増加するように電力を電力系統40へ出力する。蓄電手段20は、電力需要量Dtと発電出力量Pcとの差分値に蓄電出力量Pbが到達するように、電力の出力を行う。つまり、発電手段10および蓄電手段20は、発電出力量Pcと蓄電出力量Pbとの合計であるトータル出力量Ptが電力需要量Dtに到達するように、電力系統40へ電力を出力する動作が制御される。
【0044】
しかしながら、図3に示すように、トータル出力量Ptが電力需要量Dtに到達した後であって、発電出力量Pcが電力需要量Dtに到達する前に、充電電力量Cbが減少してゼロになる場合がある。その結果、トータル出力量Ptは、電力需要量Dtに到達した後に、電力需要量Dtよりも少ない状態(「腰折れ現象」)になる場合がある。
【0045】
トータル出力量Ptは、滑らかに増加または減少することが望ましい。
【0046】
このため、本実施形態のトータル設定値算出部61では、トータル出力量Ptが電力需要量Dtに到達した後に電力需要量Dtよりも少ない状態になることを避けるように、式(A2)を用いて増加側蓄電出力変化率Rbpを算出した後に、式(A1)を用いて増加側トータル出力変化率Rtpを算出する。
【0047】
図4は、第1実施形態において、トータル設定値算出部61が増加側トータル出力変化率Rtpの算出で用いる式(A2)を説明するための図である。
【0048】
トータル出力量Ptが電力需要量Dtに到達した後に電力需要量Dtよりも少ない状態になることを避けるためには、発電出力量Pcが電力需要量Dtに到達するよりも前に、充電電力量Cbが減少してゼロにならずに、トータル出力量Ptが電力需要量Dtを保持することが必要になる。
【0049】
このため、図4に示すように、下記の式(A21)を満たす線ADの傾きを算出する。
【0050】
【数5】
【0051】
線BEは、発電手段10の増加側発電出力変化率Rcpによって決定される。このため、以下の各式に示すように、蓄電手段20の増加側蓄電出力変化率Rbpを求める。
【0052】
【数6】
【0053】
【数7】
【0054】
【数8】
【0055】
【数9】
【0056】
【数10】
【0057】
【数11】
【0058】
(式A26)と(式A27)を(式A21)に代入し、更に、(式A24)と(式A5)を代入すると下記式が導かれる。
【0059】
【数12】
【0060】
上記式を展開して増加側蓄電出力変化率Rbpについて整理すると下記式が導かれる。
【0061】
【数13】
【0062】
そして、(式A29)に(式A22)と(式A23)とを代入することで、下記式が導かれる。
【0063】
【数14】
【0064】
上記の式(A2a)は、時点0における増加側蓄電出力変化率Rbpを算出するために用いられる。増加側蓄電出力変化率Rbpは、各時点tにおいて、逐次、算出される。このため、増加側蓄電出力変化率Rbpを算出するための一般式として、上記(式A2)が導かれる。
【0065】
具体的な説明は省略するが、減少側蓄電出力変化率Rbmを算出するための上記(式B2)についても同様に導くことができる。
【0066】
[E]応用例
図5は、第1実施形態に係る発電システム1において、電力制御装置50が制御を行った場合の応用例を示す図である。
【0067】
図5では、発電手段10の発電出力上限値CCHLが100MWである場合において、電力需要量Dtが50[MW]から90[MW]に上昇する場合について例示している。図5において、横軸は時間を示し、t1,t2,t3のそれぞれは、時点を示している。
【0068】
この例では、時点t1から時点t3の間においては、発電手段10の増加側発電出力変化率Rcpは、一定である。発電手段10は、たとえば、時点t1から時点t3までの間の5分間に、50[MW]から90[MW]に電力量を増加させているため、増加側発電出力変化率Rcpは、0.1333[MW/s]である。さらに、蓄電手段20の増加側蓄電出力変化率Rbpは、時点t1から時点t3までの間において、たとえば、40[MW/s]であって、変化が可能である。なお、充電率SOC(図5)と充電電力量Cb(図4)は、比例関係にある。
【0069】
図5に示すように、本実施形態では、発電出力量Pcが電力需要量Dtに到達するよりも前に、充電率SOCが減少してゼロにならずに、トータル出力量Ptが電力需要量Dtを保持するように、電力制御装置50が制御を行う。
【0070】
具体的には、時点t1から時点t2の間においては、電力需要量Dtの増加に伴って、発電手段10は、一定の増加側発電出力変化率Rcpで発電出力量Pcが増加するように電力を電力系統40へ出力する。これと共に、蓄電手段20は、電力需要量Dtの増加に応じて、一定の増加側蓄電出力変化率Rbpで蓄電出力量Pbが増加するように電力を電力系統40へ出力する。これにより、発電出力量Pcと蓄電出力量Pbとの合計であるトータル出力量Ptは、時点t2において、要求された電力需要量Dtである90MWに到達する。
【0071】
時点t2から時点t3の間においても、発電手段10は、一定の増加側発電出力変化率Rcpで発電出力量Pcが増加するように電力を電力系統40へ出力する。このとき、蓄電手段20は、一定の減少側蓄電出力変化率Rbmで蓄電出力量Pbが減少するように電力を電力系統40へ出力する。これにより、トータル出力量Ptは、時点t2から時点t3の間においても、要求された電力需要量Dtである90MWを保持される。
【0072】
そして、時点t3以降においては、発電手段10は、電力需要量Dtである90MWの発電出力量Pcで電力を出力する。蓄電手段20は、時点t3以降、充電率SOCがゼロになるため、蓄電出力量Pbがゼロの状態になる。
【0073】
このように、本実施形態では、蓄電手段20の蓄電出力量Pbは、発電出力量Pcが電力需要量Dtに到達するよりも前に、充電率SOCが減少してゼロにならない値で推移する。
【0074】
[F]まとめ
以上のように、本実施形態の電力制御装置50は、発電システム1が電力系統40へ電力を出力するためのトータル設定値Stを算出するトータル設定値算出部61を含む。トータル設定値算出部61は、電力系統40の電力需要量Dtと発電手段10の発電出力量Pcと蓄電手段20の充電電力量Cbと蓄電手段20の蓄電出力量Pbとに応じて、トータル設定値Stを算出する。発電手段10は、トータル設定値算出部61で算出されたトータル設定値Stが入力されることによって、動作が制御される。蓄電手段20は、トータル設定値Stと発電出力量Pcとの差分値が蓄電設定値Sbとして入力されることによって、動作が制御される。つまり、本実施形態では、電力系統40の電力需要量Dtに応じた電力を供給するために、蓄電手段20以外に発電手段10についても制御を行う。また、本実施形態では、外乱やプロセスの非線形性によって生じる誤差が、フィードバック制御によって減少すると共に、高速な応答が実現される。したがって、本実施形態においては、効率的な電力供給を容易に実現可能である。
【0075】
特に、本実施形態では、トータル設定値Stは、蓄電手段20の充電電力量Cbを考慮して算出される。これにより、トータル設定値Stは、発電出力量Pcが電力需要量Dtに増加して到達する前に、蓄電手段20の充電電力量Cbがゼロにならないように設定される。ここでは、発電出力量Pcが電力需要量Dtよりも小さい状態から電力需要量Dtへ増加して到達した時点で、蓄電手段20の充電電力量Cbがゼロになる。したがって、本実施形態では、トータル出力量Ptが電力需要量Dtに増加して到達した後であって、発電出力量Pcが電力需要量Dtに増加して到達する前に、トータル出力量Ptが電力需要量Dtよりも少ない状態(図3参照;「腰折れ現象」)になることを防止可能である。
【0076】
[G]変形例
上記実施形態では、発電出力量Pcが電力需要量Dtよりも小さい状態から電力需要量Dtへ増加して到達した時点で、蓄電手段20の充電電力量Cbがゼロになるようにトータル設定値Stが算出される場合に関して、主に説明している。発電出力量Pcが電力需要量Dtよりも多い状態から電力需要量Dtへ減少させる場合には、発電出力量Pcのうち電力需要量Dtを超える量の余剰の電力を蓄電手段20に充電させたときに充電電力量Cbが上限値を超えないように、トータル設定値Stが算出される。たとえば、発電出力量Pcが電力需要量Dtよりも多い状態から減少して電力需要量Dtに到達した時点で、充電電力量Cbが上限値になるように、トータル設定値Stが算出される。
【0077】
なお、蓄電手段20の応答が速い場合、蓄電出力量Pbをトータル設定値算出部61へ入力する代わりに、蓄電設定値Sbをトータル設定値算出部61へ入力してもよい。蓄電出力量Pbでなく蓄電設定値Sbを用いる場合、蓄電設定値Sbは、電力制御装置50自身で求めた値であるため、外部から信号を入力する必要がなくなる。その結果、信号を入力するためのハードウェアを省略することができる。例えば、発電装置型の応答が5%/分のように分単位であり、蓄電池の応答が1秒よりも速い場合には、速度差が100倍違うので、蓄電出力量Pbを使うか蓄電設定値Sbを使うかの差は無視可能である。速度差が100倍であることが許容できるか、10倍であることが許容できるかは、ケースごとに異なる。
【0078】
<第2実施形態>
[A]電力制御装置50
図6Aは、第2実施形態に係る電力制御装置50の要部を示す図である。
【0079】
図6Aに示すように、本実施形態の電力制御装置50は、第1実施形態の場合と異なり、トータル設定値算出部61(図2A参照)でなく、追加充放電指令値計算部71を含む。この点、および、これに関連する点を除き、本実施形態は、上記した実施形態の場合と同様である。このため、重複する部分に関しては、適宜、説明を省略する。
【0080】
[A-1]追加充放電指令値計算部71
本実施形態の電力制御装置50において、追加充放電指令値計算部71は、蓄電手段20の充電率SOCが充電率目標値SOCrになるように蓄電手段20が電力を充電または放電するための追加充放電指令値Saを計算する。ここでは、追加充放電指令値計算部71は、充電率目標値SOCr、蓄電手段20の充電電力量Cb、および、電力系統40の電力需要量Dtに基づいて、追加充放電指令値Saを、逐次、算出して出力する。
【0081】
[A-2]加算部72
本実施形態の電力制御装置50において、加算部72(加算器)は、追加充放電指令値Saと電力需要量Dtとが入力され、両者を加算処理することで得た加算値を発電手段10へ出力する。発電手段10は、追加充放電指令値Saと電力需要量Dtとの加算値が発電設定値Scとして入力されることによって、動作が制御される。これにより、発電出力量Pcの電力が発電手段10から電力系統40へ出力される。
【0082】
[A-3]減算部73
本実施形態の電力制御装置50において、減算部73は、電力需要量Dtと発電手段10が出力した発電出力量Pcとが入力され、両者を減算処理することで得た減算値を蓄電手段20へ出力する。減算処理は、電力需要量Dtから発電出力量Pcを差し引くことで実施される。蓄電手段20は、電力需要量Dtと発電手段10が出力した発電出力量Pcとの差分値が、蓄電設定値Sbとして入力されることによって、動作が制御される。これにより、蓄電出力量Pbの電力が蓄電手段20から電力系統40へ出力される。
【0083】
[B]追加充放電指令値計算部71
図6Bは、第2実施形態に係る電力制御装置50において、追加充放電指令値計算部71の要部を示す図である。
【0084】
追加充放電指令値計算部71は、フィードバック制御を行うPI補正器710を含む。
【0085】
追加充放電指令値計算部71において、PI補正器710は、PI補正(PI制御)を実行することによって追加充放電指令値Saを補正して出力するために設けられている。
【0086】
追加充放電指令値計算部71において、PI補正器710には、充電率目標値SOCrが入力される。また、除算部720(除算器)が蓄電手段20の充電電力量Cbについて除算処理することで得た充電率SOCが、PI補正器710に入力される。
【0087】
さらに、発電手段10の発電出力量Pcの上限値である発電出力上限値CCHLと電力需要量Dtとの差分値HLが、減算部730からPI補正器710に入力される。これと共に、発電手段10の発電出力量Pcの下限値である発電出力下限値CCLLと電力需要量Dtとの差分値LLが、減算部740からPI補正器710に入力される。
【0088】
PI補正器710は、上記の入力信号に応じて、追加充放電指令値Saの算出を実行する。
【0089】
[C]PI補正器710の詳細
図6Cは、第2実施形態に係る電力制御装置50の追加充放電指令値計算部71において、PI補正器710の要部を示す図である。
【0090】
PI補正器710は、減算部711、比例ゲイン部712、積分ゲイン部712a、加算部712b、積分部712c、加算部713、減算部713a、トラッキングゲイン部713b、高値選択部714、および、低値選択部715を有する。
【0091】
PI補正器710において、減算部711は、充電率目標値SOCrから充電電力量Cbを差分した値を出力する。
【0092】
比例ゲイン部712は、減算部711が出力した値に、比例ゲインKpを積算した値を出力する。
【0093】
積分ゲイン部712aは、比例ゲイン部712が出力した値に、積分ゲインKiを積算した値を出力する。
【0094】
加算部712bは、積分ゲイン部712aが出力した値とトラッキングゲイン部713bが出力した値とを加算した値を出力する。
【0095】
積分部712c(積分器)は、加算部712bが出力した値を積分した値を出力する。
【0096】
加算部713は、比例ゲイン部712が出力した値と積分部712cから出力された値とを加算した値を出力する。
【0097】
減算部713aは、低値選択部715が出力した値から、加算部713が出力した値を減算した値を出力する。
【0098】
トラッキングゲイン部713bは、減算部713aから出力された値に、トラッキングゲインKtを積算した値を加算部712bへ出力する。
【0099】
高値選択部714は、加算部713から出力された値と、差分値HL(図6B参照)とのうち高い値を出力する。
【0100】
低値選択部715は、高値選択部714から出力された値と、差分値LL(図6B参照)とのうち低い値を追加充放電指令値Saとして出力する。
【0101】
[D]応用例
図7は、第2施形態において、電力制御装置50が制御を行った場合の応用例を示す図である。
図7では、発電手段10の発電出力上限値CCHLが100[MW]である場合において、電力需要量Dtが50[MW]から90[MW]に上昇する場合について例示している。図7において、横軸は時間を示しており、t1~t7のそれぞれは、時点(時刻)を示している。
【0102】
図7に示すように、時点t1から時点t2の間においては、電力需要量Dtの増加に伴って、発電出力量Pcが一定の割合で増加するように発電手段10が電力を電力系統40へ出力する。これと共に、蓄電出力量Pbが一定の割合で増加するように、蓄電手段20が電力を電力系統40へ出力する。蓄電出力量Pbは、電力需要量Dtと発電出力量Pcとの差分値に到達するように制御される。これにより、発電出力量Pcと蓄電出力量Pbとの合計であるトータル出力量Ptが、増加後の電力需要量Dtである90[MW]に到達する。
【0103】
時点t1から時点t2の間において蓄電出力量Pbが増加するに伴って、蓄電手段20においては、充電率SOCが充電率目標値SOCrである50%から減少する。これに伴い、充電率SOCが充電率目標値SOCrに戻るように、追加充放電指令値Saが増加する。たとえば、追加充放電指令値Saは、ゼロから10[MW]へ増加する。その結果、電力需要量Dtと追加充放電指令値Saとが加算された値が発電設定値Scとして求められ、発電手段10に出力される(図6A参照)。ここでは、発電手段10の発電出力上限値CCHLである100[MW]が発電設定値Scとして発電手段10に出力される。
【0104】
このため、時点t1から時点t2までの間と同様に、時点t2から時点t5までの間においても、発電出力量Pcが一定の割合で増加するように、発電手段10が電力を電力系統40へ出力する。その結果、発電出力量Pcは、時点t4に電力需要量Dt(90[MW])へ到達した後に、時点t5に発電出力上限値CCHL(100[MW])へ到達する。
【0105】
時点t2を経過した後、蓄電出力量Pbは、増加後の電力需要量Dtである90[MW]にトータル出力量Ptが維持されるように、一定の割合で減少する。しかし、本例では、充電率SOCが時点t3でゼロになり、時点t3から時点t4までの間、ゼロの状態にある。このため、時点t3から時点t4までの間、トータル出力量Ptは、発電出力量Pcと一致し、増加後の電力需要量Dtである90[MW]よりも低下した状態になる。
【0106】
時点t4から時点t5までの間は、上記したように、発電出力量Pcは、電力需要量Dt(90[MW])よりも多い発電出力上限値CCHL(100[MW])へ到達するように増加する。そして、発電出力量Pcは、時点t5から時点t6までの間、発電出力上限値CCHL(100[MW])を保持される。発電出力量Pcのうち電力需要量Dt(90[MW])よりも多い量の電力は、蓄電手段20において充電される。
【0107】
その結果、蓄電出力量Pbは、時点t4から時点t5までの間、ゼロよりも小さい所定値まで低下し、時点t5から時点t6までの間、その所定値で保持される。そして、充電率SOCは、ゼロから上昇し、充電率目標値SOCrへ近づく。
【0108】
充電率SOCが充電率目標値SOCrへ近づくに伴って、時点t6から追加充放電指令値Saの低下が開始され、追加充放電指令値Saが時点t7でゼロになる。このため、時点t6から時点t7へ向かうに伴って、発電出力量Pcは、発電出力上限値CCHL(100[MW])から電力需要量Dt(90[MW])へ低下する。そして、時点t7において、充電率SOCが充電率目標値SOCrである50%に戻る。
【0109】
[E]まとめ
以上のように、本実施形態の電力制御装置50は、蓄電手段20の充電率SOCが充電率目標値SOCrになるように蓄電手段20が電力を充電または放電するための追加充放電指令値Saを計算する追加充放電指令値計算部71を含む。追加充放電指令値計算部71は、充電率目標値SOCr、蓄電手段20の充電電力量Cb、および、電力系統40の電力需要量Dtに基づいて、追加充放電指令値Saを算出する。発電手段10は、追加充放電指令値Saと電力需要量Dtとの加算値が発電設定値Scとして発電手段10に入力されることによって動作が制御される。蓄電手段20は、電力需要量Dtと発電手段10の発電出力量Pcとの差分値が、蓄電設定値Sbとして入力されることによって動作が制御される。
【0110】
本実施形態では、蓄電手段20の充電電力量Cbを考慮して追加充放電指令値Saを算出し、追加充放電指令値Sa応じて発電手段10の発電出力量Pcが調整される。このため、本実施形態では、蓄電手段20の充電率SOCを容易かつ効率的に充電率目標値SOCrに戻すことができる。
【0111】
特に、本実施形態では、追加充放電指令値計算部71は、PI補正器710を含み、PI補正器710がPI補正を実行することによって追加充放電指令値Saを算出する。その結果、本実施形態では、蓄電手段20の充電率SOCを充電率目標値SOCrにすることを迅速かつ的確に実行可能である。
【0112】
なお、蓄電手段20の充電率SOCが充電率目標値SOCrよりも高い状態になった場合には、以下のように処理を実行する。電力需要量Dtの減少に伴って、発電出力量Pcが一定の割合で減少するように発電手段10が電力を電力系統40へ出力する。これと共に、発電出力量Pcの余剰分を吸収するように、蓄電手段20が余剰電力を充電する。蓄電手段20が充電するに伴って、充電率SOCが充電率目標値SOCrである50%から増加する。これに伴い、充電率SOCが充電率目標値SOCrに戻るように、追加充放電指令値Saが減少する。追加充放電指令値Saの減少に伴い、発電出力量Pcは電力需要量Dtよりもさらに減少する。これと共に、蓄電手段20が電力を電力系統40へ出力する。これにより蓄電手段20の充電率SOCは減少し、充電率目標値SOCrへ近づく
【0113】
<第3実施形態>
[A]電力制御装置50
図8は、第3実施形態に係る電力制御装置50の要部を示す図である。
【0114】
図8に示すように、本実施形態の電力制御装置50は、第1実施形態の場合と同様に、トータル設定値算出部61(図2A参照)を含むと共に、第2実施形態の場合と同様に、追加充放電指令値計算部71(図6A参照)を含む。この点、および、これに関連する点を除き、本実施形態は、上記した実施形態の場合と同様である。このため、重複する部分に関しては、適宜、説明を省略する。
【0115】
トータル設定値算出部61は、第1実施形態の場合と同様に、電力系統40の電力需要量Dtと発電手段10の発電出力量Pcと蓄電手段20の充電電力量Cbと蓄電手段20の蓄電出力量Pbとに応じて、トータル設定値Stを算出する。
【0116】
追加充放電指令値計算部71は、本実施形態では、充電率目標値SOCr、充電電力量Cb、および、トータル設定値Stに基づいて、追加充放電指令値Saを算出する。
【0117】
そして、本実施形態では、追加充放電指令値Saとトータル設定値Stとが加算部72において加算され、その加算値が発電設定値Scとして発電手段10に入力されることによって、発電手段10の動作が制御される。
【0118】
また、本実施形態では、トータル設定値Stから発電出力量Pcを減算する減算処理が減算部73において実施され、その減算処理で得た差分値が蓄電設定値Sbとして蓄電手段20に入力されることによって、蓄電手段20の動作が制御される。
【0119】
[B]応用例
図9は、第3施形態において、電力制御装置50が制御を行った場合の応用例を示す図である。
【0120】
図9では、図7の場合と同様に、発電手段10の発電出力上限値CCHLが100[MW]である場合において、電力需要量Dtが50[MW]から90[MW]に上昇する場合について例示している。図9において、横軸は時間を示しており、t1~t7のそれぞれは、時点(時刻)を示している。
【0121】
第2実施形態の場合には、図7に示したように、充電率SOCは、時点t2と時点t4との間の時点t3において、ゼロになり、時点t3から時点t4までの間、ゼロの状態に継続されている。このため、時点t3から時点t4までの間、トータル出力量Ptは、発電出力量Pcと一致し、増加後の電力需要量Dtである90[MW]よりも低下した状態になる。つまり、トータル出力量Ptが電力需要量Dtに到達した後であって、発電出力量Pcが電力需要量Dtに到達する前に、トータル出力量Ptが電力需要量Dtよりも少ない状態(「腰折れ現象」)になっている。
【0122】
しかしながら、本実施形態では、第2実施形態の場合と異なり、第1実施形態と同様に、トータル設定値算出部61を含む。第1実施形態において説明したように、トータル設定値算出部61において、トータル設定値Stは、蓄電手段20の充電電力量Cbを考慮して算出される。ここでは、トータル設定値Stは、発電出力量Pcが電力需要量Dtに増加して到達する前に、蓄電手段20の充電電力量Cbがゼロに減少しないように設定される。
【0123】
具体的には、図9に示すように、時点t1から時点t2の間においては、蓄電出力量Pbは、第2実施形態の場合よりも低い増加側蓄電出力変化率Rbpでゼロから増加する。これにより、発電出力量Pcと蓄電出力量Pbとの合計であるトータル出力量Ptが、増加後の電力需要量Dtである90[MW]に到達する。時点t2を経過した後、蓄電出力量Pbは、増加後の電力需要量Dtである90[MW]にトータル出力量Ptが維持されるように、一定の割合で減少する。
【0124】
充電率SOCは、図9に示すように、時点t1から時点t4までの間、減少して、時点t4でゼロになる。蓄電出力量Pbは、トータル出力量Ptが電力需要量Dtに増加して一致した時点t2から時点t4までの間、ゼロ以上である。
【0125】
その結果、本実施形態では、図9に示すように、トータル出力量Ptが電力需要量Dtに増加した到達した後であって、発電出力量Pcが電力需要量Dtに増加して到達する前に、トータル出力量Ptが電力需要量Dtよりも少ない状態(「腰折れ現象」)になることを防止可能である。
【0126】
また、本実施形態では、第2実施形態の場合と同様に、追加充放電指令値計算部71(図6A参照)を含むため、容易かつ効率的に、蓄電手段20の充電率SOCを充電率目標値SOCrにすることができる。
【0127】
[C]まとめ
以上のように、本実施形態の電力制御装置50は、第1実施形態の場合と同様に、トータル設定値算出部61(図2A参照)を含むと共に、第2実施形態の場合と同様に、追加充放電指令値計算部71(図6A参照)を含む。このため、本実施形態では、第1実施形態と同様な効果と共に、第2実施形態と同様な効果を奏することができる。
【0128】
<その他>
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0129】
1:発電システム,10:発電手段,20:蓄電手段,40:電力系統,50:電力制御装置,61:トータル設定値算出部,62:減算部,71:追加充放電指令値計算部,72:加算部,73:減算部,611:トータル出力変化率計算部,612:変化率制限器,710:補正器,711:減算部,712:比例ゲイン部,712a:積分ゲイン部,712b:加算部,712c:積分部,713:加算部,713a:減算部,713b:トラッキングゲイン部,714:高値選択部,715:低値選択部,720:除算部,730:減算部,740:減算部,Cb:充電電力量,CCHL:発電出力上限値,CCLL:発電出力下限値,Cbhl:充電電力量上限値,Cbll:充電電力量下限値,Dt:電力需要量,HL:差分値,Ki:積分ゲイン,Kp:比例ゲイン,Kt:トラッキングゲイン,LL:差分値,Pb:蓄電出力量,Pc:発電出力量,Pt:トータル出力量,Rbm:減少側蓄電出力変化率,Rbp:増加側蓄電出力変化率,Rcm:減少側発電出力変化率,Rcp:増加側発電出力変化率,Rtm:減少側トータル出力変化率,Rtp:増加側トータル出力変化率,Sa:追加充放電指令値,Sb:蓄電設定値,Sc:発電設定値,SOC:充電率,SOCr:充電率目標値,St:トータル設定値。
図1
図2A
図2B
図3
図4
図5
図6A
図6B
図6C
図7
図8
図9