(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022171191
(43)【公開日】2022-11-11
(54)【発明の名称】光送信装置、光伝送装置及び最適位相量算出方法
(51)【国際特許分類】
H04B 10/516 20130101AFI20221104BHJP
G02F 1/01 20060101ALI20221104BHJP
【FI】
H04B10/516
G02F1/01 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021077692
(22)【出願日】2021-04-30
(71)【出願人】
【識別番号】309015134
【氏名又は名称】富士通オプティカルコンポーネンツ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】堀下 雅和
【テーマコード(参考)】
2K102
5K102
【Fターム(参考)】
2K102AA21
2K102BA03
2K102BB01
2K102BB04
2K102BC04
2K102BD01
2K102CA09
2K102DA04
2K102DB04
2K102EA02
2K102EA25
2K102EB22
5K102AA51
5K102AD01
5K102AH02
5K102AH24
5K102AH26
5K102MA01
5K102MB02
5K102MB12
5K102MC06
5K102MC11
5K102MD03
5K102MH02
5K102MH12
5K102MH22
5K102PB01
5K102PH02
(57)【要約】
【課題】最適位相量を保持して主信号の伝送品質の劣化を抑制できる光送信装置等を提供する。
【解決手段】光送信装置は、バイアス電流に応じて信号光を発光する発光部と、信号光を電気信号で変調して光変調信号を出力するマッハツェンダ型の光変調部と、設定位相量に応じて光変調部の位相差を制御する位相制御部とを有する。光送信装置は、制御部と、位相スイープ部と、推定部とを有する。制御部は、光シャットダウン中に光変調部の出力段で検出した光変調信号のパワーが光シャットダウン中の目標値になるようにバイアス電流を制御する。位相スイープ部は、バイアス電流を制御した後、光変調部の位相を一定周期スイープする。推定部は、位相をスイープしながら、光変調部の入力段で検出した信号光のパワーから光変調部の透過特性を推定し、透過特性の推定結果から位相制御部に設定する最適位相量を算出する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
バイアス電流に応じて信号光を発光する発光部と、
前記信号光を電気信号で変調して光変調信号を出力するマッハツェンダ型の光変調部と、
前記光変調部の入力段の前記信号光のパワーを検出する第1の光モニタ部と、
前記光変調部の出力段の前記光変調信号のパワーを検出する第2の光モニタ部と、
設定位相量に応じて前記光変調部の位相差を制御する位相制御部と、
当該光送信装置の光シャットダウン中に前記第2の光モニタ部にて前記光変調信号のパワーを検出し、前記第2の光モニタ部の検出結果が光シャットダウン中の目標値になるように前記発光部のバイアス電流を制御する制御部と、
前記制御部にて前記発光部のバイアス電流を制御した後、前記光変調部の位相を一定周期スイープする位相スイープ部と、
前記光変調部の位相を一定周期スイープしながら、前記第1の光モニタ部にて前記信号光のパワーを検出し、前記第1の光モニタ部の検出結果から前記光変調部の透過特性を推定し、前記透過特性の推定結果から、前記位相制御部に設定する最適位相量を算出する推定部と
を有することを特徴とする光送信装置。
【請求項2】
前記制御部は、
前記光シャットダウンの解除を検出した場合に、前記推定部にて算出した前記最適位相量を前記位相制御部に設定し、前記第2の光モニタ部の検出結果が運用中の目標値になるように前記位相制御部の制御を開始することを特徴とする請求項1に記載の光送信装置。
【請求項3】
前記推定部は、
前記第1の光モニタ部の検出結果の逆数と、前記光変調部の一定周期スイープの位相情報とに基づき、前記光変調部の透過特性を推定することを特徴とする請求項1又は2に記載の光送信装置。
【請求項4】
前記推定部は、
前記光変調部の透過特性の推定結果からピーク値及びボトム値を検出し、前記ピーク値と前記ボトム値との中点に対応する前記最適位相量を算出することを特徴とする請求項3に記載の光送信装置。
【請求項5】
前記制御部は、
運用中は前記第2の光モニタ部の検出結果が前記運用中の目標値になるように前記位相制御部の位相差を制御する位相量を保持すると共に、前記光シャットダウン中は前記推定部にて算出した前記最適位相量を保持することを特徴とする請求項1~4の何れか一つに記載の光送信装置。
【請求項6】
前記光変調部は、
前記信号光を前記電気信号として多値の電気信号で変調して前記光変調信号を出力することを特徴とする請求項1~5の何れか一つに記載の光送信装置。
【請求項7】
複数の光送信装置と、各光送信装置からの光変調信号を合波する光合波部とを有する光伝送装置であって、
前記光送信装置は、
バイアス電流に応じて信号光を発光する発光部と、
前記信号光を電気信号で変調して光変調信号を出力するマッハツェンダ型の光変調部と、
前記光変調部の入力段の前記信号光のパワーを検出する第1の光モニタ部と、
前記光変調部の出力段の前記光変調信号のパワーを検出する第2の光モニタ部と、
設定位相量に応じて前記光変調部の位相差を制御する位相制御部と、
当該光送信装置の光シャットダウン中に前記第2の光モニタ部にて前記光変調信号のパワーを検出し、前記第2の光モニタ部の検出結果が光シャットダウン中の目標値になるように前記発光部のバイアス電流を制御する制御部と、
前記制御部にて前記発光部のバイアス電流を制御した後、前記光変調部の位相を一定周期スイープする位相スイープ部と、
前記光変調部の位相を一定周期スイープしながら、前記第1の光モニタ部にて前記信号光のパワーを検出し、前記第1の光モニタ部の検出結果から前記光変調部の透過特性を推定し、前記透過特性の推定結果から、前記位相制御部に設定する最適位相量を算出する推定部と
を有することを特徴とする光伝送装置。
【請求項8】
バイアス電流に応じて信号光を発光する発光部と、前記信号光を電気信号で変調して光変調信号を出力するマッハツェンダ型の光変調部と、前記光変調部の入力段の前記信号光のパワーを検出する第1の光モニタ部と、前記光変調部の出力段の前記光変調信号のパワーを検出する第2の光モニタ部と、設定位相量に応じて前記光変調部の位相差を制御する位相制御部と、を有する光送信装置の最適位相量算出方法であって、
前記光送信装置は、
当該光送信装置の光シャットダウン中に前記第2の光モニタ部にて前記光変調信号のパワーを検出し、前記第2の光モニタ部の検出結果が光シャットダウン中の目標値になるように前記発光部のバイアス電流を制御し、
前記発光部のバイアス電流を制御した後、前記光変調部の位相を一定周期スイープし、
前記光変調部の位相を一定周期スイープしながら、前記第1の光モニタ部にて前記信号光のパワーを検出し、前記第1の光モニタ部の検出結果から前記光変調部の透過特性を推定し、前記透過特性の推定結果から、前記位相制御部に設定する最適位相量を算出する
処理を実行することを特徴とする最適位相量算出方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光送信装置、光伝送装置及び最適位相量算出方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、光送信装置では、例えば、マッハツェンダ干渉計(MZI:Mach-Zehnder Interferometer)を使用し、電気信号のデータ信号でCW(Continuous Wave)の信号光を変調するマッハツェンダ型変調器(MZM:Mach-Zehnder Modulator)が知られている。MZMは、平行に配置されたアームの電極に電気信号を印加することでアーム上の光屈折率が変化し、アームを進む信号光に位相差が生じ、位相差のある信号光を合波して光変調することになる。
【0003】
しかしながら、MZMは、位相差をMZM透過率の中点(最適位相量)に保持する必要があるが、例えば、経年劣化や温度変動等により、MZMの透過特性が変動することで最適位相量がずれる。従って、常に最適位相量を保持するための制御手段が求められているのが実情である。
【0004】
そこで、MZMの最適位相量に制御する方法として、例えば、主信号(NRZ(Non Return to Zero)信号等)に対して周波数の低い正弦変調等のディザ信号を振幅方向に重畳する。そして、MZMからの平均の光出力電力において、ディザ信号周波数成分が抑圧されるようにバイアス電圧を制御する方式が一般的に知られている。従って、MZMを用いた光送信装置では、MZMの最適位相量に制御した場合、光出力電力の平均値においてディザ周波数成分がなくなることになる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2002-23119号公報
【特許文献2】特開2009-80189号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、MZMを用いた光送信装置では、MZMの最適位相量がずれると、ディザ周波数成分がのるため、ディザ信号の影響により光出力パワーが変動し、光出力パワーの波形歪により主信号の伝送品質が劣化してしまう。
【0007】
一つの側面では、最適位相量を保持して主信号の伝送品質の劣化を抑制できる光送信装置等を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
一つの態様の光送信装置は、発光部と、光変調部と、第1の光モニタ部と、第2の光モニタ部と、位相制御部と、制御部と、位相スイープ部と、推定部とを有する。発光部は、バイアス電流に応じて信号光を発光する。光変調部は、信号光を電気信号で変調して光変調信号を出力するマッハツェンダ型の光変調部である。第1の光モニタ部は、光変調部の入力段の信号光のパワーを検出する。第2の光モニタ部は、光変調部の出力段の光変調信号のパワーを検出する。位相制御部は、設定位相量に応じて光変調部の位相差を制御する。制御部は、当該光送信装置の光シャットダウン中に第2の光モニタ部にて光変調信号のパワーを検出し、第2の光モニタ部の検出結果が光シャットダウン中の目標値になるように発光部のバイアス電流を制御する。位相スイープ部は、制御部にて発光部のバイアス電流を制御した後、光変調部の位相を一定周期スイープする。推定部は、光変調部の位相を一定周期スイープしながら、第1の光モニタ部にて信号光のパワーを検出し、第1の光モニタ部の検出結果から光変調部の透過特性を推定し、透過特性の推定結果から、位相制御部に設定する最適位相量を算出する。
【発明の効果】
【0009】
1つの側面によれば、最適位相量を保持して主信号の伝送品質の劣化を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】
図1は、本実施例の光伝送装置の一例を示すブロック図である。
【
図2】
図2は、光送信装置の一例を示すブロック図である。
【
図3】
図3は、光シャットダウン状態で第2のモニタ値に基づくバイアス電流制御の一例を示す説明図である。
【
図4】
図4は、光シャットダウン状態でMZMの透過特性の推定動作の一例を示す説明図である。
【
図5】
図5は、光シャットダウン状態の位相変動時における第2のモニタ値に基づくバイアス電流制御の一例を示す説明図である。
【
図6】
図6は、光シャットダウン状態の位相変動時におけるMZMの透過特性の推定動作の一例を示す説明図である。
【
図7A】
図7Aは、安定化処理に関わる光送信装置の処理動作の一例を示すフローチャートである。
【
図7B】
図7Bは、安定化処理に関わる光送信装置の処理動作の一例を示すフローチャートである。
【
図8】
図8は、比較例1の光送信装置の一例を示すブロック図である。
【
図9】
図9は、比較例1の光送信装置における運用時の位相変動前後の光変調信号の光パワー対位相遅延量の特性の一例を示す説明図である。
【
図10】
図10は、比較例1の光送信装置における光シャットダウン解除時の位相変動前後の光変調信号の光パワー対位相遅延量の特性の一例を示す説明図である。
【
図11】
図11は、比較例1の光送信装置の光変調信号の光パワーの変動推移の一例を示す説明図である。
【
図12】
図12は、比較例2の光送信装置の一例を示すブロック図である。
【
図13】
図13は、比較例2の光送信装置の出力の変動推移の一例を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面に基づいて、本願の開示する光送信装置等の実施例及び、その比較例を詳細に説明する。尚、各実施例により、開示技術が限定されるものではない。また、以下に示す各実施例は、矛盾を起こさない範囲で適宜組み合わせても良い。
【比較例1】
【0012】
図8は、比較例1の光送信装置100の一例を示すブロック図である。
図8に示す光送信装置100は、ディザ信号を使用せずにMZM103の出力段の光パワーを安定化するようにMZM103の最適バイアス点(MZM103の位相遅延量)に対応する最適位相量を制御する方式である。
【0013】
光送信装置100は、発光素子101Aと、PAM4(4値振幅変調:Pulse Amplitude Modulation 4)ドライバ102と、MZM103とを有する。MZM103は、一方のアームに配置された変調器104と、他方のアームに配置された位相遅延器105Aとを有する。更に、光送信装置100は、バイアス制御回路101Bと、位相遅延制御回路105Bと、第11の光モニタ部106と、第12の光モニタ部107と、発光素子APC(Auto Power Control)108と、位相遅延器APC109とを有する。
【0014】
発光素子101Aは、バイアス電流に応じてCW(Continuous Wave)の信号光を発光し、バイアス電流の電流量に応じて信号光の出力レベルを可変する。PAM4ドライバ102は、例えば、PAM4の電気信号をMZM103内の変調器104に入力する。尚、PAM4は、例えば、レベル0~3の多値の電気信号である。変調器104は、発光素子101Aからの信号光をPAM4の電気信号に応じて光変調する。
【0015】
MZM103の位相遅延器105Aは、MZM103の位相を遅延調整する、例えば、ヒータ等で構成する。MZM103は、平行に配置されたアームの電極にPAM4の電気信号を印加することでアーム上の光屈折率が変化してアームを進む信号光に位相差が生じる。そして、MZM103は、位相差のある信号光を合波して光変調信号を出力することになる。
【0016】
第11の光モニタ部106は、MZM103の入力段を通過する信号光の光パワーを検出する。第12の光モニタ107は、MZM103の出力段を通過する光変調信号の光パワーを検出する。バイアス制御回路101Bは、発光素子101Aに供給するバイアス電流を制御する。位相遅延制御回路105Bは、位相遅延量に応じてMZM103内の位相遅延器105Aを制御する。
【0017】
発光素子APC108は、第11の光モニタ部106で検出したMZM103の入力段の信号光の光パワーを一定にすべく、バイアス制御回路101Bを制御する。位相遅延器APC109は、第12の光モニタ部107で検出したMZM103の出力段の光変調信号の光パワーを一定にすべく、位相遅延制御回路105Bを制御する。
【0018】
光送信装置100では、発光素子APC108を使用してMZM103の入力段の光パワーを一定にするようにバイアス電流を調整した上で、位相遅延器APC109を使用してMZM103の出力段の光パワーを一定にするようにMZM103の位相遅延量を調整する。
【0019】
図9は、比較例1の光送信装置100における運用時の位相変動前後の光変調信号の光パワー対位相遅延量の特性の一例を示す説明図である。MZM103は、例えば、温度変化や経時変化等で位相が変動する。位相変動前の光変調信号の光パワー対位相遅延量の特性(実線)では、光変調信号の光パワーが目標値になる最適位相量がX1とし、最適位相量に対応する位相遅延量(変動前の最適点)で運用されているものとする。運用中に温度変化等で位相が変動した場合、位相変動の光変調信号の光パワー対位相遅延量の特性(点線)では、光変調信号の光パワーが目標値を維持するように最適位相量をX1からX2に追従すべく、最適位相量X2に対応する位相遅延量(変動後の最適点)に調整する必要がある。その結果、運用中の場合、光変調信号の光パワーが目標値になるように最適位相量に相当する位相遅延量(最適点)を保持できる。
【0020】
比較例1の光送信装置100では、ディザ信号を使用しないため、ディザ信号の影響を受けることなく、従来技術の課題で指摘したような主信号への影響もなくなる。
【0021】
しかしながら、比較例1の光送信装置100では、例えば、光信号を伝送する運用回線から他の回線に切り替える際に光シャットダウン(SD)を実行して光変調信号の出力を一時的に遮断する場合がある。例えば、位相変動等で、光シャットダウン直前の最適位相量X1と、光シャットダウン解除時の最適位相量X2とが異なる場合、光シャットダウン直前の最適位相量X1から光シャットダウン解除時の最適位相量X2に追従する仕組が必要となる。
【0022】
図10は、比較例1の光送信装置100における光シャットダウン解除時の位相変動前後の光変調信号の光パワー対光位相遅延量の特性の一例を示す説明図、
図11は、比較例1の光送信装置の光変調信号の光パワーの変動推移の一例を示す説明図である。
図9に示す運用時(発光が続いている状態)では、位相変動が発生しても、位相遅延器APC109を使用して光変調信号の光パワーが目標値になるように最適位相量を追従することが可能である。しかしながら、
図10に示す光シャットダウン解除時では、光シャットダウン実行直前の位相変動前の特性(実線)の最適位相量X1に相当する位相遅延量から制御を開始する。そして、光変調信号の光パワーが目標値になるように位相変動後の特性(点線)の最適位相量X2になるよう位相遅延量を変動させることになる。しかしながら、光シャットダウン解除直後は、位相変動前の特性の最適位相量X1の位相遅延量に相当する位相変動後の特性(点線)の最適位相量X2Aに相当する位相遅延量(変動前の最適点)から制御を開始することになるため、光変調信号の光パワーが目標値からずれる期間が発生する。つまり、この光シャットダウン解除直後の光変調信号の光パワーが目標値からずれる期間では、波形崩れや光パワー変動が発生して主信号の伝送品質が劣化することになる。
【0023】
そこで、光シャットダウン解除直後の伝送品質が劣化した主信号の出力を回避する方法として、MZM103の出力段に光変調信号の出力を遮断する光遮断部110を配置する比較例2の光送信装置100Aが考えられる。
【比較例2】
【0024】
図12は、比較例2の光送信装置100Aの一例を示すブロック図、
図13は、比較例2の光送信装置100Aの出力の変動推移の一例を示す説明図である。尚、
図8に示す比較例1の光送信装置100と同一の構成には同一符号を付すことで、その重複する構成及び動作の説明については省略する。
図12に示す光送信装置100Aは、MZM103の出力段に光遮断部110を配置する。光遮断部110は、光シャットダウン実行から光シャットダウンを解除して光変調信号の光パワーが目標値になるように位相変動後の特性の最適位相量に到達するまでの期間Tsd、MZM103の出力を遮断することになる。つまり、光送信装置100Aは、
図13に示すように、光シャットダウン実行から光シャットダウンを解除して光変調信号の光パワーが目標値になるように位相変動後の特性の最適位相量に到達するまでの期間Tsd、光変調信号の出力を遮断することになる。
【0025】
しかしながら、比較例2の光送信装置100Aでは、光シャットダウン解除から光変調信号の光パワーが目標値になるまでの期間Tsが必要になり、光シャットダウン解除から光変調信号を出力するまでの期間を決めた仕様基準に準拠できない場合も考えられる。
【0026】
しかも、例えば、100G×4chアプリケーションの光送信装置を内蔵する400Gの光伝送装置では、4チャネルの内、任意のチャネルのみを発光/消光(光シャットダウン)することはできず、全チャネルを一括でのみ発光/消光する仕様となっている。そこで、非対称マッハツェンダ干渉器のMZMを使用した波長多重光の光送信装置では、ディザ信号を重畳することなく、光シャットダウン解除時においても最適位相量の位相遅延量から開始できる光送信装置を内蔵した光伝送装置が求められている。そこで、その光伝送装置の実施の形態につき、以下に説明する。
【実施例0027】
図1は、本実施例の光伝送装置1の一例を示す説明図である。
図1に示す光伝送装置1は、例えば、4値振幅変調(PAM4:Pulse Amplitude Modulation 4)を用いた400G光伝送装置である。光伝送装置1では、PAM4信号が4値の多値信号であるため、電気信号の入力に1レーン当たり25GボーレートのPAM4信号を8レーン使用した場合でも、疑似的な400Gbpsの電気信号を入力することが可能になる。光伝送装置1は、光信号の入力は1つの光波長に対して、50GボーレートのPAM4変調を実行し、4波長λ1~λ4を使用することで400Gbpsの光送信を行うことになる。そして、光伝送装置1は、各光送信装置2の各波長の光変調信号を合波し、合波後の光変調信号である波長多重光信号を1本の光ファイバから出力することになる。
【0028】
光伝送装置1は、4台(#1~#4)の光送信装置2と、送信DSP(Digital Signal Processor)3と、MCU(Micro Control Unit)4と、光合波器5とを有する。送信DSP3は、25GボーレートのPAM4信号×8chを入力し、入力した25GボーレートのPAM4信号×8chを50GボーレートのPAM4信号×4chに変換する。送信DSP3は、50GボーレートのPAM4信号をチャネル単位で各光送信装置2内のPAM4ドライバ11に入力する。MCU4は、光伝送装置1全体を制御する。MCU4は、光送信装置2内の各発光部12を制御する。
【0029】
#1の光送信装置2A(2)は、波長λ1の信号光をPAM4信号で光変調して波長λ1の光変調信号を光合波器5に出力する。#2の光送信装置2B(2)は、波長λ2の信号光をPAM4信号で光変調して波長λ2の光変調信号を光合波器5に出力する。#3の光送信装置2C(2)は、波長λ3の信号光をPAM4信号で光変調して波長λ3の光変調信号を光合波器5に出力する。#4の光送信装置2D(2)は、波長λ4の信号光をPAM4信号で光変調して波長λ4の光変調信号を光合波器5に出力する。光合波器5は、#1~#4の各光送信装置2の波長λ1~λ4の光変調信号を合波し、合波後の波長多重光信号を出力することになる。
【0030】
光送信装置2は、PAM4ドライバ11と、発光部12と、MZM13とを有する。PAM4ドライバ11は、送信DSP3からの50GボーレートのPAM4信号に応じた電気信号であるPAM4信号をMZM13内の変調器13Aに印加する。発光部12は、MZM13に入力するCWの信号光を発光する。MZM13は、発光部12からの信号光をPAM4ドライバ11からのPAM4信号に応じて変調して光変調信号を出力する。
【0031】
図2は、光送信装置2の構成の一例を示す説明図である。
図2に示す光送信装置2は、PAM4ドライバ11と、発光部12と、MZM13と、位相制御部14と、第1の光モニタ部15と、第2の光モニタ部16と、第1の制御部17と、第2の制御部18と、推定部19と、位相スイープ部20とを有する。
【0032】
発光部12は、発光素子12Aと、バイアス制御回路12Bとを有する。発光素子12Aは、例えば、LD(Laser Diode)を使用し、バイアス電流に応じてCWの信号光を発光し、バイアス電流量に応じて信号光の光パワーを可変する。バイアス制御回路12Bは、発光素子12Aにバイアス電流を供給する制御回路である。バイアス制御回路12Bは、第1の制御部17からの設定電流情報に基づき、発光素子12Aに供給するバイアス電流を決定する。
【0033】
MZM13は、一方のアームに配置された変調器13Aと、他方のアームに配置された位相制御部14内の位相遅延器14Aとを有する。MZM13は、2本のアーム上に信号電極を配置し、信号電極にPAM4信号が印加されると、アーム内に電界が発生し、この電界によってアーム内の光屈折率が変化する。変調器13Aは、発光素子12Aからの信号光をPAM4ドライバ11からのPAM4信号に応じて光変調する。位相制御部14は、MZM13の位相を遅延調整する位相遅延器14Aを制御する。その結果、MZM13は、平行に配置されたアームの電極にPAM4信号を印加することでアーム上の光屈折率が変化してアームを進む信号光に位相差が生じ、位相差のある信号光を合波して光変調信号を出力することになる。
【0034】
MZM13は、アーム間の位相差に応じてMZM13の透過特性を変動して最適位相量を設定することで、光変調信号の光パワーが目標値になるように光変調信号を出力できる。MZM13の最適位相量は透過特性のピーク値とボトム値との間の中点である。MZM13の透過特性は、例えば、温度変化や経時変化等により変動する位相対透過率の特性である。尚、安定した最適な光信号の出力波形を得るには常に最適位相量(中点)を保持する位相遅延量に位相遅延器14Aを設定する必要がある。
【0035】
位相制御部14は、位相遅延器14Aと、位相遅延制御回路14Bと、第4のSW14Cと、第4の格納部14Dとを有する。位相遅延器14Aは、位相遅延量に応じてMZM13の位相を変化させる、例えば、ヒータである。位相遅延制御回路14Bは、位相遅延器14Aに設定する位相遅延量を調整する。
【0036】
第4のSW14Cは、運用状態に応じて位相遅延量を切替可能にし、位相遅延器14Aを調整する位相遅延量を切り替える。第4のSW14Cは、運用時に第2の制御部18からの位相遅延量を位相遅延制御回路14Bに設定する。運用時とは、光送信装置2から光変調信号を安定出力する運用状態である。第4のSW14Cは、光シャットダウン時に位相スイープ部20からの位相遅延量を位相遅延制御回路14Bに設定する。光シャットダウン時とは、光送信装置2から光変調信号の出力を所定レベル以下に低下した状態である。第4の格納部14Dは、光シャットダウン解除時に位相遅延制御回路14Bに設定する、後述する位相遅延量初期値である位相遅延量を格納する。
【0037】
第1の光モニタ部15は、第1の受光素子15Aと、第1のSW15Bとを有する。第1の光モニタ部15は、MZM13の入力段を通過する信号光の光パワーである第1のモニタ値を検出する。第1の受光素子15Aは、MZM13の入力段を通過する信号光を電圧変換して信号光の光パワーである第1のモニタ値を検出する。第1のSW15Bは、運用時に、第1の受光素子15Aで検出した第1のモニタ値を第1の制御部17内の第1の比較回路17Aに設定する。尚、運用時に検出した第1のモニタ値は、発光素子12Aの信号光の光パワーが一定になるように第1の制御部17の発光素子APCに使用する。第1のSW15Bは、光シャットダウン時に、第1の受光素子15Aで検出した第1のモニタ値を推定部19内の第1の演算部19Aに設定する。尚、光シャットダウン時に検出した第1のモニタ値は、推定部19にてMZM13の透過特性を推定する際に使用する。
【0038】
第2の光モニタ部16は、第2の受光素子16Aと、第2のSW16Bとを有する。第2の光モニタ部16は、MZM13の出力段を通過する光変調信号の光パワーである第2のモニタ値を検出する。第2の受光素子16Aは、MZM13の出力段を通過する光変調信号を電圧変換して、光変調信号の光パワーである第2のモニタ値を検出する。第2のSW16Bは、運用時に、第2の受光素子16Aで検出した第2のモニタ値を第2の制御部18内の第2の比較回路18Aに設定する。尚、運用時に検出した第2のモニタ値は、光変調信号の光パワーが一定になるように第2の制御部18の位相遅延器APCに使用する。第2のSW16Bは、光シャットダウン時に、第2の受光素子18Aで検出した第2のモニタ値を第1の制御部17内の第1の比較回路17Aに設定する。尚、光シャットダウン時に検出した第2のモニタ値は、第2のモニタ値が第2のターゲット値になるように信号光のバイアス電流を制御する第1の制御部17に使用する。
【0039】
第1の制御部17は、第1の比較回路17Aと、第3のSW17Bと、第1の格納部17Cと、第2の格納部17Dとを有する。第1の制御部17は、運用中に発光部12のバイアス制御回路12Bを制御する。第3のSW17Bは、運用時に第1の格納部17C内の第1のターゲット値を第1の比較回路17Aに設定する。尚、第1のターゲット値は、運用中の信号光の光パワーが安定化する第1の目標値である。第3のSW17Bは、光シャットダウン時に第2の格納部17D内の第2のターゲット値を第1の比較回路17Aに設定する。尚、第2のターゲット値は、光シャットダウン状態で光変調信号の光パワーが低下したレベルである第2の目標値である。
【0040】
第1の比較回路17Aは、運用時に第1のモニタ値と第1の格納部17Cに格納した第1のターゲット値とを比較し、第1のモニタ値が第1のターゲット値となるようにバイアス電流値をバイアス制御回路12Bに設定する。尚、第1のターゲット値は、運用時に使用される信号光の光パワーの仕様に準拠する第1の目標値である。第1の比較回路17Aは、運用時に第1のモニタ値と第1のターゲット値とが一致するように、発光素子12Aからの信号光の光パワーを一定に保持するバイアス電流値を調整する発光素子APCとして機能する。
【0041】
第1の比較回路17Aは、光シャットダウン時に第2のモニタ値と第2の格納部17Dに格納した第2のターゲット値とを比較し、第2のモニタ値が第2のターゲット値となるようにバイアス電流値をバイアス制御回路12Bに設定する。尚、第2のターゲット値は、光シャットダウン状態での光変調信号の光パワーの仕様に準拠する第2の目標値である。第1の比較回路17Aは、光シャットダウン状態での第2のモニタ値と第2のターゲット値とが一致するように、MZM13の出力段の光変調信号の光パワーを光シャットダウン状態での一定レベルに保持するバイアス電流値を調整する発光素子APCとして機能する。
【0042】
第2の制御部18は、第2の比較回路18Aと、第3の格納部18Bとを有する。第2の制御部18は、運用時に第2のモニタ値が安定出力するMZM13の位相遅延器14Aを制御する。第2の比較回路18Aは、第2のモニタ値と第3の格納部18Bに格納した第3のターゲット値とを比較し、第2のモニタ値が第3のターゲット値となるように位相遅延量を位相遅延制御回路14Bに設定する。その結果、第2の比較回路18Aは、運用中にMZM13の位相が変動した場合でも、第2のモニタ値が第3のターゲット値になるように最適位相量を設定するため、最適位相量を保持する位相遅延量を調整する位相遅延器APCとして機能する。
【0043】
位相遅延制御回路14Bは、光シャットダウン解除時に第4の格納部14Dに格納中の位相遅延量初期値を位相遅延器14Aに設定する。位相遅延量初期値は、光シャットダウン解除時に使用する位相遅延器14Aの位相遅延量である。尚、位相遅延量初期値は、推定されたMZM13の透過特性から算出する位相遅延量であって、光シャットダウン中に更新されるものである。
【0044】
推定部19は、第1の演算部19Aと、第2の演算部19Bとを有する。推定部19は、光シャットダウン時にのみ動作し、第1の光モニタ部15で検出した第1のモニタ値と、位相スイープ部20の位相変動情報とに基づき、MZM13の透過特性を推定する。更に、推定部19は、MZM13の透過特性の推定結果から光シャットダウン解除時の位相遅延量初期値を算出する。
【0045】
第1の演算部19Aは、光シャットダウン時に、位相スイープ部20にて位相スイープしながら、第1の光モニタ部15で検出した第1のモニタ値を取得する。第1の演算部19Aは、第1のモニタ値の逆数と、位相スイープ部20からの位相スイープ情報とを演算することで、第1のモニタ値の逆数対位相のMZM13の透過特性を推定する。第1のモニタ値の逆数は、信号光の光パワーの逆数と、時間との関係を示す特性である。位相スイープ情報は、位相スイープ部20が一定周期の位相の時間推移を示す、位相と時間との関係を示す情報である。
【0046】
第2の演算部19Bは、MZM13の透過特性の推定結果から中点(最適位相量)に相当する位相遅延量を位相遅延量初期値として算出する。第2の演算部19Bは、ピーク検出回路19B1と、ボトム検出回路19B2と、バイアス点算出回路19B3とを有する。ピーク検出回路19B1は、第1の演算部19AからMZM13の透過特性の推定結果からピーク値を検出する。ボトム検出回路19B2は、第1の演算部19AからMZM13の透過特性の推定結果からボトム値を検出する。バイアス点算出回路19B3は、検出されたピーク値とボトム値との間の中点となるMZM13の最適位相量に相当する位相遅延量を算出する。バイアス点算出回路19B3は、算出した位相遅延量を位相遅延量初期値として第4の格納部14Dに格納する。
【0047】
位相スイープ部20は、光シャットダウン時にMZM13の一定周期内の位相を一定周期スイープするための位相遅延量を位相遅延制御回路14Bに設定する。尚、スイープする位相はπ以上、波形は、
図4に示す通りである。位相スイープ部20は、MZM13の一定周期の位相、すなわちMZM13の透過率を0%(0)から100%(1)までスイープする。
【0048】
図3は、光シャットダウン状態で第2のモニタ値に基づくバイアス電流制御の一例を示す説明図である。第1の光モニタ部15は、光シャットダウン状態でのMZM13の入力段である信号光の光パワーである第1のモニタ値を取得する。第2の光モニタ部16は、光シャットダウン状態でのMZM13の出力段である光変調信号の光パワーである第2のモニタ値を取得する。MZM13の透過特性は、
図3に示す通りである。しかしながら、光送信装置2では、MZM13の透過特性を測定できない。第1の制御部17は、第2のモニタ値が光シャットダウン状態での目標値(第2のターゲット値)になるように発光素子12Aの信号光の光パワーを制御する。
【0049】
図4は、光シャットダウン状態でMZM13の透過特性の推定動作の一例を示す説明図である。位相スイープ部20は、光シャットダウン中、MZM13の位相を一定周期スイープする位相遅延量を位相遅延制御回路14Bに順次設定する。更に、第1の光モニタ部15は、位相スイープ中に第1のモニタ値を検出し、位相スイープ中に検出した第1のモニタ値を推定部19に出力する。推定部19は、位相スイープ中に第1の光モニタ部15で検出した第1のモニタ値の逆数と、位相スイープ部20による一定周期の位相推移とに基づき、MZM13の透過特性を推定する。推定部19は、MZM13の透過特性の推定結果からピーク値及びボトム値を検出し、ピーク値とボトム値との間の中点(最適位相量:点線)を算出する。更に、推定部19は、算出した最適位相量に対応する遅延位相量を位相遅延量初期値として第4の格納部14Dに格納する。その結果、第2の制御部18は、光シャットダウン解除を検出した場合、位相遅延量初期値を位相遅延制御回路14Bに設定して位相遅延器APCの制御を開始することになる。位相遅延量初期値からの制御開始であるため、比較例2のような光シャットダウン解除から光変調信号の光パワーが目標値になるまでの期間Tsが不要になるため、光シャットダウン解除から光変調信号を出力するまでの期間を取り決めた仕様基準に準拠できる。
【0050】
図5は、光シャットダウン状態の位相変動時における第2のモニタ値に基づくバイアス電流制御の一例を示す説明図である。光シャットダウン状態でも経時変化や温度変化等でMZM13の位相が変動する。
図5に示すMZM13の透過特性では、位相変動前の透過特性(点線)から位相変動後の透過特性(実線)に変動する。前述した通り、光送信装置2では、MZM13の透過特性を測定できない。第1の制御部17は、位相変動後も、第2のモニタ値が光シャットダウン状態での目標値(第2のターゲット値)になるように発光素子12Aの信号光の光パワーを制御する。
【0051】
図6は、光シャットダウン状態の位相変動時におけるMZM13の透過特性の推定動作の一例を示す説明図である。位相スイープ部20は、光シャットダウン中はMZM13の位相を一定周期スイープする位相遅延量を位相遅延制御回路14Bに順次設定する。更に、第1の光モニタ部15は、位相スイープ中に第1のモニタ値を検出し、位相スイープ中に検出した第1のモニタ値を推定部19に出力する。推定部19は、位相スイープ中に第1の光モニタ部15で検出した第1のモニタ値の逆数と、位相スイープ部20による一定周期の位相推移とに基づき、MZM13の透過特性を推定する。推定部19は、MZM13の透過特性の推定結果からピーク値及びボトム値を検出し、ピーク値とボトム値との間の中点(最適位相量:点線)を算出する。推定部19は、算出した最適位相量に対応する位相遅延量を位相遅延量初期値として第4の格納部14Dに格納する。その結果、第2の制御部18は、光シャットダウン解除を検出した場合、位相遅延量初期値を位相遅延制御回路14Bに設定して位相遅延器APCの制御を開始することになる。位相遅延量初期値からの制御開始であるため、比較例2のような光シャットダウン解除から光変調信号の光パワーが目標値になるまでの期間Tsが不要になる。従って、光シャットダウン中に位相変動が発生した場合でも、光シャットダウン解除から光変調信号を出力するまでの期間を取り決めた仕様基準に準拠できる。
【0052】
次に本実施例の光送信装置2の動作について説明する。
図7A及び
図7Bは、安定化処理に関わる光送信装置2の処理動作の一例を示すフローチャートである。光送信装置2は、動作モードを確認する(ステップS11)。尚、動作モードは、例えば、光送信装置2の出力である光変調信号の光パワーが安定出力する運用状態である運用モードと、光送信装置2の出力である光変調信号の光パワーが光シャットダウン状態のレベルである光シャットダウンモードとを有する。光送信装置2が、動作モードが運用モードであるか否かを判定する(ステップS12)。
【0053】
光送信装置2は、動作モードが運用モードの場合(ステップS12:Yes)、バイアス電流をバイアス制御回路12Bに設定する(ステップS13)。光送信装置2内の第1の制御部17は、第1の光モニタ部15からMZM13の入力段を通過する信号光の光パワーである第1のモニタ値を取得する(ステップS14)。第1の制御部17内の第1の比較回路17Aは、第1のモニタ値と第1のターゲット値とを比較し(ステップS15)、第1のモニタ値と第1のターゲット値とが一致するようにバイアス電流をバイアス制御回路12Bに設定する(ステップS16)。
【0054】
光送信装置2内の位相遅延制御回路14Bは、第1のモニタ値と第1のターゲット値とが一致するようにバイアス電流を設定した後、直近の状態で光シャットダウン解除を検出したか否かを判定する(ステップS17A)。位相遅延制御回路14Bは、直近の状態で光シャットダウン解除を検出した場合(ステップS17A:Yes)、第4の格納部17Dに格納中の位相遅延量初期値を位相遅延器14Aに設定する(ステップS17)。光送信装置2内の第2の制御部18は、第2の光モニタ部16からMZM13の出力段を通過する光変調信号の光パワーである第2のモニタ値を取得する(ステップS18)。
【0055】
第2の制御部18内の第2の比較回路18Aは、第2のモニタ値と第3のターゲット値とを比較し(ステップS19)、第2のモニタ値と第3のターゲット値とが一致するように位相遅延制御回路14Bに位相遅延量を設定する(ステップS20)。光送信装置2は、第2のモニタ値と第3のターゲット値とが一致するように位相遅延量を位相遅延制御回路14Bに設定した後、光シャットダウンを検出したか否かを判定する(ステップS21)。
【0056】
光送信装置2は、光シャットダウンを検出したのでない場合(ステップS21:No)、現在の動作モードが運用モード中と判断し、第1の光モニタ部15から第1のモニタ値を取得すべく、ステップS14に移行する。また、光送信装置2は、光シャットダウンを検出した場合(ステップS21:Yes)、現在の動作モードを確認すべく、ステップS11に移行する。
【0057】
光送信装置2は、現在の動作モードが運用モードでない場合(ステップS12:No)、現在の動作モードが光シャットダウンモードであると判断し、
図7Bに示すM1に移行する。また、第2の制御部18は、直近の状態で光シャットダウン解除を検出したのでない場合(ステップS17A:No)、運用中を継続しているものと判断する。そして、第2の制御部18は、第2の光モニタ部16からMZM13の出力段を通過する光変調信号の光パワーである第2のモニタ値を取得すべく、ステップS18に移行する。
【0058】
図7Bに示すM1において光送信装置2は、現在の動作モードが光シャットダウンモードであると判断した場合、バイアス制御回路12Bに「0」のバイアス電流を設定する(ステップS31)。光送信装置2内の第1の制御部17は、
図3に示すように、光シャットダウン状態での第2の光モニタ部16からMZM13の出力段を通過する光変調信号の光パワーである第2のモニタ値を取得する(ステップS32)。
【0059】
第1の制御部17内の第1の比較回路17Aは、第2のモニタ値と第2のターゲット値とを比較し(ステップS33)、第2のモニタ値と第2のターゲット値とが一致するようにバイアス電流をバイアス制御回路12Bに設定する(ステップS34)。尚、ステップS32、S33及びS34の処理を継続して実行するものとする。
【0060】
位相スイープ部20は、第2のモニタ値と第2のターゲット値とが一致するようにバイアス電流を設定した後に起動し(ステップS35)、MZM13の位相を一定周期スイープする(ステップS36)。
【0061】
光送信装置1内の推定部19は、
図4に示すように、一定周期の位相スイープ中に、第1の光モニタ部15からMZM13の入力段を通過する信号光の光パワーである第1のモニタ値を取得する(ステップS37)。尚、ステップS32、S33及びS34の処理を継続して実行しながら、ステップS36の位相スイープを実行することで、
図3に示す発光素子12Aに供給するバイアス電流と時間との特性が取得して第1のモニタ値を取得できる。推定部19内の第1の演算部19Aは、位相スイープ中に取得した第1のモニタ値の逆数と、位相スイープ情報とに基づき、MZM13の透過特性を推定する(ステップS38)。
【0062】
推定部19内の第2の演算部19Bは、MZM13の透過特性の推定結果からピーク値及びボトム値を検出する(ステップS39)。第2の演算部19Bは、検出したピーク値とボトム値との間の中点(最適位相量)に相当する遅延位相量を算出し(ステップS40)、算出した遅延位相量を位相遅延量初期値として第4の格納部14Dに格納する(ステップS41)。
【0063】
更に、光送信装置2は、発光素子12Aの光シャットダウン解除を検出したか否かを判定する(ステップS42)。光送信装置2は、光シャットダウン解除を検出した場合(ステップS42:Yes)、
図7Aに示す動作モードを確認すべく、ステップS11に移行する。また、光送信装置2は、光シャットダウン解除を検出しなかった場合(ステップS42:No)、第2の光モニタ部16からMZM13の出力段の光変調信号の第2のモニタ値を取得すべく、ステップS32に移行する。
【0064】
位相スイープ部20は、光シャットダウン中はMZM13の位相を一定周期スイープする位相遅延量を位相遅延制御回路14Bに順次設定する。更に、第1の光モニタ部15は、位相スイープ中に第1のモニタ値を検出し、位相スイープ中に検出した第1のモニタ値を推定部19に出力する。推定部19は、第1の光モニタ部15の第1のモニタ値の逆数と、位相スイープ部20による一定周期の位相推移とに基づき、MZM13の透過特性を推定する。推定部19は、MZM13の透過特性の推定結果からピーク値及びボトム値を検出し、ピーク値とボトム値との間の中点(最適位相量:点線)を算出し、最適位相量に対応する位相遅延量を位相遅延量初期値として第4の格納部14Dに格納する。第2の制御部18は、光シャットダウン解除を検出した場合、位相遅延量初期値を位相遅延制御回路14Bに設定して位相遅延器APCの制御を開始する。その結果、位相遅延量初期値からの制御開始であるため、比較例2のような光シャットダウン解除から光変調信号の光パワーが目標値になるまでの期間Tsが不要になるため、光シャットダウン解除から光変調信号を出力するまでの期間を取り決めた仕様基準に準拠できる。
【0065】
本実施例の光送信装置2は、光シャットダウン中に第2のモニタ値を検出し、第2のモニタ値が光シャットダウン中の目標値(第2のターゲット値)になるように発光部12のバイアス電流を制御する。光送信装置2は、発光部12のバイアス電流を制御した後、MZM13の位相を一定周期スイープしながら第1のモニタ値を検出し、第1のモニタ値からMZM13の透過特性を推定する。更に、光送信装置2は、MZM13の透過特性の推定結果から位相制御部14に設定する最適位相量を算出し、最適位相量に相当する位相遅延量を位相遅延量初期値として第4の格納部14Dに格納する。第2の制御部18は、光シャットダウン解除を検出した場合、位相遅延量初期値を位相遅延制御回路14Bに設定して位相遅延器APCの制御を開始する。その結果、位相遅延量初期値からの制御開始であるため、比較例2のような光シャットダウン解除から光変調信号の光パワーが目標値になるまでの期間Tsが不要になるため、光シャットダウン解除から光変調信号を出力するまでの期間を取り決めた仕様基準に準拠できる。しかも、ディザ信号を使用しないため、主信号の信号品質の劣化を抑制できる。
【0066】
光送信装置2は、光シャットダウンの解除を検出した場合に、推定部19にて算出した位相遅延量初期値相当の位相遅延量を位相遅延制御回路14Bに設定する。更に、光送信装置2は、位相遅延量初期値相当の位相遅延量を位相遅延制御回路14Bに設定した後、第2のモニタ値が運用中の目標値(第3のターゲット値)になるように位相制御部14の制御を開始する。その結果、光シャットダウン解除から光変調信号を出力するまでの期間を取り決めた仕様基準に準拠できる。
【0067】
光送信装置2は、第1の光モニタ部15の第1のモニタ値の逆数と、MZM13の一定周期スイープの位相情報とに基づき、MZM13の透過特性を推定する。その結果、光送信装置2は、MZM13の透過特性を推定できる。
【0068】
光送信装置2は、MZM13の透過特性の推定結果からピーク値及びボトム値を検出し、ピーク値とボトム値との中点(最適位相量)相当の位相遅延量を位相遅延量初期値として算出する。その結果、光シャットダウン解除に使用する最適位相量相当の位相遅延量初期値を算出できる。
【0069】
光送信装置2は、信号光を電気信号として多値の電気信号(PAM4信号)で変調して光変調信号を出力する。その結果、PAM4信号の主信号における信号品質の劣化を抑制できる。従来技術で指摘した通り、ディザ信号を使用した場合、PAM4等の多値変調信号の場合、2値変調のNRZに比較して、同じ光レベル内に多値の信号が存在するため、各光レベル間の電力差が小さく、特にレベル1とレベル2とにディザ信号の影響が大きくなる。これに対して、本実施例では、ディザ信号を使用しないため、PAM4信号等の多値変調信号であっても、レベル0~3の内、レベル1とレベル2との間の電力差が確保できるため、信号品質の劣化を抑制できる。
【0070】
光送信装置2では、MZM13の最適位相量の設定にディザ信号を使用しないため、主信号の伝送品質の劣化を抑制できる。更に、光送信装置2では、光シャットダウン時もMZM13の最適位相量を保持する制御のため、光シャットダウン解除時の波形劣化が抑制できる。
【0071】
更に、光送信装置2は、光シャットダウン中はMZM13の出力段である光変調信号が一定になるようにバイアス電流を変動することでバイアス変化点が大きくなるため、精度向上を図ることができる。更に、光送信装置2では、光シャッタ(光遮断部)等を必要としないため簡易な構成となり安価にシステム構成が可能である。
【0072】
尚、本実施例の光伝送装置1では、4波長多重方式の光送信装置を例示したが、4波長多重方式の光受信装置にも適用可能である。更に、本実施例の光伝送装置1では、4波長多重方式を例示したが、4波長に限定されるものではなく、複数波長を多重する方式であれば良く、適宜変更可能である。
【0073】
また、説明の便宜上、位相制御部14として位相遅延器14Aを使用する場合を例示したが、MZM13内の2本のアームの光信号の位相を調整する機能であれば良く、適宜変更可能である。
【0074】
また、位相遅延器14Aの位相遅延量を調整することで2本のアームを通過する光信号の位相を調整する場合を例示したが、これに限定されるものではなく、MZM13の出力段の光合波部の透過スペクトルの位相を調整しても良く、適宜変更可能である。
【0075】
また、図示した各部の各構成要素は、必ずしも物理的に図示の如く構成されていることを要しない。すなわち、各部の分散・統合の具体的形態は図示のものに限られず、その全部又は一部を、各種の負荷や使用状況等に応じて、任意の単位で機能的又は物理的に分散・統合して構成することができる。
【0076】
更に、各装置で行われる各種処理機能は、CPU(Central Processing Unit)(又はMPU(Micro Processing Unit)、MCU(Micro Controller Unit)等のマイクロ・コンピュータ)上で、その全部又は任意の一部を実行するようにしても良い。また、各種処理機能は、CPU(又はMPU、MCU等のマイクロ・コンピュータ)で解析実行するプログラム上、又はワイヤードロジックによるハードウェア上で、その全部又は任意の一部を実行するようにしても良いことは言うまでもない。