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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022171223
(43)【公開日】2022-11-11
(54)【発明の名称】γ系ステンレス鋼線及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   C22C 38/00 20060101AFI20221104BHJP
   B21C 1/00 20060101ALI20221104BHJP
   C22C 38/58 20060101ALI20221104BHJP
   C21D 1/02 20060101ALI20221104BHJP
【FI】
C22C38/00 302Z
B21C1/00 B
B21C1/00 L
B21C1/00 M
B21C1/00 Z
C22C38/58
C21D1/02
【審査請求】有
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021077752
(22)【出願日】2021-04-30
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2021-10-06
(71)【出願人】
【識別番号】599025776
【氏名又は名称】有限会社 関西エンジニアリング
(74)【代理人】
【識別番号】100088683
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 誠
(72)【発明者】
【氏名】西村 強
(72)【発明者】
【氏名】西村 貴伸
【テーマコード(参考)】
4E096
【Fターム(参考)】
4E096EA03
4E096EA12
4E096EA13
4E096HA22
4E096JA01
4E096JA12
4E096KA02
4E096KA03
4E096KA04
4E096KA09
(57)【要約】      (修正有)
【課題】仕上金属線に残留するγ量を高い数値に維持して加工性を高めたステンレス鋼線及びその実用的な製造法方法を提供する。
【解決手段】質量%で、C:0.08%以下、Si:1.00%以下、Mn:2.00%以下、P:0.045%以下、S:0.030%以下、Ni:8.0~10.50%、Cr:18.00~20.00%、残部Feの組成を有し、線径0.08mm以上、2.60mm以下で、引張強度が1550N/mm以上、3500N/mm以下であって、かつ、30体積%以上、90体積%以下のγ量を有することを特徴とするγ系ステンレス鋼線。製造方法は、γ系ステンレス鋼母線の伸線加工方向に沿って少なくとも2台の引抜加工治具を前後に配置し、前段の引抜加工治具によるγ系ステンレス鋼母線の伸線加工により発生した加工熱を利用して、後段の引抜加工治具での加熱伸線加工する方法である。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
質量%で、C:0.08%以下、Si:1.00%以下、Mn:2.00%以下、P:0.045%以下、S:0.030%以下、Ni:8.0~10.50%、Cr:18.00~20.00%、残部Feの組成を有し、線径0.08mm以上、2.60mm以下で、引張強度が1550N/mm以上、3500N/mm以下であって、かつ、30体積%以上、90体積%以下のγ量を有することを特徴とするγ系ステンレス鋼線。
【請求項2】
40体積%以上、70体積%以下のγ量を有することを特徴とする請求項1記載のγ系ステンレス鋼線。
【請求項3】
γ系ステンレス鋼母線の伸線加工方向に沿って少なくとも2台の引抜加工治具を前後に配置し、γ系ステンレス鋼線を前段の引抜加工治具に通して伸線加工した後、後段の引抜加工治具で予め設定した所定の加熱温度で加熱伸線加工する工程を複数工程行ってγ系ステンレス鋼線を製造する方法であって、
後段の引抜加工治具での加熱伸線加工は、前段の引抜加工治具によるγ系ステンレス鋼線の伸線加工により発生した加工熱を利用して、上記所定の加熱温度で伸線加工することを特徴とする請求項1又は2に記載のγ系ステンレス鋼線の製造方法。
【請求項4】
前段の引抜加工治具による伸線加工により、γ系ステンレス鋼線の温度を前段の引抜加工治具による伸線加工前の温度より100℃~250℃昇温することを特徴とする請求項3に記載のγ系ステンレス鋼線の製造方法。
【請求項5】
γ系ステンレス鋼母線の伸線加工方向に沿って少なくとも2台の引抜加工治具を前後に配置し、前記γ系ステンレス鋼線を前段の引抜加工治具に通して伸線加工した後、後段の引抜加工治具で予め設定した所定の加熱温度で加熱伸線加工する工程を複数工程行う際に、少なくとも一部の工程はγ系ステンレス鋼線を前段の引抜加工治具に通す前に、γ系ステンレス鋼線を予備加熱する工程を有することを特徴とする請求項3又は4記載のγ系ステンレス鋼線の製造方法。
【請求項6】
前記予備加熱する工程は、γ系ステンレス鋼母線を50℃以上昇温する工程であることを特徴とする請求項5記載のγ系ステンレス鋼線の製造方法。
【請求項7】
前記予備加熱する工程は、γ系ステンレス鋼母線を50℃~200℃昇温する工程であることを特徴とする請求項6記載のγ系ステンレス鋼線の製造方法。
【請求項8】
予備加熱する工程で加熱されたγ系ステンレス鋼母線を前記前段の引抜加工治具に通して前段の引抜加工治具による伸線加工前の温度より100℃~250℃昇温し、この加熱状態でγ系ステンレス鋼母線を後段の引抜加工治具に所定の加熱温度で通して加熱伸線加工を行うことを特徴とする請求項5~7のいずれか1項に記載のγ系ステンレス鋼線の製造方法。
【請求項9】
請求項3~8の何れか1項に記載のγ系ステンレス鋼線の製造方法に適用される引抜加工治具を収納したダイスボックスであって、伸線加工されるγ系ステンレス鋼母線の入口側から出口側にかけて順に前段の引抜加工治具と後段の引抜加工治具を設置していることを特徴とするダイスボックス。
【請求項10】
請求項5~8の何れか1項に記載のγ系ステンレス鋼線の製造方法に適用される引抜加工治具を収納したダイスボックスであって、伸線加工されるγ系ステンレス母鋼線の入口側から出口側にかけて順に予備加熱手段、前段の引抜加工治具及び後段の引抜加工治具を設置していることを特徴とするダイスボックス。
【請求項11】
予備加熱手段は、直接加熱手段及び/又は間接加熱手段の一種又は二種以上であることを特徴とする請求項10に記載のダイスボックス。
【請求項12】
前段の引抜加工治具を設置した領域及び後段の引抜加工治具を設置した領域に粉末潤滑剤を充填していることを特徴とする請求項9~11のいずれか1項に記載のダイスボックス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、2台の引抜加工治具(ダイス)を伸線方向に配置し,前段の引抜加工治具での引抜で発生する熱を利用して後段の引抜加工治具で伸線加工することにより、オーステナイト組織を残留させたγ系ステンレス鋼線及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ステンレス鋼の伸線加工は、所望する線径を得ることと、所望の強度を得ることを目的として行われる。線径は、伸線加工で使用する治具(ダイス)の穴径により決定される。また、強度は加工の度合いで決まる。加工の度合いは、加工に伴う線径の断面積の減り具合、即ち減面率「(1-(d ÷d ))×100%」と強度との関係図表を予め諸実験によって確保し、実生産に於いてこれを活用する。即ち、強度は減面率によってコントロールされる。
【0003】
ところで、γ系ステンレス鋼線は、加工を受けるとγ→α´加工変態を生じる。このγ→α´加工変態は、加工を受ける直前の温度に顕著に影響を受け、150℃程度の加熱で強加工(滅面率90%)を受けても常温加工時の30%程度しか変態が進行せず、体積の70%がγ組織として残留し、更なる加工を可能とする。従って、γ系ステンレス鋼線の伸線加工には、150℃程度の加熱状態で強加工するのが好適である。
【0004】
しかし、ここで実務的に問題となる技術課題は、伸線加工が秒速数mの高速で走行するγ系ステンレス鋼線に対する作業であるため、このγ系ステンレス鋼線を連続伸線機の狭いダイスBOX付近で、いかにして上述の温度に昇温するかが、本発明の伸線加工の課題となる。
高々150℃程度の加熱と云っても、秒速数mの高速で走るγ系ステンレス鋼線を1秒以下の短時間で昇温することはそう簡単ではない。
【0005】
本発明者は、ステンレス鋼線を加熱する方法として、先に誘導加熱装置を使った加熱伸線法を提案し、特許が認められた(特許文献1:特許2050506号、なお、その発明内容については公告公報である特公平07-080008号公報を参照してください)。
しかし、この発明を実施するために必須の誘導加熱装置(IH)が1セット600万円と非常に高価で、これを連続伸線機の各釜のダイス前に複数台セツ卜するには余程の実績を示さなければ実用化には踏み切れず、商業的生産への移行には課題が多く在った。
その対応の一つとして、本発明者は、耐熱潤滑油法(特許文献2:特開2012-81502号公報参照)を開発し、耐熱潤滑油を利用した加熱伸線法として出願をした。この方法では、例えば2200N/mmの引張強度のオーステナイト系ステンレス鋼線を得ることができる(段落0022,0024参照)。しかし、特許文献2の発明もまた特許文献1の発明と同様に、実験的には確立したが、長時間、150℃以上の高温に順応出来得る耐熱潤滑油の開発、などの解決すべき要件があり、特許文献1と同様に商業的生産への移行には課題が多く在った。
このような事情から、現時点では、仕上金属線に残留するγ量を高い数値に維持して加工性を高めたステンレス鋼線及びその実用的な製造法方法は得られていないのが現状である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特公平07-080008号公報
【特許文献2】特開2012-81502号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記事情に鑑み、本発明者らは上記課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、加工されるステンレス鋼母線自体の加工発熱を活用してγ→α´加工変態を減少させ、加工性に優れたγ組織を多く残留させて加工限界を最高度に延長して伸線加工を行い、生産性の向上、コストダウン、更には新製品の開発に寄与出来る画期的な発明として 本発明に係るγ組織を多く残留させた「γ系ステンレス鋼線」及び「このγ系ステンレス鋼線を伸線加工により製造する方法」の開発に成功した。以下、本発明について具体的に説明する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
まず、本発明に係る「(SUS304の組成を有する)γ系ステンレス鋼線の製造方法」の概要を説明する。
一般に金属は、加工を受けると、金属独自の結晶のすベリ面上を元素が移動して変形が進行して内部応力を蓄積し、同時に転位も集積して不働転位となり、加工を困難にする。更に、γ系ステンレス鋼線はこれらの変形機構以外に組織そのものが加工を受けて、γ→α´加工変態を 生じて硬化が進行する。
この場合の加工変態は、加工を受ける直前の温度の影響を顕著に受け、200℃程度の加熱で殆んど変化は進行せず、強度の向上も少ない。然し、連続伸線機での加工速度は、線速が秒速2~8mと高速なので、加熱装置を狭い連続伸線機の台場にセットする事は困難である。
【0009】
そこで、これらの対策とは全く別の新しい手法として、本発明方法(以下、本明細書では「ダブルダイス加熱伸線法」と称する)を開発した。
以下、図1の「ダブルダイス加熱伸線法概要図」、図2の「引抜加工とマルテンサイト発生の温度依存性」、及び図3の「加工温度-減免率-引張強度の関係」を参照して、本発明方法に係る「ダブルダイス加熱伸線法」の概要を説明する。
なお、図1は、本発明の理解を容易にするためにその具体例を示した概略図である。図1では、上段に2個のダイスの配置例、下段に加熱温度を数値等に付して示しているが、図1に記載された具体的な数値等に本発明が特定されるという趣旨でないことを念のため指摘する。
また、図2は、加工温度が高い方が、マルテンサイトの発生割合を低く押さ得ることができること示し、図3は、加工温度が高い方が、引張強度の上昇を抑えることができることを示している。
【0010】
図1の記載から明らかなように、2個のダイス(伸線用治具)を、例えば、100mm~150mm間隔で配置し、前段のNo.1ダイスでの伸線加工によって発生する発熱をそのまま後段のNo.2ダイスに持ち込み、ここで加熱伸線を行う方法、好ましくはNo.1ダイスでの伸線加工の前に予備加熱ゾーンで予備加熱する方法は、まさに理想的な方法と云える。
【0011】
(予備加熱)
より具体的に説明すれば、前段のNo.1ダイスでの伸線時のγ→α´加工変態を少しでも少なくするために、No.1 ダイスに入る前にγ系ステンレス鋼線を、例えば70℃~130℃程度に予備加熱し、予備加熱された線をNo.1ダイスに導入すれば、No.1ダイス通過時のγ→α´加工変態は大幅に抑制され、更にNo.1ダイスでの発熱と加算され後段のNo.2ダイスに入る直前の温度を200℃近く迄昇温できればγ→α´加熱変態は激減し、強度向上も半減でき、まさに理想的な加熱伸線が実現できることとなる。
No.1ダイスの前に配置する予備加熱方法には直接加熱(通電、耐熱潤滑油等)、或いは間接加熱(熱風、加熱炉通過等)などが考えられる。予備加熱およびNo.1ダイスとNo.2ダイスを配置した状態をダブルダイスの1セットとすると、これを6セット配置した状態を図4に示す。尚、予備加熱は130℃前後であれば線速が高速であっても充分に昇温は可能である。
【0012】
(ダブルダイス加熱伸線法)
本発明方法は、伸線加工に於ける操作に関して、従来の「減面率強度コントロール法」から「加熱温度コントロール法」に転換した点に特徴がある。
以下、この点について具体的に説明する。
伸線加工に於ける操作は、タイスと呼ばれる入口が大きく、出口が小さな伸線加工治具の中に線を通して出口の直径に合わせるものである。この操作により、単に線径を所定の径にするだけでなく、加工と同時に、加工による強度の向上を図る事ができる。
この場合の強度の向上を支配する要因は、減面率(1‐(d ÷d ))×100%)で、過去の実験及び実績から通常の常温伸線では25~20%でこれを繰り返して全滅面率を85%前後まで加工すれば、線材はそれ以上の加工には耐えられず断線する。断線に致らなくても内部亀裂を生じ、欠陥のある製品となる惧れがある。多くのワイヤー製造メーカーでは作業標準として各減面率は20~25%、全滅面率は80~82%程度を標準化し、単独伸線機7~8台を連続して配置し、これを電気的配線駆動化して連続伸線を行っている。
尚、各伸線機で採用する減面率は各伸線機共、同一減面率(パラレルドラフト)を採用するか、引き抜き力を考慮して漸次減少(テーパードラフト)にするかは適宜選択可能である。
その後、光輝焼鈍して軟化し、再度同じ伸線を、繰り返して線径を細くし、強度をアップする。
【0013】
本発明の伸線加工と対比するために、まず、従来の伸線工程を図5(現状の伸線・焼鈍工程)に示す。
例えば、一例として5.5mmφの圧延ロッド(素材)を使用し、0.90mmφの細線を製造する場合には、図5に示す通り2種類の連続伸線機を使用し、1次伸線と2次伸線との中間に1次焼鈍(1回の光輝焼鈍)を行い、目的の0.90mmφの生産を行なう。図6に、この場合の減面率と強度向上をNi当量21.9注1 について示す。従来のγ系ステンレス線の強度コントロールは全て減面率によってコントロールされており、必要とする強度を生産するには、減面率-強度関係図によりスタートサイズを決め、加工率を算出して製品化を図る。
注1:Ni当量はγ→α´の加工変態の発生状況、即ち、γの安定性について、含有元素の影響を考慮した式で一般には平山の式と呼ばれる式を採用する。Ni当量が大きい程、γは安定している。
平山の式:
Ni当量(%)=Ni(%)+0.65Cr(%)+0.98Mo(%)+1.05Mn(%)+0.35Si(%)+12.6C(%)
一方、γ系ステンレス線のJIS規格には、JIS G 4309(ステンレス鋼線)とJIS G 4314(ばね用ステンレス線)の2つの規格があり、それぞれW1、W2、W1/2HとWPA、WPBの5つの強度規格があり、仲線加工を施す強度規格はW1を除く他の4規格である。サイズ範囲で強度規格を定めている。図7にJIS規格と線径との関係を判り易く図示する。
【0014】
図6は減面率と強度の関係を示した図である。この図から4規格の強度線を作り出すための減面率を求めると、線径にもよるが、減面率20%前後でW2を、40%前後でW1/2Hを70%前後でWPAを82%前後でWPBの規格品の生産が可能となる。しかし、減面率依存の強度規格品の生産には、緻密な対応が必要で、JIS規格のサイズ(線径)は種類が多く、これを全て満たすスタートサイズと伸線加工は複雑そのものです。
【0015】
本発明方法は、上記の従来技術の課題、すなわち減面率依存の強度規格品の生産には、緻密な対応が必要で、JIS規格のサイズ(線径)は種類が多く、これを全て満たすスタートサイズと伸線加工は複雑となるという課題を解消すべくなされたもので、被加工線自体の加工発熱を利用してγ(オーステナイト組織)→α´(マルテンサイト組織)加工変態を減少させ、加工性に優れたγ組織を多く残留させ、加工限界を最高度に延長させ、生産性の向上、コストダウン、更に新製品の開発に寄与させる画期的な技術及び新製品の開発方法を提案するものである。
【0016】
すなわち、γ系ステンレス線は加工を受けるとγ→α´加工変態を起こす特性を有しているが、この加工変態は、加工直前の温度によって顕著に影響を受け、その温度が200℃前後で加工変態は僅かしか起こらない。言い換えると、本発明は、常温加工の1/10程度しか起こらず、強加工を受けても加工性の優れたγ組織を維持し強度向上も半減することに着目してなされたものである。
【0017】
以下、図面を参照して本発明の概要を説明する。なお、ここでの説明は、発明の理解を容易にするために具体的な数値等を提示して説明するが、本件発明がここで説明された具体的な数値、手段等に特定されるものではない。本発明はあくまで特許請求の範囲で特定された発明であり、図面は発明をより具体的に示したものであることを念のため指摘する。
【0018】
本発明に係るダブルダイス伸線法は、通常のダイスボックスを長くし、図1に示す如く、粉末潤滑剤を入れたダイスボックスの中に2個のダイスを、約150mm程度の間隔をあけて設置し、その前に予備加熱ゾーンを配置する。予備加熱(予熱)ゾーンは電熱、潤滑油、熱湯などで加熱を行いダイスボックス内の1個目のダイスに入る線材の温度を50℃~130℃位まで昇温する。
【0019】
これにより、伸線加工を行う場合に発生する、γ→α´加工変態を少しでも軽減させ、更に1枚目のダイスでの加工発熱を加算し、線材が130℃~250℃の加熱をされた状態で2番目のダイスで加熱伸線を実行する。
図8は、1枚目のダイス(No.1ダイス)での減面率と加工発熱温度との関係を示したものである。この図から、No.1ダイスの減面率を適切に制御することにより、所望の加工発熱温度を得ることができる。
【発明の効果】
【0020】
以上説明したように、本発明方法によれば、伸線加工で生じる加工発熱(自己発熱)で生じる熱をそのまま有効に活用できるので、非常に省エネな加熱伸線方法であると云える。もちろん、耐熱潤滑油の開発が進み150℃程度までの潤滑剤油ができればこれを活用してもよい。予備加熱ゾーンとダブルダイス中での温度予測状態を図1の下段に示す。予備加熱温度が、例えば100℃を越えれば、No.1ダイスで発熱した熱を加算した状態、即ちNo.2ダイスに入る前に200℃程度の線温になっている事が期待できる。
【0021】
下記表1は、2個ダイスを1つのダイスボックスに組み込んだ、ダイスボックス(例えば、図1に示すダイブルダイスセット)を連続伸線機に配置し、ダブルダイスセットの1つ目のダイスの減面率を20%、2つ目のダイスの減面率を35%とし、連続伸線機(6H)で伸線を行う場合における総減面率の推移を4種類のスタートサイズ(1.00mm,2.00mm,3.00mm及び5.50mm)で示したものである。
【0022】
【表1】
【0023】
更に、本発明によれば、伸線加工プロセスに於いて加熱伸線と常温伸線のコンビネーション活用で多くのメリットを得ることができる。すなわち、従来の加工減面率による強度支配から、加熱温度による強度支配への画期的生産技術の転換を図ることができる。
また、図9には表1における5.50mmをスタートサイズとした0.77mmまでの伸線(加熱伸線6Pass)の加熱温度毎の引張強度を示す。この表は全てのダイスボックスでダブルダイス・加熱伸線を行った場合であるが、これを応用すれば、連伸機の途中のPassから通常伸線との組み合わせることにより、1つのスタートサイズの線径から任意の仕上がり線径、引張強度の線材を得ることができる等、応用範囲の広い伸線方法であると云える。
そして、本発明に係るγ系ステンレス鋼の製造方法により、請求項1、2に記載された質量%で、C:0.08%以下、Si:1.00%以下、Mn:2.00%以下、P:0.045%以下、S:0.030%以下、Ni:8.0~10.50%、Cr:18.00~20.00%、残部Feの組成(SUS304の組成)を有し、線径0.08mm以上、2.60mm以下で、引張強度が1550N/mm2以上、3500N/mm2以下であって、かつ、30体積%以上、90体積%以下、若しくは40体積%以上、70体積%以下のγ量を有するγ系ステンレス鋼線を製造することができる。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の実施例(実施例1~6)を説明する。
以下に詳述するが、実施例1は、同一母線、同一ダブルダイスセット連伸機、同じ減面率の加工プロセスで加熱温度だけを変えて任意のJIS規格強度線の生産方法に関する実施例である。
実施例2は、同一母線、同一ダブルダイスセット連伸機、同じ減面率加工プロセスで、任意のダブルダイスセットで加熱温度を選択して任意の強度JIS規格品の生産方法である。
実施例3は、高加工減面率化によるワンオペレーション化(熱処理省略、伸線機釜数減少)の実施例である。
実施例4は、加熱伸線法を活用してピアノ線級の高強度線をSUS304で生産する方法の実施例である。
実施例5は、耐疲労強度線の製造方法の実施例である。
そして、実施例6は、引張強度が1,600N/mm以上でγ量が30%以上のSUS304線の製造方法の実施例である。
【実施例0025】
実施例1:同一母線、同一ダブルダイスセット連伸機、同じ減面率の加工プロセスで加熱温度だけを変えて任意のJIS規格強度線の生産方法
ダブルダイス連続伸線機(6釜)を使用し、伸線加工を行った場合の各減面率と加熱温度、引張強度の上昇状況の例を図10に示す。実験結果は、200℃、140℃、80℃の実験結果を示す。
このグラフの右側に線径毎の引張強度の規格値を引張強さの目盛りを一致させている。図10を見るとダブルダイスのセットでの各規格値に適用すべき加熱伸線の温度が判る。今一つの例として、仕上がり線径0.77mmをダブルダイス連伸機6セットで伸線を行う場合を考えてみる。
表1よりスタートサイズは5.50mmを準備する必要がある。図10より0.77mmの4つの規格強度の範囲を読み取り、JIS規格と対比させてそれぞれに適した加熱温度を選択すればよい。この場合の0.77mmのW1/2Hは加熱温度200℃で伸線した場合、WPAは140℃で伸線した場合、WPBは80℃で、伸線すれば3強度規格を全く同じプロセスで伸線したにも拘らず満足させることができる事が可能となる。
この事から分かるように、本発明は、従来から今日なお踏習されている減面率コントロール方式から本発明に係る加熱温度コントリール方式への転換と云える。
【実施例0026】
実施例2:同一母線、同一ダブルダイスセット連伸機、同じ減面率加工プロセスで、任意のダブルダイスセットで加熱温度を選択して任意の強度JIS規格品の生産方法
この生産方法は、図11に示す通り、ダブルダイスセットのNo.毎に加熱温度を選別して目標とする強度を確保する方法である。例えば、W1/2Hを確保する場合には、200℃の加熱伸線を6セット全て採用して伸線、WPBを生産する場合には、200℃の加熱伸線をNo.4のダブルダイスセットまで採用してその後のNo.5~No.6のダブルダイスセットは常温伸線を行う。この場合にはダブルダイスの後のダイスのみを使用し、減面率20%程度の加工で強度の確保を行ってもよい。同じく140℃の加熱伸線をダブルダイスセットNo,5まで採用し、その後は常温伸線を採用してもWPBの生産ができる。
【実施例0027】
実施例3:高加工減面率化によるワンオペレーション化(熱処理省略、伸線機釜数減少)
一般の伸線作業は入り口が大きく出口が小さい円錐状の穴を有するダイスと呼ばれる治具の中に線を通して引き抜き出口の穴の直径が線製品の径になると同時に金属の加工硬化による強度の向上を計る。この場合、加工の程度を表すために、線の断面積の減少具合を各減面率と呼び(1‐(d ÷d ))×100%)で表わし、これを連続して7~8回繰り返して連続伸線を行う。スタートサイズと仕上がり径との断面積減少率を全減面率と呼び、(1‐(d ÷d ))×100%)で表す。
各減面率や全減面率を何%にするかは、線とダイスの摩擦の問題、材質、伸線機の構造など、複雑な要因があり、各メーカーの秘密事項ではあるが、一般的には概ね各減面率は20~25%、全減面率は80~85%程度で、更に細く伸線を必要とする場合には中間焼鈍を行って、軟化させた後再度伸線を行う。
本発明に係るダブルダイス加熱伸線法では、2枚のダイスをセットするダブルダイスセットのNo.1ダイスの減面率を20%程度、No.2ダイスを35%としての6H連続伸線機のPassスケジュールの一例を表1に示す。ダブルダイス加熱伸線法の場合、表1に示す通り、ダブルダイス1セットで計48%の減面率で加工でき、これを3セット設置(計6Pass)すれば85%、5セット設置(計10Pass)すれば96%程度となり、通常の常温伸線の場合の各減免率21%での16ブロックでの連続伸線、連伸機2機種の加工に相当する強加工ができる事になり、しかも、中間焼鈍なしで引き続き伸線できることから、顕著な生産の合理化とコストダウンが可能となる。しかも、被加工線自体の加工発熱を利用することより、誘導加熱装置の活用と比較しても、比較にならない省エネとコストダウンが期待できる
【実施例0028】
実施例4:加熱伸線法を活用してピアノ線級の高強度線をSUS304で生産する方法。
γ系ステンレス鋼線は前述している通り、加工誘起マルテンサイトが加工とともに増加するので強加工はできない。現状ではピアノ線並みの強度をステンレス鋼線で確保するためには、Mnなどの量を増したり、Niの量を減じたりして含有元素を変更しての対処しかできていない。そこで、純粋のSUS304でピアノ線並みの強度を得るために本発明に係る加熱伸線法を活用する。
今、加熱温度を140℃でダブルダイス5セットを用い、伸線加工、96%の全減面率を加えて加工すると引張強度は1,700N/mm程度しか得られないが、残留しているγの量は全体の70%以上もあり、更なる強加工に充分耐え得る状態にある。140℃で96%の全減面率を加えた中間線を再度ダブルダイス伸線機で加工を加えると、図12に示す如く、2回目の伸線で引張強度は2,600N/mm以上を得ることができる。
即ち、従来のSUS304ではせいぜい2,400N/mm迄に対して、本発明を適用することにより更なる強度向上が可能であり、2回目の伸線で得られる2,600N/mmという引張強度の値はピアノ線(WPA)種に充分に匹敵する値である。
このプロセスはほんの一例であり、本発明を適用することにより、加熱伸線と常温伸線の組み合わせ等によってピアノ線以上の強度の確保の可能性は十分に存在する。
【実施例0029】
実施例5:耐疲労強度線の製造
ばね用ステンレス鋼線を生産する場合にγ組織を多量に含有した状態、即ち、加熱伸線を140℃~250℃に加熱して伸線した線は疲労試験に於ける疲労強度が2倍以上もあることが確認された。これを図13に示す。疲労試験に於ける疲労強度が2倍以上もある理由は、疲労破壊を生じる際、亀裂が発生し、その先端が伝播する際に先端部分の応力によってγ→α´変態が生じて硬化し、更なる伝播を防止し、疲労破壊を防ぐためと考えられる。
疲労破壊テストに於ける実験データーによると、常温伸線と140℃の加熱伸線材を比較してみると、常温伸線は引張強度も線径も大きいのに、疲労試験結果では図13に示される通り、加熱伸線材が2倍近くも優れていることが判る。この実施例から、本発明に係る加製伸線材の製法により耐疲労強度線を製造することができることが確認された。
【実施例0030】
実施例6:引張強度が1,600N/mm以上でγ量が30%以上のSUS304線の製造
全減面率50%以上の加工を常温で受けるとSUS304の場合、図14に示すように、組織は全体積の80%以上がα´マルテンサイトで占める。これを強度の点から見ると、図15に示すように、1,500N/mm前後を示す。
即ち、1,600N/mm以上では常温伸線の場合、α´マルテンサイトの量は80%以上、オーステナイト量は20%以下である。これに対し、加熱伸線を行えば、140℃の場合、減面率96%で漸く1,600N/mmに達するが、γの残留は75%以上でα´は25%以下である。
即ち、1,600N/mm以上の高強度でγが75%含有しているのは加熱伸線法により加工した製品であると云うことができる。
なお、表2は、SUS304に含まれる元素を示すが、SUS304は表2に記載された成分以外にも多くの元素を含んでおり、これらの元素はγ→α´加工変態、即ち、γの安定性に影響を与える。更に、各元素の含有量にはそれぞれ許容範囲があり複雑にγ→α´加工変態に影響する。γの安定性に関しては多くの研究があるが、最も一般式として活用されているのが平山の式と呼ばれている。
参考までにこのNi当量の加熱伸線の影響を図16および図17に示す。この図からもわかる通り、常温伸線に於いては明らかにNi当量が加工変態への影響が存在するが、加熱伸線の場合には200℃近傍では、その影響は少なくなり100N/mm程度しかない。また、マルテンサイトも10%程度に抑えることができる。
【0031】
【表2】
【産業上の利用可能性】
【0032】
本発明によれば、γ→α´加工変態を減少させ、加工性に優れたγ組織を多く残留させて加工限界を最高度に延長して伸線加工を行い、生産性の向上、コストダウン、更には新製品の開発に寄与することができるオーステナイトステンレス鋼線の製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
図1】ダブルダイス加熱伸線法概要図
図2】引抜加工とマルテンサイト発生の温度依存性を示す図
図3】加熱温度、引張強度、減免率の関係を示す図
図4】ダブルダイス加熱伸線プロセスを示す図
図5】現状の伸線・焼鈍工程を示す図
図6】減免率と強度との関係を示す図
図7】JIS規格による線径と強度の関係を示す図
図8】No.1ダイスでの減面率と加工加熱温度との関係を示す図
図9】加熱温度、引張強度、減免率の関係を示す図
図10】同一母線、同一ダブルダイスセット連伸機、同じ減免率の加工プロセスで加熱温度だけを変えてJIS規格強度線の生産例を示す図
図11】同一母線、同一ダブルダイスセット連伸機、同じ減免率の加工プロセスで任意のダブルダイスセットの加熱温度を選択して任意のJIS規格強度規格線の生産例を示す図
図12】高強度ステンレス線の生産の一例を示す図
図13】S-N曲線(通常伸線と加熱伸線)を示す図
図14】減免率とマルテンサイト量の関係を示す図
図15】加熱温度、減免率、引張強度の関係を示す図
図16】Ni当量の加熱伸線の影響を示す図(その1)
図17】Ni当量の加熱伸線の影響を示す図(その2)
図1
図2
図3
図4
図5
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図15
図16
図17
【手続補正書】
【提出日】2021-07-27
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
質量%で、C:0.08%以下、Si:1.00%以下、Mn:2.00%以下、P:0.045%以下、S:0.030%以下、Ni:8.0~10.50%、Cr:18.00~20.00%、残部Feの組成を有し、線径0.08mm以上、2.60mm以下で、引張強度が1550N/mm以上、3500N/mm以下であって、かつ、オーステナイト組織と、加工誘起マルテンサイト組織を有し、オーステナイト組織は30体積%以上、90体積%以下であることを特徴とするγ系ステンレス鋼線。
【請求項2】
40体積%以上、70体積%以下のオーステナイト組織を有することを特徴とする請求項1記載のγ系ステンレス鋼線。
【請求項3】
γ系ステンレス鋼母線の伸線加工方向に沿って少なくとも2台の引抜加工治具を前後に配置し、γ系ステンレス鋼線を前段の引抜加工治具に通して伸線加工した後、後段の引抜加工治具で予め設定した所定の加熱温度で加熱伸線加工する工程を複数工程行って請求項1又は2に記載のγ系ステンレス鋼線を製造する方法であって、
後段の引抜加工治具での加熱伸線加工は、前段の引抜加工治具によるγ系ステンレス鋼線の伸線加工により発生した加工熱を利用して、上記所定の加熱温度で伸線加工することを特徴とする請求項1又は2に記載のγ系ステンレス鋼線の製造方法。
【請求項4】
前段の引抜加工治具による伸線加工により、γ系ステンレス鋼線の温度を前段の引抜加工治具による伸線加工前の温度より100℃~250℃昇温することを特徴とする請求項3に記載のγ系ステンレス鋼線の製造方法。
【請求項5】
γ系ステンレス鋼母線の伸線加工方向に沿って少なくとも2台の引抜加工治具を前後に配置し、前記γ系ステンレス鋼線を前段の引抜加工治具に通して伸線加工した後、後段の引抜加工治具で予め設定した所定の加熱温度で加熱伸線加工する工程を複数工程行う際に、少なくとも一部の工程はγ系ステンレス鋼線を前段の引抜加工治具に通す前に、γ系ステンレス鋼線を予備加熱する工程を有することを特徴とする請求項3又は4記載のγ系ステンレス鋼線の製造方法。
【請求項6】
前記予備加熱する工程は、γ系ステンレス鋼母線を50℃以上昇温する工程であることを特徴とする請求項5記載のγ系ステンレス鋼線の製造方法。
【請求項7】
前記予備加熱する工程は、γ系ステンレス鋼母線を50℃~200℃昇温する工程であることを特徴とする請求項6記載のγ系ステンレス鋼線の製造方法。
【請求項8】
予備加熱する工程で加熱されたγ系ステンレス鋼母線を前記前段の引抜加工治具に通して前段の引抜加工治具による伸線加工前の温度より100℃~250℃昇温し、この加熱状態でγ系ステンレス鋼母線を後段の引抜加工治具に所定の加熱温度で通して加熱伸線加工を行うことを特徴とする請求項5~7のいずれか1項に記載のγ系ステンレス鋼線の製造方法。
【請求項9】
請求項3~8の何れか1項に記載のγ系ステンレス鋼線の製造方法に適用される引抜加工治具を収納したダイスボックスであって、伸線加工されるγ系ステンレス鋼母線の入口側から出口側にかけて順に前段の引抜加工治具と後段の引抜加工治具を設置していることを特徴とするダイスボックス。
【請求項10】
請求項5~8の何れか1項に記載のγ系ステンレス鋼線の製造方法に適用される引抜加工治具を収納したダイスボックスであって、伸線加工されるγ系ステンレス母鋼線の入口側から出口側にかけて順に予備加熱手段、前段の引抜加工治具及び後段の引抜加工治具を設置していることを特徴とするダイスボックス。
【請求項11】
予備加熱手段は、直接加熱手段及び/又は間接加熱手段の一種又は二種以上であることを特徴とする請求項10に記載のダイスボックス。
【請求項12】
前段の引抜加工治具を設置した領域及び後段の引抜加工治具を設置した領域に粉末潤滑剤を充填していることを特徴とする請求項9~11のいずれか1項に記載のダイスボックス。