(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022171101
(43)【公開日】2022-11-11
(54)【発明の名称】制御装置
(51)【国際特許分類】
B60R 16/02 20060101AFI20221104BHJP
【FI】
B60R16/02 610J
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021077520
(22)【出願日】2021-04-30
(71)【出願人】
【識別番号】000237592
【氏名又は名称】株式会社デンソーテン
(74)【代理人】
【識別番号】110001933
【氏名又は名称】弁理士法人 佐野特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】阪井 祐也
(72)【発明者】
【氏名】徳井 伸全
(72)【発明者】
【氏名】松▲崎▼ 貴大
(57)【要約】
【課題】制御装置のケース内部に配置される基板を適切に保護することができる技術を提供する。
【解決手段】車両に搭載される制御装置は、前記車両の衝突時における制御を行う制御回路が設けられる基板と、前記基板を収容するケースと、前記ケースの側面から延伸し、前記車両に締結部材で固定されるブラケットと、を備える。前記ブラケットは、前記ケースからの当該ブラケットの延伸方向と交差する交差方向に延びる溝部と、前記溝部の一部を塞ぐ突起部と、を有する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に搭載される制御装置であって、
前記車両の衝突時における制御を行う制御回路が設けられる基板と、
前記基板を収容するケースと、
前記ケースの側面から延伸し、前記車両に締結部材で固定されるブラケットと、
を備え、
前記ブラケットは、
前記ケースからの当該ブラケットの延伸方向と交差する交差方向に延びる溝部と、
前記溝部の一部を塞ぐ突起部と、
を有する、制御装置。
【請求項2】
前記溝部は、前記ブラケットの前記交差方向の一端から他端まで延び、
前記突起部は、前記溝部の前記交差方向の両端のうちの少なくとも一方の端の近傍に配置される、請求項1に記載の制御装置。
【請求項3】
前記突起部は、前記溝部の前記交差方向の端よりも前記交差方向の内方に配置され、
前記溝部の深さは、前記突起部よりも前記交差方向の内方に比べて、前記交差方向の外方の方が深い、請求項2に記載の制御装置。
【請求項4】
前記突起部は、前記溝部の底から前記溝部の入口方向に突出するように設けられており、
前記突起部の突端は、前記溝部の入口部分と同じ高さであるか、前記入口部分よりも低い高さである、請求項1から3のいずれか1項に記載の制御装置。
【請求項5】
前記ケースは、
前記基板を保持するケース本体部と、
前記ケース本体部の側面において前記ケース本体部から前記車両の取り付け面方向に延びる脚部と、
を有し、
前記ブラケットは、前記脚部から延伸する、請求項1から4のいずれか1項に記載の制御装置。
【請求項6】
前記ケースの前記延伸方向の一方側に設けられる前記ブラケットと、他方側に設けられる前記ブラケットとを備え、
前記脚部は、前記ブラケットよりも前記ケース本体部側に、前記脚部の前記延伸方向の幅よりも肉厚が薄い薄肉部を有する、請求項5に記載の制御装置。
【請求項7】
前記基板には、加速度センサが設けられる、請求項1から6のいずれか1項に記載の制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両に搭載される制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両のエアバックといった、車両衝突時の安全装置を制御する制御装置が知られている(例えば特許文献1参照)。このような制御装置においては、金属製の筐体で内部の回路基板が覆われており、回路基板は衝撃等により破損しないように保護されている。
【0003】
制御装置は、回路基板を収容するケース(上記筐体)と、ケースの側面から延伸し、車両に締結部材で固定されるブラケットと、を備える。車両の衝突等によりケースに大きな力が加わった場合にブラケットとケースとが破断して分離するようにしている。これにより、車両の衝突時等においてケース内の回路基板に大きな荷重が加わることを抑制して、回路基板の破損を防止することができる。回路基板の破損が防止されることにより、衝突時においてエアバックを適切に作動させたり、事後にエアバックの作動記録の回収を行ったりすることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
車両衝突時等の安全装置を制御する筐体においては、筐体の剛性が高すぎると、車両の衝突時等において、ケースとブラケットとの分離を適切に行うことができず、回路基板に大きな荷重が加わることが懸念される。一方で、筐体の剛性が不足すると、例えば筐体が共振する周波数が低下し、共振による筐体の揺れが生じ易くなることが懸念される。
【0006】
本発明は、上記の点に鑑み、制御装置のケース内部に配置される基板を適切に保護することができる技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の例示的な制御装置は、車両に搭載される制御装置であって、前記車両の衝突時における制御を行う制御回路が設けられる基板と、前記基板を収容するケースと、前記ケースの側面から延伸し、前記車両に締結部材で固定されるブラケットと、を備える。前記ブラケットは、前記ケースからの当該ブラケットの延伸方向と交差する交差方向に延びる溝部と、前記溝部の一部を塞ぐ突起部と、を有する。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、制御装置のケース内部に配置される基板を適切に保護することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図2】
図1に示す制御装置から一部の部品を取り除いた図
【
図4】
図3に示すIV-IV位置における断面の一部を示す図
【
図5】
図3に示すV-V位置における断面の一部を示す図
【
図6】ブラケットと、その周辺の構造とを示す概略斜視図
【
図9】
図8に示すIX-IX位置における断面を示す図
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の例示的な実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。実施形態に係る制御装置1は、車両(不図示)に搭載される。図面においては、適宜、3次元直交座標系としてXYZ座標系を示す。X方向は、車両の進行方向と平行な方向であり、+X側が前側、-X側が後側である。Y方向は、車両の進行方向と直交し、運転席に座る運転者から見て左右方向に該当する。+Y側が右側、-Y側が左側である。Z方向は、X方向およびY方向に直交する方向であり、上下方向に該当する。+Z側が上側、-Z側が下側である。ただし、これらの方向は単に説明のために用いられる名称であって、実際の位置関係及び方向を限定する意図はない。
【0011】
<1.制御装置の概要>
図1は、本発明の実施形態に係る制御装置1の構成を示す概略斜視図である。制御装置1は、車両の衝突時の安全装置を制御する制御装置である。本実施形態では、安全装置はエアバックである。すなわち、制御装置1は、詳細には、車両のエアバック(不図示)を制御する制御装置である。制御装置1は、いわゆるエアバックECU(Electronic Control Unit)である。制御装置1は、例えば車両の前方に配置されるセンサを用いて車両の衝突を検出し、運転席用のエアバックや助手席用のエアバックを作動させる。制御装置1は、例えば車両の車室内前方中央部に配置される。制御装置1は、例えば車両のセンターコンソールの下に配置される。
【0012】
なお、本実施形態では、制御装置1が制御する安全装置がエアバックである構成とした。ただし、安全装置は、エアバック以外であってもよく、例えば、シートベルトプリテンショナー、衝突回避のための制動や操舵等の制御装置、事故時等の情報記録装置、歩行者保護の安全装置等であってもよい。
【0013】
図2は、
図1に示す制御装置1から一部の部品を取り除いた図である。
図1および
図2に示すように、制御装置1は、基板10と、ケース11と、ブラケット12とを備える。
【0014】
基板10は、車両の衝突時における制御を行う制御回路が設けられる基板である。基板10には、車両のエアバックを制御する制御回路が設けられる。基板10には、エアバックを制御するための電子部品が搭載されている。電子部品には、例えばマイコン等が含まれる。基板10は、例えばガラスエポキシ基板等のプリント基板である。本実施形態では、基板10は、上方からの平面視において矩形板状である。基板10の上面後方には、コネクタ101が配置される。コネクタ101は、例えば、外部機器からの信号の入力部、外部機器への信号の出力部、および、電源コネクタとして機能する。外部機器には、エアバックや、車両の前方に配置されるセンサ等が含まれる。
【0015】
本実施形態では、基板10には、車両の衝突状態等を検出するために、加速度センサといった車両に生じた衝撃や振動を検出するセンサ103(
図2参照)が設けられている。
図2に示すように、加速度センサ103は、例えば、基板10の外縁寄りに配置される。例えば、詳細は後述するケース11の剛性不足により共振周波数が低下すると、加速度センサ103の信号周波数帯(衝突時等の検出したい状態のときに波形が現れる信号の周波数帯)に共振周波数が近づいてしまい、検出信号の精度低下が生じる。すなわち、共振周波数が低下すると、加速度センサ103によって正確な衝突判定ができなくなる可能性がある。本実施形態の制御装置1においては、後述のように共振周波数の低下を抑制する構造が採用されている。
【0016】
ケース11は、基板10を収容する。本実施形態では、ケース11は金属製である。本実施形態では、ケース11は、上ケース111と下ケース112とにより構成される。例えば、上ケース111は、アルミニウムダイカスト等の金属ダイカスト製である。また、例えば、下ケース112は、鉄系の板金材料で構成される。上ケース111と下ケース112とは、本実施形態のように異なる材料で構成されてもよいが、同じ材料で構成されてもよい。なお、
図2は、
図1に示す制御装置1から上ケース111が除外された図である。
図2に示すように、下ケース112は、上方からの平面視において矩形状の板状部材であり、その上面に基板10が載せられる。
【0017】
上ケース111は、下方に開口を有する箱形状である。本実施形態では、上ケース111は、後方に後方開口111aを有する。上ケース111は、基板10が載せられた下ケース112に対して、上方から被せられる。上ケース111と下ケース112とは、上下方向に延びる螺子13(
図4参照)により締結される。基板10は、上ケース111と下ケース112との上下方向間に形成される空間に収容される。基板10は、上ケース111と下ケース112とを締結する螺子13を通す基板貫通孔102を有する。基板貫通孔102に螺子13を通した状態で、上ケース111と下ケース112とを螺子13で締結することにより、基板10はケース11内で固定される。なお、ケース11に基板10が収容された状態において、上ケース111の後方開口111aを介してコネクタ101がケース11外に露出する。
【0018】
本実施形態では、好ましい形態として、ケース11は、ケース本体部11aと、脚部11bとを有する。ケース本体部11aは、基板10を保持する。脚部11bは、ケース本体部11aの側面においてケース本体部11aから下方に延びる。別の言い方をすると、脚部11bは、ケース本体部11aの側面においてケース本体部11aから車両の取り付け面方向に延びる。下方に延びる。詳細には、ケース本体部11aは、上ケース111の一部と、下ケース112とで構成される。ケース本体部11aは、主に基板10の収容空間を形成する部分である。脚部11bは、ケース本体部11aの左右の側面に設けられる。本実施形態においては、詳細を後述するブラケット12の数に合わせて、脚部11bの数は3つである。2つの脚部11bが右側面に設けられ、1つの脚部11bが左側面に設けられる。なお、本実施形態では、脚部11bは、上ケース111の一部により構成される。
【0019】
ブラケット12は、ケース11の側面から延伸する。詳細には、ブラケット12は、ケース11の左右の側面の下部からケース11の外方に向けて延伸する。本実施形態では、ブラケット12の延伸方向は、左右方向と平行な方向である。また、ブラケット12は、上ケース111と同一部材である。ブラケット12は、上ケース111の左右の側面の下部から左右方向の外方に向けて延伸する。
【0020】
より詳細には、ブラケット12は、脚部11bから延伸する。ブラケット12は、脚部11bの下端部から、ケース11の左右方向の外方に向けて延伸する。脚部11bからブラケット12が延伸する構成とすることにより、基板10が収容されるケース本体部11aの下面を、ブラケット12よりも高い位置を配置することができる。すなわち、基板10をブラケット12よりも高い位置に配置することができる。このために、例えばブラケット12が破断した場合において、当該破断により生じた破片が基板10の上に降りかかることを抑制することができる。
【0021】
ブラケット12は、車両に締結部材14で固定される。ブラケット12は、基板10を収容するケース11を車両に固定するために設けられる。本実施形態において、ブラケット12は、平板状であり、車両に配置される取付面に締結部材14を用いて固定される。締結部材14は、例えば、ナットと組み合わせて使用されるボルトや、螺子等である。ブラケット12の中央部には、締結部材14を通すために、上下方向に貫通するブラケット貫通孔121が設けられる。
【0022】
本実施形態では、ブラケット12は、第1ブラケット12aと、第2ブラケット12bと、第3ブラケット12cとを含む。第1ブラケット12aと第2ブラケット12bとは、ケース11の右側面から右方向に延伸する。第3ブラケット12cは、ケース11の左側面から左方向に延伸する。換言すると、制御装置1は、ケース11の左右方向(ブラケット12がケース11の側面から延伸する延伸方向)の一方側に設けられるブラケット12a、12bと、他方側に設けられるブラケット12cとを備える。
【0023】
詳細には、第1ブラケット12aは、右側面の前方に配置される脚部11bから右向きに延伸する。第2ブラケット12bは、右側面の後方に配置される脚部11bから右向きに延伸する。第3ブラケット12cは、左側面の前後方向の中央部よりも少し前方に配置される脚部11bから左向きに延伸する。第3ブラケット12cの前後方向の位置は、第1ブラケット12aよりも後方、且つ、第2ブラケット12bよりも前方である。
【0024】
本実施形態では、第1ブラケット12a、第2ブラケット12b、および、第3ブラケット12cの形状およびサイズは同じである。ただし、これら3つのブラケット12a~12cの形状およびサイズは、異なっても良い。なお、本実施形態では、3つのブラケット12a~12cの外形は、上下方向からの平面視において概ね矩形状である。詳細には、各ブラケット12a~12cにおいて、角部がR形状である。ただし、ブラケット12の形状は、本実施形態の形状から適宜変更されてよい。
【0025】
また、本実施形態では、ブラケット12の数を3つとしているが、ブラケット12の数は2つでも、4つ以上でもよい。例えば、ブラケット12の数が2つである場合、ケース11の右側面と左側面とに1つずつブラケット12を設ける構成としてよい。また、例えば、ブラケット12の数が4つである場合、ケース11の右側面と左側面とに2つずつブラケット12を設ける構成としてよい。また、ブラケット12を配置する前後方向の位置は、適宜変更されてよい。
【0026】
また、本実施形態では、制御装置1の向きを、ケース11の左右にブラケット12が配置される向きとしているが、これも例示にすぎない。例えば、制御装置1の向きを、ケース11の前後にブラケット12が配置される向きとしてもよい。
【0027】
<2.ブラケットの詳細構成>
車両の所定箇所にブラケット12を利用して固定された制御装置1は、車両の衝突時において、車両の変形で側面方向(本実施形態では左右方向)からの力を受けることがある。本実施形態の制御装置1は、当該側面方向からの力を受けて或る程度以上の力が加わった場合に、破断が生じてケース11とブラケット12とが分離される構成となっている。これにより、ケース11内の基板10に大きな荷重が加わることを抑制することができる。以下、ブラケット12に採用される上記破断を促す構造について詳細に説明する。
【0028】
図3は、本発明の実施形態に係る制御装置1の構成を示す概略平面図である。
図4は、
図3に示すIV-IV位置における断面の一部を示す図である。
図5は、
図3に示すV-V位置における断面の一部を示す図である。なお、本実施形態では、ブラケット12には、第1ブラケット12aと、第2ブラケット12bと、第3ブラケット12cとが含まれる。これら3つのブラケット12a~12cには、いずれも、上記破断を促す構造が設けられている。
図4および
図5は、第2ブラケット12bの場合を例示するが、第1ブラケット12aおよび第3ブラケット12cも同様の構造を有する。このために、上記破断を促す構造の説明にあたって、特に必要がある場合を除いて、第1ブラケット12a、第2ブラケット12b、および、第3ブラケット12cを特に区別することなく、単にブラケット12として説明する。
【0029】
図3から
図5に示すように、ブラケット12は、当該ブラケット12の根元部分の上面に配置される溝部122を有する。本実施形態において、ブラケット12の上面は、前後方向および左右方向に平行な方向に広がる平面である。ブラケット12の根元部分は、ケース11とブラケット12との境目を含むブラケット12の一部分である。
【0030】
溝部122は、ケース11からのブラケット12の延伸方向と交差する交差方向に延びる。本実施形態において、溝部122は下方に凹む。溝部122は、ブラケット12の前記交差方向の一端から他端まで延びる。詳細には、溝部122は、ブラケット12の上面から下方に凹んだ部分である。溝部122が設けられた部分は、ブラケット12の上下方向の厚みが薄くなる。本実施形態において、延伸方向は左右方向であり、延伸方向と交差する交差方向は前後方向である。すなわち、ブラケット12の上面に配置される溝部122は、前後方向に延びる。溝部122は、ブラケット12の前端から後端まで延びる。
【0031】
ブラケット12は、溝部122の一部を塞ぐ突起部123を有する。突起部123は、溝部122の内面から突出し、少なくとも一部が溝部122の内部に配置される。本実施形態では、突起部123は、溝部122の底面(下面)から上方に突出する。また、突起部123は、溝部122の左右方向に対向する2つの内側面を連結する。
【0032】
図6および
図7は、ブラケット12が有する突起部123の作用について説明するための図である。
図6は、ブラケット12(第2ブラケット12b)と、その周辺の構造とを示す概略斜視図である。
図7は、
図6の破線で囲んだ部分を拡大して示した図である。
図7には、解析ソフトを用いたシミュレーション結果が示されている。具体的には、
図7には、3つのブラケット12a~12cを用いて車両に固定された制御装置1のケース11の右側面から左側に向けて力を加えた場合における、応力分布のシミュレーション結果が示されている。
図7においては、ハッチングの色が濃い部分ほど応力が大きいことを示す。
【0033】
本願の発明者らは、溝部122内の一部に、溝部122の形状を変化させる突起部123を設けることで、その部分に応力が集中し易くなると考え、突起部123を設けた。
図7に示す、解析ソフトを用いたシミュレーションの結果では、突起部123、および、その周辺で応力が大きくなっている。すなわち、シミュレーションの結果により、溝部122内の一部に突起部123を設けることで、溝部122を設けた位置における破断を促進させることができることが確認された。
【0034】
以上からわかるように、本実施形態では、制御装置1のケース11に側面方向(左右方向)からの力が加わった場合に応力が集中し易いブラケット12の根元部分に、溝部122が設けられている。すなわち、ケース11に側面方向(左右方向)からの力が加わった場合にブラケット12の応力が集中し易い部分の肉厚が、薄く設けられている。このために、本実施形態では、ケース11とブラケット12とを分離する破断を生じ易くすることができる。そして、本実施形態では、溝部122内に応力の集中を促す突起部123が設けられているために、溝部122が設けられる位置での破断を促進させることができる。すなわち、車両の衝突によって制御装置1の側面方向からケース11に大きな力が加わった場合に、ケース11とブラケット12との、破断による分離を促進してケース11内の基板10に大きな荷重が加わることを抑制することができる。すなわち、ケース11内の基板10を適切に保護することができる。
【0035】
なお、本実施形態では、ケース11に脚部11bが設けられているために、基板10が設けられる高さ位置よりも低い高さ位置で、ブラケット12のケース11からの分離を行うことができる。このために、基板10が設けられる高さ位置においてケース11に亀裂が入る可能性が低く、破断に伴って生じる破片が基板10に接触する可能性を低く抑えることができる。すなわち、本実施形態では、破断によって生じる破片が原因となって基板10に損傷が発生する可能性を低く抑えることができる。
【0036】
本実施形態では、突起部123の縦方向の断面は、ほぼ半円状である(
図5参照)。ただし、突起部123の形状は、別の形状であってよい。例えば、突起部123の縦方向の断面は、上方に向けて先細りとなる形状であってもよい。また、前後方向に延びる溝部122内において、突起部123が前後方向に占める範囲が大きくなり過ぎると、逆に破断が促進され難くなる可能性がある。このために、溝部122内において突起部123の前後方向の長さ(幅)は、製造できる範囲で出来る限り小さくすることが好ましい。例えば、突起部123の前後方向の長さは、溝部122の前後方向の全長の1/8よりも小さいことが好ましい。
【0037】
突起部123は、溝部122の前後方向(ブラケット12のケース11からの延伸方向と交差する交差方向)の両端のうちの少なくとも一方の端の近傍に配置されることが好ましい。ブラケット12の溝部122が設けられる部分において、溝部122が延びる方向の端側の方が、応力が集中し易くなる傾向がある。このために、応力の集中を促す突起部123は、溝部122の端側に設けることが好ましい。このように構成することで、突起部123を設けて応力を集中させる効果を、より効率良く得ることができる。
【0038】
本実施形態では、より好ましい形態として、突起部123は、溝部122の前後方向の両端の近傍に配置されている。すなわち、突起部123の数は2つである。なお、突起部123の数は、1つでも、3つ以上であってもよい。ただし、突起部123の数は2つ以下であることが好ましい。
【0039】
本実施形態では、好ましい形態として、突起部123は、溝部122の前後方向(ブラケット12のケース11からの延伸方向と交差する交差方向)の端よりも前後方向の内方に配置される。ただし、突起部123は、溝部122の前後方向の端に配置されてもよい。詳細には、突起部123は、溝部122の前後方向の両端の近傍において、溝部122の前後方向の端よりも前後方向の内方に配置される。溝部122の前端の近傍において、突起部123は、溝部122の前端よりも後方の位置に配置される。溝部122の後端の近傍において、突起部123は、溝部122の後端よりも前方の位置に配置される。
【0040】
図5に示すように、ブラケット12の溝部122が設けられる部分における上下方向の厚みは、突起部123よりも前後方向の内方に比べて、前後方向の外方の方が薄い。別の言い方をすると、溝部122の深さは、突起部123よりも交差方向(前後方向)の内方に比べて、交差方向の外方の方が深い。詳細には、溝部122の前後方向の前端側において、突起部123よりも前端側(外方側)の方が突起部123よりも後端側(内方側)に比べて、ブラケット12の厚みが薄い。換言すると、溝部122の前後方向の前端側において、突起部123よりも前端側(外方側)の方が後端側(内方側)に比べて、溝部122の深さが深い。溝部122の前後方向の後端側において、突起部123よりも後端側(外方側)の方が突起部123よりも前端側(内方側)に比べて、ブラケット12の厚みが薄い。換言すると、溝部122の前後方向の後端側において、突起部123よりも後端側(外方側)の方が前端側(内方側)に比べて、溝部122の深さが深い。
【0041】
このように、ブラケット12の溝部122が設けられる部分の上下方向の厚みについて、前後方向の端で薄くなる構成とすると、ケース11に対して斜め方向(左右方向に対して傾いた方向)から力が加わった場合において、溝部122が設けられる位置で破断を促進し易くできる。なお、ブラケット12の溝部122が設けられる部分における上下方向の厚みは、突起部123を基準として、前後方向の内方と、前後方向の外方とで同じとする等、他の構成としてもよい。
【0042】
突起部123の上面の少なくとも一部は、溝部122の上端と同じ高さであるか、溝部122の上端よりも低いことが好ましい。本実施形態において、突起部123は、溝部122の底から溝部122の入口方向に突出するように設けられる。突起部123の突端は、溝部122の入口部分と同じ高さであるか、溝部122の入口部分よりも低い高さであることが好ましい。このように構成することにより、ブラケット12を車両の取り付け面(不図示)に取り付ける際に突起部123が邪魔となる可能性を低減することができる。また、突起部123の上面の少なくとも一部を溝部122の上端と同じ高さとすることによって、突起部123を設けたことによる凹凸の発生を抑制して、鋳造等の製造を行い易くすることができる。
【0043】
なお、溝部122の入口部分は、断面凹形状に設けられる溝部122が凹む方向と平行な方向において、溝部122の底面に対して反対側に位置する開口面が該当する。本実施形態において、「溝部122の入口部分」は、「溝部122の上端(上端開口面)」に該当する。また、「溝部122の底から溝部122の入口方向に突出する」とは、「上方に突出する」に該当する。また、「突起部123の突端」は、「突起部123の上端」に該当する。
【0044】
詳細には、本実施形態において、溝部122の上端(入口部分)は、ブラケット12の上面と同じ高さ位置である。また、本実施形態では、
図4に示すように、突起部123の上面は、大部分において、溝部122の上端と同じ高さである。ただし、突起部123は、ブラケット12の根元側の端(
図4に示す例では左端)において、溝部122の上端よりも高くなっている。
【0045】
<3.脚部の詳細構成>
本実施形態では、ケース11の右側に設けられるブラケット12a、12bと、左側に設けられるブラケット12cと、を備える。このような構成では、ケース11の右側方からの力が加わった場合、上述の溝部122および突起部123が設けられた効果により、右側のブラケット12a、12bについては、破断され易く、ケース11から分離され易い。一方、ケース11の右側方からの力が加わった場合、左側のブラケット12cは、右側のブラケット12a、12bに比べると、溝部122および突起部123が設けられる効果が小さい。すなわち、ケース11の右側方からの力が加わった場合、左側のブラケット12cは、右側のブラケット12a、12bに比べると、破断され難く、ケース11から分離され難い傾向がある。
【0046】
同様に、ケース11の左側方からの力が加わった場合、左側のブラケット12cについては、破断され易く、ケース11から分離され易い。一方、ケース11の左側方からの力が加わった場合、右側のブラケット12a、12bは、左側のブラケット12cに比べると、破断され難く、ケース11から分離され難い傾向がある。
【0047】
以上のような点を考慮して、本実施形態では、脚部11bの形状に工夫が施されている。これについて、
図8及び
図9を参照して説明する。
図8は、本発明の実施形態に係る制御装置1の構成を示す概略後面図である。
図9は、
図8に示すIX-IX位置における断面を示す図である。なお、本実施形態では、3つの脚部11bが設けられる。3つの脚部11bは、いずれも同様の構造を備える。すなわち、
図9は、第3ブラケット12cに繋がる脚部11bの場合を例示するが、第1ブラケット12aに繋がる脚部11b、および、第3ブラケット12cに繋がる脚部11bも同様の構造を有する。
【0048】
図8および
図9に示すように、脚部11bは、ブラケット12よりも上側に、脚部11bの左右方向(ブラケット12のケース11の側面からの延伸方向)の幅よりも肉厚が薄い薄肉部113を有する。別の言い方をすると、脚部11bは、ブラケット12よりもケース本体部11a側に、脚部11bの左右方向(ブラケット12のケース11の側面からの延伸方向)の幅よりも肉厚が薄い薄肉部113を有する。詳細には、脚部11bの左右方向の幅は、脚部11bの最右端と最左端との間の左右方向間距離(
図9の距離L)である。
【0049】
このように脚部11bに薄肉部113が形成されることにより、当該脚部11bが設けられる側と左右方向の反対側のケース側方に力が加わった場合において、当該脚部11bに破断を生じさせ易くすることができる。すなわち、ケース11とブラケット12との分離を生じさせ易くすることができ、ケース11の内部に収容される基板10に破損が生じる可能性を低減することができる。また、脚部11bは、ケース本体部11aに収容される基板10より低い位置に設けられるために、脚部11bが破断しても、当該破断によって生じた破片が基板10に接触する可能性を低く抑えることができる。すなわち、本実施形態では、脚部11bが破断しても、当該破断によって生じる破片が原因となって基板10に損傷が発生する可能性を低く抑えることができる。
【0050】
詳細には、薄肉部113は、第1薄肉部113aと第2薄肉部113bとを含む。第1薄肉部113aは、脚部11bの前後方向(ブラケット12の延伸方向と交差する交差方向)の両端部の、左右方向(ブラケット12の延伸方向)の内方の面に切欠き部114が設けられることにより構成される。脚部11bを基準として、ブラケット12が延伸する方向が外方であり、その反対方向が内方である。詳細には、第1ブラケット12a及び第2ブラケット12bと繋がる各脚部11bの左右方向の内方の面は、脚部11bの左面である。第3ブラケット12cと繋がる脚部11bの左右方向の内方の面は、脚部11bの右面である。
図9に示す例においては、脚部11bの前端および後端の右面が切り欠かれて第1薄肉部113aが形成されている。
【0051】
第2薄肉部113bは、脚部11bの前後方向(ブラケット12の延伸方向と交差する交差方向)の中央部の、左右方向(ブラケット12の延伸方向)の外方の面に凹部115が設けられることにより構成される。詳細には、第1ブラケット12a及び第2ブラケット12bと繋がる各脚部11bの左右方向の外方の面は、脚部11bの右面である。第3ブラケット12cと繋がる脚部11bの左右方向の外方の面は、脚部11bの左面である。
図9に示す例においては、脚部11bの前後方向の中央部の左面が右方に凹んで第2薄肉部113bが形成されている。
【0052】
本実施形態のように、脚部11bの前後方向の両端を切り欠いて第1薄肉部113aを設けることによって段差形状が形成される。当該段差形状を形成することによって、当該部分に応力を集中させ、破断を促すことができる。また、脚部11bの前後方向の中央部を凹ませて脚部11bの肉厚が薄い第2薄肉部113bを設けることで、当該部分の剛性を低くして破断が容易に起こり易くすることができる。
【0053】
なお、本実施形態の制御装置1においては、ケース11の車両への取り付け場所の変更、および、車両の車体構造の変更等により、従来よりも、ケース本体部11aと、ブラケット12の取付面との間隔(上下方向の間隔)が離れる構成となっている。すなわち、脚部11bが従来よりも長くなっている。このような構成では、破断が生じ易くなるように、脚部11bを単純に薄い板状とすれば、剛性低下に伴う共振周波数の低下が問題となる可能性がある。上述のように、共振周波数が低下すると、例えば加速度センサ103によって正確な衝突判定ができなくなる可能性がある。一方で、剛性の低下を抑制するために脚部11b付近の厚みを増やすと、破断が生じ難くなる可能性がある。
【0054】
この点、本実施形態では、単純に脚部11bの厚みを薄くしたり厚くしたりするのではなく、上述のように、脚部11bの適所に厚みの厚い部分と薄い部分とを設けている。このように構成することで、通常時においては剛性を確保して低い周波数での共振を生じ難くし、車両の衝突が発生した場合には、ケース11とブラケット12とを分離するための破断を生じ易くしている。
【0055】
<4.留意事項等>
本明細書中に開示されている種々の技術的特徴は、上記実施形態のほか、その技術的創作の主旨を逸脱しない範囲で種々の変更を加えることが可能である。すなわち、上記実施形態は、全ての点で例示であって、制限的なものではないと考えられるべきであり、本発明の技術的範囲は、上記実施形態の説明ではなく、特許請求の範囲によって示されるものであり、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内に属する全ての変更が含まれると理解されるべきである。また、本明細書中に示される複数の実施形態及び変形例は可能な範囲で適宜組み合わせて実施されてよい。
【符号の説明】
【0056】
1・・・制御装置
10・・・基板
11・・・ケース
11a・・・ケース本体部
11b・・・脚部
12・・・ブラケット
14・・・締結部材
103・・・加速度センサ
113・・・薄肉部
113a・・・第1薄肉部
113b・・・第2薄肉部
114・・・切欠き部
115・・・凹部
122・・・溝部
123・・・突起部