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特開2022-171194測定装置及び多点プローブの製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022171194
(43)【公開日】2022-11-11
(54)【発明の名称】測定装置及び多点プローブの製造方法
(51)【国際特許分類】
   G01R 1/073 20060101AFI20221104BHJP
【FI】
G01R1/073 F
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021077697
(22)【出願日】2021-04-30
(71)【出願人】
【識別番号】000153018
【氏名又は名称】株式会社日本マイクロニクス
(74)【代理人】
【識別番号】100180275
【弁理士】
【氏名又は名称】吉田 倫太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100161861
【弁理士】
【氏名又は名称】若林 裕介
(72)【発明者】
【氏名】津國 和之
【テーマコード(参考)】
2G011
【Fターム(参考)】
2G011AA15
2G011AA21
2G011AB06
2G011AB08
2G011AC14
2G011AF07
(57)【要約】
【課題】微小の測定領域において、狭ピッチの間隔で複数点の電位分布を同時に測定することができるようにする。
【解決手段】本発明の測定装置は、加圧減圧ポンプと接続する接続口を通じて内部空間への空気吸入又は空気排出をするものであり、被検査体に対向する側に、開口部を有する支持部材を備える容器と、基材上に複数の配線を有するものであり、支持部材に設けられて、開口部を密閉する薄膜基材と、薄膜基材の各配線と電気的に接続し、被検査体の表面と電気的に接触する複数の電気的接触子と、各電気的接触子と電気的に接続する薄膜基材の各配線を通じて、被検査体の表面の電気的特性を測定する測定部とを備えることを特徴とする。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
加圧減圧ポンプと接続する接続口を通じて内部空間への空気吸入又は空気排出をするものであり、被検査体に対向する側に、開口部を有する支持部材を備える容器と、
基材上に複数の配線を有するものであり、前記支持部材に設けられて、前記開口部を密閉する薄膜基材と、
前記薄膜基材の前記各配線と電気的に接続し、前記被検査体の表面と電気的に接触する複数の電気的接触子と、
前記各電気的接触子と電気的に接続する前記薄膜基材の前記各配線を通じて、前記被検査体の表面の電気的特性を測定する測定部と
を備えることを特徴とする測定装置。
【請求項2】
前記各電気的接触子は、突起状に形成され、前記薄膜基材の一方の面に設けられることを特徴とする請求項1に記載の測定装置。
【請求項3】
前記容器の内部空間の加圧により、前記開口部を密閉している前記薄膜基材が外側に膨張し、前記複数の電気的接触子が前記被検査体の表面に接触することを特徴とする請求項1又は2に記載の測定装置。
【請求項4】
前記容器の内部空間の減圧により、前記開口部を密閉している前記薄膜基材が収縮し、前記複数の電気的接触子が前記被検査体の表面から離れることを特徴とする請求項1~3のいずれかに記載の測定装置。
【請求項5】
前記薄膜基材上の前記各配線の少なくとも一部は絶縁層で覆われており、
前記各配線の端部を含む領域は、前記絶縁層で覆われていない露出部であり、
前記各電気的接触子が、前記露出部における前記各配線に電気的に接続する
ことを特徴とする請求項1~4のいずれかに記載の測定装置。
【請求項6】
前記薄膜基材上の前記複数の配線は、前記薄膜基材の面方向のうち一方向に沿って配置され、
前記薄膜基材の一方の面に設けられる絶縁層は、前記一方向に交わる方向に沿って溝が形成され、
前記露出部は、前記複数の配線の端部から離間される
ことを特徴とする請求項5に記載の測定装置。
【請求項7】
前記各電気的接触子は、前記溝の方向に沿って1μm~10μmの間隔で配置されることを特徴とする請求項4に記載の測定装置。
【請求項8】
絶縁性の薄膜基板上に複数の配線及び複数の接触部を有する多点プローブの製造方法であって、
前記薄膜基材の一方の面に、作製した複数の配線パターンに配線金属を成膜して複数の配線を形成し、
前記各配線上の接触部形成領域にレジストパターンを作製し、
前記薄膜基材の一方の面に絶縁材を成膜し、レジストのリフトオフで接触部を含む接触窓領域を形成し、
前記接触窓領域内の前記各配線上に接触部金属を形成する
ことを特徴とする多点プローブの製造方法。
【請求項9】
前記接触窓領域内の前記各配線上に接触部金属を形成する工程において、前記配線に対して垂直方向に形成した絶縁材の開口部の配線露出部分にセルフアラインで接触部金属を形成することを特徴とする請求項8に記載の多点プローブの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、測定装置及び多点プローブの製造方法に関するものであり、例えば、被測定物の微小表面の電位分布を測定する測定装置に適用し得るものである。
【背景技術】
【0002】
従来、被測定物の微小表面の電位分布を測定する方法として、例えば走査型プローブ顕微鏡(SPM:Scaning Probe Microscope)を用いた方法がある(特許文献1参照)。一般的にSPMを用いた測定方法は、1つのプローブを被測定物の表面上を走査させて表面電位分布を測定する。その空間分解能はnmオーダーである。
【0003】
例えば、固体二次電池における充電と放電に伴う電位分布の変化を、SPMを用いて測定すると、微小表面における充電による物質の電位分布の変化を観察することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009-300116号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来の電位分布測定方法は、数10~数100μm程度の測定領域で、μmオーダー程度のピッチで複数点を同時に測定することができない。
【0006】
例えば、SPMを用いた測定方法の場合、空間分解能はnmオーダーであるが、同時に多点を測定することができないため、例えば固体二次電池の深さ方向(例えば、正極から負極に向けた断面)に亘って、複数点の電位分布等の時間変化をリアルタイムで観察することができない。
【0007】
他方、半導体集積装置の導通検査等に利用されるプローブカードのプローブを用いて、固体二次電池の断面において複数点の電位分布を測定する方法も考えられるが、この場合の空間分解能は数10μm程度となってしまう。
【0008】
また、被測定物の表面は、必ずしも平面であるとは言えず、例えば高低差が数10μm程度の凹凸があったり、湾曲していたりすることがあり、そのような表面であってもプロービングできることが望まれる。
【0009】
そのため、上述した課題に鑑み、微小の測定領域において、狭ピッチの間隔で複数点の電気的特性(例えば、電位分布)を同時に測定することができる測定装置及び多点プローブの製造方法が求められている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
かかる課題を解決するため、第1の本発明に係る測定装置は、(1)加圧減圧ポンプと接続する接続口を通じて内部空間への空気吸入又は空気排出をするものであり、被検査体に対向する側に、開口部を有する支持部材を備える容器と、(2)基材上に複数の配線を有するものであり、支持部材に設けられて、開口部を密閉する薄膜基材と、(3)薄膜基材の各配線と電気的に接続し、被検査体の表面と電気的に接触する複数の電気的接触子と、(4)各電気的接触子と電気的に接続する薄膜基材の各配線を通じて、被検査体の表面の電気的特性を測定する測定部とを備えることを特徴とする。
【0011】
第2の本発明に係る多点プローブの製造方法は、絶縁性の薄膜基板上に複数の配線及び複数の接触部を有する多点プローブの製造方法であって、(1)薄膜基材の一方の面に、作製した複数の配線パターンに配線金属を成膜して複数の配線を形成し、(2)各配線上の接触部形成領域にレジストパターンを作製し、(3)薄膜基材の一方の面に絶縁材を成膜し、レジストのリフトオフで接触部を含む接触窓領域を形成し、(4)接触窓領域内の各配線上に接触部金属を形成することを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、微小の測定領域において、狭ピッチの間隔で複数点の電気的特性(例えば電位分布)を同時に測定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】実施形態に係る多点プローブの構成を示す構成図である。
図2図1のA-A線の断面図である。
図3】実施形態に係る測定装置の構成を示す構成図である。
図4】実施形態において、測定の際、多点プローブの複数の接触部を被測定物に接触させる方法を説明する説明図である。
図5】実施形態において、測定前又は測定後に、電気的接触子の複数の接触部を被測定物から離す方法を説明する説明図である。
図6】実施形態に係る多点プローブの製造方法を示すフローチャートである。
図7】実施形態において被測定物の断面の表面電位測定を説明する説明図である。
図8】変形実施形態に係る測定装置の構成を示す構成図である。
図9】変形実施形態の多点プローブを用いた測定方法を説明する説明図である。
図10】実施形態に係る多点プローブ10の製法を説明する説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
(A)実施形態
以下では、本発明に係る測定装置及び多点プローブの製造方法の実施形態を、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0015】
(A-1)実施形態の構成
(A-1-1)測定装置の構成
図1は、実施形態に係る多点プローブの構成を示す構成図であり、図2は、図1に示すA-A線の断面図である。図3は、実施形態に係る測定装置の構成を示す構成図である。
【0016】
図3において、実施形態に係る測定装置1は、多点プローブ10、加圧減圧容器20、測定部30、配線束40、加圧減圧ポンプ70を有する。
【0017】
測定装置1は、試料台50の上面に載置された被測定物60の微小領域の表面電位分布の変化を測定するものである。測定装置1は、フィルム基材11上に配線接続する複数の接触部13を有する多点プローブ10を加圧減圧容器20の一方の面(例えば下面)に設ける。そして、多点プローブ10の複数の接触部13を、被測定物60の表面に接触させて、測定装置1は複数点の電気的特性を測定する。ここで、電気的特性は、被測定物60の微小領域における表面電位分布などとすることができる。
【0018】
なお、多点プローブ10の寸法例として、例えば1μm×1μm程度の寸法で形成された接触部13を一列に配列させ、接触部13間のピッチ幅は数μm程度とする。複数の接触部13を一列に配列させた領域の配列方向の長さは、被測定物60の測定領域の長さに応じて形成できるものであり、例えば数10~数100μm程度とすることができる。したがって、測定装置1は、被測定物60における数10~数100μm程度の領域を、数μm程度のピッチで複数点の電位分布を同時に測定できる。
【0019】
図1及び図2に示すように、多点プローブ10は、フィルム基材11の一方の面に、複数の配線12が形成されており、各配線12に接続する配線毎の接触部13を有する。複数の配線12はそれぞれ絶縁材15で覆われており、複数の接触部13はそれぞれ、絶縁材15で覆われておらず露出している。
【0020】
多点プローブ10は、フィルム基材11の一方の面に複数の接触部13が形成されているので、フィルムプローブとも呼ぶ。また、多点プローブ10は、被測定物60の微小領域において、複数の接触部13が接触できるので、測定装置1は複数点の電気的特性を同時に測定できる。
【0021】
フィルム基材11は、電気的絶縁性を有する部材で形成されたシート状のフィルム基材である。例えば、フィルム基材11は、ポリイミド等の絶縁性の樹脂材料で形成されたフィルムを適用できる。フィルム基材11の寸法は、例えば数10mm~数100mm程度とすることができ、またフィルム基材11の厚さは、数μm~数10μm程度とすることができるが、これに限定されない。
【0022】
配線12は、フィルム基材11の一方の面に形成された配線パターンである。配線12は接触部13と接続している。つまり、1本の配線が1個の接触部13と接続しており、配線12は、接続している接触部13に対して電気信号を伝達する引き出し線として機能する。配線12は、一方の端部側で接触部13と接続しており、他方の端部はコネクタ16と接続している。
【0023】
なお、1本の配線12の幅は、例えば、1μm~数μm程度とすることができる。また、接触部13近傍の配線12のピッチ幅(ある配線12とこれに隣接する配線12との間のピッチ幅)は、例えば1μm~数μm程度とすることができる。配線12の幅、配線12間のピッチ幅は、測定目的に応じて適宜調整可能である。なお、配線12は、導電性を有する金属(例えば、アルミニウム、ニッケル、銅、金、銀、白金等)で形成されたものを適用できる。
【0024】
接触部13は、導電性を有する金属(例えば、タングステン、ニッケル、銅、金、銀、白金、その他プローブに使われる金属、合金など)で形成され、被測定物60の表面と電気的に接触する接触子である。接触部13は、1本の配線12に対して1個の接触部13が接続され、ある程度の硬度がある金属であり、より詳細に説明すると、1本の配線12上に1個の接触部13が形成される。
【0025】
複数の接触部13は、一列に配列している。言い換えると、フィルム基材11上に形成される複数の接触部13は、配列方向を一次元に配列している。配列させる接触部13の数は特に限定されない。接触部13の形状は、被測定物60の微小領域において狭ピッチで測定するため、例えば突起状(バンプ)とすることが望ましい。これにより、被測定物60の表面に対する針圧及び上下方向の弾性を確保しながら、狭ピッチで測定できる。なお、接触部13の形状は、これに限定されず、例えば、立方体、直方体、角錐、角柱、円錐、円柱等としてもよい。また、接触部13の寸法は、例えば1μm~数μm程度とすることができる。
【0026】
絶縁材15は、電気的絶縁性を有する材料であり、絶縁性のレジストとして、複数の配線12が形成されたフィルム基材11上に成膜できる。これにより、複数の配線12は絶縁被膜される。絶縁被膜はシリコン酸化膜のような絶縁膜をスパッタ成膜により形成することもできる。
【0027】
接触窓部14は、絶縁材15により被膜されておらず、複数の接触部13を露出させる開口部である。つまり、接触窓部14は、一次元に配列している複数の接触部13を露出している。接触窓部14の寸法は、数10μm~数100μm程度とすることができ、被測定物の測定領域の大きさに応じて決めることができる。
【0028】
加圧減圧容器20は、支持材21と、上枠部22とを備え、支持材21の上面に上枠部22を固定して組み立てた容器である。加圧減圧容器20は、絶縁部材で形成される。支持材21と上枠部22とは、加圧又は減圧に耐え得る方法で固定され、例えば、支持材21と上枠部22とが合わさる部分に設けた溝部にOリングを装着してもよい。
【0029】
加圧減圧容器20の上枠部22は、加圧減圧ポンプ70と接続する接続口23を備えている。加圧減圧容器20は、接続口23を通じて加圧減圧ポンプ70から空気が吸入されると、加圧減圧容器20内は加圧され、加圧減圧ポンプ70により空気が排気されると、加圧減圧容器20内は減圧する。
【0030】
加圧減圧容器20の支持材21は、フィルム状の多点プローブ10を支持する部材である。支持材21は、板状又は板枠状の部材であり、開口部24を有する。支持材21は、その下面にフィルム状の多点プローブ10を固定する。ここで、多点プローブ10は、フィルム基材11の一方の面に複数の接触部13が露出しており、露出している複数の接触部13が被測定物60側(図3では下側)を向くように設ける。
【0031】
支持材21の開口部24は、矩形開口とすることができる。支持材21の下面に多点プローブ10が固定され、支持材21の開口部24は多点プローブ10に覆われて密閉される。支持材21において、開口部24の位置に、多点プローブ10の一列に配列された複数の接触部13が位置する。
【0032】
支持材21の一部に下側から多点プローブ10を挟むように固定板を配置することもできる。
【0033】
被測定物60は支持材21の開口部より小さくてもよい。試料台50は被測定物60を設置する領域が上方向に凸であってもよい。
【0034】
多点プローブ10が設けられた支持材21と上枠部22とが固定されて加圧減圧容器20が組み立てられた状態で、測定装置1は被測定物60の表面の電位分布を測定する。
【0035】
ここで、測定装置1が被測定物60の電位分布を測定する際、多点プローブ10の複数の接触部13を被測定物60に接触させる。
【0036】
図4は、実施形態において、測定の際、多点プローブ10の複数の接触部を被測定物60に接触させる方法を説明する説明図である。図5は、実施形態において、測定前又は測定後に、多点プローブ10の複数の接触部を被測定物60から離す方法を説明する説明図である。
【0037】
例えば、加圧減圧容器20に加圧減圧ポンプ(特に加圧ポンプ)70を接続して、加圧減圧容器20内に空気を吸入して、加圧する。そうすると、図4に例示するように、開口部24を密閉している多点プローブ10は加圧により膨張し、複数の接触部13が被測定物60の表面に接触する。つまり、密閉されている加圧減圧容器20内の空間に空気を吸入して加圧し、その圧力でフィルム状の多点プローブ10を膨張させることで、複数の接触部13を被測定物60の表面に接触させる。
【0038】
他方、測定前又は測定後、加圧減圧容器20に加圧減圧ポンプ(特に減圧ポンプ)70を接続して、加圧減圧容器20から空気を排気して、減圧する。そうすると、図5に例示するように、加圧減圧容器20内が減圧されるので、開口部24で多点プローブ10は減圧により収縮し、複数の接触部13が被測定物60の表面から離れる。つまり、密閉されている加圧減圧容器20内の空間から空気を排気して減圧することで、複数の接触部13が被測定物60の表面から離れることになる。
【0039】
このように、エア(空気)の吸入又は排気により、フィルム状の多点プローブ10を膨張又は収縮させて、被測定物60の表面に接触部13を接触させるため、被測定物60の表面に凹凸がある場合でも、フィルム状の多点プローブ10が凹凸に沿って密着するので、被測定物60の表面形状に柔軟に接触部13を接触させることができる。また、被測定物60の表面が曲面、湾曲であっても同様に、多点プローブ10が曲面等に追従できる。
【0040】
また、フィルム状の多点プローブ10は、ばね性等の弾性のない材料で形成されているので、弾性による破損や、被測定物60の表面との接触により接触部13の故障等を回避できる。
【0041】
配線束40の各配線は、コネクタ16を介して、多点プローブ10に形成される配線12と接続しており、配線束40は測定部30と接続している。つまり、配線束40の各配線は、多点プローブ10の各配線12に対応している。
【0042】
測定部30は、配線束40と接続しており、各接触部13の配線12と接続している配線の電圧(電位)の値に基づいて、各接触部13が接触している点(測定点)の電位分布を測定する。測定部30は、複数の接触部13の電位分布の時間的変化を測定できる。
【0043】
図7は、実施形態において被測定物60の断面の表面電位測定を説明する説明図である。ここでは、被測定物60としての固体二次電池の充電又は放電時の断面状態を観察する場合を例示する。
【0044】
図7では、被測定物60が固体二次電池において形成される多層膜の断面とする。被測定物60の左側端部61が多層膜下面とし、右側端部62が多層膜上面とする。被測定物60としての固体二次電池の左側端部61は、基準点(電位0V)に接続し、右側端部62には電源電極が供給されているものとする。
【0045】
このとき、多点プローブ10の複数の接触部13は、被測定物60としての固体二次電池の深さ方向の断面表面に接触している。つまり、固体二次電池の多層膜の上面から下面に向けた断面に複数の接触部13が接触しており、多層膜の深さ方向における複数の測定点の表面電位分布を同時に測定することができる。
【0046】
加圧減圧ポンプ70は、加圧減圧容器20内を加圧又は減圧するポンプであり、真空ポンプなどを適用できる。
【0047】
(A-1-2)電気的接触子の製造方法
次に、実施形態に係る多点プローブ10の製造方法を説明する。
【0048】
図6は、実施形態に係る多点プローブ10の製造方法を示すフローチャートである。図10は、実施形態に係る多点プローブ10の製法を説明する説明図である。
【0049】
まず、フォトリソグラフィ技術で、フィルム基材11上に配線パターンを作製する(S11)。例えば、フィルム基材11上にフォトレジストを塗布して、配線パターンのマスクをかけて紫外線等で露光、現像して、フィルム基材11上のフォトレジストに配線パターンを開口する。
【0050】
そして、配線パターンが形成されたフィルム基材11上に、例えばニッケル等の配線金属を成膜し(S12)、レジストオフ(レジスト除去)することで、フィルム基材11上の配線部分に金属膜を残す(S13)。
【0051】
次に、配線12上で接触部13を形成する部分を含む領域に、レジストパターンを作製する(S14)。そして、図10(A)に例示するように、絶縁材15をスパッタプロセスで成膜し、リフトオフで、配線12上に接触部13を含む領域を開口する(S15)。この開口部分が接触窓部14となる。配線12上に接触部13を形成するため、図10(B)に例示するように、接触窓部14であって、配線12上に電解メッキにより接触部13を形成する(S16)。
【0052】
配線12の端部を長めに形成することで、絶縁材15と金属のアライメントは不要となる(S17)。
【0053】
この場合、電解メッキによる接触部13の形成にあたっては、隣接する接触部13と分離が保てるように配線スペース、接触部13の高さ、レジストの厚さを調整する。
【0054】
また、図10(A)及び図10(B)に例示するように、多点プローブ10は、複数の配線12が、フィルム基材11の面方向のうち一方の方向に沿って配置されている。また、フィルム基材11の一方の面に設けられている絶縁材15は、配線12の配置方向に対して、交わる方向に沿って溝が形成されている。この溝が絶縁材15で覆われていない露出部であり、接触窓部14に相当する。そして、この露出している接触窓部14は複数の配線12の端部から離間している。
【0055】
なお、上述した多点プローブ10の製造方法は、レジストオフプロセスを用いた場合を例示したが、この製法に限定されない。フィルム基材11に配線パターンを現像後、エッチングプロセス等で配線の金属膜を形成するようにしてもよい。
【0056】
上述したように、フィルム基材11上に、フォトリソグラフィ技術で配線12を形成し、セルフアラインで接触部13を形成することで、微小ピッチのプローブアレイを形成することができる。図10(B)において点線で囲んだ部分は、セルフアラインで配線12上に接触部13が形成される様子を表現している。
【0057】
配線12と接触部13の合わせマージンが取れる場合は、接触部13をセルフアラインでなく形成してもよい。
【0058】
また、接触窓部14の領域内の各配線12上に接触部13の金属(接触部金属)を形成する工程において、配線12に対して垂直方向に形成した絶縁材15の開口部の配線露出部分にセルフアラインで接触部金属を形成してもよい。
【0059】
また、この実施形態の多点プローブ10は、フィルム基材11の一方の面に、配線12、接触部13、絶縁材15を形成した比較的簡単な構造であり、フィルム基材11を貫通させたヴィア等の複雑な配線構造は不要である。
【0060】
(A-2)実施形態の効果
以上のように、この実施形態によれば、フィルム基材の一方の面に、複数の配線及び複数の接触部を形成した電気的接触子を、空気圧力で被測定物の表面に接触させることができる。また空気圧力でフィルムを膨張、収縮させるので、ばね性等の弾性を持たない材料で形成できる。そのため、接触抵抗を比較的大きくして測定することができる。
【0061】
実施形態によれば、フィルム基材上で、一列に配列した複数の接触部を被測定物に接触させることで、例えば数10~数100μm程度の測定領域で、μmオーダーのピッチで複数点の電位分布を同時に測定することができる。
【0062】
実施形態によれば、電気的接触子はフィルム基材としているので、被測定物の表面が凹凸、曲面、湾曲等であっても、その表面に沿ってフィルム状の電気的接触子を被測定物に密着させて追従することができる。
【0063】
実施形態によれば、フィルム基板上にフォトリソグラフィー技術で配線を形成でき、セルフアラインで接触部を形成できるので、狭ピッチのプローブアレイを形成できる。さらに、フィルム基材に貫通した配線を形成する必要がないので、接触部の直上に配線構造がない、よりフレキシブルで、簡単な構造のプローブアレイを形成できる。
【0064】
(B)他の実施形態
上述した実施形態においても種々の変形実施形態を言及したが、本発明は、以下の変形実施形態にも適用できる。
【0065】
(B-1)上述した実施形態において、測定の際、加圧減圧容器20内を加圧して、フィルム状の多点プローブ10を膨張させて、複数の接触部13を被測定物60の表面に接触させる場合を説明した。その変形実施形態として、例えば図8に例示するように、フィルム状の多点プローブ10と被測定物とを密閉して、真空ポンプ80で被測定物側を真空にすることで、多点プローブ10の接触部13を被測定物に接触させるようにしてもよい。この場合、多点プローブ10は、開口部24を有する支持材21に取り付けられていればよく、加圧減圧容器20でなくもよい。
【0066】
(B-2)上述した実施形態では、被測定物の表面の電位分布を測定する場合を例示した。その他の測定方法の例として図9に例示する測定方法に用いることが可能である。図9に示すように、フィルム状の多点プローブ10Aは、グランド(GND)に接続する配線Aと、電圧値Vの電圧が印加される配線Bを有するものとする。2つの配線A、配線Bが、ショートしており不良解析したい場合、配線Bに電圧を印加して、配線B上の電圧分布を測定することで、ショート箇所Cを絞ることができる。図9においてショート箇所Cよりも左に位置している電位は同電位となるので、ショート箇所Cの位置を特定することができる。つまり、解析箇所を10μm程度のオーダーで特定できる。その後、ショート箇所Cの不良解析をする場合、SEM、FIB等で不良箇所を観察することができる。
【符号の説明】
【0067】
1:測定装置、10及び10A:多点プローブ、11:フィルム基材、12:配線、13:接触部、14:接触窓部、15:絶縁材、16:コネクタ
20:加圧減圧容器、21:支持材、22:上枠部、23:接続口、24:開口部、30:測定部、40:配線束、50:試料台、60:被測定物、61:左側端部、62:右側端部、70:加圧減圧ポンプ。
図1
図2
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図8
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図10