(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022171213
(43)【公開日】2022-11-11
(54)【発明の名称】高圧水供給ユニットおよびこれを搭載する作業車
(51)【国際特許分類】
F04B 23/04 20060101AFI20221104BHJP
【FI】
F04B23/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021077733
(22)【出願日】2021-04-30
(71)【出願人】
【識別番号】000132161
【氏名又は名称】株式会社スギノマシン
(74)【代理人】
【識別番号】110000165
【氏名又は名称】グローバル・アイピー東京特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】近江 弘章
(72)【発明者】
【氏名】野嶋 健
【テーマコード(参考)】
3H071
【Fターム(参考)】
3H071AA01
3H071BB12
3H071CC21
3H071CC36
3H071DD45
(57)【要約】
【課題】高圧ポンプを取り巻く振動を抑制し、吐出する高圧水の作業圧力を調整する。
【解決手段】高圧水供給ユニットは、駆動源3と、第1の高圧水L1を第1の吐出部2aから吐出する第1の高圧ポンプ1aと、第2の高圧水L2を第2の吐出部2bから吐出する第2の高圧ポンプ1bと、駆動源3からの回転を第1の高圧ポンプ1aおよび第2の高圧ポンプ1bに伝達する回転伝達部4と、第1の高圧ポンプ1aおよび第2の高圧ポンプ1bを防振する防振部7と、第1の吐出部2aの吐出圧力を検知する第1の検知センサ8aと、第2の吐出部2bの吐出圧力を検知する第2の検知センサ8bと、駆動源3の回転数、第1及び第2の吐出部2a、2bの吐出圧力を制御する制御装置9と、を有する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
駆動源と、
第1の高圧水を第1の吐出部から吐出する第1の高圧ポンプと、
第2の高圧水を第2の吐出部から吐出する第2の高圧ポンプと、
前記駆動源からの回転を前記第1の高圧ポンプおよび前記第2の高圧ポンプに伝達する回転伝達部と、
前記第1の高圧ポンプおよび前記第2の高圧ポンプを防振する防振部と、
前記第1の吐出部の吐出圧力を検知する第1の検知センサと、
前記第2の吐出部の吐出圧力を検知する第2の検知センサと、
前記駆動源の回転数、前記第1及び第2の吐出部の吐出圧力を制御する制御装置と、
を有する高圧水供給ユニット。
【請求項2】
前記第1の高圧ポンプと前記第2の高圧ポンプは、異なる最大吐出圧力または最大吐出流量を有する、
請求項1記載の高圧水供給ユニット。
【請求項3】
前記駆動源に連結される回転軸と、
前記第1の高圧ポンプに連結される第1の回転軸と、
前記第2の高圧ポンプに連結される第2の回転軸と、を更に有し、
回転伝達部は、
前記第1の回転軸に連結される第1の歯車と、
前記第2の回転軸に連結される第2歯車と、
前記駆動源の回転を、前記駆動源の前記回転軸を介して、前記第1の歯車および前記前記第2の歯車に伝達する連結ベルトと、を有する、
請求項1または2に記載の高圧水供給ユニット。
【請求項4】
防振部は、
前記駆動源の回転軸を防振する第1の防振カップリングと、
前記第1の回転軸を防振する第2の防振カップリングと、
前記第1の防振カップリングと前記第2の防振カップリングの間に配置される防振固定部と、を有する、
請求項3に記載の高圧水供給ユニット。
【請求項5】
前記駆動源の回転数、前記第1及び第2の吐出部の吐出圧力を遠隔で設定可能な通信機器を更に有する、
請求項1~4のいずれかに記載の高圧水供給ユニット。
【請求項6】
前記第1の吐出部に接続される第1の流路と、
前記第2の吐出部に接続される第2の流路と、
前記第1の流路および前記第2の流路を合流する合流流路と、
を有する、請求項1~5のいずれかに記載の高圧水供給ユニット。
【請求項7】
請求項1~6のいずれかに記載の高圧水供給ユニットを有する、作業車。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、洗浄対象物の洗浄、塗装剥離、はつりに用いるための高圧水供給ユニットおよび高圧水供給ユニットを搭載する作業車に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、アスベスト除去や、高速道路・棟梁等の構造部の解体、耐震補強、リニューアルといった屋外での作業を行う場合、高圧水を用いて洗浄、塗装剥離、はつり等を行う。このような作業を行う際、安定的に高圧水を供給する必要があるため、高圧ポンプ(高圧プランジャーポンプ等)を配置する必要がある。
高圧ポンプの使用方法や作業環境に関し、特定の洗浄対象物に対して、同じ場所で定期的に洗浄作業等を行う場合、高圧ポンプを固定した状態で使用する。また、不特定の洗浄対象物に対し、異なる場所で不定期に洗浄作業を行う場合、高圧ポンプを作業車等に搭載して作業現場に持ち込んで使用する。作業に必要な圧力や流量によって、求められる要求仕様が異なり、様々な高圧ポンプが市販されている。
【0003】
例えば、実開平04―34471号公報(以下、「特許文献1」)に記載の高圧プランジャーポンプは、変則歯車による駆動方式であり、2個または複数個の高圧プランジャーポンプを並列運転することにより、2倍または複数倍の吐出流量を低価格で取り出すことができる。
【0004】
実開昭64―21277号公報(以下、「特許文献2」)に記載のプランジャーポンプを用いた高圧水供給設備の防振装置は、複数の多筒式プランジャーポンプのそれぞれの高圧側、すなわち高圧水を吐出する吐出用マニホールドの間、または、吐水用マニホールドと接続される吐水分岐管との間を、それぞれ連通管で接続する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載の高圧プランジャーポンプは、2個または複数個の高圧プランジャーポンプを並列運転するという基本的な発想である。しかし、高圧ポンプをエンジン等の駆動源と連結する場合には、エンジン等の駆動源と高圧ポンプの連結部における振動によって、高圧ポンプの吐出圧力の精度の悪化や寿命の短期化を招いてしまう。
【0006】
特許文献2に記載のプランジャ―ポンプを用いた高圧水供給設備の防振装置は、複数台の異なる高圧ポンプを同時に利用する場合に、それぞれの高圧ポンプの共振や配管の振動を防止するために、高圧ポンプ同士の連結部(連通管)を配置する。これにより、特許文献1に記載の高圧プランジャーポンプの駆動方式を補足する。
しかし、高圧ポンプを取り巻く振動は、一つだけではなく、特許文献1のようなエンジン等の駆動源と高圧ポンプの連結部、配管等の周辺機器を含めた対策を講じる必要があり、さらなる改良が望まれていた。
【0007】
また、作業現場に持ち運びしやすいように、一層の省スペース化や、近年ニーズが増加している遠隔操作も含めた機能向上も望まれていた。
【0008】
本発明は、高圧ポンプを取り巻く振動を抑制し、吐出する高圧水の作業圧力を調整可能な高圧水供給ユニットおよび高圧水供給ユニットを搭載する作業車を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の高圧水供給ユニットは、
駆動源と、
第1の高圧水を第1の吐出部から吐出する第1の高圧ポンプと、
第2の高圧水を第2の吐出部から吐出する第2の高圧ポンプと、
前記駆動源からの回転を前記第1の高圧ポンプおよび前記第2の高圧ポンプに伝達する回転伝達部と、
前記第1の高圧ポンプおよび前記第2の高圧ポンプを防振する防振部と、
前記第1の吐出部の吐出圧力を検知する第1の検知センサと、
前記第2の吐出部の吐出圧力を検知する第2の検知センサと、
前記駆動源の回転数、前記第1及び第2の吐出部の吐出圧力を制御する制御装置と、
を有する。
【発明の効果】
【0010】
本発明の高圧水供給ユニットおよび高圧水供給ユニットを搭載する作業車によれば、高圧ポンプを取り巻く振動を抑制し、吐出する高圧水の作業圧力を調整できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図2】実施形態の高圧水供給ユニットを搭載した作業車の斜視図
【
図3】(a)は、第1の実施形態の防振部の拡大図、(b)は、(a)のA-A線に沿った断面図、(c)は、第2の実施形態の防振部の拡大図、(d)は、(c)のB-B線に沿った断面図
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の実施形態について、適宜図面を参照しながら説明する。
【0013】
(高圧水供給ユニットの構成)
本実施形態の高圧水供給ユニット100は、アスベスト除去や、高速道路・棟梁等の構造部の解体、耐震補強、リニューアルといった屋外での作業を行う場合、高圧水Lを用いて洗浄、塗装剥離、はつり等を行う。
高圧水供給ユニット100は、
図1に示すように、高圧ポンプ1と、駆動源3と、回転伝達部4と、防振部7と、検知部8と、制御装置9と、通信機器11と、を有する。
【0014】
高圧ポンプ1は、給水ポンプ1cから供給される流体(例えば、純水、水)を加圧して、高圧水Lを吐出する。高圧ポンプ1は、例えば、高圧プランジャポンプである。高圧ポンプ1は、第1の高圧ポンプ1aと、第2の高圧ポンプ1bを有する。
第1の高圧ポンプ1aは、給水ポンプ1cから供給される流体を加圧し、吐出部2から高圧水L1を吐出する。第1の高圧ポンプ1aは、第1の吐出部2aを有する。
第2の高圧ポンプ1bは、給水ポンプ1cから供給される流体を加圧し、吐出部2から高圧水L2を吐出する。第2の高圧ポンプ1bは、第2の吐出部2bを有する。
吐出部2は、高圧水L1、L2を吐出するための圧力調整弁やシリンダバルブ等の組み合わせである。また、第1の高圧ポンプ1aと、第2の高圧ポンプ1bは、
図1に示すように、架台に並列に載置することによって、省スペース化できる。
【0015】
給水ポンプ1cは、外部の流体供給源(不図示)やタンク等から流体を供給する。給水ポンプ1cは、第1の高圧ポンプ1aと、第2の高圧ポンプ1bに、給水ホースや配管等でそれぞれ連結する。また、第1の流路R1、第2の流路R2、および合流流路R3の少なくとも一部から、吐出しなかった高圧水Lを回収して、再利用してもよい。
【0016】
高圧水Lを用いて洗浄、塗装剥離、はつり等を行う場合、洗浄対象物に応じて、求められる最大吐出圧力MPおよび最大吐出流量MLが異なる。そのため、1台ですべての圧力および流量を網羅しようとした場合、高圧ポンプが大型化してしまい、価格も高額になる。そこで、複数台の高圧ポンプを組み合わせることによって、圧力や流量の幅が広がる。第1の高圧ポンプ1aと、第2の高圧ポンプ1bとで生成する高圧水L1、L2を単独で用いる場合だけでなく、特に、高圧水L1、L2の合流時の高圧水L3として用いることができる。これにより、高圧水Lの最大吐出圧力MPおよび最大吐出流量MLを調整でき、高圧ポンプ1の活用の幅が広がる。
【0017】
第1の例では、第1の高圧ポンプ1aが、最大吐出圧力MP1(245MPa)および最大吐出流量ML1(22L/min)を有する。また、第2の高圧ポンプ1bが、最大吐出圧力MP2(245MPa)および最大吐出流量ML2(22L/min)を有する。このとき、第1の高圧ポンプ1aと第2の高圧ポンプ1bを組み合わせることで、最大吐出圧力MP(245MPa)および最大吐出流量ML(44L/min)で使用できる。
【0018】
第2の例では、第1の高圧ポンプ1aが、最大吐出圧力MP1(245MPa)および最大吐出流量ML1(22L/min)を有する。また、第2の高圧ポンプ1bが、最大吐出圧力MP2(225MPa)および最大吐出流量ML2(44L/min)を有する。このとき、第1の高圧ポンプ1aと第2の高圧ポンプ1bを組み合わせることで、最大吐出圧力MP(225~245MPa)および最大吐出流量ML(22~66L/min)で使用できる。
【0019】
駆動源3は、高圧ポンプ1を駆動する。駆動源3は、例えば、油圧やディーゼルエンジンである。駆動源3は、高圧ポンプ1の仕様(圧力、流量)に適した駆動力(回転数)を付与できるものであればよく、市販のものを利用できる。また、高圧ポンプ1は、屋外で利用することが多く、環境負荷を考慮して、クリーンディーゼルを採用することが望ましい。
【0020】
回転伝達部4は、駆動源3の駆動に伴う回転を高圧ポンプ1に伝達する。駆動源3と高圧ポンプ1(第1の高圧ポンプ1a、第2の高圧ポンプ1b)は、別々の構成であり、駆動源3の駆動力(回転数)の伝達ロスがないよう、連結する。
回転伝達部4は、回転軸5(5a~5c)と、第1の歯車6aと、第2の歯車6bと、連結ベルト6cと、を有する。
【0021】
回転軸5は、駆動源の回転軸5aと、第1の回転軸5bと、第2の回転軸5cとを有する。駆動源の回転軸5aは、駆動源3に連結する。駆動源の回転軸5aは、駆動源3の駆動力(回転数)を第1の回転軸5bに伝達する。
第1の回転軸5bは、第1の高圧ポンプ1aに連結する。第1の回転軸5bは、駆動源3の駆動力(回転数)を、第1の高圧ポンプ1aに伝達する。
第2の回転軸5cは、第2の高圧ポンプ1bに連結する。第2の回転軸5cは、駆動源3の駆動力(回転数)を、第2の高圧ポンプ1bに伝達する。
【0022】
駆動源3の駆動力(回転数)は、駆動源の回転軸5aを介して、第1の高圧ポンプの回転軸5bに伝達される。これにより、第1の高圧ポンプ1aが駆動する。また、第1の高圧ポンプの回転軸5bに伝達される駆動源3の駆動力(回転数)は、第1の歯車6aと、第2の歯車6bを連結ベルト6cで連結することにより、第2の高圧ポンプの回転軸5cに伝達される。これにより、第2の高圧ポンプ1bが駆動する。
【0023】
第1の歯車6aは、第1の回転軸5bに連結する。第2の歯車6bは、第2の回転軸6bに連結する。第1の高圧ポンプ1aと第2の高圧ポンプ1bのそれぞれの駆動に必要な回転数の比率になるように、第1の歯車6aと第2の歯車6bの伝達比(ピッチ数)を調整する。
【0024】
防振部7は、回転軸5を防振する。高圧ポンプ1や駆動源3は、動力機構であり、動作中における振動は避けられない。高圧ポンプ1や駆動源3は、繰り返し何万回も動作するため、振動や共振の積み重ねは、高圧ポンプの吐出圧力の精度の悪化や寿命の短期化を招く。
そこで、防振部7は、第1の防振カップリング7aと、第2の防振カップリング7bと、防振固定部7cと、を有する。第1の防振カップリング7aは、駆動源3の回転軸5aを防振する。第2の防振カップリング7bは、第1の高圧ポンプの回転軸5bを防振する。
【0025】
第1の防振カップリング7aは、高圧ポンプ1に回転を伝達する駆動源3から発生する振動を防止する。第1の防振カップリング7aは、駆動源3の回転軸5aの少なくとも一部に配置される。第1の防振カップリング7aは、ゴム等の防振効果の得られるカップリングである。
【0026】
第2の防振カップリング7bは、駆動源3の回転軸5aを介して伝達される回転によって発生する共振や、第1の高圧ポンプ1aの駆動により発生する振動を防止する。第2の防振カップリング7bは、第1の回転軸5bの少なくとも一部に配置される。第2の防振カップリング7bは、板バネ、スプリング、コイル等の弾性部材等の防振効果の得られるカップリングである。
【0027】
さらに、第1の防振カップリング7aと第2の防振カップリング7bの間に、防振固定部7cが配置される。駆動源3の回転を高圧ポンプ1に伝達するために、駆動源3の回転軸5aと第1の回転軸5bを単に接続するだけでは、振動の防止を抑制しきれない可能性がある。そのため、駆動源3の回転軸5aと第1の回転軸5bの少なくとも一方または両方を連結し、高圧水供給ユニット100の土台や床に固定する防振固定部7cにより、一層の防振効果が得られる。さらに、防振固定部7cは、内部にボールベアリング等を採用し、回転軸5の回転によって発生する振動を防止しながら、回転効率も維持できる。
なお、駆動源3の回転軸5aと第1の回転軸5bの先端の位置は、防振固定部7cに限らず、第2の防振カップリング7b内に配置してもよい。
【0028】
図3(a)、(b)に示すように、第1の実施形態の第2の防振カップリング7bは、第1の凹部7b1と第2の凹部7b2とを有する。第2の凹部7b2は、第1の凹部7b1の反対面に形成される。駆動源3の回転軸5aは、第1の防振カップリング7aと防振固定部7cを挿通する。また、駆動源3の回転軸5aの突起部5a1は、第2の防振カップリング7bの第1の凹部7b1に嵌合する。これによって、駆動源3の回転軸5aの防振性が向上する。
また、第2の防振カップリング7bの第2の凹部7b2には、第1の回転軸5bの突起部5b1が嵌合する。これによって、駆動源3の回転軸5aと第1の回転軸5bの同調回転の精度が高まるともに、防振性が向上する。
【0029】
駆動源3の回転軸5aの突起部5a1は、駆動源3の回転軸5aの先端に形成される。駆動源3の回転軸5aは、1か所の突起部5a1に限定されることなく、周方向に2か所以上の突起部5a1を形成することによって、安定的に固定できる。
第1の回転軸5bの突起部5b1は、第1の回転軸5bの先端に形成される。第1の回転軸5bは、1か所の突起部5b1に限定されることなく、周方向に2か所以上の突起部5b1を形成することによって、安定的に固定できる。
【0030】
第2の防振カップリング7bの第1の凹部7b1は、溝である。駆動源3の回転軸5aの突起部5a1の個数に応じて、溝(第1の凹部7b1)の本数が定まる。第2の防振カップリング7bは、駆動源3の回転軸5aの突起部5a1と同数の第1の凹部7b1を有する。
第2の防振カップリング7bの第2の凹部7b2は、第1の凹部7b1の反対面に形成される溝である。第1の回転軸5bの突起部5b1の個数に応じて、溝(第2の凹部7b2)の本数が定まる。第2の防振カップリング7bは、第1の回転軸5bの突起部5b1と同数の第2の凹部7b2を有する。
【0031】
駆動源3は振動の主な発生源である。駆動源3の回転軸5aは、駆動源3の動力を伝達する部位である。そのため、駆動源3の回転軸5aに第1の防振カップリング7aと防振固定部7cの2か所で防振対策を施すとともに、駆動源3の回転軸5aの突起部5a1と第2の防振カップリング7bの第1の凹部7b1の嵌合、および第1の回転軸5bの突起部5b1と第2の防振カップリング7bの第2の凹部7b2の嵌合によって、ブレを確実に低減することで、防振性が向上する。
【0032】
図3(c)、(d)に示すように、第2実施形態の防振固定部7cは、第1の凹部7c1と第2の凹部7c2とを有する。第2の凹部7c2は、第1の凹部7c1の反対面に形成される。駆動源3の回転軸5aは、第1の防振カップリング7aと防振固定部7cを挿通する。また、駆動源3の回転軸5aの突起部5a1は、防振固定部7cの第1の凹部7c1に嵌合する。これによって、駆動源3の回転軸5aの防振性が向上する。
また、防振固定部7cの第2の凹部7c2には、第1の回転軸5bの突起部5b1が嵌合する。これによって、駆動源3の回転軸5aと第1の回転軸5bの同調回転の精度が高まるともに、防振性が向上する。
【0033】
防振固定部7cの第1の凹部7c1は、溝である。駆動源3の回転軸5aの突起部5a1の個数に応じて、溝(第1の凹部7c1)の本数が定まる。防振固定部7cは、駆動源3の回転軸5aの突起部5a1と同数の第1の凹部7c1を有する。
防振固定部7cの第2の凹部7c2は、第1の凹部7c1の反対面に形成される溝である。第1の回転軸5bの突起部5b1の個数に応じて、溝(第2の凹部7c2)の本数が定まる。防振固定部7cは、第1の回転軸5bの突起部5b1と同数の第2の凹部7c2を有する。
【0034】
駆動源3から発生する振動と、駆動源3の回転を伝達される第1の高圧ポンプ1aや第2の高圧ポンプ1b側の振動の双方を均等に抑える。また、駆動源3の回転軸5aの突起部5a1と防振固定部7cの第1の凹部7c1の嵌合、および第1の回転軸5bの突起部5b1と防振固定部7cの第2の凹部7c2の嵌合によって、ブレを確実に低減することで、防振性が向上する。
【0035】
その他、駆動源3の回転軸5aと第1の回転軸5bを別々の構成にすることにより、各回転軸、第1の歯車6a、第2の歯車6b、連結ベルト6c等が摩耗等した場合に交換しやすく、メンテナンス性にも優れる。
【0036】
検知部8は、高圧ポンプ1の吐出圧力や流量を検知する。検知部8は、第1の検知センサ8aと、第2の検知センサ8bとを有する。第1の検知センサ8a、第1の高圧ポンプ1aに接続され、第1の吐出部2aの吐出圧力や流量を検知する。第2の検知センサ8bは、第2の高圧ポンプ1bに接続され、第2の吐出部2bの吐出圧力や流量を検知する。
【0037】
制御装置9は、高圧ポンプ1や駆動源3の動作を監視し、制御する。制御装置9は、駆動源3の回転数、第1の吐出部2aおよび第2の吐出部2bの吐出圧力、第1の吐出部2aおよび第2の吐出部2bのON/OFFを制御する。
また、検知部8で検知する高圧ポンプ1の吐出圧力や流量が、作業時に必要とする値に到達するか否か確認することで、作業の安定性が向上する。
【0038】
第1の高圧ポンプ1aのみ使用する場合、制御装置9は、第1の吐出部2aをONにし、第2の吐出部2bをOFFにする。これにより、第2の高圧ポンプ1bの吐出圧力を上げずに、第1の吐出部2aを配置する第1の流路R1を介して、第1の高圧ポンプ1aのみの最大吐出圧力で高圧水L1を吐出する。
【0039】
第2の高圧ポンプ1bのみ使用する場合、制御装置9は、第1の吐出部2aをOFFにし、第2の吐出部2bをONにする。これにより、第1の高圧ポンプ1aの吐出圧力を上げずに、第2の吐出部2bを配置する第2の流路R2を介して、第2の高圧ポンプ1bのみの最大吐出圧力で高圧水L2を吐出する。
【0040】
さらに、第1の高圧ポンプ1aと第2の高圧ポンプ1bの両方を使用する場合、制御装置9は、第1の吐出部2aおよび第2の吐出部2bをONにする。これにより、第1の流路R1および第2の流路R2を合流する合流流路R3を介して、高圧水L3を吐出する。高圧水L3の最大吐出圧力は、第1の高圧ポンプ1aと第2の高圧ポンプ1bのそれぞれの最大吐出圧力の範囲内で可変である。高圧水L3の流量は、第1の高圧ポンプ1aと第2の高圧ポンプ1bの流量のうち小さい方以上、かつ、第1の高圧ポンプ1aと第2の高圧ポンプ1bの流量の合計以下の範囲内で可変である。
【0041】
なお、制御装置9が第1の吐出部2a、又は、第2の吐出部2bをOFFにすることは、制御装置9が第1の吐出部2a、又は、第2の吐出部2bの吐出圧力をゼロに制御することを意味する。
【0042】
複数(例えば、2台)の高圧ポンプ1を併用することにより、最大吐出圧力MPおよび最大吐出流量MLの幅を広げるだけでなく、1台では得られなかった吐出流量を確保できることや、吐出圧力を段階的に調整する場合に圧力変動を小さくできる。
【0043】
また、防振部7の付近に振動センサを配置することによって、高圧ポンプ1や駆動源3に過度の振動が発生していることを検知した段階で、駆動源3の回転数を減少させてもよい。
また、作業者が操作盤10を操作することによって、手動で制御装置9の設定を変更してもよい。また、通信機器11と連動して、制御装置9を自動で遠隔操作してもよい。
【0044】
通信機器11は、例えば、PC等のタブレット端末である。通信機器11は、表示パネルと、記憶媒体と、演算部と、外部との通信部とを有する。表示パネルは、制御装置9内の情報のうち、操作に関する情報(例えば、駆動源3の回転数、第1の吐出部2aおよび第2の吐出部2bの吐出圧力、第1の吐出部2aおよび第2の吐出部2bのON/OFF等)を表示する。記憶媒体は、例えば、内部または外部のストレージであり、情報を記憶する。
【0045】
また、
図2に示すように、高圧水供給ユニット100は、作業車200の荷台に設置した状態で利用できる。作業車200は、一般的な走行車であり、例えば、トラックである。高圧水供給ユニット100において、複数の高圧ポンプ1の配置を工夫したことによって、トラックの積載重量を過度に大きくする必要がなく、使用しやすいサイズに抑えることができる。
作業現場において、高圧水供給ユニット100を積載する作業車200を運搬することによって、様々な場所で作業を行うことができる。特に、近年の洗浄、剥離、はつり等の作業箇所は、狭隘な作業現場や険しい環境下で行うことも増えている。そのため、より小型で使用しやすい作業車200で運搬でき、高圧水Lの最大吐出圧力MPおよび最大吐出流量MLを調整できる高圧水供給ユニット100により、作業現場における作業を効率化できる。
【0046】
また、給水ポンプ1cの別の実施形態として、
図4に示すように、駆動源3の回転を利用して動力を得る構成でもよい。
給水ポンプ1cは、給水用回転軸5dと、第1の給水用歯車6dと、第2の給水用歯車6eと、給水用ベルト6fと、を有する。第1の給水用歯車6dは、駆動源3の回転軸5aおよび第1の防振カップリング7aと連結する。第1の給水用歯車6dが、給水用ベルト6fを介して、第2の給水用歯車6eに回転源3の回転を伝達することで、給水ポンプ1cを駆動し、流体を圧送する。
駆動源3の回転を、第1の高圧ポンプ1a、第2の高圧ポンプ1b、給水ポンプ1cに伝達できるため、給水ポンプ1cの駆動源を別に備える必要がない。
【0047】
次に、本実施形態の高圧ポンプ1の使用方法を説明する。
【0048】
(1)第1の高圧ポンプ1aのみを使用する場合
第1の高圧ポンプ1aのみを使用する場合、まず、制御装置9を手動または遠隔で操作し、第1の吐出部2aをONにし、第2の吐出部2bをOFFにする。これにより、第2の高圧ポンプ1bの吐出圧力が上がらない状態とする。
次に、給水ポンプ1cを駆動し、第1の高圧ポンプ1aに流体を給水する。このとき、第2の高圧ポンプ1bに流体を給水しても、第2の吐出部2bからそのまま排出される。
次に、駆動源3を駆動し、駆動源3の駆動力(回転数)を第1の回転軸5bに伝達し、第1の高圧ポンプ1aを駆動する。これにより、流体を最大吐出圧力MP1(例えば、245MPa)まで高圧水L1を加圧し、最大吐出流量ML1(例えば、22L/min)で使用する。
【0049】
(2)第2の高圧ポンプ1bのみを使用する場合
第2の高圧ポンプ1bのみを使用する場合、まず、制御装置9を手動または遠隔で操作し、第1の吐出部2aをOFFにし、第2の吐出部2bをONにする。これにより、第1の高圧ポンプ1aの吐出圧力が上がらない状態とする。
次に、給水ポンプ1cを駆動し、第2の高圧ポンプ1bに流体を給水する。このとき、第1の高圧ポンプ1aに流体を給水しても、第1の吐出部2aからそのまま排出される。
次に、駆動源3を駆動し、駆動源3の駆動力(回転数)を第2の回転軸5cに伝達し、第2の高圧ポンプ1bを駆動する。これにより、流体を最大吐出圧力MP2(例えば、225MPa)まで高圧水L2を加圧し、最大吐出流量ML2(例えば、44L/min)で使用する。
【0050】
(3)第1の高圧ポンプ1aおよび第2の高圧ポンプ1bの両方を使用する場合
第1の高圧ポンプ1aと第2の高圧ポンプ1bの両方を使用する場合、まず、制御装置9を手動または遠隔で操作し、第1の吐出部2aおよび第2の吐出部2bをONにする。これにより、第1の高圧ポンプ1aと第2の高圧ポンプ1bの両方の吐出圧力が上がる状態とする。
次に、給水ポンプ1cを駆動し、第1の高圧ポンプ1aおよび第2の高圧ポンプ1bに流体を給水する。
次に、駆動源3を駆動し、駆動源3の駆動力(回転数)を、駆動源の回転軸5aを介して、第1の回転軸5bに伝達し、第1の高圧ポンプ1aが駆動する。また、第1の歯車6aと第2の歯車6bを連結ベルト6cで連結し、第1の回転軸5bに伝達される駆動源3の駆動力(回転数)を第2の回転軸5cに伝達し、第2の高圧ポンプ1bが駆動する。これにより、流体を最大吐出圧力MP3(例えば、225~245MPa)まで高圧水L3を加圧し、最大吐出流量ML3(例えば、22~66L/min)で使用する。
【0051】
また、第1の高圧ポンプ1aと第2の高圧ポンプ1bの両方を使用する場合、圧力や流量の組み合わせを選択して、指定の圧力や流量を設定できる。
例えば、最大吐出圧力MP1(245MPa)および最大吐出流量ML1(22L/min)の第1の高圧ポンプ1aと、最大吐出圧力MP2(245MPa)および最大吐出流量ML2(22L/min)の第2の高圧ポンプ1bを組み合わせる。このように、最大吐出圧力MPおよび最大吐出流量MLが同じ複数のポンプを用いる場合、最大吐出圧力MP(245MPa)、最大吐出流量ML(44L/min)で高圧ポンプ1を使用できる。
【0052】
また、例えば、最大吐出圧力MP1(245MPa)および最大吐出流量ML1(22L/min)の第1の高圧ポンプ1aと、最大吐出圧力MP2(225MPa)および最大吐出流量ML2(44L/min)の第2の高圧ポンプ1bを組み合わせる。このように、最大吐出圧力MPおよび最大吐出流量MLが異なるポンプを用いる場合、高圧ポンプ1を最大吐出圧力MP(225~245MPa)および最大吐出流量ML(22~66L/min)で使用できる。
第1の高圧ポンプ1aと第2の高圧ポンプ1bの最大吐出圧力MPおよび最大吐出流量MLに差がある場合、その差を利用して、最大吐出圧力MPおよび最大吐出流量ML(22~66L/min)を適宜調整できる。また、作業中に圧力や流量を切り換える際、一度に圧力や流量が変動することを避けることができるため、段階的な調整等を行う場合に有効である。
【0053】
以上、本発明は上述した実施の形態に限定されるものではなく、本発明はその趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更が可能であることは言うまでもない。
【符号の説明】
【0054】
1 高圧ポンプ
1a 第1の高圧ポンプ
1b 第2の高圧ポンプ
1c 給水ポンプ
2 吐出部
2a 第1の吐出部
2b 第2の吐出部
3 駆動源
4 回転伝達部
5 回転軸
5a 駆動源の回転軸
5b 第1の回転軸
5c 第2の回転軸
5d 給水用回転軸
6a 第1の歯車
6b 第2の歯車
6c 連結ベルト
6d 第1の給水用歯車
6e 第2の給水用歯車
6f 給水用ベルト
7 防振部
7a 第1の防振カップリング
7b 第2の防振カップリング
7c 防振固定部
8 検知部
8a 第1の検知センサ
8b 第2の検知センサ
9 制御装置
10 操作盤
11 通信機器
L 高圧水
L1 第1の高圧水
L2 第2の高圧水
L3 合流時の高圧水
R 流路
R1 第1の流路
R2 第2の流路
R3 合流流路
100 高圧水供給ユニット
200 作業車