(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022171125
(43)【公開日】2022-11-11
(54)【発明の名称】静電荷像現像用トナー及び画像形成方法
(51)【国際特許分類】
G03G 9/097 20060101AFI20221104BHJP
G03G 9/083 20060101ALI20221104BHJP
G03G 9/087 20060101ALI20221104BHJP
【FI】
G03G9/097 374
G03G9/083
G03G9/087 331
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021077557
(22)【出願日】2021-04-30
(71)【出願人】
【識別番号】000001270
【氏名又は名称】コニカミノルタ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001254
【氏名又は名称】弁理士法人光陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】久保 雄也
(72)【発明者】
【氏名】萱森 隆成
(72)【発明者】
【氏名】舎川 直哉
(72)【発明者】
【氏名】上田 昇
【テーマコード(参考)】
2H500
【Fターム(参考)】
2H500AA01
2H500AA04
2H500AA09
2H500CA06
2H500CB04
2H500EA39B
2H500EA52D
2H500EA57D
(57)【要約】
【課題】本発明の課題は、低温定着性、カブリ抑制及び耐久性が向上し、定着画像の貼り付きを抑制した静電荷像現像用トナーを提供することである。
【解決手段】本発明の静電荷像現像用トナーは、少なくとも結着樹脂及び磁性体を含有するトナー母体粒子と、外添剤とで構成される静電荷像現像用トナーであって、前記結着樹脂が、結晶性樹脂を含有し、前記外添剤が、チタン及びストロンチウム以外の金属元素がドープされたチタン酸ストロンチウムを含有することを特徴とする。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも結着樹脂及び磁性体を含有するトナー母体粒子と、外添剤とで構成される静電荷像現像用トナーであって、
前記結着樹脂が、結晶性樹脂を含有し、
前記外添剤が、チタン及びストロンチウム以外の金属元素がドープされたチタン酸ストロンチウムを含有する
ことを特徴とする静電荷像現像用トナー。
【請求項2】
前記チタン酸ストロンチウムが、ランタンがドープされたチタン酸ストロンチウムである
ことを特徴とする請求項1に記載の静電荷像現像用トナー。
【請求項3】
前記チタン酸ストロンチウムの粒子の個数平均一次粒子径が、20~300nmの範囲内である
ことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の静電荷像現像用トナー。
【請求項4】
前記チタン酸ストロンチウムの粒子の個数平均一次粒子径が、20~100nmの範囲内である
ことを特徴とする請求項1から請求項3までのいずれか一項に記載の静電荷像現像用トナー。
【請求項5】
前記チタン酸ストロンチウムの粒子の一次粒子の平均円形度が、0.82~0.94の範囲内である
ことを特徴とする請求項1から請求項4までのいずれか一項に記載の静電荷像現像用トナー。
【請求項6】
前記結晶性樹脂が、結晶性ポリエステルである
ことを特徴とする請求項1から請求項5までのいずれか一項に記載の静電荷像現像用トナー。
【請求項7】
静電荷像現像用トナーを用いる画像形成方法であって、
請求項1から請求項6までのいずれか一項に記載の静電荷像現像用トナーを用いる
ことを特徴とする画像形成方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、静電荷像現像用トナー及び画像形成方法に関する。より詳しくは、低温定着性、カブリ抑制及び耐久性が向上した静電荷像現像用トナー等に関する。
【背景技術】
【0002】
電子写真装置、静電記録装置、及び静電印刷装置等の画像形成装置においては、感光体上に形成される静電荷像を、トナーで現像することで所望の画像を形成する方法が広く実施され、複写機、プリンター、ファクシミリ、及びこれら複合機等に適用されている。このようなトナーを静電荷像現像用トナーという。また、以下では、単に、「トナー」ともいう。
【0003】
例えば、電子写真法を用いた電子写真装置では、一般には光導電性物質からなる感光体の表面を種々の手段で一様に帯電させた後、当該感光体上に静電荷像を形成し、次いで当該静電荷像を、トナーを用いて現像し、用紙等の記録材にトナー画像を転写した後、加熱等により当該トナー画像を定着し複写物を得ている。
【0004】
画像形成装置で用いられる現像剤としては、トナーのみを含む一成分現像剤及びトナーとキャリアを混合させた二成分現像剤が知られている。
【0005】
近年、画像形成装置については、高品質化に加えて、小型化、省エネルギー化等が求められており、小型化については、一成分現像剤を用いることが有効である。さらに、高品質化については、トナー担持体と静電荷像担持体が接触配置(当接配置)された現像方式である、一成分接触現像方式で画像形成を行うことが有効である。しかし、一成分接触現像方式では、接触部分に大きな圧力がかかるため、高品質な画像を得るためには、トナーの高耐久性及び高搬送性が求められる。また、省エネルギー化については、トナーの低温定着性を向上させることが有効である。
【0006】
トナーの高搬送性については、磁性体を含有させた磁性トナーが知られている。しかし、一般的に、磁性体の多くは電気抵抗が低いことから、現像工程において、磁性トナーの帯電量は低下(電荷減衰)しやすい。そのため、電荷減衰を防止する目的で、高抵抗の外添剤を用いることが好ましい。このような外添剤として、チタン酸ストロンチウムが知られているが、チタン酸ストロンチウムの粒子は、その結晶性の高さから、立方体又は直方体の形状をとりやすく、後述のトナー母体粒子表面に付着しづらい。
【0007】
そこで、チタン酸ストロンチウムを、トナー母体粒子表面に付着しやすい形状にする技術として、特許文献1では、チタン酸ストロンチウムに、チタン及びストロンチウム以外の金属元素をドープさせることにより、結晶性を低下させ、丸みを帯びた形状とし、小径かつ高円形度にする技術が開示されている。
当該技術により、トナーの電荷減衰は抑制されるが、磁性トナーは、磁性体が結着樹脂間に入り込み、フィラーとして機能するため、低温定着性が不十分であるという問題があり、低温定着性の向上が求められている。
【0008】
特許文献2では、磁性トナーの低温定着性を改善する方法として、トナーの成分である結着樹脂に、結晶性ポリエステルを導入する技術が開示されている。しかし、結晶性ポリエステルは、高温高湿環境下でトナー母体粒子の表面に染み出し、表面近傍を軟化させるため、新たに磁性体が表面に露出して電荷減衰が生じ、カブリが発生したり、外添剤が埋没したりしてしまう問題があり、トナーの耐久性に更なる改善の余地があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2019-28239号公報
【特許文献2】特開2020-56920号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、上記問題・状況に鑑みてなされたものであり、その解決課題は、低温定着性、カブリ抑制及び耐久性が向上した静電荷像現像用トナー及び画像形成方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者は、磁性トナーにおける上記課題を解決すべく、上記問題の原因等について検討した結果、トナー母体粒子中の結着樹脂に結晶性樹脂を含有させることにより低温定着性を向上でき、外添剤にチタン及びストロンチウム以外の金属元素がドープされたチタン酸ストロンチウムを含有させることによりカブリ抑制及び耐久性を向上できることを見出し本発明に至った。
すなわち、本発明に係る上記課題は、以下の手段により解決される。
【0012】
1.少なくとも結着樹脂及び磁性体を含有するトナー母体粒子と、外添剤とで構成される静電荷像現像用トナーであって、前記結着樹脂が、結晶性樹脂を含有し、前記外添剤が、チタン及びストロンチウム以外の金属元素がドープされたチタン酸ストロンチウムを含有することを特徴とする静電荷像現像用トナー。
【0013】
2.前記チタン酸ストロンチウムが、ランタンがドープされたチタン酸ストロンチウムであることを特徴とする第1項に記載の静電荷像現像用トナー。
【0014】
3.前記チタン酸ストロンチウムの粒子の個数平均一次粒子径が、20~300nmの範囲内であることを特徴とする第1項又は第2項に記載の静電荷像現像用トナー。
【0015】
4.前記チタン酸ストロンチウムの粒子の個数平均一次粒子径が、20~100nmの範囲内であることを特徴とする第1項から第3項までのいずれか一項に記載の静電荷像現像用トナー。
【0016】
5.前記チタン酸ストロンチウムの粒子の一次粒子の平均円形度が、0.82~0.94の範囲内であることを特徴とする第1項から第4項までのいずれか一項に記載の静電荷像現像用トナー。
【0017】
6.前記結晶性樹脂が、結晶性ポリエステルであることを特徴とする第1項から第5項までのいずれか一項に記載の静電荷像現像用トナー。
【0018】
7.静電荷像現像用トナーを用いる画像形成方法であって、第1項から第6項までのいずれか一項に記載の静電荷像現像用トナーを用いることを特徴とする画像形成方法。
【発明の効果】
【0019】
本発明の上記手段により、低温定着性、カブリ抑制及び耐久性が向上した静電荷像現像用トナーを提供することができる。
【0020】
本発明の効果の発現機構又は作用機構については、明確にはなっていないが、以下のように推察している。
【0021】
磁性トナーに含有される磁性体の多くは、比較的電気抵抗が低いため、磁性体がトナーの表面に露出していると電荷減衰が生じやすく、現像工程において、磁性トナーの帯電量は低下しやすい。そこで、磁性体を含有するトナー母体粒子の表面に外添剤を付着させることにより、磁性体がトナーの表面に露出しづらく、磁性トナーの帯電量の低下を抑制できる。
【0022】
用いられる外添剤は、トナー母体粒子の表面を覆う必要があるため、トナー母体粒子への十分な付着力を有することが好ましく、小径かつ高円形度であることが好ましい。また、磁性トナーの帯電量の低下を抑制するため、高抵抗であることが好ましい。
【0023】
一方、トナー母体粒子中の結着樹脂に結晶性樹脂を含有させることにより、低温定着性を向上させることができる。しかし、高温高湿環境下では、結晶性樹脂がトナー母体粒子の表面に染み出し、表面近傍が軟化するため、磁性体がトナー母体粒子の表面に新たに露出してしまう、又は、外添剤がトナー母体粒子中に埋没してしまい、磁性トナーの帯電量の低下を抑制できない。そのため、外添剤は埋没しづらいものであることが好ましい。
【0024】
このような観点から、外添剤に、チタン及びストロンチウム以外の金属元素がドープされたチタン酸ストロンチウムを含有することにより、本発明の課題を解決することができる。以下、チタン酸ストロンチウムについて、詳しく説明する。
【0025】
チタン酸ストロンチウムは、ストロンチウムとチタンの複合酸化物であり、ペロブスカイト構造をとる。
各イオンは、規則正しく並び、ペロブスカイト構造をとる。ただし、実際には、中心にあるSr2+イオンのイオン半径が大きいため、O2-イオンを押し広げてしまい、O2-イオンが作る8面体の中心にあるTi4+イオンの周囲に隙間ができ、Ti4+イオンは中心からずれてしまう。このため、+イオンと-イオンとの電気的な中心の位置は一致せず、イオン分極が生じる。
【0026】
チタン酸ストロンチウムの結晶は、結晶構造が積み重なってできているが、分極の方向は、全て同じ方向ではなく、個々に異なる。しかし、これらの分極は、外部電場をかけることにより、同じ方向に揃うため、チタン酸ストロンチウムの結晶全体において、大きく分極する。
【0027】
一方で、チタン酸ストロンチウム粒子は、その結晶性の高さから、立方体や直方体の形状をとりやすく、トナー母体粒子に外添しづらい。そのため、チタン及びストロンチウム以外の金属元素をドープすることにより、結晶性を低下させ、小径かつ高円形度の粒子とし、外添しやすくすることができる。また、結晶性の低下により、ドープされたチタン酸ストロンチウムは、更に大きく分極する。
【0028】
大きく分極した、ドープされたチタン酸ストロンチウムは、トナー母体粒子に外添することにより、トナー母体粒子中の磁性体と引き合ったり、斥けあったり、相互作用する。すなわち、磁性体がトナー母体粒子の表面に露出しようとすると、外添しているチタン酸ストロンチウムと斥けあって、トナー母体粒子中に押し戻される。また、磁性体がトナー母体粒子の表面に露出してしまうと、引き合ったチタン酸ストロンチウムが磁性体の表面を覆うため、トナー粒子としては、磁性体の露出が抑制される。
すなわち、チタン酸ストロンチウムは、その結晶性の高さから、結着樹脂に用いられる樹脂と比較して高密度であるため、トナー母体粒子中に埋没しやすいが、磁性体との相互作用により、埋没が抑制される。
【0029】
さらに、実際には、トナー母体粒子の表面には凹凸があり、付着したチタン酸ストロンチウム粒子は、トナー母体粒子の表面を転がりやすく、凹部に集まりやすい。この凹部は、比較的、磁性体とトナー母体粒子の表面が近接した箇所であるが、チタン酸ストロンチウム粒子が集まることにより、トナー母体粒子の表面が覆われるため、トナー粒子としては、磁性体の露出が抑制される。
【0030】
また、磁性体は、トナーの搬送性の向上及び着色剤として機能するため、一般的な顔料と比較して、トナー母体粒子中を占める割合が大きい。そのため、外添剤が埋没可能なスペースが比較的小さく、外添剤のトナー母体粒子の内部への埋没が抑制される。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【
図2】一成分接触現像方式の画像形成装置の一例を示す模式的断面図
【発明を実施するための形態】
【0032】
本発明の静電荷像現像用トナーは、少なくとも結着樹脂及び磁性体を含有するトナー母体粒子と、外添剤とで構成される静電荷像現像用トナーであって、前記結着樹脂が、結晶性樹脂を含有し、前記外添剤が、チタン及びストロンチウム以外の金属元素がドープされたチタン酸ストロンチウムを含有することを特徴とする。
この特徴は、下記実施形態に共通する又は対応する技術的特徴である。
【0033】
本発明の実施形態としては、ドープしやすく、チタン酸ストロンチウムの粒子の形状を制御しやすい観点から、チタン酸ストロンチウムが、ランタンがドープされたチタン酸ストロンチウムであることが好ましい。
【0034】
また、耐久性の観点から、チタン酸ストロンチウムの粒子の個数平均一次粒子径が、20~300nmの範囲内であることが好ましく、20~100nmの範囲内であることがより好ましく、さらに、チタン酸ストロンチウムの粒子の一次粒子の平均円形度が、0.82~0.94の範囲内であることが好ましい。
【0035】
低温定着性の観点から、結晶性樹脂が、結晶性ポリエステルであることが好ましい。
【0036】
本発明の画像形成方法は、静電荷像現像用トナーを用いる画像形成方法であって、上記本発明の静電荷像現像用トナーを用いることを特徴とする。これにより、本発明の静電荷像現像用トナーの特徴を生かした画像形成が可能となる。
【0037】
以下、本発明とその構成要素、及び本発明を実施するための形態・態様について詳細な説明をする。なお、本願において、「~」は、その前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む意味で使用する。
【0038】
≪1 本発明の静電荷像現像用トナーの概要≫
本発明の静電荷像現像用トナー(以下、単に「トナー」ともいう。)は、少なくとも結着樹脂及び磁性体を含有するトナー母体粒子と、外添剤とで構成される静電荷像現像用トナーであって、前記結着樹脂が、結晶性樹脂を含有し、前記外添剤が、チタン及びストロンチウム以外の金属元素がドープされたチタン酸ストロンチウムを含有することを特徴とする。
【0039】
本発明のトナーは、トナー母体粒子と、トナー母体粒子表面に付着される外添剤とを備えるトナー粒子を含む。
本明細書において、「トナー母体粒子」とは、「トナー粒子」の母体を構成するものである。本発明に係る「トナー母体粒子」は、少なくとも結着樹脂及び磁性体を含有するものであり、その他必要に応じて、着色剤、離型剤(ワックス)、荷電制御剤などの他の構成成分を含有してもよい。「トナー母体粒子」は、外添剤の添加によって「トナー粒子」と称される。そして、「トナー」とは、トナー粒子の集合体のことをいう。
【0040】
[1.1 トナー母体粒子]
<1.1.1 磁性体>
本発明の静電荷像現像用トナーは、トナー母体粒子中に磁性体を含有することを特徴とし、トナー母体粒子に磁性体を含有することにより、磁性トナーとして機能する。
磁性トナーは、キャリアと混合せずに、そのまま一成分現像剤として好適に用いることができる。
【0041】
本発明に係るトナー母体粒子中に含有される磁性体は、外添剤であるドープされたチタン酸ストロンチウムと引き合ったり、斥けあったり、相互作用する。また、磁性体は、一般的な顔料と比較して、トナー母体粒子中を占める割合が大きいため、外添剤が埋没可能なスペースが比較的小さい。そのため、本発明の静電荷像現像用トナーは、磁性体を含有することにより、外添剤がトナー母体粒子の内部へ埋没するのを抑制する。
【0042】
「磁性体」とは、磁場の印加により磁化される材料のことをいう。また、「磁化」とは、磁性体に外部磁場をかける際にその磁性体が分極して磁石となる現象のことである。本発明においては、磁性体は、強磁性体であることが好ましく、「強磁性体」とは、外部磁界によって磁化されると、外部磁界を取り除いても磁化された状態が保持される、いわゆる保磁力の大きい材料である。
【0043】
磁性体としては、特に限定されないが、例えば、マグネタイト、マグへマイト、フェライトなどの酸化鉄が挙げられる。また、鉄、コバルト、ニッケルのような金属単体、又はこれらの金属とアルミニウム、銅、マグネシウム、スズ、亜鉛、ベリリウム、カルシウム、マンガン、セレン、チタン、タングステン、バナジウムのような金属との合金、若しくは、それらの混合物などが挙げられる。
【0044】
磁性体の個数平均一次粒子径は、0.50μm以下であることが好ましく、0.05~0.30μmの範囲内であることが好ましい。個数平均一次粒子径は、透過型電子顕微鏡を用いて測定できる。
なお、本発明において、「一次粒子」との用語は、結晶体及び結晶体が特定の面を共有する強い凝集体を構成したもの(「アグリゲート」という。)の総称として使用する。なお、当該一次粒子が凝集して形成された粒子凝集体(「アグロメレート」という。)を「二次粒子」と称する。
【0045】
具体的には、エポキシ樹脂中へ、観察すべきトナー粒子を十分に分散させた後、温度40℃の雰囲気中で2日間硬化させて硬化物を得る。得られた硬化物をミクロトームにより薄片状のサンプルとして、透過型電子顕微鏡(TEM)において1万~4万倍の拡大倍率の画像を撮影し、当該画像中の100個の磁性体の一次粒子の投影面積を測定する。そして、当該投影面積に等しい円の相当径を磁性体の一次粒子の粒子径とし、当該100個の平均値を磁性体の個数平均一次粒子径とする。
【0046】
磁性体の795.8kA/m印加での磁気特性として、抗磁力(Hc)は、1.6~12.0kA/mであることが好ましい。また、磁化の強さ(σs)は、50~200Am2/kgであることが好ましく、50~100Am2/kgであることがより好ましい。一方、残留磁化(σr)は、2~20Am2/kgであることが好ましい。
【0047】
トナー母体粒子中の磁性体の含有量は、トナー母体粒子の総質量に対して、35~50質量%の範囲内であることが好ましく、40~50質量%の範囲内であることがより好ましい。
磁性体の含有量が、上記範囲内であれば、現像スリーブ内のマグネットロールとの磁気引力が適度となる。
【0048】
なお、トナー母体粒子中の磁性体の含有量は、パーキンエルマー社製熱分析装置TGA Q5000IRを用いて測定することができる。測定方法は、窒素雰囲気下において昇温速度25℃/分で常温から900℃まで磁性トナーを加熱し、100~750℃の減量質量を磁性トナーから磁性体を除いた成分の質量とし、残存質量を磁性体の質量とする。
【0049】
磁性体は、例えば、下記の方法で製造することができる。
第一鉄塩水溶液に、鉄成分に対して当量又は当量以上の水酸化ナトリウムなどのアルカリを加え、水酸化第一鉄を含む水溶液を調製する。調製した水溶液のpHを7以上に維持しながら空気を吹き込み、水溶液を70℃以上に加温しながら水酸化第一鉄の酸化反応を行い、磁性酸化鉄の芯となる種晶を生成する。
【0050】
次に、種晶を含むスラリー液に、事前に加えたアルカリの添加量を基準として、約1当量の硫酸第一鉄を含む水溶液を加える。混合液のpHを5~10に維持し、空気を吹き込みながら水酸化第一鉄の反応を進め、種晶を芯にして磁性酸化鉄を成長させる。この時、任意のpH、反応温度及び撹拌条件を選択することにより、磁性体の形状及び磁気特性を制御することができる。酸化反応が進むにつれて、混合液のpHは酸性側に移行していくが、混合液のpHは5以上であることが好ましい。得られた混合液を、定法によりろ過、洗浄及び乾燥することにより磁性体を得ることができる。
また、磁性体は必要に応じて公知の表面処理を行ってもよい。
【0051】
<1.1.2 結着樹脂>
本発明の静電荷像現像用トナーは、トナー母体粒子中の結着樹脂が、結晶性樹脂を含有することを特徴とする。トナー母体粒子中の結着樹脂に結晶性樹脂を含有させることにより、低温定着性を向上させることができる。
【0052】
「結着樹脂(「バインダー樹脂」ともいう。)」とは、トナー粒子中に含有される内添剤(ワックス、電荷制御剤、顔料等)及び外添剤(シリカ、酸化チタン等)を分散させるための媒体又はマトリクス(母体)として用いられ、かつトナー画像の定着処理の際に記録媒体(例えば用紙)に接着する機能を有する樹脂をいう。
【0053】
本発明に係る結着樹脂としては、特に限定されず、従来公知のものを使用できる。例えば、ポリエステル樹脂;ポリビニルトルエンなどのスチレン及びその置換体の重合体;スチレン-p-クロロスチレン共重合体、スチレン-プロピレン共重合体、スチレン-ビニルトルエン共重合体、スチレン-ビニルナフタレン共重合体、スチレン-アクリル酸メチル共重合体、スチレン-アクリル酸エチル共重合体、スチレン-アクリル酸ブチル共重合体、スチレン-アクリル酸オクチル共重合体、スチレン-メタクリル酸メチル共重合体、スチレン-メタクリル酸エチル共重合体、スチレン-メタクリル酸ブチル共重合体、スチレン-α-クロルメタクリル酸メチル共重合体、スチレン-アクリロニトリル共重合体、スチレン-ビニルメチルケトン共重合体、スチレン-ブタジエン共重合体、スチレン-イソプレン共重合体、スチレン-アクリロニトリル-インデン共重合体、スチレン-マレイン酸共重合体、スチレン-マレイン酸エステル共重合体などのスチレン系共重合体;ポリメチルメタクリレート、ポリブチルメタクリレート、ポリ塩化ビニル、ポリ酢酸ビニル、ポリエチレン、ポリプロピレン、エポキシ樹脂、エポキシポリオール樹脂、ポリウレタン、ポリアミド、ポリビニルブチラール、ポリアクリル酸樹脂、ロジン、変性ロジン、テルペン樹脂、脂肪族又は脂環族炭化水素樹脂、芳香族石油樹脂などが挙げられる。これらの樹脂は、単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0054】
また、「結着樹脂が、結晶性樹脂を含有する」とは、結着樹脂が結晶性樹脂そのものを含む形態であってもよいし、ハイブリッド結晶性ポリエステル樹脂における結晶性ポリエステル重合セグメントやハイブリッド非晶性ポリエステル樹脂における結晶性ポリエステル重合セグメントのように、他の樹脂中に含まれるセグメントを含む形態であってもよい。なお、本発明においては、低温定着性及びトナーの耐熱保管性の観点から、結着樹脂は、結晶性樹脂の他に非晶性樹脂を含有することが好ましい。
【0055】
<1.1.2.1 結晶性樹脂>
本発明において、結晶性樹脂とは、示差走査熱量計(DSC)で測定した示差熱量曲線において、階段状の吸熱変化ではなく、明確な吸熱ピークを有する樹脂をいう。明確な吸熱ピークとは、具体的には、DSC測定において、昇温速度10℃/分で測定した際に、吸熱ピークの半値幅が15℃以内であるピークのことを意味する。なお、DSC測定は、示差走査熱量計(パーキンエルマー社製:Diamond DSC)を用い、この装置の検出部の温度補正にはインジウムと亜鉛との融点を用い、熱量の補正にはインジウムの融解熱を用いる。
【0056】
このような結晶性樹脂は、その高い結晶性から、融点温度の直前までは粘度が高く、融点温度付近で急激に粘度が低下する。そのため、結着樹脂が、結晶性樹脂を含有することにより、高温環境下での保存性の高い(耐熱保管性)、かつ、定着性の高いトナーが得られる。
【0057】
結晶性樹脂の融点(Tm)は、低温定着性及び耐ホットオフセット性の観点から、55~90℃の範囲内であることが好ましく、70~85℃の範囲内であることがより好ましい。
結晶性樹脂の融点は、樹脂組成によって制御することができる。
【0058】
なお、融点(Tm)は、吸熱ピークのピークトップの温度であり、DSCにより測定することができる。
具体的には、試料をアルミニウム製パンKINTO.B0143013に封入し、熱分析装置ダイヤモンドDSC(パーキンエルマー社製)のサンプルホルダーにセットして、加熱、冷却、加熱の順に温度を変動させる。1回目の加熱時には室温(25℃)から、2回目の加熱時には0℃から、10℃/minの昇温速度でそれぞれ150℃まで昇温して150℃を5分間保持し、冷却時には、10℃/minの降温速度で150℃から0℃まで降温して0℃の温度を5分間保持する。2回目の加熱時に得られる吸熱曲線における吸熱ピークのピークトップの温度を融点として測定する。
【0059】
トナー母体粒子中の結晶性樹脂の含有量は、低温定着性及び耐熱保管性の観点から、トナー母体粒子の総質量に対して、1~40質量%の範囲内であることが好ましく、5~30質量%の範囲内であることがより好ましい。結晶性樹脂の含有量が、1質量%以上であれば、十分な低温定着性が得られ、40質量%以下であれば、トナーとしての熱的安定性や物理的なストレスに対する安定性、及び、耐熱保管性が十分に得られる。
【0060】
また、結晶性樹脂の含有量は、低温定着性及び耐熱性の観点から、結着樹脂の総質量に対して、2~20質量%の範囲内であることが好ましく、5~20質量%の範囲内であることがより好ましく、7~15質量%の範囲内であることが更に好ましい。結晶性樹脂の含有量が、2質量%以上であれば、十分な可塑効果が得られ、低温定着性がより顕著であり、20質量%以下であれば、耐熱性が向上し、トナーとしての熱的安定性や物理的なストレスに対する安定性、及び、耐熱保管性が十分に得られる。
【0061】
低温定着性及び光沢度安定性の観点から、結晶性樹脂の数平均分子量(Mn)が、3000~12500の範囲内であることが好ましく、4000~11000の範囲内であることがより好ましい。また、結晶性樹脂の重量平均分子量(Mw)が、10000~100000の範囲内であることが好ましく、15000~80000の範囲内であることがより好ましく、20000~50000の範囲内であることが更に好ましい。
【0062】
Mw及びMnが、上記範囲内であると、シャープメルト性が発現しやすく、定着温度を制御しやすい。また、定着画像において十分な強度が得られる。さらに、トナーの製造において、乳化液撹拌中に結晶性樹脂が粉砕されず、トナーのガラス転移温度Tgが一定に保たれるため、トナーの熱的安定性が保たれる。Mw及びMnは、以下のようにゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)によって測定した分子量分布から求めることができる。
【0063】
(結晶性樹脂の分子量の測定方法)
試料を濃度0.1mg/mLとなるようにテトラヒドロフラン(THF)中に添加し、40℃まで加温して完全に溶解させた後、ポアサイズ0.2μmのメンブランフィルターで処理して、試料液(サンプル)を調製する。その後、下記条件にて測定を行った。詳しくは、GPC装置HLC-8220GPC(東ソー株式会社製)及びカラム「TSKgelSuperH3000」(東ソー株式会社製)を用い、カラム温度を40℃に保持しながら、キャリア溶媒(溶離液)としてTHFを流速0.6mL/分で流す。キャリア溶媒とともに、調製した試料液100μLをGPC装置内に注入し、示差屈折率検出器(RI検出器)を用いて試料を検出する。そして、単分散のポリスチレン標準粒子の10点を用いて測定した検量線を用いて、試料の分子量分布を算出する。また、データ解析においては、上記フィルター起因のピークが確認された場合には、当該ピークの手前まででベースラインを設定し解析したデータを試料の分子量とする。
【0064】
測定機種:東ソー株式会社製 GPC装置HLC-8220GPC
カラム:東ソー株式会社製 「TSKgelSuperH3000」
溶離液:THF
温度:カラム恒温槽 40.0℃
流速:0.6ml/min
濃度:0.1mg/mL(0.1wt/vol%)
検量線:東ソー株式会社製 標準ポリスチレン試料
注入量:100μL
溶解性:完全溶解(40℃加温)
前処理:0.2μmのフィルターでろ過
検出器:示差屈折計(RI)
【0065】
結晶性樹脂は、一種を単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。結晶性樹脂の種類は、特に限定されず、例として、結晶性ポリオレフィン樹脂、結晶性ポリジエン樹脂、結晶性ポリエステル樹脂、結晶性ポリアミド樹脂、結晶性ポリウレタン樹脂、結晶性ポリアセタール樹脂、結晶性ポリエチレンテレフタレート樹脂、結晶性ポリブチレンテレフタレート樹脂、結晶性ポリフェニレンサルファイド樹脂、結晶性ポリエーテルエーテルケトン樹脂、結晶性ポリテトラフルオロエチレン樹脂等が挙げられる。これらの中でも、低温定着性及び光沢度安定性の観点から結晶性ポリエステル樹脂が好ましい。結晶性ポリエステル樹脂は、熱定着時に融解して非晶性樹脂の可塑化剤として働くため、低温定着性を向上させることができる。
【0066】
また、低温定着性及び耐熱保管性の観点から、結着樹脂として、結晶性ポリエステル樹脂及び非晶性樹脂を組み合わせて用いることが好ましく、結晶性ポリエステル樹脂とビニル樹脂とを組み合わせて用いることがより好ましい。
【0067】
〔結晶性ポリエステル〕
結晶性ポリエステル(以下、「結晶性ポリエステル樹脂」ともいう。)とは、2価以上のカルボン酸(多価カルボン酸)と、2価以上のアルコール(多価アルコール)との重縮合反応によって得られる公知のポリエステル樹脂のうち、前述に記載の示差走査熱量測定(DSC)において、階段状の吸熱変化ではなく、明確な吸熱ピークを有する樹脂をいう。
【0068】
また、結晶性ポリエステル樹脂は、熱定着時に融解して非晶性樹脂の可塑化剤として働くため、トナーの低温定着性を向上できる。また、結晶性ポリエステル樹脂は、一種を単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0069】
結晶性ポリエステル樹脂は、上記定義したとおりであれば特に限定されない。例えば、結晶性ポリエステル樹脂による主鎖に他成分を共重合させた構造の樹脂についても、当該樹脂が上記の明確な吸熱ピークを示すものであれば、本発明でいう結晶性ポリエステル樹脂に該当する。
【0070】
低温定着性及び光沢度安定性の観点から、結晶性ポリエステル樹脂の数平均分子量(Mn)は、3000~12500の範囲内であることが好ましく、4000~11000の範囲内であることがより好ましい。また、結晶性ポリエステル樹脂の重量平均分子量(Mw)は、10000~100000の範囲内であることが好ましく、12000~80000の範囲内であることがより好ましく、14000~50000の範囲内であることが更に好ましい。上記範囲内であると、得られるトナーの融点が好適な範囲内であり、耐ブロッキング性に優れ、また、低温定着性にも優れる。数平均分子量(Mn)及び重量平均分子量(Mw)は、上記のゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定することができる。
【0071】
結晶性ポリエステル樹脂の酸価(AV)は5~70mgKOH/gが好ましい。酸価は、JIS K2501:2003に記載の方法に準拠して測定できる。
【0072】
結着樹脂に含まれる結晶性樹脂が、結晶性ポリエステル樹脂である場合、結晶性ポリエステル樹脂の含有量は、結着樹脂の総質量に対して、2~20質量%の範囲内であることが好ましく、5~20質量%の範囲内であることがより好ましく、7~15質量%の範囲内であることがさらに好ましい。結晶性ポリエステル樹脂の含有量が、2質量%以上であれば、低温定着性に優れ、20質量%以下であれば、耐熱性に優れる。
【0073】
結晶性ポリエステル樹脂は、多価カルボン酸成分及び多価アルコール成分から生成される。多価カルボン酸成分及び多価アルコール成分の価数としては、好ましくはそれぞれ2~3であり、特に好ましくはそれぞれ2である。
【0074】
(多価カルボン酸)
多価カルボン酸とは、1分子中にカルボキシ基を2個以上含有する化合物である。上記多価カルボン酸の例としては、ジカルボン酸が挙げられる。ジカルボン酸は、一種を単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。また、ジカルボン酸は、脂肪族ジカルボン酸であることが好ましく、芳香族ジカルボン酸をさらに含んでいてもよい。脂肪族ジカルボン酸は、直鎖型であることが、結晶性ポリエステル樹脂の結晶性を高める観点から好ましい。
【0075】
上記脂肪族ジカルボン酸の例には、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸(ヘキサン二酸)、ピメリン酸、スベリン酸(オクタン二酸)、アゼライン酸、セバシン酸(デカン二酸)、n-ドデシルコハク酸、1,9-ノナンジカルボン酸、1,10-デカンジカルボン酸(ドデカン二酸)、1,11-ウンデカンジカルボン酸、1,12-ドデカンジカルボン酸(テトラデカン二酸)、1,13-トリデカンジカルボン酸、1,14-テトラデカンジカルボン酸、1,16-ヘキサデカンジカルボン酸、1,18-オクタデカンジカルボン酸などの飽和脂肪族ジカルボン酸、これらの低級アルキルエステル、及びこれらの酸無水物が含まれる。中でも、低温定着性及び転写性の両立の観点から、炭素数が6~16の脂肪族ジカルボン酸であることが好ましく、10~14の脂肪族ジカルボン酸であることがより好ましい。
【0076】
上記芳香族ジカルボン酸の例には、フタル酸、テレフタル酸、イソフタル酸、オルトフタル酸、t-ブチルイソフタル酸、2,6-ナフタレンジカルボン酸及び4,4’-ビフェニルジカルボン酸が含まれる。中でも、入手容易性及び乳化容易性の観点から、テレフタル酸、イソフタル酸又はt-ブチルイソフタル酸が好ましい。
【0077】
多価カルボン酸としては、上記以外にも、シクロヘキサンジカルボン酸などの脂環式ジカルボン酸、トリメリット酸、ピロメリット酸などの3価以上の多価カルボン酸;及びこれらカルボン酸化合物の無水物、あるいは炭素数1~3のアルキルエステルなどが挙げられる。
【0078】
多価カルボン酸は、一種を単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0079】
ジカルボン酸由来の構成単位に対する脂肪族ジカルボン酸由来の構成単位の含有量は、結晶性ポリエステル樹脂の結晶性の観点から、50モル%以上であることが好ましく、70モル%以上であることがより好ましく、80モル%以上であることが更に好ましく、100モル%であることが特に好ましい。
【0080】
(多価アルコール)
多価アルコールとは、1分子中にヒドロキシ基を2個以上含有する化合物である。上記多価アルコール成分の例としては、ジオールが挙げられる。ジオールは、一種を単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。また、ジオールは、脂肪族ジオールであることが好ましく、それ以外のジオールをさらに含んでいてもよい。脂肪族ジオールは、結晶性ポリエステル樹脂の結晶性を高める観点から、直鎖型であることが好ましい。
【0081】
脂肪族ジオールの例としては、エチレングリコール、プロピレングリコール(1,2-プロパンジオール)、1,3-プロパンジオール、ネオペンチルグリコール(2,2-ジメチル-1,3-プロパンジオール)、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,7-ヘプタンジオール、1,8-オクタンジオール、1,9-ノナンジオール、1,10-デカンジオール、1,11-ウンデカンジオール、1,12-ドデカンジオール、1,13-トリデカンジオール、1,14-テトラデカンジオール、1,18-オクタデカンジオール及び1,20-エイコサンジオールが挙げられる。中でも、低温定着性及び転写性の両立の観点から、炭素数が2~20の脂肪族ジオールであることが好ましく、炭素数が4~12の脂肪族ジオールであることがより好ましい。
【0082】
その他のジオールの例としては、二重結合を有するジオール、及び、スルホン酸基を有するジオール、が挙げられる。具体的には、二重結合を有するジオールの例としては、1,4-ブテンジオール、2-ブテン-1,4-ジオール、3-ブテン-1,6-ジオール及び4-ブテン-1,8-ジオールが挙げられる。
【0083】
3価以上の多価アルコールの例としては、グリセリン、ペンタエリスリトール、トリメチロールプロパン、ソルビトールなどが挙げられる。
【0084】
多価アルコールは、一種を単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0085】
ジオール由来の構成単位に対する脂肪族ジオール由来の構成単位の含有量は、低温定着性及び光沢度安定性の観点から、50モル%以上であることが好ましく、70モル%以上であることがより好ましく、80モル%以上であることがさらに好ましく、100モル%であることが特に好ましい。
【0086】
結晶性ポリエステル樹脂を構成するモノマーにおけるジオールとジカルボン酸との割合、すなわち、ジオールのヒドロキシ基[-OH]とジカルボン酸のカルボキシ基[-COOH]との当量比[-OH]/[-COOH]が、2.0/1.0~1.0/2.0の範囲内であることが好ましく、1.5/1.0~1.0/1.5の範囲内であることがより好ましく、1.3/1.0~1.0/1.3の範囲内であることが更に好ましい。
【0087】
結晶性ポリエステル樹脂を構成するモノマーは、直鎖脂肪族モノマーを50質量%以上含有することが好ましく、80質量%以上含有することがより好ましい。直鎖脂肪族モノマーを用いた場合には、結晶性ポリエステル樹脂の結晶性は高く、融点(吸熱ピークのピークトップの温度)も高くなることが多い。また、分岐型の脂肪族モノマーを用いた場合には、結晶性が低く、融点も低くなることが多い。したがって、モノマーとして、直鎖脂肪族モノマーを用いることが好ましい。
【0088】
結晶性ポリエステル樹脂は、公知のエステル化触媒を利用して、上記多価カルボン酸及び多価アルコールを重縮合する(エステル化する)ことにより合成できる。
【0089】
エステル化触媒は、一種を単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。例としては、ナトリウム、リチウムなどのアルカリ金属化合物;マグネシウム、カルシウムなどの第2族元素を含む化合物;アルミニウム、亜鉛、マンガン、アンチモン、チタン、スズ、ジルコニウム、ゲルマニウムなどの金属化合物;亜リン酸化合物;リン酸化合物;及び、アミン化合物;が挙げられる。
【0090】
具体的には、スズ化合物の例としては、酸化ジブチルスズ、オクチル酸スズ、ジオクチル酸スズ、及びこれらの塩が挙げられる。チタン化合物の例としては、テトラノルマルブチルチタネート、テトライソプロピルチタネート、テトラメチルチタネート、テトラステアリルチタネートなどのチタンアルコキシド;ポリヒドロキシチタンステアレートなどのチタンアシレート;及び、チタンテトラアセチルアセトナート、チタンラクテート、チタントリエタノールアミネートなどのチタンキレートが挙げられる。ゲルマニウム化合物の例としては、二酸化ゲルマニウムが挙げられ、アルミニウム化合物の例としては、ポリ水酸化アルミニウムなどの酸化物、アルミニウムアルコキシド、及びトリブチルアルミネートが挙げられる。
【0091】
結晶性ポリエステル樹脂の重合温度は、150~250℃の範囲内であることが好ましい。また、重合時間は、0.5~10時間の範囲内であることが好ましい。重合中は、必要に応じて、反応系内を減圧にしてもよい。
【0092】
結晶性ポリエステル樹脂の構造及び構成モノマーの選択によって、結晶性ポリエステル樹脂の結晶化度や融解熱量を制御できる。結晶性ポリエステル樹脂の結晶化度を、定着に好ましい範囲に調整する観点から、結晶性ポリエステル樹脂は、以下に説明するハイブリッド結晶性ポリエステル樹脂であることが好ましい。ハイブリッド結晶性ポリエステル樹脂は、一種を単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。また、ハイブリッド結晶性ポリエステル樹脂は、上記結晶性ポリエステル樹脂の全量と置き換えられていてもよいし、一部と置き換えられていてもよい。
【0093】
〔ハイブリッド結晶性ポリエステル樹脂〕
本発明に係る結晶性樹脂は、結晶性ポリエステル樹脂が好ましく、低温定着性の観点から、結晶性ポリエステル樹脂は、結晶性ポリエステル樹脂の構造と非晶性樹脂の構造とを含むハイブリッド結晶性ポリエステル樹脂であることが好ましい。ハイブリッド結晶性ポリエステル樹脂は、非晶性樹脂の構造を含むため、非晶性樹脂との相溶性が高まり、結着樹脂中において、より微分散状態を保つことができ、かつ、結晶性ポリエステル樹脂の構造を含むため、定着時に結晶性樹脂のシャープメルト性がより発揮され、低温定着性が向上する。また、トナー母体粒子がコア・シェル構造を有する場合、コア部にハイブリッド結晶性ポリエステル樹脂を含有させることが、トナー母体粒子表面に結晶性ポリエステル樹脂が露出しづらくなる観点から、好ましい。
【0094】
ハイブリッド結晶性ポリエステル樹脂は、結晶性ポリエステル重合セグメントと、非晶性重合セグメントとが化学的に結合している構造を有する樹脂である。結晶性ポリエステル重合セグメントとは、結晶性ポリエステル樹脂に由来する部分を意味する。すなわち、前述した結晶性ポリエステル樹脂を構成する分子鎖と同じ化学構造の分子鎖を意味する。また、非晶性重合セグメントとは、非晶性樹脂に由来する部分を意味する。すなわち、後述する非晶性樹脂を構成する分子鎖と同じ化学構造の分子鎖を意味する。
【0095】
ハイブリッド結晶性ポリエステル樹脂の重量平均分子量(Mw)は、20000~50000の範囲内であることが好ましい。Mwを50000以下とすることにより、十分な低温定着性が得られる。一方、Mwを20000以上とすることにより、トナー保管時において、当該ハイブリッド樹脂と非晶性樹脂との相溶が過剰に進行することが抑制され、トナー同士の融着による画像不良を抑制できる。当該重量平均分子量の測定は、前述した結晶性樹脂の分子量の測定方法を適用できる。
【0096】
同様の理由から、ハイブリッド結晶性ポリエステル樹脂の数平均分子量(Mn)は、3000~12500の範囲内であることが好ましく、4000~11000の範囲内であることがより好ましい。
【0097】
結晶性樹脂が、ハイブリッド結晶性ポリエステル樹脂を含む場合、ハイブリッド結晶性ポリエステル樹脂の含有量は、結着樹脂の総質量に対して、2~20質量%の範囲内であることが好ましく、5~20質量%の範囲内であることがより好ましく、7~15質量%の範囲内であることがさらに好ましい。ハイブリッド結晶性ポリエステル樹脂の含有量が、2質量%以上であれば、低温定着性に優れ、20質量%以下であれば、耐熱性に優れる。
【0098】
化学的結合の構造については、特に限定されず、ブロック共重合体であってもよく、グラフト共重合体であってもよいが、結晶性ポリエステル重合セグメントが、非晶性重合セグメントを主鎖として、グラフト化されている構造であることが好ましい。すなわち、ハイブリッド結晶性ポリエステル樹脂は、主鎖として非晶性重合セグメントを有し、側鎖として結晶性ポリエステル重合セグメントを有するグラフト共重合体であることが好ましい。
【0099】
以下、このような構造を有するハイブリッド結晶性ポリエステル樹脂について説明する。
【0100】
(結晶性ポリエステル重合セグメント)
結晶性ポリエステル重合セグメントとは、結晶性ポリエステル樹脂に由来する部分を指す。すなわち、結晶性ポリエステル樹脂を構成するものと同じ化学構造の分子鎖を指す。
【0101】
結晶性ポリエステル重合セグメントは、前述した結晶性ポリエステル樹脂と同義であり、多価カルボン酸と、多価アルコールとの重縮合反応によって得られる公知のポリエステル樹脂に由来する部分である。結晶性ポリエステル重合セグメントは、多価カルボン酸及び多価アルコールから、前述した結晶性ポリエステル樹脂と同様に合成され得る。なお、結晶性ポリエステル重合セグメントを構成する多価カルボン酸成分及び多価アルコール成分については、前述の結晶性ポリエステル樹脂で説明した「多価カルボン酸」と「多価アルコール」項目の内容と同様であるため、説明を省略する。
【0102】
結晶性ポリエステル重合セグメントの含有量は、ハイブリッド結晶性ポリエステル樹脂の総質量に対して、80~98質量%の範囲内であることが好ましく、90~95質量%の範囲内であることがより好ましい。上記範囲内であることにより、ハイブリッド結晶性ポリエステル樹脂に十分な結晶性を付与することができる。なお、ハイブリッド結晶性ポリエステル樹脂(あるいはトナー粒子)中の各セグメントの構成成分及びその含有量は、例えば、核磁気共鳴(NMR)測定、メチル化反応熱分解ガスクロマトグラフィー/質量分析法(Py-GC/MS)などの公知の分析方法を利用することにより特定することができる。
【0103】
結晶性ポリエステル重合セグメントは、非晶性重合セグメントとの化学的な結合部位を当該セグメント中に導入する観点から、不飽和結合を有するモノマーを含むことが好ましい。不飽和結合を有するモノマーは、例えば、二重結合を有する多価カルボン酸及び多価アルコールであり、その例としては、メチレンコハク酸、フマル酸、マレイン酸、3-ヘキセンジオイック酸、3-オクテンジオイック酸などの多価カルボン酸;2-ブテン-1,4-ジオール、3-ブテン-1,6-ジオール及び4-ブテン-1,8-ジオールなどの多価アルコールが挙げられる。結晶性ポリエステル重合セグメントにおける、不飽和結合を有するモノマーに由来する構成単位の含有量は、結晶性ポリエステル重合セグメントの総質量に対して、0.5~20質量%の範囲内であることが好ましい。
【0104】
なお、ハイブリッド結晶性ポリエステル樹脂には、さらにスルホン酸基、カルボキシ基、ウレタン基などの官能基が導入されていてもよい。上記官能基の導入は、結晶性ポリエステル重合セグメント中でもよいし、非晶性重合セグメント中であってもよい。
【0105】
(非晶性重合セグメント)
非晶性重合セグメントとは、非晶性樹脂に由来する部分を指す。すなわち、非晶性樹脂を構成するものと同じ化学構造の分子鎖を指す。非晶性重合セグメントは、本発明に係る結着樹脂に非晶性樹脂が含まれる場合に、ハイブリッド結晶性ポリエステル樹脂と非晶性樹脂との相溶性を高める。このため、ハイブリッド結晶性樹脂が、非晶性樹脂中に取り込まれやすくなり、トナーの帯電均一性がより一層向上する。ハイブリッド結晶性ポリエステル樹脂(あるいはトナー粒子)中の非晶性重合セグメントの構成成分及びその含有量は、例えば、核磁気共鳴(NMR)測定、メチル化反応熱分解ガスクロマトグラフィー/質量分析法(Py-GC/MS)などの公知の分析方法を利用することにより特定することができる。
【0106】
また、非晶性重合セグメントは、同じ化学構造及び分子量を有する樹脂について示差走査熱量測定(DSC)を行った時に、融点を有さず、比較的高いガラス転移温度(Tg)を有する重合セグメントである。非晶性重合セグメントは、非晶性樹脂と同様に、DSCの1回目の昇温過程におけるガラス転移温度(Tg)が、30~80℃の範囲内であることが好ましく、40~65℃の範囲内であることがより好ましい。なお、ガラス転移温度(Tg)は、非晶性樹脂のTgと同様の方法で測定することができる。
【0107】
非晶性重合セグメントは、結着樹脂に含まれる非晶性樹脂(例えば、ビニル樹脂など)と同種の樹脂で構成されることが、結着樹脂との相溶性を高め、トナーの帯電均一性を高める観点から好ましい。このような形態とすることにより、ハイブリッド結晶性ポリエステル樹脂と非晶性樹脂との相溶性がより向上する。「同種の樹脂」とは、繰り返し単位中に特徴的な化学結合を有する樹脂同士のことを意味する。
【0108】
「特徴的な化学結合」とは、物質・材料研究機構(NIMS)物質・材料データベース(http://polymer.nims.go.jp/PoLyInfo/guide/jp/term_polymer.html)に記載の「ポリマー分類」に従う。すなわち、ポリアクリル、ポリアミド、ポリ酸無水物、ポリカーボネート、ポリジエン、ポリエステル、ポリハロオレフィン、ポリイミド、ポリイミン、ポリケトン、ポリオレフィン、ポリエーテル、ポリフェニレン、ポリホスファゼン、ポリシロキサン、ポリスチレン、ポリスルフィド、ポリスルホン、ポリウレタン、ポリウレア、ポリビニル及びその他のポリマーの計22種によって分類されたポリマーを構成する化学結合を「特徴的な化学結合」という。
【0109】
また、樹脂が共重合体である場合における「同種の樹脂」とは、共重合体を構成する複数のモノマー種の化学構造において、上記化学結合を有するモノマー種を構成単位としている場合、特徴的な化学結合を共通に有する樹脂同士を意味する。したがって、樹脂自体の示す特性が互いに異なる場合や、共重合体中を構成するモノマー種のモル成分比が互いに異なる場合であっても、特徴的な化学結合を共通に有していれば同種の樹脂とみなす。
【0110】
例えば、スチレン、ブチルアクリレート及びアクリル酸によって形成される樹脂(又は重合セグメント)と、スチレン、ブチルアクリレート及びメタクリル酸によって形成される樹脂(又は重合セグメント)とは、少なくともポリアクリルを構成する化学結合を有しているため、これらは同種の樹脂である。更に例示すると、スチレン、ブチルアクリレート及びアクリル酸によって形成される樹脂(又は重合セグメント)と、スチレン、ブチルアクリレート、アクリル酸、テレフタル酸及びフマル酸によって形成される樹脂(又は重合セグメント)とは、互いに共通する化学結合として、少なくともポリアクリルを構成する化学結合を有している。従って、これらは同種の樹脂である。
【0111】
結晶性ポリエステル重合セグメントとの化学的な結合部位を非晶性重合セグメントに導入する観点から、非晶性重合セグメントは、後述の両性化合物をモノマーに含有することが、好ましい。両性化合物に由来する構成単位の含有量は、非晶性重合セグメントの総質量に対して、0.5~20質量%の範囲内であることが好ましい。
【0112】
ハイブリッド結晶性ポリエステル樹脂に十分な結晶性を付与する観点から、非晶性重合セグメントの含有量は、ハイブリッド結晶性ポリエステル樹脂の総質量に対して、2~20質量%の範囲内であることが好ましく、3~15質量%の範囲内であることがより好ましく、5~10質量%の範囲内であることがさらに好ましく、7~9質量%の範囲内であることが特に好ましい。
【0113】
非晶性重合セグメントを構成する樹脂成分は、特に限定されないが、例えば、ビニル重合セグメント、ウレタン重合セグメント、ウレア重合セグメントなどが挙げられる。中でも、熱可塑性の観点から、ビニル重合セグメントであることが好ましい。
【0114】
また、ビニル重合セグメントを用いる場合、結着樹脂中の非晶性樹脂としては、ビニル樹脂を用いることが好ましく、さらに、結着樹脂中において、ビニル樹脂が最も多い割合で含有されることが好ましい。これにより、ビニル重合セグメントとビニル樹脂との相溶性が高まり、結着樹脂中において、ハイブリッド結晶性ポリエステル樹脂が、より微分散状態を保つことができ、定着時には、結晶性樹脂のシャープメルト性がより発揮されやすい。ビニル重合セグメントは、ビニル樹脂と同様にして合成され得る。
【0115】
ビニル重合セグメントとしては、ビニル化合物を重合したものであれば特に限定されないが、例えば、アクリル酸エステル重合セグメント、スチレン-アクリル酸エステル重合セグメント、エチレン-酢酸ビニル重合セグメントなどが挙げられる。これらは一種を単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0116】
上記のビニル重合セグメントの中でも、熱定着時の可塑性を考慮すると、スチレン-アクリル酸エステル重合セグメント(単に、「スチレン-アクリル重合セグメント」ともいう。)が好ましい。したがって、以下では、非晶性重合セグメントとしてのスチレン-アクリル重合セグメントについて説明する。
【0117】
(スチレン-アクリル重合セグメント)
スチレン-アクリル重合セグメントは、少なくとも、スチレン単量体と、(メタ)アクリル酸エステル単量体と、を付加重合させて形成されるものである。ここでいうスチレン単量体は、CH2=CH-C6H5の構造式で表されるスチレンの他に、スチレン構造中に公知の側鎖や官能基を有する構造を含むものである。また、ここでいう(メタ)アクリル酸エステル単量体は、CH2=CHCOOR(Rはアルキル基)で表されるアクリル酸エステル化合物や、メタクリル酸エステル化合物の他に、アクリル酸エステル誘導体やメタクリル酸エステル誘導体等の構造中に公知の側鎖や官能基を有するエステル化合物を含むものである。
【0118】
以下に、スチレン-アクリル重合セグメントの形成が可能なスチレン単量体及び(メタ)アクリル酸エステル単量体の具体例を示すが、本発明で使用されるスチレン-アクリル重合セグメントの形成に使用可能なものは以下に限定されない。
【0119】
(スチレン単量体)
スチレン単量体の具体例としては、例えば、スチレン、o-メチルスチレン、m-メチルスチレン、p-メチルスチレン、α-メチルスチレン、p-フェニルスチレン、p-エチルスチレン、2,4-ジメチルスチレン、p-tert-ブチルスチレン、p-n-ヘキシルスチレン、p-n-オクチルスチレン、p-n-ノニルスチレン、p-n-デシルスチレン、p-n-ドデシルスチレン等が挙げられる。これらスチレン単量体は、一種を単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0120】
((メタ)アクリル酸エステル単量体)
また、(メタ)アクリル酸エステル単量体の具体例としては、例えば、メチルアクリレート、エチルアクリレート、イソプロピルアクリレート、n-ブチルアクリレート、t-ブチルアクリレート、イソブチルアクリレート、n-オクチルアクリレート、2-エチルヘキシルアクリレート、ステアリルアクリレート、ラウリルアクリレート、フェニルアクリレート等のアクリル酸エステル単量体;メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、n-ブチルメタクリレート、イソプロピルメタクリレート、イソブチルメタクリレート、t-ブチルメタクリレート、n-オクチルメタクリレート、2-エチルヘキシルメタクリレート、ステアリルメタクリレート、ラウリルメタクリレート、フェニルメタクリレート、ジエチルアミノエチルメタクリレート、ジメチルアミノエチルメタクリレート等のメタクリル酸エステル等が挙げられる。これらのうち、長鎖アクリル酸エステル単量体を使用することが好ましい。具体的には、メチルアクリレート、n-ブチルアクリレート、2-エチルヘキシルアクリレートが好ましい。
【0121】
なお、本明細書中、「(メタ)アクリル酸エステル単量体」とは、「アクリル酸エステル単量体」と「メタクリル酸エステル単量体」とを総称したもので、例えば、「(メタ)アクリル酸メチル」は「アクリル酸メチル」と「メタクリル酸メチル」とを総称したものである。
【0122】
これらのアクリル酸エステル単量体又はメタクリル酸エステル単量体は、一種を単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。すなわち、スチレン単量体と二種以上のアクリル酸エステル単量体とを用いて共重合体を形成すること、スチレン単量体と二種以上のメタクリル酸エステル単量体とを用いて共重合体を形成すること、あるいは、スチレン単量体とアクリル酸エステル単量体及びメタクリル酸エステル単量体とを併用して共重合体を形成することのいずれも可能である。
【0123】
スチレン-アクリル重合セグメント中のスチレン単量体に由来する構成単位の含有量は、可塑性の観点から、スチレン-アクリル重合セグメントの総質量に対し、40~90質量%の範囲内であることが好ましい。また、同様の観点から、スチレン-アクリル重合セグメント中の(メタ)アクリル酸エステル単量体に由来する構成単位の含有量は、スチレン-アクリル重合セグメントの総質量に対し、10~60質量%の範囲内であることが好ましい。
【0124】
さらに、スチレン-アクリル重合セグメントは、上記スチレン単量体及び(メタ)アクリル酸エステル単量体の他、上記結晶性ポリエステル重合セグメントに化学的に結合するための化合物が付加重合されてなることが好ましい。具体的には、上記結晶性ポリエステル重合セグメントに含まれる、多価アルコール成分由来のヒドロキシ基[-OH]又は多価カルボン酸成分由来のカルボキシ基[-COOH]とエステル結合する化合物を用いることが好ましい。したがって、スチレン-アクリル重合セグメントは、上記スチレン単量体及び(メタ)アクリル酸エステル単量体に対して付加重合可能であり、かつ、カルボキシ基[-COOH]又はヒドロキシ基[-OH]を有する化合物をさらに重合してなることが好ましい。
【0125】
このような化合物としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、イタコン酸、ケイ皮酸、フマル酸、マレイン酸モノアルキルエステル、イタコン酸モノアルキルエステル等のカルボキシ基を有する化合物;2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、3-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート等のヒドロキシ基を有する化合物が挙げられる。
【0126】
スチレン-アクリル重合セグメント中の上記化合物に由来する構成単位の含有量は、上記結晶性ポリエステル重合セグメントとの化学的な結合部位をスチレン-アクリル重合セグメントに導入する観点から、スチレン-アクリル重合セグメントの総質量に対し、0.5~20質量%の範囲内であることが好ましい。
【0127】
スチレン-アクリル重合セグメントの形成方法は、特に限定されず、公知の油溶性あるいは水溶性の重合開始剤を使用して単量体を重合する方法が挙げられる。油溶性の重合開始剤としては、具体的には、以下に示すアゾ系又はジアゾ系重合開始剤や過酸化物系重合開始剤がある。
【0128】
(アゾ系又はジアゾ系重合開始剤)
アゾ系又はジアゾ系重合開始剤としては、2,2’-アゾビス-(2,4-ジメチルバレロニトリル)、2,2’-アゾビスイソブチロニトリル、1,1’-アゾビス(シクロヘキサン-1-カルボニトリル)、2,2’-アゾビス-4-メトキシ-2,4-ジメチルバレロニトリル、アゾビスイソブチロニトリル等が挙げられる。
【0129】
(過酸化物系重合開始剤)
過酸化物系重合開始剤としては、ベンゾイルパーオキサイド、メチルエチルケトンパーオキサイド、ジイソプロピルパーオキシカーボネート、クメンヒドロパーオキサイド、t-ブチルヒドロパーオキサイド、ジ-t-ブチルパーオキサイド、t-ブチルパーオキシピバレート、ジクミルパーオキサイド、2,4-ジクロロベンゾイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、2,2-ビス-(4,4-t-ブチルパーオキシシクロヘキシル)プロパン、トリス-(t-ブチルパーオキシ)トリアジン等が挙げられる。
【0130】
また、乳化重合法で樹脂粒子を形成する場合は、水溶性ラジカル重合開始剤が使用できる。水溶性ラジカル重合開始剤としては、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム等の過硫酸塩、アゾビスアミノジプロパン酢酸塩、アゾビスシアノ吉草酸及びその塩、過酸化水素等が挙げられる。
【0131】
(ハイブリッド結晶性ポリエステル樹脂の製造方法)
ハイブリッド結晶性ポリエステル樹脂の製造方法は、上記結晶性ポリエステル重合セグメントと、非晶性重合セグメントとを化学結合させた構造の重合体を形成することが可能な方法であれば、特に限定されない。ハイブリッド結晶性ポリエステル樹脂の具体的な製造方法としては、例えば、以下に示す第1から第3までの製造方法によって製造することができる。
【0132】
(第1の製造方法)
第1の製造方法は、予め合成された非晶性重合セグメントの存在下で、結晶性ポリエステル重合セグメントを合成する重合反応を行って、ハイブリッド結晶性ポリエステル樹脂を製造する方法である。
【0133】
(第2の製造方法)
第2の製造方法は、結晶性ポリエステル重合セグメントと非晶性重合セグメントとをそれぞれ形成しておき、これらを結合させて、ハイブリッド結晶性ポリエステル樹脂を製造する方法である。
【0134】
(第3の製造方法)
第3の製造方法は、結晶性ポリエステル重合セグメントの存在下で、非晶性重合セグメントを合成する重合反応を行って、ハイブリッド結晶性ポリエステル樹脂を製造する方法である。
【0135】
上記第1から第3までの製造方法の中でも、第1の製造方法は、非晶性重合鎖(非晶性樹脂鎖)に結晶性ポリエステル重合鎖(結晶性ポリエステル樹脂鎖)をグラフト化した構造のハイブリッド結晶性ポリエステル樹脂を合成しやすいことや、生産工程を簡素化できるため好ましい。第1の製造方法は、非晶性重合セグメントを予め形成してから結晶性ポリエステル重合セグメントを結合させるため、結晶性ポリエステル重合セグメントの配向が均一になりやすい。したがって、本発明のトナーに適したハイブリッド結晶性ポリエステル樹脂合成しやすい観点から好ましい。
【0136】
<1.1.2.2 非晶性樹脂>
本発明に係るトナー母体粒子は、結着樹脂として、結晶性樹脂の他に非晶性樹脂を含むことが好ましい。非晶性樹脂とは、前述の「結晶性」を有さない樹脂であり、トナー母体粒子中に非晶性樹脂を含むことにより、加熱定着の際、結晶性樹脂と非晶性樹脂とが相溶し、トナーの低温定着性が向上する。
【0137】
すなわち、非晶性樹脂とは、示差走査熱量測定(DSC)を行ったときに、得られる吸熱曲線において、融点を有さず(即ち、昇温時の前述の明確な吸熱ピークがなく)、比較的高いガラス転移温度(Tg)を有する樹脂である。
【0138】
本発明において、非晶性樹脂のTgは、35~80℃の範囲内であることが好ましく、45~65℃の範囲内であることがより好ましい。
【0139】
低温定着性、耐ホットオフセット性及び耐熱性の両立の観点から、トナー母体粒子がコア・シェル構造を有することが好ましく、当該コア・シェル構造のコア部に、3層構造の離型剤(ワックス)含有非晶性樹脂(例えば、離型剤含有非晶性ビニル樹脂)の粒子が含まれる場合、当該粒子の最外層を構成する非晶性樹脂のTgは、55~65℃の範囲内であることが好ましい。
【0140】
上記ガラス転移温度は、ASTMD3418-82に規定された方法(DSC法)にしたがって測定することができる。測定には、DSC-7示差走査カロリメーター(パーキンエルマー社製)、TAC7/DX熱分析装置コントローラ(パーキンエルマー社製)などを用いることができる。
【0141】
非晶性樹脂の重量平均分子量(Mw)は、可塑性の観点から、20000~150000の範囲内であることが好ましく、25000~130000の範囲内であることがより好ましい。また、非晶性樹脂の数平均分子量(Mn)は、可塑性の観点から、5000~150000の範囲内であることが好ましく、8000~70000の範囲内であることがより好ましい。非晶性樹脂の分子量は、前述の結晶性樹脂の分子量の測定方法と同様にして測定できる。
【0142】
非晶性樹脂と結晶性樹脂との質量比(非晶性樹脂/結晶性樹脂)は98/2~80/20の範囲内であることが好ましく、より好ましくは95/5~80/20の範囲内である。質量比が上記範囲内であることにより、トナー母体粒子の表面に結晶性樹脂が露出せず、又は、露出してもその量が極めて少なく、かつ、低温定着性を図ることができるだけの量の結晶性樹脂をトナー粒子に導入することができる。
【0143】
非晶性樹脂は、上記の結晶性樹脂と共に結着樹脂として用いられ、トナー母体粒子を構成することが好ましい。非晶性樹脂が含まれることにより、適度な定着画像強度、及び画像光沢が得られると共に、温湿度の変動環境下においても良好な帯電特性を付与できる。
【0144】
また、本発明に係るトナー母体粒子は、コア・シェル構造を有する場合、トナー母体粒子中の分散状態の制御性や帯電特性の観点から、非晶性ビニル樹脂と結晶性ポリエステル樹脂とがコア部を構成することが好ましく、ハイブリッド非晶性ポリエステル樹脂がシェル層を構成することが好ましい。
【0145】
非晶性樹脂は、一種を単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。非晶性樹脂の例としては、ビニル樹脂、ウレタン樹脂、ウレア樹脂及びスチレン-アクリル変性ポリエステル樹脂などの非晶性ポリエステル樹脂が挙げられる。非晶性樹脂は、熱可塑性の観点から、非晶性ビニル樹脂(単に、ビニル樹脂ともいう)を含むのが好ましい。これらの非晶性樹脂は、公知の合成法又は市販品によって入手できる。
【0146】
以下、ビニル樹脂について説明する。
【0147】
(ビニル樹脂)
本発明に係る結着樹脂は、ビニル樹脂が主成分であることが好ましい。ビニル樹脂を主成分とすることにより、結晶性樹脂と非晶性樹脂との相溶・非相溶の調整がしやすく、結着樹脂中、特に主成分のビニル樹脂中で、結晶性ポリエステル樹脂がより微分散状態を保つことができるため、定着時に、結晶性ポリエステル樹脂のシャープメルト性がより発揮される。
【0148】
ビニル樹脂の含有量は、結着樹脂の総質量に対して、50質量%以上が好ましく、70質量%以上がより好ましく、80質量%以上が更に好ましく、85質量%以上が特に好ましい。ビニル樹脂を主成分(結着樹脂の総質量に対して50質量%以上)とすることで、結晶性樹脂との相溶性を調整しやすく、低温定着性と耐熱性を両立できる。なお、ビニル樹脂の含有量の上限は、特に限定されないが、結着樹脂の総質量に対して、98質量%以下が好ましく、95質量%以下がより好ましく、93質量%以下がさらに好ましい。
【0149】
本発明に係る結着樹脂は、ビニル樹脂を主成分とし、さらに非晶性ポリエステル樹脂を含むことが好ましい。非晶性ポリエステル樹脂を含むことにより、さらに、結晶性樹脂との相溶性を調整しやすいためである。
【0150】
また、トナー母体粒子がコア・シェル構造を有する場合、非晶性ポリエステル樹脂は、ビニル樹脂よりも耐熱性が優れているため、非晶性ポリエステル樹脂を用いたシェル層を設けることにより、トナーの耐熱性及び低温定着性を両立できる。このような観点から、非晶性ポリエステル樹脂の含有量は、結着樹脂の総質量に対して、2~20質量%の範囲内であることが好ましく、3~18質量%の範囲内であることがより好ましく、4~15質量%の範囲内であることがさらに好ましい。
【0151】
本発明において、ビニル樹脂は、例えば、ビニル化合物の重合体であり、その例としては、アクリル酸エステル樹脂、スチレン-アクリル酸エステル樹脂、エチレン-酢酸ビニル樹脂などが挙げられる。これらは、一種を単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。中でも、熱定着時の可塑性の観点から、スチレン-アクリル酸エステル樹脂(スチレン-アクリル樹脂)が好ましい。なお、スチレン-アクリル樹脂で用いられるスチレン単量体及び(メタ)アクリル酸エステル単量体は、前述した「スチレン単量体」、「(メタ)アクリル酸エステル単量体」の項目で説明した内容と同様のものを用いてもよい。
【0152】
スチレン-アクリル樹脂は、少なくとも、スチレン単量体と(メタ)アクリル酸エステル単量体とを付加重合させて形成される。スチレン単量体は、CH2=CH-C6H5の構造式で表されるスチレンの他に、スチレン構造中に公知の側鎖や官能基を有するスチレン誘導体を含む。
【0153】
また、(メタ)アクリル酸エステル単量体は、CH(R1)=CHCOOR2(R1は水素原子又はメチル基を表し、R2は炭素数が1~24のアルキル基を表す)で表されるアクリル酸エステルやメタクリル酸エステルの他に、これらのエステルの構造中に公知の側鎖や官能基を有するアクリル酸エステル誘導体やメタクリル酸エステル誘導体を含む。
【0154】
スチレン単量体の例には、スチレン、o-メチルスチレン、m-メチルスチレン、p-メチルスチレン、α-メチルスチレン、p-フェニルスチレン、p-エチルスチレン、2,4-ジメチルスチレン、p-tert-ブチルスチレン、p-n-ヘキシルスチレン、p-n-オクチルスチレン、p-n-ノニルスチレン、p-n-デシルスチレン及びp-n-ドデシルスチレンが含まれる。
【0155】
(メタ)アクリル酸エステル単量体の例には、メチルアクリレート、エチルアクリレート、イソプロピルアクリレート、n-ブチルアクリレート、t-ブチルアクリレート、イソブチルアクリレート、n-オクチルアクリレート、2-エチルヘキシルアクリレート、ステアリルアクリレート、ラウリルアクリレート及びフェニルアクリレートなどのアクリル酸エステル単量体;メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、n-ブチルメタクリレート、イソプロピルメタクリレート、イソブチルメタクリレート、t-ブチルメタクリレート、n-オクチルメタクリレート、2-エチルヘキシルメタクリレート、ステアリルメタクリレート、ラウリルメタクリレート、フェニルメタクリレート、ジエチルアミノエチルメタクリレート、ジメチルアミノエチルメタクリレートなどのメタクリル酸エステル単量体;が含まれる。
【0156】
なお、本明細書において、「(メタ)アクリル酸エステル単量体」とは、「アクリル酸エステル単量体」と「メタクリル酸エステル単量体」との総称であり、それらの一方又は両方を意味する。たとえば、「(メタ)アクリル酸メチル」は、「アクリル酸メチル」及び「メタクリル酸メチル」の一方又は両方を意味する。
【0157】
上記(メタ)アクリル酸エステル単量体は、一種を単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。例えば、スチレン単量体と二種以上のアクリル酸エステル単量体とを用いて共重合体を形成すること、スチレン単量体と二種以上のメタクリル酸エステル単量体とを用いて共重合体を形成すること、及び、スチレン単量体とアクリル酸エステル単量体及びメタクリル酸エステル単量体とを併用して共重合体を形成すること、のいずれも可能である。
【0158】
可塑性の観点から、スチレン単量体に由来する構成単位の含有量は、非晶性樹脂の総質量に対して、40~90質量%の範囲内であることが好ましい。また、(メタ)アクリル酸エステル単量体に由来する構成単位の含有量は、非晶性樹脂の総質量に対して、10~60質量%の範囲内であることが好ましい。
【0159】
非晶性樹脂は、上記スチレン単量体及び(メタ)アクリル酸エステル単量体以外の他の単量体に由来する構成単位を更に含有していてもよい。他の単量体は、多価アルコール由来のヒドロキシ基[-OH]又は多価カルボン酸由来のカルボキシ基[-COOH]とエステル結合する化合物であることが好ましい。すなわち、非晶性樹脂は、上記スチレン単量体及び(メタ)アクリル酸エステル単量体に対して付加重合可能であり、かつ、両性化合物(カルボキシ基又はヒドロキシ基を有する化合物)がさらに重合してなる重合体であることが好ましい。
【0160】
本発明における「両性化合物」とは、結晶性ポリエステル重合セグメントと非晶性重合セグメントを結合するモノマーであり、分子内に結晶性ポリエステル重合セグメントと反応し得るヒドロキシ基、カルボキシ基、エポキシ基、第1級アミノ基、第2級アミノ基等の置換基と、非晶性重合セグメントと反応し得るエチレン性不飽和基と、を有するモノマーである。中でも、ヒドロキシ基又はカルボキシ基と、エチレン性不飽和基とを有するビニルカルボン酸が好ましい。
【0161】
上記両性化合物の例としては、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、イタコン酸、ケイ皮酸、フマル酸、マレイン酸モノアルキルエステル、イタコン酸モノアルキルエステル等などのカルボキシ基を有する化合物;2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、3-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレートなどのヒドロキシ基を有する化合物;が挙げられる。
【0162】
上記両性化合物に由来する構成単位の含有量は、非晶性樹脂の総質量に対して、0.5~20質量%の範囲内であることが好ましい。
【0163】
上記スチレン-アクリル樹脂は、公知の油溶性又は水溶性の重合開始剤を使用して単量体を重合する方法によって合成することができる。油溶性の重合開始剤の例としては、アゾ系又はジアゾ系重合開始剤、及び、過酸化物系重合開始剤、が挙げられる。具体的には、前述のスチレン-アクリル重合セグメントの形成方法と同様であるため、ここでは説明を省略する。
【0164】
非晶性ビニル樹脂の重量平均分子量(Mw)は、20000~150000の範囲内であることが好ましく、また、数平均分子量(Mn)は、5000~150000の範囲内であることが、低温定着性及び耐ホットオフセット性の両立の観点から、好ましい。重量平均分子量(Mw)及び数平均分子量(Mn)は、前述の結晶性樹脂の場合と同様にして測定できる。
【0165】
非晶性ビニル樹脂のガラス転移温度(Tg)は、定着性及び耐ホットオフセット性の両立の観点から、35~80℃の範囲内であることが好ましい。なお、ガラス転移温度は、前述の非晶性樹脂の場合と同様にして測定することができる。
【0166】
(ハイブリッド非晶性ポリエステル樹脂)
本発明に係る結着樹脂は、非晶性ビニル樹脂との併用時に適度な相溶性が得られ、トナー母体粒子の形状制御性や定着画像強度の観点から、ハイブリッド非晶性ポリエステル樹脂を含むことが好ましい。ハイブリッド非晶性ポリエステル樹脂を含むことで、相溶・非相溶及び結晶化が調整しやすくなる。なお、ハイブリッド非晶性ポリエステル樹脂は、一部が変性された変性非晶性ポリエステル樹脂ともいえる。
【0167】
ハイブリッド非晶性ポリエステル樹脂の重量平均分子量(Mw)は、20000~50000の範囲内であることが好ましい。上記範囲内であることにより、相溶・非相溶及び結晶化を、より調整しやすい。また、ハイブリッド非晶性ポリエステル樹脂の数平均分子量(Mn)は、3000~12500の範囲内であることが好ましい。分子量は、前述の結晶性樹脂の場合と同様にして測定できる。
【0168】
ハイブリッド非晶性ポリエステル樹脂は、非晶性ポリエステル重合セグメントと、非晶性ポリエステル以外の非晶性重合セグメント、好ましくは非晶性ビニル重合セグメントとが化学的に結合した樹脂である。
【0169】
非晶性ポリエステル重合セグメントとは、非晶性ポリエステル樹脂に由来する部分を指す。すなわち、非晶性ポリエステル樹脂を構成するものと同じ化学構造の分子鎖を指す。また、非晶性ポリエステル以外の非晶性重合セグメントとは、非晶性ポリエステル樹脂以外の非晶性樹脂に由来する部分を示す。非晶性ポリエステル樹脂以外の非晶性樹脂としては、例えば、スチレン-アクリル樹脂などのビニル樹脂、ウレタン樹脂、ウレア樹脂などが挙げられる。非晶性ポリエステル以外の非晶性重合セグメントは、一種を単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0170】
したがって、好適な非晶性ビニル重合セグメントとは、非晶性ビニル樹脂に由来する部分を指す。すなわち、非晶性ビニル樹脂を構成するものと同じ化学構造の分子鎖を指す。
【0171】
ハイブリッド非晶性ポリエステル樹脂は、非晶性ポリエステル重合セグメントと、非晶性ポリエステル以外の非晶性重合セグメント、特に非晶性ビニル重合セグメントとを含むものであれば、ブロック共重合体、グラフト共重合体などいずれの形態であってもよいが、グラフト共重合体であることが好ましい。グラフト共重合体とすることにより、低温定着性、耐ホットオフセット性及び離型分離性を両立できる。
【0172】
さらに、上記観点から、非晶性ポリエステル重合セグメントが、非晶性ポリエステル以外の非晶性重合セグメント、特に非晶性ビニル重合セグメントを主鎖として、グラフト化されている構造であることが好ましい。すなわち、ハイブリッド非晶性ポリエステル樹脂は、主鎖として非晶性ポリエステル以外の非晶性重合セグメント、特に非晶性ビニル重合セグメントを有し、側鎖として非晶性ポリエステル重合セグメントを有するグラフト共重合体であることが好ましい。
【0173】
ハイブリッド非晶性ポリエステル樹脂の含有量は、結着樹脂の総質量に対して、3~20質量%の範囲内であることが好ましく、5~15質量%の範囲内であることがより好ましい。
【0174】
(非晶性ポリエステル重合セグメント)
非晶性ポリエステル重合セグメントは、2価以上のカルボン酸(多価カルボン酸成分)と、2価以上のアルコール(多価アルコール成分)との重縮合反応によって得られる公知のポリエステル樹脂に由来する部分であって、DSCにおいて、明確な吸熱ピークが認められない重合セグメントをいう。
【0175】
非晶性ポリエステル重合セグメントは、上記定義したとおりであれば、特に限定されない。例えば、非晶性ポリエステル重合セグメントによる主鎖に他成分を共重合させた構造を有する樹脂や、非晶性ポリエステル重合セグメントを他成分からなる主鎖に共重合させた構造を有する樹脂は、上記のように、明確な吸熱ピークが認められないものであれば、本発明において、非晶性ポリエステル重合セグメントを有するハイブリッド非晶性ポリエステル樹脂に該当する。
【0176】
(多価カルボン酸成分)
多価カルボン酸成分としては、例えば、シュウ酸、コハク酸、マレイン酸、アジピン酸、β-メチルアジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ノナンジカルボン酸、デカンジカルボン酸、ウンデカンジカルボン酸、ドデカンジカルボン酸、フマル酸、シトラコン酸、ジグリコール酸、シクロヘキサン-3,5-ジエン-1,2-ジカルボン酸、リンゴ酸、クエン酸、ヘキサヒドロテレフタル酸、マロン酸、ピメリン酸、酒石酸、粘液酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、テトラクロロフタル酸、クロロフタル酸、ニトロフタル酸、p-カルボキシフェニル酢酸、p-フェニレン二酢酸、m-フェニレンジグリコール酸、p-フェニレンジグリコール酸、o-フェニレンジグリコール酸、ジフェニル酢酸、ジフェニル-p,p’-ジカルボン酸、ナフタレン-1,4-ジカルボン酸、ナフタレン-1,5-ジカルボン酸、ナフタレン-2,6-ジカルボン酸、アントラセンジカルボン酸、ドデセニルコハク酸などのジカルボン酸;トリメリット酸、ピロメリット酸、ナフタレントリカルボン酸、ナフタレンテトラカルボン酸、ピレントリカルボン酸、ピレンテトラカルボン酸などが挙げられる。これら多価カルボン酸は、一種を単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0177】
これらの中でも、本発明の効果を得やすいという観点から、フマル酸、マレイン酸、メサコン酸などの脂肪族不飽和ジカルボン酸や、イソフタル酸やテレフタル酸などの芳香族ジカルボン酸、コハク酸、トリメリット酸を用いることが好ましい。
【0178】
(多価アルコール成分)
また、多価アルコール成分としては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、ジエチレングリコール、ヘキサンジオール、シクロヘキサンジオール、オクタンジオール、デカンジオール、ドデカンジオール、ビスフェノールAのエチレンオキサイド付加物、ビスフェノールAのプロピレンオキサイド付加物などの2価のアルコール;グリセリン、ペンタエリスリトール、ヘキサメチロールメラミン、ヘキサエチロールメラミン、テトラメチロールベンゾグアナミン、テトラエチロールベンゾグアナミンなどの3価以上のポリオールなどが挙げられる。これら多価アルコール成分は、一種を単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0179】
これらの中でも、本発明の効果を得やすいという観点から、ビスフェノールAのエチレンオキサイド付加物、ビスフェノールAのプロピレンオキサイド付加物などの2価のアルコールが好ましい。
【0180】
上記の多価カルボン酸成分と多価アルコール成分との使用比率は、多価アルコール成分のヒドロキシ基[-OH]と多価カルボン酸成分のカルボキシ基[-COOH]との当量比[-OH]/[-COOH]において、1.5/1~1/1.5の範囲内であることが好ましく、1.2/1~1/1.2の範囲内であることがより好ましい。多価アルコール成分と多価カルボン酸成分との使用比率が、上記範囲内であることにより、非晶性ポリエステル樹脂の酸価及び分子量を制御することがより容易である。
【0181】
非晶性ポリエステル重合セグメントの形成方法は、特に限定されず、公知のエステル化触媒を利用して、上記多価カルボン酸成分及び多価アルコール成分を重縮合する(エステル化する)ことにより当該重合セグメントを形成することができる。
【0182】
非晶性ポリエステル重合セグメントの製造の際に使用可能な触媒としては、上記(結晶性樹脂)の項で説明した触媒と同様であるため、ここでは説明を省略する。
【0183】
重合温度は、特に限定されないが、150~250℃の範囲内であることが好ましい。また、重合時間は、特に限定されないが、0.5~10時間の範囲内であることが好ましい。重合中は、必要に応じて、反応系内を減圧にしてもよい。
【0184】
ハイブリッド非晶性ポリエステル樹脂中の非晶性ポリエステル重合セグメントの含有量は、ハイブリッド非晶性ポリエステル樹脂の総質量に対して50~99.9質量%の範囲内であることが好ましく、70~95質量%の範囲内であることがより好ましい。上記範囲内であることにより、耐熱性及び低温定着性を両立できる。なお、ハイブリッド非晶性ポリエステル樹脂中の各重合セグメントの構成成分及び含有量は、例えば、NMR測定、メチル化反応Py-GC/MS測定により特定することができる。
【0185】
なお、ハイブリッド非晶性ポリエステル樹脂には、さらにスルホン酸基、カルボキシ基、ウレタン基などの置換基が導入されていてもよい。上記置換基の導入は、非晶性ポリエステル重合セグメント中でもよいし、以下で詳説する非晶性ビニル重合セグメント中であってもよい。
【0186】
(非晶性重合セグメント)
本発明においては、非晶性ポリエステル重合セグメント以外の非晶性重合セグメントを、単に「非晶性重合セグメント」ともいう。非晶性重合セグメント(特に、非晶性ビニル重合セグメント)は、結着樹脂中に非晶性ビニル樹脂が含まれる場合に、当該非晶性ビニル樹脂とハイブリッド非晶性ポリエステル樹脂との相溶性を制御することができる。
【0187】
ハイブリッド非晶性ポリエステル樹脂中(さらには、トナー中)に、非晶性重合セグメントを含有することは、例えば、NMR測定、メチル化反応Py-GC/MS測定を用いて化学構造を特定することによって確認することができる。
【0188】
また、非晶性重合セグメントは、当該非晶性重合セグメントと同じ化学構造及び分子量を有する樹脂について示差走査熱量測定(DSC)を行った時に、融点を有さず、比較的高いガラス転移点(Tg)を有する。なお、当該非晶性重合セグメントと同じ化学構造及び分子量を有する樹脂について、ガラス転移温度(Tg)が、35~80℃の範囲内であることが好ましく、45~65℃の範囲内であることがより好ましい。
【0189】
上記ハイブリッド非晶性ポリエステル樹脂中において、非晶性ポリエステル重合セグメントの一部を非晶性重合セグメントに置き換え、非晶性ポリエステル重合セグメントと非晶性重合セグメントが結合した構造を有することが、好ましい。例えば、非晶性ポリエステル重合セグメントと非晶性重合セグメントが結合した重合体による主鎖に、他成分を共重合させた構造を有する樹脂や、非晶性ポリエステル重合セグメントと非晶性重合セグメントを結合した重合体を、他成分からなる主鎖に共重合させた構造を有する樹脂は、本発明において、非晶性重合セグメントを有するハイブリッド非晶性ポリエステル樹脂に該当する。
【0190】
非晶性重合セグメントとしては、特に限定されず、例えば、ビニル化合物を重合したもの、ポリオール成分とイソシアネート成分とを重合したもの、尿素とホルムアルデヒドとを重合したもの等が挙げられる。中でも、ビニル化合物を重合して得られる非晶性ビニル重合セグメントであることが好ましく、例えば、アクリル酸エステル重合セグメント、スチレン-アクリル酸エステル重合セグメント、エチレン-酢酸ビニル重合セグメントなどが挙げられる。これらは一種を単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0191】
上記のビニル重合セグメントの中でも、熱定着時の可塑性を考慮すると、スチレン-アクリル酸エステル重合セグメント(スチレン-アクリル重合セグメント)が好ましい。また、非晶性ビニル樹脂の好適な形態は、スチレン-アクリル樹脂であることから、非晶性ビニル重合セグメントもスチレン-アクリル重合セグメントであることが好ましい。このような形態とすることにより、ハイブリッド非晶性ポリエステル樹脂と非晶性ビニル樹脂との相溶性がより向上し、トナー母体粒子の形状を制御しやすい。
【0192】
スチレン-アクリル重合セグメントの形成に用いられる単量体や形成方法は、上記ハイブリッド結晶性ポリエステル樹脂の項で説明した「スチレン-アクリル重合セグメント」項目の内容と同様であるため、ここでは説明を省略する。
【0193】
ハイブリッド非晶性ポリエステル樹脂中の非晶性重合セグメントの含有量は、ハイブリッド非晶性ポリエステル樹脂の総質量に対して、0.1~50質量%の範囲内であることが好ましく、5~30質量%の範囲内であることがより好ましい。上記範囲内であることにより、結着樹脂中の非晶性樹脂との相溶性がより高くなり、低温定着性、耐ホットオフセット性及び耐熱性を両立できる。
【0194】
ハイブリッド非晶性ポリエステル樹脂の製造方法は、上記非晶性ポリエステル重合セグメントと非晶性重合セグメントとを結合した重合体を形成することができる方法であれば、特に限定されない。ハイブリッド非晶性ポリエステル樹脂の具体的な製造方法としては、例えば、以下に示す方法が挙げられる。
【0195】
(1)非晶性重合セグメントを予め重合しておき、当該非晶性重合セグメントの存在下で非晶性ポリエステル重合セグメントを形成する重合反応を行ってハイブリッド非晶性ポリエステル樹脂を製造する方法。
【0196】
(2)非晶性ポリエステル重合セグメントと非晶性重合セグメントとをそれぞれ形成しておき、これらを結合させてハイブリッド非晶性ポリエステル樹脂を製造する方法。
【0197】
(3)非晶性ポリエステル重合セグメントを予め形成しておき、当該非晶性ポリエステル重合セグメントの存在下で非晶性重合セグメントを形成する重合反応を行ってハイブリッド非晶性ポリエステル樹脂を製造する方法。
【0198】
上記(1)~(3)の形成方法の中でも、(1)の方法は、非晶性重合セグメントに非晶性ポリエステル重合セグメントがグラフト化した構造であるハイブリッド非晶性ポリエステル樹脂を形成し易いことや、生産工程を簡素化できる観点から、好ましい。
【0199】
さらに、トナー母体粒子中には、必要に応じて、着色剤、離型剤、荷電制御剤などの内添剤が含有されていてもよい。
【0200】
<1.1.3 着色剤>
本発明に係る磁性体は、着色剤としての機能も有し得るが、従来使用されている着色剤も併用することができる。
着色剤としては、カーボンブラック、染料、顔料などを任意に使用することができ、カーボンブラックとしてはチャンネルブラック、ファーネスブラック、アセチレンブラック、サーマルブラック、ランプブラックなどが使用される。また、磁性体を、着色剤として使用することもできる。
【0201】
白色の着色剤としては、具体的には、例えば、無機顔料(例えば、重質炭酸カルシウム、軽質炭酸カルシウム、酸化チタン、水酸化アルミニウム、チタンホワイト、タルク、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、酸化亜鉛、酸化マグネシウム、炭酸マグネシウム、非晶質シリカ、コロイダルシリカ、ホワイトカーボン、カオリン、焼成カオリン、デラミネートカオリン、アルミノ珪酸塩、セリサイト、ベントナイト、スメクサイト等)、有機顔料(例えば、ポリスチレン樹脂粒子、尿素ホルマリン樹脂粒子等)が挙げられる。また、中空構造を有する顔料、例えば、中空樹脂粒子、中空シリカ等も挙げられる。帯電性及び隠ぺい性の観点からは、白色の着色剤は、酸化チタンであることが好ましい。酸化チタンは、アナターゼ型、ルチル型、ブルカイト型等いずれの結晶構造も使用できる。
【0202】
白色の着色剤の平均粒子径は、10~1000nmの範囲内であることが好ましく、50~500nmの範囲内であることがより好ましい。また、分散性付与のために表面処理を施してもよい。
【0203】
黒色の着色剤としては、例えば、ファーネスブラック、チャンネルブラック、アセチレンブラック、サーマルブラック、ランプブラック等のカーボンブラック、さらにマグネタイト、フェライト等の磁性粉も用いられる。
【0204】
マゼンタ又はレッド用の着色剤としては、C.I.ピグメントレッド2、C.I.ピグメントレッド3、C.I.ピグメントレッド5、C.I.ピグメントレッド6、C.I.ピグメントレッド7、C.I.ピグメントレッド15、C.I.ピグメントレッド16、C.I.ピグメントレッド48;1、C.I.ピグメントレッド53;1、C.I.ピグメントレッド57;1、C.I.ピグメントレッド122、C.I.ピグメントレッド123、C.I.ピグメントレッド139、C.I.ピグメントレッド144、C.I.ピグメントレッド149、C.I.ピグメントレッド150、C.I.ピグメントレッド166、C.I.ピグメントレッド177、C.I.ピグメントレッド178、ピグメントレッド184、C.I.ピグメントレッド222等が挙げられる。
【0205】
また、オレンジ又はイエロー用の着色剤としては、C.I.ピグメントオレンジ31、C.I.ピグメントオレンジ43、C.I.ピグメントイエロー12、C.I.ピグメントイエロー13、C.I.ピグメントイエロー14、C.I.ピグメントイエロー15、C.I.ピグメントイエロー17、C.I.ピグメントイエロー74、C.I.ピグメントイエロー93、C.I.ピグメントイエロー94、C.I.ピグメントイエロー138、C.I.ピグメントイエロー155、C.I.ピグメントイエロー180、C.I.ピグメントイエロー185等が挙げられる。
【0206】
さらに、グリーン若しくはシアン用の着色剤としては、C.I.ピグメントブルー15、C.I.ピグメントブルー15:2、C.I.ピグメントブルー15:3、C.I.ピグメントブルー15:4、C.I.ピグメントブルー16、C.I.ピグメントブルー60、C.I.ピグメントブルー62、C.I.ピグメントブルー66、C.I.ピグメントグリーン7等が挙げられる。
【0207】
これらは一種を単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0208】
白色以外の有色の着色剤の平均粒子径は、10~1000nmの範囲内であることが好ましく、50~500nmの範囲内であることがより好ましい。
【0209】
着色剤の含有量は、トナー母体粒子の総質量に対して、1~60質量%の範囲内であることが好ましく、2~25質量%の範囲内であることがより好ましい。上記範囲内であることにより、画像の色再現性を確保できる。
【0210】
<1.1.4 離型剤>
本発明のトナーは、離型剤(ワックス)を含むことが好ましい。離型剤には、公知のものを使用することができる。離型剤の例としては、ポリエチレンワックス、ポリプロピレンワックスなどのポリオレフィンワックス、マイクロクリスタリンワックスなどの分枝鎖状炭化水素ワックス;パラフィンワックス、サゾールワックス、フィッシャートロプシュワックスなどの長鎖炭化水素系ワックス;及び、ジステアリルケトンなどのジアルキルケトン系ワックス、カルナウバワックス、モンタンワックス、ベヘニルベヘネート(ベヘン酸ベヘニル)、トリメチロールプロパントリベヘネート、ペンタエリスリトールテトラベヘネート、ペンタエリスリトールジアセテートジベヘネート、グリセリントリベヘネート、1,18-オクタデカンジオールジステアレート、トリメリット酸トリステアリル、ジステアリルマレエート、脂肪酸ポリグリセリンエステルなどのエステル系ワックス、エチレンジアミンベヘニルアミド、トリメリット酸トリステアリルアミドなどのアミド系ワックス;が挙げられる。
【0211】
上記ワックスは、非晶性樹脂と相溶化しやすい。このため、ワックスの可塑効果により、トナー粒子のシャープメルト性が向上し、低温定着性を向上させることができる。より低温定着性を向上させる観点から、ワックスは、エステル系ワックス(エステル系化合物)であることが好ましく、耐熱性及び低温定着性の両立の観点から、直鎖状エステル系ワックス(直鎖状エステル系化合物)であることがより好ましい。これらのワックスは、一種を単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0212】
ワックスの融点は、十分な耐熱保管性、低温定着性及び離型性の観点から、好ましくは40~160℃の範囲内であり、より好ましくは50~120℃の範囲内であり、さらに好ましくは70~80℃の範囲内である。ワックスの融点が、上記範囲内であることにより、トナーの耐熱保管性が確保されるとともに、低温で定着を行う場合でもコールドオフセット等を起こさずに安定したトナー画像が得られる。離型剤の融点は、上記の吸熱ピークのピークトップの温度(融点)の測定方法と同様にして測定することができる。
【0213】
トナー母体粒子中の離型剤の含有量は、トナー母体粒子中の結着樹脂の総質量に対して、3~15質量%の範囲内であることが好ましい。上記範囲内であることにより、耐ホットオフセット性及び離型性を両立できる。離型剤の含有量が、3質量%以上であれば、十分な離型性が得られ、15質量%以下であれば、十分な耐熱性が得られる。
【0214】
<1.1.5 荷電制御剤>
本発明のトナーは、荷電制御剤を含むことが好ましい。なお、本発明のトナーは、磁性トナーであり、負帯電性トナーであることが好ましい。
負帯電用の荷電制御剤としては、特に限定されないが、有機金属錯化合物又はキレート化合物を用いるのが好ましく、例としては、モノアゾ金属錯化合物、アセチルアセトン金属錯化合物、芳香族ハイドロキシカルボン酸又は芳香族ダイカルボン酸の金属錯化合物等が挙げられる。
【0215】
また、市販品を用いることもでき、例としては、Spilon(登録商標)Black TRH、T-77,T-95(保土谷化学工業社製)、BONTRON(登録商標)S-34、S-44、S-54、E-84、E-88、E-89(オリエント化学工業社製)等が挙げられる。荷電制御剤は、一種を単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0216】
帯電量の観点から、荷電制御剤の含有量は、トナー母体粒子中の結着樹脂の総質量に対して、0.1~10質量%の範囲内であることが好ましく、0.1~5質量%の範囲内であることがより好ましい。
【0217】
<1.1.6 トナー母体粒子の構造及び形状>
(トナー母体粒子の構造)
本発明に係るトナー母体粒子の構造は、特に限定されず、いわゆる単層構造であってもよいし、コア・シェル構造であってもよい。電荷減衰の抑制、低温定着性、耐ホットオフセット性及び耐熱保管性の両立の観点から、コア・シェル構造であることが好ましい。
【0218】
コア・シェル構造の一例を以下に示す。
コア部は、少なくとも結着樹脂及び磁性体を含み、さらに、必要に応じて、離型剤等その他の添加剤(内添剤)を含んでもよい。シェル層は、非晶性樹脂を含む。
【0219】
具体的には、コア部は、非晶性ビニル樹脂と結晶性ポリエステル樹脂とを含む結着樹脂、磁性体及び離型剤等の内添剤を含んで構成されることが好ましく、シェル層は、ハイブリッド非晶性ポリエステル樹脂で構成されることが好ましい。
【0220】
コア・シェル構造は、シェル層がコア部の粒子表面を完全に被覆した構造のものに限定されるものではなく、例えば、シェル層がコア部の粒子表面を完全に被覆せず、所々コア部の粒子表面が露出しているものも含む。
【0221】
また、高温高湿環境下における帯電性を向上させるという観点から、結晶性樹脂は表面に露出せず、トナー母体粒子の内部に含有されると共に、非晶性樹脂がトナー母体粒子表面に露出した形態であると好ましい。このような形態は、乳化凝集法によりトナー母体粒子を製造する際、各樹脂の添加のタイミング等によって制御することができる。
【0222】
トナー母体粒子の形態、すなわち、コア・シェル構造の断面構造や結晶性ポリエステル樹脂の存在位置は、例えば、透過型電子顕微鏡(TEM)や走査型プローブ顕微鏡(SPM)等の公知の手段を用いて確認することができる。
【0223】
(トナー母体粒子の粒子径)
トナー母体粒子の粒子径は、体積基準のメジアン径(D50)で、3~10μmの範囲内であることが好ましい。上記範囲内であることにより、細線の再現性が高く、高画質な画像が得られ、かつ、トナー流動性も確保できる。ここで、トナー母体粒子の体積基準のメジアン径(D50)は、例えば、「コールターマルチサイザー3」(ベックマン・コールター社製)に、データ処理用のコンピュータシステムを接続した装置を用いて測定し、算出することができる。
【0224】
トナー母体粒子の体積基準のメジアン径は、後述のトナーの製造時の凝集・融着工程における凝集剤の濃度や溶剤の添加量、又は融着時間、さらには樹脂成分の組成等によって制御することができる。
【0225】
(トナー母体粒子の平均円形度)
低温定着性の観点から、トナー母体粒子の平均円形度は0.920~1.000の範囲内であることが好ましく、0.940~0.995の範囲内であることがより好ましい。
【0226】
トナー母体粒子の平均円形度は、例えば、「FPIA-2100」(Sysmex社製)を用いて測定し、算出した値である。具体的には、トナー母体粒子を界面活性剤水溶液に湿潤させ、超音波分散を1分間行い、分散した後、「FPIA-2100」を用い、測定条件HPF(高倍率撮像)モードにて、HPF検出数4000個の適正濃度で測定を行う。円形度は下記式で計算される。
【0227】
円形度=(粒子像と同じ投影面積を持つ円の周囲長)/(粒子投影像の周囲長)
また、平均円形度は、各粒子の円形度を足し合わせ、測定した全粒子数で割った算術平均値である。
【0228】
また、トナー母体粒子の表面には、凹凸があり、凹部は、比較的、磁性体とトナー母体粒子の表面が近接している。そのため、外添剤で覆うことによって、磁性体がトナー粒子の表面に露出することを抑制する必要がある。本発明に係るチタン酸ストロンチウムの粒子は、トナー母体粒子の表面に付着しながらも、自由に動くことができるため、結果として凹部に集まりやすく、磁性体がトナー粒子の表面に露出することを抑制できる。
【0229】
[1.2 外添剤]
本発明の静電荷像現像用トナーは、外添剤に、チタン及びストロンチウム以外の金属元素がドープされたチタン酸ストロンチウムを含有することを特徴とする。なお、外添剤は、トナー粒子の帯電性能、流動性、クリーニング性等を向上させる観点から添加されるものであり、トナー母体粒子の表面に付着する。
【0230】
本発明に係る外添剤は、チタン及びストロンチウム以外の金属元素がドープされたチタン酸ストロンチウムの他に、従来公知の外添剤を併用することができる。
【0231】
トナー粒子は、電荷を帯びることにより、感光ドラムや記録媒体への移動を可能としているため、帯電量を保持し続ける必要がある。しかし、本発明のトナーは、一般的に、電気抵抗が低い磁性体を含んでいるため、外添剤を用いることにより、磁性体がトナー粒子の表面に露出しないような構造とし、電荷減衰を抑制できる。
【0232】
したがって、外添剤としては、電気抵抗の高いものを使用する必要があるが、トナー粒子は、静電気力により移動し、付着する必要があるため、外添剤を含むトナー粒子の表面は電荷を帯びている必要がある。すなわち、外添剤としては、高抵抗で強誘電性のものがよい。
また、磁性体と相互作用し、磁性体がトナー粒子の表面に露出するのを抑制するものがよい。
【0233】
外添剤の含有量は、トナー粒子(トナー母体粒子及び外添剤)の総質量に対して、0.1~10質量%であることが好ましい。下記に挙げる外添剤をトナー母体粒子に付着させる装置としては、タービュラーミキサー、ヘンシェルミキサー、ナウターミキサー、V型混合機などの公知の種々の混合装置が使用できる。
【0234】
<1.2.1 チタン酸ストロンチウム>
チタン酸ストロンチウムは、ストロンチウムとチタンの複合酸化物であり、ペロブスカイト構造をとる。このようなペロブスカイト型酸化物は、一般式でABO3と表記され、Aサイトには、Ca、Sr、Ba、Pb等の二価元素が、Bサイトには、Ti、Zr、Sn等の四価元素が入ることが知られている。
【0235】
チタン酸ストロンチウムは、ペロブスカイト構造をとるため、結晶性が高く、高抵抗である。また、実際には、規則正しく並んでいる各イオンが、微小にずれているため、分極が生じ、強誘電性を示す。
【0236】
しかし、その結晶性の高さから、チタン酸ストロンチウム粒子は、立方体や直方体の形状をとりやすく、外添剤として、トナー母体粒子に付着しづらい。そのため、チタン及びストロンチウム以外の金属元素をドープし、結晶構造を変化させることにより、結晶性が低下し、丸みを帯びた形状、すなわち、小径かつ高円形度な粒子が得られる。
【0237】
また、チタン酸ストロンチウムは、その結晶性の高さから、結着樹脂に用いられる樹脂と比較して高密度であるため、トナー母体粒子中に埋没しやすいが、磁性体との相互作用により、埋没が抑制される。
【0238】
金属元素をドープし、結晶構造を変化させることにより、結晶内の分極状態も変化するが、粒子径を調整することにより、外添剤として十分な誘電性が得られる。
【0239】
用いられる金属元素は、チタン及びストロンチウム以外であれば、特に限定されない。イオン化したときに、チタン酸ストロンチウムの結晶構造に入り得るイオン半径となる金属元素であることが好ましい。この観点から、金属元素は、イオン化したときのイオン半径が、40~200pmの範囲内であることが好ましく、60~150pmの範囲内であることがより好ましい。
【0240】
金属元素の例としては、ランタノイド、ケイ素、アルミニウム、カルシウム、マグネシウム、バリウム、リン、硫黄、カルシウム、バナジウム、クロム、マンガン、鉄、コバルト、ニッケル、銅、ガリウム、イットリウム、亜鉛、ニオブ、モリブデン、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、銀、インジウム、スズ、アンチモン、バリウム、タンタル、タングステン、レニウム、オスミウム、イリジウム、白金、ビスマス、イットリウム、ジルコニウム、ニオブ、銀、錫が挙げられる。ランタノイドとしては、ランタン、セリウムが好ましい。これらの中でも、ドープしやすく、チタン酸ストロンチウムの粒子の形状を制御しやすい観点から、ランタンであることが好ましい。
【0241】
また、体積抵抗値及び電気容量値を制御できる観点から、電気陰性度がオールレッド・ロコウの値で2以下、好ましくは1.3以下、より好ましくは、1.2以下の金属元素が好ましい。
電気陰性度が2.0以下の金属元素として好適なものを電気陰性度と共に以下に示す。 電気陰性度が2.0以下の金属元素としては、ランタン(1.08)、マグネシウム(1.23)、アルミニウム(1.47)、シリカ(1.74)、カルシウム(1.04)、バナジウム(1.45)、クロム(1.56)、マンガン(1.60)、鉄(1.64)、コバルト(1.70)、ニッケル(1.75)、銅(1.75)、亜鉛(1.66)、ガリウム(1.82)、イットリウム(1.11)、ジルコニウム(1.22)、ニオブ(1.23)、銀(1.42)、インジウム(1.49)、錫(1.72)、バリウム(0.97)、タンタル(1.33)、レニウム(1.46)、セリウム(1.06)等が挙げられる。
【0242】
チタン酸ストロンチウム粒子内の金属元素の量は、ペロブスカイト型の結晶構造を有しながら丸みを帯びた形状とする観点から、ストロンチウムに対して金属元素が、0.1~20モル%の範囲内であることが好ましく、0.1~15モル%の範囲内であることがより好ましく、0.1~10モル%の範囲内であることが更に好ましい。
【0243】
(チタン酸ストロンチウムの個数平均一次粒子径)
本発明において、チタン酸ストロンチウムの個数平均一次粒子径とは、一次粒子像と同じ面積をもつ円の直径(いわゆる円相当径)であり、チタン酸ストロンチウムの個数平均一次粒子径とは、一次粒子の個数基準の分布において小径側から累積50%となる粒子径である。
【0244】
本発明に係るチタン酸ストロンチウムは、個数平均一次粒子径が、20~300nmの範囲内であることが好ましく、20~100nmの範囲内であることがより好ましい。20nm以上とすることで、帯電制御剤としての効果を十分に発揮し、300nm以下とすることで、比表面積が十分に大きくなり、トナー母体粒子表面の外添剤による隠ぺい率を高めることができる。
【0245】
チタン酸ストロンチウムの個数平均一次粒子径は、例えば、以下の方法で測定される。
トナー母体粒子に、チタン酸ストロンチウムを外添(分散)させた後、チタン酸ストロンチウムの一次粒子100個を走査型電子顕微鏡「JSM-7401F」(日本電子(株)製)にて40000倍で観察し、一次粒子の画像解析によって粒子ごとの最長径及び最短径を測定し、この中間値から円相当径として測定する。そして、測定した一次粒子径の100個の平均を平均一次粒子径とする。
【0246】
チタン酸ストロンチウムの個数平均一次粒子径は、例えば、チタン酸ストロンチウムを湿式製法により製造する際の、各種条件によって制御できる。
【0247】
(チタン酸ストロンチウムの平均円形度)
本発明において、チタン酸ストロンチウムの平均円形度とは、一次粒子像と同じ面積をもつ円の周囲長(いわゆる円相当周囲長)を、一次粒子像の周囲長で割った値であり、チタン酸ストロンチウムの平均円形度とは、各一次粒子の円形度を足し合わせ、測定した全粒子数で割った算術平均値である。なお、円形度が1.0の場合は、真球であることを意味し、数値が低くなるほど、表面に凹凸があり、異形の度合いが高くなることを意味する。
【0248】
本発明に係るチタン酸ストロンチウムは、一次粒子の平均円形度が、0.82~0.94の範囲内であることが好ましい。0.82以上とすることで、トナー母体粒子から脱離しづらく、0.94以下とすることで、トナー母体粒子表面での移動が制限され、分散性が保たれる。
【0249】
チタン酸ストロンチウムの一次粒子の平均円形度は、例えば、以下の方法で測定される。
チタン酸ストロンチウムの一次粒子100個を走査型電子顕微鏡「JSM-7401F」(日本電子(株)製)にて40000倍の写真を撮影し、この写真画像をスキャナーにより取り込み、画像処理解析装置「LUZEX(登録商標)AP」((株)ニレコ製)を用いて画像解析を行う。解析された画像から、粒子像と同じ投影面積を持つ円の周囲長、及び、粒子投影像の周囲長、を求め、下記式より、円形度を算出する。また、各粒子の円形度を足し合わせ、測定した全粒子数で割り、平均円形度を算出する。
【0250】
円形度=(粒子像と同じ投影面積を持つ円の周囲長)/(粒子投影像の周囲長)
=[2×(Aπ)1/2]/PM
上記式において、Aはチタン酸ストロンチウムの投影面積、PMはチタン酸ストロンチウムの周囲長を表す。
【0251】
(疎水化処理表面)
本発明に係るチタン酸ストロンチウムは、疎水化処理表面を有することにより、電気抵抗を高めることができ、トナーの帯電した電荷が漏れて(リークして)しまうことを抑制できる。
【0252】
チタン酸ストロンチウムの疎水化処理表面は、抵抗を高められる観点から、ケイ素含有有機化合物にて表面処理されることが好ましい。ケイ素含有有機化合物としては、アルコキシシラン化合物、シラザン化合物、シリコーンオイル等が挙げられ、中でも、アルコキシシラン化合物及びシリコーンオイルからなる群より選択される少なくとも一種であることが好ましい。
【0253】
ケイ素含有有機化合物であるアルコキシシラン化合物としては、例えば、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン;メチルトリメトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、プロピルトリメトキシシラン、ブチルトリメトキシシラン、ヘキシルトリメトキシシラン、n-オクチルトリメトキシシラン、デシルトリメトキシシラン、ドデシルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、ブチルトリエトキシシラン、ヘキシルトリエトキシシラン、デシルトリエトキシシラン、ドデシルトリエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、o-メチルフェニルトリメトキシシラン、p-メチルフェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、ベンジルトリエトキシシラン;ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、メチルビニルジメトキシシラン、メチルビニルジエトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン;トリメチルメトキシシラン、トリメチルエトキシシラン;が挙げられる。
【0254】
ケイ素含有有機化合物であるシラザン化合物としては、例えば、ジメチルジシラザン、トリメチルジシラザン、テトラメチルジシラザン、ペンタメチルジシラザン、ヘキサメチルジシラザン等が挙げられる。
【0255】
ケイ素含有有機化合物であるシリコーンオイルとしては、例えば、ジメチルポリシロキサン、ジフェニルポリシロキサン、フェニルメチルポリシロキサン等のシリコーンオイル;アミノ変性ポリシロキサン、エポキシ変性ポリシロキサン、カルボキシル変性ポリシロキサン、カルビノール変性ポリシロキサン、フッ素変性ポリシロキサン、メタクリル変性ポリシロキサン、メルカプト変性ポリシロキサン、フェノール変性ポリシロキサン等の反応性シリコーンオイル;等が挙げられる。
【0256】
これらの中でも、珪素含有有機化合物としては、帯電環境差及び流動性が良化できる観点から、アルコキシシラン化合物を用いることが好ましく、特に、帯電環境差が得られる観点から、ブチルトリメトキシシランが好ましい。
【0257】
特定チタン酸ストロンチウム粒子の疎水化処理表面は、粒子表面の抵抗値の変動を防ぐ観点から、蛍光X線分析の定性及び定量分析から算出されるケイ素(Si)とストロンチウム(Sr)との質量比(Si/Sr)が0.025以上0.25以下であることが好ましく、0.05以上0.20以下であることがより好ましい。
【0258】
ここで、特定チタン酸ストロンチウム粒子の疎水化処理表面の蛍光X線分析は、以下の方法で行われる。
即ち、蛍光X線解析装置(島津製作所社製、XRF1500)を用いて、X線出力40V、70mA、測定面積10mmφ、測定時間15分の条件で定性及び定量分析測定を実施する。ここで、分析する元素は、酸素(O)、ケイ素(Si)、チタン(Ti)、ストロンチウム(Sr)、及びチタン及びストロンチウム以外の金属元素(Me)とし、測定された各元素の総計から、別途に作成した各元素を定量可能な検量線データ等を参照して、各々の各元素の質量比(%)を算出する。
この測定にて得られたケイ素(Si)質量比の値とストロンチウム(Sr)の質量比の値を元に、質量比(Si/Sr)を算出する。
【0259】
(含水率)
本発明に係るチタン酸ストロンチウムの含水率は、トナーの帯電分布を狭くし易い観点、及び、トナーの帯電した電荷が漏れることを抑制し易い観点から、1.5~10質量%の範囲内であることが好ましく、2~5質量%の範囲内であることが好ましい。
【0260】
チタン酸ストロンチウムの含水率は、次のように測定することができる。
測定試料20mgを、温度22℃/相対湿度55%のチャンバーにて17時間静置し調湿した後、温度22℃/相対湿度55%の室内にて、熱天秤(島津製作所製TGA-50型)によりチッ素ガス雰囲気中にて30℃/分の温度上昇速度にて30℃から250℃まで加熱し、加熱減量(加熱によって失われた質量)を測定する。
そして、測定した加熱減量を元に以下の式にて含水率を算出する。
含水率(質量%)=(30℃から250℃における加熱減量)÷(調湿後加熱前の質量)×100
【0261】
チタン酸ストロンチウムの含水率は、チタン酸ストロンチウムを湿式製法により製造すること、湿式製法の際の各種条件、疎水化処理剤の種類、疎水化処理量等によって制御できる。
【0262】
チタン酸ストロンチウムの含有量は、トナー粒子(トナー母体粒子及び外添剤)の総質量に対して、0.1~5質量%の範囲内であることが好ましく、0.5~3質量%の範囲内であることがより好ましく、0.7~2質量%の範囲内であることが特に好ましい。
【0263】
<1.2.2 その他の外添剤>
本発明に係る外添剤は、チタン酸ストロンチウムの他に、従来公知の無機粒子、有機粒子、滑剤等を併用することができる。
【0264】
無機粒子としては、例として、シリカ、ゾルゲルシリカ、チタニア、アルミナ等が挙げられる。これらの無機粒子は、必要に応じて、公知のシランカップリング剤やシリコーンオイルなどの表面処理剤によって疎水化処理されていてもよい。無機粒子の大きさは、数平均一次粒子径で、2~50nmの範囲内であることが好ましく、7~30nmの範囲内であることがより好ましい。
【0265】
有機粒子としては、スチレンやメチルメタクリレートなどの単独重合体やこれらの共重合体による有機粒子を使用することができる。有機粒子の大きさは、個数平均一次粒子径で、10~2000nmの範囲内であることが好ましく、粒子の形状は球形であることが好ましい。
【0266】
なお、無機粒子や有機粒子の数平均一次粒子径は、チタン酸ストロンチウムと同様、電子顕微鏡写真を用いて算出することができ、例えば、透過型電子顕微鏡で撮影した画像の画像処理によって求められる。あるいは、走査型電子顕微鏡にてトナー試料の30000倍写真を撮影し、この写真画像をスキャナーにより取り込み、「LUZEX(登録商標)AP」((株)ニレコ製)を用いて当該写真画像のトナー粒子表面に存在する外添剤について二値化処理し、外添剤一種につき100個についての水平方向フェレ径を算出し、その平均値を数平均一次粒子径としてもよい。
【0267】
好ましくは、レーザー回折・散乱式粒度分布測定装置、例えば、「LA-750」(株式会社堀場製作所製)等で測定した体積平均粒子径と、電子顕微鏡を用いて測定した無機粒子や有機粒子の平均粒子径とを比較して、数値が一致していることを確認し、さらに、無機粒子や有機粒子の凝集が生じていないことを確認することにより、当該平均粒子径が一次粒子の粒子径であると判断できる。
無機粒子や有機粒子の個数平均一次粒子径は、例えば、分級や分級品の混合などによって調整することができる。
【0268】
滑剤は、クリーニング性や転写性を更に向上させる目的で使用される。例としては、ステアリン酸の亜鉛、アルミニウム、銅、マグネシウム、カルシウムなどの塩、オレイン酸の亜鉛、マンガン、鉄、銅、マグネシウムなどの塩、パルミチン酸の亜鉛、銅、マグネシウム、カルシウムなどの塩、リノール酸の亜鉛、カルシウムなどの塩、リシノール酸の亜鉛、カルシウムなどの塩、等の高級脂肪酸の金属塩が挙げられる。滑剤の粒子の大きさは、体積平均粒子径で、0.3~20μmの範囲内であることが好ましく、0.5~10μmの範囲内であることがより好ましい。滑剤の体積平均粒子径は、JIS Z8825-1-2013に準じて測定できる。
【0269】
チタン酸ストロンチウムの他に併用される外添剤の含有量は、チタン酸ストロンチウムを含む外添剤の総質量に対して、15質量%以下であることが好ましく、3~10質量%の範囲内であることがより好ましく、4~8質量%の範囲内であることが更に好ましい。
【0270】
[1.3 静電荷像現像用トナーの製造方法]
(トナー母体粒子の製造方法)
トナー母体粒子を製造する方法としては、特に限定されず、混練粉砕法、懸濁重合法、乳化凝集法、溶解懸濁法、ポリエステル伸長法、分散重合法など公知の方法が挙げられる。
【0271】
これらの中でも、粒径の均一性、形状の制御性、コア・シェル構造形成の容易性の観点からは、乳化凝集法を採用することが好ましい。以下、乳化凝集法について説明する。
【0272】
<乳化凝集法>
乳化凝集法は、界面活性剤や分散安定剤によって分散された樹脂の粒子(以下、「樹脂粒子」ともいう。)の分散液を、着色剤の粒子などのトナー粒子構成成分の分散液と混合し、凝集剤を添加することによって所望のトナーの粒径となるまで凝集させ、その後又は凝集と同時に、樹脂粒子間の融着を行い、形状制御を行うことにより、トナー粒子を形成する方法である。
【0273】
本発明においては、磁性トナーであり、磁性体をトナー粒子構成成分の分散液と混合して、凝集及び融着を行い、トナー母体粒子を形成することができる。また、磁性体は黒色であるため、着色剤を添加せずとも、黒色の磁性トナーが得られる。必要に応じて、着色剤を添加してもよい。
【0274】
樹脂粒子は、組成の異なる樹脂よりなる二層以上の構成とする複数層で形成された複合粒子とすることもできる。
【0275】
樹脂粒子は、例えば、乳化重合法、ミニエマルション重合法、転相乳化法などにより製造、又はいくつかの製法を組み合わせて製造することができる。樹脂粒子に内添剤を含有させる場合には、中でもミニエマルション重合法を用いることが好ましい。
【0276】
トナー母体粒子中に内添剤を含有させる場合は、樹脂粒子に内添剤を含有してもよく、また、別途内添剤のみを含む内添剤粒子の分散液を調製し、当該内添剤粒子を、樹脂粒子を凝集させる際に、共に凝集させてもよい。
【0277】
また、乳化凝集法によって、コア・シェル構造を有するトナー母体粒子を得ることもできる。具体的には、先ず、コア部用の結着樹脂粒子と磁性体とを凝集(、融着)させて粒状のコア部を作製し、次いで、コア部の分散液中にシェル層用の結着樹脂粒子を添加して、コア部表面にシェル層用の結着樹脂粒子を凝集、融着させてコア部表面を被覆するシェル層を形成することにより得ることができる。
【0278】
本発明に係る結着樹脂は、結晶性樹脂及び非晶性樹脂を含むことが好ましい。
乳化凝集法によりトナー母体粒子を製造する場合、実施形態としては、結着樹脂粒子分散液として結晶性樹脂粒子分散液、非晶性樹脂粒子分散液及び磁性体分散液を調製する工程(以下、調製工程ともいう。)(1)と、結晶性樹脂粒子分散液、非晶性樹脂粒子分散液及び磁性体分散液を混合して凝集・融着させる工程(以下、凝集・融着工程ともいう。)(2)と、を含むことが好ましい。
【0279】
以下、各工程について詳述する。
【0280】
(1)調製工程
工程(1)は、より詳細には下記結晶性樹脂粒子分散液調製工程、非晶性樹脂粒子分散液調製工程及び磁性体分散液調製工程があり、また、必要に応じて、離型剤分散液調製工程、着色剤分散液調製工程などを含む。
【0281】
(1-1)結晶性樹脂粒子分散液調製工程及び非晶性樹脂粒子分散液調製工程
結晶性樹脂粒子分散液調製工程は、トナー母体粒子を構成する結晶性樹脂を合成し、この結晶性樹脂を水系媒体中に粒子状に分散させて結晶性樹脂粒子の分散液を調製する工程である。また、非晶性樹脂粒子分散液調製工程は、トナー母体粒子を構成する非晶性樹脂を合成し、この非晶性樹脂を水系媒体中に粒子状に分散させて非晶性樹脂粒子の分散液を調製する工程である。
【0282】
結晶性樹脂を水系媒体中に分散させる方法としては、当該結晶性樹脂を有機溶媒(溶剤)中に溶解又は分散させて油相液を調製し、油相液を転相乳化などによって水系媒体中に分散させて、所望の粒径に制御された状態の油滴を形成させた後、有機溶媒を除去する方法が挙げられる。非晶性樹脂を水系媒体中に分散させる方法についても、同様である。
【0283】
油相液の調製に使用される有機溶媒(溶剤)としては、油滴の形成後の除去処理が容易である観点から、沸点が低く、かつ、水への溶解性が低いものが好ましく、例えば、酢酸メチル、酢酸エチル、メチルエチルケトン、イソプロピルアルコール、メチルイソブチルケトン、トルエン、キシレンなどが挙げられる。これらは、一種を単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0284】
有機溶媒(溶剤)の使用量(二種類以上使用する場合はその合計使用量)は、樹脂の総質量に対して、1~300質量%の範囲内であることが好ましく、10~200質量%の範囲内であることがより好ましく、25~100質量%の範囲内であることが更に好ましい。
【0285】
安定して乳化し、かつ、乳化を円滑に進める観点から、油相液中のカルボキシ基がプロトン(H+)イオンを解離していることが好ましく、解離を促進するために、油相液中に、アンモニア、水酸化ナトリウム等を添加することが好ましい。
【0286】
水系媒体の使用量は、油相液の総質量に対して、50~2,000質量%の範囲内であることが好ましく、100~1,000質量%の範囲内であることがより好ましい。水系媒体の使用量が上記範囲内であることにより、水系媒体中において油相液を所望の粒径に乳化分散させることができる。
【0287】
水系媒体中には、分散安定剤が溶解されていてもよく、また、油滴の分散安定性を向上させる目的で、界面活性剤や樹脂粒子などが添加されていてもよい。
【0288】
分散安定剤としては、リン酸三カルシウム、炭酸カルシウム、酸化チタン、コロイダルシリカ、ヒドロキシアパタイトなどの無機化合物を挙げることができる。得られるトナー母体粒子中から分散安定剤を除去する観点から、リン酸三カルシウムのように酸やアルカリに可溶性のものを使用することが好ましく、また、環境面の観点から、酵素により分解可能なものを使用することが好ましい。
【0289】
界面活性剤としては、例えば、アルキルベンゼンスルホン酸塩、α-オレフィンスルホン酸塩、リン酸エステル、アルキルジフェニルエーテルジスルホン酸ナトリウム、ポリオキシエチレンラウリルエーテル硫酸ナトリウムなどのアニオン性界面活性剤、アルキルアミン塩、アミノアルコール脂肪酸誘導体、ポリアミン脂肪酸誘導体、イミダゾリンなどのアミン塩型や、アルキルトリメチルアンモニム塩、ジアルキルジメチルアンモニウム塩、アルキルジメチルベンジルアンモニウム塩、ピリジニウム塩、アルキルイソキノリニウム塩、塩化ベンゼトニウムなどの4級アンモニウム塩型のカチオン性界面活性剤、脂肪酸アミド誘導体、多価アルコール誘導体などの非イオン界面活性剤、アラニン、ドデシルジ(アミノエチル)グリシン、ジ(オクチルアミノエチル)グリシンやN-アルキル-N,N-ジメチルアンモニウムベタインなどの両性界面活性剤などが挙げられ、また、フルオロアルキル基を有するアニオン性界面活性剤やカチオン性界面活性剤も使用することができる。
【0290】
また、分散安定性の観点から、樹脂粒子は、粒子径が0.5~3μmの範囲内であることが好ましく、具体的には、粒子径が1μm及び3μmのポリメタクリル酸メチル樹脂粒子、粒子径が0.5μm及び2μmのポリスチレン樹脂粒子、粒径が1μmのポリスチレン-アクリロニトリル樹脂粒子などが挙げられる。
【0291】
このような油相液の乳化分散は、機械的エネルギーを利用して行うことができ、乳化分散を行うための分散機は、特に限定されず、例としては、低速せん断式分散機、高速せん断式分散機、摩擦式分散機、高圧ジェット式分散機、超音波ホモジナイザーなどの超音波分散機、高圧衝撃式分散機アルティマイザーなどが挙げられる。
【0292】
油滴の形成後における有機溶媒の除去は、結晶性樹脂粒子が水系媒体中に分散された状態の分散液全体を、撹拌状態で徐々に昇温し、一定の温度域において強い撹拌を与えた後、脱溶媒を行うなどの操作により行うことができる。あるいは、エバポレータ等の装置を用いて減圧しながら除去することができる。非晶性樹脂微粒子についても、上記した結晶性樹脂粒子と同様にして、油滴の形成後に有機溶媒を除去することができる。
【0293】
このようにして得られる結晶性樹脂粒子分散液又は非晶性樹脂粒子分散液における結晶性樹脂粒子(油滴)又は非晶性樹脂粒子(油滴)の平均粒子径は、60~1000nmの範囲内であることが好ましく、80~500nmの範囲内であることがより好ましい。なお、樹脂粒子、磁性体粒子、離型剤等の平均粒子径は、レーザー回析・散乱式粒度分布測定装置(マイクロトラック粒度分布測定装置「UPA-150」(日機装株式会社製))で測定することができる。なお、これらの樹脂粒子(油滴)の平均粒子径は、乳化分散時の機械的エネルギーの大きさにより制御することができる。
【0294】
結晶性樹脂粒子分散液又は非晶性樹脂粒子分散液における結晶性樹脂粒子又は非晶性樹脂粒子の含有量は、分散液の総質量に対して、10~50質量%の範囲内であることが好ましく、15~40質量%の範囲内であることがより好ましい。上記範囲内であることにより、粒度分布の広がりを抑制し、トナー特性を向上させることができる。
【0295】
(1-2)磁性体分散液調製工程
磁性体分散液調製工程は、磁性体を水系媒体中に粒子状に分散させて磁性体粒子の分散液を調製する工程である。
【0296】
当該水系媒体は上記(1-1)で説明した通りであり、この水系媒体中には、分散安定性を向上させる目的で、上記(1-1)で示した界面活性剤や樹脂粒子などが添加されていてもよい。
【0297】
磁性体の分散は、機械的エネルギーを利用して行うことができ、このような分散機は、特に限定されず、上記で挙げたように、例として、低速せん断式分散機、高速せん断式分散機、摩擦式分散機、高圧ジェット式分散機、超音波ホモジナイザーなどの超音波分散機、又は高圧衝撃式分散機アルティマイザーなどが挙げられる。
【0298】
磁性体分散液における磁性体の含有量は、分散液の総質量に対して、35~50質量%の範囲内であることが好ましく、40~50質量%の範囲内であることがより好ましい。上記範囲内であることにより、現像スリーブ内のマグネットロールとの磁気引力が適度となる。
【0299】
(1-3)離型剤粒子分散液調製工程
この離型剤粒子分散液調製工程は、トナー母体粒子中に離型剤を含有するものを所望する場合に、必要に応じて行う工程であって、離型剤を水系媒体中に粒子状に分散させて離型剤粒子の分散液を調製する工程である。
【0300】
当該水系媒体は上記(1-1)で説明した通りであり、この水系媒体中には、分散安定性の観点から、上記(1-1)で示した界面活性剤や樹脂粒子などが添加されていてもよい。
【0301】
離型剤の分散は、機械的エネルギーを利用して行うことができ、このような分散機は、特に限定されず、上記で挙げたように、例として、低速せん断式分散機、高速せん断式分散機、摩擦式分散機、高圧ジェット式分散機、超音波ホモジナイザーなどの超音波分散機、高圧衝撃式分散機アルティマイザー、又は高圧ホモジナイザーなどが挙げられる。離型剤粒子を分散させるにあたり、必要に応じて加熱を行ってもよい。
【0302】
離型剤粒子分散液における離型剤粒子の含有量は、分散液の総質量に対して、10~50質量%の範囲内であることが好ましく、15~40質量%の範囲内であることがより好ましい。上記範囲内であることにより、耐ホットオフセット性及び分離性確保の効果が得られる。
【0303】
(1-4)着色剤分散液調製工程
この着色剤分散液調製工程は、着色剤を水系媒体中に粒子状に分散させて着色剤粒子の分散液を調製する工程である。
【0304】
当該水系媒体は上記(1-1)で説明した通りであり、この水系媒体中には、分散安定性の観点から、上記(1-1)で示した界面活性剤や樹脂粒子などが添加されていてもよい。
【0305】
着色剤の分散は、機械的エネルギーを利用して行うことができ、このような分散機は、特に限定されるが、上記で挙げたように、例としては、低速せん断式分散機、高速せん断式分散機、摩擦式分散機、高圧ジェット式分散機、超音波ホモジナイザーなどの超音波分散機、又は高圧衝撃式分散機アルティマイザーなどが挙げられる。
【0306】
着色剤分散液における着色剤の含有量は、色ごとに、分散液の総質量に対して、10~50質量%の範囲内であることが好ましく、15~40質量%の範囲内であることがより好ましい。上記範囲内であることにより、色再現性確保の効果がある。
【0307】
(2)凝集・融着工程
結晶性樹脂粒子分散液、非晶性樹脂粒子分散液、及び磁性体分散液、また、必要に応じて、離型剤粒子分散液、着色剤分散液などの他の成分を添加し、混合する。次いで、pH調整による粒子表面の反発力と、電解質体からなる凝集剤による凝集力との、バランスを取りながら、緩慢に凝集させる。そして、平均粒子径及び粒度分布を制御しながら会合を行うと同時に、加熱撹拌することで微粒子間の融着を行って形状制御を行い、トナー粒子を形成する。この凝集・融着工程も必要に応じ機械的エネルギーや加熱手段を利用して行うことができる。
【0308】
凝集工程では、まず、得られた各分散液を混合して混合液とし、非晶性樹脂のガラス転移温度以下の温度で加熱して凝集させ、凝集粒子を形成する。凝集粒子の形成は、撹拌下、混合液のpHを酸性にすることによってなされる。pHは、2~7の範囲内であることが好ましく、2~6の範囲内であることがより好ましく、2~5の範囲内であることがさらに好ましい。
【0309】
また、凝集工程においては、凝集剤を用いることが好ましい。凝集剤は、特に限定されないが、分散剤に用いる界面活性剤と逆極性の界面活性剤、無機金属塩の他、2価以上の金属を含む錯体を好適に用いることができる。
【0310】
無機金属塩としては、例えば、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化リチウム、塩化カルシウム、塩化バリウム、塩化マグネシウム、塩化亜鉛、塩化アルミニウム、硫酸銅、硫酸マグネシウム、硫酸アルミニウム、硫酸マンガン、硝酸カルシウムなどの金属塩、及び、ポリ塩化アルミニウム、ポリ水酸化アルミニウム、ポリシリカ鉄、多硫化カルシウム等の無機金属塩重合体などが挙げられる。その中でも特に、アルミニウム塩及びポリ塩化アルミニウムが好適である。よりシャープな粒度分布を得るためには、無機金属塩の価数が1価より2価、2価より3価、3価より4価の方がより好ましい。
【0311】
トナー母体粒子中の2価以上の金属イオンの含有量は、主に本工程における混合液のpH、凝集剤の含有量及び種類等を調整することにより制御することができる。
【0312】
凝集粒子が所望の粒径になったところで、結晶性樹脂粒子及び/又は非晶性樹脂粒子を追添加することで、コア凝集粒子の表面を結晶性樹脂及び/又は非晶性樹脂で被覆した構成のトナー(コア・シェル構造を有する粒子)を作製することができる。追添加する場合、追添加前に凝集剤を添加する、又は、pH調整を行う等の操作を行ってもよい。
【0313】
凝集の際には加熱、昇温することが好ましい。この際、加熱、昇温によって、融着温度以上になった場合には、融着工程も同時に進行することとなる。昇温速度としては0.1~5℃/分の範囲内で行うことが好ましい。また、加熱温度(ピーク温度)は40~100℃の範囲内で行うことが好ましい。
【0314】
凝集粒子の平均粒子径は、特に限定されるものではないが、4.5~7μmの範囲内であることが好ましい。凝集粒子が所望の粒径になったところで、凝集停止剤を添加し、反応系内の各種の粒子の凝集作用を抑制して、停止させる(以下、凝集停止工程ともいう。)ことにより、粒子径を制御できる。凝集停止剤とは、凝集作用が促進されるpH環境から脱する方向に、pH調整することができる塩基化合物のことをいう。凝集停止工程においては、反応系のpHを5~9に調整することが好ましい。
【0315】
凝集停止剤(塩基化合物)としては、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)及びそのナトリウム塩などのアルカリ金属塩、グルコナール、グルコン酸ナトリウム、クエン酸カリウム及びクエン酸ナトリウム、ニトロトリアセテート(NTA)塩、GLDA(市販のL-グルタミン酸-N,N-二酢酸)、フミン酸及びフルビン酸、マルトール及びエチルマルトール、ペンタ酢酸及びテトラ酢酸、3-ヒドロキシ-2,2’-イミノジコハク酸四ナトリウム等のカルボキシ基及びヒドロキシ基の両方の官能基を有する公知の化合物若しくはその塩又は水溶性ポリマー類(高分子電解質)、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどが挙げられる。凝集停止工程においては、凝集工程に準じて撹拌を行ってもよい。
【0316】
融着工程は、上記凝集停止工程を経た後、又は、凝集工程と同時に、反応系を所期の融着温度に加温することにより、凝集粒子を構成する各粒子を融着させて凝集粒子を融合し、融合粒子を形成させる工程である。
【0317】
融着工程における融着温度は、結晶性樹脂の融点以上であることが好ましく、融着温度は、結晶性樹脂の融点より0~20℃高い温度であることが好ましい。加熱の時間は、融着がされる程度に行えばよく、0.5~10時間程度行えばよい。
【0318】
凝集・融着工程においては、系内の各粒子を安定して分散させるために、水系媒体中に、上記(1-1)結晶性樹脂粒子分散液調製工程/非晶性樹脂粒子分散液調製工程等で用いられる界面活性剤と同義の界面活性剤を添加してもよい。
【0319】
凝集・融着工程における非晶性樹脂粒子/結晶性樹脂粒子の添加割合(質量比)は、好ましくは1~100である。上記範囲内であることにより、耐ホットオフセット性及び低温定着性に優れる。
【0320】
なお、トナー母体粒子中に他の内添剤を導入する場合は、内添剤のみを含む内添剤粒子分散液を調製し、凝集・融着工程において、結晶性樹脂粒子分散液、非晶性樹脂粒子分散液及び磁性体分散液と共に、当該内添剤粒子分散液を混合する方法が好ましい。
【0321】
融着後に冷却し、融合粒子を得る。冷却速度は好ましくは1~20℃/分である。
【0322】
乳化凝集法によりトナーを得る場合、上記凝集・融着工程の後、トナーの円形度を制御するための円形度制御工程(3)を有することが好ましい。
【0323】
(3)円形度制御工程
円形度制御処理としては、具体的には、凝集・融着工程で得られた粒子を加熱する加熱処理が挙げられる。加熱温度及び保持時間を調整することにより円形度を制御することができる。加熱温度を高くする、又は、保持時間を長くすることにより、円形度を1に近づけることができる。
【0324】
円形度制御処理における加熱温度としては、70~95℃の範囲内であることが好ましい。加温中に円形度測定装置にて2μm以上の粒子径の粒子の円形度を測定し、所望の円形度であるかどうかを適宜判断することによって、円形度の制御が可能である。
【0325】
(4)濾過・洗浄工程
得られたトナー母体粒子の分散液を冷却し、水等の溶媒を用いて、分散液からトナー母体粒子を固液分離して、トナー母体粒子を濾別する濾過処理、及び、濾別されたトナー母体粒子(ケーキ状の集合物)から界面活性剤などの付着物を除去する洗浄処理を行う。
【0326】
具体的な固液分離及び洗浄の方法は、特に限定されず、例としては、遠心分離法、アスピレータ、ヌッチェなどを使用する減圧濾過法、フィルタープレスなどを使用する濾過法などが挙げられる。濾過・洗浄工程において、適宜、pH調整や粉砕などを、一回若しくは繰り返し行ってもよい。
【0327】
(5)乾燥工程
洗浄処理されたトナー母体粒子を乾燥させる。乾燥工程で使用される乾燥機は、特に限定されないが、例としては、オーブン、スプレードライヤー、真空凍結乾燥機、減圧乾燥機、静置棚乾燥機、移動式棚乾燥機、流動層乾燥機、回転式乾燥機、撹拌式乾燥機などが挙げられる。なお、乾燥処理されたトナー母体粒子中の、カールフィッシャー電量滴定法にて測定される水分量は、5質量%以下であることが好ましく、2質量%以下であることがより好ましい。
【0328】
また、乾燥処理されたトナー母体粒子同士が、弱い粒子間引力で凝集して凝集体を形成している場合には、当該凝集体を解砕処理してもよい。解砕処理装置は、特に限定されず、例としては、ジェットミル、コーミル、ヘンシェルミキサー、コーヒーミル、フードプロセッサーなどの機械式の解砕装置が挙げられる。
【0329】
(チタン酸ストロンチウムの製造方法)
本発明に係るチタン酸ストロンチウムの粒子の製造方法は、特に限定されないが、粒子径及び形状を制御できる観点から、湿式製法であることが好ましく、例えば、酸化チタン源とストロンチウム源との混合液にアルカリ水溶液を添加しながら反応させ、次いで酸処理を行う製造方法が挙げられる。
【0330】
また、上記製造方法において、酸化チタン源とストロンチウム源との混合液にドーパント源を添加する、若しくは、アルカリ水溶液を添加する際にドーパント源も同時に添加することにより、チタン及びストロンチウム以外の金属元素がドープされたチタン酸ストロンチウムが得られる。
【0331】
さらに、酸化チタン源とストロンチウム源の混合割合、反応初期の酸化チタン源濃度、アルカリ水溶液の添加温度及び添加速度などによって、チタン酸ストロンチウム粒子の粒径が制御できる。
【0332】
酸化チタン源としては、チタン化合物の加水分解物の鉱酸解膠品であることが好ましい。具体的には、硫酸法で得られた、SO3含有量が1.0質量%以下、好ましくは0.5質量%以下のメタチタン酸を、塩酸によりpHを0.8~1.5の範囲内に調整して解膠したものであることが、粒度分布が良好なチタン酸ストロンチウムの粒子が得られる観点から好ましい。
【0333】
ストロンチウム源としては、例えば、硝酸ストロンチウム、塩化ストロンチウム等が挙げられる。
【0334】
酸化チタン源とストロンチウム源の混合割合は、SrO/TiO2モル比で0.9~1.4の範囲内であることが好ましく、1.05~1.20の範囲内であることがより好ましい。反応初期の酸化チタン源濃度は、TiO2として0.05~1.3モル/Lの範囲内であることが好ましく、0.5~1.0モル/Lの範囲内であることがより好ましい。
【0335】
ドーパント源としては、チタン及びストロンチウム以外の金属元素の酸化物であることが好ましい。また、ドーパント源としての金属酸化物は、例えば、硝酸、塩酸、硫酸等に溶解した溶液として添加することが好ましい。
【0336】
ドープする金属元素としては、前述のとおり、ランタンであることが好ましく、ランタンを含むドーパント源としては、硝酸ランタン六水和物、塩化ランタン七水和物等が挙げられる。
【0337】
アルカリ水溶液としては、例えば、水酸化ナトリウム水溶液等が挙げられる。アルカリ水溶液の添加温度は、高いほど結晶性が良好であるため、50~101℃の範囲内であることが好ましい。また、アルカリ水溶液の添加速度は、遅いほど粒子径が大きく、速いほど粒子径が小さくなるため、仕込み原料に対して、0.001~1.2当量/hの範囲内であることが好ましく、0.002~1.1当量/hの範囲内であることがより好ましい。なお、添加速度は、目的に応じて途中で変更してもよい。
【0338】
なお、上記反応過程において、炭酸ストロンチウムの生成を防ぐために、窒素ガス雰囲気下で反応させる等、炭酸ガスの混入を防ぐことが好ましい。
【0339】
アルカリ水溶液を添加した後、酸処理を行うことで、未反応のストロンチウム源を取り除くことができる。例えば、塩酸により、反応液のpHを2.5~7.0の範囲内、より好ましくは4.5~6.0の範囲内に調整する。
酸処理後、反応液を固液分離し、固形分を乾燥処理することにより、チタン酸ストロンチウムの粒子が得られる。
【0340】
得られたチタン酸ストロンチウムは、必要に応じて表面処理を行うことができる。表面処理の方法は特に限定されない。例えば、疎水化処理の場合、前述の疎水化処理剤と溶媒とを混合してなる処理液を調製し、撹拌下、チタン酸ストロンチウムの粒子と処理液とを混合し、さらに撹拌を続けて行われる。表面処理後は、処理液の溶媒を除去する目的で乾燥処理を行う。疎水化処理剤は、前述のとおりケイ素含有有機物であることが好ましく、一種を単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0341】
処理液の調製に用いる溶媒としては、疎水化処理剤がアルコキシシラン化合物又はシラザン化合物である場合は、アルコール(例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール)が好ましく、疎水化処理剤がシリコーンオイルである場合は、炭化水素類(例えば、ベンゼン、トルエン、ノルマルヘキサン、ノルマルヘプタン)が好ましい。
【0342】
処理液において、疎水化処理剤の濃度は、1~50質量%の範囲内であることが好ましく、5~40質量%の範囲内であることがより好ましく、10~30質量%の範囲内であることがさらに好ましい。
【0343】
表面処理に用いる疎水化処理剤の使用量は、目的とする体積固有抵抗率等に応じて決定されればよく、例えば、チタン酸ストロンチウムの粒子100質量部に対して、1~50質量部の範囲内であることが好ましく、5~40質量部の範囲内であることがより好ましく、5~30質量部の範囲内であることがさらに好ましい。
【0344】
チタン酸ストロンチウムの粒子の含水率は、表面処理が行われた後の乾燥処理の条件を調整することにより制御できる。乾燥条件として好ましくは、例えば、乾燥温度が90~300℃の範囲内(より好ましくは、100~150℃の範囲内)であり、乾燥時間が1~15時間の範囲内(より好ましくは、5~10時間の範囲内)である。
【0345】
あるいは、チタン酸ストロンチウムの粒子に疎水化処理剤を噴霧し、又は、気化した疎水化処理剤を混合し、加熱処理によって行ってもよい。このとき、水、アミン、その他の触媒を使用してもよく、窒素などの不活性ガス雰囲気下で行うことが好ましい。
【0346】
(外添剤添加工程)
本発明のトナーは、上記製造方法で得られるトナー母体粒子に、チタン酸ストロンチウムを含む外添剤を添加し、トナー母体粒子表面に付着させることにより、得られる。必要に応じて、チタン酸ストロンチウム以外の外添剤を含んでいてもよい。
乾燥処理されたトナー母体粒子と、外添剤を混合する装置は、特に限定されず、例としては、タービュラーミキサー、ヘンシェルミキサー、ナウターミキサー、V型混合機、サンプルミルなどの種々の公知の混合装置を挙げることができる。また、トナーの粒度分布を適当な範囲とするため、必要に応じ篩分級を行ってもよい。
【0347】
≪2 画像形成方法≫
本発明の画像形成方法は、本発明の静電荷像現像用トナーを用いることを特徴とする。
また、本発明のトナーは、磁性トナーであり、一成分現像剤として使用できる。このような一成分現像剤は、一成分接触現像方式において、好適に使用できる。
【0348】
一成分接触現像方式は、トナー担持体と静電荷像担持体が接触配置(当接配置)された現像方式であり、これら担持体は、回転することでトナーを搬送する。トナー担持体と静電荷像担持体の接触部分には大きなシェアがかかるため、高画質の画像を得るためには、トナーは高耐久性と高流動性を有することが好ましい。本発明のトナーは、耐久性に優れるトナーであり、一成分接触現像方式に好適に用いることができる。
【0349】
一成分現像方式は、キャリアを使用する二成分現像方式と比較して、キャリアを有しない分現像剤が少なくすむため、現像剤が収容されるカートリッジの小型化が可能である。また、接触現像方式は、トナーの飛び散りが少なく、高品質な画像を得ることができる。すなわち、この両者を併せもつ一成分接触現像方式は、現像装置の小型化と画像の高画質化を両立させることができる。
【0350】
≪3 画像形成装置≫
本発明の画像形成装置は、静電荷像保持手段、帯電手段、静電荷像形成手段、現像手段、転写手段及び定着手段を備えた画像形成装置であって、本発明の静電荷像現像用トナーを用いることを特徴とする。
【0351】
本発明に用いられる画像形成装置は、詳しくは、静電荷像を保持する静電荷像保持手段と、静電荷像保持体の表面を帯電する帯電手段と、帯電した静電荷像保持体の表面に静電荷像を形成する静電荷像形成手段と、静電荷像現像剤を収容し、静電荷像現像剤により、静電荷像保持体の表面に形成された静電荷像をトナー画像として現像する現像手段と、静電荷像保持体の表面に形成されたトナー画像を記録媒体の表面に転写する転写手段と、記録媒体の表面に転写されたトナー画像を定着する定着手段と、を備えている。そして、静電荷像現像剤として、本発明の静電荷像現像用トナーを用いる。
【0352】
上記画像形成装置においては、静電荷像を保持する静電荷像保持工程と、静電荷像保持体の表面を帯電する帯電工程と、帯電した静電荷像保持体の表面に静電荷像を形成する静電荷像形成工程と、静電荷像現像剤を収容し、静電荷像現像剤により、静電荷像保持体の表面に形成された静電荷像をトナー画像として現像する現像工程と、静電荷像保持体の表面に形成されたトナー画像を記録媒体の表面に転写する転写工程と、記録媒体の表面に転写されたトナー画像を定着する定着工程と、を有する画像形成方法が実施される。
【0353】
本発明の画像形成装置は、静電荷像保持体の表面に形成されたトナー画像を直接記録媒体に転写する直接転写方式の装置;静電荷像保持体の表面に形成されたトナー画像を中間転写体の表面に一次転写し、中間転写体の表面に転写されたトナー画像を記録媒体の表面に二次転写する中間転写方式の装置;トナー画像の転写後、帯電前の静電荷像保持体の表面をクリーニングするクリーニング手段を備えた装置;トナー画像の転写後、帯電前に像保持体の表面に除電光を照射して除電する除電手段を備える装置;等の公知の画像形成装置であってもよい。
【0354】
また、本発明の画像形成装置が中間転写方式の装置の場合、転写手段は、例えば、表面にトナー画像が転写される中間転写体と、静電荷像保持体の表面に形成されたトナー画像を中間転写体の表面に一次転写する一次転写手段と、中間転写体の表面に転写されたトナー画像を記録媒体の表面に二次転写する二次転写手段と、を有する構成としてもよい。
【0355】
本発明の画像形成装置において、例えば、現像手段を含む部分が、画像形成装置に対して着脱するカートリッジ構造(プロセスカートリッジ)であってもよい。プロセスカートリッジとしては、例えば、本発明の静電荷像現像用トナーを収容した現像手段を備えるプロセスカートリッジが好適に用いられる。
【0356】
以下、本発明の画像形成装置において、好適に使用できる一成分接触現像方式について図面を用いて詳細に説明する。
【0357】
図1は、現像装置の一例を示す模式的断面図である。また、
図2は、一成分接触現像方式の画像形成装置の一例を示す模式的断面図である。
図1又は
図2において、静電荷像が形成された静電荷像担持体45は、矢印R1方向に回転される。トナー担持体47は矢印R2方向に回転することによって、トナー担持体47と静電荷像担持体45とが対向している現像領域にトナー57を搬送する。また、トナー担持体47にはトナー供給部材48が接しており、矢印R3方向に回転することによって、トナー担持体47の表面にトナー57を供給している。また、トナー57は、撹拌部材58にて撹拌される。
【0358】
静電荷像担持体45の周囲には帯電部材(帯電ローラ)46、転写部材(転写ローラ)50、クリーナー容器43、クリーニングブレード44、定着器51、ピックアップローラ52などが設けられている。静電荷像担持体45は帯電ローラ46によって帯電される。そして、レーザー発生装置54によりレーザー光を静電荷像担持体45に照射することによって露光が行われ、目的の画像に対応した静電荷が形成される。
【0359】
静電荷像担持体45上の静電荷像は、現像装置49内のトナー57で現像されてトナー画像を得る。トナー画像は転写材を介して静電荷像担持体45に当接された転写部材(転写ローラ)50により転写材(紙)53上へ転写される。トナー画像の転写材への転写は、中間転写体を介して行われてもよい。トナー画像を載せた転写材(紙)53は定着器51へ運ばれ転写材(紙)53上に定着される。また、一部静電荷像担持体45上に残されたトナー57はクリーニングブレード44によりかき落とされ、クリーナー容器43に収納される。
また、トナー規制部材(
図1の符号55)がトナーを介してトナー担持体に当接することによってトナー担持体上のトナー層厚を規制することが好ましい。このようにすることで規制不良の無い高画質を得ることができる。トナー担持体に当接するトナー規制部材としては、規制ブレードが一般的である。
【0360】
上記規制ブレード上辺部側である基部は現像装置側に固定保持され、下辺部側をブレードの弾性力に抗してトナー担持体の順方向或いは逆方向にたわめ状態にしてトナー担持体表面に適度の弾性押圧力をもって当接させるとよい。
例えば、トナー規制部材55の現像装置への固定は
図1に示すようにトナー規制部材55の片側自由端を2枚の固定部材(例えば、金属弾性体、
図1の符号56)で挟み込み、ビス留めにより固定するとよい。
【実施例0361】
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、実施例において「部」あるいは「%」の表示を用いるが、特に断りがない限り「質量部」あるいは「質量%」を表す。
【0362】
≪実施例1≫
以下に記載の手順でトナー粒子1~13を作製し、各トナーの評価を行った。
【0363】
[トナー母体粒子1~4の作製]
<トナー母体粒子1の作製>
(非晶性ポリエステルA1の合成)
テレフタル酸 48.0質量部
ドデセニルコハク酸 17.0質量部
トリメリット酸 10.2質量部
ビスフェノールAエチレンオキサイド(2モル)付加物
80.0質量部
ビスフェノールAプロピレンオキサイド(2モル)付加物
74.0質量部
ジブチルスズオキシド 0.1質量部
【0364】
上記材料を加熱乾燥した二口フラスコに入れ、容器内に窒素ガスを導入して不活性雰囲気に保ち撹拌しながら昇温した。その後、150℃~230℃で約13時間縮重合反応させた後、210℃~250℃で徐々に減圧して、非晶性ポリエステルA1を得た。
【0365】
非晶性ポリエステルA1の数平均分子量(Mn)は21200、重量平均分子量(Mw)は、98000、ガラス転移温度(Tg)は58.3℃であった。
【0366】
(樹脂溶解液の調製)
酢酸エチル 100.0質量部
非晶性ポリエステルA1 30.0質量部
水酸化ナトリウム(0.1mol/L) 0.3質量部
アニオン性界面活性剤(第一工業製薬(株)製、ネオゲンRK)
0.2質量部
【0367】
上記材料を撹拌装置のついたビーカーに投入し、60.0℃に加熱して、完全に溶解するまで撹拌を続け、樹脂溶解液A1を得た。
【0368】
(非晶性樹脂粒子分散液A1の調製)
樹脂溶解液A1をさらに撹拌しながら、徐々にイオン交換水90.0質量部を加え、転相乳化させ、脱溶剤することにより、非晶性ポリエステル樹脂を含む非晶性樹脂粒子分散液A1(固形分濃度:25質量%)を得た。
非晶性樹脂粒子分散液A1中の樹脂粒子の体積平均粒子径は、0.19μmであった。
【0369】
(結晶性ポリエステルC1の合成)
1,10-デカンジカルボン酸 230.0質量部
1,9-ノナンジオール 168.0質量部
酸化ジブチルスズ 0.1質量部
【0370】
上記材料を加熱乾燥した二口フラスコに入れ、容器内に窒素ガスを導入して不活性雰囲気に保ち撹拌しながら昇温した。その後、170℃にて6時間撹拌を行った。その後、撹拌を続けながら、減圧下にて230℃まで徐々に昇温し、さらに3時間保持した。粘稠な状態となったところで空冷し、反応を停止させることで、結晶性ポリエステルC1を合成した。結晶性ポリエステルC1の重量平均分子量(Mw)は36700、融点は73.0℃であった。
【0371】
(結晶性樹脂粒子分散液C1の調製)
非晶性樹脂粒子分散液A1の調製において、用いる樹脂を結晶性ポリエステルC1とした以外は同様にして、結晶性ポリエステル樹脂を含む結晶性樹脂粒子分散液C1(固形分濃度:25.0質量%)を得た。
結晶性樹脂粒子分散液C1中の樹脂粒子の体積平均粒子径は、0.19μmであった。
【0372】
(ワックス分散液W1の調製)
ベヘン酸ベヘニル 50.0質量部
アニオン性界面活性剤(第一工業製薬(株)製、ネオゲンRK)
0.3質量部
イオン交換水 150.0質量部
【0373】
上記材料を混合して95℃に加熱し、ホモジナイザー(IKA社製、ウルトラタラックスT50)を用いて分散した。その後、マントンゴーリン高圧ホモジナイザ(ゴーリン社製)で分散処理し、ワックス分散液W1(固形分濃度:25.0質量%)を得た。
ワックス分散液W1中のワックス粒子の体積平均粒子径は、0.22μmであった。
なお、ベヘン酸ベヘニルは、離型剤であり、その融点は、73℃である。
【0374】
(磁性体M1の作製)
Fe2+を2.0mol/L含有する硫酸鉄第一水溶液50リットルに、4.0mol/Lの水酸化ナトリウム水溶液55リットルを混合撹拌し、水酸化第一鉄コロイドを含む第一鉄塩水溶液を得た。この水溶液を85℃に保ち、20.0L/minで空気を吹き込みながら酸化反応を行い、コア粒子を含むスラリーを得た。
【0375】
得られたスラリーをフィルタープレスにてろ過及び洗浄した後、コア粒子を水中に再度分散させた。得られたリスラリー液に、コア粒子の総質量に対して、珪素換算で0.20質量%となる珪酸ソーダを添加し、スラリー液のpHを6.0に調整し、撹拌することで珪素リッチな表面を有する磁性酸化鉄粒子を得た。
【0376】
得られたスラリー液をフィルタープレスにてろ過した後洗浄し、さらにイオン交換水にてリスラリーを行った。このリスラリー液(固形分50.0質量部/L)に500.0質量部(磁性酸化鉄に対して10.0質量%)のイオン交換樹脂SK110(三菱化学社製)を投入し、2時間撹拌してイオン交換を行った。その後、イオン交換樹脂をメッシュでろ過して除去し、フィルタープレスにてろ過及び洗浄し、乾燥及び解砕して、個数平均一次粒子径が0.21μmの磁性体M1を得た。
【0377】
(磁性体分散液M1の調製)
磁性体M1 25.0質量部
イオン交換水 75.0質量部
上記材料を混合して、ホモジナイザー(IKA社製、ウルトラタラックスT50)を用いて8000rpmで10分間分散し、磁性体分散液M1を得た。
磁性体分散液中の磁性体の体積平均粒子径は、0.23μmであった。
【0378】
(トナー母体粒子分散液1の調製)
非晶性樹脂粒子分散液A1(固形分濃度:25.0質量%)
150.0質量部
結晶性樹脂粒子分散液C1(固形分濃度:25.0質量%)
45.0質量部
ワックス分散液W1(固形分濃度:25.0質量%)
15.0質量部
磁性体分散液M1(固形分濃度:25.0質量%)
105.0質量部
【0379】
ビーカーに上記材料を投入し、水の総質量部数が250質量部になるように調製した後、30.0℃に温調した。その後、ホモジナイザー(IKA社製、ウルトラタラックスT50)を用いて、5000rpmで1分間撹拌することにより混合した。
さらに凝集剤として、10.0質量部の硫酸マグネシウム2.0質量%水溶液を徐々に添加した。
撹拌装置、温度計を備えた重合釜に原料分散液を移し、マントルヒーターで50.0℃に加熱し撹拌することで凝集粒子の成長を促進させた。
60分間経過した段階でエチレンジアミンテトラ酢酸(EDTA)5.0質量%水溶液を200.0質量部添加し、凝集粒子分散液を調製した。
続いて、凝集粒子分散液を0.1mol/Lの水酸化ナトリウム水溶液を用いてpH8.0に調製した後、凝集粒子分散液1を80.0℃に加熱し、180分間放置して、凝集粒子の合一を行った。
180分間の経過後、トナー母体粒子が分散したトナー母体粒子分散液1を得た。
【0380】
(トナー母体粒子1の作製)
トナー母体粒子分散液1を、300℃/分の降温速度で40℃以下まで冷却した後、ろ過し、イオン交換水で通水洗浄し、ろ液の伝導度が50mS/m以下となったところで、ケーキ状になったトナー母体粒子を取り出した。
【0381】
次に、トナー母体粒子の質量の20倍量のイオン交換水中に、ケーキ状になったトナー母体粒子を投入し、スリーワンモータで撹拌し、十分にトナー母体粒子がほぐれたところで再度ろ過、通水洗浄し固液分離した。得られたケーキ状になったトナー母体粒子をサンプルミルで解砕して、40℃のオーブン中で24時間乾燥した。さらに得られた粉体をサンプルミルで解砕した後、50℃のオーブン中で5時間、追加の真空乾燥をして、トナー母体粒子1を得た。
【0382】
<トナー母体粒子2の作製>
(非晶性樹脂粒子分散液B1の調製)
(1)第1段重合
撹拌装置、温度センサ、冷却管及び窒素導入装置を取り付けた5Lの反応容器に、ドデシル硫酸ナトリウム8.0質量部及びイオン交換水3000.0質量部を仕込み、窒素気流下230rpmの撹拌速度で撹拌しながら、当該反応容器の内温を80℃に昇温させた。昇温後、得られた混合液に過硫酸カリウム10.0質量部をイオン交換水200質量部に溶解させた水溶液を添加し、得られた混合液の温度を再度80℃とした。当該混合液に、下記組成からなる単量体混合液1を1時間かけて滴下後、80℃にて前記混合液を2時間加熱、撹拌することにより重合を行い、樹脂粒子の分散液(b1)を調製した。
【0383】
(単量体混合液1)
スチレン 480.0質量部
n-ブチルアクリレート 250.0質量部
メタクリル酸 68.0質量部
【0384】
(2)第2段重合
撹拌装置、温度センサ、冷却管及び窒素導入装置を取り付けた5Lの反応容器に、ポリオキシエチレン(2)ドデシルエーテル硫酸ナトリウム7.0質量部をイオン交換水3000.0質量部に溶解させた溶液を仕込んだ。当該溶液を80℃に加熱後、80.0質量部の樹脂粒子の分散液(b1)(固形分換算)と、下記組成からなる単量体及び離型剤を90℃にて溶解させた単量体混合液2とを添加し、循環経路を有する機械式分散機CLEARMIX(登録商標、エム・テクニック株式会社製)により、1時間混合分散させ、乳化粒子(油滴)を含む分散液を得た。
【0385】
(単量体混合液2)
スチレン 285.0質量部
n-ブチルアクリレート 95.0質量部
メタクリル酸 20.0質量部
n-オクチル-3-メルカプトプロピオネート 8.0質量部
ベヘン酸ベヘニル 190.0質量部
【0386】
次いで、この分散液に、過硫酸カリウム6.0質量部をイオン交換水200.0質量部に溶解させた開始剤溶液を添加し、得られた分散液を84℃にて1時間にわたり加熱撹拌することにより重合を行い、樹脂粒子の分散液(b2)を得た。
【0387】
(3)第3段重合
さらに、樹脂粒子の分散液(b2)にイオン交換水400.0質量部を添加し、十分に混合した後、得られた分散液に、過硫酸カリウム11.0質量部をイオン交換水400.0質量部に溶解させた溶液を添加し、82℃の温度条件下で、下記組成からなる単量体混合液3を1時間かけて滴下した。滴下終了後、この分散液を2時間にわたり加熱撹拌することにより重合を行った後、28℃まで冷却し、ビニル樹脂(スチレン-アクリル樹脂)を含む非晶性樹脂粒子分散液B1を得た。
【0388】
(単量体混合液3)
スチレン 307.0質量部
n-ブチルアクリレート 147.0質量部
メタクリル酸 52.0質量部
n-オクチル-3-メルカプトプロピオネート 8.0質量部
【0389】
(トナー母体粒子分散液2の調製)
撹拌装置、温度センサ、冷却管を取り付けた反応容器に、288.0質量部の非晶性樹脂粒子分散液(B1)(固形分換算)及び2000.0質量部のイオン交換水を投入した後、5mol/Lの水酸化ナトリウム水溶液に更に添加して、pHを10(測定温度25℃)とした。さらに、150.0質量部の磁性体分散液M1(固形分換算)を投入し、トナー母体粒子分散液2を得た。
【0390】
(トナー母体粒子2の作製)
トナー母体粒子分散液2に、凝集剤として塩化マグネシウム30.0質量部をイオン交換水60.0質量部に溶解した水溶液を、撹拌下、30℃において10分間かけてこの分散液に添加した。得られた混合液を80℃まで昇温し、75.0質量部の結晶性樹脂粒子分散液C1(固形分換算)を10分間かけてこの混合液に添加して凝集を進行させた。
【0391】
コールターマルチサイザー3(ベックマン・コールター社製)を用いて、この混合液中で会合した粒子の粒子径を測定し、当該粒子の体積基準のメジアン径d50が6.0μmになった時点で、塩化ナトリウム190.0質量部をイオン交換水760.0質量部に溶解した水溶液を添加して、粒子成長を停止させた。
さらに、この混合液を80℃に加熱し撹拌することにより、粒子の融着を進行させた。
【0392】
その後、トナー粒子の平均円形度の測定装置FPIA-3000(Sysmex社製)を用いて(HPF検出数:4000個)、平均円形度が0.957になった時点で、5℃/分の冷却速度で30℃に冷却した。
【0393】
次いで、固液分離し、脱水したトナーケーキをイオン交換水に再分散し、固液分離する操作を3回繰り返して洗浄した後、40℃で24時間乾燥させることにより、トナー母体粒子2を得た。
【0394】
<トナー母体粒子3の作製>
(着色剤粒子分散液の調製)
ドデシル硫酸ナトリウム90.0質量部をイオン交換水1600.0質量部に撹拌溶解した。この溶液を撹拌しながら、カーボンブラックリーガル330R(キャボット社製)420.0質量部を徐々に添加した。次いで、撹拌装置クレアミックス(エム・テクニック社製)を用いて分散処理することにより、着色剤粒子分散液を得た。
着色剤粒子分散液中の着色剤粒子の粒子径を、粒度分布測定器Nanotrack Wave(マイクロトラックベル社製)を用いて測定したところ、117.0nmであった。
【0395】
<トナー母体粒子3の作製>
(トナー母体粒子分散液3の調製)
非晶性樹脂粒子分散液A1(固形分25.0質量%)
45.0質量部
非晶性樹脂粒子分散液B1(固形分25.0質量%)
150.0質量部
ワックス分散液W1(固形分25.0質量%) 15.0質量部
磁性体分散液M1(固形分25.0質量%) 105.0質量部
【0396】
トナー母体粒子分散液1において、用いる材料を、上記材料に変更した以外は同様にして、トナー母体粒子分散液3を得た。次いで、トナー母体粒子1の作製と同様の工程を行い、トナー母体粒子3を得た。
【0397】
<トナー母体粒子4の作製>
(結晶性樹脂粒子分散液C2の調製)
イソフォロンジイソシアネート 1000.0質量部
1,4-アジペート(1,4-ブタンジオールとアジピン酸とからなるポリエステルジオール) 830.0質量部
ステアリン酸 96.3質量部
メチルエチルケトン 250.0質量部
【0398】
撹拌機及び温度計を備えた反応装置に、上記材料を、窒素を導入しながら投入した。その後、80℃で6時間ウレタン化反応させた。次に、撹拌しながらイオン交換水2128.0質量部を加え、その後反応系を減圧にして脱溶剤し、結晶性ポリウレタン樹脂を含む結晶性樹脂粒子分散液C2を得た。
【0399】
トナー母体粒子分散液1において、用いる材料を、結晶性樹脂粒子分散液C1の代わりに結晶性樹脂粒子分散液C2に変更した以外は同様にして、トナー母体粒子分散液4を得た。次いで、トナー母体粒子1の作製と同様の工程を行い、トナー母体粒子4を得た。
【0400】
[外添剤1~9の作製]
<外添剤1~9(チタン酸ストロンチウムTS-1~9)の作製>
(チタン酸ストロンチウムTS-4の作製)
硫酸法で得られたメタチタン酸を脱鉄漂白処理した後、水酸化ナトリウム水溶液を加えpH9.0とし、脱硫処理を行い、その後、塩酸によりpH5.8まで中和し、ろ過水洗を行った。洗浄済みケーキに水を加えTiO2として1.85mol/Lのスラリーとした後、塩酸を加えpH1.0とし、解膠処理を行った。このメタチタン酸をTiO2として0.625mol採取し、3Lの反応容器に投入した。更に、塩化ストロンチウム水溶液及び塩化ランタン水溶液を、SrO/LaO/TiO2mol比で1.00/0.18/1.00となるよう0.719mol添加した後、TiO2濃度0.313mol/Lに調製した。次に撹拌混合しながら90℃に加温した後、5mol/L水酸化ナトリウム水溶液296mLを18時間かけて添加し、その後、95℃で1時間撹拌を続け反応を終了した。
【0401】
当該反応スラリーを50℃まで冷却し、pH5.0となるまで塩酸を加え1時間撹拌を続けた。得られた沈殿をデカンテーション洗浄し、当該沈殿を含むスラリーに塩酸を加えpH6.5とし、固形分に対して9.0質量%のイソブチルトリメトキシシランを添加して1時間撹拌保持を続けた。次いで、ろ過及び洗浄を行い、得られたケーキを120℃の大気中で8時間乾燥し、チタン酸ストロンチウムTS-4を得た。
【0402】
(チタン酸ストロンチウムTS-1~3及び5~7の作製)
チタン酸ストロンチウムTS-4の作製において、作製条件を表Iに記載の条件に変更した以外は同様にして、チタン酸ストロンチウムTS-1~3及び5~7を得た。
【0403】
【0404】
(チタン酸ストロンチウムTS-8の作製)
チタン酸ストロンチウムTS-4の作製において、SrO/LaO/TiO2mol比を1.00/0/1.00と変更した以外は同様にして、チタン酸ストロンチウムTS-8を得た。
【0405】
(チタン酸ストロンチウムTS-9の作製)
チタン酸ストロンチウムTS-4の作製において、塩化ランタン水溶液の代わりに塩化マンガン水溶液に変更した以外は同様にして、チタン酸ストロンチウムTS-9を得た。
【0406】
[外添剤10(シリカ)]
外添剤10として、アエロジル社製「NAX50」を使用した。
【0407】
<各種測定>
得られたチタン酸ストロンチウムTS-1~9について、個数平均一次粒子径及び平均円形度を、上記の測定方法により測定した。得られた結果を表IIに示す。
【0408】
[トナー粒子1~13の作製]
表IIに示す組み合わせで、トナー母体粒子100質量部に、外添剤0.95質量部を添加し、ヘンシェルミキサーで撹拌周速30m/secで15分間混合し、トナー粒子1~13を得た。
表IIについて、CPESは結晶性ポリエステル、APESは非晶性ポリエステル、St-Acはビニル系樹脂、PUは結晶性ポリウレタンを意味する。
【0409】
[評価]
得られたトナー粒子1~13について、30℃、80%RHの環境下で、一成分接触現像方式のLaserJet Pro M12(ヒューレットパッカード社製)を評価装置として使用し、下記の評価を行った。結果を表IIに示す。なお、各評価において、〇以上を合格とした。
【0410】
(1)低温定着性
A4サイズの上質紙(日本製紙株式会社製、NPI上質、坪量:127.9g/m2)に、トナー付着量が11.3g/m2、100mm×100mmサイズのベタ画像を形成した。このとき、定着ローラの温度を、110℃から180℃まで、2℃刻みで上げていきながら、繰り返し画像を形成した。そして、定着オフセットによる画像汚れが、目視で確認されない最低の定着温度を最低定着温度(U.O.回避温度)とし、以下の基準で低温定着性を評価した。
◎:最低定着温度が175℃未満
〇:最低定着温度が175℃以上、185℃未満
×:最低定着温度が185℃以上
【0411】
(2)カブリ
印字されていない白紙について、マクベス反射濃度計「RD907」(マクベス社製)を用いて20ヶ所の絶対画像濃度を測定して平均し、白紙濃度とした。次に、評価画像の白地部について、同様に20ヶ所の絶対画像濃度を測定して平均し、この平均濃度から白紙濃度を引いた値をカブリ濃度として評価した。
◎:カブリ濃度が0.007未満
○:カブリ濃度が0.007以上、0.010未満
×:カブリ濃度が0.010以上
【0412】
(3)画像濃度安定性
100万枚印刷前後において、A4サイズの上質紙「CFペーパー(コニカミノルタ株式会社製、坪量:80.0g/m2)」上に全面40%平網画像を出力した。得られた画像の反射濃度を、マクベス反射濃度計「RD907」(マクベス社製)によって測定し、100万枚の画像形成前後でのハーフトーン画像の反射濃度差を求めた。
◎:反射濃度差の絶対値 0.03以下
○:反射濃度差の絶対値 0.03超、0.06以下
×:反射濃度差の絶対値 0.06超
【0413】
【0414】
表IIの結果より、本発明の静電荷像現像用トナーは、低温定着性、カブリの抑制及び画像安定性が向上していることがわかる。このことから、本発明の静電荷像現像用トナーは、低温定着性及びカブリ抑制が向上し、さらに耐久性を有しているため、長期にわたって使用しても、磁性体がトナー粒子の表面に露出して起こる電荷減衰を抑制し、その結果、画像濃度安定性が向上したと考えられる。
また、静電荷像現像用トナーの個数平均一次粒子径及び平均円形度を好適な範囲内に調整することにより、低温定着性、カブリ抑制及び耐久性を両立できることがわかる。