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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022171238
(43)【公開日】2022-11-11
(54)【発明の名称】組織再生促進剤
(51)【国際特許分類】
   A61K 36/60 20060101AFI20221104BHJP
   A61P 17/02 20060101ALI20221104BHJP
   A61P 19/02 20060101ALI20221104BHJP
   A61P 19/08 20060101ALI20221104BHJP
   A23L 33/105 20160101ALI20221104BHJP
【FI】
A61K36/60
A61P17/02
A61P19/02
A61P19/08
A23L33/105
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021077781
(22)【出願日】2021-04-30
(71)【出願人】
【識別番号】000000918
【氏名又は名称】花王株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000084
【氏名又は名称】特許業務法人アルガ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】細川 義人
(72)【発明者】
【氏名】目黒 真一
【テーマコード(参考)】
4B018
4C088
【Fターム(参考)】
4B018LB08
4B018LB10
4B018MD48
4B018MD52
4B018ME14
4B018MF01
4B018MF06
4C088AB34
4C088AC04
4C088CA06
4C088CA11
4C088MA44
4C088NA05
4C088NA14
4C088ZA89
4C088ZA96
(57)【要約】
【課題】組織再生や創傷治癒を促進する、組織再生又は創傷治癒促進剤を提供する。
【解決手段】イチジク又はその抽出物を有効成分とする組織再生又は創傷治癒促進剤。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
イチジク又はその抽出物を有効成分とする組織再生又は創傷治癒促進剤。
【請求項2】
イチジク抽出物を有効成分とする組織再生又は創傷治癒促進用食品。
【請求項3】
イチジク又はその抽出物を有効成分とするマクロファージ遊走促進剤。
【請求項4】
イチジク抽出物を有効成分とするマクロファージ遊走促進用食品。
【請求項5】
イチジクがイチジクの果実である、請求項1若しくは3記載の剤又は請求項2若しくは4記載の食品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、組織再生又は創傷治癒促進剤に関する。
【背景技術】
【0002】
組織が傷害を受けたり欠損を生じたりした場合には、傷害又は欠損組織の残存細胞が増殖して、再生と修復がもたらされる。組織の再生と修復には、マクロファージが大きく関与すると考えられており(非特許文献1、2)、障害箇所へのマクロファージの遊走を増加することやマクロファージの機能を活性化することが重要であるとされている。
老化やスポーツによる軟骨や靱帯の変性、損傷は近年増加の一途をたどっているが、関節に存在する腱、靱帯、軟骨は関節の安定を保つ重要な役割を担う一方で、一度損傷すると自己治癒しにくい特性を有している。国民の30%以上が罹患している変形性関節症などでは、QOL維持又は向上のために組織修復の質的レベルを向上させることが急務とされている。
【0003】
また、日常生活において、切創、刺創等のように創傷を受けることがあり、創傷が軽度の場合には自然治癒力に任せることもできるが、創傷の軽度・重度に拘わらず、創傷部分の治癒がより速く進むことが望ましい。特に、高齢者は、日常の些細な動作でも創傷を受けやすく、若者に比べて創傷の自然治癒の速さが遅い。また、寝たきり状態となった場合には褥瘡(床ずれ)を生じやすい。したがって、専門的な知識を必要とせずに、栄養摂取と共に簡便に創傷治療ができる素材が望まれている。
【0004】
一方、イチジク(Ficus carica L.)は、その果実が食用として広く用いられ、また果実や葉を乾燥したものは、それぞれ無花果、無花果葉と言われ生薬として用いられている。また、イチジクの抽出物には脂肪分解促進作用(特許文献1)や抗インフルエンザウイルス作用(特許文献2)があることも報告されている。
【0005】
しかしながら、イチジクが組織の再生に作用することは全く知られていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2009-242432号公報
【特許文献2】特開2004-059463号公報
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】Wynn, T. A. & Vannella, K. M. Macrophages in Tissue Repair, Regeneration, and Fibrosis. Immunity 44, 450-462 (2016)
【非特許文献2】Forbes and Rosenthal, Nature Medicine, 20, 857-869, 2014
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、組織再生や創傷治癒を促進する、組織再生又は創傷治癒促進剤を提供することに関する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、組織再生を促進する素材を探索したところ、イチジク抽出物に組織の再生を促進する効果があることを見出した。
【0010】
すなわち、本発明は、以下の1)~4)に係るものである。
1)イチジク又はその抽出物を有効成分とする組織再生又は創傷治癒促進剤。
2)イチジク抽出物を有効成分とする組織再生又は創傷治癒促進用食品。
3)イチジク又はその抽出物を有効成分とするマクロファージ遊走促進剤。
4)イチジク抽出物を有効成分とするマクロファージ遊走促進用食品。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、組織再生又は創傷治癒を促進するための医薬品、医薬部外品、食品又はサプリメントを提供することができる。特に、食品又はサプリメントによる組織再生又は創傷治癒促進が可能になるので、高齢者や組織損傷により介護を要する患者に対し、QOL改善に資する新たな手段を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】尾鰭切断後の尾鰭経時変化の様子。xdpa(x day post amputation)は切断後x日目であることを示す。
図2】尾鰭切断後の尾鰭の再生長の変化。xdpa(x day post amputation)は切断後x日目であることを示す。
図3】尾鰭切断後の損傷部へのマクロファージの遊走に対するイチジクの作用。(a)左側:明視野画像、右側:蛍光画像、(b):マクロファージ数。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明において、「イチジク」は、クワ科イチジク属のFicus carica L.を指す。
抽出に用いられるイチジクの部位は、例えば茎、芽、蕾、木質部、樹皮、地衣体、根、根茎、球茎、塊茎、種子、果実等又はそれらの組み合わせであり得るが、果実を用いるのが好ましく、ドライフルーツを用いるのがより好ましい。
本発明に用いるイチジク抽出物の製造方法は、特に限定はなく上記植物部位を公知の方法で抽出することにより得ることができる。本発明では各種抽出溶媒による溶媒抽出法により製造した抽出物が好ましく用いられる。
【0014】
抽出のための溶剤には、極性溶剤、非極性溶剤のいずれをも使用することができる。溶剤の具体例としては、例えば、水;メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール等のアルコール類;プロピレングリコール、ブチレングリコール等の多価アルコール類;アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類;酢酸メチル、酢酸エチル等のエステル類;テトラヒドロフラン、ジエチルエーテル等の鎖状及び環状エーテル類;ポリエチレングリコール等のポリエーテル類;スクワラン、ヘキサン、シクロヘキサン、石油エーテル等の炭化水素類;トルエン等の芳香族炭化水素類;ジクロロメタン、クロロホルム、ジクロロエタン等のハロゲン化炭化水素類;及び超臨界二酸化炭素;ピリジン類;油脂、ワックス等その他オイル類等の有機溶剤;並びにこれらの混合物が挙げられる。好適には、水、アルコール類、アルコール類-水混合液が挙げられ、アルコール類-水混合液がより好ましい。アルコール類としては、エタノールが好ましい。
また、アルコール類-水混合液は、任意の割合で混合して使用することができるが、好ましくはアルコール類の割合が50~99.9%の混合液(20℃におけるv/v%)であり、より好ましくは75~99.8%の混合液であり、より更に好ましくは90~99.7%の混合液である。
【0015】
抽出溶媒の使用量は、十分な抽出効率が得られる条件であれば特に限定されないが、例えば、イチジク乾燥物に対して2~60質量倍が好ましく、更に好ましくは3~30質量倍、最も好ましくは5~15質量倍である。
抽出条件は、十分な抽出効率が得られる条件であれば特に限定されない。抽出温度は、0℃以上、使用する溶媒の沸点以下で実施することが好ましく、より好ましくは室温であるが、抽出温度が高温になればより短時間で抽出が可能である。抽出期間(時間)は、例えば、40℃以上に加熱して抽出する場合には10分~1日が好ましく、例えば、40~50℃で12~24時間、50~60℃で2~12時間、60~70で10分~2時間が挙げられる。また、40℃以下で抽出する場合には1日~30日が好ましく、より好ましくは7日~21日である。例えば、40~30℃で1~7日、30~20℃で7~21日、20~10℃で21~30日が挙げられる。さらに好ましくは、室温で、7~14日である。
【0016】
抽出手段は、特に限定されないが、例えば、固液抽出、液液抽出、浸漬、煎出、浸出、還流抽出、加圧加熱抽出、蒸留、超臨界抽出等の通常の手段を用いることができる。
【0017】
本発明のイチジク抽出物は、例えば食品や医薬品上許容し得る規格に適合し、本発明の効果を発揮するものであれば粗精製物であってもよい。また、必要に応じて、液液分配、固液分配、活性炭処理、イオン交換樹脂処理、等の公知の技術によって不活性な夾雑物の除去、脱臭、脱色等の処理を施すことができる。
また、さらに公知の分離精製方法を適宜組み合わせて、ある特定成分(画分)の濃度・割合を高めてもよい(例えば、限外濾過膜分離により、分子量10kD以上の画分を除去する等)。精製手段としては、有機溶剤沈殿、遠心分離、限界濾過膜分離、高速液体クロマトグラフやカラムクロマトグラフ等が挙げられる。
【0018】
本発明において、上記の抽出物はそのまま用いることもできるが、当該抽出物を希釈、濃縮若しくは凍結乾燥した後、粉末又はペースト状に調製して用いることもできる。また、凍結乾燥し、用時に、通常抽出に用いられる溶剤、例えば水、エタノール、プロピレングリコール、水-エタノール混液、水-プロピレングリコール混液、水-1,3-ブチレングリコール混液等の溶剤で溶解・希釈して用いることもできる。また、リポソーム等のベシクルやマイクロカプセル等に内包させて用いることもできる。
【0019】
後記実施例に示すように、イチジク抽出物は、ゼブラフィッシュにおける尾鰭切断後の尾鰭の再生を促進する。また、イチジク抽出物は、当該尾鰭切断部位へのマクロファージの遊走を促進する。
【0020】
尾鰭のような付属肢を切断したゼブラフィッシュは、組織再生モデルとして知られており(Nguyen-Chi M et al., British Jornal of Pharmacology, Volume 177, Issue 17, 2020)、当該モデルにおいて付属肢の再生が促進され、また当該切断部へマクロファージの遊走が促進されたことは、組織再生が促進されたことを意味する。
【0021】
したがって、本発明のイチジク又はその抽出物は、組織再生又は創傷治癒促進剤、マクロファージ遊走促進剤となり得、また、組織再生又は創傷治癒促進剤を製造するため、マクロファージ遊走促進剤を製造するために使用することができる。すなわち、本発明のイチジク又はその抽出物は、組織再生又は創傷治癒を促進するため、又はマクロファージ遊走を促進するために使用することができる。ここで、使用は、治療的使用であっても非治療的使用であってもよい。「非治療的」とは、医療行為を含まない概念、すなわち人間を手術、治療又は診断する方法を含まない概念、より具体的には医師又は医師の指示を受けた者が人間に対して手術、治療又は診断を実施する方法を含まない概念である。
【0022】
本発明において、「組織再生」とは、細胞の死滅や組織欠損により障害を生じた組織が、残存する細胞の増生(増殖及び分化)によって再構築されることを意味する。ここで、組織としては、例えば、骨格筋、心筋等の筋組織、血管組織、腱、靱帯、軟骨等の結合組織、骨、肝臓、グリア細胞等が挙げられる。
【0023】
また、「創傷治癒」とは、損傷した組織又は細胞、主として真皮、血管、軟骨、上皮細胞、線維芽細胞等が、再生及び/又は修復することを意味する。ここで、創傷には、外的、内的要因によって生じる物理的な損傷が包含され、具体的には、例えば、切創、裂創、刺創、咬創、擦過傷、銃創、挫傷、熱傷、褥瘡、潰瘍、化学損傷等が挙げられるが、これらに限定されない。
「マクロファージ遊走促進」とは、損傷部へのマクロファージの浸潤を促進することを指し、それにより壊死組織の貪食が進むことを包含する。
【0024】
本発明の組織再生又は創傷治癒促進剤及びマクロファージ遊走促進剤は、それ自体、組織再生又は創傷治癒促進効果を発揮する医薬品、医薬部外品又は食品となり、或いはこれらへ配合するための素材又は製剤となり得る。
なお、上記の食品(「組織再生又は創傷治癒促進用食品」、「マクロファージ遊走促進用食品」とも称す)には、一般飲食品のほか、必要に応じてその旨を表示した食品、機能性食品、病者用食品、特定保健用食品、機能性表示食品、サプリメントが包含される。
【0025】
本発明のイチジク又はその抽出物を含む上記医薬品(医薬部外品を含む)は、任意の投与形態で投与され得るが、経口投与が好ましい。投与に際しては、有効成分を経口投与、直腸内投与、注射等の投与方法に適した固体又は液体の医薬用無毒性担体と混合して、慣用の医薬品製剤の形態で投与することができる。
【0026】
このような製剤としては、例えば、錠剤、顆粒剤、散剤、カプセル剤等の固形剤、溶液剤、懸濁剤、乳剤等の液剤、凍結乾燥剤等が挙げられる。これらの製剤は、安定化剤、湿潤剤、乳化剤、結合剤、等張化剤、賦形剤等の慣用の添加剤を適宜添加し、製剤上の常套手段により調製することができる。
【0027】
また、本発明のイチジク又はその抽出物を配合した上記食品の形態は、清涼飲料水、茶系飲料、コーヒー飲料、果汁飲料、炭酸飲料、ゼリー、ウエハース、ビスケット、パン、麺、ソーセージ等の飲食品や栄養食等の各種食品の他、さらには、上述した経口投与製剤と同様の形態(錠剤、カプセル剤、トローチ剤等の固形製剤)の栄養補給用組成物が挙げられる。なかでも、錠剤が好ましい。
種々の形態の食品は、本発明のイチジク又はその抽出物を単独で、又は他の食品材料や、溶剤、軟化剤、油、乳化剤、防腐剤、香科、安定剤、着色剤、酸化防止剤、保湿剤、増粘剤等を適宜組み合わせて調製することができる。
【0028】
上記の医薬品(医薬部外品を含む)や食品中のイチジク又はその抽出物の含有量は、その使用形態により異なるが、その乾燥物(例えば、天日で1週間~1.5週間乾燥させた乾燥物)換算で、好ましくは0.001質量%以上、より好ましくは0.01質量%以上、且つ好ましくは10質量%以下、より好ましく5質量%以下であり、また好ましくは0.001~10質量%、より好ましくは0.01~5質量%である。
【0029】
上記の医薬品(医薬部外品を含む)や食品の投与量又は摂取量は、対象者の状態、体重、性別、年齢又はその他の要因に従って変動し得るが、経口投与又は摂取の場合、成人(体重60Kg)1人当たり、イチジクとして、1日あたり乾燥物換算で、好ましくは10g以上、より好ましくは30g以上で、且つ好ましくは50g以下、より好ましくは45g以下である、また、好ましくは10~50g、より好ましくは30~45gである。また、イチジク抽出物としては、1日あたり乾燥物換算で、好ましくは1g以上、より好ましくは4g以上で、且つ好ましくは30g以下、より好ましくは10g以下である、また、好ましくは1~30g、より好ましくは4~10gである。
【0030】
本発明の組織再生又は創傷治癒促進剤、又はマクロファージ遊走促進剤を摂取又は投与する対象者としては、例えば、事故や転倒、外傷等によって組織(腱、靱帯、軟骨、骨、筋肉等)を損傷又は喪失したヒトが挙げられる。
【0031】
上述した実施形態に関し、本発明においてはさらに以下の態様が開示される。
<1>イチジク又はその抽出物を有効成分とする組織再生又は創傷治癒促進剤。
<2>イチジク抽出物を有効成分とする組織再生又は創傷治癒促進用食品。
<3>イチジク又はその抽出物を有効成分とするマクロファージ遊走促進剤。
<4>イチジク抽出物を有効成分とするマクロファージ遊走促進用食品。
【0032】
<5>組織再生又は創傷治癒促進剤を製造するための、イチジク又はその抽出物の使用。
<6>組織再生又は創傷治癒促進用食品を製造するための、イチジク抽出物の使用。
<7>マクロファージ遊走促進剤を製造するための、イチジク又はその抽出物の使用。
<8>マクロファージ遊走促進用食品を製造するための、イチジク抽出物の使用。
【0033】
<9>組織再生又は創傷治癒を促進するための、イチジク又はその抽出物。
<10>マクロファージの遊走を促進するための、イチジク又はその抽出物。
【0034】
<11>組織再生又は創傷治癒を促進する、イチジク抽出物の非治療的使用。
<12>マクロファージの遊走を促進する、イチジク抽出物の非治療的使用。
【0035】
<13>イチジク又はその抽出物を、必要な対象に摂取又は投与する、組織再生又は創傷治癒促進方法。
<14>イチジク又はその抽出物を、必要な対象に摂取又は投与する、マクロファージ遊走促進方法。
【0036】
<15><1>~<14>において、イチジクは好ましくはイチジクの果実である。
<16><1>~<14>において、抽出物は好ましくはアルコール類-水混合液、好ましくは50~99.9V/V%のアルコール類-水混合液抽出物である。
<17><1>~<8>のいずれかの剤又は食品において、イチジク又はその抽出物の含有量は、その乾燥物換算で、好ましくは0.001質量%以上、より好ましくは0.01質量%以上、且つ好ましくは10質量%以下、より好ましく5質量%以下であるか、又は0.001~10質量%、より好ましくは0.01~5質量%である。
<18><1>~<14>において、イチジク又はその抽出物、又はこれを含有する医薬品(医薬部外品を含む)又は食品の投与又は摂取量は、経口投与又は摂取の場合、成人(体重60Kg)1人当たり、イチジクとして、1日あたり乾燥物換算で、好ましくは10g以上、より好ましくは30g以上で、且つ好ましくは50g以下、より好ましくは45g以下であり、また、好ましくは10~50g、より好ましくは30~45gである。また、イチジク抽出物としては、1日あたり乾燥物換算で、好ましくは1g以上、より好ましくは4g以上で、且つ好ましくは30g以下、より好ましくは10g以下であり、また、好ましくは1~30g、より好ましくは4~10gである。
【実施例0037】
製造例1 イチジク抽出物の調製
クワ科イチジク〔Ficus carica L.〕のドライフルーツ(天日乾燥果実)500gを、ハサミを用いて1/4大に裁断した後、99.5V/V%(20℃)エタノール5Lを加え、室温、静置下で、8日間浸漬した。その後、ろ過により抽出残渣と分離した後、抽出液を減圧にて濃縮した。さらに、本濃縮物にイオン交換水を加え希釈した後、凍結乾燥した。これにより、イチジク抽出物99gを得た。
【0038】
実施例1 付属肢切断後の付属肢再生に対するイチジク抽出物の影響
5日齢ゼブラフィッシュの尾鰭を切断し、その切断された尾鰭の再生に対するイチジク抽出物の効果を検証した。個体は麻酔処置し、実体顕微鏡下においてメスを用い脊索より尾側の鰭を脊索と直角に切断し、写真撮影を行った。撮影後の個体を飼育水の入った24well plateの各wellに1匹ずつ入れ、10分程度置き麻酔から回復させた。試験群を対照群(n=12)、0.05W/V%イチジク抽出物群(n=12)、0.5W/V%イチジク抽出物群(n=11)の3群に分け、回復後、wellに粉末飼料(ひかりラボ130、キョーリン)を入れて飼育水を各試験溶液に交換した。イチジク抽出物の溶媒には0.2V/V%DMSOの飼育水を用い、対照群にはその溶媒を試験水に用いた。以降毎日麻酔処置した後尾鰭の撮影を行い、元の試験溶液内で回復させた後粉末飼料を加え新しい試験溶液との交換を行った。
各群の代表的な個体の尾鰭経時変化の様子を図1に示す。切断後何日目であるかをxdpa(x day post amputation)として表記した。また、尾鰭の再生長(Outgrowth)の変化を図2に示す。各個体の尾鰭の長さを脊索から脊索と並行に尾鰭の先端部までとし、各観察時点(xdpa)での再生長はxdpaの尾鰭の長さから0dpaの尾鰭の長さを引いたもので評価した。長さの測定にはImageJ Fijiを利用した。
対照群と比較しイチジク抽出物で処置をした群は切断後の尾鰭の再生が有意に促進され、0.5W/V%イチジク抽出物群で特に強い効果が確認された。統計にはDunnett検定を用い、有意水準はp<0.05とした。
【0039】
実施例2 損傷部へのマクロファージの遊走に対するイチジク抽出物の影響
5日齢ゼブラフィッシュの尾鰭を切断し、切断部近辺へのマクロファージの遊走に対するイチジク抽出物の効果を検証した。マクロファージ観察のために、マクロファージに特異的に発現するMpeg1遺伝子のプロモーター下流で単量体Red fluorescent protein(TagRFP)が発現するトランスジェニックゼブラフィッシュTg(mpeg1:mRFP)を用いた。実施例1と同様の方法で尾鰭の切断、写真撮影、給餌、試験水への暴露を行った。群は対照群(n=7)及び0.5W/V%イチジク抽出物群(n=5)の2群とした。図3(a)の左側に明視野、右側に蛍光画像を示す。白枠で示す脊索の先端以降の領域を切断部近辺とし、この中の尾鰭に存在するRFP陽性細胞をマクロファージとして、その数を計測した。計測はImageJ Fijiで行った。
対照群と比較し、0.5W/V%イチジク抽出物群では2dpaにおける切断部近辺に存在するマクロファージの数が有意に上昇していた(図3(b))。統計にはT検定を用い、有意水準はp<0.05とした。
図1
図2
図3