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特開2022-171118半導体装置およびバッテリ残量監視方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022171118
(43)【公開日】2022-11-11
(54)【発明の名称】半導体装置およびバッテリ残量監視方法
(51)【国際特許分類】
   G01R 31/3842 20190101AFI20221104BHJP
   G01R 31/389 20190101ALI20221104BHJP
   H01M 10/48 20060101ALI20221104BHJP
【FI】
G01R31/3842
G01R31/389
H01M10/48 P
H01M10/48 301
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021077544
(22)【出願日】2021-04-30
(71)【出願人】
【識別番号】302062931
【氏名又は名称】ルネサスエレクトロニクス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002066
【氏名又は名称】弁理士法人筒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】菅原 祐介
【テーマコード(参考)】
2G216
5H030
【Fターム(参考)】
2G216BA02
2G216BA03
2G216BA17
2G216BA45
2G216BA51
2G216BA59
2G216CB34
5H030AA10
5H030AS11
5H030FF22
5H030FF41
5H030FF42
5H030FF43
5H030FF44
5H030FF52
(57)【要約】
【課題】バッテリの温度が変化しても、バッテリの残量の検知における誤差を低減することが可能な半導体装置を提供する。
【解決手段】バッテリ状態を監視する半導体装置は、所定の時刻におけるバッテリの温度から、バッテリの放電終止時の温度を予測し、予測した放電終止時の温度を考慮したバッテリの電圧を出力する予測ユニット13_1と、予測ユニット13_1によって出力されたバッテリの電圧と、所定の時刻におけるバッテリの電流とに基づいて、バッテリの残量を検知する残量検知ユニット13_2とを備える。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
バッテリの状態を監視する半導体装置であって、
所定の時刻における前記バッテリの温度から、前記バッテリの放電終止時の温度を予測し、予測した前記放電終止時の温度を考慮した前記バッテリの電圧を出力する予測ユニットと、
前記予測ユニットによって出力された前記バッテリの電圧と、前記所定の時刻における前記バッテリの電流とに基づいて、前記バッテリの残量を検知する残量検知ユニットと、
を備える、半導体装置。
【請求項2】
請求項1に記載の半導体装置において、
前記予測ユニットは、前記所定の時刻における前記バッテリの電圧の電圧変化率を求め、前記電圧変化率に基づいて、前記バッテリの電圧が、前記放電終止時の放電終止電圧に到達するまでの放電時間を算出し、前記所定の時刻における温度の変化率と前記放電時間とに基づいて、前記放電終止時の温度を予測する、半導体装置。
【請求項3】
請求項2に記載の半導体装置において、
前記残量検知ユニットは、予測された前記放電終止時の温度と前記バッテリの温度とに基づいた温度変換により求められた温度に従った前記バッテリの内部抵抗情報を、前記予測ユニットに通知し、
前記予測ユニットは、前記バッテリの電圧と通知された前記内部抵抗情報と前記バッテリの電流とに基づいて、前記放電終止時の温度を考慮した前記バッテリの電圧を出力する、半導体装置。
【請求項4】
請求項3に記載の半導体装置において、
前記予測ユニットには、前記バッテリに装着された電池温度検出回路から、前記バッテリの温度が通知され、前記バッテリに結合された電流検知回路から、前記バッテリの電流が通知され、前記バッテリに結合された電圧測定回路から、前記バッテリの電圧が通知される、半導体装置。
【請求項5】
バッテリの状態を監視する半導体装置であって、
前記バッテリの放電終止時の温度を予測し、予測した前記放電終止時の温度を考慮した前記バッテリの温度を求める予測ユニットと、
前記予測ユニットによって求められた前記放電終止時の温度を考慮した前記バッテリの温度に応じた前記バッテリの内部抵抗情報を前記予測ユニットに通知する残量検知ユニットと、
を備え、
前記予測ユニットは、前記バッテリの電圧と、前記内部抵抗情報と、前記バッテリの電流とに基づいて、前記放電終止時の温度を考慮した前記バッテリの電圧を求め、前記残量検知ユニットに出力する、半導体装置。
【請求項6】
請求項5に記載の半導体装置において、
前記予測ユニットは、所定の時刻における前記バッテリの電圧の電圧変化率を求め、前記電圧変化率に基づいて、前記バッテリの電圧が、前記放電終止時における放電終止電圧に到達するまでの放電時間を求め、前記所定の時刻における前記バッテリの温度の変化率と前記放電時間とに基づいて、前記放電終止時の温度を予測する、半導体装置。
【請求項7】
請求項6に記載の半導体装置において、
前記予測ユニットには、前記バッテリに装着された電池温度検出回路から、前記バッテリの温度が通知され、前記バッテリに結合された電流検知回路から、前記バッテリの電流が通知され、前記バッテリに結合された電圧測定回路から、前記バッテリの電圧が通知される、半導体装置。
【請求項8】
請求項7に記載の半導体装置において、
前記予測ユニットは、前記バッテリの電流と前記内部抵抗情報との積を算出し、算出された積と前記バッテリの電圧とに基づいて、前記放電終止時の温度を考慮した前記バッテリの電圧を出力する、半導体装置。
【請求項9】
バッテリの電圧変化率から、前記バッテリの電圧が、前記バッテリの放電終止時の放電終止電圧に到達するまでの放電時間を算出する放電時間算出ステップと、
前記バッテリの温度の変化率と、前記放電時間算出ステップで算出された前記放電時間とに基づいて、前記バッテリの放電終止時の温度を算出する温度算出ステップと、
前記バッテリの温度と前記温度算出ステップで算出された前記放電終止時の温度とに基づいた温度変換により生成された温度に従った前記バッテリの内部抵抗情報と、前記バッテリの電圧と、前記バッテリの電流とに基づいて、前記放電終止時の温度を考慮した前記バッテリの電圧を算出する電圧算出ステップと、
を備える、バッテリ残量監視方法。
【請求項10】
請求項9に記載のバッテリ残量監視方法において、
前記電圧算出ステップは、前記バッテリの内部抵抗情報と前記バッテリの電流との積を算出し、前記バッテリの電圧から前記算出された積を減算するステップを備える、バッテリ残量監視方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置およびバッテリ残量監視方法に関し、例えば、リチウムイオン電池のようなバッテリ(二次電池)の残量を監視する半導体装置およびその半導体装置において実行されるバッテリ残量監視方法に関する。
【背景技術】
【0002】
バッテリの状態を監視する半導体装置は、例えば特許文献1に記載されている。特許文献1には、バッテリの電圧、電流および温度の測定結果に基づいて、バッテリを満充電状態から放電終止電圧まで放電させた場合に、バッテリから取り出し可能な容量を含む状態情報を生成することが可能な半導体装置が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2014-119265号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
リチウムイオン電池のようなバッテリは、一般的に、同一の電流レートで放電させた場合、バッテリの温度に依存して、取り出すことが可能な容量が変化する。図8は、バッテリの出力電圧(電圧)―容量(放電容量)―温度の特性を示す図である。図8には、放電条件として、一定の電流レート(0.2C)で放電させ、放電終止電圧を3.0V(図8(A))または3.4V(図8(B))とし、バッテリの温度を、25℃、10℃、0℃および-10℃と変化させた場合の特性が示されている。ここで、Cは、1時間で満充電状態から放電終止電圧まで放電させる電流を表している。また、放電終止電圧は、バッテリの蓄積エネルギーの取り出しの可否を決定するためのしきい値電圧を表している。バッテリの出力電圧が、放電終止電圧より低い範囲では、バッテリの蓄積エネルギーの取り出しが禁止される。なお、図8では、温度が25℃の場合が実線で示され、10℃の場合が破線で示され、0℃の場合が一点鎖線で示され、-10℃の場合が二点鎖線で示されている。さらに、図8において、FCCは、バッテリを所定の放電レートで満充電状態から放電終止電圧まで放電させた場合に、当該バッテリから取り出しが可能な容量(満充電容量)を示している。
【0005】
図8(A)および(B)に示すように、バッテリの温度が低下すると、取り出し可能な容量(FCC)が小さくなる。また、バッテリの温度の低下に応じて、バッテリの内部抵抗が大きくなり、同一の電流レートの場合、バッテリの出力電圧は低下する。これは、バッテリ内のリチウムイオンの移動が低温では動きにくくなることが原因であり、セルの内部抵抗が上昇し、電圧ドロップが増加することにより起こる。さらに、図8(A)と図8(B)の比較から分かるように、放電終止電圧を高くすると、温度による満充電容量の差が大きくなる。このように、バッテリの温度によって、取り出しが可能な満充電容量が変わるため、バッテリの残量を監視する場合、温度を考慮することが必要である。
【0006】
特許文献1に記載の技術では、現在(所定の時刻)のバッテリの温度、電圧および電流に基づいて、満充電容量を求めている。本発明者が、特許文献1の技術を検討したところ、現在のバッテリの温度と、バッテリの電圧が放電終止電圧に到達したとき(放電終止時)のバッテリの温度との間に差があると、満充電容量等に誤差が発生することを発見した。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本願において開示される実施の形態のうち代表的なものの概要を簡単に説明すれば下記の通りである。
【0008】
すなわち、実施の形態に係るバッテリ状態を監視する半導体装置は、所定の時刻におけるバッテリの温度から、バッテリの放電終止時の温度を予測し、予測した放電終止時の温度を考慮したバッテリの電圧を出力する予測ユニットと、予測ユニットによって出力されたバッテリの電圧と、その所定の時刻におけるバッテリの電流とに基づいて、バッテリの残量を検知する残量検知ユニットとを備える。
【0009】
その他の課題と新規な特徴は、本明細書の記述および添付図面から明らかになるであろう。
【発明の効果】
【0010】
一実施の形態によれば、バッテリの温度が変化しても、バッテリの残量等の検知における誤差を低減することが可能な半導体装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1図1は、実施の形態に係る電子装置の構成を示すブロック図である。
図2図2は、実施の形態に係るデータ処理回路で行われる処理を説明するための図である。
図3図3(A)から図3(C)は、実施の形態に係る予測ユニットの動作を示す図である。
図4図4は、実施の形態に係る電圧を算出するステップの詳細を示すフローチャート図である。
図5図5は、実施の形態に係る電圧を算出するステップの動作を説明するための図である。
図6図6(A)および図6(B)は、実施の形態に係る残放電時間を算出するステップを説明するための図である。
図7図7(A)および図7(B)は、実施の形態に係る放電終止時の温度を算出するステップを説明するための図である。
図8図8(A)および図8(B)は、バッテリの出力電圧―容量―温度の特性を示す図である。
図9図9は、本発明者が検討した内容を説明するための図である。
図10図10は、実施の形態に係る数式を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の各実施の形態について、図面を参照しつつ説明する。なお、開示はあくまでも一例にすぎず、当業者において、発明の主旨を保っての適宜変更について容易に想到し得るものについては、当然に本発明の範囲に含有されるものである。
【0013】
また、本明細書と各図において、既出の図に関して前述したものと同様の要素には、同一の符号を付して、詳細な説明を適宜省略することがある。
【0014】
各実施の形態の説明に先立ち、本発明者が検討し発見した内容を説明する。図9は、本発明者が検討した内容を説明するための図である。縦軸はバッテリの残量比率を示し、横軸は放電時間を示している。また、図9において、TMPは、バッテリの温度を示している。ここでは、条件として、一定の電流レート(0.2C)で放電を行い、温度を室温(25℃)から-10℃まで、一定の割合(スルーレート:1℃/1分)で低下させた場合が示されている。
【0015】
図9において、RSOC0は、実際に放電終止時までに取り出すことが可能な容量を満充電容量とした時の真値の残量比率の推移を示している。一定の電流(0.2C)で放電しているため、取り出せる容量は一定であり、時間の経過に伴う容量の減少分も同じになる。そのため、真値の残量比率RSOC0は、図9に示すように直線状となる。
【0016】
これに対して、特許文献1の技術では、現在の温度、電圧および電流によって、残量比率を算出している。すなわち、バッテリの温度が変化した場合、その時の温度変化に対応するように残量比率の算出が行われる。そのため、特許文献1に従うと、満充電容量は温度変化によって変化するため、残量比率は、RSOC1で示されるように曲線的になる。その結果、放電終止電圧に近づくほど、真値の残量比率RSOC0との差が大きくなり、大きな誤差が発生する。
【0017】
(実施の形態)
図1は、実施の形態に係る電子装置の構成を示すブロック図である。電子装置100は、電子装置100の機能を実現するための複数の部品と、電子装置100に取り付けられた電池パック1とを備えている。電池パック1から、複数の部品に対して電力給電(放電)が行われ、電子装置100が動作する。図1には、電池パック1から電力給電される部品の例として、プログラムに従って動作するプロセッサ(半導体装置としてのMCU:Micro Control Unit)20が描かれている。次に電池パック1の構成を説明する。
【0018】
<電池パックの構成>
電池パック1は、複数のリチウム電池BT1~BTnにより構成された組電池(以下、単にバッテリとも称する)3と、バッテリ3に実装(装着)された電池温度検知回路5と、バッテリ3とプロセッサ20の電源端子との間に接続された充放電FET4と、バッテリ3の電流を測定するための電流測定用抵抗6と、バッテリ3の状態を監視する電池管理IC(バッテリ管理用半導体装置)2とを備えている。
【0019】
図1では、バッテリ3は、複数のリチウム電池BT1~BTnによって構成されているが、これに限定されず、1つのリチウム電池によって構成してもよい。また、複数のリチウム電池BT1~BTnによって、バッテリ3を構成する場合、給電する電力に応じて、リチウム電池は、互いに並列に接続しても、互いに直列に接続しても、あるいはこれらの組み合わせであってもよい。
【0020】
充放電FET4は、電池管理IC2によって制御される電界効果トランジスタによって構成されている。プロセッサ20に電力を給電する場合、電池管理IC2は、充放電FET4をオン状態にする。これにより、バッテリ3の蓄積エネルギーが取り出され(放電)、プロセッサ20に対して電力給電が行われる。また、電池管理IC2が、バッテリ3の異常状態等を検知すると、電池管理IC2は、充放電FET4をオフ状態にし、プロセッサ20への電力給電を停止させる。
【0021】
また、バッテリ3を充電する際には、充放電FET4がオン状態にされ、充放電FET4を介して、バッテリ3に対して電力が給電され、バッテリ3に蓄積エネルギーが充電される。
【0022】
電流測定用抵抗6は、バッテリ3とプロセッサ20の電源端子との間に接続され、バッテリ3からプロセッサ20に供給されるバッテリ3の電流を電圧に変換する。電流測定用抵抗6によって変換された電圧は、電池管理IC2に供給される。
【0023】
電池温度検知回路5は、バッテリ3の表面に取り付けられた、例えばサーミスタを備え、バッテリ3の温度によって定まるサーミスタの抵抗値に従った温度情報を電池管理IC2に出力する。これにより、バッテリ3の温度が、温度情報として電池管理IC2に通知されることになる。
【0024】
次に、電池管理IC2を説明する。
【0025】
<<電池管理IC>>
電池管理IC2は、図1では示されていないが、バッテリ3から電力が給電され、給電された電力によって動作する。
【0026】
電池管理IC2は、IC温度検知回路8、選択回路7、充放電FET制御回路9、電圧測定回路10、電流測定回路11、電流検知回路12、データ処理回路13、記憶回路14および通信回路15を備えている。
【0027】
IC温度検知回路8は、バッテリ3の温度ではなく、電池管理IC2の温度を測定し、測定結果を、電池管理IC2の温度情報として選択回路7に供給する。
【0028】
選択回路7は、図示しないが、データ処理回路13からの制御信号によって制御され、バッテリ3から供給されている複数の電圧から、所定の電圧を選択し、電圧測定回路10に供給する。また、データ処理回路13からの制御信号に従って、選択回路7は、電池温度検知回路5から通知されているバッテリ3の温度情報と電池管理IC2の温度情報を、現在の温度情報としてデータ処理回路13に供給する。図1には、現在の温度情報として、バッテリ3に係る現在の温度情報が、符号TDPとして示されている。
【0029】
電圧測定回路10は、選択回路7から供給されたバッテリ3の電圧を測定し、現在の電圧情報VDPとして、データ処理回路13に供給する。
【0030】
電流検知回路12は、前記した電流測定用抵抗6によって電圧に変換されたバッテリ3の電流情報を検知し、電流測定回路11に供給する。電流測定回路11は、バッテリ3の電流情報を、データ処理回路13に、現在のバッテリ3の電流情報IDPとして供給する。
【0031】
データ処理回路13は、供給された電圧情報VDP、電流情報IDPおよび温度情報TDPに基づいて、バッテリ3の状態を監視し、監視の結果を通信回路15に供給する。通信回路15は、監視の結果をプロセッサ20に通知する。これにより、バッテリ3の状態が、プロセッサ20に通知されることになる。また、通信回路15は、プロセッサ20からの指示およびデータを、データ処理回路13に供給する。これにより、データ処理回路13は、プロセッサ20によって制御されることになる。
【0032】
また、データ処理回路13は、監視の結果を充放電FET制御回路9に供給する。充放電FET制御回路9は、監視の結果に従って、充放電FET4を制御する。
【0033】
特に制限されないが、データ処理回路13は、プログラムに従って処理を実行するプロセッサによって構成されている。記憶回路14には、データ処理回路13を構成するプロセッサが処理を実行する際に用いるデータ等が、予め格納されている。そして、プロセッサは、処理の実行の際に、記憶回路14内のデータにアクセスする。記憶回路14に格納されているデータとしては、特許文献1の図1に示されている記憶部(124)と同様に、バッテリ3の内部抵抗に関わるデータ等がある。
【0034】
ここでは、データ処理回路13がプロセッサにより構成されている例を説明するが、これに限定されるものではない。例えばデータ処理回路13は、論理回路等のハードウェアを組み合わせて構成してもよい。
【0035】
次に、データ処理回路13において実行される処理を、図面を用いて説明する。
【0036】
<データ処理回路における処理>
図2は、実施の形態に係るデータ処理回路で行われる処理を説明するための図である。データ処理回路13は、予測ユニット13_1と残量検知ユニット13_2とを備えている。
【0037】
予測ユニット13_1は、温度予測機能F1およびZ-1変換機能F2、F3を備えている。温度予測機能F1には、図1に示した電圧測定回路10、電流測定回路11および電池温度検知回路5から、現在の電圧情報VDP、現在の電流情報IDPおよび現在の温度情報TDPが供給される。また、温度予測機能F1には、Z-1変換機能F2およびF3からの情報が供給される。温度予測機能F1は、供給されたこれらの情報に基づいて、バッテリ3(図1)の放電終止時の温度を考慮した現在のバッテリ3の電圧、現在の電流およびバッテリ3の放電終止時の温度を考慮した現在の温度を生成する。以下の図では、バッテリ3の放電終止時の温度を考慮したものには、“(@放電終止時の温度)”が付加されている。
【0038】
-1変換機能F2およびF3は、供給されたものを1サンプリング期間遅らせて出力する。Z-1変換機能F2には、温度予測機能F1から出力された温度(@放電終止時の温度)が供給されているため、1サンプリング期間前に、温度予測機能F1から出力された温度(@放電終止時の温度)が、再び温度予測機能F1に供給されることになる。Z-1変換機能F3には、残量検知ユニット13_2から出力された内部抵抗R(@放電終止時の温度)が供給されている。内部抵抗Rは、後で説明するが、バッテリ3の内部抵抗を示している。そのため、1サンプリング期間前に、残量検知ユニット13_2から出力されたバッテリ3の内部抵抗(@放電終止時の温度)が、温度予測機能F1に供給されることになる。なお、内部抵抗(@放電終止時の温度)は、以下、単に内部抵抗情報とも称する。
【0039】
残量検知ユニット13_2は、特に制限されないが、実施の形態においては、特許文献1に記載された構成が採用されている。具体的に述べると、予測ユニット13_1によって生成された電圧(@放電終止時の温度)、現在の電流および温度(@放電終止時の温度)は、特許文献1の図1に示されている、電圧情報(DV)、電流情報(DI)および温度情報(DT)として、特許文献1の図1に示されているデータ処理制御部(125)に供給される。特許文献1で述べられているように、データ処理制御部(125)が、供給されたこれらの情報に基づいて、バッテリ3の状態を示す状態情報を出力する。図2では、バッテリ3の状態を示す状態情報として、満充電容量FCC(@放電終止時の温度)、残量RC(@放電終止時の温度)、残量比率RSOC(@放電終止時の温度)が、示されている。ここで、残量RCは、バッテリ3の残量を示す情報である。また、残量比率RSOCは、バッテリ3の充電状態を示す情報であり、RSOC=RC/FCCで表される残容量比率(相対充電率)である。
【0040】
残量検知ユニット13_2から出力されている内部抵抗R(@放電終止時の温度)は、特許文献1の図2に示されているR推定部(313)からの出力に相当する。バッテリ3の等価回路は、特許文献1の図3に示されているように表すことができる。すなわち、バッテリ3は、充放電していない状態(充電電流および放電電流が流れていないオープン状態)のときの開放電圧OCVと、内部抵抗Rと、分極抵抗(rp)とキャパシタ成分Cpの並列接続対の直列回路によって構成されていると見なすことができる。バッテリの内部抵抗Rは、バッテリ3の温度に依存して変化する。R推定部(313)は、その時の温度情報によって表される温度に対応した内部抵抗Rの値を出力する。したがって、残量検知ユニット13_2からは、放電終止時の温度を考慮した温度に対応する内部抵抗Rの値が出力され、Z-1変換機能F3を介して、温度予測機能F1に供給されることになる。
【0041】
<予測ユニット>
次に、予測ユニット13_1の動作を、図面を用いて説明する。図3は、実施の形態に係る予測ユニットの動作を示す図である。ここで、図3(A)は、予測ユニット13_1の全体動作を示すフローチャート図であり、図3(B)および(C)は、予測ユニット13_1による効果を説明する図である。図3(B)および(C)については、後で説明するので、ここでは省略する。
【0042】
ステップS0において、予測ユニット13_1および残量検知ユニット13_2(図2)が、動作を開始する。続いて、ステップS1からS4が繰り返して実行される。実施の形態においては、ステップS1からS4の一回の動作が、1サンプリング期間において実行されるものとして説明する。
【0043】
ステップS1においては、現在の電圧情報VDPによって表されるバッテリ3の電圧と、Z-1変換機能F3からの1サンプリング期間前の内部抵抗R(@放電終止時の温度)に基づいて、放電終止時の温度を考慮した現在のバッテリ3の電圧が算出される。ここで算出されたバッテリ3の電圧が、電圧(@放電終止時の温度)として、残量検知ユニット13_2に供給される。
【0044】
次に、ステップS2において、バッテリ3の電圧の変化から、バッテリ3の残量放電時間(残放電時間)の算出が行われる。ステップS3では、ステップS2で算出された残量放電時間と、現在の温度情報TDPと、Z-1変換機能F2からの1サンプリング期間前の温度(@放電終止時の温度)とに基づいて、バッテリ3の放電終止時の温度が算出される。
【0045】
予測ユニット13_1は、ステップS3で算出した放電終止時の温度に基づいて、現在の温度情報TDPの表される温度を変換し、放電終止時の温度を考慮した温度を生成し、温度(@放電終止時の温度)として、残量検知ユニット13_2に供給する。
【0046】
その後、ステップS4において、図2に示した残量検知ユニット13_2が、現在の電流と、電圧(@放電終止時の温度)と、温度(@放電終止時の温度)とによって、バッテリ3の状態(残量)を検知する処理を実施する。ステップS4の後は、ステップS1に戻り、ステップS1~S4が繰り返される。
【0047】
次に、前記したステップS1~S3を、図を用いて、より具体的に説明する。以下の説明を容易にするために、ここで、以下の説明で用いる用語を説明しておく。
【0048】
Qmaxは、満充電状態におけるバッテリ3の総容量を示し、バッテリ3を、内部抵抗Rによる電圧降下が無視できる程度の放電レートで、満充電状態から放電終止電圧まで放電させた場合に、バッテリ3から取り出し可能な容量値である。Quseは、バッテリ3の放電電流Iの積分値∫Idtである。SOCは、バッテリ3の充電状態を示す情報で、総容量Qmaxにおける残容量率SOC=(Qmax-Quse)/Qmax*100である。CCVは、バッテリ3の閉路電圧を示し、内部抵抗R等に電流が流れているときのバッテリの電圧である。また、図10は、実施の形態に係る数式を示す図である。
【0049】
<<ステップS1>>
図4は、実施の形態に係る電圧を算出するステップS1の詳細を示すフローチャート図である。また、図5は、実施の形態に係る電圧を算出するステップS1の動作を説明するための図である。
【0050】
ステップS1_Sで、ステップS1が開始する。次に、ステップS1_1において、バッテリ3の状態SOCが算出される。このときの算出の式(1)が、図10に示されている。図10の式(1)に示す関数SOC(OCV)は、特許文献1に述べられているように、開放電圧OCVに対する充電状態SOCを表す関数である。ステップS1_1では、バッテリ3が、放電を開始する前の初期の状態SOC0を算出する場合が例示されている。図5に示すように、初期の状態SOC0では、放電が行われていないため、バッテリ3の電流は0Aである。式(1)の入力は開放電圧OCVであり、式(1)の出力は、状態SOCである。
【0051】
ステップS1_2では、放電によるバッテリ3の状態SOCの変化分ΔSOCの算出が行われる。変化分ΔSOCは、図10に示された式(2)に基づいて算出される。式(2)の入力は、積分値∫Idtおよび総容量Qmaxであり、出力は状態SOCの変化分ΔSOCである。次にステップS1_3では、現在の状態SOCが算出される。このときの算出式は、図10において、式(3)として示されている。式(3)の入力は、初期の状態SOC0および変化分ΔSOCで、出力は、現在の状態SOCである。図5を参照して述べると、バッテリ3の放電電流Iが流れることにより、放電電流の積分値∫Idtに相当する分だけ蓄積容量(ドット表示領域)が減少し、状態が、SOC0からSOCに遷移することになる。このときのバッテリ3の開放電圧OCVは、初期の開放電圧から低下し、OCV(@現時点の温度)となる。なお、符号に付加されている(@現時点の温度)は、符号によって表されるものが、図1に示した電池温度検知回路5によって測定されたバッテリ3の現在の温度における値であることを表している。
【0052】
ステップS1_4において、このOCV(@現時点の温度)の値が、算出される。このときの算出式としては、図10に示した式(1)とは逆の関係にある式を用いる。また、このときの式の入力は、状態SOCで、出力は開放電圧OCV(@現時点の温度)である。
【0053】
ステップS1_5においては、ステップS1_4で求めた開放電圧OCV(@現時点の温度)に対応する閉路電圧CCV(@放電終止時の温度)の算出が行われる。このときの算出式は、図10に示した式(4)が用いられる。式(4)の入力は、OCV(@現時点の温度)、内部抵抗R(@放電終止時の温度)および放電電流Iであり、出力が閉路電圧CCV(@放電終止時の温度)である。
【0054】
ステップS1_5において、バッテリ3の内部抵抗Rとして、現時点の温度での値を用いると、ステップS1_5で求められる閉路電圧は、図5において、CCV(@現時点の温度)となる。バッテリ3の放電終止時の温度が考慮されていない内部抵抗を用いているため、閉路電圧CCVの値が高くなる。これにより、図9に示したように、取り出せる放電容量が大きく検知され、誤差が発生する。これに対して、前記したように、バッテリ3の内部抵抗Rとして、放電終止時の温度を考慮した値を用いることにより、誤差の低減を図ることが可能である。
【0055】
バッテリ3の放電終止時の温度を考慮した内部抵抗、すなわち内部抵抗R(@放電終止時の温度)は、実施の形態においては残量検知ユニット13_2から供給される。内部抵抗R(@放電終止時の温度)を生成は、後でステップS3において説明する。
【0056】
ステップS1_Eで、電圧を算出するステップS1が終わり、処理が、次のステップS2に移行する。
【0057】
<<ステップS2>>
次に、残放電時間を算出するステップS2を、図面を用いて説明する。図6は、実施の形態に係る残放電時間を算出するステップを説明するための図である。ここで、図6(A)は、ステップS2の詳細を示すフローチャート図であり、図6(B)は、ステップS2の動作を説明するための図である。図6(B)において、横軸は時間を示し、縦軸はバッテリ3の閉路電圧CCVを示している。
【0058】
ステップS2_Sで、残放電時間を算出するステップS2が開始し、次にステップS2_1が実行される。
【0059】
ステップS2_1では、バッテリ3の電圧の電圧変化率が算出される。実施の形態では、単位時間当たりの、バッテリ3の閉路電圧CCVの電圧変化率a(=dV/dt)が算出される。ここで、dtは、図5に示した初期の状態SOC0から状態SOCに変化するまでの時間に相当し、dVは、初期の状態SOC0のときの閉路電圧CCVと状態SOCのときの閉路電圧CCV(@放電終止時の温度)との間の電位差に相当する。これにより、ステップS2_1を実行することにより、図6(B)に示すように、閉路電圧CCVの傾きが、電圧変化率aとして求められる。
【0060】
ステップS2_2では、ステップS2_1で求めた電圧変化率aを利用して、閉路電圧CCVが、現時点t0から放電終止時tEODの放電終止電圧VEODに到達するまでの残放電時間ATTE_CCVの算出が行われる。ステップS2_1で用いられる算出式が、図10において式(5)として示されている。式(5)の入力は、放電終止電圧tEOD、電圧変化率aおよび閉路電圧CCV(@放電終止時の温度)であり、出力が残放電時間ATTE_CCVとなる。ステップS2_2の後で、ステップS2_Eを実行することにより、ステップS2の処理は終了する。
【0061】
ステップS2を実行することにより、初期の状態SOC0のときから現在の時刻t0までの間に変化した閉路電圧CCVの値から、放電終止時までに取り出すことが可能な残容量の時間を予測することができる。
【0062】
<<ステップS3>>
放電終止時の温度を算出するステップS3を、図面を用いて説明する。図7は、実施の形態に係る放電終止時の温度を算出するステップを説明するための図である。ここで、図7(A)は、ステップS3の詳細を示すフローチャート図であり、図7(B)は、ステップS3の動作を説明するための図である。図7(B)において、横軸は時間を示し、縦軸はバッテリ3の温度を示している。
【0063】
ステップS3_Sで、ステップS3が開始する。次のステップS3_1で、バッテリ3の温度の変化を基にして、単位時間当たりの温度の変化率aTH(=dT/dt)が算出される。ここで、dTは、初期の状態SOC0のときに、電池温度検知回路5(図1)から通知されたバッテリ3の温度と、現在(時刻t0)、電池温度検知回路5から通知されている温度THとの間の温度差である。また、dtは、ステップS2で説明した時間である。これにより、初期の状態SOC0のときから、現在に至るまでのバッテリの温度変化率aTHが算出されることになる。
【0064】
ステップS3_1に続いて、ステップS3_2が実行される。ステップS3_2においては、ステップS2で予測した残放電時間ATTE_CCVで到達するバッテリ3の温度の予測が行われる。ステップS3_2では、図10に示した式(6)が実行される。式(6)の入力は、現在の温度TH、温度変化率aTHおよびステップS2で予測した残放電時間ATTE_CCVである。式(6)を実行することにより、図7(B)に示すように、放電終止時tEODのバッテリ3の温度THEODを求めることができ、放電終止時にバッテリ3が到達する温度を予測することができる。
【0065】
ステップS3_2の後で、ステップS3を終了するステップS3_Eが実行される。
【0066】
温度予測機能F1は、ステップS3で予測された放電終止時の温度THEODを用いて、現在の温度情報TDPで表されるバッテリ3の温度を変換し、変換によって求められた温度を、現在のバッテリの温度(@放電終止時の温度)として出力する。この温度変換は、例えば、初期に設定された放電終止時の温度と、ステップS3で予測した放電終止時の温度との間の温度比を求め、温度比と温度情報TDPで表される現時点のバッテリ3の温度との積を求めることによって行われる。温度予測機能F1は、この積演算によって求めた温度を、現在のバッテリの温度(@放電終止時の温度)として、図2に示した残量検知ユニット13_2へ供給する。
【0067】
残量検知ユニット13_2は、供給された温度(@放電終止時の温度)に基づいた内部抵抗、すなわち内部抵抗R(@放電終止時の温度)を生成し、次のサンプリング期間において、予測ユニット13_1へ供給する。
【0068】
残量検知ユニット13_2は、次のようにして、放電終止時の温度を考慮した内部抵抗を生成する。すなわち、残量検知ユニット13_2は、特許文献1で述べられているように、供給された温度(@放電終止時の温度)を基にして、関数あるいはテーブルを参照し、現在の温度(@放電終止時の温度)に対応した内部抵抗Rが求められる。この求められた内部抵抗Rを、残量検知ユニット13_2は、次のサンプリング期間において、内部抵抗R(@放電終止時の温度)として出力する。
【0069】
ステップS3が終了すると、図3に示したように、残量検知処理を実行するステップS4が実行される。
【0070】
その後、図3に示したように、ステップS1からS4が繰り返される。繰り返されるステップS1~S3においては、現在の値と1サンプリング期間前の値に基づいて処理が実行される。
【0071】
例えば、ステップS1_5では、1サンプリング期間前の内部抵抗R(@放電終止時の温度)を用いて、閉路電圧CCVの算出が行われる。この場合、ステップS1_5には、1サンプリング期間前に、ステップS3で算出された放電終止時の温度と、その時のバッテリ3の温度とに基づいた温度変換により生成された温度に従ったバッテリ3の内部抵抗R(@放電終止時の温度)が、残量検知ユニット13_2から供給されることになる。そして、ステップS1_5では、この1サンプリング期間前の内部抵抗R(@放電終止時の温度)と、現時刻のバッテリの電圧と、現時刻のバッテリの電流とによって式(4)の算出が行われ、放電終止時の温度を考慮したバッテリ3の電圧が求められることになる。
【0072】
また、ステップS3_1では、1サンプリング期間前の温度(@放電終止時の温度)と温度変換された現在の温度とを用いて温度の変化率が算出される。これにより、ステップS1では、時間の経過に伴って変化するバッテリ3の閉路電圧CCV(@放電終止時の温度)が算出され、ステップS2では、時間の経過に伴って変化する残量放電時間ATT_CCVが算出され、ステップS3では、時間の経過に伴って変化する放電終止時の温度THEODが予測されることになる。また、ステップS4では、時間の経過に伴って変化するバッテリ3の残量が検知されることになる。
【0073】
図3(B)には、ステップS1が繰り返されることにより算出されるバッテリ3の閉路電圧CCVの曲線CCVカーブ2と、ステップS1を実行せずに求めたバッテリ3の閉路電圧CCVの曲線CCVカーブ1(破線)とが示されている。また、図3(B)には、ステップS2およびS3が繰り返されることにより予測された温度推移がTMP2として示され、ステップS2およびS3を実行しない場合の温度推移がTMP1(破線)として示されている。図3(B)において、横軸は放電容量を示し、左側の縦軸は、曲線CCVカーブ1およびCCVカーブ2に対応する電圧を示し、右側の縦軸は、温度推移TMP1およびTMP2に対応する温度を示している。
【0074】
ステップS2およびS3が実行されることにより、放電終止時の温度が予測され、放電終止時の温度を考量した温度は、温度推移TMP2のように変化する。これにより、図3(B)に示すように、温度推移TMP2は、温度推移TMP1よりも低くなる。また、曲線CCVカーブ1は、放電終止時の温度が考慮されていないため、図8(A)で示した電圧特性と同様な変化を示す。これに対して、実施の形態においてはステップS1で、閉路電圧CCVを算出する際の内部抵抗Rが、放電終止時の温度を考慮した値となる。そのため、曲線CCVカーブ2で表される閉路電圧CCVは、曲線CCVカーブ1で表される閉路電圧に比べて、少ない放電容量で低下する。
【0075】
図3(C)には、時間の経過に伴うバッテリ3の残量が、残量比率RSOCで示されている。図3(C)は、図9と類似しており、図3(C)に示したRSOC1は、図9に示した曲線RSOC1に対応し、RSOC0は、図9に示した真値の直線RSOC0に対応している。また、図3(A)に示したステップS4が繰り返し実行されることにより求められる残量(ここでは、残量比率RSOC)の推移が、図3(C)では、RSOC2として示されている。図3(C)から理解されるように、バッテリ3の放電が開始した直後では、曲線RSOC2は、真値RSOC0の直線と隔たっているが、時間が経過し、放電終止時に近づく程、真値RSOC0の直線と重なるようになり、誤差を低減することが可能である。
【0076】
<付記>
本明細書には、特許請求の範囲に記載した発明以外にも、発明が記載されている。その代表的な発明を、以下、列記する。
(A)バッテリと、
前記バッテリに装着され、前記バッテリの温度を検知する電池温度検知回路と、
前記バッテリと、前記電池温度検知回路とに結合された半導体装置と、
を備え、
前記半導体装置は、
前記電池温度検知回路から通知された温度から、前記バッテリの放電終止時の温度を予測し、予測した前記放電終止時の温度を考慮した前記バッテリの電圧を出力する予測ユニットと、
前記予測ユニットによって出力された前記バッテリの電圧と、前記バッテリの電流とに基づいて、前記バッテリの残量を検知する残量検知ユニットと、
を備える、電池パック。
(B)前記(A)に記載の電池パックにおいて、
前記予測ユニットは、所定の時刻における前記バッテリの電圧の電圧変化率を求め、前記電圧変化率に基づいて、前記バッテリの電圧が、放電終止時の放電終止電圧に到達するまでの放電時間を予測し、前記所定の時刻における温度の変化率と前記放電時間とに基づいて、前記放電終止時の温度を予測する、電池パック。
(C)前記(B)に記載の電池パックにおいて、
前記残量検知ユニットは、前記放電終止時の温度と、前記バッテリの温度とに基づいて求められた温度に従った前記バッテリの内部抵抗情報を、前記予測ユニットに通知し、
前記予測ユニットは、前記バッテリの電圧と通知された前記内部抵抗情報と前記バッテリの電流とに基づいて、前記放電終止時の温度を考慮した前記バッテリの電圧を出力する、電池パック。
(D)前記(C)に記載の電池パックにおいて、
前記残量検知ユニットは、検知した前記バッテリの残量に関する残量情報を、他の半導体装置へ通知する通信回路を、さらに備える、電池パック。
【0077】
以上、本発明者によってなされた発明を実施の形態に基づき具体的に説明したが、本発明は前記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることはいうまでもない。例えば、内部抵抗R(@放電終止時の温度)は、次のようにして生成するようにしてもよい。すなわち、残量検知ユニット13_2に、互いに異なる放電終止時の温度に対応した複数の関数あるいはテーブルを設け、供給された温度THEODに対応する関数あるいはテーブルを選択することで実現してもよい。この場合、残量検知ユニット13_2は、予測ユニット13_1から供給された現在の温度を基にして、予め選択した関数あるいはテーブルから内部抵抗Rを求め、求めた内部抵抗Rを内部抵抗R(@放電終止時の温度)として、予測ユニット13_1に供給する。
【符号の説明】
【0078】
1 電池パック
2 バッテリ管理用半導体装置
3 バッテリ
5 電池温度検知回路
10 電圧測定回路
11 電流測定回路
13 データ処理回路
13_1 予測ユニット
13_2 残量検知ユニット
20 プロセッサ
100 電子装置
F1 温度予測機能
F2、F3 Z-1変換機能
FCC 満充電容量
RC 残量
RSOC 残量比率
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10