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特開2022-171221果汁感が増強または付与された果実風味アルコール飲料およびその製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022171221
(43)【公開日】2022-11-11
(54)【発明の名称】果汁感が増強または付与された果実風味アルコール飲料およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
   C12G 3/06 20060101AFI20221104BHJP
【FI】
C12G3/06
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021077749
(22)【出願日】2021-04-30
(71)【出願人】
【識別番号】307027577
【氏名又は名称】麒麟麦酒株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100091487
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 行孝
(74)【代理人】
【識別番号】100120031
【弁理士】
【氏名又は名称】宮嶋 学
(74)【代理人】
【識別番号】100126099
【弁理士】
【氏名又は名称】反町 洋
(72)【発明者】
【氏名】松田 莉央子
(72)【発明者】
【氏名】田墨 恭子
(72)【発明者】
【氏名】小川 かおり
【テーマコード(参考)】
4B115
【Fターム(参考)】
4B115MA03
4B115MA04
(57)【要約】
【課題】果汁感が増強または付与された果実風味アルコール飲料の提供。
【解決手段】グルコン酸と、ナトリウムと、果実フレーバーおよび/または果汁とを含んでなる、アルコール飲料。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
グルコン酸と、ナトリウムと、果実フレーバーおよび/または果汁とを含んでなる、アルコール飲料。
【請求項2】
高甘味度甘味料をさらに含んでなる、請求項1に記載のアルコール飲料。
【請求項3】
前記果実フレーバーまたは果汁が、柑橘またはソフトフルーツの果実フレーバーまたは果汁である、請求項1または2に記載のアルコール飲料。
【請求項4】
前記柑橘がグレープフルーツである、請求項3に記載のアルコール飲料。
【請求項5】
前記ソフトフルーツが、ブドウである、請求項3に記載のアルコール飲料。
【請求項6】
ナトリウムが、クエン酸ナトリウム、塩化ナトリウム、酒石酸ナトリウム、乳酸ナトリウム、フマル酸ナトリウム、リンゴ酸ナトリウム、コハク酸ナトリウム、および酢酸ナトリウムから選択される少なくとも一種のナトリウム塩に由来するものである、請求項1~5のいずれか一項に記載のアルコール飲料。
【請求項7】
前記高甘味度甘味料が、アセスルファムカリウム、スクラロース、アスパルテームおよびステビア抽出物から選択される少なくとも一種の高甘味度甘味料である、請求項2~6のいずれか一項に記載のアルコール飲料。
【請求項8】
前記アルコール飲料のアルコール濃度が3~15v/v%である、請求項1~7のいずれか一項に記載のアルコール飲料。
【請求項9】
グルコン酸の濃度が、グルコン酸として0.001~1.0w/v%である、請求項1~8のいずれか一項に記載のアルコール飲料。
【請求項10】
ナトリウムの濃度が、ナトリウムとして0.001~0.5w/v%である、請求項1~9のいずれか一項に記載のアルコール飲料。
【請求項11】
グルコン酸とナトリウムとの質量比(グルコン酸:ナトリウム)が、それぞれグルコン酸およびナトリウムの質量として、1:0.01~50である、請求項1~10のいずれか一項に記載のアルコール飲料。
【請求項12】
果実フレーバーおよび/または果汁を含んでなるアルコール飲料を製造する方法であって、グルコン酸とナトリウムとを含有させる工程を含んでなる、方法。
【請求項13】
果実フレーバーおよび/または果汁を含んでなるアルコール飲料における果汁感を増強または付与する方法であって、グルコン酸とナトリウムとを含有させる工程を含んでなる、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、果汁感が増強または付与された果実風味アルコール飲料およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
アルコール飲料においては、原材料由来のさまざまな成分とアルコールとの相互作用によりさまざまな香味が生じる。そして、アルコール飲料の香味を消費者の好みに適合させるべく、さまざまな改良技術が開発されている。
【0003】
例えば、特許文献1には、アルコール度数が3%未満の飲料において、アセスルファムカリウムおよびゲンチオオリゴ糖に加え、酒石酸、グルコン酸および乳酸からなる群から選択される1種以上の有機酸を含有させることにより、アルコール度数が低い飲料にもかかわらず、酒らしい味わい、特に、醸造酒様の味わいが感じられる飲料を提供する技術が記載されている。
【0004】
特許文献2には、アルコール飲料において、飲料全体に対して、1~6.9v/v%のアルコールと、0.0075~0.75重量%のグルコン酸と、1.0~3.7重量%の糖類とを少なくとも含有させることにより、低アルコール飲料の特徴である親しみやすさ、適度な飲みごたえ、スッキリとした飲みやすさを保持しながら、食事との相性を改善する技術が記載されている。
【0005】
また、甘味に起因するネガティブな香味についても、さまざまな改良技術が開発されている。
【0006】
例えば、特許文献3には、高甘味度甘味料含有飲料に対して、該飲料に添加される「有機酸及び/又は有機酸の塩」の種類と量の調整を行うことにより、該飲料における甘味の残存性(あと味:甘味の後引き)を解消する技術が記載されている。
【0007】
特許文献4には、甘味を呈する食品に対して、酸味料としての有機カルボン酸とともにカルシウムやマグネシウムを添加することにより、糖分その他の甘味料の量を減らすことなく食品の甘味を抑制して、コクがあり、キレの良い、清涼感のある甘味とする技術が記載されている。
【0008】
特許文献5には、スクラロースにグルコン酸塩を混合することにより、スクラロースが本来有する呈味性(甘味度、甘味質など)における欠点を低減し、味の相乗効果を引きだすことによって、風味の改善を図ることができる技術が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2016-123317号公報
【特許文献2】特開2009-225740号公報
【特許文献3】特開2003-210147号公報
【特許文献4】特開2000-175651号公報
【特許文献5】特開2018-121638号公報
【発明の概要】
【0010】
本発明者らは、果実フレーバーまたは果汁を含むアルコール飲料において、アルコールや高甘味度甘味料由来のネガティブな香味により、果汁様の自然な味わいが抑えられ、人工的な味に感じやすくなるという問題を見出した。ここでいうネガティブな香味とは、果汁感を感じにくくさせる香味であり、例えば、アルコールの辛さ、アルコール臭、後苦味、異質な味わい等が挙げられる。
【0011】
上記の問題を解決するため、検討を重ねた結果、本発明者らは、果実フレーバーまたは果汁を含むアルコール飲料において、グルコン酸と、ナトリウムとを含有させることにより、該アルコール飲料の果汁感を増強できることを見出した。本発明はこの知見に基づくものである。
【0012】
従って、本発明は、果汁感が増強または付与された果実風味アルコール飲料およびその製造方法を提供することを目的とする。
【0013】
本発明によれば以下の発明が提供される。
(1)グルコン酸と、ナトリウムと、果実フレーバーおよび/または果汁とを含んでなる、アルコール飲料。
(2)高甘味度甘味料をさらに含んでなる、前記(1)に記載のアルコール飲料。
(3)前記果実フレーバーまたは果汁が、柑橘またはソフトフルーツの果実フレーバーまたは果汁である、前記(1)または(2)に記載のアルコール飲料。
(4)前記柑橘がグレープフルーツである、前記(3)に記載のアルコール飲料。
(5)前記ソフトフルーツが、ブドウである、前記(3)に記載のアルコール飲料。
(6)ナトリウムが、クエン酸ナトリウム、塩化ナトリウム、酒石酸ナトリウム、乳酸ナトリウム、フマル酸ナトリウム、リンゴ酸ナトリウム、コハク酸ナトリウム、および酢酸ナトリウムから選択される少なくとも一種のナトリウム塩に由来するものである、前記(1)~(5)のいずれかに記載のアルコール飲料。
(7)前記高甘味度甘味料が、アセスルファムカリウム、スクラロース、アスパルテームおよびステビア抽出物から選択される少なくとも一種の高甘味度甘味料である、前記(2)~(6)のいずれかに記載のアルコール飲料。
(8)前記アルコール飲料のアルコール濃度が3~15v/v%である、前記(1)~(7)のいずれかに記載のアルコール飲料。
(9)グルコン酸の濃度が、グルコン酸として0.001~1.0w/v%である、前記(1)~(8)のいずれかに記載のアルコール飲料。
(10)ナトリウムの濃度が、ナトリウムとして0.001~0.5w/v%である、前記(1)~(9)のいずれかに記載のアルコール飲料。
(11)グルコン酸とナトリウムとの質量比(グルコン酸:ナトリウム)が、それぞれグルコン酸およびナトリウムの質量として、1:0.01~50である、前記(1)~(10)のいずれかに記載のアルコール飲料。
(12)果実フレーバーおよび/または果汁を含んでなるアルコール飲料を製造する方法であって、グルコン酸とナトリウムとを含有させる工程を含んでなる、方法。
(13)果実フレーバーおよび/または果汁を含んでなるアルコール飲料における果汁感を増強または付与する方法であって、グルコン酸とナトリウムとを含有させる工程を含んでなる、方法。
【0014】
本発明によれば、果汁感が増強または付与された果実風味アルコール飲料が提供される。
【発明の具体的説明】
【0015】
本発明では、果実フレーバーおよび/または果汁を含んでなるアルコール飲料において、グルコン酸とナトリウムとを該飲料に含有させることにより、該飲料の果汁感を増強または付与することができる。また、本発明は、前記アルコール飲料における自然な果汁感を増強または付与することができる点で有利である。さらに、本発明によれば、前記アルコール飲料におけるアルコールおよび/または高甘味度甘味料由来のネガティブな香味を軽減することも可能である。
【0016】
本明細書において「果汁感」とは、果汁の味わいや味の厚みを感じることをいう。また、本明細書において「自然な果汁感」とは、香料では感じられない、果汁の味わいや味の厚みを感じることをいう。
【0017】
本発明のアルコール飲料は、グルコン酸と、ナトリウムと、果実フレーバーおよび/または果汁とを含んでなる。このような飲料は、果実フレーバーおよび/または果汁を含有する果実風味アルコール飲料の製造過程において、グルコン酸およびナトリウムを含有させることまたはこれらの濃度調整によって製造することができる。グルコン酸およびナトリウムの投入または濃度調整は、グルコン酸およびナトリウムを添加することにより行ってもよいし、あるいは、これらを含有する原料を配合すること、またはその配合量を増減させることによって行ってもよい。
【0018】
本発明のアルコール飲料中のグルコン酸は、グルコン酸、グルコン酸塩、グルコン酸イオン等のいずれの形態であってもよい。本発明のアルコール飲料中のグルコン酸の濃度は特に制限されるものではないが、グルコン酸として(グルコン酸の形態の重量に換算して)、好ましくは0.001~1.0w/v%とされ、より好ましくは0.005~0.5w/v%とされ、さらに好ましくは0.01~0.25w/v%とされ、さらに好ましくは0.05~0.25w/v%とされる。飲料中のグルコン酸の濃度は、当技術分野において公知の方法、例えば、HPLC法により測定することができる。その際に、より正確な濃度測定のためには、既知の濃度を有する幾つかの対照サンプルの測定値に基づいて作成した検量線を用いることが望ましい。
【0019】
本発明のアルコール飲料の製造に用いられるグルコン酸としては、グルコン酸、グルコン酸塩(例えばグルコン酸カリウム、グルコン酸ナトリウムなど)、グルコン酸イオン等の様々な形態の物質、およびこれらを含有する原材料など、いかなる形態の材料を用いてもよい。かかるグルコン酸としては、好ましくはグルコン酸カリウムを用いることができる。グルコン酸ナトリウムまたはこれを含有する原材料を用いる場合には、これらにより混入するナトリウムの重量を、ナトリウム濃度の算出の際に考慮する必要がある。
【0020】
本発明のアルコール飲料中のナトリウムは、ナトリウム、ナトリウム塩、ナトリウムイオン等のいずれの形態であってもよい。本発明のアルコール飲料中のナトリウムの濃度は特に制限されるものではないが、ナトリウムとして(ナトリウムの形態の重量に換算して)、好ましくは0.001~0.5w/v%とされ、より好ましくは0.005~0.25w/v%とされ、さらに好ましくは0.02~0.1w/v%とされる。飲料中のナトリウムの濃度は、当技術分野において公知の方法、例えば、ICP発光分光分析装置(Inductivity coupled plasma optical emission spectrometer; ICP-OES)を用いたナトリウム分析により測定することができる。その際に、より正確な濃度測定のためには、既知の濃度を有する幾つかの対照サンプルの測定値に基づいて作成した検量線を用いることが望ましい。
【0021】
本発明のアルコール飲料の製造に用いられるナトリウムとしては、ナトリウム、ナトリウム塩、ナトリウムイオン等の様々な形態の物質、およびこれらを含有する原材料など、いかなる形態の材料を用いてもよい。前記ナトリウム塩としては、特に制限されるものではないが、例えば、クエン酸ナトリウム(例えば、クエン酸一ナトリウム、クエン酸二ナトリウム、クエン酸三ナトリウム)、塩化ナトリウム、酒石酸ナトリウム、乳酸ナトリウム、フマル酸ナトリウム、リンゴ酸ナトリウム、コハク酸ナトリウム、酢酸ナトリウム等を挙げることができ、好ましくはクエン酸ナトリウムおよび/または塩化ナトリウムを用いることができる。グルコン酸ナトリウムまたはこれを含有する原材料を用いる場合には、これらにより混入するグルコン酸の重量を、グルコン酸濃度の算出の際に考慮する必要がある。
【0022】
本発明の好ましい実施態様によれば、本発明のアルコール飲料におけるグルコン酸とナトリウムとの質量比(グルコン酸:ナトリウム)は、それぞれグルコン酸およびナトリウムの質量として、1:0.01~50とされ、より好ましくは1:0.04~10、さらに好ましくは1:0.08~10、さらに好ましくは1:0.08~5とされる。
【0023】
本発明のアルコール飲料(最終製品)のアルコール濃度は特に制限されるものではないが、好ましくは3~15v/v%、より好ましくは5~12v/v%、さらに好ましくは5~9v/v%とされる。本発明によれば、アルコール由来のネガティブな香味を軽減することもできるため、本発明は、5v/v%以上であるような、アルコール濃度の高いアルコール飲料に好適に適用される。アルコール濃度の調整は、食品としての安全性が確認されたエタノール含有材料の添加によって行うことができる。エタノール含有材料としては、原料用アルコールや蒸留酒(スピリッツ)を用いることができ、好ましい蒸留酒の例としては、ウオッカ、焼酎、テキーラ、ラム等が挙げられる。
【0024】
本発明の好ましい実施態様によれば、本発明のアルコール飲料のアルコール濃度は9v/v%を超えるものとされ(より好ましくは9v/v%を超えて12v/v%以下とされ)、グルコン酸の濃度は、グルコン酸として(グルコン酸の形態の重量に換算して)、0.05~0.50w/v%とされる。
【0025】
本発明のアルコール飲料に含まれる果実フレーバーまたは果汁は、いかなる果実の果実フレーバー/果汁であってもよく、その種類は特に制限されるものではないが、好ましくは柑橘またはソフトフルーツの果実フレーバーまたは果汁とされる。果汁の濃度は特に制限されるものではなく、使用する具体的な果汁の香味の強さ等に応じて適宜調整してよいが、概ね0.1~30w/v%の範囲とすることができ、好ましくは1~15w/v%の範囲、より好ましくは2~5w/v%の範囲とされる。果実フレーバーの濃度は特に制限されるものではなく、使用する具体的な果実フレーバーの香味の強さ等に応じて適宜調整してよいが、概ね0.001~10w/v%の範囲とすることができ、好ましくは0.01~5w/v%の範囲、より好ましくは0.05~2w/v%の範囲とされる。
【0026】
柑橘としては、例えば、柑橘類の例としては、例えば、グレープフルーツ、レモン、オレンジ、マンダリン、シークヮーサー、だいだい、みかん、ウンシュウミカン、なつみかん、はっさく、イヨカン、ブンダン、キンカン、ポンカン、ベルガモット、ライム、ユズ、スダチ、カボス等を挙げることができ、好ましくはグレープフルーツ、レモン、ライム、オレンジ、みかん、ユズ、シークヮーサー、より好ましくはグレープフルーツを用いることができる。柑橘の果実フレーバーや果汁は、1種を単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0027】
本明細書において「ソフトフルーツ」とは、柑橘系以外の果実(非柑橘系果実)を意味する。ソフトフルーツとしては、例えば、ぶどう、いちじく、きいちごなどの漿果類;りんご、なし(例えば、日本なし、西洋なし等)などの仁果類果実;あんず、桃、すもも、梅、サクランボなどの核果類果実;マンゴー、パイナップル、グアバ、バナナ、ライチ(レイシ)、キウイフルーツ、パパイヤ、パッションフルーツ、アセロラなどのトロピカルフルーツ(熱帯性果実);イチゴ、メロン、スイカなどの果実的野菜を挙げることができ、好ましくはぶどう、桃、りんご、なし、梅、マンゴー、パイナップル、ライチ、イチゴ、より好ましくはぶどうを用いることができる。ソフトフルーツの果実フレーバーや果汁は、1種を単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0028】
本発明の好ましい実施態様によれば、本発明のアルコール飲料は、高甘味度甘味料をさらに含むものとされる。高甘味度甘味料は、少量の添加により高い甘味度を与える物質の総称である。高甘味度甘味料としては、例えば、アセスルファムカリウム、スクラロース、アスパルテーム、ステビア抽出物等を挙げることができ、好ましくはアセスルファムカリウム、スクラロース、またはこれらの組み合わせが用いられる。本発明のアルコール飲料中の高甘味度甘味料の濃度は特に制限されるものではないが、好ましくは0.0001~1w/v%とされ、より好ましくは0.001~0.1w/v%とされ、さらに好ましくは0.005~0.05w/v%とされる。本発明によれば、前記アルコール飲料における高甘味度甘味料由来のネガティブな香味を軽減することもできるため、本発明は、高甘味度甘味料を含有するアルコール飲料に好適に適用される。
【0029】
本発明の一つの実施態様によれば、本発明のアルコール飲料は、果実フレーバーまたは果汁に由来する糖類以外の糖類を含まないものとされ、好ましくは糖類を全く含まないものとされる。
【0030】
本発明のアルコール飲料は、飲料の製造に用いられる他の成分を含んでもよい。このような他の成分としては、例えば、甘味料(例えば、砂糖、ブドウ糖、果糖、オリゴ糖、異性化液糖、糖アルコール等)、酸味料(例えば、酒石酸、イタコン酸、フマル酸、アジピン酸、酢酸、またはそれらの塩類等)、色素、香料、食品添加剤(例えば、起泡・泡持ち向上剤、苦味料、保存料、酸化防止剤、増粘安定剤、乳化剤、食物繊維、pH調整剤など)等を適宜添加することができる。
【0031】
本発明のアルコール飲料は、二酸化炭素を圧入したもの、すなわち、炭酸飲料とすることができる。炭酸ガス圧は、好みに応じて適宜調整することができ、例えば、0.1~0.4MPa(20℃におけるガス圧)の範囲で調整することができる。
【0032】
本発明のアルコール飲料のpHは、特に制限されるものではないが、好ましくは2.5~4.5とすることができる。
【0033】
本発明のアルコール飲料は、容器詰飲料として提供することができる。本発明のアルコール飲料に使用される容器は、飲料の充填に通常使用される容器であればよく、例えば、金属缶、樽容器、プラスチック製ボトル(例えば、PETボトル、カップ)、紙容器、瓶、パウチ容器等が挙げられるが、好ましくは金属缶・樽容器、プラスチック製ボトル(例えば、PETボトル)、または瓶とされる。
【0034】
本発明の他の態様によれば、果実フレーバーおよび/または果汁を含んでなるアルコール飲料における果汁感を増強または付与する方法が提供され、該方法は、グルコン酸とナトリウムとを含有させる工程を含んでなる。
【実施例0035】
以下の実施例に基づいて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0036】
実施例1:果実風味アルコール飲料の果汁感を増強するための条件の検討
果実フレーバーまたは果汁を含有するアルコール飲料における果汁感を増強するための最適な条件を見出すため、様々な飲料サンプルを製造し、各飲料サンプルについて官能評価を行った。
【0037】
試飲サンプルの組成を以下に示す。
<コントロール>
・柑橘フレーバー(グレープフルーツ(GF)フレーバー):0.2w/v%程度;
・グルコン酸カリウム:0.060w/v%(グルコン酸の濃度0.050w/v%に相当);
・クエン酸三ナトリウム:0.085w/v%(ナトリウムの濃度0.020w/v%に相当);
・アルコール濃度:9v/v%;
・アセスルファムK:0.005w/v%;
・スクラロース:0.002w/v%;
・pH:2.5~4.5;
・炭酸ガス圧:0.1MPa以上。
【0038】
<ネガコン(陰性対照)>
・コントロールのうち、グルコン酸およびナトリウムを0としたもの。
【0039】
コントロールのサンプルをベースとして様々な飲料サンプルを製造し、自然な果汁感について各飲料サンプルの官能評価を行った。官能評価は、訓練されたパネリスト6名によって行い、0(自然な果汁感を感じない)~3(自然な果汁感を強く感じる)の範囲における0.5刻みのスコアを用いて行った。ここで、上記コントロールのサンプルのスコアを2.0(自然な果汁感を感じる)とし、上記ネガコンのサンプルのスコアを0.0とした。各サンプルのスコアは、平均値および標準偏差として示した。
【0040】
(1)グルコン酸の濃度と果汁感増強効果との関係
コントロールのサンプルをベースとしてグルコン酸カリウムの添加量を変更し、様々なグルコン酸濃度を有するサンプルを作製した。以下の表に、各サンプルのグルコン酸濃度と官能評価結果を示す。
【0041】
【表1】
【0042】
表1から明らかなように、グルコン酸とナトリウムの両方を含有するグレープフルーツ風味のサンプルの全てにおいて、自然な果汁感の増強効果が見られた。また、グルコン酸の濃度は、0.005~0.5w/v%の範囲が特に好ましく、0.01~0.25w/v%の範囲がさらに好ましいと考えられた。
【0043】
(2)ナトリウムの濃度と果汁感増強効果との関係
コントロールのサンプルをベースとしてクエン酸ナトリウムの添加量を変更し、様々なナトリウム濃度を有するサンプルを作製した。また、クエン酸ナトリウムの代わりに食塩(NaCl)を用いたサンプルも用意した(試験区12)。以下の表に、各サンプルのナトリウム濃度と官能評価結果を示す。
【0044】
【表2】
【0045】
表2から明らかなように、グルコン酸とナトリウムの両方を含有するグレープフルーツ風味のサンプルの全てにおいて、自然な果汁感の増強効果が見られた。また、ナトリウムの濃度は、0.005~0.25w/v%の範囲が特に好ましく、0.02~0.1w/v%の範囲がさらに好ましいと考えられた。
【0046】
(3)果汁成分の種類と果汁感増強効果との関係
コントロールおよびネガコンのサンプルをベースとして、柑橘フレーバーを以下に示す様々な果汁成分に置き換えたサンプルを作製した。
・柑橘果汁(グレープフルーツ(GF)果汁):5w/v%。
・ソフトフルーツフレーバー(葡萄フレーバー):0.1w/v%程度。
・ソフトフルーツ果汁(葡萄果汁):5w/v%。
【0047】
以下の表に、各サンプルの果汁成分と官能評価結果を示す。
【0048】
【表3】
【0049】
表3から明らかなように、柑橘およびソフトフルーツのどちらにおいても、果汁の有無にかかわらず、グルコン酸とナトリウムが共存することによる自然な果汁感の増強に効果があることがわかった。
【0050】
(4)甘味料の有無と果汁感増強効果との関係
コントロールおよびネガコンのサンプルをベースとして、高甘味度甘味料を添加しなかったサンプルを作製し、高甘味度甘味料を添加したサンプルと比較した。以下の表に、各サンプルの高甘味度甘味料の有無と官能評価結果を示す。
【0051】
【表4】
【0052】
表4から明らかなように、甘味料の有無にかかわらず、グルコン酸とナトリウムが共存することによる自然な果汁感の増強に効果があることがわかった。
【0053】
(5)アルコール濃度と果汁感増強効果との関係
コントロールのサンプルをベースとして、アルコール濃度およびグルコン酸カリウムの添加量を変更し、様々なアルコール濃度および様々なグルコン酸濃度を有するサンプルを作製した。以下の表に、各サンプルのアルコール濃度およびグルコン酸濃度と官能評価結果を示す。
【0054】
【表5】
【0055】
表5から明らかなように、試験した全てのアルコール濃度において、グルコン酸とナトリウムが共存することによる自然な果汁感の増強に効果があることがわかった。