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特開2022-171242歯科治療計画の手技前検証システム、歯科治療計画の手技前検証プログラム、歯科治療計画の手技前検証用の模型の製造方法、及び、歯科治療計画の手技前検証用の模型
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022171242
(43)【公開日】2022-11-11
(54)【発明の名称】歯科治療計画の手技前検証システム、歯科治療計画の手技前検証プログラム、歯科治療計画の手技前検証用の模型の製造方法、及び、歯科治療計画の手技前検証用の模型
(51)【国際特許分類】
   A61C 8/00 20060101AFI20221104BHJP
   A61C 13/34 20060101ALI20221104BHJP
【FI】
A61C8/00 Z
A61C13/34
【審査請求】有
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021077789
(22)【出願日】2021-04-30
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2022-06-27
(71)【出願人】
【識別番号】521190831
【氏名又は名称】株式会社ルッキン
(74)【代理人】
【識別番号】100108855
【弁理士】
【氏名又は名称】蔵田 昌俊
(74)【代理人】
【識別番号】100103034
【弁理士】
【氏名又は名称】野河 信久
(74)【代理人】
【識別番号】100179062
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 正
(74)【代理人】
【識別番号】100153051
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100199565
【弁理士】
【氏名又は名称】飯野 茂
(74)【代理人】
【識別番号】100162570
【弁理士】
【氏名又は名称】金子 早苗
(72)【発明者】
【氏名】吉橋 典章
【テーマコード(参考)】
4C159
【Fターム(参考)】
4C159AA55
4C159AA56
(57)【要約】
【課題】 例えばインプラント体や自家歯牙などの埋設体の埋設治療を行うとき、実際の手技器具を用いた歯科治療の前に、歯科医師が治療計画を事前検証可能な、歯科治療計画の手技前検証システムを提供すること。
【解決手段】 手技前検証システムは、患者の治療対象部位及びその周囲の歯及び歯茎の表面の第1の表面データから、埋設体の表面の第2の表面データ及び手技器具の表面の第3の表面データの少なくとも一方を引いて、孔を含む治療対象部位と、ターゲットの第4の表面データとの位置関係を示す第5の表面データを作成し、第5の表面データを出力可能である。
【選択図】 図18
【特許請求の範囲】
【請求項1】
制御装置と、
前記制御装置により制御され、患者の顎部の治療対象部位を含む3次元立体画像を表示させる表示部と、
前記制御装置により制御され、前記制御装置に対する、
前記患者の顎部の3次元立体画像において、前記患者の治療対象部位と、前記治療対象部位に対する治療時に用いる、複数から選択される手技器具の先端とを非接触とする又は接触させるターゲットとを特定する処理指示、
前記3次元立体画像において、前記治療対象部位に埋設する埋設体に関するパラメータと、前記手技器具に関するパラメータとの少なくとも一方を設定、又はインストールして、前記埋設体を埋設するための凹孔を模す孔を設定する処理指示、及び、
前記治療対象部位及びその周囲の歯及び歯茎の表面の第1の表面データから、前記埋設体の表面の第2の表面データ、及び、前記手技器具の表面の第3の表面データの少なくとも一方を引いて、前記孔を含む前記治療対象部位と、前記ターゲットの第4の表面データとの位置関係を示す第5の表面データを作成する処理指示、
が入力される指示入力部と、
を備え、
前記制御装置は、前記処理指示に基づく処理を行うとともに、前記第5の表面データを出力可能である、
歯科治療計画の手技前検証システム。
【請求項2】
前記指示入力部には、前記第1の表面データと、前記第2の表面データ及び前記第3の表面データの少なくとも一方と、前記第4の表面データとを所定の座標系上で重ね合わせる処理指示が入力される、請求項1に記載の手技前検証システム。
【請求項3】
前記指示入力部には、前記患者の3次元立体画像データにおける前記孔に対し3次元立体画像データにおける前記手技器具が嵌まり、前記3次元立体画像において前記手技器具が前記孔に挿入されたときに、前記手技器具が前記ターゲットに対して離間するように前記パラメータが設定又はインストールされる、請求項1又は請求項2に記載の歯科治療計画の手技前検証システム。
【請求項4】
前記指示入力部には、前記患者の3次元立体画像データにおける前記孔に対し3次元立体画像データにおける前記手技器具が嵌まり、前記3次元立体画像において前記手技器具が前記孔に挿入されたときに、前記手技器具が前記ターゲットに対して接触するように前記パラメータが設定又はインストールされる、請求項1又は請求項2に記載の歯科治療計画の手技前検証システム。
【請求項5】
前記手技器具に関するパラメータは、前記手技器具の形状、角度、位置に関する情報を含む、請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載の手技前検証システム。
【請求項6】
前記指示入力部には、前記第5の表面データに基づく3次元画像に対し前記手技器具を案内する位置規定体の3次元画像を所定の座標系上で重ね合わせる処理指示が入力される、請求項1乃至請求項5のいずれか1項に記載の手技前検証システム。
【請求項7】
前記埋設体に関するパラメータは、インプラント体の形状、角度、位置、自家歯牙埋設用の自家歯牙の形状、角度、位置、又は、再生医療における細胞組織の形状、位置に関する情報を含む、請求項1乃至請求項6のいずれか1項に記載の手技前検証システム。
【請求項8】
前記第5の表面データに基づいて、歯科治療計画の手技前検証用の模型を出力する3Dプリンタを備える、請求項1乃至請求項7のいずれか1項に記載の手技前検証システム。
【請求項9】
患者の顎部の3次元立体画像データにおいて、前記患者の治療対象部位と、前記治療対象部位に対する治療時に用いる、複数から選択される手技器具の先端とを非接触とする又は接触させるターゲットとを特定する第1の処理、
前記3次元立体画像データにおいて、前記治療対象部位に埋設する埋設体に関するパラメータと、前記手技器具に関するパラメータとの少なくとも一方を設定、又はインストールして、前記埋設体を埋設するための凹孔を模す孔を設定する第2の処理、
前記治療対象部位及びその周囲の歯及び歯茎の表面の第1の表面データから、前記埋設体の表面の第2の表面データ及び前記手技器具の表面の第3の表面データの少なくとも一方を引いて、前記孔を含む前記治療対象部位と、前記ターゲットの第4の表面データとの位置関係を示す第5の表面データを作成する第3の処理、及び、
前記第5の表面データを出力する第4の処理、
をコンピュータに実行させる、歯科治療計画の手技前検証プログラム。
【請求項10】
前記第2の処理において、前記第1の表面データと、前記第2の表面データ及び前記第3の表面データの少なくとも一方と、前記第4の表面データとを所定の座標系上で重ね合わせる、請求項9に記載の手技前検証プログラム。
【請求項11】
前記第2の処理と前記第3の処理との間において、前記手技器具を案内する位置規定体の3次元立体画像データを所定の座標系上で重ね合わせる第5の処理を前記コンピュータにさらに実行させる、請求項9又は請求項10に記載の手技前検証プログラム。
【請求項12】
患者の顎部の3次元立体画像において、前記患者の治療対象部位と、前記治療対象部位に対する治療時に用いる、複数から選択される手技器具の先端とを非接触とする又は接触させるターゲットとを特定すること、
前記3次元立体画像において、前記治療対象部位に埋設する埋設体に関するパラメータと、前記手技器具の長さ、外径、角度、位置に関するパラメータとの少なくとも一方を設定又はインストールして、前記埋設体を埋設するための凹孔を模す孔を設定すること、
前記患者の治療対象部位及びその周囲の歯及び歯茎の表面の第1の表面データから、前記埋設体の表面の第2の表面データ、及び、前記手技器具の表面の第3の表面データの少なくとも一方を引いて、前記孔を含む前記治療対象部位と、前記ターゲットの第4の表面データとの位置関係を示す第5の表面データに基づく3次元画像を作成すること、
を含む、歯科治療計画の手技前検証用の模型の製造方法。
【請求項13】
前記第5の表面データに基づいて、前記患者の治療対象の歯、歯茎、及び、前記歯茎に覆われる歯槽骨の少なくとも一部と同じ大きさ及び同じ形状で、前記患者の治療対象の歯、歯茎、及び、歯槽骨の少なくとも一部を模す模型本体と、前記患者の治療対象の前記歯槽骨に隣接又は埋設され、治療時に複数から選択される前記手技器具の先端を非接触とする又は接触させる前記ターゲットを模し、前記患者の治療対象の歯、歯茎、及び、歯槽骨と前記ターゲットとの位置関係と同じ位置関係に、前記模型本体に設けられる、ターゲット模型部とを有する模型を造形することを含む、請求項12に記載の製造方法。
【請求項14】
前記第5の表面データを作成することは、前記ターゲットを支持し、前記模型本体とは反対側に設けられる基部と、前記模型本体と前記基部とを接続する支柱との表面データを作成することを含む、請求項13に記載の製造方法。
【請求項15】
請求項8に記載の手技前検証システムを用いて作成される模型であって、
前記患者の顎部の3次元立体画像に基づいて形成され、前記患者の治療対象の歯、歯茎、及び、前記歯茎に覆われる歯槽骨の少なくとも一部と同じ大きさ及び同じ形状で、前記患者の治療対象の歯、歯茎、及び、歯槽骨の少なくとも一部を模す模型本体と、
前記患者の3次元立体画像に基づいて形成され、前記患者の治療対象の前記歯槽骨に隣接又は埋設され、治療時に複数から選択される前記手技器具の先端を非接触とする又は接触させる前記ターゲットを模し、前記患者の治療対象の歯、歯茎、及び、歯槽骨と前記ターゲットとの位置関係と同じ位置関係に、前記模型本体に設けられる、ターゲット模型部と、
前記患者の3次元立体画像に基づいて、前記模型本体における前記患者の治療対象の歯茎及び歯槽骨を模した位置に、前記治療対象に対する前記埋設体を埋設可能な前記孔を模して形成され、前記患者の3次元立体画像における前記孔に対し3次元立体画像における前記手技器具が嵌まり、前記3次元立体画像において前記手技器具が前記孔に挿入されたときに、前記手技器具と前記ターゲットとの間の位置関係を歯科医師に視認可能とする、孔部と
を有する、歯科治療計画の手技前検証用の模型。
【請求項16】
請求項8に記載の手技前検証システムを用いて作成される模型であって、
前記患者の3次元立体画像データに基づいて形成され、前記患者の治療対象の歯茎及び歯槽骨を模した位置に、前記治療対象に対する前記埋設体を埋設可能な前記孔を模して形成され、前記患者の3次元立体画像データにおける前記孔に対し3次元立体画像データにおける前記手技器具が嵌まり、前記3次元立体画像データにおいて前記手技器具が前記孔に挿入されたときに、前記手技器具が前記ターゲットに対して離間又は当接する孔部を規定する規定面と、
前記患者の3次元立体画像データに基づいて形成され、前記患者の治療対象の前記歯槽骨に隣接又は埋設され、治療時に複数から選択される前記手技器具の先端を非接触とする又は接触させる前記ターゲットを模し、前記患者の治療対象の歯、歯茎、及び、歯槽骨と前記ターゲットとの位置関係と同じ距離に離間する位置関係に形成し、又は前記患者の治療対象の歯、歯茎、及び、歯槽骨と前記ターゲットとの間を前記位置関係よりも小さくするように形成する、ターゲット模型部と、
を有する、歯科治療計画の手技前検証用の模型。
【請求項17】
患者の顎部の3次元立体画像に基づいて形成され、前記患者の治療対象の歯、歯茎、及び、前記歯茎に覆われる歯槽骨の少なくとも一部と同じ大きさ及び同じ形状で、前記患者の治療対象の歯、歯茎、及び、歯槽骨の少なくとも一部を模す模型本体と、
前記患者の3次元立体画像に基づいて形成され、前記患者の治療対象の前記歯槽骨に隣接又は埋設され、治療時に複数から選択される手技器具の先端を非接触とする又は接触させるターゲットを模し、前記患者の治療対象の歯、歯茎、及び、歯槽骨と前記ターゲットとの位置関係と同じ位置関係に、前記模型本体に設けられる、ターゲット模型部と、
前記患者の3次元立体画像に基づいて、前記模型本体における前記患者の治療対象の歯茎及び歯槽骨を模した位置に、前記治療対象に対する埋設体を埋設可能な孔を模して形成され、前記患者の3次元立体画像における前記孔に対し3次元立体画像における前記手技器具が嵌まり、前記3次元立体画像において前記手技器具が前記孔に挿入されたときに、前記手技器具と前記ターゲットとの間の位置関係を歯科医師に視認可能とする、孔部と
を有する、歯科治療計画の手技前検証用の模型。
【請求項18】
前記ターゲットを支持し、前記模型本体とは反対側に設けられる基部と、
前記模型本体と前記基部とを接続する支柱と
を有する、請求項17に記載の模型。
【請求項19】
前記模型本体は、前記歯槽骨を模した位置の少なくとも一部を透明に形成する、請求項17又は請求項18に記載の模型。
【請求項20】
患者の3次元立体画像データに基づいて形成され、前記患者の治療対象の歯茎及び歯槽骨を模した位置に、前記治療対象に対する埋設体を埋設可能な孔を模して形成され、前記患者の3次元立体画像データにおける前記孔に対し3次元立体画像データにおける手技器具が嵌まり、前記3次元立体画像データにおいて前記手技器具が前記孔に挿入されたときに、前記手技器具がターゲットに対して離間又は当接する孔部を規定する規定面と、
前記患者の3次元立体画像データに基づいて形成され、前記患者の治療対象の前記歯槽骨に隣接又は埋設され、治療時に複数から選択される前記手技器具の先端を非接触とする又は接触させるターゲットを模し、前記患者の治療対象の歯、歯茎、及び、歯槽骨と前記ターゲットとの位置関係と同じ距離に離間する位置関係に形成し、又は前記患者の治療対象の歯、歯茎、及び、歯槽骨と前記ターゲットとの間を前記位置関係よりも小さくするように形成する、ターゲット模型部と、
を有する、歯科治療計画の手技前検証用の模型。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、歯科治療計画の手技前検証システム、歯科治療計画の手技前検証プログラム、歯科治療計画の手技前検証用の模型の製造方法、及び、歯科治療計画の手技前検証用の模型に関する。
【背景技術】
【0002】
例えばインプラント治療において、通常、術者である歯科医師は、歯科用CTスキャンを用いて、患者の治療位置を含む、上顎及び/又は下顎の3次元画像データを得る。歯科医師は、3次元画像データに基づいて、治療位置に加えて、患者の上顎の上顎洞の位置、後上歯槽動脈、及び、大口蓋動脈の位置、又は、患者の下顎の下歯槽動脈及び下歯槽神経の位置を手技前に把握する。
そして、歯科医師は、例えばインプラント治療において、治療対象が上顎であれば、ドリルなどの穴形成器具の先端を、所定の非到達(非接触)ターゲットとして患者の上顎洞粘膜、後上歯槽動脈、及び、大口蓋動脈などに到達させないように手技を行う。また、歯科医師は、治療対象が下顎であれば、ドリルなどの穴形成器具の先端を、所定の非到達ターゲットとして患者の下歯槽動脈及び下歯槽神経に到達させないように手技を行う。
例えばインプラント治療において、治療計画通りに骨に凹孔を形成するために、ドリルを案内するサージカルガイドが使用されることがある。サージカルガイドは、患者の上顎及び/又は下顎の3次元画像データに基づいて形成される。サージカルガイドは、患者の歯及び歯茎に嵌めて使用される。サージカルガイドは、歯科医師による手技時、インプラント体の埋設用の穴を形成するときの穴の位置、方向、径等を、治療計画の通りに形成可能とする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特表2017-508595号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
例えばインプラント治療における危険性は、動脈や神経等の非到達ターゲットの位置を手技のときに目視できないことである。
インプラント治療の治療計画の作成(サージカルガイドの作成を含む)は、現状、歯科医師が取得した患者のCT画像データ(DICOMデータ)から、例えばインプラントのメーカーが持つシステムを用いてメーカーの技術者が行うことが多い。歯科医師は、メーカーの技術者が作成した治療計画を検討する。しかし、歯科医師は治療計画の作成時に作成現場におらず、また、歯科医師がメーカーが作成した治療計画の修正時に使用可能なツールは限られている。対象が3次元的であるため、歯科医師がインプラント体の選定、インプラント体を埋設する凹孔の内径、位置、角度等の僅かな調整、器具選択といった治療計画の細かな指示を歯科医師の意図通りに行うことが難しい。
本来であれば、インプラント治療の治療計画の作成から実際の治療まで、歯科医師が責任をもって行うべきである。そして、メーカーの技術者が作成した治療計画において例えば穴形成器具の各種パラメータの選択ミス等があったとしたときに、歯科医師が気づかずに誤った治療計画の通りに手技を行ってしまう可能性を排除することは難しい。
【0005】
この発明は、例えばインプラント体の埋設治療や自家歯牙等の埋設体の埋設治療を行うとき、治療計画を作成した後、実際の穴形成器具などの手技器具を用いた歯科治療の前に、その手技器具を用いたときの手技器具の先端位置と、患者の上顎の上顎洞粘膜、後上歯槽動脈、及び、大口蓋動脈の位置、又は、下顎の下歯槽動脈及び下歯槽神経の位置などの非到達ターゲット位置との位置関係を術者である歯科医師が事前検証可能な、歯科治療計画の手技前検証システム、歯科治療計画の手技前検証プログラム、歯科治療計画の手技前検証用の模型の製造方法、及び、歯科治療計画の手技前検証用の模型を提供し、可能な限り歯科医師自身が設計、器具選択、治療計画の安全性の確認を行い、最良の治療計画を実現することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様に係る歯科治療計画の手技前検証システムは、制御装置と、表示部と、指示入力部とを備える。表示部は、前記制御装置により制御され、患者の顎部の治療対象部位を含む3次元立体画像を表示させる。指示入力部は、前記制御装置により制御される。指示入力部には、前記制御装置に対する、前記患者の顎部の3次元立体画像において、前記患者の治療対象部位と、前記治療対象部位に対する治療時に用いる、複数から選択される手技器具の先端を非接触とする又は接触させるターゲットとを特定する処理指示、前記3次元立体画像において、前記治療対象部位に埋設する埋設体に関するパラメータ、及び、手技器具に関するパラメータの少なくとも一方を設定又はインストールして、前記埋設体を埋設するための凹孔を模す孔を設定する処理指示、及び、前記患者の治療対象部位及びその周囲の歯及び歯茎の表面の第1の表面データから、前記埋設体の表面の第2の表面データを引いて、前記孔を含む前記治療対象部位と、前記ターゲットの第3の表面データとの位置関係を示す第4の表面データを作成する処理指示、が入力される。前記制御装置は、前記処理指示に基づく処理を行うとともに、前記第4の表面データを出力可能である。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】第1実施形態及び第2実施形態に係る歯科治療計画事前検証システムのブロック図。
図2】インプラント体の一例を示す概略図。
図3】穴形成器具の一例を示す概略図。
図4A】第1実施形態に係る歯科治療計画事前検証用の模型を示す概略図。
図4B図4Aとは異なる方向から見た模型を示す概略図。
図4C】第1実施形態の変形例に係る歯科治療計画事前検証用の模型を示す概略図。
図5】第1実施形態に係るサージカルガイドを示す概略図。
図6】インプラント治療の治療計画を示すフローチャート。
図7図6に続くインプラント治療の治療計画を示すフローチャート。
図8】下歯槽骨を示す第1の3次元画像データに対し非到達ターゲットの位置をマーキングした第3の3次元画像データを重ねた状態を示す図。
図9図8に、さらに、インプラント体の第4の3次元画像データを重ねた状態を示す図。
図10図9に、さらに歯及び歯茎の第2の3次元画像データ及び穴形成器具の第5の3次元画像データを重ねた状態を示す図。
図11】サージカルガイドの第6の3次元画像データを示す図。
図12】下顎にサージカルガイドを取り付けた状態での、歯茎、歯、下歯槽骨、インプラント体、非到達ターゲットを示す概略図。
図13】下顎にサージカルガイドを取り付けた状態での、歯茎、歯、下歯槽骨、穴形成器具、非到達ターゲットを示す概略図。
図14図9に、さらにサージカルガイドの第6の3次元画像データを重ねた状態を示す図。
図15図14から第1の3次元画像データ、及び、第2の3次元画像データを除去した状態を示す図。
図16】第2の3次元画像データ、第3の3次元画像データ、第4の3次元画像データ、及び、第5の3次元画像データの一部の表面画像データを示す図。
図17図16に示す表面画像データを重ね合わせた後、第4の3次元画像データ、及び、第5の3次元画像データを引いた表面画像を示す図。
図18】模型にサージカルガイドを組み合わせた後、穴形成器具をサージカルガイドのガイド孔を挿入した状態を示す概略図。
図19】第1変形例に係る、下顎にサージカルガイドを取り付けた状態での、歯茎、歯、下歯槽骨、ハンドルを含む穴形成器具、非到達ターゲットを示す概略図。
図20】第2変形例に係る、下歯槽骨を示す第1の3次元画像データに対し非到達ターゲットの位置をマーキングした第3の3次元画像データ、自家歯牙の第4の3次元画像データ、及び、穴形成器具の第5の3次元画像データを重ねた状態を示す図。
図21】第2実施形態に係り、上顎の上歯槽骨、上顎洞、後上歯槽動脈及び大口蓋動脈を示す第1の3次元画像データに、インプラント体の第4の3次元画像データ及び穴形成器具の第5の3次元画像データを重ねた状態を示す図。
図22】上顎の第1から第4の3次元画像データを重ねた状態を示す図。
図23図22に示す図に第6の3次元画像データを重ねるとともに、第1の3次元画像データを除去した状態を示す図。
図24】第1の3次元画像データ、第2の3次元画像データ、第3の3次元画像データ、第4の3次元画像データ、及び、第5の3次元画像データの一部の表面画像データを示す図。
図25図24に示す表面画像データを重ね合わせた後、第4の3次元画像データ、及び、第5の3次元画像データを引いた表面画像を示す図。
図26図25に示す上顎を、異なる方向から見た図。
図27】上顎にインプラント体を埋設する手技を行うときの歯と上顎洞との位置関係を示す概略図。
図28図27に続く、上顎にインプラント体を埋設する手技を行うときの歯と上顎洞との位置関係を示す概略図。
図29図22中の第2の3次元画像データに、上顎洞の上顎洞底粘膜を重ねた状態を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
実施形態に係る、歯科治療計画の手技前検証システム(歯科治療計画作成後、手技前に歯科治療計画の検証を行うための模型作製システム)10は、例えばある患者の各種データの取得、インプラント治療の治療計画の作成から、患者への手技を行うまでの一連の作業の一部をなす。このシステム10は、例えば、ある患者の患部データの取得、ある患者への歯科治療計画の作成から実際の患者の模型(歯科治療計画の手技前検証用の模型)100を出力したものを用いて歯科治療計画の手技前検証を行う一連の作業を行うときに用いる。ある患者の患部データの取得、及び、模型100の出力は、このシステム10とは異なる別のシステムにより行ってもよい。
【0009】
(第1実施形態)
第1実施形態では、システム10を、多数から選択される埋設体としてのインプラント体30(図2参照)を患者の下顎に埋設するインプラント治療を行う例に用いる場合について説明する。
【0010】
図1に示すように、歯科治療計画の手技前検証システム(以下、単にシステムという)10は、制御装置12と、第1のスキャナ14と、第2のスキャナ16と、表示部18と、操作部(指示入力部)20と、記憶装置22と、3Dプリンタ24と、ミリングマシン26とを備える。
【0011】
制御装置12は、第1のスキャナ14、第2のスキャナ16、表示部18、操作部20、記憶装置22、3Dプリンタ24、及び、ミリングマシン26を制御する。制御装置12としては、例えばコンピュータを用いる。制御装置12は、例えば、CPUやMPUなどのプロセッサ、RAM、ROM、及び、I/Oインターフェースを含む。制御装置12は、例えば1又は複数のCPUなどのプロセッサがROM等のメモリに格納された制御プログラムをRAMに展開して、表示部18、操作部20、記憶装置22、第1のスキャナ14、第2のスキャナ16、3Dプリンタ24、及び、ミリングマシン26に対する適宜の処理を実行する。又は、制御装置12は、例えば1又は複数のCPUなどのプロセッサがネットワークを介してプログラムを読み出し、表示部18、操作部20、記憶装置22、第1のスキャナ14、第2のスキャナ16、3Dプリンタ24、及び、ミリングマシン26に対する適宜の処理を実行する。制御装置12は、メモリに予め格納されたプログラムをプロセッサが読み込んで実行することにより、各部を制御し、画像処理などの処理を行う機能をソフトウェアにより実現する。
【0012】
第1のスキャナ14は、例えば歯科用CTスキャンである。第1のスキャナ14は、患者の例えば下顎の歯、骨及び骨内部の3次元画像データ(例えばDICOMデータ)を取得し、制御装置12に出力する。制御装置12は、患者の下顎の歯、骨及び骨内部の3次元画像データを、記憶装置22に記憶させる。第2のスキャナ16は、例えば口腔内スキャナである。第2のスキャナ16は、患者の例えば下顎の歯及び歯茎の表面の3次元画像データ(例えばSTLデータ)を取得し、制御装置12に出力する。制御装置12は、患者の下顎の歯及び歯茎の表面の3次元画像データを、記憶装置22に記憶させる。
【0013】
表示部18は、例えば液晶ディスプレイや、有機ELディスプレイなどの各種のディスプレイである。表示部18は、第1のスキャナ14及び第2のスキャナ16で取得し制御装置12に出力する患者に関する画像を表示するとともに、各種の情報を表示する。制御装置12は、記憶装置22に記憶させた患者の3次元画像データを読み出して表示部18に表示させてもよい。
【0014】
操作部20は、制御装置12に対する指示を入力する。操作部20は、例えばキーボード及びマウス等のデバイスを含む。
【0015】
記憶装置22は、患者の各種データ(例えば、下顎の歯、骨及び骨内部の3次元画像データ(DICOMデータ)、及び、患者の下顎の歯及び歯茎の表面の3次元画像データ(例えばSTLデータ))を記憶する。記憶装置22は、例えば図2に示すインプラント体30の各種の3次元画像データ(インプラント体データ)22a、図3に示すドリルなどの穴形成器具40の各種の3次元画像データ(穴形成器具セットデータ)22bを記憶する。
【0016】
制御装置12がネットワークを介してインプラント体30の各種の3次元画像データ22a、穴形成器具40の各種の3次元画像データ22bを読み出す場合、記憶装置22にインプラント体30の各種の3次元画像データ22a、穴形成器具40の各種の3次元画像データ22bを記憶させることは不要となり得る。すなわち、制御装置12は、記憶装置22の代わりに、例えばサーバ上のデータベース(インプラント体データ22a及び穴形成器具セットデータ22b)を用いてもよい。制御装置12は、サーバから各種のデータを読み出し可能である。
【0017】
図3に示すように、実際の穴形成器具40は、例えば、穴をあけるボディ42と、シャンク44と、スリーブ46と、ストッパー48と、を有する。ボディ42及びシャンク44は一体成型など、一体化されている。シャンク44は、図示しないハンドピースに固定される。このため、ボディ42及びシャンク44は、所定の回転軸の軸回りに回転する。スリーブ46は、ボディ42の外側を覆い、後述するサージカルガイドなどの補助器具200のガイド孔(貫通孔)210に嵌合又は係合する。ストッパー48のボディ42側の端面48aは、例えばハンドピースとの距離が規定された状態で、補助器具200のガイド孔210を規定する規定面220に当接する。
【0018】
3Dプリンタ24は、患者の下顎の3次元画像データ及び歯科医師が作成する3次元画像データに基づいて、図4A及び図4Bに示す、歯科治療事前検証用の模型100を造形する。3Dプリンタ24は、例えば歯科医師が自ら所有し、その歯科医師が3Dプリンタ24を動作させることが好適であるが、専門業者等が、歯科医師等から3Dプリンタ用のデータを受け取り、造形物を出力してもよい。
【0019】
模型100は、模型本体110と、ターゲット模型部120と、孔部130とを有する。模型本体110は、患者の実際の下顎の治療対象部位及びその周囲と同じ大きさ、形状に造形される。模型本体110とターゲット模型部120との間は、患者の実際の下顎の治療対象部位とターゲット(非接触ターゲット又は接触ターゲット)との位置関係と同じ位置関係に形成される。同じ位置関係とは、治療対象部位の手技に関係する部位が、患者の実際の下顎の治療対象部位及びその周囲と同じ大きさ、形状に形成される意である。孔部130は、後述するインプラント体30及び穴形成器具40の各種のパラメータによって規定される。孔部130は、治療対象部位の孔部130に埋設するインプラント体30又は穴形成器具40の形状(例えば、長さ、外径)、角度、位置に関するパラメータの設定にしたがって形成される。
【0020】
模型本体110は、孔部130の縁部を形成する規定面135を有する。規定面135は、歯茎又は下歯槽骨の表面である。スリーブ46の端面46aが規定面135に当接すると、その位置から穴形成器具40のボディ42が歯茎及び下歯槽骨の奥側に向かうことを規制する。このため、模型本体110の規定面135により、穴形成器具40の先端到達位置は規定される。
【0021】
ターゲット模型部120は模型本体110に支持されることが好適である。模型100は、ターゲット模型部120を支持し、模型本体110とは反対側に設けられる基部(土台)140と、模型本体110と基部140とを接続する支柱150とをさらに有する。
【0022】
ミリングマシン26は、患者の下顎の3次元画像データ及び歯科医師が作成する3次元画像データに基づいて、図5に示す補助器具(サージカルガイド)200を削り出す。ミリングマシン26は、例えば歯科医師が自ら所有し、その歯科医師がミリングマシン26を動作させることが好適であるが、専門業者等が、歯科医師等からミリングマシン26用のデータを受け取り、補助器具200を出力してもよい。
【0023】
実際に歯科治療時に使用される補助器具200は、医療認可され、歯科治療に耐え得る耐久性を有する樹脂材が用いられる。歯科治療時に使用される補助器具200は、3Dプリンタ24で作製される場合もあり得る。この場合の補助器具200は、医療認可された素材で形成される。なお、歯科治療時に使用せず、模型100とともに歯科医師の確認用に用いる補助器具200は、例えば模型100と同じ素材で形成されることが好適である。模型100は実際の治療に用いられるわけではないため、規定面135とターゲット模型部120との関係が維持されていれば、適宜の素材で適宜の精度に形成されていればよい。
【0024】
補助器具200は、患者の治療箇所の表面形状に合わせて形成される。補助器具200は、患者の治療箇所の歯茎の近傍の歯、歯茎又は顎骨にスクリューで固定後に嵌合させて用いる。補助器具200は、下顎に対するガタツキを防止した状態で、下顎に固定される。補助器具200は、歯茎及び歯槽骨に設定した凹孔を形成し、その凹孔に設定したインプラント体30を入れるための凹孔を正確に穴形成器具40のボディ42で形成するために用いる。
【0025】
補助器具200は、本体205と、ガイド孔210とを有する。
【0026】
上述したように、補助器具200は、患者の治療箇所の歯茎の近傍の歯、歯茎及び顎骨にスクリューで固定後に嵌合させて用いるため、本体205は、歯、歯茎及び顎骨との基準位置を規定する位置規定部として用いられる。本体205は、患者の口腔の領域に、例えば1本以上の歯に沿って固定される例を図示するが、患者の下顎側が完全に無歯の状態であってもよい。例えば、本体205は、1本または2本の歯のみ、骨のみ、または任意のそれらの任意の組み合わせのような患者の口腔のより小さな部分に接続するように構成され得る。
【0027】
ガイド孔210は、本体205が患者の下顎の歯及び歯茎に適切に取り付けられたときに、穴形成器具40のボディ42により形成される凹孔の方向、形状(長さ、外径)、角度、位置等を規定する。補助器具200は、ガイド孔210の縁部を形成する規定面220を有する。規定面220は、歯茎又は下歯槽骨に対向する面とは反対側の面である。ストッパー48の端面48aが規定面220に当接すると、その位置から穴形成器具40のボディ42が歯茎及び下歯槽骨の奥側に向かうことを規制する。このため、補助器具200の規定面220により、穴形成器具40の先端到達位置は規定される。
【0028】
なお、補助器具200のガイド孔210は、穴形成器具40だけでなく、例えば、止血用などの電気メスなどの他の手技器具を挿入し得る可能性がある。このとき、規制面220は、電気メスの挿入方向、角度、位置等を規制する。このため、規制面220は、穴形成器具40の規制面として用いられるだけでなく、手技器具の規制面として用いられ得る。したがって、補助器具200は、手技器具の位置規定体として用いられる。
【0029】
なお、本実施形態に係るシステム10では、歯科医師は、補助器具を3次元画像データ(3次元形状を表現するデータ)として作成でき、3Dプリンタ24又はミリングマシン26を用いて、患者の下顎の形状及び大きさに適合する実物を造形可能である。
【0030】
本実施形態に係る制御装置12には、画像表示プログラム、画像処理プログラム、出力プログラム等が格納されている。
【0031】
画像表示プログラムは、第1のスキャナ14、第2のスキャナ16で取得するデータを表示部18に表示させる。画像処理プログラムは、画像表示プログラムで表示させた画像データと、記憶装置22に格納された各種のデータとを同一の座標軸に基づいて重ね合わせる。画像表示プログラムは、画像処理プログラムを用いて同一の座標軸に基づいて重ね合わせたデータを表示部18に表示させる。また、画像表示プログラムは、歯科医師の意図に基づいて作成する3次元画像データを表示部18に表示させる。出力プログラムは、画像処理プログラムを用いて歯科医師の意図に基づいて作成する3次元画像データ及び物体(例えば模型100及び補助器具200)の表面データ(3次元形状を表現するデータ(3次元画像データ)をいい、以下、表面データという)を出力する。出力プログラムは、3Dプリンタ24又はミリングマシン26に実物を造形させる表面データを出力可能である。
【0032】
歯科医師は、操作部20を用いて制御装置12に各種の指示を入力し、例えば図6及び図7に示すフローに沿ってインプラント治療の治療計画を作成する。
【0033】
歯科医師は、歯科用CTスキャンなどの第1のスキャナ14を用いて、患者の下顎の歯、骨及び骨内部の3次元画像データ(例えばDICOMデータ)を取得し、記憶装置22に記憶させる。これを第1の3次元画像データとする。また、歯科医師は、例えば、口腔内スキャナなどの第2のスキャナ16を用いて、歯及び歯茎の表面の3次元画像データ(例えばSTLデータ)を取得し、記憶装置22に記憶させる。これを第2の3次元画像データ(第1の表面データ)52とする。歯科医師は、適宜のソフトウェア(アプリケーション)に、第1の3次元画像データ、及び、第2の3次元画像データを取り込む(ステップS1)。ソフトウェアは、第1の3次元画像データ51、及び、第2の3次元画像データ52のデータ形式が異なっていても、第1の3次元画像データ51、及び、第2の3次元画像データ52の両方のデータを読み込み可能である。
【0034】
歯科医師は、例えば第1の3次元画像データに基づく第1の3次元画像51を表示部18の表示画面で確認するとともに、その他の各種条件に基づいて、ある患者の治療部位におけるインプラント治療の可否を総合的に判断する(ステップS2)。以下、歯科医師が、インプラント治療が可能である(S2-Yes)と判断したときの作業について説明する。なお、歯科医師が、インプラント治療が不可である(S2-No)と判断したとき、治療計画の作成作業を終了する。
【0035】
なお、第2の3次元画像データをインプラント治療の可否判断に使用しない場合、第2のスキャナ16を用いた、歯及び歯茎の表面の3次元画像データ(例えばSTLデータ)の取得を、ステップS2の工程の後に行ってもよい。
【0036】
歯科医師は、図8に示すように、ソフトウェア上で、下顎の骨(下歯槽骨)を示す第1の3次元画像51において、インプラント治療時にインプラント体30を埋設する凹孔70の形成時に穴形成器具40のボディ42の先端を到達させない非到達(非接触)ターゲットとするため、下歯槽動脈及び下歯槽神経の位置を特定する。そして、歯科医師は、ソフトウェア上で、非到達ターゲットの位置をマーキングする(ステップS3、第1の処理)。このとき、歯科医師は、ソフトウェア上で、非到達ターゲットが3次元的に形成されるように非到達ターゲットの特徴点をマーキングする。そして、歯科医師は、第3の3次元画像データ(第4の表面データ)53として、非到達ターゲットを作成する。
【0037】
歯科医師は、図9に示すように、ソフトウェア上で、治療位置において、インプラント体30を模したインプラント体の形状(例えば長さ、外径)、角度、位置等を設定又はインストールする(ステップS4)。インストールとは、例えば歯科医師が3Dスキャナなどを用いて取得した3次元データをシステム10に取り込むことをいう。インプラント体の角度とは、例えば患者の治療位置に対する設置向きをいう。
【0038】
なお、インプラント体としては、そのインプラント体に1対1に対応し、実際に医療認可されたインプラント体30と同じ形状及び同じ寸法の情報を含む3次元画像データを用いる。このとき、歯科医師は、インプラント体30に取り付けるアバットメント(abutment)及び上部構造(歯冠部)の形状との関係を考慮する。歯科医師は、例えば記憶装置22に記憶されたインプラント体の3次元画像データ22aから、設定内容に合致する1つのインプラント体を選択する。歯科医師が選択するインプラント体の第4の3次元画像データ(第2の表面データ)54は、例えばインプラント体30のメーカーから提供される。歯科医師は、インプラント体30のメーカーから提供されない場合、インプラント体の第4の3次元画像データ54を自ら作成してもよい。制御装置12は、歯科医師が作成したインプラント体の第4の3次元画像データ54を、記憶装置22に記憶させる。
歯科医師は、自らインプラント体30を選択し、下顎の骨に対するインプラント体30の角度、位置等を患者に合わせて最適に設定できる。このとき、歯科医師は、インプラント体の選択をやり直し、患者の処置対象に対し、長さ、外径が異なるインプラント体の適合性を試すことも容易である。
【0039】
歯科医師は、図10に示すように、患者の治療に用いる1つ又は複数メーカーのドリルセットから、選択したインプラント体を埋設するための凹孔70の深さ、径、角度、位置に応じて適切な穴形成器具を選択する(第2の処理)。なお、穴形成器具としては、その穴形成器具に1対1に対応し、実際に医療認可された穴形成器具40と同じ形状及び同じ寸法の情報を含む3次元画像データを用いる。歯科医師は、通常は、選択したインプラント体30のメーカーが推奨する穴形成器具40を選択し得るが、他の穴形成器具40を用いてもよい。歯科医師は、記憶装置22に記憶された穴形成器具40を模した穴形成器具の3次元画像データ22bから、設定内容に合致する1つの穴形成器具40を選択する。歯科医師が選択する穴形成器具40の第5の3次元画像データ(第3の表面データ)55は、例えば穴形成器具40のメーカーから提供される。歯科医師は、穴形成器具40のメーカーから提供されない場合、第5の3次元画像データ54を自ら作成してもよい。制御装置12は、歯科医師が作成した第5の3次元画像データ55を、記憶装置22に記憶させる。
【0040】
なお、一般に、実際の穴形成器具40による孔部130の径は、実際のインプラント体30の外径より僅かに小さく形成される。この関係は、ソフトウェア上での関係も同じである。穴形成器具とインプラント体の外径の差は、パラメータとして歯科医師が操作部20に入力することで、適宜に設定可能である。
【0041】
歯科医師は、ソフトウェア上で、第1から第5の3次元画像データ51-55の座標軸を合わせ、第1の3次元画像データ51、第3の3次元画像データ53、及び、第4の3次元画像データ54及び/又は第5の3次元画像データ55に、第2の3次元画像データ52を、座標軸を一致させた所定の座標系上で重ね合わせる(ステップS5)。このため、歯科医師は、図10に示すように、表示部18において、下顎の歯及び歯茎の表面と、歯槽骨の内部の動脈及び神経との位置関係をソフトウェアを用いて明示する。
【0042】
歯科医師は、図11に示すように、表示部18に表示されるソフトウェア上で、患者の下顎の形状に合わせて、補助器具(サージカルテンプレート)の3次元画像データを作成する(ステップS6)。すなわち、歯科医師は、第6の3次元画像56として、補助器具を作成する。
【0043】
図5に示す補助器具200は、治療箇所の穴形成器具40のボディ42を案内するとともに、歯茎を覆う。歯科医師は、治療計画を決定するとき、補助器具200の3Dプリンタ24用又はミリングマシン26用の3次元画像データ(例えばSTLデータ)を出力し、補助器具200を3Dプリンタ24又はミリングマシン26で造形する。この補助器具200は、3Dプリンタ24で作成される模型100(図4A及び図4B参照)に嵌合又は係合可能である。なお、補助器具200に用いる樹脂材は、この補助器具200を実際に治療時に使用するか否かによって異なる。補助器具200として、医療用に認可された樹脂材を用いる場合、この補助器具200をそのまま使用し得る。補助器具200として、医療用に非認可の樹脂材を用いる場合、この補助器具200をそのまま実際の治療には使用し得ない。この場合、補助器具200は、後述するように、模型100と嵌合させた状態において、穴形成器具40の先端が所定の位置に配置され、かつ、ターゲット模型部120に接触しないことを確認するといった、作成した治療計画を手技前に検証するために用いる。
【0044】
ここで、実際の手技において、歯科医師は、患者の治療対象部位に対する凹孔の形成時に歯茎表面(歯槽骨ではない)から何ミリ掘っているかは確認できないが、歯槽骨表面から何ミリ掘っているかや、歯槽骨表面から動脈までの距離は、実際に使用する道具を用いて事前に確認することができる。
【0045】
図12及び図13には、歯槽骨312、歯314、歯茎316、凹孔318、及び、下歯槽動脈及び下歯槽神経の非到達ターゲット320を含む下顎310の模式図を示す。
図12に示すように、実際のインプラント治療において、補助器具200及び穴形成器具40を用いて、下歯槽骨312及び歯茎316には、凹孔318が形成される。凹孔318は、下歯槽骨312の頂部から凹孔318の底部までの距離D1と、下歯槽骨312の頂部(規定面)335から補助器具200の規定面220までの距離(オフセット値)D2を合わせた深さとなる。すなわち、補助器具200を用いる場合、凹孔318の深さは、下歯槽骨312の頂部から補助器具200の規定面220までオフセットされる。
【0046】
この場合、図12及び図13に示すように、歯科医師は、(ドリルスリーブ46の上端46bより下のドリルボディ42の長さH1)-(ストッパー48の高さH2)=(手術時に用いるインプラント体30の長さD1)+(補助器具200を用いたときのオフセット値D2)となるように、穴形成器具40、及び、インプラント体30をそれぞれ選択する。歯科医師は、凹孔318の底部又はインプラント体30の底部と非到達ターゲット320とが離間するように凹孔318を形成し、インプラント体30を凹孔318に埋設する。すなわち、歯科医師は、インプラント体30の形状(例えば外径)、位置、角度又は凹孔70の内径、位置、角度をパラメータとするとともに、上述したパラメータH1、H2、D1、D2を適宜に操作部20を用いて入力し、患者の治療対象部位に対する状態を確認しながら、最適な治療計画を作成する。パラメータH1、H2の設定又はインストールには、歯科医師が最適な穴形成器具40を選択することを含む。
【0047】
歯科医師は、図14に示すように、下顎の骨の第1の3次元画像51と、歯及び歯茎の表面の第2の3次元画像52と、非到達ターゲットの第3の3次元画像53と、インプラント体の第4の3次元画像54及び/又は穴形成器具の第5の3次元画像55と、補助器具の第6の3次元画像56とを所定の座標系上で重ね合わせる(ステップS7、第5の処理)。そして、歯科医師は、図15に示すように、表示部18において、第6の3次元画像56と、第4の3次元画像54又は第5の3次元画像55と、第3の3次元画像53との配置状態を確認する。すなわち、歯科医師は、ソフトウェア上で、補助器具と、インプラント体と、インプラント体を埋設するための孔を形成する穴形成器具と、非到達ターゲットとの位置関係を明示する。
なお、ステップS3からステップS7は、画像処理プログラムを用いて処理し、画像表示プログラムを用いて表示部18に表示させる。
【0048】
そして、歯科医師は、補助器具200を3Dプリンタ24又はミリングマシン26にて造形する(ステップS8)。
【0049】
歯科医師は、ソフトウェア上での治療計画に修正点があるか否か確認する。問題があれば、修正する。問題がなければ、図16に示す、第2の3次元画像データ52、第3の3次元画像データ53、第4の3次元画像データ54、第5の3次元画像データ55を所定の座標系上で重ね合わせる(ステップS9)。このとき、治療計画を作成するソフトウェアにより、第2の3次元画像データ52、第3の3次元画像データ53、第4の3次元画像データ54、第5の3次元画像データ55を所定の座標系上で重ね合わせる。または、歯科医師は、なお、互換性を有するデータであれば、治療計画を作成するソフトウェアとは別の、例えば3DCADソフトウェアにこれら3次元画像データをインポートし、これら3次元画像データを重ね合わせてもよい。このとき、穴形成器具の第5の3次元画像データ55は、ボディ、シャンクを除き、例えばスリーブ(ガイドチューブ)の画像(スリーブに関する第5の3次元画像データ55a)のみインポートする。
【0050】
歯科医師は、図17に示すように、ソフトウェアにおいて、インプラント体に関する第4の3次元画像データ54、及び、スリーブに関する第5の3次元画像データ55aを除去する(ステップS10、第3の処理)。すなわち、ソフトウェア上で、歯、インプラント体の埋設用の凹孔を模す貫通孔130を有する模型本体110の3次元画像データ110a、及び、ターゲット模型部120の3Dプリンタ24用の3次元画像データ120aを含む、模型100の3次元画像データ(第5の表面データ)100aを作成する。
【0051】
ステップS9からステップS10は、画像処理プログラムを用いて処理し、画像表示プログラムを用いて表示部18に表示させる。
【0052】
歯科医師が3Dプリンタ24用のデータを確認した後、歯科医師の操作部20への操作入力指示により、制御装置12に制御される3Dプリンタ24は、歯、インプラント体30の埋設用の凹孔70を模す貫通孔130を有する歯茎、下歯槽動脈を模したターゲット模型部120を含む、患者の治療部位の模型100(図4A及び図4B参照)を造形する(ステップS11、第4の処理)。
【0053】
ここで、歯科医師は、システム10を用いた治療計画の作成処理を一旦終了する。
【0054】
このように、上述したシステム10の操作部20には、制御装置12に対し、患者の3次元立体画像データにおいて、患者の治療対象部位と、非到達ターゲットとを特定する処理指示、患者の3次元立体画像データにおいて、治療対象部位に埋設するインプラント体の各種のパラメータを設定又は歯科医師が3Dスキャナなどを用いて取得したデータをインストールして、インプラント体を埋設するための凹孔を模す孔を設定する処理指示を行う。また、操作部20では、制御装置12に対し、第1の表面データ(表面画像に関するデータ)と、第2の表面データ又は第3の表面データと、第4の表面データとを所定の座標系上で重ね合わせる処理指示(座標変換指示)、及び、第1の表面データから、第2の表面データ及び第3の表面データを引いて、孔を含む治療対象部位と、第4の表面データとの位置関係を示す第5の表面データを作成する処理指示、が入力される。
すなわち、操作部20では、制御装置12に対し、第1の表面データと、第2の表面データ及び第3の表面データの少なくとも一方と、第4の表面データとを所定の座標系上で重ね合わせる処理指示(座標変換指示)、及び、第1の表面データから、第2の表面データ及び第3の表面データを引いて、孔を含む治療対象部位と、第4の表面データとの位置関係を示す第5の表面データを作成する処理指示、が入力され、制御装置12により、これらが処理される。なお、座標変換指示に第2の表面データを用いない場合、第5の表面データの作成時に第2の表面データを引く必要はない。座標変換指示に第3の表面データを用いない場合、第5の表面データの作成時に第3の表面データを引く必要はない。
【0055】
歯科医師は、図18に示すように、3Dプリンタ24で造形した模型100に例えば補助器具200を嵌める。歯科医師は、さらに、補助器具200のガイド孔210に、穴形成器具40のボディ42を挿入する。このとき、穴形成器具40は、スリーブ46及びストッパー48を使用する。歯科医師は、穴形成器具40のボディ42の先端とターゲット模型部120との位置関係を視認により確認する。具体的には、歯科医師は、穴形成器具40を、補助器具200のガイド孔210に嵌合させたとき、穴形成器具40のボディ42でインプラント体30を埋設するための凹孔をあけるために貫通孔130に挿入したときに、穴形成器具40のボディ42が所望の方向を向くか、ボディ42の先端が動脈及び神経などのターゲット模型部120から離間した状態を維持するか、確認する。
【0056】
または、穴形成器具40の先端は、下歯槽神経や下歯槽動脈から3mm以上離間することが推奨される。このため、下歯槽神経や下歯槽動脈のそれぞれのターゲット模型部120を実際のものに対して例えば3mm以上、規定面135に向かって大きく作成し、穴形成器具40の先端が当接し離間しないように治療計画を作成することもできる。すなわち、ターゲット模型部120の一部を、実際の非到達ターゲットの位置よりも、規定面135側に近づけることにより、穴形成器具40のボディ42の先端がターゲット模型部120に当接した位置と、穴形成器具40のストッパー48のボディ42側の端面48aとの位置関係に基づいて、歯科医師は、実際に患者に使用する穴形成器具40の使用の可否について、判断することができる。すなわち、例えば歯科医師は、ターゲット模型部120を、到達(接触)ターゲットとして形成することも可能である。
【0057】
このように、歯科医師は、システム10を用いて患者の3次元画像51,52及び、インプラント体及び穴形成器具の3次元画像54,55を用いて、実際の患者と同じ大きさ、形状の模型100を造形することで、実際に用いる穴形成器具40を用いて、インプラント体30を埋設する凹孔を作成する手技の事前検証を行うことができる。事前検証において、問題がなければ、歯科医師は、実際の患者に治療計画の通りに手技を行う。事前検証において問題点が生じたときには、歯科医師は、必要に応じて治療計画を修正し、再度、模型100及び補助器具200を作成し直し、手技の事前検証を行う。歯科医師は、必要に応じて、事前検証において、問題がなくなるまで、この作業を繰り返す。
なお、模型100を造形する場合、歯科医師は、インプラント体及び穴形成器具の3次元画像54,55を選択的に用いてもよい。
【0058】
ところで、模型本体110の貫通孔130の位置、大きさ、角度等は、インプラント体30を嵌める、最終的な大きさに形成される。実際の手技において、歯科医師は、小さな穴から徐々に穴径を大きくするともに、深く掘っていく。このため、歯科医師は、実際の手技において、凹孔を形成する場合、ドリルボディ42が、短く、径が小さいものから、徐々に太く、径が長いものに変更して手技を進めていく。システム10においては、治療計画として、歯科医師がどのような穴形成器具を用いて、凹孔を形成するのかを記載することができるが、3Dプリンタ24で造形される3次元画像としては、インプラント体30を埋設可能な最終的な大きさの凹孔を設定し得る。
【0059】
模型100を用いることで、歯科医師は、ドリル径が小さく短いものから、徐々に大きく長いものに変更しながら、手技を進める事前検証をも、模型100を用いて事前検証することができる。すなわち、模型100を用いることで、最終的に用いる穴形成器具40だけでなく、凹孔の作成途中に用いる各種の手技器具においても、事前検証を行うことができる。凹孔の作成途中に用いる手技器具としては、例えば、骨補填材、採血した血液から分離させた血小板当を含むフィブリンゲル、又は、これらの混合物を治療対象部位に注入する注入器具等がある。
【0060】
そして、現在、歯科医師は、実際の手技において、使用するインプラント体30に応じて、穴形成器具のボディ42の長さ、ストッパー48の高さ、オフセット値などの各種パラメータを歯科医師が手技時に計算して手技を行うことがある。歯科医師がいずれか1つのパラメータでも間違えると、本来使用すべき器具とは異なる器具を使う可能性があり、医療事故につながるおそれがある。本実施形態に係る模型100を使用することにより、歯科医師が実際の手技において、最終的な大きさの凹孔を形成するまでの、各手技器具の使用の妥当性を、歯科医師自身が事前検証することができる。
また、例えば歯科医師等のシステム10における治療計画の作成者は、治療計画の作成時において穴形成器具40のボディ42の長さ、ストッパー48の高さ、オフセット値などの各種パラメータを間違うことがあり得る。そして、治療計画の作成者は、各種パラメータの間違いを見逃して、治療計画の作成を終了してしまうことがあり得る。この場合であっても、歯科医師が模型100及び実際の穴形成器具40を使用して治療計画の事前検証を行うと、治療計画における各種パラメータの設定ミスに気付くことができ得る。そして、歯科医師は、模型100を用いて、使用する穴形成器具40のボディ42の長さ、ストッパー48の高さ、オフセット値などのパラメータをどのように変更すると上手く手技が行えるか、検討を行うことができる。このとき、治療計画の作成時に設定したメーカーの穴形成器具40以外の穴形成器具も、適宜に試すことができる。このため、歯科医師は、模型100を用いることにより、穴形成器具40を、自らが所有する器具の中から、適切に選択することができる。
したがって、本実施形態で説明した模型100を用いて歯科医師が手技の事前検証を行うことは、インプラント治療における治療の一環として必ず行うべきである。このため、歯科医師は、模型100を用いた手技の事前検証により、必要に応じて、穴形成器具40を適切に変更し、最適な治療を行うことができる。なお、歯科医師は、システム10を使用して治療計画を修正してもよいことはもちろんである。このため、歯科医師が本実施形態に係る模型100を用いることで、インプラント治療の安全性を大きく高めることができる。
【0061】
インプラント治療において、例えば補助器具200を作成し、歯科医師は、患者の下顎に対して、所望の位置に所定の大きさの凹孔を作成し、その凹孔にインプラント体30を埋設する治療を行っている。従来は、インプラント体30を埋設するための穴形成器具40と補助器具200との関係で、例えば非到達ターゲットに独自の考えによる他メーカーの穴形成器具による代替え選択により40のボディ42の先端が到達するか否か、歯科医師が手技前に視覚的、実際に確認する手段がなかった。本実施形態によれば、患者の治療対象部位を含む模型本体110と、ターゲット模型部120と、補助器具200と、穴形成器具40又はインプラント体30との関係を、模型100及び実物の穴形成器具40又はインプラント体30を用いて歯科医師が手技前に検証することができる。すなわち、歯科医師は、作成した治療計画を実際の手技前に事前検証することができる。このため、歯科医師は、穴形成器具40による手技の安全性を事前検証した上で、実際の手技を行うことができる。歯科医師は、実際の手技のときに、模型100において、非到達ターゲットに対する穴形成器具40のボディ42の先端の到達位置、すなわち、非到達ターゲットと穴形成器具40のボディ42の先端との離間距離、又は、当接状態を事前に把握しているため、歯科医師が手技にかける時間をより短くすることができる。このため、歯科医師は、治療計画の通りに手技を行うことで、患者に対してより低侵襲に手技を行うことができる。
【0062】
歯科医師は、第1のスキャナ(CTスキャン)14、第2のスキャナ(口腔内スキャナ)16を用いた患者データを取得する医療行為と、実際に患者に対して手技を行う医療行為との間に、システム10を用いて治療計画の作成処理を行うことができる。本実施形態では、歯科医師が自ら治療計画を作成する例について説明した。治療計画の作成処理は、患者に実際を治療、診断するものではないが、インプラント体30の下顎への埋設手技という医療行為に繋がる極めて重要な処理である。このため、歯科医師が、システム10を用いて治療計画を作成し、治療計画に基づいて作成した模型100、及び、補助器具200を用いて手技の事前検証を行うことが、インプラント治療の安全性を確保する上で極めて有効な処理となる。そのためには、歯科医師自身が、各患者に対する最適な治療計画を作成可能なシステム10を用いることは、治療の安全性を確保する上で、極めて有用である。
【0063】
上述したように、治療計画の作成自体は、例えばメーカーの技術者や、歯科技工士などの歯科治療行為に対する無資格者が治療計画の作成を行うことはあり得る。この場合でも、歯科医師は、治療計画の作成データを受け取り、システム10において、治療計画を検討し、修正指示又は自ら修正することができる。いずれにしても、歯科医師は、実際の手技を行う直前に、模型100、穴形成器具40、インプラント体30、補助器具200を用いて、治療の安全性を事前検証することができる。
【0064】
上述した治療計画を修正し、模型100を作成し直す場合、システム10を用いて歯科医師自身が一連の作業を行うことにより、メーカー等の業者とのやり取りの時間を削減することができる。このため、歯科医師が治療計画を作成し、3Dプリンタ24で模型100を出力する場合、業者を使う場合に比べて、例えば1週間単位などの大幅な時間削減を図り得る。したがって、歯科医師は、患者に対して、より早期に手技を行える状態を整えることができ得る。
歯科医師がシステム10を用いる場合、歯科医師が主導して、歯科医師が試行錯誤して最適な治療計画を立てることができる。このため、仮に、補助器具200及び模型100の出力を業者に任せる場合であっても、補助器具200及び模型100の修正回数を少なくすることができる。したがって、歯科医師は、患者に対して、より早期に手技を行える状態を整えることができ得る。
【0065】
なお、従来、補助器具(サージカルガイド)の作成費用は例えば最低でも35000円以上であるなど、比較的高額であり、必ず必要とされているわけではないため、歯科医師が補助器具200を使用する場合も、その作成費用を患者に支払ってもらうことが難しいことがあった。このため、現在のインプラント治療の際には、補助器具の使用が必ずしも広まっているとは言い難い。しかしながら、本実施形態に係るシステム10を用いて例えば歯科医師自身が補助器具200を設計し、それを歯科医師自身が所有する3Dプリンタ24又はミリングマシン26を用いて出力することで、補助器具200の作成に大幅な費用削減を図ることができる。したがって、本実施形態に係るシステム10を用いることで、インプラント治療の際、サージカルガイドなどの補助器具の使用を歯科医師に広めることができる。
【0066】
したがって、システム10を用いることにより、治療計画の作成を極力歯科医師の主導に変更でき、補助器具200を含む治療計画の作成コストを削減でき、補助器具200を用いた、より安全性が高い治療を広めることができる。
【0067】
以上説明したように、本実施形態によれば、例えばインプラント体などの埋設体の埋設治療を行うとき、実際の穴形成器具40などの手技器具を用いた歯科治療の前に、その手技器具を用いたときの手技器具の先端位置と、患者の下顎の下歯槽動脈及び下歯槽神経の位置などのターゲット位置との位置関係を歯科医師が事前検証可能な、歯科治療計画の手技前検証システム10、歯科治療計画の手技前検証プログラム、歯科治療計画の手技前検証用の模型100の製造方法、及び、歯科治療計画の手技前検証用の模型100を提供することができる。
【0068】
図4A及び図4Bに示す模型100では、患者の下歯槽骨に相当する部位が存在しない。図4Cに示すように、3Dプリンタ24で作成した模型100の樹脂材が例えば透明又は半透明で、ターゲット模型部120を歯科医師が視認により確認することができる膜状体145として下歯槽骨に相当する部位が存在していてもよい。模型100の樹脂材が例えば透明又は半透明である場合、模型100は、図10中の左下図から、インプラント体の第4の3次元画像54及び穴形成器具の第5の3次元画像55を除去した状態に形成される。下歯槽骨に相当する部位は、穴形成器具40とターゲット模型部120との位置関係を視認可能であれば、メッシュ状に形成されていてもよい。
【0069】
補助器具200は、インプラント体30を埋設するための凹孔を形成するためのガイド孔210を有する。ガイド孔210及び凹孔70は、穴形成器具40として回転ドリルにより形成される場合、円形孔である。ガイド孔210及び凹孔70は、穴形成器具40によっては、回転ドリルによらない非円形孔を形成する場合もあり得る。
【0070】
本実施形態では、第1のスキャナ14及び第2のスキャナ16の2つのスキャナを用いる例について説明した。例えば、1つのスキャナで第1の3次元画像データ51及び第2の3次元画像データ52を取得可能であれば、複数のスキャナは不要となり得る。
【0071】
第1のスキャナ14及び第2のスキャナ16は、歯科医師が所有し、歯科医師が患者の顎部の3次元画像データを取得する。3Dプリンタ24による造形物の造形は、適宜の業者により行ってもよい。例えば、第1のスキャナ14、及び/又は、第2のスキャナ16を用いて予め患者の3次元画像データを取得することがあり得るため、第1のスキャナ14、及び/又は、第2のスキャナ16は、システム10に含まないことも好適である。3Dプリンタ24、及び/又は、ミリングマシン26は、システム10に含まないことも好適である。
【0072】
本実施形態では、システム10において、補助器具200を作成し、実際の手技に補助器具200を用いる例について説明した。補助器具200は、例えば穴形成器具40の選択により、必ずしも必要でない場合があり得る。
【0073】
(第1変形例)
第1実施形態の第1変形例に係るシステム10について、図19を用いて説明する。ここでは、図3に示す穴形成器具40とは異なる穴形成器具40を用いる場合のパラメータの設定の違いについて説明する。
【0074】
図19には、図3とは異なる穴形成器具40の第1変形例を示す。図19に示す穴形成器具40は、ボディ42、シャンク44、スリーブ46、及び、ストッパー48に加えて、ハンドル50を有する。ストッパー48の下端は、ハンドル50に当接する。このため、穴形成器具40のボディ42の先端の位置は、ハンドル50の高さにより、調整される。例えば、ハンドル50の高さが高くなると、凹孔318の底部は非到達ターゲット320から離される。
【0075】
図19に示すように、歯科医師は、(インプラント体30の長さD1)+(補助器具200を用いたときのオフセット値D2)=(ドリルスリーブ46の上端より下のドリルボディ42の長さH1)-(ストッパー48の高さH2)-(ハンドル50の高さH3)となるように、穴形成器具40、及び、インプラント体30をそれぞれ選択する。このように、歯科医師は、種々の穴形成器具40に合わせて、各種の設定値を設定する。
【0076】
すなわち、歯科医師は、インプラント体30の形状(長さ、外径)、位置、角度をパラメータとするとともに、上述したパラメータH1、H2、H3、D1、D2を適宜に操作部20を用いて入力し、患者の治療対象部位に対する状態を確認しながら、最適な治療計画を作成する。パラメータH1、H2、H3の設定又はインストールには、歯科医師が最適な穴形成器具40を選択することを含む。
【0077】
(第2変形例)
第1実施形態では、図12に示すように、インプラント体30を下顎に形成する凹孔318に埋設する場合を例にして説明した。例えば、インプラント体30を凹孔318に埋設する代わりに、図20に示す埋設体としての自家歯牙400を埋設する凹孔を形成する場合も、同様に、第1実施形態で説明したシステム10を用いて治療計画を作成することができる。
【0078】
歯科医師は、インプラント体30の3次元画像データを作成するのと同様に、自家歯牙400の3次元画像データ(第2の表面データ)を作成することができる。自家歯牙400の3次元画像データは、種々の機器を用いて取得し得る。自家歯牙400の3次元画像データは、例えば第2のスキャナ16を用いて取得してもよい。
【0079】
歯科医師は、自家歯牙400の形状、位置、角度をパラメータとするとともに、上述したパラメータH1、H2、H3、D1、D2を適宜に操作部20を用いて入力し、患者の治療対象部位に対する状態を確認しながら、最適な治療計画を作成する。パラメータH1、H2、H3の設定又はインストールには、歯科医師が最適な穴形成器具40を選択することを含む。自家歯牙400は、既製品を用い得るインプラント体30とは異なり、患者ごとに形状が異なる。このため、自家歯牙400を下顎に埋設する場合、自家歯牙400の形状に合わせて2つや3つの凹孔を開けることがある。これら凹孔を形成する場合も、補助器具200を用いることができる。凹孔を作成する場合、例えば同一又は異なる複数の穴形成器具40a,40bを順に用いることができる。
【0080】
なお、自家歯牙の代わりに、例えば歯の幹細胞を用いた再生医療を行う場合に、歯の幹細胞を体内又は対外で培養したものを、凹孔に埋設する治療を行うことが可能となり得る。この場合、歯科医師は、システム10における治療計画の作成において、再生医療における埋設体としての細胞組織(例えば細胞組織の集合体)の形状、位置、角度をパラメータとするとともに、上述したパラメータH1、H2、H3、D1、D2を適宜に操作部20を用いて入力し、患者の治療対象部位に対する状態を確認しながら、最適な治療計画を作成する。パラメータH1、H2、H3の設定又はインストールには、歯科医師が最適な穴形成器具40を選択することを含む。このように、歯科医師は、上述したシステム10を用いて、再生医療を行う場合も、治療計画を作成し、歯科治療計画の手技前検証用の模型を作成することができ得る。
【0081】
(第2実施形態)
第2実施形態では、システム10を、多数から選択されるインプラント体30(図2参照)を患者の上顎に埋設するインプラント治療を行う例に用いる場合について、図21から図29を用いて説明する。第1実施形態で説明した事項と共通の事項については、適宜に説明を省略する。
【0082】
第1のスキャナ(歯科用CTスキャン)14は、患者の例えば上顎の歯、骨及び骨内部の第1の3次元画像データ(例えばDICOMデータ)551を取得し、制御装置12に出力する。制御装置12は、第1の3次元画像データ551を、記憶装置22に記憶させる。第2のスキャナ(口腔内スキャナ)16は、患者の例えば上顎の歯及び歯茎の表面の第2の3次元画像データ(例えばSTLデータ)552を取得し、制御装置12に出力する。制御装置12は、第2の3次元画像データ552を、記憶装置22に記憶させる。
【0083】
図21に示すように、歯科医師は、ソフトウェア上で、第1のスキャナ14で得た上歯槽骨、上顎洞、後上歯槽動脈及び大口蓋動脈を示す第1の3次元画像551を用いて、インプラント体を埋設する凹孔70の設定時に、非到達ターゲットとする後上歯槽動脈、大口蓋動脈、及び、上顎洞底粘膜(図27から図29参照)の位置を特定する。そして、歯科医師は、ソフトウェア上で、非到達ターゲットが3次元的に形成されるように非到達ターゲットの特徴点をマーキングする(ステップS3)。そして、歯科医師は、第3の3次元画像データ553a,553b,553cとして、非到達ターゲットを作成する。なお、後上歯槽動脈、大口蓋動脈、及び、上顎洞底粘膜は、上歯槽骨に隣接する。
【0084】
図21中の右側図では、上顎洞551aの部位、後上歯槽動脈の部位の3次元画像553a、及び、大口蓋動脈の部位の3次元画像553bを示す。
【0085】
なお、上顎洞底粘膜に対応する3次元画像データ553cは、卵の殻の一部のように作成してもよく、全体として例えば球体状(図29参照)に形成してもよい。これは、模型により治療計画の事前検証を行うときに、穴形成器具40のボディ42の先端の到達に影響する部位が上顎洞底粘膜に対応する部位であり、残りの部位は、穴形成器具40のボディ42の先端の到達に影響しないためである。
【0086】
歯科医師は、図21に示すように、ソフトウェア上で、治療位置において、インプラント体30を模したインプラント体の長さ、外径、角度、位置等を設定又はインストールする(ステップS4)。このとき、歯科医師は、第1実施形態で説明したインプラント体30の外径、位置、角度、各種のパラメータ(穴形成器具40の選択を含む)を適宜に設定し、治療計画を最適化する。
【0087】
歯科医師は、図22に示すように、ソフトウェア上で、第1から第5の3次元画像データ551,552,553a-553c,54,55の座標軸を合わせ、第1の3次元画像データ551、第3の3次元画像データ553a-553c、及び、第4の3次元画像データ54及び/又は第5の3次元画像データ55に、第2の3次元画像データ552を所定の座標系上で重ね合わせる(ステップS5)。このため、歯科医師は、上顎の歯及び歯茎の表面と、上歯槽骨の内部の動脈との位置関係をソフトウェア上で明示する。
【0088】
歯科医師は、図23に示すように、ソフトウェア上で、患者の上顎の形状に合わせて、補助器具(サージカルテンプレート)を作成する(ステップS6)。すなわち、歯科医師は、第6の3次元画像データ556として、補助器具を作成する。歯科医師は、表示部18において、第6の3次元画像データ556と、第4の3次元画像データ54又は第5の3次元画像データ55と、第3の3次元画像データ553a,553bとの配置状態を確認する(ステップS7)。そして、歯科医師は、補助器具を出力する(ステップS8)。
【0089】
歯科医師は、ソフトウェア上での治療計画に修正点があるか否か確認する。問題があれば、修正する。問題がなければ、図24に示す、歯及び上歯槽骨を示す第1の3次元画像データ551、歯及び歯茎を示す第2の3次元画像データ552、非到達ターゲットの第3の3次元画像データ553a,553b、インプラント体の第4の3次元画像データ54、穴形成器具40の第5の3次元画像データ55を所定の座標系上で重ね合わせる(ステップS9)。このとき、治療計画を作成するソフトウェアと同じソフトウェアにより、第2の3次元画像データ552、第3の3次元画像データ553a,553b、第4の3次元画像データ54、第5の3次元画像データ55を所定の座標系上で重ね合わせる。
【0090】
歯科医師は、ソフトウェアにおいて、インプラント体30に関する第4の3次元画像データ54、及び、スリーブに関する第5の3次元画像データ55aを除去する(ステップS10)。すなわち、図25及び図26に示すように、ソフトウェア上で、歯、インプラント体30の埋設用の凹孔を模す貫通孔を有する歯茎、非到達ターゲットの3Dプリンタ24用のデータ(模型の表面データ)を作成する。
【0091】
歯科医師が3Dプリンタ24用のデータを確認した後、歯科医師の指示入力に基づいて、制御装置12に制御される3Dプリンタ24は、歯、インプラント体30の埋設用の凹孔を模す貫通孔を有する歯茎、非到達ターゲットである後上歯槽動脈及び大口蓋動脈を模した、患者の治療部位の模型を造形する(ステップS11)。
【0092】
ここで、図27は、上顎710の歯槽骨712、歯714、上顎洞730の関係を示す。図28は、例えばサイナスリフト(ソケットリフト)処置などの上顎洞底挙上術を用いた上顎710へのインプラント体30の固定状態を示す。上顎710の上歯槽骨712にインプラント体30を埋設するとき、図27に示す上歯槽骨712の厚さが足りない場合があり得る。このとき、図28に示す上顎洞730の上顎洞底粘膜730aを人工の骨補填材740を用いて押し上げる上顎洞底挙上術が行われる。上顎洞底挙上術を行う場合、上顎洞730の上顎洞底粘膜730aも、後上歯槽骨動脈及び大口蓋動脈とともに、穴形成器具40としてのドリルボディ42の非到達ターゲットとなる。
【0093】
上顎洞底挙上術を行う場合、インプラント体30を埋設する凹孔718を上歯槽骨712に開ける。このとき、例えば、上顎洞730の底部近傍まで凹孔718を開けるが、上顎洞底粘膜730aは貫通させない。上歯槽骨712は、穴形成器具40ではなく、オステオトームなどで貫通させる。上顎洞730の粘膜730aと上歯槽骨712との間に骨補填材740を充填する。この状態で、インプラント体30を埋設する。このとき、骨補填材740及びインプラント体30は、上顎洞底粘膜730aを破らない。
【0094】
この場合、歯科治療計画の手技前検証用の模型として、例えば、第1実施形態で説明した下歯槽骨を形成しないことと同様に、図29に示すように、上歯槽骨を形成せず、歯、歯茎、後上歯槽骨動脈、大口蓋動脈、及び、上顎洞底粘膜を模した模型が造形される。このように模型を形成すると、補助器具のガイド孔、模型の貫通孔に選択した穴形成器具40を嵌合させたときの、穴形成器具40のボディ42の先端と、上顎洞底粘膜730aとの位置関係を歯科医師が確認することができる。すなわち、歯科医師は、歯科治療がより安全に行えるか否か、歯科治療計画を事前検証することができる。
【0095】
なお、上顎の模型は、歯及び歯茎に相当する部位を模型本体としたときに、第1実施形態で説明した模型100のように、例えば上顎洞底粘膜730aを、支柱により支持することが好適である。
【0096】
下顎に対してシステム10を用いる場合と同様に、上顎に対してシステム10を用いる場合も、下顎に対して奏する効果と同じ効果を得ることができる。
【0097】
以上説明したように、本実施形態によれば、例えばインプラント体等の埋設体の埋設治療を行うときの実際の手技器具を用いた歯科治療の前に、その手技器具を用いたときの手技器具の先端位置と、患者の上顎の後上歯槽動脈及び大口蓋動脈や、上顎洞粘膜、の位置などのターゲット位置との位置関係を歯科医師が事前検証可能な、歯科治療計画の手技前検証システム10、歯科治療計画の手技前検証プログラム、歯科治療計画の手技前検証用の模型の製造方法、及び、歯科治療計画の手技前検証用の模型を提供することができる。
なお、第2実施形態に係るシステム10においても、インプラント体30の代わりに、第1実施形態の変形例で説明した自家歯牙400又は細胞組織を用いることができる。
【0098】
上述した変形例を含む第1実施形態及び第2実施形態によれば、例えばインプラント体30又は自家歯牙の埋設治療を行う前に、歯科医師は、歯科治療事前検証用のシステム10を用いて作製した模型100と、実際の歯科治療において使用を予定する穴形成器具(手技器具)40と、インプラント体30又は自家歯牙400とを用いて、各種の治療器具の選択を含めた治療計画に問題がないか、手技前に事前検証することができる。このため、歯科医師が、手技中に使用する道具(例えば穴形成器具40)でその患者の治療対象部位に治療計画に沿った所定の治療が行えるか疑心暗鬼となり、治療に時間をかけ、患者に負担をかけてしまうことを防止することができる。このため、上述した変形例を含む第1実施形態及び第2実施形態に係るシステム10及び模型100、更には、治療計画で設定した穴形成器具40を用いることで、患者に対してより低侵襲に歯科治療を行うことができる。
【0099】
また、このようにシステム10を用いた、模型100の3次元画像データを作成するまでの治療計画の作成作業を業者ではなく、実際に治療を行う歯科医師が確認しながら行うことで、例えばインプラント体30又は自家歯牙の埋設治療をより安全に行うことができる。
【0100】
また、3Dプリンタ24やミリングマシン26を歯科医師が所有する場合、3次元画像データの受け渡し時間及び模型100の運搬時間を省略でき、治療計画の作成から、模型100を用いた歯科治療事前検証までの一連の作業にかける時間を短縮することができる。また、治療計画を修正する場合も、治療計画の修正から、模型100を用いた歯科治療事前検証までの一連の作業にかける時間を短縮することができる。
【0101】
なお、本願発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で種々に変形することが可能である。また、各実施形態は可能な限り適宜組み合わせて実施してもよく、その場合組み合わせた効果が得られる。更に、上記実施形態には種々の段階の発明が含まれており、開示される複数の構成要件における適当な組み合わせにより種々の発明が抽出され得る。
【符号の説明】
【0102】
10…歯科治療計画の手技前検証システム、12…制御装置、18…表示部、20…操作部、30…インプラント体、40…穴形成器具、42…ボディ、44…シャンク、46…スリーブ、48…ストッパー、51…第1の3次元画像データ、52…第2の3次元画像データ(第1の表面データ)、53…第3の3次元画像データ(第4の表面データ)、54…第4の3次元画像データ(第2の表面データ)、55…第5の3次元画像データ(第3の表面データ)、56…第6の3次元画像、70…凹孔、100…模型、100a…3次元画像データ(第5の表面データ)、110…模型本体、110a…3次元画像データ、120…ターゲット模型部、120a…3次元画像データ、130…孔部(貫通孔)、200…サージカルガイド、210…ガイド孔、220…規定面

図1
図2
図3
図4A
図4B
図4C
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23
図24
図25
図26
図27
図28
図29
【手続補正書】
【提出日】2021-09-27
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
制御装置と
記制御装置により制御され、前記制御装置に対する、
者の顎部の3次元立体画像において、前記患者の治療対象部位と、前記治療対象部位に対する治療時に用いる手技器具の先端を非接触とする又は接触させるターゲットとを特定する処理指示、
前記3次元立体画像において、前記治療対象部位に埋設する埋設体に関するパラメータと、前記手技器具に関するパラメータとの少なくとも一方を設定、又はインストールして、前記埋設体を埋設するための凹孔を模す孔を設定する処理指示、
前記患者の治療対象部位の周囲に嵌めて使用され、前記手技器具で前記凹孔を所望の位置に形成するために前記手技器具を案内する補助器具の3次元立体画像を、前記埋設体に関するパラメータ及び前記手技器具に関するパラメータの少なくとも一方と、前記治療対象部位及びその周囲部位の第1の表面データとに基づいて作成する処理指示、及び、
記第1の表面データから、前記埋設体の表面の第2の表面データ、及び、前記手技器具の表面の第3の表面データの少なくとも一方を引いて、前記孔を含む前記治療対象部位と、前記ターゲットの第4の表面データとの位置関係を示す第5の表面データの3次元立体画像を作成する処理指示、
が入力される指示入力部と、
を備え、
前記制御装置は、前記処理指示に基づく処理を行うとともに、前記第5の表面データの3次元立体画像及び前記補助器具の3次元立体画像を出力可能であ前記処理指示に基づく前記補助器具の3次元立体画像の作成を前記第5の表面データの3次元立体画像の出力前に処理する、
歯科治療計画の手技前検証システム。
【請求項2】
制御装置と、
前記制御装置により制御され、前記制御装置に対する、
患者の顎部の3次元立体画像において、前記患者の治療対象部位と、前記治療対象部位に対する治療時に用いる手技器具の先端を非接触とする又は接触させるターゲットとを特定する処理指示、
前記3次元立体画像において、前記治療対象部位に埋設する埋設体に関するパラメータと、前記手技器具に関するパラメータとの少なくとも一方を設定、又はインストールして、前記埋設体を埋設するための凹孔を模す孔を設定する処理指示、及び、
前記治療対象部位及びその周囲部位の第1の表面データから、前記埋設体の表面の第2の表面データ、及び、前記手技器具の表面の第3の表面データの少なくとも一方を引いて、前記孔を含む前記治療対象部位と、前記ターゲットの第4の表面データとの位置関係を示す第5の表面データの3次元立体画像を作成する処理指示、
が入力される指示入力部と、
を備え、
前記第5の表面データは、
土台であって、前記土台と前記治療対象部位との間に前記ターゲットを配置する、土台と、
前記治療対象部位と前記土台との間及び前記治療対象部位と前記ターゲットとの間の接続と、前記治療対象部位と前記土台との間及び前記土台と前記ターゲットとの間の接続と、前記治療対象部位と前記ターゲットとの間及び前記土台と前記ターゲットとの間との接続とのうちの少なくとも1つと
を含み、
前記制御装置は、前記処理指示に基づく処理を行うとともに、前記第5の表面データの3次元立体画像を出力可能である、
歯科治療計画の手技前検証システム。
【請求項3】
前記指示入力部には、前記患者の3次元立体画像における前記孔に対し3次元立体画像における前記手技器具が挿入されたときに、前記手技器具が前記ターゲットに対して離間するように前記手技器具に関する前記パラメータが設定又はインストールされる、請求項1又は請求項2に記載の歯科治療計画の手技前検証システム。
【請求項4】
前記指示入力部には、前記患者の3次元立体画像における前記孔に対し3次元立体画像における前記手技器具が挿入されたときに、前記手技器具が前記ターゲットに対して接触するように前記手技器具に関する前記パラメータが設定又はインストールされる、請求項1又は請求項2に記載の歯科治療計画の手技前検証システム。
【請求項5】
前記ターゲットの前記第4の表面データにおいて、前記ターゲットと前記孔との位置関係は、前記患者の顎部の実際のターゲットと前記凹孔との位置関係よりも近づけられる、請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載の歯科治療計画の手技前検証システム。
【請求項6】
前記手技器具に関するパラメータは、前記手技器具の形状、角度、位置に関する情報を含む、請求項1乃至請求項5のいずれか1項に記載の歯科治療計画の手技前検証システム。
【請求項7】
前記埋設体に関するパラメータは、インプラント体の形状、角度、位置、又は、自家歯牙埋設用の自家歯牙の形状、角度、位置、又は、再生医療における細胞組織の形状、位置に関する情報を含む、請求項1乃至請求項6のいずれか1項に記載の歯科治療計画の手技前検証システム。
【請求項8】
前記第5の表面データの3次元立体画像に基づいて、歯科治療計画の手技前検証用の模型を出力する3Dプリンタを備える、請求項1乃至請求項7のいずれか1項に記載の歯科治療計画の手技前検証システム。
【請求項9】
患者の顎部の3次元立体画像において、前記患者の治療対象部位と、前記治療対象部位に対する治療時に用いる手技器具の先端を非接触とする又は接触させるターゲットとを特定する第1の処理、
前記3次元立体画像において、前記治療対象部位に埋設する埋設体に関するパラメータと、前記手技器具に関するパラメータとの少なくとも一方を設定、又はインストールして、前記埋設体を埋設するための凹孔を模す孔を設定する第2の処理、
前記患者の治療対象部位の周囲に嵌めて使用され、前記手技器具で前記凹孔を所望の位置に形成するために前記手技器具を案内する補助器具の3次元立体画像を、前記埋設体に関するパラメータ及び前記手技器具に関するパラメータの少なくとも一方と、前記治療対象部位及びその周囲部位の第1の表面データとに基づいて作成する第3の処理、
記第1の表面データから、前記埋設体の表面の第2の表面データ、及び、前記手技器具の表面の第3の表面データの少なくとも一方を引いて、前記孔を含む前記治療対象部位と、前記ターゲットの第4の表面データとの位置関係を示す第5の表面データの3次元立体画像を作成する第4の処理、及び、
前記第5の表面データの3次元立体画像及び前記補助器具の3次元立体画像を出力する第5の処理、
をコンピュータに実行させ
前記第3の処理に基づく前記補助器具の3次元立体画像の作成を、前記第5の処理に基づく前記第5の表面データの3次元立体画像の出力前に行う、歯科治療計画の手技前検証プログラム。
【請求項10】
患者の顎部の3次元立体画像において、前記患者の治療対象部位と、前記治療対象部位に対する治療時に用いる手技器具の先端を非接触とする又は接触させるターゲットとを特定する第1の処理、
前記3次元立体画像において、前記治療対象部位に埋設する埋設体に関するパラメータと、前記手技器具に関するパラメータとの少なくとも一方を設定、又はインストールして、前記埋設体を埋設するための凹孔を模す孔を設定する第2の処理、
前記治療対象部位及びその周囲部位の第1の表面データから、前記埋設体の表面の第2の表面データ、及び、前記手技器具の表面の第3の表面データの少なくとも一方を引いて、前記孔を含む前記治療対象部位と、前記ターゲットの第4の表面データとの位置関係を示す第5の表面データの3次元立体画像を作成する第3の処理、及び、
前記第5の表面データの3次元立体画像を出力する第4の処理、
をコンピュータに実行させ、
前記第5の表面データの3次元立体画像を作成する第3の処理は、
土台であって、前記土台と前記治療対象部位との間に前記ターゲットを配置する、土台と、
前記治療対象部位と前記土台との間及び前記治療対象部位と前記ターゲットとの間の接続と、前記治療対象部位と前記土台との間及び前記土台と前記ターゲットとの間の接続と、前記治療対象部位と前記ターゲットとの間及び前記土台と前記ターゲットとの間との接続とのうちの少なくとも1つと
の表面データを作成することを含む、歯科治療計画の手技前検証プログラム。
【請求項11】
前記ターゲットの前記第4の表面データにおいて、前記ターゲットと前記孔との位置関係は、前記患者の顎部の実際のターゲットと前記凹孔との位置関係よりも近づけられる、請求項9又は請求項10に記載の歯科治療計画の手技前検証プログラム。
【請求項12】
患者の顎部の3次元立体画像において、前記患者の治療対象部位と、前記治療対象部位に対する治療時に用いる手技器具の先端を非接触とする又は接触させるターゲットとを特定すること、
前記3次元立体画像において、前記治療対象部位に埋設する埋設体に関するパラメータと、前記手技器具に関するパラメータとの少なくとも一方を設定又はインストールして、前記埋設体を埋設するための凹孔を模す孔を設定すること、
前記患者の治療対象部位の周囲に嵌めて使用され、前記手技器具で前記凹孔を所望の位置に形成するために前記手技器具を案内する補助器具の3次元立体画像を、前記埋設体に関するパラメータ及び前記手技器具に関するパラメータの少なくとも一方と、前記治療対象部位及びその周囲部位の第1の表面データとに基づいて作成すること、
記第1の表面データから、前記埋設体の表面の第2の表面データ、及び、前記手技器具の表面の第3の表面データの少なくとも一方を引いて、前記孔を含む前記治療対象部位と、前記ターゲットの第4の表面データとの位置関係を示す第5の表面データに基づく3次元立体画像を作成すること、
前記第5の表面データの3次元立体画像及び前記補助器具の3次元立体画像を出力すること、
を含み、
前記補助器具の3次元立体画像の作成を、前記第5の表面データの3次元立体画像の出力前に行う、歯科治療計画の手技前検証用の模型の製造方法。
【請求項13】
患者の顎部の3次元立体画像において、前記患者の治療対象部位と、前記治療対象部位に対する治療時に用いる手技器具の先端を非接触とする又は接触させるターゲットとを特定すること、
前記3次元立体画像において、前記治療対象部位に埋設する埋設体に関するパラメータと、前記手技器具に関するパラメータとの少なくとも一方を設定又はインストールして、前記埋設体を埋設するための凹孔を模す孔を設定すること、
前記患者の治療対象部位及びその周囲部位の第1の表面データから、前記埋設体の表面の第2の表面データ、及び、前記手技器具の表面の第3の表面データの少なくとも一方を引いて、前記孔を含む前記治療対象部位と、前記ターゲットの第4の表面データとの位置関係を示す第5の表面データに基づく3次元立体画像を作成すること、
を含み、
前記第5の表面データに基づく3次元立体画像を作成することは、
土台であって、前記土台と前記治療対象部位との間に前記ターゲットを配置する、土台と、
前記治療対象部位と前記土台との間及び前記治療対象部位と前記ターゲットとの間の接続と、前記治療対象部位と前記土台との間及び前記土台と前記ターゲットとの間の接続と、前記治療対象部位と前記ターゲットとの間及び前記土台と前記ターゲットとの間との接続とのうちの少なくとも1つと
の表面データを作成することを含む、歯科治療計画の手技前検証用の模型の製造方法。
【請求項14】
前記ターゲットの前記第4の表面データにおいて、前記ターゲットと前記孔との位置関係は、前記患者の顎部の実際のターゲットと前記凹孔との位置関係よりも近づけられる、請求項12又は請求項13に記載の歯科治療計画の手技前検証用の模型の製造方法。
【請求項15】
前記第5の表面データに基づいて、
前記患者の治療対象部位の少なくとも一部と同じ大きさ及び同じ形状で、前記患者の治療対象部位の少なくとも一部を模し、前記孔を模して形成される孔部を有する、模型本体と、
前記患者の治療対象部位槽骨に隣接又は埋設され、治療時に用いる前記手技器具の先端を非接触とする又は接触させる前記ターゲットを模し、前記3次元立体画像における前記患者の治療対象部位と前記ターゲットとの位置関係と同じ位置関係に設けられる、ターゲット模型部と
基部であって、前記模型本体との間に前記ターゲット模型部を配置し、前記土台を模す、基部と、
前記模型本体と前記基部との間及び前記模型本体と前記ターゲット模型部との間を接続する支柱と、前記模型本体と前記基部との間及び前記基部と前記ターゲット模型部との間を接続する支柱と、前記模型本体と前記ターゲット模型部との間及び前記基部と前記ターゲット模型部との間とを接続する支柱とのうちの少なくとも1つと
を有する模型を造形することを含む、
請求項13に記載の歯科治療計画の手技前検証用の模型の製造方法。
【請求項16】
患者の顎部の3次元立体画像に基づいて形成され、前記患者の治療対象部位の少なくとも一部と同じ大きさ及び同じ形状で、前記患者の治療対象部位の少なくとも一部を模し、前記治療対象部位に対して埋設体を埋設可能な孔を模して形成される模型本体と、
前記患者の3次元立体画像に基づいて形成され、前記患者の治療対象部位槽骨に隣接又は埋設され、治療時に用いる手技器具の先端を非接触とする又は接触させるターゲットを模し、前記患者の治療対象部位と前記ターゲットとの位置関係と同じ位置関係に設けられる、ターゲット模型部と、
を有し、
基部であって、前記模型本体との間に前記ターゲット模型部を配置する、基部と、
前記模型本体と前記基部との間及び前記模型本体と前記ターゲット模型部との間を接続する支柱と、前記模型本体と前記基部との間及び前記基部と前記ターゲット模型部との間を接続する支柱と、前記模型本体と前記ターゲット模型部との間及び前記基部と前記ターゲット模型部との間とを接続する支柱とのうちの少なくとも1つ
を有する、歯科治療計画の手技前検証用の模型。
【請求項17】
前記模型本体は、前記歯槽骨を模した位置の少なくとも一部を透明に形成する、請求項16に記載の歯科治療計画の手技前検証用の模型。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0006
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0006】
本発明の一態様に係る歯科治療計画の手技前検証システムは、制御装置と、指示入力部とを備える。指示入力部は、前記制御装置により制御される。指示入力部には、前記制御装置に対する、患者の顎部の3次元立体画像において、前記患者の治療対象部位と、前記治療対象部位に対する治療時に用いる手技器具の先端を非接触とする又は接触させるターゲットとを特定する処理指示、前記3次元立体画像において、前記治療対象部位に埋設する埋設体に関するパラメータ、及び、手技器具に関するパラメータの少なくとも一方を設定又はインストールして、前記埋設体を埋設するための凹孔を模す孔を設定する処理指示、前記患者の治療対象部位の周囲に嵌めて使用され、前記手技器具で前記凹孔を所望の位置に形成するために前記手技器具を案内する補助器具の3次元立体画像を、前記埋設体に関するパラメータ及び前記手技器具に関するパラメータの少なくとも一方と、前記治療対象部位及びその周囲部位の第1の表面データとに基づいて作成する処理指示、及び、前記第1の表面データから、前記埋設体の表面の第2の表面データ、及び、前記手技器具の表面の第3の表面データの少なくとも一方を引いて、前記孔を含む前記治療対象部位と、前記ターゲットの第4の表面データとの位置関係を示す第5の表面データを作成する処理指示、が入力される。前記制御装置は、前記処理指示に基づく処理を行うとともに、前記第5の表面データ及び前記補助器具の3次元立体画像を出力可能であり、前記処理指示に基づく前記補助器具の3次元立体画像の作成を前記第5の表面データの3次元立体画像の出力前に処理する。
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0026
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0026】
上述したように、補助器具200は、患者の治療箇所の歯茎の近傍の歯、歯茎及び顎骨にスクリューで固定後に嵌合させて用いるため、本体205は、歯、歯茎及び顎骨との基準位置を規定する位置規定部として用いられる。本体205は、患者の口腔の領域に、例えば1本以上の歯に沿って固定される例を図示するが、患者の下顎側が完全に無歯の状態であってもよい。例えば、本体205は、1本または2本の歯のみ、骨のみ、またはそれらの任意の組み合わせのような患者の口腔のより小さな部分に接続するように構成され得る。
【手続補正4】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0028
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0028】
なお、補助器具200のガイド孔210は、穴形成器具40だけでなく、例えば、止血用などの電気メスなどの他の手技器具を挿入し得る可能性がある。このとき、規制面220は、電気メスの挿入方向、角度、位置等を規制する。このため、規制面220は、穴形成器具40の規制面として用いられるだけでなく、他の手技器具の規制面として用いられ得る。したがって、補助器具200は、手技器具の位置規定体として用いられる。
【手続補正書】
【提出日】2022-01-31
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
制御装置と、
前記制御装置により制御され、前記制御装置に対する、
患者の顎部の3次元立体画像において、前記患者の治療対象部位と、前記治療対象部位に対する治療時に用いる手技器具の先端を非接触とする又は接触させるターゲットとを特定する処理指示、
前記3次元立体画像において、前記治療対象部位に埋設する埋設体に関するパラメータと、前記手技器具に関するパラメータとの少なくとも一方を設定、又はインストールして、前記埋設体を埋設するための凹孔を模す孔を設定する処理指示、
前記患者の治療対象部位の周囲に嵌めて使用され、前記手技器具で前記凹孔を所望の位置に形成するために前記手技器具を案内する補助器具の3次元立体画像を、前記埋設体に関するパラメータ及び前記手技器具に関するパラメータの少なくとも一方と、前記治療対象部位及びその周囲部位の第1の表面データとに基づいて作成する処理指示、及び、
前記第1の表面データから、前記埋設体の表面の第2の表面データ、及び、前記手技器具の表面の第3の表面データの少なくとも一方を引いて、前記孔を含む前記治療対象部位と、前記ターゲットの第4の表面データとの位置関係を示し歯科治療計画の手技前検証用の模型の第5の表面データの3次元立体画像を作成する処理指示、
が入力される指示入力部と、
を備え、
前記制御装置は、前記処理指示に基づく処理を行うとともに、前記模型の出力のための前記第5の表面データの3次元立体画像及び前記補助器具の出力のための前記補助器具の3次元立体画像を出力可能であり、前記処理指示に基づく前記補助器具の3次元立体画像の作成を前記第5の表面データの3次元立体画像の出力前に処理する、
歯科治療計画の手技前検証システム。
【請求項2】
前記指示入力部には、前記患者の3次元立体画像における前記孔に対し3次元立体画像における前記手技器具が挿入されたときに、前記手技器具が前記ターゲットに対して離間するように前記手技器具に関する前記パラメータが設定又はインストールされる、請求項1に記載の歯科治療計画の手技前検証システム。
【請求項3】
前記指示入力部には、前記患者の3次元立体画像における前記孔に対し3次元立体画像における前記手技器具が挿入されたときに、前記手技器具が前記ターゲットに対して接触するように前記手技器具に関する前記パラメータが設定又はインストールされる、請求項1に記載の歯科治療計画の手技前検証システム。
【請求項4】
前記ターゲットの前記第4の表面データにおいて、前記ターゲットと前記孔との位置関係は、前記患者の顎部の実際のターゲットと前記凹孔との位置関係よりも近づけられる、請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の歯科治療計画の手技前検証システム。
【請求項5】
前記手技器具に関するパラメータは、前記手技器具の形状、角度、位置に関する情報を含む、請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載の歯科治療計画の手技前検証システム。
【請求項6】
前記埋設体に関するパラメータは、インプラント体の形状、角度、位置、又は、自家歯牙埋設用の自家歯牙の形状、角度、位置、又は、再生医療における細胞組織の形状、位置に関する情報を含む、請求項1乃至請求項5のいずれか1項に記載の歯科治療計画の手技前検証システム。
【請求項7】
前記第5の表面データの3次元立体画像に基づいて、前記歯科治療計画の手技前検証用の模型を出力する3Dプリンタを備える、請求項1乃至請求項6のいずれか1項に記載の歯科治療計画の手技前検証システム。
【請求項8】
患者の顎部の3次元立体画像において、前記患者の治療対象部位と、前記治療対象部位に対する治療時に用いる手技器具の先端を非接触とする又は接触させるターゲットとを特定する第1の処理、
前記3次元立体画像において、前記治療対象部位に埋設する埋設体に関するパラメータと、前記手技器具に関するパラメータとの少なくとも一方を設定、又はインストールして、前記埋設体を埋設するための凹孔を模す孔を設定する第2の処理、
前記患者の治療対象部位の周囲に嵌めて使用され、前記手技器具で前記凹孔を所望の位置に形成するために前記手技器具を案内する補助器具の3次元立体画像を、前記埋設体に関するパラメータ及び前記手技器具に関するパラメータの少なくとも一方と、前記治療対象部位及びその周囲部位の第1の表面データとに基づいて作成する第3の処理、
前記第1の表面データから、前記埋設体の表面の第2の表面データ、及び、前記手技器具の表面の第3の表面データの少なくとも一方を引いて、前記孔を含む前記治療対象部位と、前記ターゲットの第4の表面データとの位置関係を示し歯科治療計画の手技前検証用の模型の第5の表面データの3次元立体画像を作成する第4の処理、及び、
前記模型の前記第5の表面データの3次元立体画像及び前記補助器具の3次元立体画像を出力する第5の処理、
をコンピュータに実行させ、
前記第3の処理に基づく前記補助器具の出力のための前記補助器具の3次元立体画像の作成を、前記第5の処理に基づく前記模型の出力のための前記第5の表面データの3次元立体画像の出力前に行う、歯科治療計画の手技前検証プログラム。
【請求項9】
前記ターゲットの前記第4の表面データにおいて、前記ターゲットと前記孔との位置関係は、前記患者の顎部の実際のターゲットと前記凹孔との位置関係よりも近づけられる、請求項8に記載の歯科治療計画の手技前検証プログラム。
【請求項10】
患者の顎部の3次元立体画像において、歯科治療計画者の指示に基づいてコンピュータが、前記患者の治療対象部位と、前記治療対象部位に対する治療時に用いる手技器具の先端を非接触とする又は接触させるターゲットとを特定すること、
前記3次元立体画像において、前記歯科治療計画者の指示に基づいて前記コンピュータが、前記治療対象部位に埋設する埋設体に関するパラメータと、前記手技器具に関するパラメータとの少なくとも一方を設定又はインストールして、前記埋設体を埋設するための凹孔を模す孔を設定すること、
前記患者の治療対象部位の周囲に嵌めて使用され、前記手技器具で前記凹孔を所望の位置に形成するために前記手技器具を案内する補助器具の3次元立体画像を、前記歯科治療計画者の指示に基づいて前記コンピュータが、前記埋設体に関するパラメータ及び前記手技器具に関するパラメータの少なくとも一方と、前記治療対象部位及びその周囲部位の第1の表面データとに基づいて作成すること、
前記歯科治療計画者の指示に基づいて前記コンピュータが、前記第1の表面データから、前記埋設体の表面の第2の表面データ、及び、前記手技器具の表面の第3の表面データの少なくとも一方を引いて、前記孔を含む前記治療対象部位と、前記ターゲットの第4の表面データとの位置関係を示し歯科治療計画の手技前検証用の模型の第5の表面データに基づく3次元立体画像を作成すること、
前記歯科治療計画者の指示に基づいて前記コンピュータが、前記模型の出力のための前記第5の表面データの3次元立体画像及び前記補助器具の出力のための前記補助器具の3次元立体画像を出力すること、
を含み、
前記補助器具の3次元立体画像の作成を、前記コンピュータが前記模型の出力のための前記第5の表面データの3次元立体画像の出力前に行う、歯科治療計画の手技前検証用の模型の製造方法。
【請求項11】
前記ターゲットの前記第4の表面データにおいて、前記歯科治療計画者の指示に基づいて前記コンピュータが、前記ターゲットと前記孔との位置関係、前記患者の顎部の実際のターゲットと前記凹孔との位置関係よりも近づける請求項10に記載の歯科治療計画の手技前検証用の模型の製造方法。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0006
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0006】
本発明の一態様に係る歯科治療計画の手技前検証システムは、制御装置と、指示入力部とを備える。指示入力部は、前記制御装置により制御される。指示入力部には、前記制御装置に対する、患者の顎部の3次元立体画像において、前記患者の治療対象部位と、前記治療対象部位に対する治療時に用いる手技器具の先端を非接触とする又は接触させるターゲットとを特定する処理指示、前記3次元立体画像において、前記治療対象部位に埋設する埋設体に関するパラメータ、及び、手技器具に関するパラメータの少なくとも一方を設定又はインストールして、前記埋設体を埋設するための凹孔を模す孔を設定する処理指示、前記患者の治療対象部位の周囲に嵌めて使用され、前記手技器具で前記凹孔を所望の位置に形成するために前記手技器具を案内する補助器具の3次元立体画像を、前記埋設体に関するパラメータ及び前記手技器具に関するパラメータの少なくとも一方と、前記治療対象部位及びその周囲部位の第1の表面データとに基づいて作成する処理指示、及び、前記第1の表面データから、前記埋設体の表面の第2の表面データ、及び、前記手技器具の表面の第3の表面データの少なくとも一方を引いて、前記孔を含む前記治療対象部位と、前記ターゲットの第4の表面データとの位置関係を示し歯科治療計画の手技前検証用の模型の第5の表面データを作成する処理指示、が入力される。前記制御装置は、前記処理指示に基づく処理を行うとともに、前記模型の出力のための前記第5の表面データの3次元立体画像及び前記補助器具の出力のための前記補助器具の3次元立体画像を出力可能であり、前記処理指示に基づく前記補助器具の3次元立体画像の作成を前記第5の表面データの3次元立体画像の出力前に処理する。